説明

基板処理方法および基板処理装置

【課題】基板表面に形成されたパターンへのダメージを抑制しながら基板表面を良好に洗浄処理することができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】 基板保持手段11に保持され、凝固対象液としてのDIWが付着した基板Wの表面Wfに対し、液滴供給手段41の二流体ノズル418から、DIWの凝固点より低い温度に調整された洗浄液としてのHFEの液滴を基板表面Wfに供給し、パターン近傍のDIWを凝固させると共に物理洗浄する。これにより、パターンを補強してダメージを防止した上で基板表面Wfの洗浄を行い、別途凍結の手段を設ける場合に比べてコストを低減し、処理に要する時間を短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」と記載する)に対して洗浄処理を施す基板処理方法および基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品等の製造工程では、基板の表面に成膜やエッチングなどの処理を繰り返し施して微細パターンを形成していく工程が含まれる。ここで、微細加工を良好に行うためには基板表面を清浄な状態に保つ必要があり、必要に応じて基板表面に対して洗浄処理が行われる。
【0003】
基板表面を洗浄する処理として、例えば特許文献1に、純水と窒素ガスを混合して生成した純水の液滴を、被処理面である基板表面に供給して基板表面の洗浄処理を行う技術が開示されている。
【0004】
しかし、半導体に代表されるデバイスの微細化、高機能化、高精度化にともなって、基板の洗浄処理時における基板表面に形成されたパターンの欠陥発生が問題となっている。即ち、特許文献1に記載される装置においては、純水の液滴が有する運動エネルギーを高めるように液滴の生成条件を調整することにより、汚染物質が基板表面から除去される割合を向上させることができるものの、パターンを倒壊させてしまうという問題が発生していた。
【0005】
このような問題に対し、特許文献2では、基板表面に脱イオン水(De Ionized Water:以下「DIW」と記載する)を供給し、パターン間隙内部にまでDIWを侵入させた後、基板を回転させて振り切ることにより余分なDIWを除去してパターン間隙内部にDIWを残留させ、冷却することによりDIWを凍結し、その後物理洗浄する発明が開示されている。これにより、DIWが凝固した氷により、パターンが構造的に補強されることになり、物理洗浄におけるパターンへのダメージを抑制しながら基板表面を良好に洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−318181号公報(第1図)
【特許文献2】特開2008−243981号公報(第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に示すような従来技術では、パターン間隙内部に侵入させたDIWを冷却して凍結させるために、基板表面上を揺動可能な冷却ガス吐出ノズルを用いて、基板表面にDIWの凝固点よりも低温の窒素ガスを吐出している。このため、冷却ガス吐出ノズル及びそのノズルを揺動させる機構に関する部材や基板表面に吐出する冷媒が別途必要となっていた。これらは、装置自身のコストやランニングコストを上昇させ、また処理にかかる時間を増大する要因となる。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に形成されたパターンへのダメージを抑制しながら基板表面を良好に洗浄処理することができ、洗浄に要する各種コストを削減すると共に、洗浄処理に要する時間を短縮できる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、この発明は、所定のパターンが形成され、少なくともパターン近傍に凝固体を形成可能な凝固対象液が付着した基板表面に対し、凝固対象液より低い凝固点を有し、凝固対象液の凝固点より低い温度の液滴を供給する液滴供給工程を備えている。
【0010】
また、この発明は、表面の少なくともパターン近傍に凝固体を形成可能な凝固対象液が付着した基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板表面に、凝固対象液より低い凝固点を有し、凝固対象液の凝固点より低い温度の液滴を供給する液滴供給手段と、を備えている。
【0011】
また、液滴供給工程として、二流体ノズルにより洗浄用気体と洗浄液を混合して洗浄液の液滴を生成する液滴生成工程を有することも可能である。
【0012】
また、基板表面に凝固対象液を供給する凝固対象液供給工程を更に備えることもできる。
【0013】
このように構成された発明(基板処理方法及び装置)では、凝固対象液が付着した基板表面に対し、凝固対象液の凝固点よりも低温の洗浄液の液滴を供給することにより、凝固対象液を凝固してパターンを構造的に補強すると共に、基板表面を物理洗浄している。これにより、パターンのダメージを防止した上で基板表面を良好に洗浄できる能力を維持したまま、コストを低減し、処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0014】
また、液滴供給工程の前に、凝固対象液と互いに混合し難い置換液を供給して、パターン近傍を除く基板表面から凝固対象液を除去する凝固対象液孤立工程を更に有することも可能である。
【0015】
このように構成された発明では、凝固対象液が付着した基板表面に対し、凝固対象液と互いに混合し難い置換液を供給することで、パターン上面を除くパターン近傍の基板表面から凝固対象液を除去することができる。従って、パターン上面にDIWの液膜を残留させることがないため、パターン上面に凝固対象液の凝固体が形成され、凝固体内部にパーティクル等が残留することがない。
【0016】
また、液滴供給工程では、二流体ノズルに供給される洗浄用気体を凝固対象液の凝固点より低い温度とする、二流体ノズルに供給される洗浄液を凝固対象液の凝固点より低い温度とする、又は、二流体ノズルに供給される洗浄用気体及び洗浄液の双方を凝固対象液の凝固点より低い温度とすることが可能である。
【0017】
このように構成された発明では、二流体ノズルに供給される洗浄液又は洗浄用気体あるいはその双方を凝固対象液の凝固点より低い温度として混合し、洗浄液の液滴を生成している。これにより、凝固対象液の凝固点より低い温度の洗浄液の液滴及び凝固対象液の凝固点より低い温度の洗浄用気体の両方を基板表面に供給することができ、基板表面の物理洗浄を行うと同時に、凝固対象液を凝固することができ、パターンを構造的に補強しながら基板表面の洗浄を行うことができる。
【0018】
また、前記の液滴供給工程は、基板表面に、凝固対象液より低い凝固点を有し、凝固対象液の凝固点より低い温度の処理液を供給する処理液供給工程を備えることも可能である。
【0019】
このように構成された発明では、二流体ノズルにより基板表面を物理洗浄しながら、凝固対象液の凝固点より低い温度の処理液を基板表面に供給しており、二流体ノズルにより基板表面から除去されたパーティクル等が基板表面に再付着することを防止しながら、基板外に押し流すことが可能となり、洗浄能力をさらに向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、パターンが形成され凝固対象液が付着した基板表面に対し、凝固対象液の凝固点より低い温度の洗浄液の液滴を供給することにより、凝固対象液を凝固してパターンを構造的に補強すると共に、基板表面を物理洗浄している。これにより、別途凝固対象液を凝固するための冷媒を供給する手段及び工程を設けるよりも装置コストやランニングコストを低減でき、また、処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る基板処理装置の概略構成を示す正面図である。
【図3】第一の実施の形態にかかる処理ユニットの全体構成を示す図である。
【図4】図3の処理ユニットにおける基板保持手段および排液回収手段の構成を示す図である。
【図5】図3の処理ユニットにおける雰囲気遮断手段の構成を示す図である。
【図6】図3の処理ユニットにおける洗浄手段の概略構成を示す正面図である。
【図7】図6の洗浄手段における第二HFE供給部の構成を示す断面図である。
【図8】図6の洗浄手段における洗浄用窒素ガス供給部の構成を示す断面図である。
【図9】図6の洗浄手段で使用する二流体ノズルの構成を示す断面図である。
【図10】図3の処理ユニットにおける凝固対象液供給手段、置換液供給手段、リンス液供給手段および乾燥用気体供給手段の構成を示す図である。
【図11】第一の実施の形態にかかる基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】第二の実施の形態の処理ユニットにおける処理液供給手段の構成を示す図である。
【図13】第二の実施の形態にかかる基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明において、基板とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板をいう。また、回路パターン等の各種パターンが形成される基板の面を表面と称し、その反対側の面を裏面と称する。また、下方に向けられた基板の面を下面と称し、上方に向けられた基板の面を上面と称する。
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、半導体基板の処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明する。尚、本発明は、半導体基板の処理に限らず、液晶表示器用のガラス基板などの各種の基板の処理にも適用することができる。また、本発明が適用できる基板処理装置は、洗浄処理、および乾燥処理を同じ装置内で連続して行うものだけに限らず、単一の処理のみを行う装置にも適用可能である。
【0024】
<第一実施形態>
図1及び図2はこの発明にかかる基板処理装置9の概略構成を示す図である。図1は基板処理装置9の平面図であり、図2は図1の基板処理装置9を矢印X1の方向から見た正面図である。この装置は半導体基板等の基板W(以下、単に「基板W」と記載する)の表面に付着しているパーティクル等の汚染物質(以下「パーティクル等」と記載する)を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板処理装置である。
【0025】
この基板処理装置9では、一方の端部(図1において下側)に基板Wを処理ユニット91に搬入出する移載装置92が配置される。この移載装置92の一端(図1において左側)に、基板Wを収容するカセット933が載置可能に構成されたカセットステーション93が設けられている。移載装置92には、カセット933から処理工程前の基板Wを一枚ずつ取出すと共に、処理工程後の基板Wをカセット933内に1枚ずつ収容する搬送アーム923を備えた基板搬送装置921が備えられている。カセットステーション93の載置部931は、基板Wを例えば25枚収納したカセット933を載置できる構成になっている。基板搬送装置921は、水平、昇降方向に移動自在であると共に、鉛直軸を中心に回転できるように構成されている。
【0026】
次に、処理ユニット91の構成について図3を用いて説明する。図3は処理ユニット91の構成を示す模式図である。処理ユニット91は、表面に凝固対象液が付着した基板Wを、基板表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持し、回転する基板保持手段11と、基板保持手段11をその内側に収容し、基板保持手段11及び基板Wからの飛散物等を受け止めて排気・排液する排液回収手段13と、基板保持手段11に保持された基板Wの表面Wfに対向して配置され、基板表面Wfの上方の空間を外気から遮断する雰囲気遮断手段15と、基板表面Wfに、凝固対象液の凝固点より低い温度の液滴を供給する液滴供給手段41と、雰囲気遮断手段15の後述する遮断部材の中央から基板表面Wfの中心に向けて液体及び気体を供給するセンター供給手段20と、後述する洗浄プログラムに基づいて基板処理装置9の各部の動作を制御する制御ユニット95と、を有する。
【0027】
また、処理ユニット91は、中空の略角柱形状を有する側壁961と、側壁961に略水平に固設され、処理ユニット91内の空間を仕切る上側ベース部材966及び下側ベース部材964と、側壁961の内部であって上側ベース部材966の上方である上側空間967と、側壁961の内部であって、上側ベース部材966の下方であり、かつ下側ベース部材964の上方である処理空間962と、側壁961の内部であって下側ベース部材964の下方である下側空間969と、を有する。尚、本実施形態において側壁961は略角柱形状としたが、側壁の形状はそれに限定されず、略円柱形状やその他の形状としても良い。
【0028】
上側ベース部材966は側壁961の上方(図3における上側)に略水平に固設され、処理ユニット91の内部の空間である上側空間967と処理空間962の間を仕切っている。上側ベース部材966の下面中央付近には、上側ベース部材966の下面から、処理ユニット91の上端に連通する雰囲気導入路968が設けられている。また、雰囲気導入路968の上端付近には、処理空間962へ清浄な雰囲気を供給するファンフィルタユニット963が設けられている。
【0029】
下側ベース部材964は側壁961の中程(図3における下側)に略水平に固設され、処理ユニット91の内部の空間である処理空間962と下側空間969の間を仕切っている。下側ベース部材964には複数の排気口965が設けられており、各排気口965は図示しない排気系統に接続され、処理空間962内の雰囲気を外部に排出している。
【0030】
ここで、処理空間962内は清浄な雰囲気が保たれており、基板Wの洗浄等が行われる空間である。また、上側空間967及び下側空間969は処理空間962内に設置される各部材を駆動するための駆動源等が配設される空間である。
【0031】
上側空間967内の雰囲気導入路968に設置されたファンフィルタユニット963は、処理ユニット91上方から雰囲気を取り込み、内蔵したHEPAフィルタ等により雰囲気中の微粒子等を捕集した上で、下方である処理空間962内へ清浄化された雰囲気を供給する。
【0032】
ファンフィルタユニット963を通して処理空間962内に供給された雰囲気は、処理空間962の上方から下方へ向かう流れとなり、最終的に排気口965から処理空間962の外に排出される。これにより、後述する基板を処理する各工程において発生する微細な液体の微粒子等を、処理空間962の中を上から下に向かって流れる気流により下向きに移動させて排気口965から排出する。よって、これら微粒子が基板Wや処理空間962内の各部材に付着することを防止できる。
【0033】
尚、処理空間962の側壁961の一部には、図示しない基板搬入出口が設けられており、基板搬送装置921が搬送アーム923を差し込んで処理ユニット91との間で基板Wの受け渡しが可能な構成となっている。
【0034】
次に、基板保持手段11及び排液回収手段13の構成について図4を用いて説明する。図4は基板保持手段11及び排液回収手段13の構成を示す模式図である。
【0035】
まず、基板保持手段11について説明する。基板保持手段11の本体部材112は下側ベース部材964の上に固設されており、本体部材112の上方に円板状のスピンベース113が回転可能に略水平に支持されている。スピンベース113の下面中心には中心軸111の上端がネジなどの締結部品によって固定されている。また、スピンベース113の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン115が立設されている。チャックピン115は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース113の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン115のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。
【0036】
各チャックピン115は公知のリンク機構や褶動部材等を介してチャックピン駆動機構119内のエアシリンダに連結されている。尚、チャックピン駆動機構119は本体部材112の内部に設置される。また、チャックピン駆動機構119は制御ユニット95と電気的に接続されている。そして、制御ユニット95から基板保持手段11への動作指令により、チャックピン駆動機構119のエアシリンダが伸縮することで、各チャックピン115は、その基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、その基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。尚、チャックピン115の駆動源としてエアシリンダ以外に、モーターやソレノイド等の公知の駆動源を用いることも可能である。
【0037】
そして、スピンベース113に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン115を解放状態とし、基板Wに対して洗浄処理等を行う際には、各チャックピン115を押圧状態とする。各チャックピン115を押圧状態とすると、各チャックピン115は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース113から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。なお、この実施形態では、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されており、表面Wfがパターン形成面となっている。
【0038】
また、基板保持手段11の中心軸111には、モーターを含む基板回転機構117の回転軸が連結されている。尚、基板回転機構117は本体部材112の内部に設置される。また、基板回転機構117は制御ユニット95と電気的に接続されている。そして、制御ユニット95から基板保持手段11への動作指令により、基板回転機構117が駆動されると、中心軸111に固定されたスピンベース113が回転中心A0を中心に回転する。
【0039】
次に、排液回収手段13について説明する。基板保持手段11の周囲であって下側ベース部材964の上側に略円環状のカップ130が、基板保持手段11に保持されている基板Wの周囲を包囲するように設けられている。カップ130は基板保持手段11及び基板Wから飛散する液体などを捕集することが可能なように回転中心A0に対して略回転対称な形状を有している。尚、図中、カップ130については説明のため断面形状を示している。
【0040】
カップ130は互いに独立して昇降可能な内構成部材131、中構成部材133及び外構成部材135で構成される。図4に示すとおり、内構成部材131の上に中構成部材133及び外構成部材135が重ねられた構造を有する。内構成部材131、中構成部材133及び外構成部材135は、下側空間969に設けられた、モーター及びボールネジ等の公知の駆動機構で構成されたガード昇降機構137にそれぞれ接続されている。また、ガード昇降機構137は制御ユニット95と電気的に接続されている。そして、制御ユニット95から排液回収手段13への動作指令によりガード昇降機構137が駆動されると、内構成部材131、中構成部材133及び外構成部材135がそれぞれ独立に、又は複数の部材が同期して回転中心A0に沿って上下方向に移動する。
【0041】
内構成部材131には、内構成部材131、中構成部材133及び外構成部材135それぞれで捕集された液体をそれぞれ別の経路で排液処理系へ導くための収集溝が3つ設けられている。それぞれの収集溝は回転中心A0を中心とする略同心円状に設けられ、各収集溝には図示しない排液処理系へと接続する配管がそれぞれ管路接続されている。
【0042】
カップ130は内構成部材131、中構成部材133及び外構成部材135のそれぞれの上下方向の位置を組合せて使用する。例えば、内構成部材131、中構成部材133及び外構成部材135の全てが下位置にあるホームポジション、内構成部材131及び中構成部材133が下位置であって外構成部材135のみ上位置にある外捕集位置、内構成部材131が下位置であって中構成部材133及び外構成部材135が上位置に有る中捕集位置及び内構成部材131、中構成部材133及び外構成部材135の全てが上位置にある内捕集位置である。
【0043】
ホームポジションは基板搬送装置921が基板Wを処理ユニット91内に搬入出する場合などにおいて取られる位置である。外捕集位置は外構成部材135で受け止めた液体を捕集して外側の収集溝に導く位置であり、中捕集位置は中構成部材133で受け止めた液体を中間の収集溝に導く位置であり、また、内捕集位置は内構成部材131で受け止めた液体を内側の収集溝に導く位置である。
【0044】
このような構成の排液回収手段13を用いることにより、処理に使用される液体に応じて内構成部材131、中構成部材133及び外構成部材135のそれぞれの位置を変更して分別捕集することが可能となり、それぞれの液体を分別し、対応する排液処理系に排出することで、液体の再利用や混合することが危険な複数の液体を分別して処理することが可能となる。
【0045】
次に、雰囲気遮断手段15の構成について図5を用いて説明する。図5は雰囲気遮断手段15の構成を示す模式図である。雰囲気遮断手段15の基板対向部材である遮断部材151は、中心部に開口を有する円板状に形成されている。遮断部材151の下面は、基板Wの表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材151は、その内部が中空であって略円筒形状を有する支持軸152の下方に回転可能に略水平に支持される。
【0046】
支持軸152の上端部は遮断部材151を回転する遮断部材回転機構153の下面に固設される。遮断部材回転機構153は、例えば中空モーター156及び中空軸157を有する。中空軸157の一端は中空モーター156の回転軸に連結されており、他端は支持軸152の中を通して遮断部材151の上面に連結されている。また、遮断部材回転機構153は制御ユニット95と電気的に接続されている。そして、制御ユニット95から雰囲気遮断手段15への動作指令により遮断部材回転機構153が駆動されると、遮断部材151が支持軸152の中心を通る鉛直軸周りに回転される。遮断部材回転機構153は、基板保持手段11に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材151を回転させるように構成されている。
【0047】
尚、遮断部材回転機構153の上面から遮断部材151の中心部の開口にいたるまで、後述する第一供給管及び第二供給管が挿通可能なように、中空モーター156及び中空軸157の内部空間を含む連通した中空部が形成されている。
【0048】
遮断部材回転機構153の一側面(図5における左側面)にはアーム154の一端が接続され、アーム154の他端は上下軸155の上端付近に接続されている。上下軸155は排液回収手段13のカップ130の周方向外側であって下側ベース部材964の上に固設された円筒形状のベース部材158に昇降可能に取り付けられる。上下軸155には、ベース部材158の中を通して、モーター及びボールネジ等の公知の駆動機構で構成された遮断部材昇降機構161が接続されている。尚、遮断部材昇降機構161は下側空間969に設けられている。また、遮断部材昇降機構161は制御ユニット95と電気的に接続されている。そして、制御ユニット95から雰囲気遮断手段15への動作指令により遮断部材昇降機構161が駆動されると、遮断部材151がスピンベース113に近接し、逆に離間する。
【0049】
すなわち、制御ユニット95は、遮断部材昇降機構161の動作を制御して、処理ユニット91に対して基板Wを搬入出させる際には、遮断部材151を基板保持手段11の上方の離間位置に上昇させる一方、基板Wに対して後述するDIWの供給や基板Wの乾燥等を行う際には、遮断部材151を基板保持手段11に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで下降させる。
【0050】
次に、液滴供給手段41の構成について図6を用いて説明する。図6は液滴供給手段41の構成を示す模式図である。基板表面Wfに液滴を供給する二流体ノズル418は、上側ベース部材966の下面に設置されたノズル駆動機構411により、昇降及び旋回可能に支持されている。ノズル駆動機構411のベース部材414は、上側ベース部材966の下面であって雰囲気導入路968の外側で下方に伸びるように固設されている。尚、ベース部材414は後述する旋回軸415と上下駆動部413及び旋回駆動部412を接続するために中空の略円筒形状に構成される。旋回軸415はベース部材414に対して昇降可能及び回転可能に支持される。旋回軸415の下面にはアーム416の一端が結合されており、アーム416の他端に二流体ノズル418が取り付けられている。
【0051】
旋回軸415はベース部材414の中を通して、モーター及びボールネジ等の公知の駆動機構で構成された上下駆動部413及び、モーター及びギア等の公知の駆動機構で構成された旋回駆動部412に接続されている。また、上下駆動部413及び旋回駆動部412は制御ユニット95と電気的に接続されている。尚、上下駆動部413及び旋回駆動部412は上側空間967に配設される。
【0052】
制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令により上下駆動部413が駆動されると、旋回軸415が上下に移動し、アーム415に取り付けられている二流体ノズル418を上下に移動させる。また、制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令により旋回駆動部412が駆動されると、旋回軸415が中心軸A1を中心に回転し、アーム416を旋回することで、アーム416に取り付けられた二流体ノズル418を揺動させる。
【0053】
二流体ノズル418は配管437を介して、第二HFE供給部433に管路接続されている。また、配管437には開閉弁435が介挿されており、開閉弁435は常時閉成とされている。また、開閉弁435は制御ユニット95と電気的に接続されている。そして、制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令により開閉弁435が開成すると、第二HFE供給部433から例えば20℃(摂氏)に温度調整されたHFEが配管437を介して二流体ノズル418へ圧送される。この、配管437、開閉弁435及び第二HFE供給部433が、洗浄液供給手段431を構成する。尚、第二HFE供給部433は、基板処理装置9の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。
【0054】
図7に第二HFE供給部433の構成を示す。第二HFE供給部433は、HFEを貯留するHFEタンク461、HFEタンク461からのHFEを圧送するポンプ463及びHFEの温度を調整する温度調整ユニット467を有する。HFEタンク461に管路接続されたポンプ463はHFEを加圧して温度調整ユニット467に送出する。ポンプ463を介して温度調整ユニット467に供給されたHFEは、温度調整ユニット467において例えば20℃(摂氏)に温度調整され、配管437を介して二流体ノズル418に供給される。ここで、温度調整ユニット467はペルチェ素子による温度調整装置や冷媒を用いた熱交換器など、公知の温度調整手段を用いることができる。尚、第二HFE供給部433のポンプ463は基板処理装置9が起動した時点から常時動作している。
【0055】
ここで、HFEとはハイドロフルオロエーテル(Hydrofluoroether)を主たる成分とする液体をいう。「HFE」として例えば住友スリーエム株式会社製の商品名ノベック(登録商標)シリーズのHFEを用いることができる。具体的には、HFEとして、例えば化学式:COCH、化学式:COC、化学式:C13OCH、化学式:CHF−CH(CH)O−CHF、化学式:CHFOCH(凝固点:−(マイナス)38℃(摂氏)以下)などを用いることができる。これらのHFEは希釈されていても良い。
【0056】
図6に戻る。二流体ノズル418は配管455を介して洗浄用窒素ガス供給部453と管路接続されている。また、洗浄用窒素ガス供給部453は制御ユニット95に電気的に接続されている。この洗浄用窒素ガス供給部453は、制御ユニット95からの動作指令により、例えば−(マイナス)100℃(摂氏)の窒素ガスを配管455を介して二流体ノズル418に供給する。この、配管455及び洗浄用窒素ガス供給部453が、洗浄用気体供給手段451を構成する。尚、洗浄用窒素ガス供給部453は、基板処理装置9の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。
【0057】
図8に洗浄用窒素ガス供給部453の構成を示す。洗浄用窒素ガス供給部453は、液体窒素の冷熱を用いて窒素ガスを冷却するガス冷却ユニット440、液体窒素を貯蔵する液体窒素タンク442、液体窒素タンク442から液体窒素を冷却ユニット440へ供給するポンプ443、窒素ガスを貯蔵する窒素ガスタンク445及び窒素ガスタンク445から窒素ガスを冷却ユニット440へ供給するポンプ446を有する。
【0058】
ガス冷却ユニット440の容器441は内部に液体窒素を貯留する事ができるようタンク状になっており、液体窒素の温度(−(マイナス)195.8℃(摂氏))に耐えうる材料、例えば、ガラス、石英またはHDPE(高密度ポリエチレン:High Density Polyetylene)により形成されている。なお、容器441を断熱容器で覆う二重構造を採用してもよい。この場合、断熱容器は、外部の雰囲気と容器441との間での熱移動を抑制するために、断熱性の高い材料、例えば発泡性樹脂やPVC(ポリ塩化ビニル樹脂:Polyvinyl Chloride)などにより形成するのが好ましい。
【0059】
容器441は配管444を介して液体窒素タンク442に管路接続されており、配管444にはポンプ443が介挿されている。また、ポンプ443は制御ユニット95と電気的に接続されている。また、容器442内には液面センサ(図示省略)が設けられ、制御ユニット95と電気的に接続されている。制御ユニット95は、液面センサが検出した値に基づいてポンプ443の動作を制御することにより、容器442内に貯留される液体窒素の量を一定に保持する。
【0060】
また、容器441の内部には、ステンレス、銅などの金属管で形成されたコイル状の熱交換パイプ448がガス通送路として設けられ、容器441に貯留された液体窒素に浸漬されている。熱交換パイプ448の一方の端(図8において容器441の側壁上方から右に突出する側)は、配管447を介して窒素ガスタンク445に管路接続されており、配管447にはポンプ446が介挿されている。また、ポンプ446は制御ユニット95と電気的に接続されている。また、熱交換パイプ448の他方の端(図8において容器441の上方に突出する側)は、配管455を介して二流体ノズル418に管路接続されている。
【0061】
制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令によりポンプ446が駆動されると、窒素ガスタンク445から窒素ガスがガス冷却ユニット440内の熱交換パイプ448に供給され、窒素ガスが熱交換パイプ448内を通過する間、容器441内に貯留された液体窒素の冷熱により冷却される。熱交換パイプ448内を通過するうちに冷却された窒素ガスは配管455を介して二流体ノズル418へと供給される。
【0062】
尚、熱交換パイプ448の他方の端(図8において容器441の上方に突出する側)と容器441の間に微小な空間が設けられており、容器441の内部の空間から排気管路449に至る連通した流通経路を形成している。容器441の内部に貯留された液体窒素は、熱交換パイプ448の中を流れる窒素ガスを冷却して気化し、気化した窒素ガスは、この流通経路を通り排気管路449を介して図示しない排気系統に排出される。
【0063】
尚、本実施形態においては洗浄用気体として窒素ガスを用いたが、洗浄用気体としては窒素ガスに限らず、乾燥空気、オゾンガス、アルゴンガス等の他の気体を使用することも可能である。また、洗浄用気体を冷却する手段としては、液体窒素に限らず、液体ヘリウム等の低温の液体を使用することが可能であり、またペルチェ素子を用いて電気的に冷却することも可能である。
【0064】
次に、二流体ノズル418の構成について図9を用いて説明する。図9は二流体ノズル418の構造を示す縦断面図である。二流体ノズル418は、液体と気体とを二流体ノズル418のケーシング外で混合させて液体の液滴を形成する外部混合型のノズルである。
【0065】
二流体ノズル418は、ほぼ円柱状の外形を有しており、ケーシングを構成する外筒473と、外筒473の内部に嵌め込まれた内筒472を有する。内筒472および外筒473は、それぞれ共通の中心軸線A3上に同軸配置されており、内筒472および外筒473は互いに連結されている。
【0066】
内筒472の内部空間は、第二HFE供給部433からの洗浄液としてのHFEが流通する直管状の液体流路474となっている。また、内筒472と外筒473との間には、洗浄用窒素ガス供給部453からの窒素ガスが流通する円環状の気体流路475が形成されている。
【0067】
液体流路474は、内筒472の図9における上端で液体導入口477として開口しており、この液体導入口477に配管437が接続され、配管437の内部空間と液体流路474は連通されている。また、液体流路474は、内筒472の図9における下端で、中心軸線A3上に中心を有する円状の液体吐出口481として開口している。第二HFE供給部433から、配管437を介して液体流路474に導入されたHFEは、液体流路474内を図9における上端(液体流路474の上流)から下端(液体流路474の下流)に向かって流れ、液体吐出口481から吐出されるようになっている。
【0068】
気体流路475は、中心軸線A3と共通の中心軸線を有する円環状の間隙であり、内筒472および外筒473の図9における上端側で閉塞され、内筒472および外筒473の図9における下端側で、中心軸線A3上に中心を有し、液体吐出口481を取り囲む円環状の気体吐出口482(環状気体吐出口)として開口している。また、気体流路475の図9における下端側は、気体流路475の長さ方向(図9における上下方向)における中間部よりも流路面積が小さくされており、下方に向かって小径にされている。
【0069】
即ち、内筒472の図9における上端部の外壁面と、外筒473の図9における上端部の内壁面とはほぼ同じ形状にされており、互いに密接されている。また、内筒472および外筒473の長さ方向における中間部間には、一定の間隔が設けられている。また、内筒472の図9における下端部には、その中間部よりも外方に張り出したフランジ部483が設けられており、外筒473の図9における下端部の内壁面は、前記一定の間隔よりも小さい間隔を隔ててフランジ部483に沿うような形状になっている。内筒472および外筒473の図9における下端部の先端部には、それぞれ、下方に向かって小径となるテーパ状の外壁面および内壁面が設けられており、これにより、気体流路475が下方に向かって小径にされている。
【0070】
また、外筒473の中間部には、気体流路475に連通する気体導入口484が形成されている。気体導入口484には、配管455が外筒473を貫通した状態で接続されており、配管455の内部空間と気体流路475とは連通されている。配管455からの窒素ガスは、この気体導入口484を介して、気体流路475に導入され、気体流路475内を図9における上端(気体流路475の上流)から下端(気体流路475の下流)に向かって流れ、気体吐出口482から吐出されるようになっている。
【0071】
液体吐出口481および気体吐出口482からHFEおよび窒素ガスを吐出させると、吐出されたHFEおよび窒素ガスが、各吐出口481、482の近傍で衝突(混合)して、HFEの液滴が形成される。そして、このHFEの液滴は、噴流となって、二流体ノズル418の下方に配置された基板Wの表面に衝突する。これにより、基板Wの表面に付着しているパーティクル等がHFEの液滴の運動エネルギーによって物理的に除去される。尚、二流体ノズル418から供給された液滴が基板表面Wfに到達する領域を二流体ノズル418の「吐出領域」と称する。
【0072】
尚、本実施形態では二流体ノズル418として外部混合型の二流体ノズルを用いたが、これに代えて、液体と気体とをノズル内部で混合させて液体の液滴を形成する内部混合型のノズルを使用することも可能である。
【0073】
次に、センター供給手段20の構成について図10を用いて説明する。図10は、センター供給手段20の構成を示す模式図である。センター供給手段20は、基板表面Wfに凝固対象液を供給する凝固対象液供給手段21、基板表面Wfにリンス液を供給するリンス液供給手段23、基板表面Wfに置換液を供給する置換液供給手段25及び基板表面Wfに乾燥用の気体を供給する乾燥用気体供給手段31で構成される。
【0074】
前述の遮断部材回転機構153の上面から、遮断部材151の中心部の開口まで連通する中空部の内部に第一供給管201が挿通されるとともに、当該第一供給管201に第二供給管203が挿通されて、いわゆる二重管構造となっている。この第一供給管201及び第二供給管203の下方端部は遮断部材151の開口に延設されており、第二供給管203の先端に吐出ノズル207が設けられている。
【0075】
第一供給管201には、図示しない窒素ガスタンク、ポンプ及び流量調整弁を有する乾燥用窒素ガス供給部311が配管313を介して管路接続されている。尚、乾燥用窒素ガス供給部311のポンプは基板処理装置9が起動した時点から常時動作している。また、乾燥用窒素ガス供給部311は制御ユニット95と電気的に接続されている。この乾燥用窒素ガス供給部311は、制御ユニット95からの動作指令により内部の流量調整弁を開放して、常温の窒素ガスを配管313と第一供給管201を介して基板表面Wfに供給する。この、乾燥用窒素ガス供給部311、配管313及び第一供給管201が乾燥用気体供給手段31を構成する。尚、乾燥用窒素ガス供給部311は、基板処理装置9の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。
【0076】
第二供給管203には、主配管205が管路接続され、主配管205に対しては配管213を介して、図示しないDIWタンク、温度調整ユニット及びポンプを有する第一DIW供給部211が管路接続されている。また、配管213には開閉弁215が介挿されている。なお、開閉弁215は常時閉成されている。尚、第一DIW供給部211のポンプは基板処理装置9が起動した時点から常時動作している。
【0077】
開閉弁215は制御ユニット95に電気的に接続されている。そして、制御ユニット95からの動作指令により開閉弁215が開成すると、第一DIW供給部211から洗浄液としてのDIWが配管213と主配管205と第二供給管203を通して吐出ノズル207から基板表面Wfに供給される。この、第一DIW供給部211、開閉弁215、配管213、主配管205、第二供給管203及び吐出ノズル207が凝固対象液供給手段21を構成する。
【0078】
また、主配管205には配管233を介して、図示しないDIWタンク、温度調整ユニット及びポンプを有する第二DIW供給部231が管路接続されている。また、配管233には開閉弁235が介挿されている。なお、開閉弁235は常時閉成されている。また、第二DIW供給部231のポンプは基板処理装置9が起動した時点から常時動作している。
【0079】
開閉弁235は制御ユニット95と電気的に接続されている。そして、制御ユニット95からの動作指令により開閉弁235が開成すると、第二DIW供給部231からリンス液としてのDIWが配管233と主配管205と第二供給管203を通して吐出ノズル207から基板表面Wfに供給される。この、第二DIW供給部231、開閉弁235、配管233、主配管205、第二供給管203及び吐出ノズル207がリンス液供給手段23を構成する。
【0080】
また、主配管205には配管253を介して、図示しないHFEタンク、温度調整ユニット及びポンプを有する第一HFE供給部251が管路接続されている。また、配管253には開閉弁255が介挿されている。なお、開閉弁255は常時閉成されている。また、第一HFE供給部251のポンプは基板処理装置9が起動した時点から常時動作している。
【0081】
開閉弁255は制御ユニット95と電気的に接続されている。そして、制御ユニット95からの動作指令により開閉弁255が開成すると、第一HFE供給部251から置換液としてのHFEが配管253と主配管205と第二供給管203を通して吐出ノズル207から基板表面Wfに供給される。この、第一HFE供給部251、開閉弁255、配管253、主配管205、第二供給管203及び吐出ノズル207が置換液供給手段25を構成する。
【0082】
ここで、第一DIW供給部211は後述する凝固対象液供給工程において、例えば1℃(摂氏)に温度調整されたDIWを供給する。また、第二DIW供給部231は、後述するリンス工程において基板表面Wfに残留するDIWの凝固体を解凍して除去するため、例えば40℃(摂氏)に温度調整されたDIWを供給する。また、置換液供給手段25は、後述する凝固対象液孤立工程において、例えば1℃(摂氏)に温度調整されたHFEを供給する。尚、第一DIW供給部211、第二DIW供給部231及び第一HFE供給部251は、基板処理装置9の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。
【0083】
制御ユニット95は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM及び制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを有する。磁気ディスクには、基板Wに応じた洗浄条件が、洗浄プログラム(レシピとも呼ばれる)として予め格納されおり、CPUがその内容をRAMに読み出し、RAMに読み出された洗浄プログラムの内容に従ってCPUが基板処理装置9の各部を制御する。尚、制御ユニット95には洗浄プログラムの作成・変更や、複数の洗浄プログラムの中から所望のものを選択するために用いる操作部(図示せず)が接続されている。
【0084】
次に、上記のように構成された基板処理装置9における洗浄処理動作について図11を参照して説明する。図11は基板処理装置9の動作を示すフローチャートである。尚、以下の説明において特に断らない限り、雰囲気遮断手段15は、遮断部材151が対向位置にある場合、基板保持手段11の基板回転機構117がスピンベース113を回転する方向に略同じ回転数で遮断部材151を回転するものとする。
【0085】
まず、所定の基板Wに応じた洗浄プログラムが図示しない操作部で選択され、実行指示される。その後、基板Wを処理ユニット91に搬入する準備として、制御ユニット95からの動作指令により以下の動作を行う。
【0086】
すなわち、雰囲気遮断手段15が遮断部材151の回転を停止し、基板保持手段11がスピンベース113の回転を停止する。雰囲気遮断手段15が遮断部材151を離間位置へ移動すると共に、基板保持手段11がスピンベース113を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。また、排液回収手段13がカップ130をホームポジションに位置決めする。スピンベース113が基板Wの受け渡しに適した位置に位置決めされた後、基板保持手段11がチャックピン115を解放状態とする。
【0087】
また、液滴供給手段41が二流体ノズル418を退避位置(二流体ノズル418がカップ130の周方向外側に外れている位置)へ移動する。更に、開閉弁215、235、255及び435が閉成し、洗浄用窒素ガス供給部453と乾燥用窒素ガス供給部311それぞれが洗浄用窒素ガスと乾燥用窒素ガスの供給を停止する。
【0088】
基板Wを処理ユニット91に搬入する準備が完了した後、未処理の基板Wを処理ユニット91へ搬入する基板搬入工程が行われる。前述の搬入準備が完了すると、制御ユニット95からの動作指令により、基板搬送装置921が載置部931に載置されたカセット933の所定の位置から基板Wを取り出し、図示しない基板搬入出口を通して処理ユニット91へ搬入する(ステップS101)。
【0089】
未処理の基板Wが処理ユニット91内に搬入され、チャックピン115の基板支持部の上に載置されると、制御ユニット95から基板保持手段11への動作指令により、チャックピン駆動機構119がチャックピン115を押圧状態とする。
【0090】
基板保持手段11に未処理の基板Wが保持されると、制御ユニット95から雰囲気遮断手段15への動作指令により、遮断部材昇降機構161が遮断部材151を近接位置まで降下し、基板表面Wfに近接配置する。そして、制御ユニット95から基板保持手段11への動作指令により、基板回転機構117がスピンベース113を例えば100rpmで回転開始させ、該回転数による回転が継続される。また、制御ユニット95から排液回収手段13への動作指令により、カップ130が内捕集位置に位置決めされる。また、制御ユニット95から凝固対象液供給手段21への動作指令により、開閉弁215が開成する。これにより、第一DIW供給部211から凝固対象液としてのDIWが配管235と主配管205と第二供給管203を介して吐出ノズル207から基板表面Wfに供給される。
【0091】
基板表面Wfに供給された凝固対象液としてのDIWは基板Wの回転に伴う遠心力により基板表面Wfの全面に均一に広がり、基板表面WfにDIWの液膜(水膜)を形成する。このとき、DIWの流動によりパターンの間隙内部にDIWが入り込む(ステップS102)。基板Wの回転速度は、基板表面Wf上のDIWを流動させてパターンの間隙内部にまでDIWを入り込ませるように設定される。この、基板表面Wfに凝固対象液であるDIWを供給する工程が、本発明における「凝固対象液供給工程」に該当する。凝固対象液供給工程が終了すると、制御ユニット95から凝固対象液供給手段21への動作指示により、開閉弁215が閉成する。
【0092】
なお、本実施形態では、洗浄液として0〜2℃(摂氏)程度に温度調整されたDIWを用いるのが好ましい。なぜなら、DIWの液膜の温度が比較的高いために、後述する凝固対象液孤立工程の前後において基板表面WfにDIWが露出した状態で蒸発することにより、パターンの倒壊などを生じさせないためであり、また、後述するDIWの凝固に要する時間を短縮するためである。
【0093】
次に、凝固対象液孤立工程が行われる。制御ユニット95から排液回収手段13への動作指令により、カップ130が外捕集位置に位置決めされる。また、制御ユニット95から基板保持手段11への動作指令により、基板回転機構117がスピンベース113の回転数を例えば400rpmまで加速し、該回転数による回転が継続される。尚、雰囲気遮断手段15の遮断部材151の位置は近接位置のままとされる。また、制御ユニット95から置換液供給手段25への動作指令により、開閉弁255が開成する。これにより、第一HFE供給部251から置換液としてのHFEが配管253と主配管205と第二供給管203を介して吐出ノズル207から基板表面Wfに供給される。
【0094】
基板Wを回転しながら基板表面WfにHFEを供給することで、基板表面Wf上のDIWの液膜のうち、パターン近傍を除く部分のDIWが、HFEにより基板Wの中央付近から順次外側に押し出され、基板外に振り切られて除去される(ステップS103)。これにより、パターン上面を含めた部分のDIWが除去され、パターン近傍にのみDIWを局在させることが可能となる。半導体ウェハ等の基板Wに形成されるパターンは微細であり、HFEはパターンの間隙内部に容易に浸入することはできない。また、HFEはDIWと互いに混合し難いため、更に浸入し難くなる。すなわち、基板表面Wf上層のDIWを排除してもHFEがパターンの間隙内部に侵入することがなく、パターンの間隙内部のDIWまで排除することが無い。また、HFEがDIWと混合することによりDIWの凝固点の変化を引き起こすことが無い。
【0095】
この、所定のパターンが形成され凝固対象液であるDIWが付着した基板表面Wfに対し、凝固対象液であるDIWと互いに混合し難い置換液としてのHFEを供給して、パターン近傍を除く基板表面WfからDIWを除去する工程が、本発明における「凝固対象液孤立工程」に該当する。凝固対象液孤立工程が終了すると、制御ユニット95から置換液供給手段25への動作指令により、開閉弁255が閉成する。
【0096】
なお、置換液としてのHFEは0〜2℃(摂氏)程度に温度調整されているのが好ましい。なぜなら、基板表面Wf上層のDIWがHFEに置換された状態でHFEの温度が高いと、基板表面Wfに残留するDIWにHFEからの熱が伝導してDIWの温度が上昇するため、後述する液滴供給工程でDIWの凝固体を形成する際に時間を要することとなるためである。
【0097】
次に、基板表面Wfから置換液を除去する置換液除去工程が行われる。制御ユニット95から基板保持手段11への動作指令により、基板回転機構117がスピンベース113の回転数を例えば1000rpmまで加速し、該回転数による回転が維持される。尚、雰囲気遮断手段15の遮断部材151及び排液回収手段13のカップ130は対向位置及び外捕集位置のままとされる。
【0098】
基板保持手段11に保持された基板Wを高速で回転させることにより、基板表面Wf上の置換液としてのHFEが、遠心力により基板Wの中心から周縁部に向かって流動し、最終的に基板Wの外に振り切られ、カップ130の外構成部材135に受け止められて排液される(ステップS104)。
【0099】
尚、パターン近傍にある凝固対象液であるDIWもこの遠心力の影響を受けるが、パターン近傍に残留するDIWは微量であり、遠心力の影響も小さい。また、特にパターン間隙内部にあるDIWは側面をパターンにより支持されており、更に、パターン間隙上端開口部にはDIWの表面張力が働くため、DIWがその上部から外に出難くなっている。従って、置換液除去工程において、置換液であるHFEが基板W外に排出されても、凝固対象液であるDIWはパターン近傍に残留する。
【0100】
置換液除去工程は、後述する液滴供給工程において基板表面Wfに供給される洗浄液の液滴が凝固対象液であるDIWに接触できるよう、置換液であるHFEを除去することを目的としている。従って、置換液であるHFEを排出した上で凝固対象液であるDIWをパターン近傍に残留できるよう、基板Wの回転数およびその回転を維持する時間が決定される。尚、凝固対象液であるDIWが露出していれば基板表面Wfに置換液であるHFEが多少残留していても良い。また、置換液であるHFEと共に凝固対象液であるDIWが多少除去されたとしても、パターン近傍にDIWが残留していれば後述する液滴供給工程において凍結され、パターンを構造的に補強することとなるため問題は生じない。
【0101】
置換液除去工程が終了すると、制御ユニット95から雰囲気遮断手段15への動作指令により、遮断部材回転機構153が遮断部材151の回転を停止し、遮断部材昇降機構161が遮断部材151を離間位置まで上昇させる。
【0102】
次に、基板表面Wfに凝固対象液の凝固点より低い温度の洗浄液の液滴を供給し、凝固対象液を凝固すると共に基板表面Wfを物理洗浄する液滴供給工程が行われる。制御ユニット95から基板保持手段11への動作指令により、基板回転機構117がスピンベース113の回転数を例えば700rpmまで減速し、該回転数による回転が維持される。尚、排液回収手段13のカップ130は外捕集位置のままとされる。また、制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令により、ノズル駆動機構411が二流体ノズル418を基板Wの中心付近上空へ移動する。
【0103】
その後、制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令により、開閉弁435が開成し、第二HFE供給部433から洗浄液としてのHFEが配管437を介して二流体ノズル418へ供給される。また、制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令により、洗浄用気体供給手段451が洗浄用気体である洗浄用窒素ガスを配管455を介して二流体ノズル418に供給する。二流体ノズル418へ供給されたHFEと窒素ガスは、二流体ノズル418下端付近で混合され、HFEの液滴が基板表面Wfに向けて供給される(ステップS105)。
【0104】
この、二流体ノズル418により洗浄用気体と洗浄液を混合して洗浄液の液滴を生成する工程が、本発明における「液滴生成工程」に該当する。また、凝固対象液より低い凝固点を有し、凝固対象液の凝固点より低い温度の洗浄液の液滴を供給して、基板表面Wfを物理的に洗浄する工程が本発明における「液滴供給工程」に該当する。
【0105】
二流体ノズル418に供給されるHFEと窒素ガスはそれぞれ例えば20℃(摂氏)と−(マイナス)100℃(摂氏)に温度調整されているため、二流体ノズル418で混合されて生成されたHFEの液滴は、凝固対象液であるDIWの凝固点(0℃(摂氏))よりも低い温度となる。液滴の温度は混合されるHFEと窒素ガスの量やそれぞれの温度により異なるが、例えば−(マイナス)30℃(摂氏)となるよう調整される。
【0106】
二流体ノズル418から基板表面Wfに向けて供給されたHFEの液滴は、パターン近傍に残留している凝固対象液であるDIWに接触する。パターン近傍に残留するDIWは微量であり、低温のHFEに接触することで急速に冷却され、短時間に凝固する。パターン近傍のDIWの凝固に要する時間は、複数の液滴の衝突による衝撃によってパターンにダメージが発生する時間よりも短い。従って、液滴の衝突によるパターンダメージが発生する前に、パターン近傍のDIWが凝固する。このDIWの凝固体は、パターンと一体となった塊(固形物)と見做せる状態となり、パターンが構造的に補強されるため、より強いエネルギー(より高いパーティクル除去率)による物理洗浄を行うことが可能となる。
【0107】
このように、本実施形態では、パターン近傍に残留するDIWに対し、DIWの凝固点よりも低い温度のHFEの液滴を供給することで、パターン近傍のDIWを凝固してパターンを補強すると共に、液滴の衝突による衝撃力でパーティクル等の除去を行っている。これにより、パターンのダメージを防止しながら強い洗浄力で基板表面Wfを物理洗浄すると共に、別途DIWを凝固する手段を設ける場合に比べてコストを低減し、さらに処理に要する時間を短縮している。
【0108】
また、二流体ノズル418において洗浄液であるHFEと混合され、HFEの液滴を生成すると同時にHFEの冷却にも使用された洗浄用窒素ガスは、HFEの液滴と共に基板表面Wfに吹き付けられ、基板表面Wfに沿って二流体ノズル418の吐出領域の外方へ拡散する。この洗浄用窒素ガスは、基板表面Wfに到達した時点でも凝固対象液であるDIWの凝固点よりも低い温度を有しているため、二流体ノズル418の吐出領域及びその周辺の基板表面Wfを冷却し、その冷熱によってパターン近傍のDIWを凝固する。
【0109】
このように、HFEの液滴の冷熱に加えて、洗浄用窒素ガスの冷熱によっても基板表面Wf上のDIWを冷却することでより短時間にDIWの凝固体を形成することができ、処理に要する時間をより短縮している。また、二流体ノズル418の吐出領域の外方にあるDIWについても凝固することが可能であるため、後述の通り基板Wの回転と二流体ノズル418の旋回動作によりHFEの液滴が供給される前にDIWの凝固体を形成し、より確実にパターンのダメージを防止している。
【0110】
尚、洗浄液の液滴は例えば数十μm(ミクロン)の直径を有しており、例えば数十nm(ナノメートル)から数百nm(ナノメートル)の間隔を有するパターン間隙よりも遥かに大きい。従って、このような大きさの液滴がパターン上面に衝突してもパターン近傍に存在する凝固対象液としてのDIWが排除されることはない。
【0111】
二流体ノズル418から吐出される液滴のサイズはある程度の幅の分布を有するため、パターン間隙のサイズよりも小さい液滴が吐出される場合がある。この場合、パターン近傍のDIWに突入してDIWをある程度排除する可能性もあるが、DIWを完全に除去することはできない。従って、その後の液滴供給工程においてDIWが凍結されればパターンを構造的に補強する事となるため問題は生じない。
【0112】
尚、本実施例においては、洗浄用窒素ガスの温度のみ凝固対象液であるDIWの凝固点より低い温度としたが、洗浄液であるHFEのみDIWの凝固点より低い温度とする、あるいは洗浄用窒素ガスとHFEの双方をDIWの凝固点より低い温度として物理洗浄を行うことも可能である。
【0113】
尚、パターン間隙内部については、パターン近傍のDIWが凝固することにより、パーティクル等と基板表面Wfとの間に入り込んだDIWの体積が増加(0℃(摂氏)の水が0度℃(摂氏)の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する)し、パーティクル等が微小距離だけ基板表面Wfから離れる。その結果、基板表面Wfとパーティクル等との間の付着力が低減され、さらにはパーティクル等が基板表面Wfから脱離することとなり、後述するリンス工程によりDIWの凝固体が除去されることにより、パーティクル等も併せて除去される。
【0114】
二流体ノズル418から液滴の供給が開始された後、制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令により、ノズル駆動機構411が二流体ノズル418を基板Wの中央付近から基板Wの外縁付近に向けて旋回させる。これにより、基板表面Wfの全面について、二流体ノズル418から供給されたHFEの液滴又は洗浄用窒素ガスによりパターン近傍のDIWを凝固してパターンを補強しつつ、HFEの液滴の衝突による衝撃力によって基板表面Wf上からパーティクル等の除去を行う。
【0115】
二流体ノズル418が基板Wの外縁付近まで旋回して液滴供給工程が終了すると、制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令により、開閉弁435が閉成し、また、洗浄用窒素ガス供給部453が洗浄用気体である洗浄用窒素ガスの供給を停止する。その後、制御ユニット95から液滴供給手段41への動作指令により、ノズル駆動機構411が二流体ノズル418を退避位置へ移動する。
【0116】
次に、リンス工程が行われる。制御ユニット95から排液回収手段13への動作指令により、カップ130内捕集位置に位置決めされる。また、制御ユニット95から雰囲気遮断手段15への動作指示により、遮断部材昇降機構161が遮断部材151を対向位置へ移動する。また、制御ユニット95から基板保持手段11への動作指令により、基板回転機構117がスピンベース113の回転数を例えば1000rpmまで加速し、該回転数による回転が継続される。遮断部材151が対向位置に位置決めされた後、制御ユニット95からリンス液供給手段23への動作指示により、開閉弁235が開成する。
【0117】
これにより、第二DIW供給部231からの例えば40℃(摂氏)に温度調整されたリンス液としてのDIWが、配管233と主配管205と第二供給管203を介して吐出ノズル207から基板表面Wfに供給される。これにより、基板表面Wf上に残留するHFEを排除すると共に、DIWの凝固体を融解して除去するリンス処理が行われる(ステップS106)。この、液滴供給工程により生成されたDIWの凝固体にリンス液を供給して凝固体を解凍除去する工程が、本発明における「リンス工程」に該当する。
【0118】
リンス工程終了後、制御ユニット95からリンス液供給手段23への動作指令により、開閉弁235が閉成する。
【0119】
次に、基板Wを乾燥する乾燥工程が行われる。制御ユニット95から乾燥用気体供給手段31への動作指令により、乾燥用窒素ガス供給部311が乾燥用窒素ガスの供給を開始する。
【0120】
これにより、乾燥用窒素ガス供給部311からの乾燥用窒素ガスが、配管313と第一供給管201を介して基板表面Wfに供給される。乾燥用窒素ガスが、対向位置に位置決めされた遮断部材151と基板表面Wfとの間の空間に充満することにより、基板表面Wfと外気が接触することを防止する。
【0121】
基板表面Wfが外気から遮断された後、制御ユニット95から基板保持手段11と雰囲気遮断手段15への動作指令により、スピンベース113と遮断部材151を例えば1500rpmで回転し、該回転数による回転が継続される。これにより、基板表面Wf上に残留するリンス液であるDIWに遠心力を作用させて除去し、基板表面Wfを乾燥させる(ステップS107)。
【0122】
基板Wの乾燥完了後、制御ユニット95から乾燥用気体供給手段31への動作指令により、乾燥用窒素ガス供給部311が乾燥用窒素ガスの供給を停止する。また、制御ユニット95からの動作指令により基板回転機構117がスピンベース113の回転を停止する。また、制御ユニット95から雰囲気遮断手段15への動作指令により、遮断部材回転機構153が遮断部材151の回転を停止する。また、制御ユニット95から排液回収手段13への動作指令により、カップ130がホームポジションに位置決めされる。スピンベース113の回転が停止した後、制御ユニット95からの動作指令により基板回転機構117がスピンベース113を基板Wの受け渡しに適した位置へ位置決めする。更に、制御ユニット95から雰囲気遮断手段15への動作指令により遮断部材昇降機構161が遮断部材151を退避位置へ移動する。
【0123】
最後に、基板Wを処理ユニット91から搬出する基板搬出工程が行われる。基板保持手段11が基板Wの受け渡しに適した位置に位置決めされた後、制御ユニット95から基板保持手段11への動作指令により、チャックピン駆動機構119がチャックピン115を開放状態とする。
【0124】
その後、制御ユニット95からの動作指令により、基板搬送装置921が図示しない基板搬入出口を通して処理ユニット91内の処理済みの基板Wを取り出し、載置部931に載置されたカセット933の所定の位置に搬入し(ステップS108)、一連の処理が終了する。
【0125】
以上のように、本実施形態では、凝固対象液であるDIWが付着した基板表面Wfに対し、凝固対象液であるDIWと互いに混合し難い置換液としてのHFEを供給することで、パターン間隙内部以外の基板表面WfからDIWを除去することができる。従って、パターン上面にDIWの液膜を残留させることがないため、パターン上面にDIWの凝固体が形成され、その凝固体の中にパーティクルが埋もれるようなことがない。
【0126】
また、二流体ノズル418により凝固対象液であるDIWの凝固点より低い温度の洗浄液としてのHFEの液滴及び洗浄用窒素ガスを基板表面Wfに供給している。これにより、パターン近傍に残留するDIWを凝固しながら基板表面Wfを物理洗浄することができるため、パターンを補強してダメージを防止した上で基板表面Wfの洗浄を行える。従って、高い洗浄能力を維持したまま、別途DIWを凝固する手段及び工程を設ける場合に比べて、部材のコストやDIWを冷却するための冷媒のコストを削減し、更に処理に要する時間を短縮することが可能となる。
【0127】
<第二実施形態>
次に、この発明にかかる基板処理装置の第二実施形態を図12及び図13を用いて説明する。図12は、第二実施形態における処理ユニット911で使用する処理液供給手段51の構成を示す模式図である。また、図13は第二実施形態における基板処理装置99の動作を示すフローチャートである。
【0128】
この第二実施形態が第一実施形態と大きく相違する点は、まず、第一実施形態のように置換液除去工程を設けず、基板表面Wf上に置換液を保持したまま次の液滴供給工程を行う点、及び、液滴供給工程の中で、基板表面Wfに処理液を供給する点である。このため、第二実施形態における処理ユニット911は基板表面Wfに凝固対象液の凝固点より低い温度の処理液を供給する処理液供給手段51を有する。
【0129】
次に、処理液供給手段51の構成について図12を用いて説明する。図12は処理液供給手段51の構成を示す模式図である。基板表面Wfに処理液を供給する吐出ノズル518は、上側ベース部材966の下面に設置されたノズル駆動機構511に昇降及び旋回可能に支持されている。ノズル駆動機構511のベース部材514は、上側ベース部材966の下面であって雰囲気導入路968の外側、かつ液滴供給手段41のノズル駆動機構411に隣接する位置で下方に伸びるように固設されている。尚、ベース部材514は後述する旋回軸515と上下駆動部513及び旋回駆動部512を接続するために中空の略円筒形状に構成される。旋回軸515の下面にはアーム516の一端が結合されており、アーム516の他端に供給ノズル518が取り付けられている。
【0130】
旋回軸515はベース部材514の中を通して、モーター及びボールネジ等の公知の駆動機構で構成された上下駆動部513及び、モーター及びギア等の公知の駆動機構で構成された旋回駆動部512に接続されている。また、上下駆動部513及び旋回駆動部512は制御ユニット951と電気的に接続されている。尚、上下駆動部513及び旋回駆動部512は上側空間967に配設される。
【0131】
制御ユニット951から処理液供給手段51への動作指令により上下駆動部513が駆動されると、旋回軸515が上下に移動し、アーム516に取り付けられている供給ノズル518を上下に移動させる。また、制御ユニット951から処理液供給手段51への動作指令により旋回駆動部41が駆動されると、旋回軸515が中心軸A2を中心に回転し、アーム516を旋回することで、アーム516に取り付けられた供給ノズル518を揺動させる。
【0132】
供給ノズル518は配管537を介して、図示しないHFEのタンク、温度調整ユニット及びポンプを有する第三HFE供給部533に管路接続されている。尚、第三HFE供給部533のポンプは基板処理装置99が起動した時点から常時動作している。また、配管537には開閉弁535が介挿されており、開閉弁535は常時閉成とされている。また、開閉弁453は制御ユニット951と電気的に接続されている。そして、制御ユニット951から処理液供給手段51への動作指令により開閉弁535が開成すると、第三HFE供給部533から、例えば−(マイナス)30℃(摂氏)に温度調整されたHFEが配管537を介して供給ノズル518へ圧送され基板表面Wfへ吐出される。
【0133】
尚、供給ノズル518は後述する液滴供給工程で、前述の二流体ノズル418からの液滴が基板表面Wfに供給されている領域(吐出領域)付近に、処理液であるHFEを供給できるよう、斜めにHFEを吐出するよう構成されている。この、供給ノズル518、配管537、開閉弁535及び第三HFE供給部533が、洗浄液供給手段531を構成する。尚、第三HFE供給部533は、基板処理装置99の内部に設けられていても、外部に設けられていてもよい。尚、パーティクル等の除去能力を高めるため、供給ノズル518から吐出されるHFEは、二流体ノズル418の吐出領域の、二流体ノズル418の進行方向後方(進行方向上流側)近傍に供給されることが望ましい。
【0134】
次に、上記のように構成された基板処理装置99の動作について図13を参照して説明する。この第二実施形態においても第一実施形態と同様に基板Wを処理ユニット911へ搬入する基板搬入工程(ステップS201)、基板表面Wf上に凝固対象液であるDIWを供給する凝固対象液供給工程(ステップS202)及び、基板表面Wf上に置換液であるHFEを供給する凝固対象液孤立工程(ステップS203)が行われる。
【0135】
尚、基板搬入工程の前の搬入準備では、制御ユニット951からの動作指令により、開閉弁535が併せて閉成し、さらに、処理液供給手段51が供給ノズル518を退避位置(供給ノズル518がカップ130の周方向外側に外れている位置)へ移動する。
【0136】
凝固対象液孤立工程が終了すると、制御ユニット951から置換液供給手段25への動作指令により、開閉弁255が閉成する。また、制御ユニット951から雰囲気遮断手段15への動作指令により、遮断部材回転機構155が遮断部材151の回転を停止し、遮断部材昇降機構161が遮断部材151を離間位置まで上昇させる。
【0137】
ここで、基板表面Wfに形成された置換液であるHFEの液膜は、後述の液滴供給工程が行われるまで基板表面Wf上に保持される。これにより、基板表面Wfから凝固対象液であるDIWが蒸発することを防止でき、DIWが蒸発することに起因するパターン倒壊を防止することが可能である。
【0138】
次に、液滴供給工程が行われる。制御ユニット951から基板保持手段11への動作指令により、基板回転機構117がスピンベース113の回転数を例えば700rpmまで加速し、該回転数による回転が維持される。尚、排液回収手段13のカップ130は外捕集位置のままとされる。また、制御ユニット951から処理液供給手段51への動作指令により、ノズル駆動機構511が供給ノズル518を基板Wの中心付近上空へ移動する。また、制御ユニット951から液滴供給手段41への動作指令により、ノズル駆動機構411が二流体ノズル418を基板Wの中心付近上空へ移動する。尚、供給ノズル518は二流体ノズル418の進行方向後方側(進行方向上流側)に配置され、二流体ノズル418の移動に追従して移動するよう構成される。
【0139】
その後、制御ユニット951から液滴供給手段41への動作指令により、開閉弁435が開成し、第二HFE供給部433から洗浄液としてのHFEが配管437を介して二流体ノズル418へ供給される。また、制御ユニット951から液滴供給手段41への動作指令により、洗浄用気体供給手段451が洗浄用気体である洗浄用窒素ガスを配管455を介して二流体ノズル418に供給する。二流体ノズル418へ供給されたHFEと窒素ガスは、二流体ノズル418下端付近で混合され、HFEの液滴が基板表面Wfに向けて供給される(ステップS204)。
【0140】
この、二流体ノズル418により洗浄用気体と洗浄液を混合して洗浄液の液滴を生成する工程が、本発明における「液滴生成工程」に該当する。また、凝固対象液より低い凝固点を有し、凝固対象液の凝固点より低い温度の洗浄液の液滴を供給して、基板表面Wfを物理的に洗浄する工程が本発明における「液滴供給工程」に該当する。
【0141】
二流体ノズル418に供給されるHFEと窒素ガスはそれぞれ例えば20℃(摂氏)と−(マイナス)100℃(摂氏)に温度調整されているため、二流体ノズル418で混合されて生成されたHFEの液滴は、凝固対象液であるDIWの凝固点(0℃(摂氏))よりも低い温度となる。液滴の温度は混合されるHFEと窒素ガスの量やそれぞれの温度により異なるが、例えば−(マイナス)30℃(摂氏)となるよう調整される。
【0142】
二流体ノズル418から基板表面Wfに向けて供給されたHFEの液滴は、基板表面上Wfの置換液であるHFEの液膜に衝突して減速し、その後基板表面Wf近傍に到達する。この、パターン近傍に到達したHFEの冷熱により、パターン近傍に残留している凝固対象液であるDIWが冷却されることで急速に凝固する。パターン近傍のDIWの凝固に要する時間は、複数の液滴の衝突による衝撃によってパターンにダメージが発生する時間よりも短い。従って、液滴の衝突によるパターンダメージが発生する前に、パターン近傍のDIWが凝固する。このDIWの凝固体は、パターンと一体となった塊(固形物)と見做せる状態となり、パターンが構造的に補強されるため、より強いエネルギー(より高いパーティクル除去率)による物理洗浄を行うことが可能となる。
【0143】
このように、本実施形態では、パターン近傍に残留するDIWに対し、DIWの凝固点よりも低い温度のHFEの液滴を供給することで、パターン近傍のDIWを凝固してパターンを補強すると共に、液滴の衝突による衝撃力でパーティクル等の除去を行っている。これにより、パターンのダメージを防止しながら強い洗浄力で基板表面Wfを物理洗浄すると共に、別途DIWを凝固する手段を設ける場合に比べてコストを低減し、さらに処理に要する時間を短縮している。
【0144】
また、二流体ノズル418において洗浄液であるHFEと混合され、HFEの液滴を生成すると同時にHFEの冷却にも使用された洗浄用窒素ガスは、HFEの液滴と共に基板表面Wfに吹き付けられ、基板表面Wfに沿って二流体ノズル418の吐出領域の外方へ拡散する。この洗浄用窒素ガスは、基板表面Wfに到達した時点でも凝固対象液であるDIWの凝固点よりも低い温度を有しているため、二流体ノズル418の吐出領域及びその周辺の基板表面Wfを冷却し、その冷熱によってパターン近傍のDIWを凝固する。
【0145】
このように、HFEの液滴の冷熱に加えて、洗浄用窒素ガスの冷熱によっても基板表面Wf上のDIWを冷却することでより短時間にDIWの凝固体を形成することができ、処理に要する時間をより短縮している。また、二流体ノズル418の吐出領域の外方にあるDIWについても凝固することが可能であるため、後述の通り基板Wの回転と二流体ノズル418の旋回動作によりHFEの液滴が供給される前にDIWの凝固体を形成し、より確実にパターンのダメージを防止している。
【0146】
尚、本実施例においては、洗浄用窒素ガスの温度のみ凝固対象液であるDIWの凝固点より低い温度としたが、洗浄液であるHFEのみDIWの凝固点より低い温度とする、あるいは洗浄用窒素ガスとHFEの双方をDIWの凝固点より低い温度として物理洗浄を行うことも可能である。
【0147】
二流体ノズル418から基板表面WfにHFEの液滴の供給が開始された後、制御ユニット951から処理液供給手段51への動作指令により、開閉弁535が開成し、第三HFE供給手段533からの処理液としてのHFEが配管537を介して供給ノズル518から基板表面Wfに供給される(ステップS205)。尚、供給ノズル518から供給される処理液としてのHFEは、二流体ノズル418が基板表面Wfへ液滴を供給する領域(吐出領域)付近、即ち、この時点では基板Wの中心付近に供給される。尚、パーティクル等の除去能力を高めるため、供給ノズル518から吐出されるHFEは、二流体ノズル418の吐出領域の、二流体ノズル418の進行方向後方(進行方向上流側)近傍に供給されることが望ましい。
【0148】
このように、二流体ノズル418から基板表面Wfに液滴が供給されている領域(吐出領域)付近に、供給ノズル518から処理液としてのHFEが供給されているため、二流体ノズル418からの液滴のエネルギーにより基板表面Wfから脱離されたパーティクル等が、処理液であるHFEの流れにより押し流され、基板Wの回転による遠心力により基板Wの外縁方向に移動し、最終的に基板Wの外に振り切られて排出される。これにより、二流体ノズル418による物理洗浄で脱離されたパーティクル等が基板表面Wfに再度付着することが防止され洗浄能力をさらに向上することができる。
【0149】
ここで、処理液としてのHFEは、凝固対象液であるDIWの凝固点(0℃(摂氏))よりも低い温度、例えば−(マイナス)30℃(摂氏)に温度調整されて基板表面Wfに供給される。これにより、二流体ノズル418により凝固されたパターン近傍のDIWの凝固体を融解することがない。また、基板Wの回転による遠心力により二流体ノズル418の吐出領域への外方にも広がり、二流体ノズル418の吐出領域への外方において基板W及びパターン近傍に残留するDIWを冷却する。これにより、前述の二流体ノズル418から液滴と共に供給される洗浄用窒素ガスと同様、HFEの液滴が供給される前にDIWの凝固体を形成し、より確実にパターンのダメージを防止している。
【0150】
この、二流体ノズル418の吐出領域近傍に前記凝固対象液の凝固点より低い温度の処理液を供給する工程が、本発明における「処理液供給工程」に該当する。
【0151】
尚、パターン間隙内部については、パターン近傍のDIWが凝固することにより、パーティクル等と基板表面Wfとの間に入り込んだDIWの体積が増加(0℃(摂氏)の水が0度℃(摂氏)の氷になると、その体積はおよそ1.1倍に増加する)し、パーティクル等が微小距離だけ基板表面Wfから離れる。その結果、基板表面Wfとパーティクル等との間の付着力が低減され、さらにはパーティクル等が基板表面Wfから脱離することとなり、後述するリンス工程によりDIWの凝固体が除去されることにより、パーティクル等も併せて除去される。
【0152】
供給ノズル518の処理液としてのHFEの供給が開始された後、制御ユニット951から液滴供給手段41及び処理液供給手段51への動作指令により、ノズル駆動機構411及び511がそれぞれ二流体ノズル418及び供給ノズル518を基板Wの中央付近から基板Wの外縁付近に向けて旋回させる。これにより、処理液であるHFEによってパターン近傍のDIWが凝固された基板表面Wfの全面に対し、二流体ノズル418からHFEの液滴を供給することが可能となり、HFEの液滴の衝突による衝撃力によって基板表面Wf上からパーティクル等の除去を行っている。尚、供給ノズル518は二流体ノズル418が基板表面Wfに液滴を供給している領域(吐出領域)付近に処理液を供給するため、二流体ノズル418の移動と略同期して移動するよう構成される。
【0153】
二流体ノズル418及び供給ノズル518が基板Wの外縁付近まで旋回して液滴供給工程が終了すると、制御ユニット951から液滴供給手段41への動作指令により、開閉弁435が閉成し、また、洗浄用窒素ガス供給部453が洗浄用気体である洗浄用窒素ガスの供給を停止する。また、制御ユニット951から処理液供給手段51への動作指令により、開閉弁535が閉成する。
【0154】
更に、制御ユニット951から液滴供給手段41への動作指令により、ノズル駆動機構411が二流体ノズル418を退避位置へ移動する。また、制御ユニット951から処理液供給手段51への動作指令により、ノズル駆動機構511が供給ノズル518を退避位置へ移動する。
【0155】
尚、本実施形態では、基板表面Wf上を旋回移動可能な供給ノズル518を用いて処理液の供給を行っているが、例えば遮断部材151中央の吐出ノズル207から基板表面Wfに供給する形態とすることも可能である。また、基板表面Wfのある特定の位置に吐出可能な固定ノズルを使用することも可能である。
【0156】
また、本実施形態では、二流体ノズル418から基板表面Wfに洗浄液の液滴が供給された後に供給ノズル518から処理液を供給しているが、それぞれの吐出開始のタイミングを同時とすることも可能である。
【0157】
液滴供給工程終了後、第一実施形態と同様にリンス液であるDIWにより基板表面Wf上のDIWの凝固体を解凍除去するリンス工程(ステップS206)、高速スピンによる基板表面を乾燥する乾燥工程及び(ステップS207)処理後の基板Wを搬出する基板搬出工程(ステップS208)が行われ一連の処理が終了する。
【0158】
以上のように、本実施形態では、凝固対象液であるDIWが付着した基板表面Wfに対し、凝固対象液であるDIWと互いに混合し難い置換液としてのHFEを供給することで、パターン間隙内部以外の基板表面WfからDIWを除去することができる。従って、パターン上面にDIWの液膜を残留させることがないため、パターン上面にDIWの凝固体が形成され、その凝固体の中にパーティクルが埋もれるようなことがない。
【0159】
また、パターン近傍以外の基板表面Wfから凝固対象液であるDIWを除去した後も置換液であるHFEの液膜を基板表面Wf上に保持することにより、基板表面Wfに残留したDIWが蒸発することを防止し、DIWが蒸発することによるパターン倒壊を防止することが可能となる。
【0160】
また、二流体ノズル418により基板表面Wfを物理洗浄しながら、凝固対象液であるDIWの凝固点より低い温度の処理液としてのHFEを基板表面Wfに供給している。これにより、二流体ノズル418により基板表面Wfから除去されたパーティクル等が再度基板表面Wfに付着することを防止しながら基板Wの外に押し流すことが可能となり、洗浄能力をさらに向上することができる。また、基板Wを回転しながら液滴供給工程を行うことで、処理液であるHFEの流動により、二流体ノズル418の吐出領域よりも基板Wの外縁側にHFEを広げることにより、パーティクルを押し流すという機能とともに、基板表面Wfに残留するDIWを凝固させるという機能も果たす。
【0161】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態では、基板表面Wfに凝固対象液としてDIWを供給しているが、洗浄液としてはDIWに限定されるものではなく、純水、超純水や水素水、炭酸水等、更にはSC1等の液体であっても使用することができる。
【0162】
また、上記実施形態では置換液としてHFEを使用したが、凝固対象液であるDIWと互いに混合し難い液体であれば、他の液体を使用することも可能である。例えば、ヘキサン(化学式:C14。凝固点:−(マイナス)100℃(摂氏))、ヘプタン(化学式:C16。凝固点:−(マイナス)91度℃(摂氏))、オクタン(化学式:C18。凝固点:−(マイナス)56.8度℃(摂氏))等である。尚、これらの液は希釈されていてもよい。
【0163】
また、上記実施形態では洗浄液及び処理液として共にHFEを使用したが、凝固対象液であるDIWより凝固点が低い液体であれば、他の液体を使用することも可能である。例えば、ヘキサン(化学式:C14。凝固点:−(マイナス)100℃(摂氏))、ヘプタン(化学式:C16。凝固点:−(マイナス)91度℃(摂氏))、オクタン(化学式:C18。凝固点:−(マイナス)56.8度℃(摂氏))等である。尚、これらの液は希釈されていてもよい。
【0164】
また、本実施形態では置換液、洗浄液及び処理液として全てHFEを使用したが、それぞれ別の液体を使用しても良い。
【0165】
また、凝固対象液としてはターシャリーブタノール(化学式:C10O。凝固点:25.5℃(摂氏))を使用することが可能である。この場合、DIWの凝固点より高い温度で凝固するため、置換液、洗浄液及び処理液としてDIWや炭酸水、水素水等を使用することができ、HFE等、DIWに比較して高価な他の液体を使用するよりも低コストで処理を行うことが可能となる。また、凝固をDIWより高い温度で行うことが可能であるため、エネルギー消費を低減することも可能となる。
【符号の説明】
【0166】
9 基板処理装置
11 基板保持手段
13 排液回収手段
15 雰囲気遮断手段
21 凝固対象液供給手段
23 リンス液供給手段
25 置換液供給手段
31 乾燥用気体供給手段
41 洗浄手段
51 処理液供給手段
91 処理ユニット
92 移載装置
95 制御ユニット
418 二流体ノズル
431 洗浄液供給手段
451 洗浄用気体供給手段
518 供給ノズル
961 側壁
962 処理空間
963 ファンフィルタユニット
964 ベース部材
965 排気口
W 基板
Wb 基板裏面
Wf 基板表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンが形成され、少なくとも前記パターン近傍に凝固体を形成可能な凝固対象液が付着した基板表面に対し、前記凝固対象液より低い凝固点を有し、前記凝固対象液の凝固点より低い温度の液滴を供給する液滴供給工程を備えた基板処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理方法であって、
前記液滴供給工程は、二流体ノズルにより洗浄用気体と洗浄液を混合して前記洗浄液の液滴を生成する液滴生成工程を有する基板処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理方法であって、
前記液滴供給工程の前に、前記凝固対象液と互いに混合し難い置換液を供給して、前記パターン近傍を除く前記基板表面から前記凝固対象液を除去する凝固対象液孤立工程を更に有する基板処理方法。
【請求項4】
請求項2または3のいずれか一項に記載の基板処理方法であって、
前記液滴供給工程は、前記二流体ノズルに供給される前記洗浄用気体を前記凝固対象液の凝固点より低い温度とする基板処理方法。
【請求項5】
請求項2または3のいずれか一項に記載の基板処理方法であって、
前記液滴供給工程は、前記二流体ノズルに供給される前記洗浄液を前記凝固対象液の凝固点より低い温度とする基板処理方法。
【請求項6】
請求項2または3のいずれか一項に記載の基板処理方法であって、
前記液滴供給工程は、前記二流体ノズルに供給される前記洗浄用気体及び前記洗浄液の双方を前記凝固対象液の凝固点より低い温度とする基板処理方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記液滴供給工程は、前記基板表面に、前記凝固対象液より低い凝固点を有し、前記凝固対象液の凝固点より低い温度の処理液を供給する処理液供給工程を備える基板処理方法。
【請求項8】
請求項1から請求7のいずれかに記載の基板処理方法であって、
前記基板表面に前記凝固対象液を供給する凝固対象液供給工程を更に備える基板処理方法。
【請求項9】
表面の少なくともパターン近傍に凝固体を形成可能な凝固対象液が付着した基板を保持する基板保持手段と、
基板保持手段に保持された前記基板表面に、前記凝固対象液より低い凝固点を有し、前記凝固対象液の凝固点より低い温度の液滴を供給する液滴供給手段と、
を備える基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−54373(P2012−54373A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195324(P2010−195324)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】