干渉測定装置及び干渉測定方法
【課題】測定対象物の移動機構を使用せずに高さ方向のダイナミックレンジを拡大可能とする。
【解決手段】本発明の干渉測定装置は、可干渉距離が有限の光束を生成する生成手段(9、20)と、光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面(25a)へ照射すると共に他方を参照面(24a)へ照射する分岐手段(22)と、測定対象面を経由した測定光束と参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手段(22、21)と、分岐手段により分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手段(20)と、可干渉距離の走査位置と統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手段(27、30)と、関係情報に基づき、測定光束と参照光束とが干渉する走査範囲と、測定光束と参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、測定対象面の高さ情報として取得する演算手段(30)とを備える。
【解決手段】本発明の干渉測定装置は、可干渉距離が有限の光束を生成する生成手段(9、20)と、光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面(25a)へ照射すると共に他方を参照面(24a)へ照射する分岐手段(22)と、測定対象面を経由した測定光束と参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手段(22、21)と、分岐手段により分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手段(20)と、可干渉距離の走査位置と統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手段(27、30)と、関係情報に基づき、測定光束と参照光束とが干渉する走査範囲と、測定光束と参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、測定対象面の高さ情報として取得する演算手段(30)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象面の高さや形状を測定する干渉測定装置及び干渉測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、波長走査型干渉計の原理を使用した面形状測定装置が開示されている。この装置では、波長に対する干渉信号の変化カーブが測定対象面の高さに依って異なることを利用しており、具体的には、波長可変光源により光の波長を走査しながら干渉縞画像を繰り返し取得することにより、測定対象面の各位置に関する干渉信号の変化カーブを測定し、様々な高さについての変化カーブの理論値(理論カーブ)の中から、測定された変化カーブに近いものをパターンマッチングにより見出すことにより、その位置の高さを求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3861666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測定対象面の高低差が光の可干渉距離によって決まる所定値より大きい場合には、一部の位置については有意な干渉信号が得られなくなるため、その面形状を一括して測定することはできない(特許文献1の段落[0011]を参照。)。よって、この場合は、測定対象物を光軸方向へ移動させて測定を繰り返す必要があり、測定対象物の移動誤差が形状測定誤差に重畳することを許容せざるを得なかった。
【0005】
そこで本発明は、測定対象物の移動機構を使用せずとも高さ方向のダイナミックレンジを拡大することが可能な干渉測定装置及び干渉測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明を例示する干渉測定装置の一態様は、可干渉距離が有限の光束を生成する生成手段と、前記光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面へ照射すると共に他方を参照面へ照射する分岐手段と、前記測定対象面を経由した測定光束と前記参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手段と、前記分岐手段により分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手段と、前記可干渉距離の走査位置と前記統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手段と、前記関係情報に基づき、前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲と、前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、前記測定対象面の高さ情報として取得する演算手段とを備える。
【0007】
本発明を例示する干渉測定方法の一態様は、可干渉距離が有限の光束を生成する生成手順と、前記光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面へ照射すると共に他方を参照面へ照射する分岐手順と、前記測定対象面を経由した測定光束と前記参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手順と、前記分岐手順で分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手順と、前記可干渉距離の走査位置と前記統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手順と、前記関係情報に基づき、前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲と、前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、前記測定対象面の高さ情報として取得する演算手順とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定対象物の移動機構を使用せずとも高さ方向のダイナミックレンジを拡大することが可能な干渉測定装置及び干渉測定方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の面形状測定装置の構成配置図である。
【図2】波長選択素子20によって抽出される光束のスペクトルを説明する図である。
【図3】波長選択素子20によって抽出される光束の干渉性の変化を説明する模式図である。
【図4】中心波長λと可干渉距離ZCとの関係(ZC=λ2/|Δλ|)をグラフにしたものである。
【図5】中心波長λと、可干渉距離ZCの走査ピッチとの関係をグラフにしたものである。
【図6】チューナブルフィルタの例を示す図である。
【図7】コントロールユニット30による測定処理のフローチャートである。
【図8】シミュレーションで仮定した測定対象面25aの形状を示す図である。
【図9】151番目のサンプリングで取得された画像I151である(中心波長λがλ151=0.55μmに設定され、可干渉距離ZCがZC151=3.025μmに設定されたとき。)。
【図10】651番目のサンプリングで取得された画像I651である(中心波長λがλ651=1.05μmに設定され、可干渉距離ZCがZC651=11.025μmに設定されたとき。)。
【図11】1151番目のサンプリングで取得された画像I1151である(中心波長λがλ1151=1.55μmに設定され、可干渉距離ZCがZC1151=24.025μmに設定されたとき。)。
【図12】コントロールユニット30による解析処理のフローチャートである。
【図13】ステップS23を説明する図である。
【図14】ステップS26を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態として、面形状測定装置を説明する。
【0011】
図1は、面形状測定装置の構成配置図である。図1に示すとおり面形状測定装置には、白色光源部9、波長選択素子20、ビームスプリッタ21、22、補正板23、参照ミラー24、結像光学系26、撮像素子27、コントロールユニット30などが備えられる。このうち、ビームスプリッタ21、22、結像光学系26、撮像素子27が干渉計を構成している。なお、ここでは、干渉計のタイプをマイケルソン型と仮定するが、他のタイプ(マッハツェンダー型、ミラウ型など)に変更することも可能である。
【0012】
白色光源部9は、ハロゲンランプなどの白色光源9Aと、ビームエキスパンダ9Bとを備え、適当な径の平行光束からなる白色光束を出射する。
【0013】
波長選択素子20は、白色光源部9から射出した白色光束のうち、一部の波長帯域の成分のみを抽出する。波長選択素子20が抽出する波長帯域の中心波長と、その波長帯域の幅(波長幅)と、その波長帯域における各波長の強度とは、それぞれコントロールユニット30によって制御可能である。
【0014】
波長選択素子20によって抽出された光束は、ビームスプリッタ21を透過した後、ビームスプリッタ22の分離面22aを反射する光束(参照光束)と、ビームスプリッタ22の分離面22aを透過する光束(測定光束)とに分岐する。
【0015】
分離面22aを反射した参照光束は、補正板23を通過した後、参照ミラー24の参照面24aへ正面から入射する。その参照光束は、参照面24aを反射することで光路を折り返し、補正板23を再通過した後、ビームスプリッタ22へ戻る。
【0016】
分離面22aを透過した測定光束は、測定対象物25の測定対象面25aへ正面から入射する。その測定光束は、測定対象面25aを反射することで光路を折り返し、ビームスプリッタ22へ戻る。
【0017】
ビームスプリッタ22へ戻った参照光束と測定光束とは分離面22aにて統合され、統合光束となってビームスプリッタ21の側へ向かう。その統合光束は、ビームスプリッタ21を反射し、結像光学系26を介して撮像素子27の撮像面27aへ入射する。
【0018】
撮像素子27は、撮像面27a上の輝度分布を示す画像、すなわち統合光束の強度分布を示す画像を生成する。なお、撮像素子27による画像生成(撮像)のタイミングはコントロールユニット30によって制御される。
【0019】
ここで、参照面24aで反射した参照光束の波面の複素振幅をRr・u(t)とし、測定対象面25aで反射した測定光束の波面の複素振幅をRs・u(t‐τ)とすると、統合光束の波面(合成波面)の複素振幅は、以下のとおり表される。
【0020】
【数1】
【0021】
但し、u(t)は白色光源9Aからの光束の波面(基本波面)を規格化したものの複素振幅であり、Rrは参照面24aの反射率、Rsは測定対象面25aの反射率である。τは、参照光束と測定光束との間の光路長差Lに起因して生じる、両者の波面の到達時間差を表しており、τ=L/ cで表される(但し、cは光速である。)。
【0022】
このとき、撮像素子27で検出される統合光束の強度Iは、以下のとおり表される。
【0023】
【数2】
【0024】
この式の中で、第3項が干渉効果を表している。但し、第3項における関数Re[X]は、Xの複素関数の実部を意味している。
【0025】
以下、第3項に着目し、これをIint(τ)とする。第3項におけるRe[X]のXは自己相関関数なので、ウィーナー・ヒンチンの定理を使って、Iint(τ)は、以下のとおり表される。
【0026】
【数3】
【0027】
つまり、Iint(τ)は、下記のエネルギースペクトルを、逆フーリエ変換したものに相当する。
【0028】
【数4】
【0029】
但し、U(ω)は、以下のとおりu(t)のフーリエ変換である。
【0030】
【数5】
【0031】
この場合、逆フーリエ変換の関係から、以下の式も成り立つ。
【0032】
【数6】
【0033】
ここで、本実施形態の波長選択素子20は、抽出する光束のスペクトルを任意のスペクトルに設定できる。よって、波長選択素子20は、上述したA(ω)を以下のとおり設定するものと仮定する。
【0034】
【数7】
【0035】
この場合、Iint(τ)は、以下のとおり表される。
【0036】
【数8】
【0037】
したがって、撮像素子27で検出される統合光束の強度Iは、以下のとおり表される。
【0038】
【数9】
【0039】
この中の干渉項が最初にゼロになるのは、|Δω|τ/2=πのときなので、本件においてはτ=2π/|Δω|を可干渉時間と定義すると、以下の関係が成り立つ。
【0040】
【数10】
【0041】
【数11】
【0042】
但し、λは、波長選択素子20によって抽出される光束の中心波長であり、|Δλ|は、その光束の波長幅である。
【0043】
したがって、波長選択素子20によって抽出される光束の可干渉距離Zcは、以下のとおり表される。
【0044】
【数12】
【0045】
そして、本実施形態では、図2に示すとおり、波長選択素子20によって抽出される光束の中心波長λは、予め決められた波長範囲内(ここでは400nm〜2000nmとする。)を微小単位(ここでは1nmとする。)で変更することが可能であり、また、その光束の波長幅|Δλ|は、その波長範囲よりも狭い所定値(ここでは100nmとする。)に固定されているものと仮定する(上述したA(ω)の定義を参照)。また、その光束に含まれる各波長成分の強度は、予め決められた値に揃えられているものと仮定する。
【0046】
このように、光束の中心波長λを400nmから2000nmに向けて徐々に変化させると、その光束の干渉性は、図3に模式的に示すように徐々に高まり、その光束の可干渉距離ZC(ZC=λ2/|Δλ|)は、1.6μmから40μmへと走査されることになる。なお、図4は、中心波長λと可干渉距離ZCとの関係(ZC=λ2/|Δλ|)をグラフにしたものである。
【0047】
また、上述したとおり中心波長λの変化ピッチを一定(ここでは1nm)にした場合、可干渉距離ZC(=λ2/|Δλ|)の走査ピッチは、中心波長λが短いときほど細かくなる。なお、図5は、中心波長λと走査ピッチとの関係をグラフにしたものである。
【0048】
以上の機能を有する波長選択素子20としては、例えば、液晶チューナブルフィルタと色変換フィルタを組み合わせたリオフィルタ、或いは、図6に示すようなチューナブルフィルタを適用することが可能である。なお、図6に示すチューナブルフィルタの詳細は、後述する。
【0049】
撮像素子27は、本装置の使用波長帯域内(ここでは350nm〜2050nm)の各光に感度を有しており、本装置の他の光学素子(ビームエキスパンダ9B、ビームスプリッタ21、22、補正板23、結像光学系26など)の硝材には、その使用波長帯域内の各光を導光できるものが選定されている。また、参照光束と測定光束との干渉強度をより高めるために、参照ミラー24aの反射率は、測定対象物の反射率となるべく近い値に設定されていることが望ましい。
【0050】
また、参照光束の単独光路へ配置された補正板23の光学的特性(分散、屈折率など)は、補正板23から参照光束の波面に与えられる変形が、ビームスプリッタ22から測定光束の波面に与えられる変形と同じになるよう予め設定されている。これによって、参照光束の単独光路の条件と測定光束の単独光路の条件とが共通化される。
【0051】
また、測定対象物25の近傍において、撮像面27aと光学的に共役な基準面25bは、次の条件を満たす。すなわち、基準面25bからビームスプリッタ22の分離面22aまでの距離は、参照面24aからビームスプリッタ22の分離面22aまでの距離と一致している。
【0052】
また、測定対象面25aの各位置は、基準面25bの上方又は下方に存在する。ここでは、測定対象面25aの各位置は、基準面25bの上方(ビームスプリッタ22に近い側)に存在しているものと仮定する。
【0053】
ここで、測定対象面25a上の或る位置に着目する(以下、この位置を「着目位置」と称す。)。撮像面27a上で着目位置に対応する画素(着目画素)へ入射する統合光束は、前述したとおり参照光束と測定光束とからなるが、それら光束の光路長差Zは、基準面25bを基準とした着目位置の高さZ’に応じた値(Z=2Z’)をとる。
【0054】
仮に、可干渉距離ZCの走査位置が前述した走査範囲の下端値(1.6μm)の近傍であって、可干渉距離ZCより光路長差Zの方が長いとき(つまりZ’>ZC/2が成り立つとき)には、それらの参照光束及び測定光束は互いに干渉しないので、可干渉距離ZCの走査中に着目画素が生成する信号の強度のコントラストはゼロとなる。
【0055】
一方、可干渉距離ZCの走査位置が前述した走査範囲の上端値(40μm)の近傍であって、可干渉距離ZCより光路長差Zの方が短いとき(つまりZ’<ZC/2が成り立つとき)には、それらの参照光束及び測定光束は互いに干渉するので、可干渉距離ZCの走査中に着目画素が生成する信号の強度のコントラストはゼロでは無くなる。
【0056】
したがって、本装置では、可干渉距離ZCを前述した走査範囲の下端値(1.6μm)から上端値(40μm)に向けて走査すると共に、その走査中に着目画素が生成する信号の強度のコントラストを監視し、コントラストが変化する走査範囲とコントラストが変化しない走査範囲との境界に相当する走査位置(境界位置Zb)を見出せば、着目位置の高さZ’をZ’=Zb/2の式によって既知とすることができる。このことは、測定対象面25aの各位置について成り立つ。
【0057】
なお、可干渉距離ZCの走査範囲(1.6μm〜40μm)を高さZ’の単位で表すと、0.8μm〜20μmの範囲となる。よって、本装置の高さ方向の測定範囲は、0.8μm〜20μmの範囲である。
【0058】
よって、後述する測定処理の開始に当たり、測定対象物25の光軸方向の位置は、測定対象面25aの各位置の高さZ’が0.8μm〜20μmの範囲内に収まるように調整される。
【0059】
本装置のコントロールユニット30は、制御装置としての機能と演算装置としての機能とを有する。
【0060】
制御装置としてのコントロールユニット30は、光源部9、波長選択素子20、撮像素子27を駆動制御することにより、測定対象面25aの各位置の高さ情報を含んだ画像群を取得する(測定処理)。また、演算装置としてのコントロールユニット30は、その画像群に対して演算を施すことにより、測定対象面25aの高さ分布を求める(解析処理)。
【0061】
次に、コントロールユニット30による測定処理を説明する。図7は、コントロールユニット30による測定処理のフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
【0062】
ステップS10:コントロールユニット30は、サンプリング番号iを初期値(1)に設定する。
【0063】
ステップS11:コントロールユニット30は、光源部9及び波長選択素子20をオンする。
【0064】
ステップS12:コントロールユニット30は、波長選択素子20に対して、抽出する光束の中心波長λをi番目の波長λiに設定するよう指示を与える。なお、i番目の波長λi(nm)は、λi=400+(i−1)で表される。これによって、可干渉距離ZCの走査位置は、i番目の走査位置ZCiに設定される。なお、i番目の走査位置ZCi(nm)は、ZCi=λi2/100で表される。
【0065】
ステップS13:コントロールユニット30は、撮像素子17を駆動して1フレーム分の画像をサンプリングする。以下、i番目のサンプリングでサンプリングされた画像を「画像Ii」とおく。
【0066】
ステップS14:コントロールユニット30は、サンプリング番号iが最終値(ここでは1600)に達したか否かを判別し、最終値に達していなければステップS15へ移行し、最終値に達していればステップS16へ移行する。
【0067】
ステップS15:コントロールユニット30は、サンプリング番号iをインクリメントしてからステップS12へ戻る。したがって、コントロールユニット30は、可干渉距離ZCを走査しながら画像Iiの取得を1600回繰り返す。
【0068】
ステップS16:コントロールユニット30は、光源部9及び波長選択素子20をオフする。
【0069】
ステップS17:コントロールユニット30は、以上のステップで取得した一連の画像I1、…、I1600をコントロールユニット30内の保存用メモリに格納し、フローを終了する。
【0070】
次に、測定処理で得られる画像I1、…、I1600の一部を説明する。図8〜図11に示す画像は、シミュレーションによって取得されたものである。
【0071】
シミュレーションでは、測定対象面25aの形状を、図8に示すようにZ’=A・|cos(X)・cos(Y)|とした。なお、図8では、高さが共通の領域を互いに同じ濃度で表している。
【0072】
また、シミュレーションでは、測定対象面25aのピーク値を決めるAは、10μmとおいた。また、シミュレーションでは、測定対象面25aの反射率は、参照面24aの反射率と同じと仮定した。
【0073】
図9は、151番目のサンプリングで取得された画像I151である。なお、151番目のサンプリングでは、中心波長λはλ151=0.55μmに設定され、可干渉距離ZCはZC151=3.025μmに設定された。
【0074】
図9から明らかなとおり、画像I151において、可干渉距離ZC151に相当する高さ(Z’=ZC151/2=1.5125μm)より低い領域では干渉効果が高く、干渉がない場合の平均強度(図では強度2)からの差異の大きな出力を示しているが、それより高い領域では、干渉がない場合の平均強度に近い。
【0075】
図10は、651番目のサンプリングで取得された画像I651である。なお、651番目のサンプリングでは、中心波長λはλ651=1.05μmに設定され、可干渉距離ZCはZC651=11.025μmに設定された。
【0076】
図10から明らかなとおり、画像I651において、可干渉距離ZC651に相当する高さ(Z’=ZC651/2=5.5125μm)より低い領域では干渉効果が現れており、干渉のない場合の平均強度(図では強度2)からの差異が大きい強度となっているが、それより高い領域では、強度は平均強度に近く、干渉効果が現れていない。
【0077】
図11は、1151番目のサンプリングで取得された画像I1151である。なお、1151番目のサンプリングでは、中心波長λはλ1151=1.55μmに設定され、可干渉距離ZCはZC1151=24.025μmに設定された。
【0078】
図11から明らかなとおり、画像I1151において、可干渉距離ZC1151に相当する高さ(Z’=ZC1151/2=12.0125μm)より低い領域(すなわち全ての領域)では強度は平均値(図では強度2)からの差異が大きく、干渉効果が現れている。
【0079】
次に、コントロールユニット30による解析処理を説明する。図12は、コントロールユニット30による解析処理のフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
なお、解析処理の開始時点では、測定処理は実行済みであり、コントロールユニット30内の保存用メモリには一連の画像I1、…、I1600が格納されているものと仮定する。
【0080】
ステップS21:コントロールユニット30は、保存用メモリに格納されている一連の画像I1、…、I1600を、コントロールユニット30の作業用メモリ上へ読み出すと共に、画素番号jを初期値(1)に設定する。
【0081】
ステップS22:コントロールユニット30は、サンプリング番号iを初期値(1)に設定する。
【0082】
ステップS23:コントロールユニット30は、画素番号j及びサンプリング番号iに関するコントラスト値Cijを次の手順(a)〜(d)により算出する。
【0083】
(a)コントロールユニット30は、一連の画像I1、…、I1600のうち、j番目の画素に関する一連の信号S1j、…、S1600jを参照し、図13に模式的に示すとおりそれらの信号S1j、…、S1600jを「可干渉距離ZCの走査位置と信号強度との関係を示す座標空間」上に写像する。この座標空間に写像された信号の走査方向に亘る配列ピッチは、不等間隔である(なぜなら、可干渉距離ZCの走査ピッチは不均一であったため。)。なお、図13は模式図なので、データ数やデータ間隔は実際のそれとは異なる可能性がある。
【0084】
(b)コントロールユニット30は、その座標空間上に、サンプリング番号iに対応する走査位置ZCiを中心とし、かつ走査方向に所定サイズの広がり持った参照範囲Aiを想定する。
【0085】
(c)コントロールユニット30は、一連の信号S1j、…、S1600jのうち、参照範囲Aiに属する複数の信号の強度を参照する。なお、一連の信号S1j、…、S1600jの走査方向の配列ピッチは不均一であるため、参照範囲Aiに属する信号の個数は、サンプリング番号iによって異なる可能性がある。
【0086】
(d)コントロールユニット30は、手順(c)で参照した複数の信号の強度の中から最大値Imaxij及び最小値Iminijを見出し、その最大値Imaxij及び最小値Iminijを、Cij=(Imaxij−Iminij)/(Imaxij+Iminij)の式へ当てはめることによりコントラスト値Cijを求める。
【0087】
ステップS24:コントロールユニット30は、サンプリング番号iが最終値(ここでは1600)に達したか否かを判別し、最終値に達していなければステップS25へ移行し、最終値に達していればステップS26へ移行する。
【0088】
ステップS25:コントロールユニット30は、サンプリング番号iをインクリメントしてからステップS23へ戻る。したがって、コントロールユニット30は、j番目の画素の全てのサンプリング番号iに関するコントラスト値Cij(i=1〜1600)を順次に取得する。図14に模式的に示すのは、取得されたコントラスト値Cj1〜Cj1600の例である。なお、図14は模式図なので、データ数やデータ間隔は実際のそれとは異なる可能性がある。
【0089】
ステップS26:コントロールユニット30は、j番目の画素に関する一連のコントラスト値C1j〜C1600jに基づき、図14に曲線で示すように、走査方向に亘るコントラスト値の変化カーブを作成する。この変化カーブは、一連のコントラスト値C1j〜C1600jに対して補間処理を施すことによって求めることができる。或いは、この変化カーブは、一連のコントラスト値C1j〜C1600jに対して関数をフィッティングすることによって求めることができる。そして、コントロールユニット30は、作成した変化カーブから、コントラストが激しく変動する走査範囲と、コントラストが殆ど変動しない走査範囲(コントラストが減衰する走査範囲)との境界に相当するサンプリング番号iを見出し、それを可干渉距離に換算することで、境界位置Zbjを求める。この境界位置Zbjは、測定対象面25a上でj番目の画素に対応する光路長差を示す。
【0090】
ステップS27:コントロールユニット30は、j番目の画素に関する境界位置ZbjをZj’=Zbj/2 の式に当てはめることにより、測定対象面25a上でj番目の画素に対応する位置の高さZj’を算出する。
【0091】
ステップS28:コントロールユニット30は、画素番号jが最終値(ここでは、512×512=262144とする。)に達したか否かを判別し、達していなければステップS29へ移行し、達していればステップS30へ移行する。
【0092】
ステップS29:コントロールユニット30は、画素番号jをインクリメントしてからステップS22に戻る。したがって、コントロールユニット30は、全ての画素番号jに関する高さZj’(j=1〜262144)を順次に取得する。
【0093】
ステップS30:コントロールユニット30は、以上のステップで取得した高さZj’(j=1〜262144)を画素番号jの順に配列することにより、測定対象面25aの高さ分布データを取得する。そしてコントロールユニット30は、その高さ分布データを不図示のモニタ上に可視化すると共に、必要に応じて保存用メモリへ格納し、フローを終了する。
【0094】
以上、本装置のコントロールユニット30は、可干渉距離ZCの走査位置と統合光束の強度との関係(図13)を測定すると共に、その関係(図13)に基づき、測定光束と参照光束とが干渉する走査範囲と、測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界位置Zbを算出し(図14)、それを高さZj’に換算する。
【0095】
したがって、本装置の高さ方向の測定範囲は、可干渉距離ZCの長さ自体によって決まるのではなく、可干渉距離ZCの走査範囲の広さによって決まる。具体的には、高さ方向の測定範囲の広さは、可干渉距離ZCの走査範囲の広さの1/2倍となる。
【0096】
したがって、本装置では、可干渉距離ZCの走査範囲を拡張するだけで、高さ方向の測定範囲を拡張することができる。実際、本装置では、可干渉距離ZCの走査範囲を1.6μm〜40μmに設定することで、高さ方向の測定範囲を0.8μm〜40μmに設定した。これによって、高さ方向のダイナミックレンジは、20−0.8=19.2μmとなった。
【0097】
なお、本装置のコントロールユニット30は、可干渉距離ZCを走査するために光束の波長λのみを変更したが、波長幅|Δλ|のみを変更してもよく、また、波長λと波長幅|Δλ|との双方を変更してもよい。
【0098】
例えば、本装置のコントロールユニット30は、波長λのみを400nmから2000nmに向かって徐々に変化させ、2000nmになった時点で、波長幅|Δλ|をゼロに向かって徐々に狭め始めてもよい。このようにして2つのパラメータにより可干渉距離ZCを走査すれば、装置の使用波長範囲を広げることなく可干渉距離ZCの走査範囲を広げることができる。
【0099】
また、本装置のコントロールユニット30は、可干渉距離ZCを走査するために光束の波長λのみを変更し、しかもその変更ピッチを均一としたので、可干渉距離ZCの走査ピッチが不均一になったが、可干渉距離ZCの走査ピッチが均一となるよう波長λ及び波長幅|Δλ|の組み合わせの変更パターンを設定してもよい。
【0100】
[チューナブルフィルタの例]
以下、図6に示したチューナブルフィルタを詳しく説明する。図6において、符号20で示すのがチューナブルフィルタである。
【0101】
光源部9から入射する光は、第1光学系1に入射し、光軸に平行な光束に変換される。この光は、第1ウォラストンプリズム2に垂直入射し、P偏光とS偏光の進行方向が分離される。偏光分離素子として第1ウォラストンプリズム2を使用しているため、薄膜型偏光ビームスプリッタや偏光フィルタに比して高い消光比が得られる。図6においては、光の進行方向を矢印で示すと共に、ウォラストンプリズム入出力面を基準として、P偏光を矢印で、S偏光を○印(振動方向を示す)で表している。
【0102】
第1ウォラストンプリズム2を出射したP偏光とS偏光は平行光となり、それぞれ第2光学系3に入射し、主光線が光軸に平行な収束光に変換される。第2光学系3を出射した光は、プレチルト補正波長板4に入射し、ここで、後述する反射型液晶素子アレイデバイス6のプレチルト位相を半分補償される。このようなプレチルト補正波長板4の使用方法は、反射型液晶素子アレイデバイス6を使用する場合に周知なものである。
【0103】
第2光学系3は、出側テレセントリックな光学系となっており、第2光学系3を出射した光の主光線は、プレチルト補正波長板4に垂直に入射する。これにより、プレチルト補正波長板4によるリターデーション量が光束通過角度によって変動しないようにされている。このような光学系とするために、第1ウォラストンプリズム2による偏光分離点と第2光学系3の前側焦点がほぼ一致するようにされている。
【0104】
プレチルト補正波長板4を出射した光は、波長分散型分光器5のスリット51に収束する。スリット51は第2光学系3の後側焦点位置に配置されている。スリット51は、波長分散型分光器5のグレーティング53の分光方向に細く、それと直角な方向に長くされている。スリット51を透過した光は、分光器コリメータ52により、スリット51の像を波長分散型分光器5のグレーティング53上に結像する。すなわち、スリット51とグレーティング53は、それぞれ分光器コリメータ52の前側焦点、後側焦点位置に配置されている。
【0105】
グレーティング53により分光された光は、分光器カメラ光学系54によって、P偏光とS偏光の偏光分離入力光ビームの2つのスペクトラム像を、それぞれ、反射型液晶素子アレイデバイス6の第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62上に結像する。すなわち、グレーティング53と、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62とは、それぞれ、分光器カメラ光学系54の前側焦点位置、後側焦点位置に配置されている。これにより、第1液晶素子アレイ61上には、S偏光のスペクトラム像がそのアレイ方向に結像され、第2液晶素子アレイ62上には、P偏光のスペクトラム像がそのアレイ方向に結像される。第1液晶素子アレイ61と第2液晶素子アレイ62は、互いに独立して動作するので、光学系に偏光特性が存在する場合、これを補償することも可能である。
【0106】
また、この光学系を見ると分かるように、分光器カメラ光学系54は出側テレセントリックとなっており、主光線は、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62に対してそれぞれ垂直に入射する。又、波長に応じた入射角度の変動もないので、液晶素子により与えられるリターデーションが、光束通過角度によって変動しないようにされ、正確なものとなる。
【0107】
反射型液晶素子アレイドライバ13により、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62の各単位液晶素子(アレイとなって配列されているものの一つ一つ)に印加する電圧を調整することにより、各単位液晶素子のリターデーションを調節する。これによって、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62から反射して、入射してきた経路を逆にたどって戻っていく光束の、偏光の状態(一般には楕円偏光になっている)を、各単位液晶素子毎、すなわち入射した光の波長毎に変えることができる。
【0108】
第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62で変調されて反射された光は、分光器カメラ光学系54によりグレーティング53上に集光され、ここで、波長毎に分散していた光が2つの光束(P偏光とS偏光)に集められる。集められた光束は、分光器コリメータ52によりスリット51上に集光され、スリット51を透過して、プレチルト補正波長板4を通り、ここで、P偏光とS偏光が、第1ウォラストンプリズム2に集光される。
【0109】
第1ウォラストンプリズム2に集光されたP偏光とS偏光は、3つの光束となって出射する。すなわち、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62によりリターデーションを受けていないP偏光とS偏光は、第1ウォラストンプリズム2によって一つの光束にまとめられ、入射してきた方に戻っていく。P偏光のうちリターデーションを受けてS偏光に変換された成分、S偏光のうちリターデーションを受けてP偏光に変換された成分は、第1ウォラストンプリズム2によって、さらに光路を曲げられ、図6に示すように外側に広がって進行する。そして、第1光学系1により集光された後、第3光学系7により平行光に変えられ、第2ウォラストンプリズム8に入射する。第2ウォラストンプリズム8は、このP偏光とS偏光を一つの光にまとめて出力する。図6に示す例では、第1光学系1と第3光学系7とでアフォーカルな光学系が構成されている。
【0110】
また、第1ウォラストンプリズム2による偏光分離点と、波長分散型分光器5に用いられているグレーティング53における波長分解点、および第2ウォラストンプリズム8による偏光合波点がほぼ共役関係にあるようにされている。これにより、グレーティング53と第1ウォラストンプリズム2、第2ウォラストンプリズム8を通過する光束断面積を最小にして高価な素子の大きさを小さくすることができる。
【0111】
以上述べたような光学系において、第2ウォラストンプリズム8から出射する光のスペクトラムは、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62によって受けたリターデーションによって変化するので、反射型液晶素子アレイドライバ13の出力により、このスペクトル分布を変化させることができ、チューナブルフィルタとしての作用を果たしている。
【符号の説明】
【0112】
9…白色光源部、20…波長選択素子、21、22…ビームスプリッタ、23…補正板、24…参照ミラー、26…結像光学系、27…撮像素子、30…コントロールユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象面の高さや形状を測定する干渉測定装置及び干渉測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、波長走査型干渉計の原理を使用した面形状測定装置が開示されている。この装置では、波長に対する干渉信号の変化カーブが測定対象面の高さに依って異なることを利用しており、具体的には、波長可変光源により光の波長を走査しながら干渉縞画像を繰り返し取得することにより、測定対象面の各位置に関する干渉信号の変化カーブを測定し、様々な高さについての変化カーブの理論値(理論カーブ)の中から、測定された変化カーブに近いものをパターンマッチングにより見出すことにより、その位置の高さを求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3861666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、測定対象面の高低差が光の可干渉距離によって決まる所定値より大きい場合には、一部の位置については有意な干渉信号が得られなくなるため、その面形状を一括して測定することはできない(特許文献1の段落[0011]を参照。)。よって、この場合は、測定対象物を光軸方向へ移動させて測定を繰り返す必要があり、測定対象物の移動誤差が形状測定誤差に重畳することを許容せざるを得なかった。
【0005】
そこで本発明は、測定対象物の移動機構を使用せずとも高さ方向のダイナミックレンジを拡大することが可能な干渉測定装置及び干渉測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明を例示する干渉測定装置の一態様は、可干渉距離が有限の光束を生成する生成手段と、前記光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面へ照射すると共に他方を参照面へ照射する分岐手段と、前記測定対象面を経由した測定光束と前記参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手段と、前記分岐手段により分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手段と、前記可干渉距離の走査位置と前記統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手段と、前記関係情報に基づき、前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲と、前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、前記測定対象面の高さ情報として取得する演算手段とを備える。
【0007】
本発明を例示する干渉測定方法の一態様は、可干渉距離が有限の光束を生成する生成手順と、前記光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面へ照射すると共に他方を参照面へ照射する分岐手順と、前記測定対象面を経由した測定光束と前記参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手順と、前記分岐手順で分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手順と、前記可干渉距離の走査位置と前記統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手順と、前記関係情報に基づき、前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲と、前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、前記測定対象面の高さ情報として取得する演算手順とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定対象物の移動機構を使用せずとも高さ方向のダイナミックレンジを拡大することが可能な干渉測定装置及び干渉測定方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の面形状測定装置の構成配置図である。
【図2】波長選択素子20によって抽出される光束のスペクトルを説明する図である。
【図3】波長選択素子20によって抽出される光束の干渉性の変化を説明する模式図である。
【図4】中心波長λと可干渉距離ZCとの関係(ZC=λ2/|Δλ|)をグラフにしたものである。
【図5】中心波長λと、可干渉距離ZCの走査ピッチとの関係をグラフにしたものである。
【図6】チューナブルフィルタの例を示す図である。
【図7】コントロールユニット30による測定処理のフローチャートである。
【図8】シミュレーションで仮定した測定対象面25aの形状を示す図である。
【図9】151番目のサンプリングで取得された画像I151である(中心波長λがλ151=0.55μmに設定され、可干渉距離ZCがZC151=3.025μmに設定されたとき。)。
【図10】651番目のサンプリングで取得された画像I651である(中心波長λがλ651=1.05μmに設定され、可干渉距離ZCがZC651=11.025μmに設定されたとき。)。
【図11】1151番目のサンプリングで取得された画像I1151である(中心波長λがλ1151=1.55μmに設定され、可干渉距離ZCがZC1151=24.025μmに設定されたとき。)。
【図12】コントロールユニット30による解析処理のフローチャートである。
【図13】ステップS23を説明する図である。
【図14】ステップS26を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態として、面形状測定装置を説明する。
【0011】
図1は、面形状測定装置の構成配置図である。図1に示すとおり面形状測定装置には、白色光源部9、波長選択素子20、ビームスプリッタ21、22、補正板23、参照ミラー24、結像光学系26、撮像素子27、コントロールユニット30などが備えられる。このうち、ビームスプリッタ21、22、結像光学系26、撮像素子27が干渉計を構成している。なお、ここでは、干渉計のタイプをマイケルソン型と仮定するが、他のタイプ(マッハツェンダー型、ミラウ型など)に変更することも可能である。
【0012】
白色光源部9は、ハロゲンランプなどの白色光源9Aと、ビームエキスパンダ9Bとを備え、適当な径の平行光束からなる白色光束を出射する。
【0013】
波長選択素子20は、白色光源部9から射出した白色光束のうち、一部の波長帯域の成分のみを抽出する。波長選択素子20が抽出する波長帯域の中心波長と、その波長帯域の幅(波長幅)と、その波長帯域における各波長の強度とは、それぞれコントロールユニット30によって制御可能である。
【0014】
波長選択素子20によって抽出された光束は、ビームスプリッタ21を透過した後、ビームスプリッタ22の分離面22aを反射する光束(参照光束)と、ビームスプリッタ22の分離面22aを透過する光束(測定光束)とに分岐する。
【0015】
分離面22aを反射した参照光束は、補正板23を通過した後、参照ミラー24の参照面24aへ正面から入射する。その参照光束は、参照面24aを反射することで光路を折り返し、補正板23を再通過した後、ビームスプリッタ22へ戻る。
【0016】
分離面22aを透過した測定光束は、測定対象物25の測定対象面25aへ正面から入射する。その測定光束は、測定対象面25aを反射することで光路を折り返し、ビームスプリッタ22へ戻る。
【0017】
ビームスプリッタ22へ戻った参照光束と測定光束とは分離面22aにて統合され、統合光束となってビームスプリッタ21の側へ向かう。その統合光束は、ビームスプリッタ21を反射し、結像光学系26を介して撮像素子27の撮像面27aへ入射する。
【0018】
撮像素子27は、撮像面27a上の輝度分布を示す画像、すなわち統合光束の強度分布を示す画像を生成する。なお、撮像素子27による画像生成(撮像)のタイミングはコントロールユニット30によって制御される。
【0019】
ここで、参照面24aで反射した参照光束の波面の複素振幅をRr・u(t)とし、測定対象面25aで反射した測定光束の波面の複素振幅をRs・u(t‐τ)とすると、統合光束の波面(合成波面)の複素振幅は、以下のとおり表される。
【0020】
【数1】
【0021】
但し、u(t)は白色光源9Aからの光束の波面(基本波面)を規格化したものの複素振幅であり、Rrは参照面24aの反射率、Rsは測定対象面25aの反射率である。τは、参照光束と測定光束との間の光路長差Lに起因して生じる、両者の波面の到達時間差を表しており、τ=L/ cで表される(但し、cは光速である。)。
【0022】
このとき、撮像素子27で検出される統合光束の強度Iは、以下のとおり表される。
【0023】
【数2】
【0024】
この式の中で、第3項が干渉効果を表している。但し、第3項における関数Re[X]は、Xの複素関数の実部を意味している。
【0025】
以下、第3項に着目し、これをIint(τ)とする。第3項におけるRe[X]のXは自己相関関数なので、ウィーナー・ヒンチンの定理を使って、Iint(τ)は、以下のとおり表される。
【0026】
【数3】
【0027】
つまり、Iint(τ)は、下記のエネルギースペクトルを、逆フーリエ変換したものに相当する。
【0028】
【数4】
【0029】
但し、U(ω)は、以下のとおりu(t)のフーリエ変換である。
【0030】
【数5】
【0031】
この場合、逆フーリエ変換の関係から、以下の式も成り立つ。
【0032】
【数6】
【0033】
ここで、本実施形態の波長選択素子20は、抽出する光束のスペクトルを任意のスペクトルに設定できる。よって、波長選択素子20は、上述したA(ω)を以下のとおり設定するものと仮定する。
【0034】
【数7】
【0035】
この場合、Iint(τ)は、以下のとおり表される。
【0036】
【数8】
【0037】
したがって、撮像素子27で検出される統合光束の強度Iは、以下のとおり表される。
【0038】
【数9】
【0039】
この中の干渉項が最初にゼロになるのは、|Δω|τ/2=πのときなので、本件においてはτ=2π/|Δω|を可干渉時間と定義すると、以下の関係が成り立つ。
【0040】
【数10】
【0041】
【数11】
【0042】
但し、λは、波長選択素子20によって抽出される光束の中心波長であり、|Δλ|は、その光束の波長幅である。
【0043】
したがって、波長選択素子20によって抽出される光束の可干渉距離Zcは、以下のとおり表される。
【0044】
【数12】
【0045】
そして、本実施形態では、図2に示すとおり、波長選択素子20によって抽出される光束の中心波長λは、予め決められた波長範囲内(ここでは400nm〜2000nmとする。)を微小単位(ここでは1nmとする。)で変更することが可能であり、また、その光束の波長幅|Δλ|は、その波長範囲よりも狭い所定値(ここでは100nmとする。)に固定されているものと仮定する(上述したA(ω)の定義を参照)。また、その光束に含まれる各波長成分の強度は、予め決められた値に揃えられているものと仮定する。
【0046】
このように、光束の中心波長λを400nmから2000nmに向けて徐々に変化させると、その光束の干渉性は、図3に模式的に示すように徐々に高まり、その光束の可干渉距離ZC(ZC=λ2/|Δλ|)は、1.6μmから40μmへと走査されることになる。なお、図4は、中心波長λと可干渉距離ZCとの関係(ZC=λ2/|Δλ|)をグラフにしたものである。
【0047】
また、上述したとおり中心波長λの変化ピッチを一定(ここでは1nm)にした場合、可干渉距離ZC(=λ2/|Δλ|)の走査ピッチは、中心波長λが短いときほど細かくなる。なお、図5は、中心波長λと走査ピッチとの関係をグラフにしたものである。
【0048】
以上の機能を有する波長選択素子20としては、例えば、液晶チューナブルフィルタと色変換フィルタを組み合わせたリオフィルタ、或いは、図6に示すようなチューナブルフィルタを適用することが可能である。なお、図6に示すチューナブルフィルタの詳細は、後述する。
【0049】
撮像素子27は、本装置の使用波長帯域内(ここでは350nm〜2050nm)の各光に感度を有しており、本装置の他の光学素子(ビームエキスパンダ9B、ビームスプリッタ21、22、補正板23、結像光学系26など)の硝材には、その使用波長帯域内の各光を導光できるものが選定されている。また、参照光束と測定光束との干渉強度をより高めるために、参照ミラー24aの反射率は、測定対象物の反射率となるべく近い値に設定されていることが望ましい。
【0050】
また、参照光束の単独光路へ配置された補正板23の光学的特性(分散、屈折率など)は、補正板23から参照光束の波面に与えられる変形が、ビームスプリッタ22から測定光束の波面に与えられる変形と同じになるよう予め設定されている。これによって、参照光束の単独光路の条件と測定光束の単独光路の条件とが共通化される。
【0051】
また、測定対象物25の近傍において、撮像面27aと光学的に共役な基準面25bは、次の条件を満たす。すなわち、基準面25bからビームスプリッタ22の分離面22aまでの距離は、参照面24aからビームスプリッタ22の分離面22aまでの距離と一致している。
【0052】
また、測定対象面25aの各位置は、基準面25bの上方又は下方に存在する。ここでは、測定対象面25aの各位置は、基準面25bの上方(ビームスプリッタ22に近い側)に存在しているものと仮定する。
【0053】
ここで、測定対象面25a上の或る位置に着目する(以下、この位置を「着目位置」と称す。)。撮像面27a上で着目位置に対応する画素(着目画素)へ入射する統合光束は、前述したとおり参照光束と測定光束とからなるが、それら光束の光路長差Zは、基準面25bを基準とした着目位置の高さZ’に応じた値(Z=2Z’)をとる。
【0054】
仮に、可干渉距離ZCの走査位置が前述した走査範囲の下端値(1.6μm)の近傍であって、可干渉距離ZCより光路長差Zの方が長いとき(つまりZ’>ZC/2が成り立つとき)には、それらの参照光束及び測定光束は互いに干渉しないので、可干渉距離ZCの走査中に着目画素が生成する信号の強度のコントラストはゼロとなる。
【0055】
一方、可干渉距離ZCの走査位置が前述した走査範囲の上端値(40μm)の近傍であって、可干渉距離ZCより光路長差Zの方が短いとき(つまりZ’<ZC/2が成り立つとき)には、それらの参照光束及び測定光束は互いに干渉するので、可干渉距離ZCの走査中に着目画素が生成する信号の強度のコントラストはゼロでは無くなる。
【0056】
したがって、本装置では、可干渉距離ZCを前述した走査範囲の下端値(1.6μm)から上端値(40μm)に向けて走査すると共に、その走査中に着目画素が生成する信号の強度のコントラストを監視し、コントラストが変化する走査範囲とコントラストが変化しない走査範囲との境界に相当する走査位置(境界位置Zb)を見出せば、着目位置の高さZ’をZ’=Zb/2の式によって既知とすることができる。このことは、測定対象面25aの各位置について成り立つ。
【0057】
なお、可干渉距離ZCの走査範囲(1.6μm〜40μm)を高さZ’の単位で表すと、0.8μm〜20μmの範囲となる。よって、本装置の高さ方向の測定範囲は、0.8μm〜20μmの範囲である。
【0058】
よって、後述する測定処理の開始に当たり、測定対象物25の光軸方向の位置は、測定対象面25aの各位置の高さZ’が0.8μm〜20μmの範囲内に収まるように調整される。
【0059】
本装置のコントロールユニット30は、制御装置としての機能と演算装置としての機能とを有する。
【0060】
制御装置としてのコントロールユニット30は、光源部9、波長選択素子20、撮像素子27を駆動制御することにより、測定対象面25aの各位置の高さ情報を含んだ画像群を取得する(測定処理)。また、演算装置としてのコントロールユニット30は、その画像群に対して演算を施すことにより、測定対象面25aの高さ分布を求める(解析処理)。
【0061】
次に、コントロールユニット30による測定処理を説明する。図7は、コントロールユニット30による測定処理のフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
【0062】
ステップS10:コントロールユニット30は、サンプリング番号iを初期値(1)に設定する。
【0063】
ステップS11:コントロールユニット30は、光源部9及び波長選択素子20をオンする。
【0064】
ステップS12:コントロールユニット30は、波長選択素子20に対して、抽出する光束の中心波長λをi番目の波長λiに設定するよう指示を与える。なお、i番目の波長λi(nm)は、λi=400+(i−1)で表される。これによって、可干渉距離ZCの走査位置は、i番目の走査位置ZCiに設定される。なお、i番目の走査位置ZCi(nm)は、ZCi=λi2/100で表される。
【0065】
ステップS13:コントロールユニット30は、撮像素子17を駆動して1フレーム分の画像をサンプリングする。以下、i番目のサンプリングでサンプリングされた画像を「画像Ii」とおく。
【0066】
ステップS14:コントロールユニット30は、サンプリング番号iが最終値(ここでは1600)に達したか否かを判別し、最終値に達していなければステップS15へ移行し、最終値に達していればステップS16へ移行する。
【0067】
ステップS15:コントロールユニット30は、サンプリング番号iをインクリメントしてからステップS12へ戻る。したがって、コントロールユニット30は、可干渉距離ZCを走査しながら画像Iiの取得を1600回繰り返す。
【0068】
ステップS16:コントロールユニット30は、光源部9及び波長選択素子20をオフする。
【0069】
ステップS17:コントロールユニット30は、以上のステップで取得した一連の画像I1、…、I1600をコントロールユニット30内の保存用メモリに格納し、フローを終了する。
【0070】
次に、測定処理で得られる画像I1、…、I1600の一部を説明する。図8〜図11に示す画像は、シミュレーションによって取得されたものである。
【0071】
シミュレーションでは、測定対象面25aの形状を、図8に示すようにZ’=A・|cos(X)・cos(Y)|とした。なお、図8では、高さが共通の領域を互いに同じ濃度で表している。
【0072】
また、シミュレーションでは、測定対象面25aのピーク値を決めるAは、10μmとおいた。また、シミュレーションでは、測定対象面25aの反射率は、参照面24aの反射率と同じと仮定した。
【0073】
図9は、151番目のサンプリングで取得された画像I151である。なお、151番目のサンプリングでは、中心波長λはλ151=0.55μmに設定され、可干渉距離ZCはZC151=3.025μmに設定された。
【0074】
図9から明らかなとおり、画像I151において、可干渉距離ZC151に相当する高さ(Z’=ZC151/2=1.5125μm)より低い領域では干渉効果が高く、干渉がない場合の平均強度(図では強度2)からの差異の大きな出力を示しているが、それより高い領域では、干渉がない場合の平均強度に近い。
【0075】
図10は、651番目のサンプリングで取得された画像I651である。なお、651番目のサンプリングでは、中心波長λはλ651=1.05μmに設定され、可干渉距離ZCはZC651=11.025μmに設定された。
【0076】
図10から明らかなとおり、画像I651において、可干渉距離ZC651に相当する高さ(Z’=ZC651/2=5.5125μm)より低い領域では干渉効果が現れており、干渉のない場合の平均強度(図では強度2)からの差異が大きい強度となっているが、それより高い領域では、強度は平均強度に近く、干渉効果が現れていない。
【0077】
図11は、1151番目のサンプリングで取得された画像I1151である。なお、1151番目のサンプリングでは、中心波長λはλ1151=1.55μmに設定され、可干渉距離ZCはZC1151=24.025μmに設定された。
【0078】
図11から明らかなとおり、画像I1151において、可干渉距離ZC1151に相当する高さ(Z’=ZC1151/2=12.0125μm)より低い領域(すなわち全ての領域)では強度は平均値(図では強度2)からの差異が大きく、干渉効果が現れている。
【0079】
次に、コントロールユニット30による解析処理を説明する。図12は、コントロールユニット30による解析処理のフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
なお、解析処理の開始時点では、測定処理は実行済みであり、コントロールユニット30内の保存用メモリには一連の画像I1、…、I1600が格納されているものと仮定する。
【0080】
ステップS21:コントロールユニット30は、保存用メモリに格納されている一連の画像I1、…、I1600を、コントロールユニット30の作業用メモリ上へ読み出すと共に、画素番号jを初期値(1)に設定する。
【0081】
ステップS22:コントロールユニット30は、サンプリング番号iを初期値(1)に設定する。
【0082】
ステップS23:コントロールユニット30は、画素番号j及びサンプリング番号iに関するコントラスト値Cijを次の手順(a)〜(d)により算出する。
【0083】
(a)コントロールユニット30は、一連の画像I1、…、I1600のうち、j番目の画素に関する一連の信号S1j、…、S1600jを参照し、図13に模式的に示すとおりそれらの信号S1j、…、S1600jを「可干渉距離ZCの走査位置と信号強度との関係を示す座標空間」上に写像する。この座標空間に写像された信号の走査方向に亘る配列ピッチは、不等間隔である(なぜなら、可干渉距離ZCの走査ピッチは不均一であったため。)。なお、図13は模式図なので、データ数やデータ間隔は実際のそれとは異なる可能性がある。
【0084】
(b)コントロールユニット30は、その座標空間上に、サンプリング番号iに対応する走査位置ZCiを中心とし、かつ走査方向に所定サイズの広がり持った参照範囲Aiを想定する。
【0085】
(c)コントロールユニット30は、一連の信号S1j、…、S1600jのうち、参照範囲Aiに属する複数の信号の強度を参照する。なお、一連の信号S1j、…、S1600jの走査方向の配列ピッチは不均一であるため、参照範囲Aiに属する信号の個数は、サンプリング番号iによって異なる可能性がある。
【0086】
(d)コントロールユニット30は、手順(c)で参照した複数の信号の強度の中から最大値Imaxij及び最小値Iminijを見出し、その最大値Imaxij及び最小値Iminijを、Cij=(Imaxij−Iminij)/(Imaxij+Iminij)の式へ当てはめることによりコントラスト値Cijを求める。
【0087】
ステップS24:コントロールユニット30は、サンプリング番号iが最終値(ここでは1600)に達したか否かを判別し、最終値に達していなければステップS25へ移行し、最終値に達していればステップS26へ移行する。
【0088】
ステップS25:コントロールユニット30は、サンプリング番号iをインクリメントしてからステップS23へ戻る。したがって、コントロールユニット30は、j番目の画素の全てのサンプリング番号iに関するコントラスト値Cij(i=1〜1600)を順次に取得する。図14に模式的に示すのは、取得されたコントラスト値Cj1〜Cj1600の例である。なお、図14は模式図なので、データ数やデータ間隔は実際のそれとは異なる可能性がある。
【0089】
ステップS26:コントロールユニット30は、j番目の画素に関する一連のコントラスト値C1j〜C1600jに基づき、図14に曲線で示すように、走査方向に亘るコントラスト値の変化カーブを作成する。この変化カーブは、一連のコントラスト値C1j〜C1600jに対して補間処理を施すことによって求めることができる。或いは、この変化カーブは、一連のコントラスト値C1j〜C1600jに対して関数をフィッティングすることによって求めることができる。そして、コントロールユニット30は、作成した変化カーブから、コントラストが激しく変動する走査範囲と、コントラストが殆ど変動しない走査範囲(コントラストが減衰する走査範囲)との境界に相当するサンプリング番号iを見出し、それを可干渉距離に換算することで、境界位置Zbjを求める。この境界位置Zbjは、測定対象面25a上でj番目の画素に対応する光路長差を示す。
【0090】
ステップS27:コントロールユニット30は、j番目の画素に関する境界位置ZbjをZj’=Zbj/2 の式に当てはめることにより、測定対象面25a上でj番目の画素に対応する位置の高さZj’を算出する。
【0091】
ステップS28:コントロールユニット30は、画素番号jが最終値(ここでは、512×512=262144とする。)に達したか否かを判別し、達していなければステップS29へ移行し、達していればステップS30へ移行する。
【0092】
ステップS29:コントロールユニット30は、画素番号jをインクリメントしてからステップS22に戻る。したがって、コントロールユニット30は、全ての画素番号jに関する高さZj’(j=1〜262144)を順次に取得する。
【0093】
ステップS30:コントロールユニット30は、以上のステップで取得した高さZj’(j=1〜262144)を画素番号jの順に配列することにより、測定対象面25aの高さ分布データを取得する。そしてコントロールユニット30は、その高さ分布データを不図示のモニタ上に可視化すると共に、必要に応じて保存用メモリへ格納し、フローを終了する。
【0094】
以上、本装置のコントロールユニット30は、可干渉距離ZCの走査位置と統合光束の強度との関係(図13)を測定すると共に、その関係(図13)に基づき、測定光束と参照光束とが干渉する走査範囲と、測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界位置Zbを算出し(図14)、それを高さZj’に換算する。
【0095】
したがって、本装置の高さ方向の測定範囲は、可干渉距離ZCの長さ自体によって決まるのではなく、可干渉距離ZCの走査範囲の広さによって決まる。具体的には、高さ方向の測定範囲の広さは、可干渉距離ZCの走査範囲の広さの1/2倍となる。
【0096】
したがって、本装置では、可干渉距離ZCの走査範囲を拡張するだけで、高さ方向の測定範囲を拡張することができる。実際、本装置では、可干渉距離ZCの走査範囲を1.6μm〜40μmに設定することで、高さ方向の測定範囲を0.8μm〜40μmに設定した。これによって、高さ方向のダイナミックレンジは、20−0.8=19.2μmとなった。
【0097】
なお、本装置のコントロールユニット30は、可干渉距離ZCを走査するために光束の波長λのみを変更したが、波長幅|Δλ|のみを変更してもよく、また、波長λと波長幅|Δλ|との双方を変更してもよい。
【0098】
例えば、本装置のコントロールユニット30は、波長λのみを400nmから2000nmに向かって徐々に変化させ、2000nmになった時点で、波長幅|Δλ|をゼロに向かって徐々に狭め始めてもよい。このようにして2つのパラメータにより可干渉距離ZCを走査すれば、装置の使用波長範囲を広げることなく可干渉距離ZCの走査範囲を広げることができる。
【0099】
また、本装置のコントロールユニット30は、可干渉距離ZCを走査するために光束の波長λのみを変更し、しかもその変更ピッチを均一としたので、可干渉距離ZCの走査ピッチが不均一になったが、可干渉距離ZCの走査ピッチが均一となるよう波長λ及び波長幅|Δλ|の組み合わせの変更パターンを設定してもよい。
【0100】
[チューナブルフィルタの例]
以下、図6に示したチューナブルフィルタを詳しく説明する。図6において、符号20で示すのがチューナブルフィルタである。
【0101】
光源部9から入射する光は、第1光学系1に入射し、光軸に平行な光束に変換される。この光は、第1ウォラストンプリズム2に垂直入射し、P偏光とS偏光の進行方向が分離される。偏光分離素子として第1ウォラストンプリズム2を使用しているため、薄膜型偏光ビームスプリッタや偏光フィルタに比して高い消光比が得られる。図6においては、光の進行方向を矢印で示すと共に、ウォラストンプリズム入出力面を基準として、P偏光を矢印で、S偏光を○印(振動方向を示す)で表している。
【0102】
第1ウォラストンプリズム2を出射したP偏光とS偏光は平行光となり、それぞれ第2光学系3に入射し、主光線が光軸に平行な収束光に変換される。第2光学系3を出射した光は、プレチルト補正波長板4に入射し、ここで、後述する反射型液晶素子アレイデバイス6のプレチルト位相を半分補償される。このようなプレチルト補正波長板4の使用方法は、反射型液晶素子アレイデバイス6を使用する場合に周知なものである。
【0103】
第2光学系3は、出側テレセントリックな光学系となっており、第2光学系3を出射した光の主光線は、プレチルト補正波長板4に垂直に入射する。これにより、プレチルト補正波長板4によるリターデーション量が光束通過角度によって変動しないようにされている。このような光学系とするために、第1ウォラストンプリズム2による偏光分離点と第2光学系3の前側焦点がほぼ一致するようにされている。
【0104】
プレチルト補正波長板4を出射した光は、波長分散型分光器5のスリット51に収束する。スリット51は第2光学系3の後側焦点位置に配置されている。スリット51は、波長分散型分光器5のグレーティング53の分光方向に細く、それと直角な方向に長くされている。スリット51を透過した光は、分光器コリメータ52により、スリット51の像を波長分散型分光器5のグレーティング53上に結像する。すなわち、スリット51とグレーティング53は、それぞれ分光器コリメータ52の前側焦点、後側焦点位置に配置されている。
【0105】
グレーティング53により分光された光は、分光器カメラ光学系54によって、P偏光とS偏光の偏光分離入力光ビームの2つのスペクトラム像を、それぞれ、反射型液晶素子アレイデバイス6の第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62上に結像する。すなわち、グレーティング53と、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62とは、それぞれ、分光器カメラ光学系54の前側焦点位置、後側焦点位置に配置されている。これにより、第1液晶素子アレイ61上には、S偏光のスペクトラム像がそのアレイ方向に結像され、第2液晶素子アレイ62上には、P偏光のスペクトラム像がそのアレイ方向に結像される。第1液晶素子アレイ61と第2液晶素子アレイ62は、互いに独立して動作するので、光学系に偏光特性が存在する場合、これを補償することも可能である。
【0106】
また、この光学系を見ると分かるように、分光器カメラ光学系54は出側テレセントリックとなっており、主光線は、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62に対してそれぞれ垂直に入射する。又、波長に応じた入射角度の変動もないので、液晶素子により与えられるリターデーションが、光束通過角度によって変動しないようにされ、正確なものとなる。
【0107】
反射型液晶素子アレイドライバ13により、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62の各単位液晶素子(アレイとなって配列されているものの一つ一つ)に印加する電圧を調整することにより、各単位液晶素子のリターデーションを調節する。これによって、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62から反射して、入射してきた経路を逆にたどって戻っていく光束の、偏光の状態(一般には楕円偏光になっている)を、各単位液晶素子毎、すなわち入射した光の波長毎に変えることができる。
【0108】
第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62で変調されて反射された光は、分光器カメラ光学系54によりグレーティング53上に集光され、ここで、波長毎に分散していた光が2つの光束(P偏光とS偏光)に集められる。集められた光束は、分光器コリメータ52によりスリット51上に集光され、スリット51を透過して、プレチルト補正波長板4を通り、ここで、P偏光とS偏光が、第1ウォラストンプリズム2に集光される。
【0109】
第1ウォラストンプリズム2に集光されたP偏光とS偏光は、3つの光束となって出射する。すなわち、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62によりリターデーションを受けていないP偏光とS偏光は、第1ウォラストンプリズム2によって一つの光束にまとめられ、入射してきた方に戻っていく。P偏光のうちリターデーションを受けてS偏光に変換された成分、S偏光のうちリターデーションを受けてP偏光に変換された成分は、第1ウォラストンプリズム2によって、さらに光路を曲げられ、図6に示すように外側に広がって進行する。そして、第1光学系1により集光された後、第3光学系7により平行光に変えられ、第2ウォラストンプリズム8に入射する。第2ウォラストンプリズム8は、このP偏光とS偏光を一つの光にまとめて出力する。図6に示す例では、第1光学系1と第3光学系7とでアフォーカルな光学系が構成されている。
【0110】
また、第1ウォラストンプリズム2による偏光分離点と、波長分散型分光器5に用いられているグレーティング53における波長分解点、および第2ウォラストンプリズム8による偏光合波点がほぼ共役関係にあるようにされている。これにより、グレーティング53と第1ウォラストンプリズム2、第2ウォラストンプリズム8を通過する光束断面積を最小にして高価な素子の大きさを小さくすることができる。
【0111】
以上述べたような光学系において、第2ウォラストンプリズム8から出射する光のスペクトラムは、第1液晶素子アレイ61、第2液晶素子アレイ62によって受けたリターデーションによって変化するので、反射型液晶素子アレイドライバ13の出力により、このスペクトル分布を変化させることができ、チューナブルフィルタとしての作用を果たしている。
【符号の説明】
【0112】
9…白色光源部、20…波長選択素子、21、22…ビームスプリッタ、23…補正板、24…参照ミラー、26…結像光学系、27…撮像素子、30…コントロールユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可干渉距離が有限の光束を生成する生成手段と、
前記光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面へ照射すると共に他方を参照面へ照射する分岐手段と、
前記測定対象面を経由した測定光束と前記参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手段と、
前記分岐手段により分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手段と、
前記可干渉距離の走査位置と前記統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手段と、
前記関係情報に基づき、前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲と、前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、前記測定対象面の高さ情報として取得する演算手段と、
を備えることを特徴とする干渉測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の干渉測定装置において、
前記走査手段は、
前記光束の可干渉距離を走査するために、その光束の中心波長及び波長幅の少なくとも一方を変化させる
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れか一項に記載の干渉測定装置において、
前記演算手段は、
前記強度の走査方向に亘るコントラストが閾値以上となるような走査範囲を前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲とみなし、前記強度の走査方向に亘るコントラストが閾値未満となるような走査範囲を前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲とみなして前記高さ情報を取得する
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の干渉測定装置において、
前記測定手段は、
前記関係情報を前記測定対象面の位置毎に取得し、
前記演算手段は、
前記高さ情報を前記測定対象面の位置毎に取得する
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の干渉測定装置において、
前記演算手段は、
前記強度の空間方向に亘るコントラストが閾値以上となるような走査範囲を前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲とみなし、前記強度の空間方向に亘るコントラストが閾値未満となるような走査範囲を前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲とみなして前記高さ情報を取得する
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の干渉測定装置において、
前記測定光束のうち前記参照光束との光路長差がゼロとなる基準面は、前記測定対象面から外れた面に位置しており、
前記測定手段による前記強度の検出面は、前記基準面と共役な面に位置している
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項7】
可干渉距離が有限の光束を生成する生成手順と、
前記光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面へ照射すると共に他方を参照面へ照射する分岐手順と、
前記測定対象面を経由した測定光束と前記参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手順と、
前記分岐手順で分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手順と、
前記可干渉距離の走査位置と前記統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手順と、
前記関係情報に基づき、前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲と、前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、前記測定対象面の高さ情報として取得する演算手順と、
を含むことを特徴とする干渉測定方法。
【請求項1】
可干渉距離が有限の光束を生成する生成手段と、
前記光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面へ照射すると共に他方を参照面へ照射する分岐手段と、
前記測定対象面を経由した測定光束と前記参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手段と、
前記分岐手段により分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手段と、
前記可干渉距離の走査位置と前記統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手段と、
前記関係情報に基づき、前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲と、前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、前記測定対象面の高さ情報として取得する演算手段と、
を備えることを特徴とする干渉測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の干渉測定装置において、
前記走査手段は、
前記光束の可干渉距離を走査するために、その光束の中心波長及び波長幅の少なくとも一方を変化させる
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れか一項に記載の干渉測定装置において、
前記演算手段は、
前記強度の走査方向に亘るコントラストが閾値以上となるような走査範囲を前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲とみなし、前記強度の走査方向に亘るコントラストが閾値未満となるような走査範囲を前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲とみなして前記高さ情報を取得する
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の干渉測定装置において、
前記測定手段は、
前記関係情報を前記測定対象面の位置毎に取得し、
前記演算手段は、
前記高さ情報を前記測定対象面の位置毎に取得する
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の干渉測定装置において、
前記演算手段は、
前記強度の空間方向に亘るコントラストが閾値以上となるような走査範囲を前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲とみなし、前記強度の空間方向に亘るコントラストが閾値未満となるような走査範囲を前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲とみなして前記高さ情報を取得する
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の干渉測定装置において、
前記測定光束のうち前記参照光束との光路長差がゼロとなる基準面は、前記測定対象面から外れた面に位置しており、
前記測定手段による前記強度の検出面は、前記基準面と共役な面に位置している
ことを特徴とする干渉測定装置。
【請求項7】
可干渉距離が有限の光束を生成する生成手順と、
前記光束を2つの光束に分岐し、それら2つの光束の一方を測定対象面へ照射すると共に他方を参照面へ照射する分岐手順と、
前記測定対象面を経由した測定光束と前記参照面を経由した参照光束とを同一光路に統合して統合光束を生成する統合手順と、
前記分岐手順で分岐される光束の可干渉距離を走査する走査手順と、
前記可干渉距離の走査位置と前記統合光束の強度との関係を示す関係情報を取得する測定手順と、
前記関係情報に基づき、前記測定光束と前記参照光束とが干渉する走査範囲と、前記測定光束と前記参照光束とが干渉しない走査範囲との境界を、前記測定対象面の高さ情報として取得する演算手順と、
を含むことを特徴とする干渉測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−127966(P2011−127966A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285345(P2009−285345)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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