説明

多相クロック生成回路

【課題】従来の多相クロック生成回路では、出力クロック信号に任意の周波数プロファイルを設定することができなかった。
【解決手段】本発明にかかる多相クロック生成回路1は、基準クロック信号に基づき多相クロック信号を生成する位相ロックループ回路10と、多相クロック信号の周波数プロファイルを保持し、開始信号に基づき周波数プロファイルの出力を開始し、基準クロック信号に基づき任意の周期で周波数プロファイルを更新する周波数プロファイル保持回路20と、周波数プロファイルに基づいて多相クロック信号のうち任意の位相のクロック信号を選択し、選択したクロック信号を位相ロックループ回路10に帰還させるクロック選択回路30とを有することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多相クロック生成回路に関し、特に生成する多相クロック信号の周波数を変更可能な多相クロック生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な半導体装置でクロック信号を生成するためにクロック生成回路が用いられている。また、このクロック生成回路には、位相が異なる複数のクロック信号(以下、多相クロック信号と称す)を生成可能な多相クロック生成回路がある。この多相クロック生成回路は、例えばパルス幅変調回路のクロック生成回路として用いられる。このパルス幅変調回路は、多相クロック信号に基づき生成するPWM(Pulse Width Modulation)パルスのパルス幅を制御する回路である。
【0003】
このパルス幅変調回路は、例えばレーザービームプリンタ(LBP:Laser Beam Printer)などに用いられる。レーザービームプリンタは、解像度の高さ、静音性、高速性から広く普及している。これらの機器では、印字する1ドット毎にその階調(すなわち濃淡)をパルスのH幅で制御する。
【0004】
ここで、レーザービームプリンタの簡単なブロック図を図12に示し、レーザービームプリンタについて説明する。レーザービームプリンタは、レーザービーム103が出力するレーザー光をパルス幅変調回路104が出力するPWMパルス信号で制御する。そして、レンズ102を介してレーザー光を非印刷物(例えば、紙)101に照射し、印字を行う。なお、印字は、レーザー光を一方向に走査することで行毎に行われる。
【0005】
印字結果の一例を図13に示す。図13に示すように、印字はドットd毎に行われ、ドット中の印字領域pの幅によってドットの階調が調節される。レーザービームプリンタでは、この印字領域pの位置と幅とをPWMパルス信号のH幅によって制御する。そのため、高精細な画像を得るためには、パルス幅変調回路104にはパルス幅を高精度に制御することが求められる。このような性能を実現するために、パルス幅変調回路104は、多相クロック信号を用いて出力するPWMパルス信号のパルス幅を高精度に制御する。
【0006】
このパルス幅変調回路104の一例が特許文献1に開示されている。パルス幅変調回路104のブロック図を図14に示す。パルス幅変調回路104は、多相クロック生成回路110が基準クロック信号に基づき、256相の多相クロック信号を生成する。そして、同期位置検出回路120は、走査開始の基準となる水平同期信号がこの多相クロック信号のうちいずれと同期しているかを検出し、同期位置検出信号を出力する。デジタルパルスデータ信号処理回路130は、水平同期信号と、PWMパルスの同期を取るため、入力されたデジタルパルスデータを同期位置検出結果に応じてPWMパルスの立ち上がり情報、立ち下がり情報に変換する。多相クロック選択回路140は、立ち上がり情報及び立ち下がり情報に応じて、多相クロック信号に含まれる信号の中から、任意のクロック信号を選択する。パルス幅変調信号生成回路150は、選択されたクロック信号に基づいてパルス幅変調信号(PWMパルス)を生成する。
【0007】
つまり、パルス幅変調回路104は、多相クロック信号を用いて精度良くPWMパルス信号のパルス幅を制御することが可能である。しかしながら、複数のドラムを用いるレーザービームプリンタでは、ドラム間のばらつきを補正するために多相クロック信号の周波数を微調整しなければならない場合がある。このような場合、基準クロック信号の周波数をパルス幅変調回路毎に変えていたのでは効率が悪いため、多相クロック生成回路110が出力する多相クロック信号の周波数を変更する。そこで、多相クロック信号を用いて、生成するクロック信号の周波数を変更する技術が特許文献2に開示されている。
【0008】
特許文献2に開示されるクロック生成回路202のブロック図を図15に示し、このクロック生成回路202について説明する。クロック生成回路202は、出力クロック信号CLKOを遅延回路(DLL:Delay Locked Loop)208に入力し、10相の多相クロック信号を生成する。また、制御回路203が出力する制御信号に基づき、この多相クロック信号のうちいずれか1つをセレクタ209で選択する。そして、選択されたクロック信号(選択クロック信号CLKS)を帰還させる。
【0009】
このような構成にすることで、クロック生成回路202は、帰還された選択クロック信号CLKSが出力クロック信号CLKO(あるいは基準クロック信号CLKR)よりも遅れた位相を有するものである場合、出力クロック信号CLKOの周波数が高くなるように制御する。つまり、クロック生成回路202は、多相クロック信号のうちいずれのクロック信号を帰還させるかを選択することで出力クロック信号CLKOの周波数を制御する。
特許文献3には、多相クロックの中から帰還クロックを順次演算により切り換えることにより出力クロックの周波数を微調整する多相クロック生成回路が記載されている。
【特許文献1】特開2006−20109号公報
【特許文献2】特開2005−20083号公報
【特許文献3】特開2006ー319399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、レーザービームプリンタでは、ドラム間のばらつきのみならず、レンズ102のばらつきもある。レンズ102は、レンズを製造する上で発生するものであって、レンズ内の位置よって歪み特性にばらつきが生じる。このようなレンズ102のばらつきが生じると、例えばドットの位置によっては印字領域pの幅と位置がPWMパルスのパルス幅に応じたものにならない問題がある。
【0011】
上記従来技術では、遅延回路208を用いて多相クロック信号を生成し、この多相クロック信号によって多相クロック生成回路110が出力する多相クロック信号の周波数を変更可能である。しかしながら、遅延回路208を用いて生成された多相クロック信号の位相間隔では、このレンズ102のばらつきを補正できるほど精度の高い周波数制御は困難である。また、制御回路203のように外部からの制御信号に基づき多相クロック信号の周波数を変えていたのでは、レンズ102の特性に応じた多相クロック信号の周波数に任意の変化特性(以下では、周波数プロファイルと称す)を与えることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる多相クロック生成回路は、基準クロック信号とフィードバッククロック信号に基づき多相クロック信号を生成する位相ロックループ回路と、前記多相クロック信号の周波数プロファイルを保持する周波数プロファイル回路と、前記周波数プロファイル回路が出力する周波数プロファイルに基づいて前記多相クロックのうち、前記フィードバッククロック信号とするクロック信号を選択するクロック選択回路とを備え、前記周波数プロファイル回路は、開始信号を受けた後、前記基準クロックを所定数計数する毎に前記クロック選択回路へ出力する周波数プロファイルを更新する周波数プロファイル回路であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明にかかる多相クロック生成回路によれば、周波数プロファイルに基づき帰還させるクロック信号を選択する。さらに、この周波数プロファイルは所定の周期で更新される。これによって、多相クロック信号の出力タイミングに応じて多相クロック信号の周波数プロファイルを自在に設定することが可能である。さらに、また、この周波数プロファイルに基づき帰還させるクロック信号の位相をより細かなステップで変更することが可能であるため、多相クロック信号の周波数を精度良く制御することが可能である。
【0014】
一方、本発明にかかる多相クロック生成回路を用いたパルス幅調整回路は、周波数プロファイルに基づき制御された多相クロック信号に基づき動作するため、PWMパルスのパルス幅を時間(あるいはタイミング)に応じて任意に制御することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる多相クロック生成回路によれば、出力する多相クロック信号の周波数を予め定めた周波数プロファイルに基づき制御でき、さらに周波数を高精度に制御することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1のブロック図を図1に示す。図1に示すように、本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1は、位相ロックループ回路(以下、PLL回路と称す)10、周波数プロファイル保持回路20、クロック選択回路30を有する。
【0017】
PLL回路10は、周波数制御回路11と位相補間回路12とを有している。周波数制御回路11は、基準クロック信号入力端子より入力される基準クロック信号CLKRとクロック選択回路30が出力するフィードバッククロック信号CLKFとの位相差に基づき出力するクロック信号の周波数を制御する。さらに、周波数制御回路11は、同じ周波数を有し、位相が異なる32個のクロック信号を出力する。
【0018】
位相補間回路12は、周波数制御回路11が出力するクロック信号に基づき位相が異なる256個のクロック信号(以下、このクロック信号を多相クロック信号と称す)を出力する。このとき、位相補間回路12は、周波数制御回路11が出力するクロック信号の位相の間を補間するようなクロック信号を生成し、このクロック信号を用いて256個のクロック信号を生成する。
【0019】
周波数プロファイル保持回路20は、多相クロック信号の周波数プロファイルを保持する。また、周波数プロファイル保持回路20は、開始信号に基づき保持している周波数プロファイルの出力を開始する。さらに、本実施の形態における周波数プロファイル保持回路20は、基準クロック信号を2分周した2分周クロック信号に基づき任意の周期で出力する周波数プロファイルを更新する。
【0020】
クロック選択回路30は、周波数プロファイル保持回路20が出力する周波数プロファイルに基づき、PLL回路10が出力する多相クロック信号のうち任意の位相を有するクロック信号を選択し、選択したクロック信号をPLL回路10に帰還させる。本実施の形態では、帰還させる信号として、選択されたクロック信号に基づきフィードバッククロック信号CLKFを生成し、このフィードバッククロック信号CLKFをPLL回路10に帰還させる。また、フィードバッククロック信号CLKFは、選択するクロック信号を切り替える場合に発生するハザードの影響を除去した信号である。
【0021】
ここで、周波数プロファイル保持回路20とクロック選択回路30とについてさらに詳しく説明する。周波数プロファイル保持回路20とクロック選択回路30との詳細なブロック図を図2に示す。図2に示すように、周波数プロファイル保持回路20は、第1のカウンタ21、Dフリップフロップ22、メモリ23を有している。第1のカウンタ21は、入力されるクロック信号のクロック数をカウントし、カウント値が最大値に達するとハイレベル信号を出力する。本実施の形態では、第1のカウンタ21がカウントするクロック信号として基準クロック信号を2分周した2分周クロック信号が入力される。この2分周クロック信号は、後述のコントロール回路31で基準クロック信号CLKRを2分周したクロック信号である。また、第1のカウンタ21は、周波数プロファイル保持回路20の外部より入力される開始信号(イネーブル信号)に基づき動作を開始する。
【0022】
Dフリップフロップ22は、コントロール回路31で生成される切り替え信号の立ち下がりエッジに基づき第1のカウンタ21の出力信号の信号レベルを保持する。このDフリップフロップ22の出力はワードシフト信号としてメモリ23に出力される。メモリ23は、例えば複数のワードを有し、ワード単位で周波数プロファイルを保持する。そして、ワードシフト信号に応じて、出力するワードをシフトさせる。このワードは、本実施の形態では14bitのデータを有し、メモリ23は128個のワードを有している。また、周波数プロファイルは、微調整期間設定値m、変更幅設定値X、極性値Pを有している。
【0023】
微調整期間設定値mは、第1のカウンタ21が8bit分のクロックをカウントする所定の期間を分割する割合を設定するものである。本実施の形態の微調整期間設定値mは、第1のカウンタ21のビット数と同じ8bitの値である。変更幅設定値Xは、クロック選択回路30が選択する位相の変更する場合の変更幅を設定するものである。例えば、変更幅設定値Xが8であった場合、クロック選択回路30は、選択するクロック信号の位相を8位相シフトさせる。極性値Pは、変更幅設定値によって選択されるクロック信号の位相をシフトする場合の極性を示す値である。例えば、極性値Pが"1"であった場合、クロック選択回路30は、選択するクロック信号の位相を加算方向でX相シフトさせる。一方、極性値Pが"0"であった場合、クロック選択回路30は、選択するクロック信号の位相を減算方向でX相シフトさせる。
【0024】
また、図2に示すように、クロック選択回路30は、コントロール回路31、第1のセレクタ32、第2のセレクタ33、加算器34、クロックマスク回路35を有している。コントロール回路31は、周波数プロファイル保持回路20が出力する周波数プロファイルに基づき多相クロック信号のうちいずれの位相のクロック信号を選択するかを設定し、選択するクロック信号の位相を示す選択信号を出力する。第1のセレクタ32は、選択信号に基づき、多相クロック信号のうち任意の位相のクロック信号を選択して出力する(第1のセレクタ32が出力するクロック信号を以下の説明では選択クロック1と称す)。
【0025】
加算器34は、選択信号に所定の値を加算し、例えば選択信号によって指定される位相を90°シフトさせる。また、加算器34は、第2のセレクタ33に送信される選択信号を遅延させる。そして、第2のセレクタ33は、加算器34で位相がシフトされた選択信号に基づき多相クロックのうち任意のクロック信号を選択して出力する(第2のセレクタ33が出力するクロック信号を以下の説明では選択クロック2と称す)。つまり、選択クロック1と選択クロック2とは位相が90°異なる信号である。
【0026】
クロックマスク回路35は、選択クロック1の切り替わり時に発生するハザードを選択クロック2でマスクすることで、このハザードの発生を防止する。そして、選択クロック1に基づきフィードバッククロック信号CLKFを生成する。そして、このフィードバッククロック信号CLKFは、PLL回路10へと帰還される。クロックマスク回路35については、後段にてさらに詳細に説明する。
【0027】
ここで、コントロール回路31についてさらに詳細に説明する。コントロール回路31は、2分周回路41、42、High/Low検出回路43、第2のカウンタ44、比較回路45、選択信号切替回路46を有している。2分周回路41は、基準クロック信号CLKRの周波数を半分にした2分周クロック信号を生成する。また、2分周回路42は、2分周回路41が出力した2分周クロック信号の周波数をさらに半分にした4分周クロック信号を生成する。High/Low検出回路43は、4分周クロック信号とフィードバッククロック信号とに基づきクロック選択回路が選択するクロック信号の位相を切り替えるタイミングを示す切り替え信号を生成する。第2のカウンタ44は、例えば8bitのカウンタであって、2分周クロック信号のクロック数をカウントして、8bitのカウント値を出力する。
【0028】
比較回路45は、第2のカウンタ44が出力するカウント値と、周波数プロファイル中の微調整期間設定値mと、を比較し、微調整期間設定値mに相当する期間の間、出力する比較信号を"1"とする。なお、比較信号は、値が"1"でない場合 "0"である。選択信号切替回路46は、周波数プロファイル中の変更幅設定値Xと比較信号とに基づき、クロック選択回路が選択する多相クロックの位相の位置を設定する。選択信号切替回路46は、例えば切り替え信号の立ち上がりに応じて、選択信号によって指定される選択位相の位置を前の期間よりもX相シフトさせる。また、このとき比較信号の値が"1"であった場合、選択信号によって選択される選択位相の位置を前の期間よりもX+1相シフトさせる。本実施の形態では、さらに極性値Pが周波数プロファイルとして選択信号切替回路46に与えられる。選択信号切替回路46はこの極性値Pに基づき選択信号によって指定される選択位相の位置を加算あるいは減算する。
【0029】
ここで、クロックマスク回路35についてさらに詳細に説明する。クロックマスク回路35の回路図を図3に示す。図3に示すように、クロックマスク回路35は、インバータ51、52、Dラッチ53、54、ANDゲート55〜57を有している。
【0030】
インバータ51、52は、入力に対して出力を反転させる。Dラッチ53、54は、クロック入力端子CLKに入力される信号の立ち上がりに応じて入力端子Dの信号レベルを保持して出力する。また、Dラッチ53、54は、クロック入力端子CLKに入力される信号の立ち下がりに応じて出力をロウレベルとする。ここで、Dラッチ53、54は、クロック入力端子CLKに入力される信号のレベルがハイレベルとなる期間は、クロック入力端子CLKに入力される信号の立ち上がりエッジで保持した値を保持する。また、クロック入力端子CLKに入力される信号のレベルがロウレベルである場合は常にロウレベルを出力する。ANDゲート55〜57は、2つの入力端子に入力される信号のレベルがともにハイレベルとなった場合にハイレベルを出力し、その他の場合はロウレベルを出力する。
【0031】
Dラッチ53は、入力端子Dにインバータ51を介して選択クロック2が入力され、クロック入力端子CLKには選択クロック1が入力される。Dラッチ54は、入力端子Dにインバータ52を介して選択クロック1が入力され、クロック入力端子CLKにインバータ51を介して選択クロック2が入力される。ANDゲート55は、一方の端子にDラッチ53が出力端子Qから出力する信号が入力され、他方の端子に選択クロック1が入力される。そして、ANDゲート55は、入力信号に応じて選択クロック1のハザード発生部分をマスクしたクロック信号CL1_GTを生成する。ANDゲート56は、一方の端子にDラッチ54が出力端子Qから出力する信号が入力され、他方の端子にインバータ51を介して選択クロック2が入力される。そして、ANDゲート56は、入力信号に応じて選択クロック2のハザード発生部分をマスクしたクロック信号CL2_GTを生成する。ANDゲート57は、一方の入力端子にクロック信号CL1_GTが入力され、他方の入力端子にクロック信号CL2_GTが入力される。そして、ANDゲート57は、入力信号に基づきフィードバッククロック信号CLKFを生成する。
【0032】
このクロックマスク回路35の動作について説明する。図4にクロックマスク回路35の動作のタイミングチャートを示す。図4に示す例は、まずクロック選択回路30がA番目の位相のクロック信号(A相のクロック信号)を選択しており、次にクロック選択回路30が選択するクロック信号の位相をA相からX相だけプラス方向にシフトさせ、続いてクロック選択回路30が選択するクロック信号の位相をX相だけマイナス方向にシフトさせる場合を示している。
【0033】
図4に示すように、切り替え信号がタイミングT10で立ち上がる前は、クロックマスク回路35は、A相のクロック信号を選択している。そして、A相のクロック信号に同期したフィードバッククロック信号CLKFを出力している。続いて、タイミングT10で切り替え信号が立ち上がると第1のセレクタ32及び第2のセレクタ33は、出力するクロック信号の位相を切り替える。このとき、出力されるクロック信号にハザードが発生する。クロックマスク回路35は、Dラッチ53とANDゲート55の動作により、選択クロック1でハザードが発生した時点から選択クロック1が次に立ち下がる時点までの間をマスクしたクロック信号CL1_GTを生成する。一方、クロックマスク回路35は、Dラッチ54とANDゲート56の動作により、選択クロック2でハザードが発生した時点から選択クロック2が次に立ち下がる時点までの間をマスクしたクロック信号CL2_GTを生成する。そして、クロックマスク回路35は、クロック信号CL1_GTとクロック信号CL2_GTとの論理積の結果に基づきフィードバッククロック信号CLKFをANDゲート57から出力する。このフィードバッククロック信号CLKFは、選択クロック1に同期し、選択クロック1と選択クロック2との位相差に相当するハイレベル期間を有する信号となる。
【0034】
そして、フィードバッククロック信号CLKFは、タイミングT11で(A+X)相クロック信号の立ち上がりに同期し、(A+X)相クロック信号に基づき生成された選択クロック1と選択クロック2との位相差に相当するハイレベル期間を有する信号となる。
【0035】
タイミングT11から次にフィードバッククロック信号CLKFの位相が切り替わるまでの間、PLL回路10には、この(A+X)相クロック信号に基づき生成されたフィードバッククロック信号CLKFが帰還される。A相クロック信号に比べて(A+X)相クロック信号は位相が遅れたものであり、基準クロック信号CLKRとフィードバッククロック信号CLKFとの間にはこの位相遅れに相当する位相差が発生する。そのため、PLL回路10は、この位相の遅れに対応して生成する多相クロック信号の周波数を高くする。
【0036】
続いて、タイミングT12で切り替え信号が入力されると、第1のセレクタ32及び第2のセレクタ33は、出力するクロック信号の位相を切り替える。このとき切り替え先のクロック信号の位相はA+X−X=Aとなる。つまり、フィードバッククロック信号CLKFは、A相のクロック信号に同期したものとなる。なお、フィードバッククロック信号CLKFがA相クロック信号に同期するのは選択クロック切り替え後のタイミングT13である。
【0037】
タイミングT13から次にフィードバッククロック信号CLKFの位相が切り替わるまでの間、PLL回路10には、このA相クロック信号に基づき生成されたフィードバッククロック信号CLKFが帰還される。(A+X)相クロック信号に比べてA相クロック信号は位相が進んだものであり、基準クロック信号CLKRとフィードバッククロック信号CLKFとの間にはこの位相進みに相当する位相差が発生する。そのため、PLL回路10は、この位相の進みに対応して生成する多相クロック信号の周波数を低くする。
【0038】
上記切り替え信号は、High/Low検出回路43で生成される信号である。この切り替え信号は、クロック選択回路30が選択するクロックの位相の切り替えがスムーズに行われるタイミングで生成されなければならない。このようなことから、High/Low検出回路43では、基準クロック信号CLKRを4分周した4分周クロック信号とフィードバッククロック信号CLKFとに基づきこの切り替え信号を生成する。そこで、High/Low検出回路43の回路図を図5に示し、High/Low検出回路43について説明する。
【0039】
図5に示すように、High/Low検出回路43は、Dフリップフロップ61、62、EX−ORゲート63を有している。Dフリップフロップ61の入力端子Dには4分周クロック信号が入力され、クロック入力端子CLKには、フィードバッククロック信号CLKFが入力されている。Dフリッププロップ62の入力端子Dは、Dフリップフロップ61の出力端子Qに接続され、クロック入力端子CLKにはフィードバッククロック信号CLKFが入力されている。ここで、Dフリップフロップ61は、フィードバッククロック信号CLKFの立ち上がりで入力端子Dの信号レベルを保持し、Dフリップフロップ62は、フィードバッククロック信号CLKFの立ち下がりで入力端子Dの信号レベルを保持する。EX−ORゲート63の一方の入力端子は、Dフリップフロップ61の出力端子Qに接続され、他方の入力端子は、Dフリップフロップ62の出力端子Qが接続される。EX−ORゲート63は、2つの入力端子に入力される信号のレベルが異なる場合にハイレベル信号を出力し、一致する場合はロウレベル信号を出力する。
【0040】
このHigh/Low検出回路43の動作を示すタイミングチャートを図6に示す。図6に示すように、High/Low検出回路43が出力する切り替え信号は、4分周クロック信号がハイレベルとなる期間とロウレベルとなる期間とにそれぞれ1回ずつ、フィードバック信号に同期してハイレベルが出力される。この切り替え信号に基づき選択信号切替回路46は、選択するクロック信号の位相を切り替える。
【0041】
ここで、比較回路45について詳細に説明する。比較回路45は、微調整期間設定値mで指定される期間の間、出力する比較信号をハイレベル(例えば"1")にする。比較回路45の回路の一例を図7に示す。図7に示すように、比較回路45は、微調整期間設定値mのビット数と同数のANDゲート(例えば、ANDゲート70〜77)と、このANDゲートの全ての出力の論理積の結果に基づき比較信号を生成するORゲート78とを有している。ANDゲート70〜77の一方の入力端子には、それぞれ微調整期間設定値mのビット値FS7〜FS0が入力される。また、ANDゲート70〜77の他方の入力端子には、それぞれ第2のカウンタ44の出力A0〜A7が入力される。この比較回路45は、第2のカウンタ44の最大カウント値が8bit(256カウント)である場合、2分周クロック信号の256カウント中に微調整期間設定値mに相当する期間の間、比較信号を"1"とする。
【0042】
次に、周波数プロファイルの更新タイミングと、選択信号の更新タイミングとについて説明する。周波数プロファイルの更新タイミングと、選択信号の更新タイミングとの更新動作を示すタイミングチャートを図8に示す。この図8において、ワードシフト信号のパルスは、第1のカウンタ21のカウント値が最大値に達したことに応じて出力されるものである。また、ワードシフト信号のパルスは、Dフリップフロップ22が切り替え信号の立ち下がりエッジに応じて出力するものであって、切り替え信号のとは遅延を有するものである。そして、本実施の形態では、選択信号切替回路46は、切り替え信号の立ち下がりに応じて周波数プロファイルの値に基づいた選択信号を出力する。
【0043】
図8に示す例では、タイミングT20の切り替え信号の立ち下がりエッジでワードシフト信号がハイレベルとなる。このとき、周波数プロファイルは、このワードシフト信号の立ち上がりから、若干の遅延を有して更新される。そのため、選択信号は、タイミングT20の切り替え信号の立ち下がりエッジでは、それ以前の周波数プロファイルに基づき値が更新される。
【0044】
その後、タイミングT21で切り替え信号が立ち下がる。このとき、第1のカウンタ21のカウント値はリセットされているため、ワードシフト信号は立ち下がる。そして、周波数プロファイルは、タイミングT20のワードシフト信号の立ち上がり後に更新されている。そのため、このタイミングT21では、更新後の周波数プロファイルに基づき選択信号切替回路46は、選択信号の値を設定する。
【0045】
つまり、周波数プロファイル保持回路20は、基準クロック信号CLKR又はその2分周クロック信号に基づき任意の周期毎に周波数プロファイルを更新する。そして、コントロール回路31は、変更幅設定値Xに基づいて選択するクロック信号の変更幅Xを設定する。また、コントロール回路41は、当該任意の周期内において、選択するクロック信号の位相の変更幅がX相である期間とX+1相である期間の割合を周波数プロファイル内の微調整期間設定値mに基づき設定する。
【0046】
ここで、本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1における周波数の調整幅について説明する。まず、PLL回路の動作によってフィードバッククロック信号CLKFと基準クロック信号CLKRとの位相が一致している場合、各クロック信号の周期には、次の(1)式の関係が成り立つ。
Tclki=Tclkf=Tclko (1)
ここで、Tclkiは基準クロック信号CLKRの周期、Tclkfはフィードバッククロック信号CLKFの周期、Tclkoは多相クロック信号の周期である。
【0047】
また、フィードバッククロック信号CLKFの基準となるクロック信号の位相を切り替えた場合、各クロック信号の周期には、次の(2)式の関係が成り立つ。
Tclki=Tclkf=(1+α)Tclko (2)
ここで、αはシフト後のクロック信号とシフト前のクロック信号との位相差である。
【0048】
フィードバッククロック信号CLKFの切り替えは基準クロック信号CLKRに同期して行われるため、αはコントロール回路で制御可能な値となる。例えば、1周期の多相クロック信号が256相の位相を有し、基準クロック信号CLKRのn周期毎に変更幅設定値Xに応じてX相ずつ選択する位相を変更し、微調整期間設定値mが"0"であった場合、αは、α=X/(256×n)となる。このαより、多相クロック信号の周波数は(3)式で表すことができる。
Fclko=(1+(X/(256n)))Fclki (3)
【0049】
一方、本実施の形態においては、逓倍率が100±数%である場合、4分周クロック信号のハイレベル期間あるいはロウレベル期間の間にフィードバッククロック信号CLKFが3/2周期以上が入る。そのため、切り替え信号は基準クロック信号CLKRの4周期毎に1周期が出力され、選択クロックが切り替えられる。また、選択するクロック信号の変更幅がX相である期間とX+1相である期間との比率は8bit(第1、第2のカウンタの最大カウント値)で設定され、例えば(256−m):mとなる。さらに、本実施の形態では、2分周クロック信号を第1、第2のカウンタでカウントしているためnは2となる。これらのことより、本実施の形態におけるαの平均値はα=(256X+m)/(256×256×2)となる。このαを用いると多相クロック信号の周波数は(4)式で表される。
Fclko=(1+((256X+m)/(256×256×2)))Fclki (4)
【0050】
また、本実施の形態では、周波数プロファイルとして極性値Pが与えられている。この極性値Pは、選択する位相の変更幅の極性を示すものであるため、(4)式は、極性値Pを考慮すると(5)式で表される。
Fclko=(1±((256X+m)/(256×256×2)))Fclki (5)
【0051】
(5)式より、本実施の形態にかかる多相クロック生成回路の周波数は、基準クロック信号CLKRの512サイクル毎に逓倍率を変更可能であることが分かる。ここで、周波数プロファイルの一例として、メモリ23の最初のワードに周波数プロファイルとして極性値Pが正で、変更幅設定値XがA、微調整期間設定値mが"0"が保持され、これ以降のワードに保持される周波数プロファイルでは変更幅設定値XがAずつ増加する場合について説明する。この場合の周波数の変化特性を図9に示す。図9に示すように、開始信号が周波数プロファイル保持回路20に入力されると、1サイクル(基準クロック信号のクロック数=512個)毎に多相クロック信号の周波数の逓倍率は、A/(256×2)ずつ増加する。ここで、基準クロック信号CLKRは、周波数が一定であるため、図9の横軸は時間として考えることが可能である。横軸を時間とした場合の周波数プロファイルを図10に示す。図9、10に示すように、本実施の形態の多相クロック信号の周波数の変化特性は、基準クロック信号のクロック数あるいは時間に応じて変化する変化量をメモリ23に保持する周波数プロファイルの値によって任意に設定することが可能である。
【0052】
上記説明より、本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1は、周波数プロファイル保持回路20が出力する周波数プロファイルの値を基準クロック信号CLKRに基づき任意の周期で更新することが可能である。これによって、出力される多相クロック信号の逓倍率を基準クロック信号のクロック数(あるいは時間)に応じて変化させることが可能となる。つまり、本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1は、メモリ23に保持される周波数プロファイルを適宜設定し、この周波数プロファイルを基準クロック信号に応じて更新することで、多相クロック信号の逓倍率を周期的に変更することが可能である。
【0053】
また、周波数プロファイルは微調整期間設定値mを有している。そのため、この微調整期間設定値mに基づきクロック選択回路30は、1サイクル(例えば、ワードシフト信号の立ち上がりから次の立ち上がりまでの期間)期間中であっても選択するクロック信号の位相の変更幅を微調整する。これによって、多相クロック信号の逓倍率の変更幅をさらに細かく設定することが可能になる。したがって、本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1は、精度の高い逓倍率の設定が可能である。
【0054】
次に、本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1の応用例として、従来例で示したパルス幅変調回路に本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1を適用したものを説明する。図11に本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1を有するパルス幅変調回路のブロック図を示す。なお、このパルス幅変調回路において従来例と同じものについては説明を省略する。
【0055】
また、図11に示すパルス幅変調回路では、周波数プロファイルとして図12に示すレンズ102の特性を考慮したものが設定されている。この周波数プロファイルは、例えば以下の手順で設定される。まず、微調整期間設定値mを"0"、変更幅設定値Xを一定として印字を行う。この印字結果に基づきレンズ102のばらつきを測定する。そして、レンズ102のばらつきを考慮して印字位置毎の微調整量を算出し、この算出結果に基づきメモリ23の各ワードに格納する微調整期間設定値mと変更幅設定値Xを決定する。
【0056】
図11に示すパルス幅変調回路では、同期位置検出回路に入力される水平同期信号が開始信号として周波数プロファイル保持回路20に入力される。これによって、周波数プロファイル保持回路20は、同期位置検出回路等と同期して動作することが可能となる。そして、上記説明のように設定された周波数プロファイルをこの水平同期信号に同期して出力する。そして、例えば、メモリの第1のワードに走査開始時点の周波数プロファイルを設定し、以降のワードには走査時間(あるいは走査位置)に応じた周波数プロファイルを設定する。これによって、1走査期間中のPWMパルスのパルス幅の設定を走査時間を基準に変化させることが可能である。
【0057】
このような周波数プロファイルをメモリ23に格納することで、パルス幅変調回路が生成するPWMパルスのパルス幅によってレンズ102のばらつきを吸収することが可能となる。このことより、本実施の形態にかかる多相クロック生成回路1を有するパルス幅変調回路によれば、印字位置によるばらつきをパルス幅の制御によって可能であるため、低精度のレンズであっても、高品質な印字が可能となる。
【0058】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1で説明したように周波数プロファイルの更新は、周波数プロファイル保持回路20が開始信号(水平同期信号)を受けた後、基準クロック(CLKR)を所定の数カウントする毎に行う。この場合、開始信号と基準クロックが常に同期して用いれば特に問題が生じることはない。
【0059】
しかし、開始信号と基準クロックが同期していないシステムに用いた場合、開始信号を受けたときの基準クロックの位相により、出力クロック信号に位相ずれが生じる場合がある。この問題について、図16と図17を用いて説明する。開始信号と基準クロックが非同期であれば、開始信号に対して基準クロックの位相が1周期近く遅れている場合も考えられる。
【0060】
図16は、この場合の基準クロックと開始信号(水平同期信号)の位相ずれによる出力クロック周波数切り替えタイミングのずれを説明する図である。図16では、図9と同様に周波数プロファイル保持回路20が出力する周波数プロファイルを更新する周期を1cycleとしている。第1のカウンタ21が基準クロックCLKRを512クロック、カウントする毎にオーバーフローして周波数プロファイルが更新される。
【0061】
図16において、開始信号と基準クロックの位相が揃っていた場合の出力クロックの周波数の遷移を破線で示す。一方、開始信号に対して基準クロックの位相が約1周期遅れていた場合の出力クロックの周波数の遷移を実線で示す。開始信号に対して基準クロックの位相が遅れている場合は、常に周波数プロファイルの更新も位相が遅れている分だけ遅れる。図16では、出力クロックの周波数が徐々に高くなるように周波数プロファイルを1cycle毎に切り換えている。
【0062】
図17は、このように周波数を切り換えた場合の基準クロックと開始信号(水平同期信号)の位相ずれによる出力クロックの位相ずれを説明する図である。図16と同様に、破線が開始信号と基準クロックの位相が揃っている場合、実線で開始信号に対して基準クロックの位相が約1周期遅れている場合の出力信号の位相を示す。
【0063】
図16のように徐々に出力クロックの周波数が高くなるように周波数を切り替える場合、開始信号に対して基準クロックの位相が遅れていると、出力周波数の切り替えは常に遅れる。すると、出力周波数の切り替えが遅れるだけ、切り替え前の遅い出力周波数で動作することになり、切り替えが遅れるだけ、出力クロックの位相は累積的に遅れることになる。
【0064】
上記の例では、周波数を徐々に高くする例を示したが、周波数プロファイルが周波数を徐々に遅くように切り替わる場合は、逆に基準クロックの位相が遅れているほど、切り替え前の早い出力周波数で動作することになるので、切り替えが遅れるだけ、出力クロックの位相は累積的に進みすぎることになる。
【0065】
特にこの多相クロック生成回路をレーザービームプリンタのパルス幅変調回路に用いた場合には、PWMパルスの位相がずれることは印字位置がずれることになる。
【0066】
実施の形態2では、開始信号と基準クロックの位相ずれによる周波数プロファイル更新の遅れを次の更新タイミングまでの1cycleの期間にリカバーするように出力周波数プロファイルを補正する。この具体的な構成とその動作を図18〜図21を用いて説明する。
【0067】
図18は、実施の形態2にかかる多相クロック生成回路のブロック図である。図18の多相クロック生成回路は、図1の実施の形態1にかかる多相クロック生成回路に対して、周波数プロファイル保持回路20が、周波数プロファイル保持回路80に置き換わっている。また、周波数プロファイル保持回路80には、外部入力される同期位置検出信号とクロック選択回路30から入力されるフィードバッククロック選択信号が入力される。同期位置検出信号は位相補間回路12が出力する256相のクロックのうち、開始信号と位相が揃っているクロックを特定する8ビットのデータ信号である。なお、256相のクロックを位相遅れの大きさの順番により、0〜255のデータで示せば後で述べるように位相差の演算が容易にできる。また、フィードバッククロック選択信号は、位相補間回路12が出力する256相のクロックのうち、フィードバッククロック(CLKF)として周波数制御回路11に帰還させるクロックを特定する8ビットのデータ信号である。
【0068】
位相ロックループ回路10は、基準クロツク(CLKR)とフィードバッククロック(CLKF)の位相が揃うように動作するので、結局フィードバッククロック選択信号は、位相補間回路12が出力する256相のクロックのうち、基準クロック(CLKR)と位相が揃っているクロックの番号を示すことになる。したがって、周波数プロファイル保持回路80は、同期位置検出信号とフィードバッククロック選択信号から開始信号と基準クロックの位相ずれを認識することができる。
【0069】
次に、図19は、実施の形態2にかかる周波数プロファイル保持回路及びクロック選択回路の詳細なブロック図である。実施の形態2にかかる周波数プロファイル保持回路80は、図2の実施の形態1の周波数プロファイル保持回路20に対して位相誤差演算回路81と、逓倍設定値補正回路82が追加されている。
【0070】
位相誤差演算回路81は、選択信号と同期位置検出信号との位相誤差を演算する。上述したように、多相クロック生成回路1が生成する256相のクロックのうち、選択信号は、基準クロックと位相が揃っているクロックの番号を示し、同期位置検出信号は開始信号と位相が揃っているクロックの番号を示すので、選択信号と同期位置検出信号の差を演算することにより、位相誤差を求めることができる。
【0071】
次に、逓倍設定値補正回路82は、メモリから読み出した周波数プロファイル設定値を位相誤差換算回路81で求めた開始信号と基準クロックの位相差に応じて最適な逓倍設定値に補正する回路である。
【0072】
この動作について、図20と図21を用いて説明する。図20の実線で示す波形は、開始信号に対して基準クロックが約1周期遅れている場合の出力クロックの周波数遷移を示す。また、破線の波形は、開始信号と基準クロックの間に位相誤差がない場合の出力クロックの周波数遷移を示す。位相誤差がない場合、出力クロックの周波数遷移は実施の形態1と同一である。図20に示すように基準クロックの位相が開始信号に対して位相遅れがある場合は、出力クロックの周波数切り替えの遅れを取り戻すように出力クロック信号の周波数を切り換えている。すなわち、位相誤差により、周波数を高める更新が遅れた場合には、次の周波数プロファイルの更新までにその切り替えの遅れを取り戻すように周波数をより高めに設定している。
【0073】
例えば、1cycle目から2cycle目に着目すると、Fin(1+2A/(2×256))からFin(1+2A/(2×256)+1/(2×256×512))に補正される。この結果512Tclki間の出力信号の位相は、Tclki (1+2A/(2×256))×512=Tclki (512+2A)からTclki (1+2A/(2×256)+ A/(2×256×512))×512=Tclki (512+2A+A/512)になる。
【0074】
図21、図20のときの出力クロック信号の位相を示した図である。図20と同様に開始信号と基準クロックの位相が揃っている場合の出力クロック信号の位相を破線で、開始信号に対して基準クロックが約1周期位相遅れる場合の出力クロック信号の位相を実線で示す。図21を見て容易に理解できるように、開始信号に対して基準クロックの位相遅れがある場合は、周波数プロファイル更新直後(513、1025、1537クロック(Tclki))には、出力クロックの位相遅れが生じている。しかし、次の周波数プロファイル更新時(1024、1536クロック)までにその位相遅れを取り戻している。
【0075】
具体的には、512Tclkから513Tclkiまでの周波数が異なる期間で出力信号の位相がTclki(A/512)ずれるが、図20に示すように周波数遷移のときの周波数は次の512Tclkの間Fin(A/(2×256×512))高くなっており、図11の周波数遷移のときと比べて位相がTclki(A/512)分多く進み位相の差が小さくなる。同様に1024Tclkから1025Tclkの間も周波数が異なっており位相がずれるが、図14の周波数遷移の方は512Tclkの周波数がFin(1+3A/(2×256)+A/(2×256×512))と高くなっており、図11の周波数遷移のときと比べて位相が多く進み、位相の差が小さくなる。
【0076】
このようにして、開始信号に対して基準クロックの位相遅れがある場合であっても、周波数プロファイルの更新遅れを次の周波数プロファイル更新までの期間にリカバーするように逓倍設定値補正回路82で周波数プロファイルを補正している。
【0077】
次に、実施の形態2をレーザービームブリンター等に好適なパルス幅変調回路に適用した実施例について説明する。図22は、実施の形態2にかかる多相クロック生成回路を有するパルス幅変調回路のブロック図である。図11に記載された実施の形態1のパルス幅変調回路に対して周波数プロファイル保持回路20が、周波数プロファイル80に置き換わっている。また、周波数プロファイル保持回路80は、同期信号検出回路2が検出した水平同期信号の位相と、クロック選択回路30が選択した帰還クロックの位相とから、開始信号(水平同期信号)に対する基準クロックの位相ずれを検出し、その位相差に基づいて、次の周波数プロファイル更新タイミングまでに位相切り替えの遅れにより位相誤差を取り戻すように周波数プロファイルを補正して出力している。このような構成とすることにより、このパルス幅変調回路をレーザービームプリンタ等に用いた場合は、印字位置のずれを防ぐことができる。
【0078】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、第1、第2のカウンタは8bitの最大カウント値を有するものとしたが、この最大カウント値を6bit、あるいは7bitとすることで、ワードシフト信号が出力されるタイミングを短くし、周波数プロファイルの更新タイミングを短くすることが可能である。
【0079】
[本明細書、図面による開示]
なお、本明細書、図面には、特許請求の範囲の記載の如何に関わらず、以下の発明を開示する。
【0080】
(開示1)
基準クロック信号に基づき多相クロック信号を生成する位相ロックループ回路と、
前記多相クロック信号の周波数プロファイルを保持し、開始信号に基づき前記周波数プロファイルの出力を開始し、前記基準クロック信号に基づき任意の周期で前記周波数プロファイルを更新する周波数プロファイル保持回路と、
前記周波数プロファイルに基づいて前記多相クロック信号のうち任意の位相のクロック信号を選択し、選択したクロック信号を前記位相ロックループ回路に帰還させるクロック選択回路とを有することを特徴とする多相クロック生成回路。
【0081】
上記開示1にかかる多相クロック生成回路によれば、周波数プロファイルに基づき帰還させるクロック信号を選択する。さらに、この周波数プロファイルは任意の周期で更新される。これによって、多相クロック信号の出力タイミングに応じて多相クロック信号の周波数プロファイルを任意に設定することが可能である。さらに、また、この周波数プロファイルに基づき帰還させるクロック信号の位相をより細かなステップで変更することが可能であるため、多相クロック信号の周波数を精度良く制御することが可能である。
【0082】
(開示2)
前記周波数プロファイル保持回路は、前記基準クロック信号のクロック数をカウントする第1のカウンタと、前記周波数プロファイルを保持するメモリとを有し、前記クロック数に応じて、前記メモリが出力する周波数プロファイルを更新することを特徴とする開示1に記載の多相クロック生成回路。
【0083】
(開示3)
前記周波数プロファイルは、前記任意の周期を所定の割合で分割する微調整期間設定値を含み、前記クロック選択回路は、前記微調整期間設定値に基づき選択するクロック信号の位相変更幅を微調整することを特徴とする開示1に記載の多相クロック生成回路。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】実施の形態1にかかる多相クロック生成回路のブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかる周波数プロファイル保持回路及びクロック選択回路の詳細なブロック図である。
【図3】実施の形態1にかかるクロックマスク回路の回路図である。
【図4】実施の形態1にかかるクロックマスク回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】実施の形態1にかかるHigh/Low検出回路回路図である。
【図6】実施の形態1にかかるHigh/Low検出回路の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1にかかる比較回路の回路図である。
【図8】実施の形態1にかかる周波数プロファイルの更新タイミングと選択信号の更新タイミングとの関係を示すタイミングチャートである。
【図9】実施の形態1にかかる周波数プロファイルの一例(横軸:サイクル)を示す図である。
【図10】実施の形態1にかかる周波数プロファイルの一例(横軸:時間)を示す図である。
【図11】実施の形態1にかかる多相クロック生成回路を有するパルス幅変調回路のブロック図である。
【図12】従来のレーザービームプリンタのブロック図である。
【図13】従来のレーザービームプリンタの印字結果の一例を示す図である。
【図14】従来のパルス幅変調回路のブロック図である。
【図15】従来の多相クロックによって逓倍率を変更可能なPLL回路の一例を示す図である。
【図16】基準クロックと開始信号(水平同期信号)の位相ずれによる出力クロック周波数切り替えタイミングのずれを説明する図である。
【図17】基準クロックと開始信号(水平同期信号)の位相ずれによる出力クロックの位相ずれを説明する図である。
【図18】実施の形態2にかかる多相クロック生成回路のブロック図である。
【図19】実施の形態2にかかる周波数プロファイル保持回路及びクロック選択回路の詳細なブロック図である。
【図20】実施の形態2において基準クロックと開始信号(水平同期信号)の位相ずれがあった場合の出力クロック周波数切り替えを説明する図である。
【図21】実施の形態2において基準クロックと開始信号(水平同期信号)の位相ずれがあった場合の出力クロックの位相を説明する図である。
【図22】実施の形態2にかかる多相クロック生成回路を有するパルス幅変調回路のブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
1 多相クロック生成回路
10 位相ロックループ回路
11 周波数制御回路
12 位相補間回路
20、80 周波数プロファイル保持回路
21 第1のカウンタ
22、61、62 Dフリップフロップ
23 メモリ
30 クロック選択回路
31 コントロール回路
32 第1のセレクタ
33 第2のセレクタ
34 加算器
35 クロックマスク回路
41、42 2分周回路
43 検出回路
44 第2のカウンタ
45 比較回路
46 選択信号切替回路
51、52 インバータ
53、54 Dラッチ
55〜57、70〜77 ANDゲート
61 フリップフロップ
63 EX−ORゲート
78 ORゲート
81 位相誤差演算回路
82 逓倍設定値補正回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロック信号とフィードバッククロック信号に基づき多相クロック信号を生成する位相ロックループ回路と、
前記多相クロック信号の周波数プロファイルを保持する周波数プロファイル回路と、
前記周波数プロファイル回路が出力する周波数プロファイルに基づいて前記多相クロックのうち、前記フィードバッククロック信号とするクロック信号を選択するクロック選択回路とを備え、
前記周波数プロファイル回路は、開始信号を受けた後、前記基準クロックを所定数計数する毎に前記クロック選択回路へ出力する周波数プロファイルを更新する周波数プロファイル回路であることを特徴とする多相クロック生成回路。
【請求項2】
前記周波数プロファイル保持回路は前記開始信号と前記基準クロック信号との位相誤差に基づいて前記出力する周波数プロファイルを補正する逓倍設定値補正回路を備えることを特徴とする請求項1記載の多相クロック生成回路。
【請求項3】
前記周波数プロファイル保持回路は、前記開始信号と前記基準クロック信との位相誤差を求める位相誤差演算回路を更に含むことを特徴とする請求項2記載の多相クロック生成回路。
【請求項4】
前記周波数プロファイル保持回路は、前記基準クロック信号のクロック数をカウントする第1のカウンタと、前記周波数プロファイルを保持するメモリとを有し、前記第1のカウンタが所定のカウントを行う毎に、前記メモリの読み出しアドレスを更新し、更新されたアドレスから読み出された周波数プロファイルに基づいて前記出力する周波数プロファイルを更新することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載の多相クロック生成回路。
【請求項5】
前記第1のカウンタは、前記開始信号に基づき前記基準クロック信号のカウントを開始することを特徴とする請求項4に記載の多相クロック生成回路。
【請求項6】
前記周波数プロファイルは、前記周波数プロファイルを更新するサイクルを所定の割合で分割する微調整期間設定値を含み、前記クロック選択回路は、前記微調整期間設定値に基づき選択するクロック信号の位相変更幅を微調整することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載の多相クロック生成回路。
【請求項7】
前記クロック選択回路は、選択するクロック信号の位相変更幅を前記出力する周波数プロファイルに含まれる変更幅設定値に基づき変更し、さらに前記変更幅設定値によって指定される位相変更幅は、前記微調整期間設定値に基づき値が微調整されることを特徴とする請求項6に記載の多相クロック生成回路。
【請求項8】
前記周波数プロファイル保持回路は、前記基準クロック信号のクロック数をカウントする第1のカウンタを有し、
前記クロック選択回路は、前記基準クロック信号のクロック数をカウントし、前記第1のカウンタと同じ最大カウント値を有する第2のカウンタと、
第2のカウンタが出力するカウント値と前記周波数プロファイル保持回路から出力される前記任意の周期を所定の割合で分割する微調整期間設定値とを比較する比較回路とを有し、
前記比較回路は、前記微調整期間設定値に応じて比較信号を出力し、
前記クロック選択回路は、前記比較信号に応じて前記周波数プロファイルに含まれる変更幅設定値を微調整し、微調整された前記変更幅設定値に基づき前記多相クロック信号の中からどの位相のクロック信号を帰還させるかを選択することを特徴とする請求項1に記載の多相クロック生成回路。
【請求項9】
基準クロック信号とフィードバッククロック信号とに基づき多相クロック信号を生成する位相ロックループ回路と、
周波数プロファイル情報を保持する周波数プロファイル保持回路と、
前記周波数プロファイル情報に基づいて前記多相クロック信号の中から前記フィードバッククロック信号として帰還させるクロック信号を選択するクロック選択回路とを備え、
前記周波数プロファイル保持回路が、前記周波数プロファイル情報を更新し、更新された周波数プロファイル情報を生成することを特徴とする多相クロック生成回路。
【請求項10】
前記クロック選択回路が、さらに、更新された周波数プロファイル情報に基づいてクロック信号を選択することを特徴とする請求項9記載の多相クロック生成回路。
【請求項11】
前記多相クロック生成回路は、レーザー出力を変調するためのパルス信号を出力するパルス幅変調回路のパルス幅調整用クロック信号を生成するクロック生成回路であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多相クロック生成回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2008−136197(P2008−136197A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281105(P2007−281105)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】