説明

厚鋼板の圧延方法および厚鋼板の製造方法

【課題】厚板圧延でのワークロールと被圧延材の焼き付きやワークロールに発生する亀裂等を抑制でき、ワークロールの割損も防止する。
【解決手段】厚鋼板の圧延に、鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚鋼板の圧延方法およびそれを用いた厚鋼板の製造方法に関する。厚鋼板は、平鋼や帯鋼と比べ、製品幅が広い。平鋼が製品幅500mm以下、帯鋼が600〜2300mmであるのに対し、厚鋼板は多くの場合、製品幅2300mm超、と平鋼よりもはるかに製品幅が広く、帯鋼とは一部製品幅のラップする領域があるものの、概して帯鋼よりも製品幅が広い。厚鋼板と帯鋼とは、一部製品厚もラップする領域があるが、前者が圧延後に巻き取られないのに対し、後者は巻き取られるという大きな相違があって、当業者間では区別されている。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼スラブを熱間圧延して厚鋼板(以下、厚板)となす工程(厚板圧延工程)では、鋼スラブを加熱炉で例えば1050〜1350℃に加熱した後、1基または2基の可逆式圧延機で複数パス熱間圧延して、所望の板厚、板幅の厚鋼板(製品板厚範囲:4.5〜400mm )となす。厚板圧延用可逆式圧延機(厚板圧延機)のワークロールには、通常、鋼製のロールが用いられる。
【0003】
しかし、圧延温度が高いため、ワークロールと被圧延材との間に焼付が発生しやすく、製品鋼板の表面に肌荒れが生じる問題があった。また、圧延反力(圧延荷重)、熱負荷に伴う大きな応力を受けることにより、ワークロールの表面に亀裂が入りやすく、亀裂が入ると、それが製品厚鋼板の表面に転写して肌荒れが生じたり、ロール研削量が増えてロール原単位が悪化したり、亀裂が大きいと、ロールの折損(スポーリング)に至る場合もある、という問題もあった。
【0004】
また、圧延温度の比較的低いものを多く圧延すると、圧延荷重が高くまた被圧延材表面に比較的硬いスケールが生成することから、ワークロールが早期に摩耗してロールプロフィルが変わってしまい、ロール再研磨の頻度が高く、ロールコストが高くなるという問題もあった。亀裂発生に対する抵抗や耐摩耗性の大きいロールとしては、従来、特許文献1に示すような、ロール外殻層の組成、硬度、残留圧縮応力を規制した高炭素系高速度鋼ロールや、特許文献2に示すような、内層が鋼製、外層が超硬合金製の内外2層スリーブをもつ複合ロールの外層/内層の断面積比を規制した超硬合金製複合ロールなどが用いられてきた。
【0005】
しかし、前記特許文献1のロールは、厚板圧延機のワークロールに用いても、前記焼付や亀裂等(亀裂、摩耗)を十分に防止できなかった。また、前記特許文献2のロールは、前記焼付や亀裂等を有効に防止できるものの、その複合スリーブは外層の超硬合金の混合粉末を焼結させると同時に内層に拡散接合させて製作されるものであるため、厚板圧延用ワークロールのような大径長尺(例えば外径1200mmφ×圧延部幅5500mmW)のロールに見合うサイズ範囲では精度良くまた作業性良く製作することが困難であり、厚板圧延機のワークロールには適用できていなかった。そのため、被圧延材の表面品質を良好な状態で何百本も圧延しようとすれば、頻繁にラインを停止してはロールを交換して操業せざるを得なかった。
【0006】
こうしたことから、厚板圧延機でのワークロールの焼付や亀裂等を防止し、厚板製品の表面品質を向上するとともに、厚板圧延操業において圧延能率を向上する、という両方の要求に応えるべく、特許文献3では、超硬合金製の円筒をます焼結して作成し、それをいくつか継ぎ足してHIP(熱間等方加圧)した後、鋼製軸心に嵌め込むことで、表層が超硬合金からなるロールを製造し、厚鋼板の圧延に用いることを提案している。
【0007】
なお、後述の本発明を実施するための最良の形態に引用するため、特許文献4にここで言及しておく。
【特許文献1】特開平09−078186号公報
【特許文献2】特開平10−005825号公報
【特許文献3】特開2002−224715号公報
【特許文献4】特開平10−317102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献3に示されているような、ワークロールの表層の材質を超硬合金とする方法では、超硬合金が脆性材料であるため、ワークロールが割損しやすい問題があった。しかも、1本被圧延材を圧延しただけですぐさま割損するというわけではなく、何本も被圧延材を圧延しているうちに突然割損する。何本目に割損するかはばらつきがあって、ひとたび割損すると厚板圧延操業が突然中断して被圧延材の圧延が何時間かできなくなる。このような問題があるため、適用が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述のような従来技術の問題を解決するべくなされたものである。
【0010】
(1)鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いることを特徴とする厚鋼板の圧延方法。
【0011】
(2)(1)の厚鋼板の圧延方法を用いた厚鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特許文献3に示したワークロールのように割損してしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では、厚板圧延機のワークロールに鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いる。
【0014】
超硬合金は、WC,TaC,TiC等の超硬材料粉末に、Co,Ni,Cr,Ti 等の金属粉末のうちから選ばれる1種または2種以上を質量%にして5〜50%添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであり、超硬材料混合粉末としては、質量%にして5〜50%Coを添加したWC粉末を焼結したものとするのが、耐摩耗性、耐肌荒れ性等に優れかつ靭性が良好であるので好ましい。
【0015】
本発明の厚鋼板の圧延方法に用いられるロールについて、以下に説明する。
【0016】
本発明の実施形態に用いるワークロール(以下、ロール)を図1〜図5に示す。それぞれの図において、(a)は半径方向断面図であり、(b)は胴長方向断面図である。それらのロールの基本的な構造上の特徴は、鉄系材料からなる外層1と、その内側に超硬合金からなる内層2を形成したことにある。
【0017】
図1に示したロールは、内部を全て超硬合金からなる内層2とした場合である。なお、図中の5は、ネック部である。
【0018】
図2に示したロールは、鉄系材料よりなる軸芯4の周りに、超硬合金からなる内層2を設け、その外側に鉄系材料よりなる外層1を設けたものである。
【0019】
図3〜図5に示したロールは、図2に示したロールにおいて、超硬合金からなる内層2に接するようにして、それぞれ、内層2の内側、外側、両側に、鉄系材料または、上記と同じか異なる組成の超硬合金よりなる中間層3を設けたものである。これは、後述するスリーブ状の超硬合金層を形成する場合に発生する残留応力や、圧延時に発生する熱応力により、ロールに内部応力が発生する影響を緩和する目的で設けている。
【0020】
外層1をなす鉄系材料は、鉄系という言葉の通り、鉄を質量%にして50%以上含有するものであればいかなるものでも良いが、例えば、特許文献4に記載されている以下のような合金成分を有するようにするのが好ましい。
【0021】
質量%にして、C:1.1〜1.5%、Si:0.15〜1.0%、Mn:0.15〜1.5%、Ni:1.0%以下、Cr:9.0〜15.0%、Mo:1.0%未満、V:0.8%未満、Ti:0.3%以下を含有し、残部鉄および不可避的不純物からなる鉄系合金。
【0022】
一方、内層2をなす超硬合金は、WC、TaC、TiCなどの超硬材料粉末に、Co、Ni、Cr、 Ti等の金属粉末のうちから選ばれる1種あるいは2種以上を総質量に対し質量%にして5〜50%の割合で添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであり、特に、WCに総質量に対し質量%にして5〜50%の割合でCo粉末を添加した超硬材料混合粉末を焼結したものとするのが、使用時の熱特性、製造時の割損抑制などの耐事故性が良好であるので好ましい。
【0023】
また、図3〜図5に示したロールにおいて、中間層3をなす鉄系材料は、外層1をなす鉄系材料と同一の材質としても良いし、それとは異なる異種の鉄系材料としても良い。異種の鉄系材料としては、例えば、鋳鋼、鍛鋼、黒鉛鋳鉄、炭素鋼及び合金炭素鋼のいずれも好ましく、以下のような合金成分を有するようにするのも好ましいが、これに限るものではない。
【0024】
質量%にして、C:1.3%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Ni:1.0%以下、Cr:10%以下、Mo:1.0%未満、V:0.8%未満、Ti:0.3%未満を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鉄系合金。
【0025】
また、超硬合金を中間層3として用いるのも好ましく、その場合、その超硬合金は、WC、TaC、TiCなどの超硬材料粉末に、Co、Ni、Cr、 Ti等の金属粉末のうちから選ばれる1種あるいは2種以上を総質量に対し質量%にして5〜50%の割合で添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであり、特に、WCに総質量に対し質量%にして5〜50%の割合でCo粉末を添加した超硬材料混合粉末を焼結したものとするのが、使用時の熱特性、製造時の割損抑制などの耐事故性が良好であるので好ましい。
【0026】
なお、上記のような異種の鉄系材料あるいはそれとはさらに異なる異種の鉄系材料は、溶製材とするのが好ましいので、以下、溶製材の鉄系材料の場合を例に説明するが、本発明に用いるロールの鉄系材料の部分は溶製材に限定されるものではない。
【0027】
また、図2〜図5に示したロールの軸芯4は、例えば、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、高速度鋼を調質することで製造することもできる。
【0028】
以上述べた基本的なロールの構造に基づいて、詳細な構造は、ロール寸法、使用条件、製造コストの許容範囲などにより適宜決定すれば良いが、ロール寸法のうち、各部のものに関しては、以下に述べるようにすることが好ましい。
【0029】
すなわち、鉄系材料からなる外層1の厚みは薄ければ薄いほどロール偏平が抑制され、圧延中、ロールと被圧延材との間の接触弧長が短くなる。これにより、圧延中のロールの回転に伴うロールと被圧延材との接触時間も短くなって、ロールへの入熱が減少し、熱応力が軽減されるため、ワークロール表層に亀裂が入りにくくなり、ロール研削量が減ってロール原単位が悪化するのを抑制できる。
【0030】
しかしながら、製造上、薄い層になればなるほど形成が困難になるという制約や、圧延中の剛性の問題から、5mm以上とするのが好ましい。上限はロール偏平の抑制の観点から、100mm以下とするのが好ましい。
【0031】
また、超硬合金からなる内層2の厚みは、ロール偏平を抑制する観点から、厚い方が好ましい。好適な範囲は、50mm〜500mmである。
【0032】
また、鉄系材料または超硬合金からなる中間層3の厚みは、ある程度の厚みがあれば、超硬合金層を安定化させることができるので、超硬合金層の厚み以下とするのが好ましい。製造上、薄い層になればなるほど形成が困難になることから、3mm以上とするのが好ましい。
【0033】
そして、図2〜図5に示したロールの軸芯4の太さは、ロールの構造上、ネック部5の代表寸法(小判状断面の部分を除いた円柱部分の直径)と同一とするのが好ましく、ロールの胴部(ネック部を除くという意味)の直径の1.5分の1ないし4分の1とするのが好ましい。軸芯4の太さを調整することで、結果的に、超硬合金からなる内層2や鉄系材料からなる中間層3の厚みも調整できる。
【0034】
ロールの最終的な寸法は、ロールの胴長方向中央の胴部の円柱部分の直径にして500〜2000mm、胴長方向の長さにして2500〜6000mmと幅広い。
【0035】
次に、図3に示したロールの場合を例に、本発明に用いるロールの製造方法について、以下に説明する。
【0036】
なお、本発明に用いるロール寸法は、代表的な一例を挙げると、胴部の外径1200mmφ×胴長5490mmW内外と、胴長方向に非常に長いので、超硬合金部分を一体で製造することは好ましくなく、図6に示すごとく、(a)予め焼結にて製造された胴長数百mmのものを、(b)複数継ぎ足して再度焼結するようにして製造するのが好ましい。
【0037】
そこで、例えば、粉末充填(ロール1本あたりの胴長を整数で除した寸法に後工程での収縮分を加算したのに実質的に等しい幅(胴長)を持つ複数個の成形体を製造する)→CIP(冷間等方加圧)処理→機械加工→仮焼結→機械加工→本焼結・HIP(熱間等方加圧)処理(複数個の成形体を胴長方向に継ぎ足して一体化し、熱間等方加圧して焼結し、超硬合金製スリーブ(円筒状部材)を製造する)→機械加工→拡散接合処理(超硬合金製スリーブの内面側に中間層として鉄系の円筒状内層部材を設ける場合)→嵌合・固定(スリーブを軸芯用部材に嵌合して固定する)という一連の製造プロセスを経て、軸芯用部材の周りに超硬合金層を有するロール部材を製造する。そして、外層の鉄系材料よりなる円筒状部材を鋳造により作成し、上記の超硬合金層を有するロール部材に焼き嵌めなどにより嵌合し一体化することで、最終的に本発明のロールを製造完了する。
【0038】
しかる後、機械加工を施して、各部の寸法を最終的に調整したり、研磨してロール胴部の粗度や光沢度を調整することは、何らこれを妨げない。
【0039】
以上述べた本発明のロールの製造方法の一部について補足して説明すると、超硬合金製スリーブには、必要に応じて、その内面に研削、研磨等の機械加工を行い、次いで、焼き嵌め、冷やし嵌めなどの方法で超硬合金製スリーブを軸芯に嵌合して固定する。
【0040】
CIP成形の条件は、例えば、100〜300 MPaで5〜60分保持するのが好ましい。
【0041】
仮焼結の条件は、例えば、550〜800℃で1〜3時間保持するのが好ましい。
【0042】
本焼結・HIP処理は、例えば、Ar雰囲気下、100〜200MPa、1100〜1200℃で、0.5〜2時間保持後、さらに1300〜1350℃で1〜3時間保持するのが好ましい。なお、本焼結・HIP処理は、同時処理に限らず、焼結後に熱間等方加圧処理を行っても良い。例えば、超硬合金製スリーブの内面に肉厚50mmの円筒状SCM−440相当の鍛鋼を拡散接合する場合には、Ar雰囲気下、1200〜1300℃で、0.5 〜1時間保持するのが好ましい。
【0043】
最後に、外層の鉄系材料よりなる円筒状部材を鋳造により製造し、上記の超硬合金製スリーブの内面側にSCM440相当の鍛鋼を拡散接合した円筒状部材の外面側に焼き嵌めなどにより嵌合・一体化する。外層の鉄系材料よりなる円筒状部材は、必要に応じて、嵌合の前後に焼入れや浸炭により調質あるいは鍛造などを施して必要な強度と性質を与えるようにするのも好ましい。
【0044】
以上が、本発明に用いるロールの製造方法の一例であるが、以上説明した方法はあくまで一例であり、本発明に用いるロールの製造方法は、以上説明した方法に限られるものではない。例えば、外層の鉄系材料よりなる部分は遠心鋳造、肉盛溶接、あるいは溶射などによって、ロール部材の外側に形成するなどしても良い。
【0045】
なお、図1〜図5には示していないが、外層1及び中間層3をなす鉄系材料の層と、内層2をなす超硬合金層との間には、超硬合金材料に適宜、鉄(Fe)や炭素(C)を添加して調整した緩衝層を設けるようにするのも好ましい。緩衝層の成分は、超硬合金の拡散接合条件に応じて調整されることが好ましい。緩衝層の厚みは、超硬合金によるサーマルクラウン抑制の効果を損なわないようにするためには10mm以下とするのが好ましく、2〜5mmとするのがさらに好ましい。
【0046】
超硬合金層2のヤング率は鉄系材料に比べて高いので、ロール偏平が抑制され、圧延中、ロールと被圧延材との間の接触弧長が短くなり、これにより、圧延中のロールの回転に伴うロールと被圧延材との接触時間も短くなって、ロールへの入熱が減少し、熱応力が軽減されるため、ワークロール表層に亀裂が入りにくくなることは先にも述べたが、ロールへの入熱が減少することで、ロールの外層1と被圧延材との間に焼き付きが発生するのも抑制される、という効果もある。
【0047】
また、外層1は超硬合金のような脆性材料ではない鉄系材料で構成されているので、ロールの外層1と被圧延材との接触によってワークロールが割損するのも防止できる。
【0048】
厚鋼板を熱間圧延して製造する工場(厚板圧延ライン)において、厚板圧延機は1基または2基配置されるが、2基配置の場合は、少なくともいずれか1基のワークロールに本発明に用いるロールを用いる。図7は、本発明の実施に適した厚板圧延ラインの例を示す配置図である。ライン上流側から順に、加熱炉10、デスケーリング装置11、厚板圧延機12、冷却装置13、冷却床14が配置されている。この例では、厚板圧延機12は上下1対のワークロールWRおよびバックアップロールBURを備えた4重式の可逆式圧延機1基で構成されているが、可逆式圧延機2基で構成されたものでもよく、また、可逆式圧延機を上下1対のワークロールのみ備えた2重式としたものであってもよい。
【0049】
2基構成の厚板圧延機の場合、いずれか1基に対して本発明を適用してもよいが、2基に対して適用した方がさらに効果的である。
【実施例】
【0050】
図7に示す厚板圧延ラインにて、厚板圧延機のワークロール(圧延部寸法=外径1200mmφ×幅5490mmW)として鋼ロール、図8(a)、(b)に示す各超硬合金ロールA,B、図2、図3に示す本発明のロールを用い、各ロール種類毎に20本ずつ、SM490相当鋼スラブ(300mm厚)を熱間圧延(パス数10〜15)して製品板厚12〜16mmの厚鋼板となした。
【0051】
鋼ロールは高速度鋼を調質して製作された。
【0052】
超硬合金ロールAは図8(a)に示す構造を有し、超硬合金接合スリーブ22は、タングステンカーバイド(WC)にCoを質量%にして20% 添加したものを素材としてラバー成形により形成した厚さ230mmt×幅400mmLのWC-Co 合金中空部材を幅方向に25個HIP接合し、これを鋼製軸心24に嵌合して超硬合金ロールAを得た。なお、21は鋼製側端リングである。
【0053】
超硬合金ロールBは図8(b)に示す構造を有し、超硬合金接合スリーブ22は、タングステンカーバイド(WC)にCoを質量%にして10% 添加したものを素材としてラバー成形により形成した厚さ230mmt×幅400mmLのWC-Co 合金中空部材を幅方向に25個HIP接合し、これを鋼製緩衝材25に嵌合し、さらに鋼製軸心24に嵌合して超硬合金ロールBを得た。なお、21は鋼製側端リングである。
【0054】
本発明例では、ワークロールは、図2及び図3に示した構造のものを用い、外層1は、特許文献4に記載の化学成分範囲の鉄系材料で、質量%にして、C:1.4%、Si:0.5%、Mn:0.5%、Ni:0.5%、Cr:12%、Mo:0.8%、V:0.4%、Ti:0.1%で残部はFeと不可避的不純物である成分からなる合金とし、厚みを15mmとした。
【0055】
超硬合金層2は質量%にして15%のCoをWCに添加したものとし、図2のものは、厚みを200mm、図3のものは、厚みを195mmとした。図3のものの中間層3は、質量%にして0.05%の炭素を含有する炭素鋼とし、厚みを5mmとした。超硬合金層2は胴長方向5個の仮焼結体から、前記のHIPにより製造し、内側に中間層3を嵌合した。嵌合時は、超硬合金層2を350℃に加熱し、中間層3を−30℃に冷却して、焼き冷やし嵌めした。外層1は遠心鋳造および機械研削により25mmの厚みの円筒を製造し、これを超硬合金層1の外周に嵌合した。嵌合時、超硬合金層2と中間層3の一体円筒は常温のまま、外層1を250℃に加熱して焼き嵌めた。これら3層の一体円筒を380℃に加熱して直径750mmの鋼製軸芯4に焼き嵌めした。最後に、外層1を鍛造および機械研削して、ロール外周を仕上げた。
【0056】
各ロール種類毎に最終本目に圧延された厚鋼板の表面性状を観察するとともに、最終本目の圧延を終えたワークロール表層の亀裂発生量および摩耗量を調査した。亀裂発生量は超音波探傷法で検出したロール表層亀裂の個数および最大深さで評価した。摩耗量は圧延前とのロールプロフィル差が最大となるロール胴長方向位置におけるロール半径減少量で評価した。
【0057】
調査結果を表1に示す。ワークロールに超硬合金ロールを用いた比較例、図2及び図3に示した構造のワークロールを用いた本発明例では、圧延後のロール表層の亀裂は浅く、表面性状は良好であった。これに対し、従来例である鋼ロールでは、亀裂が深く、肌荒れしていた。
【0058】
なお、20本の圧延を終了後も圧延を継続したが、超硬合金ロールAは53本目、超硬合金ロールBは215本目に割損してしまった。従来例である鋼ロールと、図2及び図3に示した構造のワークロールを用いた本発明例では、500本以上圧延しても割損しなかった。
【0059】
【表1】

【0060】
なお、厚鋼板は、高炉などから出る溶銑を成分調整して溶製した後、造塊法にて鋳造後のインゴットを分塊圧延するか、あるいは連続鋳造法により直接、スラブ状の鋼塊にし、それを上記図7に示したような厚板圧延ラインにて、圧延することで製造できるが、上記図7に示したような厚板圧延ラインにて、圧延する際に、本発明の厚鋼板の圧延方法を用いて圧延することで、良好な表面品質の厚鋼板を製造できるとともに、ワークロールの割損による操業停止も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に用いるロールの断面図である。
【図2】本発明に用いるロールの断面図である。
【図3】本発明に用いるロールの断面図である。
【図4】本発明に用いるロールの断面図である。
【図5】本発明に用いるロールの断面図である。
【図6】本発明に用いるロールの製造方法について、一部を説明するための図である。
【図7】本発明の実施に適した厚板圧延ラインの例を示す配置図である。
【図8】比較例に用いるロールの断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 鉄系材料
2 超硬合金
3 中間層
4 軸芯
5 ネック部
10 加熱炉
11 デスケーリング装置
12 厚板圧延機
13 冷却装置
14 冷却床
21 鋼製側端リング
22 超硬合金接合スリーブ
24 鋼製軸心
25 鋼製緩衝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いることを特徴とする厚鋼板の圧延方法。
【請求項2】
請求項1の厚鋼板の圧延方法を用いた厚鋼板の製造方法。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−181628(P2006−181628A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381163(P2004−381163)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】