説明

可変動弁装置

【課題】可変動弁装置を備えるエンジンにおいて、複数のオイルポンプのうちいずれかの性能が低下した際のエンジン性能の低下を抑制する。
【解決手段】可変動弁システム10、12を駆動する少なくとも二以上の油圧駆動部と、前記油圧駆動部を含むエンジンの油圧機器及び潤滑部にオイルを供給するオイルポンプ3と、オイルポンプ3から前記油圧駆動部へ供給する作動油圧を高めるためにオイルポンプ3の他に設けたアシストポンプ8と、アシストポンプ8の性能低下を判定する性能低下判定手段と、前記性能低下判定手段によりアシストポンプ8の性能低下を判定した場合には、少なくとも一つの前記油圧駆動部への作動油の供給を停止する停止制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の可変動弁装置の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、潤滑油が潤滑機能以外にも、例えば可変動弁機構等の各種アクチュエータの作動油としての機能を併せ持つ場合がある。
【0003】
ところで、内燃機関のクランク軸に駆動連結されて駆動される、いわゆる機械式潤滑ポンプにあっては、機関始動時等、機関回転速度が極めて低いときには、その吐出量が少なくなるため、アクチュエータに対して十分な量の潤滑油を供給することが困難になる。また、機関回転速度が極めて低い場合にも十分な吐出量を確保しようとすれば、ポンプの大型化を招くこととなり、ひいては内燃機関における駆動抵抗の増大を招くこととなる。
【0004】
これらの問題を解決するための手段として、特許文献1には、機械式潤滑ポンプの他に電動式のポンプを備え、それぞれのポンプが異なるアクチュエータへの油圧供給を担当する構成が記載されている。
【特許文献1】特開2004−60612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の構成では、電動式ポンプが経年劣化等によって性能低下し十分な作動油圧を供給することができなくなった場合には、機械式潤滑ポンプから電動式ポンプが担当するアクチュエータへ油圧供給を行うこととなっている。
【0006】
しかしながら、機械式潤滑ポンプのみですべてのアクチュエータへ油圧供給を行うと、アクチュエータや潤滑部等へ供給される油量及び油圧が低下し、アクチュエータの機能低下や潤滑性能の低下等によってエンジン性能が大幅に低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明では、電動式ポンプ故障時のエンジン性能の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の可変動弁装置は、可変動弁システムを駆動する少なくとも二以上の油圧駆動部と、前記油圧駆動部を含むエンジンの油圧機器及び潤滑部にオイルを供給するオイルポンプと、前記オイルポンプから前記油圧駆動部へ供給する作動油圧を高めるために前記オイルポンプの他に設けたアシストポンプと、前記アシストポンプの性能低下を判定する性能低下判定手段と、前記性能低下判定手段により前記アシストポンプの性能低下を判定した場合には、少なくとも一つの前記油圧駆動部への作動油の供給を停止する停止制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、経年劣化等によってアシストポンプの性能が低下した場合には、可変動弁装置のいずれかの油圧駆動部への作動油の供給を停止するので、他の油圧駆動部を正常に作動させることができる。これにより、例えば油圧不足によって可変動弁装置の変換速度が低下すること等によるエンジン性能の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態を適用するエンジンの給油経路の概要を示す図である。
【0012】
オイルパン1内のオイルは、オイルポンプ3によってオイルストレーナ2を通して吸い上げられ、オイルフィルタ6により異物等を除去されてメインギャラリ7に圧送される。
【0013】
オイルポンプ3からの吐出量は、オイルポンプ3の上下流をバイパスする通路内に設けたレギュレータバルブ4によって所望量に調整される。また、オイルフィルタ6の上下流をバイパスする通路内にはリリーフバルブ5を設け、オイルフィルタ6を通過するオイルの圧力を所望圧に調整している。なお、オイルポンプ3は図示しないクランクシャフトによって駆動される、機械式のポンプである。
【0014】
メインギャラリ7は図に示すように、吸気バルブに設けた可変動弁機構(以下、吸気側VTCという)10及び排気バルブに設けたVTC(以下、排気側VTCという)12(可変動弁システム)、そして吸気・排気カムシャフトの各ジャーナル部分、クランクシャフトやコネクティングロッドのベアリング部分、ピストン内部の冷却通路や摺動部、チェーンテンショナー等の各要素にオイルを供給するようオイル通路7a、7bに分岐している。前記各要素に供給されたオイルは、潤滑等に供された後、オイルパン1に回収される。
【0015】
吸気側VTC10と排気側VTC12は、運転状態に応じて吸気バルブ及び排気バルブの開閉時期を調整するものであって、特開平5−98916号公報等にも開示されているように公知であり、ヘリカルスプラインを利用した形式やベーンを用いた形式が良く知られている。簡単に説明すると、クランクシャフトと連動して回転するカム、プーリ(又はスプロケット)を含む外部回転体と、この外部回転体の内部に収容され、吸気カムシャフトと一体的に回転する内部回転体と、を有し、油圧駆動式の吸気VTC変換デバイス(油圧駆動部)により両回転体を互いに回動することにより、クランク角に対する吸気弁の作動中心角(吸気中心角)の位相、すなわち吸気弁のバルブタイミングを進角・遅角するものである。なお、これらの制御は図示しないコントローラにより、予め制御特性を設定した作動マップに従って行われる。
【0016】
吸気側VTC10及び排気側VTC12にオイルを供給するためのオイル通路7aには、電気駆動式のアシストポンプ8が介装されている。アシストポンプ8は、吸気側VTC10及び排気側VTC12に供給する作動油圧を高めるためのものである。具体的には、オイル通路7aを流れるオイルの一部をバイパスさせるバイパス通路7cにアシストポンプ8が設けられ、このバイパスさせたオイルを加圧してオイル通路7cに戻す。なお、アシストポンプ8により加圧したオイルがオイル通路7aを逆流しないように、オイル通路7aのバイパス通路7との分岐部7eと合流部7fとの間にはチェック弁7dを介装する。
また、上記アシストポンプ8は電気駆動式に限られるものではなく、オイルポンプ3と同様にエンジンのクランクシャフトにより駆動する機械式のポンプであってもよい。
【0017】
アシストオイルポンプ8の下流側で、オイル通路7aは更に吸気側VTC10用の通路10aと排気側VTC12用の通路12aに分岐する。吸気側VTC10用通路10aには吸気側VTC用オイルコントロールバルブ(以下、吸気側VTC用OCVという)9が介装されており、これにより吸気側VTC10に供給する作動油圧を調整している。排気側VTC12用通路12aにも同様に排気側VTC用オイルコントロールバルブ(以下、排気側VTC用OCVという)11が介装されている。
【0018】
ここで、VTCの応答速度特性について説明する。図2は吸気側VTC10のみを備える場合と、吸気側VTC10及び排気側VTC12を備える場合の応答速度特性を表したものであり、縦軸はVTCの応答速度、横軸は油圧、実線Aは吸気側VTC10のみを備える場合の応答速度、実線Bは吸気側VTC10と排気側VTC12の両方を備える場合の応答速度を表す。なお、吸気側VTC10と排気側VTC12の両方を備える場合の油圧は、オイル通路10aとオイル通路12aとに分岐する部分より上流側のオイル通路の油圧である。また、図中の「応答速度下限」は、所望のエンジン性能を満足するために必要なバルブタイミングを切替える速度(変換速度)であり、これはエンジンの仕様に応じて異なる。
【0019】
図に示すように、吸気側VTC10のみを備える場合は、油圧の上昇にともなって応答速度も高くなり、油圧P2で所望のバルブタイミング変換速度を満足する応答速度の下限値である応答速度下限V1に達し、それ以降は油圧の上昇に対する応答速度の上昇割合が小さくなる。一方、吸気側VTC10と排気側VTC12の両方を備える場合は、油圧P1で応答速度下限V1に達した後、同様に油圧の上昇に対する応答速度の上昇率が小さくなる。このとき、油圧P1>油圧P2の関係が成立する。すなわち、吸気側VTC10及び排気側VTC12を備える場合は、吸気側VTC10のみを備える場合に比べて、応答速度下限以上の応答速度を得るためには高い油圧が必要となる。
【0020】
ところで、オイルポンプ3の吐出油圧はエンジンの回転数や油温によって変化する。図3はエンジン回転数と油圧との関係を表したものであり、縦軸が油圧、横軸がエンジン回転数、実線Cが常温時の油圧特性、実線Dが高油温時の油圧特性を表す。なお、ここでの油圧はオイルポンプ3の吐出油圧であり、アシストポンプ8を駆動していない状態である。また、図3における「高油温」は、気温等の雰囲気条件や運転条件等を考慮したうえで、運転中に達し得る上限温度付近の温度とする。
【0021】
図に示すように、常温時及び高油温時のいずれの場合も、エンジン回転数が低い領域ほど油圧は低い。また、高油温時の方が常温時よりも全領域に渡って油圧が低い。これは、温度が高くなるほど粘度が低下するというオイルの特性によるものである。また、高油温時に吸気側VTC10のみの場合のVTC応答速度下限を満足する油圧P2となるときのエンジン回転数をN1、吸気側VTC10及び排気側VTC12を備える場合のVTC応答速度下限を満足する油圧P1となるときのエンジン回転数をN2とする。
【0022】
なお、図2の実線A及び図3の実線Cは、上述したように吸気側VTC10のみの場合について示したものであるが、排気側VTC12のみの場合も同様の特性となる。
【0023】
次にアシストポンプ8を駆動した場合について図4を参照して説明する。図4は図3と同様にエンジン回転数と油圧との関係を表した図であり、実線Eはアシストポンプ8を駆動した場合の油圧特性を表す。図に示すように、アシストポンプ8を駆動すると、エンジン回転数N1よりも低い回転数N3でVTC応答速度下限を満足する油圧P1に達する。
【0024】
すなわち、アシストポンプ8を備えることにより、オイルポンプ3のみの場合には吸気側VTC10のみであれば応答速度下限以上で作動させることが可能なエンジン回転数よりも低いエンジン回転数から、吸気側VTC10及び排気側VTC12を応答速度下限以上で作動させることができる。
【0025】
なお、エンジン回転数N3以上ではN3以下に比べてエンジン回転数の上昇に対する油圧の上昇率が小さくなっているが、これは、アシストポンプ8の容量が限界に達したためである。すなわち、アシストポンプ8はオイルポンプ3に比べて低容量であり、限界に達した以降の供給油圧の特性は、オイルポンプ3の特性への依存度が大きくなるからである。
【0026】
上記のように、アシストポンプ8を用いることによって、より低回転数から吸気側VTC10及び排気側VTC12を作動させることが可能となるので、吸気側VTC10及び排気側VTC12の制御用の作動マップも、エンジン回転数N3以上で作動可能であるということを前提として作成することとなる。
【0027】
ところが、上記の作動マップを用いると、例えば、アシストポンプ8が経年劣化等により設計通りの吐出圧を確保できなくなり、エンジン回転数がN1〜N2の領域であるにもかかわらず油圧がP1に達していない場合、すなわち吸気側VTC10のみであれば応答速度下限以上で作動させることはできても、吸気側VTC10及び排気側VTC12の両方を応答速度下限以上で作動させることはできない場合にも、吸気側VTC10及び排気側VTC12の両方をさせることとなる。したがって、吸気側VTC10、排気側VTC12ともに応答速度下限値以下で作動したり、目標とするバルブタイミングまで変換することができなくなるおそれがあり、エンジンの性能が大幅に悪化することとなる。
【0028】
そこで、アシストポンプ8が性能低下して設計通りの吐出圧を確保できない場合には、以下のように制御する。
【0029】
図5はアシストポンプ8が性能低下した場合の制御フローチャートである。
【0030】
ステップS100でアシストポンプ8の性能が低下しているか否かの判定を行う(性能低下判定手段)。
【0031】
判定方法としては、図9に示すように、アシストポンプ8の下流に油圧検出手段としての油圧センサ13を設けて油圧を直接検出し、予め設定した油圧に達していない場合に性能低下していると判定する。なお、油圧センサ13を設ける方法の他に、吸気側VTC10及び排気側VTC12の変換速度もしくは変換に要する時間に基づいて判定することもできる。具体的には、アシストポンプ8の吐出圧が正常な場合の変換速度もしくは変換に要する時間を予め測定しておき、運転中に前記変換速度もしくは変換に要する時間を検出して、この検出値と正常な場合の値とを比較することにより判定する。
【0032】
なお、変換速度とは、可変動弁機構が目標とするバルブタイミングに変化するまでの速度をいい、例えば前述した外部回転体の回動量と時間をモニタしておき、目標とするバルブタイミングにするために必要な回動量と、回動するのに要した時間から算出することができる。
【0033】
また、アシストポンプ8の断線の有無を診断し、断線している場合には性能低下していると判定することもできる。
【0034】
上記の判定の結果、アシストポンプ8が正常である場合にはそのまま処理を終了する。一方、性能低下していると判定した場合は、ステップS101に進み排気側VTC12への給油を停止する(停止制御手段)。給油を停止する方法としては、例えば図10の概略構成図に示すように、排気側VTC用OCV11の上流側のオイル通路に給油停止用バルブ14を設け、これを開閉する。なお、排気側VTC用OCV11を中立位置、すなわち、バルブタイミングが進角側、遅角側のいずれにも変化しない位置に制御することによって排気側VTC12の作動を停止しても、排気側VTC12への給油を停止したのと同様の効果を得ることができる。
【0035】
これにより、たとえアシストポンプ8の吐出圧がゼロであっても、エンジン回転数がN1以上であれば、吸気側VTC10を正常に作動させることができる。すなわち、吸気側VTC10と排気側VTC12とを備える場合は、吸気側VTC10は油圧がP1以上でなければ正常に作動しないところを、排気側VTC12を作動させないことにより、油圧P2以上であれば正常に作動させることが可能となる。これにより、吸気側VTC10を正常に作動させることが可能な領域を「エンジン回転数がN2以上」から「エンジン回転数がN1以上」にまで拡大することができ、アシストポンプ8の性能低下によるエンジン性能の悪化を抑制することができる。
【0036】
なお、油圧が低くなる高油温時であっても油圧P1を確保できるエンジン回転数をN1としたので、高油温時に比べて油圧が高くなる常温・低油温の場合にも当然、エンジン回転数N1以上であれば油圧P1以上を確保することができる。
【0037】
また、上記ステップS101で吸気側VTC10への供給を停止して、排気側VTC12のみを作動させるようにしても同様の効果が得られる。
【0038】
第2実施形態について説明する。
【0039】
本実施形態は、システムの構成等は基本的に第1実施形態と同様であるが、アシストポンプ8の性能が低下した際の制御が異なる。
【0040】
以下、アシストポンプ8の性能が低下した際の制御について、図6の制御フローチャートを参照して説明する。
【0041】
ステップS200及びS201は図5のステップS100及びS101と同様なので説明を省略する。
【0042】
ステップS201で排気側VTC12への給油を停止した後、ステップS202に進み、吸気側VTC10の作動マップを、排気側VTC12が作動しない場合にエンジン性能の低下代が小さくなるように作成したマップ(第2作動マップ)、すなわち、排気弁の開閉タイミングが固定値であることを前提として吸気弁の開閉タイミングを設定した作動マップに切替る。
【0043】
これにより、アシストポンプ8の性能が低下した場合のエンジンの性能悪化をより抑制することができる。
【0044】
第3実施形態について説明する。
【0045】
本実施形態もシステムの構成等は基本的に第1実施形態と同様で、アシストポンプ8の性能が低下した際の制御のみが異なる。
【0046】
以下、アシストポンプ8の性能が低下した際の制御について、図7の制御フローチャートを参照して説明する。
【0047】
ステップS300は図5のステップS100にアシストポンプ8の性能低下の判定を行う。性能が低下している場合は、ステップS301に進み、エンジンの運転状態を読み込む。ここで読み込む運転状態は、エンジン回転数及びエンジン負荷である。したがって、運転状態検出手段としては、図示しないクランク角センサ、アクセル開度センサ、車速センサ等を用いる。
【0048】
そしてステップS302で、エンジンの運転状態に基づいて吸気側VTC10もしくは排気側VTC12のいずれか一方への給油を停止する。停止するVTC機構は、図8のマップをステップS301で読み込んだ運転状態(エンジン回転数、エンジン負荷)により検索することで決定する。図8は縦軸にエンジン負荷、横軸にエンジン回転数をとったエンジン性能マップであり、運転領域毎に、吸気側VTC10、排気側VTC12のいずれを作動させた方がエンジン性能を高く維持できるかを示したものである。図に示すように、中回転・中負荷領域では排気側VTC12を作動させた方がエンジン性能は高く(この運転領域を排気側VTC作動領域という)、その他の領域では吸気側VTC10を作動させた方がエンジン性能は高い(この領域を吸気側VTC作動領域という)。
【0049】
ステップS303では、作動させる方のVTC機構の作動マップを、吸気側VTC10及び排気側VTC12の両方を作動させる通常運転時用の第1作動マップから、他方のVTC機構が作動しない場合にエンジン性能の低下代が小さくなるように作成した第2作動マップに切替る。
【0050】
ステップS304では、エンジンの運転状態を再度読み込み、ステップS302及びS303の制御によってエンジンの運転状態が変化したか否かを判定する。ここでは、ステップS301で読み込んだ運転状態が吸気側VTC作動領域であったのに、ステップS304では排気側VTC作動領域へ変化した場合、もしくはその逆の場合に、運転状態が変化したと判定する。
【0051】
判定の結果、運転状態が変化した場合には、ステップS302に戻る。
【0052】
これらの制御により、アシストポンプ8の性能が低下した場合の、エンジンの性能悪化をより抑制することができる。
【0053】
なお、上記各実施形態では、可変動弁システムとして吸気側VTC10及び排気側VTC12を備える場合について説明したが、これに限られるわけではない。例えば、1本のカムシャフトに互いに異なるプロフィールを有する複数のカムを備え、運転状態に応じて吸排気弁の開閉動作に携わるカムを選択的に切替え、これにより吸排気のタイミングあるいは吸排気量を制御する可変動弁機構(特開昭63−167016号公報参照)を、吸気弁及び排気弁に備えた場合にも適用可能である。
【0054】
また、上述したような一つの油圧駆動部を備える可変動弁機構を吸気側及び排気側に備える可変動弁システムの他にも、一つの可変動弁機構に二つの油圧駆動部を備える可変動弁システムを、吸気側又は排気側のいずれか一方に備える場合にも適用可能である。この可変動弁システムの一例としては、図11に示すようなリフト・作動角及びリフトの中心角の位相を可変に制御可能な可変動弁機構がある。
【0055】
図11の可変動弁装置は特開2003−206765号公報に記載されているように公知であるので、構成を簡単に説明する。
【0056】
この可変動弁装置は、吸気弁のリフト・作動角を変化させるリフト・作動角可変機構15と、そのリフトの中心角の位相(図示せぬクランクシャフトに対する位相)を進角もしくは遅角させる位相可変機構30(第2の可変 動弁機構)と、を備えている。位相可変機構30は前述した吸気側VTC10及び排気側VTC12と同様の機構である。
【0057】
リフト・作動角可変機構15は、シリンダヘッド(図示せず)に摺動自在に設けられた吸気弁25と、シリンダヘッド上部のカムブラケット(図示せず)に回転自在に支持された駆動軸16と、この駆動軸16に、圧入等により固定された偏心カム17と、上記駆動軸16の上方位置に同じカムブラケットによって回転自在に支持されるとともに駆動軸16と平行に配置された制御軸26と、この制御軸26の偏心カム部28に揺動自在に支持された中間部材としてのロッカアーム20と、各吸気弁25の上端部に配置されたタペット24に当接する揺動カム23と、を備えている。上記偏心カム17とロッカアーム20とはリンクアーム18によって連係されており、ロッカアーム20と揺動カム23とは、リンク部材22によって連係されている。
【0058】
上記駆動軸16は、タイミングチェーンないしはタイミングベルトを介して機関のクランクシャフトによって駆動されるものである。
【0059】
上記偏心カム17は、円形外周面を有し、該外周面の中心が駆動軸16の軸心から所定量だけオフセットしているとともに、この外周面に、リンクアーム18の環状部が回転可能に嵌合している。
【0060】
上記ロッカアーム20は、略中央部が上記偏心カム部28によって揺動可能に支持されており、その一端部に、連結ピン19を介して上記リンクアーム18のアーム部が連係しているとともに、他端部に、連結ピン21を介して上記リンク部材22の上端部が連係している。上記偏心カム部28は、制御軸26の軸心から偏心しており、従って、制御軸26の角度位置に応じてロッカアーム20の揺動中心は変化する。
【0061】
上記制御軸26は、図11に示すように、一端部に設けられたリフト・作動角制御用アクチュエータ27によって所定角度範囲内で回転するように構成されている。このリフト・作動角制御用アクチュエータ27は、特開2003−206765号公報においては、ウォームギア29を介して制御軸26を駆動するサーボモータ等とされているが、ここでは油圧で駆動するアクチュエータを用いることとする。
【0062】
上記構成のように、リフト・作動角制御用アクチュエータ27及び位相可変機構30の2つの油圧装置を備える可変動弁装置を吸気側又は排気側のいずれか一方に備え、第1実施形態の吸気側VTC10に代えてリフト・作動角制御用アクチュエータ27、排気側VTC12に代えて位相可変機構30として第1実施形態と同様の制御を実行すれば、アシストポンプ8の性能が低下した際にも、エンジン性能の低下を抑制することができる。
【0063】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1実施形態の給油経路の概略図である。
【図2】VTC応答速度と油圧との関係を表す図である。
【図3】油圧とエンジン回転数との関係を表す図である。
【図4】アシストポンプの有無による油圧特性の違いを表す図である。
【図5】第1実施形態の制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図6】第2実施形態の制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図7】第3実施形態の制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図8】油圧供給の停止を決定する際に用いる作動領域マップである。
【図9】アシストポンプの性能低下を検出するための構成の一例を表す図である。
【図10】可変動弁機構への給油を停止するための構成の一例を表す図である。
【図11】可変動弁機構のその他の例を表す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 オイルパン
2 オイルストレーナ
3 オイルポンプ
4 レギュレータバルブ
5 リリーフバルブ
6 オイルフィルター
7 メインギャラリー
8 アシストポンプ
9 吸気側VTC用オイルコントロールバルブ(吸気側VTC用OCV)
10 吸気側バルブタイミングコントロール機構(吸気側VTC)
11 排気側VTC用オイルコントロールバルブ(排気側VTC用OCV)
12 排気側バルブタイミングコントロール機構(排気側VTC)
13 油圧センサ
14 給油停止用バルブ
15 リフト・作動角可変機構
27 リフト・作動角制御用アクチュエータ
30 位相可変機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変動弁システムを駆動する少なくとも二以上の油圧駆動部と、
前記油圧駆動部を含むエンジンの油圧機器及び潤滑部にオイルを供給するオイルポンプと、
前記オイルポンプから前記油圧駆動部へ供給する作動油圧を高めるために前記オイルポンプの他に設けたアシストポンプと、
前記アシストポンプの性能低下を判定する性能低下判定手段と、
前記性能低下判定手段により前記アシストポンプの性能低下を判定した場合には、少なくとも一つの前記油圧駆動部への作動油の供給を停止する停止制御手段と、
を備えることを特徴とする可変動弁装置。
【請求項2】
前記可変動弁システムは吸気弁及び排気弁に備えた可変動弁機構からなり、
前記停止制御手段は、前記性能低下判定手段により前記アシストポンプの性能低下を判定した場合に、いずれか一方の前記可変動弁機構の油圧駆動部への作動油の供給を停止することを特徴とする請求項1に記載の可変動弁装置。
【請求項3】
エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段を備え、
前記停止制御手段は、前記運転状態検出手段の検出値に基づいて作動油の供給を停止する前記油圧駆動部を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の可変動弁装置。
【請求項4】
前記可変動弁システムは、その制御特性を設定した通常運転時用の第1作動マップ及びいずれか一つの油圧駆動部への作動油の供給を停止した際にエンジンの性能低下を抑制するように作動させるための第2作動マップを備え、前記アシストポンプの性能低下を判定して少なくとも一つの油圧駆動部への作動油の供給を停止した際に、前記第2作動マップに切替ることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の可変動弁装置。
【請求項5】
前記性能低下判定手段は、前記アシストポンプ下流側に設けた油圧検出手段の検出値が予め設定した規定値以下となったときに性能が低下したと判断することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の可変動弁装置。
【請求項6】
前記性能低下判定手段は、前記可変動弁機構の変換速度が予め設定した規定値以下となった場合に性能が低下したと判断することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の可変動弁装置。
【請求項7】
前記性能低下判定手段は、前記可変動弁機構の変換時間が予め設定した規定値以上となった場合に性能が低下したと判断することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の可変動弁装置。
【請求項8】
前記アシストポンプは電気駆動式のポンプであって、
前記性能低下判定手段は、前記アシストポンプの駆動に関わる配線の断線を判定した場合に前記アシストポンプの性能が低下したと判断することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の可変動弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−2433(P2008−2433A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175080(P2006−175080)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】