説明

圧電部品

【課題】 圧電部品のパッケージサイズの小型化と、中空部への封止樹脂の侵入の阻止である。
【解決手段】 絶縁材料からなる基板6と、該基板6にフリップチップ実装された第1の圧電素子2と、該第1の圧電素子2よりも鉛直方向に上あるいは下に実装された第2の圧電素子3と、前記第1の圧電素子2及び第2の圧電素子3を封止してパッケージ化する封止樹脂1と、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電部品、例えば、2つ以上の異なる周波数の弾性表面波(SAW)チップを実装基板上にバンプを用いて鉛直方向に積み重ねて搭載した後、積み重ねたSAWチップをシート樹脂によりSAWチップ周辺に気密空間(中空部)を形成するように封止したSAWデバイス、に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波デバイス(SAWデバイス)は、水晶、タンタル酸リチウム等の圧電基板上に櫛歯状電極(IDT電極)、及び接続パッド等の電極パターンを配置した構成を備え、例えばIDT電極に高周波電界を印加することによって、弾性表面波を励起し、弾性表面波を圧電作用によって高周波電界に変換し、フィルタ特性を得るものとして携帯電話機などに搭載され使用される。
【0003】
ここで、SAWデバイスを利用するデュアルフィルタやデュプレクサ等の電子機器では、2つ以上の異なる周波数をもつSAWチップを1個のSMD(表面実装型)製品にパッケージする際、従来は、図2に示すように、パッケージ内に平面状に並べて搭載していた。
【0004】
すなわち、図2に示す従来のIDT電極パターン28,29を形成した2つ以上の異なる周波数をもつSAWチップ22a,22bを平面状に並べて、セラミックシート基板26に配線電極31a,32aとバンプ24a,24bを介してフェースダウンでフリップチップ実装し、次いでシート樹脂により樹脂封止して中空部Sをそれぞれ形成するようにし、さらに、配線電極31a,32aを貫通電極30a,30bを介して端子電極31b,32bに接続してデュアル型のSAWデバイスDを構成して使用している。
【0005】
しかしながら、この種の従来のSAWデバイスDでは、異なる周波数をもつ例えば、2個のSAWチップ22a,22bを樹脂封止してパッケージする際、これらのSAWチップ22a,22bをパッケージ内に平面状に並べて搭載していたため、各SAWチップ22a,22bの縦横の外形寸法に加えて、各チップ22a,22b間に、図2に示すSAWチップの搭載精度を勘案したクリアランスg3が必要であった。そのため、パッケージ(SAWデバイスD)の所要表面積が大きくなり、パッケージ全体の小型化が極めて困難であった。
【0006】
また、一個のSAWチップ内に、例えば2つ以上の周波数の異なるIDT電極パターンを形成すれば、パッケージ全体の小型化が可能となるが、それぞれの周波数によりSAWデバイスの製造条件が異なるため、一方のIDT電極パターンの周波数特性が良好であっても、他方のIDT電極パターンの周波数特性が不良となり、SAWチップ全体として不良となってしまい、SAWチップの良品歩留りが悪くなる、問題点があった。
【0007】
また、中空部S内への封止樹脂の流れ込みを阻止するために、図2に示すように、SAWチップ22a,22bに隣接して樹脂からなる鎖線で示すダム33を設けていたが、ダムに用いる樹脂自体が高価であるため、ダム33を設けたSAWデバイスは採算がとれない等の問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、圧電部品のパッケージサイズの小型化と電極パターン面周辺に形成する中空部形成の容易化である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の圧電部品は、絶縁材料からなる基板と、該基板にフリップチップ実装された第1の圧電素子と、該第1の圧電素子に対して鉛直方向に上あるいは下に実装された第2の圧電素子と、前記第1の圧電素子及び第2の圧電素子を封止してパッケージ化する封止樹脂と、からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
圧電部品のパッケージサイズの小型化が達成され、また中空部への封止樹脂の侵入が有効に阻止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の圧電部品を、表面実装型弾性表面波デバイス(以下、“SAWデバイス”という)の実施例について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の圧電部品の実施例であるSAWデバイスDの縦断面図を示す。
【0013】
本実施例のSAWデバイスは、デュアルフィルタやデュプレクサ等の2つ以上の異なった周波数帯域を必要とするSMD型のSAWフィルタに用いられる。
【0014】
このSAWデバイス(圧電部品)Dは、セラミックシート6a,6bを数枚(例えば、2枚)積層して形成したセラミックシート基板6と、このセラミックシート基板6の上面5に第1のSAWチップ2の四角に位置された金(Au)バンプ4aと配線電極11aを介してフリップチップ・ボンディング(フェース・ダウン)された第1のSAWチップ2(上段のSAWチップ)と、この第1のSAWチップ2の主面に形成されたSAWチップ電極(IDT)パターン9と、セラミックシート基板6のキャビティ底面7に第2のSAWチップ3の四角に位置された金(Au)バンプ4bと配線電極12aを介してフリップチップ・ボンディング(フェース・ダウン)された第2のSAWチップ3と、この第2のSAWチップ3の主面に形成されたSAWチップ電極(IDT)パターン8と樹脂封止1とからなり、前述した配線電極11a,12aは、それぞれ貫通電極10a,10bを介して端子電極11b,12bに電気的に接続されている。
【0015】
とくに、本発明の圧電部品の実施例であるSAWデバイスDでは、セラミックシート基板6bの上面5と上段のSAWチップ2の電極パターン面2aとの間に隙間g1を形成し、その隙間g1の寸法を10μm以下にする。これにより、エポキシ樹脂等からなるシート樹脂をホットプレート等で所定の温度に加熱して軟化させ、型材で押圧して樹脂封止する際、この微少隙間g1により、軟化した封止樹脂が、SAWチップ2,3の電極パターン面8,9に流れ込むことが阻止され、SAWチップ電極パターン8,9と封止樹脂1との接触による電気特性不良の発生を回避できる。
【0016】
また、仮に軟化した樹脂1aが隙間g1から中空部S内へ流れ込んでしまった場合でも、下段のSAWチップ3の電極パターン8をセラミックシート基板6bの上面5よりも高く配置することにより、セラミックシート基板6aに形成された凹部(キャビティ)7に流れ込んだ樹脂1aがこの凹部7に溜まり、SAWチップ2,3の電極パターン面8,9と接触することがなく、容易に所望の中空部Sを電極パターン8の周辺に形成することができるようになる。また、上段のSAWチップ2の電極パターン面9と下段のSAWチップ3の主面(上面)との間には、10μm程度の隙間g2を設け、電極パターン面9とSAWチップ3の上面との接触を回避するようにしてある。
【0017】
通常、多数のSAWデバイスDをまとめて樹脂封止し、その後、ダイシングマークに沿ってダイシング・ソー等により個々のSAWデバイスD(個片)に分割する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の圧電部品は、2つ以上の異なる周波数の圧電素子を必要とする、デュアルフィルタ、デュプレクサ、等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の圧電部品の実施例である複数のSAWチップを上下に二段に積み重ねたSAWデバイスの縦断面図である。
【図2】複数のSAWチップを平面状に搭載した従来のSAWデバイスの縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 封止樹脂
2 上段のSAWチップ
3 下段のSAWチップ
4 バンプ
5 セラミックシート基板の上面
6 セラミックシート基板
7 凹部(キャビティ)
8 SAWチップ電極(IDT)パターン
9 SAWチップ電極(IDT)パターン
10 貫通電極
11a 配線電極
11b 端子電極
12 配線電極
D 圧電部品(SAWデバイス)
S 中空部(キャビティ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料からなる基板と、
該基板にフリップチップ実装された第1の圧電素子と、
該第1の圧電素子に対して鉛直方向に上あるいは下に実装された第2の圧電素子と、
前記第1の圧電素子及び第2の圧電素子を封止してパッケージ化する封止樹脂と、
からなることを特徴とする圧電部品。
【請求項2】
下段に実装された前記第2の圧電素子の電極パターン面よりも前記基板の上面が高くなるよう実装される請求項1に記載の圧電部品。
【請求項3】
上段に実装された前記第1の圧電素子の電極パターン面と前記基板の上面の間に微少隙間が形成され、該微少隙間の間隔が10μm未満である請求項1に記載の圧電部品。
【請求項4】
下段に実装された前記第2の圧電素子に対向する前記基板に凹所が形成され、前記微少隙間から流れ込んだ封止樹脂を溜めるようにした請求項1に記載の圧電部品。
【請求項5】
前記第1の圧電素子の電極パターンの周波数と前記第2の圧電素子の電極パターンの周波数とが、異なる請求項1に記載の圧電部品。
【請求項6】
前記基板がセラミックシート基板からなる請求項1に記載の圧電部品。
【請求項7】
前記第1の圧電素子及び前記第2の圧電素子がSAWチップからなる請求項1に記載の圧電部品。
【請求項8】
前記圧電部品がSAWデバイスである請求項1に記載の圧電部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−135635(P2009−135635A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308326(P2007−308326)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】