説明

半導体装置

【課題】スイッチ回路部で生じる高周波輻射が論理回路部へ悪影響を及ぼすことを抑制でき、かつ、小型化、低コスト化を犠牲にすることのない半導体装置を得る。
【解決手段】スイッチ回路部を論理回路部にてスイッチング動作させる半導体装置(アンテナスイッチ)。スイッチ回路部と論理回路部とが単一の半導体基板20上に形成されており、論理回路部の直上にシールド導体30が配置されている。シールド導体30はエアブリッジ構造とされ、グランド端子GND3に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、特に、スイッチ回路部と論理回路部とを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置として、携帯電話などのアンテナの直下に配置されるアンテナスイッチモジュールが知られており、この半導体装置では、トランジスタを含むスイッチ回路部を論理回路部にてスイッチング動作させるように構成されている。
【0003】
特許文献1には、半導体基板を用いたアンテナスイッチ回路が記載されており、アンテナスイッチ回路チップとアンテナスイッチデコーダ回路チップとがそれぞれ別の基板上に形成され、両者がワイヤボンド接続されている。しかし、このアンテナスイッチ回路では、アンテナスイッチ回路とデコーダ回路とが別々に形成され、両者を接続して一体化しているため、装置が全体的に大型化し、接続のための工程が必要で高価になるという問題点を有していた。
【0004】
そのために、スイッチ回路部とそれを制御する論理回路部とを単一の半導体基板上に形成することが考えられる。しかし、両者を近接して配置すると、例えば、GSM(Global System for Mobile communications)のように送信時に35dBmという大きな電力を出力する場合、スイッチ回路部にその大電力(高周波)が印加されて電力の一部が論理回路部に輻射される不具合を生じる。輻射電力が論理回路部に作用すると、論理回路部が誤動作するおそれがある。スイッチ回路部のトランジスタの数を増加させたり、スイッチ回路部と論理回路部とを遠ざけてICを大きくすることで、論理回路部への輻射作用を減少させることができるが、これでは小型化が損われ、両者を単一の基板上に形成した意味がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−350068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、スイッチ回路部で生じる高周波輻射が論理回路部へ悪影響を及ぼすことを抑制でき、かつ、小型化、低コスト化を犠牲にすることのない半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の一形態である半導体装置は、
スイッチ回路部と論理回路部とを備えた半導体装置において、
前記スイッチ回路部と前記論理回路部とが単一の半導体基板上に形成されており、
前記論理回路部の直上にシールド導体が配置されていること、
を特徴とする。
【0008】
前記半導体装置においては、スイッチ回路部と論理回路部とが単一の半導体基板上に形成されているために小型化、低コスト化を達成でき、かつ、論理回路部の直上にシールド導体が配置されているため、スイッチ回路部から高周波の電力輻射が生じたとしても、該輻射はシールド導体を介して逃がされるので論理回路部に誤動作が生じるおそれはない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スイッチ回路部で生じる高周波輻射が論理回路部へ悪影響を及ぼすことを抑制でき、かつ、小型化、低コスト化を犠牲にすることのない半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る半導体装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】前記半導体装置の回路図である。
【図3】前記半導体装置の各エレメントの配置関係を示す説明図である。
【図4】前記半導体装置の論理回路部を示す断面図である。
【図5】前記半導体装置に配置されたシールド導体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る半導体装置の実施例について添付図面を参照して説明する。
【0012】
本発明に係る半導体装置の一実施例は、図1及び図2に示すように、スイッチ回路部11と論理回路部12とからなる単極双投スイッチであり、携帯電話などのアンテナの直下に配置されるものである。
【0013】
詳しくは、スイッチ回路部11は、トランジスタTr1,Tr2、Tr3,Tr4及び抵抗R1,R2,R3,R4を備えたスイッチ回路部11A,11B,11C,11Dからなり、アンテナ端子ANT、信号端子Port1,Port2、グランド端子GND1,GND2を備えている。論理回路部12はスイッチ回路部11をスイッチング動作させる所定の回路で構成されており、制御端子CTL、電源端子VDD、グランド端子GND3を備えている。
【0014】
以上の単極双投スイッチ(アンテナスイッチ)において、制御端子CTLからアンテナ端子ANTと信号端子Port1とを接続する信号を論理回路部12に入力すると、論理回路部12が制御信号を出力し、回路部11A、11Dの各トランジスタTr1,Tr4がオンするとともに、回路部11B,11Cの各トランジスタTr2,Tr3はオフのままとなる。回路部11Aがオンするのでアンテナ端子ANTと信号端子Port1とが導通する。信号端子Port2へ漏れてくる信号は回路部11Dがオンになりグランド端子GND2を介して接地されるため、グランド端子GND2から外部に逃がされる。一方、制御端子CTLからアンテナ端子ANTと信号端子Port2とを接続する信号を論理回路部12に入力すると、回路部11B,11Cの各トランジスタTr2,Tr3がオンするとともに、回路部11A,11Dの各トランジスタTr1,Tr4はオフ状態となり、回路部11Bがオンしているので、アンテナ端子ANTと信号端子Port2とが導通する。信号端子Port1へ漏れてくる信号は回路部11Cがオンになりグランド端子GND1を介して接地されるため、グランド端子GND1から外部に逃がされる。
【0015】
前記トランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4や端子ANT,Port1,Port2,GND1,GND2は、半導体基板20上に、図3に示す状態で配置されている。本実施例において、各スイッチ回路部は5個のトランジスタで構成されているが、必要な出力に応じて、トランジスタの数は変更しても構わない。また、論理回路部12は半導体基板20の下段部にグランド端子GND3を間にして2分割された状態で配置されている。
【0016】
2分割された論理回路部12の直上には、それぞれの論理回路部12を覆うようにシールド導体30(図4参照)が配置されている。論理回路部12の断面構造は、図4に示すように、例えば、ガリウム・ヒ素基板からなる半導体基板20の表面部分に論理回路部12を構成するトランジスタなどの素子21が形成され、保護層22aを介してグランド端子GND3などの電極が金、チタンなどで形成され、さらに、保護層22bが形成されている。保護層22a,22bは窒化シリコン、酸化シリコンやポリイミドなどからなる。シールド導体30は、金などの導体からなり、保護層22bの開口部を通じてグランド端子GND3に電気的に接続された状態で、エアブリッジ構造で形成されている。
【0017】
エアブリッジ構造とは、例えば、特開平7−321425号公報に詳述されている。即ち、保護層22bの表面にレジストを塗布、乾燥させ、該保護層22b上に金属膜をめっきなどで形成し、レジストを洗い出すことによりシールド導体30とする。洗い出されたレジストの跡は空隙31となる。なお、レジストをそのまま残してもよい。また、シールド導体30を、エアブリッジ構造とせずに、保護層22b上に直接形成してもよい。
【0018】
シールド導体30は、図5(A)に示すように、全面的に覆う形状であってもよく、図5(B)に示すように、スリット30aが形成されていてもよく、あるいは、図5(C)に示すように、網目状に多数の開口30bが形成されていてもよい。なお、シールド導体30の大きさ(面積)は、図3に示すように2分割されている論理回路部12のそれぞれの大きさ(面積)にほぼ等しい。
【0019】
以上の構成からなる半導体装置(アンテナスイッチモジュール、複合モジュール)においては、スイッチ回路部11と論理回路部12とが単一の半導体基板20上に形成されているために、配線が短くて済むので小型化が達成され、また、実装に手間がかからないので低コスト化を達成できる。しかも、論理回路部12の直上にシールド導体30が配置されているため、スイッチ回路部11から高周波の電力輻射が生じたとしても、該輻射はシールド導体30からグランド端子GND3を介して逃がされるので論理回路部12に誤動作が生じるおそれはない。
【0020】
前記シールド導体30は必ずしもグランド端子GND3に接続されている必要はないが、グランドに落とされているほうがシールド効果が良好である。輻射された高周波信号を逃がすためであれば、シールド導体30は制御端子CTL又は電源端子VDDに接続されていてもよい。
【0021】
また、シールド導体30にスリット30aや開口30bが形成されていれは、エアブリッジ構造とする際にレジストの洗い出しが容易になり、シールド導体30自体の強度や耐候性が高くなる。しかも、シールド導体30と論理回路部12との間に発生する浮遊容量が小さくなり、制御動作が安定化する。スリット30aを形成する場合には、スリット30aの幅寸法を高周波信号の波長の1/2以下に設定することで、該高周波信号が論理回路部12に侵入することを防止できる。
【0022】
また、シールド導体30をエアブリッジ構造とすれば、シールド導体30と論理回路部12との間に比誘電率が1の空隙31が形成されるので、両者の間に発生する浮遊容量を小さくでき、制御動作が安定化する。
【0023】
さらに、スイッチ回路部11のグランド端子GND1、GND2と論理回路部12のグランド端子GND3とを半導体基板20上の異なる位置に離れた状態で配置することにより(図3参照)、スイッチ回路部11で発生したノイズが論理回路部12へ侵入することが防止される。また、論理回路部12を二つに分けてその間にグランド端子GND3を配置し、両側に制御端子CTL及び電源端子VDDを配置することで、外部からそれぞれの端子へ電気的に接続する作業が容易になる。
【0024】
(他の実施例)
なお、本発明に係る半導体装置は前記各実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0025】
例えば、半導体基板上に設けられる各種電子素子や端子の個数、配置関係などは任意である。また、前記実施例に示した材料はあくまで例示である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明は、スイッチ回路部と論理回路部とを備えた半導体装置に有用であり、特に、スイッチ回路部で生じる高周波輻射が論理回路部へ悪影響を及ぼすことを抑制でき、かつ、小型化、低コスト化を犠牲にすることがない点で優れている。
【符号の説明】
【0027】
11…スイッチ回路部
12…論理回路部
20…半導体基板
22b…保護層
30…シールド導体
30a…スリット
30b…開口
ANT…アンテナ端子
GND1,GND2,GND3…グランド端子
Port1,Port2…信号端子
CTL…制御端子
VDD…電源端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ回路部と論理回路部とを備えた半導体装置において、
前記スイッチ回路部と前記論理回路部とが単一の半導体基板上に形成されており、
前記論理回路部の直上にシールド導体が配置されていること、
を特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記シールド導体はグランドに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記論理回路部は前記スイッチ回路部を制御するための制御端子と、前記論理回路部と前記スイッチ回路部へ電力を供給するための電源端子とを備え、前記シールド導体は前記制御端子及び/又は電源端子に接続されていること、を特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記シールド導体にはスリット、開口又は網目が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記シールド導体はエアブリッジ構造であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記シールド導体は前記半導体基板上に形成された保護層の表面に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記スイッチ回路部のグランド端子と前記論理回路部のグランド端子とは、前記半導体基板上の異なる位置に配置されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−272749(P2010−272749A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124401(P2009−124401)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】