説明

含フッ素化合物、含フッ素高分子化合物、レジスト組成物、トップコート組成物及びパターン形成方法

【課題】300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を用いてパターンを形成するレジスト組成物、および液浸リソグラフィーにおけるトップコート組成物に使用する樹脂であって、撥水性、特に後退接触角の大きい樹脂を提供する。
【解決手段】 下記一般式(2)で示される繰り返し単位(a)を含む質量平均分子量1,000〜1,000,000の含フッ素高分子化合物。
【化】


(式中、R1は、重合性二重結合含有基を表し、
2は、フッ素原子または含フッ素アルキル基を表し、
8は、置換もしくは非置換のアルキル基などを表し、
1は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基などを表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素化合物およびそれから誘導される含フッ素高分子化合物およびそれを用いたレジスト組成物およびトップコート組成物並びにそれらを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピューターを始めとするデジタル機器の発展により、取り扱う演算データや二次元、三次元画像データの処理量が膨大になってきており、これらの情報を素早く処理するために大容量で高速なメモリと高性能なマイクロプロセッサが必要となっている。また、インターネットなどネットワークの発展に伴って、さらにブロードバンド化が加速し、デジタル機器に求められる処理能力は益々高まっていくものと予測されている。
【0003】
この要求を達成するために、半導体デバイスに代表される各種デバイス機器には、より一層の高密度、高集積化が求められている。なかでも、微細加工を可能とするフォトリソグラフィー技術に対する要求は年々厳しくなっており、1Gビット以上の集積度を持つDRAMの製造には、最小線幅0.13ミクロン以下の加工技術が必要となり、それに対応してArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが利用されている。さらに微細なパターンを加工する目的で、極端紫外線(EUV)を用いたフォトリソグラフィーの開発も進められている。
【0004】
これらの波長領域においては、従来レジスト組成物に用いられてきたノボラックやポリビニルフェノール系の樹脂は光の吸収が大きすぎて用いることができない。そこで、アクリル系樹脂(例えば、特許文献1)やシクロオレフィン系樹脂(例えば、特許文献2)が検討されてきた。
【0005】
デバイス構造の微細化に伴って、光源の変更だけでなく、露光装置の改良も検討されている。例えば、ステッパー(縮小投影型露光装置)は縮小投影レンズの性能向上、光学系設計の改良によって解像度も大きく向上してきている。ステッパーに使用されるレンズの性能は、NA(開口数)で表されるが、空気中では0.9程度の値が物理的な限界とされており、現在すでに達成されている。そこで、レンズとウェハーの間の空間を空気よりも屈折率の高い媒体で満たすことによってNAを1.0以上に引き上げる試みがなされており、特に媒体として純水(以後、単に水という場合もある)を使った液浸方式による露光技術が注目されてきている(非特許文献1)。
【0006】
液浸リソグラフィーにおいては、レジスト膜が媒体(例えば水)と接触することから様々な問題点が指摘されてきた。特に、露光によって膜中に発生した酸や、クエンチャーとして加えたアミン化合物が水に溶解することによるパターン形状の変化、膨潤によるパターン倒れなどが問題となる。
そこで、レジスト膜と水とを分離すべく、レジスト膜の撥水性を向上させることが有効であるとの報告がなされている。また、一方で、レジスト上に撥水性を有するトップコート層を設けることが有効であるとの報告もなされている(非特許文献2)。
【0007】
撥水性の向上のためには、フッ素を含有するレジスト組成物が有効であり、これまでさまざまな含フッ素レジスト用の含フッ素高分子化合物が開発されてきた。当出願人は、重合性二重結合含有基を持つジフルオロ酢酸(特許文献3)およびエステル部位としてt−ブチル基やメトキシメチル基などの酸不安定性保護基とエチル基を有するジフルオロ酢酸エステル(特許文献4)を開示しているが、これらの特許文献においてはネガ型またはポジ型のレジストとしての使用を目的とするため、酸不安定性保護基を有しないエステルの重合体については開示していない。また、これらの重合性化合物に類似する非重合性の化合物として、α位にフッ素原子を持つカルボン酸化合物について、2−フルオロ−フェニル酢酸およびそのエステル(特許文献5)、エチル 2,2ジフルオロ−3−ヒドロキシ−3−フェニルプロピオン酸(非特許文献3)が知られている。
一方で、水とレジスト膜とを隔てるトップコートには、良好な現像液溶解性、純水に対する耐性、レジスト膜と水との分離性、下層のレジスト膜を侵さない等の性能が要求される。かかる要求を満たすトップコート組成物として、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基を2個以上含むユニットを含有した繰返し単位を有する含フッ素重合体を含む組成物が開発され、現像液溶解性に特に優れている旨報告されている(特許文献6)。
一般に、レジスト膜上に設けられて、前記レジスト膜を保護するトップコート組成物においては、良好な現像液溶解性、純水に対する耐性、レジスト膜と水との分離性、下層のレジスト膜を侵さない等の性能が要求される。
現像液溶解性の低い場合は、トップコート膜の除去が不充分となりフォトレジスト性能が劣化して断面形状が矩形のパターンが得られず好ましくない。逆に現像液溶解性が大きすぎる場合は、下層のレジスト層の膜べりを誘発する可能性があり、適度な現像液溶解性を示すものが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−161313号公報
【特許文献2】特開2000−89463号公報
【特許文献3】特開2009−29802号公報
【特許文献4】特開2009−19199号公報
【特許文献5】特開平1−242551号公報
【特許文献6】特開2005−316352号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Proceedings of SPIE Vol.4691(プロシーディングスオブエスピーアイイ((発行国)アメリカ)2002年、第4691巻、459−465頁)。
【非特許文献2】2nd Immersion Work Shop, July 11, 2003, Resist and Cover Material Investigation for Immersion Lithography
【非特許文献3】Tetrahedron Letters,Vol.25,No.22,pp 2301-2302,1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の事情のもとで、Krエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光またはそれより高エネルギーの光線または電子線に対して透明性が高く、高解像性を有するとともに、かつ断面形状が矩形のレジストパターンを与える化学増幅型のパターン形成方法を提供することを目的とし、さらに、露光時に媒体を用いる所謂液浸リソグラフィーに耐えるだけの撥水性を有するレジスト膜を形成できるレジスト組成物、または十分な撥水性を有しないレジスト膜の表面に被覆して液浸リソグラフィーに適する多層膜を形成することのできるトップコート組成物とそれを調製することのできる含フッ素高分子化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、レジスト膜の撥水性を向上させるためにベース樹脂(レジスト機能を有する樹脂をいう。)にフッ素原子を導入することを検討したところ、ベース樹脂の繰り返し単位にフッ素原子を導入することでは必ずしも十分な撥水性を発現させることはできず、とりわけ接触後退角を高めることができなかったが、エステル基のα位にフッ素原子を導入することで撥水性が著しく向上し、液浸リソグラフィーによるパターン形成で意図したとおりのパターン形成が可能であることを見出した。また、その繰り返し単位を有しレジスト機能を有しない含フッ素高分子化合物からなるトップコート膜は高い撥水性を有し、従来使用されているレジスト膜の表面に被膜として用いると液浸リソグラフィーによるパターン形成で意図したとおりのパターンが形成できることを見出した。さらに、このような繰り返し単位を含フッ素化合物に導入するのに適切な含フッ素化合物である含フッ素不飽和カルボン酸エステルを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本明細書において、「アルキル基」は直鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含み、環状のアルキル基は、「脂環式基」または「脂環式炭化水素基」に含まれる。
「低級アルキル基」などの「低級」は炭素数1〜4をいう。ただし、環状のアルキル基については、「低級」は炭素数3〜10の環状構造を有するものをいい、置換基として低級アルキル基を有することがある。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1-(トリフルオロメチル)エチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基を挙げることができる。
異性体を有する化合物を例示する際には、別途明示しない場合は代表的な名称、構造式でそれぞれすべての異性体を含むものとする。ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素をいう。
本明細書において、「レジスト組成物」は溶媒を含まないレジスト機能を有する組成物をいい、溶媒を含むものを「レジスト組成物溶液」または「レジスト溶液」という。また、「トップコート組成物」は溶媒を含まない組成物をいい、溶媒を含むものを「トップコート組成物溶液」または「トップコート溶液」という。
【0013】
本発明を次を示す。
【0014】
[発明1]
下記一般式(2)で示される繰り返し単位(a)を含む質量平均分子量1,000〜1,000,000の含フッ素高分子化合物。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R1は、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかを表し、
【0017】
【化2】

【0018】
2は、フッ素原子または含フッ素アルキル基を表し、
8は、一般式(4)
【0019】
【化3】

(式中、R6、R7は互いに独立に水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基を表し、一般式(4)の式中の炭素原子、R6、R7が互いに結合して脂環式炭化水素基を形成することができる。)で表される置換もしくは非置換のアルキル基、またはアリール基であり、R8に含まれる任意の個数の水素原子は、ハロゲン、水酸基、アルキル基もしくは含フッ素アルキル基、アリール基で置換されていてもよく、R8に含まれるメチレン基(CH2)(一般式(4)中のCで表示された炭素原子を含むメチレン基を除く。)は、カルボニル基(C=O)、エーテル基(O)、イミド基(NH)、チオエーテル基(S)、スルフィニル基(SO)、スルホニル基(SO2)で置換されていてもよく、
1は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、カルボニル基、エーテル基、エステル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル基、アミド結合、スルフォンアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合からなる群から選択される単独または2以上の原子団の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基を表し、連結基は同一の原子団を複数有することができ、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各原子は相互に結合して環を形成してもよい。)
[発明2]
2がフッ素原子である[発明1]に記載の含フッ素高分子化合物。
【0020】
[発明3]
含フッ素高分子化合物が、無水マレイン酸、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸エステルであって酸不安定性保護基またはアルコール性ヒドロキシル基の何れをも有しない共重合可能な単量体の重合性二重結合が開裂して形成した繰り返し単位(c)をさらに含む[発明1]または[発明2]に記載の含フッ素高分子化合物。
【0021】
[発明4]
一般式(5)で表される繰り返し単位(b)をさらに含む[発明1〜3]のいずれかに記載の含フッ素高分子化合物。
【0022】
【化4】

(式中、R9は、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかを表し、
【0023】
【化5】

10は、酸不安定性保護基を表し、
3は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、カルボニル基、エーテル基、エステル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル基、アミド結合、スルフォンアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合からなる群から選択される単独または2以上の原子団の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基を表し、連結基は同一の原子団を複数有することができ、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各原子は相互に結合して環を形成してもよい。)
[発明5]
[発明4]に記載の含フッ素高分子化合物と光酸発生剤と溶剤を少なくとも含むポジ型のレジスト組成物溶液。
【0024】
[発明6]
[発明5]に記載のレジスト組成物溶液を基板上に塗布する工程と、次に基板を熱処理する工程と、300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を用いてフォトマスクを通して露光する工程と、露光されたレジストの塗布膜に対して熱処理を施す工程と、現像処理を施す工程を少なくとも含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0025】
[発明7]
[発明1]または[発明2]に記載の含フッ素高分子化合物を少なくとも含んでなるトップコート組成物。
【0026】
[発明8]
[発明1]または[発明2]に記載の含フッ素高分子化合物と溶剤を少なくとも含んでなるトップコート組成物溶液。
【0027】
[発明9]
溶剤が炭素数5〜20の環状または鎖状の炭化水素、炭素数1〜20のアルコール、部分的にフッ素で置換された環状または鎖状の炭素数5〜20の炭化水素よりなる群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合溶媒である[発明8]に記載のトップコート組成物溶液。
【0028】
[発明10]
溶剤が炭素数5〜20の炭化水素を50〜99.9質量%、炭素数1〜20のアルコールを0.1〜50質量%で混合した混合溶媒である[発明8]または[発明9]のトップコート組成物溶液。
【0029】
[発明11]
溶剤または混合溶媒の沸点が70℃〜170℃である[発明8〜10]のいずれか1項に記載のトップコート組成物溶液。
【0030】
[発明12]
液浸リソグラフィーに用いることを特徴とする[発明8〜11]のいずれか1項に記載のトップコート組成物溶液。
【0031】
[発明13]
ポジ型のレジスト組成物溶液を基板上に塗布する工程と、次に基板を熱処理してレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜の表面に[発明7]に記載のトップコート組成物からなるトップコート膜を形成してレジスト膜とトップコート膜からなる多層膜とする工程と、その多層膜に300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を用いてフォトマスクを通して露光する工程と、露光された多層膜に対して熱処理を施す工程と、現像処理を施す工程を少なくとも含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0032】
[発明14]
現像処理を施す工程が、トップコート膜の剥離とレジスト膜の現像処理をアルカリ現像液により実質的に同時に行うことからなる現像処理である[発明13]に記載のパターン形成方法
[発明15]
下記一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸エステル。
【0033】
【化6】

(式中、R0は、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかを表し、
【0034】
【化7】

2は、フッ素原子または含フッ素アルキル基を表し、
3は、一般式(4)
【0035】
【化8】

(式中、R6、R7は互いに独立に水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基を表し、一般式(4)の式中の炭素原子、R6、R7が互いに結合して脂環式炭化水素基を形成することができる。)で表される置換もしくは非置換のアルキル基、またはアリール基であり、R8に含まれる任意の個数の水素原子は、ハロゲン、水酸基、アルキル基もしくは含フッ素アルキル基、アリール基で置換されていてもよく、R8に含まれるメチレン基(CH2)(一般式(4)中のCで表示された炭素原子を含むメチレン基を除く。)は、カルボニル基(C=O)、エーテル基(O)、イミド基(NH)、チオエーテル基(S)、スルフィニル基(SO)、スルホニル基(SO2)で置換されていてもよく、
1は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、カルボニル基、エーテル基、エステル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル基、アミド結合、スルフォンアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合からなる群から選択される単独または2以上の原子団の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基を表し、連結基は同一の原子団を複数有することができ、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各原子は相互に結合して環を形成してもよい。)
[発明16]
2がフッ素原子である[発明15]に記載の含フッ素不飽和カルボン酸エステル。
【発明の効果】
【0036】
本発明のレジスト組成物溶液から形成したレジスト膜は、300nm以下の波長の高エネルギー線での液浸リソグラフィーにおいて、表面の撥水性、とりわけ後退接触角が大きくステッパーのスループットを高めることができ、かつ、断面のきれいな矩形パターンが形成できるという効果を奏する。また、本発明のトップコート組成物溶液は下層に形成されたレジスト膜を溶解することがないため均一なトップコート膜をレジスト膜の表面に形成でき、トップコートを形成したレジスト膜は、300nm以下の波長の高エネルギー線での液浸リソグラフィーにおいて、表面の撥水性、とりわけ後退接触角が大きくステッパーのスループットを高めることができ、レジスト膜から液浸媒体への成分浸出がなく、現像液への溶解性が適度であるため、断面のきれいな矩形パターンが形成できるという効果を奏する。さらに、本発明の含フッ素不飽和カルボン酸エステルは、本発明のレジスト組成物またはトップコート組成物に使用する含フッ素高分子化合物を調製するために有用である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を構成する各要素について説明する。本発明は以下の実施の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良が加えられたものも本発明の範囲に入ることはいうまでもない。
【0038】
本発明の一般式(2)で表される繰り返し単位(a)を含む含フッ素高分子化合物には、一般式(1)で表される含フッ素化合物の有する重合性二重結合が開裂して得られる繰り返し単位(a)のみからなるものおよび繰り返し単位(a)と他の単量体の重合性二重結合が開裂して得られる繰り返し単位とを含むものとがある。
【0039】
<含フッ素不飽和カルボン酸エステル>
一般式(1)で表される含フッ素不飽和カルボン酸エステル
【0040】
【化9】

において、R2は、フッ素原子または含フッ素アルキル基である。このような含フッ素アルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜12のものであり、炭素数1〜3のものが好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などを挙げることができる。R2は、フッ素原子またはトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0041】
0は重合性二重結合を有する基であればよいが、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかであるのが好ましい。
【0042】
【化10】

これらのうち、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、トリフルオロメタクリロイルオキシ基、アリルオキシ基であるのがより好ましい。
【0043】
連結基W1は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、エーテル基、カルボニル基、エステル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル基、アミド結合、スルフォンアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合よりなる群から選択される単独または2以上の原子団の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基であり、連結基W1は同一の前記の基を複数含んでもよく、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各原子は相互に結合して環を形成してもよい。
【0044】
連結基W1の主骨格を構成する置換メチレン基は、次の一般式(3)で表される。
【0045】
−CR45− (3)
ここで、置換メチレン基のR4、R5 で表される一価の基は、特に限定されないが、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(水酸基)、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の脂環式炭化水素基、アルコキシル基、置換もしくは非置換のアリール基および置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基から選ばれた炭素数1〜30の一価の基であって、これらの一価の基はフッ素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、炭素―炭素二重結合を有することができる。R4、R5 は同一でも異なっていてもよい。また、R4、R5 は、分子内の原子とともに組み合わされて環を形成してもよく、この環は脂環式炭化水素構造であることが好ましい。R4、R5 で表される一価の有機基として次のものが挙げられる。
【0046】
4、R5における非環式のアルキル基としては、炭素数1〜30のものであり、炭素数1〜12のものが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert-ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等を挙げることができ、低級アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などが特に好ましいものとして挙げることができる。
【0047】
4、R5における非環式の置換アルキル基としては、アルキル基が有する水素原子の1個または2個以上を炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数1〜4個のアルコキシル基、ハロゲン原子、アシル基、アシロキシ基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ニトロ基等により置換されたものが挙げられる。脂環式炭化水素基を置換基をするアルキル基としては、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、ノルボルニルメチル基、アダマンチルメチル基などの置換アルキル基およびこれらの環状炭素の水素原子がメチル基、エチル基、ヒドロキシル基で置換した置換アルキル基が例示できる。フッ素原子で置換されたフルオロアルキル基としては、具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、n−ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基などの低級フルオロアルキル基を好ましく挙げることができる。
【0048】
4、R5における脂環式炭化水素基あるいはそれらが結合する炭素原子を含めて形成する脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数3以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は3〜30個が好ましく、特に炭素数3〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0049】
単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜7のものがさらに好ましい。例えば、好ましいものとしてシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、4−tert-ブチルシクロヘキシル基を挙げることができる。また、多環式基としては、環炭素数7〜15のアダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基等を挙げることができる。脂環式炭化水素基はスピロ環であってもよく、炭素数3〜6のスピロ環が好ましい。好ましくは、アダマンチル基、デカリン残基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、トリシクロデカニル基などである。これらの有機基の環炭素または連結基の水素原子の1個または2個以上がそれぞれ独立に前記の炭素数1〜30のアルキル基もしくは置換アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基またはそれらに含まれる1個または2個以上の水素原子がフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基で置換した単環式基を挙げることができる。
【0050】
ここで、炭素数1〜30のアルキル基としては、低級アルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基よりなる群から選択されたアルキル基である。また、置換アルキル基の置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシル基を挙げることができる。アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基を挙げることができる。
【0051】
4、R5におけるアルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。
【0052】
4、R5における置換もしくは非置換のアリール基としては、炭素数1〜30のものである。単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜6のものがさらに好ましい。例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、メシチル基、o−クメニル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、o−フルオロフェニル基、m−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、2,3−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,4−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,5−ビストリフルオロメチルフェニル基、2,6−ビストリフルオロメチルフェニル基、3,4−ビストリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビストリフルオロメチルフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−ヨードフェニル基等を挙げることができる。
【0053】
置換もしくは非置換の炭素数1〜30の縮合多環式芳香族基としては、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランセン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、オヴァレン等から一個の水素原子が除いて得られる一価の有機基を挙げることができ、これらの1個または2個以上の水素原子がフッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基または含フッ素アルキル基で置換したものを好ましいものとして挙げることができる。
【0054】
環原子数3〜25の単環式または多環式のヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、ピラニル基、ピロリル基、チアントレニル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロチオフラニル基、3−テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド基等およびこれらの環を構成する原子の1個または2個以上の水素原子がアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基で置換したヘテロ環基を挙げることができる。また、単環式または多環式のエーテル環、ラクトン環を有するものが好ましく、次に例示する。
【0055】
【化11】

前記式中、Ra 、Rbは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基を表す。nは、2〜4の整数を表す。
【0056】
連結基W1の主骨格を構成する二価の脂環式炭化水素基としては、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数3以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は3〜30個が好ましく、特に炭素数3〜25個が好ましい。これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0057】
単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜7のものがさらに好ましい。例えば、好ましいものとしてシクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロデカニレン基、シクロドデカニレン基、4−tert-ブチルシクロヘキシレン基を挙げることができる。また、多環式基としては、環炭素数7〜15のアダマンチレン基、ノルアダマンチレン基、デカリンの二価の残基、トリシクロデカニレン基、テトラシクロドデカニレン基、ノルボルニレン基、セドロールの二価の残基を挙げることができる。脂環式炭化水素基はスピロ環であってもよく、その際、炭素数3〜6のスピロ環が好ましい。また、これらの有機基の環炭素または連結基の水素原子の1個または2個以上がそれぞれ独立に、R4またはR5について説明した炭素数1〜30のアルキル基もしくは置換アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基またはそれらの1個または2個以上の水素原子がフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基で置換したものを挙げることができる。
【0058】
ここで、炭素数1〜30のアルキル基としては低級アルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基よりなる群から選択されたアルキル基である。置換アルキル基の置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシル基を挙げることができる。アルコキシル基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜4個のものを挙げることができる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基を挙げることができる。
【0059】
連結基W1の主骨格を構成する二価の芳香族炭化水素基としては、炭素数1〜30のものである。単環式基としては環炭素数3〜12のものが好ましく、環炭素数3〜6のものがさらに好ましい。例えば、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、トルエン、フェノール、アニソール、メシチレン、クメン、2,3−キシリレン、2,4−キシレン、2,5−キシレン、2,6−キシレン、3,4−キシレン、3,5−キシレン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、o−ビストリフルオロメチルベンゼン、m−ビストリフルオロメチルベンゼン、p−ビストリフルオロメチルベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン等から二個の水素原子を除いて得られる二価の基を挙げることができる。
【0060】
連結基W1の主骨格を構成する置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基としては、炭素数1〜30が好ましく、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、インダセン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランセン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピラントレン、オヴァレン等から二個の水素原子を除いて得られる二価の有機基を挙げることができ、これらの1個または2個以上の水素原子がフッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基または含フッ素アルキル基で置換したものであることができる。
【0061】
連結基W1の主骨格を構成する二価のヘテロ環基としては、環原子数3〜25の単環式または多環式のヘテロ環基であり、例えば、ピリジン、フラン、チエニン、ピラニン、ピロリン、チアントレン、ピラゾン、イソチアゾン、イソオキサゾン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、テトラヒドロピラニン、テトラヒドロフラニン、テトラヒドロチオピラニン、テトラヒドロチオフラン等から二個の水素原子を除いて得られる二価の有機基およびこれらの環を構成する原子の1個または2個以上の水素原子がアルキル基(低級アルキル基が好ましい。)、脂環式炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基で置換したヘテロ環基を挙げることができる。これらのうち、単環式または多環式のエーテル環が好ましく、それらを次に例示する。
【0062】
【化12】

連結基W1としては、前記した通り、上に一般式で説明しまたは具体的に例示した二価の基を組み合わせた二価の基であってもよい。
【0063】
連結基W1としては、前記した一般式(3)で表される置換メチレン基が最も好ましい。一般式(3)で表される置換メチレン基としては、好ましい具体例を次に示す。式中、O、Cをもってそれぞれ置換メチレン基に隣接する酸素原子および炭素原子を表示する。
【0064】
【化13】

【0065】
【化14】

【0066】
【化15】

一般式(1)で表される含フッ素不飽和カルボン酸エステルにおける一価の有機基R3は、含フッ素不飽和カルボン酸エステルおよびそれから誘導される高分子化合物の使用目的により選択される。
本発明においては、一般式(1)で表される含フッ素カルボン酸エステルから誘導される含フッ素高分子化合物から調製されるレジスト膜ならびにトップコート膜の撥水性が極めて重要である。したがって、有機基R3には撥水性を向上させるフッ素含有有機基が好ましい。一方で、高エネルギー線等の直接作用や光酸発生剤の光増幅作用等によってエステル結合が開裂して水溶性を示す「ジフルオロカルボン酸」とするのは、レジスト組成物の感光性を設計するのが困難になるという問題が生じ、また、同様にトップコート組成物として使用する場合に感光性を示すとトップコートが不安定になるので好ましくない。したがって、R3は、光酸発生剤等の酸に対して「安定」であることが好ましい。すなわち、エステルの有機基としては酸に対して不安定な3級エステル等の「酸不安定性保護基」は好ましくなく、1級もしくは2級有機基のエステルが好ましい。
3は、一般式(4)
【0067】
【化16】

で表されるアルキル基、またはアリール基(芳香族炭化水素基)を表す。一般式(4)の式中、R6、R7は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基を表し、式中の炭素原子、R6、R7が互いに結合して脂環式炭化水素基を形成することができる。一般式(4)で表されるアルキル基またはアリール基芳香族炭化水素基(アリール基)であるR3に含まれる任意の個数の水素原子は、ハロゲン、水酸基、アルキル基もしくは含フッ素アルキル基、アリール基で置換されていてもよく、R3に含まれるメチレン基(CH2)(一般式(4)中のCで表示された炭素原子を含むメチレン基を除く。)は、カルボニル基(C=O)、エーテル基(O)、イミド基(NH)、チオエーテル基(S)、スルフィニル基(SO)、スルホニル基(SO2)で置換されていてもよい。ここで、R3はエチル基ではない。
【0068】
6またはR7で表されるアルキル基は炭素数1〜20、好ましくは4〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である。R6またはR7の直鎖状または分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基等を挙げることができる。R6またはR7で表されるアルキル基に含まれる水素原子は、ハロゲン、水酸基、アルキル基もしくは含フッ素アルキル基、アリール基で置換されていてもよく、フッ素原子、アルキル基またはフルオロアルキル基で置換されたものが好ましい。フッ素原子で置換したR6またはR7で表されるアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、2,2−ジフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル等、1H,1H−ペンタフルオロ−1−プロピル基、1H,1H−ヘプタフルオロ−1−ブチル基、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブチル基、1H,1H,5H−オクタフルオロ−1−ペンチル基、1H,1H−ノナフルオロ−1−ペンチル基、1H,1H−パーフルオロ−1−ヘキシル基、1H,1H−パーフルオロ−1−ヘキシル基、1H,1H−パーフルオロ−1−ヘプチル基等を挙げることができる。アルキル基で置換したR6またはR7で表される分岐状のアルキル基としては、例えば、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、1−プロピルペンチル基、1−メチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、1−プロピルヘキシル基、2−プロピルヘキシル基、3−プロピルヘキシル基、1−メチルヘプチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、6−メチルヘプチル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、4−エチルヘプチル基、5−エチルヘプチル基、1−プロピルヘプチル基、2−プロピルヘプチル基、3−プロピルヘプチル基、4−プロピルヘプチル基、1−メチルオクチル基、2−メチルオクチル基、3−メチルオクチル基、4−メチルオクチル基、5−メチルオクチル基、6−メチルオクチル基、7−メチルオクチル基、1−エチルオクチル基、2―エチルオクチル基、3−エチルオクチル基、4−エチルオクチル基、5−エチルオクチル基、6−エチルオクチル基、1−プロピルオクチル基、2−プロピルオクチル基、3−プロピルオクチル基、4−プロピルオクチル基、1−ブチルオクチル基等を挙げることができる。環状のアルキル基で置換したR6またはR7で表されるアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、1−シクロプロピルエチル基、2−シクロプロピルエチル基、1−シクロブチルエチル基、2−シクロブチルエチル基、1−シクロペンチルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、1−シクロヘキシルエチル基、2−シクロヘキシルエチル基、1−シクロヘプチルエチル基、2−シクロヘプチルエチル基、1−シクロオクチルエチル基、2−シクロオクチルエチル基、ボルニルメチル基、ノルボルニルメチル基、2−アダマンチルメチル基、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−5−インデンメチル基等を挙げることができる。アリール基で置換したR6またはR7で表されるアルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−メチルフェニルメチル基、3−メチルフェニルメチル基、4−メチルフェニルメチル基、2、4−ジメチルフェニルメチル基、3,5−ジメチルフェニルメチル基、2−フルオロメチルフェニルメチル基、3−フルオロメチルフェニルメチル基、4−フルオロメチルフェニルメチル基、2,4−ビスフルオロフェニルメチル基、3,5−ビスフルオロフェニルメチル基、2−トリフルオロメチルフェニルメチル基、3−トリフルオロメチルフェニルメチル基、4−トリフルオロメチルフェニルメチル基、2,4−ビスフルオロメチルフェニルメチル基、3,5−ビスフルオロメチルフェニルメチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、パーフルオロ−1−ナフチルメチル基、パーフルオロ−2−ナフチルメチル基等を挙げることができる。
【0069】
6またはR7の環状のアルキル基は、炭素数3〜20の環状のアルキル基が好ましい。具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ボルニル基、ノルボルニル基、2−アダマンチル基、インデン基等を挙げることができる。これらの環状のアルキル基は前記の通り置換基を有するができ、R6またはR7の環状のアルキル基としては、例えば、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、2−フルオロシクロペンチル基、3−フルオロシクロペンチル基、2−トリフルオロメチルシクロペンチル基、3−トリフルオロメチルシクロペンチル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2,4−メチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基、3−フルオロシクロヘキシル基、4−フルオロシクロヘキシル基、2,4−ジフルオロシクロヘキシル基、3,5−ジフルオロシクロヘキシル基、2−トリフルオロメチルシクロヘキシル基、3−トリフルオロメチルシクロヘキシル基、4−トリフルオロメチルシクロヘキシル基、2,4−ビストリフルオロメチルシクロヘキシル基、3,5−ビストリフルオロメチルシクロヘキシル基、2−メチルシクロヘプチル基、3−メチルシクロヘプチル基、4−メチルシクロヘプチル基、2−フルオロシクロヘプチル基、3−フルオロシクロヘプチル基、4−フルオロシクロヘプチル基、2−トリフルオロメチルシクロヘプチル基、3−トリフルオロメチルシクロヘプチル基、4−トリフルオロメチルシクロヘプチル基、ボルニル基、ノルボルニル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−5−インデン基、2,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)シクロヘキシル基、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)シクロヘキシル基、1,1,2,2,3,3,3a、7a−オクタフルオロオクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−5−インデン基等を挙げることができる。
【0070】
6またはR7のアリール基としては、炭素数3〜20のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、1−フェナントリル基、o−トシル基、m−トシル基、p−トシル基、3,5−キシリル基、2,4−キシリル基、メシチル基等を挙げることができる。
さらに水素原子がフッ素原子に置換した含フッ素アリール基としては、例えば、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、パーフルオロ−1−ナフチル基、パーフルオロ−2−ナフチル基、2−(トリフルオロメチル)フェニル基、3−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等を挙げることができる。
【0071】
一般式(4)中の炭素原子、R6、R7が互いに結合して環を形成して得られる脂環式炭化水素基としてはまたは置換基を有する脂環式炭化水素基、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、2−フルオロシクロペンチル基、3−フルオロシクロペンチル基、2−トリフルオロメチルシクロペンチル基、3−トリフルオロメチルシクロペンチル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2,4−メチルシクロヘキシル基、3,5−ジメチルシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基、3−フルオロシクロヘキシル基、4−フルオロシクロヘキシル基、2,4−ジフルオロシクロヘキシル基、3,5−ジフルオロシクロヘキシル基、2−トリフルオロメチルシクロヘキシル基、3−トリフルオロメチルシクロヘキシル基、4−トリフルオロメチルシクロヘキシル基、2,4−ビストリフルオロメチルシクロヘキシル基、3,5−ビストリフルオロメチルシクロヘキシル基、2−メチルシクロヘプチル基、3−メチルシクロヘプチル基、4−メチルシクロヘプチル基、2−フルオロシクロヘプチル基、3−フルオロシクロヘプチル基、4−フルオロシクロヘプチル基、2−トリフルオロメチルシクロヘプチル基、3−トリフルオロメチルシクロヘプチル基、4−トリフルオロメチルシクロヘプチル基、ボルニル基、ノルボルニル基、1−アダマンチル基、メチル−1−アダマンチル基、ヒドロキシ−1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、メチル−2−アダマンチル基、ヒドロキシ−2−アダマンチル基、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−5−インデン基、2,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)シクロヘキシル基、3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)シクロヘキシル基、1,1,2,2,3,3,3a、7a−オクタフルオロオクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−5−インデン基等を挙げることができる。
3の芳香族炭化水素基としては、炭素数3〜20のアリール基であり、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、1−フェナントリル基、o−トシル基、m−トシル基、p−トシル基、3,5−キシリル基、2,4−キシリル基、メシチル基等を挙げることができる。
【0072】
フッ素原子が置換した炭素数3〜20の含フッ素アリール基としては、例えば、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、パーフルオロ−1−ナフチル基、パーフルオロ−2−ナフチル基、2−(トリフルオロメチル)フェニル基、3−(トリフルオロメチル)フェニル基、4−(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基等を挙げることができる。
【0073】
さらに、上述した置換基(R3)上の水素原子((C=O)O基に結合する炭素上の水素原子は除く)は、フッ素を除くハロゲン、水酸基、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基もしくは含フッ素アルキル基、炭素数3〜20のアリール基もしくは含フッ素アリール基で置換されていても良く、上記置換基(R3)中のメチレン(CH2)(一般式(4)中のCで表示された炭素原子を含むメチレン基を除く。)は、C=O、O、NH、S、SO、SO2で置換されていても良い。これらの置換基は、構造上可能な範囲内でいくつ存在していてもよい。
【0074】
また、前記したR3に加えて、R3に含まれる任意の個数の水素原子が、フッ素原子、水酸基、アルキル基もしくは含フッ素アルキル基、アリール基で置換され、またはR3に含まれるメチレン基(CH2)が、C=O、O、NH、S、SO、SO2で置換された以下のような構造が好適なものとして例示される。構造式中、点線は結合位置を表す。
【0075】
【化17】

さらに、上述した環式基のメチレン基(−CH2−)が酸素原子(エーテル基)とカルボニル基で置換された置換基(R3)としては単環式もしくは多環式ラクトンを例示することができる。単環式もしくは多環式ラクトンとしてはγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アンゲリカラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−オクタラクトン、γ−ノナラクトン、3−メチル−4−オクタノライド(ウイスキーラクトン)、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ドデカラクトン、γ−ジャスモラクトン(7−デセノラクトン)、δ−ヘキサラクトン、4,6,6(4,4,6)−トリメチルテトラヒドロピラン−2−オン、δ−オクタラクトン、δ−ノナラクトン、δ−デカラクトン、δ−2−デセノラクトン、δ−ウンデカラクトン、δ−ドデカラクトン、δ−トリデカラクトン、δ−テトラデカラクトン、ラクトスカトン、ε−デカラクトン、ε−ドデカラクトン、シクロヘキシルラクトン、ジャスミンラクトン、シスジャスモンラクトン、メチルγ−デカラクトンあるいは下記のものが挙げられる。構造式中、点線は結合位置を表す。
【0076】
【化18】

<含フッ素不飽和カルボン酸エステルの製造方法>
本発明の一般式(1)で示される含フッ素不飽和カルボン酸エステル類の製造方法は限定されない。例えば次の反応式[1]〜[5]によって目的とする含フッ素不飽和カルボン酸エステル類を製造できる。
【0077】
【化19】

反応式[1]〜[5]の式中、RX4−W2−O−およびR2は、それぞれ一般式(1)におけるR0およびR2と同義である。RX1、RX2およびRX3は相互に独立に一価の有機基を示す。ただし、RX1は水素原子であってもよい。RX1、RX2は、それぞれ一般式(1)においてW1が一般式(3)で表される置換メチレン基である場合のR4、R5に対応し、具体的な定義はR4、R5とについての定義が当て嵌まる。RX1、RX2は、特に好ましくは低級アルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、これらの水素原子がフッ素原子に置換したトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1−(トリフルオロメチル)エチル基または3,3,3−トリフルオロプロピル基である。また、RX1およびRX2が相互に結合してシクロペンチル基、シクロヘキシル基またはシクロヘプチル基など環基を形成することもできる。RX3はエステルの保護基である。RX5は一般式(1)におけるR3の具体的態様に相当する。W2は二価の連結基を示し、W2−O−CRX1X2は一般式(1)におけるW1の一態様に相当する。
【0078】
次に、各反応について説明する。
【0079】
反応式[1]:α位に少なくとも一個のフッ素原子と少なくとも一個のハロゲン原子(フッ素原子を除く。)を有する含ハロゲンカルボン酸エステル(i)とカルボニル化合物(ii)を亜鉛存在下、無水の状態で反応させることによりヒドロキシカルボン酸エステル(iii)を得る反応(Reformatsky反応)
反応式[2]:反応式[1]によって得られたヒドロキシカルボン酸エステル(iii)を加水分解させることによりヒドロキシカルボン酸(iv)を得る反応。
【0080】
反応式[3]:反応式[2]によって得られたヒドロキシカルボン酸(iv)と重合性二重結合を有するカルボン酸、カルボン酸無水物またはカルボン酸ハライド(v)と反応させることにより不飽和カルボン酸(vi)を得る反応。
反応式[4]:反応式[3]によって得られた不飽和カルボン酸(vi)を塩化チオニルなどのハロゲン化剤を用いてハロゲン化し、不飽和カルボン酸ハライド(vii)を得る反応。
【0081】
反応式[5]:反応式[4]によって得られた不飽和酸ハライド(vii)をアルコール類(viii)と反応させることにより、含フッ素不飽和カルボン酸エステル(ix)を得る反応である。
【0082】
反応式[1]または[3]において使用される有機溶媒としては、それぞれの反応条件で反応に関与しなければよく、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルアセトニロリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の酸アミド類、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、1,2−エポキシエタン、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、置換テトラヒドロフラン等の低級エーテル類が挙げられ、より好ましくはテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒドである。これらの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。有機溶媒の使用量は、出発物質1質量部に対して1〜100質量部程度、好ましくは1〜10質量部である。反応式[1]に使用できる有機溶媒は可能な限り水分を除去した方が好ましい。より好ましくは有機溶媒中の水分含有量が50ppm以下である。
【0083】
反応式[3]に使用される有機溶媒は可能な限り水分を除去した方が好ましいが、必ずしも完全に除く必要はない。工業的に入手可能な有機溶媒に通常混入している程度の水分含有量であれば特に問題はなく、したがって水分除去をすることなくそのまま使用可能である。
【0084】
反応式[1]に使用される亜鉛は、公知の方法において活性化させて使用することが好ましい。例えば、塩化亜鉛等の亜鉛塩をカリウム、マグネシウム、リチウム等で還元して金属亜鉛を得る方法、金属亜鉛を塩酸により処理する活性化方法、金属亜鉛を酢酸中、銅塩または銀塩で処理し、銅または銀との合金とすることで、亜鉛を活性化する方法、超音波により亜鉛を活性化する方法、エーテル中、亜鉛をクロロトリメチルシランと攪拌することで亜鉛を活性化する方法、非プロトン性有機溶媒中、亜鉛をクロロトリメチルシランおよび銅化合物と接触させて該亜鉛を活性化させる方法などがある。
【0085】
亜鉛は、粉末、粒状、塊状、多孔質状、切削屑状、線状など何れの形状でもかまわない。反応温度は−78〜120℃程度であり、反応時間は反応試剤により異なるが、通常10分から20時間程度で行うのが好都合である。反応圧力は常圧付近でよく、その他の反応条件は、当業者に公知の金属亜鉛を用いる類似の反応の条件が適用できる。
【0086】
反応式[2]は塩基存在下、水と加水分解することからなっている。使用される塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、ピリミジン、ピリダジン、3,5−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム等の無機塩基が挙げられる。
【0087】
反応式[2]における塩基の使用量としては、基質1モルに対して1モル以上を使用すればよく、通常は1〜10モルが好ましく、特に好ましくは1〜5モルである。
【0088】
反応式[2]〜[5]において、反応温度は反応試剤により異なるが−78〜120℃程度であり、反応時間は同様に反応試剤により異なるが通常10分から20時間程度で行うのが好都合である。反応圧力は常圧付近でよく、その他の反応条件は、当業者に公知の類似反応の条件が適用できる。
【0089】
反応式[3]における重合性二重結合を有するカルボン酸、カルボン酸無水物またはカルボン酸ハライド(v)の使用量としては、基質1モルに対して、通常は0.8〜5モルであり、好ましくは1〜3モル、特に好ましくは1〜2モルである。
【0090】
反応式[3]においては、触媒として酸を使用することもできる。ここで使用される酸としては、塩酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。その中でも好ましくはメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸である。
【0091】
反応式[3]における酸の使用量としては、基質1モルに対して1モル以下を使用すればよく、通常は0.1〜1モルが好ましく、特に好ましくは0.1〜0.5モルである。
【0092】
反応式[4]におけるハロゲン化剤としては、ハロゲン化剤の例としては、ハロゲン化チオニル、オキザリルハロゲニド、三ハロゲン化リン、五ハロゲン化リン、オキシハロゲン化リン、ハロゲン化カルボニル、トリハロメチルハロホーメート等のハロゲン化剤から選ばれる一種及び/または二種以上の混合物があげられる。ハロゲンが塩素の場合、塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、三塩化リン酸、塩化オキザリル等が挙げられる。これらの中でも好ましくは塩化チオニル、三塩化リン酸である。
【0093】
反応式[4]における塩素化剤の使用量としては、基質1モルに対して1モル以上を使用すればよく、通常は1〜10モルが好ましく、特に好ましくは1〜5モルである。
【0094】
反応式[5−1]におけるアンモニウム(NH4+)としては、アンモニア、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等が挙げられる。その中でも好ましくはアンモニア、炭酸アンモニアである。
【0095】
反応式[5]におけるアルコール類の使用量としては、基質1モルに対して1モル以上を使用すればよく、通常は1〜10モルが好ましく、特に好ましくは1〜5モルである。
反応式[5]で使用する一般式(viii)で表されるアルコール類において、前述したとおり、RX5は一般式(1)におけるR3の具体的態様に相当する。従って、ここで使用されるアルコール類は、R3の具体例として例示した置換基に、水酸基が結合した構造に相当する。
より具体的には、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、i−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、i−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、i−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、n−ドデシルアルコール、シクロブチルアルコール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ボルネオール、ノルボルネオール、2−アダマンタノール、ボルニルメタノール、ノルボルニルメタノール、アダマンタンメタノール、オクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−5−オール、2,2−ジフルオロエチルアルコール、トリフルオロエチルアルコール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、1H,1H−ペンタフルオロ−1−プロピルアルコール、1H,1H−ヘプタフルオロ−1−ブチルアルコール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブチルアルコール、1H,1H,5H−オクタフルオロ−1−ペンチルアルコール、1H,1H−ノナフルオロ−1−ペンチルアルコール、1H,1H−パーフルオロ−1−ヘキシルアルコール、1H,1H−パーフルオロ−1−ヘキシルアルコール、1H,1H−パーフルオロ−1−ヘプチルアルコール、(パーフルオロシクロヘキシル)メタノール、(パーフルオロアダマンタン)メタノール、1,3−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシプロピル)シクロヘキシルアルコール、1,1,2,2,3,3,3a、7a−オクタフルオロオクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−5−オール、フェノール、1−ナフチルアルコール、2−ナフチルアルコール、1−アントリルアルコール、1−フェナントリルアルコール、o−トシルアルコール、m−トシルアルコール、p−トシルアルコール、3,5−キシリルアルコール、2,4−キシリルアルコール、メシチルアルコール、ベンジルアルコール、4−フルオロフェノール、3−フルオロフェノール、2−フルオロフェノール、3,5−ジフルオロフェノール、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェノール、パーフルオロ−1−ナフチルアルコール、パーフルオロ−2−ナフチルアルコール、2−(トリフルオロメチル)フェノール、3−(トリフルオロメチル)フェノール、4−(トリフルオロメチル)フェノール、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノール、2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェノール、2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジルアルコール、ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、ヒドロキシ−γ−バレロラクトン、ヒドロキシ−アンゲリカラクトン、ヒドロキシ−γ−ヘキサラクトン、ヒドロキシ−γ−ヘプタラクトン、ヒドロキシ−γ−オクタラクトン、ヒドロキシ−γ−ノナラクトン、ヒドロキシ−3−メチル−4−オクタノライド(ヒドロキシウイスキーラクトン)、ヒドロキシ−γ−デカラクトン、ヒドロキシ−γ−ウンデカラクトン、ヒドロキシ−γ−ドデカラクトン、ヒドロキシ−γ−ジャスモラクトン(ヒドロキシ−7−デセノラクトン)、ヒドロキシ−δ−ヘキサラクトン、ヒドロキシ−4,6,6(4,4,6)−トリメチルテトラヒドロピラン−2−オン、ヒドロキシ−δ−オクタラクトン、ヒドロキシ−δ−ノナラクトン、ヒドロキシ−δ−デカラクトン、ヒドロキシ−δ−2−デセノラクトン、ヒドロキシ−δ−ウンデカラクトン、ヒドロキシ−δ−ドデカラクトン、ヒドロキシ−δ−トリデカラクトン、ヒドロキシ−δ−テトラデカラクトン、ヒドロキシ−ラクトスカトン、ヒドロキシ−ε−デカラクトン、ヒドロキシ−ε−ドデカラクトン、ヒドロキシシクロヘキシルラクトン、ヒドロキシジャスミンラクトン、ヒドロキシシスジャスモンラクトン、ヒドロキシ−メチルγ−デカラクトンあるいは下記のものが挙げられる。
【0096】
【化20】

さらに、以下の化合物が例示される。
【0097】
【化21】

反応式[1]〜[5]の各反応段階の間では洗浄、溶媒等分離、乾燥などの精製操作を行うことができる。
【0098】
<含フッ素高分子化合物>
本発明に係る含フッ素高分子化合物は、少なくとも一般式(2)
【0099】
【化22】

で表される繰り返し単位(a)を含む。
式中、R1は、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかを表し、
【0100】
【化23】

2は、フッ素原子または含フッ素アルキル基を表し、
8は、一般式(4)
【0101】
【化24】

で表されるアルキル基、またはアリール基(芳香族炭化水素基)を表す。一般式(4)の式中、R6、R7は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基を表し、式中の炭素原子、R6、R7が互いに結合して脂環式炭化水素基を形成することができる。一般式(4)で表されるアルキル基またはアリール基芳香族炭化水素基(アリール基)であるR3に含まれる任意の個数の水素原子は、ハロゲン、水酸基、アルキル基もしくは含フッ素アルキル基、アリール基で置換されていてもよく、R3に含まれるメチレン基(CH2)(一般式(4)中のCで表示された炭素原子を含むメチレン基を除く。)は、C=O、O、NH、S、SO、SO2で置換されていてもよい。
【0102】
1は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、エーテル基、カルボニル基、エステル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル基、アミド結合、スルフォンアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合からなる群から選択される単独または2以上の原子団の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基を表し、連結基は同一の原子団を複数有することができ、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各原子は相互に結合して環を形成してもよい。
【0103】
繰り返単位(a)は、一般式(1)で示される含フッ素不飽和カルボン酸エステルの不飽和二重結合含有基(R0)の二重結合が開裂して形成される。この重合反応においては、重合性二重結合以外の結合および構造に変化は生じない。一般式(2)で示される繰り返し単位(a)を含む含フッ素高分子化合物は、一般式(1)で示される含フッ素単量体を重合させたものであり、R6、R7、W1はそれぞれ一般式(1)における記号と同意義であり、一般式(1)で表される含フッ素不飽和カルボン酸エステルにおいて好ましいとされた構造が同様に一般式(2)にも好ましく適用される。R8は、一般式(1)におけるR3からエチル基を除外したものであり、それ以外は、一般式(1)で表される含フッ素不飽和カルボン酸エステルにおいて好ましいとされた構造が同様に一般式(2)にも好ましく適用される。
【0104】
繰り返し単位(a)を含む含フッ素高分子化合物における、繰り返し単位(a)は単独であってもよいが、共重合体として他の繰り返し単位を含むこともできる。共重合体における他の繰り返し単位はポジ型のレジスト機能を始め、レジストのドライエッチング耐性やアルカリ現像液(標準現像液)適性、基板密着性、レジストプロファイル、レジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、撥水性、感度等を調節するために適宜設定される。ポジ型のレジスト機能を有する繰り返し単位としては後記する繰り返し単位(b)が本発明の含フッ素高分子化合物に使用される。さらに、ポジ型の機能をベース樹脂を含むレジスト組成物から形成されるレジスト膜の撥水性または親水性を調節する目的で使用する場合、または半導体のパターン形成におけるレジスト膜へのトップコートとして使用する場合は、レジストのドライエッチング耐性やアルカリ現像液(標準現像液)適性、基板密着性、レジストプロファイル、撥水性、前進もしくは後退接触角、レジスト組成物成分の水溶阻止性、溶剤への溶解選択性などを調節するため適宜選択される。
【0105】
本発明の含フッ素高分子化合物の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した質量平均分子量で1,000〜1,000,000であり、2,000〜500,000が好ましい。質量平均分子量1,000未満では、塗布膜の強度が不十分であり、1,000,000を超えると溶媒への溶解性が低下し、平滑な塗膜を得るのが困難になり好ましくない。分散度(Mw/Mn)は、1.01〜5.00が好ましく、1.01〜4.00がより好ましく、1.01〜3.00が特に好ましく、1.10〜2.50が最も好ましい。
【0106】
本発明の高分子化合物は、それぞれ性質の異なる繰り返し単位で構成されることができる。その割合は特に制限なく設定されるが、例えば以下に示す範囲は好ましく採用される。また、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、繰り返し単位(c)のそれぞれの繰り返し単位が、複数の異なる繰り返し単位からなるものであってもよい。
【0107】
本発明の高分子化合物において、一般式(2)で表される含フッ素重合性単量体からなる繰り返し単位(a)を1〜100mol%、より好ましくは5〜90mol%含有する。さらに、ポジ型のレジスト組成物へ使用する場合においては、酸不安定性保護基を有する繰り返し単位(b)を1〜99mol%、好ましくは5〜80mol%、より好ましくは10〜60mol%含有することができる。一般式(2)で表される含フッ素重合性単量体からなる繰り返し単位(a)が1mol%よりも小さい場合には、本発明の単量体を用いたことによる撥水性および前進・後退接触角が高くなるという明確な効果が期待できない。また、酸不安定性保護基を有する繰り返し単位(b)が1mol%よりも小さい場合には、露光によるアルカリ現像液に対する溶解性の変化が小さすぎて好ましくない。さらに、繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)の何れでもない、繰り返し単位(c)を5〜90モル%、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは15〜70%を含むことができる。5モル%未満では特に基板密着性の改善が図れず、90モル%を超えると撥水性を付与する繰り返し単位(a)およびレジスト機能を有する繰り返し単位(b)の含有量が低下し、前進・後退接触角が高くならず、また感度および溶解性変化を十分確保することができないので好ましくない。
【0108】
また、ポジ型の機能をベース樹脂を含むレジスト組成物から形成されるレジスト膜の撥水性または親水性を調節する目的で使用する場合、またはトップコート組成物へ使用する場合においては、ポジ型のレジスト機能を有するのは好ましくないので、前記に規定する繰り返し単位(a)に加えて、繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)の何れでもない、すなわち、酸不安定性保護基を有しない繰り返し単位(c)を5〜90モル%、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは15〜70%を含むことができる。5モル%未満では特に基板密着性の改善が図れず、90モル%を超えると撥水性付与機能を有する繰り返し単位(a)の含有量が低下し目的とする前進・後退接触角を高くすることがで
きないので好ましくない。
【0109】
<繰り返し単位(b)>
本発明の含フッ素重合体に酸不安定基を導入することによりポジ型レジストとして使用できる。酸不安定性保護基の導入には、酸不安定基を有する重合性単量体を使用することができる。酸不安定性保護基を有する単量体としては、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基のヒドロキシル基または環に芳香環に結合したヒドロキシル基を酸不安定性の保護基で保護したものを用いることも可能であるが、一般的には、カルボキシル基に酸不安定基がエステル結合した重合性単量体が好適に用いられる。
酸不安定性保護基を有する重合性化合物を用いると、酸不安定性保護基を有する繰り返し単位(b)を導入できる。
【0110】
本発明における繰り返し単位(b)は一般式(5)で表される。
【0111】
【化25】

式中、R9は、下記式で表される何れかを表す。
【0112】
【化26】

式中、R9は、下記式で表される重合性二重結合含有基の二重結合が開裂して形成される。
【0113】
【化27】

連結基W3は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、エーテル基、カルボニル基、エステル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル基、アミド結合、スルフォンアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合からなる群から選択される単独または2以上の原子団の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基を表し、連結基は同一の原子団を複数有することができ、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各原子は相互に結合して環を形成してもよい。また、R10は、酸不安定性保護基を表す。
【0114】
前記した、組み合わされて得られる連結基W3としては、
−(CR45m−C(=O)−O−(CR45n
−(CR45m−C(=O)−O−(CR45n−B−(CR45l
−(CR45m−O−(CR45n
−(CR45m−O−(CR45n−B−(CR45l
−(CR45n−B−(CR45l−C(=O)−O−(CR45m
−(CR45n−B−(CR45l−O−(CR45m
などが挙げられる。ここで、−(CR45)−は前記一般式(3)で表され、l、m、nは0〜10の整数を表し、mは0が好ましく、1、nは0または1が好ましい。Bは、二価の脂環式炭化水素基または二価の芳香族炭化水素基からなる環式基であり、一般式(1)または一般式(2)における連結基W1の主骨格を構成する二価の脂環式炭化水素基または二価の芳香族炭化水素基と同一の説明が該当する。
【0115】
さらに、連結基W3は、具体的には、
−(単結合)
−O−
−C(=O)−O−
−CH2−O−
−C64−O−
−O−CH2
−CH2−C(=O)−O−
−C(=O)−O−CH2
−CH2−O−CH2
−CH2−C(=O)−O−CH2
−C(=O)−O−B−(Bは前記環式基を表す)
など、および、−C(=O)−O−CR45−または−C64−O−CR45−である。ここで、R4およびR5は一般式(3)における記号と同義である。それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、アルキル基、置換アルキル基、脂環式炭化水素基であるものを好ましい。これらは、一個以上の水素原子がフッ素原子で置換したものであってもよい。これらのうち、−C(=O)−O−CR45−のうちR4およびR5がそれぞれ独立に水素原子または低級アルキル基であるもの、−C(=O)−O−、 −C64−O−をさらに好ましいものとして挙げることができる。
【0116】
10で表される酸不安定性保護基としては、
11−O−C(=O)− (L-1)
11−O−CHR12− (L-2)
CR131415− (L-3)
SiR131415− (L-4)
11−C(=O)− (L-5)
を挙げることができる。R11、R12、R13、R14、R15は以下に説明する一価の有機基を表す。これらのうち、(L-1)、(L-2)、(L-3)は化学増幅型として機能するので、高エネルギー線または電子線で露光するパターン形成方法に適用するレジスト組成物として使用するのに特に好ましい。
【0117】
11はアルキル基、脂環式炭化水素基またはアリール基を示す。R12は、水素原子、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基、アルコキシ基またはアリール基を示す。R13、R14およびR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルキル基、脂環式炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基もしくはアリール基を示す。また、R13〜R15の内の2つ以上の基が結合して環を形成してもよい。
【0118】
ここで、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert-ブチル基の様な炭素数1〜4個のものが好ましく、脂環式炭化水素基としては、炭素数3〜30個のものが挙げられ、具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、トリシクロデカニル基、ジシクロペンテニル基、ノボルナンエポキシ基、メンチル基、イソメンチル基、ネオメンチル基、テトラシクロドデカニル基、ステロイド残基の様な炭素数3〜30個のものが好ましく、アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基の様な炭素数2〜4個のものが好ましく、アリール基としてはフェニル基、キシリル基、トルイル基、クメニル基、ナフチル基、アントラセニル基の様な炭素数6〜14個のものが好ましく、これらは置換基を有していてもよい。アラルキル基としては、炭素数7〜20個のものが挙げられ、置換基を有していてもよい。ベンジル基、フェネチル基、クミル基等が挙げられる。
【0119】
また、前記有機基がさらに有する置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フツ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、前記のアルキル基もしくは脂環式炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ベンジル基、フエネチル基、クミル基等のアラルキル基、アラルキルオキシ基、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ベンゾイル基、シアナミル基、バレリル基等のアシル基、ブチリルオキシ基等のアシロキシ基、前記のアルケニル基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、ブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、前記のアリール基、フエノキシ基等のアリールオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアリールオキシカルボニル基を挙げることができる。
【0120】
また、下記式(7−1)、式(7−2)で示されるラクトン基を挙げられる。
【0121】
【化28】

【0122】
【化29】

前記式中、Ra は炭素数1〜4個のアルキル基またはパーフルオロアルキル基を表す。Rbは各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基もしくはパーフルオロアルキル基、ヒドロキシ基、カルボン酸基、アルキロキシカルボニル基、アルコキシ基などを表す。nは、1〜4の整数を表す。
【0123】
次に、前記酸不安定性保護基を具体的に示す。
前記のR11−O−C(=O)−で表されるアルコキシカルボニル基としては、tert-ブトキシカルボニル基、tert-アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンタンオキシカルボニル基等を例示できる。
【0124】
前記のR11−O−CHR12−で表されるアセタール基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−ベンジルオキシエチル基、1−フェネチルオキシエチル基、1−エトキシプロピル基、1−ベンジルオキシプロピル基、1−フェネチルオキシプロピル基、1−エトキシブチル基、1−シクロヘキシロキシエチル基、1−エトキシイソブチル基、1−メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基などが挙げられる。また水酸基に対してビニルエーテル類を付加させて得られるアセタール基を挙げることができる。
【0125】
前記のCR131415−で表される3級炭化水素基としては、tert-ブチル基、tert-アミル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−エチル−1−メチルブチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチル−1−フェニルメチル基、1−メチル−1−エチル−1−フェニルメチル基、1,1−ジエチル−1−フェニルメチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、1−イソボルニル基、1−メチルアダマンチル基、1−エチルアダマンチル基、1−イソプロピルアダマンチル基、1−イソプロピルノルボルニル基、1−イソプロピル−(4−メチルシクロヘキシル)基などを例示できる。
【0126】
次に、脂環式炭化水素基または脂環式炭化水素基を含む酸不安定性保護基の具体例を示す。
【0127】
【化30】

【0128】
【化31】

(8−1)および(8−2)の式中、メチル基(CH3)はそれぞれ独立にエチル基であってもよい。また、環炭素の1個または2個以上が置換基を有することができるのは前記のとおりである。
【0129】
前記のSiR131415−で表されるシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、メチルジ−tert-ブチルシリル基、トリ−tert-ブチルシ
リル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0130】
前記のR11−C(=O)−で表されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。さらに、これらの酸不安定性保護基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0131】
また、ラクトン基を置換基含む酸不安定性保護基を次の式(9)、式(10)、式(11)に例示する。
【0132】
【化32】

【0133】
【化33】

【0134】
【化34】

式(9)、式(10)、式(11)の式中、メチル基(CH3)はそれぞれ独立にエチル基であってもよい。
【0135】
露光用の光源としてArFエキシマレーザーを使用する場合には、酸不安定性保護基としては、tert-ブチル基、tert-アミル基等の3級アルキル基、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−シクロヘキシロキシエチル基等のアルコキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシメチル基など、および、前記のアダマンチル基、イソボルニル基などの脂環式炭化水素基または脂環式炭化水素基を含む酸不安定性保護基、ラクトン含む酸不安定性保護基等を好ましいものとして挙げることができる。
繰り返し単位(b)は、2種以上を併用することができる。
また、酸不安定性を有する重合体またはレジスト材料を得る別の方法として、先に得た重合体に後から高分子反応によって酸不安定基を導入する方法や、単量体や重合体の形の酸不安定性化合物を混合することも可能である。
【0136】
酸不安定基を使用する目的としては、その酸不安定性によるポジ型感光性および波長300nm以下の紫外線、エキシマレーザ、X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光後のアルカリ現像液への溶解性を発現させることである。
【0137】
一般式(L1)〜(L3)に示す酸不安定性保護基の具体例として、特に限定されないが下記に示すものを例示することができる。
【0138】
【化35】

【0139】
【化36】

<繰り返し単位(c)>
繰り返し単位(c)は、酸不安定性保護基を有しない繰り返し単位でありポジ型のレジスト機能を持たず、ベース樹脂の各種の特性の調節のために組み合わされる繰り返し単位である。
【0140】
繰り返し単位(c)を導入するために使用する、本発明の含フッ素不飽和カルボン酸と共重合可能な酸不安定性保護基を有しない単量体を具体的に例示するならば、無水マレイン酸、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸エステルであって、分子中に酸不安定性保護基を有しない重合性化合物である。本発明の含フッ素高分子化合物を製造する際には、これらの重合性化合物から選ばれた一種類以上の単量体と共重合することが好ましい。
【0141】
上記、共重合可能なアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルとしては、エステル側鎖について特に制限なく使用できるが、公知の化合物を例示するならば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール基を含有したアクリレート又はメタクリレート、さらにアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどの不飽和アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルコキシシラン含有のビニルシランやアクリル酸又はメタクリル酸エステル、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、3−オキソシクロヘキシルアクリレート、3−オキソシクロヘキシルメタクリレート、アダマンチルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、メチルアダマンチルアクリレート、メチルアダマンチルメタクリレート、エチルアダマンチルアクリレート、エチルアダマンチルメタクリレート、ヒドロキシアダマンチルアクリレート、ヒドロキシアダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルメタクリレート、ラクトン環やノルボルネン環などの環構造を有したアクリレート又はメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などが使用できる。さらにα位にシアノ基を含有した上記アクリレート類化合物や、類似化合物としてマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などを共重合することも可能である。
また、前記の含フッ素アクリル酸エステル、含フッ素メタクリル酸エステルとしては、フッ素原子又はフッ素原子を有する基がアクリルのα位に含有した単量体、又はエステル部位にフッ素原子を含有した置換基からなるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルであって、α位とエステル部ともにフッ素を含有した含フッ素化合物も好適である。さらにα位にシアノ基が導入されていてもよい。例えば、α位に含フッ素アルキル基が導入された単量体としては、上述した非フッ素系のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのα位にトリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが付与された単量体が採用される。
【0142】
一方、そのエステル部位にフッ素を含有する単量体としては、エステル部位としてパーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基であるフッ素アルキル基や、またエステル部位に環状構造とフッ素原子を共存する単位であって、その環状構造が例えばフッ素原子、トリフルオロメチル基、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基などで置換された含フッ素ベンゼン環、含フッ素シクロペンタン環、含フッ素シクロヘキサン環、含フッ素シクロヘプタン環等を有する単位などを有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。またエステル部位が含フッ素のt−ブチルエステル基であるアクリル酸又はメタクリル酸のエステルなども使用可能である。これらの含フッ素の官能基は、α位の含フッ素アルキル基と併用した単量体を用いることも可能である。そのような単位のうち特に代表的なものを単量体の形で例示するならば、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルアクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルアクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート、1,1−ジヒドロヘプタフルオロ−n−ブチルメタクリレート、1,1,5−トリヒドロオクタフルオロ−n−ペンチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロトリデカフルオロ−n−オクチルメタクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロヘプタデカフルオロ−n−デシルメタクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルアクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチルメタクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルアクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イル 2−(トリフルオロメチル)アクリレート、6−[3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−(トリフルオロメチル)プロピル]ビシクロ[2.2.1]ヘプチル−2−イルメタクリレート、1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルアクリレート、1、4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシルメタクリレート、1,4−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル 2−トリフルオロメチルアクリレートなどが挙げられる。
【0143】
また、繰り返し単位(c)を導入するために共重合に使用できるヘキサフルオロイソプロピル水酸基を有する重合性化合物は本発明の含フッ素高分子化合物の溶剤への溶解性を高めるため好ましく、具体的に例示するならば、下記に示す化合物をあげることができる。
【0144】
【化37】

この場合、Rは水素原子、メチル基、フッ素原子、またはトリフルオロメチル基を表す。また、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基は、その一部又は全部が保護基で保護されていてもよい。かかる保護基は、有機合成の分野で一般的にいう保護基であって、一般式(L1)〜(L5)で説明した光酸発生剤で生成した酸により容易に解離する酸不安定性基(不安定性保護基)とは異なる比較的安定な保護基をいう。
さらに、共重合に使用できるスチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物としては、スチレン、含フッ素スチレン、ヒドロキシスチレンなどが使用できる。より具体的には、ペンタフルオロスチレン、トリフルオロメチルスチレン、ビストリフルオロメチルスチレンなどのフッ素原子又はトリフルオロメチル基で芳香環の水素を置換したスチレン、ヘキサフルオロイソプロピル水酸基やその水酸基を保護した官能基で芳香環の水素を置換したスチレンが使用できる。また、α位にハロゲン、アルキル基、含フッ素アルキル基が結合した上記スチレン、パーフルオロビニル基含有のスチレンなどが使用できる。
【0145】
また、共重合に使用できるビニルエーテル、含フッ素ビニルエーテル、アリルエーテル、含フッ素アリルエーテルとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシブチル基などのヒドロキシル基を含有してもよいアルキルビニルエーテルあるいはアルキルアリルエーテルなどが使用できる。また、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、芳香環やその環状構造内に水素やカルボニル結合を有した環状型ビニル、アリルエーテルや、上記官能基の水素の一部又は全部がフッ素原子で置換された含フッ素ビニルエーテル、含フッ素アリルエーテルも使用できる。
【0146】
なお、ビニルエステル、ビニルシラン、オレフィン、含フッ素オレフィン、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物やその他の重合性不飽和結合を含有した化合物も本発明で特に制限なく使用することが可能である。
【0147】
共重合で使用できるオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブテン、シクロペンテン、シクロヘキセンなどを、含フッ素オレフィンとしてはフッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテンなどが例示できる。
【0148】
共重合で使用できるノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物は一核又は複数の核構造を有するノルボルネン単量体である。この際、含フッ素オレフィン、アリルアルコール、含フッ素アリルアルコール、ホモアリルアルコール、含フッ素ホモアリルアルコールがアクリル酸、α−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、メタクリル酸、本明細書で記載したすべてのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、含フッ素アクリル酸エステル又は含フッ素メタクリル酸エステル、2−(ベンゾイルオキシ)ペンタフルオロプロパン、2−(メトキシエトキシメチルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(テトラヒドロキシピラニルオキシ)ペンタフルオロプロペン、2−(ベンゾイルオキシ)トリフルオロエチレン、2−(メトキメチルオキシ)トリフルオロエチレンなどの不飽和化合物と、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンとのDiels−Alder付加反応で生成するノルボルネン化合物で、3−(5−ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2−イル)−1,1,1−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロパノール等が例示できる。
【0149】
<重合方法>
本発明にかかる含フッ素高分子化合物の重合方法としては、一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、ラジカル重合、イオン重合などが好ましく、場合により、配位アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、開環メタセシス重合、ビニレン重合、ビニルアディションなどを使用することも可能である。
【0150】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤あるいはラジカル開始源の存在下で、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又は乳化重合などの公知の重合方法により、回分式、半連続式又は連続式のいずれかの操作で行えばよい。
【0151】
ラジカル重合開始剤としては特に限定されるものではないが、例としてアゾ系化合物、過酸化物系化合物、レドックス系化合物が挙げられ、とくにアゾビスイソブチロニトリル、tert-ブチルパーオキシピバレート、ジ−tert-ブチルパーオキシド、i−ブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキシド、ジシンナミルパーオキシド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム等が好ましい。
【0152】
重合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、ラジカル重合を阻害しないものが好ましく、代表的なものとしては、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール系溶剤などがある。また水、エーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系などの溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。また、メルカプタンのような分子量調整剤を併用してもよい。共重合反応の反応温度はラジカル重合開始剤あるいはラジカル重合開始源により適宜変更され、通常は20〜200℃が好ましく、特に30〜140℃が好ましい。
【0153】
得られる含フッ素高分子化合物の溶液又は分散液から有機溶媒又は水を除去する方法として、再沈殿、ろ過、減圧下での加熱留出などの方法が可能である。
【0154】
<レジスト組成物>
本発明の含フッ素高分子化合物をレジスト組成物として使用する場合、含フッ素高分子化合物がポジ型のレジスト機能を有するときは、少なくとも酸発生剤と溶剤を含むレジスト組成物とし、その他に塩基性化合物、溶解阻止剤、界面活性剤等の添加剤を加えて使用する。本発明のポジ型のレジスト機能を有するベース樹脂にさらに異なる構造のポジ型またはベース樹脂を加えることもでき、酸不安定性保護基の種類の異なるベース樹脂であってもよい。
【0155】
本発明のポジ型のレジスト組成物の液浸リソグラフィーにおいて水と接する表面の撥水性(接触角)は、前進接触角が85〜105度、後退接触角が70〜90度である。前進接触角と後退接触角で表される撥水性が85度または70度よりも低いとレジストと水との相互作用が大きくなりレジストから水への光酸発生剤等の添加剤の液浸水への移行が起こり光学系の汚染や露光の不均一が生じ好ましくない。また、後退接触角が70度よりも低いとステッパーのスキャン速度を高めることができずスループットの低下が起こりコストの面から好ましくない。前進接触角と後退接触角で表される撥水性が105度または90度よりも高い場合、アルカリ現像液との接触が妨げられ溶解が困難になることがあり、また、水の層が安定して形成されず、ステッパーのスキャン速度を高めることができず、スループットの低下が起こることがありコスト面から好ましくない。
【0156】
これらの場合と異なりレジスト機能をも有しない場合、別にポジ型レジスト機能を有するベース樹脂と共に少なくとも酸発生剤と溶剤を含むレジスト組成物として使用することができる。このような使用の場合にも塩基性化合物、溶解阻止剤、界面活性剤等の添加剤を加えて使用する。
【0157】
さらに、所望によってレジスト組成物に混和性のある添加物、例えば付加的樹脂、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤、酸化防止剤などの種々添加剤を含有させることができる。
<付加的樹脂>
付加的樹脂は、使用溶剤に溶解し他のレジスト組成物を構成する成分と相溶する樹脂であれば特に限定されず、可塑剤、安定剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤などとして作用する。
<塩基性化合物>
また、本発明のレジスト組成物には、クエンチャーとして、またはレジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として、塩基性化合物を配合させることが好ましい。
【0158】
この塩基性化合物成分は、公知のもの、例えば、一級、二級、三級の脂肪族アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体などを使用でき、そのうち、2級脂肪族アミンや第級脂肪族アミン、芳香族アミン類、複素環アミン類が好ましい。
【0159】
脂肪族アミンとしては、アンモニアNH3の水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアルキルアミンまたはアルキルアルコールアミンが挙げられる。その具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デカニルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミン等が挙げられる。これらの中でも、アルキルアルコールアミン及びトリアルキルアミンが好ましく、アルキルアルコールアミンが最も好ましい。アルキルアルコールアミンの中でもトリエタノールアミンやトリイソプロパノールアミンが最も好ましい。
【0160】
また、その他の塩基性化合物としては、例えば次の化合物が挙げられる。芳香族アミン類及び複素環アミン類としては、例えばアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等などのアニリン誘導体、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、4−ジメチルアミノピリジン、ヘキサメチレンテトラミン、4,4−ジメチルイミダゾリンなどの複素環アミン類、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバゲート等のヒンダードアミン類、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2'−イミノジエタノール、2−アミノエタノ−ル、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジンなどのアルコール性含窒素化合物などが挙げられる。
【0161】
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
塩基性化合物成分は、ベース樹脂100質量部に対して、通常0.01〜5質量部の範囲で用いられる。
【0163】
<溶剤>
本発明による含フッ素高分子化合物からなるレジスト組成物を薄膜に成膜する方法としては、例えば有機溶媒に溶解させて塗布、乾燥にして成膜する方法を用いることが可能である。使用する有機溶媒としては、含フッ素高分子化合物が可溶であれば特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2‐ヘプタノンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテートまたはそれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類、キシレン、トルエンなどの芳香族系溶媒、フロン、代替フロン、パーフルオロ化合物、ヘキサフルオロイソプロピルアルコールなどのフッ素系溶剤、塗布性を高める目的で高沸点弱溶剤であるターペンなどの石油ナフサ系溶媒やパラフィン系溶媒などが使用可能である。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が特に好適に使用される。これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
<界面活性剤>
本発明のレジスト組成物は、界面活性剤、好ましくはフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することが好ましい。
本発明のレジスト組成物が前記界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、また、パターンの線幅が一層細い時に特に有効であり、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
【0164】
<酸発生剤>
本発明のレジスト組成物には、公知の光酸発生剤を使用することができる。光酸発生剤としては、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような酸発生剤の例としては、ビススルホニルジアゾメタン類、ニトロベンジル誘導体類、オニウム塩類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物類、その他のオキシムスルホネート化合物などが挙げられる。これらの光酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量はレジスト組成物100質量部に対して、通常0.5〜20質量部の範囲で選ばれる。この量が0.5質量部未満では像形成性が不十分であるし、20質量部を超えると均一な溶液が形成されにくく、保存安定性が低下する傾向がみられ好ましくない。
<パターン形成方法>
本発明のレジスト組成物は、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法を用いることができる。すなわち、まずシリコンウエーハーなどの基板に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどを用いて塗布し、乾燥(プリベーク)することによって感光層(レジスト層)を形成する。乾燥の条件は、使用するレジスト組成物の組成に応じて適宜設定できる。例えば、80〜150℃、好ましくは90〜120℃で、30〜120秒、好ましくは60〜90秒で行うことができる。これに露光装置などにより高エネルギー線又は電子線を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱(ポストベーク)する。ポストベークは、使用するレジスト組成物の組成に応じて適宜設定できる。例えば、80〜150℃、好ましくは90〜120℃で、30〜120秒、好ましくは60〜90秒で行うことができる。次いでこれを現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などのアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。
【0165】
本発明で用いる高エネルギー線は特に限定されないが、特に微細加工を行なう場合にはF2エキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザーなどの近紫外線(波長380〜200nm)もしくは真空紫外線(遠紫外線、VUV,波長200〜10nm)、シンクロトロン放射光などの極端紫外線(EUV、波長10nm以下)、軟エックス線、X線またはγ線などで300nm以下のものや電子線が有効である。本発明のパターン形成方法では、このような300nm以下の短波長の高エネルギー線や電子線の発生源を備えた露光装置を用いることが有効である。また、光路の一部に水やフッ素系の溶媒など、使用する高エネルギー線の吸収が少ない媒質を用い、開口数や有効波長においてより効率的な微細加工を可能とする液浸露光装置を使用する液浸リソグラフィーが有効であり、本レジスト組成物は、このような装置に用いる場合にも好適である。
<トップコート組成物>
本発明のトップコート組成物の液浸リソグラフィーにおいて使用するのに適する。さらに、媒体として水を使用する場合に特に適する。本発明のトップコート組成物の水と接する表面の撥水性(接触角)は、前進接触角が85〜105度、後退接触角が70〜90度である。前進接触角と後退接触角で表される撥水性がそれぞれ85度または70度よりも低いとレジストと水との相互作用が大きくなりレジスト膜から水への光酸発生剤等の添加剤が液浸水へ移行することがあり光学系の汚染や露光の不均一が生じ好ましくない。また、後退接触角が70度よりも低いとステッパーのスキャン速度を高めることができずスループットの低下が起こりコストの面から好ましくない。前進接触角と後退接触角で表される撥水性が105度または90度よりも高い場合、アルカリ現像液との接触が妨げられ溶解が困難になることがあり、また、水の層が安定して形成されず、ステッパーのスキャン速度を高めることができないとこからスループットの低下が起こることがありコスト面から好ましくない。
【0166】
本発明のトップコート組成物は、本発明にかかる含フッ素高分子化合物を有機溶媒、又は水と有機溶媒の混合液を溶剤として溶解したトップコート溶液(トップコート組成物溶液)の形態で使用する。使用する溶剤としては、下層のレジスト膜を浸食しにくく、また、レジスト膜から光酸発生剤等の添加剤を浸出させにくい溶剤であることが好ましい。
【0167】
このような有機溶媒としては、下層のレジスト膜組成に依存するが、各種の炭化水素系、アルコール系、エーテル系、エステル系、フッ素系の有機溶媒が挙げられる。
【0168】
これらのうち、炭素数5〜20のアルカン(飽和脂肪族炭化水素)もしくはシクロアルカン(脂環式炭化水素)、炭素数1〜20の炭化水素系アルコール、または、これらのアルカン、シクロアルカンまたは炭化水素系アルコールの任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されたものからなる群より選ばれる1種あるいは2種以上の混合溶剤が好ましい。
さらに好ましくは、炭素数5〜10のアルカン(飽和脂肪族炭化水素)もしくはシクロアルカン(脂環式炭化水素)、炭素数1〜10の炭化水素系アルコール、または、これらのアルカン、シクロアルカンまたは炭化水素系アルコールの任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されたものからなる群より選ばれる1種あるいは2種以上の混合溶剤が好ましい。
【0169】
また、溶剤または混合溶剤は70〜170℃の沸点範囲のものが好ましい。トップコート組成物はスピンコート法によりレジスト膜上に塗布する際に、沸点が70℃未満では蒸発が早すぎて均一な膜を形成できず、170℃を超えると塗膜の乾燥に時間がかかりスループットが低下するので好ましくない。
例えば、炭素数5〜20の炭化水素を50〜99.9%、炭素数1〜20の炭化水素系アルコールを0.1%〜50%で混合した溶剤が好ましく、炭素数5〜10の炭化水素を50〜99.9%、炭素数1〜10の炭化水素系アルコールを0.1%〜50%とするのがさらに好ましい。
単独で使用しまたは混合溶剤として使用する具体的に好ましい有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどおよびその異性体(環状化合物を含む)からなるアルカンまたはシクロアルカンである炭化水素系溶媒やブタノール(ノルマル、イソ、ターシャリー)、メチルエチルカルビノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、4−メチル−2−ペンタノールなどの炭化水素系アルコール類、さらに好ましくは部分的にフッ素で置換された炭化水素系溶媒が好適に採用される。部分的にフッ素で置換された炭化水素系溶媒とは、前記アルカン、シクロアルカンまたは炭化水素系アルコール類の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたものが採用できる。フッ素原子を導入することで本発明の高分子化合物を効果的に溶解させ、かつ下地のレジスト膜にダメージを与えないコーティングを行うことが可能となる。
配合する溶剤の量は特に限定されないが、好ましくはトップコート溶液の固形分濃度が3〜25%、より好ましくは5〜15%となる様に用いられる。トップコート溶液の固形分濃度を調整することによって、形成される樹脂膜の膜厚を調整することが可能である。
【0170】
また、本発明においては、水の膨潤やしみ込みに対する影響を抑制するための疎水性添加剤、現像液への溶解性を促進させるための酸性添加剤、プリベーク温度以下では分解せずポストベーク温度で分解する酸発生剤などをが好適に使用できる。
本発明によるトップコート溶液は、下層のレジストの種類に制限なく使用することができる。すなわち下層レジストが、任意のレジストシステムであっても好適に使用できる。
【0171】
本発明にかかるコーティングにおいて露光に用いる波長は限定されないが、前述のように、300nm以下の高エネルギー線が使用でき、KrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、F2レーザー(157nm)、EUV、EB、X線が好適に使用でき、特には、ArFエキシマレーザに好ましく採用される。また、特に本発明のトップコートは液浸リソグラフィーにおいて、好適に応用される。
【0172】
本発明のトップコート溶液から形成されるトップコート膜の厚さは特に限定されないが、10〜1000nmであり、20〜200nmが好ましい。トップコート膜を露光されたレジスト膜から除去するためにトップコート溶液で使用される溶剤を用いることもできるが、レジストの現像液で実質的に一回の操作でレジスト膜の溶解性部分とともに溶解除去(剥離)するのが好ましい。したがって、本発明のトップコート組成物からなるトップコート膜はアルカリ現像液で剥離することができる。溶解速度は、通常50〜3000nm/秒であり、100〜1000nm/秒が好ましい。50nm/秒未満では処理に時間がかかり、300nm/秒を超えると溶解が均一にならずレジストの溶解・除去が不均一といなるので何れも好ましくない。
【0173】
以下、液浸リソグラフィーを用いたデバイス製造において本発明のトップコート組成物を使用する場合について説明する。
【0174】
まずシリコンウェハーや半導体製造基板の支持体上に、レジスト組成物溶液をスピンナーなどで塗布した後、プリベークを行いレジスト層を形成させる。この工程にかかる条件は、使用するレジスト組成物の組成に応じて適宜設定できる。例えば、80〜150℃、好ましくは90〜120℃で、30〜120秒、好ましくは60〜90秒で行うことができる。
【0175】
次に上記のように形成したレジスト膜の表面に、本発明のトップコート溶液をスピナーなどで均一に塗布した後、熱処理することにより、レジスト層の上にトップコート層がコートされた2層膜からなる樹脂膜が形成される。この工程にかかる条件は、使用するレジスト組成物の組成およびトップコート組成物溶液に応じて適宜設定できる。例えば、50〜100℃、好ましくは60〜90℃で、10〜120秒、好ましくは30〜90秒で行い、レジスト膜の乾燥よりも低い温度で行うのが好ましい。
【0176】
この二層または多層からなる樹脂層が形成された基板を水等の媒体に浸漬し、次いで300nm以下の高エネルギー線を所望のマスクパターンを介して照射する。この時、露光光は、媒体(例えば水)とトップコート層を透過してレジスト層に到達する。また、レジスト層は、トップコート層によって媒体(例えば水)と分離しているので、媒体(例えば水)がレジスト層に浸漬して膨潤したり、逆にレジストが媒体(例えば水)に溶出することもない。
【0177】
露光された基板をポストベーク後、現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。現像処理においては、まず、トップコート層が全溶解し、次いで露光部のレジスト膜が溶解する。すなわち、1回の現像処理により、トップコート層とレジスト層の一部を溶解除去することが可能で、所望のマスクパターンに応じたレジストパターンを得ることができる。
【実施例】
【0178】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0179】
[単量体の合成]
[合成例1]メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル製造方法
【0180】
【化38】

滴下ロートを備えた3Lの容器に、特開2009−19199号公報記載の方法で得られたメタクリル酸 1−ヒドロキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル420g(純度56%、1.25モル)、ジメチルホルムアミド7.50g(0.11モル/0.01当量)を加え、室温にて塩化チオニル452g(3.79モル/3.0当量)を滴下した。75℃に昇温し4時間撹拌した後、19F NMRにて反応終了を確認した。その後、減圧蒸留することでメタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル255g(収率92%、純度98%)を得た。
[メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.14(s,1H;=CH2),5.63(s,1H;=CH2),5.43(m,1H;CH−O), 1.92(s,3H;CH3−C),1.82(m,2H;CH−CH2CH3のCH2),0.96(t、J=7.6 Hz,3H;CH−CH2CH3のCH3).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−108.10(d,J=259Hz,1F),−114.01(d,J=259Hz,1F)。
【0181】
[実施例1]2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシカルボニルペンタン酸 2−exo−ノルボルニルエステルの製造方法
【0182】
【化39】

滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコにexo−ノルボルネオール 95.0g(0.847mol/1.2当量)とジイソプロピルエーテル 510g、トリエチルアミン 100g(0.988mol/1.4当量)、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製)1gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 170g(純度99%、0.706mol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。19F NMRにより反応終了を確認した後、水500mLを加え分液した。得られた有機層を硫酸マグネシウムにて水分を除去、ろ過した後減圧濃縮した。その後、減圧蒸留することで、無色透明液体として2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシカルボニルペンタン酸 2−exo−ノルボルニルエステル 167.5g(収率75%、純度99%)を得た。
[2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシカルボニルペンタン酸 2−exo−ノルボルニルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.15(m,1H),5.58(m,1H),5.13(m,1H),3.90(m,1H),2.03(m,1H),1.93(m,3H),1.76−1.27(m,11H),0.96(m,3H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−113.20(d,1F),−120.25(d,1F)。
【0183】
[実施例2]メタクリル酸 1−(n−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0184】
【化40】

滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコにn−ブタノール 62.8g(0.847mol/1.2当量)とジイソプロピルエーテル 510g、トリエチルアミン 100g(0.988mol/1.4当量)、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製)1gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 170g(純度99%、0.706mol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。19F NMRにより反応終了を確認した後、水500mLを加え分液した。得られた有機層を硫酸マグネシウムにて水分を除去、ろ過した後減圧濃縮した。その後、減圧蒸留することで、無色透明液体としてメタクリル酸 1−(n−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 179g(収率91%、純度99%)を得た。
[メタクリル酸 1−(n−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.15(m,1H),5.58(m,1H),5.13(m,1H),4.08(m,2H),1.93(m,3H),1.57(m,4H),1.33(m,2H),0.96(m,6H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−112.98(d,1F),−119.92(d,1F)。
【0185】
[実施例3]メタクリル酸 1−(4'−メトキシ−1'−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0186】
【化41】

滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコに4−メトキシ−1−ブタノール 76.3g(0.847mol/1.2当量)とジイソプロピルエーテル 510g、トリエチルアミン 100g(0.988mol/1.4当量)、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製)1gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 170g(純度99%、0.706mol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。19F NMRにより反応終了を確認した後、水500mLを加え分液した。得られた有機層を硫酸マグネシウムにて水分を除去、ろ過した後減圧濃縮した。その後、減圧蒸留することで、無色透明液体としてメタクリル酸 1−(4'−メトキシ−1'−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 183g(収率88%、純度99%)を得た。
[メタクリル酸 1−(4'−メトキシ−1'−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.15(m,1H),5.58(m,1H),5.13(m,1H),4.08(m,2H),3.37(m,2H),3.24(m,3H),1.74(m,2H),1.93(m,3H),1.57(m,2H),0.96(m,3H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−113.16(d,1F),−120.12(d,1F)。
【0187】
[実施例4]メタクリル酸 1−(1'H,1'H−ヘプタフルオロ−1−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0188】
【化42】

滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコに1H,1H−ヘプタフルオロ−1−ブチルアルコール 13.0g(65mmol/1.3当量)とジイソプロピルエーテル51g、トリエチルアミン6.56g(65mmol/1.3当量)、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製)0.1gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル12g(純度99%、50mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。19F NMRにより反応終了を確認した後、水500mLを加え分液した。その後3wt%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮した後、減圧蒸留することで、無色透明液体としてメタクリル酸 1−(1'H,1'H−ヘプタフルオロ−1−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 16.6g(収率82%、純度99%)を得た。
[1'H,1'H−ヘプタフルオロ−1−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.15(m,1H),5.58(m,1H),5.13(m,1H),4.40(m,2H),1.93(m,3H),1.57(m,2H),0.96(m,3H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−38.9(s,2F),−76.5(t,3F),−87.8(q,2F),−114.01(d,1F),−120.58(d,1F)。
【0189】
[実施例5]メタクリル酸 1−ヘキサフルオロイソプロポキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0190】
【化43】

滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコにヘキサフルオロイソプロパノール 109.1g(0.649mol/1.3当量)とジイソプロピルエーテル 510g、トリエチルアミン 65.6g(0.649mol/1.3当量)、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製)1gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 120g(純度99%、0.499mol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。19F NMRにより反応終了を確認した後、水500mLを加え分液した。その後3wt%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮した後、減圧蒸留することで、無色透明液体としてメタクリル酸 1−ヘキサフルオロイソプロポキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 158g(収率85%、純度99%)を得た。
[メタクリル酸 1−ヘキサフルオロイソプロポキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.15(m,1H),5.59(m,1H),5.58(m,1H),5.13(m,1H),1.93(m,3H),1.57(m,2H),0.96(m,3H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−76.0(d,6F),−114.21(d,1F),−120.46(d,1F)。
【0191】
[実施例6]メタクリル酸 1−ペンタフルオロフェノキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0192】
【化44】

滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコにペンタフルオロフェノール 12.0g(65mmol/1.3当量)とジイソプロピルエーテル50g、トリエチルアミン6.56g(65mmol/1.3当量)、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製)0.1gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル12g(純度99%、50mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。19F NMRにより反応終了を確認した後、水500mLを加え分液した。その後3wt%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮した後、減圧蒸留することで、無色透明液体としてメタクリル酸 1−ペンタフルオロフェノキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 15.5g(収率80%、純度99%)を得た。
[メタクリル酸 1−ペンタフルオロフェノキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.15(m,1H),5.58(m,1H),5.13(m,1H),1.93(m,3H),1.57(m,2H),0.96(m,3H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−113.92(d,1F),−120.37(d,1F),−163.8(d,4F),−168.4(m,1F)。
【0193】
[実施例7]メタクリル酸 1−(1',1',2',2',3',3',3'a、7'a−オクタフルオロオクタヒドロ−4',7'−メタノ−1'H−5'−インデンオキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0194】
【化45】

滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコに1,1,2,2,3,3,3a、7a−オクタフルオロオクタヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン−5−オール 19.2g(64mmol/1.3当量)とジイソプロピルエーテル50g、トリエチルアミン6.56g(65mmol/1.3当量)、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製)0.1gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル12g(純度99%、50mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。19F NMRにより反応終了を確認した後、水500mLを加え分液した。その後3wt%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮した後、減圧蒸留することで、淡黄色液体としてメタクリル酸 1−(1',1',2',2',3',3',3'a、7'a−オクタフルオロオクタヒドロ−4',7'−メタノ−1'H−5'−インデンオキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 19.5g(収率78%、純度98%)を得た。
[メタクリル酸 1−(1',1',2',2',3',3',3'a、7'a−オクタフルオロオクタヒドロ−4',7'−メタノ−1'H−5'−インデンオキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.15(m,1H),5.58(m,1H),5.13(m,1H),3.90(m,1H),2.29(m,1H),1.93(m,3H),1.76−1.30(m,7H),0.96(m,3H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−113.25(d,1F),−120.31(d,1F),−121.20(m,1F),−121.42(m,1F),−121.88(m,4F),−134.77(m,2F)。
【0195】
[実施例8]メタクリル酸 1−(2'−ヒドロキシ−1',1',1'−トリフルオロ−2'−トリフルオロメチル−2'−ペントキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0196】
【化46】

滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコに1,1,1−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−2,4−ペンタンジオール 147.0g(0.650mol/1.3当量)とジイソプロピルエーテル 510g、トリエチルアミン 65.8g(0.650mol/1.3当量)、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製)1gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 120g(純度99%、0.499mol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。19F NMRにより反応終了を確認した後、水500mLを加え分液した。その後3wt%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮した後、減圧蒸留することで、無色透明液体としてメタクリル酸 1−(2'−ヒドロキシ−1',1',1'−トリフルオロ−2'−トリフルオロメチル−2'−ペントキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 200g(収率93%、純度98%)を得た。
[メタクリル酸 1−(2'−ヒドロキシ−1',1',1'−トリフルオロ−2'−トリフルオロメチル−2'−ペントキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.15(m,1H),5.58(m,1H),5.13(m,1H),4.64(m,1H),4.13(m,1H),1.93(m,3H),1.64(m,2H),1.57(m,2H),1.40(m,3H),0.96(m,3H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−77.01(q,3F),−79.05.70(q,3F),−113.11(d,1F),−120.09(d,1F)。
【0197】
[実施例9]メタクリル酸 1−[(2'−トリフルオロメタンスルホニルアミノ)エトキシカルボニル]−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの製造方法
【0198】
【化47】

滴下ロートを備えた1Lのガラスのフラスコに(2−トリフルオロメタンスルホニルアミノ)エタノール 125.5g(0.650mol/1.3当量)とジイソプロピルエーテル 512g、トリエチルアミン 65.8g(0.650mol/1.3当量)、酸化防止剤ノンフレックスMBP(精工化学株式会社製)1gを加え、0℃に冷却し撹拌した。その後メタクリル酸 1−クロロカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 120g(純度99%、0.499mol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。19F NMRにより反応終了を確認した後、水500mLを加え分液した。その後3wt%炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水にて順次洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮した後、減圧蒸留することで、無色透明液体としてメタクリル酸 メタクリル酸 1−[(2'−トリフルオロメタンスルホニルアミノ)エトキシカルボニル]−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル 176g(収率89%、純度97%)を得た。
[メタクリル酸 1−[(2'−トリフルオロメタンスルホニルアミノ)エトキシカルボニル]−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルの物性]
1H NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ=6.99(m,1H),6.15(m,1H),5.58(m,1H),5.13(m,1H),4.34(m,2H),2.93(m,2H),1.93(m,3H),1.57(m,2H),0.96(m,3H).
19F NMR(測定溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ=−78.9(s,3F),−113.01(d,1F),−120.13(d,1F)。
【0199】
[高分子化合物の合成]
[実施例10]含フッ素高分子化合物(1)の合成
コンデンサーを備えたガラスのフラスコに、2,2−ジフルオロ−3−メタクリロイルオキシカルボニルペンタン酸 2−ノルボルニルエステル 3.17g、MA−tBu(メタクリル酸t−ブチル) 1.66g、MA−NBL(ダイセル化学工業株式会社製) 2.59g、アゾビスブチロニトリル0.1g、メチルエチルケトン15mlを加え、フラスコ内を窒素雰囲気とした。この溶液を60℃に昇温し、18時間撹拌した。反応終了後、n−ヘキサン60mlに投入して撹拌し、生成した沈殿を取り出した。これを55℃で20時間乾燥することで白色固体として、含フッ素高分子化合物(1)5.6g(収率75%)を得た。繰り返し単位の組成比は、NMRにおいて決定し、分子量はゲルパミュエーションクロマトグラフィ(GPC、標準物質:ポリスチレン)により算出した。結果を表1に示した。
【0200】
【化48】

[実施例11]含フッ素高分子化合物(2)の合成
メタクリル酸 1−(n−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル、ECPMA(メタクリル酸エチルシクロペンチル:大阪有機化学工業株式会社製)、MA−NBLを用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(2)を合成した。結果を表1に示した。
【0201】
【化49】

[実施例12]含フッ素高分子化合物(3)の合成
メタクリル酸 1−(4'−メトキシ−1'−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル、ECPMA、HFIP−M(メタクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル)を用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(3)を合成した。結果を表1に示した。
【0202】
【化50】

[実施例13]含フッ素高分子化合物(4)の合成
メタクリル酸 1−(1'H,1'H−ヘプタフルオロ−1−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル、MA−tBu、MA−NBLを用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(4)を合成した。結果を表1に示した。
【0203】
【化51】

[実施例14]含フッ素高分子化合物(5)の合成
メタクリル酸 1−ヘキサフルオロイソプロポキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル、ECPMA、MA−NBLを用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(5)を合成した。結果を表1に示した。
【0204】
【化52】

[実施例15]含フッ素高分子化合物(6)の合成
メタクリル酸 1−ペンタフルオロフェノキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル、ECPMA、MA−NBLを用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(6)を合成した。結果を表1に示した。
【0205】
【化53】

[実施例16]含フッ素高分子化合物(7)の合成
メタクリル酸 1−(1',1',2',2',3',3',3'a、7'a−オクタフルオロオクタヒドロ−4',7'−メタノ−1'H−5'−インデンオキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル、MA−tBu、MA−NBLを用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(7)を合成した。結果を表1に示した。
【0206】
【化54】

[実施例17]含フッ素高分子化合物(8)の合成
メタクリル酸 1−(2'−ヒドロキシ−1',1',1'−トリフルオロ−2'−トリフルオロメチル−2'−ペントキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステルを用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(8)を合成した。結果を表1に示した。
【0207】
【化55】

[実施例18]含フッ素高分子化合物(9)の合成
メタクリル酸 1−[(2'−トリフルオロメタンスルホニルアミノ)エトキシカルボニル]−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル、特開2007−63255号公報記載の方法で合成した1−シクロヘキシル−4,4,4−トリフルオロ−3−(トリフルオロメチル)ブタン−1,3−ジオール(MA−ACH-HFA)を用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(9)を合成した。結果を表1に示した。
【0208】
【化56】

[実施例19]含フッ素高分子化合物(10)の合成
メタクリル酸 1−(1'H,1'H−ヘプタフルオロ−1−ブトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル、特開2005−206587号公報記載の方法で合成した4,4,4−トリフルオロ−3−ヒドロキシ−1−メチル−3−(トリフルオロメチル)ブチル 2−メタクリレート(MA−BTHB-OH)を用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(10)を合成した。結果を表1に示した。
【0209】
【化57】

[実施例20]含フッ素高分子化合物(11)の合成
メタクリル酸 1−ヘキサフルオロイソプロポキシカルボニル−1,1−ジフルオロ−2−ブチルエステル、MA−BTHB-OHを用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(11)を合成した。結果を表1に示した。
【0210】
【化58】

[比較例1]高分子化合物(1)の合成
ECpMA、MA−NBLを用いて実施例10と同様にして高分子化合物(1)を合成した。結果を表1に示した。
【0211】
【化59】

[比較例2]含フッ素高分子化合物(12)の合成
MA−BTHB−OHを用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(12)を合成した。結果を表1に示した。
【0212】
【化60】

[比較例3]含フッ素高分子化合物(13)の合成
MA−ACH−HFA、MA−BTHB−OHを用いて実施例10と同様にして含フッ素高分子化合物(13)を合成した。結果を表1に示した。
【0213】
【化61】

[参考例1]レジスト用高分子化合物(2)の合成
ガラス製フラスコ中にて、溶媒の2−ブタノン 65.8gの中へ、モノマーとしてMA−HAD(ヒドロキシアダマンチルメタクリレート)を12.0g、MA−EAD(エチルアダマンチルメタクリレート)を10.8g、MA−GBL(γブチロラクトンメタクリレート)を10.1g、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(東京化成(株)製)を0.54g溶解した。この溶液に重合開始剤としてAIBN(製品名2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、和光純薬(株)製)を1.35g添加後、撹拌しながら脱気し、窒素ガスを導入した後に75℃にて16時間の反応を行った。反応終了後の溶液を500.0gのn−ヘプタンに滴下し、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、60℃にて減圧乾燥を行い29.6gの白色固体(高分子化合物(2))を得た(収率90%)。結果を表1に示した。
【0214】
【化62】

[重合結果]
実施例10〜20、比較例1〜3、参考例1で得られた重合体(高分子化合物)について分子量を測定した。
重合体の分子量(質量平均分子量Mw)は、東ソー製HLC−8320GPCに東ソー製ALPHA−MカラムとALPHA−2500カラムを1本ずつ直列に繋ぎ、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定した。検出器は屈折率差検出器を用いた。
得られた重合体10gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)または4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)の100mlに投入し50℃で攪拌して溶解性を調べた。透明な溶液となり、スピンコートで均一な膜が形成できた場合「可溶」とし、均一な膜ができない場合を「不溶」とした。測定した結果を表1に示す。
【0215】
【表1】

[ポジ型レジスト溶液の調製とレジスト膜の作成]
含フッ素高分子化合物(1)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、固形分14%になるように調整した。これに含フッ素高分子化合物(1)100質量部に対し、光酸発生剤としてみどり化学製トリフェニルスルフォニウムトリフレート(TPS105)を5質量部、塩基性化合物としてトリオクチルアミンを0.15質量部になるように溶解してレジスト溶液(FR−1)を調製した。これと同様にして含フッ素高分子化合物(2)〜(7)および高分子化合物(1)を用いてそれぞれレジスト溶液(FR−2)、(FR−3)、(FR−4)、(FR−5)、(FR−6)、(FR−7)、(R−1)を調製した。
【0216】
また、同様に、含フッ素高分子化合物(4)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解し、固形分14%になるように調整した。これに含フッ素高分子化合物(4)100質量部に対し、光酸発生剤としてノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムを5質量部、塩基性化合物としてイソプロパノールアミンを0.15質量部になるように溶解してレジスト溶液(FR−4’)を調製した。
これらのレジスト溶液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、各レジスト溶液をシリコンウェハー(200mm。実施例の項において同じ。)上にスピンコートし、100℃で90秒間乾燥して膜厚約250nmの樹脂膜(レジスト膜)を形成したシリコンウェハーを得た。
【0217】
・前進接触角および後退接触角
シリコンウェハーに形成した樹脂膜(レジスト膜)について、20℃で協和界面科学製の装置CA-X型を用いて拡張・収縮法により水滴の前進接触角および後退接触角を測定した。
表2に示すとおり、本願発明のレジスト溶液(FR−1)、(FR−2)、(FR−3)、(FR−4)、(FR−4’)、(FR−5)、(FR−6)、(FR−7)から得られたレジスト膜は後退接触角が高かった。これに対し、参考としたレジスト溶液(R−1)の後退接触角は液浸レジストとしての使用において求められる後退接触角よりも低かった。
【0218】
・パターン形成
シリコンウェハーに形成した樹脂膜(レジスト膜)について、寸法130nmの1対1ラインアンドスペース(130nm1L/1Sパターン)のフォトマスクを介して193nmの紫外線で露光を行った後、120℃でポストエクスポーザーベークを行った。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、22℃で1分間現像した。
レジスト溶液(FR−1)、(FR−2)、(FR−3)、(FR−4)、(FR−4’)、(FR−5)、(FR−6)、(FR−7)、(R−1)から形成されたレジスト膜は、いずれのレジスト溶液からも高解像のパターン形状が得られ、基板への密着不良欠陥、成膜不良欠陥、現像欠陥、エッチング耐性不良による欠陥は見られなかった。さらに、最適露光量にて解像した130nm1L/1Sパターンの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、矩形からの変形の程度を評価した。レジスト溶液(FR−1)、(FR−2)、(FR−3)、(FR−4)、(FR−4’)、(FR−5)、(FR−6)、(FR−7)、(R−1)の場合、いずれも頭はりや残渣による変形はなく「矩形」であった。結果を表2に示す。
【0219】
【表2】

[トップコート溶液の調製とトップコート膜の作成]
実施例17で得られた含フッ素高分子化合物(8)100質量部を溶剤4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)900質量部で溶解し、さらに同じ溶剤で固形分が3%になるように調整したところ、均一で透明な溶液(トップコート溶液、T−1)が得られた。実施例18〜20および比較例2、3で得られた含フッ素高分子化合物から同様に均一で透明な溶液が得られた。これらをそれぞれ表3に示すようにトップコート溶液(T−2)、(T−3)、(T−4)、(TR−1)、(TR−2)とした。
【0220】
シリコンウェハー上に、それぞれのトップコート溶液を、メンブランフィルター(0.2μm)でろ過した後、スピナーを用いて回転数1,500rpmでスピンコートし、ホットプレート上で80℃で90秒間乾燥したところ、シリコンウェハー上に均一な約50nmの樹脂膜(トップコート膜)が得られた。
【0221】
・参考レジスト膜
トップコートの試験用に参考レジスト膜を被覆したシリコンウエハーを作成した。参考例1で得られたレジスト用重合体(高分子化合物(2))をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させ、固形分12%になるように調整した。さらに酸発生剤としてノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムを重合体100質量部に対して5質量部になるように、塩基としてイソプロパノールアミンを同1質量部になるように溶解し、レジスト溶液(RR−1)を調製した。
【0222】
このレジスト溶液(RR−1)を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、100℃で90秒間乾燥して膜厚約250nmの樹脂膜(参考レジスト膜)を形成したシリコンウェハーを得た。
【0223】
・前進接触角および後退接触角
前記レジスト膜と同様に前進接触角と後退接触角を測定した。結果を表3に示した。
【0224】
本願発明の含フッ素重合体を配合したトップコート(T−1)、(T−2)、(T−3)、(T−4)から作成されたトップコート膜は参考レジスト膜(RR−1:後退接触角47度)はもとより比較例として挙げたトップコート膜(トップコート溶液(TR−1)、(TR−2))と比較しても高い後退接触角が得られた。
【0225】
・アルカリ現像液溶解性試験
トップコート溶液(T−1)、(T−2)、(T−3)、(T−4)、(TR−1)、(TR−2)を塗布してトップコート膜を形成した前記シリコンウェハーについて、レジスト現像アナライザー RDA−790(リソテックジャパン株式会社製)を用いて20℃で2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(アルカリ現像液)への溶解速度を測定した。結果を表3に示した。
【0226】
【表3】

[レジスト/トップコートニ層樹脂膜の作成]
レジスト溶液(RR−1)を、スピナーを用いてシリコンウェハー上にスピンコート後、ホットプレート上100℃で90秒間乾燥し、膜厚約150nmの参考レジスト膜を形成した。このレジスト膜上に、メンブランフィルター(0.2μm)でろ過したトップコート溶液(T−1)を、スピナーを用いてスピンコート後、ホットプレート上で80℃で90秒間乾燥して、全体の膜厚が約200nmの二層樹脂膜(レジスト層とトップコート層からなる2層膜)を形成した。
【0227】
同様に、参考レジスト膜を形成したシリコンウェハーに、トップコート溶液(T−2)、(T−3)、(T−4)、比較のトップコート溶液(TR−1)、(TR−2)を用いて全体の膜厚が約200nmの二層樹脂膜(レジスト層とトップコート層からなる2層膜)を形成した。
【0228】
シリコンウェハー上に形成した二層樹脂膜について、次に示す純水浸漬処理、トップコート層のアルカリ現像液溶解性試験、および露光解像試験を行った。これら試験の結果を表4に示した。
【0229】
・純水浸漬試験
上で得た二層樹脂膜(レジスト層とトップコート層からなる2層膜)を形成したシリコンウェハー20枚を、それぞれ、20℃で20mlの純水に10分浸漬して溶出物を抽出後、当該抽出液をイオンクロマトグラフィにて測定して、溶出物の有無を確認した。トップコートを使用しなかったものを除いて、光酸発生剤やその分解物に帰属されるピークは検出されなかった。トップコートを設けたことにより、レジスト成分の水への溶出が抑えられた。
【0230】
・アルカリ現像液溶解性試験
上で得た二層樹脂膜(レジスト層とトップコート層からなる2層膜)を形成したシリコンウェハーを、レジスト現像アナライザー RDA−790(リソテックジャパン(株)製)を用いて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(アルカリ現像液)に浸漬して溶解速度を測定した。結果を表4に示した。
表4から明らかなように比較例では、トップコートに求められる溶解速度としては低すぎるかまたは高すぎた。本願発明の含フッ素高分子化合物を配合したトップコート(T−1)、(T−2)、(T−3)、(T−4)を使用した場合、溶解速度は適度であった。
【0231】
・パターン形成
80℃で90秒間プリベークを行って形成した二層樹脂膜(レジスト層とトップコート層からなる2層膜)シリコンウェハーを、フォトマスクを介して193nmで露光した。露光後のウェハーを回転させながら純水を2分間滴下した。その後、120℃で60秒間ポストエクスポーザーベークを行い、アルカリ現像液で現像した。アルカリ現像液としては、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いた。
【0232】
得られたパターンの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、矩形からの変形の程度を評価した。結果を表4に示す。
【0233】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明の含フッ素高分子化合物は液浸リソグラフィー用のレジスト組成物ならびにトップコート組成物の成分として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で示される繰り返し単位(a)を含む質量平均分子量1,000〜1,000,000の含フッ素高分子化合物。
【化1】

(式中、R1は、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかを表し、
【化2】

2は、フッ素原子または含フッ素アルキル基を表し、
8は、一般式(4)
【化3】

(式中、R6、R7は互いに独立に水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基を表し、一般式(4)の式中の炭素原子、R6、R7が互いに結合して脂環式炭化水素基を形成することができる。)で表される置換もしくは非置換のアルキル基、またはアリール基であり、R8に含まれる任意の個数の水素原子は、ハロゲン、水酸基、アルキル基もしくは含フッ素アルキル基、アリール基で置換されていてもよく、R8に含まれるメチレン基(CH2)(一般式(4)中のCで表示された炭素原子を含むメチレン基を除く。)は、カルボニル基(C=O)、エーテル基(O)、イミド基(NH)、チオエーテル基(S)、スルフィニル基(SO)、スルホニル基(SO2)で置換されていてもよく、
1は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、カルボニル基、エーテル基、エステル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル基、アミド結合、スルフォンアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合からなる群から選択される単独または2以上の原子団の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基を表し、連結基は同一の原子団を複数有することができ、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各原子は相互に結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
2がフッ素原子である請求項1に記載の含フッ素高分子化合物。
【請求項3】
含フッ素高分子化合物が、無水マレイン酸、アクリル酸エステル類、含フッ素アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、含フッ素メタクリル酸エステル類、スチレン系化合物、含フッ素スチレン系化合物、ビニルエーテル類、含フッ素ビニルエーテル類、アリルエーテル類、含フッ素アリルエーテル類、オレフィン類、含フッ素オレフィン類、ノルボルネン化合物、含フッ素ノルボルネン化合物、二酸化硫黄、ビニルシラン類、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸エステルであって酸不安定性保護基またはアルコール性ヒドロキシル基の何れをも有しない共重合可能な単量体の重合性二重結合が開裂して形成した繰り返し単位(c)をさらに含む請求項1または2に記載の含フッ素高分子化合物。
【請求項4】
一般式(5)で表される繰り返し単位(b)をさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素高分子化合物。
【化4】

(式中、R9は、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかを表し、
【化5】

10は、酸不安定性保護基を表し、
3は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、カルボニル基、エーテル基、エステル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル基、アミド結合、スルフォンアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合からなる群から選択される単独または2以上の原子団の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基を表し、連結基は同一の原子団を複数有することができ、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各原子は相互に結合して環を形成してもよい。)
【請求項5】
請求項4に記載の含フッ素高分子化合物と光酸発生剤と溶剤を少なくとも含むポジ型のレジスト組成物溶液。
【請求項6】
請求項5に記載のレジスト組成物溶液を基板上に塗布する工程と、次に基板を熱処理する工程と、300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を用いてフォトマスクを通して露光する工程と、露光されたレジストの塗布膜に対して熱処理を施す工程と、現像処理を施す工程を少なくとも含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の含フッ素高分子化合物を少なくとも含んでなるトップコート組成物。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の含フッ素高分子化合物と溶剤を少なくとも含んでなるトップコート組成物溶液。
【請求項9】
溶剤が炭素数5〜20の環状または鎖状の炭化水素、炭素数1〜20のアルコール、部分的にフッ素で置換された環状または鎖状の炭素数5〜20の炭化水素よりなる群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合溶媒である請求項8に記載のトップコート組成物溶液。
【請求項10】
溶剤が炭素数5〜20の炭化水素を50〜99.9質量%、炭素数1〜20のアルコールを0.1〜50質量%で混合した混合溶媒である請求項8または請求項9のトップコート組成物溶液。
【請求項11】
溶剤または混合溶媒の沸点が70℃〜170℃である請求項8〜10のいずれか1項に記載のトップコート組成物溶液。
【請求項12】
液浸リソグラフィーに用いることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のトップコート組成物溶液。
【請求項13】
ポジ型のレジスト組成物溶液を基板上に塗布する工程と、次に基板を熱処理してレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜の表面に請求項7に記載のトップコート組成物からなるトップコート膜を形成してレジスト膜とトップコート膜からなる多層膜とする工程と、その多層膜に300nm以下の波長の高エネルギー線又は電子線を用いてフォトマスクを通して露光する工程と、露光された多層膜に対して熱処理を施す工程と、現像処理を施す工程を少なくとも含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項14】
現像処理を施す工程が、トップコート膜の剥離とレジスト膜の現像処理をアルカリ現像液により実質的に同時に行うことからなる現像処理である請求項13に記載のパターン形成方法
【請求項15】
下記一般式(1)で表わされる含フッ素不飽和カルボン酸エステル。
【化6】

(式中、R0は、下記式で表される重合性二重結合含有基の何れかを表し、
【化7】

2は、フッ素原子または含フッ素アルキル基を表し、
3は、一般式(4)
【化8】

(式中、R6、R7は互いに独立に水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基を表し、一般式(4)の式中の炭素原子、R6、R7が互いに結合して脂環式炭化水素基を形成することができる。)で表される置換もしくは非置換のアルキル基、またはアリール基であり、R3に含まれる任意の個数の水素原子は、ハロゲン、水酸基、アルキル基もしくは含フッ素アルキル基、アリール基で置換されていてもよく、R8に含まれるメチレン基(CH2)(一般式(4)中のCで表示された炭素原子を含むメチレン基を除く。)は、カルボニル基(C=O)、エーテル基(O)、イミド基(NH)、チオエーテル基(S)、スルフィニル基(SO)、スルホニル基(SO2)で置換されていてもよく、エチル基でなく
1は、単結合、非置換もしくは置換メチレン基、二価の環状のアルキル基(脂環式炭化水素基)、二価のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換もしくは非置換の縮合多環式芳香族基、二価のヘテロ環基、カルボニル基、エーテル基、エステル結合、オキシカルボニル結合、チオエーテル基、アミド結合、スルフォンアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合からなる群から選択される単独または2以上の原子団の組み合わせからなる主骨格を有する二価の連結基を表し、連結基は同一の原子団を複数有することができ、炭素原子に結合する任意の数の水素原子はフッ素原子で置換していてもよく、連結基内で各原子は相互に結合して環を形成してもよい。)
【請求項16】
2がフッ素原子である請求項15に記載の含フッ素不飽和カルボン酸エステル。

【公開番号】特開2010−275498(P2010−275498A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131919(P2009−131919)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】