説明

周波数推定方法、周波数推定装置、表面形状測定方法及び表面形状測定装置

【課題】計算負荷が低く、処理時間が短くて済む周波数推定方法、周波数推定装置、表面形状測定方法及び表面形状測定装置を提供すること。
【解決手段】干渉縞や電気信号などの有周期性の観測データにおける周波数を推定する周波数推定方法であって、観測データを取得するステップと、仮定した任意周波数の正弦波状関数をモデル信号として前記観測データに適合させるステップと、前記観測データと前記モデル信号との部分的な位相のずれ量を求めるステップと、前記モデル信号の周波数と、前記位相のずれ量についての位相勾配とに基づいて、前記観測データの周波数を算出するステップとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数推定方法、周波数推定装置、表面形状測定方法及び表面形状測定装置に関する。より詳しくは、干渉縞や電気信号などの有周期性の観測データにおける周波数を推定する周波数推定方法及び装置、並びにこれら周波数推定方法または装置を組み込んで、例えば平坦度を有する測定対象物の凹凸を測定する表面形状測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、磁性体フィルムなどは、所定の表面形状測定方法及び装置表面形状測定装置により表面の凹凸を測定することで、表面の平坦度を評価している。
【0003】
従来の表面形状測定方法として、特許文献1のものがある。特許文献1の表面形状測定方法では、干渉縞を使い表面形状を測定している。具体的には、測定対象面に現れる干渉縞の周波数推定を行い、推定された周波数の近似正弦波形を干渉縞信号にあてはめて位相を求めることで、表面形状を測定している。干渉縞の周波数推定には、Prony法を用いている。
【0004】
また従来の表面形状測定方法として、特許文献2のものがある。特許文献2の表面形状測定方法も、干渉縞を使い表面形状を測定している。具体的には、推定された周波数の近似正弦波形を干渉縞信号にあてはめて位相を求めることで、表面形状を測定している。干渉縞の周波数推定方法について具体的な記述はない。
【0005】
また従来の表面輪郭測定方法として、特許文献3のものがある。特許文献3の表面輪郭測定方法は縞パターン投影で表面輪郭を測定している。具体的には、測定対象面に縞パターンを投影して表面輪郭を測定している。投影した縞パターンの縞数の推定方法について具体的な記述はない。
【0006】
また従来の干渉縞を測定対象に投影する縞投影法として、特許文献4のものがある。具体的には、測定対象面に縞パターンを投影して表面輪郭を測定している。干渉縞の周波数推定方法について具体的な記述はない。
【0007】
なお、干渉縞の周波数推定法には、Prony法以外にも、例えばフーリエ変換を用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2007−021870号
【特許文献2】特願2006−024825号
【特許文献3】特開2001−552052号
【特許文献4】特願2000−395589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
干渉縞の周波数推定法に、上記したようなProny法やフーリエ変換を用いた場合、これらはそれぞれ複雑な演算処理を要するため、計算負荷が高く、処理時間が長くなるといった問題があった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、計算負荷が低く、処理時間が短くて済む周波数推定方法、周波数推定装置、表面形状測定方法及び表面形状測定装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、干渉縞や電気信号などの有周期性の観測データにおける周波数を推定する周波数推定方法であって、観測データを取得するステップと、仮定した任意周波数の正弦波状関数をモデル信号として前記観測データに適合させるステップと、前記観測データと前記モデル信号との部分的な位相のずれ量を求めるステップと、前記モデル信号の周波数と、前記位相のずれ量についての位相勾配とに基づいて、前記観測データの周波数を算出するステップとを有することを特徴とする。
【0012】
(作用・効果) この方法によると、観測データと仮定した任意周波数の正弦波状関数との部分的な位相のずれ量を求め、この位相のずれ量についての位相勾配を利用することで、その周波数を正確に求めることができる。この方法では、一般に用いられるフーリエ変換のような複雑な演算処理を利用する必要がないので、計算負荷が軽減され、処理時間を短縮することができる。すなわち、作業効率の向上を図ることができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明に係る周波数推定方法において、前記位相のずれ量の計算は、部分的な観測データを、仮定した任意周波数の正弦波状関数に最小自乗法であてはめて求めることを特徴とする。
【0014】
(作用・効果) この方法によると、最小自乗法の計算で容易に位相のずれ量を求めることができる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明に係る周波数推定方法において、前記位相のずれ量についての位相勾配を計算する前に予め、位相のずれ量の次数ジャンプ境界で位相接続しておくことを特徴とする。
【0016】
(作用・効果) この方法によると、位相勾配を計算する際にどの点を使っても、次数ジャンプによる計算誤りを防ぐことができる。
【0017】
第4の発明は、第2の発明に係る周波数推定方法において、前記位相のずれ量についての位相勾配を計算する際に、位相のずれ量の次数ジャンプ境界を避けて位相勾配を計算することを特徴とする。
【0018】
(作用・効果) この方法によると、位相勾配を計算する際に、次数ジャンプによる計算誤りを防ぐことができる。
【0019】
第5の発明は、第1または第2の発明に係る周波数推定方法において、観測データにおける最大値と、モデル信号の最大値とが一致するように、座標原点をシフトして観測データをモデル信号に適合させることを特徴とする。
【0020】
(作用・効果) この方法によると、座標原点における位相がゼロ近傍になり,位相値が±πを超える可能性が低くなる。その結果、アンラッピングを不要化することができ、計算時間を短縮できるようになる。
【0021】
第6の発明は、第3から第5のいずれかの発明に係る周波数推定方法において、前記位相のずれ量についての位相勾配の計算方法は、2個所以上の位相のずれ量に最小自乗法で1次直線を近似して求めることを特徴とする。
【0022】
(作用・効果) この方法によると、最小自乗法の計算で容易に精度の良い位相勾配を求めることができる。
【0023】
第7の発明は、第1から第6のいずれかの発明に係る周波数推定方法において、求めたい周波数(f)は、仮定した任意周波数の正弦波状関数の周波数をfとし、位相のずれ量についての位相勾配をdφ′(x)/dxとして、f=f+(dφ′(x)/dx)/2πの式から求めることを特徴とする。
【0024】
(作用・効果) この方法によると、複雑な演算処理を利用する必要がないので、計算負荷が軽減され、処理時間を短縮することができる。
【0025】
第8の発明は、第1から第7のいずれかの発明に係る周波数推定方法において、前記観測データが2次元の周期縞画像からなり、前記正弦波状関数が2次元の正弦波状画像からなり、上記2次元の周期縞画像の周波数(f,f)を、下記式から求めることを特徴とする周波数推定方法。
=fx0+(dφ′(x,y)/dx)/2π
=fy0+(dφ′(x,y)/dy)/2π
ここで、直交座標系の2軸をx,yとし、仮定した任意周波数の正弦波状関数のx軸方向についての周波数をfx0とし、仮定した任意周波数の正弦波状関数のy軸方向についての周波数をfy0とし、2次元の周期縞画像と2次元の正弦波状画像とのx軸方向についての位相勾配をdφ′(x,y)/dxとし、2次元の周期縞画像と2次元の正弦波状画像とのy軸方向についての位相勾配をdφ′(x,y)/dyとしている。
【0026】
(作用・効果) この方法によると、2次元の周波数推定が可能となる。特に1回の処理で、2方向の周波数が同時に推定可能となる。これにより、周波数がゼロ付近の場合でも正確な周波数推定が可能となる。また、片方の周波数がゼロでも推定可能となる。
【0027】
第9の発明は、第1から第8のいずれかの発明に係る周波数推定方法において、推定した周波数を、新たに任意周波数の正弦波状関数の周波数として推定計算を繰り返すことを特徴とする。
【0028】
(作用・効果) この方法によると、より正確な周波数を容易に求めることができる。
【0029】
(周波数推定装置)
第10の発明は、観測データを取得する取得手段と、仮定した任意周波数の正弦波状関数をモデル信号として前記観測データに適合させ、前記観測データと前記モデル信号との部分的な位相のずれ量を求め、前記モデル信号の周波数と、前記位相のずれ量についての位相勾配とに基づいて、前記観測データの周波数を算出する演算手段とを有することを特徴とする。
【0030】
(作用・効果) この構成によると、観測データと仮定した任意周波数の正弦波状関数との部分的な位相のずれ量を求め、この位相のずれ量についての位相勾配を利用することで、その周波数を正確に求めることができる。この方法では、一般に用いられるフーリエ変換のような複雑な演算処理を利用する必要がないので、計算負荷が軽減され、処理時間を短縮することができる。すなわち、作業効率の向上を図ることができる。
【0031】
第11の発明は、第10の発明に係る周波数推定装置において、前記位相のずれ量の計算は、部分的な観測データを、仮定した任意周波数の正弦波状関数に最小自乗法であてはめて求めることを特徴とする。
【0032】
(作用・効果) この構成によると、最小自乗法の計算で容易に位相のずれ量を求めることができる。
【0033】
第12の発明は、第11の発明に係る周波数推定装置において、前記位相のずれ量についての位相勾配を計算する前に予め、位相のずれ量の次数ジャンプ境界で位相接続しておくことを特徴とする。
【0034】
(作用・効果) この構成によると、位相勾配を計算する際にどの点を使っても、次数ジャンプによる計算誤りを防ぐことができる。
【0035】
第13の発明は、第11の発明に係る周波数推定装置において、前記位相のずれ量についての位相勾配を計算する際に、位相のずれ量の次数ジャンプ境界を避けて位相勾配を計算することを特徴とする。
【0036】
(作用・効果) この構成によると、位相勾配を計算する際に、次数ジャンプによる計算誤りを防ぐことができる。
【0037】
第14の発明は、第10または第11の発明に係る周波数推定装置において、観測データにおける最大値と、モデル信号の最大値とが一致するように、座標原点をシフトして観測データをモデル信号に適合させることを特徴とする。
【0038】
(作用・効果) この構成によると、座標原点における位相がゼロ近傍になり,位相値が±πを超える可能性が低くなる。その結果、アンラッピングを不要化することができ、計算時間を短縮できるようになる。
【0039】
第15の発明は、第12または第13の発明に係る周波数推定装置において、前記位相のずれ量についての位相勾配の計算方法は、2個所以上の位相のずれ量に最小自乗法で1次直線を近似して求めることを特徴とする。
【0040】
(作用・効果) この構成によると、最小自乗法の計算で容易に位相勾配を求めることができる。
【0041】
第16の発明は、第10から第15のいずれかの発明に係る周波数推定装置において、求めたい周波数(f)は、仮定した任意周波数の正弦波状関数の周波数をfとし、位相のずれ量についての位相勾配をdφ′(x)/dxとして、f=f+(dφ′(x)/dx)/2π の式から求めることを特徴とする。
【0042】
(作用・効果) この構成によると、複雑な演算処理を利用する必要がないので、計算負荷が軽減され、処理時間を短縮することができる。
【0043】
第17の発明は、第10から第16のいずれかの発明に係る周波数推定装置において、前記観測データが2次元の周期縞画像からなり、前記正弦波状関数が2次元の正弦波状画像からなり、上記2次元の周期縞画像の周波数(f,f)を、下記式から求めることを特徴とする。
=fx0+(dφ′(x,y)/dx)/2π
=fy0+(dφ′(x,y)/dy)/2π
ここで、直交座標系の2軸をx,yとし、仮定した任意周波数の正弦波状関数のx軸方向についての周波数をfx0とし、仮定した任意周波数の正弦波状関数のy軸方向についての周波数をfy0とし、2次元の周期縞画像と2次元の正弦波状画像とのx軸方向についての位相勾配をdφ′(x,y)/dxとし、2次元の周期縞画像と2次元の正弦波状画像とのy軸方向についての位相勾配をdφ′(x,y)/dyとしている。
【0044】
(作用・効果) この構成によると、2次元の周波数推定が可能となる。特に1回の処理で、2方向の周波数が同時に推定可能となる。これにより、周波数がゼロ付近の場合でも正確な周波数推定が可能となる。また、片方の周波数がゼロでも推定可能となる。
【0045】
第18の発明は、第10から第17のいずれかの発明に係る周波数推定装置において、推定した周波数を、新たに任意周波数の正弦波状関数の周波数として推定計算を繰り返すことを特徴とする。
【0046】
(作用・効果) この構成によると、より正確な周波数を容易に求めることができる。
【0047】
(光干渉法表面形状測定方法)
第19の発明は、光源から出力される光を分岐手段を介して測定対象面と参照面とに照射し、測定対象面と参照面の両方から反射して同一光路を戻る反射光によって生じる干渉縞の強度値に基づいて測定対象面の表面高さと表面形状を求める表面形状の測定方法において、
前記参照面を光の進行方向に対して任意角度の斜め傾斜姿勢に配置した状態で発生させた干渉縞の画像を取得する第1過程と、
取得した前記画像における各画素の干渉縞の強度値を求める第2過程と、
画面内の複数画素に置いて、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、仮定した任意周波数の正弦波状関数との局所的な位相のずれ量を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定する第3過程と、
画面内の測定対象画素に置いて、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、周波数が前記推定周波数または予め推定した周波数であり、直流成分、交流振幅、及び位相が一定と仮定した正弦波状関数とから、各画素の位相を求める第4過程と、
求めた前記各画素の位相から撮像された測定対象面の表面高さを求める第5の過程と、
求めた前記測定対象面の表面高さから表面形状を求める第6過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0048】
(作用・効果) この発明に係る表面形状の測定方法によると、参照面を光の進行方向に対して任意角度の斜め傾斜姿勢で配備することにより、測定対象面と参照面から同一光路を戻る反射光により干渉縞を発生させる。この干渉縞の強度値を画素単位で求め、干渉縞波形を求める表現式を利用して画素ごとについて、各画素の強度値と画素ごとにその近隣にある画素の強度値とを利用し、各画素に含まれる干渉縞波形の直流成分、交流振幅、及び位相が等しいと仮定し、各画素の位相を求める。得られた位相から表面高さが求められる。従来、上記表現式に必要な干渉縞周波数は、画面内の縞本数を目視で数えるか、フーリエ変換により求めていたが、前者は精度が悪く、後者は計算負荷が高かった。本発明によれば、仮定した周波数の正弦波状関数と、実測信号との複数個所における局所的な位相のずれ量を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定することができ、精度が高く、計算負荷の低い表面形状測定が可能になる。
【0049】
第20の発明は、第19の発明に係る表面形状の測定方法において、第1から第9のいずれかの発明を用いて、取得した干渉縞の画像の周波数を推定することを特徴とする。
【0050】
(作用・効果) この方法によると、測定対象面の干渉縞画像からその周波数を正確にかつ簡易な計算で推定することができ、その推定した周波数を用いて、正確に表面形状の測定をすることができる。
【0051】
第21の発明は、光源から出力される光を分岐手段を介して測定対象面と参照面とに照射し、測定対象面と参照面の両方から反射して同一光路を戻る反射光によって生じる干渉縞の強度値に基づいて測定対象面の表面高さと表面形状を求める表面形状測定装置において、
前記参照面は、光の進行方向に対して任意角度の斜め傾斜姿勢で配備されており、
前記光が照射されて測定対象物と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞を生じさせて測定対象面を撮像する撮像手段と、
撮像された前記測定対象面を画素ごとに干渉縞の強度値として取り込むサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によって取り込まれた前記強度値である干渉縞強度値群を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された強度値群から画素ごとに強度値を読み出し、画面内の複数画素に置いて、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、仮定した任意周波数の正弦波状関数との局所的な位相のずれ量を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定し、画面内の測定対象画素に置いて、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、周波数が前記推定周波数または予め推定した周波数であり、直流成分、交流振幅、及び位相が一定と仮定した正弦波状関数とから、各画素の位相を求め、この求めた前記各画素の位相から撮像された測定対象面の表面高さを求め、さらに、この求めた前記測定対象面の表面高さから表面形状を求める演算手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0052】
(作用・効果) この発明に係る表面形状の測定装置によると、参照面を光の進行方向に対して任意角度の斜め傾斜姿勢で配備することにより、測定対象面と参照面から同一光路を戻る反射光により干渉縞を発生させる。この干渉縞の強度値を画素単位で求め、干渉縞波形を求める表現式を利用して画素ごとについて、各画素の強度値と画素ごとにその近隣にある画素の強度値とを利用し、各画素に含まれる干渉縞波形の直流成分、交流振幅、及び位相が等しいと仮定し、各画素の位相を求める。得られた位相から表面高さが求められる。従来、上記表現式に必要な干渉縞周波数は、画面内の縞本数を目視で数えるか、フーリエ変換により求めていたが、前者は精度が悪く、後者は計算負荷が高かった。本発明によれば、仮定した周波数の正弦波状関数と、実測信号との複数個所における局所的な位相のずれ量を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定することができ、精度が高く、計算負荷の低い表面形状測定が可能になる。
【0053】
第22の発明は、第21の発明に係る表面形状の測定装置において、第10から第18のいずれかの発明を用いて、取得した干渉縞の画像の周波数を推定することを特徴とする。
【0054】
(作用・効果) この構成によると、測定対象面の干渉縞画像からその周波数を正確にかつ簡易な計算で推定することができ、その推定した周波数を用いて、正確に表面形状の測定をすることができる。
【0055】
(縞投影法表面形状測定方法)
第23の発明は、光源から出力される光を、格子を介して測定対象面に格子像を投影し、測定対象面によって生じる干渉縞の強度値に基づいて測定対象面の表面高さと表面形状を求める表面形状の測定方法において、
前記測定対象面の干渉縞の画像を取得する第1過程と、
取得した前記画像における各画素の干渉縞の強度値を求める第2過程と、
画面内の複数画素に置いて、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、仮定した任意周波数の正弦波状関数との局所的な位相のずれ量を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定する第3過程と、
画面内の測定対象画素に置いて、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、周波数が前記推定周波数または予め推定した周波数であり、直流成分、交流振幅、及び位相が一定と仮定した正弦波状関数とから、各画素の位相を求める第4過程と、
求めた前記各画素の位相から撮像された測定対象面の表面高さを求める第5の過程と、
求めた前記測定対象面の表面高さから表面形状を求める第6過程と、
を備えたことを特徴とする。
【0056】
(作用・効果) この発明に係る表面形状の測定方法によると、測定対象へ格子縞を投影することにより干渉縞を発生させる。この干渉縞の強度値を画素単位で求め、干渉縞波形を求める表現式を利用して画素ごとについて、各画素の強度値と画素ごとにその近隣にある画素の強度値とを利用し、各画素に含まれる干渉縞波形の直流成分、交流振幅、及び位相が等しいと仮定し、各画素の位相を求める。得られた位相から表面高さが求められる。従来、上記表現式に必要な干渉縞周波数は、画面内の縞本数を目視で数えるか、フーリエ変換により求めていたが、前者は精度が悪く、後者は計算負荷が高かった。本発明によれば、仮定した周波数の正弦波状関数と、実測信号との複数個所における局所的な位相のずれ量を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定することができ、精度が高く、計算負荷の低い表面形状測定が可能になる。
【0057】
第24の発明は、第23の発明に係る表面形状の測定方法において、第1から第9のいずれかの発明を用いて、取得した干渉縞の画像の周波数を推定することを特徴とする。
【0058】
(作用・効果) この方法によると、測定対象面の干渉縞画像からその周波数を正確にかつ簡易な計算で推定することができ、その推定した周波数を用いて、正確に表面形状の測定をすることができる。
【0059】
(縞投影法表面形状測定装置)
第25の発明は、光源から出力される光を、格子を介して測定対象面に格子像を投影し、測定対象面によって生じる干渉縞の強度値に基づいて測定対象面の表面高さと表面形状を求める表面形状測定装置において、
前記測定対象面の干渉縞の画像を撮像する撮像手段と、
撮像された前記測定対象面を画素ごとに干渉縞の強度値として取り込むサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によって取り込まれた前記強度値である干渉縞強度値群を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された強度値群から画素ごとに強度値を読み出し、
画面内の複数画素に置いて、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、仮定した任意周波数の正弦波状関数との局所的な位相のずれ量を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定し、
画面内の測定対象画素に置いて、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、周波数が前記推定周波数または予め推定した周波数であり、直流成分、交流振幅、及び位相が一定と仮定した正弦波状関数とから、各画素の位相を求め、
この求めた前記各画素の位相から撮像された測定対象面の表面高さを求め、
さらに、この求めた前記測定対象面の表面高さから表面形状を求める演算手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0060】
(作用・効果) この発明に係る表面形状の測定装置によると、測定対象へ格子縞を投影することにより干渉縞を発生させる。この干渉縞の強度値を画素単位で求め、干渉縞波形を求める表現式を利用して画素ごとについて、各画素の強度値と画素ごとにその近隣にある画素の強度値とを利用し、各画素に含まれる干渉縞波形の直流成分、交流振幅、及び位相が等しいと仮定し、各画素の位相を求める。得られた位相から表面高さが求められる。従来、上記表現式に必要な干渉縞周波数は、画面内の縞本数を目視で数えるか、フーリエ変換により求めていたが、前者は精度が悪く、後者は計算負荷が高かった。本発明によれば、仮定した周波数の正弦波状関数と、実測信号との複数個所における局所的な位相のずれ量を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定することができ、精度が高く、計算負荷の低い表面形状測定が可能になる。
【0061】
第26の発明は、第25の発明に係る表面形状の測定装置において、第10から第18のいずれかの発明を用いて、取得した干渉縞の画像の周波数を推定することを特徴とする。
【0062】
(作用・効果) この構成によると、測定対象面の干渉縞画像からその周波数を正確にかつ簡易な計算で推定することができ、その推定した周波数を用いて、正確に表面形状の測定をすることができる。
【0063】
なお、本発明における「正弦波状関数」とは、正弦波関数(sinx)、余弦波関数(cosx)、及び広くは任意位相の周期関数(例えばsin(x+φ))のことを言う。「正弦波状画像」についても同様な考え方とする。
【発明の効果】
【0064】
本発明によると、計算負荷が低く、処理時間が短くて済む周波数推定方法、周波数推定装置、表面形状測定方法及び表面形状測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態に係る表面形状測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】表面形状測定装置における処理を示すフローチャートである。
【図3】測定対象面の撮像画像データを示す図である。
【図4】撮像画像のx軸方向輝度変化を示す図である。
【図5】sinφとcosφの符号情報を利用してφの範囲を特定出来ることを示す図である。
【図6】本実施形態の装置を利用して急峻段差を測定した場合の測定結果を示す図である。
【図7】実施例1に係る周波数推定の観測値とモデル信号波形を示す図である。
【図8】図7の場合の各画素の位相を示す図である。
【図9】図8に直線をフィッティングした図である。
【図10】推定した周波数を初期値とした場合の観測値とモデル信号波形を示す図である。
【図11】図10の場合の各画素の位相を示す図である。
【図12】位相のジャンプ回避の例(実施例2)を示す図である。
【図13】実施例4に係る周波数推定の観測画像とモデル画像を示す図である。
【図14】図13の場合の各画素の位相を示す図である。
【図15】図14のデータに直線をフィッティングした図である。
【図16】実施例4における観測データの真値画像と推定画像とを比較する図である。
【図17】実施例5に係る周波数推定の観測画像とモデル画像を示す図である。
【図18】図17の場合の各画素の位相を示す図である。
【図19】図17のデータに直線をフィッティングした図である。
【図20】実施例5における観測データの真値画像と推定画像とを比較する図である。
【図21】実施例4及び実施例5におけるフィッティング点を示す図である。
【図22】実施例3における原点シフトモードを説明するための図である。
【図23】原点シフトモードを用いないフィティングを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本実施形態では、表面が略平坦な測定対象物のその表面高さ及びその表面形状を、干渉縞を利用して測定する表面形状測定装置を例に採って説明する。
【0067】
図1は、本発明の実施形態に係る表面形状測定装置の概略構成を示す図である。
【0068】
この表面形状測定装置は、半導体ウエハ、ガラス基板、金属膜などの表面に微細な凹凸段差を有する略平坦な測定対象物30に特定波長帯域の単色光を照射する光学系ユニット1と、光学系ユニット1を制御する制御系ユニット2とを備えて構成されている。
【0069】
光学系ユニット1は、測定対象面30A及び参照面15に照射する光を発生させるための光源である白色光源10と、白色光源10から白色光を平行光にするコリメートレンズ11と、特定周波数帯域の単色光だけを通過させるバンドパスフィルタ12と、バンドパスフィルタ12を通過した光を測定対象物30の方向に反射する一方、測定対象物30の方向からの光を通過させるハーフミラー13と、ハーフミラー13で反射されてきた単色光を集光する対物レンズ14と、対物レンズ14を通過してきた単色光を、参照面15へ反射させる参照光と、測定対象面30Aへ通過させる測定光とに分けるとともに、参照面15で反射してきた参照光と測定対象面30Aで反射してきた測定光とを再びまとめて干渉縞を発生させるビームスプリッタ17と、参照光と測定光とがまとめられた単色光を結像する結像レンズ18と、干渉縞とともに測定対象面30Aを撮像するCCDカメラ19とを備えて構成されている。なお、CCDカメラ19は、本発明の撮像手段に相当する。
【0070】
白色光源10は、例えばハロゲンランプなどであり、比較的広い周波数帯域の白色光を発生させる。この白色光源10から発生された白色光は、コリメートレンズ11によって平行光とされ、バンドパスフィルタ12によって特定周波数帯域の単色光となり、ハーフミラー13に向かう。
【0071】
ハーフミラー13は、コリメータレンズ11からの平行光を測定対象物30の方向に向けて反射する一方、測定対象物30の方向から戻ってきた光を通過させるものである。このハーフミラー13で反射された特定周波数帯域の単色光は、対物レンズ14に入射する。
【0072】
対物レンズ14は、入射してきた光を測定対象物30及び参照面15に向けて集光するレンズである。この対物レンズ14によって集光される光は、ビームスプリッタ17に到達する。
【0073】
ビームスプリッタ17は、対物レンズ14で集光される光を、参照面15で反射させる参照光と、測定対象面30Aで反射させる測定光とに分ける。また、各面で反射して同一光路を戻る参照光と測定光とを再びまとめることによって、干渉を発生させるものである。ビームスプリッタ17に達した光は、ビームスプリッタ17の面で反射された参照光と、ビームスプリッタ17を通過する測定光とに分けられ、その参照光は参照面15に達し、その測定光は測定対象面30Aに達する。
【0074】
参照面15は、参照光の進行方向に対して前後斜め傾斜姿勢で取り付けられている。この参照面15によって反射された参照光は、ビームスプリッタ17に達し、さらに、この参照光はビームスプリッタ17によって反射される。
【0075】
参照面15を参照光の進行方向に対して前後斜め傾斜姿勢で取り付けることにより、参照光の到達距離及び反射光がCCDカメラ19に到達するまでの距離が、その反射面の位置によって変化する。これは参照面15を移動して、参照面15とビームスプリッタ17との間の距離L1を変動させるのと等価である。
【0076】
ビームスプリッタ17を通過した測定光は、測定対象物30に向けて集光され、測定対象面30Aで反射する。この反射した測定光は、ビームスプリッタ17に達して、そのビームスプリッタ17を通過する。
【0077】
ビームスプリッタ17で、参照光と測定光とが再びまとまる。このとき、参照面15とビームスプリッタ17との間の距離L1と、ビームスプリッタ17と測定対象面30Aとの間の距離L2との違いによって光路差が生じる。この光路差に応じて、参照光と測定光とは干渉する。この干渉が生じた状態の光は、ハーフミラー13を通過し、結像レンズ18によって結像されて、CCDカメラ19に入射する。
【0078】
CCDカメラ19は、測定光によって映し出される測定対象面30Aの画像を撮像する。このとき、参照面15が傾いていることにより、撮像された測定対象面30Aの画像には干渉による輝度の空間的な変動である干渉縞が撮像される。この撮像した画像データは、制御系ユニット2によって収集される。また、後述で明らかになるが、制御系ユニット2の駆動部24によって、所望する撮像箇所へ光学系ユニット1を図1中のx,y,z軸方向に移動させる。また、CCDカメラ19によって、所定のサンプリングタイミングで測定対象面30Aの画像が撮像され、その画像データが制御系ユニット2によって収集される。
【0079】
制御系ユニット2は、表面形状測定装置の全体の統括的な制御や、所定の演算処理を行うためのCPU20と、CPU20によって逐次収集された画像データやCPU20での演算結果などの各種のデータやプログラムを記憶するメモリ21と、サンプリングタイミングや撮像エリアなどその他の設定情報を入力するマウスやキーボードなどの入力部22と、測定対象面30Aの画像などを表示するモニタ23と、CPU20の指示に応じて光学系ユニット1を上下左右に移動するように駆動させる、例えば3軸駆動型のサーボモータなどの駆動機構で構成される駆動部24とを備えるコンピュータシステムで構成されている。なお、CPU20は、本発明における演算手段に、メモリ21は本発明における記憶手段にそれぞれ相当する。
【0080】
CPU20は、いわゆる中央演算処理装置であって、CCDカメラ19、メモリ21及び駆動部24を制御するとともに、CCDカメラ19で撮像した干渉縞を含む測定対象面30Aの画像データに基づいて、測定対象物30の表面高さを求める演算処理を行う周波数推定部28や位相算出部25や符号判定部26や画像データ作成部27を備えている。このCPU20における周波数推定部28や位相算出部25や符号判定部26や画像データ作成部27の処理については後で詳細に説明する。さらに、CPU20には、モニタ23と、キーボードやマウスなどの入力部22とが接続されており、操作者は、モニタ23に表示される操作画面を観察しながら、入力部22から各種の設定情報の入力を行う。また、モニタ23には、測定対象面30Aの表面画像や凹凸形状などが数値や画像として表示される。
【0081】
駆動部24は、所望する撮像箇所へ例えば光学系ユニット1を図1中のx,y,z軸方向に移動させる装置である。この駆動部24は、CPU20からの指示によって光学系ユニット1をx,y,z軸方向に駆動する例えば3軸駆動型のサーボモータを備える駆動機構で構成されている。なお、本実施形態では、光学系ユニット1を動作させるが、例えば測定対象物30が載置される図示していないテーブルを直交3軸方向に変動させるようにしてもよい。また、移動軸は2軸以下や存在しなくても良い。
【0082】
以下、本実施形態の特徴部分である表面形状測定装置全体で行なわれる処理を図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0083】
なお、本実施形態では、参照面15を、図1に示すように傾けた場合を例に採って説明する。この場合、撮影画像は図3に示すようになる。また、表面形状測定装置は、アンラッピングモードと、原点シフトモードとのいずれかを選択可能とされる。その具体的な内容については、実施例2,3で後述する。
【0084】
<ステップS1> 測定データの取得
CPU20は、図示しないステッピングモータなどの駆動系を駆動させて駆動部24が光学ユニット1を測定対象物30の撮像領域に移動させる。撮像位置が決定すると、光学系ユニット1は、白色光源10から白色光を発生させる。この白色光はバンドパスフィルタ12を介して単色光(例えば、波長λ=600nm)とされ測定対象物30及び参照面15に照射される。
【0085】
この単色光の照射に連動してCCDカメラ19が作動し、例えば、図1に示す凸部30Bを有する測定対象面30Aの撮像を1回行う。この撮像によって取得された測定対象面30Aの干渉縞の画像データが収集されてメモリ21に記憶される。つまり、メモリ21には傾斜姿勢の参照面15での反射光と、測定対象面30Aで反射して戻る反射光とによって生じる干渉縞の画像データが記憶される。このとき参照面15で反射する光の伝播距離(L1の2倍)は、参照面15での反射位置において規則的に変動する。よって、測定対象面30Aの高さが平坦な部分では、測定対象面30Aで反射して戻る反射光の伝播距離(L2の2倍)は、測定箇所における変動は無いから、CCDカメラ19によって撮像される画像における干渉縞は参照面15の傾きの向きと角度に応じて撮像面内に空間的に規則的に現れる。この干渉縞は参照面15で反射する光の伝播距離(L1の2倍)と測定対象面30Aで反射して戻る反射光の伝播距離(L2の2倍)の差がλ/2=300nmとなるごとに1周期分現れる。
【0086】
一方、図1に示されるように、測定対象面30Aの高さが変化する箇所では、干渉縞がずれた不規則な縞模様として現れる。
【0087】
なお、この過程が本発明における第1過程に相当する。
【0088】
<ステップS2> 干渉光強度値群の取得
CPU20は、撮像してメモリ21に記憶した各画素の強度値、すなわち、測定対象面30Aの干渉光の強度値を画像データから取り込む。このとき、図4に示すように、測定対象面30Aと凸部30Bの高さが変化する箇所で、干渉縞の空間的な位相が(例えば図4の本実施形態ではx軸方向に)ずれた不規則な縞模様として現れる(図4における200番画素付近及び330番画素付近参照)。
【0089】
なお、この過程が本発明における第2過程に相当する。
【0090】
<ステップS3>キャリア周波数の推定
CPU20の周波数推定部28は、測定対象面30Aの画面内の複数画素において、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、仮定した任意周波数の正弦波状関数との局所的な位相のずれ量を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定する。
【0091】
具体的には、まず、画面内の任意画素における位相を以下の方法で求める。各画素における干渉縞の光の強度値は次式(1)のように表される。なお、ここでは、説明を容易にするため、x軸方向の一次元の場合について述べる。
【0092】
g(x)=a(x)+b(x)cos{2πfx+φ(x)} ・・・(1)
【0093】
ここで、xは、x軸方向の画素の位置座標を表し、特にこのx位置における画素を注目画素と記すことがある。また、a(x)は干渉縞波形に含まれる直流成分、b(x)は干渉縞波形に含まれる交流成分(振動成分の振幅であって、以下、適宜に「交流振幅」という)、fは干渉縞g(x)のx軸方向についての空間周波数、φ(x)は位相である。また、周波数fは、画面内で一定であり、その概略値は縞本数の目視カウントや、光学系の設計値から既知と仮定する。
【0094】
次に、注目画素とこれに隣接する画素との2点における輝度(光の強度)情報から位相を求める方法について述べる。隣接する画素は、注目画素からx軸方向に微小距離Δxずれているので、その干渉縞の光の強度値は次式(2)のように表される。
【0095】
g(x+Δx)=a(x+Δx)+b(x+Δx)cos{2πf*( x+Δx )+φ(x+Δx)} ・・・(2)
【0096】
ここで、本実施形態では、注目画素と隣接する画素とのピッチが微小距離であるので、各画素にまたがる干渉縞に含まれる直流成分、交流振幅、及び位相を等しいと仮定し、次式(3)〜(5)の関係式を利用する。
【0097】
a(x) = a(x+Δx) = a ・・・(3)
b(x) = b(x+Δx) = b ・・・(4)
φ(x) = φ(x+Δx) =φ ・・・(5)
ここで、a、b、φは定数である。
【0098】
上記(3)〜(5)のように仮定することにより、式(1)及び式(2)は、以下の式(1a)及び式(2a)のように置き直すことができる。
【0099】
g(x) = a+bcos{2πfx+φ} ・・・(1a)
【0100】
g(x+Δx) = a+bcos{2πf*(x+Δx)+φ} ・・・(2a)
【0101】
次に、G(x),G(x+Δx)をそれぞれ次の式(6),(7)のように定義する。
【0102】
G(x) = g(x)−a ・・・(6)
【0103】
G(x+Δx)=g(x+Δx) −a ・・・(7)
【0104】
次に、式(6),(7)と式(1a),(2a)とcos関数の加法定理とにより、次式(8)、(9)が得られる。
【0105】
G(x) =bcos(2πfx+φ)
=b{cos(2πfx)cosφ−sin(2πfx)sinφ}} ・・・(8)
【0106】
G(x+Δx)=bcos{2πf*(x+Δx)+φ}
=b〔cos{2πf*(x+Δx)}cosφ−sin{2πf*(x+Δx)}sinφ〕〕 ・・・(9)
【0107】
次に、これら式(8)、(9)を行列(10)で表わす。
【0108】
【数1】

なお、Aは、次のように表される。
【0109】
【数2】

ここで、行列(10)の左辺からAの逆行列を掛けて展開することにより、次式(11)、(12)が得られる。
【0110】
【数3】

【0111】
【数4】

これら上記式(11)、(12)を利用し、次式(15)を得ることができる。
【0112】

なお、n′は、整数である。
【0113】
ここで、CPU20は、さらに符号判定部26を備え、この符号判定部26がsinφとcosφの符号情報を参照する。この符号情報を用いると、sinφとcosφの符号の組み合わせから、φの存在範囲をπから2πに拡張できることになる。図5は、式(15)に示されるような、sinφとcosφの符号情報を参照してφの範囲を特定するための具体的な図である。よって、sinφとcosφの符号情報を用いれば式(15)は次式(16)で表わすことができる。
【0114】

なお、nは、整数である。
【0115】
よって、G(x),G(x+Δx)と干渉縞波形の空間周波数fから、式(16)によって位相φを求めることが出来る。G(x),G(x+Δx)は式(6),(7)から画素の輝度情報g(x)及びg(x+Δx)と干渉縞波形の直流成分aからなるので、結局g(x)及びg(x+Δx)、干渉縞波形の直流成分a、干渉縞波形の空間周波数fから、式(16)によってφを求めることが出来る。g(x)及びg(x+Δx)はCCDカメラ19の画素の輝度情報として得ることが出来る。aは例えば、CCDカメラ19で観測された全画素の輝度の平均値とする方法、位相算出対象画素の近傍画素の平均値とする方法、あるいは予め反射率を測定する方法等で求めることが出来る。また、3点以上の輝度情報を利用すれば、直流成分aを未知の数値として連立方程式を解いて、位相を求めることも可能である。
【0116】
周波数の推定は、画面内の複数画素において、上記の方法により位相(以下、位相のずれ量と表現する)を求め、複数画素における位相のずれ量から求められる位相勾配に基づいて、次のようにして実施される。
【0117】
説明を容易にするため、1次元の場合を考えて、まずx軸方向について述べる。真の周波数fの観測データに、周波数fのモデル信号をフィッティング(適合)したとする。この場合、観測データを g(x)=Acos(2πfx+φ(x)) とし、
モデル信号をg′(x)=Acos(2πfx+φ′(x))とすると、2πfx+φ(x)=2πfx+φ′(x)が成立する。
よって、φ′(x)= 2π(f-f)x+φ(x) ・・・(*1)
である。
ここで、φの値が一定と見なせる直線領域をとり、式(*1)をx軸方向について微分することで、次式に示す周波数推定式が得られる。
f=f + (dφ′(x)/dx)/2π
この周波数推定式は、観測データとモデル信号との部分的な位相のずれ量についての位相勾配(dφ′(x)/dx)と、モデル信号の周波数(f)とに基づいて、観測データの周波数が推定できることを表している。
【0118】
この方法による最も簡単な例は、2点における各位相から位相勾配を求めることであるが、3点以上における各位相に直線を当てはめて、より高精度な推定を行うこともできる。
【0119】
なお、この過程が本発明の第3過程に相当する。
【0120】
<ステップS4> 画素単位の位相の算出
ステップS3で求められた周波数を利用して、CPU20の位相算出部25は、測定対象面30Aの算出対象の各画素における位相を、ステップS3で記載した位相計算と同じ方法で求める。すなわち、画面内の測定対象画素において、その画素を含む近傍領域の複数画素の強度値を利用し、その領域内における干渉縞波形と、周波数が前ステップで求められた推定周波数であり、直流成分、交流振幅、及び位相が一定と仮定した正弦波状関数とから、各画素の位相を求める。
【0121】
なお、この過程が本発明の第4過程に相当する。
【0122】
<ステップS5> 画素単位の表面高さ算出
CPU20は、上記式(16)から算出された算出対象の画素の位相φ( x )を次式(17)に代入して高さz( x )を求める。
【0123】

【0124】
ここで、z0は測定対象物30の基準高さである。
【0125】
なお、この過程が本発明における第5過程に相当する。
【0126】
<ステップS6> 全画素について算出終了?
CPU20は、全ての画素について位相と高さの算出が終了するまで、ステップS4〜S5の処理を繰り返し行い、位相と表面高さを求める。
【0127】
<ステップS7> 表面形状の表示
CPU20の画像データ作成部27は、算出された表面高さの情報から測定対象面30Aの表示画像を作成する。そして、CPU20は、この画像データ作成部27によって作成された情報に基づいて、図6に示すように、モニタ23に測定対象物30の表面高さの情報を表示したり、それら各特定箇所の高さの情報に基づいた3次元または2次元の画像を表示したりする。オペレータは、これらの表示を観察することで、測定対象面30Aの表面にある凹凸形状を把握することができる。以上、測定対象面30Aの表面形状の測定処理が終了する。
【0128】
なお、この過程が本発明における第6過程に相当する。
【0129】
上述のように、CCDカメラ19で撮像した画像データから画素ごとの干渉縞の光の強度値と、その近傍の複数画素の強度値を算出する過程で、各画素の干渉縞波形に含まれる直流成分a(x)、交流振幅b(x)、及び位相φ(x)のそれぞれが、各画素について等しいと仮定して連立比較することにより各画素における干渉縞の直流成分と交流振幅をキャンセルすることができる。
【0130】
本発明に係る上記実施形態によると、観測データと、仮定した任意周波数の正弦波状関数との部分的な位相のずれ量を求め、この位相のずれ量についての位相勾配に基づいて、観測データの周波数を推定する。つまりProny法やフーリエ変換のような複雑な演算処理を利用する必要がないので、計算負荷が軽減され、作業効率の向上を図ることができる。前記周波数推定の計算は、少なくとも2点の位相を求め、その2点の位相の傾きを求めさえすればよく、明らかに計算負荷が低くできる。
【0131】
本発明は上述した実施形態のものに限らず、次のように変形実施することもできる。
【0132】
即ち、上記実施形態では、算出対象の画素に隣接する1個の画素の干渉光の強度値を利用して測定対象面30Aの高さを求めていたが、算出対象の画素の近傍にある2個以上の画素を利用し、合計3画素以上から測定対象面30Aの高さを求めてよい。
【0133】
ステップS3における周波数推定について、以上の説明では、x軸方向だけについて述べたが、上の方法を2次元に拡張することができる。即ち、観測データにおけるx軸方向、y軸方向についての周波数をそれぞれf,fとし、モデル信号におけるx軸方向、y軸方向についての周波数をそれぞれfx0,fy0とし、観測データをg(x,y)=Acos(2πfx+2πfy+φ(x,y))とし、モデル信号をg′(x,y)=Acos(2πfx0x+2πfy0y+φ′(x,y))とすると、2次元では式(*1)に相当する式は次式のようになる。
φ′(x,y)= 2π(f-fx0)x+ 2π(f-fy0)y+φ(x,y)
・・・(*1a)
ここで、φ(x,y)の値が一定と見なせる平面領域をとり、式(*1a)をx軸方向,y軸方向について微分することで、次式に示す周波数推定式が得られる。
=fx0 + (dφ′(x,y)/dx)/2π
=fy0 + (dφ′(x,y)/dy)/2π
なお、dφ′(x,y)/dx,dφ′(x,y)/dyは、それぞれx軸方向、y軸方向についての位相勾配である。この周波数推定式は、x,yの異なる2点以上の点で求めた位相を利用して、x軸方向とy軸方向の周波数が同時に推定できることを表している。この方法は、干渉縞の周波数や方向に依らず、高精度で2次元の周波数推定ができるという特徴がある。
【0134】
次に、上記ステップS3で行った周波数推定の処理について、理論データを用いた実施例により、具体的に説明する。以下の実施例1,2では、正弦波状の周期信号について、本発明の方法を利用してその周波数を推定する場合を例に採って説明する。また、実施例3,4では、周期縞画像について、本発明の方法を利用して、その周波数を推定する場合を例に採って説明する。
【実施例1】
【0135】
実施例1は、請求項1・2・6・7・10・11・15・16の周波数推定に対応する。本例はx軸方向の1次元について行った。
【0136】
計算機により作成された周波数=0.0100(/画素)、直流成分=1.0000、振幅=1.0000、初期位相=0.0000のcos波信号を観測値として、周波数推定を実施した。周波数予測値f0=0.0090(/画素)とした場合の観測値とモデル信号波形を図7に示す。横軸はテレビカメラで撮像した画像の水平方向で、単位は画素になっている。これを時間的に変化する信号として、横軸を時間、その単位をsecとしても同様に扱える。
【0137】
ある点の近傍の観測値にモデル信号をフィッティングして、当該点での位相を求める。フィッティングに使用するデータ数を25個として、使用データ領域をx軸方向に順次変更した時の各画素の位相を図8に示す。この位相値は、観測値とモデル信号の「位相ずれ」を表すとも言える。
【0138】
図8のデータに直線をフィッティングすると、図9に示すように、位相勾配=0.006283が得られる。
【0139】
よって、周波数は、
f=f + (dφ′(x)/dx)/2π
=0.0090+0.00628/2π
=0.0100
となり、正しい周波数が得られた。
【0140】
この周波数を初期値として、再度、周波数推定を実施すると、信号波形と位相は図10,図11に示すようになり、位相勾配はゼロとなる。すなわち、周波数推定値が正しいことが確認できた。また、本実施例では、初期位相をゼロとしたため、図11の位相値がゼロとなったが、初期位相がゼロでない場合でも、位相値は一定になり、位相勾配はゼロになるので、周波数推定に問題はない。
【0141】
上記の実施例1では、位相の計算を全画素で行ったが、位相勾配を求めるためには、最低2画素の位相計算でも良い。
【実施例2】
【0142】
実施例2は、アンラッピングが必要な場合の周波数推定に関するものであり、請求項3・4・12・13に対応する。この例では、アンラッピングモードが選択されているものとする。
【0143】
周波数の予測値と観測値の周波数の差が大きい場合、位相勾配が大きくなり、図12の破線に示すように、位相のジャンプが発生する。これは、位相計算結果が±πの区間でしか得られないためである。この場合には、以下の対策により正しい位相勾配を得ることができる。
(1)アンラッピングによる方法:位相のジャンプを検出し、ジャンプが解消するように、位相値に2πを加減算する。アンラッピング後の位相は、図12の実線に示すようになり、正しい位相勾配を求めることができる。
(2)位相勾配計算区間を縮小する方法:ジャンプが含まれない区間を選んで、勾配を計算する。
【実施例3】
【0144】
実施例3は、原点シフトモードを選択した場合の周波数推定に関するものであり、請求項5,14に対応する。図22,23を参照して、実施例3について説明する。アンラッピングモードと異なるのは、次の点である。即ち、原点シフトモードでは、周波数推定の際に、図22(A)に示すように、観測データにおける輝度の最大値近傍と、モデル信号の最大値とが一致するように座標原点をシフトしてフィッティングを行い、各点の位相φ′(x,y)を計算する。これにより、各点の位相φ′(x,y)は、図22(B)に示すように、座標原点の近傍でゼロになる。つまり、求められる位相がゼロ中心となるため、±πを超える可能性が低くなる。この粗推定を複数の小領域で実施し、得られた周波数の平均値を初期値として、広い領域の周波数推定を実施する。その結果、アンラッピングを不要化することができ、計算時間を短縮できるようになる。
【0145】
原点シフトモードを用いると、ジャンプを解消するために行う手順、つまり位相値に2πを加減算する手順を必要としない。これは、式(16)においてn=0とすることに相当する。式(16)において、隣の画素を見ながら、ジャンプしないようにnを決めるのがアンラッピングであり、n=0とし、位相を−πから+πの間に制限するのが原点シフトであると言うことができる。一方、図23は原点シフトモードを用いないフィティング(アンラッピング計算が必要な場合)を示している。原点シフトモードを用いないフィティングでは、周波数推定の際に、図23(A)に示すように、観測データにおける輝度の最大値近傍と、モデル信号の最大値とが一致していない状態でフィッティングを行い、各点の位相φ′(x,y)を計算してしまうことがある。この場合、各点の位相φ′(x,y)は、図23(B)に示すように、座標原点の近傍でゼロにならず、その結果、求められる位相が±πを超えてしまうことがある。
【実施例4】
【0146】
実施例4は、2次元に形成された斜め縞についての周波数推定に関するものであり、請求項8,17に対応する。図13,14,15,16,21を参照して、実施例4について説明する。
【0147】
観測値は、計算機により次のように作成された信号であるとして、この信号に対する周波数推定を実施した。即ち、この観測値は、x軸方向についての周波数f=0.1000(/画素)、y軸方向についての周波数f=0.1000(/画素)、直流成分=1.0000、振幅=1.0000、初期位相=0.0000のcos波信号である。この観測値信号の2次元周期縞画像(つまりg(x,y)に対応する)を図13(A)に示す。一方、モデル信号は、周波数予測値fx0=0.11(/画素)、周波数予測値fy0=0.0900(/画素)の正弦波状信号である。このモデル信号の2次元の正弦波状画像(つまりg′(x,y)に対応する)を図13(B)に示す。
【0148】
上記2次元の周期縞画像に2次元の正弦波状画像をフィッティングして、その位相差を求めた。フィッティングに使用するデータ数を3×3個(図21参照)として、使用データ領域をx軸方向及びy軸方向に順次変更した時の各画素の位相差を図14に示す。この位相値は、観測値とモデル信号の「位相ずれ」を表すとも言える。
【0149】
図14のデータのx軸方向,y軸方向のそれぞれについて最小自乗法を用いて直線をフィッティングすると、x軸方向については、図15(A)に示すように、位相勾配=-0.0628が得られる。また、y軸方向については、図15(B)に示すように、位相勾配=0.0628が得られる。
【0150】
よって、周波数は、
=fx0 + (dφ′(x,y)/dx)/2π
=0.1100-0.0628/2π
=0.1000
=fy0 + (dφ′(x,y)/dy)/2π
=0.0900+0.0628/2π
=0.1000
となり、正しい周波数が得られた。推定後の画像は図16(B)のように、図13(A)に示す観測値信号の2次元周期縞画像(なお、両者の比較を容易にするため、図16(A)にも図13(A)と同一画像を示した)に一致する。実施例3では、1回の処理で、2方向の周波数が同時に推定可能となる。
【実施例5】
【0151】
実施例5は、2次元に形成された縦縞についての周波数推定に関するものであり、請求項8,17に対応する。図17,18,19,20,21を参照して、実施例5について説明する。
【0152】
観測値は、計算機により次のように作成された信号であるとして、この信号に対する周波数推定を実施した。即ち、この観測値は、x軸方向についての周波数f=0.1000(/画素)、y軸方向についての周波数f=0.0000(/画素)、直流成分=1.0000、振幅=1.0000、初期位相=0.0000のcos波信号である。この観測値信号の2次元周期縞画像(つまりg(x,y)に対応する)を図17(A)に示す。一方、モデル信号は、周波数予測値fx0=0.0900(/画素)、周波数予測値fy0=0.0100(/画素)の正弦波状信号である。このモデル信号の2次元の正弦波状画像(つまりg′(x,y)に対応する)を図17(B)に示す。
【0153】
上記2次元の周期縞画像に2次元の正弦波状画像をフィッティングして、その位相差を求めた。フィッティングに使用するデータ数を3×3個(図21参照)として、使用データ領域をx軸方向及びy軸方向に順次変更した時の各画素の位相差を図18に示す。この位相値は、観測値とモデル信号の「位相ずれ」を表すとも言える。
【0154】
図18のデータのx軸方向,y軸方向のそれぞれについて最小自乗法を用いて直線をフィッティングすると、x軸方向については、図19(A)に示すように、位相勾配=0.0628が得られる。また、Y軸方向については、図19(B)に示すように、位相勾配=-0.0628が得られる。
【0155】
よって、周波数は、
=fx0 + (dφ′(x,y)/dx)/2π
=0.0900+0.0628/2π
=0.1000
=fy0 + (dφ′(x,y)/dy)/2π
=0.0100-0.0628/2π
=0.0000
となり、正しい周波数が得られた。推定後の画像は図20(B)のように、図17(A)に示す観測値信号の2次元周期縞画像(なお、両者の比較を容易にするため、図20(A)にも図17(A)と同一画像を示した)に一致する。
【0156】
この周波数を初期値として、再度、周波数推定を実施すると、信号波形と位相は図10,図11に示すようになり、位相勾配はゼロとなる。すなわち、周波数推定値が正しいことが確認できた。実施例4では、x軸方向,y軸方向の片方の周波数がゼロでも推定可能となることが示された。
【符号の説明】
【0157】
1 光学系ユニット
2 制御系ユニット
10 白色光源
11 コリメートレンズ
12 バンドパスフィルタ
13 ハーフミラー
14 対物レンズ
15 参照面
17 ビームスプリッタ
18 結像レンズ
19 CCDカメラ
20 CPU
21 メモリ
22 入力部
23 モニタ
24 駆動部
25 位相算出部
26 符号判定部
27 画像データ作成部
28 周波数推定部
30 測定対象物
30A 測定対象面
30B 測定対処面の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉縞や電気信号などの有周期性の観測データにおける周波数を推定する周波数推定方法であって、
観測データを取得するステップと、
仮定した任意周波数の正弦波状関数をモデル信号として前記観測データに適合させるステップと、
前記観測データと前記モデル信号との部分的な位相のずれ量を求めるステップと、
前記モデル信号の周波数と、前記位相のずれ量についての位相勾配とに基づいて、前記観測データの周波数を算出するステップと
を有することを特徴とする周波数推定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の周波数推定方法において、位相のずれ量の計算は、部分的な観測データを、仮定した任意周波数の正弦波状関数に最小自乗法であてはめて求めることを特徴とする周波数推定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の周波数推定方法において、位相のずれ量についての位相勾配を計算する前に予め、位相のずれ量の次数ジャンプ境界で位相接続しておくことを特徴とする周波数推定方法。
【請求項4】
請求項2に記載の周波数推定方法において、位相のずれ量についての位相勾配を計算する際に、位相のずれ量の次数ジャンプ境界を避けて位相勾配を計算することを特徴とする周波数推定方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の周波数推定方法において、観測データにおける最大値と、モデル信号の最大値とが一致するように、座標原点をシフトして観測データをモデル信号に適合させることを特徴とする周波数推定方法。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の周波数推定方法において、位相のずれ量についての位相勾配の計算方法は、2個所以上の位相のずれ量に最小自乗法で1次直線を近似して求めることを特徴とする周波数推定方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の周波数推定方法において、求めたい周波数(f)は、仮定した任意周波数の正弦波状関数の周波数をfとし、位相のずれ量についての位相勾配をdφ′(x)/dxとして、f=f+(dφ′(x)/dx)/2π の式から求めることを特徴とする周波数推定方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の周波数推定方法において、前記観測データが2次元の周期縞画像からなり、前記正弦波状関数が2次元の正弦波状画像からなり、上記2次元の周期縞画像の周波数(f,f)を、下記式から求めることを特徴とする周波数推定方法。
=fx0+(dφ′(x,y)/dx)/2π
=fy0+(dφ′(x,y)/dy)/2π
ここで、直交座標系の2軸をx,yとし、仮定した任意周波数の正弦波状関数のx軸方向についての周波数をfx0とし、仮定した任意周波数の正弦波状関数のy軸方向についての周波数をfy0とし、2次元の周期縞画像と2次元の正弦波状画像とのx軸方向についての位相勾配をdφ′(x,y)/dxとし、2次元の周期縞画像と2次元の正弦波状画像とのy軸方向についての位相勾配をdφ′(x,y)/dyとしている。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の周波数推定方法において、推定した周波数を、新たに任意周波数の正弦波状関数の周波数として推定計算を繰り返すことを特徴とする周波数推定方法。
【請求項10】
干渉縞や電気信号などの有周期性の観測データにおける周波数を推定する周波数推定装置であって、
観測データを取得する取得手段と、
仮定した任意周波数の正弦波状関数をモデル信号として前記観測データに適合させ、前記観測データと前記モデル信号との部分的な位相のずれ量を求め、前記モデル信号の周波数と、前記位相のずれ量についての位相勾配とに基づいて、前記観測データの周波数を算出する演算手段と
を有することを特徴とする周波数推定装置。
【請求項11】
請求項10に記載の周波数推定装置において、位相のずれ量の計算は、部分的な観測データを、仮定した任意周波数の正弦波状関数に最小自乗法であてはめて求める演算手段を備えることを特徴とする周波数推定装置。
【請求項12】
請求項11に記載の周波数推定装置において、位相のずれ量についての位相勾配を計算する前に予め、位相のずれ量の次数ジャンプ境界で位相接続しておく演算手段を備えることを特徴とする周波数推定装置。
【請求項13】
請求項12に記載の周波数推定装置において、位相のずれ量についての位相勾配を計算する際に、位相のずれ量の次数ジャンプ境界を避けて位相勾配を計算する演算手段を備えることを特徴とする周波数推定装置。
【請求項14】
請求項10または11に記載の周波数推定装置において、観測データにおける最大値と、モデル信号の最大値とが一致するように、座標原点をシフトして観測データをモデル信号に適合させることを特徴とする周波数推定装置。
【請求項15】
請求項12から15のいずれかに記載の周波数推定装置において、位相のずれ量についての位相勾配の演算手段は、2個所以上の位相のずれ量に最小自乗法で1次直線を近似して求める演算手段を備えることを特徴とする周波数推定装置。
【請求項16】
請求項10から15のいずれかに記載の周波数推定装置において、周波数(f)は、仮定した任意周波数の正弦波状関数の周波数をfとし、位相のずれ量についての位相勾配をdφ′(x)/dxとして、f=f+(dφ′(x)/dx)/2πの式から求める演算手段を備えることを特徴とする周波数推定装置。
【請求項17】
請求項10から16のいずれかに記載の周波数推定装置において、前記観測データが2次元の周期縞画像からなり、前記正弦波状関数が2次元の正弦波状画像からなり、上記2次元の周期縞画像の周波数(f,f)を、下記式から求めることを特徴とする周波数推定装置。
=fx0+(dφ′(x,y)/dx)/2π
=fy0+(dφ′(x,y)/dy)/2π
ここで、直交座標系の2軸をx,yとし、仮定した任意周波数の正弦波状関数のx軸方向についての周波数をfx0とし、仮定した任意周波数の正弦波状関数のy軸方向についての周波数をfy0とし、2次元の周期縞画像と2次元の正弦波状画像とのx軸方向についての位相勾配をdφ′(x,y)/dxとし、2次元の周期縞画像と2次元の正弦波状画像とのy軸方向についての位相勾配をdφ′(x,y)/dyとしている。
【請求項18】
請求項10から17のいずれかに記載の周波数推定装置において、推定した周波数を、新たに任意周波数の正弦波状関数の周波数として推定計算を繰り返す演算手段を備えることを特徴とする周波数推定装置。
【請求項19】
光源から出力される光を分岐手段を介して測定対象面と参照面とに照射し、測定対象面と参照面の両方から反射して同一光路を戻る反射光によって生じる干渉縞の強度値に基づいて測定対象面の表面高さと表面形状を求める表面形状の測定方法において、
前記参照面を光の進行方向に対して任意角度の斜め傾斜姿勢に配置した状態で発生させた干渉縞の画像を取得する第1過程と、
取得した前記画像における各画素の干渉縞の強度値を求める第2過程と、
取得した前記干渉縞の強度値から、前記参照面の斜め傾斜姿勢によるキャリア周波数を推定する第3過程と、
推定した前記周波数かまたは、予め推定しておいた周波数を利用し、また干渉縞波形を求める表現式を利用して前記画素ごとについて、各画素の強度値とその近傍の複数画素の強度値とを利用し、それらの画素における干渉縞波形の直流成分、交流振幅、及び位相が等しいと仮定し、各画素の位相を求める第4過程と、
求めた前記各画素の位相から撮像された測定対象面の表面高さを求める第5の過程と、
求めた前記測定対象面の表面高さから表面形状を求める第6過程と、
を備えたことを特徴とする表面形状の測定方法。
【請求項20】
請求項19に記載の表面形状の測定方法において、請求項1から9のいずれかに記載の周波数推定方法を用いて、取得した干渉縞の画像の周波数を推定することを特徴とする表面形状の測定方法。
【請求項21】
光源から出力される光を分岐手段を介して測定対象面と参照面とに照射し、測定対象面と参照面の両方から反射して同一光路を戻る反射光によって生じる干渉縞の強度値に基づいて測定対象面の表面高さと表面形状を求める表面形状測定装置において、
前記参照面は、光の進行方向に対して任意角度の斜め傾斜姿勢で配備されており、
前記光が照射されて測定対象物と参照面とから反射して同一光路を戻る反射光によって干渉縞を生じさせて測定対象面を撮像する撮像手段と、
撮像された前記測定対象面を画素ごとに干渉縞の強度値として取り込むサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によって取り込まれた前記強度値である干渉縞強度値群を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された強度値群から画素ごとに強度値を読み出し、前記参照面の斜め傾斜姿勢によるキャリア周波数を推定し、推定した前記周波数かまたは、予め推定しておいた周波数を利用し、各画素の強度値と画素ごとにその近隣にある画素の強度値を利用し、各画素に含まれる干渉縞波形の直流成分、交流振幅、及び位相が等しいと仮定するとともに、干渉縞波形を求める表現式を利用して各画素の位相を求め、この求めた前記各画素の位相から撮像された測定対象面の表面高さを求め、さらに、この求めた前記測定対象面の表面高さから表面形状を求める演算手段と、
を備えたことを特徴とする表面形状測定装置。
【請求項22】
請求項21に記載の表面形状測定装置において、請求項10から16のいずれかに記載の周波数推定装置を備え、取得した干渉縞の画像の周波数を推定することを特徴とする表面形状測定装置。
【請求項23】
光源から出力される光を、格子を介して測定対象面に格子像を投影し、測定対象面によって生じる干渉縞の強度値に基づいて測定対象面の表面高さと表面形状を求める表面形状の測定方法において、
前記測定対象面の干渉縞の画像を取得する第1過程と、
取得した前記画像における各画素の干渉縞の強度値を求める第2過程と、
取得した前記干渉縞の強度値から、前記参照面の斜め傾斜姿勢によるキャリア周波数を推定する第3過程と、
推定した前記周波数かまたは、予め推定しておいた周波数を利用し、また干渉縞波形を求める表現式を利用して前記画素ごとについて、各画素の強度値とその近傍の複数画素の強度値とを利用し、それらの画素における干渉縞波形の直流成分、交流振幅、及び位相が等しいと仮定し、各画素の位相を求める第4過程と、
求めた前記各画素の位相から撮像された測定対象面の表面高さを求める第5の過程と、
求めた前記測定対象面の表面高さから表面形状を求める第6過程と、
を備えたことを特徴とする表面形状の測定方法。
【請求項24】
請求項23に記載の表面形状の測定方法において、請求項1から9のいずれかに記載の周波数推定方法を用いて、取得した干渉縞の画像の周波数を推定することを特徴とする表面形状の測定方法。
【請求項25】
光源から出力される光を、格子を介して測定対象面に格子像を投影し、測定対象面によって生じる干渉縞の強度値に基づいて測定対象面の表面高さと表面形状を求める表面形状測定装置において、
前記測定対象面の干渉縞の画像を撮像する撮像手段と、
撮像された前記測定対象面を画素ごとに干渉縞の強度値として取り込むサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によって取り込まれた前記強度値である干渉縞強度値群を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された強度値群から画素ごとに強度値を読み出し、前記参照面の斜め傾斜姿勢によるキャリア周波数を推定し、推定した前記周波数かまたは、予め推定しておいた周波数を利用し、各画素の強度値と画素ごとにその近隣にある画素の強度値を利用し、各画素に含まれる干渉縞波形の直流成分、交流振幅、及び位相が等しいと仮定するとともに、干渉縞波形を求める表現式を利用して各画素の位相を求め、この求めた前記各画素の位相から撮像された測定対象面の表面高さを求め、さらに、この求めた前記測定対象面の表面高さから表面形状を求める演算手段と、
を備えたことを特徴とする表面形状測定装置。
【請求項26】
請求項25に記載の表面形状測定装置において、請求項10から18のいずれかに記載の周波数推定装置を備え、取得した干渉縞の画像の周波数を推定することを特徴とする表面形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−151781(P2010−151781A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36859(P2009−36859)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】