説明

導電材の形成方法、該形成方法により形成された導電材、及び該導電材を有するデバイス

【課題】安価で且つエレクトロマイグレーションの生じない銅を使用して、低温焼成であっても高導電性を有し、且つ、被塗布体に対する密着性に優れた導電材の形成方法、及び該方法により形成された導電材を提供すること。
【解決手段】本発明の導電材の形成方法は、少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着した銅微粒子(P)を、少なくともアミド系化合物を含む有機溶媒(A)を含有する分散媒(S)に分散させて銅微粒子分散液を調整する工程と、前記銅微粒子分散液を、吐出、塗布、及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する工程と、前記所定パターンの液膜を焼成して焼結導電層を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅微粒子分散液を用いた導電材の形成方法、該形成方法により形成された導電材、及び該導電材を有する各種デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器における微細な配線パターンや微小な導電性部品の形成に、インクジェット法やスクリーン印刷法等、各種印刷方法が用いられている。例えば、特許文献1には、金属ナノ粒子の表面が有機化合物で被覆され、有機溶媒中に安定に分散した金属微粒子分散液を用いて、インクジェットやスクリーン印刷等の手法によって、回路パターンを形成することが提案されている。
【0003】
また、ナノインプリント技術を利用して、微細な配線パターンを形成する方法が提案されている。例えば、特許文献2には、凹凸を含むパターニングが施された樹脂製テンプレートの表面に、導電性粒子を含むペースト(溶媒中に導電性粒子が分散されている液体)を塗布し、当該表面を基板上に押し当てる、すなわちコンタクトプリントを行うことにより基板上に導電材のパターンを形成することが提案されている。
【0004】
上記の印刷方法及びナノインプリント方法においては、金属ナノ粒子を溶媒中に分散させた金属微粒子分散液を基板へ吐出、塗布、あるいは転写によって付与し、乾燥、焼成することによって微細配線パターンを形成する。このような方法は、現在広く用いられているフォトリソグラフィー技術を利用した導体回路形成方法と比較して、工程の簡略化及びそれに伴う製造コストの低減が可能で、且つ、多品種少量生産に適していることから、新たな回路形成方法としてエレクトロニクス分野を中心に幅広い分野において注目されている。
【特許文献1】特開2002−299833号公報
【特許文献2】特開2007−110054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微細な配線パターン及び微小な導電性部品に使用する金属微粒子としては、金属材料自体が金、銀、及びニッケル等に比較して格段に安価であり、且つ、銀を使用するときのようなエレクトロマイグレーションに起因する配線間の短絡を回避する観点から、銅を利用することが望まれる。
しかしながら、銅、銅合金、又は銅化合物の微粒子(以下、単に銅微粒子という)の分散液を使用する場合、酸化雰囲気中で加熱すると銅が酸化して導電性が低下するため、不活性ガス雰囲気あるいは水素ガス等の還元性ガス雰囲気中で加熱する必要がある。このため、上記特許文献1のように、銅微粒子の分散性を考慮して表面が厚い高分子化合物層で被覆されているような場合には、耐熱性の高い高分子は、酸素の存在しない不活性ガス又は還元性ガス雰囲気中では分解され難く、銅微粒子同士の焼結が阻害されて、最終的に得られる焼結体の導電性が不十分となってしまう。
導電性を向上させるためには、高分子化合物を昇華させるような高温で焼成することが考えられるが、そのような高温で焼成を行う場合、耐熱温度の低いプラスチック基板への応用や、熱による影響を受けやすい有機材料が周囲に存在するデバイスへの応用が困難であり、用途が制限されるという問題がある。
【0006】
さらに、表面が厚い高分子化合物層で被覆された銅微粒子の分散液を用いた場合、焼成の際の収縮ひずみが非常に大きく、焼結体が被塗布体から剥がれやすいという問題がある。これは、被覆層が厚い場合、銅微粒子の緻密な積層状態を得ることが困難であり、焼成時における熱収縮量が大きくなるからだと考えられる。
このような問題は、例えば、上記分散液を、異種材質基材間にまたがって形成される電極の形成に使用する場合に顕著となる。すなわち、異種材質基材間にまたがって形成される電極では、焼成の際の異種材質基材間の熱収縮量の違いにより、被塗布体側にもひずみが生じることから、焼結体がより剥がれやすい。このため、被塗布体に対する密着性に優れた配線材が望まれる。
【0007】
また、近年、携帯電話、パーソナルコンピュータ、デジタル家電、車載部品等に搭載される配線基板として、フレキシブル基板の採用が拡大している。フレキシブル基板は、大きな曲げ歪みが生じることから、フレキシブル基板上に、上記のように表面が厚い高分子化合物層で被覆された銅微粒子の分散液を用いて配線を形成する場合にも、配線の剥離が生じやすい。基板に対する密着性を向上させるためには、下地として微粒子分散液と相性のよい膜を形成し、その上に微粒子分散液を塗布することが考えられるが、工程が複雑であり実用性が低い。
【0008】
なお、上記特許文献1では、金属ナノ粒子として銀を用いた場合について、250℃以下の焼成温度で回路パターンを形成することが記載されているが、金属ナノ粒子として銅を使用する場合の問題点については何ら考慮されていない。すなわち、銅微粒子を使用する場合には、酸化されにくい銀を使用する場合と異なり、不活性ガス雰囲気あるいは水素ガス等の還元性ガス雰囲気中で加熱する必要があること、それにより銅微粒子を被覆する高分子が低温焼結では分解され難く、焼結配線の導電性が不十分になることについて考慮されてなく、耐熱温度の低いプラスチック基板や有機材料が周囲に存在するデバイスへ適用することはできない。
また、上記特許文献2でも、銀ナノペーストを用いた場合について、220℃で焼成して、銀配線パターンを形成することが記載されているが、特許文献1と同様、銅を使用する場合の問題点については何ら考慮されていない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、安価で且つエレクトロマイグレーションの生じない銅を使用して、低温焼成であっても高導電性を有し、且つ、被塗布体に対する密着性に優れた導電材を形成する方法、該方法により形成された導電材、及び該導電材を有するデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着している銅微粒子を有機溶媒に分散させる際に、アミド系化合物を含む有機溶媒と特定の他の有機溶媒を含む混合有機溶媒を使用すると、分散性と長期保存安定性に優れ、該銅微粒子分散液を被塗布体に付与して乾燥、焼成して銅微粒子の焼結体を得る際に、比較的低温で焼成が可能であり、得られる焼結体(導電材)は高い導電性と被塗布体に対する優れた密着性とを有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の態様は、少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着し、一次粒子の平均粒径が1〜150nmである銅微粒子(P)を、
(i)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜95体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜50体積%とを含む分散媒(S1)、
(ii)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜95体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)5〜50体積%とを含む分散媒(S2)、
(iii)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜94体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜49体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)1〜45体積%を含む分散媒(S3)、
(iv)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜94体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜49体積%と、常圧における沸点が20℃以上である、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜45体積%とを含む分散媒(S4)、
(v)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)35〜69体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜64体積%と、常圧における沸点が20℃以上である、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜35体積%とを含む分散媒(S5)及び
(vi)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)24〜64体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜39体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜70体積%と、常圧における沸点が20℃以上である、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40体積%とを含む分散媒(S6)
から選択される分散媒(S)に分散させて銅微粒子分散液を調整する工程と、
前記銅微粒子分散液を、吐出、塗布、及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する工程と、
前記所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を焼成して焼結導電層を形成する工程
とを有することを特徴とする導電材の形成方法である。
【0012】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る導電材の形成方法において、前記銅微粒子分散液の液膜を焼成する際の温度は、220〜300℃の範囲であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る導電材の形成方法において、高分子分散剤(D)と銅微粒子(P)との重量比(D/P)が0.001〜0.05であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の態様は、前記第1から第4のいずれかの態様に係る導電材の形成方法において、前記銅微粒子分散液の吐出、塗布、及び転写方法は、インクジェット法、スクリーン印刷法、ナノインプリント法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、及びロールコート法の内の少なくともいずれかを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の態様は、前記第1から第4の態様に係る導電材の形成方法により形成された導電材である。
【0016】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に係る導電材を、配線として有する基板である。
【0017】
本発明の第7の態様は、前記第6の態様に係る基板において、前記基板は、5%以上の曲げ歪みが加わる条件下で使用可能なフレキシブル基板であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第8の態様は、前記第5の態様に係る導電材を、異種材質基材間にまたがって形成された電極として有する半導体素子である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導電材の形成方法では、少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着している銅微粒子を上記特定の有機溶媒を含む分散媒(S1)〜(S6)のいずれかに分散させた銅微粒子分散液を、吐出、塗布及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する。本発明の銅微粒子分散液は、銅微粒子を分散させる分散媒(S)として、分散媒(S1)〜(S6)のいずれかを使用するので、高分子分散剤(D)の分散作用とこれらの混合有機溶媒の分散作用が相乗的に作用して、微粒子分散性と長期保存安定性に優れる。また、微粒子分散性に優れる分散媒(S)を使用することで、高分子化合物の付着量が比較的少量であってもよく、この結果、銅微粒子同士の焼結の阻害要因を排除又は低減することができ、低温焼成が可能となる。これより、耐熱温度の低いプラスチック基板や有機材料が周囲に存在するデバイスへの適用が可能となり、安価で且つエレクトロマイグレーションの生じない銅を使用して、低温焼成であっても高導電性を有する導電材を形成することができる。
【0020】
さらに、分散媒(S1)〜(S6)は、銅微粒子分散液の乾燥、焼成の際に、銅微粒子の粒子間相互作用が強くなるように設計されているので、乾燥、焼成過程での銅微粒子の緻密な積層状態を得ることができ、銅微粒子の焼結時における収縮量を最小限に抑えることができる。より詳細には、分散媒として、比誘電率の高いものや、溶媒分子間の相互作用を低下させて分散粒子の溶媒に対する親和性を向上する作用を持つものを用いているため、分散液中の銅微粒子は良好な分散状態(粒子間相互作用が弱い状態)が保たれており、この状態から乾燥・焼成過程において溶媒が蒸発することにより、粒子間相互作用(粒子間引力)が強まり、銅粒子の緻密な積層状態を得ることができる。このため、焼結体内の熱歪みを緩和することができ、被塗布体に対する高い密着性を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態に係る導電材の形成方法について説明する。
本発明の導電材の形成方法は、少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着している銅微粒子(P)を、
少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着し、一次粒子の平均粒径が1〜150nmである銅微粒子(P)を、
(i)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜95体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜50体積%とを含む分散媒(S1)、
(ii)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜95体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)5〜50体積%とを含む分散媒(S2)、
(iii)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜94体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜49体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)1〜45体積%を含む分散媒(S3)、
(iv)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜94体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜49体積%と、常圧における沸点が20℃以上である、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜45体積%とを含む分散媒(S4)、
(v)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)35〜69体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜64体積%と、常圧における沸点が20℃以上である、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜35体積%とを含む分散媒(S5)及び
(vi)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)24〜64体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜39体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜70体積%と、常圧における沸点が20℃以上である、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40体積%とを含む分散媒(S6)
から選択される分散媒(S)に分散させて銅微粒子分散液を調整する工程と、
前記銅微粒子分散液を、吐出、塗布、及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する工程と、
前記所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を焼成して焼結導電層を形成する工程と
を有する。
【0022】
(銅分散液の調整工程)
まず、銅微粒子分散液の調整工程について説明する。
本発明の銅微粒子分散液は、少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着している銅微粒子(P)を、前記分散媒(S1)〜(S6)から選択される分散媒(S)中に分散させることで調整される。
【0023】
−銅微粒子−
本発明の銅微粒子(P)は、銅、銅合金、及び銅化合物の微粒子を含み、銅化合物は、銅及び銅合金の酸化物を含む。遷移金属粒子である銅微粒子は、酸化物がまったく含まれないものは少なく、この場合の酸化レベルは微粒子生成時および保管時の雰囲気、温度、保持時間によりさまざまであるが、微粒子の最表面だけ薄く酸化されて内側は金属のままの場合、微粒子が殆ど酸化されている場合もある。本発明でいう銅化合物はこのようなさまざまな酸化状態の粒子をすべて含有する。
【0024】
銅微粒子(P)は、分散媒中で銅微粒子(P)の少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着した状態のものであれば、気相合成法と液相合成法(又は液相還元法)のいずれの方法で製造された銅微粒子(P)をも使用することが可能である。銅微粒子(P)が液相還元で形成される場合には、銅微粒子(P)は、銅微粒子(P)の分散作用を有する高分子分散剤(D)を溶解させた水溶液中又は有機溶媒中で液相還元により銅イオンを還元して、高分子分散剤(D)がその表面に付着した微粒子として形成されることが望ましい。上記液相還元は、電解還元又は還元剤を使用した無電解還元により銅イオンを還元することにより行うことができるが、これらの液相還元は公知の方法を用いることができる。
【0025】
銅微粒子(P)の一次粒子の平均粒径は、1〜150nmである。ここで、一次粒径とは、二次粒子を構成する個々の銅微粒子(P)の一次粒子の直径を意味する。該一次粒径は、電子顕微鏡を用いて測定することができる。また、平均粒径とは、銅微粒子(P)の数平均粒径を意味する。なお、二次粒子は、分散媒中において一次粒子が集合して形成されたものを指す。
銅微粒子(P)の一次粒子の平均粒径は、分散液を被塗布体上に付与して、焼成により緻密な焼結体を形成すること等を考慮すると、一次粒子の最大径が150nm以下であるのが好ましく、銅微粒子(P)の製造を考慮すると実用的には、1〜100nmであるのが好ましい。
【0026】
−高分子分散剤(D)−
高分子分散剤(D)は、水に対して溶解性を有していると共に、溶媒中で金属等からなる微粒子の表面を覆うように存在して、銅微粒子の凝集を抑制して分散性を良好に維持する作用を有する。
【0027】
本発明の高分子分散剤(D)は、例えば銅微粒子(P)が気相合成法より製造される場合には、銅が形成された後、有機溶媒に分散させる際に分散性を向上するために使用される。また、銅微粒子(P)が水溶液中で銅イオンを電解還元又は還元剤を使用した無電解還元等の液相還元により製造される場合には、該水溶液中に水溶性の高分子分散剤(D)を溶解させておいて、還元反応により析出する銅微粒子(P)の凝集を抑制して、銅微粒子(P)を効率良く形成することもできる。
【0028】
また、気相合成法又は液相還元法により、銅微粒子を形成して、その表面に高分子分散剤(D)が付着していない銅微粒子と、高分子分散剤(D)を本発明の分散媒に添加して撹拌することにより、銅微粒子(P)の表面が高分子分散剤(D)で覆われて、分散性が向上されるものでも良い。
【0029】
本発明の高分子分散剤(D)は上記作用を有し、かつ本発明の分散媒中で、銅微粒子(P)の凝集を抑制して分散作用を奏するものであれば、特に制限されるものではない。
このような高分子分散剤(D)が銅微粒子(P)を分散させるメカニズムは完全に解明されているものではないが、例えば高分子分散剤(D)に存在する官能基の非共有電子対を有する原子部分が銅微粒子(P)の表面に吸着して、高分子の分子層を形成し、互いに銅微粒子(P)同士の接近をさせない、斥力が発生していることが予想される。
【0030】
このような高分子分散剤(D)は、水溶性であると共に、反応系中で析出した銅微粒子(P)の表面を覆うように存在して、銅微粒子(P)の凝集を抑制して分散性を良好に維持する作用を有すると共に、本発明で使用する分散媒中でも銅微粒子(P)の凝集を抑制し、分散を維持する働きをするものである。
【0031】
高分子分散剤(D)存在下の液相還元により、銅微粒子(P)を水溶液中で形成する場合には、これらの高分子分散剤(D)は、水に対して溶解性を有すると共に、析出した銅微粒子(P)の表面を覆うように存在して、金属等の微粒子(P)の凝集を抑制し、分散を維持する働きをする。このような液相還元の場合、高分子分散剤(D)は、還元反応終了後に銅微粒子(P)から積極的に分離せずに、必要により他の不純物を除去して、銅微粒子(P)の分散性を向上する材料として使用される。
【0032】
高分子分散剤(D)としては、その化学構造にもよるが分子量が100〜100,000程度の、水に対して溶解性を有し、かつ銅微粒子(P)の表面を覆っている状態で水溶液から分離回収され、更に本発明の分散媒中で銅微粒子(P)を良好に分散させることができるものであればいずれも使用可能である。
【0033】
高分子分散剤(D)として好ましいのは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン等のアミン系の高分子;ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸基を有する炭化水素系高分子;ポリアクリルアミド等のアクリルアミド;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、更にはデンプン、及びゼラチンの中から選択される1種又は2種以上である。
【0034】
上記例示した高分子分散剤(D)化合物の分子量の具体例として、ポリビニルピロリドン(分子量:1000〜500、000)、ポリエチレンイミン(分子量:100〜100,000)、カルボキシメチルセルロース(アルカリセルロースのヒドロキシル基Na塩のカルボキシメチル基への置換度:0.4以上、分子量:1000〜100,000)、ポリアクリルアミド(分子量:100〜6,000,000)、ポリビニルアルコール(分子量:1000〜100,000)、ポリエチレングリコール(分子量:100〜50,000)、ポリエチレンオキシド(分子量:50,000〜900,000)、ゼラチン(平均分子量:61,000〜67,000)、水溶性のデンプン等が挙げられる。
【0035】
上記かっこ内にそれぞれの高分子分散剤(D)の数平均分子量を示すが、このような分子量範囲にあるものは水溶性を有するので、本発明において好適に使用できる。尚、これらの2種以上を混合して使用することもできる。
その他、チオール、カルボン酸、アミド、カルボニトリル、エステル類が挙げられる。また、極性基を有するポリマーとしてポリメチルビニルエーテル等を例示できる。
【0036】
銅微粒子分散液中で銅微粒子(P)表面に付着している高分子分散剤(D)と銅微粒子(P)との重量比(D/P)は、0.001〜0.05の範囲が好ましい。
前記重量比が、0.001未満では、銅微粒子(P)同士の凝集を抑制する効果が十分に得られない場合がある。また、前記重量比が0.05を超える場合には、分散上に支障がなくとも、銅微粒子分散液を塗布後、乾燥・焼成時に、過剰の高分子分散剤(D)が、銅微粒子(P)の焼結を阻害して、膜質の緻密さを低下する場合があると共に、高分子分散剤(D)の焼成残渣が、焼結膜中に残存して、導電性を低下するおそれがある。
【0037】
尚、分散溶液中において前記重量比(D/P)が0.001〜0.05の範囲であることについては、例えば、銅微粒子分散溶液をサンプリングして、遠心分離操作により高分子分散剤(D)が付着した微粒子(P)を分析用サンプルとして回収し、酸化性の溶液中で、高分子分散剤(D)が反応しない条件下で銅粒子を溶解した溶液を調製し、該溶液を液体クロマトグラフィー(Liquid Chromatography)等により定量分析すれば、確認することができる。
【0038】
また、銅微粒子(P)分析用サンプルを、銅微粒子(P)から高分子分散剤(D)を溶剤中に抽出した後に、必要ならば蒸発等の濃縮操作を行った上で、液体クロマトグラフィー、又は高分子分散剤(D)中の特定の元素(窒素、イオウ等)をX線光電子分光(XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy))、オージェ電子分光分析(AES(Auger Electron Spectroscopy))等の分析により行うことが可能である。
【0039】
−有機溶媒(A)−
有機溶媒(A)は、アミド基(−CONH−)を有するアミド系化合物、又は、アミド系化合物を含む有機溶媒であり、特に比誘電率が高いものが好ましい。有機溶媒(A)は、分散媒中で分散性と保存安定性を向上し、更に銅微粒子を含有している状態で被塗布体上に焼成した場合に被塗布体に対する密着性を向上する作用を有する。
【0040】
アミド系化合物としては、N−メチルアセトアミド(191.3 at 32℃)、N−メチルホルムアミド(182.4 at 20℃)、N−メチルプロパンアミド(172.2 at 25℃)、ホルムアミド(111.0 at 20℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.78 at 25℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(37.6 at 25℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.7 at 25℃)、1−メチル−2−ピロリドン(32.58 at 25℃)、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(29.0 at 20℃)、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、アセトアミド等が挙げられ、これらを混合して使用することもできる。尚、上記アミド系化合物名の後の括弧中の数字は各溶媒の測定温度における比誘電率を示す。これらの中でも比誘電率が100以上である、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、アセトアミドなどが好適に使用できる。尚、N−メチルアセトアミド(融点:26〜28℃)のように常温で固体の場合には他の溶媒と混合して作業温度で液状として使用することができる。
【0041】
−有機溶媒(B)−
有機溶媒(B)は、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒である。常圧における沸点が20℃未満であると、有機溶媒(B)を含む微粒子分散液を常温で保存した際、容易に有機溶媒(B)の成分が揮発し、分散液中の溶媒組成が変化してしまうおそれがある。また常圧における沸点が100℃以下とすることによって、該溶媒添加による分散溶媒中の溶媒分子間の相互引力を低下させ、微粒子の分散性を更に向上させる効果が有効に発揮されることが期待できる。
【0042】
有機溶媒(B)の中でも特にエーテル系化合物が、その溶媒分子間の相互作用を低減する効果が大きいことから好ましい。
【0043】
また、有機溶媒(B)を使用すると、超音波等の照射により微粒子分散液を調製する際に撹拌時間を著しく短縮する、例えば1/2程度に短縮することが可能である。また、分散媒中に有機溶媒(B)が存在していると、一端微粒子が凝集状態になってもより容易に再分散させることが可能である。
【0044】
有機溶媒(B)としては、一般式R1−O−R2(R1、R2は、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるエーテル系化合物(B1)、一般式R3−OH(R3は、アルキル基で、炭素原子数は1〜4である。)で表されるアルコール(B2)、一般式R4−C(=O)−R5(R4、R5は、それぞれ独立にアルキル基で、炭素原子数は1〜2である。)で表されるケトン系化合物(B3)が例示できる。
以下に上記有機溶媒(B)を例示するが、化合物名の後のカッコ内の数字は常圧における沸点を示す。
【0045】
前記エーテル系化合物(B1)としては、ジエチルエーテル(35℃)、メチルプロピルエーテル(31℃)、ジプロピルエーテル(89℃)、ジイソプロピルエーテル(68℃)、メチル-t-ブチルエーテル(55.3℃)、t-アミルメチルエーテル(85℃)、ジビニルエーテル(28.5℃)、エチルビニルエーテル(36℃)、アリルエーテル(94℃)等が例示出来る。
【0046】
前記アルコール(B2)としては、メタノール(64.7℃)、エタノール(78.0℃)、1−プロパノール(97.15℃)、2−プロパノール(82.4℃)、2−ブタノール(100℃)、2−メチル2−プロパノール(83℃)等が例示できる。
【0047】
前記ケトン系化合物(B3)としては、アセトン(56.5℃)、メチルエチルケトン(79.5℃)、ジエチルケトン(100℃)等が例示できる。
【0048】
−有機溶媒(C)−
有機溶媒(C)は、常圧における沸点が100℃を超える、分子中に1又は2以上の水酸基を有するアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機化合物であるが、この場合、アルコールと多価アルコールは共に常圧における沸点が100℃を超えるものである。また、炭素数が5以上のアルコール、及び炭素数が2以上の多価アルコールが好ましく、常温で液状であり、比誘電率が高いもの、例えば10以上のものが好ましい。
【0049】
有機溶媒(A)と有機溶媒(B)とを含有する混合有機溶媒は、撹拌により優れた分散性を有するが、一般に有機溶媒において時間の経過により微粒子同士が接合する傾向にある。有機溶媒(C)を分散媒中に存在させると、このような接合をより効果的に抑制して、銅微粒子の分散性の向上、及び、分散液の長期安定性化を図ることが可能になる。また、有機溶媒(C)は、加熱分解時に還元性物質を発生し、銅微粒子の酸化被膜を還元することができるので、後述する焼成工程において、還元性ガス雰囲気を必要としないという効果を奏する。そして、有機溶媒(C)を含む銅微粒子分散液を、被塗布体に塗布、焼成した際には、有機溶媒(C)の有する高い分散能及び還元促進能により、焼結体の均一性及び導電性を向上させることができる。
【0050】
有機溶媒(C)の具体例としては、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,2−ブタンジオ−ル、1,3−ブタンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、2−ブテン−1,4−ジオール、2,3−ブタンジオ−ル、ペンタンジオ−ル、ヘキサンジオ−ル、オクタンジオ−ル、グリセロール、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール等が例示できる。
【0051】
また、トレイトール(D-Threitol)、エリトリト−ル(Erythritol)、ペンタエリスリト−ル(Pentaerythritol)、ペンチト−ル(Pentitol)、ヘキシト−ル(Hexitol)等の糖アルコ−ル類も使用可能であり、ペンチトールには、キシリトール(Xylitol)、リビトール(Ribitol)、アラビトール(Arabitol)が含まれる。前記ヘキシトールには、マンニトール(Mannitol)、ソルビトール(Sorbitol)、ズルシトール(Dulcitol)等が含まれる。更に、グリセリンアルデヒド(Glyceric aldehyde)、ジオキシアセトン(Dioxy-acetone)、トレオース(threose)、エリトルロース(Erythrulose)、エリトロース(Erythrose)、アラビノース(Arabinose)、リボース(Ribose)、リブロース(Ribulose)、キシロース(Xylose)、キシルロース(Xylulose)、リキソース(Lyxose)、グルコ−ス(Glucose)、フルクト−ス(Fructose)、マンノース(Mannose)、イドース(Idose)、ソルボース(Sorbose)、グロース(Gulose)、タロース(Talose)、タガトース(Tagatose)、ガラクトース(Galactose)、アロース(Allose)、アルトロース(Altrose)、ラクト−ス(Lactose)、キシロ−ス(Xylose)、アラビノ−ス(Arabinose)、イソマルト−ス(Isomaltose)、グルコヘプト−ス(Gluco-heptose)、ヘプト−ス(Heptose)、マルトトリオース(Maltotriose)、ラクツロース(Lactulose)、トレハロース(Trehalose)、等の糖類も使用可能である。
上記アルコール類のなかでは、分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールがより好ましく、エチレングリコール(Ethylene glycol)及びグリセリン(Glycerin)が特に好ましい。
【0052】
−有機溶媒(E)−
有機溶媒(E)は、常圧における沸点が20℃以上である、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン、脂肪族第三アミン、脂肪族不飽和アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、及びアルカノールアミンの中から選択される1種又は2種以上のアミン系化合物、又は、これらアミン系化合物を含む有機溶媒である。
アミン系化合物としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、t-プロピルアミン、t-ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、モノ−nオクチルアミン、モノ−2エチルヘキシルアミン、ジ−nオクチルアミン、ジ−2エチルヘキシルアミン、トリ−nオクチルアミン、トリ−2エチルヘキシルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソオクチルアミン、トリイソノニルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルココナットアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、メタノールアミン、ジメタノールアミン、トリメタノールアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、および2−(2−アミノエトキシ)エタノール等が例示できる。
アミン系化合物が常温で気体又は固体の場合には、他の溶媒に溶解して作業温度で液体として使用することができる。
【0053】
―分散媒(S)−
分散媒(S)は、以下の分散媒(S1)〜(S6)のいずれかから選択される。
【0054】
−分散媒(S1)−
分散媒(S1)は、上記有機溶媒(A)50〜95体積%と、上記有機溶媒(B)5〜50体積%とを含む混合有機溶媒である。
【0055】
有機溶媒(A)及び有機溶媒(B)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で、更に本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよい。この場合、有機溶媒(A)及び有機溶媒(B)からなる成分が90体積%以上含まれていることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
【0056】
有機溶媒(A)が50体積%未満では、極性有機溶媒における金属等の微粒子(P)の分散性と保存安定性が不十分になるおそれがある。また、分散媒(S1)において有機溶媒(B)を5体積%以上含有させるためには有機溶媒(A)が95体積%以下とする必要がある。分散媒(S1)における好ましい有機溶媒(A)の濃度は60〜90体積%であり、特に好ましくは65〜85体積%である。
【0057】
一方、有機溶媒(B)が5体積%未満では、銅微粒子(P)の物理的な撹拌による分散時間の短縮化、と再分散性が不十分になるおそれがある。
上記以外の他の有機溶媒成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。
【0058】
−分散媒(S2)−
分散媒(S2)は、上記有機溶媒(A)50〜95体積%と、上記有機溶媒(C)5〜50体積%とを含む混合有機溶媒である。
【0059】
分散媒(S2)中で、有機溶媒(A)及び有機溶媒(C)が前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で更に、本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよい。この場合、有機溶媒(A)及び有機溶媒(C)からなる成分が90体積%以上含まれることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
【0060】
有機溶媒(A)が50体積%未満では、極性有機溶媒における金属等の微粒子(P)の分散性と保存安定性が不十分になるおそれがある。分散媒(S2)におけるより好ましい有機溶媒(A)の濃度は60〜90体積%であり、特に好ましくは65〜85体積%である。
【0061】
一方、有機溶媒(C)は、分散媒(S2)中に5〜50体積%以上含まれていることが必要である。有機溶媒(C)をこのような配合割合とすることにより、分散媒(S2)において、長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性がより向上し、またその微粒子分散液を焼結した際に得られる焼成膜の緻密性および導電性もより向上する。有機溶媒(C)の配合量は、10〜40体積%がより好ましい。
上記以外の他の有機溶媒成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド、等の極性有機溶媒が使用できる。
【0062】
−分散媒(S3)−
分散媒(S3)は、上記有機溶媒(A)50〜94体積%と、上記有機溶媒(B)5〜49体積%
と、上記有機溶媒(C)1〜45体積%とを含む混合有機溶媒である。
有機溶媒(A)が50体積%未満では、極性有機溶媒における金属等の微粒子(P)の分散性と保存安定性が不十分になるおそれがある。分散媒(S3)において有機溶媒(B)を5体積%以上、かつ有機溶媒(C)を1体積%以上それぞれ含有させるためには有機溶媒(A)を94体積%以下とする必要がある。
【0063】
有機溶媒(B)は、分散媒(S3)中に5体積%以上含まれていることが必要である。有機溶媒(B)が5体積%未満では、銅微粒子(P)の物理的な撹拌による分散時間の短縮化、と再分散性が不十分になるおそれがある。
【0064】
有機溶媒(C)は、分散媒(S3)中に1〜45体積%含まれていることが必要である。有機溶媒(C)をこのような配合割合とすることにより、分散媒(S3)において、長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性がより向上し、またその微粒子分散液を焼結した際に得られる焼成膜の緻密性および導電性もより向上する。
【0065】
有機溶媒(C)の一部は、分散媒(S3)中で銅微粒子(P)表面を覆うようにして存在して上記作用を発揮させていると推定されるので、好ましい濃度は分散媒(S3)中に存在する銅微粒子(P)濃度に対応して変動するが、好ましくは10〜30体積%、より好ましくは15〜25体積%である。
【0066】
−分散媒(S4)−
分散媒(S4)は、上記有機溶媒(A)50〜94体積%と、上記有機溶媒(B)5〜49体積%と、上記有機溶媒(E)1〜45体積%とを含む混合有機溶媒である。
有機溶媒(A)が50体積%未満では、極性有機溶媒における金属等の微粒子(P)の分散性と保存安定性が不十分になるおそれがある。分散媒(S4)において有機溶媒(B)を5体積%以上、かつ有機溶媒(E)を1体積%以上それぞれ含有させるためには有機溶媒(A)を94体積%以下とする必要がある。
【0067】
有機溶媒(B)は、分散媒(S4)中に5体積%以上含まれていることが必要である。有機溶媒(B)が5体積%未満では、銅微粒子(P)の物理的な撹拌による分散時間の短縮化、と再分散性が不十分になるおそれがある。
【0068】
有機溶媒(E)は、分散媒(S4)中に1〜45体積%含まれていることが必要である。有機溶媒(E)をこのような配合割合とすることにより、分散媒(S4)において、分散粒子の溶媒に対する親和性が向上するため、長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性がより向上する。
【0069】
このとき、有機溶媒(A)、有機溶媒(B)及び有機溶媒(E)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で、更に本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよい。この場合、有機溶媒(A)、有機溶媒(B)及び有機溶媒(E)からなる成分が90体積%以上含まれていることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
上記以外の他の有機溶媒成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。
【0070】
−分散媒(S5)−
分散媒(S5)は、上記有機溶媒(A)35〜69体積%と、上記有機溶媒(C)30〜64体積%と、上記有機溶媒(E)1〜35体積%とを含む混合有機溶媒である。
有機溶媒(A)が35体積%未満では、極性有機溶媒における金属等の微粒子(P)の分散性と保存安定性が不十分になるおそれがある。分散媒(S5)において有機溶媒(C)を30体積%以上、かつ有機溶媒(E)を1体積%以上それぞれ含有させるためには有機溶媒(A)を69体積%以下とする必要がある。
【0071】
有機溶媒(C)は、分散媒(S5)中に30体積%以上含まれていることが必要である。有機溶媒(C)をこのような配合割合とすることにより、分散媒(S5)において、長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性がより向上し、またその微粒子分散液を焼結した際に得られる焼成膜の緻密性および導電性もより向上する。
【0072】
有機溶媒(E)は、分散媒(S4)中に1〜45体積%含まれていることが必要である。有機溶媒(E)をこのような配合割合とすることにより、分散媒(S5)において、分散粒子の溶媒に対する親和性が向上するため、長期間保存しても銅微粒子(P)が凝集するのを抑制して分散安定性がより向上する。
【0073】
なお、分散媒(S5)では、有機溶媒(C)および(E)を共存させるため、有機溶媒(C)および(E)のそれぞれの一部が、分散媒(S5)中で銅微粒子(P)表面を覆うようにして存在していると考えられる。よって、有機溶媒(C)が分散媒(S5)において、その微粒子分散液を焼結した際に得られる焼成膜の緻密性および導電性をより向上する作用を発揮するには、有機溶媒(C)を30体積%以上配合することが必要であり、よって、上述したような効果を発するためには、有機溶媒(A)を30〜69体積%とする必要がある。
【0074】
有機溶媒(A)、有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で、更に本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよい。この場合、有機溶媒(A)、有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)からなる成分が90体積%以上含まれていることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
上記以外の他の有機溶媒成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。
【0075】
−分散媒(S6)−
分散媒(S6)は、上記有機溶媒(A)24〜64体積%と、上記有機溶媒(B)5〜39体積%と、上記有機溶媒(C)30〜70体積%と、上記有機溶媒(E)1〜40体積%とを含む混合有機溶媒である。
【0076】
有機溶媒(A)、有機溶媒(B)、有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)から前記配合割合で100体積%となるように配合されていてもよく、また前記配合割合の範囲内で、更に本発明の効果を損なわない範囲で他の有機溶媒成分を配合してもよい。この場合、有機溶媒(A)、有機溶媒(B)、有機溶媒(C)及び有機溶媒(E)からなる成分が90体積%以上含まれていることが好ましく、95体積%以上がより好ましい。
上記以外の他の有機溶媒成分を配合する場合には、テトラヒドロフラン、ジグライム、エチレンカルボナート、プロピレンカルボナート、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶媒を使用することが好ましい。
【0077】
少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着している銅微粒子(P)の分散液を調製する方法としては、銅微粒子(P)が液相還元で形成される場合には、前記分散媒(S1)〜(S6)から選択されるいずれかの分散媒(S)中に銅微粒子(P)と高分子分散剤(D)を添加、撹拌する方法が挙げられる。また、予め他の溶媒中で、銅微粒子(P)と高分子分散剤(D)を撹拌後、該溶媒中でその表面に高分子分散剤(D)が付着した銅微粒子(P)を形成し、該銅微粒子(P)を溶媒中で凝集、沈殿等させて、少なくともその表面の一部に高分子分散剤(D)で覆われた銅微粒子(P)を回収し、回収した銅微粒子(P)を前記分散媒(S1)〜(S6)から選択されるいずれかの分散媒(S)中に再分散させてもよい。銅微粒子(P)を分散媒(S)へ再分散させる方法としては、公知の撹拌方法を採用することができるが、超音波照射方法を採用するのが好ましい。
【0078】
上記したように、(i)有機溶媒(A)及び有機溶媒(B)をそれぞれ一定割合含む分散媒(S1)は、超音波等の撹拌により容易に分散して、かつ微粒子の分散性にも優れており、一端、粒子が凝集状態になっても容易に再分散させることが可能である。
【0079】
(ii)有機溶媒(A)及び有機溶媒(C)をそれぞれ一定割合含む混合有機溶媒(S2)は、長期の分散安定性に優れ、その微粒子分散液を基板上に塗布焼結した際、比較的定温での焼結が可能となる。
【0080】
(iii)有機溶媒(A)、有機溶媒(B)、及び有機溶媒(C)をそれぞれ一定割合含む混合有機溶媒(S3)、および有機溶媒(A)、有機溶媒(B)、及び有機溶媒(E)をそれぞれ一定割合含む混合有機溶媒(S4)、有機溶媒(A)、有機溶媒(C)、及び有機溶媒(E)をそれぞれ一定割合含む混合有機溶媒(S5)、有機溶媒(A)、有機溶媒(B)、有機溶媒(C)、及び有機溶媒(E)をそれぞれ一定割合含む混合有機溶媒(S6)は、更に分散性、安定性と焼結性を向上させる。
また、混合有機溶媒(S1)、混合有機溶媒(S2)、混合有機溶媒(S3)、混合有機溶媒(S4)、混合有機溶媒(S5)、及び混合有機溶媒(S6)は、いずれも有機溶媒(A)を含み、銅微粒子分散液の乾燥、焼成の際に、銅微粒子の粒子間相互作用が強くなるように設計されているので、最終的に得られる焼結体の被塗布体に対する密着性を向上させる。すなわち、分散媒として、比誘電率の高いものや、溶媒分子間の相互作用を低下させ分散粒子の溶媒に対する親和性を向上する作用を持つものを用いているため、分散液中の銅微粒子は良好な分散状態(粒子間相互作用が弱い状態)が保たれており、この状態から乾燥・焼成過程において溶媒が蒸発することにより、粒子間相互作用(粒子間引力)が強まり、銅粒子の緻密な積層状態を得ることができる。このため、焼結体内の熱歪みを緩和することができ、被塗布体に対する高い密着性を得ることが可能となる。
【0081】
本発明で使用する分散媒(S1)〜(S4)においては、実用的には、有機溶媒(A)濃度を50〜90体積%程度とするのがより好ましい。分散媒(S5)〜(S6)においては、有機溶媒(C)および(E)を共存させるため、有機溶媒(C)が分散媒(S5)〜(S6)において、その微粒子分散液を焼結した際に得られる焼成膜の緻密性および導電性をより向上する作用を発揮するには、有機溶媒(C)を30体積%以上配合することが必要である。そのため、分散媒(S5)〜(S6)においては、実用的には、有機溶媒(A)濃度を20〜60体積%程度とするのがより好ましい。
【0082】
本発明の分散媒は銅微粒子(P)の分散性に優れているので、これらの銅微粒子(P)からなる二次凝集粒子の平均二次凝集サイズを超音波照射等の撹拌により500nm以下、好ましくは300nm以下とすることは容易に可能である。
【0083】
(銅微粒子分散液の被塗布体への付与工程)
次に、上記工程により得られた銅微粒子分散液を、被塗布体に吐出、塗布、及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与し、所定パターンを有する銅微粒子散液の液膜を形成する。
【0084】
銅微粒子分散液の付与方法は、インクジェット法、スクリーン印刷法、ナノインプリント法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、及びロールコート法などを適用可能である。これら付与方法については、後にさらに詳述する。
被塗布体を構成する材料としては、例えば、種々の合成樹脂、絶縁材料、セラミック、金属、半導体、紙、ガラス(SOG膜含む)、及びこれらの組合せが挙げられ、その形状については限定されない。
【0085】
前記半導体材料としては、Si、Ge、SiC、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、GaSb、InP、InAs、InSb、ZnO、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、ZnSe,ZnTe,CdS,CdSe、CdTe、HgS、PbS、PbSe、PbTe、AlGaAs、AlInAs、AlInP、GaAsP、GaInAs、GaInP、AlGaAsSb、AlGaInP、及びGaInAsP等が挙げられる。
【0086】
(焼成工程)
次に、銅微粒子分散液の液膜を乾燥及び焼成して銅微粒子の焼結配線層を形成する。
このとき、銅微粒子は、比較低少量の高分子分散剤(D)で被覆された状態であるので、従来の高分子化合物層で厚く被覆された銅微粒子のように銅微粒子同士の焼結が阻害されることがなく、220〜300℃の低温焼成が可能となる。
【0087】
具体的には、乾燥条件は、使用する溶媒にもよるが例えば100〜200℃で15〜30分程度であり、焼成条件は、塗布厚みにもよるが例えば220〜300℃で20〜40分間程度、好ましくは220〜250℃で20〜40分間程度である。
乾燥及び焼成は、水素ガス等の還元ガスを使用することなく、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0088】
以上の工程により、金属材料自体が金、銀、及びニッケル等に比較して格段に安価であり、且つ、銀を使用するときのようなエレクトロマイグレーションに起因する配線間の短絡が生じない、銅を使用した導電材が形成される。
【0089】
得られた導電材は、低温焼成であっても導電性に優れ、その電気抵抗率は、1.0×10−5Ωcm〜10×10−3Ωcm程度を達成することが可能である。また、銅微粒子分散液の乾燥、焼成の際に、銅微粒子の粒子間相互作用が強くなるように分散媒が設計されているので、乾燥、焼成過程で銅微粒子の緻密な積層状態を得ることができ、被塗布体に対する高い密着性が得られる。
【0090】
このように被塗布体に対する高い密着性を有する導電材は、フレキシブル配線基板上に形成される配線として使用される場合や、異種材質基材間にまたがって形成される電極として使用する場合等に、特に有効である。
【0091】
次に、上記銅微粒子分散液の付与方法として、インクジェット法、スクリーン印刷法、ナノインプリント法、及びその他の塗布方法を用いた場合について、より具体的に説明する。
【0092】
−インクジェット法によるパターン形成−
インクジェット法においては、上記銅微粒子分散液をインクジェットプリンターのヘッドから吐出させ、被塗布体に直接描画することで所定のパターンを形成する。吐出面積及び吐出パターンは、コンピュータ制御により任意に設定することができる。インクジェット法としては、圧電素子を用いたピエゾジェット方式やエネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式が使用可能である。
【0093】
−スクリーン印刷法によるパターン形成−
図1は、スクリーン印刷法を用いたパターン形成の一例を示す概略図である。図1に示すように、スクリーンマスク11は、所定のパターン形状の孔11aが形成されている。スクリーンマスク11と被塗布体である基板16との間にある程度の間隔をもたせた状態で、スキージ12を下降させてスクリーンマスク11を基板16に接触させ押圧する。次いで、スクリーンマスク11を基板16へ押圧した状態で、スキージ12をスクリーンマスク11上で摺動させ、パターン孔11aから銅微粒子分散液13を基板16へ塗布する。そして、スクリーンマスク11を基板16から離間させることで、所定のパターン15が形成される。
【0094】
−ナノインプリント法によるパターン形成−
図2は、ナノインプリント法を用いたパターン形成の一例を示す概略図である。まず、図2(a)に示すような、スタンパー21を準備する。スタンパー21は、樹脂シート21aと、ナノメートルスケールの微細加工を施すことができるナノインプリント技術により形成された、凹凸による微細パターン21cとを有する。次いで、スタンパー21のパターンの形成された面上に、銅微粒子分散液をスピンコートする。これによりスタンパー21上には、パターン21cの凹凸にしたがい表面に起伏をもつ銅微粒子分散液の液膜23が形成される。なお、銅微粒子分散液の塗布は、液膜23を形成できる方法であればスピンコート以外によっても行うことができる。
【0095】
次に、図2(b)に示すように、銅微粒子分散液が塗布されたスタンパー21を、被塗布体である基板24に対して、所定の圧力で押し当ててコンタクトプリントを行う。
次に、図2(c)に示すように、基板24からスタンパー21を離間させると、スタンパー21の凸部の銅微粒子分散液が基板24上に転写され、基板24上に銅微粒子分散液のパターン25が形成される。
【0096】
−その他の塗布方法によるパターン形成−
まず、図3(a)に示すように、基板34上に、例えばポリメチルメタクリレートからなる高分子樹脂をスピンコート等により塗布し、高分子樹脂膜で被覆された基板を得る。
【0097】
次に、図3(b)に示すように、基板34及び高分子樹脂膜33を樹脂のガラス転移温度(110℃)以上に加熱し、所定の微細パターンが形成されたスタンパー31を、高分子樹脂膜33対して、所定の温度及び圧力で押し当てる。
【0098】
次に、図3(c)に示すように、スタンパー31を基板34から離間させる。これにより、スタンパー31の微細パターンが高分子樹脂膜33に転写される。
【0099】
次に、図3(d)に示すように、パターニングされた高分子樹脂膜33の凹部に、銅微粒子分散液36を充填する。充填方法としては、上記のインクジェット法及びスクリーン印刷法の他、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ロールコート法等の塗布方法を利用することができる。これにより、被塗布体である基板34上に銅微粒子分散液のパターン36が形成される。
【0100】
(基板)
次に、本発明の導電材の形成方法により形成された導電材を、配線として有する基板について説明する。
本発明の基板としては、一方の面に半導体素子が搭載され他方の面に実装基板が接合されるインターポーザ、プリント配線板、電子部品を内蔵する部品内蔵基板、及び電子部品と他の電子部品とが実装されてモジュールを形成するモジュール基板等が挙げられる。
【0101】
これら基板の材料としては、例えば、種々の樹脂材料をはじめ、紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、紙基材ポリエステル樹脂、ガラス基材エポキシ樹脂、ガラス基材ポリイミド樹脂、ガラス基材フッ素樹脂などが挙げられる。ガラス基材としては、例えば、ソーダ硝子、無アルカリ硝子、石英ガラスなどを使用することができる。また、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)などのセラミックスや、ノンドープシリコンなどであってもよい。
【0102】
本発明の導電材は、上述のように被塗布体に対する密着性に優れることから、特に、基板として5%以上の曲げ歪みが加わるフレキシブル基板を用いる場合に有効である。なお、曲げ歪み(ε)は、図4に示すように、基板の厚さをD、曲げ部の曲率半径Rとしたときに、ε=D/2Rで定義される。
【0103】
フレキシブル基板は、厚さが200μm以下、好ましくは150μm以下の樹脂製基板を含み、その樹脂材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、非晶性ポリオレフィン、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、およびポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0104】
−フレキシブルインターポーザ−
以下に、一方の面に半導体素子が搭載され他方の面に実装基板が接合されるフレキシブルインターポーザにおいて、本発明の導電材を配線として用いた例について説明する。図5に、一例として、本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有するインターポーザ40の断面構造を示す。図5に示すように、インターポーザ40は、フレキシブル基板41と、絶縁樹脂層43と、絶縁樹脂層43を貫通する銅の貫通配線45と、所定のパターンを有する上部配線46とを有する。貫通配線45は、例えば、無電解銅メッキ又は銅ペースト充填により形成される。そして、上部配線46は、本発明の銅微粒子分散液を、吐出、塗布、及び転写のいずれかの方法によって、被塗布体である絶縁樹脂層43及び貫通配線45上に付与、焼成して形成される。
【0105】
所定のパターンを有する上部配線46には、LSIチップのような半導体素子を搭載可能である。例えば、半導体素子に外部端子として予め形成された半田バンプ(不図示)とインターポーザ40の上部配線46に形成されたバンプ(不図示)とをフリップチップ接合することで、半導体素子が搭載された半導体パッケージが得られる。半導体パッケージは、貫通配線45の外部露出面に半田ボールが形成され、実装基板に実装される。
【0106】
このようなインターポーザにおいては、被塗布体に対する密着性に優れた配線が形成されるので、フレキシブル基板に形成された配線の剥がれを抑制し、信頼性を向上することができる。また、低温焼成であっても導電性に優れた配線が形成されるので、回路をより微細に形成することが可能となり、半導体素子及び半導体パッケージの小型化に対応できる。
【0107】
インターポーザ40のフレキシブル基板41としては、上述の樹脂材料からなる基板を用いることができるが、本発明においては、低温焼成が可能であることから、フレキシブル基板の中でも、比較的耐熱温度の低い樹脂基板を使用することが可能となる。
【0108】
また、上述のように、本発明の基板は配線の低温焼成が可能であり、その基板材料として樹脂を使用することができることから、各種電子機器の部品として、本発明による樹脂基板を使用すれば、電子機器の小型軽量化及び低コスト化に対する要求に応えることが可能となる。また、基板に形成された配線は被塗布体に対する密着性に優れるので、本発明の基板を備える電子機器の信頼性を高めることができる。
【0109】
電子機器としては、パーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、携帯電話機、ゲーム機、テレビ受像機、ラジオ、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ハードディスクレコーダー、プリンター、電子手帳、電子卓上計算機、電子辞書、カーナビゲーション装置、POS(Point-Of-Sale)端末などを挙げることができる。
【0110】
(変形例)
次に、本発明の導電材を配線として用いた変形例について説明する。
図6に、本発明の導電材の形成方法により形成された配線を有する半導体チップと半導体パッケージ基板の断面構造を示す。図6に示すように、パッケージ基板は、基板51と、基板51上に実装された半導体チップ52とを有する。基板51上に形成された電極53と、半導体チップ52に形成された電極54とは、フレキシブル基板55aと導電層55bとからなる配線55によって接続されている。
【0111】
配線55は、以下のようにして形成される。まず、配線の形状に応じて予めカットされたフレキシブル基板55aを、例えば接着剤等の接着手段により両電極に接着する。その後、本発明の銅微粒子分散液を、インクジェット法等によって、被塗布体であるフレキシブル基板55a上に付与、焼成して導電層55bを形成する。このようにして、フレキシブル基板55aと導電層55bとからなる配線が実現される。
【0112】
フレキシブル基板55aの構成材料としては、上述の樹脂材料を用いることができる。
このような配線55によれば、高さに差のある電極間に配線する場合においても配線55の配線長を短くすることができるので、配線55に起因する寄生インダクタンスの影響を低減することができる。
【0113】
(半導体素子)
次に、本発明の導電材の形成方法により形成された導電材を、異種材質基材間にまたがって形成された電極として有する半導体素子について説明する。
半導体素子としては、薄膜トランジスタ、化合物半導体トランジスタ、パワー系MOSトランジスタ等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の導電材は、異種材質基材間にまたがって形成される電極のいずれにも適用可能であり、本発明の半導体素子はこのような電極を有する半導体素子を全て含む。
【0114】
−薄膜トランジスタ−
以下に、液晶パネルに含まれる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,TFT)において、本発明の導電材を電極として用いた例について説明する。
図7に、ボトムゲート型薄膜トランジスタを含む液晶パネルの断面構造を示す。薄膜トランジスタは、液晶パネルの液晶素子のスイッチング素子として機能する。
【0115】
図7に示すように、ガラス基板61上に薄膜トランジスタ60が形成されている。薄膜トランジスタ60は、ゲート電極(Al)62と、ゲート酸化膜63と、半導体活性層としてのアモルファスシリコン層64と、ソース電極65と、ドレイン電極66とを有する。図中、符号67はゲートバスラインであり、符号68は、パッシベーション膜としてのシリコン窒化膜であり、符号69は、ITO膜からなる画素電極である。
【0116】
上記ソース電極65およびドレイン電極66は、ガラス基板61とアモルファスシリコン層64間にまたがって形成されている。そして、このように異種材質基材にまたがるソース電極65及びドレイン電極66の少なくとも1の電極は、インクジェット法により、銅微粒子分散液を吐出し、焼成して形成される。
【0117】
本発明の導電材の形成方法によれば、被塗布体に対する密着性に優れた電極が形成されるので、熱収縮の差が生じやすい異種材質基材間にまたがって形成される電極であっても剥がれが生じ難い。したがって、このような電極を有する薄膜トランジスタ、及び該薄膜トランジスタを有するディスプレイの信頼性を向上させることができる。
【0118】
本発明の半導体素子は、上述した基板を有する電子機器と同様の電子機器に備えられ、同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0119】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0120】
尚、以下の実施例、比較例における評価方法を以下に記載する。
【0121】
(1)焼成膜の電気抵抗
焼成膜の電気抵抗値は、直流四端子法(使用測定機:Keithley社製、デジタルマルチメータDMM2000型(四端子電気抵抗測定モード))を用いて測定した。電気抵抗値の評価は下記の方法によった。
○:1×10-4[Ω・cm]未満
△:1×10-2[Ω・cm]未満、10×10-4[Ω・cm]以上
×:1×10-2[Ω・cm]以上
【0122】
(2)焼成膜の基板密着性
JIS D0202−1988に準拠して焼成膜のテープ剥離試験を行った。評価試料の描画パターンを1mmずつ、計10マス区切り、セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用い、フィルムに密着させた後剥離した。判定は10マスの内、剥離しないマス目の数から以下の規準により表した。
○:剥離したマス目が1マス以下
△:剥離したマス目が4〜2マス
×:5マス以上剥離した
【0123】
(3)焼成膜の耐曲げ歪み性
ステンレス棒に被塗布体の裏面を接触させて曲げることにより、曲げ歪み(ε)を加えた。このとき、曲げ歪みを加えない状態、および前述のような曲げ歪みを加えた状態で電気抵抗率を測定して、曲げ歪みを加えない場合の電気抵抗率と曲げ歪みを加えた状態の電気抵抗率の比較を行い、以下の基準により評価した。
○:曲げ歪みを加えても電気抵抗値がほとんど変化しない
△:曲げ歪みを加えることで電気抵抗値が増加(10倍未満)
×:曲げ歪みを加えることで電気抵抗値が大きく増加(10倍以上)
【0124】
1.銅微粒子分散液の調整
まず、高分子分散剤で覆われた銅微粒子を下記方法で調製した。
銅微粒子の原料として酢酸銅((CH3COO)2Cu・1H2O)0.2gを蒸留水10mlに溶解させた酢酸銅水溶液10mlと、金属イオンの還元剤として水素化ホウ素ナトリウムを5.0mol/リットル(l)の濃度になるように蒸留水に溶解して、水素化ホウ素ナトリウム水溶液100mlを調製した。その後、該水素化ホウ素ナトリウム水溶液に、更に高分子分散剤としてポリビニルピロリドン(PVP、数平均分子量約3500)0.5gを添加、攪拌して溶解させた。
窒素ガス雰囲気中で、前記還元剤と高分子分散剤が溶解している水溶液に、上記酢酸銅水溶液10mlを滴下した。この混合液を約60分間よく攪拌しながら反応させた結果、一次粒子の平均粒径5〜10nmの銅微粒子が水溶液中に分散した微粒子分散液が得られた。
【0125】
次に、上記方法で得られた銅微粒子が分散した分散液100mlに酸素ガスを5分間吹き込んだ後、ガラス製容器にいれ、室温下で24時間静置することにより、銅微粒子が沈殿した水溶液を得た。該水溶液を遠心分離機に入れ、銅微粒子を回収した。その後、試験管に回収した微粒子と蒸留水30mlを入れ、超音波ホモジナイザーを用いてよく攪拌した後、遠心分離機で粒子成分を回収する洗浄操作を1度行うことで、高分子分散剤にその表面が覆われた銅微粒子が得られた。
【0126】
別途、本発明の分散媒の一例として、有機溶媒(A)としてN-メチルアセトアミドを、有機溶媒(B)としてジエチルエーテルを、有機溶媒(C)としてエチレングリコールを、有機溶媒(E)としてトリエチルアミンを用い、これらを表1および表2に示す溶媒混合比(体積%)にて混合し、実施例1−1〜1−15の混合有機溶媒をそれぞれ調整した。
【0127】
上記の方法によって得られた銅微粒子を、上記実施例1−1〜1−15の有機混合溶媒10mlにそれぞれ分散させ、超音波ホモジナイザーを用いて分散液中に1時間超音波振動を与えることで、実施例1−1〜1−15の銅微粒子分散液を調整した。
【0128】
2.導電性評価
上記の方法で調製した実施例1−1〜1−15の銅微粒子分散液、並びに比較例1としての(株)アルバック (ULVAC, Inc.) 製、銅ナノ粒子分散液(商品名:Cuナノメタルインク「Cu1T」)を、インクジェット用ヘッド(メクト社製:MICROJET(登録商標) Model MJ−040)に入れ、幅が50mm、厚みが50μmのポリイミドフィルム((株)カネカ製、アピカルAH)上に直線パターンを100本形成した。窒素雰囲気中120℃で30分間乾燥した後、さらに窒素雰囲気中、160℃、190℃、220℃、260℃、300℃でそれぞれ1時間熱処理することによって焼成膜を得た。得られた焼成膜の電気抵抗を測定した。
【0129】
測定結果を表1に示す。表1から、実施例1−1〜1−15の銅微粒子分散液は、ポリイミドフィルム上にインクジェットによりパターン描画し乾燥した後、窒素雰囲気中220℃以上の温度での熱処理により導電性の良い焼成膜とすることができた。一方、比較例1において得られた焼成膜は、1.0×10Ωcm以上であった。
【0130】
【表1】

【0131】
3.密着性評価
また、上記の実施例1−1〜1−15の銅微粒子分散液を用いて、上記の方法で220℃の熱処理により作製した焼成膜について、テープ剥離試験を行った。また、比較例として、表2の比較例2−1〜2−6に示す溶媒混合比にて調整した銅微粒子分散液を用いて、220℃の熱処理により作製した焼成膜についても、同様にテープ剥離試験を行った。
【0132】
試験結果を表2に示す。表2から、実施例1−1〜1−15の銅微粒子分散液から得られた焼成膜は、密着性に優れていた。一方、比較例2−1〜2−6の銅微粒子分散液から得られた焼成膜は、密着性に乏しかった。
【0133】
【表2】

【0134】
4.耐曲げ歪み性評価
本発明の分散媒の一例として、有機溶媒(A)としてN-メチルアセトアミドを、有機溶媒(C)としてエチレングリコールを、アミン系化合物溶液(E)としてトリエチルアミンを用い、これらを体積割合45:45:10の割合で混合し、実施例2−1〜2−9の混合有機溶媒をそれぞれ調整した。
次に、上記の方法によって得られた銅微粒子を、上記実施例2−1〜2−9の混合有機溶媒にそれぞれ分散させ、実施例2−1〜2−9の銅微粒子分散液を調整した。
【0135】
上記の方法で調製した実施例2−1〜2−9の銅微粒子分散液をインクジェット用ヘッド(メクト社製:MICROJET(登録商標) Model MJ−040)に入れ、厚み(D)が表3にあるような厚さのポリイミドフィルム((株)カネカ製、アピカルAH)上に直線パターンを100本形成した。また、比較例3−1〜3−3として、(株)アルバック (ULVAC, Inc.) 製、銅ナノ粒子分散液(商品名:Cuナノメタルインク「Cu1T」)を用いて、実施例と同様に直線パターンを100本形成した。窒素雰囲気中120℃で30分間乾燥した後、さらに窒素雰囲気中、220℃で1時間熱処理することによって焼成膜を得た。
【0136】
得られた焼成膜に対して、表3に示すように曲げ歪み(ε)を与え、耐曲げ歪み性を評価した。結果を表3に示す。表3から、実施例2−1〜2−9の銅微粒子分散液から得られた焼成膜は、耐曲げ歪み性に優れていた。一方、比較例3−1〜3−3の銅微粒子分散液から得られた焼成膜は、耐曲げ歪み性に乏しかった。
【0137】
また、比較例3−1と比較例3−3では、同じ曲げ歪み(ε)を与えたとしても、厚み(D)が厚い比較例3−3に比べて、厚み(D)が薄い比較例3−1では、耐曲げ歪み性が悪くなっていることが判る。一方、実施例2−4と、実施例2−7〜実施例2−9を比較した場合には、厚み(D)を変化させ、同じ曲げ歪み(ε)を与えたが、厚み(D)の薄い実施例2−4で耐曲げ歪み性が悪くなることはなかった。つまり、本発明によれば、200μm以下のような薄い樹脂基板を用いたフレキシブル基板であっても、耐曲げ歪み性を損なうことがない。
【0138】
【表3】

【0139】
5.高分子分散剤の有無評価
本発明の銅微粒子中の高分子分散剤の有無に対する評価を下記のように行った。
まず、本発明の分散媒の一例として、有機溶媒(A)としてN-メチルアセトアミドを、有機溶媒(B)としてジエチルエーテルを用い、これらを体積割合70:30の割合で混合し、混合有機溶媒を調整した。上記の方法によって得られた銅微粒子を混合有機溶媒に分散させ、銅微粒子分散液を得た。銅微粒子分散液中の高分子分散剤で覆われた微粒子成分を、遠心分離機を用いて遠心沈降させて回収した。得られた銅微粒子に、0.2M硝酸水溶液、0.2M塩酸、メタノールを1:1:2で混合することで作成した溶離液を入れ、銅粒子成分を溶解させた。得られた溶液を適量の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、昭和電工(株)(Showa Denko K.K.)製、ゲル濾過クロマトグラム(GPC、ディテクター:Shodex RI SE−61、カラム:Tosoh TSKgel G3000PWXL)を用いて高分子成分の含有量を調べた。
【0140】
その結果、得られたスペクトルデータには、使用した高分子成分(ポリビニルピロリドン)を意味する分子量域に明らかなピークが見られ、このピーク強度の定量分析の結果、本製法により得られた銅微粒子に付着した高分子分散剤の量(D)は、微粒子量(P)との重量比(D/P)として、0.002であることが確認された。このことから、実施例1〜3で使用された銅微粒子は水溶性の高分子分散剤で覆われていることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の実施形態に係るスクリーン印刷法を用いたパターン形成の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るナノインプリント法を用いたパターン形成の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る他の塗布方法を用いたパターン形成の例を示す概略図である。
【図4】曲げ歪みの定義を説明するための模式図である。
【図5】本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有するインターポーザの断面図である。
【図6】本発明の導電材の形成方法により形成した配線を有する半導体パッケージ基板の断面図である。
【図7】本発明の導電材の形成方法により形成した電極を有する薄膜トランジスタを含む液晶パネルの断面図である。
【符号の説明】
【0142】
11 スクリーンマスク
11a パターン孔
13 銅微粒子分散液
15 パターン
16 基板
21 スタンパー
21a 樹脂シート
21c 微細パターン
23 液膜
24 基板
25 銅微粒子分散液パターン
31 スタンパー
33 高分子樹脂膜
34 基板
36 銅微粒子分散液
40 インターポーザ
41 基板
43 絶縁樹脂層
45 貫通配線
46 上部配線
51 基板
52 半導体チップ
53 パッケージ基板側電極
54 半導体チップ側電極
55 配線
55a フレキシブル基板
55b 導電層
60 薄膜トランジスタ
61 ガラス基板
62 ゲート電極
63 ゲート酸化膜
64 アモルファスシリコン層
65 ソース電極
66 ドレイン電極
67 ゲートバスライン
68 パッシベーション膜
69 画素電極(ITO膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面の一部に高分子分散剤(D)が付着し、一次粒子の平均粒径が1〜150nmである銅微粒子(P)を、
(i)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜95体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜50体積%とを含む分散媒(S1)、
(ii)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜95体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)5〜50体積%とを含む分散媒(S2)、
(iii)アミド基系化合物を含む有機溶媒(A)50〜94体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜49体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)1〜45体積%を含む分散媒(S3)、
(iv)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)50〜94体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜49体積%と、常圧における沸点が20℃以上である、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜45体積%とを含む分散媒(S4)、
(v)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)35〜69体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜64体積%と、常圧における沸点が20℃以上である、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜35体積%とを含む分散媒(S5)及び
(vi)アミド系化合物を含む有機溶媒(A)24〜64体積%と、常圧における沸点が20〜100℃である低沸点の有機溶媒(B)5〜39体積%と、常圧における沸点が100℃を超え、且つアルコール及び/又は多価アルコールからなる有機溶媒(C)30〜70体積%と、常圧における沸点が20℃以上である、アミン系化合物を含む有機溶媒(E)1〜40体積%とを含む分散媒(S6)
から選択される分散媒(S)に分散させて銅微粒子分散液を調整する工程と、
前記銅微粒子分散液を、吐出、塗布、及び転写のいずれかの方法によって被塗布体上に付与して、所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を形成する工程と、
前記所定パターンを有する銅微粒子分散液の液膜を焼成して焼結導電層を形成する工程と
を有することを特徴とする導電材の形成方法。
【請求項2】
前記銅微粒子分散液の液膜を焼成する際の温度は、220〜300℃の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の導電材の形成方法。
【請求項3】
前記高分子分散剤(D)と前記銅微粒子(P)との重量比(D/P)が0.001〜0.05であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の導電材の形成方法。
【請求項4】
前記銅微粒子分散液の吐出、塗布及び転写方法は、インクジェット法、スクリーン印刷法、ナノインプリント法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、及びロールコート法の内の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電材の形成方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電材の形成方法により形成された導電材。
【請求項6】
請求項5に記載の導電材を、配線として有する基板。
【請求項7】
前記基板は、5%以上の曲げ歪みが加わる条件下で使用可能なフレキシブル基板であることを特徴とする請求項6に記載の基板。
【請求項8】
請求項5に記載の導電材を、異種材質基材間にまたがって形成された電極として有する半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−105039(P2009−105039A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257458(P2008−257458)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】