説明

単一基板の処理中に、基板から僅量の液体を除去する装置及び方法

基板が回転自在な支持体と接触する領域に、毛細管部材を設けた、単一ウエハ用の処理チャンバ内で、基板を乾燥させるための装置及び方法。毛細管部材は、毛細管力により、基板と支持体間に閉じこめられた如何なる液体も接触領域において、中に引き込むことにより、基板のエッジエクスクルージョン領域を減らし、これにより産出量を増やす。本発明は、基板の周囲領域とだけ接触させる形で、基板を実質的に水平方向に支持する固定治具からなる回転自在な支持体を有し、固定治具は、毛細管部材からなる接触面を1以上有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の乾燥装置及び乾燥処理に関するものであり、特に、デバイスの製造中に洗浄、すすぎ、乾燥が必要となる、シリコンウエハ基板、フラットパネルディスプレイ基板、及び他のタイプの基板の乾燥装置、及び乾燥処理に関する。本発明は特に、集積回路の製造中に、シリコンウエハ基板から、残存している液体量を除去することに関する。しかし、本発明は、生ウエハ、リードフレーム、医療機器、ディスク及びヘッド、平面ディスプレィ、マイクロエレクトロニクスマスクの製造や、高い清浄性が要求され、及び/又は、処理中に乾燥が要求されるその他の場合にも適用することが出来る。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する際には、半導体デバイスが、薄いディスク状の基板上に製造される。一般的に、各基板は、複数の半導体デバイスを含有している。単一の基板上に製造することが可能な半導体デバイスの正確な数は、基板の大きさ及びその上に製造する半導体デバイスの大きさによって変動する。しかし、半導体デバイスは、ますます小型化してきている。この小型化により、所定の領域に製造することが出来る半導体デバイスの数は増加しており、それに伴って、各基板の表面領域はより一層高価になっている。
【0003】
半導体デバイスを製造するにあたって、基板は、適した最終製品が製造されるまでに、多数の工程を経ることになる。これらの工程には、ケミカルエッチング、ウエハ研磨、フォトレジスト除去、マスキングが含まれる。これらの工程は、一般的に、処理タンク内で行われ、各基板は、デバイスを汚し、デバイスを作動させない状態にしてしまう可能性のある微粒子を基板から除去するために、洗浄、すすぎ、乾燥等の多くの工程を処理中に経ることがしばしば必要となる。しかし、これらすすぎ、乾燥工程により、新たな問題が発生してしまう。
【0004】
主要な問題の1つは、すすぎ工程(或いは、基板が液体に触れる他の処理工程)後に、基板から液体を完全に除去する乾燥工程における失敗である。この技術分野においては、液滴が残っている基板領域から製造した半導体デバイスは、機能しなくなる可能性が非常に高いことが公知である。それ故、基板当たりの、適宜に機能するデバイスの産出力を高めるためには、基板から出来る限り完全に全ての液体を除去することが肝要である。
【0005】
出来る限りすばやく、かつ出来る限り完璧に基板を乾燥させるための、かなり精巧なシステム及び方法が工夫されている。しかしながら、従来の乾燥システムや方法には欠点があり、これにより、効果的、かつ安価に、基板から液体の痕跡を完全に取り除くことは困難であった。処理にあたって基板をタンク内に配置させると、該基板は、キャリア又は、処理タンク自体に組み込まれる物体支持部材となる支持装置により、一般的に直立状態で支持される。この技術分野で十分に認識されている問題点は、支持装置と接触する基板領域から、水の痕跡を素早く効果的に除去することである。この為、この技術分野で、完全に乾燥することが出来ないため、廃棄せざるをえない、端部近くの基板領域を指す言葉である、「エッジエクスクルージョン」として知られているものにより、むだになってしまう、あるとても価値のある基板部分が存在する。半導体デバイスは、より小型化されてきたため、もし残存する液体量により水斑点ができなかったならば、この領域から製造し得る機能的なデバイスの数が増えていたであろうという意味で、該「エッジエクスクルージョン」領域もまた、より価値のあるものになってきている。
【0006】
ウエハ基板を完全に乾燥させることによりエッジエクスクルージョンに対する必要性を無くすべく、乾燥システムや乾燥方法を向上させる実に様々な試みがなされてきた。しかし、この問題点を、効果的にかつ効率的に完全な形で解決できるものは一つとしてなかった。
【0007】
例えば、Mohindra他による米国特許第5,571,337には、窒素ガス等の乾燥流体を、部分的に完成した半導体の端部に律動的に送ることにより、端部から液体を除去することが開示されている。Mohindra工程を適用すると、接触点で液体が蒸発してしまう。水の中に存在する、生産量を減少させる原因となる、微粒子又は不純物が後で残ってしまうため、蒸発は好ましくない。更に、Mohindra工程を実行するために必要な装置は、高価であると共に、扱いが面倒である。
【0008】
また、McConnell他による米国特許第4,984,597には、水を入れ替えるために大量のIPAを使用して、乾燥を助長させることが開示されている。しかし、この工程では、IPAを安全に取り扱い、安全に処理するために、特殊なタンクと、手の込んだ支持装置が必要になる。加えて、McConnell工程では、大量のIPAを使用するため、コストがかかる欠点がある。
【0009】
第3の乾燥システムは、Munakataにより、米国特許第6,125,554で開示されている。Munakataは、基板を垂直方向に支持する、複数の溝を有するラックから構成された基板乾燥装置を開示している。基板は、このラック中に設けられた溝と接触し、該溝内に支持される。各溝は、溝との接触点付近で基板に付着する水を中に吸い込むことが出来る孔を、該溝近くに有している。このシステムでは、各溝で真空力を作り出す装置が新たに必要となり、また、ラック内の開口部や空洞により、閉じこめられた気泡や微粒子が原因で、液体で充填された処理タンク内で問題を起こしてしまう。加えて、Munakataで使用するラックは、高価であると共に、製造しにくい。
【0010】
こうして、基板の端部と乾燥器の支持装置との接触点から、残存する水を、清浄な状態で、コストをかけずに、かつタイムリーな方法で効果的に除去できないために起きるエッジエクスクルージョン問題を解決しようとして、様々な装置及び方法が提案されてきたが、どれもこの問題を完全に解決できなかった。
【0011】
最近では、一度に単一の基板を処理する装置及び方法が広く採用されている。こういった装置の例は、Branによる米国特許6,295,999に開示されている。この装置及び方法では、処理中に、単一の基板を水平方向に支持し、該基板を回転させる。これら単一基板装置及び単一基板処理方法には、エッジエクスクルージョンや不完全な乾燥という点に関して、上記と同一の問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、基板等の、高価値物体をよりすばやく乾燥させる方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、高価値物体をより安価に乾燥させる方法を提供することである。
【0014】
本発明の更に別の目的は、支持構造と乾燥にかけている物体間の接触点に存在するエッジエクスクルージョン問題を減らし、若しくは除去することである。
【0015】
本発明の更に別の目的は、シリコンウエハから高価値集積回路をより多く製造させることである。
【0016】
本発明の更に別の目的は、高価な乾燥薬品を大量に使用しなくて済むようにすることである。
【0017】
本発明の更に別の目的は、前述した目的に応じて、単一の基板を乾燥させるための装置及び方法を提供することである。
【0018】
本発明の更に別の目的及び利点は、後述の通りであり、後述する記述を考察すると、当業者にとって明らかになる。また、本発明を実行すれば理解できるものである。本発明の目的及び利点は、実現可能であり、特許請求の範囲に特に指摘した手段及びその組み合わせにより到達することが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の1実施例は、基板の周囲領域だけに接触させることで、該基板を実質的に水平方向に支持する、固定治具からなる回転支持体を有し、
該固定治具は、前記基板の周囲領域に接触し、これを支持する1以上の接触面を有し、
前記1以上の接触面は、毛細管部材から構成したことを特徴とする、少なくとも1つの基板を乾燥させる装置である。
【0020】
好ましくは、固定治具は、毛細管部材が全面的に接触することにより、基板の周囲領域を支持するようになっている。基板の周囲領域と固定治具の間の接触領域すべてを毛細管部材により構成する形で、固定治具を構成すると、基板と固定治具間に閉じこめられてしまった液体全てが、該毛細管部材中に引き込まれ、該液体が基板から離れる手助けとなる。これにより、乾燥が進み、エッジエクスクルージョンを減らすことが出来る。
【0021】
1実施例によると、固定治具は、全体的に毛細管部材から構成することができる。或いは、固定治具は、接触面の毛細管部材から固定治具中に伸延する、毛細管部材からなる流路を有していてもよい。この毛細管で構成された流路により、液体を外側に抜き出し、該液体を基板から引き離すことが可能となる。支持体が回転することにより、遠心力が作用して、流路に引き込まれた液体を該流路から外側に抜き出すことが出来る。
【0022】
前記毛細管部材は、毛細管力を使うことにより液体を中に引き込むことができる限り、どんな材料で形成してもよいが、多孔性のフルオロポリマや多孔性のポリプロピレン(PP)等の、多孔性の毛細管部材であることが好ましい。
【0023】
回転中に、基板を正しい位置で保持するために、装置に、基板を固定治具に固定する1以上のクランプを設けることも出来る。この実施例においては、1以上のクランプには、基板と接触し、回転中に適宜な位置で基板を固定する係合面が形成されていると好ましい。また、クランプの係合面も毛細管部材で形成されていると更に都合が良い。
【0024】
また、別の実施例では、固定治具は、該固定治具の内表面から伸延したフランジを有していても良い。この実施例においては、フランジにより、固定治具の内部において、床及び該床から上方に伸延する壁を有する、段付き溝が形成されている。基板が固定治具上に配置されると、溝の床と基板の周囲領域の底面とが接触し、垂直壁と基板の端部とが接触する。このように、本実施例では、接触面として作用するのは、溝の床及び壁であり、これらは毛細管部材で形成されている。
【0025】
必要であれば、毛細管部材で構成した壁及び床から、固定治具中に伸延する、少なくとも1の毛細管部材で構成された流路を設けることも出来る。この実施例においては、毛細管部材で構成された流路は、固定治具の外側面上の露出面で終端を有するようにすると、好ましい。
【0026】
固定治具は、概してリング形状を有するものであると好ましい。本装置は、更に処理チャンバが設けられており、回転自在な支持体は、この処理チャンバ内に配置される。また、本装置には、乾燥流体の供給源が設けられ、該供給源は、回転自在な支持体上に配置させた基板に、乾燥流体のメニスカスを作用させることができる位置に配置されている。
【0027】
また、本発明は、回転自在な支持体を有し、該支持体は、内表面から突出したフランジを有する固定治具から構成し、該フランジにより、該固定治具内に、床及び、該床から上方に伸延する壁を有する段付き溝が形成され、該段付き溝は、溝の床と基板の周囲領域の底面とが接触し、垂直壁と基板の端部とが接触し得るように、基板を収容するような大きさ及び形状を有しており、基板が固定治具に支持されている時、基板の周囲領域と接触する、床及び壁のあらゆる面を、毛細管部材から構成した、少なくとも1つの基板を乾燥させる装置に関する。
【0028】
また、本発明は、回転自在な支持体を有し、該支持体は、基板の周囲領域と接触し、実質的に基板を水平方向に支持し得るように適合した、少なくとも1つの固定治具から構成され、前記基板の周囲領域は、1以上の接触面と接触し、該接触面は毛細管部材から構成した、少なくとも1つの基板を乾燥するための装置に関する。この実施例においては、基板の周囲領域と接触し、支持するよう適合した固定治具を、複数からなる分割型のリングや、基板を、その周囲に関して適宜支持し得る他の構造体にすることも出来る。
【0029】
更に別の実施例においては、本発明は、回転自在な支持体を有し、該支持体は、該基板の周囲領域とだけ接触させることにより、基板を実質的に水平方向に支持する固定治具から構成し、
基板と接触する固定治具の全ての面を毛細管部材から構成する形で、前記基板の周囲領域だけが固定治具と接触するように、湿った状態の基板を、前記回転自在な支持体上に接触させ、
前記固定治具を回転させて、前記基板から、大半の液体を除去し、
該基板に残存している液体を、前記毛細管部材中に引き込み、該液体を基板から引き離すようにした、基板乾燥方法に関する。
【0030】
更に、本発明は、回転自在な支持体を有する処理チャンバを設け、該支持体は、概してリング形状を呈した固定治具から構成し、基板の周囲領域を1以上の接触面で、概してリング形状を呈した固定治具と接触するように、湿った状態の基板を回転自在な支持体上に支持させ、該基板を、概してリング形状を呈した固定治具により実質的に水平方向に支持させ、接触面を毛細管部材により構成し、前記回転自在な支持体を回転させて、基板から大半の液体を除去し、毛細管部材により、基板から残存する液体を引き込むように構成した、基板乾燥方法である。
【0031】
本方法は、更に、回転工程中に、基板に対して乾燥液を加える工程を更に有する。この乾燥液は、イソプロピルアルコールであり、毛細管部材は多孔性のフルオロポリマや多孔性のPPで構成することも出来る。本発明の装置を使用した、本発明による方法は、リング状固定治具を有する支持体を使って実行する場合に限定されるものではなく、基板の周囲領域と接触し、基板を実質的に水平方向に支持するように適合する固定治具であれば、どんな固定治具を使用しても実行可能である。
【0032】
本発明方法は、エッチング、すすぎ、ストリッピング等の、各種の半導体処理ステップに関連して使用することが出来る。多くの場合、これらのステップはすべて、本発明による装置から基板を移動させずに連続して実行することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
添付図面及び後述する記載は、本発明の実施例を例示する目的だけのものである。よって、当業者であれば、後述する記載から、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、本明細書に例示した別の実施例における構造及び方法をたやすく理解できる。
【0034】
半導体ウエハの大きさが増すにつれて、ウエハのカセットを一度に洗浄するよりはむしろ、単一のウエハを一度に洗浄することが出来る洗浄装置及び洗浄方法を使用することの方が実用的であり、かつ費用も安く済む。
【0035】
図1に、本発明の実施例である基板乾燥装置100が示されている。乾燥装置100は、単一の半導体ウエハ106を、実質的に水平方向に支持する、回転自在な支持体108を有している。該回転自在な支持体108は、壁101により定義される処理チャンバ104内に位置決めされている。ノズル201は、必要に応じてウエハ106に、洗浄流体、除去流体、及び/又は、乾燥流体等の処理流体を与える。
【0036】
回転自在な支持体108は、リング状固定治具108a、複数のスポーク108b、ハブ108c、シャフト110から構成されている。リング状固定治具108aは、ハブ108cに連結された複数のスポーク108bによって支持されている。ハブ108cは、シャフト110に支持されている。シャフト110は、処理チャンバ104の底部の壁101まで伸延している。Oリング113若しくは他のシールをシャフト110の周囲に設けて、処理チャンバ104の壁101底部を密閉してもよい。シャフト110は、処理チャンバ104の外側で、モータ112に連結しており、処理中に必要に応じて、支持体108全体とウエハ106は回転可能である。シャフト110とモータ112との機械的/作用的連結や、ウエハ処理中のモータ112の作用に関しては、当業者であれば十分理解できるものである。
【0037】
図2は、回転自在な支持体108の平面図である。図に示すように、リング状固定治具108aは、実質的に円形である。しかし、本発明では、これに限定されているわけではなく、該固定治具は、楕円、正方形、三角形、若しくは、所望する、その他のいかなる形状であってもよい。しかし、正確な形状は、支持する基板の形状により必然的に決まるものである。更に、固定治具は、同一物質でできた単一の構造体である必要はなく、基板の周囲領域の複数の小さい領域とだけ、その円周方向の断続点で係合するように設けた複数の切形のセグメント、例えば分割型リング固定治具により構成してもよい。
【0038】
リング状固定治具108aの上面113上には、3つのクランプ200が設けられており、該クランプは、回転中及び処理中に、ウエハ106に係合し、かつウエハ106を固定している。この3つのクランプ200は、リング状固定治具108aの上面113上で、略120°互いに離れる形で設けられている。
【0039】
図4に示すように、リング状固定治具108aは、底面124、外側面125、内表面126及び上面113から構成されている。内表面126がリング状固定治具108aの内円周/内周囲を形成しており、一方、外側面125はリング状固定治具108aの外円周/外周囲を形成する。内表面126は、リング状固定治具108aの本体から内側に突出したフランジ部127の壁により形成される。
【0040】
フランジ127により、リング状固定治具108aの上部内側部に段付き溝120が形成される。段付き溝120は、リング状固定治具108aの全内周面に亘って伸延している。段付き溝は、床121及び、該床121から上方に伸延する垂直壁122から構成されている。溝120の床121は、基板106の底部の周辺領域を支持する棚を形成している。垂直壁122は、回転中に、ウエハ106が実質的に水平方向へ移動するのを防ぐ抑止として作用する。リング状固定治具108aの構成材料は、本発明の主要な関心であるが、これは以下に詳細に説明する。
【0041】
図3に示すように、ウエハ106を回転自在な支持体108上に供給すると、クランプ200が、でしゃばることなく、開口位置に位置決めされる(図示せず)。するとウエハ106は、リング状固定治具108a上に下がり、かつ正しい位置に位置決めされ、ウエハ106の周辺部が溝120内に支持される。ウエハ106の端部が溝の垂直壁122と接触している間は、ウエハ106の周辺領域の底面は、溝120の床121上に支持されている。ウエハ106の大部分は、支持体108のどの部分とも接触していない。ウエハ106がリング状固定治具108aでどのように位置決めされているか、また、その間の接触はどうなっているかは、後述する。
【0042】
一旦ウエハ106がリング状固定治具108a上に位置決めされると、クランプ200が閉鎖位置に移動し(図示せず)、これにより、クランプ200のグリッパ210がウエハ106の周辺領域の上面106cの上にくる。グリッパ210が、ウエハ106の周辺領域の3カ所でウエハ106の上面106cを押し下げることにより、ウエハ106は処理に適した位置に固定される。
【0043】
クランプ200は、ウエハ106を適所に固定するために使用するように図示されているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、ラッチ、締まりばめ部品、ウエハ端部が摺動自在に嵌め込まれる逃げを有する床121上に設けられた上棚、吸引組み立て品等の、別の手段を使うことも可能である。実際、本発明の実施例では、ウエハ106を支持するどんな手段も全く使用しなくてもよい。
【0044】
再び図4に戻って、リング状固定治具108aは、(図に点々で示された)毛細管部材117と、(図に斜線で示された)非毛細管部材118の組み合わせから構成されている。本明細書中で「毛細管部材」とは、毛細管作用力により、液体を中に引き込むことが出来る何れかの材料であり、孔/空洞を有するクローズドセル材料若しくは、塊間の空間/空隙を有するオープンセル材料のことをいう。材料は、本質的には毛細管部材であるが、材料に孔を設ける等して、毛細管部材になるように代えることも可能である。また、本明細書中で使用する「非毛細管部材」とは、毛細管作用力により液体を中に引き込むことができる強い能力を発揮しない材料を意味するものであり、オープンセル材料又はクローズドセル材料ではないものである。
【0045】
毛細管部材は、多孔性の毛細管部材であると好ましい。本発明を実施する際に使用することが出来る好ましい例の多孔性毛細管部材は、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)やPVDF等の、多孔性のフルオロポリマである。多孔性のPPもまた、多孔性の毛細管部材として適している。多孔性のPPを使用すると、許容できる孔の大きさは、125−170ミクロンであり、許容できる多孔性PPの孔の量は、35−50%である。即ち、多孔性PPの容量の35−50%は、外気に触れていることを意味している。本発明で使用する好ましい多孔性毛細管部材は、多孔性PP若しくは、多孔性PTFEであるものの、当業者であれば、毛細管部材はもっと広い範囲の材料を含むと理解し、毛細管作用力現象により中に液体を引き込む力を発揮する限り、未知の材料若しくは、未発見の材料も含むものであると理解される。好ましい非毛細管部材の例としては、PP、PTFE、PVDF等の、孔を有しないフルオロポリマがある。
【0046】
段付き溝120の床121及び垂直壁122は、多孔性の毛細管部材117で構成されている。リング状固定治具108aの多孔性毛細管部材117は、床121及び壁122から、リング状固定治具108aの非毛細管部材118を介して伸延する流路131を形成している。流路131は、毛細管部材が外側面125に露出する形で、リング状固定治具108aの外側面で終端となっている。
【0047】
図5に示すように、ウエハ106が処理に際してリング状固定治具108a上に配置されると、ウエハ106の底面106aの周辺領域だけが、溝120の床121上に載置されることになる。ウエハ106の端部106bは、壁122と接触している。床121及び壁122は毛細管部材117で構成されているため、ウエハ106がリング状固定治具108aに支持されると、ウエハ106は該毛細管部材117と全面的に接触することになる。ここで、本明細書では、ウエハ106が支持されている際に、該ウエハ106と接触する支持体108の表面を、接触面と呼ぶ。
【0048】
リング状固定治具108aの接触面(即ち、本実施例では、床121及び壁122)を毛細管部材117で構成することにより、ウエハ106と接触面間に閉じこめられた液体は、毛細管部材117に引き込まれ、該液体は、ウエハ106から離れることになる。これにより、ウエハ106は完全に乾燥し、エッジエクスクルージョンを減らし、及び/又はエッジエクスクルージョンをなくすことが出来る。
【0049】
リング状固定治具108aに、毛細管部材から構成された流路131を設けることにより、多孔性毛細管部材117内に引き込まれた液体は、支持体108の回転中に、遠心力により流路131を介して外側に抜き出され、該液体はウエハ106から離れることになる。これは、毛細管部材117内に閉じこめられるようになってしまった微粒子や汚染物質がウエハ106から移動することになるという点において浄化機能を発揮し、都合が良い。更に、流路131によって、毛細管部材117の水分を切ることが出来、これにより、該毛細管部材が飽和せず、毛細管乾燥機能を発揮できないことのないように、毛細管部材を乾燥させることが出来る。
【0050】
別の実施例においては、処理中にウエハ106を支持することが出来る十分な剛性を有する毛細管部材を選ぶのであれば、リング状固定治具108a全体を毛細管部材117で構成することも可能である。
【0051】
ここで図6に言及すると、ウエハ106の上面106cと接触/係合するグリッパ210の表面を毛細管部材117で構成する形で、各クランプ200のグリッパ210の底面/底部を構成することも可能である。すると、支持体108(図1)の全ての接触面が毛細管部材により構成されることにより、ウエハ106の周囲領域面と支持体108間に閉じこめられた液体を除去する手助けとなる。
【0052】
ここで、本発明の実施例による乾燥方法について説明する。まずウエハ106を、処理の後及び/又は、すすぎの後、上記図1乃至図5に図示した支持体108中に配置させる。ウエハ106は、処理工程及び/又はすすぎ工程を連続して行う間中、支持体108内に支持させても、または、支持させなくてもよい。ここで、ウエハ106を所望の回転速度で回転させることにより遠心力を起こさせ、連続した処理工程でも残ってしまった、ウエハ106の表面上の液体の大半を除去させる。若しくは、この時に、ノズル201を介してウエハ106の表面に、イソプロピルアルコール等の、乾燥流体を供給することも出来る。上述したように、支持体108とウエハ106の接触面間に、ウエハ106の周囲領域に、少量の液体が閉じこめられていることがある。しかし、支持体108の接触面全てが毛細管部材117で構成されているため、残っている液体は毛細管部材117内に引き込まれ、該液体はウエハ106から離れる。これにより、ウエハ106は、完全に乾燥する。毛細管部材117に作用する遠心力により、流路131内に引き込まれた液体は、該流路131を介して、更に外側に押しやられ、固定治具108aの外側面125に露出した毛細管部材117の外に押しやられる。これにより、毛細管部材を飽和レベル以下に抑えることが出来、必要に応じて液体をまた中に引き込むことができるのである。
【0053】
処理チャンバ104は、連続する処理工程中及び/又は連続する乾燥工程中に、蓋を閉じることにより密閉することが出来、さもなければ、処理チャンバ104を別の方法により覆うことにより、外部環境から遮ることが可能である。
【0054】
以上本発明を詳細に記述、図示したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者であれば種々の変更及び選択が簡単に明らかになる。特に、本発明の装置及び方法は、すすぎ工程後にDI水を除去することに限定されるわけではなく、基板からあらゆる液体を除去するために使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施例による単一ウエハ乾燥装置の横断面模式図であり、かつウエハを支持している様子を示す図である。
【図2】図2は、図1の単一ウエハ乾燥装置の回転自在な支持体を示す平面図である。
【図3】図3は、上にウエハが支持された、図1の単一ウエハ乾燥装置の回転自在な支持体を示す平面図である。
【図4】図4は、支持体のリング状固定治具の横断面に沿って詳細を示した、ウエハを取り外した後の、図1のIII−III領域の拡大図である。
【図5】図5は、支持体のリング状固定治具の横断面に沿った詳細及びウエハを支持している様子を示す、図1のIII−III領域の拡大図である。
【図6】図6は、支持体のリング状固定治具の横断面に沿った詳細及びクランプがウエハを適宜な位置で固定する様子を示す、図1のIII−III領域の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周囲領域だけと接触することで、該基板を実質的に水平方向に支持する固定治具を有する回転自在な支持体を有し、
該固定治具は、前記基板の周囲領域に接触し、支持する1以上の接触面を有し、
前記1以上の接触面を、毛細管部材で構成したことを特徴とする、少なくとも1つの基板を乾燥させる装置。
【請求項2】
更に、前記基板を前記固定治具に固定する1以上のクランプを有し、該1以上のクランプは、回転中に、該基板と接触し、該基板を固定治具に固定する係合面を有し、該係合面は毛細管部材から構成したことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記固定治具は、概してリング形状を有する固定治具であること特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記固定治具の接触面全体を、毛細管部材から構成したことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記固定治具全体を、毛細管部材から構成したことを特徴とする、請求項4記載の装置。
【請求項6】
各接触面において、前記固定治具は、接触領域の毛細管部材から該固定治具中に伸延する、毛細管部材で形成された流路を有することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記固定治具は、該固定治具の内表面から伸延するフランジを有し、該フランジは、床及び、該床から上方に伸延する壁を有する、段付き溝を形成し、基板が固定治具に位置決めされると、前記床及び壁が、毛細管部材から構成される接触表面を形成する形で、前記溝の床と、前記基板の周囲領域の底面が接触し、垂直壁と該基板の端部とが接触することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項8】
溝の接触面の毛細管部材から、前記固定治具中に伸延する、少なくとも1つの毛細管部材から構成される流路を設けたことを特徴とする、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記毛細管部材からなる流路は、前記固定治具の外側部上に露出面を有していることを特徴とする、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記接触面の毛細管部材から、前記固定治具中に伸延する、少なくとも1つの毛細管部材からなる流路を設けたことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記固定治具は、リング状固定治具の内表面から伸延するフランジを有し、該フランジは、床及び、該床から上方に伸延する壁を有する段付き溝を形成し、基板を前記固定治具上に位置決めすると、前記床及び壁は、毛細管部材から構成される接触面を形成する形で、前記溝の床と、前記基板の周囲領域の底面が接触し、垂直壁と該基板の端部とが接触し、接触面の毛細管部材から、リング状固定治具の外側面まで、該固定治具中に伸延する、毛細管部材からなる流路が設けられたことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項12】
更に、処理チャンバを有し、前記回転自在な支持体は、前記処理チャンバ内に配置されていることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項13】
更に、乾燥流体の供給源を、前記回転自在な支持体上に配置させた基板に、乾燥流体のメニスカスを作用させるように設けたことを特徴とする、請求項12載の装置。
【請求項14】
前記毛細管部材は多孔性の毛細管部材であることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項15】
前記多孔性の毛細管部材は、多孔性のフルオロポリマ又はPPであることを特徴とする、請求項14記載の装置。
【請求項16】
回転自在な支持体を有し、該回転自在な支持体は、内表面から突出したフランジを有する固定治具を有し、該フランジは、床及び該床から上方に伸延する壁を有する形で、前記固定治具内に段付き溝を形成し、
前記段付き溝は、溝の床が前記基板の周囲領域の底面と接触し、前記垂直壁は基板の端部と接触する形で、基板を収容するような大きさ及び形状を有し、
前記基板が前記固定治具により支持されている際に、基板の周囲領域と接触する床及び壁の全ての面を、毛細管部材により構成したことを特徴とする、少なくとも1つの基板を乾燥させるための装置。
【請求項17】
前記固定治具は、リング形状を有していることを特徴とする、請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記固定治具は、基板の周囲領域と接触する壁及び床の面から、該固定治具の外側面にまで伸延する毛細管部材を有する流路を有し、該流路は、非毛細管部材を介して伸延していることを特徴とする、請求項16記載の装置。
【請求項19】
回転自在な支持体を有し、該支持体は、基板の周囲領域とだけ接触させることにより、基板を実質的に水平方向に支持する固定治具を有し、
基板と接触する固定治具の全ての接触面を毛細管部材から構成する形で、前記基板の周囲領域だけが固定治具と接触するように、湿った状態の基板を、前記回転自在な支持体により支持させ、
前記固定治具を回転させて、前記基板から、大半の液体を除去し、
残存している液体を、該基板から、前記毛細管部材中に引き込み、該液体を基板から離すようにした、基板乾燥方法。
【請求項20】
前記固定治具は、接触面の毛細管部材から、該固定治具中に伸延する少なくとも1つの毛細管部材からなる流路を有し、該固定治具の回転中に、遠心力により、前記流路中の液体は、前記接触面の毛細管部材から引き離されることを特徴とする、請求項1記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−519443(P2008−519443A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539373(P2007−539373)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/040251
【国際公開番号】WO2006/055308
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(506410626)アクリオン テクノロジーズ インク (4)
【Fターム(参考)】