説明

圧電振動子およびその製造方法並びに電子装置

【課題】小型化が可能かつ信頼性が高い圧電振動子を提供すること。
【解決手段】本発明にかかる圧電振動子300は、基板10と、基板10の上方に形成された第1絶縁体層20と、第1絶縁体層20の上に形成された第2絶縁体層30と、第2絶縁体層30の上に形成された振動部形成層40と、振動部形成層40を貫通する第1開口部H1と、第1開口部H1内に振動部形成層40を片持ち梁状に形成してなる振動部100と、第2絶縁体層30を貫通し、第1開口部H1と振動部100の下に形成された第2開口部H2と、振動部100の上に形成された圧電素子部200と、を有し、振動部形成層40は、酸化物、窒化物および酸化窒化物から選ばれる少なくとも1種からなる層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子およびその製造方法並びに該振動子を用いた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
時計やコンピュータのクロックモジュールには、一般に32kHzを基本周波数として発振する振動子が用いられている。従来の振動子としては、水晶などの圧電性を有する材料で構成した梁を、その圧電性を利用して振動させるものがある。このような振動子は、小型化が難しいため、シリコンのMEMS(Micro Electro Mechanical System)を用いて、振動子をより小型化する検討が行われている。
【0003】
シリコンのMEMSを用いた振動子は、半導体の精密な製造プロセスによって製造することができる。たとえば特開2006−030062号公報には、SOI(Silicon On Insulater)基板のシリコン活性層を音叉型の振動部(片持ち梁)とした振動子が開示されている。この振動子は、SOI基板の酸化シリコン層をフッ化水素水を用いたウエットエッチングによって除去して、片持ち梁状の振動部を形成している。SOI基板を用いて振動子を形成する場合は、振動子の片持ち梁の材質は、シリコンに制限される。したがって梁に圧電性がないため、振動部を駆動するための圧電素子がさらに設けられる。圧電素子が形成された状態でフッ化水素水によるウエットエッチングを行うと、圧電素子がエッチングされないようにこれを保護する工夫がさらに必要となる。
【特許文献1】特開2006−030062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動子の片持ち梁の下の部材をウエットエッチングで除去すると、スティッキングと呼ばれる現象が生じ歩留まりを悪化させることがあった。スティッキングとは、片持ち梁状の構造の下に入り込んだエッチャントを洗浄、乾燥して除去するとき、液体の表面張力の影響で片持ち梁の自由端が、他の部材に付着してしまう現象である。スティッキングが生じると、振動部を正常な片持ち梁の状態に戻すことが難しかった。
【0005】
一方、振動部の形状としては、ビーム結合部とビーム結合部から延びる複数本のビーム部を有した形状の音叉型やH型と、1本のビーム部のみからなるユニモルフ型とがある。これらのうち、特にユニモルフ型の振動部は、その長さが振動の周波数に直接関与するため、片持ち梁の固定端を形成するために、より高い精度が求められる。
【0006】
本発明の目的は、小型化が可能かつ信頼性が高い圧電振動子を提供すること、スティッキングを生じない当該圧電振動子の製造方法を提供すること、および当該圧電振動子を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる圧電振動子は、
基板と、
前記基板の上方に形成された第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層の上に形成された第2絶縁体層と、
前記第2絶縁体層の上に形成された振動部形成層と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部と、
前記第1開口部内に前記振動部形成層を片持ち梁状に形成してなる振動部と、
前記第2絶縁体層を貫通し、前記第1開口部と前記振動部の下に形成された第2開口部と、
前記振動部の上に形成された圧電素子部と、
を有し、
前記振動部形成層は、酸化物、窒化物および酸化窒化物から選ばれる少なくとも1種からなる層を有する。
【0008】
このような圧電振動子は、振動部の材質を広く選択することができるため、設計の幅が広い。そのため振動部の小型化が可能であるとともに、振動部の強度も選択できるため信頼性が高い。
【0009】
なお、本発明において、特定のA層(以下、「A層」という。)の上方に設けられた特定のB層(以下、「B層」という。)というとき、A層の上に直接B層が設けられた場合と、A層の上に他の層を介してB層が設けられた場合とを含む意味である。
【0010】
本発明にかかる圧電振動子において、
平面視において、前記振動部の基端側にある第2開口部の輪郭線は、前記振動部と前記振動部形成層との境界線よりも内側にあることができる。
【0011】
このようにすれば、振動部の信頼性をさらに高くすることができる。
【0012】
本発明にかかる圧電振動子において、
前記第2絶縁体層と前記振動部形成層とが連続していることができる。
【0013】
本発明にかかる圧電振動子において、
前記振動部は、ビーム結合部と前記ビーム結合部から伸びる複数本のビーム部を有することができる。
【0014】
なお、本発明において、振動部の基端側とは、片持ち梁状に形成された振動部の付け根側のことを指す。
【0015】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法は、
基板の上に第1絶縁体層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層の上にパターニングされた第2絶縁体層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層を覆うようにシリコン層を形成する工程と、
前記シリコン層の上面を研磨して前記第2絶縁体層を露出させる工程と、
前記シリコン層と前記第2絶縁体層の上に振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上に圧電素子部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定された片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる。
【0016】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法は、
基板の上に第1絶縁体層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層の上にパターニングされたシリコン層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層と前記シリコン層とを覆うように第2絶縁体層を形成する工程と、
前記第2絶縁体層の上面を研磨して前記シリコン層を露出させる工程と、
前記第2絶縁体層と前記シリコン層の上に振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上に圧電素子部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定された片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる。
【0017】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法は、
基板の上に第1絶縁体層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層の上にパターニングされたシリコン層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層と前記シリコン層を覆うように振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上面を平坦化する工程と、
前記振動部形成層の上に圧電素子部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定された片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる。
【0018】
このようにすれば、ドライエッチングにより振動部の下部のシリコン層が除去されるため、スティッキングを起こさずに圧電振動子を製造することができる。
【0019】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法において、
前記シリコン層は、アモルファスシリコン、多結晶シリコンおよび単結晶シリコンのいずれかで形成されることができる。
【0020】
本発明にかかる圧電振動子の製造方法において、
前記ドライエッチングは、エッチングガスとして、XeF、ClF、BrF、IF、およびIFの少なくとも1種を用いることができる。
【0021】
本発明にかかる電子機器の一例である発振器は、
発振回路を含み、
前記発振回路は、
電気信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器の入出力間に接続された帰還回路と、
を有し、
前記帰還回路は、上述のいずれかの圧電振動子を備える。
【0022】
本発明にかかる電子機器の一例であるリアルタイムクロックは、
上述した発振器と、
前記発振器から出力されるクロックパルスを分周する分周回路と、
前記分周回路から出力される計時パルスが入力される計時カウンタと、
前記計時カウンタの計時ビットの書き換えおよび読み出しを行う制御部と、を含む。
【0023】
本発明にかかる電子機器の一例である電波時計受信モジュールは、
電波を受信する受信部と、
上述のいずれかの圧電振動子を有し受信された電気信号を濾波する周波数フィルタと、
濾波された前記電気信号からタイムコードを読み出す周辺回路と、
上述したリアルタイムクロックと、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。
【0025】
1.実施形態
1.圧電振動子300
図1は、本実施形態にかかる圧電振動子300を模式的に示す平面図である。図2は、本実施形態にかかる圧電振動子300の振動部100と第1開口部H1の関係を模式的に示す平面図である。図3は、本実施形態にかかる圧電振動子300を模式的に示す断面図である。図1のA−A線に沿った断面は、図3に相当する。
【0026】
圧電振動子300は、基板10と、第1絶縁体層20と、第2絶縁体層30と、振動部形成層40と、第1開口部H1と、振動部100と、第2開口部H2と、圧電素子部200と、を有する。
【0027】
基板10は、図3に示すように、圧電振動子300の基体となる。基板10は、たとえばシリコン基板、石英基板などを用いることができる。基板10には、各種の半導体回路を作り込んでもよい。基板10の厚みは、10μmないし2mmとすることができる。
【0028】
第1絶縁体層20は、基板10の上方に形成される。第1絶縁体層20は、基板10の間に他の層を介して形成されてもよい。第1絶縁体層20は、上方に形成される第2開口部H2を形成する際のエッチングのストッパ層としての機能を有する。第1絶縁体層20は、シリコン以外の材料で構成される。第1絶縁体層20は、たとえば酸化シリコンで構成することができる。また、第1絶縁体層20は、基板10をシリコン基板とした場合に熱酸化等でその表面に得られる酸化シリコンで構成してもよい。第1絶縁体層20の厚みは、前述のストッパ層として機能する程度であればよく、たとえば10nmないし1μmとすることができる。
【0029】
第2絶縁体層30は、第1絶縁体層20の上に形成される。第2絶縁体層30は、第1絶縁体層20との間に他の層を介して形成されてもよい。第2絶縁体層30には、第2開口部H2が形成される。第2絶縁体層30の第2開口部H2以外の部分は、少なくとも振動部形成層40を下から支持する機能を有する。第2開口部H2の詳細な説明は後述する。第2絶縁体層30の厚みは、たとえば100nmないし20μmとすることができる。第2絶縁体層30は、シリコン以外の材料で構成される。第1絶縁体層20は、たとえば酸化シリコンで構成することができる。
【0030】
振動部形成層40は、第2絶縁体層30の上に形成される。振動部形成層40には、振動部100と第1開口部H1とが形成される(図1および図2参照)。振動部形成層40は、単層構造であっても多層構造であってもよい。振動部形成層40の一部が振動部100となる。振動部形成層40の厚みは、1μmないし20μmとすることができる。振動部形成層40は、酸化物、窒化物および酸化窒化物の少なくとも1種からなる層を有する。具体的には、振動部形成層40は、目的とする振動数や強度に応じて、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化窒化シリコンなどから選択される材料の層を有することができる。
【0031】
第1開口部H1は、振動部形成層40を貫通している。第1開口部H1の形状は、振動部100の形状と相補的である。すなわち、第1開口部H1および振動部100は、図2に示すように、振動部100の形状が第1開口部H1の形状によって形成される関係にある。第1開口部H1は、第2開口部H2と連続している。そのため、振動部100の片持ち梁状の先端側は、自由に運動できる。
【0032】
振動部100は、振動部形成層40の一部からなる。振動部100は、振動部形成層40に一体的に連続している。振動部100は、少なくとも一部が機械的に振動する。振動部100は、第1開口部H1によって、片持ち梁状に形成される。図2に示した例では、振動部100の形状は、略C字型の第1開口部H1に囲まれて、内側に半島状に突き出している。振動部100の振動する部位は、境界線Lよりも振動部100の先端側である。
【0033】
第2開口部H2は、第2絶縁体層30を貫通して設けられる。第2開口部H2は、第1開口部H1と連続している。第2開口部H2は、第1開口部H1と振動部100の下に形成される。第2開口部H2の下面は、第1絶縁体層20である。第2開口部H2は、振動部100が動作できるようにする空間である。平面視において、振動部100の基端近傍にある第2開口部H2の輪郭線は、境界線Lよりも外側とならないように形成される。特に振動部100がユニモルフ型と称する1本の梁の形状であると、その振動の周波数は、長さに強く依存する。そのため、第2開口部H2の輪郭線が、境界線Lよりも外側になると、目的とした振動周波数と大きくずれてしまうためである。振動部100の基端近傍以外の部分の第2開口部H2の輪郭線は、第1開口部H1の輪郭よりも外側でも内側でもよい。ここで、振動部100の基端側とは、片持ち梁状に形成された振動部100の付け根側を指す。
【0034】
圧電素子部200は、振動部100の上方に形成される。圧電素子部200が形成される位置は、振動部100に振動を誘起できる位置であれば任意である。圧電素子部200は、圧電素子75を備える。圧電素子部200には複数の圧電素子75が備えられてもよい。圧電素子部200は、圧電素子75の動作によって振動部100を振動させる機能を有する。図1および図3の例では、振動部100に1つ圧電素子75が設けられている。この例の圧電素子75は、振動部100の長手方向に伸縮するように設けられ、振動部形成層40の面の法線方向に振動部100が振動するようになっている。また圧電素子部200に複数の圧電素子75が備えられる場合には、圧電素子75は、振動部100を振動させるためのものと、振動部100の振動方向のずれや振動数を検出するためのものとに機能を分担させることができる。
【0035】
圧電素子75は、下部電極50、圧電体層60、上部電極70の積層構造を有する。下部電極50は、振動部100の上方に形成される。下部電極50は、振動部100との間に下地となる層などを有して形成されてもよい。下部電極50は、たとえば白金などの金属材料やリチウムとニッケルの複合酸化物(LNO)などの導電性酸化物からなることができ単層でも多層構造でもよい。下部電極50の厚さは、十分に低い電気抵抗値が得られる厚さであれば良く、たとえば10nmないし5μmとすることができる。圧電体層60は、圧電性を有し、下部電極50および上部電極70によって電圧が印加されると伸縮することができ、下方の振動部100を動作させることができる。また逆に圧電体層60は、伸縮されると下部電極50および上部電極70の間に電圧を発生することができ、下方の振動部100の動作を検知することができる。圧電体層60は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O:PZTN)などの圧電材料から形成される。圧電体層60の伸縮方向は、ビーム部100の振動方向に応じて適切に選ぶことができる。その方法としては、たとえば、圧電体層60を構成する材料の結晶の方位を目的に応じて設置して行うことができる。圧電体層60の厚さは、たとえば0.1μmないし20μmとすることができる。上部電極70は、たとえば白金などの金属材料やリチウムとニッケルの複合酸化物(LNO)などの導電性酸化物からなることができ単層でも多層構造でもよい。上部電極70の厚さは、十分に低い電気抵抗値が得られる厚さであれば良く、たとえば10nmないし5μmとすることができる。
【0036】
2.圧電振動子300の変形例
圧電振動子300は、以下のような変形が可能である。
【0037】
図4は、変形例の圧電振動子301を模式的に示す平面図である。図5は、変形例の圧電振動子301を模式的に示す断面図である。図6は、変形例の圧電振動子302を模式的に示す断面図である。図7は、第1開口部H1および振動部100の変形例を模式的に示す平面図である。
【0038】
圧電振動子300は、変形例として示す圧電振動子301のように変形してもよい。圧電振動子301は、図4および図5に示すように、平面視において、振動部100の基端側にある第2開口部H2の輪郭線が、振動部100と振動部形成層40との境界線Lよりも内側にある。特にユニモルフ型と称する一本の梁で形成された振動部100の場合、振動部100は、基端付近を固定端として振動するため、基端付近に繰り返して応力が発生する。この応力は、第2開口部H2の輪郭線と境界線Lとが近いときはこの領域に集中する。しかし、基端付近に発生する応力は、第2開口部H2の輪郭線を境界線Lよりも内側にすれば、振動部100の基端付近への集中を抑制することができる。すなわち、図5に示すような振動部100の基端近傍において、第2開口部H2の輪郭が、境界線Lよりも振動部100の先端側にある場合、基端付近に発生する応力は、境界線Lと境界線Lから離れた第2開口部H2の輪郭との位置に分散させることができる。
【0039】
圧電振動子300は、変形例として示す圧電振動子302のように変形してもよい。圧電振動子302は、第2絶縁体層30と振動部形成層40とが連続している。このようにすれば、振動動作の際に振動部形成層40と第2絶縁体層30との間の剥離等をさらに抑制することができる。また振動子の構造が単純になり小型化の際により望ましい。
【0040】
圧電振動子300の振動部100は、図7に示すように、ビーム結合部110とビーム結合部110から伸びる複数本のビーム部120を有するように変形してもよい。このようにすることで、片持ち梁状に形成された振動部100の付け根に隣接する振動部形成層40の部分すなわち基部111に応力がほとんど発生しないようにすることができる。この変形例ではビーム部120は、ビーム結合部110から複数本延びるように形成される。ビーム部120は、たとえば図7の例のように2本であってもよいし、いわゆるH型となるように4本形成されてもよい。ビーム部120をH型とする場合は、ビーム結合部110は、T型とすることができる。ビーム部120は、振動部100の動作部分であり、目的に応じて種々の方向に振動することができる。たとえば、ビーム部120は、振動部形成層40の面内すなわち横方向の振動をすることも、振動部形成層40の面に垂直方向すなわち縦方向に振動することもできる。この変形例では、ビーム部120の本数、振動方向および形状は、振動のエネルギーのロスができるだけ小さくなるように設計されることができる。たとえば図7の例では、2本のビーム部120は、振動部形成層40の面内で振動し、2本のビーム部120の先端が近づいたり離れたりするように振動する。すなわち図7の例のような音叉型の振動部100の場合は、音叉の先端が開閉するように振動する。このようにすると、基部111に漏れ出す振動のエネルギーを小さく抑えることができ、基部111に応力がほとんど発生しなくなる。
【0041】
圧電振動子300は、上述のような変形によって、振動部100の劣化が一層抑制され、振動部100の信頼性を一層高めることができる。
【0042】
本実施形態の圧電振動子300は、振動部100の材質を広く選択することができるため、設計の幅が広い。そのため振動部100の小型化が可能であるとともに、振動部100の強度も選択できるため信頼性が高い。さらに本実施形態の圧電振動子300は、種々の変形実施が可能で、これにより信頼性を一層高めることができる。
【0043】
3.圧電振動子300の製造方法
圧電振動子300の製造方法の一例について図面を参照して説明する。図8ないし図13は、本実施形態にかかる圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0044】
本実施形態の圧電振動子300の製造方法は、基板10の上に第1絶縁体層20を形成する工程と、第2絶縁体層を形成する工程と、シリコン層80を形成する工程と、第2絶縁体層30を露出させる工程と、振動部形成層40を形成する工程と、圧電素子部200を形成する工程と、第1開口部H1を形成するとともに、片持ち梁状の振動部100を形成する工程と、第2開口部H2を形成する工程と、を有する。
【0045】
まず図4に示すように、基板10の上方に第1絶縁体層20を形成する。この工程は、基板10の上に、蒸着、スパッタ、CVD(Chemical Vapor Deposition)などの方法により、形成することができる。基板10にシリコン基板を用いた場合は、表面に熱酸化膜を形成し、これを第1絶縁体層20としてもよい。また、SOI(Silicon On Insulater)基板を用いる場合は、SOI基板の絶縁層を第1絶縁体層20として用いることができる。
【0046】
次に、第1絶縁体層20の上に、パターニングされた第2絶縁体層30を形成する。この工程は、第1絶縁体層20の上に、蒸着、スパッタ、CVDなどの方法により、第2絶縁体層30となる層を全面的に形成し、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、パターニングして行うことができる。この工程のパターニングによって除去された第2絶縁体層30の領域の形状が、第2開口部H2の形状となる。
【0047】
次に、第1絶縁体層20と第2絶縁体層30を覆うようにシリコン層80を形成する。シリコン層80は、圧電振動子300が完成した時点では除去されている。シリコン層80は、第2開口部H2を形成するための犠牲層として形成される。シリコン層80は、特定のエッチングの際のエッチングレートが第1絶縁体層20および第2絶縁体層30のそれと異なるように選ばれる。たとえばシリコン層80は、アモルファスシリコン、多結晶シリコンおよび単結晶シリコンのいずれかで形成することができる。シリコン層80を形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法およびSOG(Spin On Glass)法などを用いることができる。本工程によって形成されたシリコン層80の上面は、凹凸が形成されることがある。
【0048】
次に、シリコン層80の上面を研磨して第2絶縁体層30を露出する工程を行う。本工程の研磨方法としては、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いることができる。図9に示すように、本工程によって、シリコン層80および第2絶縁体層30の上面は、同一平面に乗り同時に平坦化される。この研磨は、第2絶縁体層30が露出するまで行われるが、第2絶縁体層30が露出した後も、第1絶縁体層20が露出しない範囲でさらに研磨することもできる。
【0049】
次に、図10に示すように、振動部形成層40aをシリコン層80と第2絶縁体層30の上に形成する工程を行う。振動部形成層40aを形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法などの方法を用いることができる。振動部形成層40aを多層構造とする場合も、それぞれの層を例示した方法などにより形成することができる。
【0050】
次に、図11に示すように、振動部形成層40aの上に、圧電素子部200を形成する工程を行う。この工程は、まず振動部形成層40aの上方に下部電極層50a、圧電体層60aおよび上部電極層70aを順に積層したあと、パターニングして行われる。下部電極層50aは、蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、ゾル−ゲル法などにより形成することができる。圧電体層60aは、ゾル−ゲル法、MOD(Metallo−Organic Decomposition)法、スパッタ法、レーザーアブレーション法などによって形成することができる。上部電極層70aは、蒸着法、スパッタ法、CVD法、メッキ法、ゾル−ゲル法などにより形成することができる。次いで、このように積層された3つの層を図12に示すようにパターニングして圧電素子75を形成する。パターニングの方法は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて行うことができる。パターニングは、複数回行われてもよい。このように圧電素子75を備えた圧電素子部200が形成される。
【0051】
次に、図13に示すように、第1開口部H1を形成するとともに、振動部100を形成する工程を行う。第1開口部H1の形成は、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて行うことができる。第1開口部H1のエッチングは、ドライエッチングおよびウエットエッチングのいずれで行ってもよい。またエッチャントとしては、異方性であっても等方性であってもよい。たとえば、振動部形成層40aが酸化シリコンで形成されている場合は、第1開口部H1をドライエッチングによって形成する場合は、エッチングガスは、CF、SF、CHF、Cl、BCl、CHClから選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。またこのエッチングは複数回行ってもよい。このエッチングのストッパ層はシリコン層80であるが、第2開口部H2を形成する工程で第1開口部H1の下のシリコン層80は除去されるため、ある程度であればシリコン層80をエッチングしても構わない。このようにして第1開口部H1が形成されると、同時に振動部100が形成される。振動部100の振動領域の長さは、第1開口部H1と第2開口部H2の相対的な関係により決まる。第1開口部H1の形成においては、振動部100の上方に所定数の圧電素子75が配置されるように形成される。
【0052】
次に、図1および図3に示すような第2開口部H2を形成する工程を行う。第2開口部H2は、シリコン層80をドライエッチングして除去して形成される。本工程のドライエッチングのエッチングガスは、第1開口部H1を介して、シリコン層80に供給される。そしてエッチングが進むと、振動部100の下のシリコン層80が除去される。そのため、振動部100の下に回り込んでエッチングすることができるように、本工程のエッチングガスは、等方的なエッチングが行われるものが選択される。また、本工程のエッチングガスには、他の層よりもシリコン層80に対してエッチング作用が大きいガスが選ばれる。本工程のエッチングガスとしては、XeF、ClF、BrF、IF、およびIFの少なくとも1種が好ましい。シリコン層80の下方に第1絶縁体層20を有するため、第1絶縁体層20がエッチングストッパ層として機能する。そのため、第2開口部H1が深くエッチングされすぎることがないため、エッチングガスを節約することができる。本工程のドライエッチングは、等方性のエッチングであるが、第2絶縁体層30のパターニング工程によって形成された部位のみが除去されるため、振動部100の端部近傍ではアンダーカット状となることがない。
【0053】
以上のようにして圧電振動子300が製造される。本実施形態の圧電振動子300の製造方法は、以下のような特徴を有する。
【0054】
本実施形態の製造方法によれば、ドライエッチングにより振動部100の下の第2絶縁体層30aが除去されるため、ウエットエッチングにおいて問題となったスティッキングを起こさずに圧電振動子300を製造することができる。
【0055】
また、本実施形態の製造方法によれば、平面的に見た第1開口部H1と第2開口部H2の輪郭の相対的な位置をパターニングによって正確に決めることができる。すなわち、ドライエッチングの停止位置があらかじめ第2絶縁体層30の形状によって決められるため、オーバーエッチングなどが発生せず、振動部100の振動領域の形状を形成する精度が高く信頼性の高い圧電振動子300を製造することができる。
【0056】
4.圧電振動子の製造方法の変形例
本実施形態の圧電振動子の製造方法は、以下のような変形が可能である。
【0057】
図14ないし図16は、本実施形態にかかる製造工程の変形例を模式的に示す断面図である。変形例1は、上述の製造工程の第1絶縁体層20の上にパターニングされた第2絶縁体層30を形成する工程に代えて、第1絶縁体層20の上にパターニングされたシリコン層80を形成する工程とする点が主な相違点である。以下の変形例の説明においては、上述の圧電振動子300の製造方法で説明した工程と実質的に同一の工程については、その詳細な説明を省略する。
【0058】
4.1.製造方法の変形例1
図14は、第1絶縁体層20の上にパターニングされたシリコン層80を形成した変形例である。この例では、シリコン層80を形成した後に、図15に示すように第2絶縁体層30となる第2絶縁体層30aを形成する。そして第2絶縁体層30aの上面を研磨してシリコン層80を露出させ、図9に示した構造を形成する。この後は、既に説明した図9以降の工程を経て圧電振動子300,301が形成される。
【0059】
第1絶縁体層20の上にパターニングされたシリコン層80を形成する工程は、第1絶縁体層20の上に、蒸着、スパッタ、CVDなどの方法により、シリコン層80となる層を全面的に形成し、公知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、パターニングして行うことができる。この工程のパターニングによって形成されたシリコン層80の領域の形状が、第2開口部H2の形状となる。
【0060】
第2絶縁体層30となる第2絶縁体層30aを形成する工程は、蒸着法、スパッタ法、CVD法およびSOG法などを用いることができる。またこの工程は複数回繰り返してもよい。本工程によって形成された第2絶縁体層30aの上面は、凹凸が形成されることがある。
【0061】
第2絶縁体層30aの上面を研磨してシリコン層80を露出させ、図9に示した構造を形成する工程の研磨方法としては、CMP法を用いることができる。図9に示すように、本工程によって、シリコン層80および第2絶縁体層30の上面は、同一平面に乗り同時に平坦化される。この研磨は、シリコン層80が露出するまで行われるが、シリコン層80が露出した後も、第1絶縁体層20が露出しない範囲でさらに研磨することもできる。
【0062】
4.2.製造方法の変形例2
変形例2は、変形例1の製造工程の第2絶縁体層30aの上面を研磨してシリコン層80を露出させる工程に代えて、振動部形成層40aの上面を研磨して平坦化する工程とする点が主な相違点である。
【0063】
図16は、変形例2によって得られる構造を模式的に示す断面図である。変形例2は、変形例1の工程と同様に図14に示す第1絶縁体層20の上にパターニングされたシリコン層80を形成した後の工程の変形例である。本変形例では図15に示すように振動部形成層40aとなる振動部形成層40bを形成する。そして振動部形成層40bの上面を研磨して平坦化し、図16に示した構造を形成する。この後は、既に説明した図10以降の工程を経て圧電振動子302が形成される。
【0064】
振動部形成層40aとなる振動部形成層40bを形成する工程は、蒸着法、スパッタ法、CVD法およびSOG法などを用いることができる。またこの工程は複数回繰り返してもよい。本工程によって形成された第2絶縁体層30aの上面は、凹凸が形成されることがある。
【0065】
振動部形成層40bの上面を研磨して平坦化する工程の研磨方法としては、CMP法を用いることができる。図9に示すように、本工程によって、上面が平坦化された振動部形成層40aが形成される。この研磨は、振動部形成層40aが所望の厚みになるまで行うことができる。
【0066】
変形例1および変形例2のように第1絶縁体層20の上にパターニングされたシリコン層80を形成した変形においては、SOI(Silicon On Insulater)基板を利用して工程を簡略できる。すなわち、図14に示すような構造の基板10、第1絶縁層20およびシリコン層80を、それぞれSOI基板の基板、BOX(絶縁)層および単結晶シリコン層を利用して形成することができる。この場合はシリコン層80(単結晶シリコン層)をパターニングする工程から出発することができる。
【0067】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【0068】
5.発振器500
次に本発明にかかる電子機器の一例として発振器500を説明する。
【0069】
図17は、上述した圧電振動子300を有する発振器500の基本的構成を示す回路図である。発振器500は、この回路(発振回路)を含むことができる。発振回路は、電気信号を増幅する増幅器401と、増幅器401の入出力間に接続された帰還回路410と、を有する。増幅器401は、例えばCMOSインバータからなる。帰還回路410は、例えば、圧電振動子300と、抵抗403と、2つのコンデンサ404,405と、を備える。増幅器401には、直流電源から電圧Eが印加されている。電源電圧Eを増大させていき発振開始電圧になると、電流Iが急激に増加して発振が開始される。さらに電源電圧Eを増大させると、発振状態を保ちながら電流Iがほぼ比例して増加する。
【0070】
図18は、本実施形態に係る発振器500を概略的に示す平面図であり、図19は、発振器500を概略的に示す断面図である。なお、図19は、図18のX−X線断面図である。また、図17および図19では便宜上、圧電振動子300を簡略化して示している。
【0071】
発振器500は、封止材502により封止されている。IC(集積回路)503は、金
線などのボンディングワイヤ504により外部端子570に接続されている。外部端子570は、リードフレーム505および接合材506を介して、実装端子541と電気的に接続されている。実装端子541は、配線(図示せず)などにより、圧電振動子300の各電極と電気的に接続されている。圧電振動子300は、蓋部材539やシール部材540などにより封止されている。
【0072】
図20は、本実施形態に係る発振器500の製造工程例を概略的に示す図である。
【0073】
まず、ICウェハに対してテープ貼りおよびダイシングを行う。次に、IC503のチップをリードフレーム505に搭載する。次に、ボンディングワイヤ504を用いてIC503に対してワイヤボンディングを行う。
【0074】
次に、圧電振動子300の実装端子541を、半田などの接合材506を用いてリードフレーム505に接合して、圧電振動子300をマウントする。次に、封止材(モールド材)502を用いて、圧電振動子300、IC503などを樹脂封止する。その後、特性検査、マーキングを行い、テーピング、梱包し、出荷される。
【0075】
また、図示はしないが、例えば、圧電振動子300が形成される基板10(図3参照)に対して半導体プロセスを用いて圧電振動子300に平面的に隣接するICを形成し、本実施形態に係る発振器を形成することもできる。これにより、パッケージを省略することができ、ワンチップ型の発振器を形成することができる。
【0076】
6.リアルタイムクロック600
次に、本発明にかかる電子機器の一例としてリアルタイムクロック600を説明する。
【0077】
図21は、上述した発振器(OSC)500を有するリアルタイムクロック600を概略的に示す回路ブロック図である。リアルタイムクロック600の集積回路部は、単一の基板601に集積され、マイクロプロセッサ(図示せず)と接続されている。
【0078】
計時用接続端子602,603に接続されている発振器500からは高周波(例えば32kHz)のクロックパルスが出力される。クロックパルスは分周回路605で分周され、1Hzの計時パルスが計時カウンタ606に入力される。計時カウンタ606は、例えば、秒計時ビットsと、分計時ビットmと、時計時ビットhと、曜日計時ビットdと、日計時ビットDと、月計時ビットMと、年計時ビットYとから構成されている。所定数の計時パルスが計時カウンタ606に入力されると、それぞれの計時ビットは繰り上がることができる。計時カウンタ606には、計時ビットの書き換えおよび読み出しを行う制御部620が接続されている。制御部620は、例えば、コマンドデコーダ612と、シフトレジスタ609,610と、を有することができる。
【0079】
計時カウンタ606の計時ビットを書き換える場合には、まず、マイクロプロセッサからセレクト入力端子607にセレクト信号を供給する。次に、マイクロプロセッサからデータ入力端子608に、書き換えるべき情報を表すデータビットと、計時ビットのアドレスを表すアドレスビットと、計時カウンタ606への書き込み動作を表す操作ビットとから構成される外部情報を供給する。その結果、外部情報は、直列に接続されたシフトレジスタ609,610に記憶される。そして、コマンドデコーダ612は、シフトレジスタ610に記憶された操作ビットとアドレスビットに基づき、ライトイネーブル信号を計時カウンタ606に送出するとともに、計時ビットを指定するアドレス信号を出力する。その結果、シフトレジスタ609に記憶されたデータビットが計時カウンタ606の計時ビットに書き込まれ、リアルタイムデータの書き換えが行われる。
【0080】
また、計時カウンタ606からリアルタイムデータを読み出す場合には、マイクロプロ
セッサから、読み出し動作を表す操作ビットを有する外部情報を送出させる。そして、コマンドデコーダ612は、計時カウンタ606へのライトイネーブル信号をインアクティブ状態にする。その結果、インバータ613がアクティブ状態のライトイネーブル信号をシフトレジスタ609に供給し、シフトレジスタ609が読み込み可能状態になり、計時カウンタ606の内容はシフトレジスタ609に読み出される。シフトレジスタ609に読み出されたリアルタイムデータは、クロック入力端子614に印加されるクロック信号に同期して、データ出力端子615に転送され、例えばマイクロプロセッサのレジスタなどに送出される。
【0081】
なお、例えば計算結果などのデータは、ランダムアクセスメモリ(RAM)616に記憶させることができる。
【0082】
図22は、本実施形態に係るリアルタイムクロック600を概略的に示す上面透視図であり、図23は、リアルタイムクロック600を概略的に示す側面透視図である。なお、図23は、図22の矢印XIVの方向に見た図である。
【0083】
発振回路などを有するICチップ651は、リードフレーム652のアイランド部653に導電性接着剤などで接着固定されている。ICチップ651の上面に設けられた各電極パッド654は、ボンディングワイヤ655により、パッケージの外周部に配置された入出力用リード端子656と電気的に接続されている。平面視において、ICチップ651の隣には、圧電振動子300を内部に収めている振動子用筐体657が配置されている。振動子用筐体657内には、例えば図1ないし図3に示す圧電振動子300が気密状態で封止されている。圧電振動子300の各電極に電気的に接続されたリード658は、振動子用筐体657内から外に突出している。リード658は、リードフレーム652の接続パッド659に導電性接着剤などで接着固定されている。ICチップ651、リードフレーム652および振動子用筐体657は、樹脂660により一体成形されてパッケージ化されている。
【0084】
また、図示はしないが、例えば、圧電振動子300が形成される基体10(図3参照)に対して半導体プロセスを用いて圧電振動子300に平面的に隣接するICを形成し、本実施形態に係るリアルタイムクロックを形成することもできる。これにより、パッケージを省略することができ、ワンチップ型のリアルタイムクロックを形成することができる。
【0085】
7.電波時計受信モジュール800
次に、本発明の電子機器の一例である電波時計受信モジュール800を説明する。
【0086】
図24は、本実施形態に係る電波時計受信モジュール800を概略的に示す回路ブロック図である。
【0087】
電波時計受信モジュール800は、受信部801と、周波数フィルタ805と、周辺回路810と、上述したリアルタイムクロック(RTC)600と、を含む。周波数フィルタ805は、例えば上述した圧電振動子300と同様の圧電振動子400(400A,400B)を有する。周辺回路810は、例えば、検波・整流回路806と、波形整形回路807と、中央演算処理装置(CPU)808と、を有することができる。
【0088】
電波時計は、時刻情報を含む標準電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)に標準電波を送信する送信所がある。
【0089】
受信部(例えばアンテナ)801は、40kHzまたは60kHzの長波の標準電波を受信する。標準電波は、40kHzまたは60kHzの搬送波に振幅変調(AM)をかけ
て時刻情報(タイムコード)を乗せたものである。
【0090】
受信された電気信号は、アンプ802によって増幅され、搬送周波数と同一の共振周波数を有する圧電振動子400A,400Bを有する周波数フィルタ805によって、濾波、同調される。濾波された電気信号からは、周辺回路810により、タイムコードを読み出すことができる。具体的には、まず、濾波された所定周波数の信号は、検波・整流回路806により検波復調される。そして、波形整形回路807を介してタイムコードが取り出され、CPU808でカウントされる。CPU808では、例えば、現在の年、積算日、曜日、時刻などの情報が読み取られる。読み取られた情報は、RTC600に反映されて、正確な時刻情報が表示される。
【0091】
搬送波は40kHzまたは60kHzであるから、周波数フィルタ805の圧電振動子400A,400Bには、本発明に係る圧電振動子が好適である。
【0092】
また、図示はしないが、例えば、圧電振動子400が形成される基体10(図11参照)に対して半導体プロセスを用いて圧電振動子400に平面的に隣接するICを形成し、本実施形態に係る電波時計受信モジュールを形成することもできる。これにより、パッケージを省略することができ、ワンチップ型の電波時計受信モジュールを形成することができる。
【0093】
また本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明にかかる圧電振動子300を模式的に示す平面図。
【図2】第1開口部H1および振動部100を模式的に示す平面図。
【図3】本発明にかかる圧電振動子300を模式的に示す断面図。
【図4】本発明にかかる圧電振動子301を模式的に示す平面図。
【図5】本発明にかかる圧電振動子301を模式的に示す断面図。
【図6】本発明にかかる圧電振動子302を模式的に示す断面図。
【図7】第1開口部H1および振動部100を模式的に示す平面図。
【図8】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図9】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図10】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図11】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図12】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図13】本発明の圧電振動子300の製造工程を模式的に示す断面図。
【図14】本発明の圧電振動子の製造工程の変形例を模式的に示す断面図。
【図15】本発明の圧電振動子の製造工程の変形例を模式的に示す断面図。
【図16】本発明の圧電振動子の製造工程の変形例を模式的に示す断面図。
【図17】本発明の発振器500の基本的構成を示す回路図。
【図18】本発明の発振器500を概略的に示す平面図。
【図19】本発明の発振器500を概略的に示す断面図。
【図20】本発明の発振器500の製造工程例を概略的に示す図。
【図21】本発明のリアルタイムクロック600を概略的に示す回路ブロック図。
【図22】本発明のリアルタイムクロック600を概略的に示す上面透視図。
【図23】本発明のリアルタイムクロック600を概略的に示す側面透視図。
【図24】本発明の電波時計受信モジュール800を概略的に示す回路ブロック図。
【符号の説明】
【0095】
10 基板、20 第1絶縁体層、30,30a 第2絶縁体層、
40,40a 振動部形成層、50 下部電極、50a 下部電極層、
60,60a 圧電体層、70 上部電極、70a 上部電極層、75 圧電素子、
80,80a シリコン層、100 振動部、110 ビーム結合部、111 基部、
120 ビーム部、200 駆動部、H1 第1開口部、H2 第2開口部、
300,301,302 圧電振動子、400 圧電振動子、401 増幅器、
403 抵抗、404,405 コンデンサ、410 帰還回路、500 発振器、
502 封止材、503 IC、504 ボンディングワイヤ、
505 リードフレーム、506 接合材、539 蓋部材、540 シール部材、
541 実装端子、570 外部端子、600 リアルタイムクロック、601 基板、
602,603 計時用接続端子、605 分周回路、606 計時カウンタ、
607 セレクト入力端子、608 データ入力端子、
609,610 シフトレジスタ、612 コマンドデコーダ、613 インバータ、
614 クロック入力端子、615 データ出力端子、620 制御部、
651 ICチップ、652 リードフレーム、653 アイランド部、
654 電極パッド、655 ボンディングワイヤ、656 入出力用リード端子、
657 振動子用筐体、658 リード、659 接続パッド、660 樹脂、
800 電波時計受信モジュール、801 受信部、802 アンプ、
805 周波数フィルタ、806 検波・整流回路、807 波形整形回路、
808 CPU、810 周辺回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された第1絶縁体層と、
前記第1絶縁体層の上に形成された第2絶縁体層と、
前記第2絶縁体層の上に形成された振動部形成層と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部と、
前記第1開口部内に前記振動部形成層を片持ち梁状に形成してなる振動部と、
前記第2絶縁体層を貫通し、前記第1開口部と前記振動部の下に形成された第2開口部と、
前記振動部の上に形成された圧電素子部と、
を有し、
前記振動部形成層は、酸化物、窒化物および酸化窒化物から選ばれる少なくとも1種からなる層を有する、圧電振動子。
【請求項2】
請求項1において、
平面視において、前記振動部の基端側にある第2開口部の輪郭線は、前記振動部と前記振動部形成層との境界線よりも内側にある、圧電振動子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第2絶縁体層と前記振動部形成層とが連続している、圧電振動子。
【請求項4】
請求項1または請求項3のいずれかにおいて、
前記振動部は、ビーム結合部と前記ビーム結合部から伸びる複数本のビーム部を有する、圧電振動子。
【請求項5】
基板の上に第1絶縁体層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層の上にパターニングされた第2絶縁体層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層と前記第2絶縁体層を覆うようにシリコン層を形成する工程と、
前記シリコン層の上面を研磨して前記第2絶縁体層を露出させる工程と、
前記シリコン層と前記第2絶縁体層の上に振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上に圧電素子部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定された片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる、圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
基板の上に第1絶縁体層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層の上にパターニングされたシリコン層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層と前記シリコン層とを覆うように第2絶縁体層を形成する工程と、
前記第2絶縁体層の上面を研磨して前記シリコン層を露出させる工程と、
前記第2絶縁体層と前記シリコン層の上に振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上に圧電素子部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定された片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる、圧電振動子の製造方法。
【請求項7】
基板の上に第1絶縁体層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層の上にパターニングされたシリコン層を形成する工程と、
前記第1絶縁体層と前記シリコン層を覆うように振動部形成層を形成する工程と、
前記振動部形成層の上面を平坦化する工程と、
前記振動部形成層の上に圧電素子部を形成する工程と、
前記振動部形成層を貫通する第1開口部を形成するとともに、前記振動部形成層に固定された片持ち梁状の振動部を形成する工程と、
前記シリコン層をドライエッチングして第2開口部を形成する工程と、
を有し、
前記第2開口部を形成する工程は、前記第1開口部を介してエッチングガスを供給して行われる、圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれかにおいて、
前記シリコン層は、アモルファスシリコン、多結晶シリコンおよび単結晶シリコンのいずれかで形成される、圧電振動子の製造方法。
【請求項9】
請求項5ないし請求項8のいずれかにおいて、
前記ドライエッチングは、エッチングガスとして、XeF、ClF、BrF、IF、およびIFの少なくとも1種を用いる、圧電振動子の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の圧電振動子を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−244552(P2008−244552A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78578(P2007−78578)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】