圧電振動片の製造方法、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計
【課題】圧電板の外形を正しく認識して、電極部を高精度に形成できる圧電振動片の製造方法、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供する。
【解決手段】金属積層膜28上にフォトレジスト材を塗布し、金属積層膜28上にフォトレジスト膜44を形成する第1フォトレジスト膜材形成工程と、フォトレジスト膜44をパターニングしてレジストパターン54を形成する第1パターニング工程と、レジストパターン54の形成領域以外の領域の金属積層膜28を除去して、下地電極膜を形成する第1エッチング工程と、を有し、フォトレジスト膜形成工程は、ウエハSにおける第1面Sa側に配置された第1治具72、及び第2面Sb側に配置された第2治具73により、ウエハSを厚さ方向の両側から挟持して行い、第1治具72及び第2治具73は、ウエハSの厚さ方向から見て重なり合わない位置に配置されていることを特徴とする。
【解決手段】金属積層膜28上にフォトレジスト材を塗布し、金属積層膜28上にフォトレジスト膜44を形成する第1フォトレジスト膜材形成工程と、フォトレジスト膜44をパターニングしてレジストパターン54を形成する第1パターニング工程と、レジストパターン54の形成領域以外の領域の金属積層膜28を除去して、下地電極膜を形成する第1エッチング工程と、を有し、フォトレジスト膜形成工程は、ウエハSにおける第1面Sa側に配置された第1治具72、及び第2面Sb側に配置された第2治具73により、ウエハSを厚さ方向の両側から挟持して行い、第1治具72及び第2治具73は、ウエハSの厚さ方向から見て重なり合わない位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片の製造方法、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として、水晶等の透明の圧電材料を利用した圧電振動片を有する圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動片としては、圧電材料からなる圧電板と、電圧が印加されたときに圧電板を振動させる電極部と、を備えた構成が知られている。上述した電極部は、圧電板の外表面上に積層されるとともに互いにパターンが異なる複数層の電極膜により構成されている。
【0003】
ところで、このような圧電振動片は、ウエハを利用して一度に複数製造するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。具体的には、まずウエハを複数の圧電板が連結部を介して連結された状態に形成し、各圧電板に対して一括で電極部を形成していく。その後、ウエハと圧電板とを連結する連結部を切断することで、複数の圧電振動片が形成される。
【0004】
ここで、図26〜図28に基づいて、従来の電極部の形成方法について説明する。
図26に示すように、電極部の各電極膜を形成する際には、まず圧電板210が形成されたウエハ201上に下地金属層となる第1金属膜202、及び仕上金属層となる第2金属膜203をスパッタリング等により順次成膜する。次に、第1治具204及び第2治具205を用いてウエハ201を厚さ方向両側から挟み込み、ウエハ201(第2金属膜203)上にフォトレジスト材を塗布して第1フォトレジスト膜206を形成する。その後、フォトリソグラフィ技術により第1フォトレジスト膜206をパターニングして、下地金属層の形成領域に第1フォトレジスト膜206が残存するように第1レジストパターンを形成する。次に、第1治具204及び第2治具205からウエハ201を取り外し、図27に示すように、第1レジストパターンを介して各金属膜202,203をまとめてエッチングした後、第1レジストパターンを除去する。
【0005】
次に、ウエハ201上に再度フォトレジスト膜(第2フォトレジスト膜)を形成し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングする。このとき、仕上金属層の形成領域に第2フォトレジスト膜が残存するように第2レジストパターンを形成する。次に、第2レジストパターンを介して第2金属膜203をエッチングした後、第2レジストパターンを除去する。以上により、ウエハ201の各圧電板210上に下地金属層及び仕上金属層が積層されてなる電極部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−77647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した電極部の形成方法にあっては、第1フォトレジスト膜206を形成する際に、第1治具204及び第2治具205によりウエハ201を厚さ方向両側から挟み込んでいるため、ウエハ201における第1治具204及び第2治具205とそれぞれ重なる領域は、フォトレジスト膜206が形成されない非形成領域N’となっている。この場合、非形成領域N’では、金属膜202,203が露出しているため、後のエッチング時に非形成領域N’における金属膜202,203が除去されることになる。その結果、非形成領域N’はウエハSの両面が露出した透明部分となる。
【0008】
この場合には、その後の第2レジストパターンの形成時において、ウエハ201とフォトマスクとを画像認識によりアライメントする際、透明部分(非形成領域N’)が認識されないという問題がある。具体的には、図28に示すように、画像認識時において、非形成領域Nが欠けた状態で認識される結果、ウエハ201の外形が上手く認識されず、エラーとなって停止したり、ウエハ201とフォトマスクとのアライメント精度が低下したりする。その結果、電極部の位置精度が低下するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、圧電板の外形を正しく認識して、電極部を高精度に形成できる圧電振動片の製造方法、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動片の製造方法は、圧電材料からなる圧電板と、電圧が印加されたときに前記圧電板を振動させる電極部と、を備え、前記電極部は、前記圧電板上に積層されるとともに互いにパターンが異なる複数層の電極膜からなる圧電振動片を形成する圧電振動片の製造方法であって、前記圧電板上に積層された導電性を有する複数層の金属膜をパターニングすることで、前記複数層の電極膜をそれぞれ形成する複数の電極膜形成工程を有し、前記電極膜形成工程は、前記複数層の金属膜上にマスク材材料を塗布し、前記金属膜上にマスク材を形成するマスク材形成工程と、前記マスク材をパターニングしてマスク材パターンを形成するマスク材パターン形成工程と、前記マスク材パターンの形成領域以外の領域の前記金属膜を除去して、前記電極膜を形成する電極パターン形成工程と、を有し、前記マスク材形成工程は、前記圧電板における厚さ方向の一方側に配置された第1治具、及び他方側に配置された第2治具により、前記圧電板を厚さ方向の両側から挟持して行い、前記第1治具及び前記第2治具は、前記圧電板の厚さ方向から見て重なり合わない位置に配置されていることを特徴としている。
【0011】
上述したように圧電板における第1治具及び第2治具が重なる領域は、マスク材形成工程においてマスク材が形成されない非形成領域となっているため、その後の電極パターン形成工程において非形成領域に形成された金属膜も除去されることになる。
ここで、本発明の構成によれば、マスク材形成工程において、圧電板の厚さ方向から見て重なり合わない位置で第1治具及び第2治具により圧電板を挟持することで、圧電板の両面における非形成領域も厚さ方向で重ならないように配置されることになる。この場合、圧電板の一方の面側の非形成領域は他方の面側の金属膜に覆われ、他方の面側の非形成領域は一方の面側の金属膜に覆われる。したがって、圧電板が透明な圧電材料からなる場合であっても、圧電板の外周部分において厚さ方向で透明な透明部分は存在しないことになる。
これにより、後の電極膜形成工程において、画像認識により圧電板の外形を正しく認識できるため、圧電板上にマスク材パターンを高精度に形成できる。その結果、マスク材パターンを介して形成される電極部(電極膜)を高精度に形成できるため、圧電振動片としての安定した作動の信頼性を確保することができる。
【0012】
また、前記マスク材形成工程では、前記第1治具及び前記第2治具を、前記圧電板の周方向に沿って交互に配置することを特徴としている。
この構成によれば、圧電板の両面における非形成領域を、圧電板の厚さ方向で確実に重ならないように配置することができる。
しかも、圧電板を厚さ方向両側から均等に押さえることができるので、圧電板の割れ等の発生を抑制できる。
【0013】
また、前記マスク材形成工程では、前記第1治具及び前記第2治具を、前記圧電板の厚さ方向から見て前記圧電板の周方向で間隔を空けて配置することを特徴としている。
この構成によれば、圧電板の両面における非形成領域を、圧電板の厚さ方向で確実に重ならないように配置することができる。
しかも、第1治具及び第2治具により圧電板を挟持する際に、圧電板に作用するせん断応力を抑制できるので、圧電板の割れ等の発生を抑制できる。
【0014】
また、本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片の製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の圧電振動片の製造方法を用いて製造されているため、安定した作動を得られ、信頼性の高い圧電振動片を提供できる。
【0015】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片がパッケージに気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の圧電振動片がパッケージに気密封止されているため、特性及び信頼性に優れた高品質な圧電振動子を提供することができる。
【0016】
また、本発明の発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器、電子機器及び電波時計を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の圧電振動片の製造方法、及び圧電振動片によれば、圧電板の外形を正しく認識して、電極部(電極膜)を高精度に形成できるため、圧電振動片としての安定した作動の信頼性を確保することができる。
本発明の圧電振動子によれば、特性及び信頼性に優れた高品質な圧電振動子を提供できる。
本発明の発振器、電子機器及び電波時計においては、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器、電子機器及び電波時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】圧電振動片の斜視図である。
【図8】図5のB−B線における断面図である。
【図9】図5のC−C線に沿う断面図である。
【図10】圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図11】圧電振動片の製造方法を示すフローチャートである。
【図12】ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図13】ウエハの断面図である。
【図14】外形形成工程後のウエハの平面図である。
【図15】金属積層膜の形成工程を説明するための図であって、ウエハの平面図である。
【図16】金属積層膜の形成工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図17】フォトレジスト膜形成工程を説明するための図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
【図18】第1レジストパターン形成工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図19】第1エッチング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図20】第1エッチング工程後のウエハを示す図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
【図21】第2パターニング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図22】第2エッチング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図23】本発明の実施形態における発振器の概略構成図である。
【図24】本発明の実施形態における携帯情報機器の概略構成図である。
【図25】本発明の実施形態における電波時計の概略構成図である。
【図26】従来の電極部の形成方法を説明するための図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は断面図である。
【図27】従来の電極部の形成方法を説明するための図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は断面図である。
【図28】従来の電極部の形成方法を説明するための図であって、ウエハの画像認識結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2とリッド基板3とが接合材35を介して陽極接合された箱状のパッケージ5を有し、このパッケージ5の内部のキャビティC内に圧電振動片4が封止された表面実装型の圧電振動子である。なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極14、引き出し電極19,20、マウント電極15,16、及び重り金属膜21の図示を省略している。
【0023】
図5は圧電振動子を構成する圧電振動片の平面図、図6は圧電振動片の底面図である。
図5,図6に示すように、圧電振動片4は、所定の電圧が印加されたときに振動するものであって、水晶等の透明の圧電材料から形成された音叉型の圧電板11を備えている。
【0024】
この圧電板11は、平行に配置された一対の振動腕部8,9と、これら一対の振動腕部8,9の基端側を一体的に固定する基部10と、を有している。また、圧電板11の外表面上には、一対の振動腕部8,9を振動させる第1の励振電極12、及び第2の励振電極13からなる励振電極14と、第1の励振電極12、及び第2の励振電極13に電気的に接続されたマウント電極15,16と、が設けられている。
【0025】
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部8,9の両主面上に、振動腕部8,9の基端部から先端部に向かって一定長さL形成された溝部17を備えている。
【0026】
図7は、圧電振動片の斜視図である。
溝部17は、図7に示すように、振動腕部8,9の基端部から略中間付近まで形成されている。なお、一対の振動腕部8,9の腕幅は共通であり、それぞれWとする。また、基部10において一対の振動腕部8,9の基端部と連結されている部分を股部10aとする。
【0027】
図8は、図5のB−B線に沿う断面図である。
図5,図6,図8に示すように、第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる励振電極14は、一対の振動腕部8,9を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部8,9の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極12が、一方の振動腕部8の溝部17上と、他方の振動腕部9の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極13が、一方の振動腕部8の両側面上と他方の振動腕部9の溝部17上とに主に形成されている。
【0028】
また、図5,図6に示すように、第1の励振電極12及び第2の励振電極13は、基部10の両主面上において連続的に形成されており、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極15,16に電気的に接続されている。このマウント電極15,16は、圧電板11の基端側に形成されている。すなわち、励振電極14、マウント電極15,16及び引き出し電極19,20は、所定の電圧が印加されたときに一対の振動腕部8,9を振動させる電極部18として機能している。
【0029】
図9は、図5のC−C線に沿う断面図である。
図9に示すように、電極部18は、クロム(Cr)等からなる下地金属層18aと、金(Au)等からなる仕上金属層18bと、が圧電板11の外表面上に順次積層されて構成されている。これらの金属層18a,18bのパターンは、互いに異なっている。
下地金属層18aは、仕上金属層18bと圧電振動片4との密着性を向上させるためのものである。
【0030】
また、仕上金属層18bは、図7,図9に示すように、少なくとも振動腕部8,9の基端部から先端部に至る領域で、仕上金属層18bの一部或いは全部が除去されている。より詳しくは、振動腕部8,9の基端部より先端部側では、基端部から一定長さL以上離間した位置まで(図7に示す領域RA)、仕上金属層18bの全部が除去されている。さらに、振動腕部8,9の基端部より基部10側には、基端部から基部10に向かって振動腕部8,9の腕幅Wの2倍離間した位置に至るまで(図7に示す領域RB)、仕上金属層18bの全部が除去されている。
【0031】
すなわち、電極部18は、振動腕部8,9の溝部17が形成されている領域を含む領域RA及び領域RBで、溝部17内を含めて全面的に下地金属層18aにより形成されている。そして、領域RA及び領域RBには、下地金属層18aを覆うように酸化珪素(SiO2)等からなる絶縁膜34が被覆されている。これにより、振動腕部8,9の励振電極12,13間に導電性粒子が付着した場合でも、電極間の短絡を防止することができる。
【0032】
ここで本実施形態では、領域RA及び領域RBを合わせた領域である単層領域Rは、励振電極12,13の形成領域となっており、この単層領域Rでは、仕上金属層18bを除去した状態で下地金属層18a上に絶縁膜34を形成することで、絶縁膜34の密着性を向上させて励振電極12,13の短絡が確実に防がれている。
一方、圧電板11における単層領域Rよりも基端側に形成された引き出し電極19,20及びマウント電極15,16は、上述したように下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層された状態となっている。以下では、これら下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層されている領域を積層領域Pとする。
【0033】
また、図5,図6に示すように、一対の振動腕部8,9の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bと、に分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部8、9の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0034】
このように構成された圧電振動片4は、図3,図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。より具体的には、ベース基板2の上面にパターニングされた後述する引き回し電極36,37上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極15,16がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。
これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面から浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極15,16と引き回し電極36,37とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0035】
図1,図3,図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であって、板状に形成されている。ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、両基板2,3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。
【0036】
リッド基板3の下面全体には、陽極接合用の接合材35が形成されている。具体的に、接合材35は、ベース基板2との接合面及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材35はSi膜で形成されているが、接合材35をAlで形成することも可能である。なお接合材として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を採用することも可能である。そして、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態で、接合材35とベース基板2とが陽極接合されることで、キャビティCが気密封止されている。
【0037】
図1〜図4に示すように、ベース基板2は、リッド基板3と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であって、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。このベース基板2には、ベース基板2を貫通する一対のスルーホール30,31が形成されている。この際、一対のスルーホール30,31は、キャビティC内に収まるように形成されている。
【0038】
より詳しく説明すると、本実施形態のスルーホール30,31のうち、一方のスルーホール30は、マウントされた圧電振動片4の基部10側に対応した位置に形成されている。また、他方のスルーホール31は、振動腕部8,9の先端側に対応した位置に形成されている。また、これらスルーホール30,31は、ベース基板2の下面から上面に向かって漸次径が縮径した断面テーパ状に形成されている。
なお、本実施形態では、各スルーホール30,31が断面テーパ状に形成されている場合について説明したが、これに限られるものではなく、ベース基板2を真っ直ぐに貫通するスルーホールでもよい。いずれにしても、ベース基板2を貫通していればよい。
【0039】
そして、これら一対のスルーホール30,31には、各スルーホール30,31を埋めるように形成された一対の貫通電極32,33が形成されている。
図3に示すように、これら貫通電極32,33は、焼成によってスルーホール30,31に対して一体的に固定された筒体6、及び芯材部7によって形成されたものである。各貫通電極32,33は、スルーホール30,31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極38,39と引き回し電極36,37とを導通させる役割を担っている。
【0040】
筒体6は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体6は、両端が平坦で、かつベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体6の中心には、芯材部7が筒体6を貫通するように配されている。また、本実施形態ではスルーホール30,31の形状に合わせて、筒体6の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体6は、スルーホール30,31内に埋め込まれた状態で焼成されており、これらスルーホール30,31に対して強固に固着されている。
【0041】
芯材部7は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体6と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。
なお、図3に示すように、貫通電極32,33が完成品として形成された場合には、芯材部7は、ベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成される。しかしながら、製造過程においては、芯材部7の長さは、製造過程の当初のベース基板2の厚さよりも0.02mmだけ短い長さに設定されたものを採用している。そして、この芯材部7は、筒体6の中心孔6cに位置しており、筒体6の焼成によって筒体6に対して強固に固着される。
また、貫通電極32,33は、導電性の芯材部7を通して電気導通性が確保されている。
【0042】
図1〜図4に示すように、ベース基板2の上面側(リッド基板3が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。一対の引き回し電極36,37は、一対の貫通電極32,33のうち、一方の貫通電極32と圧電振動片4の一方のマウント電極15とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極33と圧電振動片4の他方のマウント電極16とを電気的に接続するようにパターニングされている。より詳しく説明すると、一方の引き回し電極36は、圧電振動片4の基部10の真下に位置するように一方の貫通電極32の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部8,9に沿ってこれら振動腕部8,9の先端側に引き回された後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
【0043】
そして、これら一対の引き回し電極36,37上にそれぞれバンプBが形成され、このバンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、一方の貫通電極32に、圧電振動片4の一方のマウント電極15が一方の引き回し電極36を介して導通される。また、他方の貫通電極33に、他方のマウント電極16が他方の引き回し電極37を介して導通される。
【0044】
図1,図3,図4に示すように、ベース基板2の下面には、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極38,39が形成されている。つまり、一方の外部電極38は、一方の貫通電極32、及び一方の引き回し電極36を介して圧電振動片4の第1の励振電極12に電気的に接続されている。
また、他方の外部電極39は、他方の貫通電極33、及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極13に電気的に接続されている。
【0045】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極12、及び第2の励振電極13からなる励振電極14に電流を流すことができ、一対の振動腕部8,9を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部8,9の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0046】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子1の製造方法について説明する。図10は圧電振動子の製造方法を示すフローチャート、図11は圧電振動片作製工程を示すフローチャート、図12はウエハ接合体の分解斜視図である。
図10,図12に示すように、この圧電振動子1の製造方法においては、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に、複数の圧電振動片4を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図12に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
【0047】
本実施形態における圧電振動子1の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)と、を有している。これらのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)、及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0048】
(圧電振動片作製工程)
図13はウエハの断面図である。
まず、図10,図11に示すように、圧電振動片作製工程(S10)を行って圧電振動片4(図5、図6参照)を作製する。具体的には、図13に示すように、水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハSとする。続いて、ウエハSをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面加工を行なって、所定の厚みとする(S110)。
【0049】
次に、図11,図13に示すように、研磨後のウエハSに圧電板11の外形形状を複数形成する外形形成工程(S120)を行う。具体的には、ウエハSの両面に、例えばクロム(Cr)や金(Au)等が積層されてなるエッチング保護膜41を、例えばスパッタリング等により形成する。その後、エッチング保護膜41上に図示しないフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜をフォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、圧電板11の外形形状に倣ってフォトレジスト膜をパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜41を選択的に除去する。そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜を除去する。
次いで、パターニングされたエッチング保護膜41をマスクとして、ウエハSの両面をそれぞれエッチング加工する。これにより、エッチング保護膜41でマスクされていない領域を選択的に除去して、ウエハS上に複数の圧電板11の外形形状を形作ることができる。
【0050】
図14は外形形成工程後のウエハの平面図である。
なお、図14に示すように、外形形成工程(S120)で形成された圧電板11は、後の切断工程(S180)を行うまで、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態となっている。具体的に、外形形成工程(S120)後のウエハSは、ウエハSの外周部分を構成する額縁部S1と、額縁部S1の内側に位置して複数の圧電板11が形成された圧電板形成領域S2と、で構成されている。圧電板形成領域S2において、圧電板11は、図示しない連結部を介して額縁部S1に連結されている。すなわち、圧電板形成領域S2では、圧電板11及び圧電板11と額縁部S1とを連結する図示しない連結部を除いた部分が、エッチング加工により除去されている。
【0051】
次に、各圧電板11における一対の振動腕部8,9の両主面上に溝部17を形成する溝部形成工程を行う(S130)。具体的には、上述したエッチング保護膜41からなるマスクを溝部17の形成領域が開口するように再度パターニングする。そして、パターニングされたエッチング保護膜41をマスクとしてエッチング加工を行う。これにより、エッチング保護膜41でマスクされていない領域が選択的に除去されることで、一対の振動腕部8,9の両主面上に溝部17をそれぞれ形成できる。その後、マスクとしていたエッチング保護膜41を除去する。なお、図14では、図面を見易くするために、溝部17の記載を省略している。
【0052】
(電極形成工程)
図15,図16は金属積層膜の形成工程を説明するための図であって、図15はウエハの平面図、図16は図9に相当する断面図である。
次いで、複数の圧電板11の外表面上に励振電極12,13、引き出し電極19,20、及びマウント電極15,16をそれぞれ形成する電極形成工程を行う(S140)。具体的には、図15,図16に示すように、圧電板11上に下地金属層18aとなる第1金属膜28a、及び仕上金属層18bとなる第2金属膜28bを、蒸着やスパッタリング等により順次成膜し、金属積層膜28を形成する(金属積層膜形成工程:S141)。
【0053】
図17はフォトレジスト膜形成工程を説明するための図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
次に、図17に示すように、フォトレジスト膜形成装置71(以下、形成装置71という)を用い、金属積層膜28が形成されたウエハSに対して第1フォトレジスト膜(マスク材)44を形成する(第1フォトレジスト膜形成工程(マスク材形成工程):S142)。以下では、まず形成装置71について説明する。
【0054】
形成装置71は、ウエハSの第1面Sa(図17(b)中下面)側に配置された第1治具72と、第2面Sb(図17(b)中上面)側に配置された第2治具73と、を備えている。これら第1治具72及び第2治具73は、ウエハSの額縁部S1を取り囲むようにウエハSの周方向に沿って交互に配列されている。この場合、ウエハSの厚さ方向から見て、隣接する治具72,73間には、ウエハSの周方向に沿って隙間Kが設けられており、各治具72,73は、ウエハSの厚さ方向から見て、重なり合わないように配置されている。そして、形成装置71は、第1治具72及び第2治具73の内側端部により、ウエハSの額縁部S1を厚さ方向両側から挟持しうるように構成されている。なお、ウエハSの周方向において隣接する治具72,73間の隙間Kは、ウエハSの厚さ以上に設定することが好ましく、本実施形態では3mm程度に設定されている。
【0055】
また、形成装置71は、治具72,73に固定されたウエハSに向けてフォトレジスト材を噴霧する図示しない噴霧器を備えている。この噴霧器は、図示しない駆動装置によってウエハSの面方向に沿って移動可能に構成されている。なお、噴霧器は市販のスプレー等を用いても構わない。
【0056】
このように構成された形成装置71を用いて第1フォトレジスト膜形成工程(S142)を行うには、まず形成装置71にウエハSをセットする。具体的には、第1治具72及び第2治具73により、ウエハSの額縁部S1を厚さ方向両側から挟み込む。
【0057】
次に、ウエハSの第2面Sb側からスプレーコート法によりフォトレジスト材を塗布する。具体的には、図示しない噴霧器を移動させながら、ウエハSに対してフォトレジスト材を噴霧していく。これにより、ウエハSの第2面Sb(図17中上面)及び側面の全域に亘ってフォトレジスト材が塗布される。その後、フォトレジスト材を乾燥させることで、ウエハS上に第1フォトレジスト膜44が形成される。続いて、上述した方法と同様の方法によりウエハSの第1面Sa側に第1フォトレジスト膜44を形成する。
【0058】
この際、ウエハSの額縁部S1における各治具72,73とそれぞれ重なる領域は、第1フォトレジスト膜44が形成されない非形成領域Nとなっており、この非形成領域Nからは第2金属膜28bが露出している。本実施形態の形成装置71で第1フォトレジスト膜44を形成した場合には、第1フォトレジスト膜44の非形成領域NがウエハSの厚さ方向から見て重なり合わない位置に配されることになる。
【0059】
次に、ウエハSを形成装置71から取り出した後、フォトリソグラフィ技術により第1フォトレジスト膜44をパターニングする(第1パターニング工程(マスク材パターン形成工程):S143)。具体的には、まず、第1フォトレジスト膜44上に図示しない第1フォトマスクをセットする。第1フォトマスクは、例えば励振電極12,13、引き出し電極19,20、及びマウント電極15,16の形成領域以外の領域に開口部を有している。
【0060】
図18は、第1レジストパターン形成工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
そして、図18に示すように、第1フォトマスクを介して第1フォトレジスト膜44に向けて紫外線を照射した後、現像液に浸漬することで、紫外線が露光されていない領域(第1フォトマスクで覆われた領域)の第1フォトレジスト膜44のみが選択的に除去される。これにより、ウエハS上に形成された金属積層膜28上に、第1レジストパターン54を形成できる。本実施形態では、圧電振動片4の励振電極12,13、引き出し電極19,20、及びマウント電極15,16に相当する領域にフォトレジスト膜44が残存した第1レジストパターン(マスク材パターン)54が形成される。
【0061】
図19は、第1エッチング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
次に、上述した第1レジストパターン54をマスクとして金属積層膜28(第1金属膜28a及び第2金属膜28b)に対してエッチングを行い、上述した各電極12,13,15,16,19,20を形成する第1エッチング工程(電極パターン形成工程:S144)を行う。具体的には、第1レジストパターン54によりマスクされている金属積層膜28を残し、第1レジストパターン54によりマスクされていない金属積層膜28を選択的に除去する。その後、図19に示すように、第1レジストパターン54を除去する。この第1エッチング工程(S144)後に残存した第1金属膜28aが、電極部18を構成する2つの金属層のうちの下地金属層18aとなる。
【0062】
図20は第1エッチング工程後のウエハを示す図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
ところで、図20に示すように、本実施形態では、ウエハSにおける治具72,73が重なる領域は、フォトレジスト膜44が形成されない非形成領域Nとなっているため、第1エッチング工程(S144)において非形成領域Nに形成された金属積層膜28も除去されることになる。しかしながら、本実施形態の形成装置71は、第1治具72及び第2治具73がウエハSの厚さ方向において重ならない位置に配置されているため、ウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nも厚さ方向で重ならないように配置されることになる。この場合、第2面Sb側の非形成領域NからはウエハSを通して、ウエハSの第1面Sa側に形成された第1金属膜28aが、第1面Sa側の非形成領域NからはウエハSを通して、ウエハSの第2面Sb側に形成された第1金属膜28aが見えるようになっている。
【0063】
次に、上述した第1フォトレジスト膜形成工程(S142)と同様の方法により、ウエハS上に第2フォトレジスト膜(不図示)を形成する(第2フォトレジスト膜形成工程(マスク材形成工程):S145)。
【0064】
次に、ウエハSを形成装置71から取り出した後、フォトリソグラフィ技術により第2フォトレジスト膜をパターニングする(第2パターニング工程(マスク材パターン形成工程):S146)。具体的には、まず、第2フォトレジスト膜上に図示しない第2フォトマスクをセットする。第2フォトマスクは、電極部18のうち、積層領域Pの形成領域以外の領域に開口部を有している。そして、画像認識によりウエハSと第2フォトマスクとをアライメントし、第2金属膜28bを残しておきたい領域、つまり圧電板11上における積層領域Pが第2フォトマスクに覆われるようにセットする。この際、本実施形態では、上述したようにウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nが厚さ方向で重ならないように配置されるため、ウエハSの第1面Sa側の非形成領域Nは第2面Sb側から金属積層膜28(第1金属膜28a)に覆われ、第2面Sb側の非形成領域Nは第1面Sa側から金属積層膜28(第1金属膜28a)に覆われている。したがって、ウエハSの額縁部S1において、厚さ方向で透明な透明部分は存在しない。これにより、画像認識によるウエハSと第2フォトマスクとのアライメント時において、ウエハSの外形を正しく判断できるため、ウエハSと第2フォトマスクとを高精度にアライメントできる。
【0065】
図21は、第2パターニング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
図21に示すように、第2フォトマスクのアライメント後、上述した第1パターニング工程(S143)と同様の方法により、第2フォトレジスト膜をパターニングする。これにより、積層領域Pに相当する領域に第2フォトレジスト膜が残存した第2レジストパターン55が形成される。
【0066】
図22は、第2エッチング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
次に、上述した第2レジストパターン55をマスクとして第2金属膜28bに対してエッチングを行い(第2エッチング工程(電極パターン形成工程):S147)、その後、第2レジストパターン55を除去する。これにより、第1金属膜28a(下地金属層18a)上に残存した第2金属膜28bが、電極部18を構成する2つの金属層のうちの仕上金属層18bとなる。
以上により、電極形成工程(S140)が終了する。このように、本実施形態では、ウエハS上に積層された金属積層膜28に対して各金属層18a,18bのパターンに応じて複数回の電極膜形成工程(フォトレジスト膜形成工程〜エッチング工程)を行うことで、ウエハS上に互いにパターンが異なる複数層の金属層18a,18bを積層できる。
【0067】
その後、仕上金属層18bが除去された単層領域Rにおいて、下地金属層18a上にSiO2等の無機絶縁材料からなる絶縁膜34を、CVD法等により図示しないメタルマスク等を介して形成する(絶縁膜形成工程:S150)。すると、単層領域Rの下地金属層18aを覆うように絶縁膜34が形成される(図9参照)。
【0068】
次に、一対の振動腕部8,9の先端に周波数調整用の粗調膜21a、及び微調膜21bからなる重り金属膜21を形成する(重り金属膜形成工程:S160)。なお、本実施形態では、励振電極12,13や、引き出し電極19,20、マウント電極15,16からなる電極部18と、重り金属膜21と、をそれぞれ別工程で形成する場合について説明したが、上述した電極部18及び重り金属膜21を同一工程で一括して形成しても構わない。
【0069】
続いて、ウエハSに形成された全ての振動腕部8,9に対して、周波数を粗く調整する粗調工程を行う(S170)。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。具体的には、まず、ウエハSに形成された全ての振動腕部8,9の周波数をまとめて測定し、測定された周波数と予め定められた目標周波数との差に応じて、トリミング量を計算する。その後、トリミング量の計算結果に基づいて、重り金属膜21の粗調膜21aの先端にレーザ光を照射して粗調膜21aを除去(トリミング)する。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、圧電振動片4のマウント後に行う。
【0070】
粗調工程(S170)が終了した後、最後にウエハSと圧電板11とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電板11をウエハSから切り離して個片化する切断工程を行う(S180)。これにより、1枚のウエハSから、音叉型の圧電振動片4を一度に複数製造することができる。
この時点で、圧電振動片4の製造工程が終了し、図5に示す圧電振動片4を得ることができる。
【0071】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図8、図10に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。
具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。
【0072】
次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
続いて、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の裏面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。
【0073】
次に、リッド基板用ウエハ50の裏面50a全体(ベース基板用ウエハ40との接合面及び凹部3aの内面)に接合材35を形成する接合材形成工程(S24)を行う。このように、接合材35をリッド基板用ウエハ50の裏面50a全体に形成することで、接合材35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合材35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。また、接合材形成工程(S24)の前に接合面を研磨しているので、接合材35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0074】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時、または前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。
まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
【0075】
次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極32,33を配置するためのスルーホール30,31を複数形成するスルーホール形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の裏面40bから凹部を形成した後、少なくともベース基板用ウエハ40の表面40a側から研磨することで、凹部を貫通させ、スルーホール30,31を形成することができる。
【0076】
続いて、スルーホール形成工程(S32)で形成されたスルーホール30,31内に貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。
これにより、スルーホール30,31内において、芯材部7がベース基板用ウエハ40の両面40a,40bに対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極32,33を形成することができる。
【0077】
次に、ベース基板用ウエハ40の表面40aに導電性膜からなる引き回し電極36,37を形成する引き回し電極形成工程を行う(S34)。このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0078】
(組立工程)
続いて、ベース基板用ウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極36,37上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片4を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(マウント工程:S40)。
そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40、及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(重ね合わせ工程:S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0079】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハ40,50の外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材35とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材35とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。
【0080】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の裏面40bに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極38,39を利用してキャビティC内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
【0081】
続いて、パッケージ5内に封止された個々の圧電振動片4の周波数を微調整して目標周波数の範囲内に収める微調工程を不図示のトリミング装置を用いて行う(S80)。具体的には、外部電極38,39に電圧を印加して圧電振動片4を振動させる。そして、周波数を計測しながらリッド基板用ウエハ50を通して外部からレーザ光を照射し、重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部8,9の先端側の重量が変化するため、圧電振動片4の周波数を、公称周波数の所定範囲内に収まるように微調整することができる。
【0082】
微調工程(S80)が終了した後、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断して個片化する個片化工程を行う(S90)。
【0083】
続いて、個片化された圧電振動子1の内部の電気特性検査を行う(S100)。
電気特性検査(S100)では、圧電振動片4の周波数、抵抗値、ドライブレベル特性(周波数、及び抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性や圧電振動子1を落下させて行う衝撃特性等を併せてチェックする。そして、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0084】
このように、本実施形態では、第1フォトレジスト膜形成工程(S142)において、ウエハSの厚さ方向から見て重なり合わない位置に配置された第1治具72、及び第2治具73を用いてウエハSを挟持して行う構成とした。
この構成によれば、上述したように第1フォトレジスト膜形成工程(S142)において、ウエハSの厚さ方向から見て重なり合わない位置で第1治具72及び第2治具73によりウエハSを挟持することで、ウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nも厚さ方向で重ならないように配置されることになる。この場合、ウエハSの第1面Sa側の非形成領域Nは第2面Sb側の金属積層膜28に覆われ、第2面Sb側の非形成領域Nは第1面Sa側の金属積層膜28に覆われる。したがって、ウエハSが透明な圧電材料からなる場合であっても、額縁部S1において厚さ方向で透明な透明部分は存在しないことになる。
これにより、後の第2パターニング工程(S146)において、画像認識によりウエハSの外形を正しく認識できるため、ウエハS上に第2レジストパターン55を高精度に形成できる。その結果、電極部18を高精度に形成できるため、圧電振動片4としての安定した作動の信頼性を確保することができる。
【0085】
また、第1治具72及び第2治具73を、ウエハSの周方向に沿って交互に配置することで、ウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nを、ウエハSの厚さ方向で確実に重ならないように配置することができる。しかも、ウエハSを厚さ方向両側から均等に押さえることができるので、ウエハSの割れ等の発生を抑制できる。
【0086】
さらに、第1治具72及び第2治具73を、ウエハSの厚さ方向から見てウエハSの周方向で隙間Kを空けて配置することで、ウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nを、ウエハSの厚さ方向で確実に重ならないように配置することができる。しかも、第1治具72及び第2治具73によりウエハSを挟持する際に、ウエハSに作用するせん断応力を抑制できるので、ウエハSの割れ等の発生を抑制できる。
【0087】
そして、本実施形態の圧電振動子1によれば、安定した作動を得られ、信頼性の高い圧電振動片4がパッケージ5に気密封止されているため、特性及び信頼性に優れた高品質な圧電振動子1を提供することができる。
【0088】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図23を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図23に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片4が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0089】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0090】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器100を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0091】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図24を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0092】
(携帯情報機器)
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図24に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0093】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0094】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0095】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0096】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0097】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0098】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0099】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、特性及び信頼性に優れた高品質な携帯情報機器110を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0100】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図25を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図25に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0101】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0102】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0103】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0104】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、特性及び信頼性に優れた高品質な電波時計130を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0105】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、第1治具72及び第2治具をウエハSの全周に亘って配置する構成としたが、第1治具72及び第2治具73が重ならないように配置されていればこれに限られない。
また、上述した実施形態では、音叉型の圧電振動片を例に挙げて本発明を説明したが、これに限らず、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)等に、本発明を適用しても構わない。
【0106】
さらに、上述した実施形態では、表面実装型の圧電振動子1を例にして説明したが、これに限らずシリンダーパッケージタイプの圧電振動子に適用することもできる。
さらに、電極部18も、圧電板11の外表面上に積層されるとともに互いにパターンが異なる複数層の電極膜からなるものであれば、上述した実施形態に示すものに限られない。例えば、3層以上の電極膜が積層されていても良い。
【符号の説明】
【0107】
1…圧電振動子 4…圧電振動片 5…パッケージ 11…圧電板 18…電極部 18a…下地金属層(電極膜) 18b…仕上金属層(電極膜) 28…金属積層膜(金属層) 28a…第1金属層(金属膜) 28b…第2金属層(金属層) 44…第1フォトレジスト膜(マスク材) 54…第1レジストパターン(マスク材パターン) 55…第2レジストパターン(マスク材パターン) 72…第1治具 73…第2治具 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片の製造方法、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として、水晶等の透明の圧電材料を利用した圧電振動片を有する圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動片としては、圧電材料からなる圧電板と、電圧が印加されたときに圧電板を振動させる電極部と、を備えた構成が知られている。上述した電極部は、圧電板の外表面上に積層されるとともに互いにパターンが異なる複数層の電極膜により構成されている。
【0003】
ところで、このような圧電振動片は、ウエハを利用して一度に複数製造するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。具体的には、まずウエハを複数の圧電板が連結部を介して連結された状態に形成し、各圧電板に対して一括で電極部を形成していく。その後、ウエハと圧電板とを連結する連結部を切断することで、複数の圧電振動片が形成される。
【0004】
ここで、図26〜図28に基づいて、従来の電極部の形成方法について説明する。
図26に示すように、電極部の各電極膜を形成する際には、まず圧電板210が形成されたウエハ201上に下地金属層となる第1金属膜202、及び仕上金属層となる第2金属膜203をスパッタリング等により順次成膜する。次に、第1治具204及び第2治具205を用いてウエハ201を厚さ方向両側から挟み込み、ウエハ201(第2金属膜203)上にフォトレジスト材を塗布して第1フォトレジスト膜206を形成する。その後、フォトリソグラフィ技術により第1フォトレジスト膜206をパターニングして、下地金属層の形成領域に第1フォトレジスト膜206が残存するように第1レジストパターンを形成する。次に、第1治具204及び第2治具205からウエハ201を取り外し、図27に示すように、第1レジストパターンを介して各金属膜202,203をまとめてエッチングした後、第1レジストパターンを除去する。
【0005】
次に、ウエハ201上に再度フォトレジスト膜(第2フォトレジスト膜)を形成し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングする。このとき、仕上金属層の形成領域に第2フォトレジスト膜が残存するように第2レジストパターンを形成する。次に、第2レジストパターンを介して第2金属膜203をエッチングした後、第2レジストパターンを除去する。以上により、ウエハ201の各圧電板210上に下地金属層及び仕上金属層が積層されてなる電極部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−77647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した電極部の形成方法にあっては、第1フォトレジスト膜206を形成する際に、第1治具204及び第2治具205によりウエハ201を厚さ方向両側から挟み込んでいるため、ウエハ201における第1治具204及び第2治具205とそれぞれ重なる領域は、フォトレジスト膜206が形成されない非形成領域N’となっている。この場合、非形成領域N’では、金属膜202,203が露出しているため、後のエッチング時に非形成領域N’における金属膜202,203が除去されることになる。その結果、非形成領域N’はウエハSの両面が露出した透明部分となる。
【0008】
この場合には、その後の第2レジストパターンの形成時において、ウエハ201とフォトマスクとを画像認識によりアライメントする際、透明部分(非形成領域N’)が認識されないという問題がある。具体的には、図28に示すように、画像認識時において、非形成領域Nが欠けた状態で認識される結果、ウエハ201の外形が上手く認識されず、エラーとなって停止したり、ウエハ201とフォトマスクとのアライメント精度が低下したりする。その結果、電極部の位置精度が低下するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、圧電板の外形を正しく認識して、電極部を高精度に形成できる圧電振動片の製造方法、圧電振動片、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る圧電振動片の製造方法は、圧電材料からなる圧電板と、電圧が印加されたときに前記圧電板を振動させる電極部と、を備え、前記電極部は、前記圧電板上に積層されるとともに互いにパターンが異なる複数層の電極膜からなる圧電振動片を形成する圧電振動片の製造方法であって、前記圧電板上に積層された導電性を有する複数層の金属膜をパターニングすることで、前記複数層の電極膜をそれぞれ形成する複数の電極膜形成工程を有し、前記電極膜形成工程は、前記複数層の金属膜上にマスク材材料を塗布し、前記金属膜上にマスク材を形成するマスク材形成工程と、前記マスク材をパターニングしてマスク材パターンを形成するマスク材パターン形成工程と、前記マスク材パターンの形成領域以外の領域の前記金属膜を除去して、前記電極膜を形成する電極パターン形成工程と、を有し、前記マスク材形成工程は、前記圧電板における厚さ方向の一方側に配置された第1治具、及び他方側に配置された第2治具により、前記圧電板を厚さ方向の両側から挟持して行い、前記第1治具及び前記第2治具は、前記圧電板の厚さ方向から見て重なり合わない位置に配置されていることを特徴としている。
【0011】
上述したように圧電板における第1治具及び第2治具が重なる領域は、マスク材形成工程においてマスク材が形成されない非形成領域となっているため、その後の電極パターン形成工程において非形成領域に形成された金属膜も除去されることになる。
ここで、本発明の構成によれば、マスク材形成工程において、圧電板の厚さ方向から見て重なり合わない位置で第1治具及び第2治具により圧電板を挟持することで、圧電板の両面における非形成領域も厚さ方向で重ならないように配置されることになる。この場合、圧電板の一方の面側の非形成領域は他方の面側の金属膜に覆われ、他方の面側の非形成領域は一方の面側の金属膜に覆われる。したがって、圧電板が透明な圧電材料からなる場合であっても、圧電板の外周部分において厚さ方向で透明な透明部分は存在しないことになる。
これにより、後の電極膜形成工程において、画像認識により圧電板の外形を正しく認識できるため、圧電板上にマスク材パターンを高精度に形成できる。その結果、マスク材パターンを介して形成される電極部(電極膜)を高精度に形成できるため、圧電振動片としての安定した作動の信頼性を確保することができる。
【0012】
また、前記マスク材形成工程では、前記第1治具及び前記第2治具を、前記圧電板の周方向に沿って交互に配置することを特徴としている。
この構成によれば、圧電板の両面における非形成領域を、圧電板の厚さ方向で確実に重ならないように配置することができる。
しかも、圧電板を厚さ方向両側から均等に押さえることができるので、圧電板の割れ等の発生を抑制できる。
【0013】
また、前記マスク材形成工程では、前記第1治具及び前記第2治具を、前記圧電板の厚さ方向から見て前記圧電板の周方向で間隔を空けて配置することを特徴としている。
この構成によれば、圧電板の両面における非形成領域を、圧電板の厚さ方向で確実に重ならないように配置することができる。
しかも、第1治具及び第2治具により圧電板を挟持する際に、圧電板に作用するせん断応力を抑制できるので、圧電板の割れ等の発生を抑制できる。
【0014】
また、本発明に係る圧電振動片は、上記本発明の圧電振動片の製造方法を用いて製造されたことを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の圧電振動片の製造方法を用いて製造されているため、安定した作動を得られ、信頼性の高い圧電振動片を提供できる。
【0015】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片がパッケージに気密封止されてなることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の圧電振動片がパッケージに気密封止されているため、特性及び信頼性に優れた高品質な圧電振動子を提供することができる。
【0016】
また、本発明の発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器、電子機器及び電波時計を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の圧電振動片の製造方法、及び圧電振動片によれば、圧電板の外形を正しく認識して、電極部(電極膜)を高精度に形成できるため、圧電振動片としての安定した作動の信頼性を確保することができる。
本発明の圧電振動子によれば、特性及び信頼性に優れた高品質な圧電振動子を提供できる。
本発明の発振器、電子機器及び電波時計においては、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器、電子機器及び電波時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る圧電振動子を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動片の平面図である。
【図6】圧電振動片の底面図である。
【図7】圧電振動片の斜視図である。
【図8】図5のB−B線における断面図である。
【図9】図5のC−C線に沿う断面図である。
【図10】圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図11】圧電振動片の製造方法を示すフローチャートである。
【図12】ウエハ接合体の分解斜視図である。
【図13】ウエハの断面図である。
【図14】外形形成工程後のウエハの平面図である。
【図15】金属積層膜の形成工程を説明するための図であって、ウエハの平面図である。
【図16】金属積層膜の形成工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図17】フォトレジスト膜形成工程を説明するための図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
【図18】第1レジストパターン形成工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図19】第1エッチング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図20】第1エッチング工程後のウエハを示す図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
【図21】第2パターニング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図22】第2エッチング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
【図23】本発明の実施形態における発振器の概略構成図である。
【図24】本発明の実施形態における携帯情報機器の概略構成図である。
【図25】本発明の実施形態における電波時計の概略構成図である。
【図26】従来の電極部の形成方法を説明するための図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は断面図である。
【図27】従来の電極部の形成方法を説明するための図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は断面図である。
【図28】従来の電極部の形成方法を説明するための図であって、ウエハの画像認識結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
(圧電振動子)
図1は、本実施形態における圧電振動子をリッド基板側から見た外観斜視図である。また図2は圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態で圧電振動片を上方から見た図ある。また、図3は図2に示すA−A線に沿った圧電振動子の断面図であり、図4は圧電振動子の分解斜視図である。
図1〜図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2とリッド基板3とが接合材35を介して陽極接合された箱状のパッケージ5を有し、このパッケージ5の内部のキャビティC内に圧電振動片4が封止された表面実装型の圧電振動子である。なお、図4においては、図面を見易くするために後述する励振電極14、引き出し電極19,20、マウント電極15,16、及び重り金属膜21の図示を省略している。
【0023】
図5は圧電振動子を構成する圧電振動片の平面図、図6は圧電振動片の底面図である。
図5,図6に示すように、圧電振動片4は、所定の電圧が印加されたときに振動するものであって、水晶等の透明の圧電材料から形成された音叉型の圧電板11を備えている。
【0024】
この圧電板11は、平行に配置された一対の振動腕部8,9と、これら一対の振動腕部8,9の基端側を一体的に固定する基部10と、を有している。また、圧電板11の外表面上には、一対の振動腕部8,9を振動させる第1の励振電極12、及び第2の励振電極13からなる励振電極14と、第1の励振電極12、及び第2の励振電極13に電気的に接続されたマウント電極15,16と、が設けられている。
【0025】
また、本実施形態の圧電振動片4は、一対の振動腕部8,9の両主面上に、振動腕部8,9の基端部から先端部に向かって一定長さL形成された溝部17を備えている。
【0026】
図7は、圧電振動片の斜視図である。
溝部17は、図7に示すように、振動腕部8,9の基端部から略中間付近まで形成されている。なお、一対の振動腕部8,9の腕幅は共通であり、それぞれWとする。また、基部10において一対の振動腕部8,9の基端部と連結されている部分を股部10aとする。
【0027】
図8は、図5のB−B線に沿う断面図である。
図5,図6,図8に示すように、第1の励振電極12と第2の励振電極13とからなる励振電極14は、一対の振動腕部8,9を互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、一対の振動腕部8,9の外表面に、それぞれ電気的に切り離された状態でパターニングされて形成されている。具体的には、第1の励振電極12が、一方の振動腕部8の溝部17上と、他方の振動腕部9の両側面上とに主に形成され、第2の励振電極13が、一方の振動腕部8の両側面上と他方の振動腕部9の溝部17上とに主に形成されている。
【0028】
また、図5,図6に示すように、第1の励振電極12及び第2の励振電極13は、基部10の両主面上において連続的に形成されており、それぞれ引き出し電極19,20を介してマウント電極15,16に電気的に接続されている。このマウント電極15,16は、圧電板11の基端側に形成されている。すなわち、励振電極14、マウント電極15,16及び引き出し電極19,20は、所定の電圧が印加されたときに一対の振動腕部8,9を振動させる電極部18として機能している。
【0029】
図9は、図5のC−C線に沿う断面図である。
図9に示すように、電極部18は、クロム(Cr)等からなる下地金属層18aと、金(Au)等からなる仕上金属層18bと、が圧電板11の外表面上に順次積層されて構成されている。これらの金属層18a,18bのパターンは、互いに異なっている。
下地金属層18aは、仕上金属層18bと圧電振動片4との密着性を向上させるためのものである。
【0030】
また、仕上金属層18bは、図7,図9に示すように、少なくとも振動腕部8,9の基端部から先端部に至る領域で、仕上金属層18bの一部或いは全部が除去されている。より詳しくは、振動腕部8,9の基端部より先端部側では、基端部から一定長さL以上離間した位置まで(図7に示す領域RA)、仕上金属層18bの全部が除去されている。さらに、振動腕部8,9の基端部より基部10側には、基端部から基部10に向かって振動腕部8,9の腕幅Wの2倍離間した位置に至るまで(図7に示す領域RB)、仕上金属層18bの全部が除去されている。
【0031】
すなわち、電極部18は、振動腕部8,9の溝部17が形成されている領域を含む領域RA及び領域RBで、溝部17内を含めて全面的に下地金属層18aにより形成されている。そして、領域RA及び領域RBには、下地金属層18aを覆うように酸化珪素(SiO2)等からなる絶縁膜34が被覆されている。これにより、振動腕部8,9の励振電極12,13間に導電性粒子が付着した場合でも、電極間の短絡を防止することができる。
【0032】
ここで本実施形態では、領域RA及び領域RBを合わせた領域である単層領域Rは、励振電極12,13の形成領域となっており、この単層領域Rでは、仕上金属層18bを除去した状態で下地金属層18a上に絶縁膜34を形成することで、絶縁膜34の密着性を向上させて励振電極12,13の短絡が確実に防がれている。
一方、圧電板11における単層領域Rよりも基端側に形成された引き出し電極19,20及びマウント電極15,16は、上述したように下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層された状態となっている。以下では、これら下地金属層18a及び仕上金属層18bが積層されている領域を積層領域Pとする。
【0033】
また、図5,図6に示すように、一対の振動腕部8,9の先端には、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための重り金属膜21が被膜されている。この重り金属膜21は、周波数を粗く調整する際に使用される粗調膜21aと、微小に調整する際に使用される微調膜21bと、に分かれている。これら粗調膜21a及び微調膜21bを利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部8、9の周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができる。
【0034】
このように構成された圧電振動片4は、図3,図4に示すように、金等のバンプBを利用して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。より具体的には、ベース基板2の上面にパターニングされた後述する引き回し電極36,37上に形成された2つのバンプB上に、一対のマウント電極15,16がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。
これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面から浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極15,16と引き回し電極36,37とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0035】
図1,図3,図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であって、板状に形成されている。ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部3aが形成されている。この凹部3aは、両基板2,3が重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティCとなるキャビティ用の凹部である。
【0036】
リッド基板3の下面全体には、陽極接合用の接合材35が形成されている。具体的に、接合材35は、ベース基板2との接合面及び凹部3aの内面全体に亘って形成されている。本実施形態の接合材35はSi膜で形成されているが、接合材35をAlで形成することも可能である。なお接合材として、ドーピング等により低抵抗化したSiバルク材を採用することも可能である。そして、凹部3aをベース基板2側に対向させた状態で、接合材35とベース基板2とが陽極接合されることで、キャビティCが気密封止されている。
【0037】
図1〜図4に示すように、ベース基板2は、リッド基板3と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であって、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで板状に形成されている。このベース基板2には、ベース基板2を貫通する一対のスルーホール30,31が形成されている。この際、一対のスルーホール30,31は、キャビティC内に収まるように形成されている。
【0038】
より詳しく説明すると、本実施形態のスルーホール30,31のうち、一方のスルーホール30は、マウントされた圧電振動片4の基部10側に対応した位置に形成されている。また、他方のスルーホール31は、振動腕部8,9の先端側に対応した位置に形成されている。また、これらスルーホール30,31は、ベース基板2の下面から上面に向かって漸次径が縮径した断面テーパ状に形成されている。
なお、本実施形態では、各スルーホール30,31が断面テーパ状に形成されている場合について説明したが、これに限られるものではなく、ベース基板2を真っ直ぐに貫通するスルーホールでもよい。いずれにしても、ベース基板2を貫通していればよい。
【0039】
そして、これら一対のスルーホール30,31には、各スルーホール30,31を埋めるように形成された一対の貫通電極32,33が形成されている。
図3に示すように、これら貫通電極32,33は、焼成によってスルーホール30,31に対して一体的に固定された筒体6、及び芯材部7によって形成されたものである。各貫通電極32,33は、スルーホール30,31を完全に塞いでキャビティC内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極38,39と引き回し電極36,37とを導通させる役割を担っている。
【0040】
筒体6は、ペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。筒体6は、両端が平坦で、かつベース基板2と略同じ厚みの円筒状に形成されている。そして、筒体6の中心には、芯材部7が筒体6を貫通するように配されている。また、本実施形態ではスルーホール30,31の形状に合わせて、筒体6の外形が円錐状(断面テーパ状)となるように形成されている。そして、この筒体6は、スルーホール30,31内に埋め込まれた状態で焼成されており、これらスルーホール30,31に対して強固に固着されている。
【0041】
芯材部7は、金属材料により円柱状に形成された導電性の芯材であり、筒体6と同様に両端が平坦で、かつベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成されている。
なお、図3に示すように、貫通電極32,33が完成品として形成された場合には、芯材部7は、ベース基板2の厚みと略同じ厚さとなるように形成される。しかしながら、製造過程においては、芯材部7の長さは、製造過程の当初のベース基板2の厚さよりも0.02mmだけ短い長さに設定されたものを採用している。そして、この芯材部7は、筒体6の中心孔6cに位置しており、筒体6の焼成によって筒体6に対して強固に固着される。
また、貫通電極32,33は、導電性の芯材部7を通して電気導通性が確保されている。
【0042】
図1〜図4に示すように、ベース基板2の上面側(リッド基板3が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム)により、一対の引き回し電極36,37がパターニングされている。一対の引き回し電極36,37は、一対の貫通電極32,33のうち、一方の貫通電極32と圧電振動片4の一方のマウント電極15とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極33と圧電振動片4の他方のマウント電極16とを電気的に接続するようにパターニングされている。より詳しく説明すると、一方の引き回し電極36は、圧電振動片4の基部10の真下に位置するように一方の貫通電極32の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極37は、一方の引き回し電極36に隣接した位置から、振動腕部8,9に沿ってこれら振動腕部8,9の先端側に引き回された後、他方の貫通電極33の真上に位置するように形成されている。
【0043】
そして、これら一対の引き回し電極36,37上にそれぞれバンプBが形成され、このバンプBを利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、一方の貫通電極32に、圧電振動片4の一方のマウント電極15が一方の引き回し電極36を介して導通される。また、他方の貫通電極33に、他方のマウント電極16が他方の引き回し電極37を介して導通される。
【0044】
図1,図3,図4に示すように、ベース基板2の下面には、一対の貫通電極32,33に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極38,39が形成されている。つまり、一方の外部電極38は、一方の貫通電極32、及び一方の引き回し電極36を介して圧電振動片4の第1の励振電極12に電気的に接続されている。
また、他方の外部電極39は、他方の貫通電極33、及び他方の引き回し電極37を介して、圧電振動片4の第2の励振電極13に電気的に接続されている。
【0045】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極38,39に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極12、及び第2の励振電極13からなる励振電極14に電流を流すことができ、一対の振動腕部8,9を接近・離間させる方向に所定の周波数で振動させることができる。そして、この一対の振動腕部8,9の振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0046】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子1の製造方法について説明する。図10は圧電振動子の製造方法を示すフローチャート、図11は圧電振動片作製工程を示すフローチャート、図12はウエハ接合体の分解斜視図である。
図10,図12に示すように、この圧電振動子1の製造方法においては、複数のベース基板2が連なるベース基板用ウエハ40と、複数のリッド基板3が連なるリッド基板用ウエハ50との間に、複数の圧電振動片4を封入してウエハ接合体60を形成し、ウエハ接合体60を切断することにより複数の圧電振動子1を同時に製造する方法について説明する。なお、図12に示す破線Mは、切断工程で切断する切断線を図示したものである。
【0047】
本実施形態における圧電振動子1の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程(S10)と、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)と、ベース基板用ウエハ作製工程(S30)と、組立工程(S40以下)と、を有している。これらのうち、圧電振動片作製工程(S10)、リッド基板用ウエハ作製工程(S20)、及びベース基板用ウエハ作製工程(S30)は、並行して実施することが可能である。
【0048】
(圧電振動片作製工程)
図13はウエハの断面図である。
まず、図10,図11に示すように、圧電振動片作製工程(S10)を行って圧電振動片4(図5、図6参照)を作製する。具体的には、図13に示すように、水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハSとする。続いて、ウエハSをラッピングして粗加工した後、加工変質層をエッチングで取り除き、その後ポリッシュ等の鏡面加工を行なって、所定の厚みとする(S110)。
【0049】
次に、図11,図13に示すように、研磨後のウエハSに圧電板11の外形形状を複数形成する外形形成工程(S120)を行う。具体的には、ウエハSの両面に、例えばクロム(Cr)や金(Au)等が積層されてなるエッチング保護膜41を、例えばスパッタリング等により形成する。その後、エッチング保護膜41上に図示しないフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜をフォトリソグラフィ技術によってパターニングする。この際、圧電板11の外形形状に倣ってフォトレジスト膜をパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてエッチング加工を行い、マスクされていないエッチング保護膜41を選択的に除去する。そして、エッチング加工後にフォトレジスト膜を除去する。
次いで、パターニングされたエッチング保護膜41をマスクとして、ウエハSの両面をそれぞれエッチング加工する。これにより、エッチング保護膜41でマスクされていない領域を選択的に除去して、ウエハS上に複数の圧電板11の外形形状を形作ることができる。
【0050】
図14は外形形成工程後のウエハの平面図である。
なお、図14に示すように、外形形成工程(S120)で形成された圧電板11は、後の切断工程(S180)を行うまで、図示しない連結部を介してウエハSに連結された状態となっている。具体的に、外形形成工程(S120)後のウエハSは、ウエハSの外周部分を構成する額縁部S1と、額縁部S1の内側に位置して複数の圧電板11が形成された圧電板形成領域S2と、で構成されている。圧電板形成領域S2において、圧電板11は、図示しない連結部を介して額縁部S1に連結されている。すなわち、圧電板形成領域S2では、圧電板11及び圧電板11と額縁部S1とを連結する図示しない連結部を除いた部分が、エッチング加工により除去されている。
【0051】
次に、各圧電板11における一対の振動腕部8,9の両主面上に溝部17を形成する溝部形成工程を行う(S130)。具体的には、上述したエッチング保護膜41からなるマスクを溝部17の形成領域が開口するように再度パターニングする。そして、パターニングされたエッチング保護膜41をマスクとしてエッチング加工を行う。これにより、エッチング保護膜41でマスクされていない領域が選択的に除去されることで、一対の振動腕部8,9の両主面上に溝部17をそれぞれ形成できる。その後、マスクとしていたエッチング保護膜41を除去する。なお、図14では、図面を見易くするために、溝部17の記載を省略している。
【0052】
(電極形成工程)
図15,図16は金属積層膜の形成工程を説明するための図であって、図15はウエハの平面図、図16は図9に相当する断面図である。
次いで、複数の圧電板11の外表面上に励振電極12,13、引き出し電極19,20、及びマウント電極15,16をそれぞれ形成する電極形成工程を行う(S140)。具体的には、図15,図16に示すように、圧電板11上に下地金属層18aとなる第1金属膜28a、及び仕上金属層18bとなる第2金属膜28bを、蒸着やスパッタリング等により順次成膜し、金属積層膜28を形成する(金属積層膜形成工程:S141)。
【0053】
図17はフォトレジスト膜形成工程を説明するための図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
次に、図17に示すように、フォトレジスト膜形成装置71(以下、形成装置71という)を用い、金属積層膜28が形成されたウエハSに対して第1フォトレジスト膜(マスク材)44を形成する(第1フォトレジスト膜形成工程(マスク材形成工程):S142)。以下では、まず形成装置71について説明する。
【0054】
形成装置71は、ウエハSの第1面Sa(図17(b)中下面)側に配置された第1治具72と、第2面Sb(図17(b)中上面)側に配置された第2治具73と、を備えている。これら第1治具72及び第2治具73は、ウエハSの額縁部S1を取り囲むようにウエハSの周方向に沿って交互に配列されている。この場合、ウエハSの厚さ方向から見て、隣接する治具72,73間には、ウエハSの周方向に沿って隙間Kが設けられており、各治具72,73は、ウエハSの厚さ方向から見て、重なり合わないように配置されている。そして、形成装置71は、第1治具72及び第2治具73の内側端部により、ウエハSの額縁部S1を厚さ方向両側から挟持しうるように構成されている。なお、ウエハSの周方向において隣接する治具72,73間の隙間Kは、ウエハSの厚さ以上に設定することが好ましく、本実施形態では3mm程度に設定されている。
【0055】
また、形成装置71は、治具72,73に固定されたウエハSに向けてフォトレジスト材を噴霧する図示しない噴霧器を備えている。この噴霧器は、図示しない駆動装置によってウエハSの面方向に沿って移動可能に構成されている。なお、噴霧器は市販のスプレー等を用いても構わない。
【0056】
このように構成された形成装置71を用いて第1フォトレジスト膜形成工程(S142)を行うには、まず形成装置71にウエハSをセットする。具体的には、第1治具72及び第2治具73により、ウエハSの額縁部S1を厚さ方向両側から挟み込む。
【0057】
次に、ウエハSの第2面Sb側からスプレーコート法によりフォトレジスト材を塗布する。具体的には、図示しない噴霧器を移動させながら、ウエハSに対してフォトレジスト材を噴霧していく。これにより、ウエハSの第2面Sb(図17中上面)及び側面の全域に亘ってフォトレジスト材が塗布される。その後、フォトレジスト材を乾燥させることで、ウエハS上に第1フォトレジスト膜44が形成される。続いて、上述した方法と同様の方法によりウエハSの第1面Sa側に第1フォトレジスト膜44を形成する。
【0058】
この際、ウエハSの額縁部S1における各治具72,73とそれぞれ重なる領域は、第1フォトレジスト膜44が形成されない非形成領域Nとなっており、この非形成領域Nからは第2金属膜28bが露出している。本実施形態の形成装置71で第1フォトレジスト膜44を形成した場合には、第1フォトレジスト膜44の非形成領域NがウエハSの厚さ方向から見て重なり合わない位置に配されることになる。
【0059】
次に、ウエハSを形成装置71から取り出した後、フォトリソグラフィ技術により第1フォトレジスト膜44をパターニングする(第1パターニング工程(マスク材パターン形成工程):S143)。具体的には、まず、第1フォトレジスト膜44上に図示しない第1フォトマスクをセットする。第1フォトマスクは、例えば励振電極12,13、引き出し電極19,20、及びマウント電極15,16の形成領域以外の領域に開口部を有している。
【0060】
図18は、第1レジストパターン形成工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
そして、図18に示すように、第1フォトマスクを介して第1フォトレジスト膜44に向けて紫外線を照射した後、現像液に浸漬することで、紫外線が露光されていない領域(第1フォトマスクで覆われた領域)の第1フォトレジスト膜44のみが選択的に除去される。これにより、ウエハS上に形成された金属積層膜28上に、第1レジストパターン54を形成できる。本実施形態では、圧電振動片4の励振電極12,13、引き出し電極19,20、及びマウント電極15,16に相当する領域にフォトレジスト膜44が残存した第1レジストパターン(マスク材パターン)54が形成される。
【0061】
図19は、第1エッチング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
次に、上述した第1レジストパターン54をマスクとして金属積層膜28(第1金属膜28a及び第2金属膜28b)に対してエッチングを行い、上述した各電極12,13,15,16,19,20を形成する第1エッチング工程(電極パターン形成工程:S144)を行う。具体的には、第1レジストパターン54によりマスクされている金属積層膜28を残し、第1レジストパターン54によりマスクされていない金属積層膜28を選択的に除去する。その後、図19に示すように、第1レジストパターン54を除去する。この第1エッチング工程(S144)後に残存した第1金属膜28aが、電極部18を構成する2つの金属層のうちの下地金属層18aとなる。
【0062】
図20は第1エッチング工程後のウエハを示す図であって、(a)はウエハの平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
ところで、図20に示すように、本実施形態では、ウエハSにおける治具72,73が重なる領域は、フォトレジスト膜44が形成されない非形成領域Nとなっているため、第1エッチング工程(S144)において非形成領域Nに形成された金属積層膜28も除去されることになる。しかしながら、本実施形態の形成装置71は、第1治具72及び第2治具73がウエハSの厚さ方向において重ならない位置に配置されているため、ウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nも厚さ方向で重ならないように配置されることになる。この場合、第2面Sb側の非形成領域NからはウエハSを通して、ウエハSの第1面Sa側に形成された第1金属膜28aが、第1面Sa側の非形成領域NからはウエハSを通して、ウエハSの第2面Sb側に形成された第1金属膜28aが見えるようになっている。
【0063】
次に、上述した第1フォトレジスト膜形成工程(S142)と同様の方法により、ウエハS上に第2フォトレジスト膜(不図示)を形成する(第2フォトレジスト膜形成工程(マスク材形成工程):S145)。
【0064】
次に、ウエハSを形成装置71から取り出した後、フォトリソグラフィ技術により第2フォトレジスト膜をパターニングする(第2パターニング工程(マスク材パターン形成工程):S146)。具体的には、まず、第2フォトレジスト膜上に図示しない第2フォトマスクをセットする。第2フォトマスクは、電極部18のうち、積層領域Pの形成領域以外の領域に開口部を有している。そして、画像認識によりウエハSと第2フォトマスクとをアライメントし、第2金属膜28bを残しておきたい領域、つまり圧電板11上における積層領域Pが第2フォトマスクに覆われるようにセットする。この際、本実施形態では、上述したようにウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nが厚さ方向で重ならないように配置されるため、ウエハSの第1面Sa側の非形成領域Nは第2面Sb側から金属積層膜28(第1金属膜28a)に覆われ、第2面Sb側の非形成領域Nは第1面Sa側から金属積層膜28(第1金属膜28a)に覆われている。したがって、ウエハSの額縁部S1において、厚さ方向で透明な透明部分は存在しない。これにより、画像認識によるウエハSと第2フォトマスクとのアライメント時において、ウエハSの外形を正しく判断できるため、ウエハSと第2フォトマスクとを高精度にアライメントできる。
【0065】
図21は、第2パターニング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
図21に示すように、第2フォトマスクのアライメント後、上述した第1パターニング工程(S143)と同様の方法により、第2フォトレジスト膜をパターニングする。これにより、積層領域Pに相当する領域に第2フォトレジスト膜が残存した第2レジストパターン55が形成される。
【0066】
図22は、第2エッチング工程を説明するための図であって、図9に相当する断面図である。
次に、上述した第2レジストパターン55をマスクとして第2金属膜28bに対してエッチングを行い(第2エッチング工程(電極パターン形成工程):S147)、その後、第2レジストパターン55を除去する。これにより、第1金属膜28a(下地金属層18a)上に残存した第2金属膜28bが、電極部18を構成する2つの金属層のうちの仕上金属層18bとなる。
以上により、電極形成工程(S140)が終了する。このように、本実施形態では、ウエハS上に積層された金属積層膜28に対して各金属層18a,18bのパターンに応じて複数回の電極膜形成工程(フォトレジスト膜形成工程〜エッチング工程)を行うことで、ウエハS上に互いにパターンが異なる複数層の金属層18a,18bを積層できる。
【0067】
その後、仕上金属層18bが除去された単層領域Rにおいて、下地金属層18a上にSiO2等の無機絶縁材料からなる絶縁膜34を、CVD法等により図示しないメタルマスク等を介して形成する(絶縁膜形成工程:S150)。すると、単層領域Rの下地金属層18aを覆うように絶縁膜34が形成される(図9参照)。
【0068】
次に、一対の振動腕部8,9の先端に周波数調整用の粗調膜21a、及び微調膜21bからなる重り金属膜21を形成する(重り金属膜形成工程:S160)。なお、本実施形態では、励振電極12,13や、引き出し電極19,20、マウント電極15,16からなる電極部18と、重り金属膜21と、をそれぞれ別工程で形成する場合について説明したが、上述した電極部18及び重り金属膜21を同一工程で一括して形成しても構わない。
【0069】
続いて、ウエハSに形成された全ての振動腕部8,9に対して、周波数を粗く調整する粗調工程を行う(S170)。これは、重り金属膜21の粗調膜21aにレーザ光を照射して一部を蒸発させ、重量を変化させることで行う。具体的には、まず、ウエハSに形成された全ての振動腕部8,9の周波数をまとめて測定し、測定された周波数と予め定められた目標周波数との差に応じて、トリミング量を計算する。その後、トリミング量の計算結果に基づいて、重り金属膜21の粗調膜21aの先端にレーザ光を照射して粗調膜21aを除去(トリミング)する。なお、共振周波数をより高精度に調整する微調に関しては、圧電振動片4のマウント後に行う。
【0070】
粗調工程(S170)が終了した後、最後にウエハSと圧電板11とを連結していた連結部を切断して、複数の圧電板11をウエハSから切り離して個片化する切断工程を行う(S180)。これにより、1枚のウエハSから、音叉型の圧電振動片4を一度に複数製造することができる。
この時点で、圧電振動片4の製造工程が終了し、図5に示す圧電振動片4を得ることができる。
【0071】
(リッド基板用ウエハ作成工程)
次に、図8、図10に示すように、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するリッド基板用ウエハ作製工程を行う(S20)。
具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。
【0072】
次いで、リッド基板用ウエハ50の裏面50a(図6における下面)に、エッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。
続いて、後述するベース基板用ウエハ40との間の気密性を確保するために、ベース基板用ウエハ40との接合面となるリッド基板用ウエハ50の裏面50a側を少なくとも研磨する研磨工程(S23)を行い、裏面50aを鏡面加工する。
【0073】
次に、リッド基板用ウエハ50の裏面50a全体(ベース基板用ウエハ40との接合面及び凹部3aの内面)に接合材35を形成する接合材形成工程(S24)を行う。このように、接合材35をリッド基板用ウエハ50の裏面50a全体に形成することで、接合材35のパターニングが不要になり、製造コストを低減することができる。なお、接合材35の形成は、スパッタやCVD等の成膜方法によって行うことができる。また、接合材形成工程(S24)の前に接合面を研磨しているので、接合材35の表面の平面度が確保され、ベース基板用ウエハ40との安定した接合を実現することができる。
以上により、リッド基板用ウエハ作成工程(S20)が終了する。
【0074】
(ベース基板用ウエハ作成工程)
次に、上述した工程と同時、または前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製するベース基板用ウエハ作製工程を行う(S30)。
まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。
【0075】
次いで、例えばプレス加工等により、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極32,33を配置するためのスルーホール30,31を複数形成するスルーホール形成工程を行う(S32)。具体的には、プレス加工等によりベース基板用ウエハ40の裏面40bから凹部を形成した後、少なくともベース基板用ウエハ40の表面40a側から研磨することで、凹部を貫通させ、スルーホール30,31を形成することができる。
【0076】
続いて、スルーホール形成工程(S32)で形成されたスルーホール30,31内に貫通電極32,33を形成する貫通電極形成工程(S33)を行う。
これにより、スルーホール30,31内において、芯材部7がベース基板用ウエハ40の両面40a,40bに対して面一な状態で保持される。以上により、貫通電極32,33を形成することができる。
【0077】
次に、ベース基板用ウエハ40の表面40aに導電性膜からなる引き回し電極36,37を形成する引き回し電極形成工程を行う(S34)。このようにして、ベース基板用ウエハ製作工程(S30)が終了する。
【0078】
(組立工程)
続いて、ベース基板用ウエハ作成工程(S30)で作成されたベース基板用ウエハ40の各引き回し電極36,37上に、圧電振動片作成工程(S10)で作成された圧電振動片4を、それぞれ金等のバンプBを介してマウントする(マウント工程:S40)。
そして、上述した各ウエハ40,50の作成工程で作成されたベース基板用ウエハ40、及びリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(重ね合わせ工程:S50)。具体的には、図示しない基準マーク等を指標としながら、両ウエハ40,50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0079】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハ40,50の外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合材35とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合材35とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合されたウエハ接合体60を得ることができる。
【0080】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の裏面40bに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極32,33にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極38,39を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極38,39を利用してキャビティC内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
【0081】
続いて、パッケージ5内に封止された個々の圧電振動片4の周波数を微調整して目標周波数の範囲内に収める微調工程を不図示のトリミング装置を用いて行う(S80)。具体的には、外部電極38,39に電圧を印加して圧電振動片4を振動させる。そして、周波数を計測しながらリッド基板用ウエハ50を通して外部からレーザ光を照射し、重り金属膜21の微調膜21bを蒸発させる。これにより、一対の振動腕部8,9の先端側の重量が変化するため、圧電振動片4の周波数を、公称周波数の所定範囲内に収まるように微調整することができる。
【0082】
微調工程(S80)が終了した後、接合されたウエハ接合体60を切断線Mに沿って切断して個片化する個片化工程を行う(S90)。
【0083】
続いて、個片化された圧電振動子1の内部の電気特性検査を行う(S100)。
電気特性検査(S100)では、圧電振動片4の周波数、抵抗値、ドライブレベル特性(周波数、及び抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性や圧電振動子1を落下させて行う衝撃特性等を併せてチェックする。そして、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0084】
このように、本実施形態では、第1フォトレジスト膜形成工程(S142)において、ウエハSの厚さ方向から見て重なり合わない位置に配置された第1治具72、及び第2治具73を用いてウエハSを挟持して行う構成とした。
この構成によれば、上述したように第1フォトレジスト膜形成工程(S142)において、ウエハSの厚さ方向から見て重なり合わない位置で第1治具72及び第2治具73によりウエハSを挟持することで、ウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nも厚さ方向で重ならないように配置されることになる。この場合、ウエハSの第1面Sa側の非形成領域Nは第2面Sb側の金属積層膜28に覆われ、第2面Sb側の非形成領域Nは第1面Sa側の金属積層膜28に覆われる。したがって、ウエハSが透明な圧電材料からなる場合であっても、額縁部S1において厚さ方向で透明な透明部分は存在しないことになる。
これにより、後の第2パターニング工程(S146)において、画像認識によりウエハSの外形を正しく認識できるため、ウエハS上に第2レジストパターン55を高精度に形成できる。その結果、電極部18を高精度に形成できるため、圧電振動片4としての安定した作動の信頼性を確保することができる。
【0085】
また、第1治具72及び第2治具73を、ウエハSの周方向に沿って交互に配置することで、ウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nを、ウエハSの厚さ方向で確実に重ならないように配置することができる。しかも、ウエハSを厚さ方向両側から均等に押さえることができるので、ウエハSの割れ等の発生を抑制できる。
【0086】
さらに、第1治具72及び第2治具73を、ウエハSの厚さ方向から見てウエハSの周方向で隙間Kを空けて配置することで、ウエハSの両面Sa,Sbにおける非形成領域Nを、ウエハSの厚さ方向で確実に重ならないように配置することができる。しかも、第1治具72及び第2治具73によりウエハSを挟持する際に、ウエハSに作用するせん断応力を抑制できるので、ウエハSの割れ等の発生を抑制できる。
【0087】
そして、本実施形態の圧電振動子1によれば、安定した作動を得られ、信頼性の高い圧電振動片4がパッケージ5に気密封止されているため、特性及び信頼性に優れた高品質な圧電振動子1を提供することができる。
【0088】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図23を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図23に示すように、圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片4が実装されている。これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0089】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0090】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、特性及び信頼性に優れた高品質な発振器100を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0091】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図24を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0092】
(携帯情報機器)
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、図24に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0093】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0094】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片4が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0095】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0096】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0097】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。さらに、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0098】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0099】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、特性及び信頼性に優れた高品質な携帯情報機器110を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0100】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図25を参照して説明する。
本実施形態の電波時計130は、図25に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0101】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。 本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0102】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0103】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0104】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、特性及び信頼性に優れた高品質な電波時計130を提供できる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0105】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、第1治具72及び第2治具をウエハSの全周に亘って配置する構成としたが、第1治具72及び第2治具73が重ならないように配置されていればこれに限られない。
また、上述した実施形態では、音叉型の圧電振動片を例に挙げて本発明を説明したが、これに限らず、例えばATカット型の圧電振動片(厚み滑り振動片)等に、本発明を適用しても構わない。
【0106】
さらに、上述した実施形態では、表面実装型の圧電振動子1を例にして説明したが、これに限らずシリンダーパッケージタイプの圧電振動子に適用することもできる。
さらに、電極部18も、圧電板11の外表面上に積層されるとともに互いにパターンが異なる複数層の電極膜からなるものであれば、上述した実施形態に示すものに限られない。例えば、3層以上の電極膜が積層されていても良い。
【符号の説明】
【0107】
1…圧電振動子 4…圧電振動片 5…パッケージ 11…圧電板 18…電極部 18a…下地金属層(電極膜) 18b…仕上金属層(電極膜) 28…金属積層膜(金属層) 28a…第1金属層(金属膜) 28b…第2金属層(金属層) 44…第1フォトレジスト膜(マスク材) 54…第1レジストパターン(マスク材パターン) 55…第2レジストパターン(マスク材パターン) 72…第1治具 73…第2治具 100…発振器 101…発振器の集積回路 110…携帯情報機器(電子機器) 113…電子機器の計時部 130…電波時計 131…電波時計のフィルタ部 C…キャビティ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料からなる圧電板と、
電圧が印加されたときに前記圧電板を振動させる電極部と、を備え、
前記電極部は、前記圧電板上に積層されるとともに互いにパターンが異なる複数層の電極膜からなる圧電振動片を形成する圧電振動片の製造方法であって、
前記圧電板上に積層された導電性を有する複数層の金属膜をパターニングすることで、前記複数層の電極膜をそれぞれ形成する複数の電極膜形成工程を有し、
前記電極膜形成工程は、
前記複数層の金属膜上にマスク材材料を塗布し、前記金属膜上にマスク材を形成するマスク材形成工程と、
前記マスク材をパターニングしてマスク材パターンを形成するマスク材パターン形成工程と、
前記マスク材パターンの形成領域以外の領域の前記金属膜を除去して、前記電極膜を形成する電極パターン形成工程と、を有し、
前記マスク材形成工程は、
前記圧電板における厚さ方向の一方側に配置された第1治具、及び他方側に配置された第2治具により、前記圧電板を厚さ方向の両側から挟持して行い、
前記第1治具及び前記第2治具は、前記圧電板の厚さ方向から見て重なり合わない位置に配置されていることを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項2】
前記マスク材形成工程では、前記第1治具及び前記第2治具を、前記圧電板の周方向に沿って交互に配置することを特徴とする請求項1記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項3】
前記マスク材形成工程では、前記第1治具及び前記第2治具を、前記圧電板の厚さ方向から見て前記圧電板の周方向で間隔を空けて配置することを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の圧電振動片の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項5】
請求項4記載の圧電振動片がパッケージに気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【請求項1】
圧電材料からなる圧電板と、
電圧が印加されたときに前記圧電板を振動させる電極部と、を備え、
前記電極部は、前記圧電板上に積層されるとともに互いにパターンが異なる複数層の電極膜からなる圧電振動片を形成する圧電振動片の製造方法であって、
前記圧電板上に積層された導電性を有する複数層の金属膜をパターニングすることで、前記複数層の電極膜をそれぞれ形成する複数の電極膜形成工程を有し、
前記電極膜形成工程は、
前記複数層の金属膜上にマスク材材料を塗布し、前記金属膜上にマスク材を形成するマスク材形成工程と、
前記マスク材をパターニングしてマスク材パターンを形成するマスク材パターン形成工程と、
前記マスク材パターンの形成領域以外の領域の前記金属膜を除去して、前記電極膜を形成する電極パターン形成工程と、を有し、
前記マスク材形成工程は、
前記圧電板における厚さ方向の一方側に配置された第1治具、及び他方側に配置された第2治具により、前記圧電板を厚さ方向の両側から挟持して行い、
前記第1治具及び前記第2治具は、前記圧電板の厚さ方向から見て重なり合わない位置に配置されていることを特徴とする圧電振動片の製造方法。
【請求項2】
前記マスク材形成工程では、前記第1治具及び前記第2治具を、前記圧電板の周方向に沿って交互に配置することを特徴とする請求項1記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項3】
前記マスク材形成工程では、前記第1治具及び前記第2治具を、前記圧電板の厚さ方向から見て前記圧電板の周方向で間隔を空けて配置することを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧電振動片の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の圧電振動片の製造方法を用いて製造されたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項5】
請求項4記載の圧電振動片がパッケージに気密封止されてなることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項7】
請求項5に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項5に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−169864(P2012−169864A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29128(P2011−29128)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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