説明

地図データ更新システム及び地図データ更新プログラム、並びにこれを利用したナビゲーション装置及び車両制御装置

【課題】現実の道路の変化に応じて道路ネットワークデータを更新するに際して、更新用データとは異なる手段により取得される追加データと道路ネットワークデータとが、当該更新後においても適切に関連付けられた状態を維持するのを可能とする技術を提供する。
【解決手段】ノードとリンクとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータ33を記憶する第一記憶手段31と、更新データを受け取って道路ネットワークデータ33を更新する更新手段16と、更新手段16とは異なる手段により取得される追加データ36を、関連するリンクへの関連付け情報とともに記憶する第二記憶手段35と、更新手段16による更新処理が実行された際に、更新によって変化したリンクについて、更新前後の各リンクのリンク端座標とリンク方向とに基づいて各追加データ36の関連付け情報を修正する修正手段17と、を備えた地図データ更新システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点に対応するノードと交差点間を接続する道路に対応するリンクとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータと、各リンクに関連付けられる追加データとを記憶して備えるシステムにおける、道路ネットワークデータの更新に伴う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでにも、交差点に対応するノードと交差点間を接続する道路に対応するリンクとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータと、各リンクに関連付けられる追加データとを記憶して備えるナビゲーションシステムが知られている。例えば、下記の特許文献1には、車両に搭載された撮影手段により取得した車両周辺の画像情報に含まれる走行関連情報の画像認識結果に基づいて走行関連情報を抽出し、抽出された走行関連情報を追加データとして、位置情報や区間情報と関連付けて道路ネットワークデータを格納した地図データベースに記憶する装置が記載されている。この特許文献1に記載された装置では、収集されて地図データベースに記憶された追加データとしての走行関連情報に基づき運転支援手段を介して車両制御を行ない、運転支援を行なうことが可能とされている。
【0003】
一方、交差点に対応するノードと交差点間を接続する道路に対応するリンクとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータを記憶して備えるナビゲーションシステムにおいて、現実の道路に変化があった場合に、当該変化に応じて道路ネットワークデータを更新するデータ更新システムも知られている。例えば、下記の特許文献2には、サーバ装置に記憶されている旧版の地図データと新たに取得された新版の地図データとを比較して差分データを作成し、差分データに基づいて作成される更新用データを用いてナビゲーション装置が有する道路ネットワークデータを更新する方法が記載されている。この特許文献2に記載された技術によれば、ナビゲーション装置の道路ネットワークデータの更新を簡単に行なうことができるとともに、更新処理の際に送信されるデータ量を縮小してナビゲーション装置の処理負荷を軽減することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−275690号公報
【特許文献2】特開2006−171106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたナビゲーションシステムによれば、収集されて記憶された追加データとしての走行関連情報が位置情報や区間情報に適切に関連付けられて道路ネットワークデータを格納した地図データベースに記憶されている限り、すなわち、走行関連情報が関連付けられるリンクとの対応関係が適切なものである限り、収集された走行記憶情報に基づき、車両の走行制御等の各種のサービスを提供することができる。しかしながら、例えば特許文献2に記載されたような方法で道路ネットワークデータが更新された場合には、走行関連情報と関連付けられるリンクとの対応関係が適切に維持されない場合がある。具体的には、例えば道路の新設により新たなリンクが追加される場合や、道路の廃止によりリンクが削除される場合等には、道路ネットワークデータを構成する各リンクを識別するための情報が道路ネットワークデータの更新前後で変化してしまうことがある。この場合、追加データとしての走行関連情報が本来関連付けられるべきリンク以外のリンクに関連付けられた状態となり、或いは、追加データとしての走行関連情報がどのリンクにも関連付けられていない状態となり、各種のサービスを適切に提供することができなくなる場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、現実の道路の変化に応じて道路ネットワークデータを更新するに際して、更新用データとは異なる手段により取得される追加データと道路ネットワークデータとが、当該更新後においても適切に関連付けられた状態を維持することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための、本発明に係る地図データ更新システムの特徴構成は、交差点に対応するノードと交差点間を接続する道路に対応するリンクとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータを記憶する第一記憶手段と、現実の道路の変化に応じた前記道路ネットワークデータの更新データを受け取って、前記道路ネットワークデータを更新する更新手段と、前記更新手段とは異なる手段により取得され、各リンクに関連付けられる追加データを、当該関連するリンクへの関連付けを表す関連付け情報とともに記憶する第二記憶手段と、前記更新手段による前記道路ネットワークデータの更新処理が実行された際に、更新によって変化したリンクについて、更新前後の各リンクのリンク端座標とリンク方向とに基づいて、前記第二記憶手段に記憶された各追加データの前記関連付け情報を修正する修正手段と、を備えた点にある。
【0008】
上記の特徴構成によれば、道路ネットワークデータの更新処理が実行された際に、更新によって変化したリンクについて、更新前後の各リンクのリンク端座標とリンク方向とを比較することにより、更新前後の道路ネットワークデータに含まれる各リンクのうち、同一の道路に対応する更新前と更新後のリンクを判定することができる。そして、その結果に基づいて、修正手段が、各追加データが関連付けられるリンクが更新前後で同一の道路に対応するように各追加データの関連付け情報を修正することにより、現実の道路の変化に応じて道路ネットワークデータを更新するに際して、追加データと道路ネットワークデータとが、当該更新後においても適切に関連付けられた状態を維持することができる。
【0009】
ここで、前記修正手段は、更新前後の前記リンクについて前記リンク端座標と前記リンク方向とを比較して、少なくともいずれか一方のリンク端の前記リンク端座標及び前記リンク方向が所定の同一判定範囲内にある場合に、同一の道路に対応するリンクであると判定する同一性判定手段と、前記関連付け情報を、前記同一性判定手段により同一の道路に対応するリンクであると判定された更新後のリンクへの関連付けを表すように修正する修正処理手段と、を備える構成とすると好適である。
【0010】
この構成によれば、同一性判定手段が、更新前後のリンクについて、少なくともいずれか一方のリンク端のリンク端座標とリンク方向とが所定の同一判定範囲内にあるか否かを判定することにより、更新前後の道路ネットワークデータに含まれる各リンクのうち、同一の道路に対応する更新前と更新後のリンクを適切に判定することができる。そして、修正処理手段が、同一性判定手段により同一の道路に対応するリンクであると判定された更新後のリンクへの関連付けを表すように関連付け情報を修正する。これにより、追加データと道路ネットワークデータとが、当該更新後においても適切に関連付けられた状態を維持することができる。
【0011】
また、前記道路ネットワークデータは、前記リンクの形状を表現するための形状補完点をさらに含み、前記同一性判定手段は、前記リンク上におけるリンク端から当該リンク端に隣接する前記形状補完点へ向かう方向を前記リンク方向として判定を行なう構成とすると好適である。
【0012】
この構成によれば、リンク方向をリンク形状に応じた適切な方向に設定することができるので、同一性判定手段による同一の道路に対応するリンクであるか否かの判定を適切に行なうことができる。
【0013】
また、前記修正手段は、前記同一性判定手段により、更新後の複数のリンクの組み合わせが更新前の一つのリンクと同一の道路に対応すると判定された場合に、前記追加データが有する前記リンク端座標との相対位置関係を表す情報に基づいて、前記関連付け情報を更新後のいずれの前記リンクへの関連付けを表すように修正するかを決定する修正先決定手段をさらに備える構成とすると好適である。
【0014】
例えば、道路が新設されて他の道路に接続される場合、当該接続される方の道路に対応する一つのリンクは、更新後に複数のリンクに分断されることになる。よって、更新前の一つのリンクの両端のそれぞれのリンク端座標とリンク方向とに基づいて、複数の更新後のリンクが同一性判定手段により同一の道路に対応するリンクであると判定される場合が生じ得る。この構成によれば、修正先決定手段が、追加データが有するリンク端座標との相対位置関係を表す情報に基づいて、関連付け情報を更新後の複数のリンクのいずれに関連付けるかを決定するので、上記のような場合にも、追加データと道路ネットワークデータとが、当該更新後においても適切に関連付けられた状態を維持することができる。
【0015】
また、前記修正手段は、更新前の前記リンクについて、前記同一性判定手段により同一の道路に対応するリンクであると判定される前記リンクがなかった場合には、当該リンクに関連付けられた前記追加データを前記第二記憶手段から削除する削除処理手段をさらに備える構成とすると好適である。
【0016】
更新前のリンクについて、同一性判定手段により同一の道路に対応するリンクであると判定されるリンクがなかった場合には、現実の道路が廃止されたり、道路形状が大きく変化したりしていることが考えられる。このような場合には、更新前のリンクに関連付けられて記憶された追加データは、更新後においては、更新後のリンクに対応する現実の道路が存在しないため、もはや意味を持たなくなってしまう。この構成によれば、そのような場合には不要となった追加データを削除処理手段が第二記憶手段から削除するので、追加データを記憶するための記憶領域を節約することができる。
【0017】
また、前記更新データが、前記リンクに関連付けられた関連データを有する場合であって、前記更新手段による更新後の同一の前記リンクについて、同一の属性の前記関連データと前記追加データとが共に関連付けられることになった場合に、当該追加データを前記第二記憶手段から削除するデータ削除手段を備えた構成とすると好適である。
【0018】
同一のリンクに関連付けられる追加データと関連データとが同一の属性を有する場合において、これらが相互に異なる内容の情報を有する場合には、これらを例えば経路案内や車両制御等の用に供する場合に、追加データ及び関連データのいずれの情報を参照するかによって出力結果が変わってしまうため、各種のサービスを適切に提供することができない場合が生じ得る。この構成によれば、データ削除手段が、更新後の同一のリンクについて、同一の属性の関連データと追加データとが共に関連付けられることになった場合には追加データの方を削除するので、同一のリンクに関連付けられる追加データと関連データとの間で矛盾が生じるのを防止して、各種のサービスを適切に提供することを可能とできる。また、実際的に使用することのない不要な追加データを削除することにより、追加データを記憶するための記憶領域を節約することができる。
【0019】
また、前記追加データは、車両に設けられたデータ取得手段により、独自に取得されたデータである構成とすることができ、道路上に設けられた地物に関する地物データ、前記リンクの属性に関するリンク属性データ、及び車両の挙動に関する車両挙動データのいずれか一つ以上を含む構成とすると好適である。
【0020】
この構成によれば、車両に設けられた各種のデータ取得手段により地物データ、リンク属性データ、及び車両挙動データのいずれか一つ以上を取得し、これらを経路案内や車両制御等の用に供することが可能となる。その際、追加データと道路ネットワークデータとが、道路ネットワークデータが更新された場合であっても当該更新前後で適切に関連付けられた状態に維持されるので、経路案内や車両制御等の処理を適切に行わせることができる。
【0021】
本発明に係るナビゲーション装置の特徴構成は、これまで説明してきた地図データ更新システムにより更新される前記第一記憶手段及び前記第二記憶手段と、自車位置を検出する自車位置検出手段と、前記第一記憶手段及び第二記憶手段に記憶された前記道路ネットワークデータ及び前記追加データを参照して動作するナビゲーション用演算処理手段と、を備えた点にある。
【0022】
この構成によれば、道路ネットワークデータに加えて追加データをも参照してナビゲーション用演算処理手段が動作するので、より詳細な経路案内等を行なうことができるナビゲーション装置を提供することができる。その際、ナビゲーション用演算処理手段は、道路ネットワークデータと、地図データ更新システムにより更新後の道路ネットワークデータに適切に関連付けられた追加データとに基づいて動作するので、そのような詳細な経路案内を、現実の道路の変化に応じて適切に行なうことが可能となっている。
【0023】
本発明に係る車両制御装置の特徴構成は、地図データ更新システムにより更新される前記第一記憶手段及び第二記憶手段と、自車位置を検出する自車位置検出手段と、前記第一記憶手段及び第二記憶手段に記憶された前記道路ネットワークデータ及び前記追加データを参照して動作する車両制御手段と、を備えた点にある。
【0024】
この構成によれば、道路ネットワークデータに加えて追加データをも参照して車両制御手段が動作するので、より精密な車両制御を行なわせることができる。その際、車両制御手段は、道路ネットワークデータと、地図データ更新システムにより更新後の道路ネットワークデータに適切に関連付けられた追加データとに基づいて動作するので、そのような精密な車両制御を、現実の道路の変化に応じて適切に行なうことが可能となっている。
【0025】
本発明に係る地図データ更新プログラムの特徴構成は、交差点に対応するノードと交差点間を接続する道路に対応するリンクとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータを記憶する第一記憶手段を備えた地図データ更新システムにおける地図データ更新プログラムであって、現実の道路の変化に応じた前記道路ネットワークデータの更新データを受け取って、前記道路ネットワークデータを更新する更新ステップと、前記更新ステップ以外により取得され、各リンクに関連付けられる追加データを、当該関連するリンクへの関連付けを表す関連付け情報とともに第二記憶手段に記憶する記憶ステップと、前記更新ステップによる前記道路ネットワークデータの更新処理が実行された際に、更新によって変化したリンクについて、更新前後の各リンクのリンク端座標とリンク方向とに基づいて、前記記憶ステップで記憶された各追加データの前記関連付け情報を修正する修正ステップと、をコンピュータに実行させる点にある。
【0026】
この特徴構成によれば、道路ネットワークデータの更新処理が実行された際に、更新によって変化したリンクについて、更新前後の各リンクのリンク端座標とリンク方向とを比較することにより、更新前後の道路ネットワークデータに含まれる各リンクのうち、同一の道路に対応する更新前と更新後のリンクを判定することができる。そして、その結果に基づいて、修正ステップにおいて、各追加データが関連付けられるリンクが更新前後で同一の道路に対応するように各追加データの関連付け情報が修正されることにより、現実の道路の変化に応じて道路ネットワークデータを更新するに際して、追加データと道路ネットワークデータとが、当該更新後においても適切に関連付けられた状態を維持させることができる。
【0027】
なお、この地図データ更新プログラムについても、当然ながら上述した地図データ更新システムに関してその好適な構成の例として挙げた、いくつかの付加的技術を組み込むことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態に係るサーバ装置の概略構成を示すブロック図
【図3】地図データベースに記憶されている道路ネットワークデータを含む地図データの構成の例を示す図
【図4】道路ネットワークデータに含まれるノードが有する情報の例を示す図
【図5】道路ネットワークデータに含まれるリンクが有する情報の例を示す図
【図6】地図データベースに記憶されている地物データの例を示す図
【図7】車両への撮像装置の配置構成の一例を示す図
【図8】学習地物データの収集処理の概要を説明するための説明図
【図9】学習地物データが有する情報の例を示す図
【図10】同一性判定部による判定基準を説明するための説明図
【図11】修正処理の一つの具体例を示す図
【図12】修正処理の他の具体例を示す図
【図13】修正処理の他の具体例を示す図
【図14】地物データ学習処理及び地図データ更新処理の処理順序を示すフローチャート
【図15】修正処理の詳細な手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここでは、本発明に係る地図データ更新システムを、車載用のナビゲーション装置1と、複数のナビゲーション装置1との間で通信可能に設けられたサーバ装置2と、により構成する場合を例として説明する。この地図データ更新システムを構成するナビゲーション装置1は、交差点に対応するノードnと交差点間を接続する道路に対応するリンクkとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータ32を記憶する地図データベース31と、各リンクに関連付けられる追加データとしての学習地物データ36を、当該関連するリンクkへの関連付けを表す関連付け情報とともに記憶する学習データベース35と、を備えている。ナビゲーション装置1は、現実の道路に変化があった場合に、サーバ装置2により生成されて配信される当該変化に応じた更新データ53を受け取って、地図データベース31に記憶された道路ネットワークデータ32を更新する。その際、地図データ更新システムが備える修正部17は、更新によって変化したリンクkについて、更新前後の各リンクkのリンク端座標とリンク方向とに基づいて、学習データベース35に記憶された各学習地物データ36の関連付け情報を修正する。これにより、現実の道路の変化に応じて道路ネットワークデータ32を更新するに際して、更新用データ53とは異なる手段により取得される学習地物データ36と道路ネットワークデータ32とが、当該更新後においても適切に関連付けられた状態を維持することが可能となっている。
【0030】
1.ナビゲーション装置の構成
まず、ナビゲーション装置1の構成について説明する。図1に示すナビゲーション装置1の各機能部は、互いに共通の或いはそれぞれ独立のCPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。本実施形態においては、ナビゲーション装置1は、画像情報取得部11、自車位置情報取得部12、画像認識部13、データ処理部14、送受信部15、更新処理部16、修正部17、及びナビゲーション用演算部22を機能部として備えている。そして、これらの各機能部は、デジタル転送バス等の通信線を介して互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。ここで、各機能部がソフトウェア(プログラム)により構成される場合には、当該ソフトウェアは、演算処理装置が参照可能なRAMやROM等の記憶手段に記憶される。また、地図データベース31及び学習データベース35は、例えばハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、DVD−RAMを備えたDVDドライブ等の情報を記憶及び書き換え可能な記録媒体(記憶手段)をハードウェア構成として備えている。以下、本実施形態に係るナビゲーション装置1の各部の構成について詳細に説明する。
【0031】
1−1.地図データベース
地図データベース31は、地図データ32が記憶されたデータベースである。地図データ32は、例えば図3に示すように、複数の交差点のそれぞれに対応する複数のノードnと、交差点間を接続する道路に対応する複数のリンクkとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータ33を含んでいる。本実施形態においては、この地図データベース31が、本発明における「第一記憶手段」に相当する。各ノードnは、図4に示すように、緯度及び経度で表現された地図上の位置(座標)の情報を有している。各リンクkは、ノードnを介して接続されている。また、各リンクkは、図5に示すように、その属性情報として、道路種別、地域種別、リンク長、道路幅、形状補間点m等の情報を有している。ここで、形状補完点mは、リンクkに沿って一個又は複数個設けられ、当該形状補完点mの配列によりリンク形状を表現するためのものである。これらの各ノードn及び各リンクkは、それぞれ識別情報としての固有のノードID及びリンクIDを有している。また、地図データ32は、道路ネットワークデータ33の他に、ナビゲーション用演算部22による地図表示処理に必要な描画情報や経路案内処理に必要な各種の案内情報等を含んでいる。ここで、描画情報には、道路形状、建物、河川等を表示するために必要な背景情報、市町村名や道路名等を表示するために必要な文字情報等が含まれる。
【0032】
また、地図データベース31に格納された地図データ32には、この他にも、道路上や道路周辺に設けられた各種の地物の情報、すなわち地物データ34が含まれる。ここで、地物データ34とは、地図データベース31に予め整備されて記憶されている複数の地物についての情報であり、例えば、道路の路面に設けられた道路標示(ペイント標示)、横断歩道、停止線、最高速度等を表す速度標示、ゼブラゾーン、道路に沿って車線を分ける区画線(実線、破線、二重線等の各種区画線を含む。)、各車線の進行方向を指定する進行方向別通行区分標示(矢印標示、例えば、直進矢印、右折矢印等を含む)等が含まれる。図6には、このような地物データ34の一例を示している。このような地物データ34は、当該地物が設けられた道路に対応するリンクkに関連付けられて記憶されている。すなわち、各地物データ34は、当該地物が設けられた道路に対応するリンクkが有するリンクIDの情報を関連付け情報として有することにより、当該地物が設けられた道路に対応するリンクkに関連付けられて記憶されている。
【0033】
1−2.学習データベース
学習データベース35は、車両3に設けられた画像情報取得部11、画像認識部13、及びデータ処理部14により、車両3毎に独自に取得される学習地物データ36を記憶するデータベースである。この学習地物データ36は、地図データベース31に格納された地図データ32が有するリンクkに関連付けられて記憶されている。すなわち、各学習地物データ36は、当該地物が設けられた道路に対応するリンクkが有するリンクIDの情報を関連付け情報として有することにより、当該地物が設けられた道路に対応するリンクkに関連付けられて記憶されている。本実施形態においては、この学習地物データ36が本発明における「追加データ」に相当し、学習データベース35が本発明における「第二記憶手段」に相当する。また、学習地物データ36は、その位置情報として、関連付けられたリンクkのリンク端(リンク終端)との相対位置関係を表す情報、すなわち、リンク端(リンク終端)からの距離情報を有している。また、学習地物データ36はその他にも、当該地物の種別等を表す属性情報を有している。画像情報取得部11、画像認識部13、及びデータ処理部14による学習地物データ36の取得方法については、後述する。
【0034】
1−3.画像情報取得部
画像情報取得部11は、撮像装置41により撮像した車両3の周辺の画像情報Gを取得する機能部である。ここで、撮像装置41は、撮像素子を備えた車載カメラ等であって、少なくとも車両3の周辺の道路の路面を撮像可能な位置に設けられている。このような撮像装置41としては、例えば、図7に示すような車両3の後方の路面を撮像するバックカメラを用いると好適である。画像情報取得部11は、撮像装置41により撮像した撮像情報を、フレームメモリ(不図示)などを介して所定の時間間隔で取り込む。この際の画像情報Gの取り込みの時間間隔は、例えば、10〜50ms程度とすることができる。これにより、画像情報取得部11は、撮像装置41により撮像した複数フレームの画像情報Gを連続的に取得することができる。ここで取得された画像情報Gは、画像認識部13へ出力される。
【0035】
1−4.自車位置情報取得部
自車位置情報取得部12は、車両3の現在位置を示す自車位置情報Pを取得する機能部である。自車位置情報取得部12は、自車位置情報Pを取得することにより自車位置を検出する。本実施形態においては、この自車位置情報取得部12が、本発明における「自位置検出手段」に相当する。ここでは、自車位置情報取得部12は、GPS受信機42、方位センサ43、及び距離センサ44と接続されている。ここで、GPS受信機42は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信する装置である。このGPS信号は、通常1秒おきに受信され、自車位置情報取得部12へ出力される。自車位置情報取得部12では、GPS受信機42で受信されたGPS衛星からの信号を解析し、車両3の現在位置(緯度及び経度)、進行方位、移動速度等の情報を取得することができる。方位センサ43は、車両3の進行方位又はその進行方位の変化を検出するセンサである。この方位センサ43は、例えば、ジャイロセンサ、地磁気センサ、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム、車輪部に取り付ける角度センサ等により構成される。そして、方位センサ43は、その検出結果を自車位置情報取得部12へ出力する。距離センサ44は、車両3の車速や移動距離を検出するセンサである。この距離センサ44は、例えば、車両のドライブシャフトやホイール等が一定量回転する毎にパルス信号を出力する車速パルスセンサ、車両3の加速度を検知するヨー・Gセンサ及び検知された加速度を積分する回路等により構成される。そして、距離センサ44は、その検出結果としての車速及び移動距離の情報を自車位置情報取得部12へ出力する。
【0036】
そして、自車位置情報取得部12は、これらのGPS受信機42、方位センサ43及び距離センサ44からの出力に基づいて、公知の方法により自車位置を特定する演算を行う。また、自車位置情報取得部12は、地図データベース31から抽出された自車位置周辺の道路ネットワークデータ33を取得し、それに基づいて公知のマップマッチングを行うことにより自車位置を道路ネットワークデータ33に示される道路上に合わせる補正も行う。このようにして、自車位置情報取得部12は、緯度及び経度で表された車両3の現在位置の情報、及び車両3の進行方位の情報を含む自車位置情報Pを取得する。
【0037】
1−5.画像認識部
画像認識部13は、画像情報取得部11で取得された画像情報Gに含まれる対象地物の画像認識処理を行う機能部である。ここで、対象地物となる地物には、横断歩道、停止線、速度標示等のような、道路の路面に設けられた各種の道路標示が含まれる。画像認識部13は、対象地物の画像認識に際しては、画像情報Gに対して二値化処理やエッジ検出処理等を行い、当該画像情報Gに含まれている地物(道路標示)の輪郭情報を抽出する。その後、画像認識部13は、抽出された地物の輪郭情報と、対象地物の形態の特徴量とのパターンマッチングを行うことにより、画像情報Gに含まれる対象地物の画像を抽出する。画像認識部13による画像認識処理の結果は、データ処理部14に出力される。
【0038】
1−6.データ処理部
データ処理部14は、画像認識部13による画像認識処理の結果を表す情報を、学習データベース35に記憶させるための処理を行うための機能部である。本実施形態においては、データ処理部14は、画像認識部13により抽出された画像情報Gに含まれる対象地物の画像に基づいて、地図データベース31に格納された地物データ34には含まれていない地物に関するデータを、独自に学習地物データ36に追加する処理を行う。本実施形態においては、このデータ処理部14が、本発明における「データ取得手段」に相当する。図8は、学習地物データ36の収集処理の概要を説明するための説明図である。この図において、(a)には車両3が走行中の道路における道路標示が示されており、(b)はそれに対応してノードn、リンクk、地物データ34、及び学習地物データ36が示されている。なお、図8(a)においてF1〜F4で示された停止線を表す道路標示に関する情報は、地図データベース31に格納された地物データ34に予め整備されて記憶されているものとし、一方、f1で示された横断歩道及びf2で示された最高速度を表す道路標示に関する情報は、地図データベース31に格納された地物データ34に当初は記憶されていないものとする。
【0039】
車両3が道路上を走行するのに伴い、撮像装置41により車両3の周辺の画像情報Gが取得され、上述したような画像認識処理が実行される。例えば、車両3がこのとき、F1で示された停止線を表す道路標示に関する情報は地物データ34に予め記憶されているので、画像認識部13により停止線F1の画像認識処理に成功したとしても、その結果を学習地物データ36に追加することはない。なお、ここでは詳しい説明は省略するが、その際、停止線F1の画像認識結果に基づいて自車位置情報Pに示される位置を当該停止線F1が設けられた位置(座標)に補正する処理も行なわれる。一方、f1で示された横断歩道及びf2で示された最高速度を表す道路標示に関する情報は、当初は地物データ34に記憶されていないので、画像認識部13により横断歩道f1及び最高速度表示f2の画像認識処理に成功した場合には、データ処理部14はその結果を学習地物データ36に追加する処理を行う。その際、追加される各学習地物データ36は、少なくとも地図データベース31に格納された地図データ32が有するリンクkに関連付けられて記憶される。より具体的には、追加される各学習地物データ36は、当該地物が設けられた道路に対応するリンクkが有するリンクID(図5を参照)の情報を関連付け情報として有することにより、当該地物が設けられた道路に対応するリンクkに関連付けられて記憶される。
【0040】
図9は、学習地物データ36が有する情報の例を示す図である。この図に示すように、各学習地物データ36は、少なくとも、上述した関連付け情報としてのリンクID、関連付けられたリンクkのリンク端(リンク終端)との相対位置関係を表す情報、すなわち、リンク端(リンク終端)からの距離情報、及び当該地物の種別を表す属性情報を有している。なお、ここでは、説明を単純化するため、図8(b)において各リンクkを表す「k」に続けて示された3桁の数字がリンクIDに相当するものとする。これらの情報の組み合わせにより、車両3毎に独自に取得された各学習地物データ36が、それぞれどの道路のどの位置に設けられた地物に対応する情報であるかが特定できるようになっている。例えば、図8及び図9を参照すると、横断歩道f1を表す道路標示が、リンクIDが002で示されるリンクk002上の、リンク終端(ノードn002)から200〔m〕の地点に設けられていることが特定可能である。また、最高速度(40〔km/h〕)表示f2を表す道路標示が、リンクIDが002で示されるリンクk002上の、リンク終端(ノードn002)から100〔m〕の地点に設けられていることが特定可能である。
【0041】
なお、データ処理部14は、後述するように、所定の場合に学習地物データ36を学習データベース35から削除する処理も行う。
【0042】
1−7.送受信部
送受信部15は、無線基地局等を介してサーバ装置2との間で無線通信によりデータの送受信を行う通信装置を備えている。このような無線通信方法としては、例えば携帯電話網や無線LAN(Local Area Network)等の公知の通信網を用いることができる。本実施形態においては、送受信部15は、後述するように、地図データベース31に格納された地図データ32が有する道路ネットワークデータ33を現実の道路の変化に応じて更新させるための更新データ53を、サーバ装置2から受信する。なお、更新データ53には、道路ネットワークデータ33以外にも地物データ34を更新するためのデータが含まれていても良い。更新データ53については後述する。
【0043】
1−8.更新処理部
更新処理部16は、現実の道路の変化に応じた道路ネットワークデータ33の更新データ53を受け取って、地図データ32に含まれる道路ネットワークデータ33の更新を行なう機能部である。本実施形態においては、この更新処理部16が、本発明における「更新手段」に相当する。後述するように、更新データ53は、少なくとも道路ネットワークデータ33を更新するための更新道路ネットワークデータ54を含んでいる。本実施形態においては、更新処理部16は、送受信部15がサーバ装置2から更新データ53を受信した際には、道路ネットワークデータ33の更新処理を自動的に実行する構成となっている。また、本実施形態においては、後述するように、更新データ53は、現実に変更があった道路の変更内容を差分として表す差分データとして生成される。したがって、これに応じて更新処理部16による更新処理も、差分更新処理となっている。すなわち、更新処理部16は、差分データである更新データ53に含まれる、地図データベース61(図2を参照)に記憶された道路ネットワークデータ63の追加、変更、又は削除の内容を、地図データベース31に記憶された道路ネットワークデータ33に適用することにより、地図データベース31の差分更新処理を行う。なお、更新データ53が更新道路ネットワークデータ54に加えて更新地物データ55をも含んでいる場合には、更新処理部16は、地図データベース61(図2を参照)に記憶された地物データ64の追加、変更、又は削除の内容を、地図データベース31に記憶された地物データ34に適用することにより、地図データベース31の差分更新処理も行う。
【0044】
ところで、学習データベース35に記憶された学習地物データ36は、地図データベース31に予め整備されて記憶されている地物データ34とは異なり、車両3毎に独自に取得されて記憶される情報である。そのため、サーバ装置2から配信される更新データ53をナビゲーション装置1が受け取って、更新処理部16により地図データベース31に格納された道路ネットワークデータ33が更新されると、学習地物データ36が関連付けられるリンクkとの対応関係が適切に維持されない場合が生じ得る。具体的には、例えば道路の新設により新たなリンクkが追加される場合や、道路の廃止により従来あったリンクが削除される場合等には、道路ネットワークデータ33を構成する各リンクkのリンクIDが道路ネットワークデータ33の更新前後で変化してしまうことがある。この場合、学習地物データ36が有する関連付け情報としてのリンクIDの情報は変化せずに、道路ネットワークデータ33に含まれる各リンクkのリンクIDのみが変化するため、車両3が独自に取得して学習データベース35に記憶した学習地物データ36が、本来関連付けられるべきリンクk以外のリンクkに関連付けられた状態となってしまい、或いは、学習地物データ36が、どのリンクkにも関連付けられていない状態となってしまう場合がある。そこで本発明に係る地図データ更新システムにおいては、そのような不都合を解消するべく、ナビゲーション装置1が、次に述べる修正部17を備えた構成とされている。
【0045】
1−9.修正部
修正部17は、更新処理部16による道路ネットワークデータ33の更新処理が実行された際に、更新によって変化したリンクkについて、更新前後の各リンクkのリンク端座標とリンク方向とに基づいて、学習データベース35に格納されて記憶された各学習地物データ36が有する関連付け情報としてのリンクIDを修正する機能部である。本実施形態においては、この修正部17が、本発明における「修正手段」に相当する。修正部17は、上記したような機能を実現するための手段として、同一性判定部18、修正先決定部19、削除処理部20、及び修正処理部21の各機能部を備えている。以下では、これらの各機能部の詳細について説明する。なお、以下では、「修正部17」の用語を用いる場合には、同一性判定部18、修正先決定部19、修正処理部20、及び削除処理部21の各機能部を包括する概念として用いるものとする。
【0046】
1−9−1.同一性判定部
同一性判定部18は、更新前後のリンクkについてリンク端座標とリンク方向とを比較して、少なくともいずれか一方のリンク端のリンク端座標及びリンク方向が所定の同一判定範囲内にある場合に、同一の道路に対応するリンクkであると判定する機能部である。本実施形態においては、この同一性判定部18が、本発明における「同一性判定手段」に相当する。本実施形態においては、同一性判定部18は、道路ネットワークデータ33の更新前に学習地物データ36が関連付けられていたリンクkのリンク端座標及びリンク方向について、所定の同一判定範囲内にあるか否かの判定を行なう。ここで、「同一判定範囲」とは、リンク端座標及びリンク方向に関して、更新前後で多少のズレがあって完全には一致していなかったとしても、実質的に同一のリンク端座標及びリンク方向を表しているとみなすことができる範囲を意味する。本実施形態においては、同一性判定部18は、まず、リンク端座標が所定の同一判定範囲内にあるか否かを判定する。リンク端座標についての同一性判定処理に関しては、図10に示すように、例えば更新前のリンクkの各リンク端を中心とする半径X〔m〕の円で区画される範囲が、同一判定範囲として設定される。そして、更新前のリンクkの各リンク端に設定される半径X〔m〕の二つの円で区画される範囲内に、更新後のリンクkのいずれかのリンク端が含まれている場合に、これらのリンク端座標は同一判定範囲内にあると判定される。このときの同一判定範囲を区画する円の半径X〔m〕は、例えば1〔m〕とすることができる。ただし、同一判定範囲を区画する円の半径X〔m〕については、これ以外にも適宜設定を変更することができる。なお、半径X〔m〕の円で区画される範囲内に、更新後のリンクkのリンク端が含まれているかの判定は、更新前のリンクkのリンク端座標と更新後のリンクkのリンク端座標とに基づいて演算により取得される二点間距離が、X〔m〕以下であるか否かにより判定される。
【0047】
次に、同一性判定部18は、リンク端座標及びリンク方向が所定の同一判定範囲内にあるか否かを判定する。リンク端座標についての同一性判定処理に関しては、上記と同様に、更新前のリンクkの各リンク端を中心とする半径X〔m〕の円で区画される範囲を同一判定範囲として同一性が判定される。リンク方向についての同一判定処理に関しては、例えば更新前のリンクkの各リンク端から延出する方向に対して、その両側に±0.5Y〔°〕だけ広げた中心角がY〔°〕の扇形で区画される範囲が、同一判定範囲として設定される。そして、リンク端座標が同一性の範囲内にあると判定された更新前と更新後のリンクkに関して、更新後のリンクkのリンク端からの延出方向が、更新前のリンクkのリンク端からの延出方向に対して±0.5Y〔°〕の範囲内に含まれている場合に、これらのリンク方向は同一判定範囲内にあると判定される。言い換えれば、更新後のリンクkのリンク端からの延出方向が、更新前のリンクkの各リンク端に設定される中心角がY〔°〕の二つの扇形の中心を更新後のリンクkのリンク端に移動してなる範囲内に含まれている場合に、これらのリンク方向は同一判定範囲内にあると判定される。このときの同一判定範囲を区画する扇形の中心角Y〔°〕は、例えば10〔°〕とすることができる。なお、同一判定範囲を区画する扇形の中心角Y〔°〕については、これ以外にも適宜設定を変更することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、同一性判定部18がリンク方向についての同一判定処理を行うに際しては、リンクk上におけるリンク端から当該リンク端に隣接する形状補完点mへ向かう方向をリンク方向として同一判定処理を行なう。ここで、本明細書において「リンク端に隣接する形状補完点m」とは、リンク端に直に隣接する形状補完点mはもちろんのこと、当該リンク端から一又は複数の形状補完点mを挟んで隣接する形状補完点mも含む概念である。ただし、少なくとも当該リンク端とリンクkの中点との間に位置しているものとする。形状補完点mは、リンクkの形状を表現するために用いられる情報であるので、このようにリンク端から当該リンク端に隣接する形状補完点mへ向かう方向をリンク方向とすることで、同一性判定部18によるリンク方向についての同一判定処理を適切に行なうことができる。したがって、更新前と更新後のリンクkが同一の道路に対応するリンクkであるか否かの判定を適切に行なうことができる。したがって、この構成では、更新後のリンクkのリンク方向が同一性範囲内に含まれているか否かの判定は、更新前のリンクkのリンク端から当該リンク端に隣接する形状補完点mへ向かうベクトルと、更新後のリンクkのリンク端とから当該リンク端に隣接する形状補完点mへ向かうベクトルとに基づいて演算により取得される、二つのベクトルが成す角が、±0.5Y〔°〕以下であるか否かにより判定される。
【0049】
1−9−2.修正先決定部
修正先決定部19は、同一性判定部18により、更新後の複数のリンクkの組み合わせが更新前の一つのリンクkと同一の道路に対応すると判定された場合に、学習地物データ36が有するリンク端座標との相対位置関係を表す情報に基づいて、関連付け情報としてのリンクIDを更新後のいずれのリンクkへの関連付けを表すように修正するかを決定する機能部である。この修正先決定部19が、本発明における「修正先決定手段」に相当する。例えば一本の道路が二本に分断された場合には、同一性判定部18は更新前の一つのリンクkに対して更新後の二つのリンクkが同一の道路に対応するリンクkであると判定される場合がある。このような場合には、修正先決定部19は、学習データベース35に格納された学習地物データ36が有する、関連付けられたリンクkのリンク端(リンク終端)との相対位置関係を表す情報、すなわち、リンク端(リンク終端)からの距離情報を取得し、これに基づいて当該学習地物データ36が更新後の二つのリンクkのうちいずれのリンクkに関連付けられるのが適切であるかが判定される。
【0050】
ここで、リンク端(リンク終端)からの距離情報は、二つのリンク端のうちの一方のリンク端を基準とし、当該基準となる側のリンク端からの距離情報となっている。そこで、まず、距離情報の基準となる側のリンク端のリンク端座標及びリンク方向が同一判定範囲内にあると判定された更新後のリンクkについて、学習地物データ36を関連付けても矛盾が生じないか否かが判定される。より具体的には、取得されたリンク端からの距離情報に示される距離が、距離情報の基準となる側のリンク端のリンク端座標及びリンク方向が同一判定範囲内にあると判定された更新後のリンクkのリンク長よりも短い場合には、矛盾が生じないと判定され、当該リンクkに関連付けられるのが適切であると判定される。一方、取得されたリンク端からの距離情報に示される距離が、距離情報の基準となる側のリンク端のリンク端座標及びリンク方向が同一判定範囲内にあると判定された更新後のリンクkのリンク長よりも長い場合には、矛盾が生じると判定され、当該リンクkに関連付けられるのが不適切であると判定されるとともに、他方側のリンクkに関連付けられるのが適切であると判定される。
【0051】
なお、更新前の一つのリンクkに対して更新後の二つのリンクkが同一の道路に対応するリンクkであると判定される場合において、更新後の二つのリンクk間にさらに別のリンクkが存在する場合には、同一性判定部18は、更新後の二つのリンクk及びこれらの間に存在する一又は二以上のリンクkの全ての組み合わせが、更新前の一つのリンクkに対応すると判定するものとする。そして、修正先決定部19が、学習地物データ36が有するリンク端座標との相対位置関係を表す情報に基づいて、関連付け情報としてのリンクIDを更新後のいずれのリンクkへの関連付けを表すように修正するかを決定するものとする。
【0052】
1−9−3.修正処理部
修正処理部20は、学習地物データ36が有する関連付け情報としてのリンクIDを、同一性判定部18により同一の道路に対応するリンクkであると判定された更新後のリンクkへの関連付けを表すように修正する機能部である。すなわち、修正処理部20は、学習地物データ36が有する関連付け情報としてのリンクIDを、同一性判定部18により同一の道路に対応するリンクkであると判定された更新前と更新後のリンクkの間で、更新前のリンクkのリンクIDを更新後のリンクkのリンクIDに変更する修正を行なう。これにより、学習地物データ36と道路ネットワークデータ33とが、当該道路ネットワークデータ33の更新後においても適切に関連付けられた状態に維持させることができる。本実施形態においては、この修正処理部20が、本発明における「修正処理手段」に相当する。
【0053】
1−9−4.削除処理部
削除処理部21は、更新前のリンクkについて、同一性判定部18により同一の道路に対応するリンクkであると判定されるリンクkがなかった場合には、当該リンクkに関連付けられた学習地物データ36を学習データベース35から削除する機能部である。すなわち、削除処理部21は、学習地物データ36が関連付けられた更新前のリンクkについて、道路ネットワークデータ33の更新後に、同一性判定部18により同一の道路に対応するリンクkであると判定されるリンクkがなかった場合には、更新後にはその学習地物データ36は既に不要となってしまったものと判定し、当該更新前のリンクkに関連付けられた学習地物データ36を学習データベース35から削除する。これにより、学習データベース35における学習地物データ36を記憶するための記憶領域を節約することができる。本実施形態においては、この削除処理部21が、本発明における「削除処理手段」に相当する。
【0054】
1−10.修正処理の具体例
次に、図11〜図13に基づいて、修正部17による修正処理の具体例について説明する。図11は、道路が一本新設され、それに伴って道路ネットワークデータ33が更新された場合の例を示している。この図において、(a)は更新前の道路ネットワークデータ33の状態を示しており、(b)は更新後の道路ネットワークデータ33の状態を示している。本例では、更新後のリンクk108に対応する道路が一本新設されて、更新前のリンクk102に対応する道路に接続されている。それに伴い、更新前のリンクk102に対応する道路は更新後のリンクk102及びリンクk103に対応する二本の道路に分断されている。この場合、道路ネットワークデータ33が更新されると、同一性判定部18は、更新前に学習地物データ36が関連付けられていたリンクk102及びリンクk103のリンク端座標及びリンク方向について、所定の同一判定範囲内にあるか否かの判定を行なう。同一判定処理の詳細については既に説明したのでここでは説明を省略するが、更新前のリンクk102については、更新後のリンクk102及びリンクk103が同一の道路に対応するリンクkであると判定される。また、更新前のリンクk103については、更新後のリンクk104が同一の道路に対応するリンクkであると判定される。
【0055】
この場合、更新前のリンクk102については、更新後のリンクk102及びリンクk103の組み合わせと同一の道路に対応すると判定されているので、修正先決定部19による修正先決定処理が行われる。修正先決定処理の詳細については既に説明したのでここでは説明を省略するが、修正先決定部19は、更新前のリンクk102に関連付けられた学習地物データ36を更新後のリンクk103に関連付けるように、当該学習地物データ36が有する関連付け情報としてのリンクIDの修正先を決定する。これに基づき、修正処理部20は、関連付け情報としてのリンクIDを、道路ネットワークデータ33の更新前後で「102」から「103」に修正する。一方、更新前のリンクk103については、更新後のリンクk104のみが同一の道路に対応するリンクkであると判定されているので、修正先決定部19による修正先決定処理が行われることはなく、修正処理部20は、関連付け情報としてのリンクIDを、道路ネットワークデータ33の更新前後で「103」から「104」に修正する。
【0056】
図12は、既存の道路が一部廃止され、それに伴って道路ネットワークデータ33が更新された場合の例を示している。なお、図11(a)に示される道路ネットワークデータ33の状態を更新前の状態とする。本例では、更新前のリンクk103及びリンクk104に対応する道路が廃止されている。なお、図11においては、廃止された道路に対応するリンクk103及びリンクk104は破線で示されている。この場合、道路ネットワークデータ33が更新されると、同一性判定部18は、更新前に学習地物データ36が関連付けられていたリンクk102及びリンクk103のリンク端座標及びリンク方向について、所定の同一判定範囲内にあるか否かの判定を行なう。同一判定処理の詳細については既に説明したのでここでは説明を省略するが、更新前のリンクk102については、更新後のリンクk102が同一の道路に対応するリンクkであると判定される。また、更新前のリンクk103については、同一の道路に対応するリンクkはないと判定される。
【0057】
この場合、更新前のリンクk102については、更新後のリンクk102のみが同一の道路に対応するリンクkであると判定されているので、修正処理部20は、関連付け情報としてのリンクIDを、道路ネットワークデータ33の更新前後で「102」から「102」に修正する(実質的には修正しない)。一方、新前のリンクk103については、同一の道路に対応するリンクkはないと判定されているので、削除処理部21は、更新前のリンクk103に関連付けられた学習地物データ36を学習データベース35から削除する。
【0058】
図13は、既存の道路の形状が一部変更され、それに伴って道路ネットワークデータ33が更新された場合の例を示している。なお、図11(a)に示される道路ネットワークデータ33の状態を更新前の状態とする。本例では、更新前のリンクk103及びリンクk104に対応する道路の形状が変更されている。この場合、道路ネットワークデータ33が更新されると、同一性判定部18は、更新前に学習地物データ36が関連付けられていたリンクk102及びリンクk103のリンク端座標及びリンク方向について、所定の同一判定範囲内にあるか否かの判定を行なう。同一判定処理の詳細については既に説明したのでここでは説明を省略するが、更新前のリンクk102については、更新後のリンクk102が同一の道路に対応するリンクkであると判定される。また、更新前のリンクk103については、更新後のリンクk103の一方側のリンク端座標は同一判定範囲内にあるものの、そのリンク方向が同一判定範囲内にはないため、同一の道路に対応するリンクkではないと判定される。よって、更新前のリンクk103については、同一の道路に対応するリンクkはないと判定される。
【0059】
この場合、更新前のリンクk102については、更新後のリンクk102のみが同一の道路に対応するリンクkであると判定されているので、修正処理部20は、関連付け情報としてのリンクIDを、道路ネットワークデータ33の更新前後で「102」から「102」に修正する(実質的には修正しない)。一方、更新前のリンクk103については、同一の道路に対応するリンクkはないと判定されているので、削除処理部21は、更新前のリンクk103に関連付けられた学習地物データ36を学習データベース35から削除する。
【0060】
1−11.地物データの更新との整合性
修正部17による修正処理により、学習地物データ36と道路ネットワークデータ33とが、当該道路ネットワークデータ33の更新後においても適切に関連付けられた状態に維持される。一方で、更新データ53が更新道路ネットワークデータ54に加えて更新地物データ55をも含んでいる場合には、地図データベース31に記憶された地物データ34の更新処理も行われる。このとき、更新地物データ55に追加の地物の情報が含まれていた場合には、道路ネットワークデータ33の更新後の同一のリンクkについて、同一の属性を有する更新地物データ54に基づいて更新された地物データ34と学習地物データ36とが共に関連付けられることになる場合が生じ得る。このとき、これらが同一の属性を有し、かつ、相互に異なる内容である場合には、これらを例えば後述するナビゲーション用演算部22による経路案内等の用に供する場合に、学習地物データ36及び更新地物データ54に基づいて更新された地物データ34のいずれの情報を参照するかによって案内結果が変わってしまうという不都合が生じ得る。
【0061】
そこで、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、更新処理部16による更新後の同一のリンクkについて、同一の属性の地物データ34と学習地物データ36とが共に関連付けられることになった場合には、当該学習地物データ36が、学習データベース35から削除される構成となっている。これにより、同一のリンクkに関連付けられる学習地物データ36と地物データ34との間で矛盾が生じるのを防止して、ナビゲーション用演算部22に適切な経路案内を行なわせることができる。また、実際的に使用することのない不要な学習地物データ36を削除することにより、学習地物データ36を記憶するための記憶領域を節約することができる。なお、本実施形態においては、上記したような学習地物データ36を学習データベース35から削除する処理は、データ処理部14が行なう構成とされている。したがって、本実施形態においては、データ処理手段14が本発明における「データ削除手段」に相当する。
【0062】
1−12.ナビゲーション用演算部
ナビゲーション用演算部22は、自車位置表示、出発地から目的地までの経路計算、目的地までの経路案内、目的地検索等のナビゲーション機能を実行するためにアプリケーションプログラムAPに従って動作する演算処理手段である。例えば、ナビゲーション用演算部22は、地図データベース31から自車両周辺の地図データ32を取得して表示入力装置45に地図の画像を表示するとともに、当該地図の画像上に、自車位置情報に基づいて自位置マークを重ね合わせて表示する処理を行う。また、ナビゲーション用演算部22は、公知の方法により計算された出発地から目的地までの経路と自車位置情報とに基づいて、表示入力装置45及び音声出力装置46の一方又は双方を用いて進路案内を行う。その際、ナビゲーション用演算部22は、地図データベース31及び学習データベース35に格納されて記憶された道路ネットワークデータ33、地物データ34、及び学習地物データ36を参照し、これらに基づいて上記した各処理を行う。本実施形態に係るナビゲーション装置1は、地図データベース31に格納された道路ネットワークデータ33及び地物データ34に加えて、学習データベース35に格納された学習地物データ36をも参照してナビゲーション用演算部22が動作するので、より詳細な経路案内等を行なうことができる。その際、ナビゲーション用演算部22は、道路ネットワークデータ33と、更新後の道路ネットワークデータ33に適切に関連付けられた学習地物データ36とに基づいて動作するので、そのような詳細な経路案内を、現実の道路の変化に応じて適切に行なうことが可能となっている。
【0063】
なお、ナビゲーション用演算部22は、この他にも、リモートコントローラや表示入力装置45と一体的に設けられたタッチパネルなどのユーザインタフェース等、ナビゲーション装置1として必要な公知の各種構成に接続されている。
【0064】
2.サーバ装置の構成
次に、サーバ装置2の構成について説明する。図2に示すように、サーバ装置2は、複数の車両3のそれぞれに搭載された複数のナビゲーション装置1と通信可能に設けられている。そして、サーバ装置2は、現実の道路の変化に応じた地図データ32の更新データ53を生成して、当該更新データ53を各車両3に配信する。
【0065】
図2に示すサーバ装置2の各機能部は、互いに共通の或いはそれぞれ独立のCPU等の演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実装されて構成されている。本実施形態においては、サーバ装置2は、更新入力部51、更新データ生成部52、及び送受信部56を機能部として備えている。そして、これらの各機能部は、デジタル転送バス等の通信線を介して互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。ここで、各機能部がソフトウェア(プログラム)により構成される場合には、当該ソフトウェアは、前記演算処理装置が参照可能なRAMやROM等の記憶手段に記憶される。また、地図データベース61は、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、DVD−RAMを備えたDVDドライブ等のように、情報を記憶及び書き換え可能な記録媒体(記憶手段)をハードウェア構成として備えている。以下、本実施形態に係るサーバ装置2の各部の構成について詳細に説明する。
【0066】
2−1.地図データベース
地図データベース61は、地図データ62が記憶されたデータベースである。地図データ62は、基本的にはナビゲーション装置1が備える地図データベース31に記憶された地図データ32と同様、複数の交差点のそれぞれに対応する複数のノードnと、交差点間を接続する道路に対応する複数のリンクkとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータ63を含んでいる。各ノードnは、緯度及び経度で表現された地図上の位置(座標)の情報を有している。各リンクkは、ノードnを介して接続されている。また、各リンクkは、その属性情報として、道路種別、地域種別、リンク長、道路幅、リンク形状を表現するための形状補間点等の情報を有している。これらの各ノードn及び各リンクkは、それぞれ識別情報としての固有のノードID及びリンクIDを有している。また、地図データベース61に格納された地図データ62には、この他にも、道路上や道路周辺に設けられた各種の地物の情報、すなわち地物データ64が含まれる。この地物データ64には、例えば道路の路面に設けられた道路標示(ペイント標示)、横断歩道、停止線、最高速度等を表す速度標示、ゼブラゾーン、道路に沿って車線を分ける区画線(実線、破線、二重線等の各種区画線を含む。)、各車線の進行方向を指定する進行方向別通行区分標示(矢印標示、例えば、直進矢印、右折矢印等を含む)等が含まれる。そして、この地図データベース61の内容が、後述する更新データ53を生成するための基準となる。
【0067】
2−2.更新入力部
更新入力部51は、現実の道路の変化に応じて、当該変化の様子を入力するための端末である。ここで入力されるデータは、サーバ装置2が備える地図データベース61に格納された道路ネットワークデータ63や地物データ64等の内容に対して新たに追加、変更、削除等されるべき内容の具体的なデータとなる。例えば、現実に新たな道路が作られた場合、当該道路に関する部分の道路ネットワークデータ33を構成する交差点データ、接続データ、道路データ、及び形状データ等や、当該道路に関する部分の地物データ34を構成する各種の画像データ等が、新規データとして更新入力部51から入力される。また、例えば、道路が廃止されてなくなった場合には、当該道路の廃止に伴って不要となる部分の道路ネットワークデータ33や地物データ34を構成する各種データ等を指定する情報が入力される。また、例えば従来あった道路が拡張される等して形状が変化した場合には、当該道路の形状変化に伴う形状補完点等の形状データが、新規データとして更新入力部51から入力される。その他、例えば、特定の道路における最高速度等の交通規則が変更になった場合には、当該道路に関する最高速度等の属性情報が、新規データとして更新入力部51から入力される。この更新入力部51としては、具体的には、キーボード、マウス、モニタ等を備えたパーソナルコンピュータ等を用いることができる。
【0068】
2−3.更新データ生成部
更新データ生成部52は、現実の道路の変化を地図データ32に反映させるための更新データ53を生成する機能部である。更新データ53は、地図データベース31の更新処理を行うための情報をまとめたデータであり、地図データベース31に変更を加えて更新すべき内容を一つにまとめたデータとされている。本実施形態においては、更新データ53は、サーバ装置2に記憶された地図データベース61が有する地図データ62の内容を基準として、道路単位(リンクk単位)で、現実に変化があった道路の変更内容を差分として表す差分データとして生成される。また、更新データ53は、地図データ62が道路ネットワークデータ63及び地物データ64を有していることに対応して、更新道路ネットワークデータ54及び更新地物データ55を含んで生成される。ここで、更新地物データ55は、地図データベース31に記憶された地物データ34や地図データベース61に記憶された地物データ64と同様、道路ネットワークデータ33、63を構成するリンクkに関連付けられたデータとなっている。したがって、本実施形態においては、この更新地物データ55が本発明における「関連データ」に相当する。また、本実施形態においては、更新データ53が生成されると当該生成した更新データ53は自動的に送受信部56を介して車両3に配信される構成となっている。
【0069】
2−4.送受信部
送受信部56は、無線基地局等を介して複数の車両3に搭載されたナビゲーション装置1との間で無線通信によりデータの送受信を行う通信装置を備えている。この無線通信方法には、ナビゲーション装置1の送受信部14と共通のものが使用され、例えば携帯電話網や無線LAN(Local Area Network)等の公知の通信網を用いることができる。上記のとおり、本実施形態においては、送受信部56は、更新データ生成部52により生成される、現実の道路の変化に応じた道路ネットワークデータ33の更新データ53をナビゲーション装置1へ送信する。
【0070】
3.動作処理の手順
次に、本実施形態に係るナビゲーション装置1において実行される地図データ更新処理の手順(地図データ更新方法)について説明する。図14は、本実施形態に係る地図データ更新処理の全体の手順を示すフローチャートである。また、図15は、図14のステップ#07の修正処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する各処理の手順は、上記の各機能部を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。上記の各機能部がプログラムにより構成される場合には、ナビゲーション装置1が有する演算処理装置が、上記の各機能部を構成する地図データ更新プログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0071】
3−1.地図データ更新処理の手順
まず、本実施形態に係る地図データ更新システムに組み込まれたナビゲーション装置1による、地物データ学習処理及び地図データ更新処理の全体の手順について、図14に基づいて説明する。まず、画像情報取得部11は、自車両3に搭載された撮像装置41により撮像した画像情報Gを取得する(ステップ#01)。次に、画像認識部13により、画像情報Gに含まれる、道路の路面に設けられた各種の道路標示を対象地物とする画像認識処理を行う(ステップ#02)。画像認識部13による画像認識処理の結果はデータ処理部14に出力され、当該画像認識処理結果に基づくデータは、道路ネットワークデータ33を構成するリンクkに関連付けて学習データベース35に記憶される(ステップ#03)。次に、更新処理部16は、サーバ装置2により更新データ53が配信されているか否かを判定する(ステップ#04)。サーバ装置2により更新データ53が配信されていないと判定された場合には(ステップ#04:No)、再度ステップ#01〜ステップ#04の処理を実行する。
【0072】
一方、サーバ装置2により更新データ53が配信されていると判定された場合には(ステップ#04:Yes)、ナビゲーション装置1は送受信部15を介してサーバ装置2から更新データ53を受信して取得する(ステップ#05)。次に、更新処理手段16は、受信した更新データ53の内容に基づき、地図データベース31に記憶された道路ネットワークデータ33を更新する(ステップ#06)。なお、このとき、更新データ53に更新地物データ55が含まれている場合には、地図データベース31に記憶された地物データ34も更新する。次に、修正部17による修正処理を実行する(ステップ#07)。修正部17による修正処理については、次に説明する。修正処理が終了すると、ステップ#01に戻り、再度ステップ#01〜ステップ#07の処理を実行する。このようにして、本実施形態に係るナビゲーション装置1は、地物データ学習処理及び地図データ更新処理を逐次繰り返して実行する構成となっている。
【0073】
3−2.修正処理の手順
次に、ステップ#07の修正処理の詳細な手順について、図15に基づいて説明する。まず、同一性判定部18は、学習地物データ36が関連付けられた更新前のリンクkの両端のリンク端座標とリンク方向を取得する(ステップ#21)。次に、同一性判定部18は、更新後の道路ネットワークデータ33に含まれるリンクkの両端のリンク端座標とリンク方向を取得する(ステップ#22)。そして、同一性判定部18は、ステップ#21及びステップ#22で取得されたそれぞれのリンク端座標を比較し(ステップ#23)、所定の同一判定範囲内にあるか否かを判定する(ステップ#24)。同一判定範囲内にあると判定された場合には(ステップ#24:Yes)、次に同一性判定部18は、ステップ#21及びステップ#22で取得されたそれぞれのリンク端座標及びリンク方向を比較し(ステップ#25)、それぞれ所定の同一判定範囲内にあるか否かを判定する(ステップ#26)。同一判定範囲内にあると判定された場合には(ステップ#26:Yes)、同一性判定部18は、更新前の一つのリンクkと更新後の二つのリンクkの組み合わせとが同一の道路に対応するか否かを判定する(ステップ#27)。
【0074】
更新前の一つのリンクkと更新後の二つのリンクkの組み合わせとが同一の道路に対応しない、すなわち、更新前の一つのリンクkと更新後の一つのリンクkとが同一の道路に対応すると判定された場合には(ステップ#27:No)、修正先のリンクkは自動的に当該リンクkに決定される(ステップ#28)。一方、更新前の一つのリンクkと更新後の二つのリンクkの組み合わせとが同一の道路に対応すると判定された場合には(ステップ#27:Yes)、修正先決定部19は、学習地物データ36が有するリンク端座標との相対位置関係を表す情報に基づいて、学習地物データ36を関連付けるリンクkを決定する(ステップ#29)。次に、修正処理部20は、ステップ#28及びステップ#29で決定されたリンクkに基づいて、学習地物データ36が有する関連付け情報としてのリンクIDを修正する(ステップ#30)。次に、データ処理部14は、更新後の地物データ34を取得し(ステップ#31)、更新後の同一のリンクkについて、同一の属性の地物データ34と学習地物データ36とが共に関連付けられることになったか否かを判定する(ステップ#32)。
【0075】
同一のリンクkについて、同一の属性の地物データ34と学習地物データ36とが共に関連付けられていないと判定された場合には(ステップ#32:No)、修正処理を終了する。一方、同一のリンクkについて、同一の属性の地物データ34と学習地物データ36とが共に関連付けられることになったと判定された場合には(ステップ#32:Yes)、データ処理部14は、当該学習地物データ36を学習データベース35から削除した後(ステップ#33)、修正処理を終了する。また、ステップ#24においてリンク端座標が所定の同一判定範囲内にないと判定され(ステップ#24:No)、或いは、ステップ#26においてリンク方向が所定の同一判定範囲内にないと判定された場合には(ステップ#26:No)、削除処理部21は、当該学習地物データ36を学習データベース35から削除した後(ステップ#34)、修正処理を終了する。
【0076】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態においては、学習地物データ36を追加データとして、本発明を学習地物データ36と道路ネットワークデータ33とを当該道路ネットワークデータ33の更新後においても適切に関連付けられた状態に維持することが可能な地図データ更新システムに適用する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、更新処理部16とは異なる手段により取得され、各リンクkに関連付けられて記憶される情報であれば、学習地物データ36以外の各種の情報を追加データとすることもできる。例えば、画像認識部13による画像認識結果に基づいて取得される、ある道路についての最高速度や進行方向等の交通規制を表すリンク属性データ37を追加データとして、本発明に係る地図データ更新システムに適用することも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、図示しないアクセル開度検出手段やブレーキ操作量検出手段等からの各種の情報に基づいて取得される車両の挙動に関するデータ、すなわち車両挙動データ38を追加データとして、本発明に係る地図データ更新システムに適用することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0077】
(2)また、リンク属性データ37や車両挙動データ38を追加データとして、本発明に係る地図データ更新システムに適用する場合においては、車両3はナビゲーション装置1と一体的に、或いは別体で、車両3の各部の動作を制御するための車両制御部26を備える構成とし、車両制御部26は、地図データベース31に記憶された道路ネットワークデータ33及び学習データベース35に記憶されたリンク属性データ37や車両挙動データ38を参照して動作する構成とするのが好ましい。この構成では、道路ネットワークデータ33に加えてリンク属性データ37や車両挙動データ38をも参照して車両制御部26が動作するので、より精密な車両制御を行なうことができる。その際、車両制御部26は、道路ネットワークデータ33と、地図データ更新システムにより更新後の道路ネットワークデータ33に適切に関連付けられたリンク属性データ37及び車両挙動データ38とに基づいて動作するので、そのような精密な車両制御を、現実の道路の変化に応じて適切に行なうことが可能となる。
【0078】
(3)上記の実施形態においては、同一性判定部18により更新後の複数のリンクkの組み合わせが更新前の一つのリンクkと同一の道路に対応すると判定された場合には、修正先決定部19が、学習地物データ36が有するリンク端座標との相対位置関係を表す情報に基づいて、関連付け情報としてのリンクIDを更新後のいずれのリンクkへの関連付けを表すように修正するかを決定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばそのような場合には、削除処理部21が更新前のリンクkに関連付けられた学習地物データ36を学習データベース35から削除する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0079】
(4)上記の実施形態においては、更新処理部16による更新後の同一のリンクkについて、同一の属性の地物データ34と学習地物データ36とが共に関連付けられることになった場合には、当該学習地物データ36が学習データベース35から削除される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばそのような場合には、当該地物データ34を地図データベース31から削除する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0080】
(5)上記の実施形態においては、同一性判定部18がリンク方向についての同一判定処理を行うに際して、リンクk上におけるリンク端から当該リンク端に隣接する形状補完点mへ向かう方向をリンク方向として同一判定処理を行なう場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばリンクkのリンク長が短い場合やリンクkの形状が略直線形状であるとみなせるような場合等には、同一性判定部18が一方のリンク端から他方のリンク端へ向かう方向をリンク方向として同一判定処理を行なう構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0081】
(6)上記の実施形態においては、地図データベース31及び学習データベース35が、それぞれ独立の記録媒体をハードウェア構成として備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、地図データベース31と学習データベース35とが共通の記録媒体内に格納された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0082】
(7)上記の実施形態においては、ナビゲーション装置1が、サーバ装置2から配信される更新データ53を、携帯電話網や無線LAN(Local Area Network)等の通信網を介した無線通信により受信して取得する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばそのような更新データ53を、光ディスクや磁気ディスク等の記録媒体を介して取得する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、サーバ装置2から受け取った更新データ53を配信可能な状態で備えたデータ配信用の端末装置と、ナビゲーション装置1とをケーブル等で接続して、端末装置との間の有線通信により更新データ53を取得する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、交差点に対応するノードと交差点間を接続する道路に対応するリンクとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータと、各リンクに関連付けられる追加データとを記憶して備えるシステムに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 ナビゲーション装置
14 データ処理部(データ取得手段、データ削除手段)
16 更新処理部 (更新処理手段)
17 修正部(修正手段)
18 同一性判定部(同一性判定手段)
19 修正先決定部(修正先決定手段)
20 修正処理部(修正処理手段)
21 削除処理部(削除処理手段)
22 ナビゲーション用演算部(ナビゲーション用演算手段)
31 地図データベース (第一記憶手段)
33 道路ネットワークデータ
34 地物データ(関連データ)
35 学習データベース(第二記憶手段)
36 学習地物データ(追加データ)
37 リンク属性データ(追加データ)
38 車両挙動データ(追加データ)
53 更新データ
55 更新地物データ(関連データ)
n ノード
k リンク
m 形状補完点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点に対応するノードと交差点間を接続する道路に対応するリンクとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータを記憶する第一記憶手段と、
現実の道路の変化に応じた前記道路ネットワークデータの更新データを受け取って、前記道路ネットワークデータを更新する更新手段と、
前記更新手段とは異なる手段により取得され、各リンクに関連付けられる追加データを、当該関連するリンクへの関連付けを表す関連付け情報とともに記憶する第二記憶手段と、
前記更新手段による前記道路ネットワークデータの更新処理が実行された際に、更新によって変化したリンクについて、更新前後の各リンクのリンク端座標とリンク方向とに基づいて、前記第二記憶手段に記憶された各追加データの前記関連付け情報を修正する修正手段と、
を備えた地図データ更新システム。
【請求項2】
前記修正手段は、
更新前後の前記リンクについて前記リンク端座標と前記リンク方向とを比較して、少なくともいずれか一方のリンク端の前記リンク端座標及び前記リンク方向が所定の同一判定範囲内にある場合に、同一の道路に対応するリンクであると判定する同一性判定手段と、
前記関連付け情報を、前記同一性判定手段により同一の道路に対応するリンクであると判定された更新後のリンクへの関連付けを表すように修正する修正処理手段と、
を備える請求項1に記載の地図データ更新システム。
【請求項3】
前記道路ネットワークデータは、前記リンクの形状を表現するための形状補完点をさらに含み、
前記同一性判定手段は、前記リンク上におけるリンク端から当該リンク端に隣接する前記形状補完点へ向かう方向を前記リンク方向として判定を行なう請求項2に記載の地図データ更新システム。
【請求項4】
前記修正手段は、
前記同一性判定手段により、更新後の複数のリンクの組み合わせが更新前の一つのリンクと同一の道路に対応すると判定された場合に、前記追加データが有する前記リンク端座標との相対位置関係を表す情報に基づいて、前記関連付け情報を更新後のいずれの前記リンクへの関連付けを表すように修正するかを決定する修正先決定手段をさらに備える請求項2又は3に記載の地図データ更新システム。
【請求項5】
前記修正手段は、更新前の前記リンクについて、前記同一性判定手段により同一の道路に対応するリンクであると判定される前記リンクがなかった場合には、当該リンクに関連付けられた前記追加データを前記第二記憶手段から削除する削除処理手段をさらに備える請求項2から4のいずれか一項に記載の地図データ更新システム。
【請求項6】
前記更新データが、前記リンクに関連付けられた関連データを有する場合であって、
前記更新手段による更新後の同一の前記リンクについて、同一の属性の前記関連データと前記追加データとが共に関連付けられることになった場合に、当該追加データを前記第二記憶手段から削除するデータ削除手段を備えた請求項1から5のいずれか一項に記載の地図データ更新システム。
【請求項7】
前記追加データは、車両に設けられたデータ取得手段により、独自に取得されたデータである請求項1から6のいずれか一項に記載の地図データ更新システム。
【請求項8】
前記追加データは、道路上に設けられた地物に関する地物データ、前記リンクの属性に関するリンク属性データ、及び車両の挙動に関する車両挙動データのいずれか一つ以上を含む請求項7に記載の地図データ更新システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の地図データ更新システムにより更新される前記第一記憶手段及び前記第二記憶手段と、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記第一記憶手段及び第二記憶手段に記憶された前記道路ネットワークデータ及び前記追加データを参照して動作するナビゲーション用演算処理手段と、
を備えたナビゲーション装置。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の地図データ更新システムにより更新される前記第一記憶手段及び第二記憶手段と、
自車位置を検出する自車位置検出手段と、
前記第一記憶手段及び第二記憶手段に記憶された前記道路ネットワークデータ及び前記追加データを参照して動作する車両制御手段と、
を備えた車両制御装置。
【請求項11】
交差点に対応するノードと交差点間を接続する道路に対応するリンクとの接続関係により道路を表す道路ネットワークデータを記憶する第一記憶手段を備えた地図データ更新システムにおける地図データ更新プログラムであって、
現実の道路の変化に応じた前記道路ネットワークデータの更新データを受け取って、前記道路ネットワークデータを更新する更新ステップと、
前記更新ステップ以外により取得され、各リンクに関連付けられる追加データを、当該関連するリンクへの関連付けを表す関連付け情報とともに第二記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記更新ステップによる前記道路ネットワークデータの更新処理が実行された際に、更新によって変化したリンクについて、更新前後の各リンクのリンク端座標とリンク方向とに基づいて、前記記憶ステップで記憶された各追加データの前記関連付け情報を修正する修正ステップと、
をコンピュータに実行させる地図データ更新プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−237124(P2010−237124A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87088(P2009−87088)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】