説明

導電性ローラの製造方法及び導電性ローラ

【課題】 加硫・発泡した円筒状ゴム組成物の形状バラツキを少なくし、優れた内径精度を有し、さらに硬度のムラの少ない電子写真装置等に有用な導電性ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】 加硫発泡させた円筒状ゴム組成物を導電性芯金上に有する導電性ローラの製造方法において、該円筒状ゴム組成物を加硫発泡させる加硫発泡工程は該円筒状ゴム組成物を内包する保熱兼保持手段により加硫発泡温度まで昇温させる工程を有し、該昇温工程は(i)少なくとも第一の昇温工程と、(ii)(i)昇温工程より昇温速度の低い低速昇温工程と、をこの順で有し、該加硫発泡温度に到達する導電性ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性芯金及び円筒状ゴム組成物からなる導電性ローラの製造方法に関し、特には、この円筒状ゴム組成物を形成するための加熱発泡過程に特徴を有する導電性ローラの製造方法に関する。より具体的に、本発明は、複写機、レーザービームプリンター、LEDプリンターなどの電子写真装置や電子写真製版システムなどに利用する導電性ローラの製造方法に関し、また、前記用途の導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真装置などでは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラなど幾種かのローラが使用されている。これらのローラは、ローラ本体の中心軸に導電性芯金を有する構造をなし、芯金の一部がローラ本体より突出している。また、ローラ本体は、感光体などに均一に圧接して使用されるため、ゴム、エラストマーなどの発泡体で構成される弾性体により形成されている。
【0003】
これらのローラに用いる発泡体は、ゴムに加硫剤、発泡剤、充填剤などを混練した原料組成物を用い、金型、押し出し機などで未加硫の円筒状ゴム成形体とした後、この未加硫の成形体を加熱により加硫・発泡させて円筒状の発泡体に調製される。その後、円筒状の発泡体に芯金を圧入し、外径を円筒研磨してローラ形状にする手法が用いられている。
【0004】
前記未加硫の円筒状ゴム成形体を加硫・発泡させる加熱方法としては、熱盤プレスを用いた金型成形加硫、加硫缶を用いた直接蒸気加硫、熱風加硫、マイクロ波加硫などがあるが、金型成形加硫、熱風加硫では均一に熱をゴム材料へ伝えにくく均一な発泡体を得にくい、金型の出し入れによる冷却で熱がゴム材料へ伝えにくく発泡が加硫により進み微細な気泡を得にくい、またマイクロ波加硫は極性をもつポリマーには有効であるが材料に制限がある、などの問題点がある。
【0005】
そのため均一な熱がかかる加硫缶を用いた直接蒸気加硫法が知られている(例えば、特許文献1)。この事例は、加熱手段として加硫缶を用い、気泡径のバラツキが少なくかつ圧縮歪の少ない導電性ローラを提供するものである。しかしながら、設定加熱温度になるまでの平均昇温速度を50〜320℃/分で制御しかつ一段階の昇温工程であるため、本発明とは異なる。さらに、未加硫未発泡体である原料組成物を芯金に組み込めるように成形した後、加硫・発泡を行っており、円筒状ゴム組成物のみを加硫発泡する本発明とは構成が異なる。
【0006】
ところで前記ゴム組成物の発泡は、含有する発泡剤の加熱分解により進行する。ただし、ゴム組成物中で発生した気泡の構造を保持するのに十分な程度に加硫反応が進んでいないと、一旦形成された気泡壁が破裂し、気泡壁中の発生ガスが漏れ出てしまう。その結果、円筒状の発泡体にした時点で、所望の径よりも縮んだり、気泡の径にバラツキのある発泡体となってしまう。
【0007】
発泡反応は加熱が進むにつれ一気に進行する反応であるが、加硫反応は緩やかに進行する反応であり、発泡反応の進行に見合った速い加硫速度を得るために今まで種々の試みがされてきた。(例えば、特許文献2及び3)
しかしながら、これらの事例で紹介している昇温工程における平均昇温速度はいずれも15℃/分であり、本発明の意図する効果は得られなかった。また、本発明でも用いるゴム組成物を従来のような2段階の加熱法によって加硫・発泡を行うと、ゴム組成物の部分的な加硫先行が発生し、内径の精度が低下することがあった。
【0008】
一方、加硫缶へ該円筒状ゴム組成物を搬入する手段としては、種々の方法が知られている(例えば、特許文献4)。本事例は円筒状の弾性体を加熱する手段として加硫缶を用い、該円筒状成形体の外径を保持するために成形体の加熱後の外径より大きい内径を持った貫通孔でありかつ加熱後の成形体の軸方向長さより長い受け部を少なくとも1個以上設置し、受け部の軸方向と略平行に回転軸を持ち、受け部が前記回転軸を中心に回転して、該成形体をラジアル方向に回転させながら加熱することを特徴とするものである。
【0009】
しかしながら、本事例は加硫発泡温度については詳細な検討が行われておらず、該文献の条件のみでは本発明で提供することができる優れた内径精度を有し、さらに硬度のムラの少ない導電性ローラを得るのは容易ではない。
【0010】
以上紹介した事例は、加硫発泡過程と気泡径の関連性について検討がされているが、加硫発泡過程の条件による該円筒状ゴム組成物の形状、特に加硫後の内径精度への影響までは十分な検討がされていない。さらに従来の加硫発泡温度条件で製造した円筒状ゴム組成物は内径の精度が低く、円筒状ゴム組成物を該導電性ローラの製品形状に切断する際に大量に廃棄しなければならず、コスト面にも大きな問題があった。また、内径精度の低い該円筒状ゴム組成物を用いてローラを製造した場合、特に該導電性芯金の外径に対して該円筒状ゴム組成物の内径が小さい場合では該円筒状ゴム組成物の圧入時の歪が発生し、その結果、硬度ムラが大きくなる。
【特許文献1】特開平11−114978公報
【特許文献2】特開2002−113735公報
【特許文献3】特開2003−191269公報
【特許文献4】特開平11−348053公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、電子写真装置に用いられる各種の発泡ローラの製造方法の従来の課題を鑑みなされたものであり、加硫・発泡した円筒状ゴム組成物の形状バラツキを少なくし、優れた内径精度を有し、さらに硬度のムラの少ない電子写真装置等に有用な導電性ローラの製造方法及び導電性ローラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は加硫発泡させた円筒状ゴム組成物を導電性芯金上に有する導電性ローラの製造方法において、該円筒状ゴム組成物を加硫発泡させる加硫発泡工程は該円筒状ゴム組成物を内包する保熱兼保持手段により加硫発泡温度まで昇温させる工程を有し、該昇温工程は(i)少なくとも第一の昇温工程と、(ii)(i)昇温工程より昇温速度の低い低速昇温工程と、をこの順で有し、該加硫発泡温度に到達する導電性ローラの製造方法により、其の目的を達成する。
【0013】
また、上記課題は該保熱兼保持手段が、該円筒状ゴム組成物の加熱後の外径より大きい貫通孔を有するものであることで、上記目的を達成する。さらに、該低速昇温工程は平均昇温速度が10℃/分以下であることで上記目的を達成する。
【0014】
また、上記課題は、2段階の昇温工程は、第一の昇温工程が120℃/分〜140℃/分の高速平均昇温速度であり、第二の昇温工程が5℃/分〜10℃/分の低速平均昇温速度であり、円筒状ゴム組成物が110℃〜140℃に達した時点で第二の昇温工程に切り替え、最終加熱工程では150℃〜170℃で10〜50分間保持することで上記目的を達成する。
【発明の効果】
【0015】
上記発明によって得られる該円筒状ゴム組成物を用いて得られる導電性ローラは、加硫・発泡後の該円筒状ゴム組成物の内径精度が優れているため、圧入が均一に行われ、その結果、硬度のムラが少ない電子写真装置等に有用な導電性ローラとして提供することができる。また、円筒状ゴム組成物をローラ製品寸法に切断する際に廃棄量を最小限に抑えることができ、経済的にも有用である。特に本発明では加硫発泡温度までの昇温条件をより緩やかに制御することにより、従来の技術よりも加硫・発泡のバランスを精密に制御することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は円筒状ゴム組成物を加硫発泡させる加硫発泡工程が、該円筒状ゴム組成物を内包する保熱兼保持手段により加硫発泡温度まで昇温させる工程を有し、該昇温工程は(i)少なくとも第一の昇温工程と、(ii)(i)昇温工程より昇温速度の低い低速昇温工程と、をこの順で有し、該加硫発泡温度に到達することを特徴とするものであり、より詳細には、該保熱兼保持手段が、該円筒状ゴム組成物の加熱後の外径より大きい貫通孔を有するものであり、2段階の昇温工程の場合、第一の昇温工程が120℃/分〜140℃/分の高速平均昇温速度であり、第二の昇温工程が5℃/分〜10℃/分の低速平均昇温速度で加熱される低速昇温工程であり、110℃〜140℃に達した時点で該低速昇温工程に切り替え、加硫発泡工程では150℃〜170℃で10〜50分間保持することを特徴とする製造方法である。
【0017】
以下に本発明をさらに詳しく、実施をするための最良の形態について説明する。
【0018】
(加硫発泡工程)
本発明の加硫発泡工程について図2を用いて説明する。図2では、発泡ローラの製造を加熱水蒸気を用いた加硫缶で行うことを想定している。図2の横軸は時間(分)であり、縦軸は加硫缶内温度(℃)である。温度T1は加熱トレーを加硫缶に投入する温度であり、温度T2は昇温速度を切り替える温度であり、温度T3は加硫発泡工程の設定加熱温度である。
【0019】
この例では、加熱手段として、加熱水蒸気により加硫缶を加熱する手法を選択しているが、図2に示したように、加熱手段として未加硫形成体の温度を変化できるような手段である限り、加熱手段は加硫缶には限定されない。
【0020】
昇温速度R1は、未加硫の前記チューブ状ゴム組成物を保持した加熱トレーを加硫缶に投入し、加圧水蒸気の入気による加熱開始から昇温速度を切り替える温度T2に到達するまでの昇温速度であり、また、昇温速度R2は、上記T2から設定加熱温度のT3まで昇温する速度である。
【0021】
まず、加硫缶内に未加硫の円筒状ゴム組成物を備えた加熱トレーを温度T1において設置し加硫缶を密閉する。その後加圧水蒸気を加硫缶内に入気して昇温速度を切り替える温度T2まで高速の昇温速度R1で昇温する。このとき、密閉からT2に到達するまでにかかる時間はt1である。
【0022】
加硫缶の温度がT2に到達したら、続いて昇温速度をR2に切り替え、加熱水蒸気を入気して加硫缶を昇圧することで、加硫缶内部の温度を発泡加硫工程の設定加熱温度T3まで上昇する。この時の昇温速度はR2で、比較的ゆっくりと昇温するものである。このとき、密閉からT3に到達するまでの時間はt2である。
【0023】
なお、昇温速度のR1からR2への変化は瞬時に行うものであり、温度を下げることなく、また、変化時の温度を保持することも行わないのが好適である。また、昇温速度はこの昇温工程に要する時間tで、その間の温度上昇分(ΔT)を除した値;ΔT/tで与えられる昇温速度のことを示すものとする。
【0024】
加硫缶内部の温度がT3に到達したならば、加硫缶をその温度T3で所定の時間保持し成形体を発泡・加硫させる。設定加熱時間t3が終了後、加圧水蒸気を排気して加硫缶内の蒸気圧を大気圧まで低下させて発泡加硫した成形体を取り出す。
【0025】
ところで、加硫剤と発泡剤とを含むゴムの発泡・加硫過程では、二種類の反応が発泡中のゴム内部で生じている。それらは、加硫反応と発泡反応とである。加硫反応は徐々に進行する反応であり、発泡反応と比較して低い温度でも反応が開始・進行するものの、反応速度は緩やかである。発泡反応は、一旦、発泡剤の熱分解反応が開始すると、この反応速度は非常に速いが、発泡剤の分解温度以下ではこの反応が進行することはない。
【0026】
仮に、発泡反応が開始する時点で、加硫反応の進行が不足している場合には、発泡反応により生じた「セル」はその構造を保つことができず、例えば、ガス抜けが生じたり、表面において壊れてしまったり、あるいは近傍のセルと合体してしまい大きな連泡となったりする。その結果、円筒状ゴム組成物の内径及び外径表面で凹凸が生じてしまい、その精度が悪くなってしまう。
【0027】
逆に、発泡反応が開始する時点で、加硫反応が過剰に進行してゴム中の加硫度が過剰となっている場合には、発泡が抑制され、微細な発泡となる。この場合、ゴムが硬くなる傾向があるため、所望する硬度を有するローラを提供することが困難となる。
【0028】
従って、内径精度が優れ、硬度ムラの少ない発泡体を得るためには、加硫反応と発泡反応とがバランス良く進行していることが必要である。
【0029】
そのため、本発明は加硫と発泡のバランスを保つべく、120℃/分〜140℃/分の高速平均昇温速度で加熱される第一の昇温工程と、5℃/分〜10℃/分の低速平均昇温速度で加熱される第二の昇温工程を有し、さらに110℃〜140℃に達した時点で昇温速度を変化させる昇温速度変化点を有することを特徴としている。
【0030】
まず、第一の昇温工程は120℃/分〜140℃/分の高速平均昇温速度であることが好適である。これは加硫トレーを加硫缶に投入する際に生じる加硫缶の温度ムラを解消させるためであり、急速に加熱することにより、加硫トレー及び加硫缶内部を一度に加熱する。この場合、120℃/分未満では加熱初期の加熱トレー及び加硫缶内部を均一に加熱させるには熱量が足らず、温度ムラを生じる場合があり、加圧水蒸気の制御が難しくなる。一方、140℃/分より大きくなると、加硫缶内の温度ムラが解消されるまえに、発泡反応が進行してしまう場合がある。あるいは発泡反応が始まらなくとも、該円筒性ゴム組成物の端部が加硫先行になることもあり、本発明の効果は得られにくい。また、上記昇温工程において好ましい範囲は120℃/分〜130℃/分である。該円筒状ゴム組成物の加硫発泡反応の進行を抑えつつ、加硫缶内部を一度に加熱することが可能となる。
【0031】
次に第二の昇温工程R2は5℃/分〜10℃/分の低速の平均昇温速度であることが好ましい。この様にゆっくりと昇温する手段により、加硫缶内の温度ムラを解消することが可能であり、それと同時に発泡時の円筒状ゴム組成物の温度ムラをほとんど無視できるようになる。昇温速度が10℃/分より大きくなると円筒状ゴム組成物において端部と中央の温度バラツキが生じやすく、その結果発泡ムラとなる可能性がある。一方、昇温速度を5℃/分より小さくした場合では、加硫反応が先行し微細な発泡となるか、もしくは発泡反応が阻害されるため、所望の硬度を得ることは難しい。本昇温工程のさらに好ましい範囲は5〜7℃/分である。
【0032】
なお、第一の昇温工程と第二の昇温工程の昇温速度を切り替える昇温速度変化点は、110℃〜140℃の範囲に設定することが好適である。特に、該円筒状ゴム組成物に含まれる発泡剤の分解温度以下に設定することが肝要である。110℃未満では加圧水蒸気の圧力を精度よく調整することが難しく、その結果温度も安定しない。また、140℃より高くなると発泡剤の分解温度に達することもあるため、発泡先行となりやすい。より好ましくは120℃〜130℃である。
【0033】
最終加熱工程は、10〜50分間の範囲に選択し、発泡・加硫処理を行うことが好ましい。更に好ましくは20〜30分間である。
【0034】
この例示において選択されている加熱手段は、加圧水蒸気を利用するが、この手法は迅速な温度変化が可能であり、さらに加硫缶内の温度の均一性も良好である。
【0035】
また、加硫缶より取り出した円筒状ゴム組成物が、加硫缶中で発泡反応ならびに加硫反応が完全には進行しなかった場合は、熱風炉でさらに加熱してもよい。これにより、発泡体中に残留した発泡剤及び/又は加硫剤を完全に反応させることが可能となる。
【0036】
(加硫トレー)
次に本発明に用いる加硫トレーについて説明する(図3)。本発明で用いる加硫トレーは該円筒状ゴム組成物の加熱後の外径より大きい内径を有する保持手段と、且つ、加熱後の前記円筒状ゴム組成物の長手方向の長さより長い受け部をもつ貫通孔を少なくとも1個以上設置した加熱トレーであれば、特に限定されない。なお、加熱トレーと円筒状ゴム組成物との接触により、ゴム組成物に温度ムラが発生する場合は該加熱トレーを回転させながら加熱しても差し支えない。
【0037】
また、該加熱トレーを回転させる場合、円筒状ゴム組成物に粘着性があって加熱トレーに付着する場合は円筒状ゴム組成物の表面にタルクなどの打ち粉をすることにより、未加硫の成形体の表面の粘着性が低下し、接触部のくっつきを防止することが可能である。打ち粉としては、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、カーボンなどの微粉末の採用が好ましく、またスラリーにして塗布しても良い。
【0038】
その後、前述したように公知の手段で円筒状の発泡体に芯金を圧入し、外径を円筒研磨してローラ形状にする。
【0039】
次に本発明に用いられるゴム組成物について説明する。
【0040】
(ゴム材料)
本発明の原料組成物に使用されるゴムとしては、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−共重合体)、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、SBR(スチレンブタジエンゴム)、CR(クロロプレン)、NBR(アクリルニトリルブタジエンゴム)、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴムなどのゴム、RB(ブタジエン樹脂)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレンエラストマー)などのポリスチレン系高分子材料、ポリオレフィン系高分子材料、ポリエステル系高分子材料;ポリウレタン系高分子材料、RVCなどの熱可塑性エラストマーやポリウレタン、ポリスチレン、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリビニルアルコール)、アクリル系樹脂、スチレン酢酸ビニル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体などの高分子材料などや、これらゴム、エラストマー、樹脂の混合物を用いることができる。
【0041】
(導電剤)
また、前記ゴムに導電性を付与するために添加される導電性物質は、公知の物質を用いることが可能である。例えば、導電性粒子として、導電性カーボンブラック、TiO2、SnO2、ZnO、SnO2とSbO3の固溶体等の金属酸化物、Cu、Agなどの金属粉末等、また、イオン導電剤として、LiCIO4、NaSCNなどが挙げられ、前記ゴムに単独で若しくは複数を添加し分散させることによって、所望の電気抵抗を得ることが可能である。また、ゴム主鎖中あるいは側鎖に極性を有する分子などを導入することにより導電化することもできる。
【0042】
(発泡剤)
発泡剤としては、有機発泡剤例えばA. D. C. A(アゾジカルボンアミド)系、D. P. T(ジニトロソペンタメチレンテトラアミン)系、T. S. H. P(トルエンスルホニルヒドラジド)系、O. B. S. H(オキシビスベンゼンスルフェニルヒドラジド)系などを単独で若しくは混合して用いることが可能である。発泡剤の分解温度は、尿素樹脂や酸化亜鉛などの発泡助剤などを加えて低下させることもできる。
【0043】
(発泡助剤)
発泡助剤としては、尿素系化合物、酸化亜鉛、酸化鉛などの金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸などを主成分とする化合物などが挙げられ、発泡剤に対応して添加することができる。
【0044】
(加硫剤)
また、加硫剤としては、硫黄、金属酸化物などが挙げられ、加硫促進剤としてチアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、カルバメート系などが挙げられ、それぞれの加硫剤に対応して適宜選択される。その他、公知の加硫促進助剤、軟化剤、補強剤、無機充填剤などが、必要に応じて適宜添加される。
【0045】
上記原料物質を所定量混合して原料組成物を得る。原料組成物を混合する練り手段としては、公知のバンパリーミキサー、ニーダーなどの混練り機で均一に混練りし未加硫の原料組成物をオープンロールでシート状にする。
【0046】
次に未加硫の原料組成物を円筒状に成形する手段として、押し出し機により最終形状に必要な円筒状形状を口金(ダイス)及び芯金(ニップル)の大きさを選択して任意の未加硫の原料組成物を円筒状に成形し、切断機により所定の長さにして円筒状の成形体を得る。
【0047】
得られる円筒状の成形体は、有用な導電性ローラを得るためには、該成形体の内径値の最大値と最小値との差が平均内径値の25%以下であることが好ましい。25%より大きい場合には、導電性芯金に圧入した後に該円筒状ゴム組成物の歪みが生じやすく、特に内径が上記導電性芯金に対して小さい部分では上記ゆがみが顕著になる。そのため、硬度ムラが生じる場合があり好ましくない。また、より好ましくは、20%以下である。
【実施例】
【0048】
以下に本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。
【0049】
以下に本発明について転写ローラを例を挙げて詳細に説明する。ただし、本発明は転写ローラのみに限定されるものではなく、帯電ローラ、現像ローラにも展開可能である。
【0050】
(実施例1)
ポリマー原料としてNBR(アクリルニトリルブタジエンゴム、商品名:ニッポールDN401LL 日本ゼオン(株)社製) 80部、エピクロルヒドリンゴム(商品名:ゼクロン3106 日本ゼオン(株)社製) 20部、導電性物質として導電性カーボンブラック(商品名:旭#35 旭カーボン(株)社製) 10部、さらに酸化亜鉛(商品名:亜鉛華2種 ハクスイテック(株)社製) 5部、ステアリン酸(商品名:ルナックS 花王(株)社製)1部を周知の方法で混練り機で均一に練りこみ、さらに発泡剤としてアゾカルボンジアミド(商品名:セルマルクM257 三協化成(株)社製)を4部、発泡助剤として尿素(商品名:セルマルクM258 三協化成(株)社製)2部、加硫剤として硫黄(商品名:Rhenogran S-80 バイエル(株)社製) 1部、加硫促進剤としてジベンゾチアジルジスルフィド(商品名:Rhenogran MBTS-80 バイエル(株)社製)2部、及びテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(商品名:Nocceler TOT-N 大内新興化学工業(株)社製)2部を周知の方法でオープンロールで均一に練り込み、混練りされた材料をシート状とした。
【0051】
混練りされた原料ゴム組成物を円筒状の未加硫成形体に成形するために、混練りされた原料組成物を外径φ1.5mmであるニップルと内径がφ7.0mmであるダイスをセットした押出し機を用いて、外径φ12mmの円筒状に成形し切断機により700mmの長さに切断した。さらに切断した成形体の外周面にタルクを塗布した。
【0052】
次に本発明における加熱手段である加熱缶について説明する。加熱トレーは内径40mmで長手方向が900mmある加熱トレーを用い、先に成形した未加硫円筒状ゴム組成物を該加熱トレーの内径に挿入した。次いで加硫缶に該加熱トレーを設置し、加硫缶の蓋を閉じ、125℃/分の昇温速度で125℃まで加熱し、続いて昇温速度を5.5℃/分に切り替えて加硫発泡温度である160℃まで加熱し、30分間保持することにより、円筒状ゴム組成物の加硫・発泡を行った。加熱時間終了後は水蒸気を排気弁により排出して発泡体を取り出した。
【0053】
次に、円筒状ゴム組成物の内径に導電性の接着剤が塗られた芯金を圧入・接着し、公知の方法で円筒状発泡体の外径を円筒研磨をして転写ローラを得た。
【0054】
(評価)
次に上記方法によって得られた円筒状ゴム組成物の内径と硬度の測定方法について説明する。
【0055】
(内径ばらつき)
内径は加硫・発泡後の円筒状ゴム組成物を5mm毎に切断し、通常用いられるピンゲージを用いて測定した。ピンゲージが用いることができない場合には、投影機(ニコン プロファイルプロジェクターV−12B)にて、内径の最大部(a)と最小部(b)を測定し、その平均値を内径とした。測定本数は5本とし、内径のばらつきは上記測定値の最大値と最小値との差を平均値で除した値と定義した。表1にその結果を示す。
【0056】
(硬度ムラ)
硬度は通常の方法で研磨したローラをアスカーC(SRIS0101(日本ゴム協会標準規格))硬度計によって一本当り3箇所を測定した。硬度についても測定本数は5本とした。なお、硬度ムラは測定結果の最大値と最小値の差と定義した。表1にその結果を示す。
【0057】
(実施例2〜4)
実施例2〜6は実施例1の温度条件と昇温条件を表1に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にローラを作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(比較例1)
比較例1は実施例1において切り替え温度に保持時間を10秒持たせたこと以外は実施例1と同様にローラを作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(比較例2)
比較例2は実施例1において昇温速度の切り替えを行わないこと以外は実施例1と同様にローラを作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例3)
比較例3は実施例1において第一の高速昇温速度を100℃/分にしたこと以外は実施例1と同様にローラを作製、評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1〜4は本発明の推奨する条件で製造した結果であり、内径バラツキも25%以下であり、硬度のムラも少ない。
【0063】
比較例1は保持時間を設けた加熱方式であるため、加硫が先行し、加硫と発泡のバランスが崩れたため、内径のバラツキが上昇している。その結果、硬度ムラが大きくなる結果となった。
【0064】
比較例2は昇温速度の切り替えを設けない加熱方式であるため、加硫の先行が過度となるとともに、加硫缶内の温度ムラも解消されず、内径のバラツキが比較例1より悪化した。これにより硬度ムラが大きくなった。
【0065】
比較例3は第一の昇温速度が低いために加硫缶内部の温度ムラが発生し、加硫と発泡のバランスが崩れる結果となった。そのため内径のバラツキが大きくなり、硬度ムラも発生している。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の導電性ローラの概略構成図である。
【図2】本発明の発泡加硫工程の加熱をする方法を説明する模式図である。
【図3】本発明で用いられる加熱トレーの概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1 円筒状ゴム組成物
2 導電性芯金
T1 加硫缶投入温度
T2 昇温速度の切り替え温度
T3 加硫発泡工程の設定加熱温度
R1 高速昇温速度
R2 低速昇温速度
t1、2 昇温時間
3 加硫トレー
4 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫発泡させた円筒状ゴム組成物を導電性芯金上に有する導電性ローラの製造方法において、
該円筒状ゴム組成物を加硫発泡させる加硫発泡工程は該円筒状ゴム組成物を内包する保熱兼保持手段により加硫発泡温度まで昇温させる工程を有し、該昇温工程は
(i)少なくとも第一の昇温工程と、
(ii)(i)昇温工程より昇温速度の低い低速昇温工程と、
をこの順で有し、該加硫発泡温度に到達する導電性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記保熱兼保持手段が、前記円筒状ゴム組成物の加熱後の外径より大きい貫通孔を有するものであることを特徴とする請求項1記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記低速昇温工程は平均昇温速度が10℃/分以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項4】
2段階の昇温工程は、第一の昇温工程が120℃/分〜140℃/分の高速平均昇温速度であり、第二の昇温工程が5℃/分〜10℃/分の低速平均昇温速度であり、円筒状ゴム組成物が110℃〜140℃に達した時点で第二の昇温工程に切り替え、最終加熱工程では150℃〜170℃で10〜50分保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で形成した、加硫発泡させた円筒状ゴム組成物の内径値の最大値と最小値の差が該円筒状ゴム組成物の平均内径値の25%以下である導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−21379(P2006−21379A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200334(P2004−200334)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】