説明

多層構造計測方法および多層構造計測装置

【課題】従来、分光器を用いて断層を計測する手法においては、離散フーリエ変換を用いていたため、断層の値は離散的な値しか表現できなかった。そのため、断層の計測精度の向上が求められていた。
【解決手段】本発明に係る断層像計測方法は、波数スペクトルから、層厚の光学距離に対応した情報を計算する第1の工程と、前記光学距離に対応した情報から、各層の情報を分離して抽出する第2の工程と、各層の情報をそれぞれ再度波数スペクトルに変換する第3の工程と、第3の工程の結果から干渉波数を求める第4の工程と、干渉波数と各層の光学距離とから干渉次数を算出する第5の工程と、干渉次数が整数であることを利用して各層の光学距離を計算する第6の工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光干渉光学系を用いて多層構造を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光干渉光学系を用いて多層構造を計測する多層構造計測装置(光干渉装置)として種々のものが利用されている。例えば、半導体やガラスの表面に配置された薄膜の厚みを計測する反射分光膜厚計測装置や、生体などの光散乱性媒質の断層構造を画像化する光干渉断層撮像装置(Optical Coherence Tomography:OCT、以下OCT装置と記す)がある。これらは光の干渉を用いることは同じであるが、使われる分野、観察対象物によって、装置の名称や構成が異なっている。なお、ここでは半導体のレジストなどのように表面に膜の構造がある対象物を膜、目の網膜のように内部に構造がある対象物を断層と称する。
【0003】
上記装置では、計測光を観察対象物に照射し、そこからの反射光を解析することで、膜や断層の構造を計測することができる。その光源(分野によって広帯域光源、白色光源、低コヒーレンス光源などと呼ばれる)には、観察対象物の構造や特性によって適切な波長、帯域を選ぶ必要がある。また、観察対象物からの反射光のみを用いて、観察対象物の各層での反射光の干渉を観察する方法と、参照ミラーを用いて、参照ミラーからの反射光と観察対象物からの反射光との合成光の干渉を観察する方法がある。これらの反射光は、分光器を用いて分光され、ラインセンサーなどによって分光スペクトルとして撮像される。
【0004】
撮像されたスペクトルデータはフーリエ変換などを用いて解析され、膜や断層の構造を得ることができる。さらに、計測光を試料上で2次元にスキャンすることで2次元の断層像を得ることができる。
【0005】
特許文献1には医療分野に用いられるOCTが開示されている。ここでは、参照ミラーを不連続に3回位置変化させ、それぞれの位置で分光スペクトルを得る。次に、これらのデータを用いて計算することによって断層像を得ている。この手法により、解像力の低下が防げるとしている。
【特許文献1】特開平11−325849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では一回の測定に対して、複数回参照ミラーの位置変化をさせている。この方式は、測定に時間がかかるだけでなく、参照ミラーの精密な位置制御も求められる。一方、医療分野で用いられるOCTにおいては、参照ミラーを固定して、分光器からのスペクトルデータをフーリエ変換することにより断層を計測する方法がある。このときのスペクトルデータはラインセンサーの画素数が有限であるため離散フーリエ変換となる。その結果、断層の値は離散的な値しか表現できない。そのため断層の計測精度の向上が求められていた。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされてものであり、その目的は、より精度良く断層像を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る多層構造計測方法は、
光源と、
前記光源からの光を多層構造の観察対象物に導くとともに、該観察対象物からの戻り光を検出位置に導く光学系と、
前記検出位置に配置され、入射する光の波数スペクトルを検出する分光器と、
検出された波数スペクトルから、前記観察対象物の多層構造を計測する解析手段と、
を備える装置における多層構造計測方法であって、
前記波数スペクトルから、層厚の光学距離に対応した情報を計算する第1の工程と、
前記光学距離に対応した情報から、各層の光学距離に対応した情報を分離して抽出する第2の工程と、
前記各層の光学距離に対応した情報をそれぞれ再度波数スペクトルに変換する第3の工程と、
第3の工程の結果から、干渉が発生している波数または波長を求める第4の工程と、
第4の工程で求めた波数または波長と、各層の光学距離とから、干渉次数を算出する第5の工程と、
第5の工程で求めた干渉次数を最も近い整数に近似し、近似した干渉次数と、干渉が発生している波数または波長とから、各層の光学距離を計算する第6の工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る多層構造計測方法は、
光源と、
前記光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を多層構造の観察対象物に導くとともに、該観察対象物からの戻り光を検出位置に導き、かつ、前記参照光を参照光路を介して前記検出位置に導く光学系と、
前記検出位置に配置され、前記戻り光と前記参照光の合成光の波数スペクトルを検出する分光器と、
検出された波数スペクトルから、前記観察対象物の多層構造を計測する解析手段と、
を備える装置における多層構造計測方法であって、
前記波数スペクトルから、層厚の光学距離に対応した情報を計算する第1の工程と、
前記光学距離に対応した情報から、各層の光学距離に対応した情報を分離して抽出する第2の工程と、
前記各層の光学距離に対応した情報をそれぞれ再度波数スペクトルに変換する第3の工程と、
第3の工程の結果から、干渉が発生している波数または波長を求める第4の工程と、
第4の工程で求めた波数または波長と、各層の光学距離とから、干渉次数を算出する第5の工程と、
第5の工程で求めた干渉次数を最も近い整数に近似し、近似した干渉次数と、干渉が発生している波数または波長とから、各層の光学距離を計算する第6の工程と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る多層構造計測装置は、
観察対象物の多層構造を計測するための光干渉装置であって、
光源と、
前記光源からの光を多層構造の観察対象物に導くとともに、該観察対象物からの戻り光を検出位置に導く光学系と、
前記検出位置に配置され、入射する光の波数スペクトルを検出する分光器と、
検出された波数スペクトルから、前記観察対象物の多層構造を計測する解析手段と、
を備え、
前記解析手段は、
前記波数スペクトルから、層厚の光学距離に対応した情報を計算する第1の工程と、
前記光学距離に対応した情報から、各層の光学距離に対応した情報を分離して抽出する第2の工程と、
前記各層の光学距離に対応した情報をそれぞれ再度波数スペクトルに変換する第3の工程と、
第3の工程の結果から、干渉が発生している波数または波長を求める第4の工程と、
第4の工程で求めた波数または波長と、各層の光学距離とから、干渉次数を算出する第5の工程と、
第5の工程で求めた干渉次数を最も近い整数に近似し、近似した干渉次数と、干渉が発生している波数または波長とから、各層の光学距離を計算する第6の工程と、
を実行することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る多層構造計測装置は、
観察対象物の多層構造を計測するための多層構造計測装置であって、
光源と、
前記光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を多層構造の観察対象物に導くとともに、該観察対象物からの戻り光を検出位置に導き、かつ、前記参照光を参照光路を介して前記検出位置に導く光学系と、
前記検出位置に配置され、前記戻り光と前記参照光の合成光の波数スペクトルを検出する分光器と、
検出された波数スペクトルから、前記観察対象物の多層構造を計測する解析手段と、
を備え、
前記解析手段は、
前記波数スペクトルから、層厚の光学距離に対応した情報を計算する第1の工程と、
前記光学距離に対応した情報から、各層の光学距離に対応した情報を分離して抽出する第2の工程と、
前記各層の光学距離に対応した情報をそれぞれ再度波数スペクトルに変換する第3の工程と、
第3の工程の結果から、干渉が発生している波数または波長を求める第4の工程と、
第4の工程で求めた波数または波長と、各層の光学距離とから、干渉次数を算出する第5の工程と、
第5の工程で求めた干渉次数を最も近い整数に近似し、近似した干渉次数と、干渉が発生している波数または波長とから、各層の光学距離を計算する第6の工程と、
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば多層構造計測装置において、計測精度が向上した断層像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る光干渉装置(多層構造計測装置)は、測定光を測定光路を介して被検査物(観察対象物)に照射し、かつこの測定光の被検査物からの戻り光を検出位置に導く。戻り光とは、被検査物に対する光の照射方向における界面に関する情報等が含まれる反射光や散乱光のことである。そして、検出位置に導かれた戻り光の波長スペクトルを検出する分光器と、このスペクトルを解析する解析手段とを用いて、被検査物の断層画像を撮像する。
【0014】
本発明は、上記説明した課題を解決するために、多層構造計測装置における解析手段が、次のように第1〜第6の工程によって多層構造の各層の光学距離を測定するように構成したことを特徴とするものである。
【0015】
第1の工程では、戻り光の波数スペクトルからフーリエ変換などにより、光学距離に対応した情報を計算する。そのピークの位置から各層の光学距離ndを求めることができる
。第2の工程では、光学距離に対応した情報から、多層構造の各層の光学距離に対応した情報を分離して抽出する。第3の工程では、各層の光学距離に対応した情報を逆フーリエ変換などによって再度波数スペクトルに変換する。第4の工程では、その波数スペクトルから干渉が発生している波数(または波長)を求める。第5の工程では、求めた波数(波長)と各層の光学距離から、干渉次数を算出する。そして、第6の工程では、干渉次数が理論的に整数になること用いて、干渉次数を整数に近似(補正)し、これと干渉が発生している波数(波長)とから各層の光学距離を計算する。
【0016】
以上の構成により、計測精度が向上した断層像を得ることができる。
【0017】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態においては、本発明を適用した光干渉装置について図面を用いて説明する。
【0019】
<光学系の構成>
最初に、図1を参照して、光干渉装置の構成を大まかに説明する。光源101から出射した計測光がレンズ102、ビームスプリッタ103、XYスキャナ104、対物レンズ105を介して観察対象である半導体などの試料106に到達する。試料表面には透過性の膜が配置されており、それらの表面および界面で反射された光は、対物レンズ105、XYスキャナ104、ビームスプリッタ103、結像レンズ107を介して、分光器108に到達する。
【0020】
光源101にはハロゲンランプなどが用いられ、波長は例えば400−800nmである。ここで、分光器108としては、回折格子型分光器を用いる。この場合、分光器108は、回折格子109および撮像素子110などで構成される。回折格子109によって分光された光は分光器内部の撮像素子110によって波長のスペクトルデータとして取得される。撮像素子110はCCD型ラインセンサーなどである。なお、回折格子型分光器を採用する利点としては、種類が豊富、使用波長領域で分散がほぼ一定などが挙げられる。一方、短所としては、透過率が低い、迷光が多い、次数の重複が起こる、出射光の偏光度が多いなどが挙げられる。
【0021】
撮像素子で撮像されたスペクトルデータはコンピューター111で解析される。当然コンピューター111は解析を行うだけでなく、データの記憶、画像の表示、測定の指令を出す機能を有している。また、コンピューター制御によりXYスキャナで計測光を試料に対して光軸に垂直な方向にラスタースキャンし、試料の断面像を得ることができる。コンピューター111は、CPUおよびメモリーなどから構成され、CPUがプログラムを実行することで上記の各機能を実現する。ただし、上記の各機能の一部または全部をハードウェアによって実現しても構わない。
【0022】
<干渉条件>
図2を用いて多層構造の干渉条件について説明する。なお、簡単のため多重反射の影響は考慮しない。
【0023】
多層構造の試料は、屈折率Nの基板204の上に、屈折率Nの第2の膜203、屈折率Nの第1の膜202が設けられた構成である。この試料は、屈折率Nの媒質に配置されているとする。それぞれの境界は表面205、第1の界面206、第2の界面207となっている。それらの空間距離はDおよびDである。ここで、互いに接する媒質の屈折率は異なるものとする。
【0024】
なお、光が屈折率の低い媒質から屈折率の高い媒質へ入射するとき、界面で反射した光の位相は変化しない。しかしながら、光が屈折率の高い媒質から屈折率の低い媒質へ入射するとき、界面で反射した光の位相はπ変化する。ここでは、屈折率はN<N<N<Nの関係を満たしている試料を計測する場合を考える。例えば、それぞれ空気:N=1、レジスト:N=1.5、シリコンナイトライド:N=2.0、シリコン基板:N=3.5、である。この条件では、反射の前後で計測光201の位相は変化しない。
【0025】
従って、ある膜の両側の界面で反射した光が干渉する条件は、その膜の屈折率n、界面間の空間距離d、整数(干渉次数)m、波数kを用いると、強めあう条件として数式1のように表される。
【0026】
【数1】

【0027】
また、弱めあう条件として数式2のように表される。
【数2】

【0028】
当然、膜の構成は様々であり、反射の前後で位相の変化がある屈折率の組み合わせではそれを考慮する必要がある。その結果、強めあう条件と弱めあう条件が数式1、2で逆になることがある。
【0029】
<信号処理>
本発明の信号処理工程について、図3A〜Dを用いて説明する。ここでは図2に示す構成の膜を測定する場合を例にとって説明する。なお、以下の各処理はコンピューター111によって実行されるものである。
【0030】
S1の工程において、分光器108からのスペクトルデータを取得する。このときのデータが図3Bに模式的に示されている。図3Bは縦軸が強度で横軸が波数である。なお、通常の分光器のスペクトルは波長に対する強度であることが多い。ここでは波数スペクトルを利用するので、そのような場合には、波長をその逆数である波数に変換する必要がある。さらに、波長スペクトルは波長に対して等間隔なデータとなっているため、逆数である波数に変換したときに変換後のデータは波数に対して等間隔とならない。そのため、補間処理などにより、波数スペクトルとして等間隔にすることが必要となる。
【0031】
S2の工程(本発明の第1の工程に相当)において、スペクトルデータのフーリエ変換を行う。ここでラインセンサーのサンプリング数は有限であるため離散フーリエ変換となる。一般にはサンプリング数(ラインセンサーの画素数)Nとして512、1024、2048などが選択される。このときの結果が図3Cに模式的に示されている。離散フーリエ変換をした場合の横軸は光学距離に比例した値(光学距離に対応した情報)となる。この値から光学距離を算出可能である。なお、離散フーリエ変換から得られる結果は光学距離に比例した値であるが、記述の簡略化のため、以下では、離散フーリエ変換の結果として光学距離が得られると記述する。この光学距離の横軸は、ラインセンサーのサンプリング数で分割されている。
【0032】
図3Cに示すように、ここでは、N,NおよびN1212のピークが計測される。当然これらの値をもって各膜の光学距離とすることができる。しかしながら、離散フーリエ変換では計測結果が離散的な値となる。すなわち、光学距離の計測結果は、整数i、図3Bに示す分光器の帯域幅ΔKを用いて数式3のように表される。なお、iは0≦i≦N/2を満足する整数である。また、λmax、λminはそれぞれ分光器の検出最大波長と最小波長である。
【0033】
【数3】

【0034】
膜厚の計測分解能δ(nd)は計測結果としてとりうる光学距離の最小間隔であるので、数式4のように表される。なお、この式は、計測できる最小の距離ndminでもある。
【数4】

【0035】
また、計測できる最大の距離ndmaxは数式3のiにN/2を代入して数式5のように得られる。これは、サンプリング定理によって決まる。
【数5】

【0036】
ところで、多層構造でi番目の層からt番目の層の両端で干渉する場合、数式6に示すように、i〜t番目の層の光学距離Nititは、i〜t−1番目の層の光学距離Nit−1it−1と、t番目の層の光学距離Nとの和になる。これを順次繰り返していけば、i〜t番目の層(全体)の光学距離Nititは、i番目の層からt番目の層までの各層の光学距離の和と一致する。
【0037】
【数6】

【0038】
当然、これらの値は、フーリエ変換した後にピークとして出てくる。n層あるときのピークの数はn+1から2層を選ぶ組み合わせ数となる。例えば、図2に示すような2層構成の膜からは、図3Cに示すように3つのピークが得られる。
【0039】
S3の工程(本発明の第2の工程に相当)において、フーリエ変換の結果にフィルターをかけて、1つのピークに対応する光学距離を選択する。このようなフィルターとしてはバンドパスフィルターがある。なお、ここでのバンドは物理量で言うと長さに相当する単位を持つ。デジタルデータで考えた場合は、単位に無関係で処理は同じなので便宜的にこのように呼ぶ。さらに、デジタルで処理しているためピクセル数に変換係数を乗じた値がバンド幅であり、ここでは、ピクセル数をバンド幅と呼んで議論することもある。従って、一般的な周波数や波長の幅とは異なっていることに注意されたい。フィルターのバンド
幅301は図3Cに示されるように、N,NおよびN1212のピークに応じて設定する。ちなみに、これらの光学距離はS7の工程で再度呼び出せるようにメモリーなどに格納する。
【0040】
フィルターに設定するバンド幅(抽出範囲)は、例えば、ピークが閾値302以上である範囲などとすることができる。また、各領域が互いに重ならないようにバンド幅を設定することが望ましい。また、バンド幅が広くなるほど所望の光学距離と異なる成分を含むため必要最低限でよい。例えば、閾値と接触する幅の倍の幅をバンド幅として設定する。当然、Nのピークのように強度が小さい場合に対応できるように、バンド幅を可変にすることが好ましい。なお、おおよその層構成が分かっている場合は、バンド幅を固定してもよい。
【0041】
S4の工程(本発明の第3の工程に相当)においては、フィルター後の信号に逆離散フーリエ変換を行う。図3Dにその波形が模式的に示されている。光学距離に対してピークが一つであることから単層の結果に対応したほぼ正弦波となる。すなわち極大値と極小値が繰り返すような波形が得られる。
【0042】
S5の工程で必要なピークの数に対して、逆フーリエ変換が行われたかどうかが判定される。終わっていない場合は次のピークのデータについて逆フーリエ変換を行う。この例では3回逆フーリエ変換を行う。
【0043】
S6の工程(本発明の第4の工程に相当)において、正弦波の極大値または極小値に対応する波数を抽出する。ここでは、図3Dのように、強めあう条件に対応する波数がkを含めて4つ、弱めあう条件に対応する波数がkm+0.5を含めて3つ得られる。
【0044】
S7の工程(本発明の第5の工程に相当)において、干渉次数を計算する。干渉が強めあう条件式(ここでは数式1)に、S3の工程で抽出したピークの光学距離、S6の工程で抽出した極大値の波数を代入することによって、干渉条件における干渉次数mを計算する。2つの反射波の光路差(層厚の光学距離の2倍)の、図3Dで極大をとる波数(に対応する波長)に対する比を計算する。このときの波数は、例えば、複数ある極大値のうち最も小さいものを選んでも良いし、波形の安定しているピークでの波数を選んでもよい。なお、ここでは極大値での波数と強めあう条件式を利用してmを求めているが、極小値での波数と弱めあう条件式を利用してmを求めても良い。
【0045】
ところで、S7の工程で用いる各層の光学距離は、S6の工程の結果から算出することも可能である。つまり、図3Dにおける2つのピークにおける波数kとkm+lを使って計算してもよい。ここで、lは図3Dでmからl番目であることを示す。kとkm+lをそれぞれ数式1に代入した2つの式からmを消去することによって、数式7に示すように各層の光学距離を得ることができる。このように逆フーリエ変換後の波数スペクトルからピークをとる波数を複数求めることによっても、各層の光学距離を算出することができ、この値をS7の工程で利用しても良い。
【0046】
【数7】

【0047】
通常、多層構造を解析する場合は各層の屈折率が分かっているためS6の工程で数式1、数式2のどちらを使うか予め決めることができる。しかしながら、各層の屈折率が分か
っていないような場合にはどちらの数式を用いればよいのか分からない。このような場合には、数式1および数式2を用いて、mをそれぞれ計算する。その後、km+1、km+2、・・・において光学距離ndを計算する。ndの誤差が最小になる方を選択することによって、mを決定することができる。また、これによって層間の屈折率の大小関係を知ることができる。
【0048】
S8の工程(本発明の第6の工程に相当)では、S7の工程で求めたmを整数Mに四捨五入し、再度強めあう条件または弱めあう条件を使って光学距離を再計算する。本来、干渉が強めあう条件では、光路差は波長の整数倍になる。S7の工程で求めたmが整数にならない場合には、それは誤差に起因するものである。そこで、求められたmを最も近い整数Mに近似(補正)することで、mに含まれる誤差を排除することができる。S7の工程において強めあう条件を利用した場合では、数式8を使って光学距離を算出する。
【0049】
【数8】

【0050】
一方、干渉が弱めあう条件では、光路差は波長の半整数倍となるはずである。S7の工程において弱めあう条件を利用した場合は、数式9によって光学距離を算出する。
【数9】

【0051】
S9の工程では、計測が所望の領域で終了したかどうかを判断する。終了していない場合は、次の領域で計測を行う。この工程を繰り返し、所望の回数を終了すれば、図2に対応した断層像を得ることができる。
【0052】
なお、断層像の深さ方向はサンプリング数Nで区切られている。本方式では、サンプリング数以下の計測を行っている。従って、この計算結果を反映した断層像を構成する必要がある。また、新たな断層像を構成しない場合であっても、計測した数値を補助的に表示してもよい。
【0053】
<数値例>
ここで簡単に数値を使って説明する。作製した試料が設計どおりの構成になっているかを計測したい場合を想定する。すなわち、試料が設計値から大きくずれていないような状況である。
【0054】
計測系は、ハロゲンランプの400nm−800nmのスペクトルを全て使うこととする。このとき、計測できる最小距離ndminおよび計測分解能は数式4より400nm(0.4μm)である。なお、分光器108の帯域幅ΔKは1.25×10[m−1](=1/400nm−1/800nm)である。また、分光器108のサンプリング数がN=1024の場合、計測できる最大距離ndmaxは数式5から205μmとなる。
【0055】
試料はD=5μm、D=10μm程度であり、N=1.5、N=2の層がSi基板上:N=3.5に配置されているとする。光学距離はそれぞれ、おおよそ、N=7.5μm、N=20μm、N1212=27.5μmであり、フーリエ変
換(図3AのS2)の結果としてこの付近にピークが発生することになる。
【0056】
サンプリング数N(ここでは1024)のデータを離散フーリエ変換をした場合、横軸はN個に分割される。ただし、N/2(=512)を境に対称となるため、片側で議論する。まず、S2の工程で、512分割された横軸のうち、1ピクセルあたり、最小距離(0.4μm)であるので、19(≒7.5/0.4)、50(≒20/0.4)、69(
≒27.5/0.4)のピクセル付近にピークが発生することになる。ピークの間隔がそれぞれ離れていることから、S3の工程で3つの帯域にバンドパスフィルターを設定してこれらのピークを分離することができる。S4の工程で逆離散フーリエ変換をする。まず、層厚の光学距離が7.5μmである場合、強めあう条件として、m=19(λ=789.4nm)〜37(λ=405.5nm)のピークが400nm〜800nmの範囲に現
れる。また、層厚の光学距離が20μmである場合、強めあう条件として、m=50(λ=800nm)〜100(λ=400nm)のピークが現れる。ただし、両端はピークであることが判別できないため、実際には51〜99になる。
【0057】
ここで層厚の光学距離が約7.5μmの場合について、さらに述べる。S2の工程におけるフーリエ変換の結果(ピークが19ピクセル目)から、この層の光学距離として7.6μm(0.4×19)が得られる。その前後の値は、7.2μm、8.0μmとなり、0.4μm刻みでしか計測できない。一方、S7の工程において、最も小さい極大値の波数が2.466×10(λ=405.5nm)であったとする。これらの値を、強めあう干渉条件を表す数式1に代入することで、m=37.03が得られる。このmを整数近似するとM=37となる。そして、このようにして求めたMをS8の工程で数式8に代入することで、層の光学距離を7.502μm(=37/(2×2.466×10))とより精度良く求めることが可能となる。
【0058】
ここで、計測精度について述べる。なお、計測精度は、各層の分離後の位置決め精度のことを指し、計測分解能は各層を分離できる空間距離とする。分光器108は400nmの帯域を1024画素で分割していることから、分光器108のスペクトル分解能は0.39nmである。mについての誤差は除去できるので、計測精度は理論的に数式10で表される。m≒100となる上記の条件では、計測精度は20nm程度となる。当然、mが小さい方が計測精度がよくなる。
【0059】
【数10】

【0060】
一方、離散フーリエ変換のみによって光学距離を計測する場合、計測精度と計測分解能は同じで数式4より400nmとなる。
【0061】
このように、本発明による計測方法によると計測精度が大幅に向上することになる。つまり、離散フーリエ変換のみで多層構造の光学距離を計算する従来の方法は、数式3で示される光学距離しか表現できないため離散的な値となる。実際の値が離散した数値の間にある場合、その周辺にデータが分散するいわゆるスペクトルのリークが起こる(図3Cの例でいうと、ピークが鈍った波形になる)。そして、その分解能は光源の帯域幅(波数の幅ΔK)によって定まる。一方、本方式ではバンドパスフィルターで複数のデータを切り出し、逆離散フーリエ変換をして、一層分のほぼ正弦波の波数スペクトルを構成することができる。つまり、リークしたスペクトルを集めて波形を再構成する。この場合、分光器の帯域幅ΔKに、周期が整数以外の正弦波を表現できることを意味している。ただし、バ
ンド幅が最小分解能(1ピクセル)のときは離散フーリエ変換の結果と一致することになる。なぜなら、周辺にリークしたデータを活用できないからである。従って、離散フーリエ変換で十分なバンド幅で分離できるときに本発明の方式は有効な手法となる。また、屈折率が波長に依存するような場合は波長に対応した屈折率を用いることができるのでさらに高精度な計測が可能となる。
【0062】
なお、層の構成が計測条件に合わないような場合も当然ありうる。例えば、多層構造の各層は数式3で表現できる条件を満たしていても、それらを足し合わせた状態がndmaxを超えるような場合である。このような場合でも、そのような成分が測定ノイズとして分光器に加わるが、本手法が全く使えないわけではない。
【0063】
また、光源として波長を掃引できるようなスイープ光源を用いる場合は検出器としてフォトダイオードを使い、オペアンプなどによって増幅した後、AD変換機でPCに取り込む。このような方式の場合であっても本方式を使うことは可能である。
【0064】
[第2の実施形態]
第2の実施形態においては、参照ミラーを使う構成の光干渉装置について図面を用いて説明する。ここでは、主に第1の実施形態との相違点を説明する。
【0065】
<光学系の構成>
まず、図4を用いて光干渉装置の装置構成について説明する。光源101から出射した光がビームスプリッタ103によって参照光404と測定光112とに分割される。測定光は、観察対象である試料106によって反射され、戻り光113となって戻される。一方、参照光は参照ミラー401によって反射される。なお、参照ミラー401は位置調整機構402によって光路長を調整することができる。参照光はビームスプリッタ103によって、戻り光と合波される。このように、本実施形態における光干渉装置の光学系は、光源からの光を、測定光と参照光に分割し、測定光を試料106に導きその戻り光を検出位置に導くとともに、参照光路を介して参照光を検出位置に導くものである。
【0066】
合波された光は、結像レンズ107を介して分光器403に到達する。ここでは分光器403に、プリズム405を用いる。プリズムには、透過率が高い、迷光が少ない、次数重複がない、出射光の偏光度が小さいなどの長所がある。一方短所として、材料に制限がある、分散の波長依存性があるなどがある。
【0067】
ここで、参照ミラー401を使用する理由について説明する。まず、試料からの戻り光は、試料表面、第1の界面、第2の界面などで反射する光である。この戻り光の波数kでの電界をE(k)とする。また、参照ミラーでの反射光(参照光)の波数kでの電界をE(k)とする。このとき、分光されて撮像素子110に入ってくる波数kの光強度P(k)は、複素共役を示す記号*を用いて、数式11のような関係になる。
【0068】
【数11】

【0069】
参照ミラー401を使わない場合には、撮像素子に入射する光の強度は、右辺第4項のみになる。試料の反射率が低い場合には十分な光強度を得ることができず、ノイズに埋もれて検出できなくなってしまう。
【0070】
一方、参照ミラー401を使用する場合は、数式11の全ての項が入射光の強度に寄与する。このうち、試料106からの戻り光と参照ミラー401からの参照光との干渉に関わる成分は右辺の第2および第3項である。この成分は、Eが小さい場合には小さくなる。網膜のような多層構造は互いの屈折率差が小さいため界面での反射率が低く、Eが小さくなる。このような場合であっても、参照光の光量を大きくすることで、撮像素子に入射する光強度を上げることができる。
【0071】
また、参照ミラーを使わない場合、各層の相対的な位置関係が分からなくなる、各層を分離できないなどの問題が発生する。これらの理由により、光学系の構成が複雑になるが参照ミラーを用いる方式が使われることがある。
【0072】
<参照ミラーに対する光学距離>
次に、図5を用いて多層構造の構成ついて説明する。なお、簡単のため多重反射の影響は考慮しない。また、参照ミラー501は等価的に試料と同軸上にあるとしてよいので図のような配置とする。ここで、戻り光と参照光の光路差は、参照ミラーから試料表面までの距離をLとして表される。また、参照ミラーから第1の界面および参照ミラーから第2の界面までの光学距離をそれぞれNm1、Nm2とする。なお、多層構造の試料は屈折率Nの基板204の上に屈折率Nの第2の層203、屈折率Nの第1の層202の構成で、屈折率Nの媒質に配置されているとする。各層の空間距離はDおよびDである。
【0073】
<信号処理>
本実施形態における信号処理工程のうち、第1の実施形態との差異について、図5の構成を例に説明する。S1の工程において、分光器からのスペクトルデータを取得する。このときのデータが図6Aに模式的に示されている。
【0074】
S3の工程において、フーリエ変換の結果にフィルターをかける。まず、フーリエ変換の結果は図6Bに示すようになり、光学距離がそれぞれN、Nm1、Nm2の位置にピークが現れる。これらの光学距離は、それぞれ参照ミラー501と試料表面205、第1の界面206、第2の界面207の光学距離に対応する。同時に、第1の実施形態と同様に多層構造自身の干渉によるN,NおよびN1212にもピークが現れる。
【0075】
なお、参照ミラー501を、このミラー501と試料表面205との光学距離Nが多層構造全体の厚さN1212より長くなるように設定することが好適である。これにより、試料自身での干渉成分が現れる第1の領域601と、試料と参照ミラーの干渉成分が現れる第2の領域602とを分離することができる。
【0076】
上記の結果得られたピークの1つをフィルターによって選択した後は、上記の第1の実施形態と同様の手法で光学距離を計算する。つまり、S4の工程で逆フーリエ変換することで図6Cに示す結果が得られる。
【0077】
そして、S6の工程(本発明の第7の工程に相当)で、図6Cの結果から波数を特定して干渉条件の数式1から、干渉次数mを算出する。S7の工程では、求めたmを整数に四捨五入し、これを干渉条件の数式に代入して光学距離を計算する。
【0078】
なお、参照ミラーを用いる場合、各層の距離は次のような関係である。
【数12】

【0079】
従って、1層目の空間距離は数式13のようになる。
【数13】

【0080】
同様に、2層目の空間距離は数式14のようになる。
【数14】

【0081】
これをi+1層目の場合に拡張すると次のようになる。
【数15】

つまり、各層の空間距離は、参照ミラーから遠い方の界面までの光学距離(Nmi+1i+1)から参照ミラーから近い方の界面までの光学距離(Nmi)を減算し、両者の界面の間の屈折率(Ni+1)で除算することによって求まる。
【0082】
この空間距離を画像化すれば、図5に基づいた空間距離の断層像を得ることができる。なお、従来の断層像は光学距離の断層像である。
【0083】
[第3の実施形態]
第3の実施形態においては、本発明を適用した眼科用OCT装置の光学系について図7を用いて詳しく説明する。基本的な構成は、第2の実施形態の参照ミラーを使うタイプである。
【0084】
<光学系の構成>
図7は、全体としてマッハツェンダー干渉系を構成している。光源701から出射した光がビームスプリッタ703−1によって参照光705と測定光706とに分割される。測定光706は、観察対象である眼707によって反射や散乱により戻り光708となって戻された後、ビームスプリッタ703−2によって、参照光705と合波され、分光器721に入射する。
【0085】
まず、光源701の周辺について説明する。光源701は代表的な低コヒーレント光源であるSLD(Super Luminescent Diode)である。波長は830nm、バンド幅50nmである。ここで、バンド幅は、得られる断層像の光軸方向の分解能に影響するため、重要なパラメーターである。また、光源の種類は、ここではSLDを選択したが、低コヒーレント光が出射できればよく、ASE(Amplified Spontaneous Emission)等も用いることができる。また、波長は眼を測定することを鑑みると、近赤外光が適する。さらに波長は、得られる断層像の横方向の分解能に影響するため、なるべく短波長であることが望ましく、ここでは830nmとする。観察対象の測定部位によっては、他の波長を選んでももちろん良い。光源701から出射された光はシングルモードファイバー710−1を通して、レンズ711−1に導か
れる。
【0086】
次に、参照光705の光路について説明する。ビームスプリッタ703−1によって分割された参照光705はミラー714−1〜3に連続して入射され、方向を変えることで、ビームスプリッタ703−2により分光器721に入射される。ここで、715−1〜2は分散補償用ガラスである。分散補償用ガラス715−1は眼707に測定光706が往復したときの分散を、参照光705に対して補償するものである。つまり、分散補償用ガラス715−1の長さL1は、一般的な眼の奥行きの2倍と等しいことが望ましい。ここでは、日本人の平均的な眼球の直径とされる23mmの2倍のL1=46mmとする。さらに、電動ステージ717は、矢印で図示している方向に移動することができ、参照光705の光路長を、調整・制御することができる。分散補償用ガラス715−2は眼707のスキャンに用いられるレンズ720−1,2の分散補償を目的としたものである。
【0087】
測定光706の光路について説明する。ビームスプリッタ703−1によって分割された測定光706は、分散補償用ガラス715−3を通り、ビームスプリッタ703−3で反射される。次に、XYスキャナ719のミラーに入射される。XYスキャナ719は、網膜723上を光軸に垂直な方向にラスタースキャンするものである。また、測定光706の中心はXYスキャナ719のミラーの回転中心と一致するように調整されている。レンズ720−1,2は網膜723を走査するための光学系であり、測定光706を角膜722の付近を支点として、網膜723をスキャンする役割がある。ここでは、レンズ720−1,2の焦点距離はそれぞれ50mm、50mmである。測定光706は眼707に入射すると、網膜723からの反射や散乱により戻り光708となる。さらに、戻り光708はビームスプリッタ703−3によって戻り光708−1と708−2とに分割され、その一方である戻り光708−1は、分光器721に導かれる。また、もう一方の戻り光708−2はビームスプリッタ703−1を透過され、検出器724に導かれる。検出器は、干渉信号と同様に、電気的にコンピューター725に取り入れられ、戻り光708−2の強度を記録および表示とを行うことができる。また、検出器724で得られる信号は、網膜723での反射や散乱による戻り光708−2の強度信号であり、深さ分解能を持たない。検出器724は、例えば高速・高感度な光センサであるAPD(Avalanche Photo Diode)が用いられる。
【0088】
<数値例>
ここで、数値を使って説明する。対象物は目であり、その物理的大きさおよび構造は人によって大きく変わらない。ただし、ここでは簡単のため次のような構造とする。まず、網膜全体の空間距離を560μmとし、7層で構成され、各層の空間距離が80μmとする。また、屈折率を1.5(各層の屈折率は異なっていないと界面で反射しないがここでは簡単な数値計算をするため全て同じとする)とする。従って、各層の光学距離は120μmで、全体の光学距離は840μmとなる。ミラーの位置は、空間距離でL=400μmとなるような位置とし、光学距離は600μmとなる。
【0089】
805nm−855nmのスペクトルを全て使う場合には、計測できる最小の距離ndminは6.9μmである。また、N=1024の場合、計測できる最大の距離ndmaxは3.5mm(光学距離)となる。干渉スペクトルを離散フーリエ変換すれば、1ピクセルあたり6.9μmなので、87、104、122、139、157、174、191、209ピクセル付近にピークが立つ。これらのピークが離れていることから分離することが可能である。光学距離が最短の600μmであるとき、強めあう条件はm=1404〜1490、光学距離が最長の1440μmのとき強めあう条件は、m=3369〜3577である。一方、50nmを1024分割しているため、分光器の分解能は0.049nmである。計算する波長によって条件は変わるが、m=4000で計測精度は理論的に100nm程度ということになる。離散フーリエ変換の計測精度が6.9μmであるから
大幅に改善するということが言える。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、第1の実施形態におけるOCT装置の光学系を説明する図である。
【図2】図2は、第1の実施形態における層構成を説明する図である。
【図3A】図3Aは、第1の実施形態における信号処理の流れを示すフローチャートである。
【図3B】図3Bは、第1の実施形態における測定光のスペクトル波形を示す模式図である。
【図3C】図3Cは第1の実施形態における離散フーリエ変換の結果を示す模式図である。
【図3D】図3Dは、第1の実施形態におけるバンドパスフィルター後のスペクトル信号を逆フーリエ変換した結果のスペクトル波形を示す模式図である。
【図4】図4は、第2の実施形態における参照ミラーを用いるOCT装置の光学系を説明する図である。
【図5】図5は、第2の実施形態における層構成を説明する図である。
【図6A】図6Aは、第2の実施形態における測定光のスペクトル波形を示す模式図である。
【図6B】図6Bは、第2の実施形態における離散フーリエ変換の結果を示す模式図である。
【図6C】図6Cは、第2の実施形態におけるバンドパスフィルター後のスペクトル信号を逆フーリエ変換した結果のスペクトル波形を示す図である。
【図7】図7は、第3の実施形態における眼科用OCT装置の光学系を説明する図である。
【符号の説明】
【0091】
101:光源
102:レンズ
103:ビームスプリッタ
104:XYスキャナ
105:対物レンズ
106:試料
107:結像レンズ
108:分光器
109:回折格子
110:撮像素子
111:コンピューター
201:計測光
202:第1の膜
203:第2の膜
204:基板
205:表面
206:第1の界面
207:第2の界面
301:バンド幅
302:閾値
401:参照ミラー
402:位置調整機構
403:プリズム型分光器
404:参照光
405:プリズム
501:参照ミラー
601:第1の領域
602:第2の領域
603:バンド幅
604:閾値
701:光源
703:ビームスプリッタ
705:参照光
706:測定光
707:眼
708:戻り光
710:シングルモードファイバー
711:レンズ
714:ミラー
715:分散補償用ガラス
717:電動ステージ
719:XYスキャナ
720:レンズ
721:分光器
722:角膜
723:網膜
724:検出器
725:コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を多層構造の観察対象物に導くとともに、該観察対象物からの戻り光を検出位置に導く光学系と、
前記検出位置に配置され、入射する光の波数スペクトルを検出する分光器と、
検出された波数スペクトルから、前記観察対象物の多層構造を計測する解析手段と、
を備える装置における多層構造計測方法であって、
前記波数スペクトルから、層厚の光学距離に対応した情報を計算する第1の工程と、
前記光学距離に対応した情報から、各層の光学距離に対応した情報を分離して抽出する第2の工程と、
前記各層の光学距離に対応した情報をそれぞれ再度波数スペクトルに変換する第3の工程と、
第3の工程の結果から、干渉が発生している波数または波長を求める第4の工程と、
第4の工程で求めた波数または波長と、各層の光学距離とから、干渉次数を算出する第5の工程と、
第5の工程で求めた干渉次数を最も近い整数に近似し、近似した干渉次数と、干渉が発生している波数または波長とから、各層の光学距離を計算する第6の工程と、
を含むことを特徴とする多層構造計測方法。
【請求項2】
光源と、
前記光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を多層構造の観察対象物に導くとともに、該観察対象物からの戻り光を検出位置に導き、かつ、前記参照光を参照光路を介して前記検出位置に導く光学系と、
前記検出位置に配置され、前記戻り光と前記参照光の合成光の波数スペクトルを検出する分光器と、
検出された波数スペクトルから、前記観察対象物の多層構造を計測する解析手段と、
を備える装置における多層構造計測方法であって、
前記波数スペクトルから、層厚の光学距離に対応した情報を計算する第1の工程と、
前記光学距離に対応した情報から、各層の光学距離に対応した情報を分離して抽出する第2の工程と、
前記各層の光学距離に対応した情報をそれぞれ再度波数スペクトルに変換する第3の工程と、
第3の工程の結果から、干渉が発生している波数または波長を求める第4の工程と、
第4の工程で求めた波数または波長と、各層の光学距離とから、干渉次数を算出する第5の工程と、
第5の工程で求めた干渉次数を最も近い整数に近似し、近似した干渉次数と、干渉が発生している波数または波長とから、各層の光学距離を計算する第6の工程と、
を含むことを特徴とする多層構造計測方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、前記波数スペクトルに対してフーリエ変換を施す工程であることを特徴とする請求項1または2に記載の多層構造計測方法。
【請求項4】
前記第2の工程は、バンドパスフィルターによって各層の光学距離に対応した情報を抽出するものであり、それぞれの層についての抽出範囲が可変であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層構造計測方法。
【請求項5】
前記第3の工程は、光学距離に対応した情報に対して逆フーリエ変換を施す工程であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層構造計測方法。
【請求項6】
前記第5の工程では、各層の光学距離の2倍が波長の整数倍であることを利用して、干渉次数を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層構造計測方法。
【請求項7】
前記第5の工程では、各層の光学距離の2倍が波長の半整数倍であることを利用して、干渉次数を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層構造計測方法。
【請求項8】
前記第5および第6の工程では、各層の光学距離として、第1の工程の結果においてピークをとる光学距離を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層構造計測方法。
【請求項9】
第3の工程の結果から干渉が発生している波数または波長を複数求め、求めた波数または波長と干渉条件とから各層の光学距離を算出する工程を含み、前記第5および第6の工程では、上記工程で算出した光学距離を干渉次数の算出に用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の多層構造計測方法。
【請求項10】
前記第6の工程の後に、各層の光学距離を空間距離に変換する第7の工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の多層構造計測方法。
【請求項11】
前記参照光と、前記観察対象物の表面で反射する戻り光との光路差の光学距離が、前記観察対象物の多層構造全体の光学距離より長いことを特徴とする請求項2に記載の多層構造計測方法。
【請求項12】
前記光学系は、参照光を反射する参照ミラーにより参照光を前記検出位置に導くものであり、
前記第6の工程の後に、各層の光学距離を空間距離に変換する第7の工程をさらに含んでおり、
当該第7の工程では、前記参照ミラーから遠い方の界面までの光学距離から前記参照ミラーに近い方の界面までの光学距離を減算し、両者の界面の間の屈折率で除算することによって、空間距離を計算する
ことを特徴とする請求項2または11に記載の多層構造計測方法。
【請求項13】
観察対象物の多層構造を計測するための多層構造計測装置であって、
光源と、
前記光源からの光を多層構造の観察対象物に導くとともに、該観察対象物からの戻り光を検出位置に導く光学系と、
前記検出位置に配置され、入射する光の波数スペクトルを検出する分光器と、
検出された波数スペクトルから、前記観察対象物の多層構造を計測する解析手段と、
を備え、
前記解析手段は、
前記波数スペクトルから、層厚の光学距離に対応した情報を計算する第1の工程と、
前記光学距離に対応した情報から、各層の光学距離に対応した情報を分離して抽出する第2の工程と、
前記各層の光学距離に対応した情報をそれぞれ再度波数スペクトルに変換する第3の工程と、
第3の工程の結果から、干渉が発生している波数または波長を求める第4の工程と、
第4の工程で求めた波数または波長と、各層の光学距離とから、干渉次数を算出する第5の工程と、
第5の工程で求めた干渉次数を最も近い整数に近似し、近似した干渉次数と、干渉が発
生している波数または波長とから、各層の光学距離を計算する第6の工程と、
を実行することを特徴とする多層構造計測装置。
【請求項14】
観察対象物の多層構造を計測するための多層構造計測装置であって、
光源と、
前記光源からの光を測定光と参照光とに分割し、前記測定光を多層構造の観察対象物に導くとともに、該観察対象物からの戻り光を検出位置に導き、かつ、前記参照光を参照光路を介して前記検出位置に導く光学系と、
前記検出位置に配置され、前記戻り光と前記参照光の合成光の波数スペクトルを検出する分光器と、
検出された波数スペクトルから、前記観察対象物の多層構造を計測する解析手段と、
を備え、
前記解析手段は、
前記波数スペクトルから、層厚の光学距離に対応した情報を計算する第1の工程と、
前記光学距離に対応した情報から、各層の光学距離に対応した情報を分離して抽出する第2の工程と、
前記各層の光学距離に対応した情報をそれぞれ再度波数スペクトルに変換する第3の工程と、
第3の工程の結果から、干渉が発生している波数または波長を求める第4の工程と、
第4の工程で求めた波数または波長と、各層の光学距離とから、干渉次数を算出する第5の工程と、
第5の工程で求めた干渉次数を最も近い整数に近似し、近似した干渉次数と、干渉が発生している波数または波長とから、各層の光学距離を計算する第6の工程と、
を実行することを特徴とする多層構造計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−19636(P2010−19636A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179311(P2008−179311)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】