基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体
【課題】真空容器内にてテーブルの周方向に沿って複数の半導体ウェハを配置し、2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給して成膜するALDにおいて面内均一性高く成膜処理を行うこと。
【解決手段】ALDを行う成膜装置101と、アニール処理を行う熱処理装置102と、を真空搬送室103に気密に接続すると共に、真空搬送室103内に自転機構である回転ステージ132を設ける。そして、ウェハに対してBTBASガスを供給してこのガスを吸着させ、次いでBTBASガスと反応して流動性を持つシロキサン重合体を生成するエタノールガス及びこのシロキサン重合体を酸化するO3ガスをこの順番で供給して成膜処理を行うと共に、この成膜処理の途中で成膜装置101からウェハを取り出して、基板を回転させてその向きを変更し、またアニール処理を行って反応生成物を緻密化する。
【解決手段】ALDを行う成膜装置101と、アニール処理を行う熱処理装置102と、を真空搬送室103に気密に接続すると共に、真空搬送室103内に自転機構である回転ステージ132を設ける。そして、ウェハに対してBTBASガスを供給してこのガスを吸着させ、次いでBTBASガスと反応して流動性を持つシロキサン重合体を生成するエタノールガス及びこのシロキサン重合体を酸化するO3ガスをこの順番で供給して成膜処理を行うと共に、この成膜処理の途中で成膜装置101からウェハを取り出して、基板を回転させてその向きを変更し、またアニール処理を行って反応生成物を緻密化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内において、互いに反応する複数の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置、基板処理方法及びこの基板処理方法が記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)に対して真空雰囲気下で少なくとも2種類の反応ガスを順番に供給することにより薄膜を形成する手法が知られている。具体的には、この手法は例えばウェハの表面に第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、ウェハ表面での両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを複数回例えば数百回行うことによって、これらの層を積層してウェハ上へ薄膜を成膜するプロセスである。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており、従来から用いられているCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比較してサイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールできると共に、膜質の面内均一性も良好であり、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法である。
【0003】
この成膜方法を実施するにあたっては、例えば特許文献1〜8に記載の装置が知られている。これらの装置について概略的に説明すると、この装置の真空容器内には、複数枚のウェハを周方向(回転方向)に並べて載置するための載置台と、この載置台に対向するように真空容器の上部に設けられ、処理ガス(反応ガス)をウェハに供給する複数のガス供給部と、が設けられている。
そして、ウェハを載置台に載置して真空容器内を所定の処理圧力となるように減圧し、ウェハを加熱すると共に載置台と上記のガス供給部とを鉛直軸回りに相対的に回転させる。また、複数のガス供給部からウェハの表面に例えば夫々既述の第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給すると共に、反応ガスを供給するガス供給部同士の間に物理的な隔壁を設けたり、あるいは不活性ガスをエアカーテンとして吹き出したりすることによって、真空容器内において第1の反応ガスにより形成される処理領域と第2の反応ガスにより形成される処理領域とを区画する。
【0004】
このように、共通の真空容器内に複数種類の反応ガスを同時に供給しているが、これらの反応ガスがウェハ上において混合しないように夫々の処理領域を区画しているので、載置台上のウェハから見ると、例えば第1の反応ガス及び第2の反応ガスが上記の隔壁やエアカーテンを介して順番に供給されることになる。そのため、例えば真空容器内に供給する反応ガスの種類を切り替える度に真空容器内の雰囲気を置換する必要がないので、またウェハに供給する反応ガスを高速で切り替えることができるので、上記の手法による成膜処理を速やかに行うことができる。
【0005】
ところで、上述の成膜装置は、テーブル及びガス供給部が相対的に回転することにより形成されるガス流と、ガス供給部及び排気口の位置関係で決まるガス流と、が組み合わされてウェハ表面上にガスが流れ、しかもテーブルの径方向の位置により前記相対的回転における周速度が変わってくることなどから、ウェハの面内におけるガス流れは、通常の枚葉式の真空処理装置に比べて均一性が低い。このため、本来面内均一性の高い成膜処理を行うことのできるALD法でありながら、上述の成膜装置は、その利点を十分に発揮できないおそれがある。
【0006】
更にまた、半導体デバイスのパターンの微細化に伴い、パターンである凹部の埋め込みに対して良好な特性が要求されている。このため凹部のアスペクト比が高い場合などに対しては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により薄膜を形成して埋め込んだ後、内部に形成された空洞を塞ぐために例えばアニール処理により薄膜を流動させる手法が知られている。しかしながらこの手法は成膜を行って凹部を埋め込んだ後にアニール処理を行っていることから、凹部内に形成された空洞を塞ぐためには、高い加熱温度と長い処理時間が必要になる。このためスループットの低下の一因となり、また既に形成されているデバイス構造に対して大きな熱履歴を与える懸念もある。
【0007】
上述のALD法は埋め込み特性は非常に優れているが、膜が緻密であるため、アニールしたときに流動性が得られない。そしてALD法は凹部が高いアスペクト比であったり逆テーパ形状である場合には、埋め込み部分において空洞が生じることがあるが、この場合にはアニールによる流動化が困難であり、結果として埋め込みが良好に行われないおそれがある。また、このようなALD法において、例えば薄膜中に含まれる有機物などの不純物を効率的に低減させる技術も必要である。
【0008】
特許文献9には、ウェハの表面にソース領域やドレイン領域を形成するために、ディスク上に複数枚のウェハを周方向に配置して、このディスクを支持する回転アームを軸回りに回転させると共に、このディスク上のウェハにイオンビームを注入する技術が記載されている。そして、イオンビームの全注入量の1/4を注入してウェハを90度周方向に回転(自転)させ、次いで再び1/4を注入して更にウェハを90度回転させ、こうしてウェハを1周させる間に全注入量を注入することにより、ディスクの往復直線運動に対して様々な方向を向いているトランジスタに対して均一にイオンを注入している。しかし、ALDを行う装置における上述の課題及び解決手段については何ら示唆されていない。
特許文献10には、ALD法によりSiO2絶縁膜を成膜するにあたり、Si原料ガスを供給した後、オゾンガスを供給し、次いで水蒸気を供給する技術が記載されているが、このような課題については何ら検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公報6,634,314号
【特許文献2】特開2001−254181号公報:図1及び図2
【特許文献3】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献4】特開平4−287912号公報
【特許文献5】米国特許公報7,153,542号:図8(a)、(b)
【特許文献6】特開2007−247066号公報:段落0023〜0025、0058、図12及び図18
【特許文献7】米国特許公開公報2007−218701号
【特許文献8】米国特許公開公報2007−218702号
【特許文献9】特開平5−152238:段落0016〜0019、図3、図4
【特許文献10】特開2006−269621:段落0018、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、テーブル上の基板をガス供給部に対して相対的に公転させて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給して成膜処理を行うにあたり、面内均一性が高くかつ良好な膜質(凹部への良好な埋め込み特性や不純物の少ない膜)を得ることができる基板処理装置、基板処理方法及びこの基板処理方法が記憶された記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基板処理装置は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置において、
基板に対して成膜処理を行う成膜装置と、
この成膜装置に気密に接続された真空搬送室と、
この真空搬送室内に設けられ、前記成膜装置とこの真空搬送室との間において基板を搬送する搬送手段と、
前記真空搬送室に気密に接続され、その内部に基板載置台が設けられた処理容器と、この処理容器内に設けられ、前記基板載置台上の基板に対して熱処理を行うための手段と、を有する熱処理装置と、
前記真空搬送室内または前記熱処理装置内に設けられ、前記搬送手段上に載置された基板を鉛直軸回りに自転させるための自転機構と、
基板に対して薄膜形成処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備え、
前記成膜装置は、
前記真空容器内に設けられたテーブルと、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ当該テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、基板の表面に複数の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
これら複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスを供給するための分離領域と、
前記反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させる回転機構と、
前記回転機構の回転により前記複数の処理領域及び前記分離領域を基板が順番に位置するように、当該回転機構の回転方向に沿うように前記テーブルに形成された基板載置領域と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備え、
前記制御部は、薄膜形成処理の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、前記真空容器から前記搬送手段により基板を取り出して、前記自転機構により基板の向きを変えるように制御信号を出力することを特徴とする。
【0012】
上記の基板処理装置の具体的な態様としては、以下のように構成しても良い。
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記複数の反応ガス供給手段は、前記基板に第1の反応ガスを供給してこの第1の反応ガスを吸着させる第1の反応ガス供給手段と、基板上に吸着した前記第1の反応ガスと反応して流動性を持つ中間生成物を生成する補助ガスを前記基板に供給する補助ガス供給手段と、この中間生成物と反応して反応生成物を生成する第2の反応ガスを基板に供給する第2の反応ガス供給手段と、により構成され、
前記第1の反応ガス供給手段、前記補助ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段は、前記成膜装置と前記真空搬送室との間に基板を受け渡すために形成された搬送口から見て前記テーブルの回転方向下流側にこの順番で設けられ、
前記熱処理装置は、前記基板に対して熱処理を行うことにより前記反応生成物を緻密化するように構成されている態様。
【0013】
前記テーブルの回転方向における前記第2の反応ガス供給手段と前記搬送口との間には、テーブル上の基板に対してプラズマを供給するためのプラズマ供給手段が設けられている態様。
前記第1の反応ガス供給手段と前記搬送口との間には、前記反応生成物内にホウ素及びリンの少なくとも一方を混入させるために、前記テーブル上の基板に対向するように、前記基板の表面に第3の反応ガスを供給して当該基板の表面に第3の反応ガスを吸着させるための第3の反応ガス供給手段が設けられていることを特徴とする態様。
【0014】
前記分離領域は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を前記テーブルとの間に形成するための天井面を備えている態様。
前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために前記真空容器内の中心部に位置し、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域を備え、
前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記真空排気手段により排気される態様。
【0015】
本発明の基板処理方法は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理方法において、
成膜装置の真空容器内に設けられたテーブル上の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ前記テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた複数の反応ガス供給手段から、前記テーブル上の基板の載置領域側の面に夫々反応ガスを供給する工程と、
前記複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離領域への前記反応ガスの侵入を阻止する工程と、
次いで、前記反応ガス供給手段及び前記分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を回転機構により鉛直軸回りに相対的に回転させて、前記複数の処理領域及び前記分離領域に基板を順番に位置させて反応生成物の層を積層して薄膜を成膜する工程と、
前記薄膜を成膜する工程の途中で、前記回転機構による相対的回転を止め、前記成膜装置に気密に接続された真空搬送室から、この真空搬送室内に設けられた搬送手段により成膜装置から前記基板を取り出して、この真空搬送室内またはこの真空搬送室に気密に接続された熱処理装置内に設けられた自転機構により前記基板を鉛直軸回りに自転させてその向きを変更する工程と、
前記基板の向きを変更するために前記成膜装置から取り出した基板を、前記熱処理装置内に搬入し、この基板に対して熱処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
前記薄膜を成膜する工程は、
前記テーブルを回転させる工程と、
前記成膜装置と前記真空搬送室との間に基板を受け渡すために形成された搬送口から見て、前記テーブルの回転方向下流側に設けられた第1の反応ガス供給手段から、前記基板の表面に第1の反応ガスを供給して、この第1の反応ガスを基板の表面に吸着させる工程と、
次いで、前記テーブルの回転方向において前記第1の反応ガス供給手段と前記搬送口との間に設けられた補助ガス供給手段からこの基板上に補助ガスを供給して、前記基板の表面に吸着した前記第1の反応ガスとこの補助ガスとを反応させて流動性を持つ中間生成物を生成する工程と、
続いて、前記テーブルの回転方向において前記補助ガス供給手段と前記搬送口との間に設けられた第2の反応ガス供給手段からこの基板上に第2の反応ガスを供給して、前記基板の表面の中間生成物と第2の反応ガスとを反応させて反応生成物を生成する工程と、を含み、
前記基板に対して熱処理を行う工程は、前記基板に対して熱処理を行うことにより、前記反応生成物を緻密化する工程であっても良い。
【0017】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、上記の基板処理方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給するサイクルにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成するために、夫々複数の反応ガスが供給される複数の処理領域と、これらの処理領域の間において分離ガスが供給される分離領域と、を基板が順番に位置するようにガス供給部とテーブルとを鉛直軸回りに相対的に回転させて、ガス供給部に対してテーブル上の基板を相対的に公転させる成膜装置を備えた基板処理装置において、成膜装置内において基板に対してプロセスを行っている途中で、この成膜装置に気密に接続された真空搬送室に基板を取り出して鉛直軸回りに自転させてその向きを変更すると共に、この基板に対して熱処理を行っている。そのため、成膜装置内における基板の面内におけるガスの流れの不均一さが緩和され、その結果面内に亘って膜や膜質の均一性が高い成膜処理が行われるように基板処理を行うことができるし、またプロセスの途中でシラノール化処理や熱処理を行っていることから、例えば凹部への埋め込み特性や薄膜の不純物の濃度が低い良好な膜質の薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の一例を示す平面図である。
【図2】上記の基板処理装置を一部拡大して示す斜視図である。
【図3】上記の基板処理装置に接続される熱処理装置の一例を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
【図5】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図6】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図7】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図8】上記の成膜装置の横断面の拡大図である。
【図9】上記の成膜装置を拡大して示す斜視図である。
【図10】上記の成膜装置の横断面の拡大図である。
【図11】上記の成膜装置の一部を示す斜視図である。
【図12】上記の成膜装置におけるパージガスの流れを示す模式図である。
【図13】上記の基板処理装置において成膜処理が行われる基板の表面構造の一例を示す模式図である。
【図14】上記の基板処理装置において行われる成膜処理の流れを示すフロー図である。
【図15】上記の成膜装置において基板に対して成膜処理が行われていく様子を示す模式図である。
【図16】上記の成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図17】上記の基板処理装置において基板を自転させるときの様子を示す模式図である。
【図18】上記の基板処理装置において基板に対して成膜処理が行われて行くときの基板の向きと成膜量とを模式的に示す模式図である。
【図19】上記の基板処理装置において成膜処理が行われた基板を模式的に示す模式図である。
【図20】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図21】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図22】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図23】上記の他の例におけるプラズマインジェクターの一例を示す斜視図である。
【図24】上記のプラズマインジェクターを示す縦断面図である。
【図25】上記の基板処理装置の他の例を示す平面図である。
【図26】上記の基板処理装置の他の例における基板を自転させる機構の一例を示す模式図である。
【図27】上記の成膜装置の好ましい例を示す概略図である。
【図28】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図29】上記の成膜装置の他の例を示す縦断面図である。
【図30】上記の他の例における成膜装置を示す斜視図である。
【図31】上記の他の例における成膜装置を示す平面図である。
【図32】上記の他の例における成膜装置を示す斜視図図である。
【図33】本発明の実施例において得られたシミュレーション結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態である基板処理装置について、図1を参照して説明する。この基板処理装置は、基板例えば半導体ウェハ(以下単に「ウェハ」という)Wに対してシリコン酸化膜からなる薄膜の成膜処理を行うための成膜装置101と、ウェハWに対してアニール処理(熱処理)を行うための熱処理装置102と、これらの成膜装置101と熱処理装置102との間に気密に接続された真空搬送室103と、を備えている。成膜装置101と熱処理装置102との間の壁面には、後述するように、ウェハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この真空搬送室103内は、例えばバタフライバルブからなる圧力調整部が介設された排気路を介して、真空ポンプ(いずれも図示せず)により所定の真空度に維持されるように構成されている。
【0021】
この真空搬送室103内には、ウェハWの受け渡しを行うための搬送手段である2基の真空搬送アーム104が設けられており、これらの真空搬送アーム104、104は、各々鉛直軸回りに回転自在に構成されると共に、ウェハWを水平に保持して成膜装置101、熱処理装置102及び後述のロードロック室105に対して進退自在に構成されている。また、真空搬送室103内において、2基の真空搬送アーム104、104が各々アクセスできる位置例えば2基の真空搬送アーム104、104の中間位置における成膜装置101に近接する位置には、図2にも示すように、真空搬送アーム104上に保持されたウェハWを裏面側から突き上げて鉛直軸回りに回転させるための昇降軸130と、この昇降軸130を下側から鉛直軸回りに回転自在及び昇降自在に保持する駆動部131と、からなる自転機構132が設けられている。この自転機構132は、後述するように成膜装置101にて成膜途中のウェハWに対してその向きを変更し、成膜を続行するためのものである。尚、図1では真空搬送アーム104を簡略化して描画しており、また図2では1基の搬送アーム104のみを描画している。
【0022】
また、真空搬送室103の側壁には、大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能な2つのロードロック室(予備真空室)105を介して、内部に大気搬送アーム106が配置された大気搬送室107が接続されている。この大気搬送アーム106は、鉛直軸回りに回転自在、昇降自在、進退自在及び2つのロードロック室105、105の並びに沿って水平移動自在に構成されている。この図1中108は例えば25枚のウェハWが収納されたフープと呼ばれる密閉型の搬送容器であり、ウェハWはこの搬送容器108から大気搬送アーム106により大気搬送室107へと取り出されて、ロードロック室105及び真空搬送室103を介して真空搬送アーム104により成膜装置101や熱処理装置102に搬送されることになる。尚、図1中Gはゲートバルブである。
【0023】
上記の熱処理装置102について説明すると、この熱処理装置102は、図3に示すように、処理容器111と、この処理容器111内に設けられた基板載置台112と、を備えている。この載置台112は、ウェハWを100℃〜450℃好ましくは350℃に加熱するための加熱手段113例えばヒーターが埋設された支持台114と、この支持台114上に設けられた静電チャック115と、を備えている。載置台112の内部には、ウェハWを裏面側から突き上げて昇降させるための受け渡し手段例えば3本の昇降ピン119が設けられており、この昇降ピン119には下方側から当該昇降ピン119を昇降自在に支持する昇降装置121が接続されている。この載置台112の内部には、昇降ピン119が昇降するための貫通孔120が形成されており、昇降ピン119が昇降装置121により昇降することによって、既述の真空搬送アーム104と昇降ピン119との間においてウェハWの受け渡しを行うように構成されている。この図3中128は、昇降ピン119と処理容器111の底面との間を気密に接続するベローズである。
【0024】
載置台112の周囲における床面には、排気口123が形成されており、この排気口123から伸びる排気管124には、図示しない圧力調整手段をなす例えばバタフライバルブを介して真空ポンプなどの真空排気手段125が接続されている。また、処理容器111の側壁には、この処理容器111内に不活性ガス例えばN2(窒素)ガスを供給するためのガス供給路127が接続されており、後述するように、ウェハWに対して熱処理を行うときには不活性ガスを供給できるように構成されている。尚、この図1中122は搬送口である。
【0025】
次に、上記の成膜装置101について詳述する。この成膜装置101は、図4〜図6に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、この回転テーブル2を収納する概略カップ型の容器本体12と、この容器本体12の上面の開口部を気密に塞ぐように円板状に形成された天板11と、を備えている。この天板11は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に気密に接続されており、図示しない開閉機構により昇降して開閉されるように構成されている。
【0026】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。この回転軸22は、真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計回りに回転させる回転機構である駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0027】
回転テーブル2の表面部には、図5及び図6に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられており、この凹部24は回転テーブル2の回転により当該回転テーブル2の回転中心を中心として鉛直軸回りに公転するように構成されている。なお図6には便宜上1個の凹部24だけにウェハWを描いてある。ここで図7は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図であり、凹部24は、図7(a)に示すようにその直径がウェハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウェハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウェハWを凹部24に落とし込むと、ウェハWの表面と回転テーブル2の表面(ウェハWが載置されない領域)とが揃うことになる。ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分で圧力変動が生じることから、ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、ウェハWの裏面を支えて当該ウェハWを昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピン16(図9参照)が貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0028】
凹部24はウェハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴なう遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位であるが、この基板載置領域(ウェハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウェハWの周縁をガイドするガイド部材をウェハWの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウェハWを吸着する場合には、その吸着によりウェハWが載置される領域が基板載置領域となる。
【0029】
図5、図6及び図8に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する上位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と、2本の分離ガスノズル41、42と、補助ノズル200と、が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて配置されている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)に分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31、分離ガスノズル42、補助ノズル200及び第2の反応ガスノズル32がこの順番で配列されており、これらのノズル41、31、42、200、32は真空容器1の側壁において、この搬送口15に概略対向する位置から当該搬送口15の前記回転方向上流側に近接する位置まで順番に取り付けられている。これら反応ガスノズル31、32、補助ノズル200及び分離ガスノズル41、42は、例えば真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウェハWに対向して水平に伸びるようにライン状に取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート31a、32a、200a、41a、42aは当該外周壁を貫通している。
【0030】
これら反応ガスノズル31、32、補助ノズル200は、夫々第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段及び補助ガス供給手段をなし、分離ガスノズル41、42は、分離ガス供給手段をなしている。これらのノズル31、32、200、41、42は、真空容器1の側壁の複数箇所に形成された貫通孔100に取り付けられている。尚、ノズル31、32、200、41、42が取り付けられていない貫通孔100は、図示しない覆い部材により気密に密閉されている。
【0031】
反応ガスノズル31、32には、夫々図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管31b、32bにより、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガス及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスが供給されるように構成されている。補助ノズル200には、図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管200bにより、水酸基(OH基)を持つシラノール化用の補助ガス例えばアルコール(R−OH、R:アルキル基)又は純水(H2O)あるいは過酸化水素水(H2O2)この例ではエタノール(C2H5OH)ガスが供給されるように構成されている。また、分離ガスノズル41、41は、図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管により、分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)が供給されるように構成されている。
【0032】
反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔33が真下を向いてノズルの長さ方向(回転テーブル2の半径方向)に亘って例えば10mmの間隔を置いて等間隔に配列されている。また、補助ノズル200には、下方側に反応ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔201が真下を向いてノズルの長さ方向(回転テーブル2の半径方向)に亘って例えば10mmの間隔を置いて等間隔に配列されている。分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔40が真下を向いて長さ方向に例えば10mm程度の間隔を置いて等間隔に穿設されている。
【0033】
反応ガスノズル31、32のガス吐出孔33とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmであり、補助ノズル200のガス吐出孔201とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmである。また、分離ガスノズル41、42のガス吐出孔40とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは3mmである。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々BTBASガスをウェハWに吸着させるための第1の処理領域91及びO3ガスをウェハWに吸着させるための第2の処理領域92となる。また、補助ノズル200の下方領域は、エタノールガスとウェハW上に吸着したBTBASガスとを反応させて中間生成物を生成させるための補助領域90となる。
【0034】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域91と補助領域90及び第2の処理領域92とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図5〜図7に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41(42)の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転テーブル2の回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。
尚、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。
【0035】
従って分離ガスノズル41、42における前記回転方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記回転方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間に第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からエタノールガス及びO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したエタノールガス及びO3ガスとBTBASガスとが凸状部4内で交じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である補助領域90の雰囲気及び第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウェハWに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。ここで、エタノールガスとO3ガスとの間には分離領域Dが設けられていないので、これらの両ガスは後述の排気口62に至るまでに互いに混じり合うが、ウェハWに悪影響を及ぼさない。
【0036】
この例では直径300mmのウェハWを被処理基板としており、この場合凸状部4は、回転テーブル2の回転中心から140mm外周側に離れた部位(後述の突出部5との境界部位)においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウェハWの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお図7(a)に示すように、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さLでみれば、長さLは246mmである。
また図7(a)に示すように凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面までの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。そのため分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。なお分離ガスとしては、窒素(N2)ガスに限られずアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスなどを用いることができるが、このようなガスに限らず水素(H2)ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【0037】
一方天板11の下面には、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は凸状部4における回転テーブル2の回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図5及び図6は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウェハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図4では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図10では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図5及び図10に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0038】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図10に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図4に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部位における既述の第1の処理領域91及び第2の処理領域92に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図4及び図6に示すように、夫々第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、既述の図4に示すように、バルブ65が介設された排気路63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0039】
これらの排気口61、62は、分離領域Dの分離作用が確実に働くように、平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に設けられている。詳しく言えば、回転テーブル2の回転中心から見て第1の処理領域91とこの第1の処理領域91に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第1の排気口61が形成され、回転テーブル2の回転中心から見て第2の処理領域92とこの第2の処理領域92に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第2の排気口62が形成されている。この排気口61はBTBASガスの排気を専用に行うように、また排気口62はエタノールガスとO3ガスとの排気を専用に行うようにその位置が設定されている。この例では一方の排気口61は、第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第1の反応ガスノズル31側の縁の延長線との間に設けられ、また他方の排気口62は、第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第2の反応ガスノズル32側の縁の延長線との間に設けられている。即ち、第1の排気口61は、図6中に一点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第1の処理領域91とを通る直線L1と、回転テーブル2の中心と前記第1の処理領域91の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L2との間に設けられ、第2の排気口62は、この図6に二点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第2の処理領域92とを通る直線L3と、回転テーブル2の中心と前記第2の処理領域92の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L4との間に位置している。
【0040】
尚、排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば分離ガスノズル42を含む分離領域Dと当該分離領域Dに対して前記回転方向下流側に隣接する第2の反応ガスノズル32との間に更に排気口を設置して3個としてもよいし、この場合にはノズル200、32の間の領域に排気口を設けても良い。更に、ノズル200、32の間の領域に分離領域Dを形成して、エタノールガスとO3ガスとを夫々専用に排気するようにしても良い。また、排気口の設置数は4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0041】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図4及び図11に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられており、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウェハWをプロセスレシピで決められた温度に加熱するように構成されている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域Eに至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するために、ヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0042】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0043】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図12にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域Eを介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域91と第2の処理領域92との一方から回転テーブル2の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガス(エタノールガス)の回り込みが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0044】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との間の狭い隙間50を介して回転テーブル2のウェハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域91と第2の処理領域92との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガスとO3ガス(エタノールガス))が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気及び補助領域90の雰囲気とを分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。
【0045】
更に真空容器1の側壁には図5、図6及び図9に示すように外部の搬送アーム10(既述の真空搬送アーム104)と回転テーブル2との間でウェハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウェハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウェハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウェハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン16の昇降機構(図示せず)が設けられる。
【0046】
また、この基板処理装置は、既述の図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部80を備えている。この制御部80は、CPU、メモリ及び処理プログラムを備えている。このメモリには、ノズル31、32、200、41、42から供給されるBTBASガス、O3ガス、エタノールガス及びN2ガスの流量、真空容器1内の処理圧力、ヒータユニット7及び加熱手段113に供給される電力値(ウェハWの加熱温度)、更にウェハWに対して成膜する薄膜の目標の膜厚T及び後述するシリコン酸化膜の成膜処理を行う回数N、自転機構132においてウェハWを自転させる自転角度θなどの処理条件が書き込まれる領域がレシピ毎に設けられている。上記の処理プログラムは、このメモリに書き込まれたレシピを読み出し、レシピに合わせて基板処理装置の各部に制御信号を送り、後述の各ステップを進行させることでウェハWの処理を行うように命令が組み込まれている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部85から制御部80内にインストールされる。
【0047】
次に上述の第1の実施の形態の作用について、図13〜図19を参照して説明する。先ず、この基板処理装置にて薄膜を成膜するウェハWについて説明すると、このウェハWの表面には、例えば溝状の凹部230が複数本平行に形成されており、図13では凹部230の形成されたウェハWの表面部の一部を断面で示してある。この凹部230のアスペクト比は、例えば3〜50程度である。この凹部(パターン)230は、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)構造を形成するためのものであり、実際には例えば窒化シリコン化合物からなる導電膜に形成されている。また、このパターンは例えばこのウェハWの上層に積層されたマスク層を用いて例えばフォトリソグラフィ工程などにより形成されているので、この凹部230には、フォトリソグラフィ工程における処理の誤差などにより、下端側の開口寸法よりも上端側の開口寸法が広くなるテーパー部233や、下端側の開口寸法よりも上端側の開口寸法が狭くなる逆テーパー部234が形成されている場合がある。図13では、このような凹部230の形状のばらつきについては誇張して示してある。
【0048】
次に、このウェハWに対する成膜処理について、以下に説明する。この例では、ウェハWの表面に目標とする成膜量(膜厚)がTnm例えば80nmのシリコン酸化膜からなる薄膜を成膜する例について説明する。先ず、既述の図1に示す基板処理装置において、搬送容器(FOUP)108を図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送し、大気搬送室107に接続する。そして、図示しない開閉機構によりこの搬送容器108の蓋を開けると共に、大気搬送アーム106により当該搬送容器108内からウェハWを取り出す(ステップS1)。次いで、大気搬送アーム106によりロードロック室105内にウェハWを搬入して、当該ロードロック室105内の雰囲気を大気雰囲気から真空雰囲気に切り替える。続いて、ゲートバルブGを開放して真空搬送アーム104(搬送アーム10)により真空搬送室103にウェハWを取り出し、搬送口15を介して成膜装置101にウェハWを搬入して回転テーブル2の凹部24内に受け渡す(ステップS2)。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに、搬送アーム10によりウェハWを昇降ピン16の上方位置に搬入し、次いで昇降ピン16が上昇してこのウェハWを受け取ることにより行われる。
【0049】
そして、搬送アーム10を真空容器1の外部に退避させると共に、昇降ピン16を下降させて凹部24内にウェハWを収納する。このようなウェハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウェハWを載置する。続いて、回転テーブル2を所定の回転数例えば240rpmで時計回りに回転させて、バルブ65を全開にして真空容器1内を真空引きすると共に、ヒータユニット7によりウェハWを設定温度例えば350℃に加熱する。
【0050】
次いで、真空容器1内が所定の真空度となるようにバルブ65の開度を調整して、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32から真空容器1内に例えば夫々200sccm、10000sccmでBTBASガス及びO3ガスを供給すると共に、補助ノズル200から真空容器1内にエタノールガスを所定の流量例えば100sccmで供給する。また、分離ガスノズル41、42から例えば夫々10000sccm、10000sccmで真空容器1内にN2ガスを供給すると共に、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72からも所定の流量でN2ガスを中心部領域C及び既述の狭い空間内に供給する。
【0051】
そして、ウェハWは回転テーブル2の回転により、第1の処理領域91、補助領域90及び第2の処理領域92をこの順番で通過していく。ウェハWが第1の処理領域91を通過すると、このウェハWの表面には分子層が1層あるいは複数層のBTBASガスが吸着する。図15は、逆テーパー状の凹部230にシリコン酸化膜が埋め込まれていく様子を示しており、図15(a)はBTBASガスの分子層241の厚さを便宜上誇張して描画してある。次いで、このウェハWが補助領域90を通過すると、ウェハWの表面に吸着した分子層241は、以下の反応式(1)に従って反応し(シラノール化され)、t−ブチルアミン(CH3C−NH2)と中間生成物であるシロキサン重合体(−(Si−O)n−)とを生成する。
BTBAS+C2H5OH →(−(Si−O)n−)+CH3C−NH2↑ (1)
このシロキサン重合体は、クラスター状であり、ウェハWに強く吸着していないため、ウェハWの表面(パターンの内部)にて粘性の高い状態となっていて流動しやすくなっている。そのため、図15(b)に示すように、このシロキサン重合体は重力の作用によって下方側が厚くなるように積層部分が流動するので、例えば逆テーパー状の凹部230においては、側面が垂直に近づくように、つまり末広がりの程度が緩和される。また、このシロキサン重合体と共に生成した有機物は、例えば気化してウェハWの上方に向かって排気されていく。
【0052】
続いて、このウェハWが第2の処理領域92を通過すると、ウェハWの表面では上記のシロキサン重合体が酸化されて、シリコンと酸素とを含む反応生成物である例えば膜厚が0.1nm程度のシリコン酸化膜(SiO2膜)242が形成される。また、シリコン酸化膜242と共に生成した有機物などの不純物は、例えば気化してウェハWの上方に排気されていく。この時、反応前のシロキサン重合体が流動性を持っていることから、このサイクルで形成したシリコン酸化膜242の積層部分についても同様に流動性することになる。こうして回転テーブル2の回転(各領域91、90、92における反応)が所定の回数例えば20回行われることにより、ウェハWの表面には膜厚が目標膜厚Tの1/N(N≧2)この例では1/8(N=8、80/8=10nm)のシリコン酸化膜242が積層される(ステップS3)。
【0053】
この時、第1の処理領域91と第2の処理領域92及び補助領域90との間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図16に示すようにBTBASガスとO3ガス及びエタノールガスとが混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、分離領域Dにおいては、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっているので、BTBASガスとO3ガス及びエタノールガスとは、回転テーブル2の外側を介しても混合しない。従って、第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気及び補助領域90の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは排気口61に、またO3ガス及びエタノールガスは排気口62に夫々排気される。この結果、BTBASガスとO3ガス及びエタノールガスとが雰囲気中においてもウェハW上においても混じり合うことがない。
【0054】
また、この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切り欠かれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばBTBASガスがO3ガスやエタノールガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0055】
続いて、BTBASガスの供給を停止して、あるいはこのBTBASガスと共に各ガス(O3ガス、エタノールガス及び分離ガス)の供給を停止して、凹部24が既述の昇降ピン16の上方位置となるように回転テーブル2の回転を停止する。この時、BTBASガスの供給を停止すると、真空容器1内のBTBASガスが速やかに排気されていくので、回転テーブル2の回転を停止しても、各ウェハWはBTBASガスの影響を受けない。BTBASガスの供給を停止した後、例えば真空容器1内の真空度が既述の真空搬送室103内の真空度と同程度となるようにバルブ65の開度を調整すると共に、ゲートバルブGを開放して真空搬送アーム104を真空容器1内に進入させて昇降ピン16との協働作用によりウェハWを真空搬送アーム104に受け渡す。
【0056】
次に、図17(a)に示すように、真空搬送アーム104上のウェハWを自転機構132の上方位置に移動させると共に、下方側から昇降軸130を上方に突き上げてウェハWを持ち上げる。続いて、図17(b)に示すように、駆動部131により昇降軸130を鉛直軸回りに回転させて、ウェハWを例えば時計回りに360°/Nこの例では360/8=45°回転(自転)させてその向きを変更する(ステップS4)。そして、昇降軸130を下降させて真空搬送アーム104にウェハWを受け渡すと共に、このウェハWを熱処理装置102内に搬入し、載置台112上に載置して静電吸着する。続いて、この処理容器111内の真空度が所定の値となるように排気管124に介設された図示しないバタフライバルブなどの圧力調整手段の開度を調整すると共に、処理容器111内に所定の流量のN2ガスを供給する。また、載置台112上のウェハWが100℃〜450℃好ましくは350℃の設定温度となるように加熱手段113に通電されているので、載置台112上に載置されたウェハWはこの設定温度に加熱される(ステップS5)。
【0057】
ウェハW上に成膜されたシリコン酸化膜242が上記の設定温度に加熱されると、シリコン酸化膜242は、膜中のSi−O結合が多く形成されてSiOH結合が少なくなっていくと共に、いわば焼き締められて結合が強固になって緻密化していき、上記のように末広がりの程度が緩和された状態で固化することになる。
また、加熱手段113によりウェハWが加熱されるので、シリコン酸化膜242内に有機物などの不純物が残っていたとしても、気化して当該シリコン酸化膜242から離脱して排出されて行く。この時、不純物がシリコン酸化膜242の膜中に入り込んでいる場合でも、このシリコン酸化膜242が上記のように極めて薄いので、この不純物は速やかに排出されることになる。
【0058】
次に、真空搬送アーム104により熱処理装置102からウェハWを取り出して目標膜厚Tとなっているかどうか(成膜処理が回数Nに達したかどうか)を確認し(ステップS6)、目標膜厚Tに達していない場合には、再度真空容器1内にウェハWを搬入して元の凹部24内に収納する。
【0059】
そして、回転テーブル2を間欠的に回転させて、回転テーブル2上の残りの4枚のウェハWに対して同様に向きの変更と加熱処理とを行い、各ウェハWについても目標膜厚Tに達していない場合には元の凹部24内に収納する。この時、回転テーブル2上には周方向にウェハWが載置されているので、例えば表面の分子層241に対してまだ既述のエタノールガスによるシラノール化処理及び酸化処理の行われていないウェハWについては、搬送口15から取り出す前にゲートバルブGを閉じて各ガス(BTBASガス、エタノールガス、O3ガス及びN2ガス)の供給を再開して各領域90、92をこの順番で通過させてシリコン酸化膜242を生成させておき、ウェハWを取り出すときにはBTBASガスあるいは各ガスの供給を停止する。尚、上記のステップS6における目標膜厚Tとなっているかどうかの確認は、例えば始めに取り出すウェハWに対して行い、続く残りの4枚のウェハWに対しては当該始めに取り出したウェハWと同じ処理を行うようにしても良い。
【0060】
その後これらのウェハWを真空容器1内に収納した後、回転テーブル2を回転させると共に真空容器1内の雰囲気が所定の真空度となるようにバルブ65の開度を調整してBTBASガス及び各ガスの供給を開始し、ステップS3の成膜処理と同様に膜厚が10nm(膜厚T/N=80/8)のシリコン酸化膜242の成膜を行う。この時、上記のように各ウェハWを時計回りに45°回転させていることから、ウェハWは先の成膜処理を行った時の水平姿勢に対して、時計回りに45°ずれた水平姿勢にてノズル31、200、32の下方位置である領域91、90、92を通過することになり、ウェハW上には合計20nm(膜厚T/N×2=80/8×2)のシリコン酸化膜242が成膜される。
【0061】
そして、各ウェハW上に目標膜厚Tのシリコン酸化膜242が成膜されるまで、上記の各ステップを繰り返すと、ウェハWは10nmのシリコン酸化膜242が成膜される度に、いわば成膜処理の途中で時計回りに45°ずつその向きが変更されていくことになる。従って、成膜前(真空容器1に搬入された時)のウェハWから見ると、成膜後のウェハWは、時計回りに315°自転し、80nmのシリコン酸化膜242からなる薄膜が成膜される。以上の成膜処理におけるウェハWの自転した角度と膜厚とを概略的に図18に示す。尚、この図18中のウェハW上に描画した矢印は、ウェハWが自転していく様子を模式的に表すために、例えば1回目の成膜処理を行う前の位置からのウェハWの自転角度を示したものであり、また図18中の横軸には、各ステップの合計数を示している。
【0062】
ここで、上記のように成膜処理を行う度にシラノール化処理を行ってシリコン酸化膜242を流動させていることから、凹部230内ではシラノール化処理を行う度に図15(c)に示すように段階的に逆テーパー状が緩和されていくので、図15(d)及び図19に示すように、空隙のない状態で埋め込みが終了する。
尚、上記のように各領域91、90、92をウェハWが順番に通過するにあたって、ウェハWが回転テーブル2の回転方向に沿って5箇所の凹部24に配置されていることから、ウェハWは分子層241が形成される前にエタノールガスやO3ガスが供給される場合もあるが、特に成膜には悪影響を及ぼさない。
【0063】
こうして成膜処理が終了すると、基板処理装置からウェハWを搬入時と逆の動作によって順次搬送アーム10により搬出する(ステップS7)。尚、既述のように、ウェハWが搬入前(成膜前)に比べて時計回りに315°自転していることから、基板処理装置から搬出する前に、ウェハWを自転機構132により時計回りに45°自転させて搬入時と同じ向きに戻すようにしても良い。
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウェハWを被処理基板とする場合は例えば1rpm〜500rpm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。
【0064】
上述の実施の形態によれば、ウェハWの表面に反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)を順番に供給して薄膜を形成するにあたり、夫々処理領域91、90、92と、これらの処理領域91(90)、92の間の分離領域Dと、の間をウェハWが順番に通過するように、回転テーブル2を鉛直軸回りに回転させてウェハW上にシリコン酸化膜242を積層した後、ウェハWを真空容器1から取り出して自転機構132において鉛直軸回りに自転させ、次いで再び反応生成物の層を積層して薄膜を形成している。そのため、例えば回転テーブル2の各凹部24において膜厚が厚くなる傾向の領域や膜厚が薄くなる傾向の領域が偏在していたとしても、つまり例えば1回目の成膜処理において成膜されたシリコン酸化膜242の膜厚が不均一だったとしても、続く成膜処理では鉛直軸回りに自転させた状態で成膜処理を行っており、上記の各偏在領域がウェハWの周方向にずれるように(膜厚の偏りが大きくならないように)次のシリコン酸化膜242が成膜されるので、面内に亘って膜厚の均一性高く成膜処理を行うことができる。従って、例えば真空容器1のノズル31、32の長さ方向(回転テーブル2の半径方向)あるいは回転テーブル2の周方向(回転方向)において、ガスの濃度分布やガス流が不均一になっていたとしても、その不均一さが緩和されるので、面内に亘って膜や膜質が均一となるように成膜処理を行うことができる。
【0065】
この時、目標の成膜量Tに対して成膜処理を複数回例えば8回に分けてウェハWを45°ずつ時計回りに自転させているので、各成膜処理における膜厚のばらつきを面内に亘って均すことができ、後述のシミュレーション結果から分かるように、面内における均一性を1%以下まで向上させることができる。
また、ウェハWを自転させるにあたり、基板処理装置の内部で行っていることから、例えば基板処理装置の外部の大気雰囲気の環境で自転させる場合よりも自転に要する時間を短くすることができ、そのためスループットの低下を抑えて面内均一性を向上させることができる。
【0066】
更に、ウェハW上にBTBASガスを吸着させた後、O3ガスを供給する前にエタノールガスを供給することによって、分子層241に対して流動性の高い状態(シロキサン重合体)が得られるようにしている。そのため、このシロキサン重合体が流動し、また続くO3ガスによる酸化処理により生成したシリコン酸化膜242についても流動するので、シリコン酸化膜242が凹部230の内部へと入り込むため、凹部230が例えば逆テーパー状に形成されている場合であっても、凹部230内に空洞(ボイド)などが介在しない状態でシリコン酸化膜242を埋め込むことができる。従って、良好に埋め込みが行われた(良好な膜質の)シリコン酸化膜242を得ることができる。そのため、例えばSTI構造のデバイスを製造する場合には、良好な絶縁特性を得ることができる。
【0067】
また、シリコン酸化膜242を流動(シラノール化)させるにあたり、薄膜の成膜が完了した後ではなく、各成膜処理を行う度に行うようにしているので、各シラノール化処理では順次積層されていくシロキサン重合体の層を順番に流動させれば良いことになる。そのため、各シラノール化処理においてシロキサン重合体を流動させる量は僅かであり、従って速やかにシリコン酸化膜242を流動させることができる。そしてALDを行うために回転テーブル2を回転させている各サイクルの中でシラノール化(流動)を行っているので、シラノール化を行うことによる時間的なロスがないため、高いスループットを維持できる。更に、シリコン酸化膜242を流動させた後に熱処理装置102において加熱処理を行うことにより、シリコン酸化膜242中に不純物が含まれていたとしても低減することができるので、またシリコン酸化膜242を緻密化することができるので、より一層良好な膜質の薄膜を得ることができる。
【0068】
更にまた、上記のように回転テーブル2の回転方向に複数のウェハWを配置し、回転テーブル2を回転させて各処理領域91、90、92を順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして、前記回転方向において第1の処理領域91及び補助領域90と第2の処理領域92との間に低い天井面を備えた分離領域Dを設けると共に、回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画した中心部領域Cから回転テーブル2の周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域Dの両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域Cから吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるようにしているため、両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができるし、回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。尚、本発明は、回転テーブル2に1個のウェハWを載置する場合にも適用できる。
【0069】
上記の基板処理装置によれば、例えば5枚処理用の成膜装置を設けることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。また、真空搬送室103に上記の成膜装置101を2基気密に接続し、これらの成膜装置101、101において並行して成膜処理を行っても良い。その場合には、更に上記のALD(MLD)を高いスループットで行うことができる。
【0070】
また、上記の例においては、各成膜処理において回転テーブル2を20回回転させてその後ウェハWを自転させると共に加熱処理を行ったが、回転テーブル2を1回回転させる度にウェハWを真空容器1内から取り出してウェハWを自転させて加熱しても良い。
【0071】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図20を参照して説明する。この実施の形態では、シリコン酸化膜242が更に速やかに流動(リフロー)するように、シリコン酸化膜242中にホウ素(B)及びリン(P)の少なくとも一方が混入するようにしている。具体的な成膜装置について説明すると、この成膜装置にはこれらのホウ素及びリンの一方例えばリンを含む化合物例えばPH4(フォスフィン)ガスを第3の反応ガスとして供給するための第3の反応ガス供給手段である例えば石英製の第3のガスノズル280が設けられており、このノズル280は、回転テーブル2の回転方向において、例えば第2の反応ガスノズル32と搬送口15との間に設けられている。
【0072】
このノズル280は、既述の各ノズル31、32、200、41、42と同様に構成されており、真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウェハWに対向して水平に伸びるように取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート281は当該外周壁を貫通している。このノズル280には、図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管282により上記の第3の反応ガスが供給されるように構成されており、このノズル280の下方側には、この反応ガスを下方側のウェハWに向けて吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔(図示せず)が真下を向いてノズルの長さ方向に亘って例えば10mmの間隔を置いて等間隔に配列されている。このノズル280のガス吐出孔とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmである。この例では、熱処理装置102におけるウェハWの加熱温度は、例えば700℃〜800℃程度に設定される。
【0073】
このノズル280を備えた成膜装置における作用について以下に説明する。既述のように、回転テーブル2上に例えば5枚のウェハWを載置して、この回転テーブル2を回転させると共に、各ノズル31、32、200、280、41、42から各反応ガス及び分離ガスを供給し、中心部領域C及び回転テーブル2の下方領域にパージガスを供給する。そして、第2の処理領域92を通過して表面にシリコン酸化膜242が形成されたウェハWに対して上記の第3の反応ガスが供給されると、この反応ガスが当該シリコン酸化膜242中に取り込まれる。次いで、ウェハWを自転させた後、熱処理装置102において第3の反応ガスが取り込まれたシリコン酸化膜242を上記のように700℃〜800℃程度に加熱すると、例えば第3の反応ガス中に含まれていた有機物が気化してこの膜から上方に向けて排気されていくと共に、このシリコン酸化膜242中に例えばリンが取り込まれることになる。この時、シリコン酸化膜242はこのリンによりガラス転移しやすくなるので、シリコン酸化膜242がリフロー(流動)して、更に逆テーパー状の凹部230の末広がりの程度が緩和されることになる。その後、既述の例と同様に多層のシリコン酸化膜242が積層されていく。
【0074】
このノズル280の配置位置としては、回転テーブル2の回転方向において第1の反応ガスノズル31と搬送口15との間であれば良く、例えば第1の反応ガスノズル31のガス供給管31bにガス供給管282を介設して、この第3の反応ガスと既述のBTBASガスとの混合ガスを供給しても良い。また、この第3の反応ガスとしては、上記のガスに代えて、あるいはこのガスと共にホウ素を含む化合物例えばTMB(トリメチルボロン)ガスを供給し、シリコン酸化膜242中にリン及びホウ素の少なくとも一方を混入させるようにしても良い。
【0075】
上記の各例においては、補助ノズル200から供給する補助ガスとしてはエタノールガスを用いたが、他のアルコール例えばメタノール(CH3OH)などでも良いし、あるいは純水(H2O)や過酸化水素水(H2O2)などでも良く、つまり水酸基(OH)基を持つ化合物のガスであれば良い。この補助ガスとして純水を用いた場合には、この純水のガスとウェハWの表面に吸着したBTBASガスとは、例えば以下の(2)式に従って反応してシラノール化する。
BTBAS+H2O →(−SiO−)n +CH3C−NH2↑ (2)
この反応において生成する中間生成物である(−SiO−)nは、既述のシロキサン重合体と同様に流動性を示し、またこの(−SiO−)nとO3ガスとが反応して生成するシリコン酸化膜242は、同様に流動性を示すので流動して良好に凹部230が埋め込まれることになる。
【0076】
[第3の実施の形態]
上記の各実施の形態では、パターン232の形成されたウェハWに対してシリコン酸化膜242の成膜処理を行うにあたり、補助ノズル200からエタノールガスを供給してシリコン酸化膜242に対して流動性を持たせるようにしたが、パターン232の形成されていないウェハWに対してもエタノールガスを供給しても良いし、あるいはパターン232の形成されていないウェハWに対してはエタノールガスを供給しなくとも良い。その場合には、例えば図21に示すように、補助ノズル200が設けられていない成膜装置101にて成膜処理が行われる。
【0077】
そして、既述の第1の実施の形態と同様に各ウェハWに対して成膜処理と、ウェハWの自転と、熱処理と、がこの順番で複数回繰り返されて、多層のシリコン酸化膜242からなる薄膜が形成される。この実施の形態では、各成膜処理毎に熱処理を行うことにより、例えばシリコン酸化膜242中に取り込まれた炭素成分などの不純物が気化して排出されやすくなるので、またシリコン酸化膜242がいわば焼きしめられて緻密になるので、不純物の含有量が少なく、また良好な硬度の薄膜を得ることができる。この時、不純物が気化して排出されるためには、例えばシリコン酸化膜242の膜厚方向に不純物が移動する必要があるので、薄膜の成膜が完了した後に熱処理を行う場合には、膜中から不純物が排出されるためには長時間の加熱処理が必要になるが、この実施の形態では成膜処理を行う度に、つまりシリコン酸化膜242の膜厚が薄い状態で加熱処理を行っているので、成膜の完了後に加熱処理を行う場合に比べてシリコン酸化膜242からの不純物の排出を速やかに行うことができ、従って良好な膜質の薄膜を得ることができる。
【0078】
この第3の実施の形態の発明は、例えば高誘電体(high−k)膜例えばSTO膜などを成膜する場合に好適に適用でき、その場合には各ノズル31、32から供給する各反応ガスとしては例えば夫々Ti(MPD)(THD)2ガス及びSr(THD)2ガスなどが用いられる。この場合には、熱処理装置102におけるウェハWの加熱温度は、例えば300℃〜400℃に設定される。
【0079】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について、図22〜図24を参照して説明する。この実施の形態は、既述の第1の実施の形態における成膜装置101を例に説明すると、図22に示すように、回転テーブル2の回転方向において、既述の第2の反応ガスノズル32と搬送口15との間にプラズマ供給手段であるプラズマインジェクター250が設けられている。
【0080】
プラズマインジェクター250は、筐体からなるインジェクター本体251を備えている。図23、図24に示すように当該インジェクター本体251内には、隔壁252によって長さ方向に区画された幅の異なる2つの空間が形成されていて、一方側はプラズマ発生用のガスをプラズマ化するためのガス活性化用流路であるガス活性化室253、他方側はこのガス活性化室253へプラズマ発生用のガスを供給するためのガス導入用流路であるガス導入室254となっている。 この図22〜図24において、255はガス導入ノズル、256はガス孔、257はガス導入ポート、258は継手部、259はガス供給ポートであり、ガス導入ノズル255からプラズマ発生用のガスがガス孔256から吐出してガス導入室254内に供給され、このガス導入室254から隔壁252の上部に形成された切り欠き部271を介してガス活性化室253にガスが通流するように構成されている。
【0081】
ガス活性化室253内には、2本の誘電体からなる例えばセラミックス製のシース管272、272が当該ガス活性化室253の基端側から先端側へ向けて隔壁252に沿って伸び出しており、これらのシース管272、272の管内には、棒状の電極273、273が貫挿されている。これらの電極273、273の基端側はインジェクター本体251の外部に引き出され、真空容器1の外部にて整合器274を介して高周波電源275と接続されている。インジェクター本体251の底面には、当該電極273、273の間の領域であるプラズマ発生部290にてプラズマ化して活性化されたプラズマを下方側に吐出するためのガス吐出孔291がインジェクター本体251の長さ方向に配列されている。このインジェクター本体251は、その先端側を回転テーブル2の中心部へ向けて伸び出した状態となるように配設されている。図22中262〜264はバルブ、265〜267流量調整部、268〜270は夫々プラズマ発生用のガス例えば酸素(O2)ガス、アルゴン(Ar)ガス及び窒素(N2)ガスが貯留されたガス源である。
【0082】
この実施の形態の作用について以下に説明する。この実施の形態においても、同様に回転テーブル2上にウェハWを5枚載置して、この回転テーブル2を回転させて、各ガスノズル31、32、200、41、42からBTBASガス、O3ガス、エタノールガス及び窒素ガスをウェハWに向けて夫々供給すると共に、既述のようにパージガスを中心部領域Cや回転テーブル2の下方の領域に供給する。そして、ヒータユニット7に既述のように通電し、プラズマインジェクター250に対してプラズマ発生用のガス例えばArガスを供給すると共に、高周波電源275からプラズマ発生部290(電極273、273)に例えば13.56MHz、例えば10W〜200Wの範囲の例えば100Wの高周波電力を供給する。
【0083】
真空容器1内は真空雰囲気となっているので、ガス活性化室253の上方部へ流入したプラズマ発生用のガスは上記の高周波電力によりプラズマ化(活性化)された状態となってガス吐出孔291を介してウェハWに向けて供給される。
このプラズマが第2の処理領域92を通過して既述のシリコン酸化膜242が成膜されたウェハWに到達すると、当該シリコン酸化膜242内に残っていた炭素成分や水分が気化して排出されたり、あるいはシリコンと酸素との間の結合が強められたりすることになる。こうして1回の成膜処理が終了するまで、回転テーブル2が回転する度にプラズマの供給が行われる。その後、このウェハWは真空容器1から取り出されてその向きが変更された後、熱処理装置102において既述のように熱処理が行われる。
このようにプラズマインジェクター250を設けることにより、既述の第1の実施の形態よりも更に不純物が少なく、また結合強度の強いシリコン酸化膜242を成膜することができる。
【0084】
この例においては、上記のようにプラズマ発生用のガスとしてArガスを用いたが、このガスに代えて、あるいはこのガスと共にO2ガスやN2ガスを用いても良い。このArガスを用いた場合には、膜中のSi−O結合を作り、SiOH結合をなくすという効果が得られて、またO2ガスを用いた場合には、未反応部分の酸化を促進し、膜中のC(炭素)成分を減少させ、電気特性を改善するという効果が得られる。
また、このプラズマインジェクター250を、既述の第2の実施の形態や第3の実施の形態の成膜装置101に適用しても良い。
【0085】
[第5の実施の形態]
上記の各例においては、熱処理装置102として1枚ずつ熱処理を行う装置を用いたが、複数枚例えば5枚のウェハWに対して同時に加熱処理を行っても良い。具体的には、この実施の形態における基板処理装置は、図25に示すように、熱処理装置109を備えており、この熱処理装置109は既述の真空搬送室103に気密に接続されている。この熱処理装置109は、既述の成膜装置101とほぼ同じ構成であり、例えば各ノズル31、32、200に代えて、不活性ガス例えばN2ガスを供給するノズルが設けられていると共に、ヒータユニット7は既述の熱処理装置102における加熱手段113と同様の加熱温度に回転テーブル2上のウェハWを加熱できるように構成されている。
【0086】
そして、この実施の形態における基板処理装置において成膜処理を行う場合には、成膜装置101において成膜処理を行ったウェハWを真空搬送室103に取り出して自転させた後、このウェハWを熱処理装置109の回転テーブル2上に載置する。次いで、成膜装置101内のウェハWを順番に取り出して自転させると共に、熱処理装置109内の回転テーブル2を間欠的に回転させて各ウェハWを当該回転テーブル2上に載置する。続いて、この熱処理装置109において回転テーブル2を回転させながら真空容器1内に不活性ガスを供給すると共に所定の真空度に調整して、ウェハWを既述の加熱温度に加熱する。この熱処理により、各ウェハWに対して同時に既述のシリコン酸化膜242の緻密化が行われることになる。その後、各ウェハWを順番に取り出して成膜装置101に戻して、続く成膜処理などの各ステップが行われる。この実施の形態では、上記の各実施の形態の効果が得られ、また各ウェハWに対する熱処理を1度に行っていることからスループットを向上させることができる。
【0087】
このような基板処理装置において、真空搬送室103に既述の熱処理装置102を気密に接続し、この熱処理装置102においても熱処理処理を行うようにしても良い。また、この実施の形態における成膜装置101としては、既述の各実施の形態における装置のいずれを適用しても良い。
上記の各例では、ウェハWを自転させる工程を成膜処理と熱処理との間で行うようにしたが、熱処理の後で行うようにしても良く、つまり先の成膜処理とその後に行われる成膜処理との間においてウェハWの向きを変更すれば良い。
【0088】
また、上記の自転機構132としては、熱処理装置102(109)内に設けても良い。その場合においても、例えば真空搬送アーム104が自転機構132の上方位置に移動して、同様にウェハWの自転が行われる。更に、熱処理装置102における昇降装置121に、昇降ピン119を昇降させる機構に加えて当該昇降ピン119を鉛直軸回りに回転させる機構を付け加えて、この熱処理装置102内において熱処理の前後あるいは熱処理を行いながらウェハWを自転させても良い。また、このような自転機構132を大気搬送室107に設けて、この大気搬送室107においてウェハWを自転させても良い。
【0089】
更に、ウェハWを自転させるにあたって、真空搬送室103内に自転機構132を設けたが、真空搬送アーム104にこの自転機構132を組み合わせて設けても良い。このような真空搬送アーム104としては、具体的には図26に示すように、支持板141上に形成されたレール142に沿って進退するスライドアームとしても良い。そして、既述の自転機構132は、各々の搬送アーム104、104に設けられると共に、各支持板141内に埋設されて、搬送アーム104が後退した時にこの搬送アーム104上に保持されたウェハWに対して昇降自在及び鉛直軸回りに回転自在に構成される。この搬送アーム104においても、上記の例と同様にウェハWの自転が行われて同様の効果が得られる。また、既述の大気搬送アーム106に代えてこの真空搬送アーム104を既述の大気搬送室107に設けて、この大気搬送室107においてウェハWを自転させても良い。更に、ウェハWを自転させる機構としては、上記の各例ではウェハWを裏面側から突き上げて回転させる機構としたが、例えばウェハWを上方側から直径方向を把持して(クランプして)持ち上げて回転させる機構であっても良い。
【0090】
本発明で適用される処理ガス(第1の反応ガス)としては、上述の例の他に、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2 [ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを挙げることができる。
【0091】
[好ましい例]
また、前記分離領域Dの天井面44において、前記分離ガスノズル41、42に対して回転テーブル2の回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましい。その理由は回転テーブル2の回転によって上流側から分離領域Dに向かうガスの流れが外縁に寄るほど速いためである。この観点からすれば、上述のように凸状部4を扇型に構成することは得策である。
そして、前記分離ガスノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面44は、図27(a)、(b)に前記分離ガスノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウェハWを被処理基板とする場合、ウェハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。凸状部4の両側から当該凸状部4の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離hも小さくする必要がある。更に第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離hをある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。このような観点から考察すると、ウェハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面44と回転テーブル2との距離hをかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウェハWと天井面44との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部4の上流側から当該凸状部4の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。即ち、前記幅寸法LがウェハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。
【0092】
また本発明では分離ガス供給手段における回転方向両側に低い天井面44が位置することが好ましいが、分離ガスノズル41、42の両側に凸状部4を設けずに、分離ガスノズル41、42から下方に向けてN2ガスを吹き出してエアカーテンを形成し、このエアカーテンにより処理領域91、92を分離するようにしても良い。
成膜装置101においてウェハWを加熱するための加熱手段としては抵抗発熱体を用いたヒータに限られずランプ加熱装置であってもよく、回転テーブル2の下方側に設ける代わりに回転テーブル2の上方側に設けてもよいし、上下両方に設けてもよい。また、上記の反応ガスによる反応が低温例えば常温において起こる場合には、このような加熱手段を設けなくとも良い。
【0093】
ここで処理領域91、92及び分離領域の各レイアウトについて上記の実施の形態以外の他の例を挙げておく。分離領域Dは、扇型の凸状部4を周方向に2つに分割し、その間に分離ガスノズル41(42)を設ける構成であってもよいことを既に述べたが、図28は、既述の第1の実施の形態の成膜装置を例に挙げてこのような構成の一例を示す平面図である。この場合、扇型の凸状部4と分離ガスノズル41(42)との距離や扇型の凸状部4の大きさなどは、分離ガスの吐出流量や反応ガスの吐出流量などを考慮して分離領域Dが有効な分離作用が発揮できるように設定される。
上述の実施の形態では、前記第1の処理領域91、補助領域90及び第2の処理領域92は、その天井面が前記分離領域Dの天井面よりも高い領域に相当するものであったが、本発明は、第1の処理領域91、補助領域90及び第2の処理領域92の少なくとも1つは、分離領域Dと同様に反応ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブル2に対向して設けられ、当該回転テーブル2との間にガスの侵入を阻止するための空間を形成するようにかつ前記分離領域Dの前記回転方向両側の天井面(第2の天井面45)よりも低い天井面例えば分離領域Dにおける第1の天井面44と同じ高さの天井面を備えている構成としてもよい。
【0094】
また、反応ガスノズル31(32、200)の両側にも低い天井面を設けて、分離ガスノズル41(42)及び反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部4を設ける構成としても良い。
また、各ノズル31、32、200、41、42(310)の取り付け位置を変更しても良く、各々の反応ガスが混じり合わないように排気されながら、ウェハWの表面にBTBASが吸着し、その後エタノールガスにより中間生成物が生成し、続いてO3ガスにより中間生成物が酸化されるサイクルまたはこの中間生成物を介さずにシリコン酸化膜242が形成されるサイクルが多数回繰り返されるように構成しても良い。
【0095】
[他の例]
また、上記の各実施の形態の成膜装置としては、ガス供給系(ノズル31、32、200、280、41、42)に対して回転テーブル2を鉛直軸回りに回転させる構成としたが、ガス供給系が回転テーブル2に対して鉛直軸回りに回転する構成としても良い。このような具体的な装置構成について、既述の第3の実施の形態(ノズル200、280等が設けられていない)の成膜装置101に適用した例を図29〜図32を参照して説明する。尚、既述の成膜装置101と同じ部位については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0096】
真空容器1内には、既述の回転テーブル2に代えて、テーブルであるサセプタ300が配置されている。このサセプタ300の底面中央には、回転軸22の上端側が接続されており、ウェハWの搬入出を行うときにはサセプタ300を回転できるように構成されている。このサセプタ300上には、既述の凹部24が周方向に亘って複数箇所例えば5箇所に形成されている。
【0097】
図29〜図31に示すように、既述のノズル31、32、41、42は、サセプタ300の中央部の直上に設けられた扁平な円盤状のコア部301に取り付けられており、基端部が当該コア部301の側壁を貫通している。コア部301は後述するように例えば鉛直軸回りに反時計方向に回転するように構成されており、当該コア部301を回転させることによって各ガス供給ノズル31、32、41、42をサセプタ300の上方位置において回転させることができるようになっている。尚、図30は、真空容器1(天板11及び容器本体12)並びに天板11の上面に固定された後述のスリーブ304を取り去った状態を示している。
【0098】
既述の凸状部4は、上記のコア部301の側壁部に固定されており、各ガス供給ノズル31、32、41、42と共にサセプタ300上を回転できるように構成されている。コア部301の側壁部には、図30、図31に示すように、各反応ガス供給ノズル31、32の回転方向上流側であって、当該上流側に設けられている凸状部4とコア部301との接合部の手前の位置に、2つの排気口61、62が設けられている。これら排気口61、62は各々後述の排気管302に接続されていて、反応ガス及び分離ガスを各処理領域91、92から排気する役割を果たす。排気口61、62は、既述の例と同様に、分離領域Dの前記回転方向両側に設けられ、各反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)の排気を専用に行うようにしている。
【0099】
図29に示すように、コア部301の上面中央部には円筒状の回転筒303の下端部が接続されており、真空容器1の天板11上に固定されたスリーブ304内にて当該回転筒303を回転させることにより、真空容器1内でコア部301と共にノズル31、32、41、42及び凸状部4を回転させる構成となっている。コア部301内は下面側が開放された空間となっていて、コア部301の側壁を貫通した反応ガス供給ノズル31、32、分離ガス供給ノズル41、42は、当該空間において各々BTBASガスを供給する第1の反応ガス供給管305、O3ガスを供給する第2の反応ガス供給管306、分離ガスであるN2ガスを供給する分離ガス供給管307、308と接続されている(便宜上、図29には、分離ガス供給管307、308のみを図示してある)。
【0100】
各供給管305〜308は、コア部301の回転中心近傍、詳細には後述の排気管302の周囲にてL字に屈曲されて上方に向けて伸び、コア部301の天井面を貫通して、垂直上方へ向けて円筒状の回転筒303内を延伸されている。
図29、図30、図31に示すように、回転筒303は外径の異なる2つの円筒を上下2段に積み重ねた外観形状に構成されており、外径の大きな上段側の円筒の底面をスリーブ304の上端面にて係止させることにより、当該回転筒303を上面側から見て周方向に回転可能な状態でスリーブ304内に挿入する一方、回転筒303の下端側は天板11を貫通してコア部301の上面と接続されている。
【0101】
天板11の上方位置における回転筒303の外周面側には、当該外周面の周方向の全面に亘って形成された環状流路であるガス拡散路が上下方向に間隔をおいて配置されている。本例においては上段位置に分離ガス(N2ガス)を拡散させるための分離ガス拡散路309が配置され、中段位置にBTBASガスを拡散させるための第1の反応ガス拡散路310、下段位置にO3ガスを拡散させるための第2の反応ガス拡散路311が配置されている。図中、312は回転筒303の蓋部であり、313は当該蓋部312と回転筒303とを密着させるOリングである。
【0102】
各ガス拡散路309〜311には、回転筒303の全周に亘り、当該回転筒303の外面へ向けて開口するスリット320、321、322が設けられており、夫々のガス拡散路309〜311には、これらのスリット320、321、322を介して各種のガスが供給されるようになっている。一方、回転筒303を覆うスリーブ304には、各スリット320、321、322に対応する高さ位置に、ガス供給口であるガス供給ポート323、324、325が設けられており、不図示のガス供給源よりこれらのガス供給ポート323、324、325へと供給されたガスは、当該各ポート323、324、325に向けて開口するスリット320、321、322を介して各ガス拡散路309、310、311内に供給されることとなる。
【0103】
ここでスリーブ304内に挿入された回転筒303の外径は、当該回転筒303が回転可能な範囲で、可能な限りスリーブ304の内径と近い大きさに形成されており、前記各ポート323、324、325の開口部以外の領域においては、各スリット320、321、322はスリーブ304の内周面によって塞がれた状態となっている。この結果、各ガス拡散路309、310、311に導入されたガスは、当該ガス拡散路309、310、311内のみを拡散して、例えば他のガス拡散路309、310、311や真空容器1内、成膜装置の外部などに漏れ出さないようになっている。図29中、326は回転筒303とスリーブ304との隙間からのガス漏れを防止するための磁気シールであり、これら磁気シール326は各ガス拡散路309、310、311の上下にも設けられていて、各種ガスをガス拡散路309、310、311内に確実に封止する構成となっているが同図では便宜上省略してある。また、図32においても磁気シール326の記載は省略してある。
【0104】
図32に示すように、回転筒303の内周面側において、ガス拡散路309にはガス供給管307、308が接続され、各ガス拡散路310、311には既述の各ガス供給管305、306が夫々接続されている。これによりガス供給ポート323から供給された分離ガスは、ガス拡散路309内を拡散してガス供給管307、308を介してノズル41、42へと流れ、また各ガス供給ポート324、325から供給された各種反応ガスは、夫々ガス拡散路310、311内を拡散し、ガス供給管305、306を介して各ノズル31、32へと流れ、真空容器1内に供給されるようになっている。なお、図32においては図示の便宜上、後述の排気管302の記載は省略してある。
【0105】
ここで図32に示すように、分離ガス拡散路309にはさらにパージガス供給管330が接続されており、当該パージガス供給管330は回転筒303内を下方側に延伸されて図31に示すようにコア部301内の空間に開口しており、当該空間内にN2ガスを供給することができる。ここで例えば図29に示すようにコア部301は、サセプタ300の表面から例えば既述の高さhの隙間を空けて浮いた状態となるように回転筒303に支持されており、サセプタ300に対してコア部301が固定されていないことにより自由に回転させることができる。しかしながらこのようにサセプタ300とコア部301との間に隙間が開いていると、例えば既述の処理領域91、92の一方からコア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むおそれがある。
【0106】
そこでコア部301の内側を空洞とし、当該空洞の下面側をサセプタ300に向けて開放すると共に、当該空洞内にパージガス供給管330からパージガス(N2ガス)を供給して、前記隙間を介して各処理領域91、92へ向けてパージガスを吹き出させることにより、前述の反応ガスの回り込みを防止することができる。即ち、この成膜装置は、処理領域91、92の雰囲気を分離するためにサセプタ300の中心部と真空容器1とにより区画され、当該サセプタ300の表面にパージガスを吐出する吐出口がコア部301の回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。この場合にパージガスは、コア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことを防止するための分離ガスの役割を果たしている。なおここでいう吐出口はコア部301の側壁とサセプタ300との間の隙間に相当する。
【0107】
図29に示すように、回転筒303の上段側の外径の大きな円筒部の側周面には、駆動ベルト335が巻き掛けられており、この駆動ベルト335は、真空容器1の上方に配置された回転機構である駆動部336により、この駆動ベルト335を介して当該駆動部336の駆動力をコア部301に伝達し、これによりスリーブ304内の回転筒303を回転させることができる。尚、図29中337は、真空容器1の上方位置において駆動部336を保持するための保持部である。
【0108】
回転筒303内には、その回転中心に沿って排気管302が配設されている。排気管302の下端部は、コア部301の上面を貫通してコア部301内の空間に伸びだしていて、その下端面は封止されている。一方、当該コア部301内に伸びだした排気管302の側周面には、例えば図31に示すように、各排気口61、62と接続された排気引込管341、342が設けられていて、パージガスで満たされたコア部301内の雰囲気とは隔離して各処理領域91、92からの排ガスを排気管302内へと引き込むことができるようになっている。なお、既述のように図32においては排気管302の記載は省略してあるが、当該図32に記載された各ガス供給管305、306、307、308並びにパージガス供給管330は、この排気管302の周囲に配置されている。
【0109】
図29に示すように排気管302の上端部は回転筒303の蓋部312を貫通し、真空排気手段である例えば真空ポンプ343に接続されている。なお図29中、344は下流側の配管に対して排気管302を回転可能に接続するロータリージョイントである。
【0110】
この装置を用いた成膜処理の流れについて、既述の実施の形態の作用と異なる点について、以下に簡単に説明する。先ず、真空容器1内にウェハWを搬入する時には、サセプタ300を間欠的に回転させて、搬送アーム10と昇降ピン16との協働作業により5つの凹部24にウェハWを各々載置する。
【0111】
そして、ウェハWを成膜装置101において加熱する時には、回転筒303を反時計回りに回転させる。すると、図32に示すように回転筒303に設けられた各ガス拡散路309〜312は回転筒303の回転に伴って回転するが、これらのガス拡散路309〜311に設けられたスリット320〜322の一部が各々対応するガス供給ポート323〜325の開口部へ向けて常時開口していることにより、ガス拡散路309〜312には各種のガスが連続的に供給される。
【0112】
ガス拡散路309〜312に供給された各種のガスは、各々のガス拡散路309〜312に接続されたガス供給管305〜308を介して反応ガス供給ノズル31、32、分離ガス供給ノズル41、42より各処理領域91、92、分離領域Dへと供給される。これらのガス供給管305〜308は回転筒303に固定され、また、反応ガス供給ノズル31、32及び分離ガス供給ノズル41、42についてはコア部301を介して回転筒303に固定されていることから、回転筒303の回転に伴ってこれらのガス供給管305〜308及び各ガス供給ノズル31、32、41、42も回転しながら各種のガスを真空容器1内に供給している。
【0113】
このとき、回転筒303と一体となって回転しているパージガス供給管330からも分離ガスであるN2ガスを供給し、これにより中心部領域Cから即ちコア部301の側壁部とサセプタ300の中心部との間からサセプタ300の表面に沿ってN2ガスが吐出する。またこの例では反応ガス供給ノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿ったコア部301の側壁部に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなっている。そのため、BTBASガスとO3ガスとは、既述の成膜装置と同様に互いに混じり合うことなしに独立して排気されていくことになる。
【0114】
従って、サセプタ300上で停止している各々のウェハWから見ると、各処理領域91、92が分離領域Dを介して順番に通過することになり、既述のように成膜処理が行われる。そして、所定の膜厚のシリコン酸化膜242が成膜されると、所定のタイミングで既述の例と同様に、ウェハWが真空容器1から取り出されて自転することになる。
【0115】
この実施の形態においても、同様に面内において均一性の高い成膜処理が行われて、同様の効果が得られる。また、このような成膜装置101においても、補助ノズル200や第3の反応ガスノズル280を設けても良く、その場合にはこれらのノズル200、280には、この実施の形態における各ガスノズル31、32、41、42と同様に回転筒303内に収納されたガス供給管が接続され、スリーブ304に形成されたスリットを介して各ガスが供給されることになる。更に、この成膜装置101に既述のプラズマインジェクター250を設けても良い。
【実施例】
【0116】
次に、上記の成膜方法を実施した場合に面内の均一性がどの程度改善されるか評価するために行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、以下の条件において行った。
【0117】
(シミュレーション条件)
回転テーブル2の回転数:120rpm、240rpm
目標膜厚T:約155nm
ウェハの自転回数:なし(比較対象)、1回(自転角度:180°)、8回(自転角度:45°)、4回(自転角度:90°)
尚、ウェハWを自転させる場合には、夫々の条件において同じ角度ずつ自転させることとした。また、膜厚の測定(計算)は各々のウェハWにおいて周方向に49点ずつ行った。また、ウェハWの自転回数が8回及び4回のシミュレーションについては、ウェハWの半径方向において夫々8箇所ずつ及び4箇所ずつ膜厚を測定し、その平均値を用いた。
【0118】
(結果)
その結果、図33に示すように、ウェハWを1回自転させただけでも面内均一性が改善し、更に自転回数を増やす程均一性が向上していくことが分かった。そして、ウェハWを8回自転させると、回転テーブル2の回転数が240rpmの条件では均一性が1%以下に大きく改善されることが分かった。
【符号の説明】
【0119】
1 真空容器
2 回転テーブル
D 分離領域
W ウェハ
31 第1のガスノズル
32 第2のガスノズル
41、42 分離ガスノズル
90 補助領域
91 第1の処理領域
92 第2の処理領域
101 成膜装置
102 熱処理装置
103 真空搬送室
104 真空搬送アーム
113 加熱手段
200 補助ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内において、互いに反応する複数の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置、基板処理方法及びこの基板処理方法が記憶された記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)に対して真空雰囲気下で少なくとも2種類の反応ガスを順番に供給することにより薄膜を形成する手法が知られている。具体的には、この手法は例えばウェハの表面に第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、ウェハ表面での両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを複数回例えば数百回行うことによって、これらの層を積層してウェハ上へ薄膜を成膜するプロセスである。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などと呼ばれており、従来から用いられているCVD(Chemical Vapor Deposition)法と比較してサイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールできると共に、膜質の面内均一性も良好であり、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法である。
【0003】
この成膜方法を実施するにあたっては、例えば特許文献1〜8に記載の装置が知られている。これらの装置について概略的に説明すると、この装置の真空容器内には、複数枚のウェハを周方向(回転方向)に並べて載置するための載置台と、この載置台に対向するように真空容器の上部に設けられ、処理ガス(反応ガス)をウェハに供給する複数のガス供給部と、が設けられている。
そして、ウェハを載置台に載置して真空容器内を所定の処理圧力となるように減圧し、ウェハを加熱すると共に載置台と上記のガス供給部とを鉛直軸回りに相対的に回転させる。また、複数のガス供給部からウェハの表面に例えば夫々既述の第1の反応ガス及び第2の反応ガスを供給すると共に、反応ガスを供給するガス供給部同士の間に物理的な隔壁を設けたり、あるいは不活性ガスをエアカーテンとして吹き出したりすることによって、真空容器内において第1の反応ガスにより形成される処理領域と第2の反応ガスにより形成される処理領域とを区画する。
【0004】
このように、共通の真空容器内に複数種類の反応ガスを同時に供給しているが、これらの反応ガスがウェハ上において混合しないように夫々の処理領域を区画しているので、載置台上のウェハから見ると、例えば第1の反応ガス及び第2の反応ガスが上記の隔壁やエアカーテンを介して順番に供給されることになる。そのため、例えば真空容器内に供給する反応ガスの種類を切り替える度に真空容器内の雰囲気を置換する必要がないので、またウェハに供給する反応ガスを高速で切り替えることができるので、上記の手法による成膜処理を速やかに行うことができる。
【0005】
ところで、上述の成膜装置は、テーブル及びガス供給部が相対的に回転することにより形成されるガス流と、ガス供給部及び排気口の位置関係で決まるガス流と、が組み合わされてウェハ表面上にガスが流れ、しかもテーブルの径方向の位置により前記相対的回転における周速度が変わってくることなどから、ウェハの面内におけるガス流れは、通常の枚葉式の真空処理装置に比べて均一性が低い。このため、本来面内均一性の高い成膜処理を行うことのできるALD法でありながら、上述の成膜装置は、その利点を十分に発揮できないおそれがある。
【0006】
更にまた、半導体デバイスのパターンの微細化に伴い、パターンである凹部の埋め込みに対して良好な特性が要求されている。このため凹部のアスペクト比が高い場合などに対しては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により薄膜を形成して埋め込んだ後、内部に形成された空洞を塞ぐために例えばアニール処理により薄膜を流動させる手法が知られている。しかしながらこの手法は成膜を行って凹部を埋め込んだ後にアニール処理を行っていることから、凹部内に形成された空洞を塞ぐためには、高い加熱温度と長い処理時間が必要になる。このためスループットの低下の一因となり、また既に形成されているデバイス構造に対して大きな熱履歴を与える懸念もある。
【0007】
上述のALD法は埋め込み特性は非常に優れているが、膜が緻密であるため、アニールしたときに流動性が得られない。そしてALD法は凹部が高いアスペクト比であったり逆テーパ形状である場合には、埋め込み部分において空洞が生じることがあるが、この場合にはアニールによる流動化が困難であり、結果として埋め込みが良好に行われないおそれがある。また、このようなALD法において、例えば薄膜中に含まれる有機物などの不純物を効率的に低減させる技術も必要である。
【0008】
特許文献9には、ウェハの表面にソース領域やドレイン領域を形成するために、ディスク上に複数枚のウェハを周方向に配置して、このディスクを支持する回転アームを軸回りに回転させると共に、このディスク上のウェハにイオンビームを注入する技術が記載されている。そして、イオンビームの全注入量の1/4を注入してウェハを90度周方向に回転(自転)させ、次いで再び1/4を注入して更にウェハを90度回転させ、こうしてウェハを1周させる間に全注入量を注入することにより、ディスクの往復直線運動に対して様々な方向を向いているトランジスタに対して均一にイオンを注入している。しかし、ALDを行う装置における上述の課題及び解決手段については何ら示唆されていない。
特許文献10には、ALD法によりSiO2絶縁膜を成膜するにあたり、Si原料ガスを供給した後、オゾンガスを供給し、次いで水蒸気を供給する技術が記載されているが、このような課題については何ら検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公報6,634,314号
【特許文献2】特開2001−254181号公報:図1及び図2
【特許文献3】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献4】特開平4−287912号公報
【特許文献5】米国特許公報7,153,542号:図8(a)、(b)
【特許文献6】特開2007−247066号公報:段落0023〜0025、0058、図12及び図18
【特許文献7】米国特許公開公報2007−218701号
【特許文献8】米国特許公開公報2007−218702号
【特許文献9】特開平5−152238:段落0016〜0019、図3、図4
【特許文献10】特開2006−269621:段落0018、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情に基づいて行われたものであり、その目的は、テーブル上の基板をガス供給部に対して相対的に公転させて、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給して成膜処理を行うにあたり、面内均一性が高くかつ良好な膜質(凹部への良好な埋め込み特性や不純物の少ない膜)を得ることができる基板処理装置、基板処理方法及びこの基板処理方法が記憶された記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基板処理装置は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置において、
基板に対して成膜処理を行う成膜装置と、
この成膜装置に気密に接続された真空搬送室と、
この真空搬送室内に設けられ、前記成膜装置とこの真空搬送室との間において基板を搬送する搬送手段と、
前記真空搬送室に気密に接続され、その内部に基板載置台が設けられた処理容器と、この処理容器内に設けられ、前記基板載置台上の基板に対して熱処理を行うための手段と、を有する熱処理装置と、
前記真空搬送室内または前記熱処理装置内に設けられ、前記搬送手段上に載置された基板を鉛直軸回りに自転させるための自転機構と、
基板に対して薄膜形成処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備え、
前記成膜装置は、
前記真空容器内に設けられたテーブルと、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ当該テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、基板の表面に複数の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
これら複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスを供給するための分離領域と、
前記反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させる回転機構と、
前記回転機構の回転により前記複数の処理領域及び前記分離領域を基板が順番に位置するように、当該回転機構の回転方向に沿うように前記テーブルに形成された基板載置領域と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備え、
前記制御部は、薄膜形成処理の途中で前記回転機構による相対的回転を止め、前記真空容器から前記搬送手段により基板を取り出して、前記自転機構により基板の向きを変えるように制御信号を出力することを特徴とする。
【0012】
上記の基板処理装置の具体的な態様としては、以下のように構成しても良い。
前記テーブルの回転により前記複数の処理領域及び分離領域を基板が順番に通過するように構成され、
前記複数の反応ガス供給手段は、前記基板に第1の反応ガスを供給してこの第1の反応ガスを吸着させる第1の反応ガス供給手段と、基板上に吸着した前記第1の反応ガスと反応して流動性を持つ中間生成物を生成する補助ガスを前記基板に供給する補助ガス供給手段と、この中間生成物と反応して反応生成物を生成する第2の反応ガスを基板に供給する第2の反応ガス供給手段と、により構成され、
前記第1の反応ガス供給手段、前記補助ガス供給手段及び前記第2の反応ガス供給手段は、前記成膜装置と前記真空搬送室との間に基板を受け渡すために形成された搬送口から見て前記テーブルの回転方向下流側にこの順番で設けられ、
前記熱処理装置は、前記基板に対して熱処理を行うことにより前記反応生成物を緻密化するように構成されている態様。
【0013】
前記テーブルの回転方向における前記第2の反応ガス供給手段と前記搬送口との間には、テーブル上の基板に対してプラズマを供給するためのプラズマ供給手段が設けられている態様。
前記第1の反応ガス供給手段と前記搬送口との間には、前記反応生成物内にホウ素及びリンの少なくとも一方を混入させるために、前記テーブル上の基板に対向するように、前記基板の表面に第3の反応ガスを供給して当該基板の表面に第3の反応ガスを吸着させるための第3の反応ガス供給手段が設けられていることを特徴とする態様。
【0014】
前記分離領域は、前記分離ガス供給手段における前記回転機構の回転方向両側に位置し、当該分離領域から処理領域側に分離ガスが流れるための狭隘な空間を前記テーブルとの間に形成するための天井面を備えている態様。
前記複数の処理領域の雰囲気を分離するために前記真空容器内の中心部に位置し、前記テーブルの基板載置面側に分離ガスを吐出する吐出孔が形成された中心部領域を備え、
前記反応ガスは、前記分離領域の両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域から吐出する分離ガスと共に前記真空排気手段により排気される態様。
【0015】
本発明の基板処理方法は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理方法において、
成膜装置の真空容器内に設けられたテーブル上の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ前記テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた複数の反応ガス供給手段から、前記テーブル上の基板の載置領域側の面に夫々反応ガスを供給する工程と、
前記複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離領域への前記反応ガスの侵入を阻止する工程と、
次いで、前記反応ガス供給手段及び前記分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を回転機構により鉛直軸回りに相対的に回転させて、前記複数の処理領域及び前記分離領域に基板を順番に位置させて反応生成物の層を積層して薄膜を成膜する工程と、
前記薄膜を成膜する工程の途中で、前記回転機構による相対的回転を止め、前記成膜装置に気密に接続された真空搬送室から、この真空搬送室内に設けられた搬送手段により成膜装置から前記基板を取り出して、この真空搬送室内またはこの真空搬送室に気密に接続された熱処理装置内に設けられた自転機構により前記基板を鉛直軸回りに自転させてその向きを変更する工程と、
前記基板の向きを変更するために前記成膜装置から取り出した基板を、前記熱処理装置内に搬入し、この基板に対して熱処理を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
前記薄膜を成膜する工程は、
前記テーブルを回転させる工程と、
前記成膜装置と前記真空搬送室との間に基板を受け渡すために形成された搬送口から見て、前記テーブルの回転方向下流側に設けられた第1の反応ガス供給手段から、前記基板の表面に第1の反応ガスを供給して、この第1の反応ガスを基板の表面に吸着させる工程と、
次いで、前記テーブルの回転方向において前記第1の反応ガス供給手段と前記搬送口との間に設けられた補助ガス供給手段からこの基板上に補助ガスを供給して、前記基板の表面に吸着した前記第1の反応ガスとこの補助ガスとを反応させて流動性を持つ中間生成物を生成する工程と、
続いて、前記テーブルの回転方向において前記補助ガス供給手段と前記搬送口との間に設けられた第2の反応ガス供給手段からこの基板上に第2の反応ガスを供給して、前記基板の表面の中間生成物と第2の反応ガスとを反応させて反応生成物を生成する工程と、を含み、
前記基板に対して熱処理を行う工程は、前記基板に対して熱処理を行うことにより、前記反応生成物を緻密化する工程であっても良い。
【0017】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、上記の基板処理方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給するサイクルにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成するために、夫々複数の反応ガスが供給される複数の処理領域と、これらの処理領域の間において分離ガスが供給される分離領域と、を基板が順番に位置するようにガス供給部とテーブルとを鉛直軸回りに相対的に回転させて、ガス供給部に対してテーブル上の基板を相対的に公転させる成膜装置を備えた基板処理装置において、成膜装置内において基板に対してプロセスを行っている途中で、この成膜装置に気密に接続された真空搬送室に基板を取り出して鉛直軸回りに自転させてその向きを変更すると共に、この基板に対して熱処理を行っている。そのため、成膜装置内における基板の面内におけるガスの流れの不均一さが緩和され、その結果面内に亘って膜や膜質の均一性が高い成膜処理が行われるように基板処理を行うことができるし、またプロセスの途中でシラノール化処理や熱処理を行っていることから、例えば凹部への埋め込み特性や薄膜の不純物の濃度が低い良好な膜質の薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理装置の一例を示す平面図である。
【図2】上記の基板処理装置を一部拡大して示す斜視図である。
【図3】上記の基板処理装置に接続される熱処理装置の一例を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
【図5】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図6】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図7】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図8】上記の成膜装置の横断面の拡大図である。
【図9】上記の成膜装置を拡大して示す斜視図である。
【図10】上記の成膜装置の横断面の拡大図である。
【図11】上記の成膜装置の一部を示す斜視図である。
【図12】上記の成膜装置におけるパージガスの流れを示す模式図である。
【図13】上記の基板処理装置において成膜処理が行われる基板の表面構造の一例を示す模式図である。
【図14】上記の基板処理装置において行われる成膜処理の流れを示すフロー図である。
【図15】上記の成膜装置において基板に対して成膜処理が行われていく様子を示す模式図である。
【図16】上記の成膜装置におけるガスの流れを示す模式図である。
【図17】上記の基板処理装置において基板を自転させるときの様子を示す模式図である。
【図18】上記の基板処理装置において基板に対して成膜処理が行われて行くときの基板の向きと成膜量とを模式的に示す模式図である。
【図19】上記の基板処理装置において成膜処理が行われた基板を模式的に示す模式図である。
【図20】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図21】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図22】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図23】上記の他の例におけるプラズマインジェクターの一例を示す斜視図である。
【図24】上記のプラズマインジェクターを示す縦断面図である。
【図25】上記の基板処理装置の他の例を示す平面図である。
【図26】上記の基板処理装置の他の例における基板を自転させる機構の一例を示す模式図である。
【図27】上記の成膜装置の好ましい例を示す概略図である。
【図28】上記の成膜装置の他の例を示す平面図である。
【図29】上記の成膜装置の他の例を示す縦断面図である。
【図30】上記の他の例における成膜装置を示す斜視図である。
【図31】上記の他の例における成膜装置を示す平面図である。
【図32】上記の他の例における成膜装置を示す斜視図図である。
【図33】本発明の実施例において得られたシミュレーション結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態である基板処理装置について、図1を参照して説明する。この基板処理装置は、基板例えば半導体ウェハ(以下単に「ウェハ」という)Wに対してシリコン酸化膜からなる薄膜の成膜処理を行うための成膜装置101と、ウェハWに対してアニール処理(熱処理)を行うための熱処理装置102と、これらの成膜装置101と熱処理装置102との間に気密に接続された真空搬送室103と、を備えている。成膜装置101と熱処理装置102との間の壁面には、後述するように、ウェハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されている。この真空搬送室103内は、例えばバタフライバルブからなる圧力調整部が介設された排気路を介して、真空ポンプ(いずれも図示せず)により所定の真空度に維持されるように構成されている。
【0021】
この真空搬送室103内には、ウェハWの受け渡しを行うための搬送手段である2基の真空搬送アーム104が設けられており、これらの真空搬送アーム104、104は、各々鉛直軸回りに回転自在に構成されると共に、ウェハWを水平に保持して成膜装置101、熱処理装置102及び後述のロードロック室105に対して進退自在に構成されている。また、真空搬送室103内において、2基の真空搬送アーム104、104が各々アクセスできる位置例えば2基の真空搬送アーム104、104の中間位置における成膜装置101に近接する位置には、図2にも示すように、真空搬送アーム104上に保持されたウェハWを裏面側から突き上げて鉛直軸回りに回転させるための昇降軸130と、この昇降軸130を下側から鉛直軸回りに回転自在及び昇降自在に保持する駆動部131と、からなる自転機構132が設けられている。この自転機構132は、後述するように成膜装置101にて成膜途中のウェハWに対してその向きを変更し、成膜を続行するためのものである。尚、図1では真空搬送アーム104を簡略化して描画しており、また図2では1基の搬送アーム104のみを描画している。
【0022】
また、真空搬送室103の側壁には、大気雰囲気と真空雰囲気との間で雰囲気が切り替え可能な2つのロードロック室(予備真空室)105を介して、内部に大気搬送アーム106が配置された大気搬送室107が接続されている。この大気搬送アーム106は、鉛直軸回りに回転自在、昇降自在、進退自在及び2つのロードロック室105、105の並びに沿って水平移動自在に構成されている。この図1中108は例えば25枚のウェハWが収納されたフープと呼ばれる密閉型の搬送容器であり、ウェハWはこの搬送容器108から大気搬送アーム106により大気搬送室107へと取り出されて、ロードロック室105及び真空搬送室103を介して真空搬送アーム104により成膜装置101や熱処理装置102に搬送されることになる。尚、図1中Gはゲートバルブである。
【0023】
上記の熱処理装置102について説明すると、この熱処理装置102は、図3に示すように、処理容器111と、この処理容器111内に設けられた基板載置台112と、を備えている。この載置台112は、ウェハWを100℃〜450℃好ましくは350℃に加熱するための加熱手段113例えばヒーターが埋設された支持台114と、この支持台114上に設けられた静電チャック115と、を備えている。載置台112の内部には、ウェハWを裏面側から突き上げて昇降させるための受け渡し手段例えば3本の昇降ピン119が設けられており、この昇降ピン119には下方側から当該昇降ピン119を昇降自在に支持する昇降装置121が接続されている。この載置台112の内部には、昇降ピン119が昇降するための貫通孔120が形成されており、昇降ピン119が昇降装置121により昇降することによって、既述の真空搬送アーム104と昇降ピン119との間においてウェハWの受け渡しを行うように構成されている。この図3中128は、昇降ピン119と処理容器111の底面との間を気密に接続するベローズである。
【0024】
載置台112の周囲における床面には、排気口123が形成されており、この排気口123から伸びる排気管124には、図示しない圧力調整手段をなす例えばバタフライバルブを介して真空ポンプなどの真空排気手段125が接続されている。また、処理容器111の側壁には、この処理容器111内に不活性ガス例えばN2(窒素)ガスを供給するためのガス供給路127が接続されており、後述するように、ウェハWに対して熱処理を行うときには不活性ガスを供給できるように構成されている。尚、この図1中122は搬送口である。
【0025】
次に、上記の成膜装置101について詳述する。この成膜装置101は、図4〜図6に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は、この回転テーブル2を収納する概略カップ型の容器本体12と、この容器本体12の上面の開口部を気密に塞ぐように円板状に形成された天板11と、を備えている。この天板11は、容器本体12の上面の周縁部にリング状に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に気密に接続されており、図示しない開閉機構により昇降して開閉されるように構成されている。
【0026】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定されており、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。この回転軸22は、真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計回りに回転させる回転機構である駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0027】
回転テーブル2の表面部には、図5及び図6に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウェハ(以下「ウェハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられており、この凹部24は回転テーブル2の回転により当該回転テーブル2の回転中心を中心として鉛直軸回りに公転するように構成されている。なお図6には便宜上1個の凹部24だけにウェハWを描いてある。ここで図7は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図であり、凹部24は、図7(a)に示すようにその直径がウェハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウェハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウェハWを凹部24に落とし込むと、ウェハWの表面と回転テーブル2の表面(ウェハWが載置されない領域)とが揃うことになる。ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分で圧力変動が生じることから、ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウェハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、ウェハWの裏面を支えて当該ウェハWを昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピン16(図9参照)が貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0028】
凹部24はウェハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴なう遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位であるが、この基板載置領域(ウェハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウェハWの周縁をガイドするガイド部材をウェハWの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウェハWを吸着する場合には、その吸着によりウェハWが載置される領域が基板載置領域となる。
【0029】
図5、図6及び図8に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する上位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と、2本の分離ガスノズル41、42と、補助ノズル200と、が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいて配置されている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)に分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31、分離ガスノズル42、補助ノズル200及び第2の反応ガスノズル32がこの順番で配列されており、これらのノズル41、31、42、200、32は真空容器1の側壁において、この搬送口15に概略対向する位置から当該搬送口15の前記回転方向上流側に近接する位置まで順番に取り付けられている。これら反応ガスノズル31、32、補助ノズル200及び分離ガスノズル41、42は、例えば真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウェハWに対向して水平に伸びるようにライン状に取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート31a、32a、200a、41a、42aは当該外周壁を貫通している。
【0030】
これら反応ガスノズル31、32、補助ノズル200は、夫々第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段及び補助ガス供給手段をなし、分離ガスノズル41、42は、分離ガス供給手段をなしている。これらのノズル31、32、200、41、42は、真空容器1の側壁の複数箇所に形成された貫通孔100に取り付けられている。尚、ノズル31、32、200、41、42が取り付けられていない貫通孔100は、図示しない覆い部材により気密に密閉されている。
【0031】
反応ガスノズル31、32には、夫々図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管31b、32bにより、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガス及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスが供給されるように構成されている。補助ノズル200には、図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管200bにより、水酸基(OH基)を持つシラノール化用の補助ガス例えばアルコール(R−OH、R:アルキル基)又は純水(H2O)あるいは過酸化水素水(H2O2)この例ではエタノール(C2H5OH)ガスが供給されるように構成されている。また、分離ガスノズル41、41は、図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管により、分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)が供給されるように構成されている。
【0032】
反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔33が真下を向いてノズルの長さ方向(回転テーブル2の半径方向)に亘って例えば10mmの間隔を置いて等間隔に配列されている。また、補助ノズル200には、下方側に反応ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔201が真下を向いてノズルの長さ方向(回転テーブル2の半径方向)に亘って例えば10mmの間隔を置いて等間隔に配列されている。分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔40が真下を向いて長さ方向に例えば10mm程度の間隔を置いて等間隔に穿設されている。
【0033】
反応ガスノズル31、32のガス吐出孔33とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmであり、補助ノズル200のガス吐出孔201とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmである。また、分離ガスノズル41、42のガス吐出孔40とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは3mmである。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々BTBASガスをウェハWに吸着させるための第1の処理領域91及びO3ガスをウェハWに吸着させるための第2の処理領域92となる。また、補助ノズル200の下方領域は、エタノールガスとウェハW上に吸着したBTBASガスとを反応させて中間生成物を生成させるための補助領域90となる。
【0034】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域91と補助領域90及び第2の処理領域92とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図5〜図7に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41(42)の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転テーブル2の回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。
尚、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。
【0035】
従って分離ガスノズル41、42における前記回転方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記回転方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間に第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からエタノールガス及びO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したエタノールガス及びO3ガスとBTBASガスとが凸状部4内で交じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である補助領域90の雰囲気及び第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウェハWに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。ここで、エタノールガスとO3ガスとの間には分離領域Dが設けられていないので、これらの両ガスは後述の排気口62に至るまでに互いに混じり合うが、ウェハWに悪影響を及ぼさない。
【0036】
この例では直径300mmのウェハWを被処理基板としており、この場合凸状部4は、回転テーブル2の回転中心から140mm外周側に離れた部位(後述の突出部5との境界部位)においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウェハWの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお図7(a)に示すように、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さLでみれば、長さLは246mmである。
また図7(a)に示すように凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面までの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。そのため分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。なお分離ガスとしては、窒素(N2)ガスに限られずアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスなどを用いることができるが、このようなガスに限らず水素(H2)ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【0037】
一方天板11の下面には、回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は凸状部4における回転テーブル2の回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図5及び図6は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウェハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図4では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示しており、図10では、低い天井面44が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図5及び図10に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0038】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては図10に示すように前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図4に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部位における既述の第1の処理領域91及び第2の処理領域92に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には、図4及び図6に示すように、夫々第1の排気口61及び第2の排気口62が形成されている。第1の排気口61及び第2の排気口62は、既述の図4に示すように、バルブ65が介設された排気路63を介して真空排気手段である例えば真空ポンプ64に接続されている。
【0039】
これらの排気口61、62は、分離領域Dの分離作用が確実に働くように、平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に設けられている。詳しく言えば、回転テーブル2の回転中心から見て第1の処理領域91とこの第1の処理領域91に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第1の排気口61が形成され、回転テーブル2の回転中心から見て第2の処理領域92とこの第2の処理領域92に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第2の排気口62が形成されている。この排気口61はBTBASガスの排気を専用に行うように、また排気口62はエタノールガスとO3ガスとの排気を専用に行うようにその位置が設定されている。この例では一方の排気口61は、第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第1の反応ガスノズル31側の縁の延長線との間に設けられ、また他方の排気口62は、第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第2の反応ガスノズル32側の縁の延長線との間に設けられている。即ち、第1の排気口61は、図6中に一点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第1の処理領域91とを通る直線L1と、回転テーブル2の中心と前記第1の処理領域91の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L2との間に設けられ、第2の排気口62は、この図6に二点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第2の処理領域92とを通る直線L3と、回転テーブル2の中心と前記第2の処理領域92の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L4との間に位置している。
【0040】
尚、排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば分離ガスノズル42を含む分離領域Dと当該分離領域Dに対して前記回転方向下流側に隣接する第2の反応ガスノズル32との間に更に排気口を設置して3個としてもよいし、この場合にはノズル200、32の間の領域に排気口を設けても良い。更に、ノズル200、32の間の領域に分離領域Dを形成して、エタノールガスとO3ガスとを夫々専用に排気するようにしても良い。また、排気口の設置数は4個以上であってもよい。この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。また排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0041】
前記回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、図4及び図11に示すように加熱手段であるヒータユニット7が設けられており、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウェハWをプロセスレシピで決められた温度に加熱するように構成されている。前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域Eに至るまでの雰囲気とヒータユニット7が置かれている雰囲気とを区画するために、ヒータユニット7を全周に亘って囲むようにカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0042】
ヒータユニット7が配置されている空間よりも回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、ヒータユニット7の下方側位置にて周方向の複数部位に、ヒータユニット7の配置空間をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0043】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図12にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内からヒータユニット7の配置空間に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域Eを介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域91と第2の処理領域92との一方から回転テーブル2の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガス(エタノールガス)の回り込みが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0044】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、前記突出部5と回転テーブル2との間の狭い隙間50を介して回転テーブル2のウェハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域91と第2の処理領域92との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガスとO3ガス(エタノールガス))が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気及び補助領域90の雰囲気とを分離するために回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。
【0045】
更に真空容器1の側壁には図5、図6及び図9に示すように外部の搬送アーム10(既述の真空搬送アーム104)と回転テーブル2との間でウェハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15はゲートバルブGにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウェハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウェハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウェハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン16の昇降機構(図示せず)が設けられる。
【0046】
また、この基板処理装置は、既述の図1に示すように、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部80を備えている。この制御部80は、CPU、メモリ及び処理プログラムを備えている。このメモリには、ノズル31、32、200、41、42から供給されるBTBASガス、O3ガス、エタノールガス及びN2ガスの流量、真空容器1内の処理圧力、ヒータユニット7及び加熱手段113に供給される電力値(ウェハWの加熱温度)、更にウェハWに対して成膜する薄膜の目標の膜厚T及び後述するシリコン酸化膜の成膜処理を行う回数N、自転機構132においてウェハWを自転させる自転角度θなどの処理条件が書き込まれる領域がレシピ毎に設けられている。上記の処理プログラムは、このメモリに書き込まれたレシピを読み出し、レシピに合わせて基板処理装置の各部に制御信号を送り、後述の各ステップを進行させることでウェハWの処理を行うように命令が組み込まれている。このプログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部85から制御部80内にインストールされる。
【0047】
次に上述の第1の実施の形態の作用について、図13〜図19を参照して説明する。先ず、この基板処理装置にて薄膜を成膜するウェハWについて説明すると、このウェハWの表面には、例えば溝状の凹部230が複数本平行に形成されており、図13では凹部230の形成されたウェハWの表面部の一部を断面で示してある。この凹部230のアスペクト比は、例えば3〜50程度である。この凹部(パターン)230は、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)構造を形成するためのものであり、実際には例えば窒化シリコン化合物からなる導電膜に形成されている。また、このパターンは例えばこのウェハWの上層に積層されたマスク層を用いて例えばフォトリソグラフィ工程などにより形成されているので、この凹部230には、フォトリソグラフィ工程における処理の誤差などにより、下端側の開口寸法よりも上端側の開口寸法が広くなるテーパー部233や、下端側の開口寸法よりも上端側の開口寸法が狭くなる逆テーパー部234が形成されている場合がある。図13では、このような凹部230の形状のばらつきについては誇張して示してある。
【0048】
次に、このウェハWに対する成膜処理について、以下に説明する。この例では、ウェハWの表面に目標とする成膜量(膜厚)がTnm例えば80nmのシリコン酸化膜からなる薄膜を成膜する例について説明する。先ず、既述の図1に示す基板処理装置において、搬送容器(FOUP)108を図示しない載置台を備えた搬入搬出ポートに外部から搬送し、大気搬送室107に接続する。そして、図示しない開閉機構によりこの搬送容器108の蓋を開けると共に、大気搬送アーム106により当該搬送容器108内からウェハWを取り出す(ステップS1)。次いで、大気搬送アーム106によりロードロック室105内にウェハWを搬入して、当該ロードロック室105内の雰囲気を大気雰囲気から真空雰囲気に切り替える。続いて、ゲートバルブGを開放して真空搬送アーム104(搬送アーム10)により真空搬送室103にウェハWを取り出し、搬送口15を介して成膜装置101にウェハWを搬入して回転テーブル2の凹部24内に受け渡す(ステップS2)。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに、搬送アーム10によりウェハWを昇降ピン16の上方位置に搬入し、次いで昇降ピン16が上昇してこのウェハWを受け取ることにより行われる。
【0049】
そして、搬送アーム10を真空容器1の外部に退避させると共に、昇降ピン16を下降させて凹部24内にウェハWを収納する。このようなウェハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウェハWを載置する。続いて、回転テーブル2を所定の回転数例えば240rpmで時計回りに回転させて、バルブ65を全開にして真空容器1内を真空引きすると共に、ヒータユニット7によりウェハWを設定温度例えば350℃に加熱する。
【0050】
次いで、真空容器1内が所定の真空度となるようにバルブ65の開度を調整して、第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32から真空容器1内に例えば夫々200sccm、10000sccmでBTBASガス及びO3ガスを供給すると共に、補助ノズル200から真空容器1内にエタノールガスを所定の流量例えば100sccmで供給する。また、分離ガスノズル41、42から例えば夫々10000sccm、10000sccmで真空容器1内にN2ガスを供給すると共に、分離ガス供給管51及びパージガス供給管72からも所定の流量でN2ガスを中心部領域C及び既述の狭い空間内に供給する。
【0051】
そして、ウェハWは回転テーブル2の回転により、第1の処理領域91、補助領域90及び第2の処理領域92をこの順番で通過していく。ウェハWが第1の処理領域91を通過すると、このウェハWの表面には分子層が1層あるいは複数層のBTBASガスが吸着する。図15は、逆テーパー状の凹部230にシリコン酸化膜が埋め込まれていく様子を示しており、図15(a)はBTBASガスの分子層241の厚さを便宜上誇張して描画してある。次いで、このウェハWが補助領域90を通過すると、ウェハWの表面に吸着した分子層241は、以下の反応式(1)に従って反応し(シラノール化され)、t−ブチルアミン(CH3C−NH2)と中間生成物であるシロキサン重合体(−(Si−O)n−)とを生成する。
BTBAS+C2H5OH →(−(Si−O)n−)+CH3C−NH2↑ (1)
このシロキサン重合体は、クラスター状であり、ウェハWに強く吸着していないため、ウェハWの表面(パターンの内部)にて粘性の高い状態となっていて流動しやすくなっている。そのため、図15(b)に示すように、このシロキサン重合体は重力の作用によって下方側が厚くなるように積層部分が流動するので、例えば逆テーパー状の凹部230においては、側面が垂直に近づくように、つまり末広がりの程度が緩和される。また、このシロキサン重合体と共に生成した有機物は、例えば気化してウェハWの上方に向かって排気されていく。
【0052】
続いて、このウェハWが第2の処理領域92を通過すると、ウェハWの表面では上記のシロキサン重合体が酸化されて、シリコンと酸素とを含む反応生成物である例えば膜厚が0.1nm程度のシリコン酸化膜(SiO2膜)242が形成される。また、シリコン酸化膜242と共に生成した有機物などの不純物は、例えば気化してウェハWの上方に排気されていく。この時、反応前のシロキサン重合体が流動性を持っていることから、このサイクルで形成したシリコン酸化膜242の積層部分についても同様に流動性することになる。こうして回転テーブル2の回転(各領域91、90、92における反応)が所定の回数例えば20回行われることにより、ウェハWの表面には膜厚が目標膜厚Tの1/N(N≧2)この例では1/8(N=8、80/8=10nm)のシリコン酸化膜242が積層される(ステップS3)。
【0053】
この時、第1の処理領域91と第2の処理領域92及び補助領域90との間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図16に示すようにBTBASガスとO3ガス及びエタノールガスとが混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、分離領域Dにおいては、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっているので、BTBASガスとO3ガス及びエタノールガスとは、回転テーブル2の外側を介しても混合しない。従って、第1の処理領域91の雰囲気と第2の処理領域92の雰囲気及び補助領域90の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは排気口61に、またO3ガス及びエタノールガスは排気口62に夫々排気される。この結果、BTBASガスとO3ガス及びエタノールガスとが雰囲気中においてもウェハW上においても混じり合うことがない。
【0054】
また、この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切り欠かれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばBTBASガスがO3ガスやエタノールガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0055】
続いて、BTBASガスの供給を停止して、あるいはこのBTBASガスと共に各ガス(O3ガス、エタノールガス及び分離ガス)の供給を停止して、凹部24が既述の昇降ピン16の上方位置となるように回転テーブル2の回転を停止する。この時、BTBASガスの供給を停止すると、真空容器1内のBTBASガスが速やかに排気されていくので、回転テーブル2の回転を停止しても、各ウェハWはBTBASガスの影響を受けない。BTBASガスの供給を停止した後、例えば真空容器1内の真空度が既述の真空搬送室103内の真空度と同程度となるようにバルブ65の開度を調整すると共に、ゲートバルブGを開放して真空搬送アーム104を真空容器1内に進入させて昇降ピン16との協働作用によりウェハWを真空搬送アーム104に受け渡す。
【0056】
次に、図17(a)に示すように、真空搬送アーム104上のウェハWを自転機構132の上方位置に移動させると共に、下方側から昇降軸130を上方に突き上げてウェハWを持ち上げる。続いて、図17(b)に示すように、駆動部131により昇降軸130を鉛直軸回りに回転させて、ウェハWを例えば時計回りに360°/Nこの例では360/8=45°回転(自転)させてその向きを変更する(ステップS4)。そして、昇降軸130を下降させて真空搬送アーム104にウェハWを受け渡すと共に、このウェハWを熱処理装置102内に搬入し、載置台112上に載置して静電吸着する。続いて、この処理容器111内の真空度が所定の値となるように排気管124に介設された図示しないバタフライバルブなどの圧力調整手段の開度を調整すると共に、処理容器111内に所定の流量のN2ガスを供給する。また、載置台112上のウェハWが100℃〜450℃好ましくは350℃の設定温度となるように加熱手段113に通電されているので、載置台112上に載置されたウェハWはこの設定温度に加熱される(ステップS5)。
【0057】
ウェハW上に成膜されたシリコン酸化膜242が上記の設定温度に加熱されると、シリコン酸化膜242は、膜中のSi−O結合が多く形成されてSiOH結合が少なくなっていくと共に、いわば焼き締められて結合が強固になって緻密化していき、上記のように末広がりの程度が緩和された状態で固化することになる。
また、加熱手段113によりウェハWが加熱されるので、シリコン酸化膜242内に有機物などの不純物が残っていたとしても、気化して当該シリコン酸化膜242から離脱して排出されて行く。この時、不純物がシリコン酸化膜242の膜中に入り込んでいる場合でも、このシリコン酸化膜242が上記のように極めて薄いので、この不純物は速やかに排出されることになる。
【0058】
次に、真空搬送アーム104により熱処理装置102からウェハWを取り出して目標膜厚Tとなっているかどうか(成膜処理が回数Nに達したかどうか)を確認し(ステップS6)、目標膜厚Tに達していない場合には、再度真空容器1内にウェハWを搬入して元の凹部24内に収納する。
【0059】
そして、回転テーブル2を間欠的に回転させて、回転テーブル2上の残りの4枚のウェハWに対して同様に向きの変更と加熱処理とを行い、各ウェハWについても目標膜厚Tに達していない場合には元の凹部24内に収納する。この時、回転テーブル2上には周方向にウェハWが載置されているので、例えば表面の分子層241に対してまだ既述のエタノールガスによるシラノール化処理及び酸化処理の行われていないウェハWについては、搬送口15から取り出す前にゲートバルブGを閉じて各ガス(BTBASガス、エタノールガス、O3ガス及びN2ガス)の供給を再開して各領域90、92をこの順番で通過させてシリコン酸化膜242を生成させておき、ウェハWを取り出すときにはBTBASガスあるいは各ガスの供給を停止する。尚、上記のステップS6における目標膜厚Tとなっているかどうかの確認は、例えば始めに取り出すウェハWに対して行い、続く残りの4枚のウェハWに対しては当該始めに取り出したウェハWと同じ処理を行うようにしても良い。
【0060】
その後これらのウェハWを真空容器1内に収納した後、回転テーブル2を回転させると共に真空容器1内の雰囲気が所定の真空度となるようにバルブ65の開度を調整してBTBASガス及び各ガスの供給を開始し、ステップS3の成膜処理と同様に膜厚が10nm(膜厚T/N=80/8)のシリコン酸化膜242の成膜を行う。この時、上記のように各ウェハWを時計回りに45°回転させていることから、ウェハWは先の成膜処理を行った時の水平姿勢に対して、時計回りに45°ずれた水平姿勢にてノズル31、200、32の下方位置である領域91、90、92を通過することになり、ウェハW上には合計20nm(膜厚T/N×2=80/8×2)のシリコン酸化膜242が成膜される。
【0061】
そして、各ウェハW上に目標膜厚Tのシリコン酸化膜242が成膜されるまで、上記の各ステップを繰り返すと、ウェハWは10nmのシリコン酸化膜242が成膜される度に、いわば成膜処理の途中で時計回りに45°ずつその向きが変更されていくことになる。従って、成膜前(真空容器1に搬入された時)のウェハWから見ると、成膜後のウェハWは、時計回りに315°自転し、80nmのシリコン酸化膜242からなる薄膜が成膜される。以上の成膜処理におけるウェハWの自転した角度と膜厚とを概略的に図18に示す。尚、この図18中のウェハW上に描画した矢印は、ウェハWが自転していく様子を模式的に表すために、例えば1回目の成膜処理を行う前の位置からのウェハWの自転角度を示したものであり、また図18中の横軸には、各ステップの合計数を示している。
【0062】
ここで、上記のように成膜処理を行う度にシラノール化処理を行ってシリコン酸化膜242を流動させていることから、凹部230内ではシラノール化処理を行う度に図15(c)に示すように段階的に逆テーパー状が緩和されていくので、図15(d)及び図19に示すように、空隙のない状態で埋め込みが終了する。
尚、上記のように各領域91、90、92をウェハWが順番に通過するにあたって、ウェハWが回転テーブル2の回転方向に沿って5箇所の凹部24に配置されていることから、ウェハWは分子層241が形成される前にエタノールガスやO3ガスが供給される場合もあるが、特に成膜には悪影響を及ぼさない。
【0063】
こうして成膜処理が終了すると、基板処理装置からウェハWを搬入時と逆の動作によって順次搬送アーム10により搬出する(ステップS7)。尚、既述のように、ウェハWが搬入前(成膜前)に比べて時計回りに315°自転していることから、基板処理装置から搬出する前に、ウェハWを自転機構132により時計回りに45°自転させて搬入時と同じ向きに戻すようにしても良い。
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウェハWを被処理基板とする場合は例えば1rpm〜500rpm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。
【0064】
上述の実施の形態によれば、ウェハWの表面に反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)を順番に供給して薄膜を形成するにあたり、夫々処理領域91、90、92と、これらの処理領域91(90)、92の間の分離領域Dと、の間をウェハWが順番に通過するように、回転テーブル2を鉛直軸回りに回転させてウェハW上にシリコン酸化膜242を積層した後、ウェハWを真空容器1から取り出して自転機構132において鉛直軸回りに自転させ、次いで再び反応生成物の層を積層して薄膜を形成している。そのため、例えば回転テーブル2の各凹部24において膜厚が厚くなる傾向の領域や膜厚が薄くなる傾向の領域が偏在していたとしても、つまり例えば1回目の成膜処理において成膜されたシリコン酸化膜242の膜厚が不均一だったとしても、続く成膜処理では鉛直軸回りに自転させた状態で成膜処理を行っており、上記の各偏在領域がウェハWの周方向にずれるように(膜厚の偏りが大きくならないように)次のシリコン酸化膜242が成膜されるので、面内に亘って膜厚の均一性高く成膜処理を行うことができる。従って、例えば真空容器1のノズル31、32の長さ方向(回転テーブル2の半径方向)あるいは回転テーブル2の周方向(回転方向)において、ガスの濃度分布やガス流が不均一になっていたとしても、その不均一さが緩和されるので、面内に亘って膜や膜質が均一となるように成膜処理を行うことができる。
【0065】
この時、目標の成膜量Tに対して成膜処理を複数回例えば8回に分けてウェハWを45°ずつ時計回りに自転させているので、各成膜処理における膜厚のばらつきを面内に亘って均すことができ、後述のシミュレーション結果から分かるように、面内における均一性を1%以下まで向上させることができる。
また、ウェハWを自転させるにあたり、基板処理装置の内部で行っていることから、例えば基板処理装置の外部の大気雰囲気の環境で自転させる場合よりも自転に要する時間を短くすることができ、そのためスループットの低下を抑えて面内均一性を向上させることができる。
【0066】
更に、ウェハW上にBTBASガスを吸着させた後、O3ガスを供給する前にエタノールガスを供給することによって、分子層241に対して流動性の高い状態(シロキサン重合体)が得られるようにしている。そのため、このシロキサン重合体が流動し、また続くO3ガスによる酸化処理により生成したシリコン酸化膜242についても流動するので、シリコン酸化膜242が凹部230の内部へと入り込むため、凹部230が例えば逆テーパー状に形成されている場合であっても、凹部230内に空洞(ボイド)などが介在しない状態でシリコン酸化膜242を埋め込むことができる。従って、良好に埋め込みが行われた(良好な膜質の)シリコン酸化膜242を得ることができる。そのため、例えばSTI構造のデバイスを製造する場合には、良好な絶縁特性を得ることができる。
【0067】
また、シリコン酸化膜242を流動(シラノール化)させるにあたり、薄膜の成膜が完了した後ではなく、各成膜処理を行う度に行うようにしているので、各シラノール化処理では順次積層されていくシロキサン重合体の層を順番に流動させれば良いことになる。そのため、各シラノール化処理においてシロキサン重合体を流動させる量は僅かであり、従って速やかにシリコン酸化膜242を流動させることができる。そしてALDを行うために回転テーブル2を回転させている各サイクルの中でシラノール化(流動)を行っているので、シラノール化を行うことによる時間的なロスがないため、高いスループットを維持できる。更に、シリコン酸化膜242を流動させた後に熱処理装置102において加熱処理を行うことにより、シリコン酸化膜242中に不純物が含まれていたとしても低減することができるので、またシリコン酸化膜242を緻密化することができるので、より一層良好な膜質の薄膜を得ることができる。
【0068】
更にまた、上記のように回転テーブル2の回転方向に複数のウェハWを配置し、回転テーブル2を回転させて各処理領域91、90、92を順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして、前記回転方向において第1の処理領域91及び補助領域90と第2の処理領域92との間に低い天井面を備えた分離領域Dを設けると共に、回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画した中心部領域Cから回転テーブル2の周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域Dの両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域Cから吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるようにしているため、両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができるし、回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。尚、本発明は、回転テーブル2に1個のウェハWを載置する場合にも適用できる。
【0069】
上記の基板処理装置によれば、例えば5枚処理用の成膜装置を設けることにより、いわゆるALD(MLD)を高いスループットで実施することができる。また、真空搬送室103に上記の成膜装置101を2基気密に接続し、これらの成膜装置101、101において並行して成膜処理を行っても良い。その場合には、更に上記のALD(MLD)を高いスループットで行うことができる。
【0070】
また、上記の例においては、各成膜処理において回転テーブル2を20回回転させてその後ウェハWを自転させると共に加熱処理を行ったが、回転テーブル2を1回回転させる度にウェハWを真空容器1内から取り出してウェハWを自転させて加熱しても良い。
【0071】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図20を参照して説明する。この実施の形態では、シリコン酸化膜242が更に速やかに流動(リフロー)するように、シリコン酸化膜242中にホウ素(B)及びリン(P)の少なくとも一方が混入するようにしている。具体的な成膜装置について説明すると、この成膜装置にはこれらのホウ素及びリンの一方例えばリンを含む化合物例えばPH4(フォスフィン)ガスを第3の反応ガスとして供給するための第3の反応ガス供給手段である例えば石英製の第3のガスノズル280が設けられており、このノズル280は、回転テーブル2の回転方向において、例えば第2の反応ガスノズル32と搬送口15との間に設けられている。
【0072】
このノズル280は、既述の各ノズル31、32、200、41、42と同様に構成されており、真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウェハWに対向して水平に伸びるように取り付けられており、その基端部であるガス導入ポート281は当該外周壁を貫通している。このノズル280には、図示しないバルブや流量調整部が介設されたガス供給管282により上記の第3の反応ガスが供給されるように構成されており、このノズル280の下方側には、この反応ガスを下方側のウェハWに向けて吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔(図示せず)が真下を向いてノズルの長さ方向に亘って例えば10mmの間隔を置いて等間隔に配列されている。このノズル280のガス吐出孔とウェハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmである。この例では、熱処理装置102におけるウェハWの加熱温度は、例えば700℃〜800℃程度に設定される。
【0073】
このノズル280を備えた成膜装置における作用について以下に説明する。既述のように、回転テーブル2上に例えば5枚のウェハWを載置して、この回転テーブル2を回転させると共に、各ノズル31、32、200、280、41、42から各反応ガス及び分離ガスを供給し、中心部領域C及び回転テーブル2の下方領域にパージガスを供給する。そして、第2の処理領域92を通過して表面にシリコン酸化膜242が形成されたウェハWに対して上記の第3の反応ガスが供給されると、この反応ガスが当該シリコン酸化膜242中に取り込まれる。次いで、ウェハWを自転させた後、熱処理装置102において第3の反応ガスが取り込まれたシリコン酸化膜242を上記のように700℃〜800℃程度に加熱すると、例えば第3の反応ガス中に含まれていた有機物が気化してこの膜から上方に向けて排気されていくと共に、このシリコン酸化膜242中に例えばリンが取り込まれることになる。この時、シリコン酸化膜242はこのリンによりガラス転移しやすくなるので、シリコン酸化膜242がリフロー(流動)して、更に逆テーパー状の凹部230の末広がりの程度が緩和されることになる。その後、既述の例と同様に多層のシリコン酸化膜242が積層されていく。
【0074】
このノズル280の配置位置としては、回転テーブル2の回転方向において第1の反応ガスノズル31と搬送口15との間であれば良く、例えば第1の反応ガスノズル31のガス供給管31bにガス供給管282を介設して、この第3の反応ガスと既述のBTBASガスとの混合ガスを供給しても良い。また、この第3の反応ガスとしては、上記のガスに代えて、あるいはこのガスと共にホウ素を含む化合物例えばTMB(トリメチルボロン)ガスを供給し、シリコン酸化膜242中にリン及びホウ素の少なくとも一方を混入させるようにしても良い。
【0075】
上記の各例においては、補助ノズル200から供給する補助ガスとしてはエタノールガスを用いたが、他のアルコール例えばメタノール(CH3OH)などでも良いし、あるいは純水(H2O)や過酸化水素水(H2O2)などでも良く、つまり水酸基(OH)基を持つ化合物のガスであれば良い。この補助ガスとして純水を用いた場合には、この純水のガスとウェハWの表面に吸着したBTBASガスとは、例えば以下の(2)式に従って反応してシラノール化する。
BTBAS+H2O →(−SiO−)n +CH3C−NH2↑ (2)
この反応において生成する中間生成物である(−SiO−)nは、既述のシロキサン重合体と同様に流動性を示し、またこの(−SiO−)nとO3ガスとが反応して生成するシリコン酸化膜242は、同様に流動性を示すので流動して良好に凹部230が埋め込まれることになる。
【0076】
[第3の実施の形態]
上記の各実施の形態では、パターン232の形成されたウェハWに対してシリコン酸化膜242の成膜処理を行うにあたり、補助ノズル200からエタノールガスを供給してシリコン酸化膜242に対して流動性を持たせるようにしたが、パターン232の形成されていないウェハWに対してもエタノールガスを供給しても良いし、あるいはパターン232の形成されていないウェハWに対してはエタノールガスを供給しなくとも良い。その場合には、例えば図21に示すように、補助ノズル200が設けられていない成膜装置101にて成膜処理が行われる。
【0077】
そして、既述の第1の実施の形態と同様に各ウェハWに対して成膜処理と、ウェハWの自転と、熱処理と、がこの順番で複数回繰り返されて、多層のシリコン酸化膜242からなる薄膜が形成される。この実施の形態では、各成膜処理毎に熱処理を行うことにより、例えばシリコン酸化膜242中に取り込まれた炭素成分などの不純物が気化して排出されやすくなるので、またシリコン酸化膜242がいわば焼きしめられて緻密になるので、不純物の含有量が少なく、また良好な硬度の薄膜を得ることができる。この時、不純物が気化して排出されるためには、例えばシリコン酸化膜242の膜厚方向に不純物が移動する必要があるので、薄膜の成膜が完了した後に熱処理を行う場合には、膜中から不純物が排出されるためには長時間の加熱処理が必要になるが、この実施の形態では成膜処理を行う度に、つまりシリコン酸化膜242の膜厚が薄い状態で加熱処理を行っているので、成膜の完了後に加熱処理を行う場合に比べてシリコン酸化膜242からの不純物の排出を速やかに行うことができ、従って良好な膜質の薄膜を得ることができる。
【0078】
この第3の実施の形態の発明は、例えば高誘電体(high−k)膜例えばSTO膜などを成膜する場合に好適に適用でき、その場合には各ノズル31、32から供給する各反応ガスとしては例えば夫々Ti(MPD)(THD)2ガス及びSr(THD)2ガスなどが用いられる。この場合には、熱処理装置102におけるウェハWの加熱温度は、例えば300℃〜400℃に設定される。
【0079】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について、図22〜図24を参照して説明する。この実施の形態は、既述の第1の実施の形態における成膜装置101を例に説明すると、図22に示すように、回転テーブル2の回転方向において、既述の第2の反応ガスノズル32と搬送口15との間にプラズマ供給手段であるプラズマインジェクター250が設けられている。
【0080】
プラズマインジェクター250は、筐体からなるインジェクター本体251を備えている。図23、図24に示すように当該インジェクター本体251内には、隔壁252によって長さ方向に区画された幅の異なる2つの空間が形成されていて、一方側はプラズマ発生用のガスをプラズマ化するためのガス活性化用流路であるガス活性化室253、他方側はこのガス活性化室253へプラズマ発生用のガスを供給するためのガス導入用流路であるガス導入室254となっている。 この図22〜図24において、255はガス導入ノズル、256はガス孔、257はガス導入ポート、258は継手部、259はガス供給ポートであり、ガス導入ノズル255からプラズマ発生用のガスがガス孔256から吐出してガス導入室254内に供給され、このガス導入室254から隔壁252の上部に形成された切り欠き部271を介してガス活性化室253にガスが通流するように構成されている。
【0081】
ガス活性化室253内には、2本の誘電体からなる例えばセラミックス製のシース管272、272が当該ガス活性化室253の基端側から先端側へ向けて隔壁252に沿って伸び出しており、これらのシース管272、272の管内には、棒状の電極273、273が貫挿されている。これらの電極273、273の基端側はインジェクター本体251の外部に引き出され、真空容器1の外部にて整合器274を介して高周波電源275と接続されている。インジェクター本体251の底面には、当該電極273、273の間の領域であるプラズマ発生部290にてプラズマ化して活性化されたプラズマを下方側に吐出するためのガス吐出孔291がインジェクター本体251の長さ方向に配列されている。このインジェクター本体251は、その先端側を回転テーブル2の中心部へ向けて伸び出した状態となるように配設されている。図22中262〜264はバルブ、265〜267流量調整部、268〜270は夫々プラズマ発生用のガス例えば酸素(O2)ガス、アルゴン(Ar)ガス及び窒素(N2)ガスが貯留されたガス源である。
【0082】
この実施の形態の作用について以下に説明する。この実施の形態においても、同様に回転テーブル2上にウェハWを5枚載置して、この回転テーブル2を回転させて、各ガスノズル31、32、200、41、42からBTBASガス、O3ガス、エタノールガス及び窒素ガスをウェハWに向けて夫々供給すると共に、既述のようにパージガスを中心部領域Cや回転テーブル2の下方の領域に供給する。そして、ヒータユニット7に既述のように通電し、プラズマインジェクター250に対してプラズマ発生用のガス例えばArガスを供給すると共に、高周波電源275からプラズマ発生部290(電極273、273)に例えば13.56MHz、例えば10W〜200Wの範囲の例えば100Wの高周波電力を供給する。
【0083】
真空容器1内は真空雰囲気となっているので、ガス活性化室253の上方部へ流入したプラズマ発生用のガスは上記の高周波電力によりプラズマ化(活性化)された状態となってガス吐出孔291を介してウェハWに向けて供給される。
このプラズマが第2の処理領域92を通過して既述のシリコン酸化膜242が成膜されたウェハWに到達すると、当該シリコン酸化膜242内に残っていた炭素成分や水分が気化して排出されたり、あるいはシリコンと酸素との間の結合が強められたりすることになる。こうして1回の成膜処理が終了するまで、回転テーブル2が回転する度にプラズマの供給が行われる。その後、このウェハWは真空容器1から取り出されてその向きが変更された後、熱処理装置102において既述のように熱処理が行われる。
このようにプラズマインジェクター250を設けることにより、既述の第1の実施の形態よりも更に不純物が少なく、また結合強度の強いシリコン酸化膜242を成膜することができる。
【0084】
この例においては、上記のようにプラズマ発生用のガスとしてArガスを用いたが、このガスに代えて、あるいはこのガスと共にO2ガスやN2ガスを用いても良い。このArガスを用いた場合には、膜中のSi−O結合を作り、SiOH結合をなくすという効果が得られて、またO2ガスを用いた場合には、未反応部分の酸化を促進し、膜中のC(炭素)成分を減少させ、電気特性を改善するという効果が得られる。
また、このプラズマインジェクター250を、既述の第2の実施の形態や第3の実施の形態の成膜装置101に適用しても良い。
【0085】
[第5の実施の形態]
上記の各例においては、熱処理装置102として1枚ずつ熱処理を行う装置を用いたが、複数枚例えば5枚のウェハWに対して同時に加熱処理を行っても良い。具体的には、この実施の形態における基板処理装置は、図25に示すように、熱処理装置109を備えており、この熱処理装置109は既述の真空搬送室103に気密に接続されている。この熱処理装置109は、既述の成膜装置101とほぼ同じ構成であり、例えば各ノズル31、32、200に代えて、不活性ガス例えばN2ガスを供給するノズルが設けられていると共に、ヒータユニット7は既述の熱処理装置102における加熱手段113と同様の加熱温度に回転テーブル2上のウェハWを加熱できるように構成されている。
【0086】
そして、この実施の形態における基板処理装置において成膜処理を行う場合には、成膜装置101において成膜処理を行ったウェハWを真空搬送室103に取り出して自転させた後、このウェハWを熱処理装置109の回転テーブル2上に載置する。次いで、成膜装置101内のウェハWを順番に取り出して自転させると共に、熱処理装置109内の回転テーブル2を間欠的に回転させて各ウェハWを当該回転テーブル2上に載置する。続いて、この熱処理装置109において回転テーブル2を回転させながら真空容器1内に不活性ガスを供給すると共に所定の真空度に調整して、ウェハWを既述の加熱温度に加熱する。この熱処理により、各ウェハWに対して同時に既述のシリコン酸化膜242の緻密化が行われることになる。その後、各ウェハWを順番に取り出して成膜装置101に戻して、続く成膜処理などの各ステップが行われる。この実施の形態では、上記の各実施の形態の効果が得られ、また各ウェハWに対する熱処理を1度に行っていることからスループットを向上させることができる。
【0087】
このような基板処理装置において、真空搬送室103に既述の熱処理装置102を気密に接続し、この熱処理装置102においても熱処理処理を行うようにしても良い。また、この実施の形態における成膜装置101としては、既述の各実施の形態における装置のいずれを適用しても良い。
上記の各例では、ウェハWを自転させる工程を成膜処理と熱処理との間で行うようにしたが、熱処理の後で行うようにしても良く、つまり先の成膜処理とその後に行われる成膜処理との間においてウェハWの向きを変更すれば良い。
【0088】
また、上記の自転機構132としては、熱処理装置102(109)内に設けても良い。その場合においても、例えば真空搬送アーム104が自転機構132の上方位置に移動して、同様にウェハWの自転が行われる。更に、熱処理装置102における昇降装置121に、昇降ピン119を昇降させる機構に加えて当該昇降ピン119を鉛直軸回りに回転させる機構を付け加えて、この熱処理装置102内において熱処理の前後あるいは熱処理を行いながらウェハWを自転させても良い。また、このような自転機構132を大気搬送室107に設けて、この大気搬送室107においてウェハWを自転させても良い。
【0089】
更に、ウェハWを自転させるにあたって、真空搬送室103内に自転機構132を設けたが、真空搬送アーム104にこの自転機構132を組み合わせて設けても良い。このような真空搬送アーム104としては、具体的には図26に示すように、支持板141上に形成されたレール142に沿って進退するスライドアームとしても良い。そして、既述の自転機構132は、各々の搬送アーム104、104に設けられると共に、各支持板141内に埋設されて、搬送アーム104が後退した時にこの搬送アーム104上に保持されたウェハWに対して昇降自在及び鉛直軸回りに回転自在に構成される。この搬送アーム104においても、上記の例と同様にウェハWの自転が行われて同様の効果が得られる。また、既述の大気搬送アーム106に代えてこの真空搬送アーム104を既述の大気搬送室107に設けて、この大気搬送室107においてウェハWを自転させても良い。更に、ウェハWを自転させる機構としては、上記の各例ではウェハWを裏面側から突き上げて回転させる機構としたが、例えばウェハWを上方側から直径方向を把持して(クランプして)持ち上げて回転させる機構であっても良い。
【0090】
本発明で適用される処理ガス(第1の反応ガス)としては、上述の例の他に、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2 [ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを挙げることができる。
【0091】
[好ましい例]
また、前記分離領域Dの天井面44において、前記分離ガスノズル41、42に対して回転テーブル2の回転方向の上流側部位は、外縁に位置する部位ほど前記回転方向の幅が大きいことが好ましい。その理由は回転テーブル2の回転によって上流側から分離領域Dに向かうガスの流れが外縁に寄るほど速いためである。この観点からすれば、上述のように凸状部4を扇型に構成することは得策である。
そして、前記分離ガスノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面44は、図27(a)、(b)に前記分離ガスノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウェハWを被処理基板とする場合、ウェハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。凸状部4の両側から当該凸状部4の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離hも小さくする必要がある。更に第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離hをある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。このような観点から考察すると、ウェハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面44と回転テーブル2との距離hをかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウェハWと天井面44との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部4の上流側から当該凸状部4の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。即ち、前記幅寸法LがウェハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。
【0092】
また本発明では分離ガス供給手段における回転方向両側に低い天井面44が位置することが好ましいが、分離ガスノズル41、42の両側に凸状部4を設けずに、分離ガスノズル41、42から下方に向けてN2ガスを吹き出してエアカーテンを形成し、このエアカーテンにより処理領域91、92を分離するようにしても良い。
成膜装置101においてウェハWを加熱するための加熱手段としては抵抗発熱体を用いたヒータに限られずランプ加熱装置であってもよく、回転テーブル2の下方側に設ける代わりに回転テーブル2の上方側に設けてもよいし、上下両方に設けてもよい。また、上記の反応ガスによる反応が低温例えば常温において起こる場合には、このような加熱手段を設けなくとも良い。
【0093】
ここで処理領域91、92及び分離領域の各レイアウトについて上記の実施の形態以外の他の例を挙げておく。分離領域Dは、扇型の凸状部4を周方向に2つに分割し、その間に分離ガスノズル41(42)を設ける構成であってもよいことを既に述べたが、図28は、既述の第1の実施の形態の成膜装置を例に挙げてこのような構成の一例を示す平面図である。この場合、扇型の凸状部4と分離ガスノズル41(42)との距離や扇型の凸状部4の大きさなどは、分離ガスの吐出流量や反応ガスの吐出流量などを考慮して分離領域Dが有効な分離作用が発揮できるように設定される。
上述の実施の形態では、前記第1の処理領域91、補助領域90及び第2の処理領域92は、その天井面が前記分離領域Dの天井面よりも高い領域に相当するものであったが、本発明は、第1の処理領域91、補助領域90及び第2の処理領域92の少なくとも1つは、分離領域Dと同様に反応ガス供給手段の前記回転方向両側にて前記回転テーブル2に対向して設けられ、当該回転テーブル2との間にガスの侵入を阻止するための空間を形成するようにかつ前記分離領域Dの前記回転方向両側の天井面(第2の天井面45)よりも低い天井面例えば分離領域Dにおける第1の天井面44と同じ高さの天井面を備えている構成としてもよい。
【0094】
また、反応ガスノズル31(32、200)の両側にも低い天井面を設けて、分離ガスノズル41(42)及び反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部4を設ける構成としても良い。
また、各ノズル31、32、200、41、42(310)の取り付け位置を変更しても良く、各々の反応ガスが混じり合わないように排気されながら、ウェハWの表面にBTBASが吸着し、その後エタノールガスにより中間生成物が生成し、続いてO3ガスにより中間生成物が酸化されるサイクルまたはこの中間生成物を介さずにシリコン酸化膜242が形成されるサイクルが多数回繰り返されるように構成しても良い。
【0095】
[他の例]
また、上記の各実施の形態の成膜装置としては、ガス供給系(ノズル31、32、200、280、41、42)に対して回転テーブル2を鉛直軸回りに回転させる構成としたが、ガス供給系が回転テーブル2に対して鉛直軸回りに回転する構成としても良い。このような具体的な装置構成について、既述の第3の実施の形態(ノズル200、280等が設けられていない)の成膜装置101に適用した例を図29〜図32を参照して説明する。尚、既述の成膜装置101と同じ部位については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0096】
真空容器1内には、既述の回転テーブル2に代えて、テーブルであるサセプタ300が配置されている。このサセプタ300の底面中央には、回転軸22の上端側が接続されており、ウェハWの搬入出を行うときにはサセプタ300を回転できるように構成されている。このサセプタ300上には、既述の凹部24が周方向に亘って複数箇所例えば5箇所に形成されている。
【0097】
図29〜図31に示すように、既述のノズル31、32、41、42は、サセプタ300の中央部の直上に設けられた扁平な円盤状のコア部301に取り付けられており、基端部が当該コア部301の側壁を貫通している。コア部301は後述するように例えば鉛直軸回りに反時計方向に回転するように構成されており、当該コア部301を回転させることによって各ガス供給ノズル31、32、41、42をサセプタ300の上方位置において回転させることができるようになっている。尚、図30は、真空容器1(天板11及び容器本体12)並びに天板11の上面に固定された後述のスリーブ304を取り去った状態を示している。
【0098】
既述の凸状部4は、上記のコア部301の側壁部に固定されており、各ガス供給ノズル31、32、41、42と共にサセプタ300上を回転できるように構成されている。コア部301の側壁部には、図30、図31に示すように、各反応ガス供給ノズル31、32の回転方向上流側であって、当該上流側に設けられている凸状部4とコア部301との接合部の手前の位置に、2つの排気口61、62が設けられている。これら排気口61、62は各々後述の排気管302に接続されていて、反応ガス及び分離ガスを各処理領域91、92から排気する役割を果たす。排気口61、62は、既述の例と同様に、分離領域Dの前記回転方向両側に設けられ、各反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)の排気を専用に行うようにしている。
【0099】
図29に示すように、コア部301の上面中央部には円筒状の回転筒303の下端部が接続されており、真空容器1の天板11上に固定されたスリーブ304内にて当該回転筒303を回転させることにより、真空容器1内でコア部301と共にノズル31、32、41、42及び凸状部4を回転させる構成となっている。コア部301内は下面側が開放された空間となっていて、コア部301の側壁を貫通した反応ガス供給ノズル31、32、分離ガス供給ノズル41、42は、当該空間において各々BTBASガスを供給する第1の反応ガス供給管305、O3ガスを供給する第2の反応ガス供給管306、分離ガスであるN2ガスを供給する分離ガス供給管307、308と接続されている(便宜上、図29には、分離ガス供給管307、308のみを図示してある)。
【0100】
各供給管305〜308は、コア部301の回転中心近傍、詳細には後述の排気管302の周囲にてL字に屈曲されて上方に向けて伸び、コア部301の天井面を貫通して、垂直上方へ向けて円筒状の回転筒303内を延伸されている。
図29、図30、図31に示すように、回転筒303は外径の異なる2つの円筒を上下2段に積み重ねた外観形状に構成されており、外径の大きな上段側の円筒の底面をスリーブ304の上端面にて係止させることにより、当該回転筒303を上面側から見て周方向に回転可能な状態でスリーブ304内に挿入する一方、回転筒303の下端側は天板11を貫通してコア部301の上面と接続されている。
【0101】
天板11の上方位置における回転筒303の外周面側には、当該外周面の周方向の全面に亘って形成された環状流路であるガス拡散路が上下方向に間隔をおいて配置されている。本例においては上段位置に分離ガス(N2ガス)を拡散させるための分離ガス拡散路309が配置され、中段位置にBTBASガスを拡散させるための第1の反応ガス拡散路310、下段位置にO3ガスを拡散させるための第2の反応ガス拡散路311が配置されている。図中、312は回転筒303の蓋部であり、313は当該蓋部312と回転筒303とを密着させるOリングである。
【0102】
各ガス拡散路309〜311には、回転筒303の全周に亘り、当該回転筒303の外面へ向けて開口するスリット320、321、322が設けられており、夫々のガス拡散路309〜311には、これらのスリット320、321、322を介して各種のガスが供給されるようになっている。一方、回転筒303を覆うスリーブ304には、各スリット320、321、322に対応する高さ位置に、ガス供給口であるガス供給ポート323、324、325が設けられており、不図示のガス供給源よりこれらのガス供給ポート323、324、325へと供給されたガスは、当該各ポート323、324、325に向けて開口するスリット320、321、322を介して各ガス拡散路309、310、311内に供給されることとなる。
【0103】
ここでスリーブ304内に挿入された回転筒303の外径は、当該回転筒303が回転可能な範囲で、可能な限りスリーブ304の内径と近い大きさに形成されており、前記各ポート323、324、325の開口部以外の領域においては、各スリット320、321、322はスリーブ304の内周面によって塞がれた状態となっている。この結果、各ガス拡散路309、310、311に導入されたガスは、当該ガス拡散路309、310、311内のみを拡散して、例えば他のガス拡散路309、310、311や真空容器1内、成膜装置の外部などに漏れ出さないようになっている。図29中、326は回転筒303とスリーブ304との隙間からのガス漏れを防止するための磁気シールであり、これら磁気シール326は各ガス拡散路309、310、311の上下にも設けられていて、各種ガスをガス拡散路309、310、311内に確実に封止する構成となっているが同図では便宜上省略してある。また、図32においても磁気シール326の記載は省略してある。
【0104】
図32に示すように、回転筒303の内周面側において、ガス拡散路309にはガス供給管307、308が接続され、各ガス拡散路310、311には既述の各ガス供給管305、306が夫々接続されている。これによりガス供給ポート323から供給された分離ガスは、ガス拡散路309内を拡散してガス供給管307、308を介してノズル41、42へと流れ、また各ガス供給ポート324、325から供給された各種反応ガスは、夫々ガス拡散路310、311内を拡散し、ガス供給管305、306を介して各ノズル31、32へと流れ、真空容器1内に供給されるようになっている。なお、図32においては図示の便宜上、後述の排気管302の記載は省略してある。
【0105】
ここで図32に示すように、分離ガス拡散路309にはさらにパージガス供給管330が接続されており、当該パージガス供給管330は回転筒303内を下方側に延伸されて図31に示すようにコア部301内の空間に開口しており、当該空間内にN2ガスを供給することができる。ここで例えば図29に示すようにコア部301は、サセプタ300の表面から例えば既述の高さhの隙間を空けて浮いた状態となるように回転筒303に支持されており、サセプタ300に対してコア部301が固定されていないことにより自由に回転させることができる。しかしながらこのようにサセプタ300とコア部301との間に隙間が開いていると、例えば既述の処理領域91、92の一方からコア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むおそれがある。
【0106】
そこでコア部301の内側を空洞とし、当該空洞の下面側をサセプタ300に向けて開放すると共に、当該空洞内にパージガス供給管330からパージガス(N2ガス)を供給して、前記隙間を介して各処理領域91、92へ向けてパージガスを吹き出させることにより、前述の反応ガスの回り込みを防止することができる。即ち、この成膜装置は、処理領域91、92の雰囲気を分離するためにサセプタ300の中心部と真空容器1とにより区画され、当該サセプタ300の表面にパージガスを吐出する吐出口がコア部301の回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。この場合にパージガスは、コア部301の下方を介して他方にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことを防止するための分離ガスの役割を果たしている。なおここでいう吐出口はコア部301の側壁とサセプタ300との間の隙間に相当する。
【0107】
図29に示すように、回転筒303の上段側の外径の大きな円筒部の側周面には、駆動ベルト335が巻き掛けられており、この駆動ベルト335は、真空容器1の上方に配置された回転機構である駆動部336により、この駆動ベルト335を介して当該駆動部336の駆動力をコア部301に伝達し、これによりスリーブ304内の回転筒303を回転させることができる。尚、図29中337は、真空容器1の上方位置において駆動部336を保持するための保持部である。
【0108】
回転筒303内には、その回転中心に沿って排気管302が配設されている。排気管302の下端部は、コア部301の上面を貫通してコア部301内の空間に伸びだしていて、その下端面は封止されている。一方、当該コア部301内に伸びだした排気管302の側周面には、例えば図31に示すように、各排気口61、62と接続された排気引込管341、342が設けられていて、パージガスで満たされたコア部301内の雰囲気とは隔離して各処理領域91、92からの排ガスを排気管302内へと引き込むことができるようになっている。なお、既述のように図32においては排気管302の記載は省略してあるが、当該図32に記載された各ガス供給管305、306、307、308並びにパージガス供給管330は、この排気管302の周囲に配置されている。
【0109】
図29に示すように排気管302の上端部は回転筒303の蓋部312を貫通し、真空排気手段である例えば真空ポンプ343に接続されている。なお図29中、344は下流側の配管に対して排気管302を回転可能に接続するロータリージョイントである。
【0110】
この装置を用いた成膜処理の流れについて、既述の実施の形態の作用と異なる点について、以下に簡単に説明する。先ず、真空容器1内にウェハWを搬入する時には、サセプタ300を間欠的に回転させて、搬送アーム10と昇降ピン16との協働作業により5つの凹部24にウェハWを各々載置する。
【0111】
そして、ウェハWを成膜装置101において加熱する時には、回転筒303を反時計回りに回転させる。すると、図32に示すように回転筒303に設けられた各ガス拡散路309〜312は回転筒303の回転に伴って回転するが、これらのガス拡散路309〜311に設けられたスリット320〜322の一部が各々対応するガス供給ポート323〜325の開口部へ向けて常時開口していることにより、ガス拡散路309〜312には各種のガスが連続的に供給される。
【0112】
ガス拡散路309〜312に供給された各種のガスは、各々のガス拡散路309〜312に接続されたガス供給管305〜308を介して反応ガス供給ノズル31、32、分離ガス供給ノズル41、42より各処理領域91、92、分離領域Dへと供給される。これらのガス供給管305〜308は回転筒303に固定され、また、反応ガス供給ノズル31、32及び分離ガス供給ノズル41、42についてはコア部301を介して回転筒303に固定されていることから、回転筒303の回転に伴ってこれらのガス供給管305〜308及び各ガス供給ノズル31、32、41、42も回転しながら各種のガスを真空容器1内に供給している。
【0113】
このとき、回転筒303と一体となって回転しているパージガス供給管330からも分離ガスであるN2ガスを供給し、これにより中心部領域Cから即ちコア部301の側壁部とサセプタ300の中心部との間からサセプタ300の表面に沿ってN2ガスが吐出する。またこの例では反応ガス供給ノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿ったコア部301の側壁部に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなっている。そのため、BTBASガスとO3ガスとは、既述の成膜装置と同様に互いに混じり合うことなしに独立して排気されていくことになる。
【0114】
従って、サセプタ300上で停止している各々のウェハWから見ると、各処理領域91、92が分離領域Dを介して順番に通過することになり、既述のように成膜処理が行われる。そして、所定の膜厚のシリコン酸化膜242が成膜されると、所定のタイミングで既述の例と同様に、ウェハWが真空容器1から取り出されて自転することになる。
【0115】
この実施の形態においても、同様に面内において均一性の高い成膜処理が行われて、同様の効果が得られる。また、このような成膜装置101においても、補助ノズル200や第3の反応ガスノズル280を設けても良く、その場合にはこれらのノズル200、280には、この実施の形態における各ガスノズル31、32、41、42と同様に回転筒303内に収納されたガス供給管が接続され、スリーブ304に形成されたスリットを介して各ガスが供給されることになる。更に、この成膜装置101に既述のプラズマインジェクター250を設けても良い。
【実施例】
【0116】
次に、上記の成膜方法を実施した場合に面内の均一性がどの程度改善されるか評価するために行ったシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、以下の条件において行った。
【0117】
(シミュレーション条件)
回転テーブル2の回転数:120rpm、240rpm
目標膜厚T:約155nm
ウェハの自転回数:なし(比較対象)、1回(自転角度:180°)、8回(自転角度:45°)、4回(自転角度:90°)
尚、ウェハWを自転させる場合には、夫々の条件において同じ角度ずつ自転させることとした。また、膜厚の測定(計算)は各々のウェハWにおいて周方向に49点ずつ行った。また、ウェハWの自転回数が8回及び4回のシミュレーションについては、ウェハWの半径方向において夫々8箇所ずつ及び4箇所ずつ膜厚を測定し、その平均値を用いた。
【0118】
(結果)
その結果、図33に示すように、ウェハWを1回自転させただけでも面内均一性が改善し、更に自転回数を増やす程均一性が向上していくことが分かった。そして、ウェハWを8回自転させると、回転テーブル2の回転数が240rpmの条件では均一性が1%以下に大きく改善されることが分かった。
【符号の説明】
【0119】
1 真空容器
2 回転テーブル
D 分離領域
W ウェハ
31 第1のガスノズル
32 第2のガスノズル
41、42 分離ガスノズル
90 補助領域
91 第1の処理領域
92 第2の処理領域
101 成膜装置
102 熱処理装置
103 真空搬送室
104 真空搬送アーム
113 加熱手段
200 補助ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置において、
基板に対して成膜処理を行う成膜装置と、
この成膜装置に気密に接続された真空搬送室と、
この真空搬送室内に設けられ、前記成膜装置とこの真空搬送室との間において基板を搬送する搬送手段と、
前記真空搬送室に気密に接続され、その内部に基板載置台が設けられた処理容器と、この処理容器内に設けられ、前記基板載置台上の基板に対して熱処理を行うための手段と、を有する熱処理装置と、
基板に対して薄膜形成処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備え、
前記成膜装置は、
前記真空容器内に設けられたテーブルと、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ当該テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、基板の表面に複数の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
これら複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスを供給するための分離領域と、
前記反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させる回転機構と、
前記回転機構の回転により前記複数の処理領域及び前記分離領域を基板が順番に位置するように、当該回転機構の回転方向に沿うように前記テーブルに形成された基板載置領域と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理方法において、
成膜装置の真空容器内に設けられたテーブル上の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ前記テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた複数の反応ガス供給手段から、前記テーブル上の基板の載置領域側の面に夫々反応ガスを供給する工程と、
前記複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離領域への前記反応ガスの侵入を阻止する工程と、
次いで、前記反応ガス供給手段及び前記分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を回転機構により鉛直軸回りに相対的に回転させて、前記複数の処理領域及び前記分離領域に基板を順番に位置させて反応生成物の層を積層して薄膜を成膜する工程と、
前記回転機構による相対的回転を止め、前記成膜装置に気密に接続された真空搬送室から、この真空搬送室内に設けられた搬送手段により成膜装置から前記基板を取り出して、この真空搬送室に気密に接続された熱処理装置内に搬入し、この基板に対して熱処理を行う工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項2に記載の基板処理方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置において、
基板に対して成膜処理を行う成膜装置と、
この成膜装置に気密に接続された真空搬送室と、
この真空搬送室内に設けられ、前記成膜装置とこの真空搬送室との間において基板を搬送する搬送手段と、
前記真空搬送室に気密に接続され、その内部に基板載置台が設けられた処理容器と、この処理容器内に設けられ、前記基板載置台上の基板に対して熱処理を行うための手段と、を有する熱処理装置と、
基板に対して薄膜形成処理を行うように制御信号を出力する制御部と、を備え、
前記成膜装置は、
前記真空容器内に設けられたテーブルと、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ当該テーブルの周方向に互いに離間するように設けられ、基板の表面に複数の反応ガスを夫々供給するための複数の反応ガス供給手段と、
これら複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスを供給するための分離領域と、
前記反応ガス供給手段及び分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を鉛直軸回りに相対的に回転させる回転機構と、
前記回転機構の回転により前記複数の処理領域及び前記分離領域を基板が順番に位置するように、当該回転機構の回転方向に沿うように前記テーブルに形成された基板載置領域と、
前記真空容器内を真空排気する真空排気手段と、を備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理方法において、
成膜装置の真空容器内に設けられたテーブル上の基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記テーブルの上面に対向するようにかつ前記テーブルの周方向に互いに離間するように設けられた複数の反応ガス供給手段から、前記テーブル上の基板の載置領域側の面に夫々反応ガスを供給する工程と、
前記複数の反応ガス供給手段から夫々反応ガスが供給される複数の処理領域同士の雰囲気を区画するために、前記テーブルの周方向においてこれらの処理領域の間に設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給し、この分離領域への前記反応ガスの侵入を阻止する工程と、
次いで、前記反応ガス供給手段及び前記分離ガス供給手段と、前記テーブルと、を回転機構により鉛直軸回りに相対的に回転させて、前記複数の処理領域及び前記分離領域に基板を順番に位置させて反応生成物の層を積層して薄膜を成膜する工程と、
前記回転機構による相対的回転を止め、前記成膜装置に気密に接続された真空搬送室から、この真空搬送室内に設けられた搬送手段により成膜装置から前記基板を取り出して、この真空搬送室に気密に接続された熱処理装置内に搬入し、この基板に対して熱処理を行う工程と、を含むことを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成する基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項2に記載の基板処理方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2013−55356(P2013−55356A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−261170(P2012−261170)
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【分割の表示】特願2009−95213(P2009−95213)の分割
【原出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【分割の表示】特願2009−95213(P2009−95213)の分割
【原出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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