説明

半導体装置及び半導体装置の作製方法

【課題】オフ電流が低減できる半導体装置及び半導体装置を提供する。
【解決手段】絶縁表面上に形成され、ソース領域、ドレイン領域、及びチャネル形成領域を含む単結晶半導体層と、単結晶半導体層を覆うゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介して、チャネル形成領域に重畳するゲート電極と、ソース領域に接続されるソース電極と、ドレイン領域に接続されるドレイン電極と、を有し、ソース領域及びドレイン領域のうち、少なくともドレイン領域は、チャネル形成領域に隣接する第1の不純物領域と、第1の不純物領域に隣接する第2の不純物領域と、を含み、第1の不純物領域の深さ方向の不純物濃度分布の極大は、第2の不純物領域の深さ方向の不純物濃度分布の極大よりも絶縁表面側にあり、ドレイン電極は、ドレイン領域に含まれる第2の不純物領域の一部と接続する半導体装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、表示装置等に用いられるトランジスタは、その半導体装置、表示装置等の目的や機能によって、要求される特性が異なる。この要求を満たすように、トランジスタの特性を制御することは重要であり、使用目的にあった特性を満たすようにトランジスタを作製するための技術も研究されている。
【0003】
オフ電流を低減するためのトランジスタの構造として、低濃度ドレイン(LDD:Lightly Doped Drain)構造を設ける技術が知られている。LDD構造は、チャネル形成領域と、ソース領域またはドレイン領域と、の間に低濃度に不純物元素を添加した領域を設けたものであり、この領域をLDD領域と呼んでいる。
【0004】
LDD構造を形成する方法は、例えば、ゲート電極となる積層された導電層を、テーパーを有する形状等に加工し、その形状を用いて不純物元素を添加する方法などで、半導体層中に自己整合的に形成する技術が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−203862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、LDD構造はオフ電流の低減に顕著な効果がある反面、トランジスタのオン電流の低下が問題となっている。
【0007】
上記問題を鑑み、開示する発明の一態様では、オフ電流が低減された半導体装置を提供することを目的の一とする。または、簡単な工程で、オフ電流が低減された半導体装置の作製方法を提供することを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ソース領域またはドレイン領域の少なくともドレイン領域に不純物濃度のピーク位置が異なる半導体領域を同時に形成する。より詳細には以下の通りである。
【0009】
本発明の一態様は、絶縁表面上に形成され、ソース領域、ドレイン領域、及びチャネル形成領域を含む単結晶半導体層と、単結晶半導体層を覆うゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜を介して、チャネル形成領域に重畳して設けられたゲート電極と、ソース領域に接続されるソース電極と、ドレイン領域に接続されるドレイン電極と、を有し、ソース領域及びドレイン領域のうち、少なくともドレイン領域は、チャネル形成領域に隣接する第1の不純物領域と、第1の不純物領域に隣接する第2の不純物領域と、を含み、第1の不純物領域の深さ方向の不純物濃度分布の極大は、第2の不純物領域の深さ方向の不純物濃度分布の極大よりも絶縁表面側にあり、ドレイン電極は、ドレイン領域に含まれる第2の不純物領域の一部と接続する半導体装置である。
【0010】
上述したゲート電極は、ゲート絶縁膜に接して設けられた第1の導電層と、第1の導電層上に積層された第2の導電層と、を有することができる。
【0011】
上述した第1の導電層の膜厚は20nm以上100nm以下、第2の導電層の膜厚は100nm以上400nm以下とすることができる。
【0012】
上述した第1の不純物領域に重なるゲート絶縁膜の膜厚は、第2の不純物領域に重なるゲート絶縁膜の膜厚より薄くすることができる。
【0013】
また、本発明の一態様は、単結晶半導体層上にゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に第1の導電膜を形成し、第1の導電膜上に第2の導電膜を形成し、複数の強度で光が透過する露光マスク、または光強度低減機能を有する露光マスクを用いて、第2の導電膜上の第1の領域に第1のマスク層を形成し、第1の領域と離れた第2の導電膜上の第2の領域に第2のマスク層を形成し、第1のマスク層及び第2のマスク層を用いてエッチングし、ゲート絶縁膜上の第1の領域に第1の導電層及び第1の導電層と接する第2の導電層を、ゲート絶縁膜上の第2の領域に第3の導電層を形成し、第1の導電層、第2の導電層、及び第3の導電層をマスクとして、単結晶半導体層に一導電型を付与する不純物元素を添加し、第3の導電層をエッチングする半導体装置の作製方法である。
【0014】
上述した単結晶半導体層は、半導体基板に加速されたイオンを照射して該半導体基板に脆化領域を形成し、絶縁層を介して半導体基板と基板を貼り合わせ、熱処理により、脆化領域において半導体基板を分離して作製することができる。
【0015】
上述した第1のマスク層は、第1の部位及び第2の部位を有し、第1の部位の膜厚は、第2の部位の膜厚より薄く形成することができる。
【0016】
第1のマスク層の第2の部位の膜厚に対する、第1のマスク層の第1の部位の膜厚の比率は、50%以下に形成することができる。
【0017】
上述した第2のマスク層の膜厚は、第1のマスク層の第1の部位の膜厚と同等に形成することができる。
【0018】
上述した第1の導電層の膜厚、及び第3の導電層の膜厚は20nm以上100nm以下、第2の導電層の膜厚は100nm以上400nm以下に形成することができる。
【0019】
本明細書等において単結晶とは、ある結晶軸に注目した場合、その結晶軸の方向が試料のどの部分においても同様の方向を向いているものをいう。つまり、結晶欠陥やダングリグボンドなどを含んでいても、上記のように結晶軸の方向が揃っているものは単結晶として扱う。
【0020】
また、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。例えば、表示装置や、集積回路は半導体装置に含まれる。また、本明細書等において表示装置とは、発光表示装置や液晶表示装置、電気泳動素子を用いた表示装置を含む。発光表示装置は発光素子を含み、液晶表示装置は液晶素子を含む。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等がある。
【0021】
なお、本明細書等において「上」という用語は、構成要素の位置関係が「直上」であることを限定するものではない。例えば、「ゲート絶縁膜上のゲート電極」という表現であれば、ゲート絶縁膜とゲート電極との間に他の構成要素を含むものを除外しない。下についても同様である。
【0022】
また、本明細書等において「電極」や「配線」という用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」という用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0023】
なお、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。
【0024】
例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【発明の効果】
【0025】
本発明を用いることで、ソース領域またはドレイン領域の少なくともドレイン領域に不純物濃度のピーク位置が異なる半導体領域を同時に形成することができる。そのため、マスクの削減、製造工程の簡略化が可能となり、生産性の向上を図ることができる。また、ソース領域またはドレイン領域の少なくともドレイン領域に不純物濃度のピーク位置が異なる半導体領域を有することで、オフ電流が低減されたトランジスタを作製することができる。よって、該トランジスタを用いて信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の半導体装置の断面図、上面図および不純物濃度分布。
【図2】本発明の半導体装置の作製方法の断面図。
【図3】本発明の半導体装置の作製方法の断面図。
【図4】本発明の半導体装置に用いられる半導体基板の作製方法の断面図。
【図5】本発明の表示装置の上面図。
【図6】本発明の表示装置の上面図。
【図7】本発明の表示装置の作製方法の断面図。
【図8】本発明の表示装置の作製方法の断面図。
【図9】本発明の表示装置の作製方法の断面図。
【図10】本発明の表示装置の作製方法の断面図。
【図11】本発明の表示装置の作製方法の断面図。
【図12】本発明の表示装置の上面図及び表示装置の断面図。
【図13】本発明の表示装置の断面図。
【図14】本発明が適用される電子機器を示す図。
【図15】加速電圧とオフ電流、及び加速電圧とオン電流の計算結果を示す図。
【図16】本発明の表示装置に用いる発光素子の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定されず、本明細書等において開示する発明の趣旨から逸脱することなく形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者にとって自明である。また、異なる実施の形態に係る構成は、適宜組み合わせて実施することが可能である。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置の構成、及びその作製方法について、図1乃至図4を参照して説明する。
【0029】
<構成>
図1(A)及び図1(B)に半導体装置の構成の一例であるトランジスタを示す。図1(B)はトランジスタの上面図である。図1(B)のA−B線に対応する断面図を図1(A)に示す。
【0030】
図1(A)及び図1(B)に示すトランジスタは、支持基板300上に形成された絶縁膜301と、絶縁膜301上に形成され、第2の不純物領域310a、チャネル形成領域309、第1の不純物領域308b、及び、第2の不純物領域310bからなる半導体層302と、これらを覆うように形成されたゲート絶縁膜303aと、ゲート絶縁膜303aを介してチャネル形成領域309と重畳するように形成された第1の導電層304cと、ゲート絶縁膜303a及び第1の導電層304cを介してチャネル形成領域309と重畳するように形成された第2の導電層305cと、ゲート絶縁膜303a、第1の導電層304c、及び第2の導電層305cを覆うように形成された層間絶縁膜311と、第2の不純物領域310aと電気的に接続されたソース電極312aと、第2の不純物領域310bと電気的に接続されたドレイン電極312bと、を有する。
【0031】
第1の導電層304c及び第1の導電層304cに積層された第2の導電層305cは、ゲート電極として機能する。
【0032】
第1の不純物領域308bと重なる領域のゲート絶縁膜303aの膜厚は、第2の不純物領域310a、第2の不純物領域310b、及びチャネル形成領域309と重なる領域のゲート絶縁膜303aの膜厚より薄い。
【0033】
第2の不純物領域310aはソース領域であり、第1の不純物領域308b及び第2の不純物領域310bはドレイン領域である。
【0034】
第1の不純物領域308bはチャネル形成領域309に隣接しており、第2の不純物領域310bは第1の不純物領域308bに隣接している。
【0035】
第1の不純物領域308bのチャネル長方向の長さは、10nm以上3μm以下、好ましくは、500nm以上1.5μm以下とすることができる。
【0036】
図1(C)に、第1の不純物領域308bの深さ方向に含まれる不純物濃度分布を、曲線41で模式的に示す。また、図1(D)に、第2の不純物領域310a及び第2の不純物領域310bの深さ方向に含まれる不純物濃度分布を、曲線42で模式的に示す。図1(C)及び図1(D)に示すように、第1の不純物領域308bの深さ方向の不純物濃度分布の極大は、第2の不純物領域310a及び第2の不純物領域310bの深さ方向の不純物濃度分布の極大より絶縁膜301側に位置している。よって、ドレイン領域においては、深さ方向の不純物濃度分布の極大が深い第1の不純物領域308bが、チャネル形成領域309に接し、深さ方向の不純物濃度分布の極大が浅い第2の不純物領域310bが、ドレイン電極312bに接している。
【0037】
第1の不純物領域308bの深さ方向の不純物濃度分布の極大が、ゲート電極端と離れて位置することによって、トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、ドレイン近傍の電界を緩和し、ホットキャリア注入による劣化を防ぐ効果もある。
【0038】
また、深さ方向の不純物濃度分布の極大が浅い第2の不純物領域310bが、ドレイン電極312bに接することで、コンタクト抵抗を増加させることなくドレイン領域とドレイン電極312bとの良好な電気的接続を行うことができる。
【0039】
第1の不純物領域308bの深さ方向の不純物濃度分布の極大は、第2の不純物領域310a及び第2の不純物領域310bの不純物濃度分布の極大より、絶縁膜301側近くに位置していれば、絶縁膜301に位置してもよい。また、第2の不純物領域310a及び第2の不純物領域310bの深さ方向の不純物濃度分布の極大は、ゲート絶縁膜303aに位置してもよい。
【0040】
なお、ソース領域においても、第2の不純物領域310aとチャネル形成領域309との間に、第2の不純物領域310aの深さ方向の不純物濃度分布の極大より、深さ方向の不純物濃度分布の極大が絶縁膜301側に近い(ゲート電極端より離れて位置する)第1の不純物領域を設けてもよい。
【0041】
第1の不純物領域及び第2の不純物領域は、第1の導電型(ここではp型)を付与する不純物元素が添加されている。図1(A)及び図1(B)に示すトランジスタは、p型トランジスタとして説明するが、第1の不純物領域及び第2の不純物領域に第2の導電型(ここではn型)を付与する不純物元素が添加された、n型トランジスタとしても良い。
【0042】
<作製工程>
次に、図1(A)及び図1(B)に示すトランジスタの作製工程について、図2乃至図4を用いて説明する。
【0043】
まず、支持基板300の上に絶縁膜301を介して半導体層302を有する基板400を形成する(図2(A)参照)。
【0044】
以下に、基板400の作製方法の例を、図4を用いて説明する。なお、基板400の作製方法は、図4を用いて説明する作製方法には限定されず、他の作製方法を用いてもよい。
【0045】
まず、支持基板300(ベース基板ともいう)を用意する(図4(A)参照)。
【0046】
支持基板300は、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁性基板を用いる。なお、支持基板300としてプラスチック基板等の絶縁性基板、シリコンなどの半導体基板、金属やステンレスなどの導電性基板等を適宜用いてもよい。
【0047】
ガラス基板としては、歪み点が580℃以上730℃以下であるものを用いるとよい。また、ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。安価なガラス基板、プラスチック基板を用いることで、コストを低減することができる。
【0048】
また、支持基板300は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコンなどの第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板を用いることもできる。
【0049】
また、支持基板300として半導体基板を用いる場合、支持基板300のサイズに制限はないが、例えば、直径が8インチ(200mm)、12インチ(300mm)、18インチ(450mm)といったサイズの半導体基板を用いることができる。また、円形の半導体基板を、矩形に加工して用いても良い。
【0050】
また、支持基板300は、単結晶半導体基板やガラス基板の他に、セラミック基板、石英基板やサファイア基板などの絶縁体でなる基板、金属やステンレスなどの導電体でなる基板などを用いることもできる。本実施の形態では、支持基板300としてガラス基板を用いる場合について説明する。
【0051】
また、支持基板300の表面に、絶縁層を形成してもよい。該絶縁層を設けることにより、支持基板300に不純物(アルカリ金属やアルカリ土類金属など)が含まれている場合には、後に支持基板300上に転載される半導体層へ当該不純物が拡散することを防止できる。絶縁層としては、スパッタリング法またはCVD法により形成された酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層などがある。
【0052】
なお、酸化窒化シリコンとは、窒素よりも酸素の含有量が多いものであり、窒化酸化シリコンとは、酸素よりも窒素の含有量が多いものである。ここで、含有量の比較は、ラザフォード後方散乱法及び水素前方散乱法の測定結果に基づいて行うこととする。
【0053】
次に、半導体基板110を用意する(図4(B−1)参照)。
【0054】
半導体基板110は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウムなどの第14族元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体基板を用いることもできる。なお、本実施の形態では、半導体基板110については、単結晶シリコン基板を用いて説明する。
【0055】
次に、半導体基板110の少なくとも一面に絶縁膜301を形成する(図4(B−2)参照)。
【0056】
絶縁膜301は、後に説明する貼り合わせにおいて、接合層として機能する。
【0057】
絶縁膜301は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン等の材料を用いることができる。これらの膜は、熱酸化法、CVD法又はスパッタリング法等の薄膜成膜方法を用いて形成することができる。また、CVD法を用いて絶縁膜301を形成する場合には、テトラエチルオルソシリケート(略称;TEOS:化学式Si(OC)等の有機シランを用いて作製される酸化シリコン層を絶縁膜301に用いることが生産性の点から好ましい。
【0058】
本実施の形態では、半導体基板110に熱酸化処理を行うことにより絶縁膜301(ここでは、酸化シリコン層)を形成する。熱酸化処理は、酸化性雰囲気中にハロゲンを添加して行うことが好ましい。例えば、塩素(Cl)が添加された酸化性雰囲気中で半導体基板110に熱酸化処理を行うことによりHCl酸化された絶縁膜301を形成する。従って、絶縁膜301は、塩素原子を含有した層となる。
【0059】
絶縁膜301中に含有された塩素原子は、絶縁膜301に歪みを形成する。その結果、絶縁膜301の水に対する吸収割合が向上し、水の拡散速度が増大する。つまり、絶縁膜301表面に水が存在する場合に、当該表面に存在する水を絶縁膜301中に素早く吸収させ、拡散させることができるため、水の存在による貼り合わせ不良を低減することができる。
【0060】
また、絶縁膜301に塩素原子を含有させることによって、外因性の不純物である重金属(例えば、Fe、Cr、Ni、Mo等)を捕集して半導体基板110が汚染されることを防止できる。また、後に説明する支持基板300との貼り合わせの後に、支持基板300からのナトリウム(Na)等の不純物を固定して、半導体基板110が汚染されることを防止できる。
【0061】
なお、絶縁膜301に含有させるハロゲン原子は塩素原子に限られない。絶縁膜301にはフッ素原子を含有させてもよい。例えば、半導体基板110表面をフッ素酸化する方法を用いることが可能である。フッ素酸化としては、HF溶液に浸漬させた後に酸化性雰囲気中で熱酸化処理を行う方法や、NFを酸化性雰囲気に添加して熱酸化処理を行う方法などがある。
【0062】
なお、本実施の形態においては絶縁膜301を単層構造とするが、積層構造としても良い。また、貼り合わせに際して特に問題がない場合など、絶縁膜301を設ける必要がない場合には、絶縁膜301を設けない構成としても良い。
【0063】
次に、半導体基板110にイオンを照射することにより、脆化領域112を形成する(図4(B−3)参照)。より具体的には、例えば、電界で加速されたイオンからなるイオンビームを照射して、半導体基板110の表面から所定の深さの領域に脆化領域112を形成する。脆化領域112が形成される深さは、イオンビームの加速エネルギーやイオンビームの入射角によって制御される。つまり、脆化領域112は、イオンの平均侵入深さと同程度の深さの領域に形成されることになる。ここで、脆化領域112が形成される深さは、半導体基板110の全面において均一であることが望ましい。なお、イオンの照射前には、半導体基板110の表面を洗浄しておくことが望ましい。
【0064】
また、上述の脆化領域112が形成される深さにより、後に形成する半導体層302の厚さが決定される。脆化領域112が形成される深さは、半導体基板110の表面から50nm以上1μm以下であり、好ましくは50nm以上300nm以下である。
【0065】
イオンを半導体基板110に照射する際には、イオン注入装置またはイオンドーピング装置を用いることができる。イオン注入装置は、ソースガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離して、所定の質量を有するイオン種を被処理物に照射する。イオンドーピング装置は、プロセスガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離せずに被処理物に照射する。なお、質量分離装置を備えているイオンドーピング装置では、イオン注入装置と同様に、質量分離を伴うイオンの照射を行うこともできる。
【0066】
イオンドーピング装置を用いる場合の脆化領域112の形成工程は、例えば、以下の条件で行うことができる。
・加速電圧 10kV以上100kV以下(好ましくは30kV以上80kV以下)
・ドーズ量 1×1016/cm以上4×1016/cm以下
・ビーム電流密度 2μA/cm以上(好ましくは5μA/cm以上、より好ましくは10μA/cm以上)
【0067】
また、イオンドーピング装置を用いる場合、ソースガスとして水素を含むガスを用いることができる。該ガスを用いることによりイオン種としてH、H、Hを生成することができる。水素ガスをソースガスとして用いる場合には、Hを多く照射することが好ましい。具体的には、イオンビームに、H、H、Hの総量に対してHイオンが70%以上含まれるようにすることが好ましい。また、Hイオンの割合を80%以上とすることがより好ましい。このようにHの割合を高めておくことで、脆化領域112に1×1020atoms/cm以上の濃度で水素を含ませることが可能である。これにより、脆化領域112における分離が容易になる。また、Hイオンを多く照射することで、H、Hを照射する場合より短時間で脆化領域112を形成することができる。また、Hを用いることで、イオンの平均侵入深さを浅くすることができるため、脆化領域112を浅い領域に形成することが可能になる。
【0068】
イオン注入装置を用いる場合には、質量分離により、Hイオンが照射されるようにすることが好ましい。もちろん、HやHを照射してもよい。ただし、イオン注入装置を用いる場合には、イオン種を選択して照射するため、イオンドーピング装置を用いる場合と比較して、イオン照射の効率が低下する場合がある。
【0069】
イオン照射工程のソースガスには水素を含むガスの他に、ヘリウムやアルゴンなどの希ガス、フッ素ガスや塩素ガスに代表されるハロゲンガス、フッ素化合物ガス(例えば、BF)などのハロゲン化合物ガスから選ばれた一種または複数種類のガスを用いることができる。ソースガスにヘリウムを用いる場合は、質量分離を行わないことで、Heイオンの割合が高いイオンビームを作り出すことができる。このようなイオンビームを用いることで、脆化領域112を効率よく形成することができる。
【0070】
また、イオンの照射を複数回に分けて行うことで、脆化領域112を形成することもできる。この場合、異なるソースガスを用いてイオン照射を行っても良いし、同じソースガスを用いてもよい。例えば、ソースガスとして希ガスを用いてイオン照射を行った後、水素を含むガスをソースガスとして用いてイオン照射を行うことができる。また、はじめにハロゲンガスまたはハロゲン化合物ガスを用いてイオン照射を行い、次に、水素を含むガスを用いてイオン照射を行うこともできる。
【0071】
上記脆化領域112及び絶縁膜301を有する半導体基板110を作製する他の方法としては、半導体基板110の一表面を陽極酸化して多孔質領域を形成し、当該多孔質領域上に半導体層をエピタキシャル成長させた後、当該半導体層上に酸化絶縁層を形成する方法等もある。
【0072】
次に、支持基板300と半導体基板110を貼り合わせる(図4(C)参照)。具体的には、絶縁膜301を介して支持基板300と半導体基板110を貼り合わせる。
【0073】
支持基板300と半導体基板110とを貼り合わせた後に加圧処理を施すことで、支持基板300と絶縁膜301の接合が生じ、当該部分を始点として自発的な接合が全面におよぶ。なお、貼り合わせのメカニズムとしては、ファン・デル・ワールス力が関与するメカニズムや、水素結合が関与するメカニズムなどが考えられている。
【0074】
支持基板300と半導体基板110とを貼り合わせる前に、半導体基板110上に形成された絶縁膜301および支持基板300の少なくとも一方に表面処理を行うことにより、親水基の増加、平坦性の向上などが実現され、半導体基板110と支持基板300との接合強度を高めることができる。その結果、貼り合わせ不良を低減することができる。
【0075】
表面処理としては、ウェットエッチング処理、ドライエッチング処理、またはウェットエッチング処理およびドライエッチング処理の組み合わせが挙げられる。また、異なるウェットエッチング処理を組み合わせる、または異なるドライエッチング処理を組み合わせて行うことができる。
【0076】
ウェットエッチング処理としては、オゾン水を用いたオゾン処理(オゾン水洗浄)、メガソニック洗浄、または2流体洗浄(純水や水素添加水等の機能水を窒素等のキャリアガスとともに吹き付ける方法)などが挙げられる。ドライエッチング処理としては、紫外線処理、オゾン処理、プラズマ処理、バイアス印加プラズマ処理、またはラジカル処理などが挙げられる。被処理体(半導体基板、半導体基板上に形成された絶縁層、基板または基板上に形成された絶縁層)に対し、上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性を高める効果を奏する。その結果、基板同士の接合強度を向上させることができる。
【0077】
ウェットエッチング処理は、被処理体表面に付着するマクロなゴミなどの除去に効果的である。ドライエッチング処理は、被処理体表面に付着する有機物などミクロなゴミの除去または分解に効果的である。ここで、被処理体に対し、紫外線処理などのドライエッチング処理を行った後、洗浄などのウェットエッチング処理を行うことで、被処理体表面を清浄化および親水化し、さらに被処理体表面のウォーターマークの発生を抑制できるため、好ましい。
【0078】
または一重項酸素などの活性状態にある酸素を用いた表面処理を行うことが好ましい。オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素により、被処理体表面に付着する有機物を効果的に除去または分解することができる。また、オゾンまたは一重項酸素などの活性状態にある酸素に、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光による処理を組み合わせることで、被処理体表面に付着する有機物をさらに効果的に除去することができる。以下、具体的に説明する。
【0079】
例えば、酸素を含む雰囲気下で紫外線を照射することにより、被処理体の表面処理を行う。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光と200nm以上の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることができる。また、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することにより、オゾンを生成させるとともに一重項酸素を生成させることもできる。
【0080】
酸素を含む雰囲気下で、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光および200nm以上の波長を含む光を照射することにより起きる反応例を示す。
+hν(λnm)→O(P)+O(P) (1)
O(P)+O→O (2)
+hν(λnm)→O(D)+O (3)
【0081】
上記反応式(1)において、酸素(O)を含む雰囲気下で紫外線のうち200nm未満の波長(λnm)を含む光(hν)を照射することにより基底状態の酸素原子(O(P))が生成する。次に、反応式(2)において、基底状態の酸素原子(O(P))と酸素(O)とが反応してオゾン(O)が生成する。そして、反応式(3)において、生成されたオゾン(O)を含む雰囲気下で紫外線のうち200nm以上の波長(λnm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素O(D)が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち200nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともに、200nm以上の波長を含む光を照射することによりオゾンを分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下での低圧水銀ランプの照射(λ=185nm、λ=254nm)により行うことができる。
【0082】
また、酸素を含む雰囲気下で、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射して起きる反応例を示す。
+hν(λnm)→O(D)+O(P) (4)
O(P)+O→O (5)
+hν(λnm)→O(D)+O (6)
【0083】
上記反応式(4)において、酸素(O)を含む雰囲気下で紫外線のうち180nm未満の波長(λnm)を含む光を照射することにより、励起状態の一重項酸素O(D)と基底状態の酸素原子(O(P))が生成する。次に、反応式(5)において、基底状態の酸素原子(O(P))と酸素(O)とが反応してオゾン(O)が生成する。反応式(6)において、生成されたオゾン(O)を含む雰囲気下で紫外線のうち180nm未満の波長(λnm)を含む光が照射されることにより、励起状態の一重項酸素と酸素が生成される。酸素を含む雰囲気下において、紫外線のうち180nm未満の波長を含む光を照射することによりオゾンを生成させるとともにオゾンまたは酸素を分解して一重項酸素を生成する。上記のような表面処理は、例えば、酸素を含む雰囲気下でのXeエキシマUVランプの照射により行うことができる。
【0084】
紫外線のうち200nm未満の波長を含む光により被処理体表面に付着する有機物などの化学結合を切断し、オゾンまたは一重項酸素により被処理体表面に付着する有機物や化学結合を切断した有機物などを酸化分解して除去することができる。上記のような表面処理を行うことで、被処理体表面の親水性および清浄性をより高めることができ、接合を良好に行うことができる。
【0085】
また、支持基板300と半導体基板110とを貼り合わせる前に、支持基板300及び絶縁膜301を加熱し、支持基板300及び絶縁膜301の表面の水分を除去することで貼り合わせ不良を低減することもできる。これは、支持基板300及び絶縁膜301の界面において、残留する水分と共に気体やパーティクルが混入することを低減できるためである。支持基板300及び絶縁膜301の加熱は、水が蒸発する温度、例えば、55℃以上100℃以下で行えばよい。
【0086】
支持基板300と半導体基板110とを貼り合わせた後は、貼り合わせられた支持基板300および半導体基板110に対して熱処理を施して、貼り合わせを強固なものとすると良い。この際の加熱温度は、脆化領域112における分離が進行しない温度とする必要がある。例えば、400℃未満、好ましくは300℃以下とする。熱処理時間については特に限定されず、処理時間と貼り合わせ強度との関係から適切な条件を設定すればよい。例えば、200℃、2時間の熱処理を施すことができる。なお、貼り合わせに係る領域にマイクロ波などを照射して、該領域のみを局所的に加熱することも可能である。貼り合わせ強度に問題がない場合には、上記熱処理は省略すれば良い。
【0087】
次に、半導体基板110を、脆化領域112において、半導体層116と半導体基板117とに分離する(図4(D)参照)。半導体基板110の分離は、熱処理により行うと良い。該熱処理の温度は、支持基板300の耐熱温度を目安にすることができる。例えば、支持基板300としてガラス基板を用いる場合には、熱処理の温度は500℃以上750℃以下とすることが好ましい。ただし、ガラス基板の耐熱性が許すのであればこの限りではない。本実施の形態においては、600℃、2時間の熱処理を施すこととする。
【0088】
上述のような熱処理を行うことにより、脆化領域112の微小な孔の内部の圧力が上昇する。圧力の上昇により、脆化領域112に形成された微小な空孔の体積変化が生じ、脆化領域112に亀裂が生ずる。その結果、脆化領域112に沿って半導体基板110が分離する。これにより、支持基板300上には半導体基板110から分離された半導体層302が残存することになる。また、この熱処理で、貼り合わせに係る界面が加熱されるため、当該界面に共有結合が形成され、貼り合わせを一層強固なものとすることができる。
【0089】
なお、脆化領域112を半導体基板110の陽極酸化により形成した場合、ウォータジェット法を用いて脆化領域112を切断してもよい。
【0090】
分離後の半導体基板117は、再生工程によって再生半導体基板となり、再度用いることができる。分離後の半導体基板117の表面には、脆化領域112などに起因する欠陥が存在しているため、平坦性を向上させる処理を行うことが望ましい。
【0091】
半導体基板110の分離後、支持基板300及び絶縁膜301の密着性を高めるために、半導体層116の端部にレーザ光を照射してもよい。
【0092】
次に、半導体層116に平坦化処理を行い、半導体層302を形成する(図4(E)参照)。
【0093】
半導体層116の平坦化処理は、例えば、レーザ光を照射する方法がある。半導体層116にレーザ光を照射することで、半導体層116が溶融し、その後の冷却、固化によって、欠陥が低減され、表面の平坦性が向上した半導体層302が得られるのである。
【0094】
レーザ光は、半導体層116に吸収される波長のレーザ光を用いることができる。
【0095】
また、レーザ光は、半導体層116が部分溶融または完全溶融するエネルギーで照射する。なお、レーザ光による半導体層116の溶融は、部分溶融とすることが好ましい。部分溶融とは、この場合、半導体層116の上部は溶融して液相となるが、下部は溶融せずに固相のままであることをいう。半導体層を部分溶融させることにより、溶融されていない固相部分から結晶成長が進行する。これにより、表面の平坦性が高く、且つ欠陥の少ない半導体層302を形成することができる。また、半導体層116の部分溶融により、支持基板300の温度上昇を低減することができる。このため、支持基板300として、ガラス基板のような耐熱性の低い基板を用いることが可能である。なお、レーザ光の照射により形成された多結晶半導体領域を選択的に除去してもよい。
【0096】
また、エッチング処理やCMP(Chemical Mechanical Polishing)等の研磨処理等により、半導体層116の膜厚を薄くする薄膜化工程を行うことで、半導体層302を得ることができる。
【0097】
エッチング処理には、例えば、ドライエッチング処理またはウェットエッチング処理の一方、または双方を組み合わせたエッチング処理を適用することができる。
半導体層116がシリコンからなる場合、SFとOをプロセスガスに用いたドライエッチング処理で、半導体層116を薄くすることができる。
【0098】
また、エッチング処理に代えてCMP等の研磨処理を行ってもよく、またはエッチング処理とCMP処理を組み合わせて行ってもよい。半導体層116の膜厚は、例えば10nm以上200nm以下とすることができる。
【0099】
以上のように、支持基板300の上に絶縁膜301を介して半導体層302を有する基板400を形成することができる。
【0100】
次に、支持基板300を覆うように、半導体層302上にゲート絶縁膜303、第1の導電膜304、第2の導電膜305、及びレジスト膜306を形成する(図2(B)参照)。本実施の形態ではゲート絶縁膜303上に設けられるゲート電極を積層構造とするため、第1の導電膜304と第2の導電膜305とを積層する。
【0101】
ゲート絶縁膜303は、プラズマCVD法を用いて、酸化シリコン層を単層で形成することとする。ゲート絶縁膜303は、酸化シリコン以外にも、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタルなどを含む層を、単層構造または積層構造で形成することができる。
【0102】
プラズマCVD法以外の作製方法としては、スパッタリング法や、高密度プラズマ処理による酸化または窒化による方法が挙げられる。高密度プラズマ処理は、例えば、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などガスの混合ガスを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体層の表面を酸化または窒化することにより、1nm以上20nm以下、望ましくは2nm以上10nm以下の絶縁層を半導体層に接するように形成する。
【0103】
上述した高密度プラズマ処理による半導体層の酸化または窒化は固相反応であるため、ゲート絶縁膜303と半導体層302との界面準位密度をきわめて低くすることができる。また、高密度プラズマ処理により半導体層302を直接酸化または窒化することで、形成されるゲート絶縁膜303の厚さのばらつきを抑えることができる。なお、高密度プラズマ処理により形成されたゲート絶縁膜303は、特性のばらつきを抑制することができる。
【0104】
また、半導体層302の表面を熱酸化させることで、ゲート絶縁膜303を形成しても良い。熱酸化を用いる場合には、ある程度の耐熱性を有する基板を用いることが必要である。
【0105】
なお、水素を含むゲート絶縁膜303を形成し、その後、350℃以上450℃以下の温度による加熱処理を行うことで、ゲート絶縁膜303中に含まれる水素を半導体層302中に拡散させるようにしても良い。この場合、ゲート絶縁膜303として、プラズマCVD法を用いた窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを用いることができる。なお、プロセス温度は350℃以下とすると良い。このように、半導体層302に水素を供給することで、半導体層302中、および、ゲート絶縁膜303と半導体層302の界面における欠陥を効果的に低減することができる。
【0106】
ゲート電極とする、第1の導電膜304及び第2の導電膜305は、積層して形成する。第1の導電膜304は、例えば、モリブデン膜、チタン膜、窒化チタン膜等を用い、第2の導電膜305は、例えば、アルミニウム膜、タングステン膜などを用いればよい。本実施の形態では、第1の導電膜304に窒化チタン膜を用い、第2の導電膜305にタングステン膜を用いた2層構造の導電膜を形成することとする。
【0107】
次に、マスク層770a及びマスク層770bを、光強度低減機能を有する露光マスク750を用いて形成する(図2(C)及び図2(D)参照)。
【0108】
光強度低減機能を有する露光マスクは、半透膜からなる光強度低減機能を有する補助パターンを設置した露光マスクである。
【0109】
また、光強度低減機能を有する露光マスクは、半透膜が有する光強度低減機能により、通過する光強度は10%以上70%以下にすることができる。本実施の形態では、露光領域が除去されるポジ型のレジストを用いる場合を示す。
【0110】
レジスト膜306上部には、光学系を介して露光マスク750が設置されている。
【0111】
露光マスク750は、透光性の基板753にMoSiNからなる半透膜751a、半透膜751bを設け、半透膜751aと積層するようにCrなどの金属膜からなる遮光部752aを設けている。半透膜751a、半透膜751bは他にMoSi、MoSiO、MoSiON、CrSiなどを用いて形成することができる。
【0112】
露光マスク750を用いてレジスト膜306の露光を行うと、レジスト膜306に、露光領域762、非露光領域761a、及び非露光領域761bが形成される。露光領域762は、露光時の光の遮光部の回り込みや、光が半透膜を通過することによって形成される。
【0113】
そして、現像を行うと、露光領域762が除去されて、図2(D)に示すレジストパターンであるマスク層770a及びマスク層770bが得られる。
【0114】
マスク層770a及びマスク層770bを形成する他の方法として、複数の強度で光が透過する露光マスクを用いる方法もある。
【0115】
複数の強度で光が透過する露光マスクは、複数のスリットを有する回折格子パターンを遮光部と遮光部との間に設けた露光マスクである。回折格子パターンとは、スリット、ドット等の開口パターンが少なくとも1つ以上設けられたパターンである。複数開口を有する場合、その開口は秩序を有し規則的(周期的)に配置されていてもよいし、無秩序(非周期的)に配置されていてもよい。露光装置の解像度以下の微細な幅の非開口部(ライン)と開口(スペース)とを有する回折格子パターンを用いることによって、実質的な露光量を変調することが可能であり、露光されたレジスト膜の現像後の膜厚を調整することができる。解像度とは、露光装置によって形成できる最小線幅であり、投影露光装置においては、解像度Rは、R=Kλ/NAによって表される。Kは定数、λは露光に用いる光の波長、NAは投影レンズの開口数である。よって、図2(C)に示す方法でレジスト膜を加工すると、工程を増やさずに選択的に微細な加工ができ、多様なレジストパターン(マスク層)が得られる。
【0116】
また、露光マスク750の光強度低減機能を有する回折格子は、解像度をa、露光装置の縮小率をbとすると、開口がa/b×0.8以下、非開口部がa/b×0.5以下が好ましい。具体的には、a=1.5μm、b=1の場合、開口/非開口部=0.5μm/0.5μm、0.75μm/0.75μm、1μm/0.5μm、0.75μm/0.5μmとする。
【0117】
上述の露光工程により、マスク層770aの領域800の膜厚及びマスク層770bの膜厚は、マスク層770aの領域801の膜厚より薄く形成される。これは、後に説明するアッシング等の処理で、マスク層770aの一部及びマスク層770bを除去するためである。例えば、領域801の膜厚に対する、領域800及びマスク層770bの膜厚の比率が、5%以上90%以下、好ましくは、7%以上50%以下、より好ましくは10%以上35%未満とするように形成すればよい。
【0118】
また、マスク層770aの領域800を除去し、マスク層770aの領域801の一部を残すためには、マスク層770aの領域800とマスク層770aの領域801との間の角度θをほぼ垂直に形成することが好ましい。マスク層770aの領域800とマスク層770aの領域801との間の角度θをほぼ垂直に形成することで、後に形成する第2の導電層305cのチャネル長方向の長さとほぼ同等であるマスク層780aを形成することができる。
【0119】
本実施の形態では、マスク層770aの領域800の膜厚及びマスク層770bの膜厚を400nm程度に形成し、マスク層770aの領域801の膜厚を1.4μm程度に形成することとする。ただし、露光条件によって、露光マスク750を用いて得られたマスク層770a及びマスク層770bの表面は、同領域(領域800または領域801)内においても、微細な凹凸を有していることがある。そのため、当該膜厚は平均膜厚として換算するものとする。以下に示す膜厚も、平均膜厚として換算するものとする。
【0120】
次に、マスク層770a及びマスク層770bを用いて、第1の導電膜304及び第2の導電膜305をエッチングし、第1の導電層304a、第2の導電層305a、第1の導電層304b、及び第2の導電層305bを形成する(図2(E)参照)。
【0121】
第1の導電膜304及び第2の導電膜305から、第1の導電層304a、第2の導電層305a、第1の導電層304b、及び第2の導電層305bを形成するエッチング処理としては、例えば、ドライエッチングを適用することができるが、開示する発明の一態様はこれに限定されない。本実施の形態では、エッチング処理としてドライエッチングを用いる。エッチング処理を行うことで、マスク層770a及びマスク層770bは膜減りが生じることがある。例えば、ドライエッチングを行った場合、マスク層770a及びマスク層770bの膜厚は100nm以上200nm以下程度の膜減りが生じる。
【0122】
次に、マスク層770a及びマスク層770bにアッシング等の処理を行うことで、マスク層770aの一部及びマスク層770bを除去し、マスク層780aを形成する(図3(A)参照)。
【0123】
ここで行うアッシング等の処理は、マスク層770bを除去するために行う。これは、後の工程で第1の導電層304bを表面に露出させるため、第2の導電層305bを除去する必要があり、第2の導電層305bを除去するためには、マスク層770bを除去する必要があるからである。
【0124】
マスク層770a及びマスク層770bは、アッシング等の処理を行うことで、後退(縮小)する。マスク層770aの領域800及びマスク層770bの膜厚は、マスク層770aの領域801の膜厚より薄く形成されているため、マスク層770aの領域801よりマスク層770aの領域800及びマスク層770bの方が先に除去される。ただし、マスク層770aの領域801もアッシング等の処理が行われているため、後退(縮小)し、マスク層780aとなる。マスク層770aの一部及びマスク層770bが除去されることで、第2の導電層305aの表面の一部(図3(A)中の領域802)及び第2の導電層305aの表面は露出する。
【0125】
アッシング等の処理条件は、マスク層770aの一部(マスク層780a)が残り、且つマスク層770bが除去される条件を適宜選択すればよい。本実施の形態ではアッシング処理として酸素プラズマによるアッシング処理を用いることとする。酸素プラズマによるアッシング処理を行った場合、例えば、マスク層770aの領域801の膜厚は、600nm程度後退(縮小)し、マスク層770aの領域801のチャネル長方向の長さは800nm程度後退(縮小)する。
【0126】
次に、マスク層780aを用いて選択的にエッチング処理を行うことで、第2の導電層305aから第2の導電層305cを形成する。一方、第2の導電層305bはエッチング処理により除去され、第1の導電層304bの表面が露出する。また、選択的にエッチング処理を行うことで、第1の導電層304a及び第1の導電層304bと重畳する領域以外のゲート絶縁膜303の一部はエッチングされ膜厚が薄くなり(膜減りともいう)、ゲート絶縁膜303aとなる。なお、第1の導電層304aの側端部は、第2の導電層305cの側端部より延在する形状となる(図3(B)参照)。
【0127】
次に、マスク層780a、第1の導電層304a、第2の導電層305c、及び第1の導電層304bが設けられた半導体層302に一導電型を付与する不純物元素として、p型を付与する不純物元素307を導入し、第1の不純物領域308b、第2の不純物領域310a、及び第2の不純物領域310bを形成する(図3(C)参照)。また、不純物元素307が添加されない半導体層302の領域は、チャネル形成領域309となる。ここでは、一導電型を付与する不純物元素として、ホウ素を用いる。ホウ素の他に、例えば、アルミニウムなどを用いることができる。
【0128】
不純物元素307の添加の条件は、要求される特性などに応じて適宜変更することができる。
【0129】
本実施の形態では、p型を付与する不純物元素を用いてp型のトランジスタを形成するが、n型を付与する不純物元素を用いてn型のトランジスタを形成してもよい。n型を付与する不純物元素として、例えば、リンやヒ素などを用いることもできる。
【0130】
半導体層302に一導電型を付与する不純物元素307を導入する方法として、イオンドーピング法やイオン注入法などを用いることができる。
【0131】
不純物元素307を添加することで形成される第1の不純物領域308bの深さ方向の不純物濃度分布の極大は、第2の不純物領域310a及び第2の不純物領域310bの深さ方向の不純物濃度分布の極大より絶縁膜301側に位置している。これは、半導体層302に不純物元素307を添加する際に、第1の導電層304bがマスクの機能を果たし、不純物元素307の導入を妨げるためである。
【0132】
また、チャネル形成領域は、第1の導電層304a及び第2の導電層305aがマスクの機能を果たすため、不純物元素307は導入されない。
【0133】
本実施の形態では、第1の導電層304a、第2の導電層305c、及び第1の導電層304bをマスクとして利用することで、1回の不純物元素307の添加で自己整合的に、第1の不純物領域308b、第2の不純物領域310a、第2の不純物領域310b、及びチャネル形成領域309を形成する。1回の不純物元素307の添加で、不純物濃度分布の極大が異なる領域を形成することができる。このため、マスクを削減することができ、製造工程の簡略化が可能となる。
【0134】
次に、第2の導電層305c上に形成されたマスク層780aを除去する。
【0135】
本実施の形態では、マスク層780aの除去は、不純物元素307を添加した後に行っているが、不純物元素307を添加する前に行ってもよい。
【0136】
次に、第2の導電層305cをマスクとして、第1の導電層304a及び第1の導電層304bを選択的にエッチングして、第1の導電層304cを形成する(図3(D)参照)。
【0137】
なお、第1の導電層304a及び第1の導電層304bを選択的にエッチングする前は、第1の導電層304b側の第1の導電層304aの側端部は、第1の導電層304b側の第2の導電層305cの側端部より外側に延在している。そのため、第1の導電層304a及び第1の導電層304bを選択的にエッチングする際に、第2の導電層305cの側端部より外側に延在している第1の導電層304aの領域も除去され、第1の導電層304cが形成される。
【0138】
よって、図3(D)に示すように、チャネル形成領域309上にゲート電極が重ならない領域(オフセット領域)が形成される可能性がある。しかし、オフセット領域のチャネル長方向の長さは非常に微細なため、添加された不純物元素307の回り込みによって、オフセット領域とならないと考えられる。
【0139】
第1の導電層304a及び第2の導電層305aは、ゲート電極として機能する。
【0140】
次に、ゲート絶縁膜303a、第1の導電層304c、及び第2の導電層305cを覆うように層間絶縁膜311を形成し、第2の不純物領域310aの一部及び第2の不純物領域310bの一部が露出するように、層間絶縁膜311にコンタクトホールを形成する。
【0141】
層間絶縁膜311には、例えば、酸化シリコン、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)等の無機材料でなる絶縁層や、ポリイミド、アクリル等の有機樹脂等の層を用いることができる。また、層間絶縁膜311は単層構造または積層構造で形成することができる。
【0142】
次に、コンタクトホールを介して、第2の不純物領域310a及び第2の不純物領域310bに接する導電層を形成し、導電層を選択的にエッチングすることで、ソース電極312a及びドレイン電極312bを形成する(図3(E)参照)。
【0143】
導電層は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の低抵抗金属層をバリアメタル層で挟んだ3層構造の導電層で形成することができる。バリアメタル層としては、モリブデン、クロム、チタン等を用いることができる。
【0144】
以上より、第1の不純物領域308b、第2の不純物領域310a、及び第2の不純物領域310bを有するトランジスタを作製することができる。
【0145】
なお、半導体層302は、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウムなどの第14族元素でなる単結晶半導体層を用いることができる。半導体層302に該単結晶半導体層を用いた場合には、ドナー元素、アクセプター元素などの抵抗値を制御するための不純物元素が添加されていても良い。また、ガリウムヒ素やインジウムリン等の化合物半導体層を用いることもできる。また、単結晶半導体層の他に、多結晶半導体層、非晶質半導体層なども用いることができる。なお、本実施の形態では、半導体層302として単結晶シリコン層を用いる。
【0146】
本実施の形態では、第1の不純物領域と、第2の不純物領域と、を1回の添加で同時に形成することができるため、マスクを削減することができ、製造工程の簡略化が可能となる。これにより、生産性の向上を図ることができる。
【0147】
本実施の形態では、ドレイン領域において、深さ方向の不純物濃度分布の極大が深い第1の不純物領域308bが、チャネル形成領域309に接し、深さ方向の不純物濃度分布の極大が浅い第2の不純物領域310bが、ドレイン電極312bに接している。
【0148】
第1の不純物領域308bの深さ方向の不純物濃度分布の極大が、ゲート電極端と離れて位置することによって、トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、ドレイン近傍の電界を緩和し、ホットキャリア注入による劣化を防ぐ効果もある。
【0149】
また、深さ方向の不純物濃度分布の極大が浅い第2の不純物領域310bが、ドレイン電極312bに接することで、コンタクト抵抗を増加させることなくドレイン領域とドレイン電極312bとの良好な電気的接続を行うことができる。
【0150】
上述したように、オフ電流が低減されたトランジスタを作製することができる。よって、該トランジスタを用いて信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0151】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0152】
(実施の形態2)
本実施の形態における表示装置の作製方法を、図5乃至図12を用いて詳細に説明する。
【0153】
図5(A)は本発明に係る表示パネルの構成を示す上面図であり、絶縁表面を有する基板2700上に画素2702をマトリクス上に配列させた画素部2701、走査線側入力端子2703、信号線側入力端子2704が形成されている。画素数は種々の規格に従って設ければ良く、XGAであれば1024×768×3(RGB)、UXGAであれば1600×1200×3(RGB)、フルスペックハイビジョンに対応させるのであれば1920×1080×3(RGB)とすれば良い。
【0154】
画素2702は、走査線側入力端子2703から延在する走査線と、信号線側入力端子2704から延在する信号線とが交差することで、マトリクス状に配設される。画素2702のそれぞれには、スイッチング素子とそれに接続する画素電極層が備えられている。スイッチング素子の代表的な一例はTFTであり、TFTの導電層側が走査線と、ソース若しくはドレイン側が信号線と接続されることにより、個々の画素を外部から入力する信号によって独立して制御可能としている。
【0155】
図5(A)は、走査線及び信号線へ入力する信号を、外付けの駆動回路により制御する表示パネルの構成を示しているが、図6(A)に示すように、COG(Chip on Glass)方式によりドライバIC2751を基板2700上に実装しても良い。また他の実装形態として、図6(B)に示すようなTAB(Tape Automated Bonding)方式を用いてもよい。ドライバICは単結晶半導体基板に形成されたものでも良いし、ガラス基板上にTFTで回路を形成したものであっても良い。図6(A)及び図6(B)において、ドライバIC2751は、FPC(Flexible printed circuit)2750と接続している。
【0156】
また、画素に設けるTFTを結晶性を有する半導体で形成する場合には、図5(B)に示すように走査線側駆動回路3702を基板3700上に形成することもできる。図5(B)において、画素部3701は、信号線側入力端子3704と接続した図5(A)と同様に外付けの駆動回路により制御する。画素に設けるTFTを移動度の高い、多結晶(微結晶)半導体、単結晶半導体などで形成する場合は、図5(C)に示すように、画素部4701、走査線駆動回路4702と、信号線駆動回路4704を基板4700上に一体形成することもできる。
【0157】
次に、図5(B)及び図5(C)に示した表示装置に用いるトランジスタの作製方法を図7乃至図12を用いて説明する。
【0158】
まず、支持基板300の上に絶縁膜301を介して半導体層103、半導体層104、半導体層105、及び半導体層106を有する基板400を形成する(図7(A)参照)。基板400の作製方法は実施の形態1と同様に作製することができるため、詳細な説明は省略する。
【0159】
次に、半導体層103、半導体層104、半導体層105、及び半導体層106を覆うゲート絶縁層107を形成し、ゲート絶縁層107上に第1の導電膜108及び第2の導電膜109を積層して形成する(図7(B)参照)。
【0160】
ゲート絶縁層107、第1の導電膜108、及び第2の導電膜109は、それぞれ実施の形態1のゲート絶縁膜303、第1の導電膜304、及び第2の導電膜305と同様に形成することができるため、詳細な説明は省略する。
【0161】
ゲート絶縁層107、第1の導電膜108及び第2の導電膜109上に、所望な形状に加工するためのレジストからなるマスク層157a、マスク層158a、マスク層157b、マスク層158b、マスク層157c、マスク層158d、マスク層157e、及びマスク層158eを形成する(図7(C)参照)。マスク層157a、マスク層158a、マスク層157b、マスク層158b、マスク層157c、マスク層158d、マスク層157e、及びマスク層158eは実施の形態1で示したマスク層770a及びマスク層770bと同様に、光強度低減機能を有する露光マスク、または複数の強度で光が透過する露光マスクを用いて形成することができる。このような露光マスクであると多様な露光の制御がより正確に行えるので、レジストをより精密な形状に加工することができる。よって、そのようなマスク層を用いると同一な工程で、所望とする性能に合わせた異なった形状で導電膜や絶縁膜の加工をすることができる。よって、異なる特性を有するトランジスタや、サイズや形状の異なる配線などを、工程を増加することなく作製することができる。
【0162】
次に、マスク層157a、マスク層158a、マスク層157b、マスク層158b、マスク層157c、マスク層158d、マスク層157e及びマスク層158eを用いて、第1の導電膜108及び第2の導電膜109を所望な形状にエッチングし、第1の導電層121、第1の導電層122、第1の導電層124、第1の導電層125、第1の導電層126、第1の導電層141、第1の導電層142、第1の導電層145、及び第1の導電層146、並びに第2の導電層131、第2の導電層132、第2の導電層134、第2の導電層135、及び第2の導電層136を形成する(図7(D)参照)。
【0163】
第1の導電膜108及び第2の導電膜109のエッチング工程により、マスク層157a、マスク層157b、マスク層157c、及びマスク層157eは、それぞれエッチングされてマスク層110a、マスク層110b、マスク層110c、マスク層110d、及びマスク層110eとなる。一方、マスク層158a、マスク層158b、マスク層158d、及びマスク層158eはエッチングされて、第1の導電層141、第1の導電層142、第1の導電層145、及び第1の導電層146が露出する。
【0164】
その後、エッチング工程後のマスク層110a、マスク層110b、マスク層110c、マスク層110d、及びマスク層110eは除去する。
【0165】
マスク層157a、マスク層158a、マスク層157b、マスク層158b、マスク層157c、マスク層158d、マスク層157e、及びマスク層158eを用いて、第1の導電膜108及び第2の導電膜109を所望な形状にエッチングする方法は、実施の形態1と同様に行うことができるので、詳細な説明は省略する。
【0166】
第1の導電層及び第2の導電層は垂直な側面を有している。しかし、本発明はそれに限定されず、テーパー形状を有していてもよい。
【0167】
導電層を形成する際のエッチング工程によって、ゲート絶縁層107は多少エッチングされ、膜厚が減る(いわゆる膜減り)ことがある。
【0168】
次に、第1の導電層121、第2の導電層131、及び半導体層103を覆うマスク層153aと、第1の導電層126、第2の導電層136、及び半導体層106を覆うマスク層153bと、を形成し、半導体層104及び半導体層105に一導電型を付与する不純物元素152を導入し、不純物領域を形成する(図8(A)参照)。図8(A)の工程では、n型のトランジスタを形成するため、一導電型を付与する不純物元素152として、n型を付与する不純物元素(本実施の形態ではリン(P))を用いる。
【0169】
一導電型を付与する不純物元素152を導入する方法として、イオンドーピング法やイオン注入法などを用いることができる。
【0170】
不純物元素152の添加の条件は、要求される特性などに応じて適宜変更することができる。
【0171】
第1の導電層122と第1の導電層142と第2の導電層132とが設けられた半導体層104、及び第1の導電層124と第1の導電層125と第1の導電層145と第2の導電層134と第2の導電層135とが設けられた半導体層105にn型を付与する不純物元素152を添加し、第1の不純物領域145b、第1の不純物領域148b、第1の不純物領域148d、第2の不純物領域144a、第2の不純物領域144b、第2の不純物領域147a、第2の不純物領域147b、及び第2の不純物領域147cを形成する。また、不純物元素152が添加されない半導体層104の領域及び半導体層105の領域は、チャネル形成領域150、チャネル形成領域149a、及びチャネル形成領域149bとなる。なお、半導体層103の領域及び半導体層106の領域は、不純物元素152が添加されても、マスク層153a及びマスク層153bによってマスクされているため、不純物領域は形成されない。
【0172】
不純物元素152を添加することで形成された、第1の不純物領域145b、第1の不純物領域148b、及び第1の不純物領域148dの深さ方向の不純物濃度分布の極大は、第2の不純物領域144a、第2の不純物領域144b、第2の不純物領域147a、第2の不純物領域147b、及び第2の不純物領域147cの深さ方向の不純物濃度分布の極大より絶縁膜301側にある。これは、半導体層104及び半導体層105に不純物元素152を添加する際に、第1の導電層121、第1の導電層122、第1の導電層124、第1の導電層125、第1の導電層126、第1の導電層141、第1の導電層142、第1の導電層145、及び第1の導電層146がマスクの機能を果たし、不純物元素152の導入を妨げるためである。
【0173】
本実施の形態では、n型を付与する不純物元素152を1回添加することで自己整合的に、n型を付与する第1の不純物領域及びn型を付与する第2の不純物領域を形成することができる。このため、露光マスクを削減することができ、製造工程の簡略化が可能となる。
【0174】
次に、マスク層153a、マスク層153bを除去し、第1の導電層122、第2の導電層132、第1の導電層142、及び半導体層104を覆うマスク層155aと、第1の導電層124、第2の導電層134、第1の導電層125、第2の導電層135、第1の導電層145、及び半導体層105を覆うマスク層155bと、を形成し、半導体層103及び半導体層106に一導電型を付与する不純物元素154を添加(導入)し、不純物領域を形成する。(図8(B)参照)。図8(B)の工程では、p型のトランジスタを形成するため、一導電型を付与する不純物元素154として、p型を付与する不純物元素(本実施の形態ではボロン(B))を用いる。
【0175】
一導電型を付与する不純物元素154を導入する方法は、実施の形態1を参照することができるため、詳細な説明は省略する。
【0176】
第1の導電層121と第1の導電層141と第2の導電層131とが設けられた半導体層103、及び第1の導電層126と第1の導電層146と第2の導電層136とが設けられた半導体層106にp型を付与する不純物元素154を添加し、第1の不純物領域161b、第1の不純物領域164b、第2の不純物領域160a、第2の不純物領域160b、第2の不純物領域163a、及び第2の不純物領域163bを形成する。また、不純物元素154が添加されない半導体層103の領域及び半導体層106の領域は、チャネル形成領域162及びチャネル形成領域165となる。なお、半導体層104の領域及び半導体層105の領域は、不純物元素154が添加されても、マスク層155a及びマスク層155bによってマスクされているため、不純物領域は形成されない。
【0177】
不純物元素154を添加することで形成された、第1の不純物領域161b、及び第1の不純物領域164bの深さ方向の不純物濃度分布の極大は、第2の不純物領域160a、第2の不純物領域160b、第2の不純物領域163a、及び第2の不純物領域163bの深さ方向の不純物濃度分布の極大より絶縁膜301側にある。これは、半導体層103及び半導体層106に不純物元素154を添加する際に、第1の導電層121、第1の導電層126、第1の導電層141、及び第1の導電層146がマスクの機能を果たし、不純物元素154の導入を妨げるためである。
【0178】
本実施の形態では、p型を付与する不純物元素154を1回添加することで自己整合的に、p型を付与する第1の不純物領域及びp型を付与する第2の不純物領域を形成することができる。このため、露光マスクを削減することができ、製造工程の簡略化が可能となる。
【0179】
p型を付与する不純物元素154の添加後は、マスク層155a及びマスク層155bを除去する。
【0180】
次に、第2の導電層131、第2の導電層132、第2の導電層134、第2の導電層135、及び第2の導電層136をマスクとして、第1の導電層141、第1の導電層142、第1の導電層144、第1の導電層145、及び第1の導電層146を除去し、第1の導電層121、第1の導電層122、第1の導電層124、第1の導電層125、及び第1の導電層126から第1の導電層121c、第1の導電層122c、第1の導電層124c、第1の導電層125c、第1の導電層126cを形成する(図9(A)参照)。
【0181】
第1の導電層141、第1の導電層142、第1の導電層145、及び第1の導電層146を除去する方法は、実施の形態1を参照することができるため、詳細な説明は省略する。
【0182】
第1の導電層141、第1の導電層142、第1の導電層の144、第1の導電層145、及び第1の導電層146を除去する前は、第1の導電層121、第1の導電層122、第1の導電層の124、第1の導電層125、及び第1の導電層126は、第2の導電層131、第2の導電層132、第2の導電層134、第2の導電層135、及び第2の導電層136の側端部より外側に延在している。そのため、第1の導電層141、第1の導電層142、第1の導電層145、及び第1の導電層146を除去する際に、第2の導電層131、第2の導電層132、第2の導電層134、第2の導電層135、及び第2の導電層136の側端部より外側に延在している第1の導電層121、第1の導電層122、第1の導電層の124、第1の導電層125、及び第1の導電層126の領域も除去され、第1の導電層121c、第1の導電層122c、第1の導電層の124c、第1の導電層125c、及び第1の導電層126cが形成される。
【0183】
なお、第1の導電層121cと第2の導電層131、第1の導電層122cと第2の導電層132、第1の導電層124cと第2の導電層134、第1の導電層125cと第2の導電層135、第1の導電層126cと第2の導電層136は、それぞれゲート電極として機能する。
【0184】
不純物元素を活性化するために加熱処理、強光の照射、又はレーザ光の照射を行ってもよい。活性化と同時にゲート絶縁層へのプラズマダメージやゲート絶縁層と半導体層との界面へのプラズマダメージを回復することができる。
【0185】
次いで、ゲート電極、ゲート絶縁層を覆う第1の層間絶縁膜を形成する。本実施の形態では、絶縁膜167と絶縁膜168との積層構造とする(図9(B)参照)。絶縁膜167として窒化酸化珪素膜を膜厚200nm形成し、絶縁膜168として酸化窒化珪素膜を膜厚800nm形成し、積層構造とする。また、第1の層間絶縁膜として、ゲート電極、ゲート絶縁層を覆って、酸化窒化珪素膜を膜厚50nm形成し、窒化酸化珪素膜を膜厚140nm形成し、酸化窒化珪素膜を膜厚800nm形成する、3層の積層構造としてもよい。
【0186】
絶縁膜167及び絶縁膜168は、例えば、スパッタリング法、またはプラズマCVD法を用いた窒化珪素膜、窒化酸化珪素膜、酸化窒化珪素膜、酸化珪素膜などの絶縁膜で形成することができる。また、他の元素を含む珪素膜を単層または3層以上の積層構造として用いても良い。本実施の形態では、絶縁膜167及び絶縁膜168は、プラズマCVD法を用いて連続的に形成する。
【0187】
さらに、窒素雰囲気中で、300℃以上550℃以下で1時間以上12時間以下の熱処理を行い、半導体層を水素化する工程を行う。好ましくは、400℃以上500℃以下で行う。この工程は層間絶縁膜である絶縁膜167に含まれる水素により半導体層のダングリングボンドを終端する工程である。本実施の形態では、410℃で加熱処理を行う。
【0188】
絶縁膜167、絶縁膜168は、他に窒化アルミニウム(AlN)、酸化窒化アルミニウム(AlON)、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウム(AlNO)または酸化アルミニウム、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素(CN)、ポリシラザン、その他の無機絶縁性材料を含む物質から選ばれた材料で形成することができる。また、シロキサン樹脂を用いてもよい。また、有機絶縁性材料を用いてもよく、有機材料としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテンを用いることができる。また、オキサゾール樹脂を用いることもでき、例えば感光性ポリベンゾオキサゾールなどを用いることができる。感光性ポリベンゾオキサゾールは、誘電率が低く(常温1MHzで誘電率2.9)、耐熱性が高く(示差熱天秤(TGA)昇温5℃/minで熱分解温度550℃)、吸水率が低い(常温24時間で0.3%)材料である。平坦性のよい塗布法によってされる塗布膜を用いてもよい。
【0189】
次いで、レジストからなるマスクを用いて絶縁膜167、絶縁膜168、及びゲート絶縁層107に、半導体層に達するコンタクトホール(開口)を形成する。エッチングは、用いる材料の選択比によって、1回で行っても複数回行っても良い。絶縁膜167、絶縁膜168、及びゲート絶縁層107を除去し、n型の不純物領域である第2の不純物領域144a、第2の不純物領域144b、第2の不純物領域147a、及び第2の不純物領域147c、並びにp型の不純物領域である第2の不純物領域160a、第2の不純物領域160b、第2の不純物領域163a、及び第2の不純物領域163bに達する開口を形成する。
【0190】
開口を形成するエッチング方法は、ウェットエッチングでもドライエッチングでもよく、両方を組み合わせて行ってもよい。エッチング用ガスとしては、Cl、BCl、SiClもしくはCClなどを代表とする塩素系ガス、CF、SFもしくはNFなどを代表とするフッ素系ガス、又はOを適宜用いることができる。また用いるエッチング用ガスに不活性気体を添加してもよい。添加する不活性元素としては、He、Ne、Ar、Kr、Xeから選ばれた一種または複数種の元素を用いることができる。
【0191】
次に、開口を覆うように導電膜を形成し、導電膜をエッチングして各ソース領域又はドレイン領域の一部とそれぞれ電気的に接続するソース電極169a、ドレイン電極169b、ソース電極170a、ドレイン電極170b、ソース電極171a、ドレイン電極171b、ソース電極172a、ドレイン電極172bを形成する。
【0192】
ソース電極又はドレイン電極は、例えば、PVD法、CVD法、蒸着法等により導電膜を成膜した後、所望の形状にエッチングして形成することができる。また、液滴吐出法、印刷法、電解メッキ法等により、所定の場所に選択的に導電層を形成することができる。更にはリフロー法、ダマシン法などを用いても良い。ソース電極又はドレイン電極の材料は、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al、Ta、Mo、Cd、Zn、Fe、Ti、Si、Ge、Zr、Baなどの金属又はその合金、若しくはその金属窒化物を用いて形成することができる。また、これらの材料を用いた積層構造としても良い。本実施の形態では、チタン(Ti)を膜厚100nm形成し、アルミニウムとシリコンの合金(Al−Si)を膜厚700nm形成し、チタン(Ti)を膜厚200nm形成し、所望な形状に加工する。
【0193】
以上の工程で、周辺駆動回路領域204にトランジスタ173、トランジスタ174を設け、画素領域206にトランジスタ175、トランジスタ176を設けたアクティブマトリクス基板を作製することができる。(図9(C)参照)。
【0194】
また、アクティブマトリクス基板は、自発光素子を有する発光装置、液晶素子を有する液晶表示装置、その他の表示装置に用いることができる。またCPU(中央演算処理装置)に代表される各種プロセッサやIDチップを搭載したカード等の半導体装置に用いることができる。
【0195】
本実施の形態に限定されず、トランジスタはチャネル形成領域が一つ形成されるシングルゲート構造でも、二つ形成されるダブルゲート構造もしくは三つ形成されるトリプルゲート構造であっても良い。また、周辺駆動回路領域のトランジスタも、シングルゲート構造、ダブルゲート構造もしくはトリプルゲート構造であっても良い。
【0196】
次に、第2の層間絶縁膜として絶縁膜181及び絶縁膜182を形成する(図10(A)参照)。図10は、表示装置の作製工程を示しており、スクライブによる切り離しのための切り離し領域201、FPCの貼り付け部である外部端子接続領域202、周辺部の引き回し配線領域である配線領域203、周辺駆動回路領域204、画素領域206である。配線領域203には配線179a、配線179bが設けられ、外部端子接続領域202には、外部端子と接続する端子電極層178が設けられている。なお、配線179a、配線179b、及び端子電極層178は、ソース電極及びドレイン電極と同じ工程で作製される。
【0197】
絶縁膜181及び絶縁膜182としては酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム(AlN)、窒素を含む酸化アルミニウム(酸化窒化アルミニウムともいう)(AlON)、酸素を含む窒化アルミニウム(窒化酸化アルミニウムともいう)(AlNO)、酸化アルミニウム、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素膜(CN)、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ膜、その他の無機絶縁性材料を含む物質から選ばれた材料で形成することができる。また、シロキサン樹脂を用いてもよい。また、有機絶縁性材料を用いてもよく、有機材料としては、感光性、非感光性どちらでも良く、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、ポリシラザン、低誘電率(Low−k)材料を用いることができる。また、オキサゾール樹脂を用いることもでき、例えば、感光性ポリベンゾオキサゾールなどを用いることができる。感光性ポリベンゾオキサゾールは、誘電率が低く(常温1MHzで誘電率2.9)、耐熱性が高く(示差熱天秤(TGA)昇温5℃/minで熱分解温度550℃)、吸水率が低い(常温24時間で0.3%)材料である。
【0198】
平坦化のために設ける層間絶縁膜としては、耐熱性および絶縁性が高く、且つ、平坦化率の高いものが要求されるので、絶縁膜181の形成方法としては、スピンコート法で代表される塗布法を用いると好ましい。本実施の形態では、絶縁膜181として、シロキサン樹脂材料を用いた塗布膜を形成し、絶縁膜182としてCVD法を用いて窒化酸化珪素膜を形成する。
【0199】
絶縁膜181、絶縁膜182は、その他ディップ法、スプレー塗布、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、CVD法、蒸着法等を採用することができる。液滴吐出法により絶縁膜181、絶縁膜182を形成してもよい。液滴吐出法を用いた場合には材料液を節約することができる。また、液滴吐出法のようにパターンが転写、または描写できる方法、例えば、印刷法(スクリーン印刷やオフセット印刷などパターンが形成される方法)なども用いることができる。
【0200】
次に、図10(B)に示すように、層間絶縁膜である絶縁膜181及び絶縁膜182に開口を形成する。絶縁膜181及び絶縁膜182は、接続領域205(図12(A)参照)、周辺駆動回路領域204、配線領域203、外部端子接続領域202、切り離し領域201等では広面積にエッチングする必要がある。なお、接続領域205とは図12(A)の上面図で示してある領域であり、ソース電極又はドレイン電極と同工程で作製される配線層と、後に発光素子の上部電極層となる第2の電極層とが電気的に接続する領域である。接続領域205は図10においては省略し図示していない。よって、接続領域205においても、絶縁膜181及び絶縁膜182に開口を設ける必要がある。しかし、画素領域206においては開口面積が、周辺駆動回路領域204等の開口面積と比較して非常に小さく、微細なものとなる。従って、画素領域の開口形成用のフォトリソグラフィ工程と、接続領域の開口形成用のフォトリソグラフィ工程とを設けると、エッチング条件のマージンをより広げることができる。その結果、歩留まりを向上させることができる。またエッチング条件のマージンが広がることにより、画素領域に形成されるコンタクトホールを高精度に形成することができる。
【0201】
具体的には、接続領域205、周辺駆動回路領域204、配線領域203、外部端子接続領域202、切り離し領域201に設けられた絶縁膜181及び絶縁膜182に広面積な開口を形成する。そのため、画素領域206と、接続領域205、周辺駆動回路領域204、配線領域203、及び外部端子接続領域202とにおける非開口領域の絶縁膜181及び絶縁膜182を覆うようにマスクを形成する。エッチングは並行平板RIE装置やICPエッチング装置を用いることができる。なおエッチング時間は、配線層や絶縁膜168がオーバーエッチングされる程度とするとよい。このようにオーバーエッチングされる程度とすると、基板内の膜厚バラツキと、エッチングレートのバラツキを低減することができる。このようにして接続領域205、周辺駆動回路領域204、配線領域203、外部端子接続領域202、切り離し領域201にそれぞれ開口が形成される。外部端子接続領域202には開口183が形成され、端子電極層178が露出する。
【0202】
その後、画素領域206の絶縁膜181及び絶縁膜182に微細な開口、つまりコンタクトホールを形成する。このとき、画素領域206の非開口領域、接続領域205、周辺駆動回路領域204、配線領域203、及び外部端子接続領域202における絶縁膜181及び絶縁膜182を覆うようにマスクを形成する。マスクは、画素領域206の開口形成用のマスクであり、所定の箇所に微細な開口が設けられている。このようなマスクとしては、例えばレジストマスクを用いることができる。
【0203】
そして、並行平板RIE装置を用いて、絶縁膜181及び絶縁膜182をエッチングする。なおエッチング時間は、配線層や絶縁膜168がオーバーエッチングされる程度とするとよい。このようにオーバーエッチングされる程度とすると、基板内の膜厚バラツキと、エッチングレートのバラツキを低減することができる。
【0204】
またエッチング装置にICP装置を用いてもよい。以上の工程で、画素領域206にドレイン電極172bに達する開口184を形成する(図10(B)参照)。
【0205】
開口を形成するためのエッチングは、同個所において複数回行ってもよい。例えば、接続領域205の開口は広面積であるため、エッチングする量が多い。このような広面積な開口は、複数回エッチングしてもよい。また、その他の開口と比較して、深い開口を形成する場合、同様に複数回エッチングしてもよい。
【0206】
また、本実施の形態では、絶縁膜181及び絶縁膜182への開口の形成を複数回に分けて行う例を示したが、1回のエッチング工程によって形成しても良い。この場合、ICP装置を用いて、ICPパワー7000W、バイアスパワー1000W、圧力0.8パスカル(Pa)、エッチングガスとしてCFを240sccm、Oを160sccmとしてエッチングする。バイアスパワーは1000W以上4000W以下が好ましい。1回のエッチング工程で開口が形成できるので工程が簡略化する利点がある。
【0207】
1回の工程で、絶縁膜181及び絶縁膜182に対する全ての開口の形成を行う場合、上記実施の形態で示したように、光強度低減機能を有する露光マスク、または複数の強度で光が透過する露光マスクにより形成されたマスク層を用いるとよい。このような露光マスクであると、膜厚の異なる領域を有するマスク層を形成することができる。よって、開口184のように開口の深さが浅い領域ではマスク層の膜厚を厚くし、開口183のように開口の深さが深い領域ではマスク層の膜厚を薄く設定することができる。このような所望のエッチング深さによって膜厚に勾配を有するマスク層を用いれば、1回のエッチング工程で異なる深さのエッチングが可能となる。よって、浅い開口において、露出した配線層などが長時間エッチング処理に曝されることもないので、多量のオーバーエッチングによる配線層へのダメージを防ぐことができる。
【0208】
次に、ドレイン電極172bと接するように、第1の電極層185(画素電極層ともいう。)を形成する。第1の電極層は陽極、または陰極として機能し、Ti、Ni、W、Cr、Pt、Zn、Sn、In、またはMoから選ばれた元素、またはチタンナイトライド、チタンシリコンナイトライド、タングステンシリサイド、タングステンナイトライド、タングステンシリコンナイトライド、ニオブナイトライドなどの前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料を主成分とする膜またはそれらの積層膜を総膜厚100nm以上800nm以下の範囲で用いればよい。
【0209】
本実施の形態では、表示素子として発光素子を用い、発光素子からの光を第1の電極層185側から取り出す構造のため、第1の電極層185が透光性を有する。第1の電極層185として、透明導電膜を形成し、所望の形状にエッチングすることで第1の電極層185を形成する(図11(A)参照)。本実施の形態では絶縁膜182はその上に透明導電膜を所望な形状にエッチングすることによって第1の電極層185がエッチングされる際に、エッチングストッパーとしても機能する。
【0210】
本発明においては、透光性電極層である第1の電極層185に、具体的には透光性を有する導電性材料からなる透明導電膜を用いればよく、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物などを用いることができる。勿論、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、グラフェンなども用いることができる。
【0211】
また、透光性を有さない金属膜のような材料であっても膜厚を薄く(好ましくは、5nm以上30nm以下の厚さ)して光を透過可能な状態としておくことで、第1の電極層185から光を放射することが可能となる。また、第1の電極層185に用いることのできる金属材料としては、チタン、タングステン、ニッケル、金、白金、銀、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、およびそれらの合金からなる導電膜などを用いることができる。または、それら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等を用いてもよい。
【0212】
第1の電極層185は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、印刷法または液滴吐出法などを用いて形成することができる。本実施の形態では、第1の電極層185として、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物を用いてスパッタリング法によって作製する。第1の電極層185は、好ましくは総膜厚100nm以上800nm以下の範囲で用いればよく、本実施の形態では膜厚125nmとする。
【0213】
第1の電極層185は、その表面が平坦化されるように、CMP法、ポリビニルアルコール系の多孔質体で拭浄し、研磨しても良い。またCMP法を用いた研磨後に、第1の電極層185の表面に紫外線照射、酸素プラズマ処理などを行ってもよい。
【0214】
第1の電極層185を形成後、加熱処理を行ってもよい。この加熱処理により、第1の電極層185中に含まれる水分は放出される。よって、第1の電極層185は脱ガスなどを生じないため、第1の電極層上に水分によって劣化しやすい発光材料を形成しても、発光材料は劣化せず、信頼性の高い表示装置を作製することができる。
【0215】
次に、第1の電極層185の端部、ソース電極又はドレイン電極を覆う絶縁層186(隔壁、障壁などと呼ばれる)を形成する(図11(B)参照)。また同工程で外部端子接続領域202に絶縁層187a、絶縁層187bを形成する。
【0216】
第1の電極層185に対する絶縁層186の選択比が高ければ、第1の電極層185の一部を覆う隔壁として機能する絶縁層186を形成するために所望な形状にエッチングを行う際、第1の電極層185はエッチングストッパーとして機能する。
【0217】
絶縁層186は、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等、その他の無機絶縁性材料、又はアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体、又はポリイミド(polyimide)、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole)などの耐熱性高分子、又はシロキサン樹脂を用いて形成することができる。アクリル、ポリイミド等の感光性、非感光性の材料を用いて形成してもよい。また、オキサゾール樹脂を用いることもでき、例えば、感光性ポリベンゾオキサゾールなどを用いることができる。感光性ポリベンゾオキサゾールは、誘電率が低く(常温1MHzで誘電率2.9)、耐熱性が高く(示差熱天秤(TGA)昇温5℃/minで熱分解温度550℃)、吸水率が低い(常温24時間で0.3%)材料である。絶縁層186は曲率半径が連続的に変化する形状が好ましく、上に形成されるEL(Electro Luminescence)層188、第2の電極層189の被覆性が向上する。
【0218】
図12(A)に示す接続領域205において、第2の電極層と同工程、同材料で形成される配線層はゲート電極と同工程、同材料で形成される配線層と電気的に接続する。この接続のため、ゲート電極と同工程、同材料で形成される配線層を露出する開口が形成されているが、この開口周辺の段差を絶縁層186によって覆い、段差をなだらかにすることで、積層する第2の電極層189の被覆性を向上させることができる。
【0219】
また、さらに信頼性を向上させるため、EL層188の形成前に真空加熱を行って脱気を行うことが好ましい。例えば、有機化合物材料の蒸着を行う前に、基板に含まれるガスを除去するために減圧雰囲気や不活性雰囲気で200℃以上400℃以下、好ましくは250℃以上350℃以下の加熱処理を行うことが望ましい。またそのまま大気に晒さずにEL層188を真空蒸着法や、減圧下の液滴吐出法で形成することが好ましい。この熱処理で、第1の電極層となる導電膜や絶縁層(隔壁)に含有、付着している水分を放出することができる。この加熱処理は、真空を破らず、真空のチャンバー内を基板が輸送できるのであれば、先の加熱工程と兼ねることもでき、先の加熱工程を絶縁層(隔壁)形成後に、一度行えばよい。ここでは、層間絶縁膜と絶縁層(隔壁)とを高耐熱性を有する物質で形成すれば信頼性向上のための加熱処理工程を十分行うことができる。
【0220】
第1の電極層185の上にはEL層188が形成される。なお、図12(B)では一画素しか図示していないが、本実施の形態ではR(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応した電界電極層を作り分けている。
【0221】
赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光を示す材料(低分子または高分子材料など)は、液滴吐出法により形成することもできる。
【0222】
次に、EL層188の上に導電膜からなる第2の電極層189が設けられる。本実施の形態では、第2の電極層189は、光の取り出し方向と反対側に設けられるため、反射性を有する材料を用いて形成される。反射性を有する材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、又はパラジウム等の金属材料を用いることができる。そのほか、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金などのアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や銀と銅の合金などの銀を含む合金を用いることもできる。銀と銅の合金は、耐熱性が高いため好ましい。こうして第1の電極層185、EL層188及び第2の電極層189からなる発光素子190が形成される(図12(B)参照)。
【0223】
図12に示した本実施の形態の表示装置において、発光素子190から発した光は、第1の電極層185側から、図12(B)中の矢印の方向に透過して射出される。
【0224】
本実施の形態では、第2の電極層189上にパッシベーション膜(保護膜)として絶縁層を設けてもよい。このように第2の電極層189を覆うようにしてパッシベーション膜を設けることは有効である。パッシベーション膜としては、窒化珪素、酸化珪素、酸化窒化珪素(SiON)、窒化酸化珪素(SiNO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化窒化アルミニウム(AlON)、窒素含有量が酸素含有量よりも多い窒化酸化アルミニウム(AlNO)または酸化アルミニウム、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、窒素含有炭素膜(CN)を含む絶縁膜からなり、該絶縁膜を単層もしくは組み合わせた積層を用いることができる。又はシロキサン樹脂を用いてもよい。
【0225】
この際、カバレッジの良い膜をパッシベーション膜として用いることが好ましく、炭素膜、特にDLC膜を用いることは有効である。DLC膜は室温から100℃以下の温度範囲で成膜可能であるため、耐熱性の低いEL層188の上方にも容易に成膜することができる。DLC膜は、プラズマCVD法(代表的には、RFプラズマCVD法、マイクロ波CVD法、電子サイクロトロン共鳴(ECR)CVD法、熱フィラメントCVD法など)、燃焼炎法、スパッタリング法、イオンビーム蒸着法、レーザ蒸着法などで形成することができる。成膜に用いる反応ガスは、水素ガスと、炭化水素系のガス(例えば、CH、C、Cなど)とを用い、グロー放電によりイオン化し、負の自己バイアスがかかったカソードにイオンを加速衝突させて成膜する。また、CN膜は反応ガスとしてCガスとNガスとを用いて形成すればよい。DLC膜は酸素に対するブロッキング効果が高く、EL層188の酸化を抑制することが可能である。そのため、この後に続く封止工程を行う間にEL層188が酸化するといった問題を防止できる。
【0226】
このように発光素子190が形成された基板100と、封止基板195とをシール材192によって固着し、発光素子を封止する(図12参照)。本発明の表示装置においては、シール材192と絶縁層186とを接しないように離して形成する。このようにシール材192と、絶縁層186とを離して形成すると、絶縁層186に吸湿性の高い有機材料を用いた絶縁材料を用いても、水分が侵入しにくく、発光素子の劣化が防止でき、表示装置の信頼性が向上する。シール材192としては、代表的には可視光硬化性、紫外線硬化性または熱硬化性の樹脂を用いるのが好ましい。例えば、ビスフェノールA型液状樹脂、ビスフェノールA型固形樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールAD型樹脂、フェノール型樹脂、クレゾール型樹脂、ノボラック型樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、エピビス型エポキシ樹脂、グリシジルエステル樹脂、グリジシルアミン系樹脂、複素環式エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を用いることができる。なお、シール材192で囲まれた領域には充填材193を充填してもよく、窒素雰囲気下で封止することによって、窒素等を封入してもよい。本実施の形態は、下面射出型のため、充填材193は透光性を有する必要はないが、充填材193を透過して光を取り出す構造の場合は、透光性を有する必要がある。代表的には可視光硬化、紫外線硬化または熱硬化のエポキシ樹脂を用いればよい。以上の工程において、本実施の形態における、発光素子を用いた表示機能を有する表示装置が完成する。また充填材は、液状の状態で滴下し、表示装置内に充填することもできる。
【0227】
本実施の形態では、外部端子接続領域202において、端子電極層178に異方性導電層196によってFPC194を接続し、外部と電気的に接続する構造とする。また表示装置の上面図である図12(A)で示すように、本実施の形態において作製される表示装置は信号線駆動回路を有する周辺駆動回路領域204、周辺駆動回路領域209のほかに、走査線駆動回路を有する周辺駆動回路領域207、周辺駆動回路領域208が設けられている。
【0228】
本実施の形態では、上記のような回路で形成するが、本発明はこれに限定されず、周辺駆動回路としてICチップを前述したCOG方式やTAB方式によって実装したものでもよい。また、ゲート線駆動回路、ソース線駆動回路は複数であっても単数であっても良い。
【0229】
また、本発明の表示装置において、画面表示の駆動方法は特に限定されず、例えば、点順次駆動方法や線順次駆動方法や面順次駆動方法などを用いればよい。代表的には、線順次駆動方法とし、時分割階調駆動方法や面積階調駆動方法を適宜用いればよい。また、表示装置のソース線に入力する映像信号は、アナログ信号であってもよいし、デジタル信号であってもよく、適宜、映像信号に合わせて駆動回路などを設計すればよい。
【0230】
さらに、ビデオ信号がデジタルの表示装置において、画素に入力されるビデオ信号が定電圧(CV)のものと、定電流(CC)のものとがある。ビデオ信号が定電圧のもの(CV)には、発光素子に印加される電圧が一定のもの(CVCV)と、発光素子に印加される電流が一定のもの(CVCC)とがある。また、ビデオ信号が定電流のもの(CC)には、発光素子に印加される電圧が一定のもの(CCCV)と、発光素子に印加される電流が一定のもの(CCCC)とがある。
【0231】
本実施の形態では、第1の不純物領域と、第2の不純物領域と、を1回のドープで同時に形成することができるため、露光マスクを削減することができ、製造工程の簡略化が可能となる。これにより、生産性の向上を図ることができる。
【0232】
本実施の形態では、ドレイン領域において、深さ方向の不純物濃度分布の極大が深い第1の不純物領域が、チャネル形成領域に接し、深さ方向の不純物濃度分布の極大が浅い第2の不純物領域が、ドレイン電極に接している。
【0233】
第1の不純物領域の深さ方向の不純物濃度分布の極大が、ゲート電極端と離れて位置することによって、トランジスタのオフ電流を低減することができる。また、ドレイン近傍の電界を緩和し、ホットキャリア注入による劣化を防ぐ効果もある。
【0234】
また、深さ方向の不純物濃度分布の極大が浅い第2の不純物領域が、ドレイン電極に接することで、コンタクト抵抗を増加させることなくドレイン領域とドレイン電極との良好な電気的接続を行うことができる。
【0235】
上述したように、オフ電流が低減されたトランジスタを作製することができる。よって、該トランジスタを用いて信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、半導体装置において、低消費電力化ができる。
【0236】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0237】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2で説明した発光素子190の素子構造の一例について説明する。
【0238】
図16(A)に示す発光素子は、第1の電極層185と、第1の電極層185上にEL層188と、EL層188上に、第2の電極層189を有する。
【0239】
EL層188は、少なくとも発光性の有機化合物を含む発光層が含まれていれば良い。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。本実施の形態において、EL層188は、第1の電極層185側から、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、及び電子注入層705の順で積層されている。
【0240】
図16(A)に示す発光素子の作製方法について説明する。
【0241】
まず、第1の電極層185を形成する。第1の電極層185は、実施の形態2に示したように形成することができるため、詳細な説明は省略する。
【0242】
次に、第1の電極層185上に、EL層188を形成する。本実施の形態において、EL層188は、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705を有する。
【0243】
正孔注入層701は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0244】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0245】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0246】
特に、正孔注入層701として、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることが好ましい。正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることにより、第1の電極層185からの正孔注入性を良好にし、発光素子の駆動電圧を低減することができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。該複合材料を用いて正孔注入層701を形成することにより、第1の電極層185からEL層188への正孔注入が容易となる。
【0247】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0248】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB又はα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0249】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0250】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0251】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0252】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層701に用いてもよい。
【0253】
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等の芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0254】
また、正孔輸送層702には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。
【0255】
また、正孔輸送層702には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0256】
発光層703は、発光性の有機化合物を含む層である。発光性の有機化合物としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0257】
発光層703に用いることができる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0258】
また、発光層703に用いることができる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5−メチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{2−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチルピラジナト}イリジウム(III)(略称:Ir(dmmoppr)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−iPr)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0259】
なお、発光層703としては、上述した発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、発光性の物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
【0260】
ホスト材料としては、具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、NPB(またはα−NPD)、TPD、DFLDPBi、BSPBなどの芳香族アミン化合物などを用いることができる。
【0261】
また、ホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うためにNPB、あるいはAlq等をさらに添加してもよい。
【0262】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層703の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0263】
また、発光層703として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0264】
なお、発光層を2層以上の積層構造としても良い。発光層を2層以上の積層構造とし、各々の発光層に用いる発光物質の種類を変えることにより様々な発光色を得ることができる。また、発光物質として発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、ブロードなスペクトルの発光や白色発光を得ることもできる。特に、高輝度が必要とされる照明用途には、発光層を積層させた構造が好適である。
【0265】
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が2層以上積層したものとしてもよい。
【0266】
電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。
【0267】
なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0268】
EL層は、図16(B)に示すように、第1の電極層185と第2の電極層189との間に複数積層されていても良い。この場合、積層された第1のEL層720と第2のEL層721との間には、電荷発生層723を設けることが好ましい。電荷発生層723は上述の複合材料で形成することができる。また、電荷発生層723は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。
【0269】
図16(B)に示すように積層されるEL層の間に電荷発生層723を配置すると、電流密度を低く保ったまま、高輝度でありながら長寿命な素子とできる。また、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。
【0270】
また、EL層が2層積層された構成を有する積層型素子の場合において、第1EL層から得られる発光の発光色と第2EL層から得られる発光の発光色を補色の関係にすることによって、白色発光を外部に取り出すことができる。なお、第1EL層および第2EL層のそれぞれが補色の関係にある複数の発光層を有する構成としても、白色発光が得られる。補色の関係としては、青色と黄色、あるいは青緑色と赤色などが挙げられる。青色、黄色、青緑色、赤色に発光する物質としては、例えば、先に列挙した発光物質の中から適宜選択すればよい。
【0271】
以下に、複数のEL層が積層する構成を有する発光素子の一例を示す。まず第1EL層および第2EL層のそれぞれが補色の関係にある複数の発光層を有し、白色発光が得られる構成の一例を示す。
【0272】
例えば、第1EL層は、青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第1発光層と、黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第2発光層とを有し、第2EL層は、青緑色〜緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第3発光層と、橙色〜赤色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第4発光層とを有するものとする。
【0273】
この場合、第1EL層からの発光は、第1発光層および第2発光層の両方からの発光を合わせたものであるので、青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第1EL層は2波長型の白色または白色に近い色の発光を呈する。
【0274】
また、第2EL層からの発光は、第3発光層および第4発光層の両方からの発光を合わせたものであるので、青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第2EL層は、第1EL層とは異なる2波長型の白色または白色に近い色の発光を呈する。
【0275】
したがって、第1EL層からの発光および第2EL層からの発光を重ね合わせることにより、青色〜青緑色の波長領域、青緑色〜緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、橙色〜赤色の波長領域をカバーする白色発光を得ることができる。
【0276】
また、黄色〜橙色の波長領域(560nm以上580nm未満)は、視感度の高い波長領域であるため、発光スペクトルのピークが黄色〜橙色の波長領域にある発光層を有するEL層を発光層に適用することは有用である。例えば、発光スペクトルのピークが青色の波長領域にある発光層を有する第1EL層と、発光スペクトルのピークが黄色の波長領域にある発光層を有する第2EL層と、発光スペクトルのピークが赤色の波長領域にある発光層を有する第3EL層と、を積層させた構成を適用することができる。
【0277】
また、黄色〜橙色を呈するEL層を2層以上積層する構成としてもよい。黄色〜橙色を呈するEL層を2層以上積層することによって発光素子の電力効率をより向上させることができる。
【0278】
例えば、EL層を3層積層させた発光素子を構成する場合において、発光スペクトルのピークが青色の波長領域(400nm以上480nm未満)にある発光層を有する第1EL層に、発光スペクトルのピークが黄色〜橙色の波長領域にある発光層をそれぞれ有する第2、第3EL層を積層する構成を適用することができる。なお、第2EL層及び第3EL層からの発光スペクトルのピークの波長は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0279】
発光スペクトルのピークが黄色〜橙色の波長領域にあるEL層を用いることにより、視感度の高い波長領域を利用することができ、電力効率を高めることができる。これによって、発光素子全体の電力効率を高めることができる。このような構成は、例えば緑色の発光色を呈するEL層と赤色の発光色を呈するEL層とを積層して黄色〜橙色の発光を呈する発光素子を得る場合と比較して視感度の観点で有利であり、電力効率を高められる。また、黄色〜橙色の波長領域にある視感度の高い波長領域を利用したEL層が1層のみの場合と比較して、視感度の低い青色の波長領域の発光強度が相対的に小さくなるため、発光色は電球色(あるいは温白色)に近づき、かつ電力効率が向上する。
【0280】
つまり、上記において、黄色〜橙色の波長領域にピークを有し、かつ、ピークの波長が560nm以上580nm未満にある光と、青色の波長領域にピークを有する光と、を合成した光の色(つまり、発光素子から発光される光の色)とすることで、温白色や電球色のような自然な光の色を実現することができる。特に電球色を実現が容易である。
【0281】
黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光性の物質として、例えばピラジン誘導体を配位子とする有機金属錯体を用いることができる。また、発光性の物質(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させることにより、発光層を構成することもできる。上記黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光性の物質として、燐光性化合物を用いることができる。燐光性化合物を用いることにより、蛍光性化合物を用いた場合と比べて電力効率を3〜4倍高めることができる。上述したピラジン誘導体を配位子とする有機金属錯体は燐光性化合物であり、発光効率が高い上に、黄色〜橙色の波長領域の発光を得やすく、好適である。
【0282】
また、青色の波長領域にピークを有する発光性の物質として、例えばピレンジアミン誘導体を用いることができる。上記青色の波長領域にピークを有する発光性の物質として、蛍光性化合物を用いることができる。蛍光性化合物を用いることにより、燐光性化合物を用いた場合と比べて長寿命の発光素子を得ることができる。上述したピレンジアミン誘導体は蛍光性化合物であり、極めて高い量子収率が得られる上に、長寿命であるため、好適である。
【0283】
EL層は、図16(C)に示すように、第1の電極層185と第2の電極層189との間に、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入バッファー層706、電子リレー層707、及び第2の電極層189と接する複合材料層708を有していても良い。
【0284】
第2の電極層189と接する複合材料層708を設けることで、特にスパッタリング法を用いて第2の電極層189を形成する際に、EL層188が受けるダメージを低減することができるため、好ましい。複合材料層708は、前述の、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。
【0285】
さらに、電子注入バッファー層706を設けることで、複合材料層708と電子輸送層704との間の注入障壁を緩和することができるため、複合材料層708で生じた電子を電子輸送層704に容易に注入することができる。
【0286】
電子注入バッファー層706には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0287】
また、電子注入バッファー層706が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した電子輸送層704の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0288】
さらに、電子注入バッファー層706と複合材料層708との間に、電子リレー層707を形成することが好ましい。電子リレー層707は、必ずしも設ける必要は無いが、電子輸送性の高い電子リレー層707を設けることで、電子注入バッファー層706へ電子を速やかに送ることが可能となる。
【0289】
複合材料層708と電子注入バッファー層706との間に電子リレー層707が挟まれた構造は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層706に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造である。したがって、駆動電圧の上昇を防ぐことができる。
【0290】
電子リレー層707は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUMO準位は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。また、電子リレー層707がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準位も複合材料層708におけるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエネルギー準位の数値としては、電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。
【0291】
電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0292】
電子リレー層707に含まれるフタロシアニン系材料としては、具体的にはCuPc、SnPc(Phthalocyanine tin(II) complex)、ZnPc(Phthalocyanine zinc complex)、CoPc(Cobalt(II)phthalocyanine, β−form)、FePc(Phthalocyanine Iron)及びPhO−VOPc(Vanadyl 2,9,16,23−tetraphenoxy−29H,31H−phthalocyanine)のいずれかを用いることが好ましい。
【0293】
電子リレー層707に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がより容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低電圧でより安定に駆動することが可能になる。
【0294】
金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好ましい。具体的には、VOPc(Vanadyl phthalocyanine)、SnOPc(Phthalocyanine tin(IV) oxide complex)及びTiOPc(Phthalocyanine titanium oxide complex)のいずれかは、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用しやすく、アクセプター性が高いため好ましい。
【0295】
なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。
【0296】
電子リレー層707はさらにドナー性物質を含んでいても良い。ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いることができる。電子リレー層707にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の移動が容易となり、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。
【0297】
電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記した材料の他、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定であるため、電子リレー層707を形成する為に用いる材料として、好ましい材料である。
【0298】
ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙げられる。
【0299】
また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。
【0300】
その他にも、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル等を用いることができる。
【0301】
なお、電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナー性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層707を形成すれば良い。
【0302】
正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、及び電子輸送層704は前述の材料を用いてそれぞれ形成すれば良い。
【0303】
そして、EL層188上に、第2の電極層189を形成する。第2の電極層189は、実施の形態2に示したように形成することができるため、詳細な説明は省略する。
【0304】
以上で、第1の電極層185と第2の電極層189との間にEL層を有する発光素子を作製することができる。
【0305】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0306】
(実施の形態4)
本発明を適用して発光素子を有する表示装置を作製することができるが、該発光素子から発せられる光は、下面放射、上面放射、両面放射のいずれかを行う。本実施の形態では、両面射出型、上面射出型の例を、図13(A)及び図13(B)を用いて説明する。なお、本実施の形態の発光素子は実施の形態2及び実施の形態3の発光素子190を適用することができる。
【0307】
図13(B)に示す表示装置は、素子基板1300、トランジスタ1355、トランジスタ1365、トランジスタ1375、トランジスタ1385、配線層1324a、配線層1324b、第1の電極層1317、EL層1319、第2の電極層1320、充填材1322、シール材1325、絶縁膜1301b、ゲート絶縁層1310、絶縁膜1311、絶縁膜1312、絶縁層1314、封止基板1323、配線層1345a、配線層1345b、端子電極層1381a、端子電極層1381b、異方性導電層1382、FPC1383によって構成されている。表示装置は、外部端子接続領域222、配線領域223、周辺駆動回路領域224、画素領域226を有している。充填材1322は、液状の組成物にして、滴下法によって形成することができる。滴下法によって充填材が形成された素子基板1300と封止基板1323を張り合わして表示装置を封止する。
【0308】
トランジスタ1355、トランジスタ1365、トランジスタ1375、トランジスタ1385に接続する配線層(ソース電極又はドレイン電極として機能する)は2層構造となっている。配線層1324aと配線層1324bも積層しているが、配線層1324bは配線層1324aの端部より延在しており、配線層1324bと第1の電極層1317は接して形成されている。また、配線領域223において、ゲート絶縁層1310、絶縁膜1311、絶縁膜1312端部は、テーパー形状にエッチングされており、その端部を配線層1345aと配線層1345bとが被覆するように形成されている。
【0309】
図13(B)の表示装置は、両面放射型であり、矢印の方向に素子基板1300側からも、封止基板1323側からも光を放射する構造である。よって、第1の電極層1317及び第2の電極層1320として透光性を有する導電性材料を用いればよい。また、透光性を有さない金属膜のような材料であっても膜厚を薄く(好ましくは、5nm以上30nm以下程度の厚さ)して光を透過可能な状態としておくことで、第1の電極層1317及び第2の電極層1320から光を放射することが可能となる。
【0310】
透光性を有する導電性材料としては、実施の形態2で示した第1の電極層185と同様の材料を適用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0311】
EL層1319としては、実施の形態3で示したEL層と同様の材料を適用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0312】
以上のように、図13(B)の表示装置は、発光素子1305より放射される光が、第1の電極層1317及び第2の電極層1320両方を通過して、両面から光を放射する構成となる。
【0313】
図13(B)の表示装置においては、トランジスタ1355のドレイン電極である配線層1324aと、画素電極層である発光素子の第1の電極層1317とが直接積層して電気的接続を行うのではなく、配線層1324aの下に形成された配線層1324bを介して配線層1324aと第1の電極層1317とが電気的接続を行う。このような構造であると、配線層1324aと、第1の電極層1317とが直接接触では電気的接続を行いにくい材料同士、また接すると電触などの劣化が起こる材料同士であっても、間に配線層1324bを介するので用いることができる。よって、配線層1324a、第1の電極層1317に用いることができる材料の選択性が広がる。配線層1324aと第1の電極層1317との積層によって生じる問題を考慮しなくてよいので、配線層1324a又はドレイン電極、第1の電極層1317のそれぞれに要求される特性を備えた材料を自由に選択することができる。従って、より高機能、高信頼性の表示装置を歩留まり良く製造することができる。また上記ドレイン電極と第1の電極層との接続構造は、図13(A)の表示装置も同様である。
【0314】
図13(A)の表示装置は、発光素子1605より放射される光が、矢印の方向に上面射出する構造である。図13(A)に示す表示装置は、素子基板1600、トランジスタ1655、トランジスタ1665、トランジスタ1675、トランジスタ1685、配線層1624a、配線層1624b、第1の電極層1617、EL層1619、第2の電極層1620、保護膜1621、充填材1622、シール材1625、絶縁膜1601b、ゲート絶縁層1610、絶縁膜1611、絶縁膜1612、絶縁層1614、封止基板1623、配線層1633a、配線層1633b、端子電極層1681a、端子電極層1681b、異方性導電層1682、FPC1683によって構成されている。
【0315】
図13(A)における表示装置において、端子電極層1681bに積層していた絶縁層はエッチングによって除去されている。図13(A)及び図13(B)のように端子電極層の周囲に透湿性を有する絶縁層を設けない構造であると信頼性がより向上する。また、表示装置は、外部端子接続領域232、配線領域233、周辺駆動回路領域234、画素領域236を有している。また、配線領域233において、ゲート絶縁層1610、絶縁膜1611、絶縁膜1612端部は、テーパー形状にエッチングされており、その端部を配線層1633aと配線層1633bとが被覆するように形成されている。
【0316】
図13(A)の表示装置の場合、前述の図13(B)で示した両面射出型の表示装置において、第1の電極層1317の下に、反射性を有する金属層である配線層1624bを形成する。配線層1624bの上に透明導電膜である第1の電極層1617を形成する。
【0317】
第1の電極層1617及び第2の電極層1620としては、実施の形態2で示した第1の電極層185と同様の材料を適用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0318】
配線層1624bとしては、反射性を有する材料を用いればよく、実施の形態2で示した第2の電極層189と同様の材料を適用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0319】
EL層1619としては、実施の形態3で示したEL層と同様の材料を適用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0320】
なお、図13(A)に示すように上面放射型の表示装置とするためには、第1の電極層1617に反射性を有する金属材料を用いてもよく、その場合、反射性を有する金属層である配線層1624bは必ずしも設けなくてもよい。
【0321】
また、第1の電極層1617に反射性を有する金属材料を用いる場合、発光素子1605は、有機化合物に金属酸化物を含有させた複合材料を用いる構成とすることが好ましい。
【0322】
反射性を有する第1の電極層と、その上に設けられる複合材料を含む膜との間に透光性を有する導電性の金属酸化物を含む膜を形成する。反射性を有する第1の電極層に接するように、透光性を有する導電性の金属酸化物を含む膜を積層するので、発光素子の光取り出し効率を低下させずにすむ。また、反射性を有する第1の電極層に接して透光性を有する導電性の金属酸化物を含む膜を積層することで、第1の電極層の酸化を抑制し、第1の電極層からEL層への正孔注入性を良好に保つことができる。
【0323】
例えば、第1の電極層1617として反射性を有するアルミニウム、若しくはチタン等の金属材料、又はそれら金属材料を含む合金材料を用いることができる。
【0324】
透光性を有する導電性の金属酸化物を含む膜として、チタン、モリブデン、タングステン、又はそれらの金属酸化物(酸化チタン、酸化モリブデン、酸化タングステン)を含む膜を用いることができる。透光性を有する導電性の金属酸化物を含む膜の膜厚は、3nm以上10nm以下が好ましく、代表的には5nm以上7nm以下とすればよい。また、透光性を有する導電性の金属酸化物を含む膜は、上記材料を含む膜の単層でも積層でもよく、例えば、チタン膜、酸化チタン膜、酸化タングステン膜、又はチタン膜と酸化チタン膜との積層などを用いることができる。上述の材料は、地殻における存在量が多く安価であるため、発光素子の作製コストを低減することができ、好ましい。中でも、アルミニウムおよびチタンは、地殻における存在量がとても多いため、さらに好ましい。
【0325】
また、透光性を有する導電性の金属酸化物を含む膜として、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物などを用いることができる。勿論、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、グラフェンなども用いることができる。
【0326】
有機化合物に金属酸化物を含有させた複合材料を含む膜においては、金属酸化物として、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。有機化合物に金属酸化物を含有させた複合材料を含む膜の膜厚は、30nm以上200nm以下が好ましく、50nm以上100nm以下がより好ましい。
【0327】
また、第1の電極層1617に反射性を有する金属材料を用いる場合は、第1の電極層1617を、アルミニウム合金(アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金などのアルミニウムを含む合金等)膜と、チタンや酸化チタン等を材料とする金属膜又は金属酸化物膜と、の積層構造とし、有機化合物に金属酸化物を含有させた複合材料を用いた、発光素子1605とすることが好ましい。これは、アルミニウム合金膜上に、金属または金属酸化物を含む膜を形成することにより、アルミニウム合金の酸化を抑制し、第1の電極層からEL層への正孔注入性を良好に保つことができるため、発光素子の駆動電圧を低減することができるからである。また、第1の電極層からEL層188への正孔注入を容易とすることができる。
【0328】
以上より、オフ電流が低減されたトランジスタを作製することができ、該トランジスタを用いて信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0329】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0330】
(実施の形態5)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0331】
本実施の形態では、上記実施の形態のいずれか一で得られる電気的特性が良好で、信頼性の高いトランジスタを搭載した電子機器の例について図14を用いて説明する。
【0332】
図14(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体6001、筐体6002、表示部6003、キーボード6004などによって構成されている。なお、ノート型のパーソナルコンピュータは、上記実施の形態で示すトランジスタを含んでいる。そのため、良好な品質を有し、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータが実現される。
【0333】
図14(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体6021には表示部6023と、外部インターフェイス6025と、操作ボタン6024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス6022がある。なお、携帯情報端末(PDA)は、上記実施の形態で示すトランジスタを含んでいる。そのため、良好な品質を有し、信頼性の高い携帯情報端末(PDA)が実現される。
【0334】
図14(C)は、電子ペーパーを一部品として実装して作製した電子書籍である。図14(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍5700は、筐体5701及び筐体5703の2つの筐体で構成されている。筐体5701及び筐体5703は、軸部5711により一体とされており、該軸部5711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0335】
筐体5701には表示部5705が組み込まれ、筐体5703には表示部5707が組み込まれている。表示部5705及び表示部5707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(図14(C)では表示部5705)に文章を表示し、左側の表示部(図14(C)では表示部5707)に画像を表示することができる。
【0336】
また、図14(C)では、筐体5701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体5701において、電源5721、操作キー5723、スピーカー5725などを備えている。操作キー5723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、またはACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍5700は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0337】
また、電子書籍5700は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0338】
図14(D)は、携帯電話であり、筐体5800及び筐体5801の二つの筐体で構成されている。筐体5801には、表示パネル5802、スピーカー5803、マイクロフォン5804、ポインティングデバイス5806、カメラ用レンズ5807、外部接続端子5808などを備えている。また、筐体5801には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル5810、外部メモリスロット5811などを備えている。また、アンテナは筐体5801内部に内蔵されている。なお、携帯電話は、上記実施の形態で示すトランジスタを少なくとも一部品として含んでいる。
【0339】
また、表示パネル5802はタッチパネルを備えており、図14(D)には映像表示されている複数の操作キー5805を点線で示している。なお、太陽電池セル5810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0340】
表示パネル5802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル5802と同一面上にカメラ用レンズ5807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー5803及びマイクロフォン5804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体5800と筐体5801は、スライドし、図14(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0341】
外部接続端子5808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット5811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。記録媒体として、実施の形態1に示す半導体装置を用いることができる。実施の形態1によれば、オフ電流を十分に低減することができるトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0342】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0343】
図14(E)は、デジタルカメラであり、本体6051、表示部(A)6057、接眼部6053、操作スイッチ6054、表示部(B)6055、バッテリー6056などによって構成されている。なお、デジタルカメラは、上記実施の形態で示すトランジスタを含んでいる。そのため、良好な品質を有し、信頼性の高いデジタルカメラが実現される。
【0344】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0345】
本実施例では、実施の形態1の図3(C)に示す不純物元素の添加工程において、実施の形態1で示した、第2の不純物領域310bを形成する場合と、第2の不純物領域310bを形成しない場合と、で作製したp型を付与するトランジスタの電気特性評価について、synopsys社製のsentaurus deviceを用いて計算した結果を、図15(A)及び図15(B)を参照して説明する。なお、図15(A)及び図15(B)に示す丸印は、第2の不純物領域310bを形成したトランジスタの計算結果であり、バツ印は、第2の不純物領域310bを形成しないトランジスタの計算結果である。
【0346】
第2の不純物領域310bを形成したトランジスタと、第2の不純物領域310bを形成しないトランジスタは、両者とも、ゲート絶縁膜303は酸化シリコンの膜厚20nm、半導体層302は単結晶シリコンの膜厚50nmとし、チャネル長は3.6μm、チャネル幅は10μmとして計算した。ただし、図3(C)に示す第2の導電層305cは省略した。また、図3(C)に示す第1の導電層304a及び第1の導電層304bを膜厚30nmの窒化タンタル膜として計算する代わりに、同等の阻止能を有するように膜厚換算された同形状の膜厚50nmの酸化シリコン膜を用いて計算した。
【0347】
また、電気特性評価の計算条件として、ソース電極及びドレイン電極間の印加電圧を3V、ゲート電極の印加電圧を−3Vから3Vの範囲とした。
【0348】
図15(A)に、不純物元素を添加する際の加速電圧とオン電流との相関関係を示す。図15(A)に示すように、不純物元素の添加の加速電圧を高加速条件にするほど、オン電流は低減する傾向にあることがわかる。また、第2の不純物領域310bを形成したトランジスタの計算結果の方が、第2の不純物領域310bを形成しないトランジスタの計算結果より、オン電流が高いことが分かる。
【0349】
次に、オフ電流の計算結果を図15(B)に示す。ここでは、不純物元素の添加の加速電圧の代表例として、50kVを示す。図15(B)に示すように、オフ電流は、第2の不純物領域310bを形成しないトランジスタの計算結果に比べて、第2の不純物領域310bを形成するトランジスタの計算結果の方が、低いことが分かる。
【0350】
以上より、第2の不純物領域310bを形成するトランジスタは、第2の不純物領域310bを形成しないトランジスタよりも、オフ電流が低いことが示された。
【0351】
本実施例では、p型を付与するトランジスタを用いた場合を示したが、n型を付与するトランジスタを用いた場合でも、同様の結果が示されることは当業者には容易に理解できる。
【0352】
実施の形態1に示すように、第2の不純物領域310bを形成することで、第2の不純物領域310bを形成しない作製方法とするよりも、オン電流が高いトランジスタを提供することが可能であることが示される。
【符号の説明】
【0353】
41 曲線
42 曲線
100 基板
103 半導体層
104 半導体層
105 半導体層
106 半導体層
107 ゲート絶縁層
108 第1の導電膜
109 第2の導電膜
110 半導体基板
110a マスク層
110b マスク層
110c マスク層
110d マスク層
110e マスク層
112 脆化領域
116 半導体層
117 半導体基板
121 第1の導電層
121c 第1の導電層
122 第1の導電層
122c 第1の導電層
124 第1の導電層
124c 第1の導電層
125 第1の導電層
125c 第1の導電層
126 第1の導電層
126c 第1の導電層
131 第2の導電層
132 第2の導電層
134 第2の導電層
135 第2の導電層
136 第2の導電層
141 第1の導電層
142 第1の導電層
144 第1の導電層
144a 第2の不純物領域
144b 第2の不純物領域
145 第1の導電層
145b 第1の不純物領域
146 第1の導電層
147a 第2の不純物領域
147b 第2の不純物領域
147c 第2の不純物領域
148b 第1の不純物領域
148d 第1の不純物領域
149a チャネル形成領域
149b チャネル形成領域
150 チャネル形成領域
152 不純物元素
153a マスク層
153b マスク層
154 不純物元素
155a マスク層
155b マスク層
157a マスク層
157b マスク層
157c マスク層
157e マスク層
158a マスク層
158b マスク層
158d マスク層
158e マスク層
160a 第2の不純物領域
160b 第2の不純物領域
161b 第1の不純物領域
162 チャネル形成領域
163a 第2の不純物領域
163b 第2の不純物領域
164b 第1の不純物領域
165 チャネル形成領域
167 絶縁膜
168 絶縁膜
169a ソース電極
169b ドレイン電極
170a ソース電極
170b ドレイン電極
171a ソース電極
171b ドレイン電極
172a ソース電極
172b ドレイン電極
173 トランジスタ
174 トランジスタ
175 トランジスタ
176 トランジスタ
178 端子電極層
179a 配線
179b 配線
181 絶縁膜
182 絶縁膜
183 開口
184 開口
185 第1の電極層
186 絶縁層
187a 絶縁層
187b 絶縁層
188 EL層
189 第2の電極層
190 発光素子
192 シール材
193 充填材
194 FPC
195 封止基板
196 異方性導電層
201 切り離し領域
202 外部端子接続領域
203 配線領域
204 周辺駆動回路領域
205 接続領域
206 画素領域
207 周辺駆動回路領域
208 周辺駆動回路領域
209 周辺駆動回路領域
222 外部端子接続領域
223 配線領域
224 周辺駆動回路領域
226 画素領域
232 外部端子接続領域
233 配線領域
234 周辺駆動回路領域
236 画素領域
300 支持基板
301 絶縁膜
302 半導体層
303 ゲート絶縁膜
303a ゲート絶縁膜
304 第1の導電膜
304a 第1の導電層
304b 第1の導電層
304c 第1の導電層
305 第2の導電膜
305a 第2の導電層
305b 第2の導電層
305c 第2の導電層
306 レジスト膜
307 不純物元素
308b 第1の不純物領域
309 チャネル形成領域
310a 第2の不純物領域
310b 第2の不純物領域
311 層間絶縁膜
312a ソース電極
312b ドレイン電極
400 基板
701 正孔注入層
702 正孔輸送層
703 発光層
704 電子輸送層
705 電子注入層
706 電子注入バッファー層
707 電子リレー層
708 複合材料層
720 第1のEL層
721 第2のEL層
723 電荷発生層
750 露光マスク
751a 半透膜
751b 半透膜
752a 遮光部
753 基板
761a 非露光領域
761b 非露光領域
762 露光領域
770a マスク層
770b マスク層
780a マスク層
800 領域
801 領域
802 領域
1300 素子基板
1301b 絶縁膜
1305 発光素子
1310 ゲート絶縁層
1311 絶縁膜
1312 絶縁膜
1314 絶縁層
1317 第1の電極層
1319 EL層
1320 第2の電極層
1322 充填材
1323 封止基板
1324a 配線層
1324b 配線層
1325 シール材
1345a 配線層
1345b 配線層
1355 トランジスタ
1365 トランジスタ
1375 トランジスタ
1381a 端子電極層
1381b 端子電極層
1382 異方性導電層
1383 FPC
1385 トランジスタ
1600 素子基板
1601b 絶縁膜
1605 発光素子
1610 ゲート絶縁層
1611 絶縁膜
1612 絶縁膜
1614 絶縁層
1617 第1の電極層
1619 EL層
1620 第2の電極層
1621 保護膜
1622 充填材
1623 封止基板
1624a 配線層
1624b 配線層
1625 シール材
1633a 配線層
1633b 配線層
1655 トランジスタ
1665 トランジスタ
1675 トランジスタ
1681a 端子電極層
1681b 端子電極層
1682 異方性導電層
1683 FPC
1685 トランジスタ
2700 基板
2701 画素部
2702 画素
2703 走査線側入力端子
2704 信号線側入力端子
2750 FPC
2751 ドライバIC
3700 基板
3701 画素部
3702 走査線側駆動回路
3704 信号線側入力端子
4700 基板
4701 画素部
4702 走査線駆動回路
4704 信号線駆動回路
5700 電子書籍
5701 筐体
5703 筐体
5705 表示部
5707 表示部
5711 軸部
5721 電源
5723 操作キー
5725 スピーカー
5800 筐体
5801 筐体
5802 表示パネル
5803 スピーカー
5804 マイクロフォン
5805 操作キー
5806 ポインティングデバイス
5807 カメラ用レンズ
5808 外部接続端子
5810 太陽電池セル
5811 外部メモリスロット
6001 本体
6002 筐体
6003 表示部
6004 キーボード
6021 本体
6022 スタイラス
6023 表示部
6024 操作ボタン
6025 外部インターフェイス
6051 本体
6053 接眼部
6054 操作スイッチ
6055 表示部(B)
6056 バッテリー
6057 表示部(A)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面上に形成され、ソース領域、ドレイン領域、及びチャネル形成領域を含む単結晶半導体層と、
前記単結晶半導体層を覆うゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜を介して、前記チャネル形成領域に重畳して設けられたゲート電極と、
前記ソース領域に接続されるソース電極と、
前記ドレイン領域に接続されるドレイン電極と、を有し、
前記ソース領域及び前記ドレイン領域のうち、少なくとも前記ドレイン領域は、前記チャネル形成領域に隣接する第1の不純物領域と、前記第1の不純物領域に隣接する第2の不純物領域と、を含み、
前記第1の不純物領域の深さ方向の不純物濃度分布の極大は、前記第2の不純物領域の深さ方向の不純物濃度分布の極大よりも前記絶縁表面側にあり、
前記ドレイン電極は、前記ドレイン領域に含まれる前記第2の不純物領域の一部と接続する半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜に接して設けられた第1の導電層と、前記第1の導電層上に積層された第2の導電層と、を有する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の導電層の膜厚は20nm以上100nm以下、前記第2の導電層の膜厚は100nm以上400nm以下である請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の不純物領域に重なる前記ゲート絶縁膜の膜厚は、前記第2の不純物領域に重なる前記ゲート絶縁膜の膜厚より薄い請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項5】
単結晶半導体層上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に第1の導電膜を形成し、
前記第1の導電膜上に第2の導電膜を形成し、
複数の強度で光が透過する露光マスクを用いて、前記第2の導電膜上の第1の領域に第1のマスク層を形成し、前記第1の領域と離れた前記第2の導電膜上の第2の領域に第2のマスク層を形成し、
前記第1のマスク層及び前記第2のマスク層を用いてエッチングし、前記ゲート絶縁膜上の前記第1の領域に第1の導電層及び前記第1の導電層と接する第2の導電層を、前記ゲート絶縁膜上の前記第2の領域に第3の導電層を形成し、
前記第1の導電層、前記第2の導電層、及び前記第3の導電層をマスクとして、前記単結晶半導体層に一導電型を付与する不純物元素を添加し、
前記第3の導電層をエッチングする半導体装置の作製方法。
【請求項6】
前記単結晶半導体層は、半導体基板に加速されたイオンを照射して該半導体基板に脆化領域を形成し、絶縁層を介して前記半導体基板と基板を貼り合わせ、熱処理により、前記脆化領域において前記半導体基板を分離して作製する請求項5に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項7】
前記第1のマスク層は、第1の部位、及び第2の部位を有し、
前記第1の部位の膜厚は、前記第2の部位の膜厚より薄く形成する請求項5または請求項6に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項8】
前記第2の部位の膜厚に対する、前記第1の部位の膜厚の比率は、50%以下に形成する請求項7に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項9】
前記第1のマスク層の第1の部位の膜厚と、前記第2のマスク層の膜厚と、は同等に形成することができる請求項7または請求項8に記載の半導体装置の作製方法。
【請求項10】
前記第1の導電層の膜厚、及び前記第3の導電層の膜厚を20nm以上100nm以下、前記第2の導電層の膜厚を100nm以上400nm以下に形成する請求項5乃至請求項9のいずれか一に記載の半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−142566(P2012−142566A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−273328(P2011−273328)
【出願日】平成23年12月14日(2011.12.14)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】