説明

廃棄物処理システム

【課題】 亜酸化窒素の発生を抑制して環境負荷を低減することができる廃棄物処理システムを提供する。
【解決手段】 有機性廃棄物を受け入れて高温の還元性雰囲気下で該有機性廃棄物を熱分解させる熱分解炉3と、前記熱分解炉で発生した可燃性の熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉4と、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスを熱源として利用する1つ又は複数の熱利用機器2,3,5と、前記熱利用機器により利用されて温度が低下した熱利用後の低温排ガスを、前記熱利用機器から前記熱利用機器よりも上流側に配置された機器に還流させ、前記上流側に配置された機器において燃焼空気または希釈空気として利用させる還流ラインL7,L71,L72,L73とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性廃棄物を処理する廃棄物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
脱水汚泥などの有機性廃棄物を処理する廃棄物処理システムでは、有機性廃棄物を熱分解炉内において低酸素状態で加熱分解することにより、熱分解ガス(乾留ガス)と熱分解残渣(炭化物)とに分離し、可燃性の熱分解ガスを燃焼炉で燃焼させて、この燃焼排ガスを熱利用機器の熱源としている。燃焼排ガスは、熱利用機器において熱エネルギーを奪われて温度が降下し、低温燃焼排ガスとして排出される。
【0003】
例えば特許文献1および特許文献2には、廃棄物処理システムにおいて燃焼排ガスを利用する熱利用機器として、空気予熱器、熱分解炉、廃熱ボイラ、熱媒体加熱器または乾燥機等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4198426号公報
【特許文献2】特開2007−270018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されている従来の廃棄物処理システムにおいては、有機性廃棄物に有機窒素が含まれる場合、温室効果ガスである亜酸化窒素が生成される。この亜酸化窒素(N2O)は、地球環境に悪影響を及ぼすいわゆる環境負荷を増加させる物質であり、その排出量を可能な限り抑えなければならない。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、亜酸化窒素の発生を抑制して環境負荷を低減することができる廃棄物処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る廃棄物処理システムは、有機性廃棄物を受け入れて高温の還元性雰囲気下で該有機性廃棄物を熱分解させる熱分解炉と、前記熱分解炉で発生した可燃性の熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉と、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスを熱源として利用する1つ又は複数の熱利用機器と、前記熱利用機器により利用されて温度が低下した熱利用後の低温排ガスを、前記熱利用機器から前記熱利用機器よりも上流側に配置された機器に還流させ、前記上流側に配置された機器において燃焼空気または希釈空気として利用させる還流ラインと、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、亜酸化窒素の発生を抑制し、環境負荷を低減することができる廃棄物処理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る廃棄物処理システムを示す構成ブロック図。
【図2】低温燃焼排ガス中のN2O濃度と燃焼炉の燃焼温度との関係を示す特性線図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る廃棄物処理システムを示す構成ブロック図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る廃棄物処理システムを示す構成ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)本発明の廃棄物処理システムは、有機性廃棄物を受け入れて高温の還元性雰囲気下で該有機性廃棄物を熱分解させる熱分解炉と、前記熱分解炉で発生した可燃性の熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉と、前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスを熱源として利用する1つ又は複数の熱利用機器と、前記熱利用機器により利用されて温度が低下した熱利用後の低温排ガスを、前記熱利用機器から前記熱利用機器よりも上流側に配置された機器に還流させ、前記上流側に配置された機器において燃焼空気または希釈空気として利用させる還流ラインとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明では、熱利用後の低温排ガスを還流ラインにより上流側配置機器に還流させ、上流側配置機器において燃焼空気または希釈空気として利用するため、上流側配置機器の1つである燃焼炉の燃焼温度を上昇させることができる。燃焼炉の燃焼温度が上昇すると、燃焼排ガス中の亜酸化窒素の生成量が減少する。また、熱利用機器の材質等の問題から燃焼排ガスの温度に上限が生じる場合であっても、燃焼排ガスの希釈空気として循環低温燃焼排ガスを使用すれば、同一温度でも熱利用機器に導入される希釈後の燃焼排ガス量が増大し、熱利用機器で回収される熱量が向上し、システム全体の熱効率を上げることができる。熱利用後の燃焼排ガスは外気に比べてはるかに高温であるため、上流側配置機器の燃焼空気または希釈空気として用いられるのに適しており、廃棄物処理システム全体の熱利用効率を向上させるのに大いに寄与できる。
【0012】
(2)上記(1)において、燃焼炉を900℃以上1000℃以下の温度域で燃焼させることにより、亜酸化窒素の発生を抑制することが好ましい。燃焼排ガス中のN2O濃度は、燃焼炉の燃焼温度が高くなるに従って減少していくが、燃焼温度が900℃以上になるとほぼ一定になる。例えば燃焼温度が870℃のときの燃焼排ガス中のN2O濃度と900℃のときの燃焼排ガス中のN2O濃度とを比べてみると、温度差は30℃であるにもかかわらず、後者は前者のほぼ半分(約50%)にN2O濃度が急激に低下する(図2)。さらに燃焼温度を上昇させていき950℃以上にすると、燃焼排ガス中のN2O濃度はほとんど変化しなくなり実質的に一定になる(図2)。このため、本発明では、より好ましくは燃焼炉の燃焼温度が950℃以上になるように燃焼させる。
【0013】
一方、燃焼炉の設計温度は1200℃であり、燃焼炉を構成する材料と構造はその温度まで耐えられるように設計されているが、燃焼炉の寿命を延ばすためなどの理由から、燃焼炉が運転されるときの実際の燃焼温度は最高で約1000℃までである。このため、本発明では、燃焼炉の燃焼温度の上限値を1000℃とする。
【0014】
(3)上記(1)または(2)において、熱分解炉よりも上流側に配置され、有機性廃棄物を加熱して有機性廃棄物から水分を蒸発させることにより有機性廃棄物の含有水分を減少させる乾燥機をさらに有することが好ましい。
【0015】
乾燥機を用いて有機性廃棄物を加熱乾燥させ、有機性廃棄物の含有水分を減少させると、次の熱分解炉において有機性廃棄物の熱分解反応が迅速かつ円滑に進むというメリットがある。例えば有機性廃棄物として活性汚泥のような水分を多量に含むものを処理する場合、これを熱分解炉に直送すると、体積が大きいためにオーバーフローするおそれがあり、熱分解炉の負荷が増大するが、有機性廃棄物を乾燥機で予め加熱乾燥して体積を小さくすると、熱分解炉の負荷が軽減される。
【0016】
この乾燥機は、熱利用機器で熱利用された後の低温燃焼排ガスの保有熱を利用する上流側配置機器の1つとなりうるものである。すなわち、燃焼炉の下流側に配置された熱利用機器から還流ラインを介して上流側の乾燥機に熱利用後の低温燃焼排ガスを供給することにより、乾燥機において低温燃焼排ガスを利用することが可能になる。ちなみに熱利用機器から排出される熱利用後の低温燃焼排ガスの温度は500℃以下であり、乾燥機のプロセス設計温度は100〜300℃の範囲である。また、乾燥機には種々の熱源を用いることができ、上記の低温燃焼排ガス以外に、熱媒や電気抵抗加熱装置、燃焼加熱装置などの公知の汎用加熱装置を用いることができる。
【0017】
(4)上記(1)〜(3)において、複数の熱利用機器のうちの少なくとも1つが熱分解炉であることが好ましい。
【0018】
燃焼炉の下流側に配置された熱利用機器から還流ラインを介して上流側の熱分解炉に熱利用後の低温燃焼排ガスを供給することにより、熱分解炉において低温燃焼排ガスを利用することが可能になる。ちなみに熱分解炉のプロセス設計温度は300〜750℃の範囲である。
【0019】
(5)上記(1)〜(4)において、熱利用機器と燃焼炉との間に集塵機をさらに有することが好ましい(図3)。
【0020】
燃焼炉で発生する煤塵(固形分)は下流側の熱利用機器の内壁に付着して熱利用効率を低下させるので、集塵機を用いて燃焼排ガスから煤塵を分離除去することにより、熱利用機器の熱利用効率を向上させることができる。なお、本発明において、集塵機は特定の形式のみに限定されない。
【0021】
(6)上記(1)〜(5)において、熱利用機器における不足熱量を補うために前記燃焼炉に補助燃料を供給する補助燃料供給装置をさらに有することが好ましい(図4)。
【0022】
燃焼炉の不完全燃焼や熱分解炉の異常運転など種々の原因により燃焼排ガスの熱量が不足することがあり、下流側の熱利用機器において必要な熱量が確保されず不足することがある。このような場合に、補助燃料供給装置から補助燃料を燃焼炉に補給し、不足熱量を補うことができる。
【0023】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための種々の形態を説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0025】
本実施形態の廃棄物処理システム1は、図1に示すように、乾燥機2、熱分解炉3、燃焼装置4および熱利用機器5を備えている。この処理システム1の系内は下流側に配置された単数または複数のブロワ(図示せず)によって吸引排気されている。また、処理システム1の全体は図示しないプロセスコンピュータにより統括的に管理・制御されている。
【0026】
乾燥機2は、図示しない上流側の廃棄物投入装置からラインL1を介して有機性廃棄物が投入され、投入された有機性廃棄物を所定の温度(100〜300℃)で加熱して有機性廃棄物から水分を除去するものである。乾燥機2には種々の熱源を用いることができる。例えば下流側の熱利用機器5で熱利用された後の低温燃焼排ガスや、熱媒、電気抵抗加熱装置、燃焼加熱装置などの公知の汎用加熱装置を用いることができる。なお、廃棄物供給ラインL1は、例えばベルトコンベア、計量器、シューターおよびホッパーを含むものである。
【0027】
熱分解炉3は、回転駆動される中空シャフト室31とこれを加熱する加熱ジャケット32とを有するロータリーキルン方式またはスクリュウフィーダー方式の横置き型の装置である。中空シャフト室31は、中空円筒状の耐火材壁および送給スクリュウを有し、図示しない回転駆動機構により回転可能に支持されている。乾燥機2から廃棄物供給ラインL2を介して中空シャフト室31の中空部に有機性廃棄物を供給し、送給スクリュウを順方向に回転させて有機性廃棄物が軸方向に送給されるようになっている。中空シャフト室31の下流側の端部(出口端部)は、熱分解ガスラインL3を介して燃焼装置4の上段バーナ43に接続されている。また、中空シャフト室31の下流側の適所に炭化物排出ラインL5が設けられ、炭化物排出ラインL5を介して熱分解後の残渣である炭化物が中空シャフト室31から排出されるようになっている。
【0028】
加熱ジャケット32は、中空シャフト室31の少なくとも一部を取り囲むジャケット容器であり、熱媒供給管33と熱媒排出管34がそれぞれ接続されている。図示しない熱媒供給源から熱媒供給管33を介して熱媒として高温の空気(例えば300〜750℃のドライエア)が加熱ジャケット32内に供給され、廃棄物を加熱した後に熱媒が熱媒排出管34を介して加熱ジャケット32から排出されるようになっている。なお、熱媒供給管33と熱媒排出管34とをリターンラインにより接続することで循環回路を形成し、使用済みの熱媒を熱分解炉において繰り返し利用するようにしてもよい。なお、熱分解炉3の熱源として、電気抵抗加熱装置または燃焼加熱装置などの公知の汎用加熱装置を用いることができるが、経済性の観点から次工程の燃焼炉4から排出される燃焼排ガスを利用するのが最も適している。また、補器として温度測定装置(図示せず)には熱電対などの公知の汎用計測器を用いることができる。
【0029】
燃焼炉4は、一端に燃焼噴射方式のバーナを備えた燃焼装置である。バーナには熱分解ガスラインL3および燃焼用空気ライン(図示せず)がそれぞれ接続され、可燃性の熱分解ガスと燃焼用空気とが所定の比率で噴射混合されて燃焼するようになっている。燃焼炉4の他端には燃焼排ガスラインL4に連通する排出口41が設けられている。燃焼排ガスラインL4は2つのラインL41,L42に分岐し、一方の分岐ラインL41は熱分解炉3の熱媒供給管33に接続され、他方の分岐ラインL42は熱利用機器5の入口に接続されている。すなわち、燃焼炉4から排出される燃焼排ガスは、その一部がラインL4,L41を通って上流側の熱分解炉3の加熱ジャケット32に供給され、他の一部がラインL4,L42を通って下流側の熱利用機器5に供給されるようになっている。
【0030】
なお、本実施形態では燃焼排ガスラインを2つに分岐して熱分解炉3と熱利用機器5とに燃焼排ガスを分配しているが、さらに燃焼排ガスラインを3つに分岐して熱分解炉3および熱利用機器5ばかりでなく、乾燥機2にも燃焼排ガスを分配するようにもできる。あるいは燃焼排ガスラインを分岐させずにプロセス温度の高い機器から順に燃焼排ガスラインを接続するようにしてもよい。
【0031】
熱利用機器5は、入口が燃焼排ガスラインL42に接続され、出口が低温燃焼排ガスを排出する排出ラインL5に接続されている。熱利用機器5として例えば廃熱ボイラなどを用いることができる。熱利用機器5の本体内には、燃焼排ガスと熱交換する熱媒が流れる内部流路が形成されている。熱利用機器5の内部流路は、対向流路、並行流路あるいはサーペンタイン状流路など種々の形態とすることができる。
【0032】
熱利用機器5からの排出ラインL5は、2つのラインL6,L7に分岐している。一方の分岐ラインL6は、さらに下流側の他の熱利用機器(図示せず)に接続されるか、または無害化装置(図示せず)を経由して大気開放されている。
【0033】
他方の分岐ラインL7は、燃焼炉4および熱利用機器5にそれぞれ低温燃焼排ガスを還流するための2つの還流ラインL71,L72に分岐している。第1の還流ラインL71は、燃焼炉4の入口側の燃焼用空気に合流するか、または燃焼炉4のバーナ噴射口に連通している。第2の還流ラインL72は、熱利用機器5の入口側の燃焼排ガスラインL42に合流するか、または燃焼排ガスラインL42と並行に進んでラインL42とともに熱利用機器5の内部流路にて合流している。
【0034】
本実施形態の作用を説明する。
【0035】
廃棄物投入装置(図示せず)からラインL1を介して乾燥機2内に有機性廃棄物を投入し、投入した有機性廃棄物を100〜300℃の温度に加熱して有機性廃棄物に含まれる水分を蒸発させ、水分含有率が数パーセント以下の乾燥有機性廃棄物とする。この乾燥有機性廃棄物をラインL2により熱分解炉3の中空シャフト室31に供給し、熱分解炉3により300℃以上の温度に加熱し、廃棄物中の有機成分を熱分解する。これにより有機性廃棄物は炭化物(固形分)と可燃性の熱分解ガス(気体分)とに分解する。このうち固形分である炭化物は、排出ラインL8を通って図示しない回収容器に排出回収される。一方、可燃性の熱分解ガスは、ラインL3を通って燃焼炉4のバーナに供給され、燃焼用空気と混合されて燃焼する。燃焼用空気は、図示しないコンプレッサーから圧縮空気として供給されるが、これに熱利用機器5からの低温燃焼排ガスを混合した混合ガスであってもよい。
【0036】
燃焼排ガスの一部は、燃焼炉の排気口41からラインL4,L41を通過して、熱媒供給管33から熱分解炉の加熱ジャケット32内に導入され、回転する中空シャフト室31内の有機性廃棄物を熱分解する熱源となる。燃焼排ガスの他の一部は、燃焼炉の排気口41からラインL4,L42を通過して、熱利用機器5の内部流路に供給され、熱媒と熱交換される。
【0037】
熱利用機器5において熱利用された後の燃焼排ガスは、熱利用機器5にて熱エネルギーを回収されて500℃以下の温度に降下し、低温燃焼排ガスとして排出ラインL5を介して熱利用機器5から排出される。この低温燃焼排ガスの一部は、分岐部から還流ライン7→第1の還流ラインL71→燃焼炉4の順に通流して燃焼炉のバーナから噴射される。また、低温燃焼排ガスの他の一部は、分岐部から還流ライン7→第2の還流ラインL72→ラインL42→熱利用機器5の順に通流して燃焼排ガスと混合して熱利用機器5の内部流路に再び供給される。なお、本実施形態の熱利用機器となりうる機器として、空気予熱器(図示せず)、または熱分解炉3、または廃熱ボイラ(図示せず)、または乾燥機2などをあげることができる。
【0038】
本実施形態の効果を説明する。
【0039】
本実施形態によれば、熱利用機器で熱利用された後の低温燃焼排ガスは、少なくとも外気よりも温度が高いため、その一部を燃焼炉4のバーナで燃焼用空気として使用することにより、外気を使用する場合に比べて少ない流量で燃焼炉4の燃焼温度を維持できる。このため、低温燃焼排ガス量が少なくなり、無駄に廃棄される熱量を大幅に低減することができ、熱効率を向上させることができる。
【0040】
また、熱利用機器5の材質等の問題から燃焼排ガスの温度に上限が生じる場合であっても、燃焼排ガスの希釈空気として循環低温燃焼排ガスを使用すれば、同一温度でも熱利用機器5に導入される希釈後の燃焼排ガス量が増大し、熱利用機器5で回収される熱量が向上し、システム全体の熱効率を上げることができる。
【0041】
有機性廃棄物を熱分解して得られる可燃性ガスを燃焼する場合、廃棄物の種類や燃焼状況により温室効果ガスである亜酸化二窒素(N2O)が排出される。図2に、燃焼炉の燃焼排ガスの温度(℃)と燃焼排ガスのN2O濃度(体積ppm)との関係を調べた結果を示す。
【0042】
この図2から明らかなように、N2O濃度は、燃焼炉の燃焼温度が高くなるにしたがって減少し、燃焼温度900℃以上ではほぼ一定となり、とくに燃焼温度950℃以上の温度域ではほとんど変化しなくなる。N2O濃度を下げるには、高い燃焼温度が必要となるが、本実施形態では低温燃焼排ガスが外気に比べて高温であるため、燃焼炉の燃焼空気あるいは燃焼排ガスの希釈空気として使用する場合、より少ない流量で高温を維持でき、熱効率を向上できるというメリットがある。
【0043】
(第2の実施形態)
図3を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0044】
本実施形態の廃棄物処理システム1Aは、燃焼炉4と熱利用機器5とをつなぐラインL42上に集塵機10をさらに備えている。集塵機10は、例えば上部に燃焼排ガスが導入され、導入ガスを旋回流として下降させ、燃焼排ガス中の固形分(不燃性粉塵を含む煤塵など)をガス分から遠心分離するサイクロンである。
【0045】
燃焼排ガス中に固形不燃物の粉塵が混入する場合、燃焼炉でこの固形不燃物は燃焼できず、燃焼排ガス中に煤塵として混入するが、煤塵は大気汚染物質であると共に熱利用機器の内部流路や内壁に付着すると熱伝導率を低下させることから熱効率が低下するおそれがある。しかし、本実施形態のシステムによれば、集塵機により燃焼排ガスから煤塵を分離除去するので、熱利用機器の熱伝導率低下を防止でき、大気汚染物質の大気への放出も低減できる。
【0046】
(第3の実施形態)
図4を参照して本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0047】
本実施形態の廃棄物処理システム1Bは、熱分解ガスラインL3に補助燃料を注入する補助燃料供給装置11をさらに備えている。補助燃料供給装置11は、熱分解ガスラインL3に連通接続される注入ラインL9を有し、熱分解ガスラインL3を通流する熱分解ガスに補助燃料を注入し、燃焼炉4のバーナから燃焼噴射させるものである。
【0048】
燃焼炉4の温度を維持する熱源として可燃性の熱分解ガスを利用しているが、熱利用側の需要により熱利用機器5で回収される熱量を多くする場合に、熱分解ガスの熱量が一定であると、低温燃焼排ガスの温度が低下して結露等の不具合が生じることがある。低温燃焼排ガスの温度を維持したまま熱利用機器5で回収される熱量を多くするには熱分解ガスの熱量を上げればよいが、この場合、熱分解ガスの原料である有機性廃棄物の処理量を多くする必要があり、熱分解炉の仕様上の制約により限界が生じる。
【0049】
そこで、本実施形態では、熱利用機器の熱源が不足する場合に、補助燃料供給装置11からメタンガスなどの補助燃料を燃焼炉4の燃料として注入することにより、熱源の不足を解消することができる。また、本実施形態によれば、補助燃料供給装置11からの補助燃料を、有機性廃棄物を投入しない起動時や停止時の燃料としても使用できる利点もある。
【符号の説明】
【0050】
1,1A,1B…廃棄物処理システム、
2…乾燥機、3…熱分解炉、4…燃焼炉、
5…熱利用機器、
10…集塵機、
11…補助燃料供給装置、
L3…熱分解ガスライン、L4,L41,L42…燃焼排ガスライン、
L6…低温燃焼排ガスライン、
L7,L71,L72,L73…還流ライン(熱利用後の低温燃焼排ガスを還流するライン)、
L8…炭化物排出ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を受け入れて高温の還元性雰囲気下で該有機性廃棄物を熱分解させる熱分解炉と、
前記熱分解炉で発生した可燃性の熱分解ガスを燃焼させる燃焼炉と、
前記燃焼炉で発生した燃焼排ガスを熱源として利用する1つ又は複数の熱利用機器と、
前記熱利用機器により利用されて温度が低下した熱利用後の低温排ガスを、前記熱利用機器から前記熱利用機器よりも上流側に配置された機器に還流させ、前記上流側に配置された機器において燃焼空気または希釈空気として利用させる還流ラインと、
を具備することを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項2】
前記燃焼炉を900℃以上1000℃以下の温度域で燃焼させることにより、亜酸化窒素の発生を抑制することを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理システム。
【請求項3】
前記熱分解炉よりも上流側に配置され、前記有機性廃棄物を加熱して前記有機性廃棄物から水分を蒸発させることにより前記有機性廃棄物の含有水分を減少させる乾燥機をさらに有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の廃棄物処理システム。
【請求項4】
前記複数の熱利用機器のうちの少なくとも1つが前記熱分解炉であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の廃棄物処理システム。
【請求項5】
前記熱利用機器と前記燃焼炉との間に集塵機をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の廃棄物処理システム。
【請求項6】
前記熱利用機器における不足熱量を補うために前記燃焼炉に補助燃料を供給する補助燃料供給装置をさらに有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項記載の廃棄物処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−190969(P2011−190969A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56634(P2010−56634)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】