説明

半導体装置

【課題】メモリへの誤書き込み等を完全に防止することのできる半導体装置を提供する。
【解決手段】電気的に書き込み可能なメモリ9bを有する半導体装置100であって、当該半導体装置100における電源端子3または出力端子5が、メモリ9bへの書き込み電圧供給端子を兼ねると共に、前記書き込み電圧供給端子とメモリ9bを結ぶ書き込み電圧供給ラインLN1に、ヒューズ40が挿入されてなる半導体装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に書き込み可能なメモリを有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的に書き込み可能なメモリを有する半導体装置が、例えば、特開2002−25244号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された半導体装置は、実装基板上で、半導体記憶素子(メモリ)の各入力端子と外部接続端子との間および半導体記憶素子の各入出力端子と外部接続端子との間に、所定の周波数帯域のみを通過させるフィルタ素子を挿入することにより、半導体記憶素子に入力される信号の余分な周波数成分をカットするものである。
【特許文献1】特開2002−25244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された半導体装置は、半導体記憶素子への配線途中にフィルタを設けて、半導体記憶素子に入力される信号の波形を安定した良質な波形にして、半導体記憶素子の誤動作を防止するものである。しかしながら、例えば車載用の半導体装置への適用を考えた場合、自動車ノイズは数mSといった低周波まで存在するので、フィルタが大きくなって、チップ内の素子で回路定数が設計出来ないといった問題がある。
【0005】
図6に、車載用の半導体装置であって、電気的に書き込み可能なメモリを有する別の半導体装置90を示す。図6は、半導体装置90に搭載された、トリミング回路を内蔵したCMOSセンサ回路の電気的構成を示す図である。
【0006】
図6に示す半導体装置90のセンサ回路1は、アナログ回路部6、制御信号分離回路部7、ロジック回路部8およびトリミング電圧制御回路部9から構成されている。このセンサ回路1には、物理量センサ例えばピエゾ素子をブリッジ状に配置して構成されたセンサ素子2が接続されている。センサ回路1は、通常動作状態において、センサ素子2からの出力信号に応じた電圧(検出信号に相当)をセンサ出力として出力端子5から出力するようになっている。
【0007】
また、センサ回路1は、センサ素子2における感度調整、オフセット調整、オフセット温度特性調整等の電気トリミング(以下、単にトリミングと称す)を行うトリミング回路を備えている。出力端子5は、上記通常動作状態ではセンサ出力端子として機能する一方、上記トリミングを行うトリミング動作状態ではトリミングデータ等の入力端子として機能するようになっている。
【0008】
センサ回路1への電源供給は、電源端子3,4を介して行われる。これら電源端子3,4は、通常動作状態においてはセンサ回路1の駆動用電圧Vccの供給端子として機能し、トリミング動作状態においてはセンサ回路1の駆動用電圧Vccまたはメモリヘの書き込み電圧VPPの供給端子として機能するようになっている。なお、センサ回路1は、これら3つの端子3,4,5のみを備え、トリミング用の専用端子は備えていない。
【0009】
図6のセンサ回路1におけるトリミング電圧制御回路部9は、アドレスデコーダ、入出力コントローラ、ラッチ(保持回路に相当)9a、EPROMからなるメモリ9b(不揮発性メモリ)およびD/Aコンバータから構成されている。
【0010】
トリミング動作状態において、ロジック回路部8から送られたトリミングデータは、まずラッチ9aに保持され、書き込みモード(書込動作モードに相当)に設定されるとラッチ9aの保持データがメモリに書き込まれるようになっている。この場合の書き込み電圧VPPは、電源端子3からフィルタ17、書き込み電圧供給ラインLN1、ロジック回路部8を介してトリミング電圧制御回路部9に与えられるようになっている。
【0011】
以上示したように、図6のセンサ回路1を持つ半導体装置90は、電気的に書き込み可能なメモリ(EPROM)9bを有する半導体装置であって、トリミング用の専用端子は備えておらず、3つの端子3,4,5のみからなる小型化された低コストの半導体装置となっている。尚、この半導体装置90については、特許出願中(特願2004−252282)である。
【0012】
一方、図6の小型化された半導体装置90を自動車に搭載して用いる場合には、以下に示すような問題がある。自動車のようなノイズ環境においては、電源端子や出力端子には通常動作電圧値以上の電圧が過渡的に加わる事が多くある。図6の小型化された半導体装置90では、出力端子5がトリミングデータ(リセット信号Sr、クロック信号Sc、データ信号Sd)等の入力端子として機能するようになっており、電源端子3,4がメモリ9bヘの書き込み電圧VPPの供給端子として機能するようになっている。このため、これら3つの端子3,4,5に上記の過渡的な電圧が印加されると、メモリ9bに誤書き込み(EEPROMでは消去)されて、データが変わってしまう可能性がある。
【0013】
この誤書き込み等を防止するため、通常、MOS型トランジスタによるスイッチをメモリ9bへの回路に挿入して、トリミング時以外はメモリ9bへの回路を切る設計が行われている。しかしながらこの場合にも、MOS型トランジスタのPN接合部を組み合わせた寄生素子が存在するため、その接合容量により過渡的な電流が流れて、厳しいノイズ環境においてはメモリ9bへの誤書き込み等を完全に防止することはできない。
【0014】
そこで本発明は、電気的に書き込み可能なメモリを有する半導体装置であって、メモリへの誤書き込み等を完全に防止することのできる半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、電気的に書き込み可能なメモリを有する半導体装置であって、当該半導体装置における電源端子または出力端子が、前記メモリへの書き込み電圧供給端子を兼ねると共に、前記書き込み電圧供給端子と前記メモリを結ぶ書き込み電圧供給ラインに、ヒューズが挿入されてなることを特徴としている。
【0016】
上記半導体装置は、電気的に書き込み可能なメモリを有するため、当該半導体装置の製造後に前記メモリに必要なデータを書き込んで、当該半導体装置の電気特性を好適に調整することができる。一方、上記半導体装置では、メモリへの必要な書き込み終了後、書き込み電圧供給ラインに挿入されたヒューズを用いて、メモリへの書き込み回路を物理的に断線させることができる。これにより、当該半導体装置の動作中に、ノイズが乗り易い電源端子または出力端子に過渡的な電圧が印加された場合であっても、メモリへの誤書き込み(誤消去)を完全に防止することができる。
【0017】
請求項2と3に記載のように、前記ヒューズには、例えば、シリコン−クロム(Si−Cr)合金、ポリシリコン(Poly−Si)、チタンタングステン(TiW)またはアルミニウム(Al)配線材料等からなる薄膜抵抗を用いることができる。これらの材料は、半導体装置の製造工程において通常用いられる材料であり、これによって、ヒューズ追加による当該半導体装置の製造コスト増を抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載のように、前記電気的に書き込み可能なメモリには、例えば、EPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)があり、また、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read-Only Memory)であってもよい。
【0019】
請求項5に記載のように、上記半導体装置においては、前記書き込み電圧供給ラインにおける前記ヒューズと前記メモリの間の位置に、前記ヒューズの電気的断線手段が配置されてなることが好ましい。このヒューズの電気的断線手段としては、請求項6と7に記載のように、前記書き込み電圧供給ラインとグランドの間に挿入されたトランジスタであってもよいし、ツェナーダイオードであってもよい。これらの電気的断線手段を用いることで、メモリへの必要な書き込み終了後、前記ヒューズを容易に切断することができる。
【0020】
また、請求項8に記載のように、上記半導体装置においては、前記書き込み電圧供給ラインにおける前記ヒューズと前記メモリの間の位置に、前記ヒューズの断線確認手段が配置されてなることが好ましい。このヒューズの断線確認手段としては、請求項9に記載のように、前記書き込み電圧供給ラインとグランドの間に挿入された抵抗とすることができる。この抵抗の両端電圧をチェックすることにより、前記ヒューズが確実に断線できているか否かを確認することができる。
【0021】
請求項10に記載のように、上記半導体装置は、電気的に書き込み可能なメモリを有し、当該半導体装置の製造後にメモリに必要なデータを書き込んで電気特性を好適に調整することができるため、圧力、加速度、回転角等のセンサ回路を搭載した半導体装置として好適である。
【0022】
請求項11に記載のように、前記センサ回路は、例えば、トリミング値を用いてセンサ素子への供給電圧の調整および前記センサ素子の出力信号の調整の少なくとも一方を行い、前記センサ素子の出力信号に応じた検出信号を前記出力端子から出力するセンサ信号処理回路と、前記出力端子に入力される電圧と通常動作時に前記電源端子に印加される電源電圧よりも高い電圧範囲内において設定された所定の基準電圧との比較に基づいて、トリミング動作状態への移行信号を生成するとともに前記出力端子に入力される電圧信号からデータを分離するデータ分離回路と、前記データ分離回路で分離されたデータのうち前記センサ信号処理回路によって行われる調整の調整量を決定するトリミング値に対応したトリミングデータを一時的に保持する保持回路および当該保持回路に保持されたトリミングデータを記憶可能な前記メモリを有し、前記電源端子に与えられる書き込み電圧を用いて前記保持回路に保持されたトリミングデータを前記メモリに書き込むとともに、前記通常動作時において、前記保持回路に保持されたトリミングデータと前記メモリに記憶されたトリミングデータの何れかを選択しそれに対応したトリミング値を生成して前記センサ信号処理回路に出力するトリミング値制御回路とを備えているように構成することができる。
【0023】
請求項12に記載のように、上記半導体装置は、ノイズが乗り易い電源端子または出力端子に過渡的な電圧が印加された場合であってもメモリへの誤書き込み等を完全に防止することができため、厳しいノイズ環境で使用される車載用の半導体装置に好適である。
【0024】
以上の請求項1〜12に記載した半導体装置は、電源端子または出力端子がメモリへの書き込み電圧供給端子を兼ねた小型・低コストの半導体装置であり、ノイズが乗り易い電源端子または出力端子とメモリを結ぶ書き込み電圧供給ラインにヒューズを挿入して、メモリへの誤書き込み等を完全に防止するものである。
【0025】
しかしながら、書き込み電圧供給ラインにヒューズを挿入し、メモリへの誤書き込み等を完全に防止する上記半導体装置は、請求項13〜23に記載した半導体装置のように、調整用の専用端子を備えた半導体装置にも拡張して適用することができる。尚、請求項13〜23に記載の半導体装置により得られる効果は、請求項1〜12に記載の半導体装置と同様であり、その説明は省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明の半導体装置の一例で、半導体装置100の回路を模式的に示す図である。尚、図1の半導体装置100の回路において、図6の半導体装置90と回路と同様の部分については同じ符号を付した。
【0028】
図1の半導体装置100は、図6に示した半導体装置90と類似の車載用の半導体装置である。即ち、図1に示す半導体装置100のセンサ回路1は、アナログ回路部6、制御信号分離回路部7、ロジック回路部8およびトリミング電圧制御回路部9から構成されている。このセンサ回路1には、物理量センサ例えばピエゾ素子をブリッジ状に配置して構成されたセンサ素子2が接続されている。センサ回路1は、通常動作状態において、センサ素子2からの出力信号に応じた電圧(検出信号に相当)をセンサ出力として出力端子5から出力するようになっている。
【0029】
また、センサ回路1は、センサ素子2における感度調整、オフセット調整、オフセット温度特性調整等の電気トリミング(以下、単にトリミングと称す)を行うトリミング回路を備えている。出力端子5は、上記通常動作状態ではセンサ出力端子として機能する一方、上記トリミングを行うトリミング動作状態ではトリミングデータ等の入力端子として機能するようになっている。
【0030】
センサ回路1への電源供給は、電源端子3,4を介して行われる。これら電源端子3,4は、通常動作状態においてはセンサ回路1の駆動用電圧Vccの供給端子として機能し、トリミング動作状態においてはセンサ回路1の駆動用電圧Vccまたはメモリヘの書き込み電圧VPPの供給端子として機能するようになっている。なお、センサ回路1は、これら3つの端子3,4,5のみを備え、トリミング用の専用端子は備えていない。
【0031】
図1のセンサ回路1におけるトリミング電圧制御回路部9は、アドレスデコーダ、入出力コントローラ、ラッチ(保持回路に相当)9a、EPROMからなるメモリ9b(不揮発性メモリ)およびD/Aコンバータから構成されている。
【0032】
トリミング動作状態において、ロジック回路部8から送られたトリミングデータは、まずラッチ9aに保持され、書き込みモード(書込動作モードに相当)に設定されるとラッチ9aの保持データがメモリに書き込まれるようになっている。この場合の書き込み電圧VPPは、電源端子3からフィルタ17、書き込み電圧供給ラインLN1、ロジック回路部8を介してトリミング電圧制御回路部9に与えられるようになっている。
【0033】
上記説明を言い換えれば、各回路部においては、以下の処理が実施される。
【0034】
アナログ回路部(センサ信号処理回路)6においては、トリミング値を用いてセンサ素子2への供給電圧の調整およびセンサ素子2の出力信号の調整の少なくとも一方を行い、センサ素子2の出力信号に応じた検出信号を出力端子5から出力する。
【0035】
制御信号分離回路部(データ分離回路)7においては、出力端子5に入力される電圧と、通常動作時に電源端子3に印加される電源電圧Vccよりも高い電圧範囲内において設定された所定の基準電圧VPPとの比較に基づいて、トリミング動作状態への移行信号を生成するとともに、出力端子5に入力される電圧信号からデータを分離する。
【0036】
トリミング電圧制御回路部(トリミング値制御回路部)9においては、データ分離回路7で分離されたデータのうち、センサ信号処理回路6によって行われる調整の調整量を決定するトリミング値に対応したトリミングデータを一時的に保持する保持回路(ラッチ)9aおよび保持回路9aに保持されたトリミングデータを記憶可能なメモリ9bを有し、電源端子3に与えられる書き込み電圧VPPを用いて、保持回路9aに保持されたトリミングデータをメモリ9bに書き込むとともに、通常動作時において、保持回路9aに保持されたトリミングデータとメモリ9bに記憶されたトリミングデータの何れかを選択し、それに対応したトリミング値を生成して、センサ信号処理回路6に出力する。
【0037】
以上までの説明は、図6に示した半導体装置90と同様の部分である。
【0038】
一方、図1の半導体装置100は、図6に示した半導体装置90と異なり、書き込み電圧VPPの供給端子である電源端子3とメモリ9bを結ぶ書き込み電圧供給ラインLN1に、ヒューズ40が挿入されている。
【0039】
図6に示す半導体装置90では、自動車に搭載してノイズ環境で使用した場合、3つの端子3,4,5に通常動作電圧値以上の過渡的な電圧が印加されると、メモリ9bに誤書き込み(EEPROMでは消去)されて、データが変わってしまう可能性があった。これに対して、図1の半導体装置100では、センサ2の調整時においてメモリ9bへの必要な書き込み終了後、書き込み電圧供給ラインLN1に挿入されたヒューズを40用いて、メモリ9bへの書き込み回路を物理的に断線させることができる。これにより、半導体装置100の動作中に、ノイズが乗り易い電源端子3,4および出力端子5に過渡的な電圧が印加された場合であっても、メモリ9bへの誤書き込み(誤消去)を完全に防止することができる。
【0040】
尚、ヒューズ40は、寄生素子ができない材料であればよいが、例えば、シリコン−クロム(Si−Cr)合金、ポリシリコン(Poly−Si)、チタンタングステン(TiW)またはアルミニウム(Al)配線材料等からなる薄膜抵抗を用いることができる。これらの材料は、電気的に溶断可能な材料であり、半導体装置の製造工程において通常用いられる材料で、これによってヒューズ40の追加による半導体装置100の製造コスト増を抑制することができる。
【0041】
図2は、本発明における別の半導体装置の例で、半導体装置101の回路を模式的に示す図である。
【0042】
図2に示す半導体装置101の回路は、図中の破線で囲ったセンサ20を動作させるためのセンサ回路である。センサ20は図2のセンサ回路と同じ基板に形成されていもよいし、別基板に形成されていてもよい。また、半導体装置101のセンサ回路は、センサ20の信号を増幅するアナログ回路60a、センサ20の特性ばらつきを補正するためのD/Aコンバータ(DAC)80、電気的に書き込み可能なメモリ(EPROM)10、制御回路90および信号分離回路70等で構成されている。半導体装置101では、通常動作状態において、電源端子30より動作電圧Vccを印加し、出力端子50より電圧信号Voutを出力する。
【0043】
図2に示す半導体装置101も、図1に示す半導体装置100と同様に、電気的に書き込み可能なメモリ(EPROM)10を有する半導体装置であり、半導体装置101における電源端子30は、メモリ10への書き込み電圧VPPの供給端子を兼ねている。また、書き込み電圧供給端子である電源端子30とメモリ10を結ぶ書き込み電圧供給ラインLN2には、ヒューズ41が挿入されている。
【0044】
図2の半導体装置101では、センサ20の素子特性の調整には、出力端子50よりクロック、データ等の制御信号を入力したのち、電源端子30の電圧をVccからVPPに上げて、メモリ(EPROM)10への書き込みを行う。
【0045】
図2の半導体装置101では、図1の半導体装置100と異なり、書き込み電圧供給ラインLN2におけるヒューズ41とメモリ10の間の位置に、ヒューズ41の電気的断線手段が配置されている。半導体装置101の電気的断線手段は、書き込み電圧供給ラインLN2とグランドの間に挿入されたトランジスタ41aからなるヒューズカット用ドライバである。半導体装置101では、メモリ10への書き込み終了後、トランジスタ41aのON信号を出力端子50より入力し、書き込み電圧供給ラインLN2とグランドの間に大きな電流を流して、ヒューズ41をカットする。このように、書き込み電圧供給ラインLN2におけるヒューズ41とメモリ10の間の位置で、書き込み電圧供給ラインLN2とグランドの間に挿入されたトランジスタ41aを用いることで、メモリ10への必要な書き込み終了後、ヒューズ41を容易に切断することができる。
【0046】
図2の半導体装置101も、図1の半導体装置100と同様に、電気的に書き込み可能なメモリ10を有するため、半導体装置101の製造後にメモリ10に必要なデータを書き込んで、当該半導体装置101(センサ20)の電気特性を好適に調整することができる。また、上記半導体装置101では、メモリ10への必要な書き込み終了後、書き込み電圧供給ラインLN2に挿入されたヒューズ41を用いて、メモリ10への書き込み回路を物理的に断線させることができる。これにより、半導体装置101の動作中にノイズが乗り易い電源端子30に過渡的な電圧が印加された場合であっても、メモリ10への誤書き込み等を完全に防止することができる。
【0047】
図3は、別の半導体装置102の回路を模式的に示す図である。図3の半導体装置102における回路は、図2の半導体装置101と類似の回路構成となっているが、ヒューズ42の電気的断線手段として、ツェナーダイオード42aが用いられている点で異なっている。尚、図3の半導体装置102の回路において、図2の半導体装置101と回路と同様の部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0048】
図3の半導体装置102においてヒューズ42の電気的断線手段として用いられるツェナーダイオード42aは、図2の半導体装置101におけるトランジスタ41aと同様に、書き込み電圧供給ラインLN2におけるヒューズ42とメモリ10の間の位置で、書き込み電圧供給ラインLN2とグランドの間に挿入配置されている。半導体装置102では、メモリ10への書き込み終了後、電源端子30にツェナーダイオード42aのクランプツェナー電圧より高い電圧Vcutを印加し、ヒューズ42に大きな電流を流し込んで溶断させる。このように、書き込み電圧供給ラインLN2におけるヒューズ42とメモリ10の間の位置で、書き込み電圧供給ラインLN2とグランドの間に挿入されたツェナーダイオード42aによっても、メモリ10への必要な書き込み終了後、ヒューズ42を容易に切断することができる。
【0049】
図4は、別の半導体装置103の回路を模式的に示す図である。図4の半導体装置103における回路は、図2の半導体装置101と類似の回路構成となっているが、ヒューズ43の電気的断線手段であるトランジスタ43aの他に、ヒューズ43の断線確認手段が用いられている点で異なっている。尚、図3の半導体装置102の回路において、図2の半導体装置101と回路と同様の部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
図4の半導体装置103におけるヒューズ43の断線確認手段は、書き込み電圧供給ラインLN2におけるヒューズ43とメモリ10の間の位置で、書き込み電圧供給ラインLN2とグランドの間に挿入配置された抵抗43bからなる。この抵抗43bの両端電圧を制御回路90からチェックすることにより、ヒューズ43bが確実に断線できているか否かを確認することができる。これにより、半導体装置103の製品品質をより高めることができる。
【0051】
図5に、別の半導体装置104を示す。図5の半導体装置104は、着磁ロータの回転を検出する半導体装置で、図5(a)は、半導体装置104の回路を模式的に示す図である。また、図5(b)は、着磁ロータの回転と図5(a)の磁気抵抗素子からなるセンサ21の出力信号の関係を示す図であり、図5(c)は、図5(a)の一端子(出力端子)51における電流波形を示す図である。
【0052】
図5に示す半導体装置104の回路も、センサ21の特性ばらつきを補正するためのD/Aコンバータ(DAC)81、電気的に書き込み可能なメモリ(EPROM)11、制御回路91および信号分離回路71等を有している。図5に示す半導体装置104も、図3に示す半導体装置102と同様に、電気的に書き込み可能なメモリ(EPROM)11を有する半導体装置であり、半導体装置104におけるバッテリ端子(電源端子)31は、メモリ11への書き込み電圧VPPの供給端子を兼ねている。また、書き込み電圧供給端子であるバッテリ端子31とメモリ11を結ぶ書き込み電圧供給ラインLN3には、ヒューズ44とツェナーダイオード44aが配置されている。従って、図5(a)に示す半導体装置104においても、図3に示す半導体装置102と同様に、メモリ11への書き込み終了後、バッテリ端子31にツェナーダイオード44aのクランプツェナー電圧より高い電圧Vcutを印加して、ヒューズ44を容易に切断することができる。これによって、バッテリ端子31に過渡的な電圧が印加された場合であっても、メモリ11への誤書き込み等を完全に防止することができる。
【0053】
以上のように、図1〜図5に示した半導体装置100〜104は、いずれも、電気的に書き込み可能なメモリ9b,10,11を有する半導体装置であって、メモリ9b,10,11への誤書き込み等を完全に防止することのできる半導体装置となっている。
【0054】
尚、図1〜図5の半導体装置100〜104におけるメモリ9b,10,11は、いずれもEPROM(Erasable Programmable Read-Only Memory)であった。しかしながら、書き込み電圧供給ラインにヒューズが配置された本発明の半導体装置はこれに限らず、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read-Only Memory)やその他の電気的に書き込み可能なメモリを有する任意の半導体装置に適用することができる。
【0055】
図1〜図5の半導体装置100〜104では、いずれも電源端子3,30,31が、メモリ9b,10,11への書き込み電圧供給端子を兼ねており、書き込み電圧供給端子を兼ねる電源端子3,30,31とメモリ9b,10,11を結ぶ書き込み電圧供給ラインLN1〜LN3に、ヒューズ40〜44が配置されていた。しかしながら、本発明の半導体装置はこれに限らず、出力端子5,50,51がメモリ9b,10,11への書き込み電圧供給端子を兼ねており、書き込み電圧供給端子を兼ねる出力端子5,50,51とメモリ9b,10,11を結ぶ書き込み電圧供給ラインにヒューズが配置されていてもよい。
【0056】
電源端子または出力端子がメモリへの書き込み電圧供給端子を兼ねた半導体装置は、小型・低コストである反面、電源端子や出力端子にノイズが乗り易い。従って、メモリへの誤書き込み等を完全に防止することのできる本発明の半導体装置は、電源端子または出力端子がメモリへの書き込み電圧供給端子を兼ねた上記半導体装置に好適である。しかしながら、書き込み電圧供給ラインにヒューズを挿入してメモリへの誤書き込み等を完全に防止する本発明の半導体装置の効果は、上記の電源端子または出力端子がメモリへの書き込み電圧供給端子を兼ねた半導体装置に限らず、調整用の専用端子を備えた半導体装置にも拡張して適用することができる。
【0057】
本発明の半導体装置は、電気的に書き込み可能なメモリを有し、半導体装置の製造後にメモリに必要なデータを書き込んで電気特性を好適に調整することができる。このため、圧力、加速度、回転角等のセンサ回路を搭載した半導体装置として好適に用いられる。特に、本発明の半導体装置は、ノイズが乗り易い電源端子または出力端子に過渡的な電圧が印加された場合であってもメモリへの誤書き込み等を完全に防止することができため、厳しいノイズ環境で使用される車載用の半導体装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の半導体装置の一例で、半導体装置100の回路を模式的に示す図である。
【図2】本発明における別の半導体装置の例で、半導体装置101の回路を模式的に示す図である。
【図3】本発明における別の半導体装置の例で、半導体装置102の回路を模式的に示す図である。
【図4】本発明における別の半導体装置の例で、半導体装置103の回路を模式的に示す図である。
【図5】本発明における別の半導体装置の例で、(a)は、半導体装置104の回路を模式的に示す図である。(b)は、着磁ロータの回転と(a)の磁気抵抗素子からなるセンサ21の出力信号の関係を示す図であり、(c)は、図5(a)の一端子51における電流波形を示す図である。
【図6】特許出願中の半導体装置90の回路を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0059】
90,100〜104 半導体装置
2,20,21 センサ
3,30,31 電源端子
5,50,51 出力端子
9b,10,11 (電気的に書き込み可能な)メモリ
LN1〜LN3 書き込み電圧供給ライン
40〜44 ヒューズ
41a,43a トランジスタ(電気的断線手段)
42a,44a ツェナーダイオード(電気的断線手段)
43b 抵抗(断線確認手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に書き込み可能なメモリを有する半導体装置であって、
当該半導体装置における電源端子または出力端子が、前記メモリへの書き込み電圧供給端子を兼ねると共に、
前記書き込み電圧供給端子と前記メモリを結ぶ書き込み電圧供給ラインに、ヒューズが挿入されてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ヒューズが、薄膜抵抗からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記薄膜抵抗が、シリコン−クロム(Si−Cr)合金、ポリシリコン(Poly−Si)、チタンタングステン(TiW)またはアルミニウム(Al)配線材料からなることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記メモリが、EPROMまたはEEPROMであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記書き込み電圧供給ラインにおける前記ヒューズと前記メモリの間の位置に、前記ヒューズの電気的断線手段が配置されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ヒューズの電気的断線手段が、前記書き込み電圧供給ラインとグランドの間に挿入されたトランジスタであることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ヒューズの電気的断線手段が、前記書き込み電圧供給ラインとグランドの間に挿入されたツェナーダイオードであることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記書き込み電圧供給ラインにおける前記ヒューズと前記メモリの間の位置に、前記ヒューズの断線確認手段が配置されてなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記ヒューズの断線確認手段が、前記書き込み電圧供給ラインとグランドの間に挿入された抵抗であることを特徴とする請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体装置が、センサ回路を搭載した半導体装置であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記センサ回路が、トリミング値を用いてセンサ素子への供給電圧の調整および前記センサ素子の出力信号の調整の少なくとも一方を行い、前記センサ素子の出力信号に応じた検出信号を前記出力端子から出力するセンサ信号処理回路と、
前記出力端子に入力される電圧と通常動作時に前記電源端子に印加される電源電圧よりも高い電圧範囲内において設定された所定の基準電圧との比較に基づいて、トリミング動作状態への移行信号を生成するとともに前記出力端子に入力される電圧信号からデータを分離するデータ分離回路と、
前記データ分離回路で分離されたデータのうち前記センサ信号処理回路によって行われる調整の調整量を決定するトリミング値に対応したトリミングデータを一時的に保持する保持回路および当該保持回路に保持されたトリミングデータを記憶可能な前記メモリを有し、前記電源端子に与えられる書き込み電圧を用いて前記保持回路に保持されたトリミングデータを前記メモリに書き込むとともに、前記通常動作時において、前記保持回路に保持されたトリミングデータと前記メモリに記憶されたトリミングデータの何れかを選択しそれに対応したトリミング値を生成して前記センサ信号処理回路に出力するトリミング値制御回路とを備えていることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体装置が、車載用の半導体装置であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
電気的に書き込み可能なメモリを有する半導体装置であって、
当該半導体装置が、前記メモリへの書き込み電圧供給端子を有すると共に、
前記書き込み電圧供給端子と前記メモリを結ぶ書き込み電圧供給ラインに、ヒューズが挿入されてなることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
前記ヒューズが、薄膜抵抗からなることを特徴とする請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記薄膜抵抗が、シリコン−クロム(Si−Cr)合金、ポリシリコン(Poly−Si)、チタンタングステン(TiW)またはアルミニウム(Al)配線材料からなることを特徴とする請求項14に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記メモリが、EPROMまたはEEPROMであることを特徴とする請求項13乃至15のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記書き込み電圧供給ラインにおける前記ヒューズと前記メモリの間の位置に、前記ヒューズの電気的断線手段が配置されてなることを特徴とする請求項13乃至16のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記ヒューズの電気的断線手段が、前記書き込み電圧供給ラインとグランドの間に挿入されたトランジスタであることを特徴とする請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記ヒューズの電気的断線手段が、前記書き込み電圧供給ラインとグランドの間に挿入されたツェナーダイオードであることを特徴とする請求項17に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記書き込み電圧供給ラインにおける前記ヒューズと前記メモリの間の位置に、前記ヒューズの断線確認手段が配置されてなることを特徴とする請求項13乃至19のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記ヒューズの断線確認手段が、前記書き込み電圧供給ラインとグランドの間に挿入された抵抗であることを特徴とする請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記半導体装置が、センサ回路を搭載した半導体装置であることを特徴とする請求項13乃至21のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記半導体装置が、車載用の半導体装置であることを特徴とする請求項13乃至22のいずれか一項に記載の半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−210723(P2006−210723A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22063(P2005−22063)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】