説明

半導体装置及びその評価方法

【課題】半導体装置の回路特性の微調整に必要なトリミング情報を高精度に取得できると共に、測定時間の増大を防ぐことができるようにする。
【解決手段】半導体装置は、複数の被評価素子(TEG)2と、複数の被評価素子2のそれぞれに印加される電流値又は電圧値をモニタするモニタ用素子4と、複数の被評価素子2のそれぞれの一端と接続された複数の第1の電極パッド1と、モニタ用素子4の一端と接続された第2の電極パッド3とを有している。複数の被評価素子2のそれぞれの他端は、モニタ用素子4の他端と共通に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその評価方法に関し、特に半導体装置のトリミング方法とそのための半導体装置及びその評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アナログ系回路等においては、出力電流値の高精度化を実現するために、入力電圧値又は入力電流値を精度良く制御することが必要となってきている。例えば、外部入力が精度良く入力できたとしても、アナログ素子にまで伝達するアナログ系回路を構成する半導体素子、例えば抵抗器等の抵抗値が基準値からずれていると、アナログ素子に対して基準値からずれた値が入力され、その結果、出力値においても期待値からずれた値が出力されてしまう。
【0003】
これらの問題を解決するために、アナログ系回路等においては、トリミング技術を導入している。トリミングとは、所望の電圧値又は所望の電流値をアナログ回路に入力するために、半導体素子の形成後に回路の電気的特性を調整する手法である。
【0004】
トリミング手法としては、次に挙げる2つの手法がある。
1)ツェナーザップトリミング法は、2種類のツェナーダイオードが形成されており、所定の電流以上の電流を流すことによって、オン(降伏電流有)/オフ(降伏電流無)を制御する。これらを制御して合成抵抗を変化させることにより、回路の電気的特性を微調整する手法である。
2) レーザトリミング法は、レーザ光により抵抗器の形状等を加工してその抵抗値を変化させることにより、回路の電気的特性を微調整する手法である。
【0005】
ところで、回路の電気的特性を微調整する際のトリミングに必要な情報は、トリミングを行う前に、テスタを用いてアナログ系回路を実際に検査して収集する。続いて、先に取得した検査結果をもとにトリミングを行い、さらにトリミングの前に実施した検査と同様の検査をテスタで実行して回路の電気的特性を取得する(例えば、特許文献1を参照。)。
【0006】
なお、ウェハには、拡散工程の形成状態(出来栄え)を電気的特性としてモニタするために、予めトランジスタ、容量素子又は抵抗器等の単体素子の集合体(TEG:Test Element Group)が形成されている。
【0007】
そこで、図6に示すように、ウェハの完成後にこれらのTEGを測定してプロセスの出来栄えを確認する。続いて、プロセスの出来栄えで合格と判断されたウェハについては、先に述べたように各チップに対して、トリミング回路の微調整を行うためのトリミング情報を得る目的でテスタを用いた検査を行う。続いて、テスタによる検査結果をもとに算出した値をトリミング情報として各チップに形成されているトリミング回路に対して微調整を行う。その後、再度テスタにより、トリミング前と同様の検査を行って、アナログ回路が所望の機能を果たしているか否か、すなわちアナログ特性を含めたそのチップの良否判定を行う。
【0008】
ところが、上記の手順では、2回のテスタによる検査が必要となり、検査工程におけるコストが上昇してしまう。そこで、図7に示すように、拡散工程の出来栄えをモニタするための測定及びPCM(process control module)/TEGの測定結果から得られた結果をトリミング情報に適用する手順も採用されている。この手法によってPCM/TEGの測定結果から、所望の電気的特性からのずれを求め、このずれを補正するために予め配置されているトリミング回路にレーザ加工を施す。
【特許文献1】特開昭61−272961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の従来技術は、テスタによる測定結果又はTEGの測定結果をトリミング情報に適用しており、TEGの測定結果をトリミングに反映する場合には、複数のトランジスタをアレイ化してトランジスタ特性を平均化した結果をトリミング情報に適用することになる。このため、複数のトランジスタ特性のうち特異点があった場合は、この特異点の影響を受けてトリミング情報が真値からずれてしまい、トリミング技術の当初の目的であるアナログ回路の微調整をして所望の特性を得るということができなくなるという問題がある。
【0010】
また、トランジスタ特性の平均化をしないように、複数のトランジスタを単独で搭載して測定し、それをトリミング情報とすれば高精度化は実現できるものの、測定トランジスタの個数分だけ測定することになり、測定時間が長くなって検査コストが増大してしまうという問題がある。
【0011】
さらに、今日のように大口径化されたウェハにおいては、トリミングの測定点数をさらに増やす必要があり、大口径化ウェハにおいても高精度のトリミング情報を得るには、測定に要する時間の短縮が大きな問題となる。
【0012】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、半導体装置の回路特性の微調整に必要なトリミング情報を高精度に取得できると共に、測定時間の増大を防ぐことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するため、本発明は、半導体装置を、複数の被評価素子と、複数の被評価素子のそれぞれに印加される電流値又は電圧値をモニタするモニタ用素子と、それぞれが、複数の被評価素子のそれぞれの一端と接続された複数の第1の電極パッドと、モニタ用素子の一端と接続された第2の電極パッドとを備え、複数の被評価素子のそれぞれの他端は、モニタ用素子の他端と共通に接続されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の半導体装置によると、複数の被評価素子のそれぞれの他端は、モニタ用素子の他端と共通に接続されているため、被評価素子の個数を増やしたとしても、測定時間の増大を抑制することができる。
【0015】
本発明の半導体装置は、複数の被評価素子のそれぞれの他端とモニタ用素子の他端との間に、複数の被評価素子のそれぞれの他端と共通に接続された第3の電極パッドをさらに備えていることが好ましい。
【0016】
このようにすると、第1の電極パッド、第2の電極パッド及び第3の電極パッド、それに電流又は電圧印加用の端子によってケルビン測定法を行うことができるため、測定精度が向上する。
【0017】
本発明の半導体装置において、モニタ用素子は、抵抗器であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の半導体装置において、複数の被評価素子は、抵抗器、トランジスタ又は容量素子であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る半導体装置を用いた第1の半導体装置の評価方法は、複数の第1の電極パッドのうちの1つを選択し、選択された電極パッドと第2の電極パッドとの間に電流又は電圧を印加する工程(a)と、電流又は電圧が印加されて、モニタ用素子を流れる電流値又はモニタ用素子に印加される電圧値を測定する工程(b)と、工程(a)及び工程(b)を、複数の第1の電極パッドに対して順次実施して、複数の被評価素子ごとの測定データを取得する工程(c)と、工程(c)で取得された複数の測定データを互いに比較して、複数の測定データの最大値及び最小値を算出した後、当該最大値及び最小値を測定データから除く工程(d)と、工程(d)を繰り返すことにより、工程(c)で得られた複数の測定データの平均値を算出する工程(e)とを備えていることを特徴とする。
【0020】
第1の半導体装置の評価方法によると、複数の測定データの最大値及び最小値を算出した後、当該最大値及び最小値を測定データから除き、これを全測定データに対して繰り返すことにより、複数の測定データの平均値を算出する。このように、特異な特性を示すデータを除外し、均一性が高い特性を示すデータのみで平均化してトリミング情報としてすることにより、特異点の影響を排除することができるので、トリミング情報を高精度に取得することができる。
【0021】
本発明に係る半導体装置であって、複数の被評価素子のそれぞれの他端と共通に接続された第3の電極パッドをさらに備えた第2の半導体装置の評価方法は、複数の第1の電極パッドのうちの1つを選択し、選択された電極パッドと第2の電極パッドとの間に電流又は電圧を印加する工程(a)と、電流又は電圧が印加されて、モニタ用素子を流れる電流値又はモニタ用素子に印加される電圧値を、第2の電極パッドと第3の電極パッドとの間で測定する工程(b)と、工程(a)及び工程(b)を、複数の第1の電極パッドに対して順次実施して、複数の被評価素子ごとの測定データを取得する工程(c)と、工程(c)で取得された複数の測定データを互いに比較して、複数の測定データの最大値及び最小値を算出した後、当該最大値及び最小値を測定データから除く工程(d)と、工程(d)を繰り返すことにより、工程(c)で得られた複数の測定データの平均値を算出する工程(e)とを備えていることを特徴とする
第2の半導体装置の評価方法によると、複数の測定データの最大値及び最小値を算出した後、当該最大値及び最小値を測定データから除き、これを全測定データに対して繰り返すことにより、複数の測定データの平均値を算出する。このように、特異な特性を示すデータを除外し、均一性が高い特性を示すデータのみで平均化してトリミング情報としてすることにより、特異点の影響を排除することができるので、トリミング情報を高精度に取得することができる。
【0022】
第1又は第2の半導体装置の評価方法において、モニタ用素子は抵抗器であることが好ましい。
【0023】
また、第1又は第2の半導体装置の評価方法において、複数の被評価素子は、抵抗器、トランジスタ又は容量素子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の半導体装置及びその評価方法によれば、半導体装置の回路特性の微調整に必要なトリミング情報の高精度化を実現できると共に、トリミング情報を得るために測定する被評価素子の個数が増加しても測定時間ひいては検査コストの増大を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の等価回路を示している。
【0027】
図1に示すように、第1の実施形態に係る半導体装置は、複数の第1の電極パッド1と、それぞれの一端が各第1の電極パッド1と接続された複数のTEG2と、一端が各TEG2の他端と接続されたモニタ用素子4と、モニタ用素子4の他端と接続された第2の電極パッド3とから構成されている。トリミングパラメータ情報の取得対象はTEG2である。
【0028】
以下、第1の実施形態におけるトリミングパラメータ情報の取得方法について説明する。
【0029】
まず、TEG2のばらつき情報を得るために、図1の左端のTEG2から順に第1の電極パッド1と第2の電極パッド3とに所定の電位、ここでは20mVを与えて第1の電極パッド1と第2の電極パッド3との間でモニタされた測定値を取得する。ここで得られた各測定値が複数のTEG2に生じているばらつきとなる。
【0030】
一例として、トリミング情報が必要なTEG2を抵抗器とし、モニタ用素子4も抵抗器として説明する。第1の電極パッド1には、TEG2である抵抗器の一端が接続されている。所望の第1の電極パッド1に電流10mAを印加することにより、複数のTEG2のうちの1個の抵抗器を選択し、さらに第2の電極パッド3に0Vを印加することによって、所望の第1の電極パッド1と第2の電極パッド3との間には、TEG2の抵抗器とモニタ用素子の抵抗器とが直列に接続された場合の電圧が検出される。
【0031】
ここで、第1の電極パッド1に電流ではなく電圧を印加し、第1の電極パッド1と第2の電極パッド3との間での電流を検出する手法も可能であり、いずれの場合も各TEG2の抵抗値の差を検出することが可能である。
【0032】
しかしながら、測定時間、ひいては検査コストの点では、両測定法には大きな差がある。具体的には、第1の電極パッド1に電流を印加して第1の電極パッド1と第2の電極パッド3との間の電圧を検出する方が測定時間を短くできる。電圧を印加して電流を検出する場合と電流を印加して電圧を検出する場合との、必要な待ち時間をパラメータとして測定結果が安定するのに必要な時間を比較すると、電流を検出する場合は0.05秒で安定し、電圧を検出する場合は実質的に0秒で安定するという結果を得ている。この差は、測定点数が少ない場合には大きな差とはならないが、ばらつき情報の取得を目的とする回路での測定では、ほぼ0.05秒の測定時間差が累積されるため、検査コストの点では電流を印加して電圧を検出する方が好ましい。
【0033】
また、TEG2の抵抗値Rが0.1Ωだけ変動した場合を仮定し、ばらつき感度をみると以下の通りとなる。
【0034】
例えば、TEG2の抵抗値Rが1Ωの場合を想定し、TEG2の抵抗値Rが0.1Ω変動して1.1Ωになったと仮定して、モニタ用素子4の抵抗値の設定によって検出される変動率が異なることを以下に説明する。
【0035】
まず、モニタ用素子4の抵抗が1Ωのとき、TEG2とモニタ用素子4との間に電流10mAを印加した際の電圧降下は22mVとなり、変動がない場合の電圧降下20mVと比較してその変動率は10%となる。
【0036】
一方、モニタ用素子4の抵抗が0.1Ωのとき、TEG2とモニタ用素子4との間に電流10mAを印加した際の電圧降下は12mVとなり、変動がない場合の電圧降下11mVと比較してその変動率は9%となる。
【0037】
従って、モニタ用素子4の抵抗値は、TEG2の抵抗ばらつき感度が最大となるように設定し、すなわち最適化することが望ましい。
【0038】
(半導体装置の評価方法)
以下、第1の実施形態に係る半導体装置を用いた評価方法について図面を参照しながら説明する。
【0039】
図2は第1の実施形態に係る半導体装置の評価方法により選択されるTEGを模式的に示している。本評価方法は、複数のTEG2から取得されたトリミングパラメータ情報のうち、素子特性分布の平均から外れた特異点を排除し、真値である素子特性分布の中央値を効率的に求める方法である。
【0040】
ここでは、一例として第1の実施形態に示した8個の抵抗器における抵抗値の中央値を求める方法を示す。
【0041】
まず、図2に示すように、8個の抵抗器R1〜R8からなる一群を4個ずつの2グループに分ける。分けられた各グループにおいて、上述したように1個ずつの抵抗器を選択し、選択された抵抗器の第1の電極パッド1と共通端子である第2の電極パッド3との間の電圧の検出を1回ずつ計4回繰り返し、検出された4個の抵抗器の電圧値をそれぞれ比較して、最大値を示す抵抗器と最小値を示す抵抗器との2個を除外する。
【0042】
例えば、図2においては、抵抗器R1〜R4の一群では最大値を示す抵抗器R3と最小値を示す抵抗器R2とが除外対象となる。また、抵抗器R5〜R8の一群では最大値を示す抵抗器R5と最小値を示す抵抗器R8とが除外対象となる。この結果、除外対象から外れた抵抗器はR1、R4、R6及びR7の4個となる。これらの4個の抵抗器について、再度、同様の測定を行い、測定値を比較し、且つ選別して検出電圧が最大値を示す抵抗器R7と最小値を示す抵抗器R1とを除外対象とする。最終的に残った抵抗器R4及び抵抗器R6の相加平均がこれら8個の抵抗器R1〜R8の中央値となる。
【0043】
このように、8個の抵抗器を上記のようにグループ化して比較し且つ選別を繰り返すことによって中央値を求める場合は、18回の比較工程で完了する。しかしながら、8個の抵抗器をグループ化せず、個々に比較しながら中央値を求める手法では、必要な比較工程は28回となる。従って、本実施形態により、測定回数、言い換えれば測定時間が短縮されることになる。
【0044】
以上に説明したように、第1の実施形態に係る半導体装置の評価方法を用いることにより、従来の半導体装置の評価方法を用いた場合と比べて、比較工程における比較回数が削減できるため、測定時間を短縮できる。
【0045】
さらに、測定対象のTEG2のなかで最大及び最小の電気的特性、つまり特異な特性を示す抵抗器を繰り返し除外することにより、均一性が高い特性を示す抵抗器のみで平均化されたトリミング情報を得る。これにより、アナログ回路に微調整を施す際に、特異点の影響によりトリミング情報が真値からずれることに起因して所望の特性を得られないという問題を解決できるため、トリミング情報を高精度に取得することができる。
【0046】
なお、実際の測定においては、比較対象となる被評価素子の数が、チップ内の数個のレベルからウェハ内の所定領域又はウェハ全体のレベル、さらには複数のウェハにわたるレベルにまで拡大する。従って、比較対象の素子数が多くなればなるほど、本実施形態に係る半導体装置の評価方法と従来の半導体装置の評価方法とにおける比較工程の回数差が大きくなるため、本実施形態に係る半導体装置の評価方法による測定時間の短縮効果もそれだけ大きくなる。
【0047】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0048】
図3は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の等価回路を示している。
【0049】
図3に示すように、第2の実施形態に係る半導体装置は、第1の実施形態と同様に、複数のTEG2とモニタ用素子4とから構成されている。
【0050】
第1の実施形態との相違点は、並列に接続された複数のTEG2と1つのモニタ用素子4との間に、複数のTEG2に共通の第3の電極パッド5を接続している点である。ここでは、モニタ用素子4の一端に第3の電極パッド5を設け、モニタ用素子4の他端に第2の電極パッド3を接続し、第2の電極パッド3とモニタ用素子4との間の抵抗を限りなく0Ωに近づけるように配線する。また、図示はしていないが、第2の電極パッド3をさらに1個加えて2個としてもよい。
【0051】
以下、第2の実施形態におけるトリミングパラメータ情報の取得方法について説明する。
【0052】
まず、TEG2のばらつき情報を得るために、図3の左端のTEG2から順に第1の電極パッド1と第2の電極パッド3とに所定の電位を与えて第2の電極パッド3と第3の電極パッド5との間でモニタされた測定値を取得する。ここで得られたそれぞれの値が複数のTEG2で生じているばらつきとなる。
【0053】
一例として、トリミング情報が必要なTEG2をトランジスタ(電界効果トランジスタ)とし、モニタ素子4を抵抗器として説明する。第1の電極パッド1には、トランジスタのゲート端子が接続されており、ソース端子、基板端子及びドレイン端子はそれぞれ共通のパッドとして各トランジスタと接続されている。なお、他の接続形態として、第1の電極パッド1にトランジスタのドレイン端子が接続されており、ソース端子、基板端子及びゲート端子がそれぞれ共通のパッドとして各トランジスタと接続されていても構わない。
【0054】
複数のTEG2のうちの所望の1個のトランジスタを選択し、第1の電極パッド1にトランジスタがオン状態となるゲート電圧Vg=1.2Vを加え、ドレイン端子にドレイン電圧Vd=1.2Vを加え、さらに、第2の電極パッド3に0Vを印加する。これにより、第2の電極パッド3と第3の電極パッド5との間には、トランジスタのオン抵抗とモニタ用素子4の抵抗とが直列に接続される。従って、トランジスタであるTEG2を流れる電流ばらつきは、第2の電極パッド3と第3の電極パッド5との間の電圧ばらつきとしてモニタできる。ここでは、第2の電極パッド3とモニタ用素子4との間の抵抗値を限りなく0Ωに近づけるように設定することにより、ケルビン測定(四端子測定)が可能となる。このようにすると、第1の電極パッド1とTEG2との間の配線抵抗及びTEG2とモニタ用素子4との間の配線抵抗の影響を受けないようにして、モニタ用素子4の両端にかかる電圧差を測定できるようになるため、測定精度がより向上する。
【0055】
なお、2個の第2の電極パッド3を設けた場合は、いずれか一方の第2の電極パッドと第3の電極パッド5とで電圧をモニタするケルビン測定を行なっても測定精度の向上が可能となる。
【0056】
ここで、電圧をモニタする利点は第1の実施形態で説明した理由と同様である。
【0057】
また、第1の実施形態における記載と同様に、TEG2であるトランジスタを流れる電流のばらつきがモニタ用素子4における抵抗変化、すなわち第2の電極パッド3と第3の電極パッド5との間の電位差として感度良く検出できるように、モニタ用素子4の抵抗値の最適化を図る必要がある。
【0058】
さらに、第2の実施形態においては、複数のTEG2の配置に留意すべき点がある。図4に第2の実施形態に係る半導体装置の平面構成を示す。図4は8個のTEG2の特性ばらつきを検出する回路であり、その具体的な回路構成は図3に説明した通りである。
【0059】
ここでは、第2の電極パッド3と第3の電極パッド5との間の電圧ばらつきをモニタする。従って、抵抗値のばらつきの原因となる、各TEG2と第3の電極パッド5との間の引き回し配線6A〜6Hの各抵抗値を等しくする必要がある。なぜなら、引き回し配線6A〜6Hの抵抗値が異なると、それがそのままTEG2のばらつきとして検出されてしまうからである。
【0060】
以上、TEG2を第1の実施形態においては抵抗器とし、第2の実施形態においてはトランンジスタとして説明したが、TEG2を容量素子としてもよい。この場合には、蓄積された電流を放出した際にモニタ用素子4を流れる電流によって生じる電位差をモニタすることにより、容量素子としてのTEG2のばらつきの検出が可能となる。
【0061】
なお、いずれの場合もTEG2の検出感度を良好とするために、第2の電極パッド3と第3の電極パッド5との間の電位差として感度良く検出できるように、モニタ用素子4の抵抗値の最適化を図る必要があると共に、各TEG2と第3の電極パッド5との間の引き回し配線6A〜6Hの各抵抗値を等しくする必要がある。
【0062】
(半導体装置の評価方法)
以下、第2の実施形態に係る半導体装置を用いた評価方法について図面を参照しながら説明する。
【0063】
図5は第2の実施形態に係る半導体装置の評価方法により選択されるTEGを模式的に示している。本評価方法は、複数のTEG2から取得されたトリミングパラメータ情報のうち、素子特性分布の平均から外れた特異点を排除し、真値である素子特性分布の中央値を効率的に求める方法である。
【0064】
ここでは、一例として第2の実施形態に示した8個のトランジスタにおけるトランジスタ特性の中央値を求める方法を示す。
【0065】
まず、図5に示すように、8個のトランジスタTr1〜Tr8からなる一群を4個ずつの2グループに分ける。分けられた各グループにおいて、上述したように1個ずつのトランジスタを選択し、モニタ用素子4の両端の電圧の検出を1回ずつ計4回繰り返し、検出された4個のトランジスタの電圧値をそれぞれ比較して、最大値を示すトランジスタと最小値を示すトランジスタとの2個を除外する。
【0066】
例えば、図5においては、トランジスタTr1〜Tr4の一群では最大値を示すトランジスタTr3と最小値を示すトランジスタTr2とが除外対象となる。また、トランジスタTr5〜Tr8の一群では最大値を示すトランジスタTr5と最小値を示すトランジスタTr8とが除外対象となる。この結果、除外対象から外れたトランジスタはTr1、Tr4、Tr6及びTr7の4個となる。これらの4個のトランジスタについて、再度、同様の測定を行い、測定値を比較し、且つ選別して検出電圧が最大値を示すトランジスタTr7と最小値を示すトランジスタTr1とを除外対象とする。最終的に残ったトランジスタTr4及びトランジスタTr6の相加平均がこれら8個のトランジスタTr1〜Tr8の中央値となる。
【0067】
第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、8個のトランジスタを上記のようにグループ化して比較し且つ選別を繰り返すことによって中央値を求める場合は、18回の比較工程で完了する。しかしながら、8個のトランジスタをグループ化せず、個々に比較しながら中央値を求める手法では、必要な比較工程は28回となる。従って、本実施形態により、測定回数、言い換えれば測定時間が短縮されることになる。
【0068】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る半導体装置の評価方法を用いることにより、従来の半導体装置の評価方法を用いた場合と比べて、比較工程における比較回数が削減できるため、測定時間を短縮できる。
【0069】
さらに、測定対象のTEG2のなかで最大及び最小の電気的特性、つまり特異な特性を示すトランジスタを繰り返し除外することにより、均一性が高い特性を示すトランジスタのみで平均化してトリミング情報を得る。これにより、アナログ回路に微調整を施す際に、特異点の影響によりトリミング情報が真値からずれることに起因して所望の特性を得られないという問題を解決できるため、トリミング情報を高精度に取得することができる。
【0070】
なお、実際の測定においては、比較対象となる被評価素子の数が、チップ内の数個のレベルからウェハ内の所定領域又はウェハ全体のレベル、さらには複数のウェハにわたるレベルにまで拡大する。従って、比較対象の素子数が多くなればなるほど、本実施形態に係る半導体装置の評価方法と従来の半導体装置の評価方法とにおける比較工程の回数差が大きくなるため、本実施形態に係る半導体装置の評価方法による測定時間の短縮効果もそれだけ大きくなる。
【0071】
なお、第1及び第2の実施形態に係る半導体装置は、ウェハのスクライブ領域に形成されていてもよく、また、ウェハのチップ形成領域に形成されていてもよく、いずれの形成位置でも適用可能である。
【0072】
また、第1及び第2の実施形態においては、アナログ回路を測定対象として説明したが、これに限定されず、例えば冗長回路を測定対象として適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る半導体装置及びその評価方法は、半導体装置の回路特性の微調整に必要なトリミング情報を高精度に取得できると共に、検査コストの上昇につながる測定時間の増大を回避することができ、また、測定点数が増加しても測定時間の増大を回避することができ、特にアナログ回路の回路特性の微調整等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す等価回路である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の評価方法を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す等価回路である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の評価方法を模式的に示す説明図である。
【図6】第1の従来例であって、トリミング情報をテスタ検査から取得するための基本的なフローを示した図である。
【図7】第2の従来例であって、トリミング情報をPCM/TEG測定から取得するための基本的なフローを示した図である。
【符号の説明】
【0075】
1 第1の電極パッド
2 TEG(抵抗、トランジスタ)
3 第2の電極パッド
4 モニタ用素子
5 第3の電極パッド
6A〜6H 引き回し配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被評価素子と、
前記複数の被評価素子のそれぞれに印加される電流値又は電圧値をモニタするモニタ用素子と、
それぞれが、前記複数の被評価素子のそれぞれの一端と接続された複数の第1の電極パッドと、
前記モニタ用素子の一端と接続された第2の電極パッドとを備え、
前記複数の被評価素子のそれぞれの他端は、前記モニタ用素子の他端と共通に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記複数の被評価素子のそれぞれの他端と前記モニタ用素子の他端との間に、前記複数の被評価素子のそれぞれの他端と共通に接続された第3の電極パッドをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記モニタ用素子は、抵抗器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の被評価素子は、抵抗器、トランジスタ又は容量素子であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置を用いた半導体装置の評価方法であって、
前記複数の第1の電極パッドのうちの1つを選択し、選択された電極パッドと前記第2の電極パッドとの間に電流又は電圧を印加する工程(a)と、
前記電流又は電圧が印加されて、前記モニタ用素子を流れる電流値又は前記モニタ用素子に印加される電圧値を測定する工程(b)と、
前記工程(a)及び前記工程(b)を、前記複数の第1の電極パッドに対して順次実施して、前記複数の被評価素子ごとの測定データを取得する工程(c)と、
前記工程(c)で取得された複数の測定データを互いに比較して、前記複数の測定データの最大値及び最小値を算出した後、当該最大値及び最小値を前記測定データから除く工程(d)と、
前記工程(d)を繰り返すことにより、前記工程(c)で得られた複数の測定データの平均値を算出する工程(e)とを備えていることを特徴とする半導体装置の評価方法。
【請求項6】
請求項2に記載の半導体装置を用いた半導体装置の評価方法であって、
前記複数の第1の電極パッドのうちの1つを選択し、選択された電極パッドと前記第2の電極パッドとの間に電流又は電圧を印加する工程(a)と、
前記電流又は電圧が印加されて、前記モニタ用素子を流れる電流値又は前記モニタ用素子に印加される電圧値を、前記第2の電極パッドと前記第3の電極パッドとの間で測定する工程(b)と、
前記工程(a)及び前記工程(b)を、前記複数の第1の電極パッドに対して順次実施して、前記複数の被評価素子ごとの測定データを取得する工程(c)と、
前記工程(c)で取得された複数の測定データを互いに比較して、前記複数の測定データの最大値及び最小値を算出した後、当該最大値及び最小値を前記測定データから除く工程(d)と、
前記工程(d)を繰り返すことにより、前記工程(c)で得られた複数の測定データの平均値を算出する工程(e)とを備えていることを特徴とする半導体装置の評価方法。
【請求項7】
前記モニタ用素子は、抵抗器であることを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置の評価方法。
【請求項8】
前記複数の被評価素子は、抵抗器、トランジスタ又は容量素子であることを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか1項に記載の半導体装置の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−123730(P2010−123730A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295565(P2008−295565)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】