説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】メモリセルにおける下層電極と上層電極との界面及び保護ダイオードにおける基板とダイオード電極との界面に、均一で且つ最適な膜厚の酸化膜が形成された半導体装置を実現できるようにする。
【解決手段】半導体装置は、第1の界面膜53Aを介在させて、第1の導電膜からなる第1の下層電極51Aと、第2の導電膜からなる第1の上層電極52Aとが積層された第1の積層電極22を有するメモリセル12と、第2の導電膜からなるダイオード電極52Bと、ダイオード電極32と基板15との界面に形成されたシリコン酸化膜である第2の界面膜53Bとを有するダイオード13とを備えている。第1の界面膜53Aは、下層電極51Aと上層電極52Aとの電気的接続を維持する膜厚であり、第2の界面膜53Bは、基板15とダイオード電極52Bとの間におけるエピタキシャル成長を阻害する膜厚である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、メモリセル及び保護用ダイオードを備えた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
拡散ビット線とそれに直交するワード線電極とを備えた構造は、メモリセルの微細化において重要である。中でも、拡散ビット線上のビット線絶縁膜を熱酸化ではなく化学気相堆積(CVD)法により形成する構造は、メモリセルを微細化する効果に優れている。ビット線絶縁膜をCVD法により埋め込む方法の一例として、ワード線電極をポリシリコン等からなる下層電極と上層電極とが積層された積層電極とする方法がある。この場合、下層電極となるポリシリコン膜をマスクとして拡散ビット線をパターニングした後、ビット線絶縁膜を埋め込むことができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
一方、メモリセルの微細化の進展に伴い、メモリセルを工程チャージングから保護することが重要となってきている。このため、メモリセルと共に保護用ダイオードを形成することが検討されている。
【0004】
ワード線電極を積層電極とする場合には、保護用ダイオードを容易に形成できるというメリットもある。具体的には、下層電極となるポリシリコン膜をマスクとして基板を露出する開口部を形成し、開口部において上層電極となるポリシリコン膜と基板とを直接接続することにより、ダイオード電極と基板とが直結されたダイオードを形成できる。
【特許文献1】特開2000−332139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のワード線電極を積層電極とする構造においては、下層電極と上層電極とは界面において電気的に接続されていなければならない。このため、下層電極と上層電極とが直接接していることが理想である。しかし、通常の半導体プロセスを用いると、下層電極と上層電極との界面及び基板とダイオード電極との界面に自然酸化による酸化膜が形成されるという問題がある。
【0006】
このようにして生じた酸化膜は膜厚が薄いため、下層電極と上層電極との電気的接続及び基板とダイオード電極と電気的接続を確保することができる。しかし、酸化膜の膜厚のばらつきに起因して、トランジスタの閾値電圧がばらついたり、積層ポリシリコンの抵抗がばらついたりする。
【0007】
一方、保護ダイオードを形成する場合には、基板の上にポリシリコン膜を形成する必要がある。この場合、基板とダイオード電極との間において異常なエピタキシャル成長が生じないようにするために、基板とダイオード電極との間に、ある程度以上の膜厚の酸化膜が形成されていることが好ましい。
【0008】
このように、下層電極と上層電極との間における酸化膜の膜厚と、基板とダイオード電極との間における酸化膜の膜厚とはトレードオフの関係にある。従って、下層電極と上層電極との間及び基板とダイオード電極との間には、膜厚が薄く且つ均一性及び正確性に優れた酸化膜が形成されている必要がある。
【0009】
しかし、自然酸化膜は、膜厚の制御が困難である。このため、熱酸化法又はCVD法を用いて、下層電極の上及び基板の露出部分の上に極薄の酸化膜を形成する方法が考えられる。しかし、熱酸化法により酸化膜を形成する場合には、サーマルバジェットが増大し、素子特性が変動するという問題及び工程数が増大するという問題がある。また、CVD法により酸化膜を形成する場合には、膜厚の制御が困難難であるという問題及び最低でも膜厚が数nmを越えるため素子の駆動能力が減少するという問題がある。また、熱酸化法と同様に工程数が増大するという問題もある。
【0010】
本発明は、前記従来の問題を解決し、メモリセルにおける下層電極と上層電極との界面及び保護ダイオードにおける基板とダイオード電極との界面に、均一で且つ最適な膜厚の酸化膜が形成された半導体装置を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は半導体装置を、積層電極の界面においては下層電極と上層電極との電気的接続を維持する膜厚を有し、基板とダイオード電極との界面とにおいてはエピタキシャル成長を阻害する膜厚を有する酸化膜を形成した構成とする。
【0012】
具体的に、本発明に係る半導体装置は、基板のメモリセル領域に形成され、シリコン酸化膜である第1の界面膜を介在させて、第1の導電膜からなる第1の下層電極と、第2の導電膜からなる第1の上層電極とが積層された第1の積層電極を有するメモリセルと、基板のダイオード領域に形成され、第2の導電膜からなるダイオード電極と、ダイオード電極と基板との界面に形成されたシリコン酸化膜である第2の界面膜とを有するダイオードとを備え、第1の界面膜は、下層電極と上層電極との電気的接続を維持する膜厚であり、第2の界面膜は、基板とダイオード電極との間においてエピタキシャル成長を阻害する膜厚であることを特徴とする。
【0013】
本発明の半導体装置は、第1の界面膜は、第1の下層電極と第1の上層電極との電気的接続を維持する膜厚であり、第2の界面膜は、基板とダイオード電極との間においてエピタキシャル成長を阻害する膜厚である。このため、メモリセルにおける積層電極において、下層電極と上層電極との間の導通を十分に確保することができる。また、基板の上にポリシリコン膜を形成する際に、異常成長が生じることがない。
【0014】
本発明の半導体装置において、第1の界面膜と、第2の界面膜とは膜厚が等しくてもよい。
【0015】
本発明の半導体装置において、第1の界面膜及び第2の界面膜は、膜厚が0.7nm以上且つ1.3nm以下であってもよい。
【0016】
本発明の半導体装置は、基板の周辺回路領域に形成され、シリコン酸化膜である第3の界面膜を介在させて、第1の導電膜からなる第2の下層電極と、第2の導電膜からなる第2の上層電極とが積層された第2の積層電極を有する周辺トランジスタをさらに備えていてもよい。
【0017】
本発明の半導体装置において、メモリセルは、基板における隣接する第1の積層電極同士の間の領域に形成され、隣接する第1の積層電極によって共有されたビット線拡散層と、ビット線拡散層の上に形成されたビット線絶縁膜とを有し、ビット線絶縁膜は、第1の下層電極よりも高さが高く且つ第1の下層電極よりも上側の部分の幅は、下側の部分の幅よりも狭いことが好ましい。
【0018】
本発明の半導体装置において、第1の下層電極の上部の角は鋭角な形状であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板のメモリセル領域の上に第1の絶縁膜を形成する工程(a)と、基板のダイオード領域の上に第2の絶縁膜を形成する工程(b)と、第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の上に第1の導電膜を形成する工程(c)と、メモリセル領域において、マスク絶縁膜を用いて第1の導電膜及び第1の絶縁膜を選択的に除去して、基板を露出する第1の開口部を形成すると共に、ダイオード領域において、マスク絶縁膜を用いて第1の導電膜及び第2の絶縁膜を選択的に除去して、基板を露出する第2の開口部を形成する工程(d)と、メモリセル領域において、基板の第1の開口部から露出した領域にビット線拡散層を形成する工程(e)と、第1の開口部を埋め込む埋め込みビット線絶縁膜を形成する工程(f)と、メモリセル領域及びダイオード領域において、マスク絶縁膜を除去すると共に、第1の導電膜の上及び基板の第2の開口部から露出した領域の上にシリコン酸化膜を形成する工程(g)と、メモリセル領域及びダイオード領域の上の全面に第2の導電膜を形成する工程(i)とを備え、工程(g)では、より、シリコン酸化膜を形成することを特徴とする。
【0020】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、オゾン洗浄により、第1の界面膜及び第2の界面膜である酸化膜を形成する。このため、界面膜の膜厚を正確且つ均一にすることができる。従って、メモリセル領域においては、下層電極と上層電極とを電気的に十分に接続することができ、ダイオード領域においては、基板とポリシリコン膜との間に異常なエピタキシャル成長が生じないようにすることができる。マスク絶縁膜の除去の際の洗浄を用いてシリコン酸化膜を形成するため、サーマルバジェットが増大することがない。また、工数が増加することもない。
【0021】
本発明の半導体装置の製造方法において、シリコン酸化膜のうち第1の導電膜の上の上に形成された部分と、基板の第2の開口部内から露出した領域の上に形成された部分とは、膜厚が同一であってもよい。
【0022】
本発明の半導体装置の製造方法において、シリコン酸化膜は、膜厚が0.7nm以上且つ1.3nm以下としてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法によれば、メモリセルにおける下層電極と上層電極との界面及び保護ダイオードにおける基板とダイオード電極との界面に、均一で且つ最適な膜厚の酸化膜が形成された半導体装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1(a)〜(c)は、本実施形態に係る半導体装置であり、(a)はメモリセル領域における断面構成を示し、(b)はダイオード領域における断面構成を示し、(c)は周辺回路領域における断面構成を示している。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置はメモリセル領域に形成されたメモリセル12と、ダイオード領域に形成された保護ダイオード13と、周辺回路領域に形成されたトランジスタ14とを備えている。
【0026】
図1(a)に示すようにメモリセル領域においては、第1導電型の半導体基板15の上部に、互いに間隔をおいて第1の方向に伸びる複数のビット線拡散層20が形成されている。半導体基板15におけるビット線拡散層20同士の間の領域の上には、第1のゲート絶縁膜21が形成されている。第1のゲート絶縁膜21は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びシリコン酸化膜が順次積層されたONO膜である。第1のゲート絶縁膜21の上には、第1のゲート電極22が形成されている。第1のゲート電極22は、第1のポリシリコン膜からなる下層電極51Aと第2のポリシリコン膜からなる上層電極52Aとが積層された積層電極である。下層電極51Aと上層電極52Aとの界面には、シリコン酸化膜である第1の界面膜53Aが形成されている。上層電極52Aは、ビット線拡散層20が伸びる第1の方向と交差する第2の方向に伸びるワード線である。半導体基板15のビット線拡散層20の上には、下層電極51A同士の間を埋めるビット線絶縁膜25が形成されている。ビット線絶縁膜25の高さは、下層電極51Aの高さよりも高く、ビット線絶縁膜25における下層電極51Aの上面よりも上側の部分の幅は、下側の部分の幅よりも狭くなっている。
【0027】
図1(b)に示すようにダイオード領域においては、半導体基板15の上に絶縁膜31を介在させて第1のポリシリコン膜からなる下層ポリシリコン膜51Bが形成されている。絶縁膜31及び下層ポリシリコン膜51Bは、半導体基板15を露出する開口部を有している。下層ポリシリコン膜51Bの上には、開口部を埋めるように第2のポリシリコン膜からなるダイオード電極52Bが形成されている。ダイオード電極52Bと下層ポリシリコン膜51Bとの界面及びダイオード電極52Bと半導体基板15との界面には、シリコン酸化膜である第2の界面膜53Bが形成されている。
【0028】
図1(c)に示すように周辺回路領域においては、半導体基板15の上に第2のゲート絶縁膜41を介在させて、第2のゲート電極42が形成されている。第2のゲート電極42は、第1のポリシリコン膜からなる下層電極51Cと第2のポリシリコン膜からなる上層電極52Cとが、シリコン酸化膜である第3の界面膜53Cを介して積層された積層電極である。半導体基板15における第2のゲート電極42の両側方には、ソース・ドレイン拡散層(図示せず)が適宜形成されている。また、必要に応じて第2のゲート電極42の側壁上にはサイドウォール等(図示せず)が形成されている。
【0029】
以下に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。図2〜図6においてそれぞれ(a)はメモリセル領域における断面構成を示し、(b)はダイオード領域における断面構成を示し、(c)は周辺回路領域における断面構成を示している。
【0030】
まず、図2に示すように、半導体基板15におけるメモリセル領域の上に、ONO膜である第1のゲート絶縁膜21を形成し、ダイオード領域の上に絶縁膜31を形成し、周辺回路領域の上に第2のゲート絶縁膜41を形成する。続いて、半導体基板15上の全面に第1のポリシリコン膜51を形成する。
【0031】
第1のゲート絶縁膜21、絶縁膜31及び第2のゲート絶縁膜41は、種々の方法により形成できるが、以下のようにすれば効率よく形成することができる。
【0032】
まず、半導体基板15上の全面にシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を形成した後、メモリセル領域に形成した部分を除いてシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜をウェットエッチングにより選択的に除去する。続いて、半導体基板15上の全面に2回目のシリコン酸化膜を形成する。
【0033】
このようにすれば、メモリセル領域には、ONO膜である第1のゲート絶縁膜21が形成され、ダイオード領域及び周辺回路領域には、シリコン酸化膜である絶縁膜31及び第2のゲート絶縁膜41がそれぞれ形成される。なお、絶縁膜31は第1のゲート絶縁膜と同じONO膜としてもかまわない。
【0034】
また、絶縁膜31の膜厚と第2のゲート絶縁膜41の膜とに差をつける場合は、以下のように一般的な多重ゲート酸化膜形成方法を用いればよい。具体的には、半導体基板15の上に2回目のシリコン酸化膜を形成した後、周辺回路領域に形成した部分をウェットエッチングにより選択的に除去する。次に、3回目のシリコン酸化膜を形成する。このようにすれば、絶縁膜31の膜厚を第2のゲート絶縁膜41の膜厚よりも厚くすることができる。2回目のシリコン酸化膜の除去は、メモリセル領域に対しても行ってよい。
【0035】
本実施形態においては、第1のゲート絶縁膜21は、下側から順次積層された厚さが5nmのシリコン酸化膜と、厚さが5nmのシリコン窒化膜と、厚さが10nmのシリコン酸化膜とした。絶縁膜31は厚さが15nmのシリコン酸化膜とし、第2のゲート絶縁膜41は厚さが3nmのシリコン酸化膜とした。また、第1のポリシリコン膜51の膜厚は50nmとした。
【0036】
次に、図3に示すように、半導体基板15上の全面に、マスク絶縁膜61を形成した後、メモリセル領域及びダイオード領域において、フォトリソグラフィーを用いてマスク絶縁膜61を選択的にパターニングする。続いて、パターニングしたマスク絶縁膜61をマスクとして第1のポリシリコン膜51、第1のゲート絶縁膜21及び絶縁膜31をパターニングする。これにより、メモリセル領域には第1のポリシリコン膜からなる下層電極51Aが形成され、下層電極51A同士の間には、半導体基板15を露出する第1の開口部62が形成される。ダイオード領域には下層ポリシリコン膜51Bが形成され、下層ポリシリコン膜51B同士の間には半導体基板15を露出する第2の開口部63が形成される。本実施形態においては、マスク絶縁膜61を厚さが10nmのシリコン酸化膜からなるマスク酸化膜61Aと厚さが100nmのシリコン窒化膜からなるマスク窒化膜61Bとの積層膜とした。
【0037】
次に、図4に示すようにメモリセル領域において、半導体基板15における第1の開口部62から露出した部分にイオン注入法により不純物を導入して、ビット線拡散層20を形成する。不純物の注入量は、1×1015/cm2のオーダーとすることが好ましい。次に、半導体基板15上の全面に、CVD法によりビット線絶縁膜となるシリコン酸化膜を形成した後、CMP法によりマスク窒化膜61Bが露出するまで、形成したシリコン酸化膜を研磨する。この後、酸化膜ウェットエッチングを用いて、研磨したシリコン酸化膜の上面が、マスク酸化膜61Aの上面よりも30nm程度高くなるようにする。これにより、第1の開口部62を埋め且つ下層電極51Aよりも上面が突出したビット線絶縁膜25が形成される。続いて、リン酸を用いたウェットエッチングにより、マスク窒化膜61Bを除去する。ビット線絶縁膜25の上面をマスク酸化膜61Aの上面よりも高くすることにより、リン酸処理によりマスク窒化膜61Bを除去する際に、下層電極51Aがエッチングされないように保護できる。なお、ビット線絶縁膜25の高さは適宜変更してよい。
【0038】
これにより、ダイオード領域の第2の開口部63にもシリコン酸化膜26が埋め込まれた状態となる。また、周辺トランジスタ領域においては、シリコン酸化膜が全て除去された状態となる。
【0039】
次に、図5に示すようにダイオード領域において、第2の開口部63に埋め込まれたシリコン酸化膜26をドライエッチングにより除去する。この場合、CF4、CHF3系のエッチングガスを用いることが好ましい。続いて、半導体基板15上の全面において、酸化膜ウェットエッチングを行い、残存するマスク酸化膜61Aを除去する。この際に、酸化膜ウェットエッチングはオゾン洗浄処理により終了させる。これにより、第1のポリシリコン膜51の上及び半導体基板15の第2の開口部63から露出した部分の上に厚さが約1nmのシリコン酸化膜53が形成される。オゾン洗浄処理によるシリコン酸化膜の形成は制御性が良いため、均一で且つ正確な膜厚のシリコン酸化膜53が形成できる。
【0040】
次に、図6に示すように半導体基板15上の全面に、厚さが150nmの第2のポリシリコン膜を形成した後、選択的にエッチングする。これにより、メモリセル領域には、第1のポリシリコン膜からなる下層電極51Aと第2のポリシリコン膜からなる上層電極52Aとが積層された積層電極である第1のゲート電極22が形成される。ダイオード領域には、第2のポリシリコン膜からなるダイオード電極52Bが形成される。周辺回路領域には、第1のポリシリコン膜からなる下層電極51Cと第2のポリシリコン膜からなる上層電極52Cとが積層された積層電極である第2のゲート電極42が形成される。
【0041】
下層電極51Aと上層電極52Aとの界面に存在するシリコン酸化膜である第1の界面膜53Aは、厚さが1nmである。従って、下層電極51Aと上層電極52Aとの導通は確保される。また、第1の界面膜53Aの膜厚が均一であるため、閾値電圧及び抵抗値がばらつくことはない。また、半導体基板15とダイオード電極52Bとの界面に存在するシリコン酸化膜である第2の界面膜53Bの膜厚も1nmである。このため、半導体基板15とダイオード電極52Bとの間において、異常なエピタキシャル成長が生じることはない。
【0042】
以降の製造工程については、特に図示はしないが、積層電極を加工し、ワード線、ダイオード電極及びトランジスタ電極を形成した後、シリサイド形成工程、コンタクト形成工程、配線形成工程を行って、半導体装置として完成させる。
【0043】
なお、マスク酸化膜61Aを除去する酸化膜ウェットエッチ工程を経るため、必然的に、ビット線絶縁膜25における下層電極51Aよりも上側に突出した部分の幅は、下層電極51Aの上面よりも下側の部分の幅よりも狭くなる。また、第1の界面膜53Aの形成に熱酸化を用いていないため、必然的に下層電極51Aの上部の角は鋭角な形状となる。
【0044】
本願発明者らの研究によれば、第2の界面膜53Bの膜厚が0.7nm未満となると、半導体基板15と第2のポリシリコン膜との間に異常なエピタキシャル成長が生じることを確認している。また、第3の界面膜53Cの膜厚が1.5nmを越えると、第2のゲート絶縁膜41の膜厚が3nmである場合において容量値が50%以上増大し、周辺回路領域のトランジスタにおいて駆動力の低下が顕著になることを確認している。また、第1の界面膜53Aの膜厚が1.5nmを越えると、程度の差はあるが同様にメモリセル領域のトランジスタにおいて駆動力劣化という不具合が発生する。例えば絶縁膜21の膜厚が15nmの場合、10%程度の駆動力劣化が生じる。
【0045】
CVD法によりシリコン酸化膜を形成する場合には、膜厚が数nmとなってしまう。従って、本実施形態のオゾン洗浄に代えてCVD法を用いて第1の界面膜53A、第2の界面膜53B及び第3の界面膜53Cを形成した場合には、第3の界面膜53Cの膜厚が1.5nmを越えてしまい、トランジスタの駆動力が低下してしまう。
【0046】
一方、自然酸化膜を用いる場合には、サーマルバジェットが増大してしまい素子特性に悪影響を与える。また、膜厚制御が困難であるため、第2の界面膜53Bの膜厚が非常に薄くなり、半導体基板15と第2のポリシリコン膜との間に異常なエピタキシャル成長が生じるおそれがある。
【0047】
また、酸化膜ウェットエッチにおいてアンモニア過酸化水素水(APM)洗浄を行うことにより化学酸化膜を形成する場合には、自然酸化膜と同様に第2の界面膜53Bの膜厚が薄くなり、異常なエピタキシャル成長が生じるおそれがある。また、下地のラフネスが増大するというデメリットもある。また、硫酸過酸化水素水(SPM)及び硝酸を用いて化学酸化膜を形成する場合には、酸化力が非常に強いため、第1の界面膜53A及び第3の界面膜53Cの膜厚と、第2の界面膜53Bの膜厚との差が大きくなる。これは、第1の界面膜53A及び第3の界面膜53Cの各界面膜はポリシリコン膜上に形成し、第2の界面膜53Bは基板上に形成するため、硝酸等を用いた酸化力の強い処理を行うと第1及び第3の各界面膜の方が第2の界面膜と比べて酸化が早く、膜厚が厚くなるためである。これにより第2の界面膜53Bの膜厚を一定としたときに第1の界面膜53A及び第3の界面膜53Cの膜厚が厚くなり、メモリセル領域及び周辺回路領域におけるトランジスタの駆動力劣化が大きくなるというデメリットが生じる。
【0048】
本実施形態はオゾン洗浄を用いて、第1の界面膜53A及び第3の界面膜53Cを形成している。このため、第2のポリシリコン膜を形成する前の炉前洗浄を経た後においても、第1の界面膜53A及び第3の界面膜53Cの膜厚のばらつきを1nm±0.3nm以下とすることができる。このように、薄く且つ膜厚のばらつきが非常に小さいシリコン酸化膜を形成することができるため、異常なエピタキシャル成長も、駆動力の低下も生じるおそれがない。さらに、もともと必須であった酸化膜ウェットエッチング工程の最終処理としてオゾン洗浄を行うため、サーマルバジェット及び工程数の増加がなく、非常に簡便な手法で実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、メモリセルにおける下層電極と上層電極との界面及び保護ダイオードにおける基板とダイオード電極との界面に、均一で且つ最適な膜厚の酸化膜が形成された半導体装置を実現でき、特に、メモリセル及び保護用ダイオードを備えた半導体装置及びその製造方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置を示し、(a)はメモリセル領域における断面図であり、(b)はダイオード領域における断面図であり、(c)は周辺回路領域における断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示し、(a)はメモリセル領域における断面図であり、(b)はダイオード領域における断面図であり、(c)は周辺回路領域における断面図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示し、(a)はメモリセル領域における断面図であり、(b)はダイオード領域における断面図であり、(c)は周辺回路領域における断面図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示し、(a)はメモリセル領域における断面図であり、(b)はダイオード領域における断面図であり、(c)は周辺回路領域における断面図である。
【図5】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示し、(a)はメモリセル領域における断面図であり、(b)はダイオード領域における断面図であり、(c)は周辺回路領域における断面図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係る半導体装置の一製造工程を示し、(a)はメモリセル領域における断面図であり、(b)はダイオード領域における断面図であり、(c)は周辺回路領域における断面図である。
【符号の説明】
【0051】
12 メモリセル
13 保護ダイオード
14 トランジスタ
15 半導体基板
20 ビット線拡散層
21 第1のゲート絶縁膜
22 第1のゲート電極
25 ビット線絶縁膜
26 シリコン酸化膜
31 絶縁膜
41 第2のゲート絶縁膜
42 第2のゲート電極
51 第1のポリシリコン膜
51A 下層電極
51B 下層ポリシリコン膜
51C 下層電極
52A 上層電極
52B ダイオード電極
52C 上層電極
53 シリコン酸化膜
53A 第1の界面膜
53B 第2の界面膜
53C 第3の界面膜
61 マスク絶縁膜
61A マスク酸化膜
61B マスク窒化膜
62 第1の開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のメモリセル領域に形成され、シリコン酸化膜である第1の界面膜を介在させて、第1の導電膜からなる第1の下層電極と、第2の導電膜からなる第1の上層電極とが積層された第1の積層電極を有するメモリセルと、
前記基板のダイオード領域に形成され、前記第2の導電膜からなるダイオード電極と、前記ダイオード電極と前記基板との界面に形成された前記シリコン酸化膜である第2の界面膜とを有するダイオードとを備え、
前記第1の界面膜は、前記第1の下層電極と前記第1の上層電極との電気的接続を維持する膜厚であり、前記第2の界面膜は、前記基板と前記ダイオード電極との間においてエピタキシャル成長を阻害する膜厚であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の界面膜と、前記第2の界面膜とは膜厚が等しいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の界面膜及び第2の界面膜は、膜厚が0.7nm以上且つ1.3nm以下であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基板の周辺回路領域に形成され、前記シリコン酸化膜である第3の界面膜を介在させて、前記第1の導電膜からなる第2の下層電極と、前記第2の導電膜からなる第2の上層電極とが積層された第2の積層電極を有する周辺トランジスタをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記メモリセルは、
前記基板における隣接する前記第1の積層電極同士の間の領域に形成され、前記隣接する第1の積層電極によって共有されたビット線拡散層と、
前記ビット線拡散層の上に形成されたビット線絶縁膜とを有し、
前記ビット線絶縁膜は、前記第1の下層電極よりも高さが高く且つ前記第1の下層電極よりも上側の部分の幅は、下側の部分の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の下層電極の上部の角は鋭角な形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
基板のメモリセル領域の上に第1の絶縁膜を形成する工程(a)と、
前記基板のダイオード領域の上に第2の絶縁膜を形成する工程(b)と、
前記第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の上に第1の導電膜を形成する工程(c)と、
前記メモリセル領域において、マスク絶縁膜を用いて前記第1の導電膜及び第1の絶縁膜を選択的に除去して、第1の開口部を形成すると共に、前記ダイオード領域において、前記マスク絶縁膜を用いて前記第1の導電膜及び第2の絶縁膜を選択的に除去して、前記基板を露出する第2の開口部を形成する工程(d)と、
前記メモリセル領域において、前記基板の前記第1の開口部から露出した領域にビット線拡散層を形成する工程(e)と、
前記第1の開口部を埋め込む埋め込みビット線絶縁膜を形成する工程(f)と、
前記メモリセル領域及びダイオード領域において、前記マスク絶縁膜を除去すると共に、前記第1の導電膜の上及び前記基板の前記第2の開口部から露出した領域の上にシリコン酸化膜を形成する工程(g)と、
前記メモリセル領域及びダイオード領域の上の全面に第2の導電膜を形成する工程(i)とを備え、
前記工程(g)では、前記マスク絶縁膜を除去した後、オゾン洗浄を行うことにより、前記シリコン酸化膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記シリコン酸化膜のうち前記第1の導電膜の上の上に形成された部分と、前記基板の前記第2の開口部内から露出した領域の上に形成された部分とは、膜厚が同一であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記シリコン酸化膜は、膜厚が0.7nm以上且つ1.3nm以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−259945(P2009−259945A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105642(P2008−105642)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】