説明

基板処理装置

【課題】基板のエッジ領域に導入するエッジガスが基板のセンタ領域に拡散することを抑制する。
【解決手段】 基板のセンタ領域とその周りのエッジ領域に向けてガスを別々に供給するガス導入部を構成する上部電極200を設ける。上部電極はセンタガスのガス孔212を複数設けたセンタガス導入部204と,エッジガスのガス孔214を複数設けたエッジガス導入部206とを備え,エッジガス導入部のガス孔に連通するガス孔232が形成されたガス孔形成板230をエッジガス導入部の下面に取り付けることによって,エッジガス噴出口の垂直位置を調整できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,処理室内に配置された半導体ウエハ,太陽電池用基板,液晶基板などの被処理基板に対して所定のガスを供給して所定の処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の基板処理装置としては,例えば処理室内に半導体ウエハなどの被処理基板(以下,単に「基板」と称する)を載置する載置台を兼ねた下部電極と,基板に向けてガスを噴出するガス導入部であるシャワーヘッドを兼ねた上部電極とを配設した平行平板型のプラズマ処理装置が知られている。プラズマ処理装置は,基板上にシャワーヘッドから所定のガスを供給した状態で両電極間に高周波電力を印加してプラズマを生成することによって,成膜やエッチングなど所定の処理を行うようになっている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置には,基板処理の面内均一性を向上すべく,シャワーヘッド内部を複数のガス室に仕切り,各ガス室ごとにガス供給配管を独立に接続するものが提案されている(例えば下記特許文献1,2)。これによれば,例えばセンタ側のガス孔とエッジ側のガス孔から別々にガスを基板上に噴出させることで,基板面内のガス濃度を局所的に調整して,エッチングの基板処理の面内均一性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-158072号公報
【特許文献2】特開平09-045624号公報
【特許文献3】特開平10-064888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,シャワーヘッドの各ガス孔から噴出されるガスは下方に向かうに連れて徐々に広がって拡散する。このため,上記特許文献1,2のように基板のセンタ側のガス孔とエッジ側のガス孔から別々にガスを噴出させる場合に,エッジ側のガス孔に着目すれば,そのガス孔の噴出口の位置によってはそこから噴出されるガスが基板のセンタ領域まで拡散してしまい,基板のエッジ領域の処理を正確に制御できなくなってしまう虞がある。
【0006】
例えば上記特許文献1,2では,特にこの点は考慮されておらず,センタ側のガス孔もエッジ側のガス孔もほぼ均等に配置されており,その噴出口もフラットな同一平面に形成されている。このため,エッジ側のガス孔から噴出されるガスは,そのガス孔の噴出口と基板との距離が離れているほど基板上での拡散範囲が広がり,基板のセンタ側の処理に及ぼす影響も大きくなってしまう。これではエッジ側の処理の制御性が低下するという問題がある。
【0007】
なお,上記特許文献3では,ガス孔を形成するガス拡散板について,ガス拡散板の加熱効率を高めることを目的とし,中央部の厚みを周縁部よりも薄くしたものが記載されている。これによれば,結果的に周縁部のガス孔の位置が中央よりも下方に配置されることになるので,周縁部のガス孔から噴出されるガスの広がりを抑えられるとも考えられる。
【0008】
ところが,特許文献3は周縁部のガス孔から噴出されるガスの広がりについては着目されていないばかりか,特許文献3はそもそも,ガス拡散板の加熱効率を高めることを主目的としている。
【0009】
このため,ガス拡散板のセンタ部の厚みを薄くしてもセンタ部とエッジ部の全体で質量が一定になるように,周縁部分のガス孔を中央部分のガス孔よりも大きくなるように構成している。これではかえって周縁部のガス孔から噴出されるガスの拡散範囲がより広がってしまい,基板のセンタ側の処理に及ぼす影響も大きくなってしまう。
【0010】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,処理室内にセンタ側のガス孔とエッジ側のガス孔から別々にガスを供給する場合に,エッジ側のガスがセンタ側へ拡散することを抑制できる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,処理室内に配置された基板に対して所定のガスを供給して所定の処理を施す基板処理装置であって,前記基板のセンタ領域とその周りのエッジ領域に向けて同種のガス又は異種のガスを別々に供給するガス導入部を設け,前記ガス導入部は,前記基板のセンタ領域に向けて供給するセンタガスのガス孔を複数設けたセンタガス導入部と,前記センタガス導入部の周りを囲むように設けられ,前記基板のエッジ領域に向けて供給するエッジガスのガス孔を複数設けたエッジガス導入部と,前記エッジガス導入部のガス孔を通って噴出されるエッジガス噴出口の水平位置又は垂直位置を調整するエッジガス噴出位置調整手段と,を備えたことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0012】
このような本発明によれば,エッジガス噴出位置調整手段によってエッジガス噴出口の水平位置又は垂直位置を調整することにより,エッジガスが基板上のセンタ領域に拡散することを抑制できる。これによって,エッジガスによる基板のエッジ領域の制御性を向上させることができる。
【0013】
また,上記エッジガス噴出位置調整手段は,例えば前記エッジガス導入部のガス孔に連通するガス孔が形成されたガス孔形成板を,前記エッジガス導入部の下面に取り付けて構成することによって,前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能とする。これによれば,エッジガス噴出口の垂直位置を調整することにより,エッジガス噴出口と基板との距離を小さくすることができる。これによってエッジガスの拡散範囲を抑制できるので,エッジガスが基板上のセンタ領域に拡散することを抑制できる。
【0014】
この場合,上記ガス孔形成板は,例えば前記エッジガス導入部の下面に着脱自在に取り付け,前記ガス孔形成板の厚みに応じて前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能にする。また,上記ガス孔形成板は,前記エッジガス導入部の下面に昇降自在に取り付け,前記ガス孔形成板を昇降させることによって前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能にしてもよい。
【0015】
また,上記エッジガス噴出位置調整手段は,前記エッジガス導入部に環状に配列したガス孔を,その内側から外側に向けて複数列形成し,これら各列のガス孔を選択して前記エッジガスを供給可能に構成することによって,前記エッジガス噴出口の水平位置を調整可能にしてもよい。これによれば,エッジガスを噴出するガス孔の列を選択することによって,より外側からエッジガスを噴出させることができる。これによってエッジガスが基板上のセンタ領域に拡散することを抑制できるので,エッジガスによる基板のエッジ領域の制御性を向上させることができる。
【0016】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,処理室内の載置台に載置された基板に対して所定のガスを供給して所定の処理を施す基板処理装置であって,前記基板のセンタ領域とその周りのエッジ領域に向けて同種のガス又は異種のガスを別々に供給するガス導入部を設け,前記ガス導入部は,前記基板のセンタ領域に向けて供給するセンタガスのガス孔を複数設けたセンタガス導入部と,前記センタガス導入部の周りを囲むように設けられ,前記基板のエッジ領域に向けて供給するエッジガスのガス孔を複数設けたエッジガス導入部と,前記エッジガス導入部のガス孔を通って噴出されるエッジガス噴出口の垂直位置と水平位置の両方を調整するエッジガス噴出位置調整手段と,を備えたことを特徴とする基板処理装置が提供される。
【0017】
このような本発明によれば,エッジガス噴出位置調整手段によってエッジガス噴出口の水平位置と垂直位置の両方を調整することにより,エッジガスが基板上のセンタ領域に拡散することを抑制できる。これによって,エッジガスによる基板のエッジ領域の制御性を向上させることができる。
【0018】
上記エッジガス噴出位置調整手段は,例えば前記エッジガス導入部に環状に配列したガス孔を,その内側から外側に向けて複数列形成し,これら各列のガス孔を選択して前記エッジガスを供給可能に構成するとともに,これらの前記エッジガス導入部のガス孔にそれぞれ連通するガス孔が形成されたガス孔形成板を,前記エッジガス導入部の下面に取り付けて構成することによって,前記エッジガス噴出口の垂直位置と水平位置の両方を調整可能としてもよい。
【0019】
この場合,上記ガス孔形成板は,例えば前記エッジガス導入部の下面に着脱自在に取り付け,前記ガス孔形成板の厚みに応じて前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能にする。また,上記ガス孔形成板は,前記エッジガス導入部の下面に昇降自在に取り付け,前記ガス孔形成板を昇降させることによって前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能にしてもよい。なお,上記エッジガスのガス孔の径は,前記センタガスのガス孔の径よりも小さくしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば,処理室内にセンタ側のガス孔とエッジ側のガス孔から別々にガスを供給する場合に,エッジガス噴出口の水平位置と垂直位置の一方又は両方を調整することによって,エッジ側のガスがセンタ側へ拡散することを抑制できる。これにより,エッジガスによる基板のエッジ領域の制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】比較例にかかる上部電極の概略構成を説明するための断面図である。
【図3】本実施形態にかかる上部電極の概略構成を説明するための断面図である。
【図4】エッジガス噴出口の垂直位置を変えたときの作用効果を確認した実験結果をグラフに示す図である。
【図5】図4に示すグラフの曲線についてガス拡散程度を示す半値全幅を求めてグラフにした図である。
【図6A】本実施形態において,エッチングガスからなる処理ガスだけ導入したときのエッチングレートを示す図である。
【図6B】本実施形態において,デポジションガスからなる付加ガスだけ導入したときのデポジションレートを示す図である。
【図6C】本実施形態において,図6Aのエッチングガスと,図6Bのデポジションガスの両方を導入したときのエッチングレートを示す図である。
【図7】図3に示す上部電極の変形例を説明するための断面図である。
【図8A】図7に示す上部電極の動作説明図であって,ガス孔形成板が上方にある場合である。
【図8B】図7に示す上部電極の動作説明図であって,ガス孔形成板を下方に移動させた場合である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる基板処理装置の上部電極の概略構成を説明するための断面図である。
【図10A】図9に示す上部電極の動作説明図であって,最も内側のガス孔からエッジガスを噴出した場合である。
【図10B】図9に示す上部電極の動作説明図であって,最も外側のガス孔からエッジガスを噴出した場合である。
【図11】図9に示す上部電極の変形例を説明するための断面図である。
【図12】図9に示す上部電極の他の変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
(第1実施形態)
先ず,本発明の第1実施形態にかかる基板処理装置について図面を参照しながら説明する。ここでは処理室内に上部電極と下部電極(サセプタ)を対向配置して上部電極から処理ガスを処理室内に供給する平行平板型電極構造の容量結合型の基板処理装置を例に挙げて説明する。図1は,本実施形態にかかる基板処理装置100の概略構成を示す断面図である。
【0024】
図1に示すように基板処理装置100は,例えばアルミニウム等の導電性材料からなる略円筒状の処理室102を備える。処理室102は接地されている。処理室102内には,基板例えば半導体ウエハ(以下,単に「ウエハW」とも称する)を載置する載置台110が設けられている。
【0025】
載置台110は,略円柱状に構成され,下部電極として機能するサセプタ116を備える。サセプタ116は,セラミックス等からなる絶縁板112を介して処理室102内の底部に配置された円柱状のサセプタ支持台114上に支持されている。
【0026】
サセプタ116の上面には,ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック120が設けられている。静電チャック120は,導電膜からなる電極122を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んで構成され,電極122には直流電源124が電気的に接続されている。直流電源124から電極122に直流電圧を印加すると,静電チャック120の上面にクーロン力等の静電力が生じ,これによりウエハWが吸着保持される。
【0027】
サセプタ116には上記静電チャック120に載置されたウエハWの周囲を囲むようにフォーカスリング126が配置されている。フォーカスリング126は,導電性部材(例えばシリコン)で構成される。
【0028】
サセプタ支持台114内には,例えば周方向に沿って温調室128が設けられている。温調室128には,外部に設けられた図示しない温調ユニットからの温調媒体(例えば冷却水)が循環供給されるようになっている。この温調媒体の温度によってサセプタ116上のウエハWの温度を調整することができる。
【0029】
また,サセプタ支持台114内には,図示しない伝熱ガス供給部からの伝熱ガス(例えばHeガス)が伝熱ガス供給ライン129を介して静電チャック120の上面とウエハWの裏面との間に供給される。
【0030】
下部電極としてのサセプタ116には,2周波重畳電力を供給する電力供給装置130が接続されている。電力供給装置130は,第1周波数の第1高周波電力(プラズマ生起用高周波電力)を供給する第1高周波電源132,第1周波数よりも低い第2周波数の第2高周波電力(バイアス電圧発生用高周波電力)を供給する第2高周波電源134を備える。第1,第2高周波電源132,134はそれぞれ,第1,第2整合器133,135を介してサセプタ116に電気的に接続される。
【0031】
第1,第2整合器133,135は,それぞれ第1,第2高周波電源132,134の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのものであり,処理室102内にプラズマが生成されているときに第1,第2高周波電源132,134の内部インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0032】
第1高周波電源132は,27MHz以上の周波数(例えば40MHz)の高周波電力を出力する。第2高周波電源134は,13.56MHz以下の周波数(例えば2MHz)の高周波電力を出力する。
【0033】
処理室102内の上部には,下部電極としてのサセプタ116に対向するように平行に上部電極200が配設されている。上部電極200は図1に示すように電気的に接地してもよく,また図示しない可変直流電源を接続して上部電極200に所定の直流(DC)電圧が印加されるようにしてもよい。
【0034】
上部電極200は,ウエハWのセンタ領域とその周りのエッジ領域に向けて同種のガス又は異種のガスを別々に導入可能なガス導入部(シャワーヘッド)としても機能するように構成されている。このような上部電極200は,ウエハWのセンタ領域に向けて供給するセンタガスのガス孔212を複数設けたセンタガス導入部204と,ウエハWのエッジ領域に向けて供給するエッジガスのガス孔214を複数設けた環状のエッジガス導入部206とを備える。
【0035】
本実施形態における上部電極200においては,エッジガス導入部204のガス孔214を通って噴出されるエッジガス噴出口の位置を調整するエッジガス噴出位置調整手段を設けることで,エッジガスのセンタ側への拡散を抑制できるようになっている。例えば図1は,エッジガス噴出位置調整手段として,上記各ガス孔214に連通するガス孔232が形成されたガス孔形成板230を,エッジガス導入部206の下面に取り付けた例である。このようなエッジガス噴出位置調整手段を備えた上部電極200の具体的構成例については,後述する。
【0036】
処理室102の底面には排気口104が形成されており,排気口104に接続された排気装置106によって排気することによって,処理室102内を所定の真空度に維持することができる。処理室102の側壁にはゲートバルブGが設けられている。このゲートバルブGを開くことによって,処理室102内へのウエハWの搬入及び処理室102内からのウエハWの搬出が可能となる。
【0037】
基板処理装置100には,装置全体の動作を制御する制御部150が設けられている。制御部150には,オペレータが基板処理装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや,基板処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなる操作部152が接続されている。
【0038】
さらに,制御部150には,基板処理装置100で実行される各種処理を制御部150の制御にて実現するためのプログラムやプログラムを実行するために必要な処理条件(レシピ)などが記憶された記憶部154が接続されている。
【0039】
記憶部154には,例えば後述する第1,第2処理条件(レシピ)などが記憶されている。このような処理条件については,基板処理装置100の各部を制御する制御パラメータ,設定パラメータなどの複数のパラメータ値をまとめたものである。各処理条件は例えば処理ガスの流量比,処理室内圧力,高周波電力などのパラメータ値を有する。
【0040】
なお,これらのプログラムや処理条件はハードディスクや半導体メモリに記憶されていてもよく,またCD−ROM,DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で記憶部154の所定位置にセットするようになっていてもよい。
【0041】
制御部150は,操作部152からの指示等に基づいて所望のプログラム,処理条件を記憶部154から読み出して各部を制御することで,基板処理装置100での所望の処理を実行する。また,操作部152からの操作により処理条件を編集できるようになっている。
【0042】
(ガス導入部としての上部電極の構成例)
ここで,本実施形態における上部電極200の構成例について説明する。上部電極200は,その周縁部を被覆するシールドリング202を介して処理室102の天井部に取り付けられている。
【0043】
ここでの上部電極200は,載置台110上に載置されたウエハWのセンタ領域とその周りのエッジ領域に向けて同種のガス又は異種のガスを別々に導入可能なガス導入部として構成されている。
【0044】
具体的には,上部電極200は,ウエハWのセンタ領域に向けて供給するセンタガスのガス孔212を複数設けた略円板状のセンタガス導入部204と,このセンタガス導入部204の周りを囲むように設けられ,ウエハWのエッジ領域に向けて供給するエッジガスのガス孔214を複数設けた環状のエッジガス導入部206とを備える。
【0045】
センタガス導入部204とエッジガス導入部206は,一体で構成してもよく,別体で構成してもよい。ここでは,図1に示すようにセンタガス導入部204とエッジガス導入部206を一体で構成した場合を例に挙げて説明する。
【0046】
センタガス導入部204とエッジガス導入部206を一体で構成する場合は,例えば図1に示すようにセンタガス導入部204とエッジガス導入部206に渡って略円板状の電極板210を設け,電極板210を電極支持体220で着脱自在に支持した構成とする。この場合,電極支持体220は例えばアルミニウムなどの金属で構成され,電極板210は例えば石英(SiO),SiC,SiN等のシリコン含有材料で構成される。
【0047】
電極支持体220内には1つの略円板状の空間が設けられ,この空間はセンタガスが供給される略円板状のセンタバッファ室222とエッジガスが供給される環状のエッジバッファ室224とに環状隔壁部材225によって区画される。ガス供給装置300からのセンタガスとエッジガスは各バッファ室222,224に別々に供給されるようになっている。
【0048】
センタガス導入部204には,上記センタガスの各ガス孔212がセンタバッファ室222から電極板210の下面まで突き抜けて設けられている。センタガスの各ガス孔212は,ウエハWのセンタ領域に向けてガスが噴出されるように配置される。
【0049】
エッジガス導入部206には,エッジガスの各ガス孔214がエッジバッファ室224から電極板210の下面まで突き抜けて設けられている。上記エッジガスの各ガス孔214は,ウエハWのエッジ領域に向けてガスが噴出されるように配置される。
【0050】
このような構成によれば,ガス供給装置300から供給されるセンタガスとエッジガスはそれぞれ,センタバッファ室222とエッジバッファ室224に別々に供給されて拡散する。そして,センタガスとエッジガスはそれぞれ各ガス孔212と各ガス孔214を介してウエハWのセンタ領域とエッジ領域に向けて別々に噴出される。本実施形態では,このエッジガスの各ガス孔214の噴出口の位置を調整することができるように構成されている。この点についての詳細は後述する。
【0051】
なお,これらバッファ室222,224は図1に示すように1つの円板状の空間を環状隔壁部材225で区画して形成してもよく,また環状隔壁部材225を設けずに別々の空間で構成してもよい。例えばセンタガス導入部204とエッジガス導入部206とを別体で構成する場合には,それぞれの内部にバッファ室222,224を設けるようにしてもよい。また,図1では,センタガス導入部204の下方に設ける第1電極板と,エッジガス導入部206の下方に設ける第2電極板を一体にして,1枚の電極板210で構成した場合について説明したが,これに限られるものではない。例えばセンタガス導入部204とエッジガス導入部206を別体で構成する場合のみならず,一体で構成する場合においても,センタガス導入部204の下方に設ける第1電極板と,エッジガス導入部206の下方に設ける第2電極板を別体で構成してもよい。
【0052】
(ガス供給装置)
次に,ガス供給装置300について図面を参照しながら説明する。図1は,処理ガス供給部310からの処理ガスをセンタガスとエッジガスの2つに分流し,エッジガスには付加ガスも追加可能に構成した場合の例である。これにより,同種又は異種のガスを上部電極200のセンタガス導入部204とエッジガス導入部206に別々に供給できる。
【0053】
図1に示すガス供給装置300は,ウエハWに対して成膜やエッチングなどの所定の処理を施すための所定の処理ガスを供給する処理ガス供給部310と,所定の付加ガスを供給する付加ガス供給部320とを備える。処理ガス供給部310には処理ガス供給配管302が接続されている。処理ガス供給配管302には,処理ガス供給部310からの処理ガス供給をオンオフする開閉バルブ312が介在している。
【0054】
処理ガス供給配管302は,第1分岐配管304と第2分岐配管306に分岐する。これにより,処理ガス供給配管302を流れる処理ガスは,第1分岐配管304を流れるセンタガスと,第2分岐配管306を流れるエッジガスとに分流される。これら第1,第2分岐配管304,306はそれぞれ,上部電極200のセンタバッファ室222とエッジバッファ室224に接続される。
【0055】
第2分岐配管306の途中には,上記付加ガス供給部320からの付加ガスを供給する付加ガス供給配管308が接続されている。付加ガス供給配管308には,付加ガス供給部320からの付加ガス供給をオンオフする開閉バルブ322が介在している。
【0056】
なお,第1,第2分岐配管304,306の分岐部位には,図示しない分流量調整器(フロースプリッタ)を設け,第1,第2分岐配管304,306内の圧力に基づいてこれらの分流量を調整するようにしてもよい。
【0057】
上記処理ガス供給部310は,1つのガス供給源を備えていてもよく,また複数のガス供給源を備えていてもよい。1つのガス供給源を備える場合は,そのガス供給源の配管をそのまま上記処理ガス供給配管302に接続する。また,複数のガス供給源を備える場合は各ガス供給源の配管をこれらのガスが合流するように上記処理ガス供給配管302に接続する。各ガス供給源の配管にはそれぞれ,ガス供給をオンオフする開閉バルブとガス流量を調整するマスフローコントローラを設ける。
【0058】
このような処理ガス供給部310によれば,1つ又は複数のガス供給源からのガスは所定の流量又は流量比で処理ガスとして処理ガス供給配管302に流出する。なお,処理ガス供給部310のガス供給源としては,例えばエッチングガスとしてのフロロカーボン系のフッ素化合物,CF,C,C,CなどのCガスが挙げられる。また,処理ガス供給部310のガス供給源にはCF系の反応生成物のデポをコントロールするガスとしての例えばOガス,キャリアガスとしての希ガス(例えばArガス)などが含まれていてもよい。
【0059】
付加ガス供給部320は上記処理ガス供給部310のガス供給源とは独立した1つ又は複数のガス供給源を備える。1つのガス供給源を備える場合は,そのガス供給源の配管をそのまま上記付加ガス供給配管308に接続する。また,複数のガス供給源を備える場合は各ガス供給源の配管をこれらのガスが合流するように上記付加ガス供給配管308に接続する。各ガス供給源の配管にはそれぞれ,ガス供給をオンオフする開閉バルブとガス流量を調整するマスフローコントローラを設ける。
【0060】
このような付加ガス供給部320によれば,1つ又は複数のガス供給源からのガスは所定の流量又は流量比で付加ガス供給配管308に流出し,第2分岐配管306へ供給される。なお,付加ガス供給部320のガス供給源は,処理ガス供給部310と同じ種類のガスであってもよく,異なる種類のガスであってもよい。
【0061】
このようなガス供給装置300によれば,処理ガス供給部310からの処理ガスは,第1分岐配管304と第2分岐配管306によりセンタガスとエッジガスに分流される。このとき,分流量調整(例えばフロースプリッタ)が設けられていれば,それによって分流量が調整される。
【0062】
そして,第1分岐配管304に分流された処理ガスはセンタガスとしてセンタバッファ室222に導入され,第2分岐配管306に分流された処理ガスはエッジガスとしてエッジバッファ室224に導入される。
【0063】
このとき,付加ガス供給部320から付加ガスが供給されている場合には,その付加ガスは付加ガス供給配管308を通って第2分岐配管306で処理ガスと混合する。混合されたガスはエッジガスとしてエッジバッファ室224に導入される。
【0064】
こうして,センタバッファ室222に導入れたセンタガスは各ガス孔212を介してウエハWのセンタ領域に向けて噴出され,エッジバッファ室224に導入されたエッジガスは各ガス孔214を介してウエハWのエッジ領域に向けて別々に噴出される。これにより,ウエハWのエッジ領域の処理をセンタ領域に対して局所的に制御することができる。
【0065】
ところで,上記各ガス孔212,214を通って処理室102内に噴出されたガスは,下方に向かうに連れて広がって拡散するので,エッジガスに着目するとその噴出口の位置によってはそこから噴出されたエッジガスがウエハWのセンタ領域まで拡散してしまい,ウエハWのエッジ領域を局所的に制御することができなくなってしまう虞がある。
【0066】
そこで,本実施形態では,エッジガス噴出位置調整手段を設けてエッジガス噴出口の位置を調整することによって,エッジガスの広がり具合を抑制してウエハWのセンタ領域への拡散を抑制している。このようなエッジガス噴出位置調整手段としては,エッジガス噴出口の垂直位置を調整する場合と,水平位置を調整する場合がある。
【0067】
図1の上部電極200では,エッジガス噴出口の垂直位置を調整するエッジガス噴出位置調整手段の1例を示したものである。具体的には図1に示す上部電極200は,エッジガス導入部206の各ガス孔214に連通するガス孔232が形成されたガス孔形成板230を,エッジガス導入部206の下面に取り付けて構成したものである。ガス孔形成板230は,センタガス導入部204のガスを塞がないように例えば図1に示すような環状の板部材によって構成する。
【0068】
これによれば,ガス孔形成板230の厚みを調整することによって,その厚みに応じた分だけエッジガス噴出口を下方にずらすことができる。これにより,エッジガスがウエハWに届くまでの距離を短くできるので,ウエハW上でセンタ領域まで拡散することを抑制できる。
【0069】
(エッジガスの噴出口位置と拡散状態の関係)
以下,本実施形態におけるエッジガス噴出口位置とエッジガス拡散状態の関係について,図2に示す比較例と比較しながら詳細に説明する。図2は比較例にかかる上部電極を説明するための図であって,ガス孔形成板230を設けていない場合である。図3は本実施形態にかかる上部電極を説明するための図であって,ガス孔形成板230を設けた場合である。図3は図2に対応する図であって,図1に示す上部電極と下部電極の構成を概略して示したものである。
【0070】
図2に示す比較例にかかる上部電極200はガス孔形成板230を設けていないので,センタガス噴出口(ガス孔212の出口)とエッジガス噴出口(ガス孔214の出口)はともに電極板210のフラットな下面,すなわち同一平面上に形成される。このため,エッジガス噴出口がセンタガス噴出口に近いほど,エッジガスはウエハWに届くまでの間に広がるので,センタ領域側への拡散も大きくなってしまう。
【0071】
この点,図3に示す本実施形態にかかる上部電極200では,ガス孔214に連通するガス孔232を形成したガス孔形成板230を設けることによって,エッジガス噴出口はガス孔232の出口になるので,ガス孔形成板230の下面に移動することになる。これによれば,ガス孔形成板230の厚みの分だけエッジガス噴出口の垂直位置をセンタガス噴出口よりも下側に配置させることができる。これにより,エッジガス噴出口とウエハWとの距離dを短くできるので,エッジガスを広がり過ぎないうちにウエハWに到達させることができる。こうして,エッジガスの広がりを抑えることができるので,エッジガスがウエハWのセンタ領域へ拡散することを抑制できる。
【0072】
図3に示す上部電極200は,ガス孔形成板230をエッジガス導入部206の下面(ここでは電極板210の下面)にボルトやネジなどの締結部材によって着脱自在に設けている。これによれば,厚みの異なるガス孔形成板230に交換することで,ガス孔形成板230の厚みに応じた分だけエッジガス噴出口の垂直位置を調整できる。
【0073】
なお,図3ではガス孔形成板230のガス孔232を電極板210のガス孔214と同径にし,ガス孔232の中心が電極板210のガス孔214の中心と一致するように配置した場合について説明したが,これに限られるものではない。ガス孔形成板230のガス孔232の径は,電極板210のガス孔214の径よりも小さくするようにしてもよい。これによれば,エッジガスの噴出速度が上がるので,その分エッジガスの広がりを抑えることができる。これによって,エッジガスの拡散抑制効果をより高めることができる。
【0074】
次に,エッジガス噴出口の垂直位置を変えたときの作用効果を確認した実験結果について図4,図5を参照しながら説明する。ここでは,エッジガス噴出口とウエハWとの距離を変えてウエハWに形成された酸化膜のエッチングを行うことで,そのエッチングレートの変化によってエッジガス噴出口からのガスの拡散状態の変化を検出する実験を行った。
【0075】
この実験では,センタガスの影響を取り除くことでエッチングガスのみによる実験結果を得るため,センタガス噴出口とエッジガス噴出口がともに同一平面上に形成された図2に示す上部電極200を用いた。すなわち,先ず図2に示す電極板210の下面(噴出口の位置)とウエハWとの距離(GAP)を50mm,40mm,30mm,22mmとした場合にそれぞれ,エッジガス噴出口のみからエッチングガスを噴出した場合の酸化膜のエッチングレートAと,センタガス噴出口とエッジガス噴出口の両方から同じ流量(分流比1:1)でエッチングガスを噴出した場合の酸化膜のエッチングレートBとを検出した。
【0076】
そして,各GAP(50mm,40mm,30mm,22mm)についてそれぞれ,上記エッチングレートB(センタガスとエッジガスの両方)から,上記エッチングレートA(センタガスのみ)を引き算することによって,エッジガス噴出口のみから噴出されたガスの拡散状態を示す酸化膜のエッチングレートCを求めた。
【0077】
こうして求められた酸化膜のエッチングレートCを所定の拡散方程式によって曲線近似してグラフにしたものを図4に示す。ここでは,直径300mmのウエハWを用いて,ウエハWの中心をゼロとしたときのウエハWの−150mmと+150mmの位置の直上にエッジガス噴出口が配置された場合を想定して曲線近似を行った。このときの拡散方程式を下記数式(1)に示す。
【0078】
下記数式(1)において,f(x)は下記数式(2)に示すようにウエハWの−150mm位置直上のエッジガス噴出口から噴出されるガスの拡散状態を曲線近似したものであり,g(x)は下記数式(3)に示すようにウエハWの+150mm位置直上のエッジガス噴出口から噴出されるガスの拡散状態を曲線近似したものである。なお,数式(2),(3)におけるa,bは定数である。
【0079】
y=f(x)+g(x) ・・・(1)
【0080】
f(x)=a×exp(−(x+150)/b) ・・・(2)
【0081】
g(x)=a×exp(−(x−150)/b) ・・・(3)
【0082】
さらに図4の各GAPによる変化をより分かり易くするため,各GAPのエッチングレートの曲線について半値全幅(FWHM:full width at half maximum)を求めてグラフにしたものを図5に示す。図5は,上記エッジガス噴出口の一方から噴出されるガスの拡散状態を拡散方程式によって曲線近似したもの(例えばf(x))を用いて,その近似曲線のピーク高さ(H)の1/2の高さの幅(半値全幅)を求めてプロットしたものである。従って,図5では半値全幅が小さいほど,拡散が抑えられていることになる。
【0083】
図4に示す実験結果によれば,エッジガス噴出口とウエハWとの距離(GAP)が50mm,40mm,30mm,22mmと小さくなるほど,センタ側のエッチングレートが減少していることが分かる。図5においても,エッジガス噴出口とウエハWとの距離(GAP)が小さくなるほど,半値全幅が小さくなっていることが分かる。これによって,エッジガス噴出口とウエハWとの距離(GAP)が小さくなるほど,ウエハW上において,センタ側への拡散が抑えられることを確認することができた。
【0084】
このように,本実施形態では,図1,図3に示すようにエッジガス導入部206の下面にガス孔形成板230を設けてエッジガス噴出口の垂直位置を調整することにより,エッジガスがウエハW上でセンタ側に拡散することを抑制できる。これによって,ウエハWのエッジ領域の処理をセンタ領域に対して局所的に制御するときの制御性を向上させることができる。
【0085】
例えば処理ガスとして堆積性の低いエッチングガスを処理ガス供給部310から供給してウエハW上の被エッチング膜をエッチングする際に,図6Aに示すようにセンタ側よりもエッジ側のエッチングレートが高くなる傾向がある場合には,付加ガス供給部320から付加ガスとして堆積性の高いデポジションガスをエッジ側に供給する。
【0086】
このとき,ガス孔形成板230によってエッジガス噴出口の垂直位置をより下方に配置させることによって,エッジガス噴出口とウエハWとの距離を狭くしてセンタ側への拡散を抑えることができる。従って,例えば図6Bに示すようなセンタ側に対してエッジ側のデポジションレートが局部的に高くなる制御を制御性よく行うことができる。これによって,図6Cに示すようにエッジ側とセンタ側のエッチングレートをほぼ同様にできるので,面内均一性を向上させることができる。
【0087】
(第1実施形態の変形例)
次に,上記第1実施形態の変形例について図面を参照しながら説明する。図7は,本実施形態の変形例にかかる上部電極200の構成を示す断面図である。図1,図3では,エッジガス噴出位置調整手段として,エッジガス導入部206の下面にガス孔形成板230を着脱自在に取り付ける場合について説明したが,ここではそのガス孔形成板230を昇降自在に取り付けた場合を例に挙げる。
【0088】
図7に示す上部電極200では,センタガス導入部204の下面の電極板210をセンタガス導入部204とほぼ同じ大きさに形成し,ガス孔形成板230をエッジガス導入部206の下面(電極支持体220の下面)に昇降自在に取り付けたものである。
【0089】
ガス孔形成板230はエッジガス導入部206の下面にベローズ244によって支持されている。ベローズ244は同心状の小径ベローズ244aと大径ベローズ244bとにより構成される。小径ベローズ244aと大径ベローズ244bの上端は,電極支持体220の下面に取り付けられ,下端はガス孔形成板230の上面に取り付けられている。これにより,ガス孔形成板230の上側のベローズ244の内部空間(小径ベローズ244aと大径ベローズ244bとの間)をその外部空間から区画できる。
【0090】
上記ベローズ244の内部空間には,ガス孔形成板230の各ガス孔232をそれぞれ,これらに対応するエッジガス導入部206のガス孔214に連通する可撓可能なフレキシブル管246が設けられている。これにより,エッジガスはフレキシブル管246に導かれてガス孔形成板230の各ガス孔232から噴出される。
【0091】
ガス孔形成板230には,これを昇降させる昇降駆動部が設けられている。昇降駆動部としては例えば図7に示すように昇降自在なロッド242を備えるモータ240によって構成する。この場合,モータ240は電極支持体220に取り付けられ,ロッド242はそのモータ240から電極支持体220を通って下方に突き出してベローズ244内に配置される。ガス孔形成板230はこのロッド242の先端に取り付けられる。なお,昇降駆動部は図7に示すものに限られるものではなく,例えばエアシリンダであってもよい。
【0092】
なお,図7に示すようにガス孔形成板230を電極支持体220の下面に設ける場合は,電極支持体220の下側をエッジガス導入部206に相当する部分だけ削って,ベローズ244が縮んだときに,ベローズ244やフレキシブル管246が収容されるスペースを設けるようにしてもよい。
【0093】
また,図7ではガス孔形成板230のガス孔232をエッジガス導入部206のガス孔214に連通する配管としてフレキシブル管246を用いた場合を例に挙げたが,これに限られるものではなく,ガス孔形成板230の昇降によってベローズ244が伸縮する際に可撓可能なものであればどのような配管を用いてもよい。
【0094】
このように構成された図7に示す上部電極200の動作について図面を参照しながら説明する。図8A,図8Bはその動作説明図である。図8Aはガス孔形成板230が上方にある場合である。この位置では,エッジガス噴出口がセンタガス噴出口と同じ平面上にあるので,エッジガスはセンタガスと同様に広がってウエハWに到達する。
【0095】
図8Aに示す位置から制御部150によってモータ240を駆動させてガス孔形成板230を下方に移動させると,図8Bに示すようにエッジガス噴出口を下方に移動させることができる。これにより,エッジガスはセンタガスの広がりを抑えてウエハWに到達させることができるので,エッジガスがウエハW上でセンタ側に拡散することを抑制できる。
【0096】
このように,図7に示す上部電極200によればモータ240によってガス孔形成板230を自由に昇降させることができる。これにより,エッジガス噴出口の垂直位置を任意の位置に調整できる。
【0097】
なお,ここでのガス孔形成板230は,センタガス導入部204の電極板210と同じ材質(例えば石英(SiO),SiC,SiN等のシリコン含有材料)で構成してもよく,異なる材質(例えばアルミナ,イットリウムなど)で構成してもよい。また,エッジガス導入部206の電極板として機能させてもよい。この場合は,ガス孔形成板230をセンタガス導入部204の電極板210と同じ材質で構成することが好ましい。
【0098】
(第2実施形態)
次に,本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。ここでは,エッジガス噴出口の水平位置を調整可能に構成したエッジガス噴出位置調整手段の例を挙げる。図9は,第2実施形態にかかる基板処理装置の上部電極の構成を説明するための断面図である。
【0099】
ここでのエッジガス噴出位置調整手段は,エッジガス導入部206に環状に配列したガス孔を,その内側から外側に向けて複数列形成し,これら各列のガス孔を選択してエッジガスを供給可能に構成したものである。これにより,エッジガス噴出口の水平位置を調整して,より外側の噴出口からガスを噴出できるようになる。
【0100】
図9に示す上部電極200は,エッジガス導入部206にその内側から外側に向けて3列のガス孔214a,214b,214cを形成した場合を例示したものである。各列のガス孔214a,214b,214cはそれぞれ環状に配列している。なお,エッジガス導入部206に形成するガス孔の列数は図9に示すような3列に限られず,2列でもよく,4列以上でもよい。
【0101】
ガス孔214a,214b,214cは,それぞれの列に対応するエッジバッファ室224a,224b,224cに連通される。エッジバッファ室224a,224b,224cはそれぞれ,センタバッファ室222の周りに区画して設けられている。各エッジバッファ室224a,224b,224cにはそれぞれ別々にエッジガスが供給されるようになっているとともに,エッジガスを選択して供給できるようになっている。
【0102】
具体的には例えば図9に示すように第2分岐配管306をさらに3つに分岐し,その3つの分岐配管306a,306b,306cをそれぞれエッジバッファ室224a,224b,224cに接続して構成される。さらに,これら分岐配管306a,306b,306cにはそれぞれ開閉バルブ307a,307b,307cが設けられており,これら開閉バルブ307a,307b,307cを開閉することによって,エッジガスを供給するエッジバッファ室224a,224b,224cを選択できるようになっている。
【0103】
なお,これらエッジバッファ室224a,224b,224cは図9に示すように1つの円板状の空間を環状隔壁部材225a,225b,225cで分けることによって形成してもよく,また別々の空間で構成してもよい。
【0104】
このように構成された図9に示す上部電極200の動作について図面を参照しながら説明する。図10A,図10Bは図9に示す上部電極の動作を示す断面図である。図10Aは最も内側のエッジガスのガス孔214aからガスを噴出した場合であり,図10Bは最も外側のエッジガスのガス孔214cからガスを噴出した場合である。
【0105】
図10Aに示すようにエッジガスのガス孔214aからガスを噴出する場合には,制御部150によって開閉バルブ307b,307cを閉じて開閉バルブ307aを開く。これにより,第2分岐配管306からのガスは,分岐配管306aを介してエッジバッファ室224aに供給されて拡散し,ガス孔214aから噴出される。
【0106】
図10Bに示すようにエッジガスのガス孔214cからガスを噴出する場合には,制御部150によって開閉バルブ307a,307bを閉じて開閉バルブ307cを開く。これにより,第2分岐配管306からのガスは,分岐配管306cを介してエッジバッファ室224cに供給されて拡散し,ガス孔214cから噴出される。なお,図示はしないが,エッジガスのガス孔214bからガスを噴出する場合には,制御部150によって開閉バルブ307a,307cを閉じて開閉バルブ307bを開けばよい。
【0107】
このように,図9に示す上部電極200によれば,制御部150によって開閉バルブ307a,307b,307cを開閉制御して,エッジバッファ室224a,224b,224cのうちエッジガスを供給するものを選択することができる。これによって,各列のガス孔214a,214b,214cを選択してエッジガスを噴出させることができる。
【0108】
こうして,エッジガス噴出口の水平位置を調整することができるので,ウエハW上でセンタ側に拡散することを抑制できる。この場合,より外側のガス孔からエッジガスを噴出させることによって,センタ側への拡散をより抑えることができる。これにより,ウエハWのエッジ領域の処理をセンタ領域に対して局所的に制御するときの制御性を向上させることができる。
【0109】
なお,上記第1実施形態ではエッジガス噴出口の垂直位置のみを調整できるように構成したエッジガス噴出位置調整手段を例に挙げ,上記第2実施形態ではエッジガス噴出口の水平位置のみを調整できるようにしたエッジガス噴出位置調整手段を例に挙げて説明したが,これに限られるものではなく,図11や図12に示すようにガス噴出位置調整手段をエッジガス噴出口の垂直位置と水平位置の両方を調整できるように構成してもよい。
【0110】
図11に示す上部電極200は,エッジガス噴出口の水平位置を調整可能とした図9に示すエッジガス導入部206に,エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能とした図3に示すガス孔形成板230を適用したものである。
【0111】
具体的には図11に示すように,エッジガス導入部206のガス孔214a,214b,214cにそれぞれ対応するガス孔232a,232b,232cをガス孔形成板230に形成する。そして,これらガス孔232a,232b,232cがガス孔214a,214b,214cに連通するようにエッジガス導入部206の下面(電極板210の下面)にガス孔形成板230を取り付ける。このような図11に示す上部電極200によれば,エッジガス噴出口の水平位置のみならず,ガス孔形成板230の厚みに応じて垂直位置も調整できる。
【0112】
図12に示す上部電極200は,エッジガス噴出口の水平位置を調整可能とした図9に示すエッジガス導入部206に,エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能とした図7に示すガス孔形成板230を適用したものである。
【0113】
具体的には図12に示すように,エッジガス導入部206のガス孔214a,214b,214cにそれぞれ対応するガス孔232a,232b,232cをガス孔形成板230に形成する。そして,センタガス導入部204の下面の電極板210をセンタガス導入部204とほぼ同じ大きさに形成し,ガス孔形成板230をエッジガス導入部206の下面(電極支持体220の下面)にベローズ244を介して昇降自在に取り付ける。ベローズ244及びガス孔形成板230の昇降駆動部の構成は図7に示すものと同様である。
【0114】
上記ベローズ244の内部空間には,ガス孔形成板230の各ガス孔232a,232b,232cをそれぞれ,これらに対応するエッジガス導入部206のガス孔214a,214b,214cに連通する可撓可能なフレキシブル管246a,246b,246cが設けられている。これにより,エッジガスはフレキシブル管246a,246b,246cに導かれてガス孔形成板230の各ガス孔232a,232b,232cのいずれかから噴出される。このような図12に示す上部電極200によれば,エッジガス噴出口の水平位置のみならず,ガス孔形成板230を昇降することによって垂直位置も調整できる。
【0115】
なお,上記各実施形態では,エッジガス噴出口を構成するエッジガスのガス孔と,センタガス噴出口を構成するセンタガスのガス孔の径はともに同径になるように構成した場合について説明したが,これに限られるものではない。例えばエッジガスのガス孔の径はセンタガスのガス孔の径よりも小さくなるように構成してもよい。これによれば,エッジガスの拡散範囲を,センタガスの拡散範囲よりも狭くすることができるので,上記各実施形態においてエッジガスがウエハWのセンタ領域に拡散することを抑制する効果を高めることができる。これによって,ウエハWのエッジ領域の処理の制御性をより向上させることができる。
【0116】
また,上記各実施形態では,上記エッジガスのガス孔と上記センタガスのガス孔を垂直に形成した場合を例に挙げて説明したが,これに限られるものではなく,エッジガスのガス孔だけ外側に傾斜して形成するようにしてもよい。これによれば,エッジガスをより外側に向けて噴出させることができるので,上記各実施形態においてエッジガスがウエハWのセンタ領域に拡散することを抑制する効果を高めることができる。これによって,ウエハWのエッジ領域の処理の制御性をより向上させることができる。
【0117】
また,上記各実施形態では,ガス供給装置300を処理ガス供給部310からの処理ガスを分流してセンタガス導入部204とエッジガス導入部206に供給するように構成した場合について説明したが,処理ガスを分流せずに独立してセンタガス導入部204とエッジガス導入部206に供給するように構成してもよい。この場合,例えば処理ガス供給部310を2つ設けて,これらから処理ガスを独立してセンタガス導入部204とエッジガス導入部206に別々に供給するようにしてもよい。
【0118】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0119】
例えば上記実施形態では基板処理装置として,下部電極のみに異なる2周波の高周波電力を重畳して印加してプラズマを生起させるタイプのプラズマ処理装置を例に挙げて説明したが,これに限られるものではない。例えば下部電極のみに1種類の周波数の高周波電力を印加してプラズマを生起させるタイプや異なる2周波の高周波を上部電極と下部電極に別々に印加するタイプのプラズマ処理装置に適用してもよい。
【0120】
また,このような平行平板の容量結合型プラズマ処理装置に限られるものではなく,例えば誘導結合型(ICP:Inductively Coupled Plasma)プラズマ処理装置などにも適用可能である。
【0121】
その他,本発明はプラズマ処理装置だけでなく,スパッタ装置,熱処理装置,成膜装置など,基板のセンタ側とエッジ側に別々にガスを供給する構成を備えた様々な種類の基板処理装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は,処理室内の基板に対して所定のガスを供給して所定の処理を施す基板処理装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0123】
100 基板処理装置
102 処理室
104 排気口
106 排気装置
110 載置台
112 絶縁板
114 サセプタ支持台
116 サセプタ
120 静電チャック
122 電極
124 直流電源
126 フォーカスリング
128 温調室
129 伝熱ガス供給ライン
130 電力供給装置
132 第1高周波電源
134 第2高周波電源
133 第1整合器
134 第2整合器
150 制御部
152 操作部
154 記憶部
200 上部電極
202 シールドリング
204 センタガス導入部
206 エッジガス導入部
210 電極板
212 ガス孔
214 ガス孔
214a,214b,214c ガス孔
220 電極支持体
222 センタバッファ室
224 エッジバッファ室
224a,224b,224c エッジバッファ室
225 環状隔壁部材
225a,225b,225c 環状隔壁部材
230 ガス孔形成板
232 ガス孔
232a,232b,232c ガス孔
240 モータ
242 ロッド
244 ベローズ
244a 小径ベローズ
244b 大径ベローズ
246 フレキシブル管
246a,246b,246c フレキシブル管
300 ガス供給装置
302 処理ガス供給配管
304 第1分岐配管
306 第2分岐配管
306a,306b,306c 分岐配管
307a,307b,307c 開閉バルブ
308 付加ガス供給配管
310 処理ガス供給部
312 開閉バルブ
320 付加ガス供給部
322 開閉バルブ
G ゲートバルブ
W ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に配置された基板に対して所定のガスを供給して所定の処理を施す基板処理装置であって,
前記基板のセンタ領域とその周りのエッジ領域に向けて同種のガス又は異種のガスを別々に供給するガス導入部を設け,
前記ガス導入部は,
前記基板のセンタ領域に向けて供給するセンタガスのガス孔を複数設けたセンタガス導入部と,
前記センタガス導入部の周りを囲むように設けられ,前記基板のエッジ領域に向けて供給するエッジガスのガス孔を複数設けたエッジガス導入部と,
前記エッジガス導入部のガス孔を通って噴出されるエッジガス噴出口の水平位置又は垂直位置を調整するエッジガス噴出位置調整手段と,
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記エッジガス噴出位置調整手段は,
前記エッジガス導入部のガス孔に連通するガス孔が形成されたガス孔形成板を,前記エッジガス導入部の下面に取り付けて構成することによって,前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能としたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ガス孔形成板は,前記エッジガス導入部の下面に着脱自在に取り付け,前記ガス孔形成板の厚みに応じて前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能にしたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記ガス孔形成板は,前記エッジガス導入部の下面に昇降自在に取り付け,前記ガス孔形成板を昇降させることによって前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能にしたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記エッジガス噴出位置調整手段は,
前記エッジガス導入部に環状に配列したガス孔を,その内側から外側に向けて複数列形成し,これら各列のガス孔を選択して前記エッジガスを供給可能に構成することによって,前記エッジガス噴出口の水平位置を調整可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
処理室内の載置台に載置された基板に対して所定のガスを供給して所定の処理を施す基板処理装置であって,
前記基板のセンタ領域とその周りのエッジ領域に向けて同種のガス又は異種のガスを別々に供給するガス導入部を設け,
前記ガス導入部は,
前記基板のセンタ領域に向けて供給するセンタガスのガス孔を複数設けたセンタガス導入部と,
前記センタガス導入部の周りを囲むように設けられ,前記基板のエッジ領域に向けて供給するエッジガスのガス孔を複数設けたエッジガス導入部と,
前記エッジガス導入部のガス孔を通って噴出されるエッジガス噴出口の垂直位置と水平位置の両方を調整するエッジガス噴出位置調整手段と,
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
前記エッジガス噴出位置調整手段は,
前記エッジガス導入部に環状に配列したガス孔を,その内側から外側に向けて複数列形成し,これら各列のガス孔を選択して前記エッジガスを供給可能に構成するとともに,
これらの前記エッジガス導入部のガス孔にそれぞれ連通するガス孔が形成されたガス孔形成板を,前記エッジガス導入部の下面に取り付けて構成することによって,
前記エッジガス噴出口の垂直位置と水平位置の両方を調整可能としたことを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記ガス孔形成板は,前記エッジガス導入部の下面に着脱自在に取り付け,前記ガス孔形成板の厚みに応じて前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能にしたことを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記ガス孔形成板は,前記エッジガス導入部の下面に昇降自在に取り付け,前記ガス孔形成板を昇降させることによって前記エッジガス噴出口の垂直位置を調整可能にしたことを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記エッジガスのガス孔の径は,前記センタガスのガス孔の径よりも小さくしたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の基板処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−21050(P2013−21050A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151650(P2011−151650)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】