説明

単眼視3次元位置計測装置および方法

【課題】 1台の撮影手段で撮影した一枚の画像情報のみに基づき、高速、かつ、少ない目印点数で3次元位置を計測する装置および方法を実現すること。
【解決手段】 対象物に4つの目印を付し、全ての目印の対について相互間距離を計測し、撮影手段で4つの目印の2次元画像を取得し、その2次元画像内での目印の座標を求め、その座標値に基づき撮影手段が各2つの目印をはさむ見込み角を計算し、3つの目印を選択して形成した3角形について、上記相互間距離と上記見込み角に依存する4次方程式を解いて撮影手段と各目印の間の距離の候補値の組を求め、他の三角形より得られる候補値と整合性がある値を選択して上記距離を定め、3次元位置を決める、単眼視3次元位置計測装置および方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単眼視を用いて計測対象物に設置された目印点を撮影することにより、それらの3次元空間における目印点の位置をリアルタイムに計測する単眼視3次元位置計測装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
単眼視を用いて計測対象物の3次元位置を計測するための方法として、8点の目印点を用いた単眼視による位置計測方法がある。
【0003】
この8点の目印点を用いた単眼視による位置計測方法は、『画像と空間:コンピュータビジョンの幾何学』(昭晃堂・1991年発行)のP.152〜P.162に記載があり、この方法は、8点の目印点が移動した際に、移動による回転や平行移動といった移動量を、逆行列などを用いて計算することにより、8点の目印点の3次元位置計測を行うものである。
しかし、この方法では、目印の配置によっては、計測のために用いる非線形方程式を解く過程で使用する線型方程式の解が得られないため、3次元位置計測ができない場合があるという欠点がある。なお、解の得られない目印位置の関係については「動きからの単眼立体視による形状認識の線形解法について」〔計測自動制御学会論文集(Vol.26,No.6,714/720 )〕に記載がある。
【0004】
また、前記の方法では、移動による回転や平行移動といった移動量を計算する過程において一般化逆行列を使用しており、この過程で逆行列を用いるため、算出に要する時間に問題がある。
更に、この目印点を用いた方法は、各点を区別する必要があり、目印点数が多いと、各目印点を区別させることが難しくなるという問題があり、可能な限り少ない目印点を用いて計測することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、前記の逆行列を用いることによる時間的な制約を軽減するために、従来の単眼視による位置計測方法よりも少ない目印点数で、従来よりも高速に単眼視による3次元位置計測をする装置および方法を提供することを課題とする。すなわち、4つの目印を用いるだけで、かつ、逆行列を用いることなく、1台の撮影手段で得られた3次元空間内の対象物の一枚の2次元画像情報に基づき、上記対象物に付された目印の3次元空間内の位置を計測する単眼視3次元位置計測装置および方法を実現する。また、4つの目印を用いるだけで、移動する対象物の一枚の2次元画像情報に基づき、上記対象物に付された目印の3次元空間内の位置を計測する単眼視3次元位置計測装置および方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するため、CCDカメラのような撮影手段で対象物に設置された4点の目印点を撮影し、撮影により得られた画像における4点の目印点の2次元位置座標を求め、その2次元位置座標に基づき、3次元位置算出手段を用いることにより4点の目印点の3次元位置を計測する。ここで、本発明においては、撮影手段と目印の距離の候補を比較により距離を一意に定め、3次元位置を決定する。また、動きのある対象物に対しては、近似式から微小移動後の撮影手段と目印との距離を算出し、この算出結果から3次元位置を決定する。
【発明の効果】
【0007】
上記した本発明を用いれば、4点の目印で構成される対象物をコンピュータに取り込むための1台の撮影手段と、前記の撮影手段から得られた画像よりこの画像上における4点の目印の2次元位置を決定する2次元位置決定手段と、前記の2次元位置決定手段で得られた2次元位置から4点の目印の3次元位置を決定する3次元位置決定手段を用いることにより、4点の目印点の3次元位置を高速に計測することが可能である。
また、2次元位置から4点の目印の3次元位置を決定する手段では、撮影手段と目印の距離の候補を比較により距離を一意に定め、3次元位置を決定する方法、または、動きのある対象物に対して、近似式から微小移動後の撮影手段と目印との距離を算出し、この算出結果から3次元位置を決定する方法を用いることにより、高速に目印の3次元位置計測が実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1に、本発明の全体構成図を示す。
本発明によれば、図1のCCDカメラのような撮影手段2を用いて、目印が4点設置された計測対象物1を撮影して画像データを得て、この画像データをコンピュータに送る。そして、コンピュータ内において、2次元位置決定手段3により目印の2次元座標を決定し、3次元位置決定手段4において、前記2次元位置決定手段3で得られた目印の2次元位置座標に基づいて目印の3次元位置を高速で算出する。
【0009】
上記本発明の第1の実施例について、以下に詳述する。
この第1の実施例における処理は、図2に示す通りである。すなわち、まず、A1で4点の目印の各点間の距離を測定する。次に、A2で撮影手段を用いて4つの目印の画像データを取得し、A3で画像上の4つの目印位置を決定し、A4で4つの目印の3次元位置を決定する。
【0010】
上記A1における処理の詳細は、次の通りである。
図3に、目印が4点設置された対象物の例を示す。この目印付与過程において、対象物に4つの目印Ri(i=1,2,3,4)を付する。R1〜R4は各目印であり、それぞれの目印が区別できるようにしておく。目印の区別の方法として、例えば、それぞれの目印に関して異なった色を使用する、或いは異なった模様を使用するといった方法がある。本実施例では、各目印に異なった色を使用することとし、R1は赤色、R2は緑色、R3は青色、R4は白色とする。これを実現するために、例えば、4点の目印に4色のシールやLEDを用いる方法がある。そして、目印間距離測定過程において、iとjを目印を区別するインデックスとするとき、全ての2つの目印の対Ri,Rjについてそれらの間の相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を測定する。
【0011】
次に、上記A2の2次元情報取得過程において、上記目印が付与された上記対象物を、CCDカメラのような撮影手段で撮影し、2次元画像情報を得る。
【0012】
そして、上記A3の目印位置特定過程において、上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)を特定する。このA3の処理は、図4に示すように、処理B1〜B5からなる。なお、以下に目印点R1についての処理を説明するが、R2〜R4についても同様である。
【0013】
まず、A2で取得した画像データは、図5に示すような、ある大きさに分けられた区画における赤、緑、青の0〜255の数値で表現された各画素情報としてA3に送られる。なお、2次元画像情報内の座標軸uとvは、図5のように設定する。
【0014】
次に、処理B1において、A2で得られた画素情報から各区画における各画素(赤、緑、青)の割合を計算する。ここで、0〜255の数値で表現された赤の画素情報をR、緑の画素情報をG、青の画素情報をBとし、求める赤の画素の割合をPR、緑の画素の割合をPG、青の画素の割合をPBとおき、各区画について画素情報の比率を計算する。すなわち、次の三つの比率を計算する。
【数1】

【数2】

【数3】

【0015】
B1で区画におけるPR、PG、PBを算出後、B2で判別する。
このB2における判別は、当該区画におけるPR、PG、PBがそれぞれ予め設定された条件に合致する場合、B3においてこの区画の位置を図5のu軸の値とv軸の値を用いて保存する。例えば、赤色目印R1に対応する点r1である条件として、PR>70%かつPG<20%かつPB<20%といった条件を設定しておき、この条件を満足する場合は、その位置を(u1,v1)=(10,10)のように保存する。なお、この数値は一例である。PR、PG、PBがそれぞれ設定された条件に合致しない場合は、B1に戻り、次の区画のPR、PG、PBを算出し、B2の処理を行う。
【0016】
上記の処理を全区画に対して行い、B4で全ての区画についてB1からB3までを処理したことを確認した後、B3で保存した画素の位置情報から、例えば赤色目印R1の2次元情報内の位置として保存されている位置情報の総数をnとして、平均位置を計算する。
【数4】

【数5】

【0017】
そして、B5にて、上式により、画像上のR1の2次元位置(u、v)を決定する。なお、R1uがu軸の値、R1vがv軸の値である。他の目印R2,R3、R4についても同様である。
【0018】
続いて、上記A4における処理を行う。
このA4の処理に必要なカメラの画面における2次元座標系と3次元空間における座標系の対応、見込み角θij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)の算出方法、および透視3点問題についてまず述べ、その後、A4の処理ついて述べる。
【0019】
まず、カメラの画面における2次元座標系と3次元空間における座標系の対応について述べる。
図6のように、カメラCaの画面が3次元空間上に表現可能であることに注意する。カメラCaの画面上の2次元座標系を図6のように決める。なお、GOはこの2次元座標系の原点、uaとvaは座標軸である。また、図6に示すように、Caに3次元空間の座標系をも決める。すなわち、x軸の方向をCaの画面と垂直に交わるように定め、さらに、ua軸とy軸およびva軸とz軸がそれぞれ平行になるようにy軸とz軸の方向を決める。また、3次元空間の座標の原点Oを、x軸と画面との交点をGa、Caの焦点距離をFaとするとき、上記交点Gaが(Fa 、0、0)となるよう原点Oの位置を決める。このとき、実数GyとGzを用いて、点Gaの3次元座標は(Fa、Gy、Gz)とかける。一方、実数GuとGvを用いて、点Gaの2次元座標は(Gu、Gv)とかける。図6より、GyとGu、および、GzとGvが対応しているから、拡大縮小および回転の処理を行えば、座標変換は可能である。同様に、画面上の任意の点において、2次元座標と3次元座標の座標変換が可能である。
【0020】
次に、見込み角θijについて述べる。
図7に、3次元空間におけるカメラCmとカメラCmにより撮影された画像との関係を示す。図7のr1、r2、r3、r4は、画像(2次元情報)における図3の目印点であり、図3の3次元空間におけるR1と図7の2次元空間におけるr1、同様にR2とr2、R3とr3、R4とr4がそれぞれ対応している。iおよびj=1、2、3、4とし、i≠jに対して、∠rimjを見込み角θijとおく。例えば、∠r1m2=θ12は図7に示すようになる。
【0021】
図7の見込み角θ12の算出方法について述べる。ただし、カメラCmの焦点距離Fは既知であるとする。
前記より、カメラCmの画面は3次元座標と対応させることが可能なので、r1とr2の2次元位置が決定されれば、r1とr2の3次元位置決定は可能である。つまり、図5のu軸の値とv軸の値、および、カメラCmの焦点距離Fを用いれば、カメラCmの画面上の座標は図7のxyzの座標系に座標変換が可能である。r1とr2の画面上における2次元位置は図2のA3の処理で決定されているので、これらの2次元位置からr1とr2の3次元位置を決定する。以後、3次元座標の原点OをカメラCmの位置とし、図7の座標系で考える。すなわち、3次元座標の原点Oにカメラがあるとする。図7の原点Oとr1との距離をl1、原点Oとr2との距離をl2、r1とr2の距離をl12とおくと、余弦定理より
【数6】

となり、見込み角θ12の算出が可能である。同様に、i≠jに対して、見込み角θij(iおよびj=1、2、3、4)が算出可能である。ただし、後述する計算ではcosθijの値を用いる。
この関係を用いて、見込み角計算過程において、上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)に基づき、全ての2つの目印の対について、3次元空間内における上記原点Oを中心とする3次元空間内における見込み角θij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を計算する。
【0022】
次に、透視3点問題について述べる。なお、これは出口光一郎氏著の『画像と空間:コンピュータビジョンの幾何学』より抜粋してある。
図8のように△ABCに対して、点Aと点Bの距離をRab、点Aと点Cの距離をRac、点Bと点Cの距離をRbcとそれぞれおく。また、カメラOにおいて、∠AOBをθab、∠AOCをθac、∠BOCをθbcとそれぞれおく。さらに、点Oと点Aの距離をa、点Oと点Bの距離をb、点Oと点Cの距離をcとそれぞれおく。図8より、△AOBに対して余弦定理を用いると、
【数7】

となる。△AOCと△BOCにおいても同様に余弦定理を用いて
【数8】

【数9】

となる。ここで、
b=xa、c=ya
なるようにxとyを定めると、上記[数7]〜[数9]より
【数10】

【数11】

となる。これから、yを消去すると
【数12】

となる。ただし、
【数13】

【数14】

【数15】

【数16】

【数17】

である。また、
【数18】

である。[数12]の方程式が解けたとすると、xよりaとyが
【数19】

【数20】

として得られ、bとcは
b=xa、c=ya
に代入することにより得られる。なお、xには最大4つの解があり、[数20]より1つのxの解に対して最大2つの値があることに注意すると、(a、b、c)の組み合わせは最大8組となる。
【0023】
カメラCmと対象物との関係を図9に示す。なお、図9の見込み角θ12は図7のθ12と等価である。
【0024】
図10に示すように、図2のA4の処理は処理C1〜C12からなる。C1では、前記の方法を用いて、θijの計算を行う。
【0025】
図9のCmとRi(i=1、2、3、4)の距離をLi とする。i≠jである三角形Cmij(iおよびj=1、2、3、4)に対して、余弦定理より
【数21】

とかける。ただし、Lijは点Ri、Rj間の距離とし、図2のA1の処理で値が決定されている。よって、上記[数21]より、
【数22】

【数23】

【数24】

【数25】

【数26】

【数27】

とかける。
【0026】
上記[数22]〜[数27]より、前記の透視3点問題の方法を用いてL1〜L4をそれぞれ算出する。すなわち、4次方程式求解過程において、上記4つの目印から三つの目印Ri,Rj,Rk(i=1;j,k =2,3,4;j<k)を選んで作った3つの異なる三角形△123、△124、△134の各々について、各三角形に含まれる2つの目印RiとRjと上記原点Oの間の距離をそれぞれa,bとするとき、その比x(x=b/a)と、該三つの目印Ri,Rj,Rkが作る三角形の各辺の長さLijと、上記原点Oが該3角形の各辺をはさむ見込み角θijの間に成立する変数xについての4次方程式の解を求める(処理C3)。そして、候補値計算過程において、上記4次方程式の解に基づいて、該三角形の三つの各目印と上記原点Oの間の距離L1〜L4として可能性がある距離候補値の組を計算する(処理C4)。
【0027】
図10のC2で三角形Rαβγを以下に示す組に分け(処理C2)、この三角形の組に対し、C3にて前記の透視3点問題の方法を適用することで、三角形Rαβγに対応した(Lα、Lβ、Lγ)の組が最大8組算出される(処理C4)。なお、三角形は
(α、β、γ)=(1、2、3)
(α、β、γ)=(1、2、4)
(α、β、γ)=(1、3、4)
である。
【0028】
また、(Lα、Lβ、Lγ)の組が最大8組あることに注意して、[数12]の4次方程式の解と[数20]の複号の組み合わせによる解の8つの組を区別するインデックスiと、選択される三角形を区別するインデックスjの組み合わせに対して決まる3次元空間における原点Oから目印(Rα、Rβ、Rγ)までの距離を(Lαij、Lβij、Lγij)とする。α、β、γの組み合わせと、それによるカメラと目印点までの距離の解、および、解を得るときに使用する数式の関係を[表1]〜[表3]に示す。ただし、表中の×は算出されないことを示す。例えばj=1は目印R1,R2,R3からなる三角形(1,2,3)が選択された場合であり、j=2は目印R1,R2,R4からなる三角形(1,2,4)が選択された場合である。
【表1】

【表2】

【表3】

【0029】
次に、整合距離取得過程において、他の異なる三つの目印により形成される三角形について同様な計算して得られる距離候補値の組と整合性のある距離候補値を上記原点Oと目印Ri(i=1,2,3,4)の間の距離として選択する。
【0030】
整合距離取得過程の一つの実施の形態では、算出された(Lαij、Lβij、Lγij)の組に対して図10のC5の処理で比較を行う。例えば、[表1]のiと表2のIであれば、共通部分であるL1とL2が共に等価であるかを比較する。つまり、L111とL112、および、L211とL212を比較し、等価であるか検討する。もし、等価であれば、(L111、L112、L311、L412)として保存する(処理C6,C7)。これを繰り返し行う。iとIIであれば、(L111、L211、L311)と(L112、L212、L412)では、L111とL112がそれぞれL1、また、L211とL212がそれぞれL2の数値を表しているので、等価であるかを比較する。等価であれば、同様に(L111、L211、L311、L412)として保存する。以上の比較を[表1]〜[表3]における算出された全ての組について行う(処理C8)。なお、kを自然数として、保存された組を(L1-k、L2-k、L3-k、L4-k)としておく。
【0031】
[表1]〜[表3]の比較より得られた(L1-k、L2-k、L3-k、L4-k)の組を、図10のC9の処理で、前記と同様の方法で比較することにより、(L1、L2、L3、L4)を一意に定める。すなわち、[表1]〜[表3]に関係する三角形は全て目印R1を含み、目印R1を含まない三角形R234とは関係していないが、これを含む同様な表を作り、候補となる距離を計算する(C5・・・C8)。そして、このようにして得られた候補となる距離(L1-k、L2-k、L3-k、L4-k)の組を比較し、各目印について原点Oからの距離が一致するものを選らぶ。このようにして、整合性のある距離を選択する(図10の処理C9、C10)。なお、整合距離取得過程は、C5からC10までを一括して行うこと、あるいはC5からC8までをC9、C10に含める等の種々の変形も可能である。
【0032】
前期の過程でカメラCmと各目印点間の距離が決定されたので、これより各目印点の3次元空間における位置が決定できる。整合性がある距離として選択された上記距離と上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)に基づき上記4つの目印の3次元空間における位置を、3次元位置決定過程において決定する。目印点間の距離から3次元空間における位置の決定方法を以下に述べる。これは図10のC11に対応している。
【0033】
図11のように、カメラをCb、3次元空間にある点をRb、Rbに対応するCbの画面の点をGbとおく。さらに、Rbの3次元座標を(Rx、Ry、Rz)、Gbの3次元座標を(Gx、Gy、Gz)とおく。すると、カメラCbとRbとGbはCbとRb通る直線lb上の点となる。ここで、CbとRbとの距離をdR、CbとGbとの距離をdGとおくと
【数28】

【数29】

【数30】

となり、dRとdGと点Gbの3次元座標を用いれば、点Rbの3次元座標の算出が可能である。
【0034】
本方法では、カメラCmとカメラCmの画像上の目印点までの距離および3次元位置は、図10のC1で決定されている。また、カメラCmと目印点までの距離は前記の処理で決定されている。したがって、これらの値を用いれば、各目印点の3次元位置を決定できる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施例について述べる。
この実施例における処理は、図12に示す通りである。まず、D1で4点の目印の初期位置を測定する。このためには、例えば、上述した本発明の第1の実施例の方法を使うことができる。次に、D2で撮影手段から4つの目印の画像データを取得し、D3で画像上の4つの目印位置を決定し、D4で4つの目印の3次元位置を決定する。上記D2〜D4の処理を繰り返すことにより、継続して目印の3次元位置を高速に計測することが可能である。なお、繰り返して計測する場合は、4点の目印の初期位置として、前回の測定のD5で得られた目印の3次元座標の値を用いる。
【0036】
図12のD2の処理は図2のA2と、図12のD3の処理は図2のA3の処理と同様である。すなわち、目印付与過程において上記対象物に4つの目印Ri(i=1,2,3,4)を付し、目印間距離測定過程においてiとjを目印を区別するインデックスとするとき、全ての2つの目印の対Ri,Rjについてそれらの間の相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を測定し、2次元情報取得過程において、移動後の上記目印が付与された上記対象物を上記撮影手段で撮影して2次元画像情報を得る。そして、目印位置特定過程において、上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)を特定する。
【0037】
図12のD4の処理について述べる。
図12のD4の処理は、図14に示したように、処理E1〜E8からなる。カメラCmと対象物との関係を図9に示す。目印点R1、R2、R3、R4が初期位置から微小移動したときの目印点を、図13に示すように、それぞれQ1、Q2、Q3、Q4とする。カメラCmと初期位置の目印Ri(i=1、2、3、4)の距離をqi、点Riの点Qiへの微小移動で生じたカメラCmとRiの距離の変化量をΔqiとする。i≠jである三角形Cmij(iおよびj=1、2、3、4)に対して、余弦定理より
【数31】

とかける。ただし、Lijは点Riと点Rjとの間の距離である。また、見込み角Θij は∠Qimjである。なお、見込み角Θij の算出方法は第1の実施例の見込み角θ12の場合と同様である。すなわち、見込み角取得過程において、全ての2つの目印の対について、3次元空間内の原点Oを中心とする3次元空間内における見込み角Θij (i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を計算する。一方、qiとLijは図12のD1で計測済みのデータを入力する。すなわち、移動前距離入力過程において、移動後の上記4つの目印Ri(i=1,2,3,4)と上記原点Oの間の移動後距離の暫定値として、移動前距離qiを入力する。そして、上記相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を入力する。上記[数31]を展開し、2次微小項を無視すると
【数32】

となるので
【数33】

とかける。よって、[数33]を点Q1、Q2、Q3、Q4について適用すると
【数34】

【数35】

【数36】

【数37】

【数38】

【数39】

となる。三角形Qαβγを用いて各々の三角形に対して、上記[数34]〜[数39]よりΔq1、Δq2、Δq3、Δq4を算出し、算出されたΔq1、Δq2、Δq3、Δq4を平均する。三角形の組み合わせ、使用する式、算出する距離の関係を表4に示す。例えば、(α、β、γ)=(1、2、3)の場合、[数34]、[数35]、[数37]より、Δq1、Δq2、Δq3を算出し、Δq4は算出しないことを示す。
【表4】

【0038】
各(α、β、γ)の組み合わせから得られたΔq1、Δq2、Δq3、Δq4をそれぞれ平均し、その平均化された値をΔq1’、Δq2’、Δq3’、Δq4’とする。
【0039】
次に、算出されたΔq1’、Δq2’、Δq3’、Δq4’を用いて、近似解をP1、P2、P3、P4とし、
【数40】

【数41】

【数42】

【数43】

と定義する。以上が図14のE2の処理である。ここで、判別式を
【数44】

と定義し、iおよびj=1、2、3、4(i≠j)について、ΔLijを算出する。すなわち、近似値取得過程において、各目印Ri(i=1,2,3,4)と上記原点Oの間の距離qiを微小量Δqiだけ変化させて距離qi+Δqiとした時、微小量Δqiの2次以上の項を無視したとき当該目印Ri(i=1,2,3,4)と各他の目印Rj(j=1,2,3,4;i≠j)の間の間隔が測定されている相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)になる微小量Δqiの候補値を、上記見込み角の値と上記相互間距離Lijの値に依存する係数を有する、三つの目印の組毎に決まる、複数の組の連立1次方程式を解いて求め、目印の組を変えた各連立方程式の組の解を平均することにより平均化微小量Δqi’を求め、上記移動後距離qiの近似値として暫定的に設定されている値に上記平均化微小量Δqi’を加えそれを改めて新しい距離qiの近似値として得る。
【0040】
次に、算出されたΔLijについて、図14のE4にてΔLijの値が所定量以下か判別を行う。例えば、計算されたΔLijの絶対値(あるいはLijに対する相対誤差)が全て0.001以下といったように、数値で所定量を定める。すなわち、判別過程において、上記新しい距離qiの近似値に基づいて各目印Ri(i=1,2,3,4)と夫々の隣接する目印Rj(j=1,2,3,4;i≠j)の間の間隔として計算される値を夫々に対応する相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)と比較してその差が所定値より小さいか否かを判別する
【0041】
前記の方法で、ΔLijの判別を行い、ΔLijの値が所定量以下の場合はE5に進む。
【0042】
前記のΔLijの判別においてΔLijの値が所定量より大きい場合は、E8にて、算出された近似解を用いて、前記のq1、q2、q3、q4
1 ⇒q1
2 ⇒q2
3 ⇒q3
4 ⇒q4
を代入して、ΔLijの値が所定量以下になるまでE2〜E4の収束演算を繰り返す。すなわち、収束演算過程で、上記近似値に基づいて上記近似値取得過程と上記判別過程を繰返す。ただし、この場合、E2〜E4の収束演算の過程において、E4の条件を満足するために時間がかかる場合がある。このときは予め設定した時間経過後、この収束演算過程でΔLijが最も条件に近い場合のP1、P2、P3、P4を算出結果としE5へ進む。
【0043】
E2〜E4の収束演算の過程で得られたP1、P2、P3、P4はカメラCmと微小移動後の各目印点間の距離であるから、これより、カメラCmと各目印点間の距離を決定する。
【0044】
前記の過程でカメラCmと各目印点間の距離が決定されたので、図10のC11の方法で、カメラCmと各目印点間の距離を3次元座標に変換する方法を用いることにより、各目印点の3次元空間における位置が決定できる。すなわち、3次元空間位置特定過程で、対象物の移動後の目印Ri(i=1,2,3,4)と上記原点Oの間の移動後距離qiを上記近似値とし、移動後距離qiと上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)とに基づいて上記対象物の移動後の4つの上記目印の3次元空間における位置を特定する。
【0045】
なお、例えば、対象物が高速に移動する場合などにも、上記した方法を用いることにより、計測が可能である。
【0046】
また、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能であることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の単眼視3次元位置計測装置の全体構成図を示した図である。
【図2】本発明の単眼視3次元位置計測装置の第1の実施例における処理動作を示したフローチャートである。
【図3】目印が4点設置された対象物の例を示した図である。
【図4】図2のA3の処理動作を詳細に示したフローチャートである。
【図5】画像データをある大きさに分けた区画における各画素情報とすることを示した図である。
【図6】カメラの画面における2次元座標系と3次元空間における座標系の対応について示した図である。
【図7】3次元空間におけるカメラとカメラにより撮影された画像との関係を示した図である。
【図8】透視3点問題を説明するために示した図である。
【図9】カメラと対象物との関係を示した図である。
【図10】図2のA4の処理動作を詳細に示したフローチャートである。
【図11】カメラの画面における2次元座標系と3次元空間における座標系の対応について示した図である。
【図12】本発明の単眼視3次元位置計測装置の第2の実施例における処理動作を示したフローチャートである。
【図13】目印点が初期位置から微小移動したときの目印点を示した図である。
【図14】図12のD4の処理動作を詳細に示したフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4点の目印が付された対象物の画像をコンピュータに取り込むための1台の撮影手段と、前記の撮影手段から得られた画像よりこの画像上における4点の目印の2次元位置を決定する2次元位置決定手段と、前記の2次元位置決定手段で得られた2次元位置から4点の目印の3次元位置を決定する3次元位置決定手段を備えることを特徴とする、単眼視3次元位置計測装置。
【請求項2】
上記3次元位置決定手段が、前記の撮影手段と目印の距離の候補を、前記の目印から構成される4つの三角形を用いて算出し、得られた候補から各三角形に関して比較することにより共通する解を決定し、さらに、前記の決定で得られた結果をさらに比較することにより、撮影手段と目印の距離を一意に定め、この一意に定まった距離から4点の目印の3次元位置を決定するものであることを特徴とする、請求項1記載の単眼視3次元位置計測装置。
【請求項3】
上記3次元位置決定手段が、動きのある対象物に対して、微小移動後の撮影手段と目印2点との関係から得られる近似式を用いて、微小移動により変化した撮影手段と目印との距離の変化量を算出し、その算出結果を移動前の撮影手段と目印との距離から計算される値に加え、その結果を既知の目印間相互距離と比較する判別式で判定し、この判定結果が所定量以下になるまで繰り返し行うことにより、微小移動後の撮影手段と目印との距離を算出し、この算出結果から目印の3次元位置を決定するものであることを特徴とする、請求項1記載の単眼視3次元位置計測装置。
【請求項4】
上記4点の目印として4色のLEDを使用することを特徴とする、請求項1記載の単眼視3次元位置計測装置。
【請求項5】
1台の撮影手段で得られた3次元空間内の対象物の1枚の2次元画像情報に基づき上記対象物に付された目印の3次元空間内の位置を計測する単眼視3次元位置計測方法において、上記対象物に4つの目印Ri(i=1,2,3,4)を付する目印付与過程と、iとjを目印を区別するインデックスとするとき、全ての2つの目印の対Ri,Rjについてそれらの間の相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を測定する目印間距離測定過程と、上記目印が付与された上記対象物を上記撮影手段で撮影して2次元画像情報を得る2次元情報取得過程と、上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)を特定する目印位置特定過程と、上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)に基づき、全ての2つの目印の対について、3次元空間内における原点Oを中心とする3次元空間内における見込み角θij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を計算する見込み角計算過程と、上記4つの目印から三つの目印Ri,Rj,Rk,(i=1;j,k=2,3,4;j<k)を選ん作った異なる三角形の各々について、各三角形に含まれる2つの目印RiとRjと上記原点O間の距離をそれぞれa,bとするとき、その比x(x=b/a)と、該三つの目印Ri,Rj,Rkが作る三角形の各辺の長さLijと、上記原点Oが該3角形の各辺をはさむ見込み角θijの間に成立する変数xについての4次方程式の解を求める4次方程式求解過程と、上記4次方程式の解に基づいて、該三角形の三つの各目印と上記原点Oの間の距離として可能性がある距離候補値の組を計算する候補値計算過程と、異なる三つの目印により形成される他の三角形について同様な計算して得られる距離候補値の組と整合性のある距離候補値を選択することにより上記原点Oと目印Ri(i=1,2,3,4)の間の距離を決定する整合距離取得過程と、整合性がある距離として選択された上記距離と上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)に基づき上記4つの目印の3次元空間における位置を決定する3次元位置決定過程を含むことを特徴とする、単眼視3次元位置計測方法。
【請求項6】
1台の撮影手段で得られた3次元空間内で移動する対象物の1枚の2次元画像情報から上記対象物に付された目印の3次元空間内の位置を計測する単眼視3次元位置計測方法において、上記対象物に4つの目印Ri(i=1,2,3,4)を付する目印付与過程と、iとjを目印を区別するインデックスとするとき、全ての2つの目印の対Ri,Rjについてそれらの間の相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を測定する目印間距離測定過程と、目印Ri(i=1,2,3,4)と3次元空間の原点Oの間の移動後距離qiの近似値として、移動前の上記4つの目印Ri(i=1,2,3,4)と上記原点O の間の移動前距離qi を入力し、そして、上記相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を入力する移動前距離入力過程と、移動後の上記目印が付与された上記対象物を上記撮影手段で撮影して2次元画像情報を得る2次元情報取得過程と、上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)を特定する目印位置特定過程と、全ての2つの目印の対について、3次元空間内における上記原点Oを中心とする3次元空間内における見込み角θij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)を計算する見込み角計算過程と、各目印Ri(i=1,2,3,4)と上記原点Oの間の距離qiを微小量Δqiだけ変化させて距離qi +Δqiとした時、微小量Δqiの2次以上の項を無視したとき当該目印Ri(i=1,2,3,4)と各他の目印Rj(j=1,2,3,4;i≠j)の間の間隔が上記相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)になる微小量Δqiの候補値を、上記見込み角θijの値と上記相互間距離Lijの値に依存する係数を有する、三つの目印の組毎に決まる、複数の組の連立1次方程式を解いて求め、目印の組を変えた各連立方程式の組の解を平均することにより平均化微小量Δqi’を求め、上記移動後距離qiの近似値として暫定的に設定されている値に上記平均化微小量Δqi’を加えそれを改めて新しい距離qiの近似値として得る近似値取得過程と、上記新しい距離qiの近似値に基づいて各目印Ri(i=1,2,3,4)と夫々の隣接する目印Rj(j=1,2,3,4;i≠j)の間の間隔として計算される値を夫々に対応する相互間距離Lij(i=1,2,3;j=2,3,4;i<j)と比較してその差が所定値より小さいか否かを判別する判別過程と、上記判別の結果その差が所定値より大きいときに実行される、上記近似値に基づいて上記近似値取得過程と上記判別過程を繰返す収束演算過程と、上記判別の結果その差が所定値より小さいとき実行される、対象物の移動後の目印Ri(i=1,2,3,4)と上記原点Oの間の移動後距離qiを上記近似値とし、移動後距離qiと上記4つの目印の上記2次元画像情報内の位置(r1,r2,r3,r4)とに基づいて上記対象物の移動後の4つの上記目印の3次元空間における位置を特定する3次元空間位置特定過程を含むことを特徴とする、単眼視3次元位置計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−10610(P2006−10610A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191031(P2004−191031)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】