説明

固定層構造および自由層構造にCoFeBTaを有する磁気センサ

【課題】向上した磁気性能および堅牢性を有する磁気読み出しセンサを提供する。
【解決手段】磁気センサは、磁化自由層構造310と磁化固定層構造とを含む。磁化固定層構造は、非磁性結合層318によって互いに分離させた第1の磁性層314および第2の磁性層316を含む。磁化固定層構造の第2の磁性層はCoFeBTaの層を含んでおり、この層が原子の拡散を防止し、さらには所望のBCC結晶粒成長を促進する。磁化自由層構造は、原子拡散をさらに防止し、所望のBCC粒成長をさらに促進するためのかかるCoFeBTa層を含むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気データ記録に関し、特に、自由層および固定層構造のうちの一方または両方内にCoFeBTaの層を有する磁気読み出しヘッドに関する。これらの層においてCoFeBTaを追加すると、センサ層内での拡散を防止すること、およびセンサの層におけるBCC粒状構造を促進することによって、センサの性能を改善する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの心臓部は、磁気ディスクドライブと呼ばれるアセンブリである。磁気ディスクドライブは、回転型磁気ディスクと、回転型磁気ディスクの表面に隣接するサスペンションアームによって懸架される読み書きヘッドと、サスペンションアームを揺動させて回転ディスク上にある選択した円形トラックの上方に読み書きヘッドを配置するアクチュエータと、を備える。読み書きヘッドは、浮上面(ABS)を有するスライダに直結されている。サスペンションアームは、ディスクが回転していないときは、スライダを付勢してディスクの表面と接触させるが、ディスクが回転するとときは、回転ディスクによって空気が渦流される。スライダがエアベアリング上に乗ると、回転ディスクに磁気インプレッションを書き込み、回転ディスクから磁気インプレッションを読み出すために読み書きヘッドが使用される。読み書きヘッドは、書き込みおよび読み出し機能を実装するために、コンピュータプログラムに従って動作する処理回路に接続されている。
【0003】
書き込みヘッドは、少なくとも1つのコイルと、書き込み極と、1つまたは複数の戻り極と、を備えている。電流がコイルを貫流すると、生成された磁界により、磁束が書き込み極を貫流し、その結果、書き込み極の先端から書き込み磁場が放出される。この磁場は十分に強いために、隣接する磁気ディスクの一部分を局所的に磁化し、それによってデータビットを記録する。書き込み磁場はその後、軟磁性磁気メディアの下層を通って書き込みヘッドの戻り極に戻る。
【0004】
トンネル接合磁気抵抗(TMR)センサなどの磁気抵抗センサを用いて、磁気メディアから磁気信号を読み出すことができる。センサは、第1および第2の強磁性層の間に挟まれた非磁性電気絶縁障壁層を含む(センサがTMRセンサである場合)。この第1および第2強磁性層を、以降ではそれぞれ固定層および自由層と呼ぶ。電流が自由層、トンネル障壁層および固定層の平面に対して垂直に流れるように(平面に対して垂直な電流(CPP)動作モード)、磁気シールドがセンサスタックの上方および下方に位置付けられており、第1および第2の導線としての役割を果たすこともできる。固定層の磁化方向は、浮上面(ABS)に対して垂直に固定されており、自由層の磁化方向は、ABSに対して平行だが、外部磁場を受けて自由に回転する。固定層の磁性は、反強磁性層との交換結合によって固定されているのが典型的である。
【0005】
障壁層(絶縁材料)を貫く磁気トンネル接合の電気抵抗は、固定層の磁性に対する自由層の磁性の相対的な向きによって変化する。固定層および自由層の磁性が互いと平行のときには低い抵抗が検出され、固定層および自由層の磁性が逆平行のときには高い抵抗が検出される。読み出しモードでは、TMRセンサの抵抗が、回転ディスクからの磁場の大きさに対して概ね比例して変化する。検知電流がTMRセンサを通じて伝導されると、抵抗の変化によって電位の変化が生じ、再生信号として検出および処理される。障壁層がMgOを含む場合には、MgOが固定層に隣接して結晶組織(100)を有し、かつ自由層が組織(100)を有するBCC結晶構造を有し、コヒーレントトンネリングと高いTMR率とを示唆していると、TMR率が最大化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでにないデータ密度の向上が求められており、センサの性能および堅牢性を常に改善していくことが必要になる。そのため、向上した固定強度、向上した自由層の安定性、および向上した感度を有する改良センサに対するニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1および第2の磁性層構造ならびに第1の磁性層と第2の磁性層との間に挟まれた非磁性結合層を含む磁化固定層構造と、磁化自由層構造と、磁化自由層構造と磁化固定層構造との間に挟まれた非磁性障壁層(トンネル障壁層)と、を含む磁気読み出しセンサを提供する。固定層構造の第2の磁性層は、CoFeBTaの層を含む。
【0008】
加えて、磁化自由層構造は、CoFeBTaの層を含んでもよい。磁化固定層構造の第2の磁性層は、第1、第2、第3および第4の下位層を含んでよく、第1の下位層はCoで構成され、第2の下位層はCoFeBTaで構成され、第3の下位層はCoFeBで構成され、第4の下位層はCoFeで構成される。
【0009】
同様に、磁化自由層構造は、第1、第2、第3および第4の下位層で構成されてよく、第1の下位層はCoFeで構成され、第2の下位層はCoFeBで構成され、第3の下位層はCoFeBTaで構成され、第4の下位層はNiFeで構成される。NiFeは、自由層の磁気歪みのバランスをとる目的で使用される。
【発明の効果】
【0010】
固定層(第2の磁性層の第2の下位層)におけるCoFeBTa層の存在は、第1の磁性層、非磁性結合層、および第2の磁性層の第1の下位層の結晶組織成長を好都合に遮断する。CoFeBTa層はまた、CoFeB層と、MgO障壁層に隣接するCoFe層とにおいて、組織(100)を有する所望のBCC結晶構造の核形成および成長も促進する。加えて、CoFeBTa層は、Mnなどの原子がAFM層からCoFeB層、CoFe層およびMgO障壁へと拡散するのを防止し得る。こうして、固定層の固定強度を高め、さらにTMR率も高めることにより、MgOベースのTMRセンサの性能を高める。
【0011】
自由層の第3の下位層におけるCoFeBTa層の存在は、第4の下位層NiFeから第1および第2の下位層およびMgO障壁へのNi原子の拡散を好都合に防ぎ、第1および第2の下位層におけるBCC構造の成長を維持し、それにより、TMR率を高めることによってセンサの性能をさらに高める。
【0012】
本発明のこれらおよび他の特徴ならびに利点は、好適な実施形態に関する以下の詳細な説明を図と併せて読めば明らかであろう。図中において、同様の参照符号は、全体を通じて同様の要素を示す。
【0013】
本発明の性質および利点、ならびに好適な使用態様を十分に理解するために、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照すべきである。これらの図面は、必ずしも原寸に比例していない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るディスクドライブシステムの概略図である。
【図2】磁気ヘッドの位置を示すスライダのABS図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる磁気抵抗センサのABS図である。
【図4】図3のセンサの一部分の拡大図であり、センサの各種下位層を示す。
【図5】図4と同様、本発明の代替実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明は、本発明を実施するために現時点で意図される最良の実施形態である。この説明は、本発明の一般原理を説明するためになされたものであり、本明細書で請求される発明の概念を制限することを意図するものではない。
【0016】
ここで図1を参照すると、本発明の実施形態に係るディスクドライブ100が示されている。図1に示すとおり、少なくとも1つの回転型磁気ディスク112がスピンドル114で支持されており、ディスクドライブモータ118によって回転する。各ディスク上の磁気記録は、磁気ディスク112上の同心データトラック(図示せず)の環状パターンという形態である。
【0017】
少なくとも1つのスライダ113が磁気ディスク112の近くに配置されており、各スライダ113は、1つまたは複数の磁気ヘッドアセンブリ121を支持する。磁気ディスクが回転すると、スライダ113がディスク表面122の上方を内外へと放射状に移動して、所望のデータが書き込まれる磁気ディスクの様々なトラックに磁気ヘッドアセンブリ121がアクセスできるようになる。各スライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に取り付けられている。サスペンション115は、ディスク表面122に対してスライダ113を付勢するわずかなバネ力を提供する。各アクチュエータアーム119は、アクチュエータ手段127に取り付けられている。図1に示すアクチュエータ手段127は、ボイスコイルモータ(VCM)であってもよい。VCMは、一定の磁場内で移動可能なコイルを備え、コイルの移動方向および速度は、コントローラ129によって供給されるモータ電流信号によって制御される。
【0018】
ディスク記憶システムの動作中、磁気ディスク112の回転により、スライダ113とディスク表面122との間で、スライダに対して上方への力または揚力を働かせるエアベアリングを生成する。したがってこのエアベアリングは、通常動作中にサスペンション115のわずかなバネ力とのバランスを保ち、スライダ113を、小さく略一定の間隔でディスク表面から離し、わずかに上で支持する。
【0019】
ディスク記憶システムの各種構成要素の動作は、アクセス制御信号および内部クロック信号などの制御ユニット129によって生成される制御信号によって制御される。制御ユニット129は、論理制御回路と、記憶手段と、マイクロプロセッサとを備えるのが典型的である。制御ユニット129は、ライン123上の駆動モータ制御信号、ヘッド位置およびシーク制御信号などの制御信号を生成して、各種システム動作を制御する。ライン128上の制御信号は、スライダ113をディスク112上にある所望のデータトラックへと最適に動かし、位置付けるための所望の電流プロファイルを提供する。記録チャネル125を経て、読み書きヘッド121との間で書き込みおよび読み出し信号が通信される。
【0020】
図2を参照すると、スライダ113にある磁気ヘッド121の方向をさらに詳細に見ることができる。図2はスライダ113のABS図であり、図示するとおり、誘導型書き込みヘッドと読み出しセンサとを備える磁気ヘッドがスライダの後端に位置する。典型的な磁気ディスク記憶システムに関する上記説明および図1の具体例は、提示だけを目的とするものである。ディスク記憶システムが多数のディスクおよびアクチュエータを備え得ること、および各アクチュエータがいくつかのスライダを支持し得ることは明らかなはずである。
【0021】
図3は、第1および第2の磁気シールド304、306の間に挟まれているセンサスタック302を有する磁気読み出しヘッド300を示す。磁気シールド304、306は、NiFeなど導電性の磁気材料で構成されており、センサスタック302に検知電流を供給するとともに磁気シールドとしても機能する導線として機能することができる。センサスタックは、磁化固定層構造308と、磁化自由層310と、それらの間に挟まれた非磁性障壁層312とを含むことができる。センサスタック302は、その最下部にシード層326を含んでもよく、シード層326は、上記の堆積層に所望の粒状構造を確実に形成する目的で設けることができる。また、センサスタック302は、製造時に下位層を損傷から保護するために、その最上部にキャップ層328を含んでもよい。
【0022】
障壁層312は、Mg(例えばMg/MgO/Mg)の層間に挟まれたMgOの層として構成することができる。このような障壁層312を構成するために、Mgの薄層はまず、Mgターゲットを使用したDCスパッタリングによって堆積される。Ti(またはTa)ペースト法を使用することができる。MgO層はその後、MgOターゲットを使用した無線周波数(rf)スパッタリングによって堆積される。次に別のMgの薄層を、Mgターゲットを使用したDCスパッタリングによって堆積させることができる。最後に、酸素処理法を実施して、障壁層312の構造を完成させることができる。完成した障壁層312は、約8〜10オングストロームの厚さを有し得る。
【0023】
固定層構造は、非磁性逆平行結合層318をまたいで逆平行結合されている第1および第2の磁性層314、316を含むことができる。非磁性逆平行結合層318は、Ruで構成することができ、約4〜6オングストロームまたは約4.5オングストロームの厚さを有し得る。第1の磁性層314は、反強磁性材料の層(AFM層)320によって交換結合することができる。この層の材料は、約60オングストロームの厚さを有するIrMnなどを用いることができる。この交換結合は、第1の磁性層314の磁性を、矢じり記号322が示す、ABSに対して垂直な第1の方向に強く固定する。磁性層314、316間の逆方向結合は、矢じり記号324が示す、第1の方向と逆平行であり、かつABSに対して垂直な第2の方向に第2の磁性層316の磁性を固定する。
【0024】
AFM層320は、Krガスと30〜250sccmのガス流量を使用して200〜400℃の温度で堆積するIrMnスパッタを用いることができる。この結果、IrMn AFM層はL1フェーズを有する。このL1フェーズにより、AFM層320とAP1磁性層314との間の界面交換結合エネルギーが大幅に増大する。そのため、これによって固定強度が大幅に向上する。加えて、AFM層320のブロッキング温度も大幅に上昇するため、固定の熱耐性が向上する。
【0025】
自由層310は、矢印330によって示す、ABSと概ね平行な方向にバイアスされた磁性を有する。磁性330はこの方向でバイアスされるが、例えば磁気メディアからの外部磁場に反応して自由に移動する。
【0026】
磁性330のバイアスは、ハード磁気バイアス層332、334からのバイアス磁場によって実現される。これらの磁気バイアス層332、334は、CoPtまたはCoPtCrなどの高保磁力磁気材料から形成される永久磁石である。バイアス層332、334は、アルミナ336、338などの非磁性電気絶縁層の薄層により、センサスタック302から、および少なくとも最下部シールド304から分離される。
【0027】
図4は、センサスタック302の拡大図を示す。図4を参照すると、本発明の一実施形態にかかるセンサスタック302の各層の具体的な構造が、より詳細に記載されている。シード層326は、TaまたはCoHfの第1下位層402とRuの第2下位層404とを含むことができる。第1下位層402は、Taの場合で約10〜20オングストロームまたは約20オングストローム、CoHfの場合で20〜40オングストロームまたは約40オングストロームの厚さを有することができる。第2下位層404は、16〜20オングストロームまたは約20オングストロームの厚さを有することができる。
【0028】
固定層構造(AP1 314)の第1磁性層は、CoFeで構成され、約16オングストロームの厚さを有する第1下位層406と、Coで構成され、第1下位層406の上に形成された約5オングストロームの厚さを有する第2下位層408とを含むことができる。
【0029】
固定層構造(AP2 316)の第2磁性層は、AP結合層318に隣接して位置し、約5オングストロームの厚さを有するCoの第1下位層410を含むことができる。AP2層316はまた、第1下位層410の上に形成され、アモルファスCoFeBTaで形成され、かつ約4〜6オングストロームまたは5オングストロームの厚さを有する第2下位層412も含む。AP2層316は、第2下位層412の上に形成された第3下位層414をさらに含む。第3下位層414は、CoFeBで構成することができ、4〜6オングストロームまたは約5オングストロームの厚さを有することができる。AP2層316はまた、第3下位層414の上に形成される第4下位層416も含む。第4下位層416は、CoFeで構成され、4〜6オングストロームまたは約4.5オングストロームの厚さを有する。
【0030】
自由層構造310は、第1、第2、第3および第4の下位層418、420、422、424を含むことができ、層420は層418の上に形成され、422は420の上に形成され、424は422の上に形成される。第1下位層418は、4〜6オングストロームまたは約4.8オングストロームの厚さを有するCoFeから形成することができる。第2下位層420は、8〜12オングストロームまたは約10オングストロームの厚さを有するCoFeBで構成することができる。第3下位層422は、アモルファスCoFeBTaで構成することができ、18〜22オングストロームまたは約20オングストロームの厚さを有することができる。第4下位層424は、NiFe(Xは10未満)で構成することができ、NiFeは磁気歪みのバランスをとる目的で使用され、30〜35オングストロームまたは約32オングストロームの厚さを有することができる。あるいは、NiFeをNiで置き換えることもできる。
【0031】
キャップ層構造328は、第1、第2および第3の下位層426、428および430で構成することができ、層428は426の上に形成され、430は428の上に形成される。第1下位層426はRuで構成することができ、約15オングストロームの厚さを有することができる。第2下位層428はTaで構成することができ、約15オングストロームの厚さを有することができる。第3下位層430はRuで構成することができ、約50オングストロームの厚さを有することができる。
【0032】
AP2層構造316におけるCoFeBTaの第2下位層412の存在は、第1磁性層314、非磁性結合層318および第2磁性層316の第1下位層410の結晶組織成長を好都合に遮断する。CoFeBTa層412はまた、CoFeB第3下位層414およびCoFe第4下位層416における組織(100)を有する所望のBCC結晶構造の核形成およびMgO障壁層312への成長を促進する。加えて、CoFeBTa層412は、Mnなどの原子がAFM層320からCoFeB層414、CoFe層416および障壁層312へと拡散するのを防止し得る。こうして、固定層の固定強度を高め、さらにTMR率も高めることにより、MgOベースのTMRセンサ302の性能を高める。これらの目標を最良に達成するために、層412は、(Co40Fe4020(100−x)Ta(x)または(Co60Fe2020(100−x)Ta(x)(4<X<10原子パーセント)という構成を有するのが好ましい。より一般的には、層412はCoFeTaという構成を有することができ、ここでXは60原子パーセント以下であり、Yは30原子パーセント以下であり、Zは15原子パーセント以下である。あるいは、CoFeBTaにおけるTaを、Hf、Zr、NbまたはMoで置き換えることができ、BをAlまたはSiで置き換えることができる。
【0033】
自由層構造310の第3下位層422におけるCoFeBTa層の存在は、Ni原子が第4下位層424から第1および第2下位層418、420および障壁312へと拡散するのを好都合に防ぎ、第1および第2下位層418、420のBCC構造の成長を維持し、それによってTMR率を高めることにより、センサの性能をさらに高める。層422は、(Co76Fe20(100−X)Ta(X)(4<X<10)という構成を有するのが好ましい。より一般的には、層422はCoFeTaという構成を有することができ、ここでXは10原子パーセント以下であり、Yは25原子パーセント以下であり、Zは10原子パーセント以下である。あるいは、CoFeBTaにおけるTaを、Hf、Zr、NbまたはMoで置き換えることができ、BをAlまたはSiで置き換えることができる。422の構成が(層412と比較して)異なるため、自由層310における所望の磁性および磁気歪みが確保される。
【0034】
図5は、本発明の代替実施形態を示す。図5においては、シード層326、AFM層320、固定層構造314、318、316およびキャップ層328が、図3および図4を参照して既に説明したものと同じであってもよい。ただし、この代替実施形態は、わずかに異なる自由層構造510を有する。本実施形態では、自由層510が、4〜6オングストロームまたは約4.8オングストロームの厚さを有するCoFeから形成することのできる第1下位層518を含む。自由層510は、14〜18オングストロームまたは約16オングストロームの厚さを有するCoFeBで構成できる第2下位層520(第1下位層518の上に形成)を有する。自由層510は、アモルファスCoHfで構成することができ、8〜12オングストロームまたは約10オングストロームの厚さを有することのできる第3下位層522(第2下位層520の上に形成)を有する。自由層510は、NiFe(x)(X<10)で構成することができ、32〜36オングストロームまたは約34オングストロームの厚さを有することのできる第4下位層524(第3下位層522の上に形成)を有する。あるいは、NiFeを純粋なNiで置き換えることができる。
【0035】
上記実施形態は、固定強度を大幅に高め、センサの信頼性および堅牢性を大幅に高める。この構造により、固定磁界が増える。つまり、磁化固定層の磁性が反転することなく、磁気ヘッドが大きな異質の外部磁場を受けることができる。加えて、AFM層320のブロッキング温度が上昇するため、温度障害に対する耐性が高まる。その上、上記実施形態は、トンネル障壁層312およびこの層と直接隣接する層における粒状構造の改善により、TMR率が高まる。
【0036】
以上、各種実施形態を記載してきたが、それらは例示目的でのみ提示されており、限定目的でないという点は理解すべきである。本発明の範囲内に属する他の実施形態が当業者にとって明らかになることもある。そのため、本発明の幅および範囲は、上記例示的な実施形態のいずれによっても制限されるべきでなく、以下の請求項とそれらの均等物とに従ってのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0037】
100 ディスクドライブ
112 磁気ディスク
113 スライダ
114 スピンドル
115 サスペンション
118 ディスクドライブモータ
119 アクチュエータアーム
121 磁気ヘッドアセンブリ
122 ディスク表面
123 ライン
127 アクチュエータ手段
128 ライン
129 制御ユニット
300 磁気読み出しヘッド
302 センサスタック
304 第1の磁気シールド
306 第2の磁気シールド
308 磁化固定層
310 磁化自由層
312 非磁性障壁層
314 第1の磁性層
316 第2の磁性層
318 非磁性結合層
320 反強磁性材料の層
322 矢印の頭
324 矢印の尾
326 シード層
328 キャップ層
332 ハード磁気バイアス層
334 ハード磁気バイアス層
402 第1の下位層
404 第2の下位層
406 第1の下位層
408 第2の下位層
410 第1の下位層
412 第2の下位層
414 第3の下位層
416 第4の下位層
418 第1の下位層
420 第2の下位層
422 第3の下位層
424 第4の下位層
426 第1の下位層
428 第2の下位層
430 第3の下位層
510 自由層構造
518 第1の下位層
520 第2の下位層
522 第3の下位層
524 第4の下位層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1磁性層構造、第2磁性層構造、および前記第1磁性層構造と前記第2磁性層構造との間に挟まれた非磁性結合層を含む磁化固定層構造と、
磁化自由層構造と、
前記磁化自由層構造と前記磁化固定層構造との間に挟まれた非磁性障壁層と、
を備え、
前記固定層構造の前記第2磁性層構造がCoFeBTaの層を含む、
磁気読み出しセンサ。
【請求項2】
前記磁化固定層構造の前記第2磁性層構造が前記非磁性障壁層に隣接して位置する、
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記固定層構造の前記第2磁性層構造が、第1、第2、第3および第4磁性下位層を備え、
前記第1磁性下位層がCoを含み、かつ前記非磁性結合層に隣接して位置しており、
前記第2磁性下位層がCoFeBTaを含み、かつ前記第1磁性下位層と接触しており、
前記第3磁性下位層がCoFeBを含み、かつ前記第2磁性下位層と接触しており、
前記第4磁性下位層が前記第3磁性下位層と接触しており、かつCoFeを含む、
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第2下位層が4〜6オングストロームの厚さを有する、
請求項3記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記第1下位層が約5オングストロームの厚さを有し、前記第2下位層が約5オングストロームの厚さを有し、前記第3下位層が約5オングストロームの厚さを有し、前記第4下位層が約4.5オングストロームの厚さを有する、
請求項3記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記CoFeBTaの層が、ある濃度の(Co40Fe4020100−XTaを有し、Xが4〜10の原子パーセントである、請求項1記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記CoFeBTaの層が、ある濃度の(Co60Fe2020100−XTaを有し、Xが4〜10原子パーセントである、請求項1記載の磁気センサ。
【請求項8】
CoFeBTaの層が、ある濃度のCoFeTaを有し、Xが60原子パーセント以下であり、Yが30原子パーセント以下であり、Zが15原子パーセント以下である、請求項1記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記磁化自由層構造がCoFeBTaの層を含む、請求項1記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記磁化自由層構造が第1、第2、第3および第4磁性下位層を含み、
前記第1磁性下位層が前記非磁性障壁層に隣接して位置しており、
前記第2磁性下位層が前記第1磁性下位層と接触しており、
前記第3磁性下位層が前記第2磁性下位層と接触しており、
前記第4磁性下位層が前記第3の磁性下位層と接触しており、
前記第3磁性下位層がCoFeBTaを含む、
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項11】
前記磁化自由層構造が第1、第2、第3および第4下位層を含み、
前記第1磁性下位層が前記非磁性障壁層に隣接して位置しており、
前記第2磁性下位層が前記第1磁性下位層と接触しており、
前記第3磁性下位層が前記第2磁性下位層と接触しており、
前記第4磁性下位層が前記第3磁性下位層と接触しており、
前記第1下位層がCoFeを含み、
前記第2下位層がCoFeBを含み、
前記第3下位層がCofeBTaを含み、
前記第4下位層がNiFeを含む、
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項12】
前記磁化固定層構造における前記CoFeBTaの層が、ある濃度の(Co40Fe4020100−XTaを有し、4<X<10原子パーセントであり、
前記自由層構造における前記CoFeBTaの層が、ある濃度の(Co76Fe20(100−X)Ta(X)を有し、4<X<10原子パーセントである、
請求項9記載の磁気センサ。
【請求項13】
前記磁化固定層構造における前記CoFeBTaの層が、ある濃度の(Co60Fe2020(100−X)Ta(X)、4<X<10原子パーセントを有し、
前記自由層構造における前記CoFeBTaの層が、ある濃度のCo76Fe20(100−X)Ta(X)を有し、4<X<10原子パーセントである、
請求項9記載の磁気センサ。
【請求項14】
前記磁化自由層構造における前記CoFeBTaの層が、ある濃度のCoFeTaを有し、Xが10原子パーセント以下であり、Yが25原子パーセント以下であり、Zが10原子パーセント以下である、請求項9記載の磁気センサ。
【請求項15】
第1および第2磁性層構造ならびに前記第1磁性層構造と前記第2磁性層構造との間に挟まれた非磁性結合層を含む磁化固定層構造と、
磁化自由層構造と、
前記磁化自由層構造と前記磁化固定層構造との間に挟まれた非磁性障壁層と、
を備え、
前記磁化自由層構造がCoFeBTaの層を含む、
磁気読み出しセンサ。
【請求項16】
前記磁化自由層構造が第1、第2、第3および第4下位層を含み、
前記第1磁性下位層が前記非磁性障壁層に隣接して位置しており、
前記第2磁性下位層が前記第1磁性下位層と接触しており、
前記第3磁性下位層が前記第2磁性下位層と接触しており、
前記第4磁性下位層が前記第3磁性下位層と接触しており、
前記第1下位層がCoFeを含み、
前記第2下位層がCoFeBを含み、
前記第3下位層がCofeBTaを含み、
前記第4下位層がNiまたはNiFeを含み、X<10である、
請求項15記載の磁気センサ。
【請求項17】
前記CoFeBTaの層が、ある濃度の(Co76Fe20100−XTaを有し、4<X<10原子パーセントである、請求項15記載の磁気センサ。
【請求項18】
前記CoFeBTaの層が、ある濃度のCoFeTaを有し、Xが10原子パーセント以下であり、Yが25原子パーセント以下であり、Zが10原子パーセント以下である、請求項15記載の磁気センサ。
【請求項19】
第1および第2磁性層構造ならびに前記第1磁性層構造と前記第2磁性層構造との間に挟まれた非磁性結合層を含む磁化固定層構造と、
磁化自由層構造と、
前記磁化自由層構造と前記磁化固定層構造との間に挟まれた非磁性障壁層と、
を備え、
前記磁化自由層構造と前記磁化固定層構造の前記第2磁性層構造のうちの少なくとも1つがCoFeXYの層を含み、XがAlまたはSiであり、YがHf、Zr、NbまたはMoである、
磁気読み出しセンサ。
【請求項20】
前記自由層が、第1、第2、第3および第4下位層を備え、
前記第1下位層が前記非磁性障壁層の上に形成されており、かつCoFeを含み、
前記第2下位層が前記第1下位層の上に形成されており、かつCoFeBを含み、
前記第3下位層が前記第2下位層の上に形成されており、かつアモルファスCoHfを含み、
前記第4下位層が前記第3下位層の上に形成されており、かつNiFeを含み、X<10である、
請求項1記載の磁気センサ。
【請求項21】
磁気メディアと、
アクチュエータと、
前記磁気メディアの表面に隣接した移動のために前記アクチュエータと接続されたスライダと、
前記スライダ上に形成された磁気読み出しセンサと、
を備え、
前記磁気読み出しセンサは、
第1および第2磁性層構造ならびに前記第1磁性層構造と前記第2磁性層構造との間に挟まれた非磁性結合層を含む磁化固定層構造と、
磁化自由層構造と、
前記磁化自由層構造と前記磁化固定層構造との間に挟まれた非磁性障壁層と、
をさらに備え、
前記固定層構造の前記第2磁性層構造がCoFeBTaの層を含む、
磁気データ記録システム。
【請求項22】
前記磁化自由層構造がCoFeBTaの層を含む、請求項21記載の磁気データ記録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−89967(P2013−89967A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228542(P2012−228542)
【出願日】平成24年10月16日(2012.10.16)
【出願人】(503116280)エイチジーエスティーネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】