説明

小分子担体としての二又は四グアニジノ−ビフェニル化合物

本発明は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩に関する:式I


[式中、X1、X2、X3はそれぞれ独立して、


(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;nは0、1、2、3....6を示し;Lは(Z)mNR5R6{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団




から選択される)を示すか、あるいは、R5、R6及びそれらが結合した窒素が一緒になって


を形成する}を示す]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小分子担体(SMC)に関する。より特定すると、本発明はin vitro及びin vivoでの様々な積荷部分の細胞への送達に有用なSMCに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、研究により、様々なペプチド(その多くがウイルスタンパク質中に存在する)が、様々な異なる細胞型の生体膜を通過する能力を持つことが示されている。「タンパク質導入ドメイン」(PTD)としても知られるこれらのペプチドは、膜を通過する限られた能力を持つ多種多様な分子(例えばペプチド、タンパク質、DNA)に連結され得、それにより、生体膜を横切ることを可能にする。研究により、マウスに導入されたPTD融合分子は、血液脳関門の横断を含む全ての組織への送達を呈することが示された(Schwarze, SR., Dowdy, SF., Trends Pharmacol. Sci, 2000, 21, 45)。同様な基礎ペプチドは、MDR型に対する抗菌活性を持つことが知られている。
【0003】
ほとんどの治療薬は、物理的性質が比較的狭い範囲に限られている。一例として、それらは投与及び分配のために十分に極性でなければならないが、比較的非極性な細胞の二重層を通した受動拡散を可能にするためには十分に非極性でなければならない。結果として、多くの有望な薬剤候補(多くのペプチド薬を含む)が、投与及び分配にとっては非極性過ぎるか又は受動細胞侵入にとっては極性過ぎるかのいずれかを示し、この範囲外となるため、臨床上進歩し得ない。この問題を回避するための新しい取り組みは、これらの潜在的薬剤をPTDに共有結合させることである。しかし、そのようなペプチド-PTDを調製することは大いにコストと時間を費やすとともに、しばしばそれらのペプチド構造により細胞酵素による急速分解に敏感になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、調製の容易さ及びペプチドを分解する細胞酵素に対する耐性によるin vivoでの安定性のためにペプチド-PTDよりも扱い易い小分子担体(SMC又は「分子タグ」)を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1番目の態様は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩に関する:
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
Lは(Z)mNR5R6
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【0010】
【化3】

【0011】
から選択される)を示すか、
あるいは、R5、R6及びそれらが結合した窒素が一緒になって、
【0012】
【化4】

【0013】
を形成する}を示す]。
【0014】
本発明の2番目の態様は、積荷部分に連結された上記の式Iの化合物を含む接合体に関する。
【0015】
本発明の3番目の態様は、上記の式Iの化合物又は上記の接合体、及び薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含む医薬組成物に関する。
【0016】
本発明の4番目の態様は、医薬における使用のための、上記の式Iの化合物又は上記の接合体に関する。
【0017】
本発明の5番目の態様は、担体部分に連結された薬剤部分を含む送達系に関し、該担体部分は上記の式Iの化合物である。
【0018】
本発明の6番目の態様は、
(i)式Icの化合物又はその薬学的に許容される塩と、
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
L’は(Z)mNR5R6
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【0023】
【化7】

【0024】
から選択される)を示す}を示す]
(ii)タンパク質、ペプチド、抗体又は薬剤から選択される積荷部分、
との反応生成物を含む接合体に関する。
【0025】
本発明の7番目の態様は、上記の接合体を調製するプロセスに関する。
【0026】
本発明の8番目の態様は、積荷部分を細胞に導入する方法に関し、該方法は該細胞を上記の接合体と接触させる工程を含む。
【0027】
本発明の9番目の態様は、上記の式Iの化合物を調製するプロセスに関する。
【0028】
本発明の10番目の態様は、式Idの化合物又はその薬学的に許容される塩に関する:
【0029】
【化8】

【0030】
[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【0031】
【化9】

【0032】
(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
L”は-(Z)mNR5-
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5はH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【0033】
【化10】

【0034】
から選択される)を示す}を示し;
Gは積荷部分を示す]。
【0035】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で用いられる場合、「ヒドロカルビル」という用語は、1以上の他の好適な置換基を任意で含んでいてもよい、少なくともC及びHを含有する飽和もしくは不飽和の、直鎖、分岐又は環状基をいう。そのような置換基の例としては、ハロ、アルコキシ、ヒドロキシ、CF3、CN、アミノ、COOH、ニトロ又は環状基が挙げられ得る。置換基が環状基である可能性に加え、置換基の組み合わせが環状基を形成し得る。ヒドロカルビル基が1より多いCを含有する場合、それらの炭素は必ずしも互いに連結する必要はない。例えば、少なくとも2つの炭素は、好適な要素又は基を介して連結し得る。従って、ヒドロカルビル基はヘテロ原子を含み得る。好適なヘテロ原子は当業者に明らかであり、例えば硫黄、窒素、酸素、リン及びケイ素が挙げられる。好ましくは、ヒドロカルビル基はアリール又はアルキル基である。
【0036】
本明細書中で用いられる場合、「アルキル」という用語は、(単もしくは多)置換又は非置換でもよい飽和直鎖及び分岐アルキル基の両方を含む。好ましくは、アルキル基はC1-20アルキル基、より好ましくはC1-15、さらに好ましくはC1-12アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、より好ましくはC1-3アルキル基である。特に好ましいアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル及びヘキシルが挙げられる。好適な置換基としては、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、N02及びCOOHが挙げられる。「アルキレン」という用語は、適宜解釈されるべきである。
【0037】
本明細書中で用いられる場合、「アリール」という用語は、(単もしくは多)置換又は非置換の単環芳香族又は多環芳香族系をいい、該多環芳香族系は融合されていても非融合であってもよい。好ましくは、「アリール」という用語は6ないし10個の炭素原子を持つ基(例えばフェニル、ナフチル等)を含む。「アリール」という用語は、「芳香族(aromatic)」という用語と同義である。好適な置換基としては、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、N02及びCOOHが挙げられる。好ましくは、アリール基は置換されていてもよいフェニル基である。
【0038】
本明細書中で用いられる場合、「アルケニル」という用語は、分岐していても分岐していなくてもよく、(単もしくは多)置換されていても非置換であってもよい、1以上の炭素-炭素二重結合を含有する基をいう。好ましくは、アルケニル基はC2-20アルケニル基、より好ましくはC2-15アルケニル基、さらに好ましくはC2-12アルケニル基であり、又は好ましくはC2-6アルケニル基、より好ましくはC2-3アルケニル基である。好適な置換基としては、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、N02及びCOOHが挙げられる。「アルケニレン」という用語は、適宜解釈されるべきである。
【0039】
本明細書中で用いられる場合、「アルキニル」という用語は、分岐していても分岐していなくてもよく、(単もしくは多)置換されていても非置換であってもよい、1以上の三重結合を含有する炭素鎖をいう。好ましくは、アルキニル基はC2-20アルキニル基、より好ましくはC2-15アルキニル基、さらに好ましくはC2-12アルキニル基であり、又は好ましくはC2-6アルキニル基もしくはC2-3アルキニル基である。好適な置換基としては、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、N02及びCOOHが挙げられる。「アルキニレン」という用語は、適宜解釈されるべきである。
【0040】
本明細書中で用いられる場合、「発色団」という用語は、光を吸収し発色を起こす任意の官能基をいう。典型的には、この用語は、少なくとも2つのエネルギー状態(比較的低いエネルギーの基底状態、及び放射線スペクトルの特定領域からの光エネルギーの吸収により上がる励起状態)で存在し得る関連原子の基をいう。しばしば、関連原子の基は非局在電子を含む。
【0041】
式Iの化合物では、p、q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4である。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、YはC1-10アルキレン基、C2-10アルケニレン基又はC2-10アルキニレン基である。
【0043】
好ましい実施形態において、WはOである。
【0044】
より好ましくは、YはC1-12アルキレン基、より好ましくはC1-10アルキレン基、さらにより好ましくはC1-6アルキレン基及びなおより好ましくはCH2CH2である。
【0045】
好ましくは、mは1であり、Zはアルキレン基、より好ましくはC1-12アルキレン基、なおより好ましくはC1-10アルキレン基、さらにより好ましくはC1-6アルキレン基である。より好ましくは、ZはCH2基である。
【0046】
好ましくは、R5及びR6の一方はHであり、もう一方はH、CO(CH2)jQl又はC=S(NH)(CH2)kQ2から選択されるか、あるいはR5、R6及びそれらが結合した窒素が一緒になって、
【0047】
【化11】

【0048】
を形成する。
【0049】
1つの好ましい実施形態において、Lは下から選択される:CH2NH2、CH2NHCOCH2CH2COOH、
【0050】
【化12】

【0051】
好ましくは、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH又は保護基P1から選択される。
【0052】
より好ましくは、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH又はブチルオキシカルボニル(Boc)保護基から選択される。
【0053】
好ましくは、p、q及びrはそれぞれ独立して1又は2である。
【0054】
1つの好ましい実施形態において、p、q及びrは全て1に等しい。
【0055】
他の好ましい実施形態において、p、q及びrは全て2に等しい。
【0056】
好ましくは、R7、R8及びR9は全てHである。
【0057】
1つの特に好ましい実施形態において、X1、X2及びX3は同一であり、全てが
【0058】
【化13】

【0059】
(式中、R2及びR3はそれぞれ独立してH又はBoc保護基を示す)である。
【0060】
1つの好ましい実施形態において、nは0又は1である。
【0061】
より好ましい実施形態において、nは0である。
【0062】
より好ましい実施形態において、本発明の化合物は式Ia又はIbのいずれかである。
【0063】
【化14】

【0064】
より好ましくは、X1及びX3は同一であり、両方が
【0065】
【化15】

【0066】
(式中、R2及びR3はそれぞれ独立してH又はBoc保護基を示す)である。
【0067】
1つの特に好ましい実施形態において、本発明の化合物は下記から選択される:
【0068】
【化16】

【0069】
【化17】

【0070】
本発明の1つの好ましい実施形態は、式Ieの化合物又はその薬学的に許容される塩に関する:
【0071】
【化18】

【0072】
[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【0073】
【化19】

【0074】
(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7e、R8e及びR9eはそれぞれ独立して存在しないか、又はアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
p、q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
Lは(Z)mNR5R6
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【0075】
【化20】

【0076】
から選択される)を示すか、
あるいは、R5、R6及びそれらが結合した窒素が一緒になって、
【0077】
【化21】

【0078】
を形成する}を示す]。
【0079】
当業者は、R8e及びR9eが存在する場合、q及びrはそれぞれ独立して1、2又は3であり得、一方R7eが存在する場合、pは1、2、3又は4であり得ることを理解するだろう。
【0080】
好ましくは、式Ieの化合物では、R7e、R8e及びR9eは存在しない。
【0081】
本発明の他の態様は、式Ifの化合物又はその薬学的に許容される塩に関する:
【0082】
【化22】

【0083】
(式中、X1、X2、X3、p、q、r及びnは式Iの化合物について上記本明細書中で定義されたものを示し;
A1、A2及びA3はそれぞれ独立してアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上のさらなる置換基で任意に置換されたフェニル基を示し;
Lfはリンカー基、好ましくはLについて上記で定義されたものを示す)。
【0084】
X1、X2、X3、p、q、r及びnの好ましい定義は、式Iの化合物について上記本明細書中で定義されたものである。
【0085】
好ましくは、A1、A2及びA3は同一である。
【0086】
(接合体)
本発明の2番目の態様は、積荷部分に連結された上記で定義された式I、Ie又はIfの化合物を含む接合体に関する。
【0087】
好ましいX1-3、Y、Z、R1-9、N、j、k、l、p、q、r、n基は、該1番目の態様について上記で定義されたものである。
【0088】
1つの実施形態において、接合体は上記で定義された式Ic又はIfの化合物と積荷部分との反応生成物を含む。
【0089】
積荷部分は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、生物学的活性化合物、診断剤又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0090】
積荷部分は、直接的又は間接的に担体部分に連結され得る。積荷部分が担体に間接的に連結された実施形態において、連結は、スルフヒドリルもしくはカルボキシル基のような中間の結合基、又は任意のより大きな基によるものであり得、そのような連結基は全て、本明細書中では以下に論述するようにリンカー部分として言及されている。好ましくは、担体と積荷部分とは直接的に連結される。
【0091】
好適なオリゴヌクレオチド積荷部分の例としては、遺伝子、遺伝子フラグメント、DNAの配列、cDNA、RNA、ヌクレオチド、ヌクレオシド、複素環ベース、合成及び非合成の、センスもしくはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ヌクレアーゼ耐性骨格等を持つものを含む)又は放射性標識を含有する上記の任意のものであって、細胞に送達されるかあるいは細胞からその外部に送達されることが望まれるものが挙げられる。好ましくは、オリゴヌクレオチド積荷部分は遺伝子又は遺伝子フラグメントである。
【0092】
好適なタンパク質又はペプチド積荷部分の例としては、抗体及びそのフラグメント;サイトカイン及びその誘導体又はフラグメント(例えばインターロイキン(IL)及び特にそのIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11及びIL-12サブタイプ);コロニー刺激因子(例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子(α及びβ型)、マクロファージコロニー刺激因子(CSF-1としても知られる));ヘモタンパク質(例えばエリスロポエチン、ヘモタンパク質-α及びkit-lignd(幹細胞因子又はSteel因子としても知られる));インターフェロン(IFNS)(例えばIFN-α、IFN-β及びIFN-γ);増殖因子及び二機能性増殖調節因子(例えば上皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、形質転換成長因子(α及びβ型)、アンフィレギュリン(amphiregulin)、ソマトメジン-C、骨成長因子、線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子、ヘパリン結合性増殖因子及び腫瘍増殖因子);分化因子等(例えばマクロファージ分化因子、分化誘導因子(DIF)及び白血病抑制因子);活性化因子(例えば血小板活性化因子及びマクロファージ活性化因子);ヘパリン及びプロテアーゼを含有する線維素溶解性/抗血液凝固剤のような凝固因子並びにそれらのプロ因子(例えば第VII、VIII、IX、X、XI及びXII凝固因子、抗トロンビンIII、プロテインC、プロテインS、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、組織プラスミノゲン活性化因子、フィブリノゲン及びヒルジン);ペプチドホルモン(例えばインスリン、成長ホルモン、ゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン及びカルシトニン);スーパーオキシドジムスターゼ、グルコセレブロシダーゼ、アスパラギナーゼ及びアデノシンデアミナーゼのような酵素、ワクチン又はワクチン抗原(例えばB型肝炎ワクチン、マラリアワクチン、メラノーマワクチン及びHIV-1ワクチンのような);転写因子及び転写調節物質のような、タンパク質、ペプチド並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0093】
好適な非ヌクレオチド/タンパク質性生物学的活性積荷部分の例としては、細胞毒性薬剤、抗新生物剤、降圧薬、心保護剤、抗不整脈薬、ACE阻害薬、抗炎症薬、利尿薬、筋弛緩薬、局部麻酔薬、ホルモン、コレステロール低下薬、抗凝固薬、抗うつ薬、精神安定薬、神経遮断薬、麻薬性又は解熱性鎮痛薬のような鎮痛薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬、静菌薬、CNS活性剤、抗痙攣薬、抗不安薬、制酸薬、麻薬、抗生物質、呼吸剤、抗ヒスタミン薬、免疫抑制薬、免疫活性化剤、栄養添加物、鎮咳薬、診断剤、催吐薬及び制吐薬、炭水化物、グリコサミノグリカン(glycosoaminoglycan)、糖タンパク質及び多糖類;脂質(例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン及びそれらの誘導体);スフィンゴシン;ステロイド;ビタミン;ランチビオティック(lantibiotic)を含む抗生物質;静菌性及び殺菌性剤;抗真菌薬、駆虫薬及び単細胞病原体を含む感染体に対して効果的な他の薬剤;小エフェクター分子(ノルアドレナリン、αアドレナリン作動性受容体リガンド、ドーパミン受容体リガンド、ヒスタミン受容体リガンド、GABA/ベンゾジアゼピン受容体リガンド、セロトニン受容体リガンド、ロイコトリエン及びトリヨードチロニンのような);細胞毒性薬剤(ドキソルビシン、メトトレキセート及びそれらの誘導体のような)が挙げられる。
【0094】
1つの好ましい実施形態において、積荷部分はタンパク質、ペプチド、抗体及び薬剤から選択される。
【0095】
他の好ましい実施形態において、積荷部分は、通常の抗体に強く結合するバクテリア由来のタンパク質である、プロテインAである。
【0096】
以前の研究により、HIV-1 TATのタンパク質導入ドメイン及びブドウ球菌プロテインAのBドメインを含有する融合タンパク質は抗体を哺乳動物細胞中に内部移行するのに用いられ得ることが示された(Mie et al, Biochemical and Biophysical Research Communications 310 (2003); 730-734)。
【0097】
好ましくは、式Iの化合物は、市販の(天然)プロテインAに、プロテインAのリジンNH2基を通して連結される。
【0098】
1つの好ましい実施形態において、本発明の接合体は、タンパク質と上記の式Ic[式中、L’は(Z)mNR5R6{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【0099】
【化23】

【0100】
から選択される)を示す}を示す]で表される化合物との反応生成物である。
【0101】
本発明の1つの特に好ましい実施形態において、接合体はタンパク質(例えばプロテインAのような)と上記の式Ic[式中、L’は(Z)mNR5R6{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立して、
【0102】
【化24】

【0103】
を示す)を示す}を示す]で表される化合物との反応生成物である。
【0104】
もう1つの好ましい実施形態において、システイン残基は、該式Icの化合物に接合し得るようにタンパク質中へと操作され得る。システイン修飾タンパク質の調製についての更なる詳細は、Neisler et al(Bioconjugate Chem. 2002, 13, 729-736)で見られ得る。
【0105】
好ましくは、積荷部分は該式I、Ie又はIfの化合物のL基に共有結合する。
【0106】
1つの好ましい実施形態において、積荷部分は担体部分に直接的に連結される。
【0107】
別の好ましい実施形態において、積荷部分はリンカー部分を用いて担体部分に間接的に連結される。
【0108】
直接連結は、ヒドロキシ、カルボキシ又はアミノ基のような積荷部分上の任意の都合のよい官能基を通してなされ得る。間接連結は、連結部分を通してなされる。好適な連結部分としては、二官能性及び多官能性アルキル、アリール、アラルキル又はペプチド部分、アルキル、アリール又はアラルキルアルデヒド酸エステル及び無水物、マレイミド安息香酸誘導体、マレイミドプロピオン酸誘導体及びスクシンイミド誘導体のようなスルフヒドリル又はカルボキシル基が挙げられ、臭化もしくは塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、スクシンイミジルエステル又はスルホン酸ハライド等由来であり得る。式Iの化合物と積荷部分との間に共有結合を形成するのに用いられるリンカー部分上の官能基は、例えばアミノ、ヒドラジノ、ヒドロキシル、チオール、マレイミド、カルボニル及びカルボキシル基等であり得る。リンカー部分は、リンカー部分がそれを通して式Iの化合物に結合するシステイン残基を任意に含む、1ないし4個のアミノ酸残基の短配列を含み得る。あるいは式Iの化合物と積荷部分とは、ロイシンジッパー、二量体化ドメイン又はアビジン/ビオチンリンカーにより連結され得る。
【0109】
1つの好ましい実施形態において、積荷部分は組換え抗体、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、単鎖Fv、diabody、ジスルフィド結合されたFv、単抗体ドメイン及びCDRから選択される。
【0110】
本明細書中で用いられる場合、「CDR」又は「相補性決定領域(complementary determining region)」という用語は、一緒になって抗原結合部位を形成する、重鎖からの3ループ及び軽鎖からの3ループから成る、抗体分子の超可変領域をいう。一例として、抗体はHerceptin、Rituxan、Theragyn(Pemtumomab)、Infliximab、Zenapex、Panorex、Vitaxin、Protovir、EGFR1又はMFE-23から選択され得る。1つの好ましい実施形態において、積荷部分はFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、単鎖Fv又は任意の他の抗体誘導型から選択される遺伝子操作フラグメントである。
【0111】
通常、「Fabフラグメント」という用語は、免疫グロブリン分子のパパイン加水分解により(Fc及びFc’フラグメントと共に)得られるタンパク質フラグメントをいう。それは、隣接重鎖(Fdフラグメント)のN末端部位にジスルフィド結合により連結された1つのインタクト軽鎖から成る。2つのFabフラグメントが各免疫グロブリン分子から得られ、各フラグメントが1つの結合部位を含有する。本発明において、Fabフラグメントは適切なDNA配列の遺伝子発現により調製され得る。
【0112】
通常、「F(ab’)2」フラグメントという用語は、免疫グロブリン分子のペプシン加水分解により(pFc’フラグメントと共に)得られるタンパク質フラグメントをいう。それは、ペプシン攻撃部位よりN末端側の免疫グロブリン分子部分から成り、Fcフラグメントの短部分(ヒンジ領域)でジスルフィド結合により結合された両方のFabフラグメントを含有する。1つのF(ab’)2フラグメントが各免疫グロブリン分子から得られ、それは2つの抗原結合部位を含有するが、補体固定化部位は含有しない。本発明において、F(ab’)2フラグメントは適切なDNA配列の遺伝子発現により調製され得る。
【0113】
本明細書中で用いられる場合、「Fvフラグメント」という用語は、1つの軽鎖及び1つの重鎖の様々な部分から成る、免疫グロブリン分子のFabフラグメントのN末端部分をいう。単鎖Fv(約30KDa)は、全長抗体由来の人工結合分子であるが、抗原を認識するのに必要な最小部分を含有する。
【0114】
他の好ましい実施形態において、積荷部分は合成もしくは天然ペプチド、増殖因子、ホルモン、ペプチドリガンド、炭水化物又は脂質である。
【0115】
積荷部分は、高い親和性及び特異性で標的抗原に結合するように、設計され、コンビナトリアルライブラリーから選択され得る。典型的な親和性は、10-6ないし10-15M Kdの範囲内である。積荷部分に存在する機能性アミノ酸残基は、可能であれば積荷部分の性質を変えること無しに、部位特異的突然変異誘発法により変えられ得る。そのような変化の例としては、任意の遊離表面チオール含有残基(システイン)をセリン又はアラニンへ変異すること、リジン及びアルギニンをアスパラギン及びヒスチジンへ変化させること、並びにセリンをアラニンへ変化させることが挙げられる。
【0116】
本発明の他の実施形態は、
(i)式Icの化合物又はその薬学的に許容される塩
【0117】
【化25】

【0118】
[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【0119】
【化26】

【0120】
(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
L’は(Z)mNR5R6
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【0121】
【化27】

【0122】
から選択される)を示す}を示す]
と、
(ii)タンパク質、ペプチド、抗体又は薬剤から選択される積荷部分、
との反応生成物を含む接合体を提供する。
【0123】
好ましいX1-3、Y、Z、R1-9、N、j、k、l、p、q、r、n基は該1番目の態様について上記で定義されたものである。
【0124】
本発明の他の態様は、式Idの化合物又はその薬学的に許容される塩に関する:
【0125】
【化28】

【0126】
[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【0127】
【化29】

【0128】
(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
L”は-(Z)mNR5-
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5はH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【0129】
【化30】

【0130】
から選択される)を示す}を示し;
Gは積荷部分を示す]。好ましくは、積荷部分は上記本明細書中で定義されたものである。
【0131】
本発明の他の態様は、式Igの化合物に関する:
【0132】
【化31】

【0133】
(式中、A1、A2及びA3、X1、X2、X3、L”、G、p、q、r並びにnは上記本明細書中で定義されたものを示す)。
【0134】
好ましいX1-3、Y、Z、R1-9、N、j、k、l、p、q、r、n基は、該1番目の態様において上記で定義されたものである。
【0135】
好ましくは、本発明のこの実施形態において、L”は-(Z)mNHである。
【0136】
(送達系)
本発明の他の態様は、担体部分に連結された薬剤部分を含む送達系に関し、該担体部分は上記で定義された式I、Ie又はIfの化合物である。
【0137】
1つの実施形態において、送達系は上記で定義された式I、Ie又はIfの化合物と薬剤部分との反応生成物を含む。
【0138】
好ましくは、送達系はそのインタクト状態において治療的に有効である。
【0139】
好ましくは、薬剤部分は好適な積荷部分として上記本明細書中でリストアップされたものから選択される。
【0140】
より好ましくは、薬剤部分は細胞毒性薬剤由来である。
【0141】
より好ましくは、薬剤部分はDNA損傷剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍性抗生物質、天然産物及びそれらの類似体、ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNA挿入剤、DNAクリーバー(DNA cleaver)、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン、ビンカ薬、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、プテリジン薬、diynene、ポドフィロトキシン、白金含有薬、分化誘導物質及びタキサンから選択される。
【0142】
さらに好ましくは、薬剤部分はメトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、(オロモウシン、ロスコビチン及びbohemineのような)三置換プリン、フラボピリドール、スタウロスポリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、leurosine、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシン D、マイトマイシン A、carninomycin、アミノプテリン、tallysomycin、ポドフィロトキシン(及びその誘導体)、エトポシド、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、パクリタキセル、ドセタキセル、タキソテールレチノイン酸、酪酸、アセチルスペルミジン、タモキシフェン、イリノテカン及びカンプトセシンから選択される。
【0143】
1つの好ましい実施形態において、薬剤部分は担体部分に直接的に連結される。
【0144】
他の好ましい実施形態において、薬剤部分はリンカー部分を用いて担体部分に間接的に連結される。
【0145】
他の好ましい実施形態において、各担体部分は1より多い薬剤部分を有する。
【0146】
各担体部分が1より多い薬剤部分を有する1つの好ましい実施形態において、薬剤部分は異なる。
【0147】
各担体部分が1より多い薬剤部分を有する1つの好ましい実施形態において、各薬剤部分はリンカー部分を用いて担体部分に連結される。1つの特に好ましい実施形態において、各薬剤部分は同一のリンカー部分により担体部分に連結される。もう1つの実施形態において、各薬剤部分は異なるリンカー部分により担体部分に連結される。
【0148】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、送達系はターゲティング部分をさらに含み得る。ターゲティング部分は、薬剤部分が機能するのに好ましい特定の細胞型へと送達系を導き得る。従ってターゲティング部分は、薬剤又は送達系の生体自然分布を特定の細胞型へバイアスをかけるアドレス体系(address system)として働く。ターゲティング部分は、薬剤部分に、あるいは担体部分に結合され得る。
【0149】
1つの好ましい実施形態において、ターゲティング部分は担体部分に直接的に連結される。
【0150】
他の好ましい実施形態において、ターゲティング部分はリンカー部分を用いて担体部分に間接的に連結される。
【0151】
直接連結は、ヒドロキシ、カルボキシ又はアミノ基のようなターゲティング部分上の任意の都合のよい官能基を通してなされ得る。間接連結は、連結部分を通してなされる。好適な連結部分としては、二官能性及び多官能性アルキル、アリール、アラルキル又はペプチド部分、アルキル、アリール又はアラルキルアルデヒド酸エステル及び無水物、(マレイミド安息香酸誘導体、マレイミドプロピオン酸誘導体及びスクシンイミド誘導体のような)スルフヒドリル又はカルボキシル基が挙げられ、臭化もしくは塩化シアヌル、カルボニルジイミダゾール、スクシンイミジルエステル又はスルホン酸ハライド等由来であり得る。ターゲティング部分への共有結合を形成するのに用いられるリンカー部分上の官能基は、2以上の、例えばアミノ、ヒドラジノ、ヒドロキシル、チオール、マレイミド、カルボニル及びカルボキシル基等であり得る。リンカー部分は、リンカー部分がそれを通してターゲティング部分に結合するシステイン残基を任意に含む、1ないし4個のアミノ酸残基の短配列を含有し得る。あるいはターゲティング部分は、ロイシンジッパー、二量体化ドメイン又はアビジン/ビオチンリンカーにより連結され得る。
【0152】
(接合体を調製するプロセス)
本発明のさらなる態様は接合体を調製するプロセスに関し、該プロセスは式Icの化合物又はその薬学的に許容される塩
【0153】
【化32】

【0154】
[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【0155】
【化33】

【0156】
(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
p、q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
L’は(Z)mNR5R6
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、
【0157】
【化34】

【0158】
から選択される)を示す}を示す]を、タンパク質、ペプチド、抗体及び薬剤から選択される積荷部分と反応させることを含む。
【0159】
(式Iの化合物を調製するプロセス)
本発明の他の態様は、上記で定義された式Iの化合物を調製するプロセスに関し、該プロセスは、
(i)式IIの化合物をTsOCH2CH2NHBocと反応させ、式III(式中、L'''は(Z)mNR5R6を示し、R5及びR6はNH2保護基を示す)の化合物を形成する工程;
【0160】
【化35】

【0161】
(ii)該式IIIの化合物からBoc基を除去し、式IVの化合物を形成する工程;及び
(iii)該式IVの化合物を式Vの化合物と反応させ、式Iの化合物を形成する工程を含む。
【0162】
【化36】

【0163】
参照の簡略化のため、置換基R7、R8及びR9を上記の中間体II、III及びIVの化学式から省略した。
【0164】
あるいは、該式Iの化合物は、
(i)式IIの化合物をClCH2CNと反応させ、式VIの化合物を形成する工程;
【0165】
【化37】

【0166】
(ii)該式VIの化合物をPd/H2/炭素と反応させ、式IVの化合物を形成する工程;及び
【0167】
【化38】

【0168】
(iii)該式IVの化合物を式Vの化合物と反応させ、式Iの化合物を形成する工程を含むプロセスにより調製され得る。
【0169】
【化39】

【0170】
好ましくは、該式IIの化合物は、
(i)式VIの化合物を式VIIの化合物と反応させる工程、
【0171】
【化40】

【0172】
(ii)工程(i)から得られた生成物を式IIの化合物に変換する工程により調製される。
【0173】
好ましくは、該式VIの化合物と該式VIIの化合物との間の反応は、パラジウム触媒、より好ましくはPd(PPh3)4の存在下で行われる。
【0174】
上記のプロセス工程は、式Ifの化合物の調製に同様に適用できる。
【0175】
(医薬組成物)
本発明の他の態様は、1以上の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤又は担体と混合された、上記で定義された化合物又は接合体を含有する医薬組成物に関する。本発明の化合物及び接合体(それらの薬学的に許容される塩、エステル及び薬学的に許容される溶媒和物を含む)は、単独で投与され得るが、特にヒトの治療において、それらは一般的に、薬学的担体、賦形剤又は希釈剤との混合物で投与される。医薬組成物は、ヒト及び動物医薬中でヒト又は動物に使用され得る。
【0176】
本明細書中に記載の様々な異なる型の医薬組成物のためのそのように好適な賦形剤の例は、A Wade及びPJ Weller編集の、「Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd Edition, (1994)」で見られ得る。
【0177】
治療用に許容される担体又は希釈剤は医薬分野で周知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載される。
【0178】
好適な担体の例としては、乳糖、澱粉、ブドウ糖、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。好適な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール及び水が挙げられる。
【0179】
医薬担体、賦形剤又は希釈剤の選択肢は、意図された投与経路及び標準的薬務を考慮して選択され得る。医薬組成物は、担体、賦形剤もしくは希釈剤として、又はそれらに加えて、任意の好適な結合剤、潤滑剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を含有し得る。
【0180】
好適な結合剤の例としては、澱粉、ゼラチン、ブドウ糖のような天然糖、無水ラクトース、フリーフローラクトース、β-ラクトース、コーンシロップ、(アカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウムのような)天然及び合成ゴム、カルボキシメチルセルロース並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0181】
好適な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
【0182】
防腐剤、安定剤、色素及び香料剤でさえ、医薬組成物中に供与され得る。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化剤及び懸濁化剤も用いられ得る。
【0183】
(塩/エステル)
本発明の化合物は、塩又はエステルとして、特に薬学的に許容される塩又はエステルとして存在し得る。
【0184】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩としては、その好適な酸付加又は塩基性塩が挙げられる。好適な医薬塩の概説は、Berge et al, J Pharm Sci, 66, 1-19 (1977)で見られ得る。塩は例えば、鉱酸(例として硫酸、リン酸もしくはハロゲン化水素酸)のような強無機酸で;酢酸のような無置換もしくは(例としてハロゲンにより)置換された1ないし4個の炭素原子のアルカンカルボン酸のような強有機カルボン酸で;飽和もしくは不飽和ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸もしくは四フタル酸)で;ヒドロキシカルボン酸(例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸もしくはクエン酸)で;アミノ酸(例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸)で;安息香酸で;又は(メタンもしくはp-トルエンスルホン酸のような)無置換もしくは(例えばハロゲンにより)置換された(C1〜C4)-アルキル-もしくはアリール-スルホン酸のような有機スルホン酸で形成される。
【0185】
エステルは、エステル化される官能基によって、有機酸又はアルコール/水酸化物のいずれかを用いて形成される。有機酸としては、酢酸のような無置換もしくは(例えばハロゲンにより)置換された1ないし12個の炭素原子のアルカンカルボン酸のようなカルボン酸;飽和もしくは不飽和ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸もしくは四フタル酸);ヒドロキシカルボン酸(例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸もしくはクエン酸);アミノ酸(例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸);安息香酸;又は(メタンもしくはp-トルエンスルホン酸のような)無置換もしくは(例えばハロゲンにより)置換された(C1〜C4)-アルキルもしくはアリールスルホン酸のような有機スルホン酸が挙げられる。好適な水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムのような無機水酸化物が挙げられる。アルコールとしては、無置換もしくは(例えばハロゲンにより)置換されていてもよい、1ないし12個の炭素原子のアルカンアルコールが挙げられる。
【0186】
(光学異性体/互変異性体)
前述の本発明の全ての態様において、本発明は式Iの化合物の適当な全ての光学異性体及び互変異性体を含む。当業者は、光学的性質(1以上のキラル炭素原子)又は互変異性の性質を有する化合物を認識する。相当する光学異性体及び/又は互変異性体は、当該分野で公知の方法により単離/調製され得る。
【0187】
(立体及び幾何異性体)
本発明のいくつかの化合物は立体異性体及び/又は幾何異性体として存在し得る。例えばそれらは、1以上の不斉中心及び/又は幾何学中心を持ち得、よって2以上の立体異性体及び/又は幾何学体で存在し得る。本発明は、それらの化合物の個々の立体異性体及び幾何異性体の全て、並びにそれらの混合物の使用を意図する。該型が適切な機能活性(同程度である必要はないが)を保持する限り、添付の特許請求の範囲において用いられる用語はこれらの型を包含するものとする。
【0188】
本発明はまた、化合物又はその薬学的に許容される塩の全ての好適な同位体バリエーションをも含む。本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩の同位体バリエーションとは、同じ原子番号を持つが通常自然界で見られる原子量とは異なる原子量を持つ原子により、少なくとも1つの原子が置換されているものとして定義される。薬剤及びその薬学的に許容される塩に組込まれ得る同位元素の例としては、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clのような水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位元素が挙げられる。薬剤及びその薬学的に許容される塩のある種の同位体バリエーション(例えば3H又は14Cのような放射性同位体が組込まれたもの)は、薬剤及び/又は基質の組織分布の研究に有用である。トリチウム標識(すなわち3H)及び炭素14(すなわち14C)同位元素は、それらの調製及び検出能の容易さのため、特に好ましい。さらに、重水素(すなわち2H)のような同位元素を持つ置換基は、例えばin vivoでの半減期の増加又は必要用量の減少といったより高い代謝的安定性からもたらされるある種の治療上の利点を提供し得、従っていくつかの状況で好まれ得る。本発明の薬剤及び本発明のその薬学的に許容される塩の同位体バリエーションは通常、好適な試薬の適切な同位体バリエーションを用いた従来の手法により調製され得る。
【0189】
(溶媒和物)
本発明はまた、本発明の化合物の溶媒和型の使用を含む。特許請求の範囲において用いられる用語はこれらの型を包含する。
【0190】
(多形体)
本発明はさらに、本発明の化合物及び/又は接合体の様々な結晶型、多形型及び(無)水和型に関する。化学化合物が、そのような化合物の合成調製で使用される溶媒からの精製及び/又は単離の方法をわずかに変えることにより、そのような型のいずれかで単離され得ることは、製薬業界でよく確立されている。
【0191】
(プロドラッグ)
本発明はさらに、プロドラッグ型の本発明の化合物を含む。そのようなプロドラッグは典型的には、ヒト又は哺乳動物対象への投与時に修飾が逆戻りし得るように、1以上の適切な基が修飾された式Iの化合物である。in vivoでの逆戻りを実行するためにそのようなプロドラッグと共に第2の試薬を投与することは可能であるが、そのような逆戻りは通常、対象に天然に存在する酵素により実行される。そのような修飾の例としては、逆戻りがエステラーゼ等により実行され得るエステル(例えば上記の任意のもの)が挙げられる。他のそのような機構は当業者に周知である。
【0192】
(投与)
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、膣内、非経口、筋肉内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、気管支内、皮下、皮内、静脈内、経鼻、口腔又は舌下の投与経路に適合し得る。
【0193】
経口投与のため、圧縮錠、ピル、錠剤、gellules、ドロップ及びカプセルが特に用いられる。好ましくはこれらの組成物は、用量当り1ないし250mgの、より好ましくは10-100mgの有効成分を含有する。
【0194】
他の投与型は溶液又は乳濁液を含有し、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、皮内、腹腔内又は筋肉内に注射され得、無菌又は滅菌可能な溶液から調製される。本発明の医薬組成物はまた、坐剤、膣坐薬、懸濁液、乳濁液、ローション、軟膏剤、クリーム、ゲル、噴霧、溶液又は撒布剤型であり得る。
【0195】
経皮投与のもう1つの方法は、皮膚パッチの使用による。例えば、有効成分はポリエチレングリコール又は流動パラフィンの水性乳剤から成るクリームに組込まれ得る。有効成分はまた、白色ワックス又は白色軟パラフィンベースから成る軟膏剤に、必要とされ得る安定剤及び防腐剤と共に1ないし10重量%の間の濃度で組込まれ得る。
【0196】
注射型は、用量あたり10〜1000mgの間の、好ましくは10〜250mgの間の有効成分を含有し得る。
【0197】
組成物は、単位用量型(すなわち単位用量、又は単位用量の多ユニットもしくはサブユニットを含有する別々の部分の型)で処方され得る。
【0198】
(用量)
当業者は、過度の実験をしなくとも、対象に投与すべき本発明の組成物の1つの適切な用量を容易に決定し得る。典型的には、医師は個々の患者に最も適した実際の用量を決定し、それは使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝的安定性及び作用の長さ、年齢、体重、総体的な健康、性別、食習慣、投与の形態及び時間、排泄速度、薬の組み合わせ、特定の状態の重症度並びに個々の進行中の治療を含む様々な因子に依存する。本明細書中で開示される用量は、平均的な症例の典型例である。より高い又はより低い用量範囲が効果的である個々の場合が当然あり得、そのような用量は本発明の範囲内である。
【0199】
必要に応じて、薬剤は0.01ないし30mg/kg体重(0.1ないし10mg/kg、より好ましくは0.1ないし1mg/kg体重のような)の用量で投与され得る。典型的な実施形態では、10ないし150mg/日の1以上の用量が患者に投与される。
【0200】
(併用)
特に好ましい実施形態において、本発明の1以上の化合物及び/又は接合体は、1以上の他の治療効果のある薬剤(例えば市販の既存薬)との併用で投与される。そのような場合には、本発明の化合物は1以上の他の治療効果のある薬剤と連続的に、同時に又は経時的に投与され得る。
【0201】
薬剤は通常、併用されるとより効果的である。特に併用治療は、主要な毒性、作用機構及び耐性機構の重複を避けるために望ましい。さらに、そのような投与間の時間間隔を最短にし、最大の耐用量でほとんどの薬剤を投与することも望ましい。化学療法薬を併用する主な利点は、生化学的相互作用を通して付加的な又は可能性のある相乗効果を促進し得ること、及びそうでなければ単剤での初期の化学療法に応答していたであろう細胞中の耐性の発生を減少し得もすることである。
【0202】
一例として、多数の併用薬が癌及び白血病の現行の治療で使用されている。医療行為のより広範囲の概説は、E. E. Vokes及びH. M. Golomb編、Springer著の「Oncologic Therapies」で見られ得る。
【0203】
要約すると、本発明は設計されたSMCが細胞膜を横切る小分子の効率的な輸送体であることを示す。本明細書中に記載のSMC及びその誘導体はin vitro生物学、特にペプチド、タンパク質及びオリゴヌクレオチドの細胞への輸送において、多くの潜在的な用途を持つ。SMC-タンパク質の伝達は形質移入されたDNAが依存する細胞における転写及び翻訳調節機構を迂回するので、タンパク質の細胞への直接輸送は分子及び細胞生物学の多くの態様を変形するであろう。SMCを用いて、細胞中のタンパク質の効果が直接的に判定され得る。適用されるSMC-タンパク質の量は細かく調節可能なので、その技術はまた効果的な生理的濃度の解明をも促進する。新薬発見に向け、SMCの生産の容易さ及び拡張性により、様々な機能アッセイにおいて生物学的活性のためのSMC-ペプチド又はSMC-オリゴヌクレオチドライブラリーのハイスループットスクリーニングが可能となる。これらの膜タグはまた、タンパク質、ペプチド及び小分子の特定部位又は生体中への輸送を促進するという、in vivoでの用途も持つ。例えば癌治療の際、腫瘍の約70%はp53不足である。SMCを用いてこれらの腫瘍に活性なp53タンパク質を導入し戻すことにより、それらの増殖を止め、正常では癌を抑止するプログラムされた細胞死経路を活性化することが可能となる。SMCはまた、結核又はヒトパピローマウイルスのような病原体から免疫反応性抗原を送達する手段として、ワクチン開発においても用途を持つ。SMCは科学者が研究の間に直面する多くの困難を打開する可能性を持ち、創薬及び臨床応用のために利用される全く新しい手法に相当するため、SMCの広範囲にわたる利用可能性にはさらなる研究が必要とされる。
【実施例】
【0204】
実施例1
【0205】
【化41】

【0206】
2-メトキシ-4-メチル-フェニルアミン(2)
置換ニトロベンゼン1(3.00g、17.9mmol)及びSnCl2・2H2O(20.2g、89.5mmol)のMeOH(120ml)溶液を3時間還流した。混合物を減圧下で濃縮し、AcOEt及び飽和NaHCO3水溶液に入れた。有機層を飽和NaHCO3水溶液で3回洗浄し、Na2S04で乾燥して2(2.37g、収率95%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ2.27 (s, 3H), 3.84 (s, 3H), 6.56-6.66 (m, 3H). 13C-NMR (CDCl3): δ21.0, 55.4, 111.5, 115.1, 121.2, 128.1, 133.5, 147.4.
【0207】
ブロモ-2-メトキシ-4-メチル-ベンゼン(3)
参考文献; Bambal, R.; Hanzlik, R. P. J. Org. Chem. 1994, 59, 729.
アセトニトリル(20ml)中の臭化第二銅(4.88g、21.8mmol)を、室温でtert-亜硝酸ブチル(2.13ml、17.9mmol)で処理し、窒素雰囲気下、65℃まで昇温した。2(2.24g、16.3mmol)のアセトニトリル(20ml)溶液をゆっくりと加え、さらに15分間攪拌した。溶媒を減圧留去し、シクロヘキサンに入れ、NH3水溶液で3回、水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、フラッシュクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製して3(1.92g、収率59%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ2.32 (s, 3H), 3.86 (s, 3H), 6.64 (dd, J=8.0, 1.4Hz, 1H), 6.72 (d, J=1.4Hz, 1H), 7.39 (d, J=8.0Hz, 1H). 13C-NMR (CDC13): δ21.4, 56.1, 108.3,113.1, 122.5, 132.9, 138.7, 155.6.
【0208】
2,3'-ジメトキシ-4-メチル-ビフェニル(4)
参考文献; Yonezawa, S.; Komurasaki, T.; Kawada, K.; Tsuri, T.; Fuji, M.; Kugimiya, A.; Haga, N.; Mitsumori, S.; Inagaki, M.; Nakatani, T.; Tamura, Y.; Takechi, S.; Taishi, T.; Ohtani, M. J. Org. Chem. 1998, 63, 5831.
3(610 mg、3.03 mmol)のDME(12ml)及びEtOH(3ml)溶液に、3-メトキシ-フェニルボロン酸(553mg、3.64mmol)、2M Na2C03溶液(6ml)及びPd(PPh3)4(176mg、0.152mmol)を加え、窒素雰囲気下、17時間還流した。室温まで冷却後、混合物をヘキサン/AcOEt(1/1)で希釈し、水で3回、鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=2/1)で精製して4(529mg、収率76%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ2.43 (s, 3H), 3.82 (s, 3H), 3.86 (s, 3H), 6.83-6.91 (m, 3H), 7.11-7.15 (m, 2H), 7.25 (d, J=7.6Hz, 1H), 7.34 (t, J=7.6Hz, 1H). 13C-NMR (CDCl3): δ21.6, 55.3, 55.6, 112.3, 115.4, 121.5, 122.1, 127.8, 128.9, 130.6, 138.8, 140.0, 156.4, 159.3.
【0209】
2-(2,3'-ジメトキシ-ビフェニル-4-イルメチル)-イソインドール-1,3-ジオン(6)
4(529mg、2.32mmol)のCC14(48 ml)溶液にNBS(392mg、2.20mmol)及びAIBN(34mg)を加えた。2.5時間還流した後、混合物を0℃まで冷却し、濾過した。溶媒を減圧留去して未精製の5を得、さらに精製することなく用いた。
【0210】
未精製の5及びカリウムフタルイミド(430mg、2.32 mmol)のDMF(7.5ml)溶液を80℃で1.5時間攪拌した。室温まで冷却後、混合物をヘキサン/AcOEt(1/1)で希釈し、水で4回、鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt=3/1)で精製して6(574mg、収率66%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ3.81 (s, 6H), 4.87 (s, 2H), 6.86 (dd, J=8.0, 2.4Hz, 1H), 7.02-7.10 (m, 4H), 7.24-7.29 (m, 2H), 7.71 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H), 7.86 (dd, J=5.4, 3.OHz, 2H). 13C-NMR (CDCl3): δ41.6, 55.2, 55.7, 111.8, 112.6, 115.2, 121.0, 122.0, 123.4, 128.9, 130.2, 131.0, 132.2, 134.0, 137.0, 139.5, 156.6, 159.2, 168.1.
【0211】
2-[2,3'-ビス(2-tert-ブチルオキシカルボニルアミノ-エチルオキシ)-ビフェニル-4-イルメチル]-イソインドール-1,3-ジオン(8)
ジメチルオキシ誘導体6(72mg、1.9mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶解し、0℃でBBr3の1.0Mジクロロメタン溶液(1.0ml)で処理し、放置して室温まで昇温した。一夜攪拌した後、反応混合物を0℃まで冷却し、3mlのMeOHで処理後、溶媒を減圧留去した。残渣をAcOEtに入れ、1N HClで2回、水及び鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt=1/1)で粗精製して7(61mg)を得た。
【0212】
室温で、7(56mg、0.16mmol)、2-tert-ブチルオキシカルボニルアミノ-エタノール(65mg、0.41mmol)及びトリフェニルフォスフィン(106mg、0.41mmol)のTHF(2ml)溶液にDEAD(71mg、0.41mmol)を加え、24時間攪拌した。混合物をAcOEtで希釈し、1M Na2C03で2回洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt=2/1)で精製して8(36mg、収率35%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ1.41 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 3.41 (m, 2H), 3.52 (m, 2H), 3.99-4.05 (m, 4H), 4.73 (br s, 1H), 4.85 (s, 2H), 5.02 (br s, 1H), 6.85 (dd, J=8.0, 2.4Hz, 1H), 7.00-7.12 (m, 4H), 7.24-7.32 (m, 2H), 7.72 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H), 7.86 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H). 13C-NMR (CDCl3): δ28.40, 40.0, 40.1, 41.5, 67.2, 68.2, 113.0, 113.6, 115.7, 121.7, 122.3, 123.5, 129.0, 130.5, 131.0, 132.1, 134.1, 137.2, 139.5, 155.5, 155.8, 155.9, 168.1.
【0213】
2-{2,3'-ビス[2-(N,N'-ビス-Boc-グアニジノ)-エチルオキシ]-ビフェニル-4-イルメチル}-イソインドール-1,3-ジオン(10)
参考文献; Feichtinger, K; Sings, H. L.; Baker, T. J.; Matthews, K.; Goodman, M. J. Org. Chem. 1998, 63, 8432; Feichtinger, K; Zapf, C.; Sings, H. L.; Goodman, M. J. Org. Chem. 1998, 63, 3804.
化合物8(36mg、0.057mmol)をTFA(2ml)に溶解し、室温で2.5時間攪拌した。溶媒を減圧留去して9を得、さらに精製することなく用いた。
【0214】
9のDMF(0.8ml)溶液にN,N-ジ-Boc-N'-トリフルオロメタンスルフォニル-グアニジン(67mg、0.17mmol)及びi-Pr2(Et)N(60μl、0.34mmol)を加え、室温で18時間攪拌した。反応混合物をAcOEtで希釈し、1N HClで3回、水及び鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、分取TLC(ヘキサン/AcOEt=1/1)で精製して10(47mg、収率90%)を得た。
1H-NMR (CDC13): δ1.47 (s, 18H), 1.49 (s, 18H), 3.74-3.86 (m, 4H), 4.04-4.10 (m, 4H), 4.85 (s, 2H), 6.87 (dd, J=8.0, 2.0Hz, 1H), 6.97 (br s, 1H), 7.04 (s, 1H), 7.09 (d, J=7.7Hz, 1H), 7.21 (d, J=7.7Hz, 1H), 7.26-7.31 (m, 2H), 7.71 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H), 7.86 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H), 8.62 (br t, J=5.6Hz, 1H), 8.74 (br t, J=5.1Hz, 1H). 13C-NMR (CDC13): δ28.0, 28.3, 40.1, 40.3, 41.5, 66.3, 66.9, 112.8, 113.3, 115.8, 121.5, 123.0, 123.5, 128.9, 130.3, 131.2, 132.1, 134.1, 137.0, 139.3, 152.9, 153.0, 155.4, 156.38, 156.43, 158.4, 163.30, 163.33, 168.1.
【0215】
2-[2,3'-ビス(2-グアニジノ-エチルオキシ)-ビフェニル-4-イルメチル]-チオウレイド-フルオレセイン(13)
10(22mg、0.024mmol)のEtOH(0.6ml)溶液にヒドラジン一水和物(12μl、0.24mmol)を加え、室温で18時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をジクロロメタンに入れ、沈殿を濾去した。濾液を鹹水で洗浄し、水層をジクロロメタンで3回抽出した。混合した有機層をNa2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去して未精製の11を得、さらに精製することなく用いた。
【0216】
化合物11をDMF(1.0ml)、イソチオシアン酸フルオレセイン異性体I(19mg、0.048mmol)及びi-Pr2(Et)N(17μl、0.096mmol)に溶解し、暗所、室温で20時間攪拌した。反応混合物をAcOEtで希釈し、1N HClで3回、水及び鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を留去した後、残渣をTHF(1.5ml)に溶解し、PS-trisamine(Argonaut Technologies Inc.、4.17mmol/g、20mg)で処理して残留FITCを留去した。室温で15時間激しく攪拌した後、樹脂を濾去し、溶媒を留去して未精製の12を得、TFA(1.5ml)に溶解し、室温で2時間攪拌した。TFAを減圧留去し、残渣を分取C-18カラム(0.1% TFA H2O/アセトニトリル)を用いた逆相HPLCで精製して13(8mg、収率30%)を得た。
1H-NMR (MeOH-d4): δ3.54 (m, 2H), 3.61 (m, 2H), 4.15 (m, 4H), 4.91 (s, 2H), 6.64 (d, J=9.0Hz, 2H), 6.78-6.83 (m, 4H), 6.93 (d, J=7.9Hz, 1H), 7.05-7.35 (m, 9H), 7.81 (d, J=8.2Hz, 1H), 8.22 (s, 1H) MS (MALDI) m/z 774 (calcd), 775 (M+1, found).
【0217】
実施例2
【0218】
【化42】

【0219】
1-ブロモ-2,3-ジメトキシ-4-メチル-ベンゼン(15)
参考文献; Esteban, G; Lopez-Sanchez, M. A.; Martinez, M. E.; Plumet, J. Tetrahedron 1998, 54, 197; Bringmann, G; Gunther, C.; Peters, E.; Peters, K. Tetrahedron 2001, 57, 1253.
窒素雰囲気下、0℃で、ヘキサン中のn-BuLi 1.6M(18.5ml、29.6mmol)を2,3-ジメトキシトルエン(3.00g、19.7mmol)及びTMEDA(2.97ml、19.7mmol)の無水エーテル(50ml)溶液に滴下した。室温で2時間攪拌した後、反応混合物を−78℃まで冷却し、(CBrC12)2(9.64g、29.6mmol)を加えた。10分間攪拌した後、槽を取り外し、放置して室温まで昇温した。反応混合物をエーテルで希釈し、水、1N HClで2回及び鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/ジクロロメタン=5/1)で精製して15(1.62g、収率36%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ2.22 (s, 3H), 3.85 (s, 3H), 3.88 (s, 3H), 6.79 (d, J=8.3Hz, 1H), 7.16 (d, J=8.3Hz, 1H). 13C-NMR (CDC13): δ15.7, 60.4, 60.6, 114.6, 126.7, 127.4, 132.1, 150.4, 152.5.
【0220】
2,3,2',3'-テトラメトキシ-4-メチル-ビフェニル(16)
15(500mg、2.16mmol)のDME(8.7ml)及びEtOH(2.2ml)溶液に、2,3-ジメトキシ-フェニルボロン酸(472mg、2.59mmol)、2M Na2CO3溶液(4.3ml)及びPd(PPh3)4(125mg、0.108mmol)を加え、窒素雰囲気下、18.5時間還流した。室温まで冷却後、混合物をヘキサン/AcOEt(1/1)で希釈し、水で3回、鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン)で精製して16(573mg、収率92%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ2.31 (s, 3H), 3.63 (s, 3H), 3.67 (s, 3H), 3.87 (s, 3H), 3.90 (s, 3H), 6.85 (dd, J=7.6, 1.3Hz, 1H), 6.91-6.94 (m, 3H), 7.07 (t, J=7.9Hz, 1H). 13C-NMR (CDCl3): δ15.9, 55.8, 60.1, 60.4, 60.6, 111.6, 123.3, 123.4, 125.0, 125.7, 130.8, 131.7, 133.0, 146.9, 150.8, 151.3, 152.8.
【0221】
2-(2,3,2',3'-テトラメトキシ-ビフェニル-4-イルメチル)-イソインドール-1,3-ジオン(18)
16(573mg、1.99mmol)のCCl4(42ml)溶液に、NBS(336mg、1.89mmol)及びAIBN(29mg)を加えた。2時間還流した後、混合物を0℃まで冷却し、濾過した。溶媒を減圧留去して未精製の17を得、さらに精製することなく用いた。
【0222】
未精製の17及びカリウムフタルイミド(369mg、1.99mmol)のDMF(6.5ml)溶液を、80℃で1.5時間攪拌した。室温まで冷却後、混合物をヘキサン/AcOEt(1/1)で希釈し、水で5回、鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt=3/1)で精製して18(552mg、収率64%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ3.62 (s, 3H), 3.65 (s, 3H), 3.89 (s, 3H), 3.99 (s, 3H), 4.98 (s, 2H), 6.81 (dd, J=7.6, 1.5Hz, 1H), 6.90-6.93 (m, 2H), 6.98 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.06 (t, J=7.9Hz, 1H), 7.72 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H), 7.86 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H).13C-NMR (CDCl3): δ36.4, 55.8, 60.3, 60.59, 60.63, 111.8, 122.9, 123.1, 123.36, 123.45, 125.9, 129.5, 132.2, 132.5, 132.7, 134.0, 146.9, 151.2, 151.4, 152.8, 168.2.
【0223】
2-[2,3,2’,3’-テトラ(2-tert-ブチルオキシカルボニルアミノ-エチルオキシ)-ビフェニル-4-イルメチル]-イソインドール-1,3-ジオン(21)
参考文献; Lu, T.; Tomezuk, B.; Illig, C. R.; Bone, R.; Soll, R. M. Bioorg. Med. Chem. Lett. 1998, 8, 1595.
テトラメトキシビフェニル誘導体18(250mg、0.557mmol)をジクロロメタン(15ml)に溶解し、0℃でBBr3(6.0ml)の1.0Mジクロロメタン溶液で処理し、放置して室温まで昇温した。一夜攪拌した後、反応混合物を0℃まで冷却し、10mlのMeOHで処理後、溶媒を減圧留去した。残渣をAcOHに注入し、1N HClで2回、水及び鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去して19(248mg)を得、さらに精製することなく用いた。
【0224】
未精製の19(105mg)のDMF(3.0ml)溶液に、Cs2C03(654mg、2.00mmol)及びtert-ブチルN-(2-トシルオキシエチル)-カルバミン酸(526mg、1.67mmol)を加え、窒素雰囲気下、80℃まで加熱した。4時間攪拌した後、さらにCs2C03(654mg、2.00mmol)及びtert-ブチルN-(2-トシルオキシエチル)-カルバミン酸(526mg、1.67mmol)を加えた。さらに15時間攪拌した後、反応混合物をAcOEt及び1N HClに入れた。有機層を1N HClで2回、水及び鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、分取TLC(CHCl3/MeOH=10/1)で精製して20を得、DMF(2ml)に溶解し、無水酢酸(0.5ml)を加えた。80℃で1時間攪拌した後、混合物をAcOEtで希釈し、水で3回、飽和Na2C03、鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、分取TLC(AcOEt/ヘキサン=1/1)で精製して21(38mg、18からの収率16%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ1.38 (s, 9H), 1.42 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.45 (s, 9H), 3.10 (m, 2H), 3.19 (m, 2H), 3.58 (m, 4H), 3.78 (m, 4H), 4.11 (m, 2H), 4.23 (m, 2H), 4.64 (br s, 1H), 4.95 (s, 2H), 5.20 (br s, 1H), 5.44 (br s, 1H), 5.78 (br s, 1H), 6.85 (br d, J=6.7Hz, 1H), 6.93 (br d, J=7.4Hz, 1H), 6.98 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.08 (t, J=7.9Hz, 1H), 7.14 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.73 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H), 7.87 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H).
【0225】
2-{2,3,2',3'-テトラ[2-N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ-エチルオキシ]-ビフェニル-4-イルメチル}-イソインドール-1,3-ジオン(23)
化合物21(38mg、0.040mmol)をTFA(2ml)に溶解し、室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去して22を得、さらに精製することなく用いた。
【0226】
22のDMF(1.0ml)溶液に、N,N-ジ-Boc-N'-トリフルオロメタンスルホニル-グアニジン(94mg、0.24mmol)及びi-Pr2(Et)N(84μl、0.48mmol)を加え、室温で15時間攪拌した。反応混合物をAcOEtで希釈し、1N HClで3回、水及び鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去し、分取TLC(ヘキサン/AcOEt=3/2)で精製して23(45mg、収率74%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ1.36 (s, 9H), 1.41 (s, 9H), 1.44 (s, 9H), 1.45 (s, 18H), 1.48 (s, 27H), 3.45 (m, 4H), 3.88 (m, 8H), 4.16 (m, 2H), 4.39 (m, 2H), 4.98 (s, 2H), 6.83-7.03 (m, 5H), 7.71 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H), 7.86 (dd, J=5.4, 3.0Hz, 2H), 8.46 (br s, 1H), 8.57 (br s, 1H), 8.79 (br s, 1H), 8.89 (br s, 1H).
【0227】
[2,3,2',3'-テトラ(2-グアニジノ-エチルオキシ)-ビフェニル-4-イルメチル]-チオウレイド-フルオレセイン(26)
23(45mg、0.030mmol)のEtOH(0.7ml)溶液にヒドラジン一水和物(15μl、0.30mmol)を加え、室温で16時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をジクロロメタンに入れ、沈殿物を濾去した。濾液を鹹水で洗浄し、水層をジクロロメタンで3回抽出した。混合した有機層をNa2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去して未精製の24を得、さらに精製することなく用いた。
【0228】
化合物24をDMF(1.0ml)、イソチオシアン酸フルオレセイン異性体I(18mg、0.045mmol)及びi-Pr2(Et)N(16μl、0.090mmol)に溶解し、暗所、室温で15時間攪拌した。反応混合物にPS-trisamine(Argonaut Technologies Inc.、4.17mmol/g、25mg)を加えて残留FITCを留去した。室温で30時間激しく攪拌した後、樹脂を濾去し、濾液をAcOEで希釈し、1N HClで3回、水、鹹水で洗浄し、Na2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去して未精製の25を得、TFA(2.0ml)に溶解し、室温で2時間攪拌した。TFAを減圧留去し、残渣を分取C-18カラム(0.1% TFA H20/アセトニトリル)を用いた逆相HPLCで精製して26(9mg、23からの収率20%)を得た。
1H-NMR (MeOH-d4): δ3.34 (m, 4H), 3.69 (m, 4H), 3.94-3.97 (m, 4H), 4.22-4.30 (m, 4H), 4.96 (s, 2H), 6.61 (d, J=8.7Hz, 2H), 6.76-6.78 (m, 4H), 6.90 (d, J=7.3Hz, 1H), 7.04-7.24 (m, 5H), 7.79 (d, J= 8.lHz, 1H), 8.29 (s, 1H). MS (MALDI) m/z 976 (calcd), 977, 978, 979 (found).
【0229】
実施例3
【0230】
【化43】

【0231】
N-{2,3,2',3'-テトラ{2-[N,N'-ビス(tert-ブトキシカルボニル)グアニジノ]-エチルオキシ}-ビフェニル-4-イルメチル}-3-[2-ピリジル)ジチオ]プロピオンアミド(26)
参考文献; Cosimelli, B.; Neri, D.; Roncucci, G. Tetrahedron 1996, 34, 11281; Moriarty, R. M.; Liu, K.; Zhuang, H.; Lenz, D.; Brimfield, A.; Xia, C. Synthetic Comm. 1995, 25, 2763.
23(8mg、0.005mmol)のEtOH(0.5ml)溶液に、ヒドラジン一水和物(3μl、0.06mmol)を加え、室温で17時間攪拌した。溶媒を減圧下で蒸発させた。残渣をジクロロメタンに入れ、沈殿物を濾去した。濾液を鹹水で洗浄し、水層をジクロロメタンで3回抽出した。混合した有機層をNa2S04で乾燥した。溶媒を減圧留去して未精製の24を得、さらに精製することなく用いた。
【0232】
化合物24及びi-Pr2(Et)N(2μl、0.01mmol)のジクロロメタン(0.3ml)溶液に、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸(3mg、0.01mmol)を加え、暗所、室温で24時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、分取TLC(EtOAc/ヘキサン=1/1)で精製して27(4mg、収率50%)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ1.43-1.51 (m, 72H), 2.70 (t, J=7.2Hz, 2H), 3.11 (t, J=7.2Hz, 2H), 3.45-3.50 (m, 4H), 3.84-3.93 (m, 8H), 4.15-4.21 (m, 4H), 4.46 (d, J=5.6Hz, 2H), 6.89-6.92 (m, 2H), 6.99-7.08 (m, 4H), 7.57-7.68 (m, 2H), 8.36 (m, 1H), 8.46 (br t, 1H), 8.55 (br t, 1H), 8.80 (br t, 2H).
【0233】
N-[2,3,2',3'-テトラ(2-グアニジノ-エチルオキシ)-ビフェニル-4-イルメチル]-3-[2-ピリジル)ジチオ]プロピオンアミド(28)
化合物27(4mg、0.0024mmol)をTFA(0.8ml)に溶解し、室温で3時間攪拌した。TFAを減圧留去して28(4mg)を得た。
1H-NMR (MeOH-d4): δ2.73 (t, J=6.6Hz, 2H), 3.10 (t, J=6.6Hz, 2H), 3.23-3.30 (m, 4H), 3.62-3.67 (m, 4H), 3.88 (m, 2H), 3.96 (m, 2H), 4.22 (m, 4H), 4.47 (s, 2H), 6.87 (dd, J=7.4, 1.7Hz, 1H), 7.02 (d, J=7.9Hz, 1H), 7.08-7.24 (m, 4H), 7.76-7.80 (m, 2H), 8.38 (d, J=4.7Hz, 1H), 8.70 (br t, 1H). ESMS; m/z calcd; 784, found; 899 [(M+1)+TFA], 785 (M+1), 507 [(M+2)+2TFA], 450 [(M+2)+TFA], 393 (M+2),338 [(M+3)+2TFA].
【0234】
実施例4
(取込み及び細胞内局在)
二グアニジン及び四グアニジン化合物の小分子輸送能を観測するため、492nmでのレーザー励起後514nmで発光するFITCに、それらを結合した。ヒト骨肉腫細胞(U20S)をガラスのカバースリップ上で培養し、終濃度10μMまでの各化合物と共に10分間インキュベートした。それらを、TATと接合したFITC及びFITC単独と比較した。インキュベーション後、細胞をPBSでリンスし、固定せずにスライド上に乗せ、共焦点顕微鏡により可視化した。より低い拡大率(10×)では、グアニジン化合物のいずれか又はTATと接合したFITCで処理した細胞では強い蛍光(図1の挿入パネル)が見られた。細胞をより高い拡大率(63×)で可視化し、FITCの細胞内局在を評価した。図1で見られ得るように、四グアニジン-FITCで処理した細胞は強い核蛍光を示し、一方、二グアニジン-FITC処理では核蛍光及び細胞質蛍光の両方を示した。この拡大レベルで、フルオレセインの非特異的取込みを、エンドソームを表し得る小さな細胞質区画で検出した。これらの結果により、二及び四グアニジン担体による細胞の特異的な細胞内区画へのFITCの送達が示された。
【0235】
(ヒト接着細胞株及び初代懸濁細胞への送達)
これらのグアニジン担体によるFITCの送達の効率を、FACS分析により測定した。U20S細胞を、10□M濃度の各化合物で15分間処理した後、トリプシン処理により収集し、PBSで洗浄した。その後生細胞をFACS分析した。図2で見られ得るように、二グアニジン-FITC又は四グアニジン-FITCのいずれかで処理した細胞の80%が、U20S細胞のバックグラウンド自己蛍光を超える強い蛍光を発した。同様な結果が、SV40 T抗原で形質転換したヒト胎児腎臓細胞である293T細胞でも得られた。これらの結果は、細胞の98%が処理後に蛍光を発するTAT-FITCに匹敵する。
【0236】
SMCが初代ヒト細胞に小分子を送達するか否かを決定するために、CD3+細胞を採血したての末梢血単核細胞からMACS分離により単離した。この精製細胞集団を10□Mの各化合物で15分間処理した。その後細胞をPBSで洗浄し、FACSで分析した。二グアニジン-FITCで処理した細胞の88%及び四グアニジン-FITCで処理した細胞の62%が蛍光を発し、TAT-FITCで処理した細胞の63%と比較し、これらの化合物による初代細胞へのFITCの効率的な送達が示された。
【0237】
(細胞生存率)
上記の実験は、細胞へのFITCの迅速で効率的な送達(細胞への適用の10〜15分以内に起こる)を示す。しかし、これらの化合物へのより長い曝露による生存率への影響を調べるために、0.1□Mないし10□M濃度の範囲のこれらの化合物と共に、細胞を24及び48時間インキュベートした(図3及び図示していないデータ)。1×104U20S細胞を播腫し、24時間処理した。その後細胞を溶解し、死にゆく細胞は細胞内ATPを急速に失うので、細胞生存率の指標としてATP濃度を測定した。図3で見られるように、DMSOベクター単独と比較して、SMCではATP濃度の減少がないことが観測された。ATPのレベルを、細胞への毒性があるタンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CHX)で処理した細胞のものと比較した。これらの結果により、SMC化合物は培養細胞の生存率を低下させないことが示される。
【0238】
実施例5
生体膜を横切って異なるクラスの生体分子を輸送するSMCの能力を立証する。
【0239】
これらの特性は、機能的読み取り、すなわち送達される分子の生物学的活性を用いて立証される。これは、所望の位置への積荷の送達/ダンピングを立証するばかりでなく、さらに本発明で送達される積荷部分の機能の有利な保持を例証する。
【0240】
これらの効力を立証するために用いた実験系は、下記の細胞DNA合成アッセイ(S期アッセイ)に基づく。
【0241】
(S期アッセイ)
系は原則的に以下のように行う:マウス又はヒト線維芽細胞を接触阻止により静止期(G0)に留める。
【0242】
その後、静止線維芽細胞をより低密度で継代培養し、線維芽細胞をG0から解放する。解放の21時間後に、DNA合成期(S期)に再突入する。G0からの解放の16〜18時間後に、DNA合成に先立つDNAへリックスの巻き戻しに必須の複製前複合体(pre-RC)が複製開始点に集まる。
【0243】
1サンプルの細胞は処理せず、他は本発明のSMC-接合体への曝露により処理する。処理はpre-RCの集合前に行い、好ましくはG0からの解放の5〜10時間後に行う。
【0244】
細胞のS期開始能を、21時間後のBrdUパルスでモニターする。BrdUはDNA合成の間にDNAに取込まれるようになり、従ってS期への突入のマーカーとなる。その後、BrdU取込みを測定し、処理細胞を未処理細胞と比較する。
【0245】
(プロトコル: S期アッセイ(細胞増殖アッセイ))
G0での同期化のため、NIH3T3線維芽細胞を高密度で播種し、密度依存性の増殖停止へと導く。5日後、細胞を10% FCS、10 U/ml ペニシリン及び0.1mg/mlストレプトマイシンで補ったDMEM中、ガラスのカバースリップ上に4分の1を再播種する。
【0246】
その8時間後に細胞のサンプルを処理し、比較のために未処理サンプルを取っておく。
【0247】
G0からの解放の21時間後に細胞を50μM BrdUで1時間パルスラベルすることにより、DNA合成をモニターする。細胞を4%パラホルムアルデヒドで5分間固定し、0.2% Triton X-100で5分間透過処理する。
【0248】
細胞内の特定の実体を検出するため、この段階で任意で抗体インキュベーションを行ってもよい。例えば、pcDNA3.1E1^E4を微量注入した細胞を抗E4 MAb 4.37、それにつづけてTexas Red結合ヤギ14抗マウス抗体 (Amersham)と共にインキュベートする。その後これらの細胞をDNA染色で対比染色する(例えばTOTO 3 (Molecular Probes); 次の工程を参照)。
【0249】
(染色)
細胞を4%パラホルムアルデヒドで再び固定し、FITC結合マウス抗BrdU MAb (Alexis)で染色する前に4M HClと共に1時間インキュベートする。
【0250】
DNA複製を行っている細胞の割合を、Leica TCS SP共焦点顕微鏡で共焦点蛍光顕微鏡法により得た画像から決定する。
【0251】
(プラスミド微量注入による処理)
HPV1 E1^E4 (pcDNA3.1E1^E4)又はsmall GTPase ADP-リボシル化因子ARFとCFPとの間の融合タンパク質(pECFP-N1/ARF)を発現するDNAプラスミド(0.1ug/ml)を、G0からの解放の8時間後の同期化G1期細胞の核に微量注入する。
【0252】
このS期アッセイは、阻害の分子機構に関係なく、DNA合成の阻害に敏感である(下記のさらなる実施例を参照)。しかしこの実施例ではその効力を、阻害の分子機構が理解されているHPV1 E1^E4タンパク質を用いて示す。
【0253】
(HPV1 E1^E4の背景及び役割)
ORC、cdc、cdtl及びミニ染色体維持タンパク質(Mcm2〜7)の複製開始点での複製前複合体(pre-RC)への連続的な集合は、真核生物のDNA複製の開始に必須である。
【0254】
Mcm7は、全ての真核生物に進化的に保存された必須の複製開始因子である、6つの構造的に関係するタンパク質のファミリー、Mcm2〜7のメンバーである。初期のG1期において、Cdc6及びcdtlは、開始点認識複合体(ORC)と相互作用することにより複製開始点上にMcm2〜7を集め、pre-RCを形成する。これにより開始点はその後のS期での複製が認可される。
【0255】
1型HPV (HPV1) E1^E4はDNA合成の開始を阻害する。免疫共沈降研究は、E1^E4は複製開始因子Cdc6及びMcm7との相互作用を通して阻害機能を発揮し得ることを示す。E1^E4とライセンス因子Cdc6及びMcm7との相互作用は、pre-RC機能の抑制及びそれによる複製開始の阻害を引き起こすウイルス機構の一部であり得る。E1^E4タンパク質の極N末端は、Cdc6及びMcm7との相互作用には必要ないが、この阻害機構での必須の機能を持ち得る。DNA合成期(S期)アッセイにおいて、HPV1 E1^E4のような実体を細胞に導入することにより、この機構をin vivoで調節し得る。
【0256】
下記の実施例では、本発明のSMCを用いて細胞に運ばれる様々な部分の効力を立証するために、S期アッセイを用いる。この実施例では、本発明のSMCを用いて細胞に運ばれる125aa HPV1 E1^E4ポリペプチドの効力を立証するために、S期アッセイを用いる。HPV1 E1^E4ぺプチドのアミノ酸配列を図4に示す。
【0257】
(微量注入でのS期アッセイ)
HPV1 E1^E4を発現するプラスミドの微量注入により、HPV E1^E4によるS期阻害の効力を明白に証明し得る(微量注入は本発明の一部ではない)。G0での密度依存性増殖停止からの解放後8時間の処理時に、E1^E4を発現するプラスミドをNIH3T3線維芽細胞の核に微量注入する。細胞のDNA複製開始能を、G0からの解放の19時間後の細胞をブロモデオキシウリジン(BrdU)で1時間パルスラベルすることにより評価した。E1^E4タンパク質の発現及びBrdUの取込みを共焦点免疫蛍光顕微鏡検査法によりモニターした。未注入細胞(49%)と比較して、E1^E4発現細胞では低割合(13%)のみがS期への進行能を保持していた。E1^E4を発現しDNAを合成している細胞はより弱いBrdU特異的核蛍光を呈し、これらの細胞中のE1^E4の量が複製を完全に阻害するには不十分であり得ることを示唆した。無関係な対照タンパク質(small GTPase ADP-リボシル化因子ARFとシアン蛍光タンパク質との間の融合タンパク質)を発現するプラスミドを微量注入した細胞は、未注入細胞と区別できない頻度でDNA複製を開始した。総合すると、これらのデータにより、同期化G1期NIH3T3線維芽細胞中のHPV1 E1^E4の発現はS期への突入を阻害することが立証される。
【0258】
(SMC送達HPV E1^E4ペプチドでのS期アッセイ)
本発明のSMCとの接合によるHPV E1^E4ポリペプチドの細胞への導入により、本発明の機能的な証明を提供する。この実施例では、
(i) 本明細書中に記載の式Icの化合物又はその薬学的に許容される塩;と
(ii) 125アミノ酸HPV1 E1^E4ポリペプチド
とを反応させることにより、HPV E1^E4ペプチドを結合/接合する。
【0259】
G0解放の8時間後に処理を行う。
【0260】
終濃度10fMないし10μMの接合体を細胞と接触させる。
【0261】
上記のアッセイによりモニターすると、SMC-HPV1E1^E4は効率的に細胞中に取込まれ、DNA合成を阻害する。
【0262】
実施例6
積荷(ii)がpre-RC集合リプレッサータンパク質Geminin(209 aa)であること以外は、実施例5と同様にこれを行う。Gemininのアミノ酸配列を図5に示す。
【0263】
G0解放の8時間後に処理を行う。
【0264】
終濃度10fMないし10μMの接合体を細胞と接触させる。
【0265】
上記のアッセイによりモニターすると、SMC-Gemininは効率的に細胞中に取込まれ、DNA合成を阻害する。S期に突入する細胞数の劇的な減少が観測される。
【0266】
実施例7
Dbf4/ASKは、次にDNAへリックスの巻き戻しを誘発する複製開始に必須であるpre-RCにCdc7を補充する。この実施例では、これらの相互作用の効力を、本発明のSMC-積荷を用いて妨害する。
【0267】
積荷(ii)がCdc7キナーゼ活性のDbf4/ASK制御因子に基づく小ペプチドであること以外は、実施例5と同様にこれを行う。このペプチドのアミノ酸配列を図6に示す。このペプチドはCdc7の結合部位を内在性Dbf4/ASKと競合し、従って優性阻害として働く。
【0268】
G0解放の8時間後に処理を行う。
【0269】
終濃度30nMないし30μMの接合体を細胞と接触させる。
【0270】
上記のアッセイによりモニターすると、SMC-Dbf4制御因子は効率的に細胞中に取込まれ、DNA合成を阻害する。
【0271】
実施例8
積荷(ii)がpre-RC構成物であるCdc6に対する抗体であること以外は、実施例5と同様にこれを行う。このタンパク質はG0からの解放の間にデノボ合成され、pre-RC集合及びS期突入に重要である。G0解放の8時間後に処理を行う。
【0272】
終濃度10mMないし10μMの接合体を細胞と接触させる。SMC-抗Cdc6抗体は効率的に細胞中に取込まれる。
【0273】
上記のアッセイによりモニターすると、抗Cdc6抗体の核への輸送は、Cdc6の機能を阻止し、従ってS期への突入を阻止し、DNA合成を阻害する。
【0274】
実施例9
積荷(ii)がCdc6 mRNAをターゲティングするアンチセンスオリゴマーであること以外は実施例5と同様にこれを行い、従って実施例8に記載のものと同じ効力でCdc6合成を阻止する。G0解放の8時間後に処理を行う。
【0275】
終濃度50nMないし10μMの接合体を細胞と接触させる。上記のアッセイによりモニターすると、SMC-オリゴマーは効率的に細胞中に取込まれ、DNA合成を阻害する。
【0276】
本発明の様々な修飾物及びバリエーションが本発明の範囲及び精神から離れることなく当業者に明らかとなる。本発明は特定の好ましい実施形態と関連して説明されるが、本発明の特許請求の範囲はそのような特定の実施形態に不当に限定されるものではないと理解するべきである。実際、本発明を実施するために記載された形態の様々な修飾が関連分野の当業者に明らかであり、本発明に含まれることを意図する。
【0277】
本発明はさらに、実施例により下記の図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0278】
【図1】図1は、FITC単独及びTATに結合されたFITCと比較した、本発明の二グアニジン担体(化合物13)に結合されたFITC、本発明の四グアニジン担体(化合物26)に結合されたFITCのヒト骨肉腫細胞(U20S)による取込みを示す。取込みは共焦点顕微鏡を用いて可視化した。
【図2】図2(左側の2列)は、本発明の二グアニジン担体(化合物13)に結合されたFITC、本発明の四グアニジン担体(化合物26)に結合されたFITC、FITC単独及びTATに結合されたFITCで処理されたU20S細胞のFACS分析を示す。図2(右側の列)は、初代ヒト細胞(CD3+細胞)のFACS分析を示す。
【図3】図3は、DMSOベクター単独及びシクロヘキシミド(CHX)で処理した細胞と比較した、化合物13、化合物26及びTATと結合したFITCで処理されたU20S細胞での細胞生存率実験の結果を示す。
【図4】図4は、HPVl E1^E4ペプチド(125アミノ酸)のアミノ酸配列を示す。
【図5】図5は、完全長Geminin(209アミノ酸)のアミノ酸配列を示す。
【図6】図6は、Cdc7キナーゼ活性のDbf4/ASK制御因子に基づく小ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図7】図7は、カバースリップ上で増殖したNIH3T3線維芽細胞を10μM FITC-SMCと共に及び対照として10μMの非接合FITCと共に、表示時間、インキュベートしたことを示す。細胞をDAPIで対比染色した。
【図8A】NIH3T3線維芽細胞を、10μM組換えHis6-Geminin又は10μM Geminin-SMC接合体と共に1時間インキュベートした。細胞を固定し、透過処理し、ポリクローナルウサギ抗Geminin一次、FITC接合抗ウサギ二次で染色し、DAPIで対比染色した。Geminin-SMCの存在下では強いFITC染色が細胞中で見られ得、一方Gemininの非接合型ではFITC染色は見られ得ない。
【図8B】NIH3T3線維芽細胞を、密度依存性増殖停止により静止期へと導き、5日後に新たな成長培地への二次培養により細胞周期に引き戻した。静止期からの解放の8時間後に、10μMのGeminin-SMCを細胞に加えた。解放の21時間後に、細胞を50μM BrdUで1時間パルスラベルした。その後、細胞を固定し、透過処理し、FITC接合抗BrdUで染色し、ヨウ化プロピジウムで対比染色した。それぞれ、対照集団では68%の細胞が解放後細胞周期に再突入し得、一方Geminin-SMCの存在下では複製は47%減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩
【化1】

[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【化2】

(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
Lは(Z)mNR5R6
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【化3】

から選択される)を示すか、
あるいは、R5、R6及びそれらが結合した窒素が一緒になって、
【化4】

を形成する}を示す]。
【請求項2】
YがC1-10アルキレン基、C2-10アルケニレン基又はC2-10アルキニレン基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
WがOである、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
YがCH2CH2である、いずれかの前請求項に記載の化合物。
【請求項5】
Zがアルキレン基である、いずれかの前請求項に記載の化合物。
【請求項6】
ZがCH2基である、いずれかの前請求項に記載の化合物。
【請求項7】
R5及びR6の一方がHであり、もう一方がH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2から選択されるか、あるいはR5、R6及びそれらが結合した窒素が一緒になって、
【化5】

を形成する、いずれかの前請求項に記載の化合物。
【請求項8】
Lが下記から選択される、いずれかの前請求項に記載の化合物:CH2NH2、CH2NHCOCH2CH2COOH、
【化6】

【請求項9】
R1、R2、R3及びR4がそれぞれ独立してH又はブチルオキシカルボニル(Boc)保護基から選択される、いずれかの前請求項に記載の化合物。
【請求項10】
p、q及びrがそれぞれ独立して1又は2である、いずれかの前請求項に記載の化合物。
【請求項11】
X1、X2及びX3が同一であり、全てが
【化7】

(式中、R2及びR3はそれぞれ独立してH又はBoc保護基を示す)である、いずれかの前請求項に記載の化合物。
【請求項12】
nが0である、いずれかの前請求項に記載の化合物。
【請求項13】
化合物が式Ia又はIbのいずれかである、請求項12に記載の化合物:
【化8】

【請求項14】
X1及びX3が同一であり、両方が請求項11において定義されたものである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
下記から選択される、いずれかの前請求項に記載の化合物:
【化9】

【化10】

【請求項16】
積荷部分に連結された請求項1ないし15のいずれかにおいて定義された式Iの化合物を含む接合体。
【請求項17】
(i)式Icの化合物又はその薬学的に許容される塩
【化11】

[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【化12】

(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
L’は(Z)mNR5R6
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【化13】

から選択される)を示す}を示す]と、
(ii)タンパク質、ペプチド、抗体又は薬剤から選択される積荷部分、
との反応生成物を含む接合体。
【請求項18】
積荷部分がタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、診断剤、生物学的活性化合物、抗体及び薬剤から選択される、請求項16に記載の接合体。
【請求項19】
積荷部分が上記の式Iの化合物のL基に共有結合している、請求項16ないし18のいずれかに記載の接合体。
【請求項20】
担体部分に連結された薬剤部分を含む送達系であって、該担体部分が請求項1ないし15のいずれかにおいて定義された式Iの化合物である、送達系。
【請求項21】
送達系がそのインタクト状態において治療的に有効である、請求項20に記載の送達系。
【請求項22】
薬剤部分が細胞毒性薬剤由来である、請求項20又は請求項21に記載の送達系。
【請求項23】
薬剤部分がDNA損傷剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍性抗生物質、天然産物及びそれらの類似体、ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNA挿入剤、DNAクリーバー、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン、ビンカ薬、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、プテリジン薬、diynene、ポドフィロトキシン、白金含有薬、分化誘導物質及びタキサンから選択される、請求項22に記載の送達系。
【請求項24】
薬剤部分がメトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、(オロモウシン、ロスコビチン及びbohemineのような)三置換プリン、フラボピリドール、スタウロスポリン、シトシンアラビノシド、メルファラン、leurosine、アクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、マイトマイシン D、マイトマイシン A、carninomycin、アミノプテリン、tallysomycin、ポドフィロトキシン(及びその誘導体)、エトポシド、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、パクリタキセル、ドセタキセル、タキソテールレチノイン酸、酪酸、アセチルスペルミジン、タモキシフェン、イリノテカン及びカンプトセシンから選択される、請求項23に記載の送達系。
【請求項25】
薬剤部分が担体部分に直接的に連結されている、請求項20ないし24のいずれかに記載の送達系。
【請求項26】
薬剤部分がリンカー部分を用いて担体部分に間接的に連結されている、請求項20ないし24のいずれかに記載の送達系。
【請求項27】
各担体部分が1より多い薬剤部分を有する、請求項20ないし26のいずれかに記載の送達系。
【請求項28】
薬剤部分が異なる、請求項27に記載の送達系。
【請求項29】
各薬剤部分がリンカー部分を用いて担体部分に間接的に連結されている、請求項27又は28のいずれかに記載の送達系。
【請求項30】
各薬剤部分が同一のリンカー部分により担体部分に連結されている、請求項29に記載の送達系。
【請求項31】
各薬剤部分が異なるリンカー部分により担体部分に連結されている、請求項29に記載の送達系。
【請求項32】
ターゲティング部分をさらに含む、請求項20ないし31のいずれかに記載の送達系。
【請求項33】
ターゲティング部分が担体部分に結合している、請求項32に記載の送達系。
【請求項34】
ターゲティング部分が薬剤部分に結合している、請求項32に記載の送達系。
【請求項35】
式Idの化合物又はその薬学的に許容される塩
【化14】

[式中、X1、X2、X3はそれぞれ独立して、
【化15】

(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
L”は-(Z)mNR5-
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5はH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、発色団、
【化16】

から選択される)を示す}を示し;
Gは積荷部分を示す]。
【請求項36】
L”が-(Z)mNHである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
請求項1ないし15もしくは36のいずれかに記載の化合物、請求項16ないし19のいずれかに記載の接合体又は請求項20ないし34のいずれかに記載の送達系、及び薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項38】
医薬における使用のための、請求項1ないし15のいずれかに記載の化合物、請求項16ないし19のいずれかに記載の接合体又は請求項20ないし34のいずれかに記載の送達系。
【請求項39】
接合体を調製するプロセスであって、該プロセスは式Icの化合物又はその薬学的に許容される塩
【化17】

[式中、X1、X2及びX3はそれぞれ独立して、
【化18】

(式中、Yはアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上の置換基でそれぞれ任意に置換されていてもよいアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン基を示し;
Wは存在しないか、又はO、SもしくはNHを示し;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、アルキル、アリール及び保護基P1から選択される)を示し;
R7、R8及びR9はそれぞれ独立してH、アルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択され;
q及びrはそれぞれ独立して1、2、3又は4を示し;
q’及びr’はそれぞれ独立して0、1、2又は3(q+q’及びr+r’はそれぞれ4に等しい)を示し;
pは1、2、3、4又は5を、及びp’は0、1、2、3又は4(p+p’は5である)を示し;
nは0、1、2、3....6を示し;
L’は(Z)mNR5R6
{式中、Zはヒドロカルビル基を示し、mは0又は1を示し;
R5及びR6はそれぞれ独立してH、CO(CH2)jQ1又はC=S(NH)(CH2)kQ2
(式中、j及びkはそれぞれ独立して0、1、2、3、4又は5を示し、Q1及びQ2はそれぞれ独立してCOOH、
【化19】

から選択される)を示す}を示す]と、タンパク質、ペプチド、抗体及び薬剤から選択される積荷部分とを反応させることを含む、プロセス。
【請求項40】
積荷部分を細胞に導入する方法であって、該方法は該細胞を請求項16ないし19のいずれかに記載の接合体と接触させることを含む、方法。
【請求項41】
請求項1ないし15のいずれかにおいて定義された式Iの化合物を調製するプロセスであって、該プロセスは、
(i)式IIの化合物をTsOCH2CH2NHBocと反応させ、式III(式中、L'''は(Z)mNR5R6を示し、R5及びR6はNH2保護基を示す)の化合物を形成する工程;
【化20】

(ii)上記の式IIIの化合物からBoc基を除去し、式IVの化合物を形成する工程;
【化21】

及び、
(iii)上記の式IVの化合物を式Vの化合物と反応させ、式Iの化合物を形成する工程、
を含む、プロセス。
【請求項42】
請求項1ないし15のいずれかにおいて定義された式Iの化合物を調製するプロセスであって、該プロセスは、
(i)式IIの化合物をClCH2CNと反応させ、式VIの化合物を形成する工程;
【化22】

(ii)上記の式VIの化合物をPd/H2/炭素と反応させ、式IVの化合物を形成する工程;及び
【化23】

(iii)上記の式IVの化合物を式Vの化合物と反応させ、式Iの化合物を形成する工程、
【化24】

を含む、プロセス。
【請求項43】
請求項41又は請求項42に記載のプロセスであって、該式IIの化合物は、
(i)式VIの化合物を式VIIの化合物と反応させる工程、
【化25】

(ii)工程(i)から得られた生成物を式IIの化合物に変換する工程、
により調製される、プロセス。
【請求項44】
式Ifの化合物又はその薬学的に許容される塩
【化26】

(式中、X1、X2、X3、p、q、r及びnは請求項1において定義されたものを示し;
A1、A2及びA3はそれぞれ独立してアルキル、ハロ、CF3、OH、アルコキシ、NH2、CN、NO2及びCOOHから選択される1以上のさらなる置換基で任意に置換されたフェニル基を示し;並びにLfはリンカー基を示す)。
【請求項45】
説明又は実施例を参照し本明細書中で定義された化合物、接合体、送達系又はプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2008−502671(P2008−502671A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516045(P2007−516045)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002399
【国際公開番号】WO2005/123676
【国際公開日】平成17年12月29日(2005.12.29)
【出願人】(506417186)ユーシーエル ビジネス パブリック リミテッド カンパニー (14)
【Fターム(参考)】