説明

多孔質薄膜の製造方法、多孔質薄膜およびこれを用いた半導体装置

【課題】 成膜が容易で、高速で成膜可能な低誘電率薄膜を提供する。
【解決手段】気相より、空孔生成材料と、骨格生成材料とを、基板表面に供給する工程と、前記基板表面で、前記骨格生成材料によって生成される骨格が前記空孔生成材料を取り囲むように画定された薄膜を成膜する工程と、前記薄膜から前記空孔生成材料を除去し、空孔を形成する工程とを含み、前記空孔を前記骨格が取り囲むように形成された多孔質薄膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質薄膜の製造方法、多孔質薄膜およびこれを用いた半導体装置に係り、特に気相成長工程を用いた多孔質薄膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高速化・低消費電力化には、層間絶縁膜の低誘電率化が重要な課題である。そして低誘電率化を目的として種々の工夫がなされており、本発明者らは、空孔が規則的に配列された誘電体薄膜を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
このような誘電体薄膜は、塗布法により、基板上に脱水縮合によるシロキサン結合を生成しうる少なくとも1種の化合物と、有機高分子とを含む塗布液を基板上に塗布した後、シロキサン結合を生成するための加熱工程と、引き続き有機高分子を除去するための加熱工程とを経て形成される。
【0004】
しかしながらこのような低誘電率絶縁膜は、未架橋の官能基が多数残存し、十分な膜強度を得ることができないという問題があった。またシラノール基が多数残存する場合は、膜の吸湿性が問題となることがある。また塗布法では、成膜から焼成に要するプロセス時間が長いことが実用上の大きな課題となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−17482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来の低誘電率薄膜は成膜から焼成に要するプロセス時間が長いことが実用上の大きな課題となっている。
また、このような低誘電率薄膜からなる誘電体薄膜上にスパッタリング法で配線層を形成し、多層配線構造を形成するに際し、前処理としてプラズマ処理を行なうことは極めて有効であるとされてきたが、メゾポーラス薄膜などの空孔率の高い薄膜の場合、特にプラズマダメージを生じ易く、このダメージに起因してリークの発生や配線層の剥離を生じ易いという問題があった。
【0007】
さらにまた、半導体装置の微細化に伴い、前述したようなダマシン構造のみならず層間絶縁膜しての低誘電率薄膜と導体層との密着性の向上は、極めて深刻な課題となっている。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、成膜が容易で、高速で成膜可能な低誘電率薄膜を提供することを目的とする。
また、低誘電率薄膜と導体層との密着性を高め、プラズマ処理による誘電体薄膜の劣化を抑制し、信頼性の高い配線構造をもつ半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明の方法では、気相より、空孔生成材料と、骨格生成材料とを、基板表面に供給する工程と、前記基板表面で、前記骨格生成材料によって生成される骨格が前記空孔生成材料を取り囲むように画定された薄膜を成膜する工程と、前記薄膜から前記空孔生成材料を除去し、空孔を形成する工程とを含み、前記空孔を前記骨格が取り囲むように形成された多孔質薄膜を形成する。
この構成により、気相中で複数の材料を反応させることで、界面活性剤などで構成され孔を形成するポロジェン(空孔生成分子)すなわち空孔生成材料が除去された部分に空孔が生成され、空孔をTEOSなどの骨格生成材料が囲む構造の多孔質薄膜が生成され、低誘電率ながらも機械的強度の高い膜を形成することができる。気相で成膜することにより、分子自体に自己凝集能力があって、ポアサイズの分布が比較的そろった膜を得ることができる。また気相で形成されるため、骨格形成材料の架橋度を高めることができる。従ってより硬度の高い低誘電率薄膜を形成することができる。さらにまた気相で形成されるため、空孔生成材料と骨格生成材料の両方を調整することができ、空孔率および誘電率の調整が容易である。また弾性率をあげることができ、k値を下げてもモジュラスを高くすることができる。さらにまた、気相で形成されるため、塗布法による場合に比べて成膜に要する時間が大幅に低減される。
【0009】
また、本発明の方法では、前記供給する工程が、前記空孔生成材料と、前記骨格生成材料とを順次供給する工程であるものを含む。
この構成により、前記空孔生成材料と、前記骨格生成材料とを順次供給することにより、効率よく基板表面で反応を生ぜしめることができる。
【0010】
また、本発明の方法では、前記供給する工程が、前記空孔生成材料と、前記骨格生成材料とを交互に供給する工程であるものを含む。
この構成により、基板表面において、空孔生成材料と、骨格生成材料との接触面積が大きくなり、良好な膜形成が可能となる。
【0011】
また、本発明の方法では、前記供給する工程が、前記空孔生成材料と、前記骨格生成材料とを同時に供給する工程であるものを含む。
この構成により、気相において空孔生成材料と、骨格生成材料とを混ぜあわせた状態で、基板表面に導くことができ、良好な膜形成が可能となる。
【0012】
また、本発明の方法では、前記供給する工程は、固体または液体成分を気化させることにより前記空孔生成材料を含むガスを生成する工程を含むものを含む。
【0013】
また、本発明の方法では、前記供給する工程は、液体または固体成分を霧化させることにより前記空孔生成材料を含むガスを生成する工程を含むものを含む。
【0014】
また、本発明の方法では、前記供給する工程は、固体または液体成分を気化させることにより前記骨格生成材料を含むガスを生成する工程を含むものを含む。
【0015】
また、本発明の方法では、前記供給する工程は、液体または固体成分を霧化させることにより前記骨格生成材料を含むガスを生成する工程を含むものを含む。
【0016】
また、本発明の方法では、前記供給する工程は、前記ガスを帯電させる工程を含むものを含む。
【0017】
また、本発明の方法では、前記供給する工程は、前記ガスの組成比を変化させる工程を含むものを含む。
【0018】
また、本発明の方法では、前記供給する工程は、前記ガスの組成比を変化させる工程を含むものを含む。
【0019】
また、本発明の方法では、前記供給する工程は、前記ガスの組成比を1分子層ごとに変化させる工程を含むものを含む。
【0020】
また、本発明の方法では、前記供給する工程は、前記ガスの組成比を1原子層ごとに変化させる工程を含むものを含む。
【0021】
また、本発明の方法では、前記空孔形成材料は、CTAC系材料を溶媒と共に霧化することによって得られたものであるものを含む。
【0022】
また、本発明の方法では、前記空孔形成材料は、PEO系材料を溶媒と共に霧化することによって得られたものであるものを含む。
【0023】
また、本発明の方法では、前記空孔形成材料は、PPO系材料を溶媒と共に霧化することによって得られたものであるものを含む。
【0024】
また、本発明の方法では、前記骨格形成材料は、TEOSを気化または霧化することによって得られたものであるものを含む。
【0025】
また、本発明の方法では、前記骨格形成材料は、MTEOSを気化または霧化することによって得られたものであるものを含む。
【0026】
また、本発明の方法では、前記骨格形成材料は、DMDEOSを気化または霧化することによって得られたものであるものを含む。
【0027】
また、本発明の方法では、前記骨格形成材料は、TMS[4MS、3MS]を気化または霧化することによって得られたものであるものを含む。
【0028】
また、本発明の方法では、骨格の周りに多数の空孔が配置された前記多孔質薄膜表面に、反応性プラズマを供給し、前処理を行なう工程と、前記前処理のなされた前記多孔質薄膜表面にスパッタリング法により導電性膜を形成する工程とを含み、前記前処理工程に先立ち、前記多孔質薄膜表面に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルクロロシラン(TMCS)分子のうちの少なくとも1種を含むガスを接触させる工程を含むものを含む。
【0029】
かかる構成によれば、Si−O結合などを主成分とする骨格の周りに多数の空孔が配置された多孔質薄膜表面に、HMDS、TMCS分子のうちの少なくとも1種を含むガスを接触させることにより、プラズマ耐性を持たせることができ、プラズマを用いた前処理に際しても、プロセスダメージを防止することができ、良好な前処理表面を得ることができるため、スパッタリングによる導体層との密着性の向上を図ることができる。
【0030】
すなわち、プラズマ処理によって、多孔質薄膜表面特に疎水性処理のなされた多孔質薄膜表面で、Si-CH3結合→Si-OH結合、Si-H結合→Si-OH結合、Si-O-Si結合→2Si-OH結合のように結合が変化する、あるいは、一旦、ラジカルが形成されてからSi-OH結合に変化するなど、H2Oが吸着するサイトを新たに形成することにより、せっかく前処理を行なって、多孔質薄膜表面と導体層表面との密着性を向上しようとしても、プラズマダメージで多孔質薄膜の特性が劣化するという問題があったのに対し、上記方法によれば、HMDS、TMCS分子のうちの少なくとも1種を含むガスを接触させることにより、Si-CH3結合、Si-H結合、Si-O-Si結合などの結合の安定化をはかり、プラズマ耐性を持たせることができ、プラズマを用いた前処理に際しても、プロセスダメージを防止し、スパッタリング薄膜との密着性の高い清浄な誘電体表面を形成することができる。この結果、高品質の多孔質薄膜を得ることができ、寄生容量の増大も十分に抑制され、リーク電流の低減をはかることができる。
【0031】
また、本発明の方法では、前記多孔質薄膜は、さらに疎水化処理を行う工程を含むものを含む。
【0032】
この構成によれば、成膜中に疎水化処理を行うことができるため、より短時間で信頼性の高い多孔質薄膜を形成することができる。また、疎水化処理のなされた薄膜の表面は、Si-CH3結合、Si-H結合、Si-O-Si結合などの結合を持つことが多く、プラズマ処理によりこの結合がダメージを受け、Si−OH結合となりやすいという問題があるが、本発明の方法によれば、プラズマ耐性が高く、信頼性の高い配線構造を得ることができる。
【0033】
なお、ここで処理に用いるシリカ誘導体は単独で用いてもよいしまた、連続、同時、交互など複数種のシリカ誘導体の組合せも適用可能である。これらのシリカ誘導体は多孔質薄膜の疎水化処理及びプラズマ処理前のプラズマ耐性改善のための処理のいずれに適用可能である。
【0034】
また、プラズマ処理前のプラズマ耐性改善のための処理は高濃度特に超臨界TMCS処理であるのが望ましい。これはHMDS等の他のシリカ誘導体の場合も同様である。
【0035】
さらにまた、使用する原料ガスの濃度を調整することにより空孔度は適宜変更可能であり、極めて作業性よく所望の誘電率の絶縁体薄膜を形成することが可能となる。
従って、低誘電率薄膜を容易に形成することができ、寄生容量の低減をはかり、半導体装置の高速化を図ることが可能となる。
【0036】
ここでHMDSはヘキサメチルシラザン((CHSiNHSi(CH)、TMCSは、トリメチルクロロシラン((CHSiClである。
【0037】
また、本発明の方法では、前記薄膜を成膜する工程は熱重合またはプラズマ重合のいずれかを用いた工程であるものを含む。
【0038】
また、本発明では、空孔を骨格で囲むように形成された多孔質薄膜であって、厚さ方向で前記空孔の孔径が変化していることを特徴とする。
この構成によれば、気相反応により生成されるため、空孔の孔径を制御性よく変化させることができる。
【0039】
また、本発明の半導体装置は、上層および下層を異なる膜ではさむように形成された多孔質薄膜を含む半導体装置であって、前記空孔の孔径が中間部で大きく、前記上層および下層との界面でより小さくなるように変化している。
この構成によれば、孔径を良好に制御することができるため、隣接する膜との界面では空孔の孔径を小さくして緻密な膜とし、密着性を高めつつも、中間部では孔径を大きくして総体的に低誘電率の膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の方法によれば、気相中で複数の材料を反応させることで、膜中に空孔が導入され、低誘電率ながらも高い機械的強度を有する低誘電率薄膜を形成することができる。また成膜中に疎水化処理を施すことができるため、低誘電率ながらも機械的強度の高い膜を形成することができる。気相で成膜することにより、分子自体に自己凝集能力があって、ポアサイズの分布が比較的そろった膜を得ることができる。また気相で形成されるため、骨格形成材料の架橋度を高めることができる。従ってより硬度の高い低誘電率薄膜を形成することができる。また弾性率をあげることができ、k値を下げてもモジュラスを高くすることができる。さらにまた、気相で形成されるため、塗布法による場合に比べて成膜に要する時間が大幅に低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明に係る半導体装置の製造方法の一実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1として、この多孔質薄膜を半導体装置の層間絶縁膜として用いたシングルダマシン配線構造の製造方法について説明する。
【0042】
この方法は、図1にフローチャート、図2(a)乃至図6(l)に製造工程図を示すように、シングルダマシン配線構造の層間絶縁膜を気相成長により形成したメゾポーラスシリカ薄膜からなる多孔質薄膜で構成することを特徴とするもので、この多孔質薄膜上にスパッタリング法により配線層を形成する。なおここで、多孔質薄膜を気相成長法により成膜したのち、成膜チャンバー内で、HMDS分子に接触させプラズマ耐性を向上する耐性付与工程を含む。
【0043】
プロセスとしては上述した層間絶縁膜成膜後、配線層の形成に先立ち、成膜チャンバー内で、HMDS分子に接触させる工程(耐性付与工程)を付加したことを特徴とする。また本実施の形態では、さらにプロセスごとにプロセスダメージを回復するためのリカバリー処理工程を付加した。上記2点が異なるのみで他は従来のシングルダマシン配線構造の製造プロセスと同様である。
【0044】
図7はここで用いる気相成長プロセスのタイムチャートであり、空孔生成材料としてのPEOガスと、骨格形成材料としてのTEOSとを順次チャンバーに供給し、気相成長により薄膜を成膜した後、前記薄膜から前記空孔生成材料を除去し、空孔を形成するとともに前記空孔を前記骨格が取り囲むように形成された多孔質薄膜を形成する。成膜後、窒素Nを供給しながら上記ガスを排出しつつ一旦室温近くまで降温する。
この後、窒素Nを供給しながら15分間で室温から400℃まで昇温し、次いで400℃で窒素を流しながら30分維持した後、窒素の供給を停止して真空吸引を行い0.4Pa以下にして20分維持した後、HMDS/Nの混合ガスを供給する。最初30分間は0.7g/min、後の60分間は1.4g/minで供給する。このとき圧力は24kPaとした。
【0045】
ここで最初の窒素ガスの供給工程で、チャンバー内の残留ガスを窒素置換し、この後真空にしてHMDS/Nの混合ガスを供給し、HMDS/Nの混合ガスを流しながら、リカバリー処理を行なう。
【0046】
以下、図1のフローチャート、図2(a)乃至図6(i)を参照しつつ実際のシングルダマシン配線構造の形成工程について説明する。
まず、図2(a)に示すように、素子領域の形成されたシリコン基板101の表面に図2(b)に示すようにエッチングストッパ102として膜厚50nm程度の窒化シリコン(SiN)膜を形成し、この上層に図2(c)に示すように、低誘電率の多孔質薄膜103としてポーラスシリカ膜を形成する(図1:S101)。
【0047】
成膜に際しては、空孔生成材料としてのPEOガスと、骨格生成材料としてのシリカ誘導体であるテトラエトキシシラン(TEOS)とを、配線層(図示せず)の形成された基板に接触させ、1時間乃至120時間保持することにより、空孔生成材料としての界面活性剤の周期的な自己凝集体を形成する。この後、400℃60分のアニール処理(S102)を行い、空孔生成材料を除去する。そしてHMDS/Nの混合ガスによるプラズマ耐性処理(HMDS処理)を行い(S103)、鋳型(テンプレート)の空孔生成材料を完全に除去して多孔質薄膜103として純粋なメゾポーラスシリカ薄膜を形成する。
【0048】
このようにして得られた多孔質薄膜103をパターニングし、コンタクト孔を形成するわけであるが、図3(d)に示すように反射防止層104として有機樹脂膜を形成した後、フォトレジストR1を塗布する(図1:S104)。
そして、図3(e)に示すようにフォトリソグラフィによりパターン露光、現像工程を経てレジストパターンR1を形成する(図1:S105)。
【0049】
この後、レジストパターンR1をマスクとして多孔質薄膜103をエッチングし、配線溝Tを形成する(図1:S106)。
【0050】
そして多孔質薄膜のエッチングによるダメージを含む表面にHMDS分子を含む処理ガスを供給することにより、リカバリー処理を行ない、溝側壁のリカバリーを行なう(図4(f)図1:S107)。
【0051】
そして、レジストパターンR1および反射防止膜104をアッシングにより除去する(図1:S108)。
【0052】
再度、図7に示した処理工程を実施し、レジストパターンR1のアッシングによるダメージを含む表面にHMDS分子を含む処理ガスを供給することにより、リカバリー処理を行なう(図4(g)、図1:S109)。
【0053】
続いて、エッチング加工による配線溝側壁のCF系堆積膜を除去するとともに、ダメージを除去すべく有機溶媒を用いた洗浄が実施され、表面の清浄化がなされる(図1:S110)。
【0054】
そしてさらに、プラズマチャンバー内で、有機溶媒による洗浄に起因するダメージを含む表面にHMDS分子を含む処理ガスを供給することにより、プラズマ耐性付加処理を行なう(5(h)、図1:S111)。
さらにこのプラズマ耐性付加処理のなされた表面にアルゴン/ヘリウム/窒素/水素プラズマを照射するプラズマ前処理を行なう(S112)。
そして清浄化された表面にスパッタリング法により拡散防止バリア膜105としての窒化タンタル(TaN)、銅めっき用のシード膜106としての銅薄膜を形成する(図5(i))(図1:S113)。
【0055】
この後図6(j)に示すように、電解めっき法によりCuシード膜上に配線層107としての銅めっき層を形成する(図1:S114)。
【0056】
そして最後に、CMPにより表面の平坦化を行い、余分な銅めっき層、シード膜106および拡散バリア層105を研磨除去する(図1:S115)。
【0057】
そしてさらに、図7に示した処理工程を実施し、CMPに起因するダメージを含む表面にHMDS分子を含む処理ガスを供給することにより、リカバリー処理を行なう(図6(k)、図1:T116)。
【0058】
最後に、配線溝内への配線層の形成を行い、図6(l)に示すように、最後にキャップ膜としてのSiN膜等の絶縁膜108を形成し、特性評価を行なう(図1:S117)。
【0059】
このようにして、極めて容易に短時間で配線層との密着性の良好な多孔質薄膜からなる層間絶縁膜を形成することができ、さらにほぼ設計値どおりの誘電率を得ることができ、寄生容量も十分に小さく、リーク電流もなく、信頼性が高く、平坦な表面をもつ配線構造を短時間で、得ることができる。
また、成膜チャンバーと同一のチャンバー内でリカバリー処理により各プロセスによるダメージを回復することにより、ハードマスクを用いることなく直接レジストパターンをマスクとしてパターニングすることによっても十分な特性を維持することができる。従って、より高度のパターン精度を得ることができる。
また、十分に機械的強度の高い多孔質薄膜を得ることができるため、CMPにより十分な平坦化が可能となる。
【0060】
この気相成長を用いた成膜方法によって形成された多孔質薄膜は十分に高い比抵抗を得ることができることがわかる。
【0061】
(弾性率、硬度)
また、この多孔質薄膜の弾性率および硬度についても、十分に高い値を得ることができた。
【0062】
(実施の形態2)
なお前記実施の形態では、順次空孔生成材料と骨格生成材料とを供給したが、これに代えて図8に示すように、空孔生成材料(Progen)と骨格生成材料(Matrix)とを同時に供給するようにしてもよい。
【0063】
(実施の形態3)
なお前記実施の形態では、順次空孔生成材料と骨格生成材料とを供給したが、これに代えて図9に示すように、空孔生成材料と骨格生成材料とを交互に供給するようにしてもよい。特に1原子層毎に空孔生成材料と骨格生成材料とを交互に供給することにより、効率よく信頼性の高い薄膜形成が可能となる。
【0064】
(実施の形態4)
また、本発明の半導体装置では、図10に層間絶縁膜の模式図を示すように、空孔を骨格で囲むように形成された多孔質薄膜であって、厚さ方向で前記空孔の孔径が変化するようにしている。
この構成によれば、気相反応により生成されるため、空孔の孔径を制御性よく変化させることができる。
【0065】
また、上層および下層を異なる膜ではさむように形成された多孔質薄膜を含む半導体装置であって、前記空孔の孔径が中間部で大きく、前記上層および下層との界面でより小さくなるように変化している。
ここではアゾベンゼン含有型界面活性剤分子を含むガスを空孔生成材料として用いる。この材料は紫外線照射により孔径を変化させることができることから、中間部で光照射を行い孔径を大きくするようにしている。
この構成によれば、孔径を良好に制御することができるため、隣接する膜との界面では空孔の孔径を小さくして緻密な膜とし、密着性を高めつつも、中間部では孔径を大きくして総体的に低誘電率の膜を形成することができる。
また全体の孔径が均一となるようにしてもよい。
【0066】
またシリカ誘導体としては、TEOSに限定されることなく、テトラメトキシシラン(TMOS:Tetramethoxy Silane)などのシリコンアルコキシド材料を用いるのが望ましい。
さらにまた、アニール雰囲気としては大気雰囲気を用いたが、大気中でも、減圧下でも、窒素雰囲気中でもよい。望ましくは窒素と水素の混合ガスからなるフォーミングガスを用いることにより、耐湿性が向上し、リーク電流の低減を図ることが可能となる。このアニール工程において、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルクロロシラン(TMCS)分子のうちの少なくとも1種を含むガスを接触させることにより、プラズマ耐性処理を行うようにしてもよい。
【0067】
また、空孔生成材料(界面活性剤)、骨格生成材料(シリカ誘導体)の混合比については適宜変更可能である。
【0068】
また、アニール工程は、400℃1時間としたが、300℃から500℃で1乃至5時間程度としてもよい。望ましくは350℃から450℃とする。
【0069】
また、リカバリー対象となる膜としては成膜直後の多孔質薄膜、あるいは必要に応じてHMDS、あるいはTMCSなどのシリカ誘導体で疎水化処理を行なったものについても適用可能である。
【0070】
またリカバリー処理は酸系、有機酸系、塩素系、ウェット系、ドライ系、などのエッチングプロセスにも適用可能である。
【0071】
加えて、前記実施の形態では、シングルダマシン配線構造に用いられる層間絶縁膜について説明したが、アルミニウム配線を用いた多層配線構造にも適用可能であることはいうまでもない
【0072】
また、本発明で用いられる多孔質薄膜は、主としてSi−O結合からなる多孔質薄膜であって、部分的に有機元素が含まれていてもよい。Si−O結合からなるとは、1つのSi原子に少なくとも2つ以上のO原子が結合し、そのO原子を介して他のSi原子が結合されている構造からなることを言い、それ以外は特に限定されない。例えば、部分的に、ケイ素に水素、ハロゲン、アルキル基やフェニル基、あるいはこれらを含む官能基が結合されていてもよい。
【0073】
多孔質薄膜中のSiとOの割合はXPSによる元素分析で確認され、0.5≦Si/O(原子比)≦1.0の範囲にあり、Siの重量分率が40重量%以上であることが好ましい。また、Si−Oの結合はIRにより確認できる。一般的なものとしては、シリカ、水素化シルセスキオキサン、メチルシルセスキオキサン、水素化メチルシルセスキオキサン、ジメチルシロキサンなどからなる薄膜があげられる。
【0074】
また、本発明の多孔質薄膜は、その表面を、メチル基、水素基等を有する一般に知られた表面処理剤であらかじめ処理されたものであってもよい。例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルシリルクロライド(TMSC)、あるいはモノシランなどで処理された多孔質薄膜も使用できる。
【0075】
本発明において用いられる多孔質薄膜は、メソ孔を有するものであることが好ましい。また、平均細孔径は0.5nm〜10nmの範囲にあることが好ましい。この範囲であれば、後述する処理により、十分な機械強度と低誘電率を両立させて達成することができる。
【0076】
一般的には、薄膜の平均細孔径は3検体全自動ガス吸着量測定装置オートソーブ−3B型(カンタクローム社製)を使用して測定することができる。この場合の測定は、液体窒素温度下(77K)における窒素吸着法で実施され、比表面積はBET法、細孔分布はBJH法により求めることができる。
【0077】
本発明において用いられる多孔質薄膜は、上記のものであれば特に限定されないが、その製造方法により分けると、(1)空孔生成材料がPEO,PPOなどの液体であるもの、CTACなどの固体であるもの(2)骨格生成材料が液体であるもの、(3)上記材料の気化方法などで、種々変更可能である。
【0078】
これらの製造方法に得られる多孔質薄膜に関して以下に説明する。
(1)アルコキシシランをガス化して、空孔生成材料とともに成膜して多孔質化した薄膜
この方法では、多孔質化した薄膜を得るために、その製造方法は特に限定されないが、具体的には以下の例のようにして製造することができる。
まず、成膜するための塗布液を調製し、霧化するあるいは固体材料のまま気化する。個々では骨格生成材料として、それぞれ後述するような成分であるアルコキシシランに、必要に応じて溶媒を添加して、0℃〜70℃、好ましくは30〜50℃で、数分〜5時間、好ましくは1〜3時間攪拌して得ることができる。はじめに、上記各成分について説明する。
溶媒は、これらから選ばれる1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明してきたように、本発明によれば、容易に制御性よく、配線層との密着性が高く、機械的強度が高く低誘電率の絶縁膜を得ることが可能となり、シリコンを用いた種々の半導体デバイス、HEMTなど化合物半導体を用いたデバイスをはじめとする高速デバイス、マイクロ波ICなどの高周波デバイス、MFMIS型の高集積強誘電体メモリ、フィルムキャリアなどを用いたマイクロ波伝送線路あるいは多層配線基板、などにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1のプロセスを示すフローチャート図
【図2】本発明の実施の形態1の半導体装置の製造工程を示す図
【図3】本発明の実施の形態1の半導体装置の製造工程を示す図
【図4】本発明の実施の形態1の半導体装置の製造工程を示す図
【図5】本発明の実施の形態1の半導体装置の製造工程を示す図
【図6】本発明の実施の形態1の半導体装置の製造工程を示す図
【図7】本発明の実施の形態1の多孔質薄膜の成膜方法におけるガスの供給タイミングを示す説明図
【図8】本発明の実施の形態2の多孔質薄膜の成膜方法におけるガスの供給タイミングを示す説明図
【図9】本発明の実施の形態3の多孔質薄膜の成膜方法におけるガスの供給タイミングを示す説明図
【図10】本発明の実施の形態4の多孔質薄膜の成膜方法におけるガスの供給タイミングを示す説明図
【符号の説明】
【0081】
101 シリコン基板
102 エッチングストッパ層
103 多孔質薄膜
104 反射防止膜
105 拡散バリア膜
106 シード膜
107 銅めっき膜
108 キャップ膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相より、空孔生成材料と、骨格生成材料とを、基板表面に供給する工程と、
前記基板表面で、前記骨格生成材料によって生成される骨格が前記空孔生成材料を取り囲むように画定された薄膜を成膜する工程と、
前記薄膜から前記空孔生成材料を除去し、空孔を形成する工程とを含み、
前記空孔を前記骨格が取り囲むように形成された多孔質薄膜を形成するようにした多孔質薄膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、前記空孔生成材料と、前記骨格生成材料とを順次供給する工程である多孔質薄膜の形成方法。
【請求項3】
請求項1に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、前記空孔生成材料と、前記骨格生成材料とを交互に供給する工程である多孔質薄膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、前記空孔生成材料と、前記骨格生成材料とを同時に供給する工程である多孔質薄膜の形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、固体または液体成分を気化させることにより前記空孔生成材料を含むガスを生成する工程を含む多孔質薄膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、液体または固体成分を霧化させることにより前記空孔生成材料を含むガスを生成する工程を含む多孔質薄膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、固体または液体成分を気化させることにより前記骨格生成材料を含むガスを生成する工程を含む多孔質薄膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、液体または固体成分を霧化させることにより前記骨格生成材料を含むガスを生成する工程を含む多孔質薄膜の形成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記骨格形成材料は、TEOSを霧化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項10】
請求項8に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記骨格形成材料は、MTEOS(MethylTriEthOxySilane)を霧化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項11】
請求項8に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記骨格形成材料は、DMDEOSを霧化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項12】
請求項8に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記骨格形成材料は、TMS[4MS,3MS]を霧化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項13】
請求項6または8に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、前記ガスを帯電させる工程を含む多孔質薄膜の形成方法。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、前記ガスの組成比を変化させる工程を含む多孔質薄膜の形成方法。
【請求項15】
請求項14に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、前記ガスの組成比を1分子層ごとに変化させる工程を含む多孔質薄膜の形成方法。
【請求項16】
請求項14に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記供給する工程は、前記ガスの組成比を1原子層ごとに変化させる工程を含む多孔質薄膜の形成方法。
【請求項17】
請求項5に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記空孔形成材料は、CTAC系材料を溶媒と共に霧化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項18】
請求項6に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記空孔形成材料は、PEO系材料を溶媒と共に霧化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項19】
請求項6に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記空孔形成材料は、PPO系材料を溶媒と共に霧化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項20】
請求項7に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記骨格形成材料は、TEOSを気化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項21】
請求項7に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記骨格形成材料は、MTEOSを気化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項22】
請求項7に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記骨格形成材料は、DMDEOSを気化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項23】
請求項7に記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記骨格形成材料は、TMS[4MS、3MS]を気化することによって得られたものである多孔質薄膜の形成方法。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれかに記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
骨格の周りに多数の空孔が配置された前記多孔質薄膜表面に、反応性プラズマを供給し、前処理を行なう工程と、
前記前処理のなされた前記多孔質薄膜表面にスパッタリング法により導電性膜を形成する工程とを含み、
前記前処理工程に先立ち、前記多孔質薄膜表面に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、トリメチルクロロシラン(TMCS)分子のうちの少なくとも1種を含むガスを接触させる工程を含む多孔質薄膜の製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載の多孔質薄膜の製造方法であって、
前記多孔質薄膜は、さらに疎水化処理を行う工程を含む多孔質薄膜の製造方法。
【請求項26】
請求項1乃至23のいずれかに記載の多孔質薄膜の形成方法であって、
前記薄膜を成膜する工程は熱重合またはプラズマ重合のいずれかを用いた工程である多孔質薄膜の形成方法。
【請求項27】
空孔を骨格で囲むように形成された多孔質薄膜であって、
厚さ方向で前記空孔の孔径が変化している多孔質薄膜。
【請求項28】
上層および下層を異なる膜ではさむように形成された多孔質薄膜を含む半導体装置であって、
前記空孔の孔径が中間部で大きく、前記上層および下層との界面でより小さくなるように変化している半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−73914(P2007−73914A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262598(P2005−262598)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】