説明

基板搬送トレイ

【課題】 数枚の基板を載置できる基板搬送トレイであって、CVD成膜装置内で用いた場合に異常放電が発生しにくい基板搬送トレイを提供する。
【解決手段】基板搬送トレイ1は、複数の凹部11がその一方面12に形成され、凹部に基板Sが載置されて搬送される基板搬送トレイであって、基板搬送トレイの一方面に絶縁膜21が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板搬送トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数枚の基板を同時に処理するために、一つの大型トレイに複数枚の基板を載置して、複数枚の基板を同時に処理するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、ドライエッチング法で一括して複数枚の太陽電池用基板の表面を粗面にするために複数枚の太陽電池用基板を載置するトレイを用いている。
【0003】
また、このような基板を載置する基板トレイとしては、高い搬送性を得るために、例えばカーボン材料を用いたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−249667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなカーボン材料を用いた基板トレイは、上述のように搬送性が良く、かつ、耐熱性も高いのでCVD法(化学気相成長法)により成膜する場合に用いられる。しかしながら、CVD法によりハイレート(例えば3nm/秒以上)で成膜する場合にカーボン材料からなる基板トレイを用いると異常放電が発生しやすいという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決することにあり、複数枚の基板を載置できる基板搬送トレイであって、CVD成膜装置内で用いた場合に異常放電が発生しにくい基板搬送トレイを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板搬送トレイは、複数の凹部が一方面に形成され、該凹部に基板が載置されて搬送される基板搬送トレイであって、前記基板搬送トレイの前記一方面に絶縁膜が形成されていることを特徴とする。基板トレイの一方面に絶縁膜が形成されていることで、異常放電を抑制することが可能である。
【0008】
本発明の好ましい実施形態としては、前記基板搬送トレイは、カーボンからなり、前記絶縁膜が、アルミナからなることが挙げられる。
【0009】
前記基板搬送トレイの側面に亘って前記絶縁膜が延設されていることが好ましい。側面にも絶縁層が設けられていることで、より異常放電を抑制することが可能である。
【0010】
前記絶縁膜の厚みが、180〜230μmであることが好ましい。この範囲であることで、絶縁性を確保すると共に、膜のひび割れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の基板搬送トレイによれば、数枚の基板を載置でき、かつCVD成膜装置内で用いた場合に異常放電が発生しにくいという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】基板搬送トレイの概略斜視図である。
【図2】基板搬送トレイの概略断面図及びその一部拡大図である。
【図3】CVD成膜装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の基板トレイについて、図1、2を用いて説明する。
【0014】
基板トレイ1は、例えばCVD成膜装置において基板を保持した状態で搬送するために用いられるものである。基板トレイ1は、カーボンからなり、搬送性が良く、かつ、耐熱性が高い。なお、基板トレイ1の表面には、表面のカーボンが飛散しないようにグラッシー処理が施されていてもよい。
【0015】
基板トレイ1では、複数の基板Sが載置できるよう、基板トレイ1の一方面12側に複数の凹部11が設けられている。凹部11は、本実施形態では、7×7のマトリクス状に配置されて形成されている。また、凹部11は、本実施形態では上面視において矩形状である。
【0016】
この凹部11には、それぞれ基板Sが載置されている。基板Sが載置された状態で、基板トレイ1が搬送されることで、複数の基板Sを一括して搬送することが可能である。
【0017】
また、基板トレイ1の一方面12側には、図2に示すように、基板トレイ1の一方面12を覆う絶縁膜21が形成されている。即ち、絶縁膜21は、基板トレイ1の一方面12と、凹部11の内面とに亘って形成されている。
【0018】
このように基板トレイ1の一方面12を覆う絶縁膜21が形成されていることで、基板トレイ1をCVD装置に搬送して基板Sに成膜を行った場合に異常放電が発生しにくい。
【0019】
即ち、基板トレイ1の強度を保持するためにカーボン等の導電性材料を用いて基板トレイ1を構成すると、CVD法により特にハイレートで成膜していると異常放電が発生しやすい。そこで、本実施形態では、プラズマに曝される基板トレイ1の一方面12(即ち基板Sの被処理面側)に絶縁膜21を形成し、これにより異常放電を抑制している。
【0020】
このような絶縁膜21としては、絶縁性を有するものであればよい。このような材料としては、金属酸化物、例えばアルミナ、イットリアからなる。これらの材料を用いることで、簡易に、かつ製造コストを抑制して絶縁膜21を形成することができる。
【0021】
なお、基板トレイ1を全て絶縁材料で形成することも考えられるが、全て絶縁材料で構成する場合には、カーボンを用いた場合と同様の強度を保持することができない場合も考えられる。また、CVD法においては基板Sを高温加熱(例えば400℃)するので、この温度により変形しないことが必要であるが、この温度に耐えられる絶縁材料で基板トレイ1を形成すると製造コストが高くなるという問題がある。従って、本実施形態のように、強度及び熱耐性の高いカーボンからなる基板トレイ1に絶縁膜21を形成することが好ましい。
【0022】
また、本実施形態では、絶縁膜21は、さらに基板トレイ1の側壁部13にも延設されている。このように延設されることで、基板トレイ1のプラズマに曝される部分が全て絶縁膜で覆われているために、より異常放電を抑制することができる。
【0023】
絶縁膜21の厚みは、180〜230μmであることが好ましい。この範囲であることで、加熱により絶縁膜21が延びることもなく、かつ絶縁性を保持することができると同時に、膜のひび割れを抑制することができる。
【0024】
絶縁膜21の形成方法としては、溶射法や、CVD法、スパッタ法などの公知の成膜方法を用いて形成することが可能である。本実施形態では、絶縁膜21として、簡易にかつ製造コストを抑制できることから、溶射によりアルミナ膜を形成している。
【0025】
かかる基板搬送トレイが搬送される処理装置としては、例えば、図3に示すようなものが挙げられる。
【0026】
図3に示す処理装置は、CVD装置である。CVD装置3のチャンバ31には、搬送されてきた基板トレイ1が載置される載置台32が設けられている。載置台32は、ヒーターが内蔵されており、基板トレイ1を加熱することで基板Sを加熱することが可能である。なお、図示しないがCVD装置3には基板トレイ1を搬送する搬送手段が設けられて、基板トレイ1を搬送することが可能である。
【0027】
搬送手段としては、ローラーや、いわゆるスライド機構を設けたものが挙げられる。スライド機構は、例えば、プーリを駆動することでスライダを駆動して基板を搬送するものである。具体的には、下段のスライダの上にその上段の直線レールを固定するようにして構成された複数段のリニアガイドを備えており、複数段のリニアガイドには、2段目より上段の直線レールの前進側および後退側に、それぞれプーリが設けられている。これらのプーリには、駆動テープが巻き掛けられている。駆動テープは、プーリが設けられた直線レール上を摺動する上段のスライダに固定されている。そして、上段のスライダを該プーリにより駆動することで基板を搬送するように構成されている。
【0028】
チャンバ31には、成膜ガス導入手段33に接続されるシャワープレート34が載置台32に対向して設けられている。成膜ガス導入手段33からの成膜ガスはシャワープレート34を介してチャンバ31内に導入される。
【0029】
また、シャワープレート34は、RF電極を兼ねている。即ち、このシャワープレート34にはRF電源35が設けられており、シャワープレート34に電圧を印加できるように構成されている。これによりシャワープレート34を介して導入した成膜ガスをプラズマ化することが可能である。
【0030】
このようにプラズマを形成するCVD装置3では、形成したプラズマにより異常放電が生じることがあるが、本実施形態では、載置台32に載置される基板トレイ1は、プラズマに曝される面に絶縁膜21(図2参照)が形成されていることから、異常放電を抑制することができ、安定して成膜を行うことができる。
【0031】
また、本実施形態の基板トレイ(0.989×0.989m)を設置したCVD装置3により成膜を行った。基板トレイ1の絶縁膜21は、溶射により形成された厚み200μmのアルミナ膜であった。成膜は、20秒間であり、膜厚180nmのSiN膜を形成したが、異常放電はゼロであり、安定して成膜を行うことができた。
【0032】
基板トレイ1の絶縁膜21を、厚みが180μmである溶射により形成されたアルミナ膜に変更して同様にSiN膜を形成したところ、異常放電はゼロであった。
【0033】
また、基板トレイ1の絶縁膜21を、厚みが230μmである溶射により形成されたアルミナ膜に変更して同様にSiN膜を形成したところ、異常放電はゼロであった。
【0034】
基板トレイ1の絶縁膜21を、厚みが200μmである溶射により形成されたイットリア膜に変更して同様にSiN膜を形成したところ、異常放電はゼロであった。
【0035】
さらに、絶縁膜を形成しなかった基板トレイを用いて同一条件で成膜を行ったところ、異常放電が発生した。
【0036】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、基板の載置数や、凹部の形状については、基板の大きさ、基板の形状に応じて設定される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の基板搬送トレイは、異常放電を抑制することができる。従って、半導体製造分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 基板トレイ
11 凹部
21 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹部が一方面に形成され、該凹部に基板が載置されて搬送される基板搬送トレイであって、
前記基板搬送トレイの前記一方面に絶縁膜が形成されていることを特徴とする基板搬送トレイ。
【請求項2】
前記基板搬送トレイは、カーボンからなり、前記絶縁膜が、アルミナからなることを特徴とする請求項1記載の基板搬送トレイ。
【請求項3】
前記基板搬送トレイの側面に亘って前記絶縁膜が延設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の基板搬送トレイ。
【請求項4】
前記絶縁膜の厚みが、180〜230μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板搬送トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−109409(P2012−109409A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257255(P2010−257255)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】