説明

回路接続材料、接続構造体及びその製造方法

【課題】対向配置された電極同士を短時間且つ高分解能で接続することが可能で、接続信頼性に十分優れる回路接続材料を提供すること。
【解決手段】回路接続材料100は、第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、第一の回路電極と第二の回路電極とを対向させた状態で接続するためのものである。この回路接続材料100は、光の最大吸収波長が800〜1200nmの範囲内にある接着剤組成物30を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続材料、接続構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路部材同士またはICチップ等の電子部品と回路部材の接続とを電気的に接続する際には、接着剤に必要に応じて導電粒子を分散させた異方導電性接着剤が用いられている。このような接着剤を、相対峙する回路部材の電極間に配置し、加熱及び加圧によって回路部材同士を接続することで、隣接する電極間では絶縁性を維持しつつ対向する電極間の電気的接続を行うことができる。こうした異方導電性接着剤として、エポキシ樹脂をベースとした回路接続材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平3−16147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような回路接続材料を用いた回路部材の接続方法は、回路部材同士またはICチップ等の電子部品と回路部材との間に異方導電性接着剤を介在させた状態で、回路部材同士またはICチップ等の電子部品と回路部材とを重ね合わせ、圧着ツールを使用して加熱及び加圧することにより熱圧着するものである。このとき行われる加熱加圧の条件は、例えば150〜220℃、1〜5MPa、15〜4秒間程度である。
【0004】
ところで、近年の電子機器の小型化、精密化に伴い、異方導電性接着剤にも微細な電極構造を有する回路部材を十分な信頼性で接続できるように高分解能を有することが求められるようになってきた。
【0005】
本発明者らは、かかる要求に応えるために、短時間の加熱で接続して、材料の熱膨張や熱収縮の影響を低減することに着目した。通常、短時間で接続を行うためには一層の高温で加熱することが必要となる。ところが、従来の異方導電性接着剤に高温加熱を施して接続を行うと、得られる接続構造体の接続抵抗値が上昇したり、熱衝撃試験や高温高湿試験等の信頼性試験における接続抵抗値が上昇したりする傾向があった。かかる傾向が、高分解能が要求される回路接続材料の短時間接続を実現するうえでの障害となっていた。
【0006】
例えば、エポキシ樹脂とイミダゾール系混合物などの従来の回路接続材料を用いて行われる加熱・加圧条件は通常170〜220℃、15〜4秒間程度である。ここで、4秒間以下の短時間接続を可能にするためには、220℃を超える温度での加熱が必要となる。このような高温下で、ICチップを異方導電性接着剤を介して、ポリイミドやポリエステル、ポリカーボネートなどの高分子フィルム基材、またはガラス基板などの接続基板と接続すると、接続後にICチップと基板との熱膨張率差に起因する内部応力によって、接続部の接続抵抗が増大したり接着剤の剥離が生じたりすることが懸念される。また、接続後にICチップと基板との熱膨張率差によって、反りが発生し、狭額縁が必要とされる液晶パネルなどにおいては、表示品位が低下することが懸念される。
【0007】
一方、加熱温度を220℃以下にして4秒間以下の短時間接続を可能にするための手段として、スルホニウム塩等の反応性が高い潜在性硬化剤を用いることが考えられる。しかしながら、180℃以上の加熱温度では回路接続材料の硬化反応が急速に進行するため、圧着時の樹脂流動が不十分となり、電気的導通性が低下するなどの問題が発生してしまう傾向がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、対向配置された電極同士を短時間且つ高分解能で接続することが可能で、接続信頼性に十分優れる回路接続材料を提供することを目的とする。また、このような回路接続材料を用いて接続することにより、反りの発生が十分に抑制され接続信頼性が十分に高い接続構造体を提供すること、及び当該接続構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、第一の回路電極と第二の回路電極とを対向させた状態で接続するための回路接続材料であって、光の最大吸収波長が800〜1200nmの範囲内にある接着剤組成物を有する回路接続材料を提供する。
【0010】
このような回路接続材料は、波長が800〜1200nmの近赤外線照射を行なうことによって短時間且つ高分解能で回路電極を接続することができる。すなわち、近赤外線照射によって接着剤組成物の硬化反応が促進されるので、高分解能が要求される微細構造を有する回路部材同士の接続であっても短時間で行うことが可能となる。また、接続時の加熱温度の低減や加熱時間の短縮が図られ、回路部材やICチップ等の電子部品等における熱膨張や熱収縮の発生が抑制される。これによって、接続後の反りの発生や残留応力の発生を抑制され、確実に回路部材同士を接続するともに回路部材同士の接続信頼性を向上させることができる。
【0011】
本発明における上記接着剤組成物は、光の最大吸収波長が800〜1200nmの範囲内にある近赤外線吸収色素を含むことが好ましい。
【0012】
このような回路接続材料は、近赤外線吸収色素を含有するため、近赤外線照射によって近赤外線吸収色素が発熱して接着剤組成物の硬化反応が促進される。したがって、短時間且つ高分解能で回路電極を接続することでき、高分解能が要求される微細構造を有する回路部材同士の接続を短時間で行うことが可能となる。
【0013】
本発明では、接着剤組成物の樹脂固形分全体に対する前記近赤外線吸収色素の含有量が0.1〜10質量%であることが好ましい。これによって、低温且つ短時間で回路接続材料を硬化させることが可能となり、一層確実に回路部材同士を接続するともに接続信頼性を一層向上させることができる。
【0014】
本発明において、接着剤組成物が導電粒子を含有することが好ましい。これによって、対向配置された回路電極同士を容易に導通させることができる。このような回路接続材料は作業性に優れている。
【0015】
本発明において、接着剤組成物がフィルム形成性高分子を含有することが好ましい。これにより、回路接続材料のフィルム形成性を十分良好にすることができる。また、導電粒子を含有する場合に、該導電粒子の分散状態を一層均一に保持することができる。このような回路接続材料は、導電粒子を介して対向配置された回路電極同士を一層容易に導通させるとともに、同一基板上で隣接する回路電極間を確実に絶縁することができる。このような回路接続材料は作業性に一層優れている。
【0016】
本発明ではまた、第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成され、第二の回路電極と第一の回路電極とが対向するように配置された第二の回路部材と、第一の基板と第二の基板との間に設けられ、第一の回路部材と第二の回路部材とを接続する回路接続部と、を備える接続構造体であって、回路接続部が、上述の回路接続材料に近赤外線領域の光を照射することにより前記接着剤組成物を硬化させた樹脂硬化物を含む接続構造体を提供する。
【0017】
このような接続構造体は、上述の特徴を有する回路接続材料に近赤外線領域の光を照射して硬化させた樹脂硬化物を含む回路接続部を備えるため、熱膨張や熱収縮による変形や残留応力が十分に抑制されている。このため、反り等の発生が低減され、接続信頼性に十分に優れている。また、このような接続構造体は、狭額縁が必要とされる液晶パネルなどにおいて特に有用であり、表示品位に優れたものである。
【0018】
本発明ではまた、第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、第一の回路電極及び第二の回路電極が対向するように配置し、これらの間に上述の回路接続材料を介在させて、第一の回路部材及び前記第二の回路部材と回路接続材料とを密着させた状態で近赤外線領域の光を照射して、回路接続材料の接着剤組成物を硬化させることにより、第一の回路部材と第二の回路部材とを接続する工程を備える接続構造体の製造方法を提供する。
【0019】
この製造方法では、上述の回路接続材料に近赤外線領域の光を照射することによって、第一の回路電極と第二の回路電極とを電気的に接続するため、短時間且つ高分解能で接続することができる。この製造方法で得られる接続構造体は、熱膨張や熱収縮による変形や残留応力が抑制されているため、反り等の発生が十分に低減されている。したがって、確実に回路部材同士を接続することができる。また、接続信頼性にも十分に優れている。この製造方法は、狭額縁が必要とされる液晶パネルなどにおいて特に有用であり、表示品位に優れた接続構造体を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、対向配置された電極同士を短時間且つ高分解能で接続することが可能で、接続信頼性に十分優れる回路接続材料を提供することができる。また、このような回路接続材料を用いて接続することにより高信頼性の接続構造体、及びかかる特性を備える接続構造体の製造方法を提供することができる。すなわち、本発明の回路接続材料によれば、回路部材同士またはICチップ等の電子部品と回路部材とを短時間で接続することができ、熱膨張や熱収縮の発生を十分に抑制された接続構造体を得ることができる。これによって、接続構造体の反りの発生が十分に低減され、接続信頼性に十分優れる接続構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、寸法比率は図面の比率に限られるものではない。
【0022】
図1は、本発明の回路接続材料の好適な一実施形態を示す模式断面図である。本発明の一実施形態であるフィルム状の回路接続材料100は、導電粒子1と接着剤成分2と近赤外線吸収色素3とを含む接着剤組成物30からなる。図1に示すように、導電粒子1及び近赤外線吸収色素3は、接着剤成分2を主成分とする接着剤組成物30中に均一に分散されている。
【0023】
図2は、本発明の回路接続材料の別の実施形態を示す模式断面図である。フィルム状の回路接続材料110は、導電性接着剤層40及び絶縁性接着剤層50が順次積層されている構造を有する。すなわち、回路接続材料110は、導電粒子1、接着剤成分2及び近赤外線吸収色素3を含む接着剤組成物30からなる導電性接着剤層40と、導電性接着剤層40の一方の面に接するように形成された、接着剤成分2及び近赤外線吸収色素3を含む接着剤組成物32からなる絶縁性の絶縁性接着剤層50とを有する。
【0024】
図3は、本発明の回路接続材料のさらに別の実施形態を示す模式断面図である。フィルム状の回路接続材料120は、絶縁性接着剤層50、導電性接着剤層40及び絶縁性接着剤層50が順次積層されている積層構造を有する。すなわち、回路接続材料120は、導電粒子1、接着剤成分2及び近赤外線吸収色素3を含む接着剤組成物30からなる導電性接着剤層40と、該導電性接着剤層40を挟むようにして該導電性接着剤層40の両面上にそれぞれ形成された、接着剤成分2及び近赤外線吸収色素3を含む接着剤組成物32からなる絶縁性接着剤層50とを備える。
【0025】
なお、図2及び図3では、フィルム状の回路接続材料を構成する全ての層が近赤外線吸収色素3を含有していたが、回路接続材料は、近赤外線吸収色素3を含有しない層を有していてもよい。
【0026】
また、図1、図2及び図3には図示していないが、フィルム状の回路接続材料100、110及び120は、少なくとも一方の表面に、作業性向上やごみ付着防止のため、剥離可能な剥離性基材(支持フィルム)を有していてもよい。
【0027】
上記各実施形態に係る回路接続材料100、110及び120は、最大吸収波長を800〜1200nmの範囲内に有する近赤外線吸収色素を含有する。この近赤外線吸収色素は、近赤外線発光源からの光を吸収する。吸収された光エネルギーは放熱され、回路接続材料の硬化を促進し、樹脂硬化物を得ることができる。これにより、例えば、回路部材同士の接続際に圧着ツール等を使用して加熱することなく、接着剤組成物が硬化した樹脂硬化物を得ることができる。このため本実施形態に係る回路接続材料は、短時間且つ高分解能で回路電極同士を接続することができる。このような回路接続材料によって回路部材を接続することにより、熱膨張や熱収縮が十分に抑制された回路部材の接続構造を得ることができる。このような接続構造では、反りの発生が十分に抑制されており、確実に回路電極同士を接続することができる。また、接続信頼性にも十分に優れている。
【0028】
なお、本発明の回路接続材料は導電粒子を含有していなくてもよい。この場合、対向配置された回路電極同士が直接接触することによって、電気的に導通させることができる。
【0029】
以下、図2に示す、導電性接着剤層40と絶縁性接着剤層50とが積層されている回路接続材料110について詳細に説明する。
【0030】
導電性接着剤層40を構成する接着剤組成物30は、導電粒子1、接着剤成分2及び近赤外線吸収色素3を含有する。導電粒子1及び近赤外線吸収色素3は、接着剤成分2中に均一に分散されている。導電性接着剤層40は、対向配置された一対の回路部材を接続する際に、それぞれの回路部材の主面上に設けられた、対向する回路電極同士を、導電粒子1を介して電気的に導通させることができる。すなわち、導電性接着剤層40は、同一回路部材上の隣接する回路電極間の絶縁性を維持しつつ対向配置された回路電極同士を電気的に接続させることができる。
【0031】
接着剤組成物30は、接着剤成分2として、熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂と、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、またはジシアンジアミド等の潜在性硬化剤との混合物や、ラジカル反応性樹脂と有機過酸化物との混合物などが好適である。熱硬化性樹脂の含有量は、接着剤成分2全体を基準として20〜70質量%であることが好ましい。
【0032】
上記エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、及びグリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等のうち、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
これらのエポキシ樹脂は、エレクトロンマイグレーション防止の観点から、不純物イオン(Na、Cl等)や加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが好ましい。
【0034】
接着剤組成物30は、接着剤組成物30のフィルム形成性をより良好なものとする観点から、接着剤成分2としてフィルム形成性高分子を含有することが好ましい。フィルム形成性高分子としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらのフィルム形成性高分子は、熱硬化性樹脂の硬化時に発生する応力を緩和する効果を有する。また、フィルム形成性高分子は、接着性を向上する観点から、水酸基等の官能基を有することが好ましい。
【0035】
また、接着剤組成物30は、接着剤成分2として、潜在性硬化剤などの硬化剤を含有することが好ましい。硬化剤としては、例えばエポキシ樹脂用硬化剤を用いることができる。かかる硬化剤として、アミン系、フェノール系、酸無水物系、イミダゾール系、ヒドラジド系、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アミンイミド等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができ、さらに分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。
【0036】
光の最大吸収波長を800〜1200nmの範囲内に有する近赤外線吸収色素としては、アゾ系、アミニウム系、アンスラキノン系、シアニン系、ジイモニウム系、スクアリリウム系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系化合物等が挙げられる。これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このとき、近赤外線吸収色素の最大吸収波長は、市販の分光光度計を用い分光透過率を測定して求めることができる。
【0037】
近赤外線吸収色素の具体例としては、山本化成株式会社製の「YKR」シリーズ、株式会社日本触媒製の「イーエクスカラー」シリーズ、日本化薬株式会社製の「IRG」シリーズ、エポリン社製の「エポライト」シリーズ等が挙げられる。これらのうち、各種溶媒への溶解性が高く、耐熱性および耐光性を有しつつ近赤外線吸収性能にも優れることから、フタロシアニン系化合物である山本化成社株式会社製の「YKR」シリーズ、株式会社日本触媒製の「イーエクスカラー」シリーズが特に好ましい。
【0038】
近赤外線吸収色素の含有量は、接着剤組成物30に含まれる樹脂固形分全体を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましい。この含有量が0.1質量%未満であると、近赤外線発光源から照射される光を十分に吸収できず、硬化が十分に進行しない傾向がある。なお、硬化の進行度合いは、硬化反応率を求めることによって判断できる。硬化反応率は、DSC(示差走査熱分析)を用いて、回路接続材料の硬化前の発熱量と、硬化後の発熱量とを測定し、両者の差異から求めることができる。十分な接続信頼性で回路部材を接続する観点から、硬化反応率は80%以上であることが好ましい。
【0039】
一方、近赤外線吸収色素の含有量が10質量%を超えると、近赤外線領域の光が回路接続材料全体に均一に照射されず、硬化状態にムラが発生する傾向がある。この場合、硬化が十分に進行しない部分が発生する傾向がある。なお、本明細書における「樹脂固形分」とは、常温(20℃)でトルエンに溶解しない成分をいう。
【0040】
導電性接着剤層40には、異方導電性を積極的に付与する目的で導電粒子1が分散されている。このように、導電粒子1が分散されていることによって、回路接続材料110により接続されるチップのバンプや基板電極等の高さにばらつきがあっても、高い信頼性で対向する回路電極同士を電気的に接続することができる。
【0041】
導電粒子1としては、例えばAu、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属を含む導電性を有する粒子を例示できる。導電粒子1は、ポリスチレン等の高分子からなる球状の核材と、該核材の表面に、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属からなる導電層とを有する粒子であることが好ましい。また、導電粒子1は、導電性を有する導電層の表面に、さらにSn、Au、はんだ等の表面層を有していてもよい。
【0042】
導電粒子1の粒径は、同一回路部材に設けられる回路電極の最小の間隔(同一回路部材上で隣接する電極の間隔)よりも小さいことが必要である。また、導電粒子1の粒径は、これらの回路電極の高さにばらつきがある場合、その高さばらつきよりも大きいことが好ましい。かかる観点から、導電粒子1の平均粒径は、1〜10μmであることが好ましく、2〜5μmであることがより好ましい。平均粒径が1μm未満であると、回路電極の高さばらつきに十分に対応できずに回路電極間の十分な導電性が損なわれる傾向があり、10μmを超えると、隣接する回路電極間の十分な絶縁性が損なわれる傾向がある。
【0043】
導電性接着剤層40における導電粒子1の含有量は、接着剤組成物30の全体積を基準として、0.1〜30体積%であることが好ましい。この含有率が0.1体積%未満であると、接続すべき回路電極上の導電粒子の数が減少するために接触点数が不足し、接続する回路電極間における十分な導電性が損なわれる傾向がある。一方、該含有率が30体積%を超えると、導電粒子の表面積が著しく増加し、導電粒子が2次凝集により連結しやすくなって、同一回路部材上で隣接する回路電極間の十分な絶縁性が損なわれる傾向がある。
【0044】
回路接続材料110を構成する絶縁性接着剤層50は、絶縁性を有する層である。絶縁性接着剤層50は、対向配置された回路部材同士を接続した際に、同一基板上で隣接する回路電極間の絶縁性を十分に確保する(好ましくは、隣接する電極間の絶縁抵抗値を1×10Ω以上とする)ことが可能なものであれば、その組成は特に限定されず、例えば、上述の導電性接着剤層40から導電粒子1を除いた組成と同様の組成とすることができる。
【0045】
導電性接着剤層40及び絶縁性接着剤層50には、更に無機質充填材やゴム粒子を混入・分散させることができる。これらは、導電粒子1、及び近赤外線吸収色素3と共に混入・分散させることができる。なお、これらは、導電粒子1を含まない絶縁性接着剤層50に、これらを混入・分散させてもよいが、導電粒子1を有する導電性接着剤層40に混入・分散させることが好ましい。無機質充填材やゴム粒子を接着剤組成物30に添加することにより、対向する回路部材同士を接続する際の導電性接着剤層40の溶融粘度を、絶縁性接着剤層50の溶融粘度よりも容易に且つ十分に高くすることができる。これによって、対向配置された回路部材同士を接続する際に、回路部材の主面上に設けられた電極上からの導電粒子が流出するのを抑制することができる。したがって、高分解能及び長期接続信頼性を高水準で両立することができる。
【0046】
無機質充填材としては、特に制限されず、例えば、溶融シリカ、結晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム等の粉体が挙げられる。無機充填材の平均粒径は、接続部での導通不良を防止する観点から、3μm以下であることが好ましい。
【0047】
無機質充填材を用いる場合、その配合量は、導電性接着剤層40及び絶縁性接着剤層50の双方において、接着剤組成物30及び32全体をそれぞれ基準(100質量部)として、5〜100質量部であることが好ましい。なお、無機質充填材の配合量を増やすことによって、導電性接着剤層40及び絶縁性接着剤層50の溶融粘度を高くすることができる。
【0048】
導電性接着剤層40及び絶縁性接着剤層50に分散されるゴム粒子としては、ガラス転移温度が25℃以下のものが好ましい。具体的には、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等を好適に用いることができる。ゴム粒子としては、0.1〜10μmの平均粒径を有するものが好ましく、平均粒径以下の粒子が粒径分布の80%以上を占めるものがより好ましい。また、ゴム粒子としては、0.10〜5μmの平均粒径を有するものが更に好ましい。また、接着剤組成物中での分散性を向上させる観点から、ゴム粒子は、その表面がシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。
【0049】
ゴム粒子の中でシリコーンゴム粒子は、耐溶剤性に優れる他、分散性にも優れるため、好ましく用いることができる。なお、シリコーンゴム粒子は、シラン化合物やメチルトリアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を、苛性ソーダ、アンモニア等の塩基性物質によりpH9以上に調整したアルコール水溶液に添加し、加水分解、重縮合させる方法や、オルガノシロキサンの共重合等で得ることができる。また、シリコーン粒子は、分子末端もしくは分子内側鎖に水酸基、エポキシ基、ケチミン、カルボキシル基、メルカプト基等の官能基を有することによって、接着剤組成物中での分散性を向上することができる。このため、このようなシリコーン粒子は好ましく用いられる。
【0050】
ゴム粒子を用いる場合、その配合量は、導電性接着剤層40及び絶縁性接着剤層50のいずれにおいても、接着剤成分2全体を基準(100質量部)として5〜50質量部であることが好ましい。
【0051】
回路接続材料110において、導電性接着剤層40の厚みは、3〜15μmであることが好ましく、5〜10μmであることがより好ましい。この厚みが3μm未満であると、好適な平均粒径である導電粒子を適用した場合において、導電性接着剤層の形成性が低下する傾向がある。一方、当該厚みが15μmを超えると、回路電極上からの導電粒子の流出が多くなり、隣接する回路電極間の絶縁性と接続すべき回路電極間の導電性を十分に確保しにくくなる傾向がある。
【0052】
絶縁性接着剤層50の厚みは、第一の基板の主面上に形成された第一の回路電極厚みと、第二の基板の主面上に形成された第二の回路電極厚みとの総和以下であることが好ましい。絶縁性接着剤層50の厚みが第一の回路電極の厚みと第二の回路電極の厚みとの総和よりも大きいと、回路電極上からの導電粒子の流出が多くなり、隣接する回路電極間の絶縁性と接続すべき回路電極間(対向する回路電極間)の導電性とを高水準で両立することが困難になる傾向がある。
【0053】
回路接続材料110において、導電性接着剤層40は、絶縁性接着剤層50よりも、対向配置された回路部材同士を接続する際の溶融粘度が高いことが好ましい。ここで、接続する際の溶融粘度とは、回路接続材料110を用いて対向配置された回路部材同士を接続する際の加熱温度における溶融粘度である。なお、対向配置された回路部材同士を接続する際の回路接続材料110の温度は、回路接続材料110中の接着剤の硬化性等に応じて適宜調整されるが、例えば、120℃〜250℃の範囲である。したがって、その温度範囲内において、導電性接着剤層40の溶融粘度が絶縁性接着剤層50の溶融粘度よりも高いことが好ましい。
【0054】
次に、回路接続材料110の製造方法の一例について説明する。
【0055】
まず、導電性接着剤層40形成用の塗布液を調製する。具体的には、接着剤成分2、導電粒子1及び近赤外線吸収色素3を有機溶剤に溶解または分散させ、液状化して塗布液を調製する。このとき用いる溶剤は、材料の溶解性を向上させる観点から、芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が好ましい。接着剤成分2は、熱硬化性樹脂のほかに潜在性硬化剤などの硬化剤、フィルム形成性高分子等を含んでいてもよい。
【0056】
次に、この塗布液を通常の剥離性基材(支持フィルム)上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で加熱して溶剤を除去することにより、支持フィルム上に接着剤組成物30からなる導電性接着剤層40を形成することができる。なお、剥離性基材としては、離型性を有するように表面処理されたPETフィルム等が好適に用いられる。
【0057】
絶縁性接着剤層50は、導電粒子1を配合しないこと以外は、導電性接着剤層40の形成方法と同様にして形成することができる。
【0058】
上記の通り形成された導電性接着剤層40及び絶縁性接着剤層50をラミネートする方法や、各層を順次塗工する方法などの公知の方法によって、導電粒子を含有する導電性接着剤層40と導電粒子を含有しない絶縁性接着剤層50が積層された回路接続材料110を製造することができる。
【0059】
上記実施形態に係る回路接続材料110を用いて形成された回路部材の接続構造について説明する。
【0060】
図4は、本発明に係る回路部材の接続構造体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。接続構造体200は、第一の基板11及び第一の回路電極12を有する第一の回路部材10と、第二の基板21及び第二の回路電極22を有する第二の回路部材20とが、回路接続部150によって接続されている。第一の回路電極12は第一の基板11の一面(主面)上に形成されており、第二の回路電極22は第二の基板21の一面(主面)上に形成されている。そして、第一の回路部材10及び第二の回路部材20は、第一の回路電極12と第二の回路電極22とが対向するように接続されている。回路接続部150は、樹脂組成物30,32の樹脂硬化物からなり、当該樹脂硬化物は樹脂成分5と導電粒子1と近赤外線吸収色素3と含有している。
【0061】
すなわち、接続構造体200の回路接続部150には、第一の回路部材10と第二の回路部材20とが対向する方向に、導電粒子1の含有量が互いに異なる複数の樹脂硬化物層が積層されている。
【0062】
接続構造体200では、対峙する第一の回路電極12と第二の回路電極22とが、導電粒子1を介して電気的に接続されている。なお、回路接続部が導電粒子を含有しない場合は、対向する回路電極同士が直接接触することによって、対向配置された回路部材が電気的に接続される。
【0063】
第一の回路部材10及び第二の回路部材20は、回路電極12及び22がそれぞれ形成された面(主面)を有する。材質に特に制限はないが、第一の回路部材10及び第二の回路部材20の少なくとも一方は、波長800〜1200nmの光の分光透過率が50%以上であることが好ましい。
【0064】
第一の回路部材10及び第二の回路部材20の具体例として、液晶ディスプレイに用いられるITO等で電極が形成されているガラス基板、プラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられる。これらのうち、波長800〜1200nmの光に対して高い分光透過率を有する観点から、ガラス基板及びプラスチック基板が好ましい。これらの基板は必要に応じて組み合わせて用いてもよい。また、第一の回路部材10及び第二の回路部材20は、その表面に、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiNx)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材質層を備えていてもよい。
【0065】
接続構造体200の製造方法の一例について以下に説明する。
【0066】
まず、第一の回路電極12と第二の回路電極22とが対峙するようにして、回路接続材料110を第一の回路部材10と第二の回路部材20との間に介在させる。具体的には、例えば剥離性基材上に形成されている回路接続材料110を第二の回路部材20の第二の回路電極22が形成されている面に貼り合わせる。この状態で加熱及び加圧して回路接続材料110を第二の回路部材20上に仮圧着する。その後、回路接続材料110から剥離性基材を剥離し、第一の回路部材10を、第一の回路電極12と第二の回路電極22の位置合せしながら、回路接続材料110上に載せて、第二の回路部材20、回路接続材料110及び第一の回路部材10がこの順で積層された積層体を作製する。
【0067】
次に、第二の回路部材20の下方、すなわち第二の回路部材20の回路接続材料110側とは反対側から近赤外線領域の光を照射し、第一の回路部材10を第二の回路部材20に向けて加圧する。これによって、回路接続材料110が硬化して、第一の回路部材10と第二の回路部材20とが接続されるとともに、第一の回路電極12と第二の回路電極22とが電気的に接続され、接続構造体200を得ることができる。なお、第二の回路部材20は、波長800〜1200nmの範囲内の光の分光透過率が50%以上であることが好ましい。したがって、第二の基板21は、ガラス基板又はプラスチック基板であることが好ましい。
【0068】
上記積層体に近赤外線領域の光を照射し加圧する条件は、回路接続材料110が硬化して十分な接着強度が得られるように適宜調整することができる。なお、加圧と近赤外線領域の光の照射とのタイミングは必ずしも限定されるものではなく、近赤外線領域の光を照射する際に、第一の回路部材10及び第二の回路部材が回路接続材料110に密着していればよい。また、近赤外線領域の光の照射する際に、併せて圧着ツール等を用いて、積層体を例えば120〜250℃に加熱することが好ましい。これによって、一層短時間で対向配置された回路部材同士を一層確実に接続することができる。
【0069】
なお、接続構造体200及びその製造方法の説明において、回路接続材料110を用いた場合を説明したが、回路接続材料110の代わりに回路接続材料100または120を用いてもよい。
【0070】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、本発明の回路接続材料は、図1〜3に示すようなフィルムの形態であってもよく、ペーストの形態であってもよい。なお、本実施形態に係る回路接続材料は、回路基板同士の接続や、ICチップなどの電子部品と配線基板との接続等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名PKHC)32質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂中にアクリル粒子(20質量%、平均粒子径0.2μm)が分散しているアクリル粒子含有樹脂(株式会社日本触媒製、商品名:BPA328)10質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製、商品名:YL980)20質量部、イミダゾール系硬化剤(旭化成株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3941)34質量部、フタロシアニン系化合物である近赤外線吸収色素(株式会社日本触媒製、商品名:イーエクスカラー HA−1)1質量部、及びシランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A187)3質量部を、溶剤であるトルエンに溶解し、樹脂固形分50質量%の絶縁性接着剤層形成用の塗布液Aを得た。各原料の配合割合を表1に示す。
【0073】
次いで、この絶縁性接着剤層形成用の塗布液Aを、片面(塗布液を塗布する面)に離型処理が施された厚み50μmのPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分間熱風乾燥することにより、PETフィルム上に厚み13μmの絶縁性接着剤層(a)を形成した。
【0074】
次に、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、商品名:PKHC)32質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂中にアクリル粒子(20質量%、平均粒子径0.2μm)が分散しているアクリル粒子含有樹脂(株式会社日本触媒製、商品名:BPA328)20質量部、イミダゾール系硬化剤(旭化成株式会社製、商品名:ノバキュアHX−3941)34質量部、フタロシアニン系化合物である近赤外線吸収色素(株式会社日本触媒製、HA−1)1質量部、シランカップリング剤(日本ユニカー株式会社製、商品名:A187)3質量部、及びシリコーンゴム(東レダウコーニング株式会社製、商品名:EP2100)30質量部を、溶剤であるトルエンに溶解し、固形分50質量%の接着剤液Bを調整した。各原料の配合割合を表1に示す。
【0075】
この接着剤液B100質量部に、ポリスチレン系核体(直径:3μm)の表面にNiおよびAu層が形成された導電粒子(積水化学工業株式会社製、商品名:ミクロパールAU、平均粒径:3.2μm、最外層:Au)20質量部を分散して導電性接着剤層形成用の塗布液を得た。
【0076】
この導電性接着剤層形成用の塗布液を、片面(塗布液を塗布する面)に離型処理が施された厚み50μmのPETフィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃で10分間熱風乾燥することにより、該PETフィルム上に厚み10μmの導電性接着剤層(b)を形成した。
【0077】
PETフィルム上にそれぞれ形成された絶縁性接着剤層(a)と導電性接着剤層(b)とを、絶縁性接着剤層(a)と導電性接着剤層(b)とが接触するように、40℃で加熱しながらロールラミネータでラミネートして、絶縁性接着剤層(a)の厚みが13μm、導電性接着剤層(b)の厚みが10μmである、2層構造の回路接続材料を得た。この回路接続材料は導電粒子を含有する接着剤層と導電粒子を含有しない接着剤層とが積層された構造を有する。
【0078】
当該回路接続材料を用いて、金バンプ(面積:30×50μm、バンプ高さ:15μm、バンプ数:300)付きチップ(1.2×19mm、厚み:500μm)とガラス基板の一方の面上にITO回路が形成されたITO回路付きガラス基板(ITO回路厚み:0.15μm、ガラス基板厚み:0.5mm)との接続を、次の通り行った。
【0079】
所定のサイズ(1.5×20mm)に切り出した2層構造の回路接続材料を、ITO回路付きガラス基板に、80℃、0.98MPa(10kgf/cm)の条件で1秒間加熱加圧することにより貼り付けて積層体を得た。なお、この際、導電性接着剤層(b)上のPETフィルムを剥離した後、2層構造の回路接続材料の導電性接着剤層(b)がITO回路に接着するようにして、回路接続材料をITO回路付きガラス基板に貼り付けた。
【0080】
次いで、回路接続材料の絶縁性接着剤層(a)側のPETフィルムを剥離し、金バンプ付きチップのバンプとITO回路付きガラス基板との位置合わせを行った後、上記積層体のITO回路付きガラス基板側から近赤外線領域の光を照射しながら、チップのバンプを有する面を回路接続材料の絶縁性接着剤層(a)に向けて、圧着ツールを用いて加圧することにより、積層体と金バンプ付きチップとの本接続を行った。これによって、回路接続材料を介してチップとITO回路付きガラス基板とが接続された接続構造体を得た。本接続の条件は、加熱温度:230℃、加圧圧力:40g/バンプ、加熱加圧時間:3秒間とした。近赤外線の照射は、光源として波長904nmの半導体レーザーを用い、光量2.5W/mmの近赤外線光で行った。なお、上記加熱温度(230℃)は加熱加圧時の回路接続材料の温度であり、近赤外線照射によって到達した温度である。
【0081】
[硬化反応率の測定]
上記本接続時の回路接続材料の硬化反応率を次の通り求めた。まず、DSC(示差走査熱分析)を用いて本接続前後におけるそれぞれの発熱量を測定し、当該測定結果を用いて下記式(1)により算出した。算出結果を表3に示す。なお、本接続後の発熱量は、接続された接続構造体の回路接続部からサンプルを採取して測定を行った。
【0082】
硬化反応率(%)=(Q−Q)/Q×100 (1)
[式(1)におけるQは本接続前の発熱量を、Qは本接続後の発熱量を示す。]
【0083】
次に、得られた接続構造体を、85℃、85%RHの環境下で1000時間保存した。保存後、以下の通りにして、接続抵抗値と反り量との測定を行った。結果を表3に示す。
【0084】
[接続抵抗値の測定]
デジタルマルチメータを用いて、上記環境下で保存した後の接続構造体の1バンプ毎の接続抵抗値を4端子法で測定し、導通が良好であるか否かを評価した。全てのバンプの接続抵抗値が20Ω以下の場合を「A」、接続抵抗値が20Ωを越えるバンプを含む場合「B」と評価した。
【0085】
[反り量の測定]
表面形状測定機((株)小坂研究所社製、商品名:表面粗さ測定機/SE3500)を用いて、上記環境下で保存した後の接続構造体におけるガラス基板裏面(ITO回路付きガラス基板の回路接続部側とは反対側の面)の最大反り量を測定した。その結果を表3に示す。
【0086】
(実施例2)
塗布液A及び接着剤液Bにおける近赤外線吸収色素(株式会社日本触媒製、商品名:イーエクスカラー HA−1)の配合量を、それぞれ0.1質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして2層構造の回路接続材料を調製し、接続構造体を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。各原料の配合割合を表1に、評価結果を表3に示す。
【0087】
(実施例3)
塗布液Aにおける近赤外線吸収色素(株式会社日本触媒製、商品名:イーエクスカラー HA−1)の配合量を9.6質量部とし、接着剤液Bにおける近赤外線吸収色素(株式会社日本触媒製、商品名:イーエクスカラー HA−1)の配合量を8.6質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして2層構造の回路接続材料を調製し、接続構造体を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。各原料の配合割合を表1に、評価結果を表3に示す。
【0088】
(比較例1)
塗布液A及び接着剤液Bにおける近赤外線吸収色素(株式会社日本触媒製、商品名:イーエクスカラー HA−1)の配合量を0.03質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして2層構造の回路接続材料を調製し、接続構造体を作製した。そして、実施例1と同様にして評価を行った。各原料の配合割合を表2に、評価結果を表3に示す。
【0089】
(比較例2)
塗布液A及び接着剤液Bにおける近赤外線吸収色素(株式会社日本触媒製、商品名:イーエクスカラー HA−1)の配合量を15質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、2層構造の回路接続材料を得た。次いで、実施例1と同様の回路部材を用い、同様の条件で本接続を行った。そして、実施例1と同様にして評価を行った。各原料の配合割合を表2に、評価結果を表3に示す。
【0090】
(比較例3)
実施例1と同様にして2層構造の回路接続材料を調製し積層体を得た。そして、積層体と金バンプ付きチップとの本接続の際に、近赤外線領域の光の照射を行わず、圧着ツールを用いて加熱加圧することにより、積層体と金バンプ付きチップとの本接続を行ったこと以外は実施例1と同様にして本接続を行った。これによって、回路接続材料を介してチップとITO回路付きガラス基板とが接続された接続構造体を得た。本接続の条件は、加熱温度:230℃、加圧圧力:40g/バンプ、加熱加圧時間:3秒間とした。そして、実施例1と同様にして評価を行った。各原料の配合割合を表2に、評価結果を表3に示す。
【0091】
(比較例4)
近赤外線吸収色素を配合せず、イミダゾール系硬化剤(旭化成工業社製、商品名ノバキュアHX−3941)の配合量を35質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、塗布液A及び接着剤液Bを調製した。そして、実施例1と同様にして、2層構造の回路接続材料を調製し、接続構造体を作製して評価を行った。各原料の配合割合を表2に、評価結果を表3に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
表3に示す結果から明らかなように、光の波長800〜1200nmの範囲内で最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素を樹脂固形分全体に対して0.1〜10質量%含有する回路接続材料を用いて、近赤外線光の照射により硬化させた接続構造体は、耐湿試験後の接続抵抗値も硬化反応率も良好であった。また、接続構造体の反り量も小さいことが確認された。
【0096】
一方、近赤外線吸収色素を含有していない回路接続材料(比較例4)を用いた場合、耐湿試験後の接続抵抗値、硬化反応率が劣ることが確認された。また、近赤外線吸収色素の含有量が0.1質量%未満の回路接続材料(比較例1)においても、耐湿試験後の接続抵抗値、硬化反応率が劣ることが確認された。更に、近赤外線吸収色素の含有量が10質量%より多い回路接続材料(比較例2)においては、耐湿試験後の接続抵抗値が劣ることが確認された。
【0097】
また、熱硬化性樹脂と、導電粒子と、光の波長800〜1200nmの範囲内で最大吸収波長を有する近赤外線吸収色素0.1〜10質量%とを含有させた回路接続材料を用いて、圧着ツールの加熱のみにより接着剤組成物を硬化させた接続構造体(比較例3)は、耐湿試験後の接続抵抗値が劣り、接続体の反り量も大きいことが確認された。このように、圧着ツールを用いて回路部材側(金バンプ付きチップ)から加熱するために接続体の反り量が大きくなっている。
【0098】
以上より、本発明の回路接続材料を用いることによって、短時間で回路部材同士を確実に接続できること、得られる接続構造体が接続信頼性に優れること、接続構造体の反りを十分に低減できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の回路接続材料の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の回路接続材料の別の実施形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明の回路接続材料のさらに別の実施形態を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る回路部材の接続構造体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0100】
1…導電粒子、2…接着剤成分、3…近赤外線吸収色素、5…樹脂成分、40…導電性接着剤層、50…絶縁性接着剤層、10…第一の回路部材、11…第一の基板、12…第一の回路電極、20…第二の回路部材、21…第二の基板、22…第二の回路電極、30,32…接着剤組成物、100,110,120…回路接続材料、150…回路接続部、200…接続構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを対向させた状態で接続するための回路接続材料であって、
光の最大吸収波長が800〜1200nmの範囲内にある接着剤組成物を有する回路接続材料。
【請求項2】
前記接着剤組成物は、光の最大吸収波長が800〜1200nmの範囲内にある近赤外線吸収色素を含む請求項1記載の回路接続材料。
【請求項3】
前記接着剤組成物の樹脂固形分全体に対する前記近赤外線吸収色素の含有量が0.1〜10質量%である請求項2記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記接着剤組成物が導電粒子を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項5】
前記接着剤組成物がフィルム形成性高分子を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項6】
第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、
第二の基板の主面上に第二の回路電極が形成され、前記第二の回路電極と前記第一の回路電極とが対向するように配置された第二の回路部材と、
前記第一の基板と前記第二の基板との間に設けられ、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接続する回路接続部と、を備える接続構造体であって、
前記回路接続部が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路接続材料に近赤外線領域の光を照射することにより前記接着剤組成物を硬化させた樹脂硬化物を含む接続構造体。
【請求項7】
第一の基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と第二の回路の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極が対向するように配置し、これらの間に請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路接続材料を介在させて、前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材と前記回路接続材料とを密着させた状態で近赤外線領域の光を照射して前記回路接続材料の前記接着剤組成物を硬化させることにより、前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接続する工程を備える接続構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−105361(P2009−105361A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26731(P2008−26731)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】