説明

基板洗浄装置および基板洗浄方法

【課題】基板の一方の面の被加工膜をエッチングして剥離するときに、薬液が基板の他方の面に飛散することを防止する。
【解決手段】基板8を支持する基板ホルダー3を洗浄槽内に回転可能に設け、基板上に形成された被加工膜18の上に薬液を吐出するノズル5を基板ホルダーの上方で横方向に移動可能に設け、ノズルを基板の上方で横方向に移動させると共に、ノズルから基板上に薬液を吐出させる制御装置を備え、基板から跳ねた液滴状の薬液を検知する液滴センサ10を備え、制御装置は、液滴センサから出力された検知信号に応じてノズルの横方向への移動を停止させるように制御した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハに形成された被加工膜をエッチングにより剥離する工程を実行するのに好適な基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板洗浄装置の一例として、ウエハを回転させると共に、ノズルから薬液をウエハ上に吐出させながらエッチングを実行するスピンエッチング装置が知られている。この種のスピンエッチング装置において、例えば面内均一性をあげるために、ノズルをウエハの上方において揺動させるようにしたものもある(特許文献1参照)。しかしながら、上記スピンエッチング装置によってウエハの裏面の被加工膜をエッチングにより剥離する場合、被加工膜のエッチング終了時に下層膜が露出したとき、薬液が液滴状になって跳ねることがあり、その跳ねた薬液がウエハの表面側(デバイス面側)へ飛散して回り込むおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−36981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、基板の一方の面の被加工膜をエッチングして剥離するときに、薬液が基板の他方の面に飛散することを防止できる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様の基板洗浄装置は、洗浄槽内に回転可能に設けられ基板を支持する基板ホルダーと、前記基板ホルダーの上方で横方向に移動可能に設けられ前記基板上に形成された被加工膜の上にエッチング用の薬液を吐出するノズルと、前記ノズルを前記基板の上方で横方向に移動させると共に、前記ノズルから前記基板上に前記薬液を吐出させる制御装置と、前記基板から跳ねた液滴状の薬液を検知し、検知信号を前記制御装置に出力する液滴センサとを備え、前記制御装置は、前記液滴センサから出力された前記検知信号に応じて前記ノズルの横方向への移動を停止させるように制御するところに特徴を有する。
【0006】
本発明の一態様の基板洗浄方法は、洗浄槽内に回転可能に設けられた基板ホルダー上に基板を支持させて前記基板ホルダーを回転させると共に、前記基板の上方で前記基板の上にエッチング用の薬液を吐出するノズルを横方向に往復移動させながら、前記基板の裏面の被加工膜に対して前記ノズルから薬液を吐出させて前記被加工膜をエッチングし、そして、前記被加工膜をエッチングしているときに、液滴センサによって前記基板から跳ねた液滴状の薬液を検知したら、前記ノズルの横方向への移動を停止させるように制御するところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板の一方の面の被加工膜をエッチングして剥離するときに、薬液が基板の他方の面に飛散することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態を示すもので、基板洗浄装置の全体構成を概略的に示す図
【図2】基板ホルダーおよびウエハの上面図
【図3】シリコン窒化膜の剥離工程を説明する図(その1)
【図4】シリコン窒化膜の剥離工程を説明する図(その2)
【図5】本発明の第2実施形態を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図4を参照しながら説明する。尚、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分は同一又は類似の符号で表している。図1は、本実施形態の基板洗浄装置1の全体構成を概略的に示す図である。この図1に示すように、基板洗浄装置1は、洗浄槽(エッチング槽)2と、洗浄槽2内に回転可能に設けられた基板ホルダー3と、基板ホルダー3を回転駆動する駆動モータ4と、基板ホルダー3の上方において移動可能に設けられ薬液を吐出するノズル5と、基板ホルダー3の上方において移動可能に設けられ純水を吐出するノズル21とを備えて構成されている。
【0010】
洗浄槽2の底部には、廃液口6が形成されており、この廃液口6には廃液管7が接続されている。基板ホルダー3の上面には、基板として例えばシリコンウエハ(以下、ウエハと称す)8が載置支持される。この場合、基板ホルダー3の上面には、Nガスを噴射する噴射孔や噴射溝(いずれも図示しない)が設けられており、この噴射されたNガスにより上記ウエハ8を非接触でベルヌーイ吸着することが可能な構成となっている。そして、図2にも示すように、基板ホルダー3の上面には、ウエハ8を囲むように例えば6本のピン部9がほぼ等間隔に立設されており、これらピン部9がウエハ8の外周部に当接することによりウエハ8を保持する構成となっている。
【0011】
また、図3(a)にも示すように、6本のピン部9の中の1つのピン部9の上端部には、ウエハ8から跳ねた(または飛散した)液滴状の薬液を検知する液滴センサ10が配設されている。この液滴センサ10は、例えば光センサやイメージセンサで構成されており、跳ねた液滴状の薬液を光によりまたは画像認識処理により検知する構成となっている。
【0012】
また、図1に示すように、基板ホルダー3の下面中心に下方へ向けて突設された回転軸11は、基板洗浄装置1の図示しないフレームに固定されたベアリング12により回転可能に支持されている。駆動モータ4は、上記回転軸11を介して基板ホルダー3を回転駆動する。駆動モータ4は、マイコン等から構成された制御装置13により駆動制御されるように構成されている。制御装置13は、前記液滴センサ10により検知された液滴検知信号を無線通信装置(図示しない)を介して受ける構成となっている。
【0013】
一方、ノズル5には、薬液供給源14が薬液供給管15を介して接続されている。薬液供給源14は、エッチング用の薬液(例えば高温HF(フッ酸)、常温HF、HFとHNOとの混合液など)を貯留する薬液貯留部と、この薬液貯留部内の薬液を送り出す送出ポンプと、薬液の供給をオンオフするバルブとを備えている。薬液供給源14は、制御装置13により駆動制御されることにより、薬液をノズル5へ送り出すことが可能な構成となっている。この場合、制御装置13は、薬液供給源14を駆動制御することにより、薬液の送り出しの開始・停止、送り出し量を適宜制御可能である。
【0014】
また、ノズル5は、図示しないXYZ駆動機構によってXYZ方向に移動されることにより、ウエハ8の上面からの高さやウエハ8上の位置を所望の高さや所望の位置に位置付けることが可能なように構成されている。そして、制御装置13は、上記XYZ駆動機構を駆動制御することにより、ノズル5の高さや位置等を適宜調整することが可能であり、例えば、ノズル5のウエハ8上面からの高さを設定高さに固定しながら、ノズル5をウエハ8の中心を通り且つウエハ8の径方向に往復移動させる(即ち、横方向にスキャンさせる)ことが可能である。
【0015】
また、ノズル21には、純水供給源22が純水供給管23を介して接続されている。純水供給源22は、純水を貯留する純水貯留部と、この純水貯留部内の純水を送り出す送出ポンプと、純水の供給をオンオフするバルブとを備えている。純水供給源22は、制御装置13により駆動制御されることにより、純水をノズル21へ送り出すことが可能な構成となっている。この場合、制御装置13は、純水供給源22を駆動制御することにより、純水の送り出しの開始・停止、送り出し量を適宜制御可能である。
【0016】
また、ノズル21は、図示しないXYZ駆動機構によってXYZ方向に移動されることにより、ウエハ8の上面からの高さやウエハ8上の位置を所望の高さや所望の位置に位置付けることが可能なように構成されている。そして、制御装置13は、上記XYZ駆動機構を駆動制御することにより、ノズル21の高さや位置等を適宜調整することが可能であり、例えば、ノズル21のウエハ8上面からの高さを設定高さに固定しながら、ノズル21をウエハ8の中心を通り且つウエハ8の径方向に往復移動させる(即ち、横方向にスキャンさせる)ことが可能である。尚、図1に示すノズル21の位置は、退避位置であり、ノズル21を使用しないときには、上記退避位置へ移動させて退避させておく。また、薬液供給用のノズル5についても、これを使用しないときには、図示しない退避位置へ移動させて退避させておくことが可能になっている。
【0017】
次に、上記構成の基板洗浄装置1を使用してウエハ8の裏面の積層膜をエッチングにより剥離する工程について、図3および図4を参照して説明する。尚、ウエハ8裏面の積層膜の剥離は、例えばウエハ8の反り低減のために行う。
【0018】
まず、図3(a)に示すように、ウエハ8の全表面には、下から順にシリコン酸化膜16、ポリシリコン膜17、シリコン窒化膜18からなる積層膜が予め形成されている。このウエハ8の裏面(図3(a)中の上面)のシリコン窒化膜18を剥離するために、ウエハ8を基板ホルダー3の上に、図3(a)に示すようにセットする。そして、基板ホルダー3を回転させると共に、ノズル5をウエハ8の径方向に往復移動(スキャン)させながら、該ノズル5から薬液として例えば高温HFをウエハ8上に吐出させる。これにより、シリコン窒化膜18のエッチングが進行する。この場合、シリコン窒化膜18はエッチングレートの遅い膜であるが、ノズル5をスキャンさせているので、ウエハ8の上面においてシリコン窒化膜18がほぼ均一にエッチングされていく。
【0019】
この後、図3(b)に示すように、ウエハ8の裏面側のシリコン窒化膜18が剥離され、下層膜のポリシリコン膜17が露出するようになると、ポリシリコン膜17の上面が疎水性を有する面(疎水面)であることから、薬液HFがポリシリコン膜17の上面で液滴状になって跳ねるようになる。すると、ピン部9の上部の液滴センサ10が上記跳ねたHFの液滴を検知し、その検知信号を制御装置13に出力する。
【0020】
制御装置13は、上記検知信号を受けて、ノズル5のスキャンを停止させ、ノズル5をウエハ8の中心に位置させる(図4(c)参照)。これにより、疎水性を有する下地膜であるポリシリコン膜17が露出しても、薬液HFが液滴状になって流れるだけとなり、薬液HFの液滴が跳ねることを防止できる。このため、薬液HFの液滴がウエハ8の表面側(デバイス面側、図4(c)中の下面側)へ飛散して回り込むことを防止できる。特に、薬液HFが回り込み易いピン部9周辺においても、薬液HFの液滴のウエハ8表面側への飛散(回り込み)を防止できる。尚、上記ノズル5を停止させたときの状態は、下地膜のポリシリコン膜17が露出しており、シリコン窒化膜18のエッチングはほぼ終了しており、いわゆるオーバーエッチングを行っている状態である。
【0021】
また、上記した剥離工程を終了した後においては、液滴センサ10を洗浄する処理を実行するように構成されている。液滴センサ10には、検知面に付着した薬液の液滴を洗浄する洗浄装置(図示しない)が配設されており、この洗浄装置を制御装置13により駆動制御することにより、洗浄液(純水等)を液滴センサ10の検知面に噴射して付着した薬液の液滴を洗浄除去し、乾燥させる。これにより、次のウエハ8に対しての剥離工程を支障なく実行できる。
【0022】
尚、上記したオーバーエッチングを行う必要がない場合には、制御装置13は、液滴センサ10により検知された薬液HFの液滴の検知信号を受けたときに、薬液HFの供給を停止し、純水を供給してウエハ8を洗浄するようにしても良い。具体的には、図4(d)に示すように、ノズル5のスキャンおよび薬液HFの供給を停止してノズル5を退避位置へ移動させた後、純水供給用のノズル21をウエハ8の中心の上方位置へ移動させ、ノズル21から純水をウエハ8上へ吐出させて洗浄する。この場合、ノズル21をウエハ8の径方向に往復移動させるスキャンを続けても良いし、スキャンを停止させても良い。尚、ノズル21のスキャンを停止させる場合には、ノズル21をウエハ8の中心に位置させることが好ましい。この構成によれば、疎水性を有するポリシリコン膜17が露出したときに、薬液HFの供給を停止して純水を供給するように変更したので、該純水が液滴状になって跳ねてウエハ8の表面側(デバイス面側、図4(d)中の下面側)へ飛散したとしても、支障がない。
【0023】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には、同一符号を付している。この第2実施形態では、図5に示すように、洗浄槽2の底部の廃液口6に接続された廃液管7に薬液の濃度を検知する濃度計19を配設した。この濃度計19は、廃液管7内を流れる薬液の組成の変動を検知する機能を有している。濃度計19は、シリコン窒化膜18のエッチングが終了して薬液に不純物がほとんど含まれなくなったことを検知したときに、エッチング終了検知信号を出力して制御装置13に与える機能を有している。
【0024】
そして、制御装置13は、濃度計19からのエッチング終了検知信号および液滴センサ10からの検知信号のいずれか一方を受けたときに、前述した処理(図4(c)または図4(d)参照)を実行するように構成されている。上述した以外の第2実施形態の構成は、第1実施形態と同じ構成となっている。従って、第2実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第2実施形態によれば、シリコン窒化膜18のエッチング終了を検知するセンサとして濃度計19を別途設けたので、エッチング終了検知をより一層正確に実行することができる。
【0025】
(他の実施形態)
本発明は、上記各実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張できる。
【0026】
上記第1実施形態では、1つのピン部9に1個の液滴センサ10を配設したが、複数のピン部9にそれぞれ液滴センサ10を配設しても良い。また、液滴センサを、ピン部9に設けることを止めて、洗浄槽2の内部の固定部にウエハ8の外周部に臨むように設ける構成としても良い。
【0027】
更に、上記第2実施形態では、廃液管7に濃度計19を配設したが、これに代わる薬液組成センサとして、廃液管7を流れる薬液の組成の変動を検知する同様の機能を有する吸光光度計を廃液管7に配設しても良い。更にまた、濃度計19または吸光光度計の代わりに、ウエハ8の外周部を監視してシリコン窒化膜18の膜厚を測定する光学的な膜測モニタ(膜厚センサ)を設け、この膜測モニタによりウエハ8の外周部の干渉縞を監視し、干渉縞が消えた(シリコン窒化膜18の膜厚がほぼ零になった)ときに、シリコン窒化膜18のエッチング終了を検知して検知信号を出力するように構成しても良い。また、第2実施形態において、濃度計19または吸光光度計を設けたままの構成で、上記膜測モニタを設けて併用するように構成しても良い。
【0028】
また、上記各実施形態では、薬液HF供給用のノズル5と純水供給用のノズル21を設けたが、これに限られるものではない。例えば、他の1種類以上の薬液を供給する1つ以上のノズル(および1つ以上の薬液供給源および1つ以上のXYZ駆動装置など)を適宜設けるように構成しても良く、この場合図4(d)において、純水用のノズル21に代えて他の薬液供給用のノズルから薬液をウエハ8上へ吐出させるように制御することもできる。
【符号の説明】
【0029】
図面中、1は基板洗浄装置、2は洗浄槽、3は基板ホルダー、5はノズル、8はウエハ、9はピン部、10は液滴センサ、13は制御装置、14は薬液供給源、16はシリコン酸化膜、17はポリシリコン膜、18はシリコン窒化膜、19は濃度計、21はノズル、22は純水供給源である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽内に回転可能に設けられ基板を支持する基板ホルダーと、
前記基板ホルダーの上方で横方向に移動可能に設けられ前記基板上に形成された被加工膜の上にエッチング用の薬液を吐出するノズルと、
前記ノズルを前記基板の上方で横方向に移動させると共に、前記ノズルから前記基板上に前記薬液を吐出させる制御装置と、
前記基板から跳ねた液滴状の薬液を検知し、検知信号を前記制御装置に出力する液滴センサとを備え、
前記制御装置は、前記液滴センサから出力された前記検知信号に応じて前記ノズルの横方向への移動を停止させるように制御することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄槽の底部に設けられた廃液管の内部に配設され、前記廃液管内を流れる薬液の組成の変動を検知し、検知信号を前記制御装置に出力する薬液組成センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記薬液組成センサから出力された前記検知信号に応じて前記ノズルの横方向への移動を停止させるように制御することを特徴とする請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記基板の前記被加工膜の膜厚を測定し、膜厚が略零になったときに検知信号を前記制御装置に出力する膜厚センサをさらに備え、
前記制御装置は、前記膜厚センサから出力された前記検知信号に応じて前記ノズルの横方向への移動を停止させるように制御することを特徴とする請求項1または2記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
洗浄槽内に回転可能に設けられた基板ホルダー上に基板を支持させて前記基板ホルダーを回転させると共に、前記基板の上方で前記基板の上にエッチング用の薬液を吐出するノズルを横方向に往復移動させながら、前記基板の裏面の被加工膜に対して前記ノズルから薬液を吐出させて前記被加工膜をエッチングし、
前記被加工膜をエッチングしているときに、液滴センサによって前記基板から跳ねた液滴状の薬液を検知したら、前記ノズルの横方向への移動を停止させるように制御することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項5】
前記基板の上には、疎水面を有する下地膜が形成され、
前記被加工膜は、前記下地膜の上に形成されていることを特徴とする請求項4記載の基板洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−9277(P2011−9277A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148609(P2009−148609)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】