説明

封止フィルム及びそれを用いた半導体装置

【課題】充てん性、密着性、形状維持性に優れる封止フィルム及びそれを用いた半導体装置を提供する。
【解決手段】(A1)架橋性官能基を含み、重量平均分子量が10万以上でかつTgが−50〜50℃である高分子量樹脂と、(A2)エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分と、を含む(A)樹脂成分、(B)フィラー、および(C)着色剤、を含有し、80℃におけるずり粘度が14000〜25000Pa・sである樹脂層を有する封止フィルム及びそれを用いた半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップの充てん性、密着性、形状維持性に優れる封止フィルム及びそれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器の小型化・軽量化が進められており、これに伴い基板への高密度実装が要求され、電子機器に搭載する半導体パッケージの小型化、薄型化、軽量化が進められている。
【0003】
また、従来から、LOC(Lead On Chip)、QFP(Quad Flat Package)等と呼ばれるパッケージが有り、LOC、QFP等のパッケージよりもさらに小型化・軽量化したμBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等のパッケージが開発されている。
【0004】
さらに、半導体素子の回路面が半導体配線基板側に向けられている、いわゆるフェイスダウン型パッケージであるフリップチップ、WL−CSP(Wafer Level Chip Size Package)等が開発されている。
【0005】
上述したパッケージでは、固形のエポキシ樹脂封止材をトランスファー成形法により成形することで封止パッケージを得ていたが、パッケージが薄型又は大型の場合の成形は難しかった。
【0006】
また、無機フィラーの含有量が増大すると、一般にトランスファー成形時の溶融粘度が高くなり、成形時のボイドの残存、キャビティ充てん不良、ワイヤーフロー及びステージシフトの増大等と成形物の品質が低下するなどの問題が発生する。
【0007】
また、近年、フリップチップやWL−CSPなどで、突起状電極を有するものが有り、その突起部の保護及び突起間の充填のため、封止材を使用することがあったが、固形のエポキシ樹脂封止材による充てんは難しかった。そのため、エポキシ樹脂、無機フィラーを主体とした封止フィルムが提案されている(例えば、特許文献1、2、3及び4参照)。
【特許文献1】特開平05−283456号公報
【特許文献2】特開平05−190697号公報
【特許文献3】特開平08−73621号公報
【特許文献4】特開2005−060584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の封止フィルムを用いて、例えば、突起状電極を有するパッケージや封止後の形状に制約のあるパッケージを封止すると、流動性を制御することが困難であり、充てん性、密着性及び形状維持性を全て満足できないことがあった。
【0009】
上記を鑑みて、本発明は、充てん性、密着性、形状維持性の全てに優れる封止フィルム及びそれを用いた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(1)(A1)架橋性官能基を含み、重量平均分子量が10万以上でかつTgが−50〜50℃である高分子量樹脂と、(A2)エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分と、を含む(A)樹脂成分、(B)フィラー、および(C)着色剤、を含有し、80℃におけるずり粘度が14000〜25000Pa・sである樹脂層を有する封止フィルムに関する。
【0011】
また、本発明は、(2)前記(A)樹脂成分が、(A1)高分子量樹脂を15〜85重量%、(A2)熱硬化性成分を15〜85重量%含む、前記(1)記載の封止フィルムに関する。
【0012】
また、本発明は、(3)前記(A)樹脂成分10重量部に対し、前記(B)フィラーを1〜300重量部、前記(C)着色剤を0.01〜10重量部含む、前記(1)または(2)記載の封止フィルムに関する。
【0013】
また、本発明は、(4)前記樹脂層の片面に厚さ5〜300μmの基材層をさらに有し、かつ前記樹脂層の厚さが5〜800μmである前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の封止フィルムに関する。
【0014】
また、本発明は、(5)前記樹脂層の一方の面に厚さ5〜300μmの基材層を、前記樹脂層の他方の面に厚さ5〜300μmの保護層をさらに有し、かつ前記樹脂層の厚さが5〜800μmである前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の封止フィルムに関する。
【0015】
また、本発明は、(6)前記(B)フィラーが無機フィラーである前記(1)〜(5)のいずれか1項記載の封止フィルムに関する。
【0016】
また、本発明は、(7)前記(C)着色剤が白色以外のものである前記(1)〜(6)のいずれか1項記載の封止フィルムに関する。
【0017】
また、本発明は、(8)前記樹脂層の、170℃で1時間硬化した後の35℃での動的粘弾性測定装置における貯蔵弾性率が500〜20000MPaである前記(1)〜(7)のいずれか1項記載の封止フィルムに関する。
【0018】
また、本発明は、(9)前記(1)〜(8)のいずれか1項記載の封止フィルムを用いた半導体装置に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、充てん性、密着性、形状維持性の全てに優れ、なおかつ、レーザーマーキングの視認性にも優れ、半導体チップ等の保護やキャビティ充てんに好適な封止フィルムを提供することが可能となり、また、当該封止フィルムを用いることで信頼性に優れた半導体装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の封止フィルムは、(A1)高分子量樹脂と(A2)熱硬化性成分とを含む(A)樹脂成分、(B)フィラーおよび(C)着色剤を含有する樹脂層を少なくとも有するものであり、使用時には、当該樹脂層により半導体素子を封止することになる。
【0021】
上記(A1)高分子量樹脂は、架橋性官能基を有するものであり、例えば、エポキシ基含有モノマーなどの官能性モノマーを重合させたものを用いることができる。好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレートを官能性モノマーとして用いてなるエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体であり、さらに、エチル(メタ)アクリレートやブチル(メタ)アクリレートなどのモノマーを重合させたものを用いることもできる。また、上記(A1)高分子量樹脂は、エポキシ樹脂と非相溶のものであることが好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」の両方を意味する。また、官能性モノマーを重合させることで上記(A1)高分子量樹脂を作製する場合、その重合方法としては、特に制限はなく、例えば、パール重合、溶液重合などの公知の方法を使用することができ、また、重合条件についても、使用モノマーやその濃度、(A1)高分子量樹脂の重量平均分子量やガラス転移温度などを考慮して適宜決定すればよく、特に限定されない。
【0022】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリルエステル共重合体、エポキシ基含有アクリルゴムなどを挙げることができ、エポキシ基含有アクリルゴムを用いることが特に好ましい。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とするものであり、例えば、ブチルアクリレートやエチルアクリレートとアクリロニトリルの共重合体などからなるゴムである。このようなエポキシ基含有アクリルゴムとしては、例えば、ナガセケムテックス(株)製HTR−860P−3DRなどが市販されている。また、上記エポキシ基含有共重合体中におけるエポキシ基含有モノマーの量は、0.5〜6.0重量%であることが好ましく、0.5〜5.0重量%であることがより好ましく、0.8〜5.0重量%であることが特に好ましい。エポキシ基含有モノマーの量がこの範囲にあると、接着力が確保できるとともに、ゲル化を防止することができる。
【0023】
また、上記(A1)高分子量樹脂の重量平均分子量は10万以上であり、好ましくは30万〜300万、より好ましくは50万〜200万である。重量平均分子量がこの範囲にある高分子量樹脂を用いることで、フィルム状にしたときの強度、可とう性、およびタック性を適度に制御することが可能であり、また、樹脂層と被着体との密着性を確保できる。なお、本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
【0024】
また、上記(A1)高分子量樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−50℃以上50℃以下である。このTgを−50℃以上50℃以下とすることで、樹脂層のBステージ状態でのタック性を適度に保つことができ、その取り扱い性も良好となる。
【0025】
また、上記(A1)高分子量樹脂の配合量は、(A1)高分子量樹脂と(A2)熱硬化性成分との合計量に対して、好ましくは15〜85重量%であり、より好ましくは20〜85重量%であり、特に好ましくは20〜80重量%であり、最も好ましくは25〜80重量%である。(A1)高分子量樹脂の配合量が15重量%未満だと、得られる樹脂層の可とう性が不足して脆くなる可能性が有り、85重量%を超えると得られる樹脂層の流動性が低下する可能性がある。
【0026】
上記(A2)熱硬化性成分は、熱により硬化して接着作用を発現するものであれば特に限定されないが、エポキシ樹脂を主成分として含むことが好ましく、エポキシ樹脂を60〜100重量%含むことがより好ましい。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂または脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを適用することができる。
【0027】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、油化シェルエポキシ(株)製 エピコート807,815,825,827,828,834,1001,1004,1007,1009、ダウケミカル社製 DER−330,301,361、東都化成(株)製 YD8125,YDF8170などが挙げられる。上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、東都化成株式会社製、YD−8170Cなどが挙げられる。上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、油化シェルエポキシ(株)製 エピコート152,154、日本化薬(株)製 EPPN−201、ダウケミカル社製 DEN−438などが、また、上記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である日本化薬(株)製 EOCN−102S,103S,104S,1012,1025,1027、東都化成(株)製 YDCN701,702,703,704などが挙げられる。上記多官能エポキシ樹脂としては、油化シェルエポキシ(株)製 Epon 1031S、チバスペシャリティーケミカルズ社製 アラルダイト0163、ナガセ化成(株)製 デナコールEX−611,614,614B,622,512,521,421,411,321などが挙げられる。上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、油化シェルエポキシ(株)製 エピコート604、東都化成(株)製 YH−434、三菱ガス化学(株)製 TETRAD−X,TETRAD−C、住友化学(株)製 ELM−120などが挙げられる。上記複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ社製 アラルダイトPT810等の、UCC社製 ERL4234,4299,4221,4206などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種類以上を組み合わせても、使用することができる。
【0028】
また、上記(A2)熱硬化性成分としてエポキシ樹脂を用いる場合には、当該成分としてさらにエポキシ樹脂硬化剤や硬化促進剤を用いることが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができ、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA、ビスフェノールF,ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂などが挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂またはクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂、フェノール・アラルキル樹脂が好ましい。好ましいフェノール樹脂硬化剤としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製、商品名:プライオーフェンLF2882、プライオーフェンLF2822、プライオーフェンLF4871、プライオーフェンTD−2090、プライオーフェンTD−2149、プライオーフェンVH−4150、プライオーフェンVH4170などが挙げられる。好ましい、フェノール・アラルキル樹脂としては、例えば、三井化学株式会社製、商品名ミレックスXLC−LLなどが挙げられる。
【0029】
また、上記硬化促進剤としては、例えば、4級ホスホニウム塩系、4級アンモニウム塩系、イミダゾール系、DBU脂肪酸塩系、金属キレート系、金属塩系、トリフェニルフォスフィン系等を用いることができる。また、上記硬化剤や硬化促進剤の配合量は、特に限定されないが、上記(A2)熱硬化性成分中、好ましくは、0.05〜0.5重量%である。
【0030】
また、上記(A2)熱硬化性成分の配合量は、(A1)高分子量樹脂と(A2)熱硬化性成分との合計量に対して、好ましくは15〜85重量%であり、より好ましくは15〜80重量%であり、特に好ましくは20〜80重量%であり、最も好ましくは20〜75重量%である。(A2)熱硬化性成分の配合量が、15重量%未満だと、得られる樹脂層の耐熱性及び流動性が低下する可能性が有り、85重量%を超えると得られる樹脂層の可とう性が低下する可能性がある。
【0031】
また、本発明では、上記(A)樹脂成分として、必要に応じて上記以外の樹脂成分を、本発明の目的を逸脱しない範囲で配合してもよい。
【0032】
上記(B)フィラーとしては、特に限定されないが、無機フィラーであることが好ましく、例えば、結晶性シリカ、非晶性シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等を使用することができる。
【0033】
上記(B)フィラーの配合量は、上記(A)樹脂成分10重量部に対して、好ましくは1〜300重量部であり、より好ましくは3〜250重量部であり、特に好ましくは3〜200重量部であり、最も好ましくは5〜200重量部である。(B)フィラーの配合量が1重量部未満だと得られる封止フィルムが軟らかくなって得られる半導体装置の信頼性が低下する可能性があり、300重量部を超えると得られる封止フィルムと半導体基板との密着性が低下する可能性がある。
【0034】
本発明における上記(C)着色剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、黒鉛、チタンカーボン、二酸化マンガン、フタロシアニン系等の顔料あるいは染料を使用することができる。分散性、レーザーマーキング性を考慮すると、カーボンブラック等の白色以外の着色剤が好ましい。
【0035】
上記(C)着色剤の配合量は、上記(A)樹脂成分10重量部に対して好ましくは0.01〜10重量部であり、より好ましくは0.2〜8重量部であり、特に好ましくは0.3〜6重量部であり、最も好ましくは0.5〜5重量部である。(C)着色剤の使用量が0.01重量部未満だと得られる封止フィルムの着色が十分で無く、レーザーマーキング後の視認性が悪くなる傾向があり、10重量部を超えると得られる封止フィルムと半導体基板との密着性が低下する可能性がある。
【0036】
本発明における樹脂層は、上記(A)樹脂成分、(B)フィラーおよび(C)着色剤以外に、必要に応じてカップリング剤等の添加剤を含んでいてもよい。カップリング剤としては、シラン系、チタン系、アルミニウム系などが挙げられるが、シラン系カップリング剤が最も好ましい。
【0037】
上記シラン系カップリング剤としては、特に制限はなく、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノプロピル−トリメトキシシラン、3−4,5−ジヒドロイミダゾール−1−イル−プロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−メチルジメトキシシラン、3−クロロプロピル−メチルジメトキシシラン、3−クロロプロピル−ジメトキシシラン、3−シアノプロピル−トリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、アミルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリ(メタクリロイルオキエトキシ)シラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン、N−β(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、エトキシシランイソシアネートなどを使用することができ、これらの1種又は2種以上を併用することもできる。
【0038】
上記チタン系カップリング剤としては、特に制限はなく、例えば、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(n−アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、テトラメチルオルソチタネート、テトラエチルオルソチタネート、テトラプロピルオルソチタネート、テトライソブチルオルソチタネート、ステアリルチタネート、クレシルチタネートモノマー、クレシルチタネートポリマー、ジイソプロポキシ−ビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピル−ビス−トリエタノールアミノチタネート、オクチレングリコールチタネート、テトラ−n−ブトキシチタンポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートポリマー、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレートなどを使用することができ、これらの1種又は2種以上を併用することもできる。
【0039】
上記アルミニウム系カップリング剤としては、特に制限は無く、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウム=モノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−n−ブトキシド−モノ−エチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−イソ−プロポキシド−モノ−エチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート化合物、アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウム−sec−ブチレート、アルミニウムエチレート等のアルミニウムアルコレートなどを使用することができ、これらの1種又は2種以上を併用することもできる。
【0040】
また、上記カップリング剤等の添加剤は、(A)樹脂成分100重量部に対して、50重量部以下の配合量にすることが好ましい。上記添加剤の配合量が50重量部より多いと、得られる封止フィルムの耐熱性が低下する可能性がある。
【0041】
また、本発明における樹脂層は、80℃でのずり粘度が14000〜25000Pa・sであり、好ましくは16000〜23000Pa・sである。このずり粘度が25000Pa・sを超えると、得られる半導体装置の信頼性及び封止フィルム(樹脂層)と半導体基板の密着性が低下する傾向にあり、14000Pa・s未満であると、得られる封止フィルム(樹脂層)で半導体素子を封止する際、素子に対して直接樹脂流れ込みが発生し、所望の半導体特性が得られない傾向にある。なお、本発明における「ずり粘度」は、10mm×10mm×厚み150μmのBステージ状態の樹脂層(フィルム)について、ずり粘度測定装置(TAインスツルメント・ジャパン(株)製)を用い、測定周波数1.0Hz、測定子径8.0mm、測定温度80℃定温の条件で測定して得られる値である。このずり粘度は、例えば、フィラーの充填量を増やしたり、多官能エポキシ樹脂を使用して樹脂層の橋架け密度を向上させたり、フィルム化する際の熱履歴を増やしBステージ状態での硬化度を向上させることによって大きくすることができる。
【0042】
また、本発明における樹脂層は、170℃で1時間硬化した後の35℃での動的粘弾性測定装置における貯蔵弾性率が、好ましくは500〜20000MPaであり、より好ましくは600〜19000MPaであり、特に好ましくは700〜18000MPaであり、最も好ましくは1000〜16000MPaである。引張り弾性率が500MPa未満だと得られる封止フィルム(樹脂層)と半導体素子との密着性が低下する可能性があり、20000MPaを超えると半導体装置の信頼性が低下する可能性がある。なお、上記貯蔵弾性率は、厚み150μmのBステージ状態の上記樹脂層フィルムサンプルについて、レオロジー社製の動的粘弾性スペクトロメーター(DVE−4型)を用いて、35℃、10Hzの条件で測定して得られる。この貯蔵弾性率は、フィラーの充填量を増やしたり、多官能エポキシ樹脂を使用して樹脂層の橋架け密度を向上させることによって大きくすることができる。
【0043】
また、本発明における樹脂層の厚さは、好ましくは5〜800μm、より好ましくは10〜600μm、特に好ましくは20〜500μm、最も好ましくは30〜400μmである。樹脂層の厚さが5μm未満だと、半導体素子との密着性が低下したり、流れ込み量の不足が発生する可能性があり、800μmを超えると半導体素子の厚さが増えてパッケージ設計の障害になる可能性がある。
【0044】
また、本発明の封止フィルムは、図1に示すように、上記樹脂層2の片面に、これを支持してフィルムの強度や取扱い性等を向上させうる基材層1を有していてもよい。基材層の厚さは、樹脂層の厚みや強度等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、好ましくは5〜300μmであり、より好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは5〜100μmであり、最も好ましくは10〜100μmである。基材層の厚さが5μm未満では、樹脂層を支持してフィルムの強度や取扱い性を向上させるという効果を十分に得られない可能性があり、基材層の厚さが300μmを超えても特に利点は無く、フィルム自体が高価になる可能性がある。
【0045】
上記基材層としては、特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルアミドフィルム、ポリエーテルアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムなどを使用できる。また、必要に応じて、樹脂層と接する面に、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理、離型処理等の表面処理を行っても良い。
【0046】
また、本発明の封止フィルムは、上記樹脂層の片面に、これを保護するための保護層を有していてもよい。保護層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5〜300μmであり、より好ましくは5〜200μmであり、特に好ましくは5〜100μmであり、最も好ましくは10〜100μmである。保護層の厚さが5μm未満ではフィルムを十分に保護できない可能性が有り、フィルムの厚さが300μmを超えても特に利点は無く、フィルム自体が高価になる可能性がある。
【0047】
上記保護層としては、特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルアミドフィルム、ポリエーテルアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムなどを使用できる。また、必要に応じて、樹脂層と接する面に、プライマー塗布、UV処理、コロナ放電処理、研磨処理、エッチング処理、離型処理等の表面処理を行っても良い。
【0048】
また、本発明の封止フィルムは、図2に示すように、上記樹脂層2の一方の面に上記基材層1を、他方の面に上記保護層3を有していてもよい。
【0049】
本発明の封止フィルムを作製する方法は、特に限定されないが、例えば、基材層上に、上記(A)樹脂成分、(B)フィラーおよび(C)着色剤を少なくとも含むワニスを塗布した後、加熱乾燥により溶剤を除去して、Bステージ状態の樹脂層を形成することにより作製することができる。上記加熱乾燥条件は、樹脂層の成分や溶剤の種類によって異なるが、一般的には60〜200℃の温度で3〜30分間加熱するものである。また、ワニスの塗布方法は、特に制限はないが、作業性等を考慮すると、マルチコーターを使用して塗工するのが好ましい。
【0050】
本発明の半導体装置は、本発明の封止フィルムを用いてなることをその特徴とするものである。以下、その製造例と形態に関して図を用いて説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0051】
図3は、半導体基板4上の電極を本発明の封止フィルム(樹脂層2)により封止する工程を示す模式図である。半導体基板としては、特に制限はないが、例えば、シリコンウエハ等が挙げられる。ここで、図1に示す構成を有する本発明の封止フィルムを用いる場合には、半導体基板4の電極面に樹脂層2が接するように封止フィルムをラミネートし、半導体基板上の電極を封止する。また、図2に示す構成を有する本発明の封止フィルムを用いる場合には、保護層3をはく離した後、半導体基板4の電極面に樹脂層2が接するように封止フィルムをラミネートし、半導体基板上の電極を封止する。ラミネート方法は特に制限されないが、例えば、ホットロールラミネーターを用いる方法が挙げられ、図3に示すようにロール状封止フィルム8をロール9を介して、一対のラミネーターロール10の間を半導体基板4と共に通すことにより行なわれる。ラミネート工程におけるラミネート温度は、半導体基板に負荷を与えず、作業性に優れる点で、180℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。また、本発明の封止フィルムは、上記電極が突起状電極である場合に特に好適である。
【0052】
また、本発明の封止フィルムによる封止は、上述したフィルムラミネートによる方法に限らず、半導体基板に封止フィルムを熱圧着あるいは真空圧着する方法、半導体素子に直接封止フィルムをヒートプレスで接着する方法等を使用することもできる。なお、圧着条件等は使用する封止フィルムの種類、半導体基板あるいは素子の形状によって異なる。
【0053】
図4は、本発明の封止フィルム(樹脂層2)で封止された突起状電極5を有する半導体素子7の模式図である。このような半導体素子は、図3に示すようにして半導体基板の突起状電極5を封止した後、例えば、封止フィルムの基材層を剥離する工程、加熱によって樹脂層2を硬化させる工程、はんだボール6を突起状電極5上に搭載する工程、半導体基板の樹脂層側と反対側の面にダイシングテープをラミネートする工程、半導体基板を所定の大きさにダイシングする工程、突起状電極5を有する半導体基板とダイシングテープをはく離する工程を経て得ることができ、さらに、得られた半導体素子を回路基板上の所定位置に搭載することで信頼性等に優れる半導体装置を得ることができる。また、上記半導体素子に、封止フィルム側からYAGレーザー等を照射し、製品を識別するための識別情報を表示することもできる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら記載に制限されるものではない。
【0055】
<封止フィルムの作製>
(実施例1)
(A)樹脂成分の(A1)高分子量樹脂として、エポキシ基含有アクリルゴム(ナガセケムテックス株式会社製、商品名HTR−860P−3DR、重量平均分子量:80万、Tg:−7℃)12.4重量部、(A2)熱硬化性成分として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名YD−8170C、エポキシ当量160)33.6重量部、フェノール・p−キシリレングリコールジメチルエーテル共重合樹脂(三井化学株式会社製、商品名ミレックスXLC−LL、水酸基当量174)33.8重量部、1−シアノ−1−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名キュアゾール2PZ−CN)0.1重量部、(B)フィラーとして、シリカフィラー(株式会社龍森製、商品名TFC−24、平均粒径約8μm)152.6重量部、(C)着色剤として、樹脂系加工顔料(山陽色素株式会社製、商品名FP BLACK 308、カーボンブラック含有率29.0重量%)8.4重量部、およびカップリング剤として、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名Z−6040)1.0重量部からなる組成物にシクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、真空脱気して不揮発分(以降、NVと略記する)約60%のワニスを得た。なお、NV値は、所定量のワニスを加熱乾燥(170℃で約1時間)した後に残った不揮発分重量と、加熱乾燥前に測定したワニス重量から算出した。
【0056】
上記で得られたワニスを基材層(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名ピューレックスA31B、表面離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、膜厚38μm)上に塗布し、90℃、5分及び140℃、11分間加熱乾燥して、膜厚が150μmの塗膜とし、Bステージ状態の封止フィルムAを得た。
【0057】
(実施例2)
基材層上に塗布したワニスの乾燥条件を90℃、5分及び140℃、11分から、90℃、5分及び140℃、10分とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、Bステージ状態の封止フィルムBを得た。
【0058】
(実施例3)
基材層上に塗布したワニスの乾燥条件を90℃、5分及び140℃、11分から、90℃、5分及び140℃、8分とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、Bステージ状態の封止フィルムCを得た。
【0059】
(実施例4)
基材層上に塗布したワニスの乾燥条件を90℃、5分及び140℃、11分から、90℃、5分及び140℃、14分とした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、Bステージ状態の封止フィルムDを得た。
【0060】
(比較例1)
基材層上に塗布したワニスの乾燥条件を90℃、5分及び140℃、11分から、90℃、5分及び140℃、5分にした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、Bステージ状態の封止フィルムEを得た。
【0061】
(比較例2)
基材層上に塗布したワニスの乾燥条件を90℃、5分及び140℃、11分から、90℃、5分及び140℃、17分にした以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、Bステージ状態の封止フィルムFを得た。
【0062】
(比較例3)
(B)成分のフィラーを含まないこと、(C)成分の樹脂系加工顔料の使用量を8.4重量部から8.3重量部としたこと以外は実施例1と同様にして組成物を得、シクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、真空脱気してNVが約60%のワニスを得た。
【0063】
上記得られたワニスを基材層(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名ピューレックスA31B、表面離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、膜厚38μm)上に塗布し、90℃、20分及び140℃、20分加熱乾燥して、膜厚が150μmの塗膜とし、Bステージ状態の封止フィルムGを得た。
【0064】
(比較例4)
(B)成分のシリカフィラーの使用量を152.6重量部から356.2重量部としたこと、(C)成分の樹脂系加工顔料の使用量を8.4重量部から15.3重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得、シクロヘキサノンを加えて攪拌混合し、真空脱気してNVが約70%のワニスを得た。
【0065】
上記得られたワニスを基材層(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名ピューレックスA31B、表面離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、膜厚38μm)上に塗布し、90℃、5分及び140℃、5分間加熱乾燥して、膜厚が150μmの塗膜とし、Bステージ状態の封止フィルムHを得た。
【0066】
<封止フィルム(樹脂層)の評価>
上記実施例1〜4及び比較例1〜4で得た封止フィルムA〜H(樹脂層)について、ずり粘度、貯蔵弾性率、ガラス転移温度、熱分解開始温度、樹脂流れ込み性(流動制御性)およびレーザーマーキングの視認性を以下のとおり評価した。結果をまとめて表1に示す。
【0067】
・ずり粘度
上記で得られた各封止フィルムを10mm角に切り出し、ずり粘度測定装置(TA インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて測定を実施した。なお、測定条件は、測定周波数1.0Hz、測定子径8.0mm、測定温度80℃定温とした。
【0068】
・貯蔵弾性率とガラス転移温度(Tg)
上記で得られた各封止フィルムを170℃で1時間硬化させた後、動的粘弾性スペクトロメーター(レオロジー社製、DVE−4型)により、貯蔵弾性率(35℃、10Hz)及びガラス転移温度(周波数10Hz、昇温速度2℃/min)を測定した。
【0069】
・熱分解開始温度
示差熱天秤(セイコーインスツルメント株式会社製、SSC5200型)により、昇温速度:10℃/min、雰囲気:空気、の条件で各封止フィルムの熱分解開始温度を測定した。
【0070】
・樹脂流れ込み性(流動制御性)
上記で得られた各封止フィルムを、配線及び銅ポストが形成された半導体基板(ピッチ寸法:5.3mm×6.3mm、スクライブライン:100μm、銅ポスト径:300μm、銅ポスト高さ:100μm)上にホットロールラミネータ(大成ラミネータ株式会社製、商品名VA−400III型)を使用して貼付けた(ラミネート条件:80℃、0.2MPa、0.5m/min)。ラミネート後、各封止フィルムを貼り付けた半導体基板を切断し、その断面を光学顕微鏡で観察し、銅ポスト間を樹脂層が流動した量(流動値)を測定し、目標流動値の範囲内(±5μm)に入っているか否かについて下記基準で評価した(1サンプルにつき10点測定を実施、評価○及び△が合格)。
【0071】
○:すべての測定点における流動値が目標流動値範囲内(±5μm)に入っている。
△:測定点数の内、1点の流動値のみが目標流動値範囲内に入っていない。
×:測定点数の内、2〜9点の流動値が目標流動値範囲内に入っていない。
××:すべての測定点における流動値が目標流動値範囲内に入っていない。
・レーザーマーキングの視認性
【0072】
上記で得られた各封止フィルムを、300μm厚のシリコンウエハ鏡面にホットロールラミネータ(大成ラミネーター株式会社製、商品名VA−400III型)を使用して貼付け(ラミネート条件:80℃、0.2MPa、0.5m/min)、封止フィルム付きシリコンウエハを得た後、基材層をはく離して170℃で1時間硬化した樹脂層付きシリコンウエハの樹脂層側に、出力5.0J/パルスのYAGレーザーによってレーザーマーキングを行い、その視認性を確認した(サンプル数:100個)。
【0073】
視認性の評価方法は、レーザーマーキング後の表面をスキャナによって画像取り込みを行い、画像処理ソフト(Adobe社製商品名、PHOTSHOP)によってマーキング部分及びその周りの非マーキング部分の2階調化を行う。この操作によって明度によって白黒の256段階に分けられる。次に、マーキング部分が白く、非マーキング部分が黒く表示される「2階調化する境界のしきい値」と、マーキング部分も黒く表示されマーキング/非マーキング部分の境界が無くなる「2階調化する境界のしきい値」を求め、それらの値の差が40以上である場合に視認性良好とし(評価○)、30以上40未満である場合に視認性がほぼ良好とし(評価△)、30未満である場合に視認性が不良とした(評価×)。なお、表1には、評価○、△、×に該当するサンプル数を示した。
【0074】
<半導体装置の作製と評価>
上記で得られた各封止フィルムを、配線及び銅ポストが形成された半導体基板(ピッチ寸法:5.3mm×6.3mm、スクライブライン:100μm、銅ポスト径:300μm、銅ポスト高さ:100μm)上にホットロールラミネータ(大成ラミネータ株式会社製、商品名VA−400III型)を使用して貼付け(ラミネート条件:80℃、0.2MPa、0.5m/min)、基材層をはく離した後、170℃で1時間加熱して樹脂層を硬化させる工程、樹脂層を研削して銅ポストを表面に露出させる工程、銅ポスト上に外部端子を形成する工程、ダイシングする工程、得られた半導体素子をピックアップして有機基板に実装する工程を行い、半導体装置を作製した。
【0075】
ついで、この半導体装置について、−55℃/30min←→125℃/30minを1サイクルとするヒートサイクル試験を1000サイクル行い(サンプル数:10個)、樹脂層にクラックや剥がれ等の不具合が発生していないかどうかを調べた。結果を表1に示す。なお、表1には、(樹脂層に不具合が発生した半導体装置の個数)/(総サンプル数)を示した。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】基材層1及び樹脂層2からなる封止フィルムの模式図である。
【図2】基材層1、樹脂層2及び保護層3からなる封止フィルムの模式図である。
【図3】封止フィルムを半導体基板にラミネートする工程の模式図である。
【図4】封止フィルムで封止した突起状電極を有する半導体素子の模式図である。
【符号の説明】
【0077】
1:基材層
2:樹脂層
3:保護層
4:半導体基板
5:突起状電極
6:はんだボール
7:突起状電極を有する半導体素子
8:ロール状封止フィルム
9:ロール
10:ラミネーターロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)架橋性官能基を含み、重量平均分子量が10万以上でかつTgが−50〜50℃である高分子量樹脂と、(A2)エポキシ樹脂を主成分とする熱硬化性成分と、を含む(A)樹脂成分、(B)フィラー、および(C)着色剤、を含有し、80℃におけるずり粘度が14000〜25000Pa・sである樹脂層を有する封止フィルム。
【請求項2】
前記(A)樹脂成分が、(A1)高分子量樹脂を15〜85重量%、(A2)熱硬化性成分を15〜85重量%含む、請求項1記載の封止フィルム。
【請求項3】
前記(A)樹脂成分10重量部に対し、前記(B)フィラーを1〜300重量部、前記(C)着色剤を0.01〜10重量部含む、請求項1または2記載の封止フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層の片面に厚さ5〜300μmの基材層をさらに有し、かつ前記樹脂層の厚さが5〜800μmである請求項1〜3のいずれか1項記載の封止フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層の一方の面に厚さ5〜300μmの基材層を、前記樹脂層の他方の面に厚さ5〜300μmの保護層をさらに有し、かつ前記樹脂層の厚さが5〜800μmである請求項1〜3のいずれか1項記載の封止フィルム。
【請求項6】
前記(B)フィラーが無機フィラーである請求項1〜5のいずれか1項記載の封止フィルム。
【請求項7】
前記(C)着色剤が白色以外のものである請求項1〜6のいずれか1項記載の封止フィルム。
【請求項8】
前記樹脂層の、170℃で1時間硬化した後の35℃での動的粘弾性測定装置における貯蔵弾性率が500〜20000MPaである請求項1〜7のいずれか1項記載の封止フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の封止フィルムを用いた半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−133468(P2008−133468A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281772(P2007−281772)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】