説明

広バンドギャップ半導体デバイス

結晶支持構造110をその上に有する基板115とIII−V結晶210を備えるデバイス100。III−V結晶は、結晶支持構造の1つの単一接触領域140上にある。接触領域の面積は、III−V結晶の表面積320の約50パーセント以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、1つまたは複数のIII−V結晶を有する半導体デバイスおよびその製造方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
III−V結晶は、広いバンドギャップを有することができるので、いくつかの光学的および電子的用途において重要である。例えば、ある光電子デバイスでは、III−V結晶が使用されて、他の方法では得るのが困難であるかもしれない波長の光(例えば、青色光)を放射することができる。しかし、III−V結晶のエピタキシャル層を成長させること、または、そのような結晶を実際の応用に適した大きさに成長させることは、困難であることがある。また、III−V結晶の格子定数が基板の格子定数に一致しないために、特定の種類の結晶基板、例えばシリコン上にIII−V結晶のエピタキシャル層を成長させることが困難であることもある。特に、III−V族結晶を異なる格子定数を有する基板上に成長させると、一般に、III−V族結晶に欠陥が形成された。成長III−V結晶に過剰な数の欠陥があると、そのとき、その結晶の光電子特性は損なわれる(例えば、発光効率の低下、または電気抵抗率の実質的な増加または減少)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願第10/835,639号
【特許文献2】米国特許出願第11/460,901号
【特許文献3】米国特許出願第11/456,428号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】F.A.PonceおよびD.P.Bour、Nature 386:351〜59(1997)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態はデバイスである。本デバイスは、結晶支持構造をその上に有する基板とIII−V結晶とを備える。III−V結晶は、結晶支持構造の1つの単一接触領域上にある。接触領域の面積は、III−V結晶の表面積の約50パーセント以下である。
【0006】
他のデバイス実施形態は、III−V結晶を含む。III−V結晶は、前記III−V結晶の中心にある欠陥領域を除いて、一様な結晶方位を有する。この欠陥領域は、III−V結晶の全体積の約10パーセント未満を占める。
【0007】
他の実施形態は、デバイスの製造方法である。本方法は、基板上に結晶支持構造を形成することを含み、結晶支持構造の各々は所定の接触領域を有している。本方法は、さらに、前記結晶支持構造の1つの接触領域上にIII−V結晶を成長させることを含み、この接触領域の面積は、成長III−V結晶の表面積の約50パーセント以下である。
【0008】
本発明は、添付の図に関係して読むとき下記の詳細な説明から最適に理解される。様々な特徴は、一定の率で拡大して図示されないことがあり、議論をはっきりさせるために、大きさが任意に大きくまたは小さくされていることがある。これから、添付の図面に関連して解釈される下記の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】基板上に結晶支持構造を形成した後の1つのデバイス例を示す断面図である。
【図2】1つのデバイス例の結晶支持構造の接触領域上にIII−V結晶を成長させているときのデバイスを示す図である。
【図3】1つのデバイス例のIII−V結晶210の成長完了時のデバイスを示す図である。
【図4】図3に示されたのと同じ製造段階のデバイスを示す透視図である。
【図5】一体化III−V結晶層を形成した後の1つのデバイス例を示す断面図である。
【図6】III−V結晶および結晶支持構造の隣接したものの間のギャップに重合体を満たした後の1つのデバイス例を示す部分透明切取り透視図である。
【図7】III−V結晶および結晶支持構造の隣接したものの間のギャップに重合体を満たした後の1つのデバイス例を示す透視図である。
【図8】2層III−V結晶に接続する導電線を形成した後の1つのデバイス例を示す詳細透視図である。
【図9】結晶支持構造およびその上のIII−V結晶を備える基板を接着層でさらに覆った後の1つのデバイス例を示す断面図である。
【図10】基板から接着層を除去した後の1つのデバイス例を示す断面図であり、III−V結晶210が接着層に付いている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、マイクロまたはナノ・サイズの結晶支持構造上で結晶の成長を開始させることによってIII−V結晶中の欠陥の数を減少させることができるという認識の恩恵を受けている。結晶の成長が支持構造の接触領域を越えて伸びるときに、結晶のバルクは自由空間中、空気中、または他の気体/流体中にあるので、結晶と支持構造の間に格子不整合があるという問題は軽減される。結晶のバルクはせいぜい非固体に接触するので、最終結晶中の欠陥の数は減少する。さらに、これらの欠陥は、結晶支持構造の接触領域の周囲近くに局在化されることがある。
【0011】
本明細書で使用されるようなIII−V結晶という用語は、元素の周期律表(族表示に関するIUPAC協定)の13族(すなわち、アメリカ協定を使用すると3A族)の1種類の原子と15族(すなわち、アメリカ協定を使用すると5A族)の1種類の原子とを少なくとも含んだ、実質的に合金である結晶を意味する。本明細書で使用されるようなIII−窒化物結晶という用語は、13族の1種類の原子と窒素原子を少なくとも含んだ、実質的に合金である結晶を意味する。例示のIII−V結晶には、二元合金GaN、AlN、InNおよび、AlGa1−xN、InGa1−xN、InAl1−xNおよびAlInGa1−x−yNのような他の合金から実質的に形成された結晶がある。III−V結晶には、例えば伝導性を変える不純物原子を内因的または外因的にドープされた、そのような合金の結晶がある。
【0012】
本明細書で使用されるような結晶支持構造という用語は、表面上の所定の隆起した特徴を意味し、この構造は、約1mm以下、好ましくは約0.1mmよりも小さな少なくとも1つの横寸法を有する。結晶支持構造は、ナノ構造(少なくとも1つの横寸法が約1ミクロン以下)またはマイクロ構造(少なくとも1つの横寸法が約1ミリメートル以下)であってもよい。接触領域という用語は、III−V結晶に直接接触する、または成長すなわちIII−V結晶が始まるナノ構造の領域を意味する。
【0013】
本発明の一実施形態は、装置を製造する方法である。図1〜10は、選ばれた製造段階のデバイス例の断面図および透視図を示す。いくつかの実施形態では、デバイス100は、発光または光検出デバイスまたはトランジスタとして構成される。
【0014】
図1は、基板115上に結晶支持構造110を形成した後のデバイス100(例えば、光電子デバイスなどの半導体デバイス)の断面図を示す。図示されるように、結晶支持構造110は、基板115のベース120の上に隆起した特徴である。例えば、この構造は、基板115の表面に対して実質的に垂直な外側壁を有することがある。
【0015】
いくつかの場合には、結晶支持構造110は、基板115から形成される。例えば、基板(例えば、シリコン、サファイア)から成る基板115は、従来のプロセスを使用してパターン形成され(例えば、フォトリソグラフィ)、エッチングされ(例えば、反応性イオン・エッチング)、または微細加工されることがある。結晶支持構造110および基板115は、両方とも結晶シリコンから作られることがある。シリコンは、低コストで、かつ非常に多くの商用プロセスによってシリコンをパターン形成または機械加工できるために望ましい。いくつかの場合には、また、結晶支持構造110、基板115、または両方が導電性材料(例えば、シリコンまたは外因的にドープされたシリコン)から作られることが望ましい。
【0016】
図示されるように、結晶支持構造110は、柱として構成されることがある。柱は円柱状に形作られることがあるが、他の形(例えば、円錐形、立方体、角柱、角錐、その他)が使用されことがある。いくつかの場合には、結晶支持構造110は、密閉型セル(例えば、六角形に形作られたセル)として構成される。結晶支持構造110は密閉型セルとして構成されることがあり、その密閉型セルは、他の密閉型セルに相互接続されることがあり、または独立していることがある。六角形状密閉型セルは、この構造が例えば円形セルよりも製造するのが容易であるので、また、この構造が本質的に機械的に安定でかつ機械的応力を構造全体にわたって分散させることができるので、好ましいことがある。結晶支持構造110に使えるかもしれない、様々な型のマイクロ構造またはナノ構造として構成された柱状で密閉型セル状の結晶支持構造110の構成および製作方法の例は、さらに、2004年4月30日に出願されたKroupenkineの米国特許出願第10/835,639号および2006年7月28日に出願されたKroupenkinの米国特許出願第11/460,901号に述べられており、これらの特許出願は両方とも、その全体が参照して本明細書に組み込まれる。
【0017】
複数の柱状または密閉型セル状の結晶支持構造110は、基板115上にマイクロまたはナノ構造表面125を形成することができる。表面125上の結晶支持構造110は、互いに一様に間隔を開けて配置されることがあり、または不定の間隔で配置されることがある。いくつかの場合には、隣接した柱状結晶支持構造110間の横方向間隔127は、成長III−V結晶の横方向厚さ(例えば、図3の厚さ310)よりも大きい。これによって、互いに分離された状態にある成長結晶の形成が容易になる。他の場合には、柱状結晶支持構造110の隣接したものの間の横方向間隔127は、隣接した柱状結晶支持構造110上に形成される結晶の一体化を容易にするように横方向厚さよりも小さくされる。
【0018】
基板115上に1つまたは複数のグループ130の結晶支持構造110を備えることが望ましいことがある。例えば、柱または相互接続された密閉型セルとして構成された約10から100の結晶支持構造110は、そのグループ130の隣接した構成要素との間に、異なるグループ132の他の結晶支持構造110との間よりも近い間隔を開けて配置される。そのような構成によって、より大きな結晶の形成、例えば、グループ130の複数の結晶支持構造110に接触する薄膜III−V結晶の形成を容易にすることができる。
【0019】
図1にさらに示されるように、結晶支持構造110各々は、所定の接触領域140を有している。接触領域140は、結晶支持構造110の露出された部分である。結晶支持構造110の各々の上に単一接触領域140があることが望ましいことがある。その理由は、このことが、最小限の欠陥のある単結晶の成長を助長するからである。1つの結晶支持構造110上に複数の結晶を形成すると(例えば、1つの構造110当たりに複数の接触領域140を有することによって)、結晶が互いに接触する場所に複数の欠陥部位が形成されるようになることがあり、さらに、個々の結晶の大きさが制限されることがある。
【0020】
いくつかの場合には、接触領域140は、結晶支持構造110の上面145にあり、この構造110の上面全体145を含むことがある。上面145に接触領域140を有することで、結晶支持構造110の個々の1つまたはグループ130の上に大きな結晶を形成することが容易になる。同じ面、例えば構造110が形成された基板115と同じ面全てに結晶のアレイを形成することが目的であるとき、上面145に接触領域140を有することがまた有利であることがある。しかし、他の場合には、接触領域140は、結晶支持構造110の側壁150にあることがある。側壁150に接触領域140を有することで、隣接した結晶支持構造110を橋で結ぶ結晶の形成が容易になることがある。
【0021】
所定の接触領域140が成長結晶の所望の最終的な大きさに比べて小さいことが有利である。というのは、このことは、結晶中の欠陥の範囲を最小限にするのに役立つからである。小さな横寸法160の結晶支持構造110の上面145に接触領域140を有することで、小さな接触領域140は容易になる。例えば、結晶支持構造110が柱として構成されるとき、約1mm以下の少なくとも1つの寸法は、柱の直径に対応する横寸法160であってもよい。
【0022】
直径160は、いくつかの要素の釣り合いを取るように注意深く設計される。接触領域140の大きさを最小限にして結晶欠陥を最小限にするために、直径160を小さくすることが望ましい。しかし、直径は、機械的支持および安定性を結晶に与えることができるだけ大きくなければならない。いくつかの場合には、直径160は、結晶支持構造110を通した電気伝導を可能にすることができるだけ大きくなければならない。いくつかの好ましい実施形態では、柱状結晶支持構造110の直径160は、約100から300ナノメートルに及ぶ。
【0023】
いくつかの場合には、成長結晶がベース120またはその上の任意の結晶堆積材料に触れて結晶中に欠陥を形成しないように、構造110の高さ165は、成長III−V結晶の縦方向厚さ(例えば、下の図3に示された厚さ312)の少なくとも約2倍であることが望ましい。いくつかの好ましい実施形態では、高さ165は、約2から10ミクロンの範囲にある。
【0024】
エピタキシャルIII−V結晶のシード付けおよび成長を容易にするように接触領域140を構成することが望ましい。いくつかの場合には、接触領域140は、その上に成長されるべきIII−V結晶の原子の格子ジオメトリと実質的に同様な原子の格子ジオメトリを有する。結晶の格子ジオメトリに対応するように接触領域140の格子ジオメトリを選ぶことは、最小限の欠陥のある結晶のエピタキシャル成長を助長するのに役立つ。いくつかの好ましい実施形態では、接触領域140および前記III−V結晶210の結晶格子は、両方とも実質的に六方晶系ジオメトリである。例えば、結晶が六方晶系結晶構造を有するとき(例えば、GaNまたはInNのようなIII−窒化物結晶)、結晶支持構造110は、(111)方位を有するシリコン・ウェーハまたは基板115上のシリコン層から形成することができる。そのような例では、構造110の上面145上にある接触領域140は、原子の六方晶系格子配列を有する。同様に、結晶が立方晶系結晶構造(例えば、GaAsまたはInp)を有するとき、結晶支持構造110は、(100)方位を有するシリコン・ウェーハ基板を縦方向にエッチングすることによって形成することができる。そのような例では、構造110の上面145の接触領域140は、原子の立方晶系格子配列を有する。
【0025】
結晶支持構造110の各々が全く同じ形または寸法を有することは必要でない。結晶支持構造110間の間隔が互いに全く同じであること、または前記構造が全て相互接続されているか全て独立していることもまた必要でない。しかし、そのようなユニタリ構成は、製造の容易さために好ましいことがある。
【0026】
図2は、接触領域140上にIII−V結晶210を成長させているときのデバイス100を示す。いくつかの場合には、III−V結晶210がIII−窒化物から成ることが望ましい。その理由は、III−窒化物は一般に大きなバンドギャップを有するからである。また、そのような合金から形成された結晶210は横方向成長を容易にして、例えば六角形板を形成する。
【0027】
接触領域140上に直接生じる結晶210の最初の部分は、欠陥領域215と呼ばれる。本明細書で使用されるような欠陥領域215という用語は、実質的に高い濃度の格子欠陥、例えばディスロケーションまたはディスクリネーションを有する結晶210の部分として定義される。一般に、様々な種類の格子欠陥、例えばスレッディング欠陥の濃度は、欠陥領域215では、同じ結晶210の他の領域の少なくとも約10倍以上、または約100倍以上でもあると予想される。結晶210は欠陥領域215(接触領域を除く)から全ての方向に外に向かって成長することができるので、欠陥領域215は、一般に結晶210の中心にある。すなわち、欠陥領域215は、結晶210の1つまたは複数の外側縁217から離れた、結晶の中心部分216にある。
【0028】
欠陥領域215は、一般に、接触領域140に隣接している。成長III−V結晶210の透過電子顕微鏡(TEM)像の平面図または断面図を精査することによって、欠陥領域215を識別し、さらにそれの全体積を実質的に定量化することができる。例えば、III−窒化物結晶210(例えば、InNまたはGaN)では、接触領域140の上に縦方向に突出し横方向に突出しない、結晶の六方晶系の形をした1つまたは複数のスレッド欠陥220を、欠陥領域215は含むことがある。III−V結晶中のそのようなスレッディング欠陥の例は、F.A.PonceおよびD.P.Bour、Nature 386:351〜59(1997)に示されており、これは、その全体が参照して本明細書に組み込まれる。デバイス100のいくつかの実施形態では、欠陥領域215は、III−V結晶210の全体積の約10パーセント未満を占める。いくつかの場合には、スレッド欠陥220、したがって欠陥領域215は、結晶の他方の面222(例えば、接触領域140に隣接した面と反対側の面)までずっと伸びていない。他の場合には、接触領域14と反対側の面222に隣接した結晶210のスレッド欠陥220密度は、接触領域140に隣接した結晶210のスレッド欠陥220密度よりも小さい。
【0029】
デバイス100のいくつかの好ましい実施形態では、接触領域140に隣接している欠陥領域215を除いて、III−V結晶210は低欠陥密度を有する。本明細書で使用されるような低欠陥密度という用語は、約1×10cm−2未満のスレッディング欠陥220密度として定義される。欠陥領域215は、一般に、約1×10cm−2を超えるスレッディング欠陥220密度を有する。いくつかの実施形態では、欠陥領域215のスレッディング欠陥220密度は、結晶210のその他の所のスレッディング欠陥220密度の約10倍であり、いくつかの場合には100倍である。例えば、いくつかの実施形態では、欠陥領域215でのスレッディング欠陥220密度は約1×10cm−2以上であり、欠陥領域215以外でのIII−V結晶210のスレッド欠陥密度は約1×10cm−2未満であり、より好ましくは、約1×10cm−2未満である。
【0030】
結晶210の縦方向成長と横方向成長の相対的な速度は、接触領域140がさらされるIII族原子225とV族原子230の相対的な量を調節することによってさらに制御することができる。III−V結晶210の成長は、III−V結晶210の縦方向成長よりも速い横方向成長を助長する比のIII族原子225とV族原子230に接触領域140をさらすことを含むことがある。例えば、GaNまたはInNのようなIII−窒化物結晶を成長させるとき、約1:1(例えば、III族原子:V族原子)よりも大きな比のIII族原子225とV族原子230に接触領域140をさらすことで、縦方向成長よりも速い横方向成長が助長される。同様にこの比を調節して、例えば、この比を約1:1未満に変えることによって、横方向成長よりも速い結晶の縦方向成長を助長することができる。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態では、III−V結晶210のエピタキシャル成長は、分子ビーム・エピタキシー(MBE)・プロセスを使用することによって容易になる。例えば、III−窒化物結晶210がシリコン結晶支持構造110上に成長される場合を検討してみる。MBEプロセスは、Nの供給ガス(約0.1から1sccm)および約250から400ワットのプラズマ・パワーを使用する無線周波プラズマを含むことができる。窒素以外のV族原子230を生成するために、異なる供給ガスが使用されることができる。MBEプロセスは、さらに、金属供給源(例えば、噴散セル)を含むことができ、金属供給源の温度は、様々なIII族原子225フラックスを可能にする範囲に調節される(例えば、Gaの場合には約900から1050℃、Inの場合には約700から850℃、Alの場合には約1050から1250℃)。接触領域140に与えられる、V族原子230に対するIII族原子225の相対的な量は、供給ガスの流量、金属供給源の温度、または両方を変えることによって調節することができる。
【0032】
MBEプロセスは、さらに、エピタキシャル結晶210の形成を容易にするように基板115またはデバイス100全体の温度を調節することを含むことができる。基板115の温度が接触領域140からIII族原子225を蒸発させるほど高すぎないことが重要である。また、基板の温度がIII族原子225の金属液滴の堆積を助長するほど低すぎないことも重要である。基板115の適切な温度は、どのIII族原子225が使用されるかに依存する。例えば、In、Ga、およびAlの場合、基板115の温度は、好ましくは、約350から500℃まで、約650から800℃まで、および約700から900℃までにそれぞれ及ぶ。
【0033】
当業者は理解することであろうが、MBEプロセスの特定の条件は、III族原子およびV族原子の供給を容易にするように調節される。また、当業者は理解することであろうが、MBE以外の技術、例えば気相エピタキシャル法が使用されることができる。
【0034】
III−V結晶210は、1より多い層を含むことができる。例えば、所望の横方向厚さの結晶を形成した後で、MBEプロセスを調節して、結晶210の縦方向成長を助長することができる。さらに、供給ガスまたは金属供給源を変えて、異なる組成を有するIII−V結晶層を形成することができる。例えば、図8に示されるように、III−V結晶は、SiドープGaNから成るn型III−V層240およびMgドープGaNから成るp型III−V層245を有することができる。複数層III−V結晶の組成のさらに他の例は、2006年7月10日に出願されたNgの米国特許出願第11/456,428号に示されており、この出願は、その全体が参照して本明細書に組み込まれる。当業者は理解することであろうが、III−V結晶210の組成は、所望のバンドギャップを有する、したがって光の適切な波長に対して感度を有する結晶を生成するように調節されることができる。
【0035】
図3は、結晶210の成長完了時のデバイス100を示す。図4は、図3に示されたのと同じ製造段階のデバイス100の透視図を示す。図3の断面図は、図4の視線3−3に対応する。
【0036】
いくつかの場合には、結晶支持構造110の各々の上に別個に形成された個々のIII−V結晶210があるように、結晶210の成長は終了される。そのような場合、隣接した個々の結晶支持構造110間の横方向間隔127は、成長III−V結晶210の横方向厚さ310よりも大きい。結晶の形が円板の形(例えば、あるIII−窒化物結晶で形成されるような六角形板)に近い場合には、結晶の横方向厚さ310は結晶210の直径に対応する。例えば、いくつかの場合には、柱状結晶支持構造110の直径160は、成長III−V結晶210の平均横方向厚さ310(例えば、直径)の約10パーセント以下である。いくつかの場合には、柱状結晶支持構造の各々は、それぞれ、個々の結晶支持構造110上にあるIII−V結晶210の個々のものの横方向厚さ310の約10パーセント以下の直径160を有する。いくつかの実施形態では、分離された結晶210(例えば、GaNまたはInN)は、約1から50ミクロンの横方向厚さ310および約1から20ミクロンの縦方向厚さ312を有する。
【0037】
上で指摘されたように、結晶のバルクは空気(または、結晶を囲繞するどんな他の気体または液体媒体にも)に接触するがただ1つの固体表面、接触領域140だけに接するように結晶210を構成することによって、結晶210中の欠陥の範囲を最小限し局在化することができる。接触領域140の面積が成長結晶210の表面積320よりも実質的に小さいことが好ましい。いくつかの好ましい実施形態では、接触領域140の面積325は、成長III−V結晶210(例えば、成長プロセスによって生成された最終的な結晶)の表面積320の約50パーセント以下である。本明細書で使用されるような表面積320という用語は、接触領域140に接する成長III−V結晶210の面330の全表面積を意味する。デバイス100のいくつかの好ましい実施形態では、接触領域140の面積325は、成長III−V結晶210の表面積320の約50パーセント以下、好ましくは約10パーセント以下、さらにより好ましくは約1パーセント以下である。
【0038】
デバイス100のいくつかの実施形態では、結晶210の成長は(図3〜4)、1つの層が形成されるまで延長される。例えば、図5は、結晶支持構造110上で成長する複数(例えば、少なくとも2つ)のIII−V結晶210が融合して1つの連続した一体化III−V結晶層510を形成するまで、III族およびV族原子225、230(図2)にさらすことを延長した後のデバイス100の断面図を示す。例えば、このさらすことは、III−V結晶210の縦方向成長よりも速い横方向成長を助長する条件を、層510が形成されるまで延長することを含むことができる。
【0039】
図5に示されるように、一体化層510は、複数の接触領域140に接することができ、各接触領域140は異なる結晶支持構造110上にある。いくつかの実施形態では、複数の欠陥領域215があることがあり、各欠陥領域は、個々の結晶210(図2〜4)が、融合して一体化層510を形成する前に接触していた結晶支持構造110の接触領域140の上に生じている。いくつかの場合には、別個の結晶が一体化する場所に追加の欠陥515があることがある。
【0040】
いくつかの場合には、一体化層510は、デバイス100の光放射または検出コンポーネントとして直接使用されることがある。結晶支持構造110間に横たわる層510の無欠陥領域520をさらに処理して、例えば発光、光検出またはトランジスタ・デバイスを形成することができる。例えば図5に示されるような他の場合には、一体化層510は、その上のより厚いIII−V結晶膜530の成長のシード付けをするために使用される。すなわち、一体化層510は、その上にIII−V結晶膜530を成長させるためのシード層として使用される。一体化層510をシード層として使用することで、一体化層510よりも欠陥の少ないより大きなエピタキシャルIII−V結晶膜520の形成が助長される。例えば、いくつかの場合には、III−V結晶膜520は、少なくとも約1000ミクロン、より好ましくは少なくとも約10000ミクロンの横方向厚さ535、および少なくとも約100ミクロン、好ましくは約250ミクロン以上の縦方向厚さ540を有する。
【0041】
デバイス100のいくつかの実施形態では、結晶支持構造110は、デバイス100のコンポーネント部分として残っている。例えば、導電性結晶支持構造110は、III−V結晶210への電気接続を実現するように構成されることがある。結晶支持構造110は、また、例えば図6〜7に示されるようなデバイスのさらに他の製作ステップ中に、複数のIII−V結晶210を共通平面610内に保持するのに役立つことができる。
【0042】
図6は、図4に示された見方に似たデバイス100の部分透明切取り透視図を示す。図7は、同様な非透明透視図を示す。図6および7のデバイス100は、III−V結晶210および結晶支持構造110の隣接したものの間のギャップ615に重合体620を満たした後で示されている。例えば、流体プレポリマーがギャップ615に導入されることがある。いくつかの場合には、重合体620は電気絶縁性であって、導電性結晶支持構造110間の電気絶縁を容易にする。重合体620の例には、ポリアミドおよびスピンオン・ガラスがある。例えば図6に示されるようないくつかの場合には、重合体620は、結晶支持構造110を覆うがIII−V結晶210を覆われていないままにしておくように構成されることがある。重合体620は、例えばデバイス100の動きによるIII−V結晶210の望ましくない動きを妨げるのに役立つことができる。
【0043】
図6および7にさらに示されるように、重合体620はまた、III−V結晶210に結合された導電線640を支持するための表面630を実現することができる。図8は、例えばn型III−V層240およびp型III−V層245を含む2層III−V結晶210に接続する導電線640を形成した後のデバイス100の詳細透視図を示す。デバイス100のいくつかの実施形態では、分離されたIII−V結晶210は、個々のアドレス指定可能な導電線640に接続される。どうようにして導電材料を表面630上に堆積させ次にパターン形成して導電線640を形成することができるかを、当業者は分かっているだろう。いくつかの場合には、可視光(例えば、酸化インジウム錫)または赤外光(ポリシリコン)に対して透明な導電線640を使用することが望ましい。
【0044】
デバイス100の他の実施形態では、結晶支持構造110が除去され、したがって、この構造110および基板115は、デバイス100のコンポーネントでない。そのような実施形態では、結晶支持構造110からIII−V結晶210を分離するために、さらに他のステップが必要とされる。
【0045】
図9は、結晶支持構造110およびIII−V結晶210をその上に有する基板115を接着層910でさらに覆った後の、図3に示されたものに似たデバイス100の断面図を示す。例えば、図3に示された製造段階のデバイス100が、接着層910で覆われることがある。III−V結晶210の上面222は接着層910に接着している。いくつかの場合には、接着層910は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの可撓性重合体である。
【0046】
図10は、III−V結晶210が接着層910に付いている状態で基板115から接着層910を除去した後のデバイスの断面図を示す。結晶支持構造110(図9)とIII−V結晶210の間の接触は破壊される。その結果、支持構造110(図9)の接触領域140に以前は隣接していたIII−V結晶210の中心欠陥領域215は、今では、接着層910と別の方向に向いている。いくつかの例では、結晶支持構造110の一部がIII−V結晶210に付いたままであることがある。そのような例では、結晶支持構造110(図9)の依然として付いている部分は、結晶支持構造110(図9)を含んだデバイス100をエッチング液にさらすことによって除去することができる。例えば、シリコンから作られた結晶支持構造110は、フッ化水素酸、硝酸またはこれらの混合物を含むエッチング液にさらされることがある。
【0047】
接着層910に接着されたIII−V結晶210は、次に、図5および6の背景で先に述べられたものと同様な導電線に結合されて、可撓性の発光、光検出、またはトランジスタ・デバイス100を形成することができる。
【0048】
実施形態が詳細に説明されたが、当業者は、これらを考慮して様々な変化物、代替物および変更物を本発明の範囲から逸脱することなしに作ることができることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶支持構造をその上に有する基板と、
前記結晶支持構造の1つの単一接触領域上のIII−V結晶とを備え、前記接触領域の面積が、前記III−V結晶の表面積の約50パーセント以下であるデバイス。
【請求項2】
前記結晶支持構造の柱状のものが、前記結晶支持構造の前記柱状のものの上にある前記III−V結晶の個々のものの横方向厚さの約10パーセント以下の直径を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記III−V結晶が、複数の前記接触領域に接する1つの一体化層である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスが、発光デバイス、光検出デバイスまたはトランジスタ・デバイスとして動作するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
III−V結晶であって、前記III−V結晶の中心にある欠陥領域を除いて、一様な結晶方位を有するIII−V結晶を備え、前記欠陥領域が前記III−V結晶の全体積の約10パーセント未満を占める、デバイス。
【請求項6】
前記欠陥領域の欠陥密度が、約1×10cm−2以上であり、前記欠陥領域以外で前記III−V結晶の欠陥密度が約1×10cm−2未満である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
基板上に結晶支持構造を形成するステップであって、前記結晶支持構造の各々が所定の接触領域を有するステップと、
前記結晶支持構造の1つの前記接触領域上にIII−V結晶を成長させるステップとを含み、前記接触領域の面積が前記成長III−V結晶の表面積の約50パーセント以下である、デバイス製造方法。
【請求項8】
前記結晶支持構造を形成する前記ステップは、前記結晶支持構造の各々が約1mm以下の少なくとも1つの横方向寸法をそれぞれ有するように、前記基板をパターン形成しエッチングするステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記III−V結晶を成長させる前記ステップが、前記III−V結晶の縦方向成長よりも速い前記III−V結晶の横方向成長を助長する比のIII族原子とV族原子に前記接触領域をさらすステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記結晶支持構造上で成長する複数の前記III−V結晶が融合して一体化III−V層を形成するまで、前記さらすステップを延長することをさらに含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2010−521801(P2010−521801A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550894(P2009−550894)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/002143
【国際公開番号】WO2008/103331
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】