説明

固体撮像装置とその製造方法、及び電子機器

【課題】半導体基板の受光面側に形成された光電変換部を有する固体撮像装置において、画素の微細化を損なうことなく転送効率が向上された固体撮像装置、及びその製造方法を提供する。また、その固体撮像装置を用いた電子機器を提供する。
【解決手段】半導体基板内に、縦方向に積層された接続部21、電位障壁層22、電荷蓄積層23からなる縦型転送路50を形成する。半導体基板17の裏面側には、下部電極31及び上部電極33に挟持された光電変換部32が形成されており、下部電極31と接続部21は、コンタクトプラグ29により電気的に接続されている。これにより、光電変換部で生成された信号電荷は、コンタクトプラグ29を介して接続部21に読み出され、電荷蓄積層23に縦方向にオーバーフローされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画素が配列された光電変換部を含むCMOSイメージセンサや、CCDイメージセンサ等の固体撮像装置に関し、特に、基板の一方面に信号回路を形成し、基板の他方面から受光を行う裏面照射型の固体撮像装置、及びその製造方法に関する。また、その固体撮像装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCCD型やCMOS型のイメージセンサでは、画素サイズの縮小とともに単位画素に入射するフォトン数の減少が起こり、このため、感度の低下や、S/N比の低下が問題となっている。また、現在広く用いられているレッド、グリーン、ブルーの画素を平面状に並べた画素配列とするために、例えば原色カラーフィルタを用いたベイヤー配列とした場合では、レッド画素では、グリーンとブルーの光はカラーフィルタを透過しない。このため、レッド画素では、グリーンとブルーの光は光電変換に用いられないので、光の利用効率にロスが生じる。また、これらの画素構成では、画素間の補間処理を行い色信号を作ることに伴う、偽色という問題が生じる。
【0003】
これらの問題を解決方法として、下記特許文献1では、同一の画素の縦方向にグリーン、ブルー、レッドのそれぞれの波長の光を光電変換する光電変換領域を積層し、かつグリーンの光電変換領域は、有機光電変換膜で構成するという固体撮像装置が提案されている。このような特許文献1に示される構造を用いれば、カラーフィルタでの光のロスを生じないというメリットがあるとともに、補間処理を行わない為に偽色が発生しないという効果が期待できる。
【0004】
しかしながら、有機光電変換膜で光電変換された電荷をSi基板に貯める場合には、有機膜からの信号をSi基板に転送するために、Si基板にオーミックコンタクトをとる必要がある。例えば、光電変換されたキャリア(信号電荷)として電子を用いる場合には、高濃度のN型の不純物をSi基板にイオン注入し、N型拡散層を形成する必要があり、そのN型拡散層と周辺のPウェル間に高い電界を有するPN接合が形成される。そのため、高電界のかかるPN接合部に起因する暗電流がノイズの原因となる。また、有機光電変換膜からコンタクトを取ったN型拡散層にそのまま光電変換された信号電荷を蓄積すると、信号電荷の蓄積とともに、N型拡散層の電位が変動し、有機光電変換膜に印加される電界が信号電荷の蓄積とともに変動する。そうすると、光量に対する出力のリニアリティーが得られなくなるという問題がある。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、下記特許文献2には、有機光電変換膜からの信号電荷をSi基板に形成されたN型拡散層に転送した後、オーバーフローさせる構成が提案されている。その方法について、図17〜図18を用いて説明する。図17は、従来の有機光電変換膜を用いた固体撮像装置の概略断面構成である。図18Aは、図17の要部の平面構成であり、図18Bは、図18Aに対応する断面構成であり、図18Cは、図18BのA−A断面に沿ったポテンシャル図である。
【0006】
図17に示すように、従来の固体撮像装置120では、半導体基板100の光入射側の直上には、上部電極113及び下部電極111で挟持された有機光電変換膜112が積層されている。有機光電変換膜112は、例えばグリーンの光を光電変換するために設けられた膜である。下部電極111は、コンタクト部110を介して、半導体基板100のウェル領域101の表面に、n型の不純物が高濃度にイオン注入されることで形成されたn型拡散層(N+)108に接続されている。すなわち、n型拡散層108には、有機光電変換膜112で得られた信号電荷が転送されてくる。
【0007】
そして、従来の構造では、n型拡散層108に接する領域に、n型半導体領域からなる電荷蓄積領域107が形成され、電荷蓄積領域107の表面側にはp型高濃度不純物領域109が形成されている。そして、電荷蓄積領域107に隣接する領域にはフローティングディフュージョン部FDが形成されており、電荷蓄積領域107とフローティングディフュージョン部FDとの間の半導体基板100上には、ゲート絶縁膜を介して転送ゲート電極106が形成されている。フローティングディフュージョン部FDは、n型の高濃度不純物領域より構成されている。
【0008】
図17に示す従来の構造では、有機光電変換膜112で得られた信号電荷がn型拡散層108に転送され、n型拡散層108に転送されてきた信号電荷は、電荷蓄積領域107にオーバーフローされる構成とされている。このように、信号電荷を横方向にオーバーフローさせるために、実際には、n型拡散層108と電荷蓄積領域107との間には、薄い濃度のp型不純物領域からなるオーバーフローバリアが形成されており、図18Cのようなポテンシャル構成となる。そして、n型拡散層108の電位は、オーバーフローバリアで決まり、オーバーフローバリアを超えた信号電荷が電荷蓄積領域107にオーバーフローされる。
【0009】
図17,18に示した従来の固体撮像装置120のように、信号電荷を横方向にオーバーフローさせる構造では、画素内に2つのキャパシタを形成するような構成であるため、画素サイズの縮小の観点からは不利になる。また、横方向のオーバーフローを用いるため、n型拡散層108から電荷蓄積領域107へのオーバーフローパスが一次元的であるから、効率よくオーバーフローさせるためには横方向のポテンシャル勾配も必要となり、ポテンシャル設計の難易度が大きい。
【0010】
また、有機光電変換膜112とコンタクト部110によって接続されたn型拡散層108から、さらに半導体基板100の深い領域に信号電荷をオーバーフローさせるような縦型のオーバーフローパスも提案されている。図19Aに、縦型オーバーフローパスを構成した場合の概略断面構成を示し、図19Bにその要部拡大図を示す。図18A,Bにおいて、図18に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0011】
縦型のオーバーフローパスを形成する場合には、n型拡散層108の下方であって、半導体基板100内部に電荷蓄積層117を形成する。このような縦型のオーバーフローパスを形成する場合には、オーバーフローパスは2次元的にとることができ、面積が大きくとれるため、オーバーフローに有利になる。また、深さ方向のポテンシャル設計をすればよいのでイオン注入エネルギーでポテンシャル勾配を付けることができるため、プロセス的な難易度は下がる。しかしながら、実際には、図19Bに示すように、n型拡散層108は半導体基板100とコンタクト部110のダメージをカバーできるだけ深く形成しなければならず、そのため、電荷蓄積層117も半導体基板100表面から深い方向に離れていく。そのため、電荷蓄積層117から転送ゲートを介してフローティングディフュージョン部FDへ信号電荷を転送する場合電荷蓄積層117が転送ゲートから離れるため、転送が不利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−151673号公報
【特許文献2】特開2003−31785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の点に鑑み、本発明は、半導体基板の受光面側に形成された光電変換部を有する固体撮像装置において、画素の微細化を損なうことなく転送効率が向上された固体撮像装置、及びその製造方法を提供する。また、その固体撮像装置を用いた電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の固体撮像装置は以下の構成を有する。まず、裏面側が受光面とされ、表面側が回路形成面とされた半導体基板と、下部電極及び上部電極で挟持された光電変換部であって、半導体基板の受光面側に積層された光電変換部とを有する。また、光電変換部で生成された信号電荷を半導体基板側に読み出すために、下部電極と半導体基板とを接続するように形成されたコンタクトプラグを有する。また、コンタクトプラグを半導体基板に電気的に接続するための接続部と、接続部に読み出された信号電荷を蓄積する電荷蓄積層と、接続部と前記電荷蓄積層との間で、ポテンシャルバリアを構成する電位障壁層とを有する。そして、それらの接続部、電位障壁層、及び電荷蓄積層が半導体基板の縦方向に順に積層されることにより、縦型転送路が構成されている。また、半導体基板の回路形成面側には、電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を半導体基板の回路形成面側に読み出す電荷読み出し部が形成されている。
【0015】
また、本発明の固体撮像装置は以下の構成を有する。まず、裏面側が受光面とされ、表面側が回路形成面とされた半導体基板を有する。また、半導体基板内にpn接合を有して構成された第1フォトダイオードからなる第1光電変換部と、第1光電変換部に対して受光面とは反対側の半導体基板内に、pn接合を有して構成された第2フォトダイオードからなる第2光電変換部を有する。また、下部電極及び上部電極で挟持された光電変換部であって、半導体基板の受光面側に積層された第3光電変換部を有する。また、第3光電変換部で生成された信号電荷を半導体基板側に読み出すために、下部電極と半導体基板とを接続するように形成されたコンタクトプラグを有する。また、コンタクトプラグを半導体基板に電気的に接続するための接続部と、接続部に読み出された信号電荷を蓄積する電荷蓄積層と、接続部と電荷蓄積層との間で、ポテンシャルバリアを構成する電位障壁層とを有する。そして、それらの接続部、電位障壁層、及び電荷蓄積層が半導体基板の縦方向に順に積層されることにより、縦型転送路が構成されている。また、半導体基板の回路形成面側には電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を半導体基板の回路形成面側に読み出す電荷読み出し部が形成されている。
【0016】
本発明の固体撮像装置では、半導体基板の縦方向に、接続部、電位障壁層、及び電荷蓄積層からなる縦型転送路が形成されるので、半導体基板の受光面側に構成された光電変換部で生成された信号電荷は、半導体基板内において縦方向にオーバーフローされる。そして、オーバーフローされた信号電荷は電荷蓄積層に蓄積された後、半導体基板の回路形成面側に形成された読み出し部により読み出される。
【0017】
本発明の固体撮像装置の製造方法は、以下の工程を有する。まず、半導体基板を準備し、半導体基板の所望の領域に、所望の導電型の不純物をイオン注入することにより半導体基板の受光面となる裏面側に接続部を形成する工程を有する。次に、半導体基板を所定の厚さまでエピタキシャル成長させる工程と、半導体基板に形成された接続部の縦方向上部に、接続部と反対導電型の不純物をイオン注入することにより、電位障壁層を形成する工程を有する。次に、電位障壁層の縦方向上部に、接続部と同導電型の不純物をイオン注入することにより、電荷蓄積層を形成する工程を有する。次に、半導体基板の回路形成面となる表面側に電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を読み出す電荷読み出し部を形成し、半導体基板表面側に、複数の配線を有する多層配線層を形成する工程を有する。次に、半導体基板の裏面側に絶縁膜を形成し、絶縁膜内に接続部に接続されるコンタクトプラグを形成する工程を有する。次に、コンタクトプラグを含む絶縁膜上部に下部電極を形成し、下部電極上部に光電変換部を形成し、光電変換部上部に上部電極を形成する工程を有する。
【0018】
また、本発明の固体撮像装置の製造方法は、以下の工程を有する。まず、半導体基板を準備し、半導体基板の所望の領域に、所望の導電型の不純物をイオン注入することにより、半導体基板の裏面側に電位障壁層を形成する工程を有する。次に、電位障壁層の縦方向上部に、電位障壁層と反対導電型の不純物をイオン注入することにより、電荷蓄積層を形成する工程を有する。次に、半導体基板の回路形成面となる表面側に電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を読み出す電荷読み出し部を形成し、半導体基板表面側に、複数の配線を有する多層配線層を形成する工程を有する。次に、半導体基板を反転し、電位障壁層の縦方向上部であって、半導体基板の最裏面側に電位障壁層と反対導電型の不純物をイオン注入することにより、接続部を形成する工程を有する。次に、半導体基板の裏面側に絶縁膜を形成し、絶縁膜内に接続部に接続されるコンタクトプラグを形成する工程を有する。次に、コンタクトプラグを含む絶縁膜上部に下部電極を形成し、下部電極上部に光電変換部を形成し、光電変換部上部に上部電極を形成する工程を有する。
【0019】
本発明の固体撮像装置の製造方法では、半導体基板内の縦方向に、接続部、電位障壁部、及び電荷蓄積層が順に積層されて形成される。これらの領域のポテンシャルは半導体基板の深さ方向に設計すればよく、不純物のイオン注入におけるエネルギーを制御することで容易にポテンシャル勾配を形成することができる。このように形成された固体撮像装置では、半導体基板の受光面側に構成された光電変換部で生成された信号電荷が、半導体基板内において縦方向にオーバーフローされる。そして、オーバーフローされた信号電荷は電荷蓄積層に蓄積された後、半導体基板の回路形成面側に形成された読み出し部により読み出される。
【0020】
本発明の電子機器は、光学レンズと、上述した本発明の固体撮像装置と、信号処理回路とを有して構成される。光学レンズは、入射した光を集光し固体撮像装置に入射させる。信号処理回路は、固体撮像装置からの出力信号を処理する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、画素の微細化や、転送効率の向上に有利な固体撮像装置が得られる。また、その固体撮像装置を用いることにより、画質の向上が図られた電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の単位画素における平面構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の単位画素における概略断面構成図である。
【図4】A,B 本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の要部の断面構成図と、そのx−x’線上沿うポテンシャル勾配を示した図である。
【図5】A,B,C 本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造工程図である。
【図6】D,E 本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造工程図である。
【図7】F,G 本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造工程図である。
【図8】H,I 本発明の第1の実施形態に係る固体撮像装置の製造工程図である。
【図9】他の例に係る固体撮像装置の画素領域における平面構成図である。
【図10】A,B 本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の製造工程図である。
【図11】C,D 本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の製造工程図である。
【図12】E,F 本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の製造工程図である。
【図13】G,H 本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の製造工程図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る固体撮像装置の要部の概略断面構成図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る固体撮像装置の要部の概略断面構成図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る電子機器の概略構成図である。
【図17】従来例の固体撮像装置の概略断面構成図である。
【図18】A,B,C 従来例の固体撮像装置の要部の平面構成図と、その断面構成図と、そのA−A’線上に沿うポテンシャル勾配を示す図である。
【図19】A,B 従来例の固体撮像装置の概略断面構成図と、要部の断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態に係る固体撮像装置とその製造方法、及び電子機器の一例を、図1〜図15を参照しながら説明する。本発明の実施形態は以下の順で説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。
1.第1の実施形態:固体撮像装置
1−1 全体構成
1−2 要部の構成
1−3 製造方法
1−4 駆動方法
2.第2の実施形態:固体撮像装置の製造方法
3.第3の実施形態:固体撮像装置
4.第4の実施形態:固体撮像装置
5.第5の実施形態:電子機器
【0024】
〈1.第1の実施形態:固体撮像装置〉
まず、本発明の第1の実施形態に係るCMOS型の固体撮像装置1について、図1を用いて説明する。図1の構成は、下記に説明する第1〜第3の実施形態に係る固体撮像装置に共通の構成である。また、本実施形態例では、固体撮像装置1を、裏面照射型のCMOS型固体撮像装置として説明する。
【0025】
[1−1 固体撮像装置の全体構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るCMOS型の固体撮像装置1の全体を示す概略構成図である。
本実施形態例の固体撮像装置1は、シリコンからなる基板11上に配列された複数の画素2から構成される画素領域3と、垂直駆動回路4と、カラム信号処理回路5と、水平駆動回路6と、出力回路7と、制御回路8等を有して構成される。
【0026】
画素2は、光電変換素子であるフォトダイオードと、複数の画素トランジスタとから構成され、基板11上に、2次元アレイ状に規則的に複数配列される。画素2を構成する画素トランジスタは、転送トランジスタ、リセットトランジスタ、選択トランジスタ、増幅トランジスタで構成される4つの画素トランジスタであってもよく、また、選択トランジスタを除いた3つのトランジスタであってもよい。
【0027】
画素領域3は、2次元アレイ状に規則的に複数配列された画素2から構成される。画素領域3は、実際に光を受光し光電変換によって生成された信号電荷を増幅してカラム信号処理回路5に読み出す有効画素領域と、黒レベルの基準になる光学的黒を出力するための黒基準画素領域(図示せず)とから構成されている。黒基準画素領域は、通常は、有効画素領域の外周部に形成されるものである。
【0028】
制御回路8は、垂直同期信号、水平同期信号及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路4、カラム信号処理回路5、及び水平駆動回路6等の動作の基準となるクロック信号や制御信号などを生成する。そして、制御回路8で生成されたクロック信号や制御信号などは、垂直駆動回路4、カラム信号処理回路5及び水平駆動回路6等に入力される。
【0029】
垂直駆動回路4は、例えばシフトレジスタによって構成され、画素領域3の各画素2を行単位で順次垂直方向に選択走査する。そして、各画素2のフォトダイオードにおいて受光量に応じて生成した信号電荷に基づく画素信号を、垂直信号線9を通してカラム信号処理回路5に供給する。
【0030】
カラム信号処理回路5は、例えば、画素2の列毎に配置されており、1行分の画素2から出力される信号を画素列毎に黒基準画素領域(図示しないが、有効画素領域の周囲に形成される)からの信号によって、ノイズ除去や信号増幅等の信号処理を行う。カラム信号処理回路5の出力段には、水平選択スイッチ(図示せず)が水平信号線10とのあいだに設けられている。
【0031】
水平駆動回路6は、例えばシフトレジスタによって構成され、水平走査パルスを順次出力することによって、カラム信号処理回路5の各々を順番に選択し、カラム信号処理回路5の各々から画素信号を水平信号線10に出力させる。
【0032】
出力回路7は、カラム信号処理回路5の各々から水平信号線10を通して、順次に供給される信号に対し信号処理を行い出力する。
【0033】
[1−2 要部の構成]
図2は、本実施形態例の固体撮像装置の単位画素2における概略平面構成である。
図2に示すように、単位画素2は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれの波長の光を光電変換する第1〜第3光電変換部が3層に積層された光電変換領域15と、各光電変換部に対応する電荷読み出し部とから構成されている。本実施形態例においては、電荷読み出し部は、第1〜第3光電変換部に対応した第1〜第3画素トランジスタTrA,TrB,TrCで構成されている。本実施形態例の固体撮像装置1では、単位画素2において縦方向の分光がなされる。
【0034】
第1〜第3画素トランジスタTrA,TrB,TrCは、光電変換領域15の周辺に形成されており、それぞれ4つのMOS型トランジスタで構成されている。第1画素トランジスタTrAは、後述する第1光電変換部で生成、蓄積された信号電荷を画素信号として出力するもので、第1転送トランジスタTr1、リセットトランジスタTr4、増幅トランジスタTr5、選択トランジスタTr6で構成されている。第2画素トランジスタTrBは、後述する第2光電変換部で生成、蓄積された信号電荷を画素信号として出力するもので、第2転送トランジスタTr2、リセットトランジスタTr7、増幅トランジスタTr8、選択トランジスタTr9で構成されている。第3画素トランジスタTrCは、後述する第3光電変換部で生成、蓄積された信号電荷を画素信号として出力するもので、第3転送トランジスタTr3、リセットトランジスタTr10、増幅トランジスタTr11、選択トランジスタTr12で構成されている。
【0035】
図3に、本実施形態例の固体撮像装置1の単位画素2における要部の概略断面構成を示す。図3では、第1〜第3画素トランジスタTrA,TrB,TrCのうち第1〜第3転送トランジスタTr1,Tr2,Tr3のみ図示し、他の画素トランジスタの図示を省略する。本実施形態例の固体撮像装置1は、半導体基板17の表面側の画素トランジスタが形成された側とは反対側の裏面側から光が入射される裏面照射型の固体撮像装置である。図3では、上側を受光面側とし、下側を画素トランジスタや、ロジック回路等の周辺回路などが形成された回路形成面とする。
【0036】
光電変換領域15は、半導体基板17に形成される第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2からなる第1及び第2光電変換部と、半導体基板17の裏面側に形成された有機光電変換膜32からなる第3光電変換部とが光の入射方向に積層された構成とされる。
【0037】
第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2は、シリコンからなる半導体基板17の、第1導電型(本実施形態例ではp型とする)の半導体領域からなるウェル領域16に形成されている。
第1フォトダイオードPD1は、半導体基板17の受光面側に形成された第2導電型(本実施形態例ではn型とする)不純物によるn型半導体領域19と、その一部が半導体基板の表面側に達するように延長して形成された延長部19aを有する。延長部19aは、3層の光電変換部が積層された部分で構成される光電変換領域15の周辺に形成されるもので、その延長部19aの表面(半導体基板の表面)には、ホール蓄積層となる高濃度のp型半導体領域20が形成されている。また、この延長部19aは、第1フォトダイオードのn型半導体領域19に蓄積された信号電荷を半導体基板17の表面側に抜き出すための抜き出し層として形成されるものである。
【0038】
第2フォトダイオードPD2は、半導体基板17の表面側に形成されたn型半導体領域19と、その表面側の半導体基板17界面に形成されたホール蓄積層となる高濃度のp型半導体領域18とで構成されている。
第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2において、半導体基板17の界面にp型半導体領域20,18が形成されることにより、半導体基板17界面で発生する暗電流の抑制が図られる。
【0039】
受光面から一番離れた領域に形成された第2フォトダイオードPD2は、赤色の波長の光を光電変換する光電変換部とされる。また、受光面側に形成された第1フォトダイオードPD1は、青色の波長の光を光電変換する光電変換部とされる。
【0040】
有機光電変換膜32は、半導体基板17の裏面上に形成された反射防止膜となる絶縁膜28を介して形成されており、その上下両面は、上部電極33及び下部電極31で挟まれた構成とされている。本実施形態例では、有機光電変換膜32は、緑色の波長の光を光電変換する光電変換部とされ、例えば、ローダーミン系色素、メラシアニン系色素、キナクリドン等を含む有機光電変換材料で構成される。また、上部電極33及び下部電極31は、光透過性の材料で構成され、例えば、インジウム錫(ITO)膜、酸化インジウム亜鉛膜等の透明導電膜で構成される。
【0041】
本実施形態例では、有機光電変換膜32の材料を緑色の光を光電変換する材料で構成したが、青色あるいは赤色の波長の光を光電変換する材料で構成し、第1フォトダイオードPD1及び第2フォトダイオードPD2をその他の波長に対応させて構成してもよい。有機光電変換膜32で青色の光を吸収させる場合には、半導体基板17の受光面側に形成される第1フォトダイオードPD1は、緑色の光を光電変換する光電変換部として設定し、第2フォトダイオードPD2を赤色の光を光電変換する光電変換部として設定する。また、有機光電変換膜32で赤色の光を吸収させる場合には、半導体基板17の受光面側に形成される第1フォトダイオードPD1は、青色の光を光電変換する光電変換部として設定し、第2フォトダイオードPD2を緑色の光を光電変換する光電変換部として設定する。青色の光を光電変換する有機光電変換膜としては、クマリン酸色素、トリス−8−ヒドリキシキノリAl(Alq3)、メラシアニン系色素等を含む有機光電変換材料を用いることができる。また、赤色の光を光電変換する有機光電変換膜としては、フタロシアニン系色素を含む有機光電変換材料を用いることができる。
【0042】
また、本実施形態例のように、半導体基板17内で光電変換する光を、青色及び赤色とし、有機光電変換膜32で光電変換する光を緑色と設定することで、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2間における分光特性を向上させることができる。
【0043】
そして、上述の有機光電変換膜32の半導体基板17側に形成される下部電極31は、絶縁膜28を貫通するコンタクトプラグ29を介して、半導体基板17裏面側から表面側にかけて形成された縦型転送路50に接続されている。縦型転送路50は、半導体基板17の裏面側から表面側にかけて縦方向に形成された接続部21、電位障壁層22、電荷蓄積層23、p型半導体領域24の積層構造により構成とされている。接続部21は、半導体基板17の裏面側に形成された高不純物濃度のn型不純物領域からなり、コンタクトプラグ29とのオーミックコンタクトのために構成されている。電位障壁層22は、低濃度のp型不純物領域からなり、接続部21と電荷蓄積層23間においてポテンシャルバリアを構成する。電荷蓄積層23は、有機光電変換膜32から転送された信号電荷を蓄積する層であり、接続部21よりも低濃度のn型不純物領域で構成される。半導体基板17の最表面に形成されたp型半導体領域24は、高濃度のp型不純物領域で構成され、これにより半導体基板17界面における暗電流の発生が抑制される。
【0044】
図4Aに、半導体基板17のうち、縦型転送路50の領域における拡大図を示し、図4Bに、図4Aにおけるx−x’線上に沿う断面構成図を示す。
本実施形態例における縦型転送路50では、図4Bに示すようなポテンシャル勾配が形成される。このため、有機光電変換膜32からコンタクトプラグ29を介して接続部21に転送されてきた信号電荷eは電位障壁層22で形成されるオーバーフローバリアを超えて電荷蓄積層23に蓄積されていく。電荷蓄積層23に蓄積された信号電荷eが、半導体基板17の回路形成面となる表面側に読み出されることとなる。
【0045】
そして、半導体基板17の回路形成面となる表面側には、図2で示したように、第1フォトダイオードPD1、第2フォトダイオードPD2及び有機光電変換膜32に対応する第1〜第3画素トランジスタTrA,TrB,TrCが構成されている。図3では、簡単のため、第1〜第3画素トランジスタTrA,TrB,TrCのうち、第1〜第3転送トランジスタTr1,Tr2,Tr3のみを図示している。
【0046】
第1転送トランジスタTr1は、第1フォトダイオードPD1の延長部19aに隣接する半導体基板表面側に形成されたフローティングディフュージョン部FD1と、半導体基板17上にゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極37とで構成される。
第2転送トランジスタTr2は、第2フォトダイオードPD2に隣接する半導体基板表面側に形成されたフローティングディフュージョン部FD2と、半導体基板17上にゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極38とで構成される。
第3転送トランジスタTr3は、縦型転送路50に隣接する半導体基板表面側に形成されたフローティングディフュージョン部FD3と、半導体基板17上にゲート絶縁膜を介して形成された転送ゲート電極39とで構成される。
【0047】
フローティングディフュージョン部FD1,FD2,FD3は、いずれもn型の高濃度不純物領域で構成され、転送ゲート電極37,38,39は、例えばポリシリコンで構成される。
【0048】
半導体基板17の表面側には、層間絶縁膜27を介して複数層(本実施形態例では3層)に積層された配線26を有する多層配線層25が形成されている。また、多層配線層25の表面には、製造段階において形成される支持基板53が形成されている。
【0049】
また、上部電極33上部の受光面側には、縦型転送路50及び、第1フォトダイオードPD1からの電荷引き抜き部となる延長部19aを遮光する遮光膜36が形成されている。遮光膜36としては、例えばAl、Ti、W等を用いることができる。図3では、上部電極33上に絶縁膜を介して、遮光膜36を形成する構成としているが、上部電極33上部に絶縁膜を介して遮光膜36を形成する場合には、遮光膜36の電位が固定されない。そのため、上部電極33と接触するように遮光膜36を形成する例としてもよく、この場合には、遮光膜36の電位が上部電極33と等電位に保持される。
そして、遮光膜36上部には、平坦化膜34を介して、オンチップレンズ35が形成されている。本実施形態例の固体撮像装置では、単位画素2において縦方向に分光がなされるので、カラーフィルタは構成されていない。
【0050】
そして、図2に示したように、実際には、半導体基板17の表面側に、リセットトランジスタTr4,Tr7,Tr10、増幅トランジスタTr5,Tr8,Tr11、選択トランジスタTr6,Tr9,Tr12で構成されている。リセットトランジスタTr4,Tr7,Tr10は、ソース・ドレイン領域43,44とゲート電極40とで構成されている。増幅トランジスタTr5,Tr8,Tr11は、ソース・ドレイン領域44,45、ゲート電極41とで構成されている。選択トランジスタTr6,Tr9,Tr12は、ソース・ドレイン領域45,46と、ゲート電極42とで構成されている。
そしてこれらの画素トランジスタTrA,TrB,TrCにおいては、フローティングディフュージョン部FD1,FD2,FD3が対応するリセットトランジスタTr4,Tr7,Tr10の一方のソース・ドレイン領域43に接続されている。さらに、フローティングディフュージョン部FD1,FD2,FD3は、対応する増幅トランジスタTr5,Tr8,Tr11のゲート電極41に接続されている。
また、リセットトランジスタTr4,Tr7,Tr10と増幅トランジスタTr5,Tr8,Tr11とで共通のソース・ドレイン領域44には、電源電圧配線VDDが接続されている。また、選択トランジスタTr6,Tr9,Tr12の一方のソース・ドレイン領域46には、選択信号配線VSLが接続されている。
【0051】
[1−3 製造方法]
次に、本実施形態例の固体撮像装置1の製造方法について説明する。図5〜図8は、本実施形態例の固体撮像装置1の製造工程図であり、特に、縦型転送路50が形成された領域における製造工程を示す図である。
【0052】
まず、図5Aに示すように、シリコンからなる基板51上に、埋め込み酸化膜(以下、BOX層52)及びシリコンからなる半導体層17が順に形成されたSOI基板を準備する。この半導体層17は、図3における半導体基板17に相当するものである。図5AにおけるSOI基板における半導体層17はp型の半導体層とされ、その厚みは例えば、200〜300nmに形成されている。この時の半導体層17の厚みは、次の工程におけるn型拡散層の為のイオン注入が可能な厚みに形成されている。
【0053】
次に、図5Bに示すように、BOX層52界面の半導体層17に、n型の不純物を高濃度にイオン注入することにより、接続部21を形成する。この接続部21は、有機光電変換膜32からの信号電荷を取り出すためのコンタクトプラグ29と、オーミックコンタクトをとる必要があるため、1×1019〜1×1020/cm程度の濃度とされる。そして、このとき、SOI基板の半導体層17が薄く形成された状態でイオン注入を行うことができるので、高濃度のイオン注入が可能となり、また、半導体層17の深い位置に精度よく接続部21を形成することができる。
【0054】
次に、図5Cに示すように、エピタキシャル成長法を用いて、半導体層17上部にさらにp型半導体領域を形成し、半導体層17の膜厚を所望の厚さまで形成する。半導体層17に、青色の光に対応する第1フォトダイオードPD1や、赤色の光に対応する第2フォトダイオードPD2を形成し、特に、赤色の波長の光に対する感度を十分に確保するためには、少なくとも半導体層17の厚みは3μm程度とすることが好ましい。
【0055】
尚、はじめから3μm程度の半導体層17を形成し、1×1019〜1×1020/cmの濃度の接続部21を半導体層17の深い領域に形成することは生産性の観点から困難である。したがって、本実施形態例のように、半導体層17が薄く形成された時点で、接続部21を形成し、その後エピタキシャル成長法を用いて、必要な膜厚の半導体層17を得る例とすることが好ましい。
そして、エピタキシャル成長法によって形成された半導体層17は、画素2が形成されるウェル領域16とされる。
【0056】
次に、図6Dに示すように、接続部21の上部縦方向に、p型の不純物を低濃度にイオン注入することで電位障壁層22を形成し、続いて、電位障壁層22の上部縦方向にn型の不純物をイオン注入することで電荷蓄積層23を形成する。電荷蓄積層23の不純物濃度は接続部21よりも薄く、また、電位障壁層22側から半導体層17表面側にかけて除々に濃くなるように段階的なイオン注入によって形成する。そして、電荷蓄積層23の上部縦方向であって、半導体層17の最表面には、p型の不純物を高濃度にイオン注入することによりp型半導体領域24からなる暗電流抑制領域を形成する。そして、これにより、半導体層17のBOX層52に接する面から表面側にかけて縦方向に形成された縦型転送路50が形成される。
【0057】
その後、半導体層17表面には、図示しないゲート酸化膜を介して転送ゲート電極39を形成する。また、半導体層17表面の所望の領域には、n型の不純物を高濃度にイオン注入することによりフローティングディフュージョン部FD3を形成する。図5Dでは図示を省略するが、この時点で、半導体層17の他の領域には、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2や、第1〜第3画素トランジスタTrA,TrB,TrCを構成するソース・ドレイン領域や、ゲート電極が形成される。
【0058】
次に、図6Eに示すように、半導体層17の表面側に、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜27の堆積工程と、メタルコンタクト(図示せず)、及び金属材料からなる配線26の形成工程を繰り返す。これにより、層間絶縁膜27と複数層(本実施形態例では3層)の配線26からなる多層配線層25を形成する。配線26を構成する金属材料としては、例えば、銅やアルミニウムを用いることができる。
【0059】
次に、図7Fに示すように、多層配線層25上部に、例えばシリコンからなる支持基板53を貼り付ける。
【0060】
次に、図7Gに示すように、素子を反転させ、SOI基板を構成する基板51、及びBOX層52を除去し、光入射面となる半導体層17の裏面上に、反射防止膜を兼ねる絶縁膜28を形成する。この絶縁膜28には、半導体層17に形成する第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2に対する入射光の反射を抑制するため、高い屈折率を持ちながら、さらに、半導体層と欠陥準位の少ない界面を有する材料を用いる必要がある。そのような特性を有する絶縁膜28としては、例えば、半導体層17の界面に、1nm〜2nmの厚みに成膜されたシリコン酸化膜(SiO)と、その上部に、屈折率nが2程度の酸化ハフニウム(HfO)とからなる積層膜を用いることが好ましい。
【0061】
また、半導体層17裏面側に形成される絶縁膜28は、負の固定電荷を有する膜を用いることが好ましい。酸化ハフニウムは、負の固定電荷を用いるので、半導体層17裏面側の界面にホールの蓄積状態が強化される。これにより、暗電流の発生が抑制される。
【0062】
負の固定電荷を持つ材料としては、酸化ハフニウム(HfO)の他、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、もしくは酸化チタン(TiO)を用いることができる。成膜方法としては、例えば、化学気相成長法、スパッタリング法、原子層蒸着法等が挙げられえる。原子層蒸着法を用いれば、成膜中に界面準位を低減するSiO膜を同時に1nm程度形成することが好適である。また、上記以外の材料としては、酸化ランタン(La)、酸化プラセオジム(Pr)、酸化セリウム(CeO)、酸化ネオジム(Nd)、酸化プロメチウム(Pm)等が挙げられる。さらに、上記材料としては、酸化サマリウム(Sm)、酸化ユウロピウム(Eu)、酸化ガドリニウム((Gd)、酸化テルビウム(Tb)、酸化ジスプロシウム(Dy)等が上げられる。さらに、上記材料としては、酸化ホルミウム(Ho)、酸化ツリウム(Tm)、酸化イッテルビウム(Yb)、酸化ルテチウム(Lu)、酸化イットリウム(Y)等が挙げられる。さらに、上記負の固定電荷を有する膜は、窒化ハフニウム膜、窒化アルミニウム膜、酸窒化ハフニウム膜または酸窒化アルミニウム膜で形成することも可能である。
【0063】
上記負の固定電荷を有する膜は、絶縁性を損なわない範囲で、膜中にシリコン(Si)や窒素(N)が添加されていてもよい。その濃度は、膜の絶縁性が損なわれない範囲で適宜決定される。このように、シリコン(Si)や窒素(N)が添加されることによって、膜の耐熱性やプロセスの中でイオン注入の阻止能力を上げることが可能になる。
【0064】
次に、図8Hに示すように、絶縁膜28を貫通して半導体層17の接続部21に接続されるコンタクトプラグ29を形成する。このコンタクトプラグ29は、絶縁膜28の所定の位置を開口することにより、接続部21が臨むコンタクトホールを形成した後、コンタクトホールの側壁及び底部にバリメタル膜を成膜し、さらに金属材料を埋め込むことによって形成する。半導体層17との間でオーミックコンタクトを有するために、バリアメタル膜としてチタン(Ti)と窒化チタン(TiN)の積層膜、コンタクトホールに埋め込み金属材料としては、タングステン(W)を用いることが好ましい。その後、コンタクトプラグ29を含む絶縁膜28上部の所望の領域に、下部電極31を形成する。下部電極31である透明電極としては、例えばスパッタ法を用いて成膜された100nm程度の厚みのITO膜を用いることができ、また、ドライエッチングやウェットエッチングを用いて所望の形状にパターニングして形成する。ドライエッチングでは、例えばClとBClとArとの混合エッチングガスを用いることができ、ウェットエッチングでは、リン酸溶液、又はシュウ酸及びリン酸を含んだ混合溶液等のエッチング液を用いることができる。
【0065】
次に、図8Iに示すように、下部電極31を被覆するように、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜30を形成し、下部電極31上部の絶縁膜30に、下部電極31が露出するような開口部を形成する。この開口部は、下部電極31のエッジ部分の段差抑制のために、図7Iに示すようにテーパー形状に形成するのが好ましい。より好ましくは、絶縁膜30の開口部のテーパー角は30度以下とする。例えば、酸化シリコンからなる絶縁膜30上に、テーパー形状のレジストマスクを形成し、エッチパックすることで、所望のテーパー角を形成することができる。
【0066】
その後、開口部を被覆して絶縁膜30の上部全面に有機光電変換膜32を形成する。本実施形態例では、有機光電変換膜32として、緑の光を選択的に吸収する有機光電変換材料であるキナクリドンを用い、例えば真空蒸着を用いて約100nm程度の厚みに成膜する。その後、有機光電変換膜32上部全面に、上部電極33を形成する。上部電極33も下部電極31と同様、例えばスパッタ法を用い、100nm程度の厚みのITO膜を用いる。
【0067】
その後、上部電極33上部に、遮光膜36及び平坦化膜34を形成し、その上部にオンチップレンズを形成することで、図3に示す本実施形態例の固体撮像装置1が完成する。
【0068】
本実施形態例の固体撮像装置1の製造方法では、縦型転送路50における縦方向のポテンシャルをイオン注入時のエネルギーで容易にコントロールすることができるので、制御がし易く、また設計が容易である。
【0069】
[1−4 駆動方法]
次に、本実施形態例の固体撮像装置1の駆動方法について説明する。駆動方法については、図2及び図3を用いて説明する。
【0070】
本実施形態例では、有機光電変換膜32の受光面側に形成された上部電極33には、固定の負電圧VLが印加され、コンタクトプラグ29に接続されている下部電極31に電荷蓄積時において、電圧VLよりも高い電圧VHが印加されている。電圧VHはオーバーフローバリアの電位によって決定される。
【0071】
電荷蓄積時において、1つの画素2に光が入射すると、緑の波長の光は、緑の波長光に吸収特性を有する有機光電変換膜32において光電変換され、有機光電変換膜32において電子・ホール対が形成される。この光電変換により生成された電子・ホール対のうち、信号電荷となる電子が、高い電圧VHが印加されている下部電極31に引かれ、コンタクトプラグ29を通って接続部21に転送される。そして、接続部21の飽和電荷量を超えた信号電荷は、電位障壁層22を超えて、電荷蓄積層23にオーバーフローされ、電荷蓄積層23において蓄積される。
このとき、ホールは負電圧VLが印加された上部電極33に引かれ、図示しない所要の配線を通じて排出される。また、本実施形態例においては、下部電極31には高い電圧VHが印加されているので、半導体基板17の裏面側界面に暗電流が発生するバイアス電圧の極性に相当する。しかしながら、反射防止膜を構成する絶縁膜28において酸化ハフニウムを用いることにより半導体基板17裏面にホールが励起された状態とされる。このため、下部電極31に印加する電圧VHに起因して半導体基板17界面に発生する暗電流を抑制することができる。
【0072】
また、青色の波長の光は、受光面に近い半導体基板17内に形成された第1フォトダイオードPD1に吸収され光電変換される。これにより、青色の光に対応する信号電荷が第1フォトダイオードPD1のn型半導体領域19に蓄積される。赤色の波長の光は、受光面から深さ方向に深い半導体基板17内に形成された第2フォトダイオードPD2に吸収され光電変換される。これにより、赤色の光に対応する信号電荷が第2フォトダイオードPD2のn型半導体領域19に蓄積される。
【0073】
そして、電荷蓄積が終了した後、第1〜第3転送トランジスタTr1,Tr2,Tr3の転送ゲート電極37,38,39に所望の転送パルスが印加されることにより、電荷の読み出しが開始される。第1転送トランジスタTr1では、第1フォトダイオードPD1のn型半導体領域19に蓄積された青色の光に対応する信号電荷が延長部19aを通ってフローティングディフュージョン部FD1に読み出される。また、第2転送トランジスタTr2では、第2フォトダイオードPD2のn型半導体領域19に蓄積された赤色の光に対応する信号電荷がフローティングディフュージョン部FD2に読み出される。また、第3転送トランジスタTr3では、縦型転送路50の電荷蓄積層23に蓄積された緑色の光に対応する信号電荷がフローティングディフュージョン部FD3に読み出される。
【0074】
そして、それぞれの信号電荷がそれぞれのフローティングディフュージョン部FD1,FD2,FD3に読み出されることによる電位変化が増幅トランジスタTr5,Tr8,Tr11によって増幅され、画素信号とされて図示しない垂直信号配線に読み出される。垂直信号配線に読み出されるタイミングは、選択トランジスタTr6,Tr9,Tr12によって決定される。
【0075】
信号電荷の読み出し、転送後は、リセットトランジスタTr4,Tr7,Tr10によって、フローティングディフュージョン部FD1,FD2,FD3に読み出された信号電荷がリセットされる。
【0076】
本実施形態例によれば、有機光電変換膜32で生成された信号電荷を半導体基板17に形成した縦型転送路50において、接続部21から電荷蓄積層23内に縦方向にオーバーフローさせて転送し、電荷蓄積層23内に蓄積することができる。このような縦方向のオーバーフロー構造を有する縦型転送路50の形成は上述したように、イオン注入のエネルギーによって精密に制御できるため、横方向のオーバーフロー構造よりも製造し易く、プロセスの制御性を向上させることができる。また、縦型転送路50は、半導体基板17の裏面側から表面側にかけて縦方向に形成されるため、画素サイズの増大を伴うことがなく、有機光電変換膜32で生成された信号電荷を半導体基板17の裏面側から表面側に読み出すことができる。
【0077】
また、電荷蓄積層23は転送ゲート電極39に近接して形成できることから、電荷蓄積層23からフローティングディフュージョン部FD3への転送にも有利な構成である。さらに、裏面照射型の固体撮像装置であるため、受光面となる半導体基板17の裏面側には多層配線層25が形成されないので、有機光電変換膜32と半導体基板17に形成された第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2とを近い距離に形成できる。これにより、有機光電変換膜32と第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2の距離が遠い場合に発生するF値による色毎の感度変動の影響も低減することができる。
【0078】
本実施形態例では、図2に示すような画素2の構成としたが、各画素トランジスタを複数の画素で共有する例としてもよい。図9は、他の実施形態例における回路構成図である。図8において、図2に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0079】
本実施形態例では、第1画素2a、第2画素2b、第3画素2cを列状に配置した図である。第1画素2aでは、光電変換領域15の周辺部に赤色の波長の光に対応する信号電荷を読み出すためのリセットトランジスタTr7、増幅トランジスタTr8、選択トランジスタTr9が構成されている。第2画素2bでは、光電変換領域15の周辺部に緑色の波長の光に対応する信号電荷を読み出すためのリセットトランジスタTr10、増幅トランジスタTr11、選択トランジスタTr12が構成されている。第3画素2cでは、光電変換領域15の周辺部に青色の波長の光に対応する信号電荷を読み出すためのリセットトランジスタTr4、増幅トランジスタTr5、選択トランジスタTr6が構成されている。
【0080】
そして、第1〜第3画素2a〜2cにおけるフローティングディフュージョン部FD2は、第1画素2aの周辺領域に形成されたリセットトランジスタTr7のソース・ドレイン領域43、及び増幅トランジスタTr8のゲート電極41に接続されている。また、第1〜第3画素2a〜2cにおけるフローティングディフュージョン部FD3は、第2画素2bの周辺領域に形成されたリセットトランジスタTr10のソース・ドレイン領域43、及び増幅トランジスタTr11のゲート電極41に接続されている。第1〜第3画素2a〜2cにおけるフローティングディフュージョン部FD1は、第3画素2cの周辺領域に形成されたリセットトランジスタTr4のソース・ドレイン領域43、及び増幅トランジスタTr5のゲート電極41に接続されている。
【0081】
図9に示す例では、第1〜第3画素2a〜2cにおける光電変換部毎に、リセットトランジスタ、転送トランジスタ、転送トランジスタを共有するので、画素トランジスタの数を減らすことができ、画素サイズの縮小に有利である。また、画素トランジスタの数を減らすことができるので、画素サイズを保った状態において光電変換領域15の受光面積を拡大することができる。また、この例においても、上述した本実施形態例の効果を得ることができる。
【0082】
〈2.第2の実施形態:固体撮像装置の製造方法〉
次に、本発明の第2の実施形態に係る固体撮像装置の製造方法について説明する。図10〜図13は、本実施形態例の固体撮像装置の製造工程図である。本実施形態例で完成される固体撮像装置は、図3に示した固体撮像装置と同様であるから重複説明を省略する。また、図10〜図13において、図5〜図8に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0083】
まず、図10Aに示すように、シリコンからなる基板51上に、BOX層52及びシリコンからなる半導体層17が順に形成されたSOI基板を準備する。この半導体層17は、図3における半導体基板17に相当するものである。SOI基における半導体層17はp型の半導体層とされ、その厚みは例えば、3μm程度に形成されている。
【0084】
次に、図10Bに示すように、半導体層17の縦型転送路50が形成される領域の深さ方向に深い位置に、p型の不純物を低濃度にイオン注入することで電位障壁層22を形成する。続いて、電位障壁層22の上部縦方向にn型の不純物をイオン注入することで電荷蓄積層23を形成する。電荷蓄積層23の不純物濃度は接続部21よりも薄く、また、電位障壁層22側から半導体層17表面側にかけて除々に濃くなるように段階的なイオン注入によって電荷蓄積層を形成する。そして、電荷蓄積層23の上部縦方向であって、半導体層17の最表面には、p型の不純物を高濃度にイオン注入することによりp型半導体領域24からなる暗電流抑制領域を形成する。また、本実施形態例においては、半導体層17の一番深い領域に形成される接続部21は、半導体層17の表面からのイオン注入で形成することは困難であるため、この段階では未だ形成されない。
【0085】
その後、半導体層17表面には、図示しないゲート酸化膜を介して転送ゲート電極39を形成する。また、半導体層17表面の所望の領域には、n型の不純物を高濃度にイオン注入することによりフローティングディフュージョン部FD3を形成する。図9Bでは図示を省略するが、この時点で、半導体層17の他の領域には、第1及び第2フォトダイオードPD1,PD2や、画素トランジスタが形成される。
【0086】
次に、図11Cに示すように、半導体層17の回路形成面である表面側に、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜27の堆積工程と、メタルコンタクト(図示せず)、及び金属材料からなる配線26の形成工程を繰り返す。これにより、層間絶縁膜27と複数層(本実施形態例では3層)の配線26からなる多層配線層25を形成する。配線26を構成する金属材料としては、例えば、銅やアルミニウムを用いることができる。
【0087】
次に、図11Dに示すように、多層配線層25上部に、例えばシリコンからなる支持基板53を貼り付ける。
【0088】
次に、図12Eに示すように、素子を反転させ、SOI基板を構成する基板51、及びBOX層52を除去し、半導体層17の受光面となる裏面側を露出する。次に、露出された半導体層17の最表面の電位障壁層22の上部領域に、n型の不純物を高濃度にイオン注入することにより、接続部21を形成する。この接続部21は、有機光電変換膜32からの信号電荷を取り出すためのコンタクトプラグ29と、オーミックコンタクトをとる必要があるため、ドーズ量は1×1015/cm程度とされる。その後、半導体層17に形成された不純物領域の活性化を行う。ここで、本実施形態例ではこの段階において半導体層17の表面側に多層配線層25が既に形成されているため、配線26の耐熱性の観点から、瞬間的に活性化が可能な活性化方法であるレーザーアニールを用いることが好ましい。
【0089】
その後の図12F〜図13Hに示す工程は、第1の実施形態における図7G〜図8Iの工程と同様であるから、説明を省略する。
【0090】
以上のように、本実施形態例においても、半導体層17に縦方向に不純物領域が積層された構成の縦型転送路50を精度よく形成することができる。その他、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
上述した第1及び第2の実施形態では、半導体基板17に2つの光電変換部を形成し、その上部に、有機光電変換膜32からなる光電変換部を積層させた縦型分光法を用いた例であるが、本発明は、この構成に限られるものではない。半導体基板上部に光電変換部を構成し、その光電変換部で生成された信号電荷を半導体基板に形成された縦型転送路に転送、蓄積させて読み出す構成であれば適用が可能である。
【0092】
〈3.第3の実施形態:固体撮像装置〉
次に、本発明の第3の実施形態に係る固体撮像装置について説明する。本実施形態例の固体撮像装置は、第1の実施形態の固体撮像装置における所望の転送トランジスタを縦型トランジスタとした例である。
図14は、本実施形態例の固体撮像装置の要部の概略断面構成である。図14において、図3に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0093】
本実施形態例においては、半導体基板17の受光面側に形成される第1フォトダイオードPD1は、半導体基板17の裏面側に形成されたn型半導体領域60と、n型半導体領域60に接して半導体基板17の表面側に形成されたp型半導体領域61とから構成される。すなわち、本実施形態例の第1フォトダイオードPD1では、図3に示した延長部19aが形成されない。
【0094】
また、有機光電変換膜32で生成された信号電荷が転送されてくる半導体基板17内の縦型転送路50は、半導体基板17の裏面側から順に縦方向に積層された接続部21、電位障壁層22、電荷蓄積層23から構成されている。
【0095】
そして、本実施形態例では、第1転送トランジスタTr1及び第3転送トランジスタTr3は縦型ゲート電極62,63を有する縦型転送トランジスタとされている。すなわち、第1転送トランジスタTr1を構成する縦型ゲート電極62は、第1フォトダイオードPD1のn型半導体領域60に達するように、半導体基板17表面側から半導体基板17に埋め込まれて形成されている。また、第3転送トランジスタTr3を構成する縦型ゲート電極63は、縦型転送路50の電荷蓄積層23に達するように、半導体基板17表面側から半導体基板17に埋め込まれて形成されている。
【0096】
このような縦型ゲート電極62,63は、半導体基板17の所望の領域に、半導体基板17表面側から所望の深さの開口部を形成し、その開口部の側面及び底部にゲート酸化膜64を形成した後、例えばポリシリコンからなる電極材料を埋め込むことによって形成する。また、縦型ゲート電極62,63では、柱状のゲート電極に沿って転送チャネルが形成され、第1フォトダイオードPD1のn型半導体領域60に蓄積された信号電荷が転送される。このため、第1フォトダイオードPD1を構成するp型半導体領域61は、転送チャネルの形成を阻止しないように縦型ゲート電極62から所定の距離だけ離して形成する。
【0097】
また、本実施形態例では、縦型転送路50の電荷蓄積層23に蓄積される信号電荷も、縦型ゲート電極62に沿って形成される転送チャネルを通ってフローティングディフュージョン部FD3に読み出される。縦型ゲート電極63を用いる場合には、電荷蓄積層23を半導体基板17の表面側にまで形成する必要がない。このため、縦型転送路50内のポテンシャルの設計がより容易になる。
【0098】
〈4.第4の実施形態:固体撮像装置〉
次に、本発明の第4の実施形態に係る固体撮像装置について説明する。本実施形態例の固体撮像装置は、半導体基板の上部に形成される光電変換膜を、無機材料で形成する例であり、また、縦型分光を用いない例である。図15は、本実施形態例の固体撮像装置の概略断面構成である。図15において、図3に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0099】
図15では、3画素分の断面構成を示している。本実施形態例の固体撮像装置における単位画素は、無機光電変換材料であるアモルファスシリコンからなる光電変換部72を有する。また、光電変換部72で生成された信号電荷を読み出して蓄積し、半導体基板17の表面側に転送する縦型転送路50を有する。縦型転送路50、及び縦型転送路50の電荷蓄積層23に蓄積された信号電荷を半導体基板17表面側に読み出す転送トランジスタTrの構成は、第1の実施形態と同様である。
【0100】
光電変換部72を構成するアモルファスシリコンは、半導体基板17の裏面上に絶縁膜74を介して形成されており、光入射方向の上下に形成された上部電極70及び下部電極71に挟持された構成とされている。上部電極70透明電極であるITO膜で構成される。下部電極71には、Siへの光の透過を防止するために、AlやTi、Wなどの遮光性をもつ電極を用いることが好ましい。また、下部電極71は、絶縁膜74内に形成されたコンタクトプラグ75を介して、縦型転送路50の接続部21に電気的に接続されている。
【0101】
そして、アモルファスシリコンからなる光電変換部72は、平坦化膜73に被覆され、平坦化膜上73には、画素毎に異なるカラーフィルタ78が形成されている。本実施形態例では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に対応するカラーフィルタ78が、例えばベイヤー配列となるように各画素に構成されている。そして、カラーフィルタ78上部には画素毎にオンチップレンズ35が形成されている。
【0102】
本実施形態例は、単位画素あたり、1色の光の光電変換による信号電荷が生成される例である。
本実施形態例では、オンチップレンズ35及びカラーフィルタ78を介して入射した光は、アモルファスシリコンからなる光電変換部72に吸収され、そこにおいて光電変換される。各画素の光電変換部72において、カラーフィルタ78に応じた光の光電変換により、R、G、Bに対応する信号電荷が生成される。上部電極70及び下部電極71に所定の電圧を印加することにより、生成された信号電荷がコンタクトプラグ75を介して、各縦型転送路50の接続部21に転送され、電位障壁層22を超えた信号電荷は、電荷蓄積層23に蓄積される。
【0103】
その後は、第1の実施形態と同様に、画素トランジスタによって読み出され、画素信号とされて出力される。
【0104】
本実施形態例のように、光電変換部72を有機光電変換膜ではない、アモルファスシリコン等の無機材料によって構成した場合にも、半導体基板17の裏面側から表面側に縦方向に縦型転送路50において、信号電荷を容易に転送し、蓄積することができる。この場合にも、接続部21に読み出された信号電荷は、縦方向にオーバーフローされるので、画素の微細化に有利となる。
【0105】
上述の第1〜第4の実施形態では、電子を信号電荷としたもので、第1導電型をn型、第2導電型をp型としているが、本発明は正孔を信号電荷とする固体撮像装置にも適用できる。この場合には、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型として、前述の各半導体領域を逆の導電型の半導体領域で構成することができる。
【0106】
上述の第1〜第4の実施形態では、入射光量に応じた信号電荷を物理量として検知する単位画素が行列状に配置されてなるCMOS型固体撮像装置に適用した場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明はCMOS型固体撮像装置への適用に限られるものではない。また画素が二次元マトリックス状に形成された画素部の画素列ごとにカラム回路を配置してなるカラム方式の固体撮像装置全般に限定するものでもない。また、第1〜第3の実施形態では、転送トランジスタ、リセットトランジスタ及び増幅トランジスタの3つの画素トランジスタによって画素を構成する例としたが、これに選択トランジスタを加えた4つの画素トランジスタによって画素を構成する例としてもよい。また、各画素内の光電変換素子や、各MOSトランジスタのレイアウトに関しても、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0107】
また、第1〜第4の実施形態では、CMOS型固体撮像装置に適用した場合を説明したが、CCD型固体撮像装置にも本発明を適用することができる。この場合に、本発明の縦型転送路を通って読み出し部で読み出された信号電荷は、CCD型構造の垂直転送レジスタによって垂直方向に転送され、水平転送レジスタによって水平方向に転送され、増幅されることにより映像信号が出力される。
【0108】
また、本発明は、可視光の入射光量の分布を検知して画像として撮像する固体撮像装置への適用に限らず、赤外線やX線、あるいは粒子等の入射量の分布を画像として撮像する固体撮像装置にも適用可能である。また、広義の意味として、圧力や静電容量など、他の物理量の分布を検知して画像として撮像する指紋検出センサ等の固体撮像装置(物理量分布検知装置)全般に対して適用可能である。
【0109】
さらに、本発明は、画素部の各単位画素を行単位で順に走査して各単位画素から画素信号を読み出す固体撮像装置に限られるものではない。画素単位で任意の画素を選択して、当該選択画素から画素単位で信号を読み出すX−Yアドレス型の固体撮像装置に対しても適用可能である。
なお、固体撮像装置はワンチップとして形成された形態であってもよいし、画素部と、信号処理部または光学系とがまとめてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態であってもよい。
【0110】
また、本発明は、固体撮像装置への適用に限られるものではなく、撮像装置にも適用可能である。ここで、撮像装置とは、デジタルスチルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムや、携帯電話機などの撮像機能を有する電子機器のことを言う。なお、電子機器に搭載される上記モジュール状の形態、即ちカメラモジュールを撮像装置とする場合もある。
【0111】
〈5.第5の実施形態:電子機器〉
次に、本発明の第5の実施形態に係る電子機器について説明する。図16は、本発明の第5の実施形態に係る電子機器200の概略構成図である。
本実施形態例の電子機器200は、上述した本発明の第1の実施形態における固体撮像装置1を電子機器(カメラ)に用いた場合の実施形態を示す。
【0112】
本実施形態に係る電子機器200は、固体撮像装置1と、光学レンズ210と、シャッタ装置211と、駆動回路212と、信号処理回路213とを有する。
【0113】
光学レンズ210は、被写体からの像光(入射光)を固体撮像装置1の撮像面上に結像させる。これにより固体撮像装置1内に一定期間当該信号電荷が蓄積される。
シャッタ装置211は、固体撮像装置1への光照射期間および遮光期間を制御する。
駆動回路212は、固体撮像装置1の転送動作およびシャッタ装置211のシャッタ動作を制御する駆動信号を供給する。駆動回路212から供給される駆動信号(タイミング信号)により、固体撮像装置1の信号転送を行なう。信号処理回路213は、各種の信号処理を行う。信号処理が行われた映像信号は、メモリなどの記憶媒体に記憶され、あるいはモニタに出力される。
【0114】
本実施形態例の電子機器200では、固体撮像装置1において画素サイズを微細化及び転送効率が向上されるので、画素特性の向上が図られた電子機器200を得ることができる。
【0115】
固体撮像装置1を適用できる電子機器200としては、カメラに限られるものではなく、デジタルスチルカメラ、さらには携帯電話機等のモバイル機器向けカメラモジュールなどの撮像装置に適用可能である。
【0116】
本実施形態例においては、固体撮像装置1を電子機器に用いる構成としたが、前述した第2〜第4の実施形態で製造した固体撮像装置を用いることもできる。
【符号の説明】
【0117】
1…固体撮像装置 2…画素 3…画素領域 15…光電変換領域 16…ウェル領域 17…半導体基板(半導体層) 18…p型半導体領域 19…n型半導体領域 19a…延長部 20…p型半導体領域 21…接続部 22…電位障壁層 23…電荷蓄積層 24…p型半導体領域 25…多層配線層 26…配線 27…層間絶縁膜 28…絶縁膜 29…コンタクトプラグ 30…絶縁膜 31…下部電極 32…有機光電変換膜 33…上部電極 34…平坦化膜
35…オンチップレンズ 37,38,39…転送ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側が受光面とされ、表面側が回路形成面とされた半導体基板と、
下部電極及び上部電極で挟持された光電変換部であって、半導体基板の受光面側に積層された光電変換部と、
前記光電変換部で生成された信号電荷を半導体基板側に読み出すために、前記下部電極と半導体基板とを接続するように形成されたコンタクトプラグと、
前記コンタクトプラグを半導体基板に電気的に接続するための接続部と、前記接続部に読み出された信号電荷を蓄積する電荷蓄積層と、前記接続部と前記電荷蓄積層との間で、ポテンシャルバリアを構成する電位障壁層とが半導体基板の縦方向に順に積層されて構成される縦型転送路と、
前記電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を前記半導体基板の回路形成面側に読み出す電荷読み出し部と、
から構成される固体撮像装置。
【請求項2】
前記光電変換部は、有機光電変換材料で構成されている
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記光電変換部は、無機光電変換材料で構成されている
請求項1記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記電荷読み出し部は、縦型ゲート電極と縦型ゲート電極に隣接する半導体基板表面側に形成されたフローティングディフュージョン部で構成される縦型トランジスタで構成されている
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
更に、前記半導体基板内に、pn接合を有して構成されるフォトダイオードからなる光電変換部が形成されている
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
裏面側が受光面とされ、表面側が回路形成面とされた半導体基板と、
前記半導体基板内にpn接合を有して構成された第1フォトダイオードからなる第1光電変換部と、
前記第1光電変換部に対して受光面とは反対側の半導体基板内に、pn接合を有して構成された第2フォトダイオードからなる第2光電変換部と、
下部電極及び上部電極で挟持された光電変換部であって、前記半導体基板の受光面側に積層された第3光電変換部と、
前記第3光電変換部で生成された信号電荷を半導体基板側に読み出すために、前記下部電極と半導体基板とを接続するように形成されたコンタクトプラグと、
前記コンタクトプラグを半導体基板に電気的に接続するための接続部と、前記接続部に読み出された信号電荷を蓄積する電荷蓄積層と、前記接続部と前記電荷蓄積層との間で、ポテンシャルバリアを構成する電位障壁層とが半導体基板の縦方向に順に積層されて構成される縦型転送路と、
前記電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を前記半導体基板の回路形成面側に読み出す電荷読み出し部と、
から構成される固体撮像装置。
【請求項7】
前記第1光電変換部、第2光電変換部、及び第3光電変換部は、光の入射方向に積層して構成されている
請求項6記載の固体撮像装置。
【請求項8】
前記第3光電変換部は、有機光電変換膜で構成され、前記第1光電変換部で吸収される光の波長よりも長く、前記第2光電変換部で吸収される光の波長よりも短い波長の光に応じた信号電荷を生成する
請求項6又は7に記載の固体撮像装置。
【請求項9】
半導体基板の所望の領域に所望の導電型の不純物をイオン注入することにより、前記半導体基板の受光面となる裏面側に接続部を形成する工程と、
前記半導体基板を所定の厚さまでエピタキシャル成長させる工程と、
前記半導体基板に形成された接続部の縦方向上部に、前記接続部とは反対導電型の不純物をイオン注入することにより、電位障壁層を形成する工程と、
前記電位障壁層の縦方向上部に、前記接続部と同導電型の不純物をイオン注入することにより、電荷蓄積層を形成する工程と、
前記半導体基板の回路形成面となる表面側に前記電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を読み出す電荷読み出し部を形成し、前記半導体基板表面側に、複数の配線を有する多層配線層を形成する工程と、
前記半導体基板の裏面側に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜内に前記接続部に接続されるコンタクトプラグを形成する工程と、
前記コンタクトプラグを含む前記絶縁膜の上部に下部電極を形成し、前記下部電極の上部に光電変換部を形成し、前記光電変換部の上部に上部電極を形成する工程と、
を含む固体撮像装置の製造方法。
【請求項10】
半導体基板の所望の領域に所望の不純物をイオン注入することにより、前記半導体基板の裏面側に電位障壁層を形成する工程と、
前記電位障壁層の縦方向上部に、前記電位障壁層とは反対導電型の不純物をイオン注入することにより、電荷蓄積層を形成する工程と、
前記半導体基板の回路形成面となる表面側に前記電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を読み出す電荷読み出し部を形成し、前記半導体基板表面側に、複数の配線を有する多層配線層を形成する工程と、
前記半導体基板を反転し、前記電位障壁層の縦方向上部であって、半導体基板の最裏面側に前記電位障壁層と同導電型の不純物をイオン注入することにより、接続部を形成する工程、
前記半導体基板の裏面側に絶縁膜を形成し、前記絶縁膜内に前記接続部に接続されるコンタクトプラグを形成する工程と、
前記コンタクトプラグを含む前記絶縁膜の上部に下部電極を形成し、前記下部電極の上部に光電変換部を形成し、前記光電変換部の上部に、上部電極を形成する工程と、
を含む固体撮像装置の製造方法。
【請求項11】
前記電荷蓄積層は、半導体基板の裏面側から表面側にかけて不純物濃度が濃くなるように段階的なイオン注入によって形成する
請求項9又は10記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項12】
前記多層配線層を形成する前の工程において、前記半導体基板の所望の領域にpn接合を形成し、フォトダイオードからなる光電変換部を形成する工程を更に有する
請求項9〜10のうちいずれか1項に記載の固体撮像装置の製造方法。
【請求項13】
光学レンズと、
前記光学レンズで集光された光が入射される固体撮像装置であって、半導体基板に形成され、入射する光の光量に応じた信号電荷を生成、蓄積する光電変換素子と、前記半導体基板の表面側に形成され、前記光電変換素子で生成、蓄積された信号電荷を読み出す為の電荷読み出し部とから構成された複数の画素と、前記半導体基板の受光面となる裏面側に形成され、前記半導体基板に所望の電圧を供給するための基板電位用配線と、前記基板電位用配線と前記半導体基板とを電気的に接続する裏面側コンタクト部と、を含んで構成される固体撮像装置と、
前記固体撮像装置の出力信号を処理する信号処理回路と、
を備える電子機器。
【請求項14】
光学レンズと、
前記光学レンズで集光された光が入射される固体撮像装置であって、裏面側が受光面とされ、表面側が回路形成面とされた半導体基板と、前記半導体基板内にpn接合を有して構成された第1フォトダイオードからなる第1光電変換部と、前記第1光電変換部に対して受光面とは反対側の半導体基板内に、pn接合を有して構成された第2フォトダイオードからなる第2光電変換部と、下部電極及び上部電極で挟持された光電変換部であって、前記半導体基板の受光面側に積層された第3光電変換部と、前記第3光電変換部で生成された信号電荷を半導体基板側に読み出すために、前記下部電極と半導体基板とを接続するように形成されたコンタクトプラグと、前記コンタクトプラグを半導体基板に電気的に接続するための接続部と、前記接続部に読み出された信号電荷を蓄積する電荷蓄積層と、前記接続部と前記電荷蓄積層との間で、ポテンシャルバリアを構成する電位障壁層とが半導体基板の縦方向に順に積層されて構成される縦型転送路と、前記電荷蓄積層に蓄積された信号電荷を前記半導体基板の回路形成面側に読み出す電荷読み出し部と、を含んで構成される固体撮像装置と、
前記固体撮像装置の出力信号を処理する信号処理回路と、
を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−138927(P2011−138927A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297930(P2009−297930)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】