説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】層間絶縁膜の膜強度を十分に確保する。
【解決手段】第1の配線層絶縁膜と、第1の配線層絶縁膜に埋め込み形成されている複数の第1の銅配線8と、第1の銅配線8上及び第1の配線層絶縁膜上に形成されている層間絶縁膜(第2の低誘電率膜10)と、を有する。層間絶縁膜上に形成されている第2の配線層絶縁膜と、第2の配線層絶縁膜に埋め込み形成されている複数の第2の銅配線16と、を有する。第1、第2の配線層絶縁膜は、第1、第2の低誘電率膜(第1の低誘電率膜4、第3の低誘電率膜11)を含む。層間絶縁膜は、第1及び第2の配線層絶縁膜よりも高強度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅配線と低誘電率な配線層絶縁膜とを有する多層配線構造を備える半導体装置においては、配線層絶縁膜と層間絶縁膜とで同じ材料の膜を用いることが一般的である。そのような半導体装置は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0003】
なお、特許文献1には、埋め込み配線を形成した後に、これを覆うように圧縮応力を有する拡散防止膜を形成し、その後、紫外線照射を伴う熱処理を行うことにより、配線層絶縁膜の硬度及び弾性率を増加させることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、埋め込み配線を形成した後で、配線層絶縁膜に紫外線照射を行うことによって、配線層絶縁膜の上部を低密度化し、配線間容量を低減させることが記載されている。また、特許文献2の技術では、配線層絶縁膜をその表裏に亘って改質するのではなく、層間絶縁膜の上部のみを改質する。
【0005】
特許文献3には、紫外線照射を行うことによって、多孔質の配線層絶縁膜の表層部を緻密化することが記載されている。また、特許文献3の技術では、配線層絶縁膜をその表裏に亘って改質するのではなく、配線層絶縁膜の表層部のみを改質する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−214403号公報
【特許文献2】特開2006−319116号公報
【特許文献3】特開2006−190872号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Proceedings of the 2003 IITC(International Interconnect Technology Conference) June2−4、2003 2.5 p.15−17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、配線層絶縁膜と層間絶縁膜とが同じ材料の膜であると、層間絶縁膜の膜強度が不足し、層間絶縁膜にクラックが生じたり、層間絶縁膜の膜剥がれが生じたりする可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の配線層絶縁膜と、前記第1の配線層絶縁膜に埋め込み形成されている複数の第1の銅配線と、前記第1の銅配線上及び前記第1の配線層絶縁膜上に形成されている層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜上に形成されている第2の配線層絶縁膜と、前記第2の配線層絶縁膜に埋め込み形成されている複数の第2の銅配線と、を有し、前記第1の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成されている第1の低誘電率膜を含み、前記第2の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成されている第2の低誘電率膜を含み、前記層間絶縁膜は、前記第1及び第2の配線層絶縁膜よりも高強度であることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、層間絶縁膜が配線層絶縁膜の低誘電率膜よりも高強度であるので、層間絶縁膜の膜強度を十分に確保することができる。よって、層間絶縁膜へのクラックの発生や、層間絶縁膜の膜剥がれが好適に抑制された半導体装置を提供することができる。
【0011】
また、本発明は、第1の配線層絶縁膜を形成する工程と、前記第1の配線層絶縁膜に複数の第1の銅配線を埋め込み形成する工程と、前記第1の銅配線上及び前記第1の配線層絶縁膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜上に第2の配線層絶縁膜を形成する工程と、前記第2の配線層絶縁膜に複数の第2の銅配線を埋め込み形成する工程と、をこの順に行い、前記第1の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成される第1の低誘電率膜を含み、前記第2の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成される第2の低誘電率膜を含み、前記層間絶縁膜を形成する前記工程では、前記層間絶縁膜を前記第1及び第2の低誘電率膜よりも高強度に形成することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、層間絶縁膜の膜強度を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための一連の工程図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための一連の工程図である。
【図4】配線層絶縁膜を構成する材料と層間絶縁膜(ビア層間絶縁膜)を構成する材料との好ましい組み合わせの例を示す図である。
【図5】第1の実施形態による効果を説明するための図である。
【図6】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法により製造される半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0015】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る半導体装置の要部の構成を示す断面図である。図2及び図3は第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための一連の工程図であり、それぞれ半導体装置の要部の切断端面を示す。図4は配線層絶縁膜を構成する材料と層間絶縁膜(ビア層間絶縁膜)を構成する材料との好ましい組み合わせの例を示す図である。図5は第1の実施形態による効果を説明するための図である。
【0016】
本実施形態に係る半導体装置は、第1の配線層絶縁膜(例えば、第1の低誘電率膜4及び第1のキャップ絶縁膜5を含む)と、第1の配線層絶縁膜に埋め込み形成されている複数の第1の銅配線8と、第1の銅配線8上及び第1の配線層絶縁膜上に形成されている層間絶縁膜(例えば、第2の低誘電率膜10)と、層間絶縁膜上に形成されている第2の配線層絶縁膜(例えば、第3の低誘電率膜11及び第2のキャップ絶縁膜12を含む)と、第2の配線層絶縁膜に埋め込み形成されている複数の第2の銅配線16と、を有している。第1の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成されている第1の低誘電率膜(例えば、第1の低誘電率膜4)を含み、第2の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成されている第2の低誘電率膜(例えば、第3の低誘電率膜11)を含む。層間絶縁膜は、第1及び第2の配線層絶縁膜よりも高強度である。
本実施形態に係る半導体装置の製造方法では、第1の配線層絶縁膜(例えば、第1の低誘電率膜4及び第1のキャップ絶縁膜5)を形成する工程と、第1の配線層絶縁膜に複数の第1の銅配線8を埋め込み形成する工程と、第1の銅配線8上及び第1の配線層絶縁膜上に層間絶縁膜(例えば、第2の低誘電率膜10)を形成する工程と、層間絶縁膜上に第2の配線層絶縁膜(例えば、第3の低誘電率膜11及び第2のキャップ絶縁膜12)を形成する工程と、第2の配線層絶縁膜に複数の第2の銅配線16を埋め込み形成する工程と、をこの順に行う。第1の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成される第1の低誘電率膜(例えば、第1の低誘電率膜4)を含む。第2の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成される第2の低誘電率膜(例えば、第3の低誘電率膜11)を含む。層間絶縁膜を形成する工程では、層間絶縁膜を第1及び第2の低誘電率膜よりも高強度に形成する。
以下、詳細に説明する。
【0017】
先ず、第1の実施形態に係る半導体装置の構成を説明する。
【0018】
図1に示すように、第1の実施形態に係る半導体装置は、シリコンにより構成された半導体基板1を有し、この半導体基板1には、図示は省略するがトランジスタ等の能動素子と、容量、抵抗などの受動素子と、が形成されている。これら素子等の上には、第1の層間絶縁膜2が形成されている。この第1の層間絶縁膜2上には、溝エッチング停止層3、第1の低誘電率膜4及び第1のキャップ絶縁膜5がこの順に積層形成されている。
【0019】
溝エッチング停止層3は、例えば、SiC、SiCN、或いは、それらの積層構造により構成されている。溝エッチング停止層3の膜厚は、例えば、20nm乃至70nmとなっている。
【0020】
第1の低誘電率膜4は、例えば、紫外線照射を伴う焼成工程によって焼成されたものである。第1の低誘電率膜4は、例えば、空孔を有するSiにより構成されている。ここで、w、x、y、zはそれぞれ正の値である。第1の低誘電率膜4の膜厚は、例えば、第1の低誘電率膜4がローカルレイヤー又はインターミディエイトレイヤー(中間層)である場合には、例えば、30nm以上160nm以下にすることができ、第1の低誘電率膜4がセミグローバルレイヤー又はグローバルレイヤーである場合には、例えば、50nm以上800nm以下にすることができる。
【0021】
第1のキャップ絶縁膜5は、例えば、カーボンがドープされたシリコン酸化膜(SiOC)膜により構成されている。なお、第1のキャップ絶縁膜5の膜厚は、例えば、第1の低誘電率膜4がローカルレイヤー又はインターミディエイトレイヤー(中間層)である場合には、例えば、10nm以上50nm以下にし、第1の低誘電率膜4がセミグローバルレイヤー又はグローバルレイヤーである場合には、例えば、40nm以上80nm以下とすることができる。
【0022】
第1の配線形成用溝6は、第1のキャップ絶縁膜5及び第1の低誘電率膜4を貫通して第1の層間絶縁膜2に達する深さに形成されている。第1の配線形成用溝6には、第1のバリアメタル7をライナーとして第1の銅配線8が形成されている。すなわち、第1の低誘電率膜4及び第1のキャップ絶縁膜5により構成される第1の配線層絶縁膜に、複数の第1の銅配線8が埋め込み形成されている。
【0023】
第1の銅配線8の直上の層には、ビアエッチング停止層9が形成されている。ビアエッチング停止層9は、例えば、SiCNを含む。
【0024】
ビアエッチング停止層9の上には、第2の低誘電率膜10が形成されている。すなわち、層間絶縁膜としての第2の低誘電率膜10が、第1の銅配線8上及び第1のキャップ絶縁膜5上に形成されている。この第2の低誘電率膜10には、例えば、紫外線照射を伴わない、加熱のみによる焼成が施されている。
【0025】
第2の低誘電率膜10の上には、第3の低誘電率膜11が形成されている。この第3の低誘電率膜11には、例えば、紫外線照射を伴う焼成が施されている。第3の低誘電率膜11の膜厚についても、例えば、第3の低誘電率膜11がローカルレイヤー又はインターミディエイトレイヤー(中間層)である場合には、例えば、30nm以上160nm以下にすることができ、第3の低誘電率膜11がセミグローバルレイヤー又はグローバルレイヤーである場合には、例えば、50nm以上800nm以下にすることができる。
【0026】
第3の低誘電率膜11の上には、該第3の低誘電率膜11を保護するための第2のキャップ絶縁膜12が形成されている。第2のキャップ絶縁膜12の膜厚についても、例えば、第3の低誘電率膜11がローカルレイヤー又はインターミディエイトレイヤー(中間層)である場合には、例えば、10nm以上50nm以下にし、第3の低誘電率膜11がセミグローバルレイヤー又はグローバルレイヤーである場合には、例えば、40nm以上80nm以下とすることができる。
【0027】
このように、層間絶縁膜としての第2の低誘電率膜10上には、第2の配線層絶縁膜としての第3の低誘電率膜11及び第2のキャップ絶縁膜12が形成されている。
【0028】
第2の低誘電率膜10には、ビアホール13が選択的に形成されている。第3の低誘電率膜11には、第2の配線形成用溝14が形成されている。ビアホール13及び第2の配線形成用溝14の内部には、第2のバリアメタル15をライナーとして第2の銅配線16が形成されている。すなわち、第2の配線層絶縁膜に、複数の第2の銅配線16が埋め込み形成されている。
【0029】
ここで、第1の配線層絶縁膜を構成する第1の低誘電率膜4は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成されている。同様に、第2の配線層絶縁膜を構成する第3の低誘電率膜11(第2の低誘電率膜)は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成されている。
【0030】
また、層間絶縁膜としての第2の低誘電率膜10は、第1及び第2の配線層絶縁膜よりも高強度である。
【0031】
次に、配線層絶縁膜を構成する第1及び第3の低誘電率膜4、11の好適な材料と、ビア層間絶縁膜としての第2の低誘電率膜10の好適な材料の例について説明する。
【0032】
第1の低誘電率膜4及び第3の低誘電率膜11は、例えば、ポーラスSiO、ポーラスSiOC、ポーラスSiOCH、ラダーオキサイド、及びHSQ(Hydrogen Silsesquioxane)のうちの少なくとも何れか1つを含むものとして構成されていることが好ましい。なお、第1の低誘電率膜4の材料と第3の低誘電率膜11の材料とは互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。
【0033】
第2の低誘電率膜10は、例えば、ポーラスSiOC、ポーラスSiOCH、デンスSiOC(空孔が無いSiOC)、デンスSiO(空孔が無いSiO)、及びポーラスSiOのうちの少なくとも何れか1つを含むものとして構成されていることが好ましい。
【0034】
ここで、ポーラスSiOC、デンスSiOCは、それぞれポーラスSi、デンスSiと表すことができる。x、y、zはそれぞれ正の値である。同様に、ポーラスSiOCHは、ポーラスSiと表すことができる。w、x、y、zはそれぞれ正の値である。
【0035】
ただし、第1及び第3の低誘電率膜4、11と、第2の低誘電率膜10と、の材料の組み合わせは、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも第2の低誘電率膜10の方が高強度となるように選択する。なお、第2の低誘電率膜10の弾性率は、例えば、4GPa以上であることが好ましい。
【0036】
また、第2の低誘電率膜10は、第1の低誘電率膜4及び第3の低誘電率膜11よりも耐薬品性に優れた材料により構成することが好ましい。更に、第2の低誘電率膜10は、第1の低誘電率膜4及び第3の低誘電率膜11よりも耐熱性に優れた材料により構成することが好ましい。
【0037】
また、第1の低誘電率膜4及び第3の低誘電率膜11と、第2の低誘電率膜10と、の双方がポーラスな低誘電率膜である場合、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも第2の低誘電率膜10の方が空孔占有率が小さくなるように、第1及び第3の低誘電率膜4、11と、第2の低誘電率膜10と、の材料の組み合わせを選択することが好ましい。これにより、第1の低誘電率膜4及び第3の低誘電率膜11よりも第2の低誘電率膜10の方が高強度となるようにできる。
【0038】
なお、第1及び第3の低誘電率膜4、11と、第2の低誘電率膜10とを、互いに同一の材料により構成する場合にも、組成比を適宜に設定することにより、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも第2の低誘電率膜10の方が高強度となるようにすることができる。
【0039】
すなわち、例えば、第1及び第3の低誘電率膜4、11と、第2の低誘電率膜10とを、それぞれポーラスSiを含むものとして構成する場合には、x、y、zの値を適宜に設定することにより、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも第2の低誘電率膜10の方が高強度となるようにすることができる。同様に、第1及び第3の低誘電率膜4、11と、第2の低誘電率膜10とを、それぞれポーラスSiを含むものとして構成する場合には、w、x、y、zの値を適宜に設定することにより、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも第2の低誘電率膜10の方が高強度となるようにすることができる。
【0040】
また、成膜方法、或いは成膜後に行う薬液処理で用いる薬液の種類を異ならせることによっても、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも第2の低誘電率膜10の方が高強度となるようにすることができる。
【0041】
例えば、第1及び第3の低誘電率膜4、11と、第2の低誘電率膜10とを、それぞれ同じ材料により構成する場合(例えば、ポーラスSiO又はポーラスSiOCを含むものとして構成する場合)において、それらの膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)により成膜する場合を説明する。この場合、第1及び第3の低誘電率膜4、11の方が、第2の低誘電率膜10よりも、テンプレートとなる物質の分子量が大きくなるようにして、CVDを行う。これにより、第1及び第3の低誘電率膜4、11の方が、第2の低誘電率膜10よりも、空孔の径が大きくなり、第2の低誘電率膜10の方が、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも、高強度になる。
【0042】
次に、第1及び第3の低誘電率膜4、11と、第2の低誘電率膜10とを、それぞれ同じ材料により構成する場合(例えば、ポーラスSiO又はポーラスSiOCを含むものとして構成する場合)において、それらの膜をスピン塗布法で成膜する場合を説明する。この場合は、成膜後の膜にメチル基を付着させるためのシリル化処理としての薬液処理に用いられる薬液に含有されるミセルの分子量を、第1及び第3の低誘電率膜4、11の方が、第2の低誘電率膜10よりも大きくなるようにする。これにより、第1及び第3の低誘電率膜4、11の方が、第2の低誘電率膜10よりも、空孔の径が大きくなり、第2の低誘電率膜10の方が、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも、高強度になる。
【0043】
また、第1及び第3の低誘電率膜4、11と、第2の低誘電率膜10とを、それぞれ同じ材料により構成する場合に、紫外線照射の有無により、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも第2の低誘電率膜10の空孔占有率を小さくすることができる。すなわち、第1及び第3の低誘電率膜4、11に対しては紫外線照射を伴う焼成を行う一方で、第2の低誘電率膜10に対しては熱のみによる焼成を行うことによって、第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも第2の低誘電率膜10の空孔占有率を小さくすることができる。
【0044】
次に、図4を参照して、第1及び第3の低誘電率膜4、11と、第2の低誘電率膜10と、の材料の具体的な組み合わせの例を説明する。
【0045】
例えば、配線層絶縁膜としての第1及び第3の低誘電率膜4、11をポーラスSiOを含むものとして構成する場合は、層間絶縁膜(ビア層間絶縁膜)としての第2の低誘電率膜10は、ポーラスSiOC、デンスSiOC、デンスSiOのうちの何れかを含むものとして構成することが好ましい。このような組み合わせとすることにより、第1の低誘電率膜4及び第3の低誘電率膜11よりも第2の低誘電率膜10を高強度にすることができる。
【0046】
なお、第1及び第3の低誘電率膜4、11をポーラスSiOを含むものとして構成する場合は、シリル化処理を行うことによって、ポーラスSiO膜にメチル基を付着させる。このシリル化処理によって、空孔の内周と、ポーラスSiO膜の表面と、のうちの少なくとも何れか一方にメチル基を付着させる。
【0047】
また、第1及び第3の低誘電率膜4、11をポーラスSiOを含むものとして構成し、且つ、第2の低誘電率膜10もポーラスSiOを含むものとして構成しても良い。ただし、この場合は、上述したように、ポーラスSiOの成膜に用いる薬液又は成膜方法を第1及び第3の低誘電率膜4、11と第2の低誘電率膜10とで互いに異ならせることにより、第2の低誘電率膜10の方を高強度にさせる。構造の具体的な相違点としては、第1及び第3の低誘電率膜4、11の方が空孔の径が相対的に大きく、第2低誘電率膜10の方が空孔の径が相対的に小さいことが挙げられる。
【0048】
また、例えば、第1及び第3の低誘電率膜4、11をポーラスSiOCを含むものとして構成する場合は、第2の低誘電率膜10は、デンスSiOC又はデンスSiOを含むものとして構成することが好ましい。このような組み合わせとすることにより、第1の低誘電率膜4及び第3の低誘電率膜11よりも第2の低誘電率膜10を高強度にすることができる。
【0049】
また、第1及び第3の低誘電率膜4、11をポーラスSiOCを含むものとして構成し、且つ、第2の低誘電率膜10もポーラスSiOCを含むものとして構成しても良い。ただし、この場合は、上述したように、ポーラスSiOCの成膜に用いる薬液又は成膜方法を第1及び第3の低誘電率膜4、11と第2の低誘電率膜10とで互いに異ならせることにより、第2の低誘電率膜10の方を高強度にさせる。構造の具体的な相違点としては、第1及び第3の低誘電率膜4、11の方が空孔の径が相対的に大きく、第2低誘電率膜10の方が空孔の径が相対的に小さいことが挙げられる。
【0050】
また、第1及び第3の低誘電率膜4、11をラダーオキサイド又はHSQを含むものとして構成する場合は、第2の低誘電率膜10は、デンスSiOを含むものとして構成することが好ましい。このような組み合わせとすることにより、第1の低誘電率膜4及び第3の低誘電率膜11よりも第2の低誘電率膜10を高強度にすることができる。
【0051】
なお、ポーラスSiOCH(ポーラスSi)或いはポーラスSiOC(ポーラスSi)の成膜は、例えば、シロキサンを含むオリゴマー或いはメチルシランを含む原料ガスを用いるプラズマCVD法により行うことができる。シロキサンを含むオリゴマーの例としては、例えば、TMCTS(1,3,5,7−Tetra−Methyl−Cyclo−Tetra−Siloxane)が挙げられ、メチルシランの例としては、例えば、3MS(Tri−Methyl−Silane)、4MS(Tetra−Methyl−Silane)が挙げられる。
【0052】
また、ポーラスSiOの成膜は、例えば、シリカオリゴマーを含む薬液を回転塗布法で成膜した後、350℃以上450℃以下で焼成することにより行うことができる。更に、焼成後のポーラスSiOに対し、TMCTS(1,3,5,7−Tetra−Methyl−Cyclo−Tetra−Siloxane)或いはHMDS(Hexa−Methyl−Disilazane)を用いたシリル化処理を行っても良い。
【0053】
ここで、ビア層間絶縁膜(第2の低誘電率膜10)として水分を多く含有する膜を使用すると、その水分が配線層絶縁膜へと拡散し、多孔質膜である配線層絶縁膜が劣化する結果、配線間リーク電流が大きくなってしまう可能性がある。配線の間隔が狭い(狭ピッチである)ほど、このリーク電流の増加は顕著となってしまう。
【0054】
そこで、ビア層間絶縁膜としては、含有する水分量がなるべく少ないものを選択することが好ましい。具体的には、例えば、ビア層間絶縁膜(第2の低誘電率膜10)としては、SiO又は空孔径が2nm未満のポーラスSiOを用いることが好ましい。また、ビア層間絶縁膜として、ポーラスSiOCを用いても良いが、この場合には、成膜原料として、DMDOSH(dimethyldioxysilylcyclohexane)或いはDMDMOS(dimethyldimethoxysilane)のように膜中の水分量が多くなる原料を用いるよりも、DEMS(diethoxymethylsilane)又はDMOMS(dimethoxymethylsilane)のように、膜中の水分量が少なくなるものを用いると良い。或いは、ビア層間絶縁膜は、デンス(dense)SiOC(空孔が無いSiOC)又はデンス(dense)SiOCH(空孔が無いSiOCH)により構成しても良い。このように、ビア層間絶縁膜として、膜中の水分量が少ないこれらの膜を使用することにより、配線間リーク電流を低減できるとともに、膜強度を向上させることができる。
【0055】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する。
【0056】
先ず、図2(a)に示すように、シリコンにより構成された半導体基板1上に、何れも図示は省略するが、トランジスタ等の能動素子と、容量、抵抗等の受動素子と、を形成する。
【0057】
次に、これら素子と後述する第1の銅配線8(図2(c))とをコンタクト導通部(図示略)以外の部分においては相互に絶縁させるための第1の層間絶縁膜2を形成する。この第1の層間絶縁膜2は、例えば、プラズマCVD法によって、PSG(Phospho−Silicate−Glass)を含む材料により、200nm乃至800nmの膜厚に形成する。
【0058】
次に、第1の層間絶縁膜2上に、溝エッチング停止層3を形成する。この溝エッチング停止層3は、後で形成される第1の配線形成用溝6(図2(c))の深さバラツキを一定の範囲以下に抑制するためのものである。この溝エッチング停止層3は、例えば、SiC、SiCN、又はこれらの積層構造により形成する。この溝エッチング停止層3は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、30nm程度の膜厚に形成する。
【0059】
次に、溝エッチング停止層3上に、配線層絶縁膜としての第1の低誘電率膜(ポーラスLow−k膜)4を形成する。この第1の低誘電率膜4は、例えば、Siにより構成することができる。ここで、w、x、y、zはそれぞれ正の値である。第1の低誘電率膜4は、例えば、CVD法によって形成する。なお、第1の低誘電率膜4は、CVD法ではなく塗布法により形成することもできる。第1の低誘電率膜4の膜厚は、例えば、第1の低誘電率膜4がローカルレイヤー又はインターミディエイトレイヤー(中間層)である場合には、例えば、30nm以上160nm以下にすることができ、第1の低誘電率膜4がセミグローバルレイヤー又はグローバルレイヤーである場合には、例えば、50nm以上800nm以下にすることができる。
【0060】
次に、紫外線照射処理を行うことにより、Si−O−Siにより構成される第1の低誘電率膜4の骨格部分を強固にするとともに、C−Hn(nは1、2又は3)により構成されるポロジェンの第1の低誘電率膜4からの脱離(つまり、第1の低誘電率膜4中の空孔の形成)を促進する。これにより、第1の低誘電率膜4をその表裏に亘って効果的に理想的構造に近づけることができる。ここでいう理想的構造とは、Si−O−Siの骨格が形成されることにより膜強度が向上されており、且つ、空孔が所望の大きさ分布に形成された構造を意味する。この紫外線照射処理では、例えば、200nm乃至500nmの波長の紫外線17a(図2(a))を、半導体基板1の温度が350℃乃至420℃となる条件下で、第1の低誘電率膜4に照射する。すなわち、紫外線照射を伴う焼成処理を行う。この焼成処理により、第1の低誘電率膜4は表裏に亘ってその膜強度が向上されるとともに、第1の低誘電率膜4の表裏に亘って空孔が形成される。つまり、第1の低誘電率膜4は表裏に亘って改質される。
【0061】
次に、図2(b)に示すように、第1の低誘電率膜4上に第1のキャップ絶縁膜5を形成する。この第1のキャップ絶縁膜5は、例えば、カーボンがドープされたシリコン酸化膜(SiOC)によって構成することができる。第1のキャップ絶縁膜5は、例えば、CVD法によって成膜する。なお、第1のキャップ絶縁膜5の膜厚は、例えば、第1の低誘電率膜4がローカルレイヤー又はインターミディエイトレイヤー(中間層)である場合には、例えば、10nm以上50nm以下にし、第1の低誘電率膜4がセミグローバルレイヤー又はグローバルレイヤーである場合には、例えば、40nm以上80nm以下とすることができる。
【0062】
次に、図2(c)に示すように、所望のパターンの第1の配線形成用溝6を形成する。この第1の配線形成用溝6は、例えば、第1のキャップ絶縁膜5、第1の低誘電率膜4及び溝エッチング停止層3を貫通し、第1の層間絶縁膜2に達する深さに形成する。この第1の配線形成用溝6は、例えば、フォトリソグラフィー工程、反応性ドライエッチング工程及びアッシング工程をこの順に行うことによって形成することができる。次に、第1の配線形成用溝6の内部を第1のバリアメタル7及び第1の銅配線8で埋設する。ここで、第1のバリアメタル7としては、例えばTaを含む高融点金属を用いる。次に、CMP(Chemical Mechanical Polish)により、余剰の第1の銅配線8及び第1のバリアメタル7を除去する。すなわち、第1の銅配線8の構成材料のうち該第1の銅配線8の形成領域(第1の配線形成用溝6)からはみ出た余剰分をCMPにより除去する。
【0063】
次に、図2(d)に示すように、ビアエッチング停止層9を形成する。このビアエッチング停止層9は、後で形成されるビアホール13(図2(e))の深さバラツキを一定の範囲以下に抑制するためのものである。このビアエッチング停止層9は、例えば、SiCNを含み、膜厚30nm程度の膜厚に形成する。
【0064】
次に、ビアエッチング停止層9上に、ビア層間絶縁膜としての第2の低誘電率膜10を成膜する。次に、300℃乃至420℃の熱処理を行うことにより、第2の低誘電率膜10を焼成する。この熱処理は、不活性ガス雰囲気(希ガス雰囲気)中、又は窒素雰囲気中で行うことが好ましい。この第2の低誘電率膜10の焼成の際には、加熱のみにより行い、紫外線照射を行わない。
【0065】
次に、第2の低誘電率膜10上に、配線層絶縁膜としての第3の低誘電率膜(ポーラスLow−k膜)11を形成する。この第3の低誘電率膜11は、例えば、Siにより構成することができる。ここで、w、x、y、zはそれぞれ正の値である。第3の低誘電率膜11は、例えば、CVD法によって形成する。なお、第3の低誘電率膜11は、CVD法ではなく塗布法により形成することもできる。第3の低誘電率膜11の膜厚についても、例えば、第3の低誘電率膜11がローカルレイヤー又はインターミディエイトレイヤー(中間層)である場合には、例えば、30nm以上160nm以下にすることができ、第3の低誘電率膜11がセミグローバルレイヤー又はグローバルレイヤーである場合には、例えば、50nm以上800nm以下にすることができる。
【0066】
次に、紫外線照射処理を行うことにより、Si−O−Siにより構成される第3の低誘電率膜11の骨格部分を強固にするとともに、C−H(nは1、2又は3)により構成されるポロジェンの第3の低誘電率膜11からの脱離(つまり、第3の低誘電率膜11中の空孔の形成)を促進する。この紫外線照射処理では、例えば、200nm乃至500nmの波長の紫外線17b(図2(d))を、半導体基板1の温度が350℃乃至420℃となる条件下で、第3の低誘電率膜11に照射する。すなわち、紫外線照射を伴う焼成処理を行う。この焼成処理により、第3の低誘電率膜11は表裏に亘ってその膜強度が向上されるとともに、第3の低誘電率膜11の表裏に亘って空孔が形成される。つまり、第3の低誘電率膜11は表裏に亘って改質される。
【0067】
次に、第3の低誘電率膜11上に第2のキャップ絶縁膜12を形成する。この第2のキャップ絶縁膜12は、第1のキャップ絶縁膜5と同様の材質により、第1のキャップ絶縁膜5と同様にCVD法によって形成することができる。第2のキャップ絶縁膜12の膜厚についても、例えば、第3の低誘電率膜11がローカルレイヤー又はインターミディエイトレイヤー(中間層)である場合には、例えば、10nm以上50nm以下にし、第3の低誘電率膜11がセミグローバルレイヤー又はグローバルレイヤーである場合には、例えば、40nm以上80nm以下とすることができる。
【0068】
次に、図2(e)に示すように、フォトリソグラフィー工程及び反応性イオンエッチングによりビアホール13を形成する。このとき、ビアホール13の底が、ビアエッチング停止層9に達し、且つ、第1の銅配線8までは達しないようにする。なお、反応性イオンエッチングの原料ガスとしては、例えば、CFを含む混合ガスを用いることができる。この混合ガスを、例えば、0.1乃至10Torrの圧力条件下で、13.56MHzの高周波電力によりプラズマ化して、エッチングを行う。
【0069】
次に、図3(a)に示すように、ビアホール13内に、ビアエッチング停止層9の表面に接する有機膜18を埋設形成する。この有機膜18は、例えば、回転塗布法及び熱処理をこの順に行うことによって形成することができる。
【0070】
次に、第2の配線溝形成用フォトレジスト19を有機膜18上に成膜し、この第2の配線溝形成用フォトレジスト19を所望のパターン形状に加工する。なお、第2の配線溝形成用フォトレジスト19は、単層構造と積層構造の何れでも良い。積層構造の場合に何層までを露光及び現像により選択的に除去するかについては説明を省略する。
【0071】
次に、図3(b)に示すように、第2の配線溝形成用フォトレジスト19をマスクとして、第2の配線形成用溝14を反応性イオンエッチングにより開口する。このとき、ビアホール13の底部に有機膜18の一部分が残るようにし、反応性イオンエッチ時にビアホール13の底にCu(第1の銅配線8の表面)が露出しないようにする。次に、有機膜18を除去する。
【0072】
次に、図3(c)に示すように、ビアホール13及び第2の配線形成用溝14に、第2のバリアメタル15をスパッタ法により形成し、Cuめっきによりビアホール13及び第2の配線形成用溝14の内部にCuを含むメタル材料を埋設する。次に、余剰のCu及びバリアメタルをCMP工程により除去する。すなわち、第2の銅配線16の構成材料のうち該第2の銅配線16の形成領域(第2の配線形成用溝14)からはみ出た余剰分をCMPにより除去する。こうして、第2の銅配線16を形成する。
【0073】
なお、本実施形態では、配線層が、第1の銅配線8を含む配線層と、第2の銅配線16を含む配線層との2層である例を説明したが、配線層は3層以上であっても良い。3層以上の銅配線層を形成する場合には、配線層が1層増える毎に、図2(d)、(e)、図3(a)、(b)、(c)までの一連の工程を追加すれば良い。なお、最上層の配線層を形成した後は、組立て時のボンディング用のパッド(図示略)を最上層の銅配線上に形成する工程を行うが、この工程については、詳細な説明を省略する。
【0074】
また、上述した製造方法では、第1及び第3の低誘電率膜4、11の焼成時に紫外線照射を行う例を説明したが、第1及び第3の低誘電率膜4、11をラダーオキサイド又はHSQを含むものとして構成する場合には、その焼成時に紫外線照射を行わないことが好ましい。
【0075】
以上のような第1の実施形態によれば、層間絶縁膜としての第2の低誘電率膜10が配線層絶縁膜を構成する第1及び第3の低誘電率膜4、11よりも高強度であるので、層間絶縁膜の膜強度を十分に確保することができる。よって、層間絶縁膜へのクラックの発生や、層間絶縁膜の膜剥がれが好適に抑制された半導体装置を提供することができる。
【0076】
ところで、配線層絶縁膜が、低誘電率膜と、その低誘電率膜上に形成されたキャップ絶縁膜と、を含んで構成されている構造の半導体装置の場合には、そのキャップ絶縁膜が紫外線照射によるダメージを受けて、以下のようなデメリットを生じることがある。キャップ絶縁膜は、Cuの化学的機械的研磨(CMP(Chemical Mechanical Polish))工程における保護層としての機能を有するものであり、例えば、SiOC膜により構成される。キャップ絶縁膜を有する半導体装置を製造するに際し、キャップ絶縁膜に紫外線を照射するプロセスを行うと、キャップ絶縁膜内、或いはキャップ絶縁膜の上下界面に欠陥が発生することがある。その欠陥は、リーク電流のパスとなるため、その欠陥が生じると、配線間リーク電流増加、配線層絶縁膜の破壊電界強度の低下(絶縁耐圧の低下)、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)試験での寿命劣化等の問題が発生しやすくなってしまう。この理由は、例えば、紫外線照射によりキャップ絶縁膜内の結合が切れたり、キャップ絶縁膜と上下の配線層絶縁膜及び層間絶縁膜との間の結合が切れたりすることにより、隣り合う配線間に電位差を与えたときにリーク電流が流れるからである。昨今、低誘電率膜に対して焼成時に紫外線照射を行うことが多くなっている。配線層絶縁膜の形成時だけでなく、その上層の層間絶縁膜(ビア層間絶縁膜)の形成時にも紫外線照射を行うと、この紫外線が、配線層絶縁膜の上面に位置するキャップ絶縁膜にまで到達して該キャップ絶縁膜に影響を与え、リーク電流が流れたり、比較的低い電圧で絶縁破壊に至ることがある。
【0077】
層間絶縁膜に対し、紫外線照射を伴わない熱による焼成を行うとすれば、層間絶縁膜の構成材料を適切に選択しないと、層間絶縁膜の膜強度が十分に得られず、CMP工程等において層間絶縁膜にクラックが生じたり、層間絶縁膜の膜剥がれが生じたりする可能性がある。
【0078】
これに対し、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、第2の低誘電率膜10を形成する工程は、第2の低誘電率膜10に対し、熱のみによる焼成を行う工程を含み、第3の低誘電率膜11を形成する工程は、第3の低誘電率膜11に対し、紫外線照射を伴う焼成を行うことにより、第3の低誘電率膜を表裏に亘って改質する工程を含むので、第3の低誘電率膜11を紫外線照射により表裏に亘って改質することができるとともに、第2の低誘電率膜10の焼成でも紫外線照射を伴う焼成を行う場合と比べて、第1のキャップ絶縁膜5に対する紫外線のダメージを低減できる。これにより、第1のキャップ絶縁膜5及びその上下界面における欠陥の発生を抑制できる。よって、その欠陥に起因する第1の銅配線8間のリーク電流の抑制、第1の低誘電率膜4の破壊電界強度の低下の抑制、及び、TDDB試験での寿命劣化の抑制が可能となる。
【0079】
しかも、第2の低誘電率膜10は、ポーラスSiOC、ポーラスSiOCH、デンスSiOC、デンスSiO、及びポーラスSiOのうちの少なくとも何れか1つにより形成するので、第2の低誘電率膜10に対し、熱のみによる焼成を行うだけで、十分な膜強度を有する第2の低誘電率膜10を形成することができる。よって、CMP工程等において第2の低誘電率膜10にクラックが生じたり、第2の低誘電率膜10の膜剥がれが生じたりする可能性を低減することができる。
【0080】
このように、本実施形態によれば、配線層絶縁膜(第2の配線層絶縁膜)の低誘電率膜(第2の低誘電率膜(第3の低誘電率膜11))を紫外線照射により表裏に亘って改質し、且つ、その下層の配線層絶縁膜(第1の配線層絶縁膜)のキャップ絶縁膜(第1のキャップ絶縁膜5)が紫外線照射によってダメージを被ってしまうことを抑制するとともに、そのキャップ絶縁膜(第1のキャップ絶縁膜5)の上層の層間絶縁膜(第2の低誘電率膜10)の膜強度を十分に確保することができる。
【0081】
ここで、第1のキャップ絶縁膜5に対する紫外線のダメージを低減できるメカニズムをより詳しく説明すると、紫外線照射により焼成された第1の低誘電率膜4が、該紫外線照射の次に紫外線を浴びるのは、加熱のみによって焼成された第2の低誘電率膜10の成膜後、第3の低誘電率膜11を成膜した後である。従って、この際の紫外線は、第2の低誘電率膜10と第3の低誘電率膜11との2層を通して照射される。このため、この紫外線照射による第1の低誘電率膜4とその上の第1のキャップ絶縁膜5との結合状態への影響を小さく抑えることができる。よって、紫外線照射により第1のキャップ絶縁膜5であるSiOC内の結合が切れたり、SiOCと上下の絶縁膜との間の結合が切れたりすることによる、隣接配線間のリーク電流増加を防ぎ、また、TDDB寿命の劣化も防ぐことができる。
【0082】
図5は、配線への印加電圧(横軸)と隣り合う配線間のリーク電流(縦軸)との関係を示す図であり、このうちL1は本実施形態に係る半導体装置の製造方法により製造された半導体装置のデータである。また、L2は配線層が一層である半導体装置のデータである。また、L3は第2の低誘電率膜10に対しても紫外線照射を伴う焼成を行った点でのみ、本実施形態に係る半導体装置の製造方法とは異なる製造方法によって製造された半導体装置のデータである。
【0083】
L3とL2との比較から分かるように、配線層絶縁膜としての第1の低誘電率膜4と、ビア層間絶縁膜としての第2の低誘電率膜10と、の何れの焼成にも紫外線照射を用いた場合(L3)には、第1銅配線8の配線間リーク電流が増加し、絶縁耐圧も減少する。
【0084】
これに対し、L1とL2との比較から分かるように、ビア層間絶縁膜としての第2の低誘電率膜10の焼成には紫外線照射を用いない本実施形態の場合(L1)には、配線間リーク電流と絶縁耐圧のレベルを、配線層が一層の場合(L2)と同程度に抑制することができる。つまり、L1の場合は、L3の場合と比べて、リーク電流は低減できているとともに、絶縁耐圧は向上することができている。
【0085】
また、本実施形態のように、第1の低誘電率膜4の焼成に紫外線照射を用いる場合には、第2の低誘電率膜10の焼成にも紫外線照射を用いると、第1の低誘電率膜4が紫外線照射を受ける回数が本実施形態と比べて多くなり、該第1の低誘電率膜4自体も紫外線照射によるダメージを受けてしまう可能性がある。これに対し、本実施形態では、第2の低誘電率膜10の焼成には紫外線照射を用いないので、第2の低誘電率膜4が紫外線照射により受けるダメージを低減することができる。
【0086】
〔第2の実施形態〕
図6は第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【0087】
図6に示す半導体装置は、図1に示す半導体装置と比べて、第2の低誘電率膜10と第3の低誘電率膜11との間に、溝エッチング停止層320が介在している点でのみ相違し、その他の点では、図1に示す半導体装置と同様に構成されている。
【0088】
溝エッチング停止層320は、例えば、SiC又はSiCNを含む絶縁膜により構成されている。溝エッチング停止層320の膜厚は、例えば、10nm乃至30nmに設定されている。この溝エッチング停止層320は、後で形成される第2の配線形成用溝14(図6)の深さバラツキを一定の範囲以下に抑制するためのものである。
【0089】
また、本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、第2の低誘電率膜10の形成後(具体的には、例えば、第2の低誘電率膜10の焼成後)、該第2の低誘電率膜10上に溝エッチング停止層320を形成する点でのみ相違する。
【0090】
第2の実施形態によれば、第2の低誘電率膜10と第3の低誘電率膜11との間に溝エッチング停止層320が介在しているので、第3の低誘電率膜11の焼成時の紫外線が第1の低誘電率膜4と第1のキャップ絶縁膜5との結合状態に及ぼす影響を更に低減することができる。その結果、リーク電流増加並びにTDDB寿命劣化を更に抑制できる。
【符号の説明】
【0091】
1 半導体基板
2 第1の層間絶縁膜
3 溝エッチング停止層
4 第1の低誘電率膜
5 第1のキャップ絶縁膜
6 第1の配線形成用溝
7 第1のバリアメタル
8 第1の銅配線
9 ビアエッチング停止層
10 第2の低誘電率膜(層間絶縁膜)
11 第3の低誘電率膜(第2の低誘電率膜)
12 第2のキャップ絶縁膜
13 ビアホール
14 第2の配線形成用溝
15 第2のバリアメタル
16 第2の銅配線
17a 紫外線
17b 紫外線
18 有機膜
19 第2の配線溝形成用フォトレジスト
320 溝エッチング停止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配線層絶縁膜と、
前記第1の配線層絶縁膜に埋め込み形成されている複数の第1の銅配線と、
前記第1の銅配線上及び前記第1の配線層絶縁膜上に形成されている層間絶縁膜と、
前記層間絶縁膜上に形成されている第2の配線層絶縁膜と、
前記第2の配線層絶縁膜に埋め込み形成されている複数の第2の銅配線と、
を有し、
前記第1の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成されている第1の低誘電率膜を含み、
前記第2の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成されている第2の低誘電率膜を含み、
前記層間絶縁膜は、前記第1及び第2の配線層絶縁膜よりも高強度であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記層間絶縁膜は、ポーラスSiOC、ポーラスSiOCH、デンスSiOC、デンスSiO、及びポーラスSiOのうちの少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の低誘電率膜は、ポーラスSiO、ポーラスSiOC、ポーラスSiOCH、ラダーオキサイド、及びHSQ(Hydrogen Silsesquioxane)のうちの少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記層間絶縁膜、前記第1の低誘電率膜、及び前記第2の低誘電率膜は、それぞれポーラス膜であり、
前記層間絶縁膜は、前記第1及び第2の低誘電率膜よりも空孔占有率が小さいことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1の配線層絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の配線層絶縁膜に複数の第1の銅配線を埋め込み形成する工程と、
前記第1の銅配線上及び前記第1の配線層絶縁膜上に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に第2の配線層絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の配線層絶縁膜に複数の第2の銅配線を埋め込み形成する工程と、
をこの順に行い、
前記第1の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成される第1の低誘電率膜を含み、
前記第2の配線層絶縁膜は、比誘電率が3.0よりも小さい絶縁膜材料により構成される第2の低誘電率膜を含み、
前記層間絶縁膜を形成する前記工程では、前記層間絶縁膜を前記第1及び第2の低誘電率膜よりも高強度に形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記層間絶縁膜を、ポーラスSiOC、ポーラスSiOCH、デンスSiOC、デンスSiO、及びポーラスSiOのうちの少なくとも何れか1つを含むものとして形成することを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1及び第2の低誘電率膜を、ポーラスSiO、ポーラスSiOC、ポーラスSiOCH、ラダーオキサイド、及びHSQ(Hydrogen Silsesquioxane)のうちの少なくとも何れか1つを含むものとして形成することを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1の配線層絶縁膜は、前記第1の低誘電率膜上に形成される第1のキャップ絶縁膜を更に含み、
前記第2の配線層絶縁膜は、前記第2の低誘電率膜上に形成される第2のキャップ絶縁膜を更に含み、
前記第2の銅配線を埋め込み形成する前記工程の後で、
前記第2の銅配線の構成材料のうち該第2の銅配線の形成領域からはみ出た余剰分をCMPにより除去する工程を行い、
前記層間絶縁膜を形成する前記工程は、前記層間絶縁膜に対し、熱のみによる焼成を行う工程を含み、
前記第2の配線層絶縁膜を形成する前記工程は、前記第2の低誘電率膜に対し、紫外線照射を伴う焼成を行うことにより、該第2の低誘電率膜を表裏に亘って改質する工程を含むことを特徴とする請求項5乃至7の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記紫外線照射を伴う前記焼成において照射する紫外線の波長は200nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記層間絶縁膜、前記第1の低誘電率膜、及び前記第2の低誘電率膜は、それぞれポーラス膜であり、
前記層間絶縁膜は、前記第1及び第2の低誘電率膜よりも空孔占有率が小さいことを特徴とする請求項5乃至9の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記層間絶縁膜を形成する前記工程は、成膜原料としてDEMS(diethoxymethylsilane)又はDMOMS(dimethoxymethylsilane)を用いてポーラスSiOC膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項5乃至10の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−49217(P2011−49217A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194145(P2009−194145)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト」継続研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】