説明

回転角度検出装置及びステアリング装置

【課題】耐久性を高めることができ、かつより静寂にすることができる技術を提供する。
【解決手段】回転軸110に設けられる第1の磁石10と、第1の磁石10と所定のクリアランスを介して配置され、第1の磁石10との間に生じる磁力により第1の磁石10の回転に連動して回転する第2の磁石20と、第2の磁石20の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて回転軸110の回転角度を検出する回転角度検出手段と、を備える。回転角度検出手段は、例えば、第2の磁石20を支持し回転可能に支持される磁石支持部材40の回転中心軸方向の一方の端部に支持された第3の磁石30と、第3の磁石30から発生される磁界に基づいて第3の磁石30の回転角度を検知する磁気検出素子50とを有し、磁気検出素子50の検知結果に基づいて第2の磁石20の回転角度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転角度を検出する回転角度検出装置及びステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ステアリングホイールに連結される回転軸(シャフト)の回転角度を検出する装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の車両用ステアリングセンサは、以下のように構成されている。すなわち、ステアリングホイールと一体的に回転する第1の回転体の回転に基づき回転量と回転方向を示す信号を出力する第1,第2のフォトインタラプタと、ステアリングホイールの1回転中での回転位置を示す信号を出力する第3のフォトインタラプタとを有する。この第1の回転体には、回転位置を示すための4個の位置信号用切欠部と4個の位置信号用凸部とが非等間隔で形成されている。また、この車両用ステアリングセンサは、ステアリングホイールが1回転されるごとに間欠ギヤ及びギヤ部を介して間欠的に回転し、これに伴い可変抵抗器を回転操作する第2の回転体を有している。この可変抵抗器は、ステアリングホイールの回転回数(何回転目かの回数)を示す信号を出力する。
【0003】
また、特許文献2に記載の舵角センサは、以下のように構成されている。すなわち、ステアリングシャフトの全回転角度範囲を双方向において1回転未満の回転角度範囲に変換するギア機構の出力軸にヨークを介して取り付けられ、半径方向に磁化された円環帯状磁石と、円環帯状磁石の外周囲に、それぞれが所定のギャップを置いて90度間隔で固定配置される固定子と、4個のギャップのうち隣接する2個のギャップに設けられる磁気センサとを備えている。そして、この舵角センサは、2つの磁気センサの一方を90度間隔の領域判定用として使用し、他方を角度信号取得用として使用する。
【0004】
【特許文献1】特開平11−287608号公報
【特許文献2】特開2002−148015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の技術においては、回転角度を検出するために、ステアリングホイールに連結される回転軸に設けられるギヤと、センサにより直接的に検出対象となる回転軸に設けられるギヤとのギヤ結合を利用している。そのため、ギヤ結合しているギヤが摩耗すると検出精度が悪くなり、装置の耐久性が悪くなるおそれがある。また、ギヤ結合しているギヤの作動音により装置の音が大きくなるおそれがある。
そこで、本発明は、耐久性が高く、かつより静寂な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、回転可能に支持される回転軸の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、前記回転軸に設けられる第1の磁石と、前記第1の磁石と所定のクリアランスを介して配置され、当該第1の磁石との間に生じる磁力により当該第1の磁石の回転に連動して回転する第2の磁石と、前記第2の磁石の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出手段と、を備えることを特徴とする回転角度検出装置である。
ここで、前記第1の磁石及び前記第2の磁石は外周面に周方向に交互に配置されたN極とS極とを有し、当該第1の磁石の外周面と当該第2の磁石の外周面とが対向して配置されていることが好適である。
【0007】
また、前記第2の磁石を支持し回転可能に支持される磁石支持部材をさらに備え、前記回転角度検出手段は、前記磁石支持部材の回転中心軸方向の一方の端部に支持された第3の磁石と、当該第3の磁石から発生される磁界に基づいて当該第3の磁石の回転角度を検知するセンサとを有し、当該センサの検知結果に基づいて前記第2の磁石の回転角度を検出することが好適である。
また、前記センサは、前記第3の磁石に対向して配置され、当該第3の磁石から発生される磁界の方向に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗素子であることが好適である。
また、前記回転角度検出手段は、前記第2の磁石の外周面の外側に配置され、当該第2の磁石から発生される磁界の方向に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗素子を有することが好適である。
【0008】
また、前記第2の磁石を支持し回転可能に支持される磁石支持部材と、当該磁石支持部材に設けられる第1の歯車と、をさらに備え、前記回転角度検出手段は、前記第1の歯車により前記磁石支持部材の回転力が伝達される複数の歯車と、当該複数の歯車のそれぞれの回転角度を検知する複数のセンサと、を有し、当該複数のセンサの検知結果に基づいて前記第2の磁石の回転角度を検出することが好適である。
また、前記センサは、検知対象となる歯車の歯又は当該歯車を支持して回転する回転部材に形成されたマークに基づいて、当該歯車の回転角度を検知することが好適である。
ここで、前記第1の磁石の回転と前記第2の磁石の回転とが非同期となることを抑制する非同期回転抑制手段をさらに有することが好適である。
【0009】
他の観点から捉えると、本発明は、ステアリングホイールに連結される回転軸と、前記回転軸に設けられる第1の磁石と、前記第1の磁石と所定のクリアランスを介して配置され、当該第1の磁石との間に生じる磁力により当該第1の磁石の回転に連動して回転する第2の磁石と、前記第2の磁石の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出手段と、を備えることを特徴とするステアリング装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置の耐久性を高めることができる。また、より静寂にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る回転角度検出装置1の斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る回転角度検出装置1の軸方向の部分断面図である。
回転角度検出装置1は、例えば自動車などの乗り物の本体フレームに回転可能に支持される回転軸110の回転角度を検出する装置である。
回転軸110は、例えばステアリングホイールが連結される回転軸であり、本体フレームに固定される部材であるハウジング(不図示)に固定されたボールベアリングなどの軸受を介してハウジングに回転可能に支持されている。
【0012】
回転角度検出装置1にて、回転軸110の回転角度を検出することにより、回転軸110に連結されたステアリングホイールの回転角度の検出、ひいてはステアリングホイールが搭載された乗り物の進行方向の把握が可能となる。そして、回転角度検出装置1の検出結果は、進路案内を行う装置、ステアリングの角度に応じてサスペンションの硬さを変える装置等の各種の制御装置において使用される。
【0013】
以下に、回転角度検出装置1について詳述する。
回転角度検出装置1は、回転軸110に設けられる第1の磁石10と、第1の磁石10と所定のクリアランスを介して配置され、第1の磁石10との間に生じる磁力により第1の磁石10の回転に連動して回転する第2の磁石20と、を有する。また、回転角度検出装置1は、第2の磁石20の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて回転軸110の回転角度を検出する回転角度検出手段を有する。
【0014】
第1の磁石10は、リング状(ドーナツ状)であり、その内側に回転軸110がしまりばめで嵌合され、回転軸110と一体となって回転する。そして、少なくとも外周面に、N極およびS極が周方向に交互に配置されている。
第2の磁石20は、リング状(ドーナツ状)であり、ハウジングに対して回転可能に支持されている。そして、少なくとも外周面に、N極およびS極が交互に配置されている。第1の磁石10と第2の磁石20とは、接触しないように、所定の隙間を介して配置されている。また、第1の磁石10の外周面と第2の磁石20の外周面とが対向するように配置されている。なお、所定の隙間とは、第1の磁石10と第2の磁石20とが吸引し合い、第1の磁石10が回転軸110の軸心回りに回転した場合に、第2の磁石20が吸引されながら回転する隙間である。
【0015】
第2の磁石20は、図に示すように、磁石支持部材40にしまりばめで嵌合されている。磁石支持部材40は、図2に示すように、第2の磁石20が嵌め合わされる円柱状部分40aと、円柱状部分40aの径より小さい径の円柱状部分40bとからなる。そして、円柱状部分40bが、乗り物の本体フレーム(不図示)に固定されるハウジング120に設けられたボールベアリングなどの軸受け121に嵌合されることにより、磁石支持部材40は、ハウジング120に回転可能に支持されている。これにより、第2の磁石20もハウジング120に回転可能に支持されている。
【0016】
また、第1の実施形態に係る回転角度検出装置1の上述した回転角度検出手段は、磁石支持部材40の回転中心軸方向の一方の端部に支持された第3の磁石30と、第3の磁石30から発生される磁界に基づいて第3の磁石30の回転角度を検知するセンサの一例としての磁気検出素子50とを有し、磁気検出素子50の検知結果に基づいて第3の磁石30の回転角度、ひいては第2の磁石20の回転角度を検出する。
【0017】
第3の磁石30は、半円柱状のN極と半円柱状のS極とを有する円柱状の磁石であり、磁石支持部材40の上面に装着されて、磁石支持部材40と一体となって回転する。なお、第3の磁石30を、磁石支持部材40に装着する方法としては、両者を接着あるいは粘着する方法、両者を溶接する方法などを例示することができる。
【0018】
なお、磁石支持部材40は、N極とS極とを有する第3の磁石30を支持すればその形状は限定されない。
図3は、磁石支持部材40と第3の磁石30との装着態様の他の例を示す図である。
図3に示すように、円柱状の第3の磁石30と、円柱状の凹みを有する磁石支持部材40とをしまりばめで嵌合してもよい。また、磁石支持部材40と第3の磁石30とを、例えばインサート成形により一体的に成形してもよい。第3の磁石30の形状は、円柱状に限定されない。
【0019】
磁気検出素子50は、第3の磁石30から発生される磁界に基づいて第3の磁石30の回転角度を検出する素子である。この磁気検出素子50は、第3の磁石30の円柱の軸方向の一方の端面と対向する位置に、第3の磁石30との間で所定の間隙を形成するように配置されている。磁気検出素子50は、例えば、配線パターン(不図示)が形成されたプリント基板51に実装されている。
本実施形態に係る磁気検出素子50は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであるMRセンサ(磁気抵抗素子)であることを例示することができる。磁気検出素子50の検出手法については後で詳述する。
【0020】
また、回転角度検出手段は、磁気検出素子50による第2の磁石20の回転角度についての検出値を基に回転軸110の回転角度を演算する演算手段(不図示)を有している。演算手段は、上述した制御装置の制御基板(不図示)に実装されていてもよいし、プリント基板51に実装されていてもよい。
【0021】
演算手段が制御装置の制御基板に実装されている場合には、磁気検出素子50の検出値が、例えば、プリント基板51と制御基板とを連結するケーブルを介して演算手段に出力される。また、磁気検出素子50がプリント基板51に実装されている場合には、磁気検出素子50の検出値がプリント基板51を介して演算手段に出力され、演算手段の演算結果が、プリント基板51と制御基板とを連結するケーブルを介して制御基板へと出力される。なお、プリント基板51は、例えば、ネジ止めなどにより本体フレームに固定されるハウジングに装着される。
【0022】
以下に、本実施形態に係る磁気検出素子50について説明する。
本実施形態に係る磁気検出素子50は、磁界によって抵抗値が変化することを利用したMRセンサ(磁気抵抗素子)である。
【0023】
先ず、MRセンサの動作原理について説明する。
MRセンサは、Si若しくはガラス基板と、その上に形成されたNi−Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の薄膜で構成されており、その薄膜強磁性金属の抵抗値は、特定方向の磁界の強度に応じて変化する。
【0024】
図4は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図5は、図4の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図4に示すように、基板の上に矩形状に形成した薄膜強磁性金属に、矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流す。一方、磁界Hを、電流方向(Y方向)に対して垂直方向(図中X方向)に印加し、その状態で、磁界の強さを変更する。このときに、薄膜強磁性金属の抵抗値がどのように変化するかを示したのが図5である。
【0025】
図5に示すように、磁界の強さを変化させたとしても、無磁界(磁界強度ゼロ)時からの抵抗値変化は最大で約3%となる。
以下では、抵抗値変化量(ΔR)が、近似的に「ΔR∝H」の式で表すことができる領域外を「飽和感度領域」と称す。そして、飽和感度領域においては、ある磁界強度(以下、「規定磁界強度」と称す。)以上になると3%の抵抗値変化は変わらない。
【0026】
図6は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図7は、磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図6のように、矩形状に形成した薄膜強磁性金属の矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流し、磁界の方向として電流方向に対して角度変化θを与える。このとき、磁界の向きに起因する薄膜強磁性金属の抵抗値の変化を知るために、印加する磁界強度は、磁界強度に起因しては抵抗値が変化しない上述した規定磁界強度以上とする。
【0027】
図7(a)に示すように、抵抗値変化量は、電流方向と磁界の方向が垂直(θ=90度、270度)の時に最大となり、電流方向と磁界の方向が平行(θ=0度、180度)の時に最小となる。かかる場合の抵抗値の最大の変化量をΔRとすると、薄膜強磁性金属の抵抗値Rは、電流方向と磁界方向の角度成分として変化し、式(1)のように示され、図7(b)に示すようになる。
R=R0−ΔRsinθ・・・(1)
ここで、R0は、規定磁界強度以上の磁界を電流方向と平行(θ=0度あるいは180度)に印加した場合の抵抗値である。
式(1)により、規定磁界強度以上の磁界の方向は、薄膜強磁性金属の抵抗値を検出することで把握することができる。
【0028】
次に、MRセンサの検出原理について説明する。
図8は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。
図8に示すMRセンサの薄膜強磁性金属は、縦方向が長くなるように形成された第1のエレメントE1と横方向が長くなるように形成された第2のエレメントE2とが直列に配置されている。
【0029】
かかる形状の薄膜強磁性金属においては、第1のエレメントE1に対して最も大きな抵抗値変化を促す垂直方向の磁界は、第2のエレメントE2に対し最小の抵抗値変化の磁界方向となる。そして、第1のエレメントE1の抵抗値R1は式(2)、第2のエレメントE2の抵抗値R2は式(3)で与えられる。
R1=R0−ΔRsinθ・・・(2)
R2=R0−ΔRcosθ・・・(3)
【0030】
図9は、図8に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
図8に示すエレメント構成のMRセンサの等価回路は図9に示すようになる。
図8,9に示すように、第1のエレメントE1の、第2のエレメントE2と接続されていない方の端部をグランド(Gnd)とし、第2のエレメントE2の、第1のエレメントE1と接続されていない方の端部の出力電圧をVccとした場合に、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutは式(4)で与えられる。
Vout=(R1/(R1+R2))×Vcc…(4)
【0031】
式(4)に、式(2)、(3)を代入し整理すると、式(5)の通りとなる。
Vout=Vcc/2+α×cos2θ…(5)
ここで、αは、α=(ΔR/(2(2×R0−ΔR)))×Vccである。
式(5)により、磁界の方向は、Voutを検出することで把握することができる。
【0032】
磁石が運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力について説明する。
図10は、磁石が回転運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
図10(a)に示すように、図8に示したエレメント構成のMRセンサを、半円柱状のN極と半円柱状のS極からなる円柱状の磁石の中心軸方向の一方の面に対向するように配置する。その際、図10(b)に示す磁石とMRセンサとのギャップLは、MRセンサに規定磁界強度以上の磁界強度が印加される距離とする。
【0033】
そして、図10(c)に示すように、磁石を、中心軸回りに、(i)→(ii)→(iii)→(iv)→(i)と回転させる。かかる場合、磁石にはN極からS極へ磁束線が出ており、この磁束線が磁界の方向となることから、MRセンサには、磁石の向きに応じて図10(c)に示した矢印の向きの磁界が印加されることとなる。つまり、磁石が1回転したとき、センサ面では磁界の方向が1回転する。
かかる場合、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutの波形は、式(5)に示した「Vout=Vcc/2+α×cos2θ」となり、図10(d)に示すように2周期の波形となる。
【0034】
図11は、磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
図11(a)に示すように、N極とS極が交互に配列された磁石に対して、図8に示したMRセンサを、規定磁界強度以上の磁界強度が印加されるギャップ(磁石とMRセンサとの距離)Lで、かつ磁界の方向変化がMRセンサのセンサ面に寄与するように配置する。
【0035】
そして、磁石を、図11(a)に示すように左方向に移動させる。そして、図11(c)に示すように、磁石を、N極中心からS極中心までの距離(以下、「着磁ピッチ」と称する場合もある。)λを移動させる。かかる場合、MRセンサには、磁石の位置に応じて図11(c)に示した矢印の向きの磁界が印加されることとなり、磁石が着磁ピッチλを移動したとき、センサ面では磁界の方向が1/2回転する。ゆえに、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutの波形は、式(5)に示した「Vout=Vcc/2+α×cos2θ」より、図11(d)に示すように1周期の波形となる。
【0036】
図12は、MRセンサの他の例を示す図である。
図8に示したエレメント構成の代わりに図12(a)に示すようなエレメント構成にすれば、図12(b)に示すように、一般的に知られているホイートストン・ブリッジ(フルブリッジ)の構成にすることができる。ゆえに、図12(a)に示すエレメント構成のMRセンサを用いることにより検出精度を高めることが可能となる。
【0037】
磁石の運動の方向を検出する手法について説明する。
図7に示した磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係および式(1)「R=R0−ΔRsinθ」からすると、図6で見た場合に、磁界の向きを電流の方向に対して時計回転方向に回転させても反時計回転方向に回転させても薄膜強磁性金属の抵抗値は同じである。ゆえに、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握できても磁石の運動の方向は把握できない。
【0038】
図13は、磁石の運動方向を検出するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。図13のように1/4周期の位相差を持った2つの出力を組み合わせることで磁石の運動方向の検出が可能となる。これらの出力を得る為には、図11で示す(i)と(ii)又は(i)と(iv)の位置に、二つのMRセンサを配置すればよい。
図14は、MRセンサの配置の例を示す図である。図14に示すように2つのMRセンサを重ね、一方のセンサを他方のセンサに対して45度に傾けて配置することも好適である。
【0039】
図15は、MRセンサの他の例を示す図である。図15(a)に示すように、2組のフルブリッジ構成のエレメントを互いに45度傾けて一つの基板上に形成し、図15(b)に示すような等価回路となるエレメント構成にすることも好適である。これにより、一つのMRセンサで、図15(c)に示すように、正確な正弦波、余弦波の出力が可能となる。それゆえ、図15に示すエレメント構成のMRセンサの出力値により、MRセンサに対する磁石の運動方向及び運動量を把握することができる。
【0040】
以上がMRセンサの動作原理・検出原理である。
このMRセンサの特性に鑑み、本実施形態に係る回転角度検出装置1においては、磁気検出素子50として、図15に示すエレメント構成のMRセンサを用いる。そして、磁気検出素子50を、エレメント(薄膜強磁性金属)と円柱状の第3の磁石30の軸方向の一方の端面とが対向するように配置する。また、第3の磁石30と磁気検出素子50のエレメントとの距離は、エレメントに規定磁界強度以上の磁界強度が印加される距離とする。
【0041】
磁気検出素子50として図15に示すエレメント構成のMRセンサを用いた場合には、図10(c)に示すような磁気検出素子50に対する磁界方向となり、VoutAの出力波形と磁界方向との関係は図10(d)に示すような波形となる。また、同時に1/4周期の位相差を持ったVoutBの出力波形(図15(c)参照)を得ることができる。それゆえ、磁気検出素子50の出力値により第3の磁石30の回転角度、ひいては第2の磁石20の回転角度を検出することができる。また、その際、第3の磁石30及び第2の磁石20の回転方向をも検出することができる。
【0042】
一方、第1の磁石10の極数と第2の磁石20の極数との関係、第1の磁石10の回転方向と第2の磁石20の回転方向との関係を考慮すると、第3の磁石30の回転方向を含めた回転角度と第1の磁石10(回転軸110)の回転方向を含めた回転角度との関係を把握することができる。
そこで、上記事項を基に、磁気検出素子50での検出値と、回転軸110の回転角度との関係のテーブルを予め回転角度テーブルとして作成しておき、例えば、上述した演算手段が有する記憶領域に記憶しておく。そして、演算手段が、磁気検出素子50による第2の磁石20(第3の磁石30)の回転方向を含めた回転角度の検出値と、回転角度テーブルとに基づいて、回転軸110の回転角度を演算できるようにしておく。
【0043】
上述のように構成された回転角度検出装置1は、以下のように機能する。
すなわち、利用者がステアリングホイールを回転すると、これに伴って回転軸110が回転し、第1の磁石10が回転する。そして、第1の磁石10が回転するのに伴って第2の磁石20が第1の磁石10に吸引され、磁石支持部材40が、第1の磁石10の回転方向とは反対の方向に回転する。つまりは、第1の磁石10の回転に連動して、磁石支持部材40に支持されている第2の磁石20および第3の磁石30も回転する。そして、第2の磁石20(第3の磁石30)の回転方向を含めた回転角度を磁気検出素子50が検出する。
そして、演算手段が、磁気検出素子50の出力値と回転角度テーブルとに基づいて演算することにより、回転角度検出装置1は、回転軸110の回転角度、つまりはステアリングホイールの回転方向を含めた回転角度(舵角)を検出することが可能となる。
【0044】
このように、本実施形態に係る回転角度検出装置1においては、回転角度の検出対象である回転軸110の回転駆動力が非接触で第2の磁石20の回転駆動力として伝達され、この第2の磁石20の回転角度を磁気検出素子50にて検出し、その検出結果を基に回転軸110の回転角度を検出する。それゆえ、第2,第3の磁石20,30や磁気検出素子50などから構成される検出側のユニットと回転角度検出の対象となる回転軸110側とをギヤ結合し、回転軸110の回転角度を検出する装置よりは、耐久性を向上させることができるとともに静寂な装置にすることができる。
【0045】
また、検出側のユニットと回転軸110側とをギヤ結合する場合には、両者を組み付ける際には両ギヤの歯を噛み合わせる必要があるが、本実施形態に係る回転角度検出装置1においては、検出側のユニットと回転軸110側とは非接触であるため、検出側のユニットを本体フレームに容易に組み込むことが可能となる。
また、検出側のユニットと回転軸110側とは非接触であるため、例えばハウジング内など密閉された空間に配置された回転軸110の回転角度を、その空間の外側に配置された検出側のユニットにて検出することが可能となる。
【0046】
なお、第2の磁石20の極数を、第1の磁石10の極数のN倍にすることで、第2の磁石20の1回転分の回転角度の検出で回転軸110(ステアリングホイール)のN回転分の回転角度の検出が可能となる。例えば、第1の磁石10の極数を12極、第2の磁石20の極数を24極と選択することにより、磁気検出素子50が720度(両回転方向に360度(1回転)ずつ)検出可能である場合には、回転軸110(ステアリングホイール)の1440度(両回転方向に720度(2回転)ずつ)分の回転角度の検出が可能となる。
【0047】
なお、上述した実施形態においては、磁気検出素子50として図15に示すエレメント構成のMRセンサを用いたが、図8に示すエレメント構成のMRセンサあるいは図13に示すエレメント構成のMRセンサを用いてもよい。
かかる場合には、磁気検出素子50の出力波形は、図10(d)に示すような波形となる。それゆえ、回転角度検出装置1は、磁気検出素子50にて第2の磁石20(第3の磁石30)の回転角度を、検出することで、回転軸110(ステアリングホイール)の回転角度を検出することが可能となる。
【0048】
<第2の実施形態>
図16は、第2の実施形態に係る回転角度検出装置2の斜視図である。
本実施形態に係る回転角度検出装置2においては、磁気検出素子50を、第2の磁石20の回転半径方向には第2の磁石20の外周面の外側であり、回転軸110の軸方向には第2の磁石20が設けられた領域内となるように配置し、第2の磁石20から発生される磁界の変化に基づいて第2の磁石20の回転角度を検出する点に特徴がある。なお、第2の磁石20と磁気検出素子50のエレメントとの距離は、エレメントに規定磁界強度以上の磁界強度が印加される距離とする。以下では第1の実施形態との差異点についてのみ説明する。
【0049】
本実施形態は、第2の磁石20を回転駆動させる第2の磁石20から発生される磁界と同一の磁界を用いて第2の磁石20の回転角度を検出する点に特徴がある。それゆえ、本実施形態に係る磁気検出素子50として、図15に示すエレメント構成のMRセンサを用い、回転軸110の軸心に対して薄膜強磁性金属が垂直に延びるようにMRセンサを配置する。かかる場合には、第2の磁石20から発生される磁界により、磁気検出素子50には、第2の磁石20の位置に応じて、図11(c)に示すような磁界方向の変化となり、VoutAの出力波形と磁界方向との関係は図11(d)に示すような波形となる。また、同時に1/4周期の位相差を持ったVoutBの出力波形(図15(c)参照)を得ることができる。それゆえ、磁気検出素子50の出力値により第2の磁石20の回転角度を検出することができると共に第2の磁石20の回転方向をも検出することができる。
【0050】
そこで、上記事項を基に、磁気検出素子50での検出値と、回転軸110の回転角度との関係のテーブルを予め回転角度テーブルとして作成しておき、例えば、上述した演算手段が有する記憶領域に記憶しておく。そして、演算手段が、磁気検出素子50による第2の磁石20の回転方向を含めた回転角度の検出値と、回転角度テーブルとに基づいて、回転軸110の回転角度を演算できるようにしておく。
これにより、演算手段が、磁気検出素子50の出力値と回転角度テーブルとに基づいて演算することにより、回転角度検出装置2は、回転軸110の回転角度、つまりはステアリングホイールの回転方向を含めた回転角度(舵角)を検出することが可能となる。
【0051】
<第3の実施形態>
図17は、第3の実施形態に係る回転角度検出装置3の上面図である。図18は、図17のA−A部における断面図である。
第3の実施形態に係る回転角度検出装置3は、第2の磁石20を支持し回転可能に支持される磁石支持部材400と、磁石支持部材400に設けられる第1の歯車410と、を備える。そして、回転角度検出手段は、第1の歯車410により磁石支持部材400の回転力が伝達される複数の歯車と、これら複数の歯車のそれぞれの回転角度を検知する複数のセンサと、を有し、これら複数のセンサの検知結果に基づいて第2の磁石20の回転角度を検出する点に特徴がある。以下では第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0052】
第3の実施形態に係る回転角度検出装置3は、図17,図18に示すように、磁石支持部材400に設けられた第1の歯車410と噛み合う第2の歯車420と、第1の歯車410と噛み合い第2の歯車420の歯数とは異なる歯数を有する第3の歯車430とを有する。図18に示すように、第2の歯車420は、回転軸421、軸受け422を介してハウジング130に回転可能に支持されており、第3の歯車430は、回転軸431、軸受け432を介してハウジング130に回転可能に支持されている。
【0053】
また、回転角度検出装置3は、第2の歯車420の回転角度を検出する第2の回転角度センサ520(図17参照)を有している。第2の回転角度センサ520は、第2の歯車420の回転半径方向の外側に配置されており、第2の歯車420の歯又は回転軸421の周方向に複数形成された角度マークに基づいて第2の歯車420の回転角度を検出する。
また、回転角度検出装置3は、第3の歯車430の回転角度を検出する第3の回転角度センサ530(図17参照)を有している。第3の回転角度センサ530は、第3の歯車430の回転半径方向の外側に配置されており、第3の歯車430の歯又は回転軸431の周方向に複数形成された角度マークに基づいて第3の歯車430の回転角度を検出する。
【0054】
このように構成された回転角度検出装置3においては、第1の歯車410の歯数と第2の歯車420の歯数との関係、第1の歯車410の歯数と第3の歯車430の歯数との関係を考慮すると共に、第2の歯車420の歯数と第3の歯車430の歯数とが異なる点を考慮すると、図19に示すような、第2の磁石20の回転角度と、第2,3の歯車420,430の回転角度との関係を示す図を得ることができる。また、第1の磁石10の極数と第2の磁石20の極数との関係から、第2の磁石20の回転角度から回転軸110(ステアリングホイール)の回転角度を算出することが可能となる。したがって、第2,3の歯車420,430の回転角度を検出することで第2の磁石20の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて回転軸110の回転角度を把握することが可能となる。
【0055】
そこで、上記事項を基に、第2,第3の回転角度センサ520,530での検出値と、第2の磁石20の回転角度と、回転軸110の回転角度との関係のテーブルを予め回転角度テーブルとして作成しておき、例えば、演算手段が有する記憶領域に記憶しておく。そして、演算手段が、第2,第3の回転角度センサ520,530による第2,3の歯車420,430の回転角度の出力値と、回転角度テーブルとに基づいて、回転軸110の回転角度を演算できるようにしておく。
【0056】
上述のように構成された回転角度検出装置3は、以下のように機能する。
すなわち、利用者がステアリングホイールを回転すると、これに伴って回転軸110が回転し、第1の磁石10が回転する。そして、第1の磁石10が回転するのに伴って第2の磁石20が第1の磁石10に吸引され、磁石支持部材40が、第1の磁石10の回転方向とは反対の方向に回転する。つまりは、第1の磁石10の回転に連動して、磁石支持部材40に支持されている第2の磁石20および第1の歯車410も回転する。そして、第2,3の歯車420,430が回転し、これらの回転角度を、第2,第3の回転角度センサ520,530が検出する。
そして、演算手段が、第2,第3の回転角度センサ520,530の出力値と回転角度テーブルとに基づいて演算することにより、回転角度検出装置1は、回転軸110の回転角度、つまりはステアリングホイールの回転角度(舵角)を検出することが可能となる。
【0057】
このように、本実施形態に係る回転角度検出装置3においては、回転角度の検出対象である回転軸110の回転駆動力が、非接触で、第2の磁石20、第1,第2,3の歯車410,420,430、第2,第3の回転角度センサ520,530などから構成される検出側のユニットに伝達される。そして、第2,3の歯車420,430の回転角度を第2,第3の回転角度センサ520,530にて検出し、その検出結果を基に回転軸110の回転角度を検出する。それゆえ、検出側のユニットと回転角度検出の対象となる回転軸110側とをギヤ結合する装置よりは、耐久性を向上させることができるとともに静寂な装置にすることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る回転角度検出装置3は、検出側のユニットと回転軸110側とは非接触であるため、検出側のユニットを本体フレームに容易に組み込むことが可能となるのは第1の実施形態と同様である。また、密閉された空間に配置された回転軸110の回転角度を、その空間の外側に検出側のユニットを配置しても検出することが可能となるのは第1の実施形態と同様である。
【0059】
また、第2の磁石20の極数を、第1の磁石10の極数のN倍にすることで、第2の磁石20の1回転分の回転角度の検出で回転軸110(ステアリングホイール)のN回転分の回転角度の検出が可能となるのも第1の実施形態と同様である。
【0060】
なお、図19においては、第2の磁石20の回転角度が1440度(=360度×4)分の第2,3の歯車420,430の回転角度を示している。かかる場合、第2の磁石20の回転角度が720度であるときを0度基準とすることにより、右回りに2回転(720度)、左回りに2回転(720度)の第2の磁石20の回転角度の検出が可能となる。
【0061】
また、本実施形態に係る第2,第3の歯車420,430の歯数は異ならせており、両歯数の関係を、図19に示すように、第2の磁石20が1440度回転しても、両歯車の回転位置が0度の状態に戻らない歯数としている。これにより、第2の歯車420及び第3の歯車430の回転角度を把握することにより一義的に第2の磁石20の回転角度を把握することを実現している。
【0062】
そして、第2,第3の歯車420,430の歯数として、第2の磁石20がN度回転しても両歯車が0度の状態に戻らない歯数を選択することで、第2の磁石20の「N/360」回転分の回転角度を把握することが可能となる。
【0063】
なお、第3の実施形態においては、第2,第3の回転角度センサ520,530を用いて第2,第3の歯車420,430の回転角度を検出しているが、第2,第3の歯車420,430の回転角度を検出する手法としてはかかる態様に限定されない。例えば、第2,第3の歯車420,430を支持する回転軸421,431に、それぞれ第1の実施形態の第3の磁石30のような磁石を装着する。そして、第1の実施形態の第3の磁石30に対する磁気検出素子50と同様に、それぞれの磁石に対向するように、図8に示すエレメント構成のMRセンサあるいは図13に示すエレメント構成のMRセンサを配置する。かかる構成でも、第2,第3の歯車420,430の回転角度を検出することができるので、その値を基に回転軸110の回転角度を検出することが可能となる。
【0064】
また、第3の実施形態においては、ともに第1の歯車410に噛み合わせた第2の歯車420及び第3の歯車430の回転角度を検出することにより回転軸110の回転角度を検出しているが、第2の磁石20の回転に起因して回転すれば、全ての歯車が第1の歯車410に噛み合っていなくてもよい。
例えば、第3の歯車430を、第1の歯車410に噛み合わせるのではなく、第2の歯車420に噛み合わせてもよい。あるいは、第3の歯車430を、第2の歯車420から回転駆動力を得る第4の歯車(不図示)に噛み合わせてもよい。かかる場合においても、第2,第3の回転角度センサ520,530を用いて第2,第3の歯車420,430の回転角度を検出することで回転軸110の回転角度を検出可能であるとともに、センサにて直接的に検知する歯車の歯数及びレイアウトの選択の自由度が増す。また、例えば上述した第4の歯車の回転角度を検出する第4の回転角度センサをも備え、第2,第3の歯車420,430に加えて第4の歯車の回転角度を加味して第2の磁石20の回転角度を検出することでより広範囲の角度を検出することが可能となる。
【0065】
なお、第1の磁石10は、外周面に、N極とS極とが交互に周方向に並べられるように着磁されていればよく、回転軸110に固定された部材を介して回転軸110に固定されていてもよい。同様に、第2の磁石20は、外周面に、N極とS極とが交互に周方向に並べられるように着磁されていればよく、磁石支持部材40(400)に固定された部材を介して磁石支持部材40(400)に固定されていてもよい。
【0066】
なお、上述した第1〜第3の実施形態に係る回転角度検出装置1〜3において、第1の磁石10の回転と第2の磁石20の回転の位相がずれて、非同期となることを抑制する非同期回転抑制手段の一例としてのスリップ防止機構200(図20参照)を備えることが好適である。なお、第1の磁石10のN極に第2の磁石20のS極が吸引されて、および/または第1の磁石10のS極に第2の磁石20のN極が吸引されて第2の磁石20が回転し、両磁石の回転速度が両磁石の極数に反比例する場合に、両磁石の回転は同期しているという。
【0067】
図20は、スリップ防止機構200の概略構成図である。
スリップ防止機構200は、回転軸110に設けられた第1の非同期抑制歯車201と、磁石支持部材40に設けられた第2の非同期抑制歯車202とを有している。
図21は、第1の非同期抑制歯車201に形成された歯と第2の非同期抑制歯車202に形成された歯との配置関係を説明する模式図である。
【0068】
第1の非同期抑制歯車201と第2の非同期抑制歯車202は、共に極数と同数の歯を有している。そして、図21に示すように、第1の非同期抑制歯車201は、図20の時計回転方向に見た場合に、N極とS極との間に歯が形成されており、第2の非同期抑制歯車202は、図20の反時計回転方向に見た場合に、N極とS極との間に歯が形成されている。それゆえ、第1の磁石10と第2の磁石20とが静止しており、第1の磁石10のN極と第2の磁石20のS極が、および第1の磁石10のS極と第2の磁石20のN極が吸引している場合に、第1の非同期抑制歯車201または第2の非同期抑制歯車202の一方の歯車の歯が対向する他方の歯車の歯の間に位置する。
【0069】
また、第1の非同期抑制歯車201および第2の非同期抑制歯車202の歯の大きさは、第1の磁石10と第2の磁石20とが同期して回転する場合には、両歯車の歯は干渉しない大きさに形成されている。他方、第1の磁石10の回転に第2の磁石20の回転が追従できずに両磁石の回転が非同期となりそうな場合には、第1の非同期抑制歯車201又は第2の非同期抑制歯車202の一方の歯車が他方の歯車の歯に突き当たる大きさに形成されている。
【0070】
このように構成されたスリップ防止機構200は、以下のように機能する。
例えば、ドライバによりステアリングホイールが急に回転させられた場合や、車両が縁石に乗り上げた場合など、第1の磁石10の回転速度が急上昇して第2の磁石20が第1の磁石10の回転に追従できない場合においても、第1の非同期抑制歯車201の歯が第2の非同期抑制歯車202の歯に突き当たるので、両歯車により第1の磁石10の回転力が第2の磁石20の回転力として伝達される。これにより、第1の磁石10の回転と第2の磁石20の回転とが非同期となることが抑制される。それゆえ、回転角度検出装置1〜3による検出精度が向上する。
【0071】
なお、図20に示したスリップ防止機構200においては、第1の非同期抑制歯車201と第1の磁石10、および第2の非同期抑制歯車202と第2の磁石20とが別々の物体として構成されているが、抑制歯車と磁石とが一体的に形成されていてもよい。
また、第1の非同期抑制歯車201および第2の非同期抑制歯車202の材質は、磁性材料でも非磁性材料でもよいが、第1の非同期抑制歯車201の歯と第2の非同期抑制歯車202の歯が衝突したとしても破損しないように、想定される両歯車の衝突エネルギー量に応じて選定することが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1の実施形態に係る回転角度検出装置の斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る回転角度検出装置の軸方向の部分断面図である。
【図3】磁石支持部材と第3の磁石との装着態様の他の例を示す図である。
【図4】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図5】図4の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図6】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図7】磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図8】規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。
【図9】図8に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
【図10】磁石が回転運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
【図11】磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
【図12】MRセンサの他の例を示す図である。
【図13】磁石の運動方向を検出するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。
【図14】MRセンサの配置の例を示す図である。
【図15】MRセンサの他の例を示す図である。
【図16】第2の実施形態に係る回転角度検出装置の斜視図である。
【図17】第3の実施形態に係る回転角度検出装置の上面図である。
【図18】図17のA−A部における断面図である。
【図19】第2の磁石の回転角度と、第2,3の歯車の回転角度との関係を示す図である。
【図20】スリップ防止機構の概略構成図である。
【図21】第1の非同期抑制歯車に形成された歯と第2の非同期抑制歯車に形成された歯との配置関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0073】
1,2,3…回転角度検出装置、10…第1の磁石、20…第2の磁石、30…第3の磁石、40…磁石支持部材、50…磁気検出素子、110…回転軸、200…スリップ防止機構、410…第1の歯車、420…第2の歯車、430…第3の歯車、520…第2の回転角度センサ、530…第3の回転角度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持される回転軸の回転角度を検出する回転角度検出装置であって、
前記回転軸に設けられる第1の磁石と、
前記第1の磁石と所定のクリアランスを介して配置され、当該第1の磁石との間に生じる磁力により当該第1の磁石の回転に連動して回転する第2の磁石と、
前記第2の磁石の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出手段と、
を備えることを特徴とする回転角度検出装置。
【請求項2】
前記第1の磁石及び前記第2の磁石は外周面に周方向に交互に配置されたN極とS極とを有し、当該第1の磁石の外周面と当該第2の磁石の外周面とが対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記第2の磁石を支持し回転可能に支持される磁石支持部材をさらに備え、
前記回転角度検出手段は、前記磁石支持部材の回転中心軸方向の一方の端部に支持された第3の磁石と、当該第3の磁石から発生される磁界に基づいて当該第3の磁石の回転角度を検知するセンサとを有し、当該センサの検知結果に基づいて前記第2の磁石の回転角度を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
前記センサは、前記第3の磁石に対向して配置され、当該第3の磁石から発生される磁界の方向に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗素子であることを特徴とする請求項3に記載の回転角度検出装置。
【請求項5】
前記回転角度検出手段は、前記第2の磁石の外周面の外側に配置され、当該第2の磁石から発生される磁界の方向に応じて抵抗値が変化する磁気抵抗素子を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。
【請求項6】
前記第2の磁石を支持し回転可能に支持される磁石支持部材と、当該磁石支持部材に設けられる第1の歯車と、をさらに備え、
前記回転角度検出手段は、前記第1の歯車により前記磁石支持部材の回転力が伝達される複数の歯車と、当該複数の歯車のそれぞれの回転角度を検知する複数のセンサと、を有し、当該複数のセンサの検知結果に基づいて前記第2の磁石の回転角度を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度検出装置。
【請求項7】
前記センサは、検知対象となる歯車の歯又は当該歯車を支持して回転する回転部材に形成されたマークに基づいて、当該歯車の回転角度を検知することを特徴とする請求項6に記載の回転角度検出装置。
【請求項8】
前記第1の磁石の回転と前記第2の磁石の回転とが非同期となることを抑制する非同期回転抑制手段をさらに有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項9】
ステアリングホイールに連結される回転軸と、
前記回転軸に設けられる第1の磁石と、
前記第1の磁石と所定のクリアランスを介して配置され、当該第1の磁石との間に生じる磁力により当該第1の磁石の回転に連動して回転する第2の磁石と、
前記第2の磁石の回転角度を検出し、その検出結果に基づいて前記回転軸の回転角度を検出する回転角度検出手段と、
を備えることを特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−185828(P2010−185828A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31268(P2009−31268)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】