説明

基板処理方法

【課題】ウエハ上における異物の発生を簡便且つ確実に抑制することができる基板処理方法を提供する。
【解決手段】ウエハWを収容する反応室15内へ四フッ化炭素ガスを供給してプラズマを生じさせ、該プラズマがウエハW表面のポリシリコン層にプラズマエッチングを施した後、反応室15内に塩素ガスを供給し、次いで反応室15内にアンモニアガスを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法に関し、特に、フッ素原子を含むガス及び窒素原子を含むガスを用いて基板に処理を施す基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理容器内において、基板としての半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)に処理ガスを用いて所望の処理を施す場合、処理ガスや処理容器内に存在する水がウエハ表面、具体的にはシリコン(Si)と反応して反応生成物が生成される。これらの反応生成物が異物としてウエハ上に残留すると、該ウエハから製造される製品、例えば、半導体デバイスにおいて配線短絡が発生し、半導体デバイスの歩留まりが低下してしまう。
【0003】
特に、水及びフッ素原子は、ウエハ表面にかなりの確率で異物を発生させる要因となる。例えば、ウエハに向けて四フッ化炭素(CF)ガスを供給する際にウエハ上に水が残留していると、水と四フッ化炭素由来のフッ素原子との化学反応によりウエハ上でフッ化水素(HF)が生成される。フッ化水素は反応性が極めて高く、例えば、このウエハに向けてアンモニア(NH)ガスを洗浄ガスとして供給すると、下記式(1)に示す化学反応が起こり、反応生成物である錯体がウエハ表面に生成される。そして、連続して下記式(2)に示す化学反応が起こり、ウエハ表面に水酸化珪素(SiOH)が生成され、該水酸化珪素が異物としてウエハ上に残留する。
【0004】
6HF+2NH+Si → (NHSiF+2H ・・・ (1)
2(NHSiF+8NH+6H
→ 2SiOH+12NHF+2O+H ・・・(2)
そこで、従来より、ウエハ上での異物の発生を抑制すべく、ウエハ上から水やフッ素原子を除去することが求められている。これに対応するために、例えば、ウエハ上のフッ素原子を除去する方法として、不活性ガス雰囲気下又は真空雰囲気下でウエハに真空紫外光を照射する方法(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。
【特許文献1】特開平7−335602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した真空紫外光を照射する方法では、真空紫外光を照射するための設備が必要となる一方、ウエハ上の水を積極的に除去することはできないため、ウエハ上における異物の発生を簡便且つ確実に抑制するのは困難である。また、真空紫外光がウエハに照射されることによってウエハ上に形成されたフォトレジスト膜が変質する。したがって、表面に異物が残留しているウエハやフォトレジスト膜が変質したウエハから半導体デバイスを製造することになり、製造される半導体デバイスの歩留まりが低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、基板から製造される半導体デバイスの歩留まりの低下を抑制することができる基板処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理方法は、処理容器内において基板に処理を施す基板処理方法であって、前記処理容器内へフッ素原子を含むガスを供給するフッ素供給ステップと、前記処理容器内へ塩素ガスを供給する塩素供給ステップと、前記処理容器内へ窒素原子を含むガスを供給する窒素供給ステップとを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の基板処理方法は、請求項1記載の基板処理方法において、前記塩素供給ステップでは前記基板の温度が20℃以上に維持されることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の基板処理方法は、請求項1又は2記載の基板処理方法において、前記塩素供給ステップでは前記基板が200℃以上に加熱されることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の基板処理方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理方法において、前記フッ素供給ステップでは前記基板にプラズマ処理が施されることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の基板処理方法は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理方法において、前記塩素供給ステップではプラズマを用いないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【0012】
請求項6記載の基板処理方法は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理方法において、前記フッ素原子を含むガスはフルオロカーボン系ガスであることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の基板処理方法は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板処理方法において、前記窒素原子を含むガスはアンモニアガスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の基板処理方法によれば、処理容器内へフッ素原子を含むガスが供給され、塩素ガスが供給され、さらに窒素原子を含むガスが供給される。基板上に水が残留している場合に、フッ素原子を含むガスが供給されると、基板上にフッ化水素が生成されるが、その後、塩素ガスが供給されるので、フッ化水素は塩素ガスと反応して塩化水素となる。塩化水素の沸点はフッ化水素の沸点より大幅に低く、塩化水素は直ちに気化するため、基板上から容易に除去することができる。また、例え、フッ化水素が生成されるときに基板上に水が残留していても、該水は塩素ガスと反応して塩化水素となるため、基板上から容易に除去することができる。すなわち、基板上に水が残留している場合に、該基板に向けてフッ素原子を含むガスが供給されてフッ化水素が生成されても、該フッ化水素は塩化水素に変換されて基板上から容易に除去されるので、フッ化水素と窒素原子を含むガスとが反応することによる基板上における異物の発生を簡便且つ容易に抑制することができる。また、同様に、フッ化水素が生成されるときに基板上に残留する水も塩化水素に変換されるので、水に起因する基板上における異物の発生を簡便且つ容易に抑制することができる。さらに、フッ素を除去するために真空紫外光を基板に照射する必要がないので、基板上のフォトレジスト膜の変質を防止することができる。その結果、基板から製造される半導体デバイスの歩留まりの低下を抑制することができる。
【0015】
請求項2記載の基板処理方法によれば、塩素ガスの供給時の基板の温度が20℃以上に維持される。フッ化水素の沸点は大気圧下で約19.5℃であり、塩素ガスの供給時の基板の温度はフッ化水素の沸点よりも高いため、塩素ガスを供給したときに該塩素ガスと未反応のフッ化水素が残存していても、該未反応のフッ化水素を確実に気化することができる。したがって、基板から製造される半導体デバイスの歩留まりの低下を確実に抑制することができる。
【0016】
請求項3記載の基板処理方法によれば、塩素ガスの供給時において、基板は200℃以上に加熱されるため、塩素ガスの供給時の基板の温度はフッ化水素の沸点よりも十分に高く、塩素ガスを供給したときに該塩素ガスと未反応のフッ化水素が残存していても、該未反応のフッ化水素をより確実に気化することができる。したがって、基板から製造される半導体デバイスの歩留まりの低下をより確実に抑制することができる。
【0017】
請求項4記載の基板処理方法によれば、フッ素供給ステップにおいて、基板にプラズマ処理が施されるので、基板に所望の加工を施すことができる。
【0018】
請求項5記載の基板処理方法によれば、塩素供給ステップではプラズマを用いないので、基板に不用なダメージを与えるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0020】
まず、本発明の実施の形態に係る基板処理方法が適用される基板処理装置について説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る基板処理方法が適用される基板処理装置の概略構成を示す断面図である。この基板処理装置は基板としてのウエハにプラズマエッチングを施すように構成されている。
【0022】
図1において、基板処理装置10は、例えば、直径が300mmのウエハWを収容するチャンバ11を有し、該チャンバ11内にはウエハWを載置する円柱状のサセプタ12が配置されている。また、基板処理装置10では、チャンバ11の内側壁とサセプタ12の側面とによって、サセプタ12上方のガスをチャンバ11の外へ排出する流路として機能する側方排気路13が形成される。この側方排気路13の途中には排気プレート14が配置される。
【0023】
排気プレート14は多数の孔を有する板状部材であり、チャンバ11を上部と下部に仕切る仕切り板として機能する。排気プレート14によって仕切られたチャンバ11の上部(以下、「反応室」という。)15(処理容器)にはプラズマが発生する。また、チャンバ11の下部(以下、「排気室(マニホールド)」という。)16にはチャンバ11内のガスを排出する排気管17が接続される。排気プレート14は反応室15に発生するプラズマを捕捉又は反射してマニホールド16への漏洩を防止する。
【0024】
排気管17にはTMP(Turbo Molecular Pump)及びDP(Dry Pump)(ともに図示しない)が接続され、これらのポンプはチャンバ11内を真空引きして減圧する。具体的には、DPはチャンバ11内を大気圧から中真空状態(例えば、1.3×10Pa(0.1Torr)以下)まで減圧し、TMPはDPと協働してチャンバ11内を中真空状態より低い圧力である高真空状態(例えば、1.3×10−3Pa(1.0×10−5Torr)以下)まで減圧する。なお、チャンバ11内の圧力はAPCバルブ(図示しない)によって制御される。
【0025】
チャンバ11内のサセプタ12には下部高周波電源18が下部整合器19を介して接続されており、該下部高周波電源18は所定の高周波電力をサセプタ12に供給する。これにより、サセプタ12は下部電極として機能する。また、下部整合器19は、サセプタ12からの高周波電力の反射を低減して高周波電力のサセプタ12への供給効率を最大にする。
【0026】
サセプタ12の上部には、静電電極板20を内部に有する静電チャック21が配置されている。静電チャック21は或る直径を有する下部円板状部材の上に、該下部円板状部材より直径の小さい上部円板状部材を重ねた形状を呈する。なお、静電チャック21はセラミックで構成されている。サセプタ12にウエハWを載置するとき、該ウエハWは静電チャック21における上部円板状部材の上に配される。
【0027】
また、静電チャック21では、静電電極板20に直流電源22が電気的に接続されている。静電電極板20に正の直流高電圧が印加されると、ウエハWにおける静電チャック21側の面(以下、「裏面」という。)には負電位が発生して静電電極板20及びウエハWの裏面の間に電位差が生じ、該電位差に起因するクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により、ウエハWは静電チャック21における上部円板状部材の上において吸着保持される。
【0028】
また、静電チャック21には、吸着保持されたウエハWを囲うように、円環状のフォーカスリング23が載置される。フォーカスリング23は、導電性部材、例えば、シリコンからなり、反応室15においてプラズマをウエハWの表面に向けて収束し、プラズマエッチングの効率を向上させる。
【0029】
また、サセプタ12の内部には、例えば、円周方向に延在する環状の冷媒室24が設けられる。この冷媒室24には、チラーユニット(図示しない)から冷媒用配管25を介して低温の冷媒、例えば、冷却水やガルデン(登録商標)が循環供給される。該低温の冷媒によって冷却されたサセプタ12は静電チャック21を介してウエハW及びフォーカスリング23を冷却する。
【0030】
静電チャック21における上部円板状部材上面のウエハWが吸着保持される部分(以下、「吸着面」という。)には、複数の伝熱ガス供給孔26が開口している。これら複数の伝熱ガス供給孔26は、伝熱ガス供給ライン27を介して伝熱ガス供給部(図示しない)に接続され、該伝熱ガス供給部は伝熱ガスとしてのヘリウム(He)ガスを、伝熱ガス供給孔26を介して吸着面及びウエハWの裏面の間隙に供給する。吸着面及びウエハWの裏面の間隙に供給されたヘリウムガスはウエハWの熱を静電チャック21に効果的に伝達する。
【0031】
チャンバ11の天井部には、サセプタ12と対向するようにシャワーヘッド28が配置されている。シャワーヘッド28には上部整合器29を介して上部高周波電源30が接続されており、上部高周波電源30は所定の高周波電力をシャワーヘッド28に供給するので、シャワーヘッド28は上部電極として機能する。なお、上部整合器29の機能は上述した下部整合器19の機能と同じである。
【0032】
シャワーヘッド28は、多数のガス穴31を有する天井電極板32と、該天井電極板32を着脱可能に釣支するクーリングプレート33と、該クーリングプレート33を覆う蓋体34とを有する。また、該クーリングプレート33の内部にはバッファ室35が設けられ、このバッファ室35には処理ガス導入管36が接続されている。シャワーヘッド28は、処理ガス導入管36からバッファ室35へ供給されたガス、例えば、処理ガスや洗浄ガス等をガス穴31を介して反応室15内へ供給する。本実施の形態では、処理ガスとして、例えば、フルオロカーボン系(C)ガスを反応室15内へ供給し、洗浄ガスとして、例えば、アンモニアガスを反応室15内へ供給する。
【0033】
この基板処理装置10では、サセプタ12及びシャワーヘッド28に高周波電力を供給して、反応室15内に高周波電力を供給することにより、該反応室15内においてシャワーヘッド28から供給された処理ガスを高密度のプラズマにしてウエハWにプラズマエッチングを施す。
【0034】
上述した基板処理装置10の各構成部品の動作は、基板処理装置10が備える制御部(図示しない)のCPUがプラズマエッチングに対応するプログラムに応じて制御する。
【0035】
従来の基板処理方法では、フルオロカーボン系ガスを含む処理ガスを用いてウエハWにプラズマエッチングを施し、反応室15内のガスを排気した後に、該反応室15内へアンモニアガスを供給する。そのため、水と処理ガス由来のフッ素原子との化学反応により生成されたフッ化水素、残存する水(フッ素原子と反応していない水)、及びその後に供給されるアンモニアガスがウエハW上のシリコンと反応することにより、ウエハW表面に水酸化珪素が異物として残留してしまう(上記式(1)及び式(2)参照。)。
【0036】
これに対して、本実施の形態では、フルオロカーボン系ガスを用いたプラズマエッチング後の反応室15内に塩素ガスを供給する。
【0037】
次に、本実施の形態に係る基板処理方法について説明する。
【0038】
図2は、本実施の形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
【0039】
図2において、まず、シャワーヘッド28が四フッ化炭素(CF)ガスを含む処理ガスをウエハWを収容する反応室15内へ供給する(ステップS51)。さらに、シャワーヘッド28等が反応室15内へ高周波電力を供給することにより処理ガスからプラズマを生じさせ、該プラズマはウエハW上のポリシリコン層にプラズマエッチングを施す。ここでウエハW上に水が存在すると、上述したように、水と処理ガス由来のフッ素原子との化学反応により、容易にフッ化水素が生成される。
【0040】
次いで、シャワーヘッド28は塩素ガスを反応室15内へ供給する(ステップS52)。塩素ガスがウエハW上に到達し、該塩素ガスがウエハW上のフッ化水素及び残存する水と接触すると、下記式(3)及び式(4)に示す化学反応が起こる。
【0041】
2HF+Cl → 2HCl+F ・・・(3)
2HO+Cl → 2HCl+O ・・・ (4)
上記式(3)及び式(4)に示す化学反応により生成された塩化水素(HCl)の沸点は、フッ化水素及び水の沸点よりも大幅に低く(図3参照。)、塩化水素は発生後直ちに気化するため、該塩化水素は排気室16及び排気管17を介して反応室15から容易に排気される(ステップS53)。その後、シャワーヘッド28はアンモニアガスを反応室15内へ供給し(ステップS54)、該アンモニアガスを用いてウエハWを洗浄した後、本処理を終了する。
【0042】
本実施の形態に係る基板処理方法によれば、四フッ化炭素を用いたプラズマエッチングの後に反応室15内に塩素ガスを供給する。このとき、上記式(3)及び式(4)に示すように、生成されたフッ化水素及び残存する水が各々塩化水素に変換される。該塩化水素は直ちに気化するため、反応室15内のガスを排気することにより、塩化水素をウエハW上から容易に除去することができる。したがって、異物の発生の要因であるフッ化水素及び水がウエハW上に存在しなくなるため、その後、反応室15内にアンモニアガスを供給しても、上記式(1)及び式(2)に示す反応がおこらず、ウエハW上における異物、例えば、水酸化珪素の発生を抑制することができる。また、ウエハW上のフッ素原子を除去するために真空紫外光をウエハWに照射する必要がないので、ウエハW上のフォトレジスト膜の変質を防止することができる。したがって、ウエハWから製造される半導体デバイスの歩留まりの低下を抑制することができる。
【0043】
また、上述のように、塩化水素の沸点は十分に低く、生成された塩化水素は、例えば、室温(約20℃)であっても容易に気化するが、本実施の形態では、プラズマエッチングにより温度が高くなっているウエハW上で塩化水素が発生するので、確実に塩化水素を気化させることができる。
【0044】
さらに、塩素ガスの供給時におけるウエハWの温度がフッ化水素の沸点よりも高ければ、生成された塩化水素のみならず、残存するフッ化水素をも気化させることができる。ここで、フッ化水素の沸点は約19.5℃であることから(図3参照。)、特に、塩素ガスの供給時におけるウエハWの温度が20℃以上に維持される場合に、確実に塩化水素及びフッ化水素をウエハW上から除去でき、該ウエハWにおける異物の発生をより確実に抑制することができる。また、塩素ガスの供給時におけるウエハWの温度が100℃以上であれば、残存する水を蒸発させることができる。以上より、異物の発生を確実に抑制する観点からは、反応室15内に塩素ガスを供給する前に、予めウエハWを加熱するのが好ましい。
【0045】
なお、上述した本実施の形態では、四フッ化炭素ガス及びアンモニアガスを用いる場合について説明したが、他のフッ素原子を含むガス及び他の窒素原子を含むガスを用いる場合においても、他のフッ素原子を含むガスによる処理の後、且つ他の窒素原子を含むガスを用いる処理の前に、塩素ガスを供給することによって上述した効果と同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0047】
まず、塩素ガスの供給がウエハW上における異物の発生に与える影響について検討した。
【0048】
実施例1
まず、基板処理装置10において、ウエハWを収容する反応室15内へ四フッ化炭素ガスを含む処理ガスを供給した。その後、反応室15内の圧力を真空圧とし、高周波電力を供給して処理ガスからプラズマを生じさせ、該プラズマを用いてウエハW上のポリシリコン層にプラズマエッチングを施した。次いで、反応室15内の圧力を大気圧とし、該反応室15内へ塩素ガスを十分に供給した後、反応室15内のガスを排気管17より排気した。続いて反応室15内へアンモニアガスを供給し、該アンモニアガスを用いてウエハWを洗浄した後、ウエハWをチャンバ11から取出し、その表面を電子顕微鏡にて観察したところ、ウエハW表面に異物が存在しないことが確認された。
【0049】
比較例1
次に、基板処理装置10において、反応室15内へ塩素ガスを供給することなく、アンモニアガスを供給してウエハWを洗浄した。その他の条件は実施例1と同じとした。洗浄後、ウエハWをチャンバ11から取出し、その表面を電子顕微鏡にて観察したところ、ウエハW表面に異物が残留していることが確認された。
【0050】
以上より、四フッ化炭素ガスから生じたプラズマによるプラズマエッチングが施されたポリシリコン層を有するウエハWをアンモニアガスによって洗浄する場合、プラズマエッチング後、且つ洗浄前にウエハWに向けて塩素ガスを供給すると、ウエハW上における異物の発生を抑制できることが分かった。
【0051】
次に、塩素ガスの供給時におけるウエハWの温度がウエハW上における異物の発生に与える影響について検討した。なお、以下に述べる実施例2及び比較例2では、ウエハW上にフッ化水素を過剰に存在させるために、四フッ化炭素ガスから生じたプラズマによるプラズマエッチングが施されたウエハWに塩素ガスを供給する前に、該ウエハWにフッ化水素ガスの単ガスやフッ化水素ガス及び窒素ガスの混合ガスを供給した。
【0052】
実施例2
まず、プラズマエッチングが施されたウエハWに向けて、大気圧条件下においてフッ化水素ガスの単ガスを供給した。その後、ウエハWを200℃で加熱してフッ化水素ガス及び窒素ガスの混合ガスを供給した。次いで、ウエハWに向けて塩素ガスを供給した後、該ウエハWに向けてアンモニアガスを供給した。その後、ウエハWの表面を電子顕微鏡にて観察したところ、ウエハW表面に異物が存在しないことが確認された。
【0053】
比較例2
次に、ウエハWを加熱することなく、フッ化水素ガス及び窒素ガスの混合ガスをプラズマエッチングが施されたウエハWに向けて供給した。その他の条件は実施例2と同じとした。その後、ウエハWの表面を電子顕微鏡にて観察したところ、ウエハW表面に異物が残留していることが確認された。
【0054】
以上より、ウエハW上にフッ化水素が過剰に存在していても、塩化水素の沸点よりも十分に高い200℃以上に加熱されたウエハWに向けて塩素ガスを供給することにより、ウエハW上における異物の発生を確実に抑制できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理方法が適用される基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る基板処理方法のフローチャートである。
【図3】フッ化水素、塩化水素及び臭化水素の沸点及び分子量の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
W ウエハ
10 基板処理装置
11 チャンバ
12 サセプタ
15 反応室
17 排気管
28 シャワーヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内において基板に処理を施す基板処理方法であって、
前記処理容器内へフッ素原子を含むガスを供給するフッ素供給ステップと、
前記処理容器内へ塩素ガスを供給する塩素供給ステップと、
前記処理容器内へ窒素原子を含むガスを供給する窒素供給ステップとを有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
前記塩素供給ステップでは前記基板の温度が20℃以上に維持されることを特徴とする請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記塩素供給ステップでは前記基板が200℃以上に加熱されることを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記フッ素供給ステップでは前記基板にプラズマ処理が施されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記塩素供給ステップではプラズマを用いないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記フッ素原子を含むガスはフルオロカーボン系ガスであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記窒素原子を含むガスはアンモニアガスであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−200181(P2009−200181A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39357(P2008−39357)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】