説明

半導体装置

【課題】電流の減少を抑制することが可能な半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、炭化シリコンからなる基板10と、基板10上に設けられた窒化アルミニウムからなるバッファ層12と、バッファ層12上に設けられた窒化ガリウムからなるチャネル層14と、チャネル層14上に設けられた窒化物半導体からなる電子供給層16と、電子供給層16上に設けられたソース電極20、ドレイン電極22及びゲート電極24と、を具備し、バッファ層12の厚さの逆数の平均値の逆数は20nm以下であり、バッファ層12の最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差は6nm以上であることHEMT100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)は、高周波用出力増幅用素子として用いられることがある。HEMTでは、チャネル層と電子供給層との界面に生じる二次元電子ガス(2DEG)をキャリアとして利用する。2DEGの電子が、窒化物半導体層中のトラップに捕獲されることで、HEMTに流れる電流が変動することがある。特許文献1には、窒化ガリウム(GaN)層の品質を高めることで、電流の減少を抑制する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−147663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、電流の減少の抑制が十分でないことがある。本願発明は、上記課題に鑑み、電流の減少を抑制することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、炭化シリコンからなる基板と、前記基板上に設けられた窒化アルミニウムからなるバッファ層と、前記バッファ層上に設けられた窒化ガリウムからなるチャネル層と、前記チャネル層上に設けられた窒化物半導体からなる電子供給層と、前記電子供給層上に設けられたソース電極、ドレイン電極及びゲート電極と、を具備し、前記バッファ層の厚さの逆数の平均値の逆数は20nm以下であり、前記バッファ層の最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差は6nm以上である半導体装置である。本発明によれば、電流の減少を抑制することができる。
【0006】
上記構成において、前記チャネル層は、ノンドープの窒化ガリウムからなる構成とすることができる。この構成によれば、電流の減少を効果的に抑制することができる。
【0007】
上記構成において、前記厚さの逆数の平均値の逆数は10nm以下である構成とすることができる。この構成によれば、電流の減少を効果的に抑制することができる。
【0008】
上記構成において、前記バッファ層の厚さの平均値は6nm以上である構成とすることができる。この構成によれば、バッファ層を安定して製造することができる。
【0009】
上記構成において、前記バッファ層の最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差は10nm以上である構成とすることができる。この構成によれば、バッファ層を、さらに安定して製造することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電流の減少を抑制することが可能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、比較例に係るHEMTを例示する断面図である。図1(b)は、比較例に係るHEMTのバンド構造を例示する模式図である。
【図2】図2は、比較例に係るHEMTの電流変化量を示すグラフである。
【図3】図3(a)は、実施例1に係るHEMTを例示する断面図である。図3(b)は、AFMの測定結果を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例1に係るHEMTのバンド構造を例示する模式図である。
【図5】図5は、実施例1に係るHEMTの電流変化量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず比較例について説明する。図1(a)は、比較例に係るHEMTを例示する断面図である。
【0013】
図1(a)に示すように、比較例に係るHEMTは、基板110、バッファ層112、チャネル層114、電子供給層116、ソース電極120、ドレイン電極122、ゲート電極124、及び保護層126を備える。
【0014】
基板110は炭化シリコン(SiC)からなる。バッファ層112は、窒化アルミニウム(AlN)からなる。バッファ層112は、基板110上に設けられている。本比較例におけるバッファ層112は、一様な厚さを目指して結晶成長されたものであり、誤差以上の大きな凹凸は有さないものが選択されている。チャネル層114は、例えば厚さ1200nmの窒化ガリウム(GaN)からなる。チャネル層114は、バッファ層112上に設けられている。電子供給層116は、例えば厚さ20nmの窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる。電子供給層116は、チャネル層114上に設けられている。ソース電極120及びドレイン電極122は、例えば電子供給層116に近い方から順にチタン/アルミニウム(Ti/Al)、又はタンタル/アルミニウム(Ta/Al)等の金属を積層して形成されるオーミック電極である。ゲート電極124は、例えば電子供給層116に近い方から順に、ニッケル/アルミニウム(Ni/Al)等の金属を積層してなる。ゲート電極124は、ソース電極120とドレイン電極122との間に位置する。
【0015】
バッファ層112は、基板110の上面に接触している。チャネル層114は、例えばバッファ層112の上面に接触している。電子供給層116は、例えばチャネル層114の上面に接触している。ソース電極120、ドレイン電極122及びゲート電極124は、例えば電子供給層116の上面に接触している。ソース電極120及びドレイン電極122には、例えば金(Au)等の金属からなる配線が接続される。なお、配線は不図示である。電子供給層116上には例えば窒化シリコン(SiN)等の絶縁体からなる保護層126が設けられている。
【0016】
例えばソース電極120を接地し、ドレイン電極122に正電位、ゲート電極124に負電位をそれぞれ印加すると、チャネル層114の電子供給層116との界面付近の2DEGを通じて、ソース−ドレイン間に電流が流れる。
【0017】
2DEGを構成する電子がトラップに捕獲されることにより、電流が減少することがある。チャネル層114に例えば鉄(Fe)又は炭素(C)等の不純物が含まれることにより、チャネル層114にトラップが形成されることがある。チャネル層114中の不純物濃度を低下させ、チャネル層114を形成するGaNを高品質化することにより、トラップの形成は抑制される。しかし、GaNを高品質化した場合、電子が基板110に捕獲されることがある。この点について説明する。
【0018】
図1(b)は、比較例に係るHEMTのバンド構造を例示する模式図である。縦軸はエネルギーを表す。破線で示したEfはフェルミエネルギーを表す。実線で示したEcはコンダクションバンドのエネルギーを表す。図1(b)において、HEMT100Rの各部位に対応する領域は、図1(a)と同じ符号で示す。また格子斜線は2DEGを示す。
【0019】
図1(b)にブロック矢印で示すように、高品質化により、チャネル層114のコンダクションバンドはフェルミエネルギー側にシフトする。このため、チャネル層114にトラップが形成されることは抑制される。また、バッファ層112は、エネルギーギャップの大きな材料(ここではAlN)を使用しているため、基板110とチャネル層114との間の障壁となる。バッファ層112は、2DEGの電子が基板110に捕獲されることを抑制する。バッファ層112を厚くすることで、電子の捕獲はより抑制される。しかし例えば高電圧がかかるなど、強いストレスがHEMT100Rに加わることにより、図1(b)に矢印で示すように、電子が障壁を乗り越え、基板110に捕獲されることがある。電子の捕獲により、コンダクションバンドが持ち上げられ、2DEGの濃度が低下する。その結果、電流が減少する。このように、HEMTにおいては、基板110への電子の捕獲により、電流の減少が生じる恐れがあった。
【0020】
電流の減少を抑制するためには、2DEGの濃度の低下を抑制すればよい。2DEGの濃度の低下を抑制するためには、基板110に捕獲された電子が、基板110からチャネル層114へと放出されればよい。基板110からチャネル層114へのリーク電流が流れることにより、電子がチャネル層114に放出される。基板110を形成するSiCと、バッファ層112を形成するAlNとの格子定数の差に起因して、バッファ層112に欠陥が生じることがある。リーク電流は、バッファ層112の欠陥を介して流れる。このような電子の放出は、プール・フレンケル(Poole Frenkel)型の伝導により行われる。電子の放出により発生するリーク電流の大きさは、バッファ層12の厚さに依存する。電子の放出を促進するために、バッファ層112を薄くすることが考えられる。
【0021】
電流の変化を検証するための実験について説明する。まずサンプルについて説明する。サンプルは図1(a)に示したHEMT100Rである。HEMTの構成は、上記に例示したものである。ソース電極120及びドレイン電極122はTi/Alからなる。ゲート電極124はNi/Auからなる。
【0022】
バッファ層112の厚さT(図1(a)参照)を変更し、電流変化量を検証した。測定の条件について説明する。Vds=50Vを印加して、ドレイン電流Ids=10mAを流す。その後、Vg=−10V、Vds=100Vを5分間印加する(ストレス印加)。その後、ストレス印加前と同電圧をかけ、ドレイン電流を測定する。ストレス印加前後におけるドレイン電流の比を、電流変化量とした。実験の結果について説明する。
【0023】
図2は、電流変化量を示すグラフである。図2に示すグラフは、本比較例において前述したように、バッファ層の厚みのバラつきが小さく、バッファ層には実質的に誤差以上の凹凸がないことを確認したサンプルを測定したものである。横軸はバッファ層の厚さTを表す。縦軸は電流変化量を表す。電流変化量が0%であることは、ストレス印加後の電流が10mAであることを意味する。電流変化量が100%であることは、ストレス印加後の電流が0mAであることを意味する。
【0024】
図2に示すように、バッファ層112の厚さTが小さくなるほど、電流変化量は減少する。例えばT=50nmにおいて、電流変化量は90%を超える。これに対し、T=20nm付近では、電流変化量は60%程度である。また、T=15nmにおいて、電流変化量は約20%となる。T=10nmにおいて、電流変化量は10%を下回る。T=6nm付近において、電流変化量は5%程度である。このように、バッファ層112を薄くした場合、基板110に捕獲された電子が放出され、電流の減少が抑制される。
【0025】
しかしながら、厚さTの小さいバッファ層112の製造は困難である。特にT=6nm以下の場合、その厚さの再現性が低下し、バッファ層112を安定して製造することが難しくなる。バッファ層112の厚さが安定しない結果、HEMTの特性にもバラつきが生じることがある。安定したバッファ層の製造と、電流の減少の抑制とを両立することが求められる。
【0026】
次に図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0027】
図3(a)は、実施例1に係るHEMTを例示する断面図である。図1(a)において例示した構成と同じ構成については、説明を省略する。
【0028】
図3(a)に示すように、HEMT100(半導体装置)は、基板10、バッファ層12、チャネル層14、電子供給層16、ソース電極20、ドレイン電極22、ゲート電極24、保護層26を備える。バッファ層12は、例えば基板10の上面に接触している。チャネル層14は、例えばバッファ層12の上面に接触している。電子供給層16は、例えばチャネル層14の上面に接触している。ソース電極20、ドレイン電極22及びゲート電極24は、例えば電子供給層16の上面に接触している。バッファ層12は、AlNからなる。バッファ層12の上面は凹凸を有する。なお、図3(a)におけるバッファ層12の凹凸の深さ、数等は模式的なものである。
【0029】
バッファ層12の表面粗さを、AFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)を用いて測定した。図3(b)は、AFMの測定結果を示すグラフである。縦軸はAFMによる測定値を表す。測定値はオフセットしている。横軸は、バッファ層12の面方向における位置を表す。面方向における位置とは、測定の始点を基準とした位置である。測定は、面方向の一定間隔ごと行った。図3(b)に示す表面粗さから、バッファ層12の厚さは一様ではないことが分かる。
【0030】
図3(b)に測定結果を示したサンプルにおいて、バッファ層12の厚さをバッファ層12の最も薄い部分の厚さは9nmである。バッファ層12の最も厚い部分の厚さは26nmである。言い換えれば、バッファ層12の最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差は17nmである。ここで、バッファ層12の厚さの平均値を平均厚さと定義する。厚さの逆数の平均値の逆数を、逆数平均厚さと定義する。上記サンプルにおいては、バッファ層12の平均厚さは、例えば20nmである。バッファ層12の逆数平均厚さは、例えば15nmである。本実施例は、図2において説明した比較例と比べて、その表面の凹凸が比較的大きいといえる。
【0031】
次にバンド構造について説明する。図4は、実施例1に係るHEMTのバンド構造を例示する模式図である。図4では、バッファ層12の厚さが薄い部分のバンド構造を示している。図4に示すように、バッファ層12の凹部は、厚さが小さいため、障壁が薄い。矢印で示すように、基板10に捕獲された電子は、バッファ層12の薄い部分を通じて、チャネル層14に放出されやすい。このように、バッファ層12の薄い部分は、リーク電流が流れるリークパスとして、有効に機能する。電子が放出されることにより、コンダクションバンドの持ち上がりは抑制され、2DEGの濃度は高く維持される。
【0032】
次に実験について説明する。実験では、図2において説明した実験と同様に、Vg=−10V、Vds=100Vを5分間印加するストレス印加前後における電流の変化を検証した。サンプルは図3に示したHEMT100である。HEMT100の構成は上記に例示したものを用いた。ソース電極20及びドレイン電極22はTi/Alからなる。ゲート電極24はNi/Auからなる。
【0033】
図5は、電流変化量を示すグラフである。破線と実線とは、同じ電流変化量を、定義の異なる厚さに基づいてプロットしたグラフである。破線は、横軸に平均厚さをとったグラフを表す。実線は、横軸に逆数平均厚さをとったグラフを表す。
【0034】
図5に示すように、平均厚さ及び逆数平均厚さが小さくなることに伴い、電流変化量は小さくなる。また、同じ電流変化量で比較した場合、平均厚さより、逆数平均厚さの方が小さい。
【0035】
例えば電流変化量が60%の場合、平均厚さは約25nmである。これに対し、逆数平均厚さは約20nmである。また、例えば電流変化量が約20%の場合、平均厚さは約20nmである。これに対し、逆数平均厚さは約15nmである。同様に、平均厚さが約15nm、逆数平均厚さが約10nmにおいて、電流変化量は約5%である。平均厚さが15nm以下、逆数平均厚さが10nm以下において、電流変化量は5%以下となる。
【0036】
図5と図2とを比較すると、同程度の電流変化量を得るためには、図2の厚さTと、図5の逆数平均厚さとを同程度にすればよいことが分かる。例えば電流変化量が約20%である場合、図2の厚さT及び図5の逆数平均厚さは、共に15nm程度である。これに対し、図5の平均厚さは20nmである。
【0037】
図2において前述したように、比較例においては、厚さTを小さくする場合、バッファ層112を安定して製造することが困難となる。これに対し、図5に示した実施例1では、逆数平均厚さを小さくする場合でも、平均厚さは逆数平均厚さより大きくすることができる。例えば、逆数平均厚さを6nm程度とした場合でも、平均厚さは約10nmとすることができる。従って、バッファ層12を安定して製造し、かつ5%以下の電流変化量を得ることができる。
【0038】
実施例1に係るHEMT100は、SiCからなる基板10と、AlNからなるバッファ層12と、GaNからなるチャネル層14と、AlGaNからなる電子供給層16と、ソース電極20、ドレイン電極22及びゲート電極24と、を備える。バッファ層12の逆数平均厚さは20nm以下である。また、バッファ層12の最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差が6nm以上の条件であれば、バッファ層12を安定して製造できる。すなわち、極めて平坦性の高いバッファ層12は安定して製造することが困難であるが、逆数平均厚さが20nm以下で、バッファ層12の最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差が6nm以上の条件においては、バッファ層12を安定して製造することができる。また、バッファ層12の最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差は10nm以上の条件においては、さらに安定して製造することができる。このような構成を採用することにより、バッファ層12の薄い部分がリークパスとして機能する。従って、基板10に捕獲された電子が、バッファ層12の薄い部分から放出される。その結果、実施例1によれば、電流の減少を抑制することができる。
【0039】
また逆数平均厚さを15nm以下とすることで、電流変化量を20%以下とすることができる。逆数平均厚さを10nm以下とすることで、電流変化量を5%程度とすることができる。逆数平均厚さを5〜6nm程度とすることで、電流変化量を5%以下とすることができる。このように逆数平均厚さを小さくすることで、電流の減少を効果的に抑制することができる。また、平均厚さを大きくすることで、バッファ層12の製造を安定して行うことができる。製造の安定のためには、平均厚さは6nm以上であることが好ましく、また平均厚さが10nm以上であることがより好ましい。最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差は例えば12nm以上でもよいし、15nm以上でもよい。バッファ層12は、例えば9nm〜26nmの厚さを有するとしたが、変更可能である。
【0040】
逆数平均厚さは、20nmより小さくてもよいし、15nm、10nm又は6nmより小さくてもよい。平均厚さは、6nmより大きくてもよいし、10nmより大きくてもよい。
【0041】
チャネル層14にトラップを形成しないためには、チャネル層14を形成するGaNはノンドープのGaNであることが好ましい。ノンドープのGaNを用いることで、2DEGの電子は基板10に捕獲されやすくなる。しかし、バッファ層12に凹凸があるため、捕獲された電子は放出されやすい。このため、電流の減少は効果的に抑制される。
【0042】
実施例1に係るHEMT100の製造方法の例について説明する。まず、SiCからなる基板10上に、例えばMOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長法)を用いて、AlNからなるバッファ層12をエピタキシャル成長させる。成長条件は以下の通りである。
原料:トリメチルアルミニウム(TMA:Tri Methyl Aluminum)、アンモニア(NH
温度:1080℃
圧力:26.6kPa
基板10を形成するSiCと、バッファ層12を形成するAlNとは格子定数が異なる。従って、バッファ層12は、S−K成長モード(Stranski-Krastanov Growth Mode)で成長した結果、図3(a)のようなアイランド構造となる。また、比較例のように、一様な厚さのバッファ層を形成する場合、圧力は例えば13.3kPa程度とする。実施例1のように、凹凸を有するバッファ層を形成する場合、上記のように26.6kPa程度の高い圧力を加えることが好ましい。なお、凹凸を形成するためには、圧力以外に、例えば温度、TMGの量、NHの量等を調整してもよい。
【0043】
例えばMOCVD法を用いて、バッファ層12の上に、GaNからなるチャネル層14をエピタキシャル成長させる。成長条件は以下の通りである。
原料:トリメチルガリウム(TMG:Tri Methyl Gallium)、NH
TMGの流量:90μmol/min
NHの流量 :0.9mol/min
温度:1080℃
圧力:13.3kPa
【0044】
例えばMOCVD法を用いて、チャネル層14の上に、AlGaNからなる電子供給層16をエピタキシャル成長させる。成長条件は以下の通りである。
原料:TMA、TMG、NH
温度:1080℃
圧力:13.3kPa
【0045】
電子供給層16上に、例えば第1SiN層を形成する。第1SiN層をパターニングして、電子供給層16を露出させる。露出した電子供給層16上に、例えば蒸着法を用いて、Ti/Al等からなるオーミック電極を形成する。オーミック電極は、ソース電極20及びドレイン電極22として機能する。オーミック電極を形成した後にアニール処理を行う。
【0046】
さらに第1SiN層をパターニングして、電子供給層16を露出させる。例えば蒸着法を用いて、電子供給層16上に、Ni/Auからなるゲート電極24を形成する。ゲート電極24を形成した後にアニール処理を行う。第1SiN層、電子供給層16及びゲート電極24上に、第2SiN層を設ける。第1SiN層と第2SiN層とで、保護層26が形成される。以上によりHEMT100が形成される。なお、電子供給層16上に、例えばGaN等の窒化物半導体からなるキャップ層を設け、キャップ層上に各電極を設けてもよい。
【0047】
電子供給層16は、AlGaNからなるとしたが、AlGaN以外の窒化物半導体からなるとしてもよい。窒化物半導体とは、窒素(N)を含む半導体であり、例えばInAlN(窒化インジウムアルミニウム)、InGaN(窒化インジウムガリウム)、InN(窒化インジウム)、及びAlInGaN(窒化アルミニウムインジウムガリウム)等がある。電子供給層16は、窒化物半導体のうち、InAlN、AlInGaN等からなるとしてもよい。
【0048】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 基板
12 バッファ層
14 チャネル層
16 電子供給層
20 ソース電極
22 ドレイン電極
24 ゲート電極
100 HEMT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化シリコンからなる基板と、
前記基板上に設けられた窒化アルミニウムからなるバッファ層と、
前記バッファ層上に設けられた窒化ガリウムからなるチャネル層と、
前記チャネル層上に設けられた窒化物半導体からなる電子供給層と、
前記電子供給層上に設けられたソース電極、ドレイン電極及びゲート電極と、を具備し、
前記バッファ層の厚さの逆数の平均値の逆数は20nm以下であり、
前記バッファ層の最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差は6nm以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記チャネル層は、ノンドープの窒化ガリウムからなることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記厚さの逆数の平均値の逆数は10nm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バッファ層の厚さの平均値は6nm以上であることを特徴とする請求項1から3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記バッファ層の最も厚い部分と、最も薄い部分との厚さの差は10nm以上であることを特徴とする請求項1から4いずれか一項記載の半導体装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−4924(P2013−4924A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137754(P2011−137754)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】