基板洗浄装置および基板洗浄方法
【課題】間隙空間内を流通する洗浄液の流速にかかわらず、洗浄液に超音波振動を十分に付与して基板表面を良好に洗浄することができる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供する。
【解決手段】基板表面Wfに対向して近接部材21の下面211が離間配置される。そして、基板表面Wfと下面211とで挟まれた間隙空間SPに洗浄液が供給されるとともに、近接部材21を介して洗浄液に超音波振動が付与される。また、近接部材21が基板表面Wfに沿って移動するが、基板Wに対する近接部材21の相対移動に応じてノズル31からの洗浄液の吐出流量が変更されて間隙空間SPを流通する洗浄液の流速が変化する。間隙空間SPへの洗浄液の供給は近接部材21の側面212に向けてノズル31から洗浄液を吐出することで側面212から間隙空間SPに洗浄液を回り込ませることで行われる。
【解決手段】基板表面Wfに対向して近接部材21の下面211が離間配置される。そして、基板表面Wfと下面211とで挟まれた間隙空間SPに洗浄液が供給されるとともに、近接部材21を介して洗浄液に超音波振動が付与される。また、近接部材21が基板表面Wfに沿って移動するが、基板Wに対する近接部材21の相対移動に応じてノズル31からの洗浄液の吐出流量が変更されて間隙空間SPを流通する洗浄液の流速が変化する。間隙空間SPへの洗浄液の供給は近接部材21の側面212に向けてノズル31から洗浄液を吐出することで側面212から間隙空間SPに洗浄液を回り込ませることで行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等に超音波振動が付与された洗浄液を用いて該基板に対して洗浄処理を施す基板洗浄装置および基板洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程では、基板の表面に成膜やエッチングなどの処理を繰り返し施して微細パターンを形成していく工程が含まれる。ここで、微細加工を良好に行うためには基板表面を清浄な状態に保つ必要があり、必要に応じて基板表面に対して洗浄処理が行われる。そこで、従来より、基板上に付着したパーティクルを除去するために、基板に洗浄液を供給するとともに該洗浄液に超音波振動を付与することが行われている。これにより、洗浄液が有する超音波振動エネルギーによって、基板上からパーティクルが効果的に離脱して除去される。
【0003】
例えば特許文献1に記載された装置では、所定の回転軸回りに回転駆動される基板に対向して超音波洗浄機構が配置されている。超音波洗浄機構は、基板表面と対向するように設けられた基板対向面を有する超音波洗浄ヘッドを備えている。超音波洗浄ヘッドは基板の上方で基板表面に沿って所定の角度範囲で回動(揺動)可能となっている。また、超音波洗浄ヘッドは洗浄液を供給するノズルを有し、このノズルから基板対向面と基板表面との間(間隙空間)に向けて洗浄液を供給するとともに該洗浄液に超音波振動を付与する。また、この状態で回転駆動される基板に対して超音波洗浄ヘッドが回動することで基板表面に対して超音波振動を用いた洗浄が行われる。
【0004】
また、特許文献2に記載された装置では、基板表面に物理的な力を作用させる処理機構がアームに取り付けられている。そして、基板を回転させながらアームを基板上の所定の範囲内で複数回走査させることにより、基板表面に付着する付着物を除去している。この処理機構は超音波振動を乗せた液体を噴射するノズルを有している。そして、このノズルより噴射される液体の流量が基板の中心部付近よりも端縁部において大きくなるように流量調整が行われている。これにより、基板の中心部付近と端縁部において均一な洗浄効果が得られる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−87725号公報(図2)
【特許文献2】特開平11−244796号公報(第6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載の装置では、基板が回転している関係上、超音波洗浄ヘッドに対する相対速度は基板の中心側においては遅く、端縁側に向かうにつれて速くなる。そのため、超音波洗浄ヘッドが基板の端縁側に位置するほど、単位面積当たりの洗浄時間が短くなる。その結果、超音波洗浄ヘッドに対する相対速度が速くなる基板の端縁側の領域ほど十分に洗浄を行うことができなくなってしまう。つまり、基板の回転中心から離れ基板の端縁側に位置する領域ほど、パーティクルの除去率が低下していく。
【0007】
そこで、特許文献2記載のように、基板表面上で移動される処理機構の相対移動に応じてノズルから吐出する洗浄液の流量を変化させることが考えられる。具体的には、特許文献1記載の装置において、ノズルから間隙空間に向けて供給される洗浄液の流量を基板の中心部よりも基板の端縁部において増加させることが考えられる。これによって、基板の端縁部における洗浄効果を高め、基板の中心部と端縁部とにおいて均一な洗浄効果を得ることが期待される。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、ノズルから間隙空間に向けて直接に洗浄液を供給している。このため、ノズルからの洗浄液の流量を変化させると、次のような問題が発生することがあった。すなわち、ノズルからの洗浄液の流量を大きくすると、間隙空間内を流通する洗浄液の流速が高められる。その結果、間隙空間に供給された洗浄液が基板表面上に薄く広がってしまい、間隙空間を洗浄液で満たすことが困難となってしまう。このため、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込み、間隙空間内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができなくなる場合があった。つまり、特許文献1記載の装置では、間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させると、かえって洗浄液に超音波振動を十分に付与することができなくなり、基板表面を良好に洗浄することができなかった。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、間隙空間内を流通する洗浄液の流速にかかわらず、洗浄液に超音波振動を十分に付与して基板表面を良好に洗浄することができる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、超音波振動が付与された洗浄液を用いて基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄装置であって、上記目的を達成するため、基板表面に対向する対向面を有し、該対向面を基板表面から離間配置させながら基板表面に沿って基板に対して相対移動自在に設けられた近接部材と、近接部材を基板表面に沿って基板に対して相対移動させる駆動手段と、基板表面と近接部材の対向面とで挟まれた間隙空間に洗浄液を供給するとともに、基板に対する近接部材の相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させる洗浄液供給機構と、近接部材を介して洗浄液に超音波振動を付与する超音波付与手段とを備え、洗浄液供給機構は、近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて洗浄液を吐出することで洗浄液を非対向面から間隙空間に回り込ませて間隙空間に洗浄液を供給することを特徴としている。
【0011】
また、この発明は、超音波振動が付与された洗浄液を用いて基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄方法であって、上記目的を達成するため、基板表面に対向する対向面を有し、基板表面に沿って基板に対して相対移動自在な近接部材を基板表面から離間配置する配置工程と、近接部材を基板表面に沿って基板に対して相対移動させる移動工程と、基板表面と近接部材の対向面とで挟まれた間隙空間に洗浄液を供給するとともに、近接部材の相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させる洗浄液供給工程と、近接部材を介して洗浄液に超音波振動を付与する超音波付与工程と、洗浄液供給工程では、近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて洗浄液を吐出することで洗浄液を非対向面から間隙空間に回り込ませて間隙空間に洗浄液を供給することを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明(基板洗浄装置および基板洗浄方法)によれば、近接部材の対向面が基板表面から離間配置されることで、該対向面と基板表面との間に間隙空間が形成される。そして、間隙空間に洗浄液を供給するとともに、近接部材を介して洗浄液に超音波振動が付与される。また、この状態で近接部材が基板表面に沿って基板に対して相対移動する。このとき、基板に対する相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させている。このため、基板表面の各領域に対して適切な洗浄を行うことができ、基板表面を高品質に洗浄することができる。ここで、何の工夫もなさずに、単純に間隙空間内を流通する洗浄液の流速を増大させると、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したような問題が発生することがあった。すなわち、間隙空間に向けて直接に洗浄液を供給した場合には、間隙空間内を流通する洗浄液の流速が高められると、間隙空間を洗浄液で満たすことが困難となってしまう。その結果、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込み、洗浄液に超音波振動を十分に付与することができなくなる場合があった。これに対し、この発明によれば、近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて洗浄液を吐出することで該洗浄液を間隙空間に回り込ませている。つまり、吐出された洗浄液を非対向面からの回り込みによって間隙空間に間接的に供給している。このため、間隙空間内を流通する洗浄液の流速を低く設定した場合はもちろんのこと、増大させたとしても、間隙空間を洗浄液で満たし、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込むのを防止することができる。これにより、間隙空間内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができる。したがって、間隙空間内を流通する洗浄液の流速にかかわらず、洗浄液に超音波振動を十分に付与して基板表面を良好に洗浄することができる。
【0013】
ここで、基板を所定の回転軸回りに回転させる回転手段をさらに設け、近接部材が回転軸から基板の径方向に離れるにしたがって間隙空間を流通する洗浄液の流速を高めるように構成してもよい。この場合、基板の中心部と端縁部とで洗浄処理の進行度合が相違する。より具体的には、基板の中心部に対する洗浄処理は比較的進行するのに対し、端縁部では中心部での処理進行度に比べて遅れる。そこで、近接部材が回転軸から基板の径方向に離れるにしたがって間隙空間を流通する洗浄液の流速を高めている。これにより、基板の端縁部に対する洗浄処理を促進させることができる。その結果、基板表面に対する洗浄処理の面内均一性を高めることができる。
【0014】
また、基板に対して近接部材を相対移動させるための構成の一例としては、近接部材を駆動して基板の回転中心位置と基板の端縁位置とを通る移動軌跡上で移動させる構成を採用することができる。この構成によれば、基板の回転と近接部材の移動により基板表面の全面を効率良く洗浄することができる。
【0015】
また、洗浄液供給機構から吐出される洗浄液の流量を制御する制御手段をさらに設け、制御手段が基板に対する近接部材の相対移動に応じて洗浄液の流量を制御して間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させるように構成してもよい。この場合、洗浄液供給機構は近接部材の非対向面に向けて洗浄液を吐出する第1ノズルと、第1ノズルに洗浄液を供給可能な複数の第1供給管とを有し、複数の第1供給管の各々には第1ノズルに対する洗浄液の供給/供給停止を切換える切換え弁が介装され、制御手段は、基板に対する近接部材の相対移動に応じて各切換え弁を切換えることで、第1ノズルから吐出させる洗浄液の流量を制御するように構成してもよい。また、洗浄液供給機構は近接部材の非対向面に向けて洗浄液を吐出する第2ノズルと、第2ノズルに洗浄液を供給可能な第2供給管とを有し、第2供給管には該第2供給管を流通する洗浄液の流量を連続的に制御可能な流量制御部が介装され、制御手段は基板に対する近接部材の相対移動に応じて流量制御部を制御することで、第2ノズルから吐出させる洗浄液の流量を制御するように構成してもよい。この構成によれば、近接部材の相対移動に応じてノズル(第2ノズル)からの洗浄液の吐出流量をきめ細かく調整できるので、基板表面の各領域に対して最適な洗浄を行うことができる。
【0016】
また、洗浄液供給機構は近接部材の非対向面に向けて洗浄液を吐出可能であって、洗浄液の吐出流速が互いに異なる複数の第3ノズルを有し、複数の第3ノズルの各々から洗浄液を吐出させるとともに、駆動手段は近接部材を各第3ノズルから吐出される洗浄液と交差するように移動させ、近接部材に対して各第3ノズルからの洗浄液が順次供給されることで近接部材の移動に応じて間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させるように構成してもよい。この構成によれば、洗浄処理中に各ノズル(第3ノズル)からの洗浄液の吐出流量を制御する必要がない。
【0017】
さらに、近接部材については、親水性材料で形成するのが望ましく、このように構成することで非対向面に供給された洗浄液を効率的に間隙空間に回り込ませることができる。ここで、このような構成を採用するためには、例えば近接部材を石英で形成してもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて洗浄液を吐出することで間隙空間に洗浄液を回り込ませている。このため、近接部材の相対移動に応じて間隙空間内を流通する洗浄液の流速が変化しても、間隙空間を洗浄液で満たし、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込むのを防止することができる。このため、間隙空間内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができる。したがって、間隙空間内を流通する洗浄液の流速にかかわらず、洗浄液に超音波振動を十分に付与して基板表面を良好に洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板洗浄装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板洗浄装置の主要な制御構成を示すブロック図である。また、図3は図1の基板洗浄装置の要部を示す図である。この基板洗浄装置は、半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着したパーティクルなどの汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板洗浄装置である。より具体的には、デバイスパターンが形成された基板表面Wfに対して洗浄液としてDIW(deionized water:脱イオン水)などのリンス液を供給するとともに、該洗浄液に超音波振動を付与して基板Wを洗浄する装置である。
【0020】
この基板洗浄装置は、基板Wをその表面Wfを上方に向けた状態で水平姿勢に保持して回転させる基板回転機構1と、基板回転機構1に保持された基板Wの表面Wfを超音波振動を用いて洗浄するための超音波洗浄ユニット2と、超音波洗浄ユニット2(後述の近接部材)に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給機構3とを備えている。
【0021】
基板回転機構1は、回転支軸11がモータを含む回転駆動源12の回転軸に連結されており、回転駆動源12の駆動により回転軸R回りに回転可能となっている。回転支軸11の上端部には円盤状の真空チャック13が設けられており、基板Wの裏面Wbの略中央部が真空チャック13により吸引保持される。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4(本発明の「制御手段」に相当)からの動作指令に応じて回転駆動源12を作動させることにより、基板Wを吸引保持しつつ、真空チャック13が回転軸R回りに回転する。このように、この実施形態では、回転駆動源12が本発明の「回転手段」として機能する。
【0022】
超音波洗浄ユニット2は、石英製の近接部材21と、近接部材21の上面に貼り付けられ、超音波発信器22からのパルスを受けて近接部材21を超音波振動させる振動子23とを備えている。この近接部材21は水平断面形状が四角形となっている直方体であり、その下面211が基板表面Wfと対向する対向面となっている。そして、近接部材21が基板表面Wfに対向して離間配置されると、下面211と基板表面Wfとが所定の間隔を隔てて平行に対向する。また、図3に示すように、側面212(本発明の「非対向面」に相当)が洗浄液供給機構3から供給される洗浄液の入射面となっており、下面211に対して垂直に立ち上がっている。
【0023】
また、超音波洗浄ユニット2は、振動子23の上面に取り付けられ近接部材21および振動子23をその一方端で保持する揺動アーム24と、この揺動アーム24をアーム軸25を中心として所定の角度範囲で回動(揺動)させるモータ等の揺動駆動源26と、揺動アーム24を鉛直方向に昇降させるモータ等の昇降駆動源27とを備えている。
【0024】
揺動アーム24と揺動駆動源26との間には、揺動駆動源26からの回転駆動力を揺動アーム24に伝達する揺動伝達機構26tが設けられている。例えば、この揺動伝達機構26tは、揺動駆動源26としてのモータの出力軸とアーム軸25のそれぞれに取り付けられた1組のプーリと、この1組のプーリ間に掛け渡されたベルトとからなるベルト&プーリ機構などである。これにより、揺動駆動源26としてのモータの出力軸を回動させれば、アーム軸25が回動し、揺動アーム24が回動する。
【0025】
また、揺動アーム24と昇降駆動源27との間には、昇降駆動源27からの回転駆動力を上下方向の駆動力に変換して揺動アーム24に伝達する昇降伝達機構27tが設けられている。例えば、この昇降伝達機構27tは、昇降駆動源27としてのモータの出力軸に対して回転可能に接続されたボールネジ軸と、揺動アーム24から揺動駆動源26に至るまでの構造物を直線移動可能に保持し、ボールネジ軸に螺合する移動子とからなるボールネジ機構等が設けられている。これにより、昇降駆動源27としてのモータの出力軸を回動させれば、ボールネジ軸が回転して移動子が上下移動し、揺動アーム24から揺動駆動源26に至るまでの構造物が昇降する。
【0026】
これらの構成により、近接部材21を揺動駆動源26によって駆動することで、下面211を基板表面Wfに対向させながら移動軌跡T、つまり基板Wの回転中心位置Pcと基板Wの端縁位置Peとを通る軌跡上を往復移動させることができる。したがって、制御ユニット4が基板Wを回転させながら近接部材21を移動軌跡Tに沿って移動させることで、基板表面Wfの全面に対して近接部材21を走査させることができる。ここで、基板Wの回転中心位置Pcは基板表面Wfの上方で、かつ基板Wの中心A0(基板表面Wfと回転軸Rとが交差する点)上に設定されている。このように、この実施形態では、揺動駆動源26が本発明の「駆動手段」として機能する。
【0027】
また、近接部材21を昇降駆動源27によって駆動することで、鉛直方向に昇降させることができる。これにより、基板表面Wfと下面211とのギャップGを所望の間隔に設定することができる。すなわち、ギャップGを一定の間隔に保ったまま近接部材21を基板表面Wfに沿って移動させることができる。ギャップGは、基板表面Wfと下面211とで挟まれた間隙空間SP(図3)に洗浄液が十分に満たされる間隔であればよく、5mm以下、好ましくは0.5〜1mm程度に設定される。
【0028】
洗浄液供給機構3は、近接部材21の側面212に向けて洗浄液を吐出するノズル31(本発明の「第1ノズル」に相当)と、その一方端がノズル31に接続されノズル31に対して洗浄液を供給可能な管32とを有している。また、管32の他方端は流量制御ユニット33に接続されている。流量制御ユニット33は洗浄液供給源に接続され、洗浄液供給源からノズル31に向けて送り込まれる洗浄液の流量を制御することが可能となっている。このため、制御ユニット4からの動作指令に応じて流量制御ユニット33が制御されることで、ノズル31からの洗浄液の吐出流量がコントロールされる。
【0029】
ノズル31と揺動アーム24とは連結されており、揺動アーム24の揺動とともにノズル31が近接部材21と一体的に移動(揺動)可能となっている。すなわち、管32はフレキシブルに形成されており、ノズル31と近接部材21とが一定の離間距離を保ったまま移動するのを可能にしている。このため、近接部材21の移動にかかわらず、近接部材21(側面212)に向けて洗浄液を安定して供給することができる。もちろん、近接部材21とノズル31とを個別に移動させるように構成してもよいが、その場合には2つの駆動機構が必要となる。これに対し、本実施形態によれば、単一の駆動源によって近接部材21とノズル31とが駆動されるため、駆動構成を簡素化することができる。
【0030】
また、ノズル31は近接部材21の移動方向(揺動方向)に略直交する方向に洗浄液を吐出するように揺動アーム24の伸びる方向に取り付けられている。つまり、洗浄液の吐出方向と近接部材21の移動方向(揺動方向)とは略直交関係にある。このため、近接部材21が移動軌跡T上を往復移動しても、近接部材21の移動方向に対して洗浄液の吐出方向が変化することがない。したがって、近接部材21の往復移動にかかわらず、近接部材21に向けて洗浄液を安定して供給することができる。
【0031】
なお、ノズル31から吐出された洗浄液は、図3に示すように近接部材21の側面212に供給され該側面212に沿って流下する。そして、側面212に供給された洗浄液の一部が側面212から間隙空間SPに回り込み、間隙空間SPに供給される。つまり、ノズル31から吐出された洗浄液は、側面212からの回り込みによって間隙空間SPに間接的に供給される。これにより、間隙空間SPが洗浄液で満たされる。また、間隙空間SPに供給された洗浄液は間隙空間SP内を所定の流速で流通し、間隙空間SPから排出される。
【0032】
側面212に対するノズル31から吐出された洗浄液の入射方向は近接部材21の移動にかかわらず、一定であり側面212から間隙空間SPに安定して洗浄液を回り込ませることができる。また、側面212に対してはノズル31からの洗浄液が斜め上方から入射される。このため、側面212に入射した洗浄液は側面212に沿って速やかに流れ、間隙空間SPに回り込む。また、この実施形態では、洗浄液が入射する側面212は、近接部材21への洗浄液の供給の観点から、近接部材21の回動中心(アーム軸25の中心)から最も離れた面となっている。
【0033】
ここで、ノズル31から近接部材21に供給された洗浄液に対して、近接部材21を介して振動子23からの超音波振動が付与される。すなわち、超音波発信器22からのパルスを受けて振動子23が振動することによって近接部材21に超音波振動が伝播している。このため、近接部材21に接液する洗浄液に対して、近接部材21から超音波振動が付与される。その結果、超音波振動が付与された洗浄液により基板表面Wfに対して洗浄処理が施される。このように、この実施形態では、振動子23が本発明の「超音波付与手段」として機能する。
【0034】
また、この実施形態では、制御ユニット4からの動作指令に応じて流量制御ユニット33が制御されることで、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させることが可能となっている。すなわち、流量制御ユニット33の流量制御によりノズル31からの洗浄液の吐出流量が制御される。これに伴って側面212から間隙空間SPに回り込んで間隙空間SP内を流通する洗浄液の流量が変更される。これにより、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速が変化する。制御ユニット4は、後述するようにして基板Wに対する近接部材21の相対移動に応じて流量制御ユニット33を制御することで間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させる。
【0035】
図4は流量制御ユニットの構成の一例を示す図である。流量制御ユニット33は、ノズル31に洗浄液を供給可能な複数(この実施形態では2つ)の分岐管51,52(本発明の「第1供給管」に相当)を有している。2つの分岐管51,52はそれぞれ、その一方端が管32に接続される一方、その他方端側から所定流量(それぞれQa,Qb)の洗浄液の供給を受けることが可能となっている。また、2つの分岐管51,52の各々には、ノズル31に対する洗浄液の供給/供給停止を切換える切換え弁51a,52aが介装されている。
【0036】
各切換え弁51a,52aは制御ユニット4からの動作指令に応じて独立に切換え制御される。例えば、切換え弁52aを閉じた状態で切換え弁51aを開けると、ノズル31から流量Q1(=Qa)で洗浄液が吐出される。また、両方の切換え弁51a,52aを開けると、ノズル31から流量Q2(=Qa+Qb)で洗浄液が吐出される。このように、制御ユニット4は切換え弁51a,52aを切換え制御することで、ノズル31からの洗浄液の吐出流量を段階的(2段階)に変更することができる。これにより、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を段階的に変化させることができる。
【0037】
次に、上記のように構成された基板洗浄装置の動作について図5ないし図7を参照しつつ説明する。図5は図1の基板洗浄装置の洗浄範囲を示す図である。また、図6は間隙空間内を流通する洗浄液の流速の変化を模式的に示す図である。また、図7は図1の基板洗浄装置により実行される洗浄特性を示す図である。この基板洗浄装置では、図示を省略する搬送手段により真空チャック13上に未処理の基板Wが搬送されて真空チャック13に保持される。そして、搬送手段が基板洗浄装置から退避した後、制御ユニット4が装置各部を制御して洗浄処理を実行する。
【0038】
先ず、基板Wの回転を開始させる。続いて、揺動駆動源26の駆動により揺動アーム24が回動して近接部材21が基板Wの端縁位置Peに移動される。これにより、下面211が基板表面Wfと対向しながら近接部材21が基板表面Wfから離間配置される(配置工程)。また、ノズル31から洗浄液が近接部材21(側面212)に向けて吐出される。ここでは、両方の切換え弁51a,52aを開けることにより、比較的大流量の流量Q2で洗浄液がノズル31から吐出される。側面212に供給された洗浄液はその一部が間隙空間SPに回り込み、間隙空間SP内を所定の流速V2で流通する(洗浄液供給工程)。このように、比較的大流量の流量Q2でノズル31から洗浄液が吐出されると、比較的高速(V2)で洗浄液が間隙空間SP内を流通する。この実施形態では、側面212から間隙空間SPに洗浄液を回り込ませることによって間隙空間SPに洗浄液を供給している。したがって、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速が比較的に高い場合であっても、洗浄液が基板表面Wfに薄く広がってしまうのを防止することができる。このため、間隙空間SPを洗浄液で満たし、間隙空間SPに気体(空気)が大量に入り込むのを防止することができる。
【0039】
また、近接部材21に供給された洗浄液に対して近接部材21から超音波振動が付与され、基板表面Wfに対して超音波振動を用いた洗浄処理が実行される(超音波付与工程)。間隙空間SPは洗浄液で満たされていることから、間隙空間SP内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができる。
【0040】
そして、このように超音波振動が付与された洗浄液により回転駆動される基板Wの表面Wfを洗浄しながら、移動軌跡Tに沿って近接部材21(およびノズル31)を基板Wの回転中心位置Pcに向けて移動させる(移動工程)。この実施形態では、揺動アーム24の回動により近接部材21が基板Wの端縁部Ws上から基板Wの中心部Wc上に移る際に、ノズル31から吐出される洗浄液の流量を変更している。すなわち、近接部材21が端縁部Wsと中心部Wcとの境界上の位置(境界位置Pb)に移動すると、切換え弁51aを開けた状態で切換え弁52aを閉じる。これにより、ノズル31からの洗浄液の吐出流量がQ2からQ2よりも小さいQ1に設定される。その結果、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速がV2から比較的低速のV1に変化する。このように、端縁部Wsと中心部Wcとの間で間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させるのは次のような理由による。
【0041】
揺動アーム24の揺動速度は一定であるため、基板Wの中心側においては近接部材21に対する相対速度が遅く、端縁側に向かうにつれて速くなる。そのため、相対速度の遅い中心部Wcでは単位面積当たりの洗浄時間が長くなり、中心部Wcでの洗浄処理が端縁部Wsよりも進行する。すなわち、例えば図7の曲線C2(流量Q2で洗浄処理を実行した場合の洗浄特性)に示すように、基板Wからのパーティクルの除去率は基板Wの中心側で高く、端縁側に向かうにしたがって低下している。したがって、曲線C2の洗浄特性で洗浄処理する場合には、中心部Wcでの洗浄効果が高くなり、許容ダメージレベルL(同図の1点鎖線のレベル)を超えてしまう。逆に、図6の曲線C1(流量Q1で洗浄処理を実行した場合の洗浄特性)では、相対速度の速い端縁部Wsでは除去率が低くなりすぎて十分に洗浄を行うことができない。
【0042】
そこで、この実施形態では、中心部Wcに対しては間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を比較的低速のV1に設定する一方、端縁部Wsに対しては間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を比較的高速のV2に設定している(図7の実線で示す洗浄特性)。これにより、中央部Wcと端縁部Wsとに対して各処理領域に応じた洗浄特性で洗浄処理を実行することができ、基板表面Wfにおける面内の洗浄特性が均一化される。その結果、許容ダメージレベルの範囲内で、均一かつ良好な除去率で基板全面を洗浄することができる。
【0043】
こうして、境界位置Pbを近接部材21が通過するごとにノズル31から吐出される洗浄液の流量が切換えられながら、端縁位置Peと回転中心位置Pcとの間を近接部材21が往復移動する。この実施形態では、このような近接部材21の往復移動動作が複数回(例えば2回)繰り返される。
【0044】
上記のようにして基板表面Wfに対する洗浄処理が完了すると、切換え弁51a,52aを閉じてノズル31への洗浄液の供給を停止する。また、基板Wの回転速度を増大させて基板W上に残っている洗浄液に遠心力を作用させて基板Wから洗浄液を除去し、乾燥させる(スピン乾燥)。そして、一連の処理が完了すると、搬送手段により処理済みの基板Wを基板洗浄装置から搬出する。
【0045】
以上のように、この実施形態では、近接部材21を基板表面Wfから離間配置して基板表面Wfと近接部材21との間に間隙空間SPを形成している。そして、間隙空間SPに洗浄液を供給するとともに、近接部材21を介して洗浄液に超音波振動が付与している。また、この状態で基板Wを回転させながら近接部材21を移動軌跡Tに沿って移動させている。このとき、基板Wに対する近接部材21の相対移動に応じて間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させているので、基板表面Wfの各領域に対して適切な洗浄を行うことができ、基板表面Wfの全面を高品質に洗浄することができる。すなわち、中心部Wcに対しては間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を比較的低速のV1に設定する一方、端縁部Wsに対しては間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を比較的高速のV2に設定しているので、基板表面Wfに対する洗浄処理の面内均一性を高めることができる。
【0046】
ここで、近接部材21の下面211(対向面)と異なる側面212(非対向面)に向けて洗浄液を吐出することで該洗浄液を間隙空間SPに回り込ませている。このため、次のような作用効果が得られる。すなわち、間隙空間SPに向けて直接に洗浄液を供給する場合には、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速が高められると、間隙空間SPに供給された洗浄液が基板表面Wf上に薄く広がってしまい、間隙空間SPを洗浄液で満たすことが困難となってしまう。その結果、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込み、間隙空間内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができなくなる場合があった。これに対し、この実施形態によれば、近接部材21の側面212に向けて洗浄液を吐出して間隙空間SPに洗浄液を回り込ませている。つまり側面212からの回り込みにより間隙空間SPに間接的に洗浄液を供給している。このため、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させたとしても、間隙空間SPを洗浄液で満たし、間隙空間SPに気体(空気)が大量に入り込むのを防止することができる。これにより、間隙空間SP内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができる。したがって、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速にかかわらず、洗浄液に超音波振動を十分に付与して基板表面Wfを良好に洗浄することができる。
【0047】
さらに、この実施形態では、近接部材21を石英で形成しているため、洗浄液に対して親水性を有する。このため、側面212(非対向面)に供給された洗浄液を効率的に間隙空間SPに回り込ませることができる。その結果、間隙空間SPに高効率に洗浄液を供給することができ、超音波振動が十分に付与された洗浄液を用いて基板表面Wfを洗浄することが可能となっている。
【0048】
<第2実施形態>
図8はこの発明にかかる基板洗浄装置の第2実施形態を示す図である。また、図9は図8の基板洗浄装置の要部を示す図である。この第2実施形態にかかる基板洗浄装置が第1実施形態と大きく相違する点は、近接部材の形状が異なっている点である。なお、その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同様であるため、ここでは同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
この実施形態では、超音波洗浄ユニット2Aは、棒状の近接部材21Aと、近接部材21Aの基端部(後端部)に取付けられ、超音波発信器22からのパルスを受けて近接部材21Aを超音波振動させる振動子23Aとを備えている。この近接部材21Aは水平断面形状が楕円形となっており、棒状の近接部材21Aの一端(先端)が斜めに切断されて傾斜面221が形成されている。そして、近接部材21Aが基板表面Wfに対向しながら離間配置されると、傾斜面221と基板表面Wfとが所定の間隔(ギャップG)を隔てて平行に対向する。近接部材21Aの水平断面は、基端部(後端部)から先端に形成された傾斜面221にかけてラッパ状に広がるように構成されている。したがって、振動子23Aからの超音波振動は傾斜面221に向けて近接部材21Aの内部にて均一に分散しながら伝播する。このように、この実施形態では、傾斜面221が本発明の「対向面」として機能する。
【0050】
また、棒状の近接部材21Aの周囲を取り囲む側面222(本発明の「非対向面」に相当)がノズル31から吐出される洗浄液の入射面となっている。側面(入射面)222は滑らかな曲面により形成されている。このため、ノズル31から側面222に供給された洗浄液は飛散することなく、スムーズに基板表面Wfと傾斜面221とで挟まれた間隙空間SPに回り込む。このため、近接部材21Aに供給された洗浄液を効率良く間隙空間SPに供給することが可能となっている。したがって、間隙空間SPに気体(空気)が大量に入り込むのを効果的に防止して、間隙空間SP内の洗浄液に超音波振動を確実に付与することができる。
【0051】
また、この実施形態によれば、近接部材21Aの先端に形成された傾斜面221は棒状の部材を切断する角度によって傾斜面221の大きさが異なる。このため、近接部材21Aの切断角度によって傾斜面221、つまり超音波照射面の大きさを自在に変更することができる。
【0052】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、基板Wを回転させながら近接部材を移動軌跡T上で移動(揺動)させることで近接部材を基板Wに対して相対移動させているが、近接部材を基板Wに対して相対移動させるための構成はこれに限定されない。例えば近接部材を固定配置した状態で基板Wを所定の方向に移動させながら洗浄処理を実行してもよい。また、近接部材および基板Wの双方を移動させながら洗浄処理を実行してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、切換え弁51a,52aを切換え制御することで間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を2段階に変化させているが、3段階以上に変化させるようにしてもよい。この場合、ノズル31に洗浄液を供給可能であり、切換え弁を介装した分岐管(第1供給管)をさらに増設すればよい。これにより、例えば、回転駆動される基板Wの回転軸Rからの径方向における距離に応じて間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を3段階以上に変化させることで基板表面Wfに対する洗浄処理の面内均一性をさらに高めることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、切換え弁の切換え制御により間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させているが、洗浄液の流速制御方式はこれに限定されない。例えば、基板洗浄装置に装備される洗浄液供給機構として図10または図11に示す構成のものを採用することができる。
【0055】
図10は洗浄液供給機構の他の構成を示す図である。洗浄液供給機構3Aは、近接部材の非対向面に向けて洗浄液を吐出するノズル31A(本発明の「第2ノズル」に相当)と、ノズル31Aに洗浄液を供給可能な供給管55(本発明の「第2供給管」に相当)と有している。すなわち、供給管55の一方端がノズル31Aに接続される一方、供給管55の他方端が洗浄液供給源に接続されている。また、供給管55には、該供給管55を流通する洗浄液の流量を連続的に制御可能なMFC(マスフローコントローラ)56などの流量制御部が介装されている。そして、制御ユニット4は、基板表面Wfに対する近接部材の相対移動に応じて流量制御部を制御することでノズル31Aから吐出させる洗浄液の流量を制御する。この構成によれば、近接部材の相対移動に応じてノズル31Aからの洗浄液の吐出流量をきめ細かく調整できるので、基板表面Wfの各領域に対して最適な洗浄を行うことができる。
【0056】
図11は洗浄液供給機構のさらに別の構成を示す図である。洗浄液供給機構3Bは、近接部材21の非対向面に向けて洗浄液を吐出可能であって、洗浄液の吐出流速が互いに異なる複数(例えば3つ)のノズル61,62,63(本発明の「第3ノズル」に相当)を有している。この実施形態では、ノズル61,62,63から吐出される洗浄液の吐出流速が、それぞれVd1,Vd2,Vd3(Vd1>Vd2>Vd3)に設定されている。ノズル61,62,63は、近接部材21の移動軌跡Tに沿って、移動軌跡T上を移動する近接部材21に対向するように固定して配列されている。また、3つのノズル61,62,63のうち吐出流速が大きいノズルほど基板Wの端縁側に配置されている。つまり、基板Wの端縁側から中心側にかけてノズル61,62,63の順に配列している。また、図11に示すように、各ノズル61,62,63から吐出された洗浄液の着液位置(移動してくる近接部材21の非対向面)が近接部材21の移動方向に沿って並び、しかも隣接するように、各ノズル61,62,63から吐出される洗浄液の吐出角度範囲が設定されている。これにより、移動軌跡T上を移動する近接部材21に対して3つのノズル61,62,63のいずれかにより吐出された洗浄液が供給される。なお、各ノズル61,62,63の吐出口を近接部材21の移動方向に延びるスリット状に形成して、各ノズル61,62,63からの洗浄液の着液位置が近接部材21の移動方向に隣接しながら配列するように構成してもよい。
【0057】
この構成では、回転駆動される基板Wの表面Wfに対して各ノズル61,62,63から洗浄液が吐出される。この状態で近接部材21が移動軌跡T上を移動してくると、近接部材21が各ノズル61,62,63からの洗浄液と次々に交差し、各ノズル61,62,63からの洗浄液が順次、近接部材21に供給される。例えば、近接部材21が回転中心位置Pcから端縁位置Peに向けて移動すると、近接部材21に対してノズル63からの洗浄液(吐出流速:Vd3)、ノズル62からの洗浄液(吐出流速:Vd2)およびノズル61(吐出流速:Vd1)からの洗浄液が順次供給される。これにより、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速は回転軸Rから離れるにしたがって段階的(3段階)に高められる。これにより、中心部に比べ処理進行度合が遅れる端縁部に対する洗浄処理を促進させることができる。その結果、基板表面Wfに対する洗浄処理の面内均一性を高めることができる。しかも、この構成によれば、洗浄処理中に各ノズル61,62,63から吐出される洗浄液の流量を調整する必要がない。
【0058】
また、本発明に用いられる洗浄液としては、純水のほか、エッチング作用のある薬液等を用いることができる。また、洗浄液に界面活性剤を添加して基板表面Wfに対する濡れ性を向上させるようにしてもよい。
【実施例】
【0059】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0060】
実施例1〜3および比較例1,2
シリコンウエハ(ウエハ径:300mm)を用意し、該ウエハ表面に対して超音波振動を用いた洗浄処理を施したときのパーティクル除去率を評価した。パーティクルとしてSi屑によってウエハ表面が汚染されている場合について評価を行っている。パーティクル除去率の導出手順は以下のとおりである。
【0061】
最初に、枚葉式の基板洗浄装置(大日本スクリーン製造社製、スピンプロセッサSS―3000)を用いてウエハを強制的に汚染させる。具体的には、ウエハを回転させながらウエハ表面にパーティクル(Si屑)を分散させた分散液をウエハに供給する。ここでは、ウエハ表面に付着するパーティクルの数が約10000個となるように、分散液の液量、ウエハ回転数および処理時間を適宜調整する。その後、ウエハ表面に付着しているパーティクル(粒径;0.08μm以上)の数(初期値)を測定する。なお、パーティクル数の測定はKLA−Tencor社製のパーティクル評価装置SP1−TBIを用いて評価を行っている。
【0062】
続いて、基板洗浄装置にてウエハに対して超音波振動を用いた洗浄処理を施す。洗浄処理条件は以下のとおりである。ここでは、図12を参照しつつ洗浄処理条件について説明する。
【0063】
図12は洗浄処理条件を説明するための図である。先ず、ウエハを20rpmで回転させる。また、近接部材をウエハに対向させながらウエハの端縁位置からウエハの回転中心位置に移動させた後、ウエハの回転中心位置からウエハの端縁位置に移動させる動作(往復動作)を2回繰り返した。ここで、近接部材をウエハの端縁位置とウエハの回転中心位置との間で移動させる時間を8secに設定した。そのため、近接部材の往復動作を2回繰り返すことにより、近接部材の走査時間は、合計で32sec(8sec×4)となる。
【0064】
また、ノズルからの純水の吐出流量Qは表1に示すとおりとした。ここで、実施例1〜3および比較例2では、ノズルから近接部材(非対向面)に向けて純水を吐出している。一方、比較例1では、ノズルからウエハ表面に向けて純水を鉛直方向下向きに吐出している。つまり、間隙空間内ではほとんど純水を流通させていない。このため、比較例1では、ウエハ表面と近接部材とで挟まれた間隙空間内を流通する純水の流速Vを0(m/s)と規定した(表1)。また、純水の吐出流量Qとしては、1.5L/minが下限値となる。これは、吐出流量Qが1.5L/minより小さくなると、間隙空間に純水が入っていかなくなるからである。なお、ノズルの内径Dは3mmとなっている。したがって、ノズルからの純水の吐出流量とノズル内径Dとにより、ノズルからの純水の吐出流速が表1に示すとおりに導出される。
【0065】
また、実施例1〜3および比較例1では、超音波発信器からの発振出力を5(W)、発振周波数を6(MHz)とした。一方、比較例2では、超音波発信器からの発振を停止している。つまり、比較例2では、純水に超音波振動を付与していない。このため、比較例2では、超音波発振出力を0(W)と規定した(表1)。また、間隙空間のギャップGについては、表1に示すとおりに設定している。
【0066】
次に、間隙空間内を流通する純水の流速Vの求め方について説明する。ここでは、間隙空間内を流通する純水の流速Vは、間隙空間内の任意の空間断面Sを通過する純水の通過量から求められる流速Vaにノズルから吐出され間隙空間内の空間断面Sに至る純水の流速が加わっているとして、
【0067】
【数1】
となる。ここで、Vaは
【0068】
【数2】
となる。なお、、Q(L/min)はノズルから吐出される純水の吐出流量である。また、B(mm)は空間断面Sの幅、G(mm)は空間断面Sの高さ、つまり間隙空間のギャップである。したがって、B×Gは空間断面Sの面積を表す。また、式(2)中のB×Gに2分の1を乗じているのは、空間断面Sのうち気泡が2分の1を占め、純水が2分の1を占めていると仮定したことによる。さらに、式(2)中の分子は、間隙空間に供給される純水の流量を示している。ここでは、ノズルから近接部材に供給された純水の2分の1が間隙空間に供給されると仮定している。また、Vbは、
【0069】
【数3】
となる。なお、Dはノズルの内径である。ここで、式(3)において7で除しているのは、ノズルから吐出され間隙空間に入り込んだ純水が間隙空間内で7倍に広がって空間断面Sに至っていると仮定したことによる。つまり、Vbは、ノズルからの純水の吐出流速の7分の1の流速で純水が空間断面Sを通過することを示している。
【0070】
ここで、例えば、Q=1.5(L/min)、G=1.0(mm)における間隙空間内を流通する純水の流速Vを求めると次のようになる。先ず、Vaは
【0071】
【数4】
となる。また、Vbは
【0072】
【数5】
となる。したがって、間隙空間内を流通する純水の流速Vは
【0073】
【数6】
と求められる。このようにして求めた結果が、表1中の間隙空間内の純水の流速となっている。
【0074】
そして、こうした各洗浄条件で洗浄処理を受けたウエハ表面(表面全体)に付着しているパーティクル数をパーティクル評価装置を用いて測定する。それから、洗浄処理後のパーティクル数と洗浄処理前のパーティクル数(初期値)とを対比することでパーティクル除去率を算出している。
【0075】
【表1】
実施例1〜3から明らかなように、間隙空間内を流通する純水の流速Vが速いほどパーティクル除去率が向上している。つまり、ノズルからの純水の吐出流量Qが多いほど、またギャップGの間隔が狭いほど間隙空間内を流通する純水の流速Vが高められ、パーティクル除去率を向上させることができる。これに対し、ウエハ表面に向けて純水を供給し、間隙空間内に純水の流通がない条件(比較例1)では、ウエハ表面に付着するパーティクルをほとんど除去することができない。また、実施例1と同様な流速Vで純水を間隙空間内で流通させた場合であっても、超音波振動を純水に付与しない条件(比較例2)では、ウエハ表面に付着するパーティクルをほとんど除去することができない。
【0076】
次に、間隙空間内を流通する純水の流速をウエハ中心からの距離に応じて段階的に変化させた場合における洗浄特性を確認した(図13)。具体的には、ウエハ中心から径方向に25mmよりも大きく離れた領域(以下「端縁側領域」という)における純水の流速をウエハ中心から径方向に25mm以内の範囲にある領域(以下「中心側領域」という)における純水の流速に対して高めたときの洗浄特性の変化を確認した。
【0077】
図13はウエハ中心からの距離に対するパーティクル除去率を示すグラフである。図13から明らかなように、間隙空間内を流通する純水の流速を一定(0.8m/s)、つまり中心側領域と端縁側領域との間で同じとした場合には端縁側にいくにしたがってパーティクル除去率が低下することが分かる。これに対し、間隙空間内を流通する純水の流速を中心側領域に対して端縁側領域で高めた(0.8m/sから1.3m/s)場合には、端縁側領域におけるパーティクル除去率が改善していることが分かる。すなわち、一定の流速でウエハを洗浄した場合に対して洗浄特性の面内均一性を向上することができることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般に対して超音波振動を付与した洗浄液を供給して該基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄装置および基板洗浄方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明にかかる基板洗浄装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板洗浄装置の主要な制御構成を示すブロック図である。
【図3】図1の基板洗浄装置の要部を示す図である。
【図4】流量制御ユニットの構成の一例を示す図である。
【図5】図1の基板洗浄装置の洗浄範囲を示す図である。
【図6】間隙空間内を流通する洗浄液の流速の変化を模式的に示す図である。
【図7】図1の基板洗浄装置により実行される洗浄特性を示す図である。
【図8】この発明にかかる基板洗浄装置の第2実施形態を示す図である。
【図9】図8の基板洗浄装置の要部を示す図である。
【図10】洗浄液供給機構の他の構成を示す図である。
【図11】洗浄液供給機構のさらに別の構成を示す図である。
【図12】洗浄処理条件を説明するための図である。
【図13】ウエハ中心からの距離に対するパーティクル除去率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
3,3A,3B…洗浄液供給機構
4…制御ユニット(制御手段)
12…回転駆動源(回転手段)
21,21A…近接部材
23…振動子(超音波付与手段)
26…揺動駆動源(駆動手段)
31…ノズル(第1ノズル)
31A…ノズル(第2ノズル)
51,52…分岐管(第1供給管)
51a,52a…切換え弁
55…供給管(第2供給管)
56…流量制御部
61,62,63…ノズル(第3ノズル)
211…下面(対向面)
212…側面(非対向面)
221…傾斜面(対向面)
222…側面(非対向面)
Pc…回転中心位置
Pe…端縁位置
R…回転軸
SP…間隙空間
T…移動軌跡
W…基板
Wf…基板表面
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等に超音波振動が付与された洗浄液を用いて該基板に対して洗浄処理を施す基板洗浄装置および基板洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程では、基板の表面に成膜やエッチングなどの処理を繰り返し施して微細パターンを形成していく工程が含まれる。ここで、微細加工を良好に行うためには基板表面を清浄な状態に保つ必要があり、必要に応じて基板表面に対して洗浄処理が行われる。そこで、従来より、基板上に付着したパーティクルを除去するために、基板に洗浄液を供給するとともに該洗浄液に超音波振動を付与することが行われている。これにより、洗浄液が有する超音波振動エネルギーによって、基板上からパーティクルが効果的に離脱して除去される。
【0003】
例えば特許文献1に記載された装置では、所定の回転軸回りに回転駆動される基板に対向して超音波洗浄機構が配置されている。超音波洗浄機構は、基板表面と対向するように設けられた基板対向面を有する超音波洗浄ヘッドを備えている。超音波洗浄ヘッドは基板の上方で基板表面に沿って所定の角度範囲で回動(揺動)可能となっている。また、超音波洗浄ヘッドは洗浄液を供給するノズルを有し、このノズルから基板対向面と基板表面との間(間隙空間)に向けて洗浄液を供給するとともに該洗浄液に超音波振動を付与する。また、この状態で回転駆動される基板に対して超音波洗浄ヘッドが回動することで基板表面に対して超音波振動を用いた洗浄が行われる。
【0004】
また、特許文献2に記載された装置では、基板表面に物理的な力を作用させる処理機構がアームに取り付けられている。そして、基板を回転させながらアームを基板上の所定の範囲内で複数回走査させることにより、基板表面に付着する付着物を除去している。この処理機構は超音波振動を乗せた液体を噴射するノズルを有している。そして、このノズルより噴射される液体の流量が基板の中心部付近よりも端縁部において大きくなるように流量調整が行われている。これにより、基板の中心部付近と端縁部において均一な洗浄効果が得られる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−87725号公報(図2)
【特許文献2】特開平11−244796号公報(第6頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載の装置では、基板が回転している関係上、超音波洗浄ヘッドに対する相対速度は基板の中心側においては遅く、端縁側に向かうにつれて速くなる。そのため、超音波洗浄ヘッドが基板の端縁側に位置するほど、単位面積当たりの洗浄時間が短くなる。その結果、超音波洗浄ヘッドに対する相対速度が速くなる基板の端縁側の領域ほど十分に洗浄を行うことができなくなってしまう。つまり、基板の回転中心から離れ基板の端縁側に位置する領域ほど、パーティクルの除去率が低下していく。
【0007】
そこで、特許文献2記載のように、基板表面上で移動される処理機構の相対移動に応じてノズルから吐出する洗浄液の流量を変化させることが考えられる。具体的には、特許文献1記載の装置において、ノズルから間隙空間に向けて供給される洗浄液の流量を基板の中心部よりも基板の端縁部において増加させることが考えられる。これによって、基板の端縁部における洗浄効果を高め、基板の中心部と端縁部とにおいて均一な洗浄効果を得ることが期待される。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、ノズルから間隙空間に向けて直接に洗浄液を供給している。このため、ノズルからの洗浄液の流量を変化させると、次のような問題が発生することがあった。すなわち、ノズルからの洗浄液の流量を大きくすると、間隙空間内を流通する洗浄液の流速が高められる。その結果、間隙空間に供給された洗浄液が基板表面上に薄く広がってしまい、間隙空間を洗浄液で満たすことが困難となってしまう。このため、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込み、間隙空間内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができなくなる場合があった。つまり、特許文献1記載の装置では、間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させると、かえって洗浄液に超音波振動を十分に付与することができなくなり、基板表面を良好に洗浄することができなかった。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、間隙空間内を流通する洗浄液の流速にかかわらず、洗浄液に超音波振動を十分に付与して基板表面を良好に洗浄することができる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、超音波振動が付与された洗浄液を用いて基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄装置であって、上記目的を達成するため、基板表面に対向する対向面を有し、該対向面を基板表面から離間配置させながら基板表面に沿って基板に対して相対移動自在に設けられた近接部材と、近接部材を基板表面に沿って基板に対して相対移動させる駆動手段と、基板表面と近接部材の対向面とで挟まれた間隙空間に洗浄液を供給するとともに、基板に対する近接部材の相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させる洗浄液供給機構と、近接部材を介して洗浄液に超音波振動を付与する超音波付与手段とを備え、洗浄液供給機構は、近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて洗浄液を吐出することで洗浄液を非対向面から間隙空間に回り込ませて間隙空間に洗浄液を供給することを特徴としている。
【0011】
また、この発明は、超音波振動が付与された洗浄液を用いて基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄方法であって、上記目的を達成するため、基板表面に対向する対向面を有し、基板表面に沿って基板に対して相対移動自在な近接部材を基板表面から離間配置する配置工程と、近接部材を基板表面に沿って基板に対して相対移動させる移動工程と、基板表面と近接部材の対向面とで挟まれた間隙空間に洗浄液を供給するとともに、近接部材の相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させる洗浄液供給工程と、近接部材を介して洗浄液に超音波振動を付与する超音波付与工程と、洗浄液供給工程では、近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて洗浄液を吐出することで洗浄液を非対向面から間隙空間に回り込ませて間隙空間に洗浄液を供給することを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明(基板洗浄装置および基板洗浄方法)によれば、近接部材の対向面が基板表面から離間配置されることで、該対向面と基板表面との間に間隙空間が形成される。そして、間隙空間に洗浄液を供給するとともに、近接部材を介して洗浄液に超音波振動が付与される。また、この状態で近接部材が基板表面に沿って基板に対して相対移動する。このとき、基板に対する相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させている。このため、基板表面の各領域に対して適切な洗浄を行うことができ、基板表面を高品質に洗浄することができる。ここで、何の工夫もなさずに、単純に間隙空間内を流通する洗浄液の流速を増大させると、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したような問題が発生することがあった。すなわち、間隙空間に向けて直接に洗浄液を供給した場合には、間隙空間内を流通する洗浄液の流速が高められると、間隙空間を洗浄液で満たすことが困難となってしまう。その結果、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込み、洗浄液に超音波振動を十分に付与することができなくなる場合があった。これに対し、この発明によれば、近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて洗浄液を吐出することで該洗浄液を間隙空間に回り込ませている。つまり、吐出された洗浄液を非対向面からの回り込みによって間隙空間に間接的に供給している。このため、間隙空間内を流通する洗浄液の流速を低く設定した場合はもちろんのこと、増大させたとしても、間隙空間を洗浄液で満たし、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込むのを防止することができる。これにより、間隙空間内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができる。したがって、間隙空間内を流通する洗浄液の流速にかかわらず、洗浄液に超音波振動を十分に付与して基板表面を良好に洗浄することができる。
【0013】
ここで、基板を所定の回転軸回りに回転させる回転手段をさらに設け、近接部材が回転軸から基板の径方向に離れるにしたがって間隙空間を流通する洗浄液の流速を高めるように構成してもよい。この場合、基板の中心部と端縁部とで洗浄処理の進行度合が相違する。より具体的には、基板の中心部に対する洗浄処理は比較的進行するのに対し、端縁部では中心部での処理進行度に比べて遅れる。そこで、近接部材が回転軸から基板の径方向に離れるにしたがって間隙空間を流通する洗浄液の流速を高めている。これにより、基板の端縁部に対する洗浄処理を促進させることができる。その結果、基板表面に対する洗浄処理の面内均一性を高めることができる。
【0014】
また、基板に対して近接部材を相対移動させるための構成の一例としては、近接部材を駆動して基板の回転中心位置と基板の端縁位置とを通る移動軌跡上で移動させる構成を採用することができる。この構成によれば、基板の回転と近接部材の移動により基板表面の全面を効率良く洗浄することができる。
【0015】
また、洗浄液供給機構から吐出される洗浄液の流量を制御する制御手段をさらに設け、制御手段が基板に対する近接部材の相対移動に応じて洗浄液の流量を制御して間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させるように構成してもよい。この場合、洗浄液供給機構は近接部材の非対向面に向けて洗浄液を吐出する第1ノズルと、第1ノズルに洗浄液を供給可能な複数の第1供給管とを有し、複数の第1供給管の各々には第1ノズルに対する洗浄液の供給/供給停止を切換える切換え弁が介装され、制御手段は、基板に対する近接部材の相対移動に応じて各切換え弁を切換えることで、第1ノズルから吐出させる洗浄液の流量を制御するように構成してもよい。また、洗浄液供給機構は近接部材の非対向面に向けて洗浄液を吐出する第2ノズルと、第2ノズルに洗浄液を供給可能な第2供給管とを有し、第2供給管には該第2供給管を流通する洗浄液の流量を連続的に制御可能な流量制御部が介装され、制御手段は基板に対する近接部材の相対移動に応じて流量制御部を制御することで、第2ノズルから吐出させる洗浄液の流量を制御するように構成してもよい。この構成によれば、近接部材の相対移動に応じてノズル(第2ノズル)からの洗浄液の吐出流量をきめ細かく調整できるので、基板表面の各領域に対して最適な洗浄を行うことができる。
【0016】
また、洗浄液供給機構は近接部材の非対向面に向けて洗浄液を吐出可能であって、洗浄液の吐出流速が互いに異なる複数の第3ノズルを有し、複数の第3ノズルの各々から洗浄液を吐出させるとともに、駆動手段は近接部材を各第3ノズルから吐出される洗浄液と交差するように移動させ、近接部材に対して各第3ノズルからの洗浄液が順次供給されることで近接部材の移動に応じて間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させるように構成してもよい。この構成によれば、洗浄処理中に各ノズル(第3ノズル)からの洗浄液の吐出流量を制御する必要がない。
【0017】
さらに、近接部材については、親水性材料で形成するのが望ましく、このように構成することで非対向面に供給された洗浄液を効率的に間隙空間に回り込ませることができる。ここで、このような構成を採用するためには、例えば近接部材を石英で形成してもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて洗浄液を吐出することで間隙空間に洗浄液を回り込ませている。このため、近接部材の相対移動に応じて間隙空間内を流通する洗浄液の流速が変化しても、間隙空間を洗浄液で満たし、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込むのを防止することができる。このため、間隙空間内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができる。したがって、間隙空間内を流通する洗浄液の流速にかかわらず、洗浄液に超音波振動を十分に付与して基板表面を良好に洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1はこの発明にかかる基板洗浄装置の第1実施形態を示す図である。また、図2は図1の基板洗浄装置の主要な制御構成を示すブロック図である。また、図3は図1の基板洗浄装置の要部を示す図である。この基板洗浄装置は、半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfに付着したパーティクルなどの汚染物質を除去するための洗浄処理に用いられる枚葉式の基板洗浄装置である。より具体的には、デバイスパターンが形成された基板表面Wfに対して洗浄液としてDIW(deionized water:脱イオン水)などのリンス液を供給するとともに、該洗浄液に超音波振動を付与して基板Wを洗浄する装置である。
【0020】
この基板洗浄装置は、基板Wをその表面Wfを上方に向けた状態で水平姿勢に保持して回転させる基板回転機構1と、基板回転機構1に保持された基板Wの表面Wfを超音波振動を用いて洗浄するための超音波洗浄ユニット2と、超音波洗浄ユニット2(後述の近接部材)に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給機構3とを備えている。
【0021】
基板回転機構1は、回転支軸11がモータを含む回転駆動源12の回転軸に連結されており、回転駆動源12の駆動により回転軸R回りに回転可能となっている。回転支軸11の上端部には円盤状の真空チャック13が設けられており、基板Wの裏面Wbの略中央部が真空チャック13により吸引保持される。したがって、装置全体を制御する制御ユニット4(本発明の「制御手段」に相当)からの動作指令に応じて回転駆動源12を作動させることにより、基板Wを吸引保持しつつ、真空チャック13が回転軸R回りに回転する。このように、この実施形態では、回転駆動源12が本発明の「回転手段」として機能する。
【0022】
超音波洗浄ユニット2は、石英製の近接部材21と、近接部材21の上面に貼り付けられ、超音波発信器22からのパルスを受けて近接部材21を超音波振動させる振動子23とを備えている。この近接部材21は水平断面形状が四角形となっている直方体であり、その下面211が基板表面Wfと対向する対向面となっている。そして、近接部材21が基板表面Wfに対向して離間配置されると、下面211と基板表面Wfとが所定の間隔を隔てて平行に対向する。また、図3に示すように、側面212(本発明の「非対向面」に相当)が洗浄液供給機構3から供給される洗浄液の入射面となっており、下面211に対して垂直に立ち上がっている。
【0023】
また、超音波洗浄ユニット2は、振動子23の上面に取り付けられ近接部材21および振動子23をその一方端で保持する揺動アーム24と、この揺動アーム24をアーム軸25を中心として所定の角度範囲で回動(揺動)させるモータ等の揺動駆動源26と、揺動アーム24を鉛直方向に昇降させるモータ等の昇降駆動源27とを備えている。
【0024】
揺動アーム24と揺動駆動源26との間には、揺動駆動源26からの回転駆動力を揺動アーム24に伝達する揺動伝達機構26tが設けられている。例えば、この揺動伝達機構26tは、揺動駆動源26としてのモータの出力軸とアーム軸25のそれぞれに取り付けられた1組のプーリと、この1組のプーリ間に掛け渡されたベルトとからなるベルト&プーリ機構などである。これにより、揺動駆動源26としてのモータの出力軸を回動させれば、アーム軸25が回動し、揺動アーム24が回動する。
【0025】
また、揺動アーム24と昇降駆動源27との間には、昇降駆動源27からの回転駆動力を上下方向の駆動力に変換して揺動アーム24に伝達する昇降伝達機構27tが設けられている。例えば、この昇降伝達機構27tは、昇降駆動源27としてのモータの出力軸に対して回転可能に接続されたボールネジ軸と、揺動アーム24から揺動駆動源26に至るまでの構造物を直線移動可能に保持し、ボールネジ軸に螺合する移動子とからなるボールネジ機構等が設けられている。これにより、昇降駆動源27としてのモータの出力軸を回動させれば、ボールネジ軸が回転して移動子が上下移動し、揺動アーム24から揺動駆動源26に至るまでの構造物が昇降する。
【0026】
これらの構成により、近接部材21を揺動駆動源26によって駆動することで、下面211を基板表面Wfに対向させながら移動軌跡T、つまり基板Wの回転中心位置Pcと基板Wの端縁位置Peとを通る軌跡上を往復移動させることができる。したがって、制御ユニット4が基板Wを回転させながら近接部材21を移動軌跡Tに沿って移動させることで、基板表面Wfの全面に対して近接部材21を走査させることができる。ここで、基板Wの回転中心位置Pcは基板表面Wfの上方で、かつ基板Wの中心A0(基板表面Wfと回転軸Rとが交差する点)上に設定されている。このように、この実施形態では、揺動駆動源26が本発明の「駆動手段」として機能する。
【0027】
また、近接部材21を昇降駆動源27によって駆動することで、鉛直方向に昇降させることができる。これにより、基板表面Wfと下面211とのギャップGを所望の間隔に設定することができる。すなわち、ギャップGを一定の間隔に保ったまま近接部材21を基板表面Wfに沿って移動させることができる。ギャップGは、基板表面Wfと下面211とで挟まれた間隙空間SP(図3)に洗浄液が十分に満たされる間隔であればよく、5mm以下、好ましくは0.5〜1mm程度に設定される。
【0028】
洗浄液供給機構3は、近接部材21の側面212に向けて洗浄液を吐出するノズル31(本発明の「第1ノズル」に相当)と、その一方端がノズル31に接続されノズル31に対して洗浄液を供給可能な管32とを有している。また、管32の他方端は流量制御ユニット33に接続されている。流量制御ユニット33は洗浄液供給源に接続され、洗浄液供給源からノズル31に向けて送り込まれる洗浄液の流量を制御することが可能となっている。このため、制御ユニット4からの動作指令に応じて流量制御ユニット33が制御されることで、ノズル31からの洗浄液の吐出流量がコントロールされる。
【0029】
ノズル31と揺動アーム24とは連結されており、揺動アーム24の揺動とともにノズル31が近接部材21と一体的に移動(揺動)可能となっている。すなわち、管32はフレキシブルに形成されており、ノズル31と近接部材21とが一定の離間距離を保ったまま移動するのを可能にしている。このため、近接部材21の移動にかかわらず、近接部材21(側面212)に向けて洗浄液を安定して供給することができる。もちろん、近接部材21とノズル31とを個別に移動させるように構成してもよいが、その場合には2つの駆動機構が必要となる。これに対し、本実施形態によれば、単一の駆動源によって近接部材21とノズル31とが駆動されるため、駆動構成を簡素化することができる。
【0030】
また、ノズル31は近接部材21の移動方向(揺動方向)に略直交する方向に洗浄液を吐出するように揺動アーム24の伸びる方向に取り付けられている。つまり、洗浄液の吐出方向と近接部材21の移動方向(揺動方向)とは略直交関係にある。このため、近接部材21が移動軌跡T上を往復移動しても、近接部材21の移動方向に対して洗浄液の吐出方向が変化することがない。したがって、近接部材21の往復移動にかかわらず、近接部材21に向けて洗浄液を安定して供給することができる。
【0031】
なお、ノズル31から吐出された洗浄液は、図3に示すように近接部材21の側面212に供給され該側面212に沿って流下する。そして、側面212に供給された洗浄液の一部が側面212から間隙空間SPに回り込み、間隙空間SPに供給される。つまり、ノズル31から吐出された洗浄液は、側面212からの回り込みによって間隙空間SPに間接的に供給される。これにより、間隙空間SPが洗浄液で満たされる。また、間隙空間SPに供給された洗浄液は間隙空間SP内を所定の流速で流通し、間隙空間SPから排出される。
【0032】
側面212に対するノズル31から吐出された洗浄液の入射方向は近接部材21の移動にかかわらず、一定であり側面212から間隙空間SPに安定して洗浄液を回り込ませることができる。また、側面212に対してはノズル31からの洗浄液が斜め上方から入射される。このため、側面212に入射した洗浄液は側面212に沿って速やかに流れ、間隙空間SPに回り込む。また、この実施形態では、洗浄液が入射する側面212は、近接部材21への洗浄液の供給の観点から、近接部材21の回動中心(アーム軸25の中心)から最も離れた面となっている。
【0033】
ここで、ノズル31から近接部材21に供給された洗浄液に対して、近接部材21を介して振動子23からの超音波振動が付与される。すなわち、超音波発信器22からのパルスを受けて振動子23が振動することによって近接部材21に超音波振動が伝播している。このため、近接部材21に接液する洗浄液に対して、近接部材21から超音波振動が付与される。その結果、超音波振動が付与された洗浄液により基板表面Wfに対して洗浄処理が施される。このように、この実施形態では、振動子23が本発明の「超音波付与手段」として機能する。
【0034】
また、この実施形態では、制御ユニット4からの動作指令に応じて流量制御ユニット33が制御されることで、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させることが可能となっている。すなわち、流量制御ユニット33の流量制御によりノズル31からの洗浄液の吐出流量が制御される。これに伴って側面212から間隙空間SPに回り込んで間隙空間SP内を流通する洗浄液の流量が変更される。これにより、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速が変化する。制御ユニット4は、後述するようにして基板Wに対する近接部材21の相対移動に応じて流量制御ユニット33を制御することで間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させる。
【0035】
図4は流量制御ユニットの構成の一例を示す図である。流量制御ユニット33は、ノズル31に洗浄液を供給可能な複数(この実施形態では2つ)の分岐管51,52(本発明の「第1供給管」に相当)を有している。2つの分岐管51,52はそれぞれ、その一方端が管32に接続される一方、その他方端側から所定流量(それぞれQa,Qb)の洗浄液の供給を受けることが可能となっている。また、2つの分岐管51,52の各々には、ノズル31に対する洗浄液の供給/供給停止を切換える切換え弁51a,52aが介装されている。
【0036】
各切換え弁51a,52aは制御ユニット4からの動作指令に応じて独立に切換え制御される。例えば、切換え弁52aを閉じた状態で切換え弁51aを開けると、ノズル31から流量Q1(=Qa)で洗浄液が吐出される。また、両方の切換え弁51a,52aを開けると、ノズル31から流量Q2(=Qa+Qb)で洗浄液が吐出される。このように、制御ユニット4は切換え弁51a,52aを切換え制御することで、ノズル31からの洗浄液の吐出流量を段階的(2段階)に変更することができる。これにより、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を段階的に変化させることができる。
【0037】
次に、上記のように構成された基板洗浄装置の動作について図5ないし図7を参照しつつ説明する。図5は図1の基板洗浄装置の洗浄範囲を示す図である。また、図6は間隙空間内を流通する洗浄液の流速の変化を模式的に示す図である。また、図7は図1の基板洗浄装置により実行される洗浄特性を示す図である。この基板洗浄装置では、図示を省略する搬送手段により真空チャック13上に未処理の基板Wが搬送されて真空チャック13に保持される。そして、搬送手段が基板洗浄装置から退避した後、制御ユニット4が装置各部を制御して洗浄処理を実行する。
【0038】
先ず、基板Wの回転を開始させる。続いて、揺動駆動源26の駆動により揺動アーム24が回動して近接部材21が基板Wの端縁位置Peに移動される。これにより、下面211が基板表面Wfと対向しながら近接部材21が基板表面Wfから離間配置される(配置工程)。また、ノズル31から洗浄液が近接部材21(側面212)に向けて吐出される。ここでは、両方の切換え弁51a,52aを開けることにより、比較的大流量の流量Q2で洗浄液がノズル31から吐出される。側面212に供給された洗浄液はその一部が間隙空間SPに回り込み、間隙空間SP内を所定の流速V2で流通する(洗浄液供給工程)。このように、比較的大流量の流量Q2でノズル31から洗浄液が吐出されると、比較的高速(V2)で洗浄液が間隙空間SP内を流通する。この実施形態では、側面212から間隙空間SPに洗浄液を回り込ませることによって間隙空間SPに洗浄液を供給している。したがって、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速が比較的に高い場合であっても、洗浄液が基板表面Wfに薄く広がってしまうのを防止することができる。このため、間隙空間SPを洗浄液で満たし、間隙空間SPに気体(空気)が大量に入り込むのを防止することができる。
【0039】
また、近接部材21に供給された洗浄液に対して近接部材21から超音波振動が付与され、基板表面Wfに対して超音波振動を用いた洗浄処理が実行される(超音波付与工程)。間隙空間SPは洗浄液で満たされていることから、間隙空間SP内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができる。
【0040】
そして、このように超音波振動が付与された洗浄液により回転駆動される基板Wの表面Wfを洗浄しながら、移動軌跡Tに沿って近接部材21(およびノズル31)を基板Wの回転中心位置Pcに向けて移動させる(移動工程)。この実施形態では、揺動アーム24の回動により近接部材21が基板Wの端縁部Ws上から基板Wの中心部Wc上に移る際に、ノズル31から吐出される洗浄液の流量を変更している。すなわち、近接部材21が端縁部Wsと中心部Wcとの境界上の位置(境界位置Pb)に移動すると、切換え弁51aを開けた状態で切換え弁52aを閉じる。これにより、ノズル31からの洗浄液の吐出流量がQ2からQ2よりも小さいQ1に設定される。その結果、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速がV2から比較的低速のV1に変化する。このように、端縁部Wsと中心部Wcとの間で間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させるのは次のような理由による。
【0041】
揺動アーム24の揺動速度は一定であるため、基板Wの中心側においては近接部材21に対する相対速度が遅く、端縁側に向かうにつれて速くなる。そのため、相対速度の遅い中心部Wcでは単位面積当たりの洗浄時間が長くなり、中心部Wcでの洗浄処理が端縁部Wsよりも進行する。すなわち、例えば図7の曲線C2(流量Q2で洗浄処理を実行した場合の洗浄特性)に示すように、基板Wからのパーティクルの除去率は基板Wの中心側で高く、端縁側に向かうにしたがって低下している。したがって、曲線C2の洗浄特性で洗浄処理する場合には、中心部Wcでの洗浄効果が高くなり、許容ダメージレベルL(同図の1点鎖線のレベル)を超えてしまう。逆に、図6の曲線C1(流量Q1で洗浄処理を実行した場合の洗浄特性)では、相対速度の速い端縁部Wsでは除去率が低くなりすぎて十分に洗浄を行うことができない。
【0042】
そこで、この実施形態では、中心部Wcに対しては間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を比較的低速のV1に設定する一方、端縁部Wsに対しては間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を比較的高速のV2に設定している(図7の実線で示す洗浄特性)。これにより、中央部Wcと端縁部Wsとに対して各処理領域に応じた洗浄特性で洗浄処理を実行することができ、基板表面Wfにおける面内の洗浄特性が均一化される。その結果、許容ダメージレベルの範囲内で、均一かつ良好な除去率で基板全面を洗浄することができる。
【0043】
こうして、境界位置Pbを近接部材21が通過するごとにノズル31から吐出される洗浄液の流量が切換えられながら、端縁位置Peと回転中心位置Pcとの間を近接部材21が往復移動する。この実施形態では、このような近接部材21の往復移動動作が複数回(例えば2回)繰り返される。
【0044】
上記のようにして基板表面Wfに対する洗浄処理が完了すると、切換え弁51a,52aを閉じてノズル31への洗浄液の供給を停止する。また、基板Wの回転速度を増大させて基板W上に残っている洗浄液に遠心力を作用させて基板Wから洗浄液を除去し、乾燥させる(スピン乾燥)。そして、一連の処理が完了すると、搬送手段により処理済みの基板Wを基板洗浄装置から搬出する。
【0045】
以上のように、この実施形態では、近接部材21を基板表面Wfから離間配置して基板表面Wfと近接部材21との間に間隙空間SPを形成している。そして、間隙空間SPに洗浄液を供給するとともに、近接部材21を介して洗浄液に超音波振動が付与している。また、この状態で基板Wを回転させながら近接部材21を移動軌跡Tに沿って移動させている。このとき、基板Wに対する近接部材21の相対移動に応じて間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させているので、基板表面Wfの各領域に対して適切な洗浄を行うことができ、基板表面Wfの全面を高品質に洗浄することができる。すなわち、中心部Wcに対しては間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を比較的低速のV1に設定する一方、端縁部Wsに対しては間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を比較的高速のV2に設定しているので、基板表面Wfに対する洗浄処理の面内均一性を高めることができる。
【0046】
ここで、近接部材21の下面211(対向面)と異なる側面212(非対向面)に向けて洗浄液を吐出することで該洗浄液を間隙空間SPに回り込ませている。このため、次のような作用効果が得られる。すなわち、間隙空間SPに向けて直接に洗浄液を供給する場合には、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速が高められると、間隙空間SPに供給された洗浄液が基板表面Wf上に薄く広がってしまい、間隙空間SPを洗浄液で満たすことが困難となってしまう。その結果、間隙空間に気体(空気)が大量に入り込み、間隙空間内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができなくなる場合があった。これに対し、この実施形態によれば、近接部材21の側面212に向けて洗浄液を吐出して間隙空間SPに洗浄液を回り込ませている。つまり側面212からの回り込みにより間隙空間SPに間接的に洗浄液を供給している。このため、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させたとしても、間隙空間SPを洗浄液で満たし、間隙空間SPに気体(空気)が大量に入り込むのを防止することができる。これにより、間隙空間SP内の洗浄液に超音波振動を十分に付与することができる。したがって、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速にかかわらず、洗浄液に超音波振動を十分に付与して基板表面Wfを良好に洗浄することができる。
【0047】
さらに、この実施形態では、近接部材21を石英で形成しているため、洗浄液に対して親水性を有する。このため、側面212(非対向面)に供給された洗浄液を効率的に間隙空間SPに回り込ませることができる。その結果、間隙空間SPに高効率に洗浄液を供給することができ、超音波振動が十分に付与された洗浄液を用いて基板表面Wfを洗浄することが可能となっている。
【0048】
<第2実施形態>
図8はこの発明にかかる基板洗浄装置の第2実施形態を示す図である。また、図9は図8の基板洗浄装置の要部を示す図である。この第2実施形態にかかる基板洗浄装置が第1実施形態と大きく相違する点は、近接部材の形状が異なっている点である。なお、その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同様であるため、ここでは同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
この実施形態では、超音波洗浄ユニット2Aは、棒状の近接部材21Aと、近接部材21Aの基端部(後端部)に取付けられ、超音波発信器22からのパルスを受けて近接部材21Aを超音波振動させる振動子23Aとを備えている。この近接部材21Aは水平断面形状が楕円形となっており、棒状の近接部材21Aの一端(先端)が斜めに切断されて傾斜面221が形成されている。そして、近接部材21Aが基板表面Wfに対向しながら離間配置されると、傾斜面221と基板表面Wfとが所定の間隔(ギャップG)を隔てて平行に対向する。近接部材21Aの水平断面は、基端部(後端部)から先端に形成された傾斜面221にかけてラッパ状に広がるように構成されている。したがって、振動子23Aからの超音波振動は傾斜面221に向けて近接部材21Aの内部にて均一に分散しながら伝播する。このように、この実施形態では、傾斜面221が本発明の「対向面」として機能する。
【0050】
また、棒状の近接部材21Aの周囲を取り囲む側面222(本発明の「非対向面」に相当)がノズル31から吐出される洗浄液の入射面となっている。側面(入射面)222は滑らかな曲面により形成されている。このため、ノズル31から側面222に供給された洗浄液は飛散することなく、スムーズに基板表面Wfと傾斜面221とで挟まれた間隙空間SPに回り込む。このため、近接部材21Aに供給された洗浄液を効率良く間隙空間SPに供給することが可能となっている。したがって、間隙空間SPに気体(空気)が大量に入り込むのを効果的に防止して、間隙空間SP内の洗浄液に超音波振動を確実に付与することができる。
【0051】
また、この実施形態によれば、近接部材21Aの先端に形成された傾斜面221は棒状の部材を切断する角度によって傾斜面221の大きさが異なる。このため、近接部材21Aの切断角度によって傾斜面221、つまり超音波照射面の大きさを自在に変更することができる。
【0052】
<その他>
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、基板Wを回転させながら近接部材を移動軌跡T上で移動(揺動)させることで近接部材を基板Wに対して相対移動させているが、近接部材を基板Wに対して相対移動させるための構成はこれに限定されない。例えば近接部材を固定配置した状態で基板Wを所定の方向に移動させながら洗浄処理を実行してもよい。また、近接部材および基板Wの双方を移動させながら洗浄処理を実行してもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、切換え弁51a,52aを切換え制御することで間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を2段階に変化させているが、3段階以上に変化させるようにしてもよい。この場合、ノズル31に洗浄液を供給可能であり、切換え弁を介装した分岐管(第1供給管)をさらに増設すればよい。これにより、例えば、回転駆動される基板Wの回転軸Rからの径方向における距離に応じて間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を3段階以上に変化させることで基板表面Wfに対する洗浄処理の面内均一性をさらに高めることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、切換え弁の切換え制御により間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速を変化させているが、洗浄液の流速制御方式はこれに限定されない。例えば、基板洗浄装置に装備される洗浄液供給機構として図10または図11に示す構成のものを採用することができる。
【0055】
図10は洗浄液供給機構の他の構成を示す図である。洗浄液供給機構3Aは、近接部材の非対向面に向けて洗浄液を吐出するノズル31A(本発明の「第2ノズル」に相当)と、ノズル31Aに洗浄液を供給可能な供給管55(本発明の「第2供給管」に相当)と有している。すなわち、供給管55の一方端がノズル31Aに接続される一方、供給管55の他方端が洗浄液供給源に接続されている。また、供給管55には、該供給管55を流通する洗浄液の流量を連続的に制御可能なMFC(マスフローコントローラ)56などの流量制御部が介装されている。そして、制御ユニット4は、基板表面Wfに対する近接部材の相対移動に応じて流量制御部を制御することでノズル31Aから吐出させる洗浄液の流量を制御する。この構成によれば、近接部材の相対移動に応じてノズル31Aからの洗浄液の吐出流量をきめ細かく調整できるので、基板表面Wfの各領域に対して最適な洗浄を行うことができる。
【0056】
図11は洗浄液供給機構のさらに別の構成を示す図である。洗浄液供給機構3Bは、近接部材21の非対向面に向けて洗浄液を吐出可能であって、洗浄液の吐出流速が互いに異なる複数(例えば3つ)のノズル61,62,63(本発明の「第3ノズル」に相当)を有している。この実施形態では、ノズル61,62,63から吐出される洗浄液の吐出流速が、それぞれVd1,Vd2,Vd3(Vd1>Vd2>Vd3)に設定されている。ノズル61,62,63は、近接部材21の移動軌跡Tに沿って、移動軌跡T上を移動する近接部材21に対向するように固定して配列されている。また、3つのノズル61,62,63のうち吐出流速が大きいノズルほど基板Wの端縁側に配置されている。つまり、基板Wの端縁側から中心側にかけてノズル61,62,63の順に配列している。また、図11に示すように、各ノズル61,62,63から吐出された洗浄液の着液位置(移動してくる近接部材21の非対向面)が近接部材21の移動方向に沿って並び、しかも隣接するように、各ノズル61,62,63から吐出される洗浄液の吐出角度範囲が設定されている。これにより、移動軌跡T上を移動する近接部材21に対して3つのノズル61,62,63のいずれかにより吐出された洗浄液が供給される。なお、各ノズル61,62,63の吐出口を近接部材21の移動方向に延びるスリット状に形成して、各ノズル61,62,63からの洗浄液の着液位置が近接部材21の移動方向に隣接しながら配列するように構成してもよい。
【0057】
この構成では、回転駆動される基板Wの表面Wfに対して各ノズル61,62,63から洗浄液が吐出される。この状態で近接部材21が移動軌跡T上を移動してくると、近接部材21が各ノズル61,62,63からの洗浄液と次々に交差し、各ノズル61,62,63からの洗浄液が順次、近接部材21に供給される。例えば、近接部材21が回転中心位置Pcから端縁位置Peに向けて移動すると、近接部材21に対してノズル63からの洗浄液(吐出流速:Vd3)、ノズル62からの洗浄液(吐出流速:Vd2)およびノズル61(吐出流速:Vd1)からの洗浄液が順次供給される。これにより、間隙空間SP内を流通する洗浄液の流速は回転軸Rから離れるにしたがって段階的(3段階)に高められる。これにより、中心部に比べ処理進行度合が遅れる端縁部に対する洗浄処理を促進させることができる。その結果、基板表面Wfに対する洗浄処理の面内均一性を高めることができる。しかも、この構成によれば、洗浄処理中に各ノズル61,62,63から吐出される洗浄液の流量を調整する必要がない。
【0058】
また、本発明に用いられる洗浄液としては、純水のほか、エッチング作用のある薬液等を用いることができる。また、洗浄液に界面活性剤を添加して基板表面Wfに対する濡れ性を向上させるようにしてもよい。
【実施例】
【0059】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0060】
実施例1〜3および比較例1,2
シリコンウエハ(ウエハ径:300mm)を用意し、該ウエハ表面に対して超音波振動を用いた洗浄処理を施したときのパーティクル除去率を評価した。パーティクルとしてSi屑によってウエハ表面が汚染されている場合について評価を行っている。パーティクル除去率の導出手順は以下のとおりである。
【0061】
最初に、枚葉式の基板洗浄装置(大日本スクリーン製造社製、スピンプロセッサSS―3000)を用いてウエハを強制的に汚染させる。具体的には、ウエハを回転させながらウエハ表面にパーティクル(Si屑)を分散させた分散液をウエハに供給する。ここでは、ウエハ表面に付着するパーティクルの数が約10000個となるように、分散液の液量、ウエハ回転数および処理時間を適宜調整する。その後、ウエハ表面に付着しているパーティクル(粒径;0.08μm以上)の数(初期値)を測定する。なお、パーティクル数の測定はKLA−Tencor社製のパーティクル評価装置SP1−TBIを用いて評価を行っている。
【0062】
続いて、基板洗浄装置にてウエハに対して超音波振動を用いた洗浄処理を施す。洗浄処理条件は以下のとおりである。ここでは、図12を参照しつつ洗浄処理条件について説明する。
【0063】
図12は洗浄処理条件を説明するための図である。先ず、ウエハを20rpmで回転させる。また、近接部材をウエハに対向させながらウエハの端縁位置からウエハの回転中心位置に移動させた後、ウエハの回転中心位置からウエハの端縁位置に移動させる動作(往復動作)を2回繰り返した。ここで、近接部材をウエハの端縁位置とウエハの回転中心位置との間で移動させる時間を8secに設定した。そのため、近接部材の往復動作を2回繰り返すことにより、近接部材の走査時間は、合計で32sec(8sec×4)となる。
【0064】
また、ノズルからの純水の吐出流量Qは表1に示すとおりとした。ここで、実施例1〜3および比較例2では、ノズルから近接部材(非対向面)に向けて純水を吐出している。一方、比較例1では、ノズルからウエハ表面に向けて純水を鉛直方向下向きに吐出している。つまり、間隙空間内ではほとんど純水を流通させていない。このため、比較例1では、ウエハ表面と近接部材とで挟まれた間隙空間内を流通する純水の流速Vを0(m/s)と規定した(表1)。また、純水の吐出流量Qとしては、1.5L/minが下限値となる。これは、吐出流量Qが1.5L/minより小さくなると、間隙空間に純水が入っていかなくなるからである。なお、ノズルの内径Dは3mmとなっている。したがって、ノズルからの純水の吐出流量とノズル内径Dとにより、ノズルからの純水の吐出流速が表1に示すとおりに導出される。
【0065】
また、実施例1〜3および比較例1では、超音波発信器からの発振出力を5(W)、発振周波数を6(MHz)とした。一方、比較例2では、超音波発信器からの発振を停止している。つまり、比較例2では、純水に超音波振動を付与していない。このため、比較例2では、超音波発振出力を0(W)と規定した(表1)。また、間隙空間のギャップGについては、表1に示すとおりに設定している。
【0066】
次に、間隙空間内を流通する純水の流速Vの求め方について説明する。ここでは、間隙空間内を流通する純水の流速Vは、間隙空間内の任意の空間断面Sを通過する純水の通過量から求められる流速Vaにノズルから吐出され間隙空間内の空間断面Sに至る純水の流速が加わっているとして、
【0067】
【数1】
となる。ここで、Vaは
【0068】
【数2】
となる。なお、、Q(L/min)はノズルから吐出される純水の吐出流量である。また、B(mm)は空間断面Sの幅、G(mm)は空間断面Sの高さ、つまり間隙空間のギャップである。したがって、B×Gは空間断面Sの面積を表す。また、式(2)中のB×Gに2分の1を乗じているのは、空間断面Sのうち気泡が2分の1を占め、純水が2分の1を占めていると仮定したことによる。さらに、式(2)中の分子は、間隙空間に供給される純水の流量を示している。ここでは、ノズルから近接部材に供給された純水の2分の1が間隙空間に供給されると仮定している。また、Vbは、
【0069】
【数3】
となる。なお、Dはノズルの内径である。ここで、式(3)において7で除しているのは、ノズルから吐出され間隙空間に入り込んだ純水が間隙空間内で7倍に広がって空間断面Sに至っていると仮定したことによる。つまり、Vbは、ノズルからの純水の吐出流速の7分の1の流速で純水が空間断面Sを通過することを示している。
【0070】
ここで、例えば、Q=1.5(L/min)、G=1.0(mm)における間隙空間内を流通する純水の流速Vを求めると次のようになる。先ず、Vaは
【0071】
【数4】
となる。また、Vbは
【0072】
【数5】
となる。したがって、間隙空間内を流通する純水の流速Vは
【0073】
【数6】
と求められる。このようにして求めた結果が、表1中の間隙空間内の純水の流速となっている。
【0074】
そして、こうした各洗浄条件で洗浄処理を受けたウエハ表面(表面全体)に付着しているパーティクル数をパーティクル評価装置を用いて測定する。それから、洗浄処理後のパーティクル数と洗浄処理前のパーティクル数(初期値)とを対比することでパーティクル除去率を算出している。
【0075】
【表1】
実施例1〜3から明らかなように、間隙空間内を流通する純水の流速Vが速いほどパーティクル除去率が向上している。つまり、ノズルからの純水の吐出流量Qが多いほど、またギャップGの間隔が狭いほど間隙空間内を流通する純水の流速Vが高められ、パーティクル除去率を向上させることができる。これに対し、ウエハ表面に向けて純水を供給し、間隙空間内に純水の流通がない条件(比較例1)では、ウエハ表面に付着するパーティクルをほとんど除去することができない。また、実施例1と同様な流速Vで純水を間隙空間内で流通させた場合であっても、超音波振動を純水に付与しない条件(比較例2)では、ウエハ表面に付着するパーティクルをほとんど除去することができない。
【0076】
次に、間隙空間内を流通する純水の流速をウエハ中心からの距離に応じて段階的に変化させた場合における洗浄特性を確認した(図13)。具体的には、ウエハ中心から径方向に25mmよりも大きく離れた領域(以下「端縁側領域」という)における純水の流速をウエハ中心から径方向に25mm以内の範囲にある領域(以下「中心側領域」という)における純水の流速に対して高めたときの洗浄特性の変化を確認した。
【0077】
図13はウエハ中心からの距離に対するパーティクル除去率を示すグラフである。図13から明らかなように、間隙空間内を流通する純水の流速を一定(0.8m/s)、つまり中心側領域と端縁側領域との間で同じとした場合には端縁側にいくにしたがってパーティクル除去率が低下することが分かる。これに対し、間隙空間内を流通する純水の流速を中心側領域に対して端縁側領域で高めた(0.8m/sから1.3m/s)場合には、端縁側領域におけるパーティクル除去率が改善していることが分かる。すなわち、一定の流速でウエハを洗浄した場合に対して洗浄特性の面内均一性を向上することができることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般に対して超音波振動を付与した洗浄液を供給して該基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄装置および基板洗浄方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】この発明にかかる基板洗浄装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板洗浄装置の主要な制御構成を示すブロック図である。
【図3】図1の基板洗浄装置の要部を示す図である。
【図4】流量制御ユニットの構成の一例を示す図である。
【図5】図1の基板洗浄装置の洗浄範囲を示す図である。
【図6】間隙空間内を流通する洗浄液の流速の変化を模式的に示す図である。
【図7】図1の基板洗浄装置により実行される洗浄特性を示す図である。
【図8】この発明にかかる基板洗浄装置の第2実施形態を示す図である。
【図9】図8の基板洗浄装置の要部を示す図である。
【図10】洗浄液供給機構の他の構成を示す図である。
【図11】洗浄液供給機構のさらに別の構成を示す図である。
【図12】洗浄処理条件を説明するための図である。
【図13】ウエハ中心からの距離に対するパーティクル除去率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0080】
3,3A,3B…洗浄液供給機構
4…制御ユニット(制御手段)
12…回転駆動源(回転手段)
21,21A…近接部材
23…振動子(超音波付与手段)
26…揺動駆動源(駆動手段)
31…ノズル(第1ノズル)
31A…ノズル(第2ノズル)
51,52…分岐管(第1供給管)
51a,52a…切換え弁
55…供給管(第2供給管)
56…流量制御部
61,62,63…ノズル(第3ノズル)
211…下面(対向面)
212…側面(非対向面)
221…傾斜面(対向面)
222…側面(非対向面)
Pc…回転中心位置
Pe…端縁位置
R…回転軸
SP…間隙空間
T…移動軌跡
W…基板
Wf…基板表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動が付与された洗浄液を用いて基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄装置において、
前記基板表面に対向する対向面を有し、該対向面を前記基板表面から離間配置させながら前記基板表面に沿って前記基板に対して相対移動自在に設けられた近接部材と、
前記近接部材を前記基板表面に沿って前記基板に対して相対移動させる駆動手段と、
前記基板表面と前記近接部材の対向面とで挟まれた間隙空間に前記洗浄液を供給するとともに、前記基板に対する前記近接部材の相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって前記間隙空間内を流通する前記洗浄液の流速を変化させる洗浄液供給機構と、
前記近接部材を介して前記洗浄液に超音波振動を付与する超音波付与手段と
を備え、
前記洗浄液供給機構は、前記近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて前記洗浄液を吐出することで前記洗浄液を前記非対向面から前記間隙空間に回り込ませて前記間隙空間に前記洗浄液を供給することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記基板を所定の回転軸回りに回転させる回転手段をさらに備え、
前記洗浄液供給機構は前記近接部材が前記回転軸から前記基板の径方向に離れるにしたがって前記間隙空間を流通する洗浄液の流速を高める請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記駆動手段は前記近接部材を駆動して前記基板の回転中心位置と前記基板の端縁位置とを通る移動軌跡上で移動させる請求項2記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄液供給機構から吐出される前記洗浄液の流量を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は前記基板に対する前記近接部材の相対移動に応じて前記洗浄液の流量を制御して前記間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させる請求項1ないし3のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給機構は前記近接部材の前記非対向面に向けて前記洗浄液を吐出する第1ノズルと、前記第1ノズルに前記洗浄液を供給可能な複数の第1供給管とを有し、
前記複数の第1供給管の各々には前記第1ノズルに対する前記洗浄液の供給/供給停止を切換える切換え弁が介装され、
前記制御手段は前記基板に対する前記近接部材の相対移動に応じて各切換え弁を切換えることで、前記第1ノズルから吐出させる前記洗浄液の流量を制御する請求項4記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄液供給機構は前記近接部材の前記非対向面に向けて前記洗浄液を吐出する第2ノズルと、前記第2ノズルに前記洗浄液を供給可能な第2供給管とを有し、
前記第2供給管には該第2供給管を流通する前記洗浄液の流量を連続的に制御可能な流量制御部が介装され、
前記制御手段は前記基板に対する前記近接部材の相対移動に応じて前記流量制御部を制御することで、前記第2ノズルから吐出させる前記洗浄液の流量を制御する請求項4記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液供給機構は前記近接部材の前記非対向面に向けて前記洗浄液を吐出可能であって、前記洗浄液の吐出流速が互いに異なる複数の第3ノズルを有し、前記複数の第3ノズルの各々から前記洗浄液を吐出させるとともに、
前記駆動手段は前記近接部材を各第3ノズルから吐出される洗浄液と交差するように移動させ、
前記近接部材に対して各第3ノズルからの前記洗浄液が順次供給されることで前記近接部材の移動に応じて前記間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させる請求項1ないし3のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記近接部材は親水性材料で形成される請求項1ないし7のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記近接部材は石英で形成される請求項8記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
超音波振動が付与された洗浄液を用いて基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄方法において、
前記基板表面に対向する対向面を有し、前記基板表面に沿って前記基板に対して相対移動自在な近接部材を前記基板表面から離間配置する配置工程と、
前記近接部材を前記基板表面に沿って前記基板に対して相対移動させる移動工程と、
前記基板表面と前記近接部材の対向面とで挟まれた間隙空間に前記洗浄液を供給するとともに、前記近接部材の相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって前記間隙空間内を流通する前記洗浄液の流速を変化させる洗浄液供給工程と、
前記近接部材を介して前記洗浄液に超音波振動を付与する超音波付与工程と、
前記洗浄液供給工程では、前記近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて前記洗浄液を吐出することで前記洗浄液を前記非対向面から前記間隙空間に回り込ませて前記間隙空間に前記洗浄液を供給することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項1】
超音波振動が付与された洗浄液を用いて基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄装置において、
前記基板表面に対向する対向面を有し、該対向面を前記基板表面から離間配置させながら前記基板表面に沿って前記基板に対して相対移動自在に設けられた近接部材と、
前記近接部材を前記基板表面に沿って前記基板に対して相対移動させる駆動手段と、
前記基板表面と前記近接部材の対向面とで挟まれた間隙空間に前記洗浄液を供給するとともに、前記基板に対する前記近接部材の相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって前記間隙空間内を流通する前記洗浄液の流速を変化させる洗浄液供給機構と、
前記近接部材を介して前記洗浄液に超音波振動を付与する超音波付与手段と
を備え、
前記洗浄液供給機構は、前記近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて前記洗浄液を吐出することで前記洗浄液を前記非対向面から前記間隙空間に回り込ませて前記間隙空間に前記洗浄液を供給することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記基板を所定の回転軸回りに回転させる回転手段をさらに備え、
前記洗浄液供給機構は前記近接部材が前記回転軸から前記基板の径方向に離れるにしたがって前記間隙空間を流通する洗浄液の流速を高める請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記駆動手段は前記近接部材を駆動して前記基板の回転中心位置と前記基板の端縁位置とを通る移動軌跡上で移動させる請求項2記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄液供給機構から吐出される前記洗浄液の流量を制御する制御手段をさらに備え、
前記制御手段は前記基板に対する前記近接部材の相対移動に応じて前記洗浄液の流量を制御して前記間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させる請求項1ないし3のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液供給機構は前記近接部材の前記非対向面に向けて前記洗浄液を吐出する第1ノズルと、前記第1ノズルに前記洗浄液を供給可能な複数の第1供給管とを有し、
前記複数の第1供給管の各々には前記第1ノズルに対する前記洗浄液の供給/供給停止を切換える切換え弁が介装され、
前記制御手段は前記基板に対する前記近接部材の相対移動に応じて各切換え弁を切換えることで、前記第1ノズルから吐出させる前記洗浄液の流量を制御する請求項4記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄液供給機構は前記近接部材の前記非対向面に向けて前記洗浄液を吐出する第2ノズルと、前記第2ノズルに前記洗浄液を供給可能な第2供給管とを有し、
前記第2供給管には該第2供給管を流通する前記洗浄液の流量を連続的に制御可能な流量制御部が介装され、
前記制御手段は前記基板に対する前記近接部材の相対移動に応じて前記流量制御部を制御することで、前記第2ノズルから吐出させる前記洗浄液の流量を制御する請求項4記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液供給機構は前記近接部材の前記非対向面に向けて前記洗浄液を吐出可能であって、前記洗浄液の吐出流速が互いに異なる複数の第3ノズルを有し、前記複数の第3ノズルの各々から前記洗浄液を吐出させるとともに、
前記駆動手段は前記近接部材を各第3ノズルから吐出される洗浄液と交差するように移動させ、
前記近接部材に対して各第3ノズルからの前記洗浄液が順次供給されることで前記近接部材の移動に応じて前記間隙空間内を流通する洗浄液の流速を変化させる請求項1ないし3のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記近接部材は親水性材料で形成される請求項1ないし7のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記近接部材は石英で形成される請求項8記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
超音波振動が付与された洗浄液を用いて基板表面に対して洗浄処理を施す基板洗浄方法において、
前記基板表面に対向する対向面を有し、前記基板表面に沿って前記基板に対して相対移動自在な近接部材を前記基板表面から離間配置する配置工程と、
前記近接部材を前記基板表面に沿って前記基板に対して相対移動させる移動工程と、
前記基板表面と前記近接部材の対向面とで挟まれた間隙空間に前記洗浄液を供給するとともに、前記近接部材の相対移動に応じて洗浄液供給を変化させることによって前記間隙空間内を流通する前記洗浄液の流速を変化させる洗浄液供給工程と、
前記近接部材を介して前記洗浄液に超音波振動を付与する超音波付与工程と、
前記洗浄液供給工程では、前記近接部材の対向面と異なる非対向面に向けて前記洗浄液を吐出することで前記洗浄液を前記非対向面から前記間隙空間に回り込ませて前記間隙空間に前記洗浄液を供給することを特徴とする基板洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−306108(P2008−306108A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153962(P2007−153962)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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