説明

多気筒エンジンの排気装置

【課題】エンジンの低速領域ではエゼクタ効果により掃気を促進し、中速領域では排気の脈動を利用して掃気性を高め、各速度領域で吸気の充填量を増大させる。
【解決手段】低速側独立排気通路54および低速側集合部55を有する低速側通路53と、高速側独立排気通路57,58および高速側集合部59を有する高速側通路56と、排気流通状態を変更する排気流通変更手段とを備え、低速側通路53は低速領域でエゼクタ効果が得られるようになっており、高速側通路56は、高速側集合部59までの通路が中速領域で排気脈動が同調する大きさに設定されている。排気流通変更手段は、低速領域では低速側通路53を開くとともに高速側通路56を絞り、エンジン回転数が前記低速領域から中速領域に移行したとき、低速側通路53を閉じて高速側通路56を開くように作動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に設けられる多気筒エンジンの排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンにおいて、エンジン出力を高めることを目的とした排気装置の開発が行なわれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ターボ過給機を有する装置であって、各気筒の排気ポートに接続されて互いに独立する複数の独立排気通路と、ターボ過給機の上流に設けられてこれら独立通路が集合する集合部と、この集合部に設けられて各独立排気通路の流路面積を変更可能なバルブとを備えたものが開示されている。この装置では、エンジンの低速領域で、前記バルブによって前記独立排気通路の流路面積を縮小することにより、排気行程にある気筒の排気を所定の独立排気通路から前記集合部に比較的高速で流入させ、この高速の排気の周囲に生成された負圧を前記集合部において他の独立通路に作用させていわゆるエゼクタ効果によってこの他の独立通路内の排気を下流側に吸い出す。こうすることで、吸気バルブと排気バルブとが両方開くオーバーラップ期間に排気が吸い出されることにより掃気が促進されるため、吸気の充填量が増大する。このようにして、低速領域で、エンジン出力を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−97335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように低速領域でエゼクタ効果を持たせるようにしたエンジンにおいて、独立排気通路を短くし、かつ、独立排気通路の流路面積をエンジンの回転速度に応じて変えるようにすれば、エンジンの低速、中速、高速の各領域のうち、低速領域では前記エゼクタ効果により掃気を促進し、また、高速領域では排気流通抵抗が小さくなること等で掃気を促進することができる。しかし、エンジンの中速領域では、エゼクタ効果が充分に得られず、かつ、気筒間の排気干渉等により掃気性が悪くなり、吸気の充填量が低下し易くなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、エンジンの低速領域ではエゼクタ効果により掃気を促進するとともに、中速領域でも掃気性を高めて、これらの速度領域で吸気の充填量を増大させ、エンジン出力を高めることのできる多気筒エンジンの排気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、吸気ポートおよび排気ポートがそれぞれ形成されるとともに前記吸気ポートを開閉可能な吸気バルブと前記排気ポートを開閉可能な排気バルブとが設けられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの排気装置であって、1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ接続された複数の独立排気通路、およびこれらの独立排気通路を下流側で集合させた集合部を備えるとともに、前記独立吸気通路および集合部が、低速側通路と高速側通路とに区分された排気通路と、前記排気通路の排気流通状態を変更する排気流通変更手段と、前記各気筒の吸気バルブおよび排気バルブを駆動可能なバルブ駆動手段とを備え、前記低速側通路は、1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ通じる複数の低速側独立排気通路およびこれらの低速側独立排気通路を下流側で集合させた低速側集合部を有し、かつ、排気順序が連続する気筒に接続された低速側独立排気通路の下流端は互いに隣り合う位置に配置されており、前記高速側通路は、1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ通じる複数の高速側独立排気通路およびこれらの高速側独立排気通路を下流側で集合させた高速側集合部を有し、かつ、排気ポートから高速側集合部までの通路がエンジンの中速領域で排気脈動が同調する大きさに設定されており、前記バルブ駆動手段は、エンジンの回転数が予め設定された基準回転数よりも低い低速領域では、前記各気筒の吸気バルブの開弁期間と排気バルブの開弁期間とが所定のオーバーラップ期間重複するように、かつ、排気順序が連続する気筒間において一方の気筒の前記オーバーラップ期間中に他方の気筒の排気バルブが開弁するように、各気筒の吸気バルブおよび排気バルブを駆動し、前記排気流通変更手段は、前記低速側通路を開閉するバルブおよび前記高速側通路の通路面積を変更するバルブを有し、エンジンの低速領域では前記低速側通路を開くとともに前記高速側通路を絞り、エンジン回転数が前記低速領域から中速領域に移行したとき、前記低速側通路を閉じて前記高速側通路を開くように作動することを特徴とするものである。
【0008】
本装置によれば、低速領域では、低速側通路が開かれるとともに高速側通路が絞られることにより、排気が低速側独立排気通路を高速で通過し、所定の低速側独立排気通路から低速側集合部へ高速の排気が噴出することでエゼクタ効果により他の低速側独立排気通路内のガスが吸い出される。ここで、本装置では、排気順序が連続する気筒間において一方の気筒の前記オーバーラップ期間中に他方の気筒の排気バルブが開弁し、この排気バルブの開弁に伴って所定の低速側独立排気通路から高速の排気が噴出することで前記エゼクタ効果によって前記オーバーラップ期間にある気筒内のガスが吸い出されるため、このオーバーラップ期間にある気筒内の掃気が促進される。
【0009】
また、中速領域では、低速側通路が閉じられるとともに高速側通路が開かれることにより、排気が高速側独立排気通路から高速側集合部へ流れる。ここで、本装置では、高速側通路の高速側集合部までの通路がエンジンの中速領域で排気脈動が同調する大きさに設定されているため、排気脈動により掃気が促進される。すなわち、排気行程となる気筒の排気バルブが開弁したときに生じる正圧波が高速側独立排気通路を伝播し、高速側集合部で反転し負圧波となって反射され、この負圧波が前記オーバーラップ期間内に排気ポートに戻って、いわゆる排気慣性効果により掃気が促進される。
【0010】
こうして、低速、中側の各領域で、吸気の充填量が増大し、エンジン出力が高められる。
【0011】
本発明において、前記独立排気通路が上流端近傍で前記低速側独立排気通路と前記高速側独立排気通路とに分岐し、この分岐箇所に、前記低速側通路を開閉するバルブと前記高速側通路の通路面積を変更するバルブとを兼ねる切替バルブが設けられていることが好ましい。
【0012】
このようにした場合、低速領域では、前記切替バルブが低速側独立排気通路を開くとともに高速側独立排気通路を絞る状態となり、中速領域では、前記切替バルブが低速側独立排気通路を閉じるとともに高速側独立排気通路を開く状態となる。
【0013】
また、本発明において、前記独立排気通路が上流端近傍で前記低速側独立排気通路と前記高速側独立排気通路とに分岐し、この分岐箇所の直下流の前記低速側独立排気通路に、この低速側通路を開閉するバルブが設けられるとともに、前記分岐箇所の直下流の前記高速側独立排気通路に、この高速側通路の通路面積を変更するバルブが設けられていてもよい。
【0014】
このようにした場合、低速領域では、低速側通路を開閉するバルブが開かれるとともに高速側通路の通路面積を変更するバルブが通路を絞る状態となり、中速領域では、低速側通路を開閉するバルブが閉じられるとともに高速側通路の通路面積を変更するバルブが開かれる。
【0015】
また、本発明において、気筒毎に2つの排気ポートが設けられ、一方の排気ポートから下流側に低速側通路、他方の排気ポートから下流側が高速側通路がそれぞれ形成されるとともに、前記排気流通変更手段として、前記各排気ポートに設けられた排気弁に対してそれぞれ、排気弁を作動状態と停止状態とに変更可能な弁停止機構が設けられていてもよい。
【0016】
このようにした場合、低速領域では、低速側通路に通じる排気ポートに設けられた排気弁が作動状態とされるとともに高速側通路に通じる排気ポートに設けられた排気弁が停止状態とされ、中速領域では、低速側通路に通じる排気ポートに設けられた排気弁が停止状態とされるとともに高速側通路に通じる排気ポートに設けられた排気弁が作動状態とされる。
【0017】
また、本発明において、前記低速側通路の低速側集合部までの長さが、前記高速側通路の高速側集合部までの長さよりも短く設定されていることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、低速領域で、排気が低速側通路を流れるとき、低速側集合部に至るまでの流速の減衰が小さく、エゼクタ効果が良好に発揮される。
【0019】
また、前記低速側集合部より下流の前記低速側通路と前記高速側集合部より下流の前記高側側通路とが集合し、その集合部より下流側に排気を浄化する触媒装置が配置され、この触媒装置が未活性のときは、前記排気流通変更手段が前記低速側通路を開いて前記高速側通路を絞る状態となるようにすることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、触媒装置が未活性のとき、排気ポートから触媒装置までの流路のボリュームが小さくなって、排気が触媒装置に達するまでの排気温度の低下が抑制されることにより、触媒装置の暖機が促進され、触媒装置の活性化が早められる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の多気筒エンジンの排気装置によると、エンジンの低速領域ではエゼクタ効果を良好に発揮させて掃気を促進し、また中速領域では排気の脈動を効果的に利用して掃気性を高めることにより、これらの速度領域で吸気の充填量を増大させ、エンジン出力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの排気装置を備えたエンジンシステムの概略構成図である。
【図2】排気マニフォールドの概略斜視図である。
【図3】切替バルブ配置された部分の概略図である。
【図4】吸気バルブおよび排気バルブのバルブタイミングを説明するための図である。
【図5】エンジンの低速、中速、高速の領域を示す図である。
【図6】低速側通路が使用されているときの気筒間の排気干渉を説明するための図である。
【図7】中速領域で高速側通路が使用されているときの排気慣性効果を説明するための図である。
【図8】低速側通路を使用した場合と高速側領域を使用した場合との、体積効率とエンジン回転数との関係を示す図である。
【図9】排気流通変更手段の別の実施形態を示す図である。
【図10】排気流通変更手段のさらに別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る多気筒エンジンの排気装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は前記多気筒エンジンの排気装置を備えたエンジンシステム100の概略構成図である。このエンジンシステム100は、シリンダヘッド9およびシリンダブロックを有するエンジン本体1と、エンジン制御用のECU2と、エンジン本体1に接続された排気マニホールド5と、排気マニホールド5に接続された、排気を浄化する触媒装置6とを備えている。
【0025】
前記シリンダヘッド9およびシリンダブロックの内部にはピストンがそれぞれ嵌挿された複数の気筒12が形成されている。本実施形態では、4つの気筒12、具体的には、図1の左から順に第1気筒12a,第2気筒12b,第3気筒12c,第4気筒12dが形成されている。前記シリンダヘッド9には、ピストンの上方に区画された燃焼室内に臨むようにそれぞれ点火プラグ15が設置されている。
【0026】
前記エンジン本体1は4サイクルエンジンであって、図4に示すように、各気筒12a〜12dにおいて、180℃Aずつずれたタイミングで前記点火プラグ15による点火が行われて、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程がそれぞれ180℃Aずつずれるように構成されている。本実施形態では、第1気筒12a→第3気筒12c→第4気筒12d→第2気筒12bの順に点火が行われてこの順に排気行程等が実施される。
【0027】
各気筒12の上部には、それぞれ燃焼室に向かって開口する2つの吸気ポート17および2つの排気ポート18が設けられている。吸気ポート17は、各気筒12内に吸気を導入するためのものである。排気ポート18は、各気筒12内から排気を排出するためのものである。各吸気ポート17には、これら吸気ポート17を開閉して吸気ポート17と気筒12内部とを連通あるいは遮断するための吸気バルブ19が設けられている。各排気ポート18には、これら排気ポート18を開閉してこれら排気ポート18と気筒12内部とを連通あるいは遮断するための排気バルブ20が設けられている。前記吸気バルブ19は吸気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)30により駆動されることで、所定のタイミングで吸気ポート17を開閉する。また、前記排気バルブ20は、排気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)40により駆動されて、所定のタイミングで排気ポート18を開閉する。
【0028】
前記吸気バルブ駆動機構30は、吸気バルブ19に連結された吸気カムシャフト31と吸気VVT32とを有している。吸気カムシャフト31は、周知のチェーン/スプロケット機構等の動力伝達機構を介してクランクシャフトに連結されており、クランクシャフトの回転に伴い回転して、吸気バルブ19を開閉駆動する。
【0029】
前記吸気VVT32は、吸気バルブ19のバルブタイミングを変更するためのものである。この吸気VVT32は、前気カムシャフト31と同軸に配置されてクランクシャフトにより直接駆動される所定の被駆動軸と吸気カムシャフト31との間の位相差を変更して、これによりクランクシャフトと前記吸気カムシャフト31との間の位相差を変更することで、吸気バルブ19のバルブタイミングを変更する。吸気VVT32の具体的構成としては、例えば、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に周方向に並ぶ複数の液室を有し、これら液室間に圧力差を設けることで前記位相差を変更する液圧式機構や、前記被駆動軸と前記吸気カムシャフト31との間に設けられた電磁石を有し、前記電磁石に電力を付与することで前記位相差を変更する電磁式機構等が挙げられる。この吸気VVT32は、ECU2で算出された吸気バルブ19の目標バルブタイミングに基づいて前記位相差を変更する。
【0030】
前記排気弁駆動機構40は、前記吸気バルブ駆動機構30と同様の構造を有している。すなわち、排気弁駆動機構40は、排気バルブ20およびクランクシャフトに連結された排気カムシャフト41と、この排気カムシャフト41とクランクシャフトとの位相差を変更することで排気バルブ20のバルブタイミングを変更する排気VVT42とを有している。排気VVT42は、ECU2で算出された排気バルブ20の目標バルブタイミングに基づいて、前記位相差を変更する。そして、排気カムシャフト41は、この位相差の下でクランクシャフトの回転に伴って回転して排気バルブ20を前記目標バルブタイミングで開閉駆動する。
【0031】
前記各気筒12の排気ポート18は、排気通路50に接続されている。この排気通路50は、1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ接続された複数の独立排気通路52、およびこれらの独立排気通路52を下流側で集合させた集合部を備えている。これら独立排気通路52の上流部分は前記シリンダヘッド9内に形成されており、これら独立排気通路52の下流部分および集合部は、図2に示すように前記排気マニホールド5に設けられている。
【0032】
前記排気通路50の独立排気通路52および集合部が、低速側通路53と高速側通路56とに区分されている。低速側通路53は、1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ通じる複数の低速側独立排気通路54およびこれらの低速側独立排気通路54の下流側の低速側集合部55を有し、高速側通路56は、1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ通じる複数の高速側独立排気通路57,58およびこれらの高速側独立排気通路57,58の下流側の高速側集合部59を有している。
【0033】
本実施形態では、図1および図2に示すように、各気筒の排気ポート18にそれぞれ接続された4本の独立排気通路52が、排気マニフォールド5の上流端付近において、低速側独立排気通路54と高速側独立排気通路57とに分岐している。
【0034】
前記低速側通路53には、各気筒12の排気ポート18に通じる4本の低速側独立排気通路54が形成され、これらの低速側独立排気通路54が下流側で一括に集合されて、低速側集合部55が形成されている。この低速側集合部55において、排気順序が連続する気筒に接続された低速側独立排気通路55の下流端は互いに隣り合う位置に配置されている。
【0035】
また、前記高速側通路56には、上流端から通路途中までの範囲に、各気筒12の排気ポート18に通じる気筒別の4本の高速側独立排気通路57が形成され、通路途中で気筒別の高速側独立排気通路57が2本ずつ集合されて、それより下流側に、2本に減数された高速側独立排気通路58が形成され、さらにこの2本の高速側独立排気通路58が下流側で集合されて、高速側集合部59が形成されている。通路途中より下流側の高速側独立排気通路58は、排気順序が互いに連続しない複数の気筒12の排気ポート18にそれぞれ通じている。すなわち、前述のように排気行程が第1気筒12a→第3気筒12c→第4気筒12d→第2気筒12bの順に行われる4気筒エンジンでは、上流側の気筒別の4本の高速側独立排気通路57のうち、第1気筒12aと第4気筒12dの各排気ポート18に通じる高速側独立排気通路57が集合されるとともに、第2気筒12bと第3気筒12cの各排気ポート18に通じる高速側独立排気通路57が集合されて、下流側の高速側独立排気通路58が形成されている。
【0036】
前記高速側通路56の高速側集合部59までの通路は、エンジンの中速域で排気脈動が同調する大きさ(長さおよび断面積)に設定されている。すなわち、排気脈動の同調とは、後に詳述するように、排気脈動による負圧波が排気バルブ20と吸気バルブ19の両方が開いているオーバーラップ期間に排気ポート18に作用して、排気慣性効果が得られるようになる状態をいい、このような排気脈動の同調がエンジンの中速域で得られるように、排気ポート18から高速側独立排気通路57および高速側独立排気通路58を経て高速側集合部59に至るまでの通路の長さおよび断面積が設定されている。具体的には、排気ポート18から高速側集合部59までの通路の長さは、60〜80mm程度に設定されている。
【0037】
一方、低速側通路53の低速側集合部55までの通路の長さは、高速側通路56よりも短く設定され、具体的には30〜40mm程度に設定されている。
【0038】
低速側集合部55より下流の低速側通路53と高速側集合部59より下流の高側通路56とは排気マニフォールド5の下流端部で集合され、その集合部より下流側に前記触媒装置6が配置されている。
【0039】
また、前記低速側通路53および前記高速側通路56に対し、排気流通状態を変更する排気流通変更手段が設けられ、この排気流通変更手段は、低速側通路53を開閉するバルブおよび高速側通路56の通路面積を変更するバルブを有している。本実施形態では、低速側通路53を開閉するバルブと高速側通路56の通路面積を変更するバルブとを兼ねる切替バルブ61が、各独立排気通路52の上流端近傍の、低速側独立排気通路54と高速側独立排気通路57とに分岐する箇所に設けられている。
【0040】
この切替バルブ61は、図3に示すように、低速側独立排気通路54を開くとともに高速側独立排気通路57を閉じる状態(破線で示す状態)と、低速側独立排気通路54を閉じるとともに高速側独立排気通路57を開く状態(実線で示す状態)とに切替可能であり、さらに本実施形態では、低速側独立排気通路54および高速側独立排気通路57をともに開く状態(二点鎖線で示す状態)にも変位可能となっている。
【0041】
各独立排気通路52に設けられた切替バルブ61は、共通の回動軸62により連結されて一体に回動するようになっている。この回動軸62は、バルブアクチュエータ65により回転駆動される。このバルブアクチュエータ65は、ECU2からの制御信号に応じて回動軸62を回動させ、切替バルブ61を作動する。
【0042】
前記ECU2は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラであって、プログラムを実行するためのCPUと、RAMやROMからなりプログラムおよびデータを格納するメモリと、各種信号の入出力を行なうI/Oバスとを備えている。このECU2は、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ67、触媒装置6の温度を検出する触媒温度センサ68等の各種センサからの信号を受け、この信号に基づき種々の演算を行う。
【0043】
ECU2は、エンジン回転数センサ67等からの信号に基づいて運転状態を判別し、その運転状態に応じて、吸気バルブ19および排気バルブ20の目標バルブタイミングを演算して、吸気バルブ19および排気バルブ20のバルブタイミングが目標値になるように、吸気VVT32および排気VVT42を制御するとともに、切替バルブ61により運転状態に応じて前記低速側通路53および前記高速側通路56を開閉するように、前記バルブアクチュエータ63を駆動する。
【0044】
前記吸気バルブ19および排気バルブ20の目標バルブタイミングは、少なくともエンジンの高負荷領域であって、エンジンの回転数が第1の基準回転数N1より低い低速領域R1(図5参照)では、図4に示すように、排気バルブ20と吸気バルブ19との両方が所定のオーバーラップ期間T_O/L開弁するように、すなわち、排気バルブ20の開弁期間と吸気バルブ19の開弁期間とがオーバーラップするように、かつ、排気バルブ20が他の気筒12の前記オーバーラップ期間T_O/L中に開弁を開始するように設定されている。具体的には、第1気筒12aの吸気バルブ19と排気バルブ20とがオーバーラップしている期間中に第3気筒12cの排気バルブ12cが開弁し、第3気筒12cの吸気バルブ19と排気バルブ20とがオーバーラップしている期間中に第4気筒12dの排気バルブ12cが開弁し、第4気筒12dの吸気バルブ19と排気バルブ20とがオーバーラップしている期間中に第2気筒12bの排気バルブ20が開弁し、第2気筒12bの吸気バルブ19と排気バルブ20とがオーバーラップしている期間中に第1気筒12aの排気バルブ20が開弁するよう設定されている。
【0045】
低速領域R1のオーバーラップ期間T_O/Lは例えば60℃A以上に設定されている。
【0046】
なお、エンジンの回転数が基準回転数N1より高い中、高速領域では、前記吸気バルブ19の開閉タイミングが遅らされることにより前記オーバーラップ期間T_L/Oが前記低速領域R1で設定されたオーバーラップよりも小さくなるように設定されている。
【0047】
また、前記切替バルブ61は、エンジン回転数が図5に示す低速領域R1、中速領域R2、高速領域R3のいずれの領域にあるかに応じて、次のように制御される。
【0048】
エンジンの回転数が第1の基準回転数N1よりも低い低速領域R1では、前記切替バルブ61が低速側通路53を開いて高速側通路56を閉じる状態(図3中の破線の状態)とされる。また、エンジンの回転数が第1の基準回転数N1以上で、かつ、第2の基準回転数N2よりも低い中負荷領域R2では、前記切替バルブ61が低速側通路53を閉じて高速側通路56を開く状態(図3中の実線の状態)とされる。さらにエンジンの回転数が第2の基準回転数N2以上の高速領域R3では、前記切替バルブ61が低速側通路53および高速側通路56の両方を開く状態(図3中の二点鎖線の状態)とされる。
【0049】
前記第1の基準回転数N1は例えば2000rpmであり、また、第2の基準回転数N2は例えば4000rpmである。
【0050】
また、ECU2は、前記触媒温度センサ68からの信号に基づいて触媒装置6が未活性かどうかを判別し、触媒装置6が未活性のときは、低速側通路53を開いて高速側通路56を閉じる状態に切替バルブ61を制御する。
【0051】
以上のように構成された本エンジンシステム100における吸気性能について次に説明する。
【0052】
所定の気筒12(以下、適宜排気行程気筒12という)の排気バルブ20が開弁すると、この気筒12の排気ポート18から対応する前記独立排気通路52に排気が高速で流出。特に、排気バルブ20の開弁直後は、気筒12内から非常に高速のガス(いわゆるブローダウンガス)が流出する。
【0053】
ここで、エンジン回転数が前記低速領域R1あるときは、前記切替バルブ61が低速側通路53を開いて高速側通路56を閉じる状態とされることにより、排気は低速側独立排気通路54へ流れる。この状態では、低速側通路53および高速側通路56の両方が開いた場合と比べて流路面積が小さくなり、流路が絞られることで排気は高速で低速側独立排気通路54を通って下流に流れ、前記低速側集合部55に流入する。この場合に、低速側独立排気通路54が短く設定されているため、低速側集合部55に至るまでの間の流速の減衰は小さい。
【0054】
そして、低速側集合部55に所定の低速側独立排気通路54から高速の排気が噴出されると、この排気の周囲に発生した負圧作用すなわちエゼクタ効果により低速側集合部55に連通している他の低速側独立排気通路54に対し、その内部のガスを下流側へと吸い出す力が作用する。ここで、前記排気行程気筒12の排気バルブ20の開弁時において、排気順序がこの排気行程気筒12の1つ前に設定された他の気筒12(以下、適宜、吸気行程気筒12という)は前記オーバーラップ期間中にありその排気バルブ19と吸気バルブ20とはいずれも開弁している。そのため、前記吸出し力は、この吸気行程気筒12に接続された低速側独立排気通路54を介して吸気行程気筒12内のガスに作用し、この吸出し力により吸気行程気筒12内の残留ガスが気筒12内から勢いよく吸い出され、これに伴い、吸気行程気筒12内に吸気ポート17から吸気バルブ19を介して多量の空気が流入する。
【0055】
特に、排気順序が連続する気筒12に接続された低速側独立排気通路54の下流端は前記低速側集合部55において隣接して配置されているため、排気行程気筒12に接続された低速側独立排気通路54による吸出し力は吸気行程気筒12に接続された低速側独立排気通路54に効果的に作用し、この吸気行程気筒12から多量の残留ガスが吸い出される。
【0056】
このようにして、エゼクタ効果が効果的に発揮されることにより、各気筒12の掃気が促進され、吸気の充填効率が上昇してエンジン出力が高められる。
【0057】
なお、多気筒エンジンにおいて各気筒12での掃気には気筒間の排気干渉が影響する。すなわち、排気行程気筒12の排気バルブ20が開弁したときにブローダウンとともに正圧波が生じ、低速側通路53が開かれている状態では、前記正圧波が、第6図に破線矢印で示すように、排気行程気筒12の排気ポート18に通じる低速側独立排気通路54から低速側集合部55を経て他の低速側独立排気通路54へ伝播する。そして、この正圧波が吸気行程気筒12のオーバーラップ期間中にこの気筒12の吸気ポート18に達すると、当該気筒12の掃気を阻害する要因となる。
【0058】
このような排気干渉を避けるには、前記吸気行程気筒12のオーバーラップ期間中にこの気筒12の吸気ポート18に到達しないように、独立排気通路を長くすればよいが、低速領域で排気干渉を避けるには、独立排気通路を2〜3m程度の長さにする必要があって、自動車への搭載性等の点から現実的ではない。
【0059】
これに対し、本実施形態では、前記エゼクタ効果が充分に発揮されるように低速側独立排気通路54を短くし、こうした場合に、低速領域R1で、前記排気干渉は生じるものの、その影響よりも前記エゼクタ効果による掃気促進作用が上回ることにより、吸気効率が高められるようにしている。
【0060】
また、エンジン回転数が前記中速領域R2となったときは、前記切替バルブ61が低速側通路53を閉じて高速側通路56を開く状態とされる。これにより、排気行程気筒12の排気ポート18から流出する排気が高速側独立排気通路57,58および高速側集合部59を流通するようになる。
【0061】
この状態では、前記エゼクタ効果は得られなくなるものの、中速領域R2において前記排気干渉が避けられるとともに、排気の脈動が掃気を促進するように作用し、吸気の充填効率が高められる。
【0062】
すなわち、前記低速側通路53が開かれている場合のエゼクタ効果は、背圧が低い低速領域R1では良好に得られるものの、中速領域R2では背圧が高くなるに伴いエゼクタ効果が低減するため、仮に中速領域R2まで低速側通路53を開いて高速側通路56を閉じた状態とすると、エゼクタ効果よりも前記排気干渉の影響が大きくなって、掃気性が悪くなる。
【0063】
これに対し、本実施形態では、中速領域R2で、低速側通路53が閉じられて、低速側通路53よりも長い高速側通路56が開かれる状態に切り替ることにより、排気行程気筒12の排気バルブ20が開弁したときに生じる正圧波が、この気筒12の排気ポート18に通じる高速側独立排気通路57,58から高速側集合部59を経て他の高速側独立排気通路58,57へ伝播しても、この正圧波が吸気行程気筒12のオーバーラップ期間中にこの気筒12の吸気ポート18に達することはないため、前期排気干渉が避けられる。
【0064】
また、排気行程気筒12の排気バルブ20が開弁したときに生じる正圧波による脈動としては、集合部で反転し負圧波となって反射され、同一気筒に戻るものがある。例えば、図7に示すように、第1気筒12aで生じてこの気筒12aの排気ポート18に通じる高速側独立排気通路57,58へ伝播した正圧波は、高速側集合部59で反転し負圧波となって第1気筒12aの排気ポート18に戻ってくる。他の気筒12b〜12dで生じる圧力波についても同様である。
【0065】
この負圧波が前記オーバーラップ期間内に排気ポート18に戻ると、気筒内との圧力差が大きくなって、いわゆる排気慣性効果により掃気性が高められる。このように負圧波が排気ポート18に戻るタイミングが前記オーバーラップ期間内となって排気慣性効果が得られる状態を、排気脈動の同調という。本実施形態では、このような排気脈動の同調が中速領域R2で得られるように高速側通路56の高速側集合部59までの通路(排気ポート18から高速側独立排気通路57,58を経て高速側集合部59に至るまでの通路)の長さおよび断面積が設定されていることにより、中速領域R2で掃気性が高められる。
【0066】
このように、エンジン速度に応じて低速側通路53を使用する状態と高速側通路56を使用する状態とに切り替えられることにより、各速度領域でそれぞれ掃気性が高められ、この作用を、図8を参照しつつさらに説明する。
【0067】
図8は体積効率とエンジン回転数との関係を示している。低速側通路53を使用した場合、この図に実線で示すように、低速領域で、前述のエゼクタ効果で掃気が促進されることにより体積効率が高められ、また、通路長を短くすることで、高速領域でも、排気流通抵抗の軽減および排気慣性効果で体積効率を高めることは可能であるが、中速領域では、前述の排気干渉が生じることにより、体積効率が落ち込む。
【0068】
一方、高速側通路56を使用した場合、図8に破線で示すように、中速領域R2で、前述のように排気干渉が避けられるとともに排気慣性効果が得られることにより、体積効率が高められる。
【0069】
従って、低速領域R1では低速側通路53を使用し、エンジン回転数が第1の基準回転数N1を越えて中速領域R2になると、高速側通路56を使用する状態に切り替えられることにより、これらの速度領域にわたり、高い体積効率が得られて、エンジン出力を高めることができる。
【0070】
なお、前記高速領域R3では、低速側通路53および高速側通路56の両方が開かれることにより、流路面積が大きくなり、排気流通抵抗が軽減される。従って、排気流量が大きく背圧が高くなりやすい高速領域R3では、排気が抵抗の少ない状態で排出されることで掃気が促進されてエンジン出力が確保される。
【0071】
また、触媒装置6が未活性状態のときは、低速側通路53を開いて高速側通路56を閉じる状態に切替バルブ61が制御されることにより、各気筒12の排気ポート18から流出した排気が、低速側通路53を通って触媒装置6に流れる。この状態では、排気ポート18から触媒装置6までの流路のボリュームが小さくなるため、排気が触媒装置6に達するまでの間の排気温度の低下が抑制される。これにより、触媒装置6の暖機が促進され、触媒装置6の活性化が早められる。
【0072】
なお、本発明の装置の具体的構造は前記実施形態に限定されず、種々変更可能である。以下に、他の実施形態を説明する。
【0073】
(1)前記実施形態では、低速側通路53を開閉するバルブと高速側通路56の通路面積を変更するバルブとを兼ねる切替バルブ61が設けられているが、図9に示すように、低速側通路53を開閉するバルブ71と、高速側通路56の通路面積を変更するバルブ73とを別個に設けてもよい。この場合、低速側通路53を開閉するバルブ71は、低速側独立排気通路54の上流端近傍に設けられ、高速側通路56の通路面積を変更するバルブ73は、高速側独立排気通路57の上流端近傍に設けられる。
【0074】
これらのバルブ71,73は、それぞれ、回動軸72,74を介し、図外のアクチュエータにより回転駆動される。そして、低速領域では、図9に二点鎖線で示すようにバルブ71が開かれるとともにバルブ73が閉じられ、中速領域では、図9に実線で示すようにバルブ71が閉じられるとともにバルブ73が開かれる。また、高速領域では、両バルブ71,73がともに開かれる。
【0075】
(2)前記実施形態では、前記低速低負荷領域R1において、低速側通路53を開くとともに高速側通路56を閉じるようにしているが、高速側通路56は、低速低負荷領域R1において完全に閉じなくても、流路面積が最大面積よりも縮小されるように絞られた状態であればよい。例えば、図9に示した高速側通路56の通路面積を変更するバルブ73を、低速領域において、全閉とせずに、全開よりは小さい所定開度としてもよい。
【0076】
このようにした場合でも、高速側通路56が絞られれば、高速側通路56が全開状態の場合と比べ、流路面積が小さくなるため低速側通路53に流れる排気の流速が高くなり、エゼクタ効果が得られる。
【0077】
しかし、前記実施形態のように前記低速低負荷領域R1において高速側通路56を完全に閉じるようにする方が、エゼクタ効果は高められる。
【0078】
(3)前記実施形態では、各気筒12の排気ポート18に通じる独立排気通路52を低速側独立排気通路54と高速側独立排気通路57とに分岐させているが、図10に示すように、各気筒12に設けられた2つの排気ポート18のうちの一方の排気ポート18から下流を低速側通路53、他方の排気ポート18から下流を高速側通路56とするようにしてもよい。
【0079】
すなわち、図10に示す実施形態では、各気筒12の2つの排気ポート18が互いに独立して形成され、一方の排気ポート18に低速側独立排気通路54が接続され、他方の排気ポート18に高速側独立排気通路57が接続されている。また、排気流通変更手段として、各排気ポート18に設けられた排気弁20に対してそれぞれ、排気弁20を作動状態と停止状態とに変更可能な弁停止機構80が設けられている。この弁停止機構80の構造自体は、いわゆるロストモーション機構として従来から知られているため、詳しい図示および説明は省略する。
【0080】
この実施形態による場合、低速領域では、低速側独立排気通路54に通じる排気ポート18に設けられた排気弁20が作動状態とされる一方、高速側独立排気通路57に通じる排気ポート18に設けられた排気弁20が停止状態とされることにより、高速側独立排気通路57が閉じられて、排気が低速側独立排気通路54にのみ流れる状態となる。また、中速領域では、低速側独立排気通路54に通じる排気ポート18に設けられた排気弁20が停止状態とされる一方、高速側独立排気通路57に通じる排気ポート18に設けられた排気弁20が作動状態とされることにより、低速側独立排気通路54が閉じられて、排気が高速側独立排気通路57にのみ流れる状態となる。高速領域では、各排気弁20がいずれも作動状態とされる。
【0081】
(4)高速側通路56の構成は前記実施形態に限定されず、各気筒12の排気ポート18に通じる気筒別の高速側独立排気通路57を長く形成して、下流側で一括に集合させるようにしてもよい。ただし、気筒数と同数の気筒別の高速側独立排気通路57を長く形成すると、排気マニフォールドが大型化する。これに対し、前記実施形態のように、高速側独立排気通路57を途中で2本ずつ集合させて、下流側の独立排気通路58の本数を少なくすれば、高速側集合部59までの通路を中速領域R2で排気脈動が同調するような長さとしつつ、高速側通路を極力コンパクトな構造とすることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 エンジン本体
5 排気マニホールド
6 触媒装置
17 吸気ポート
18 排気ポート
19 吸気バルブ
20 排気バルブ
30 吸気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)
40 排気バルブ駆動機構(バルブ駆動手段)
50 排気通路
52 独立排気通路
53 低速側通路
54 低速側独立排気通路
55 低速側集合部
56 高速側通路
57,58 高速側独立排気通路
59 高速側集合部
61 切替バルブ(排気流通変更手段)
71,73 バルブ(排気流通変更手段)
80 弁停止機構(排気流通変更手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートおよび排気ポートがそれぞれ形成されるとともに前記吸気ポートを開閉可能な吸気バルブと前記排気ポートを開閉可能な排気バルブとが設けられた複数の気筒を有する多気筒エンジンの排気装置であって、
1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ接続された複数の独立排気通路、およびこれらの独立排気通路を下流側で集合させた集合部を備えるとともに、前記独立吸気通路および集合部が、低速側通路と高速側通路とに区分された排気通路と、
前記排気通路の排気流通状態を変更する排気流通変更手段と、
前記各気筒の吸気バルブおよび排気バルブを駆動可能なバルブ駆動手段とを備え、
前記低速側通路は、1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ通じる複数の低速側独立排気通路およびこれらの低速側独立排気通路を下流側で集合させた低速側集合部を有し、かつ、排気順序が連続する気筒に接続された低速側独立排気通路の下流端は互いに隣り合う位置に配置されており、
前記高速側通路は、1つの気筒あるいは排気順序が互いに連続しない複数の気筒の排気ポートにそれぞれ通じる複数の高速側独立排気通路およびこれらの高速側独立排気通路を下流側で集合させた高速側集合部を有し、かつ、排気ポートから高速側集合部までの通路がエンジンの中速領域で排気脈動が同調する大きさに設定されており、
前記バルブ駆動手段は、エンジンの回転数が予め設定された基準回転数よりも低い低速領域では、前記各気筒の吸気バルブの開弁期間と排気バルブの開弁期間とが所定のオーバーラップ期間重複するように、かつ、排気順序が連続する気筒間において一方の気筒の前記オーバーラップ期間中に他方の気筒の排気バルブが開弁するように、各気筒の吸気バルブおよび排気バルブを駆動し、
前記排気流通変更手段は、前記低速側通路を開閉するバルブおよび前記高速側通路の通路面積を変更するバルブを有し、エンジンの低速領域では前記低速側通路を開くとともに前記高速側通路を絞り、エンジン回転数が前記低速領域から中速領域に移行したとき、前記低速側通路を閉じて前記高速側通路を開くように作動することを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項2】
請求項1に記載の多気筒エンジンの排気装置であって、
前記独立排気通路が上流端近傍で前記低速側独立排気通路と前記高速側独立排気通路とに分岐し、この分岐箇所に、前記低速側通路を開閉するバルブと前記高速側通路の通路面積を変更するバルブとを兼ねる切替バルブが設けられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項3】
請求項1に記載の多気筒エンジンの排気装置であって、
前記独立排気通路が上流端近傍で前記低速側独立排気通路と前記高速側独立排気通路とに分岐し、この分岐箇所の直下流の前記低速側独立排気通路に、この低速側通路を開閉するバルブが設けられるとともに、前記分岐箇所の直下流の前記高速側独立排気通路に、この高速側通路の通路面積を変更するバルブが設けられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項4】
請求項1に記載の多気筒エンジンの排気装置であって、
気筒毎に2つの排気ポートが設けられ、一方の排気ポートから下流側に低速側通路、他方の排気ポートから下流側に高速側通路がそれぞれ形成されるとともに、前記排気流通変更手段として、前記各排気ポートに設けられた排気弁に対してそれぞれ、排気弁を作動状態と停止状態とに変更可能な弁停止機が設けられていることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の多気筒エンジンの排気装置であって、
前記低速側通路の低速側集合部までの長さが、前記高速側通路の高速側集合部までの長さよりも短く設定されていることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の多気筒エンジンの排気装置であって、
前記低速側集合部より下流の前記低速側通路と前記高速側集合部より下流の前記高側通路とが集合し、その集合部より下流側に排気を浄化する触媒装置が配置され、この触媒装置が未活性のときは、前記排気流通変更手段が前記低速側通路を開いて前記高速側通路を絞る状態となることを特徴とする多気筒エンジンの排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−214438(P2011−214438A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81056(P2010−81056)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】