説明

感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性フィルム、レジストパターンの形成方法、ソルダーレジスト、層間絶縁膜、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板

【課題】 フィルム又は一液型樹脂組成物にした時の保存安定性が良好で、現像性、解像性、絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性、HAST耐性に優れたソルダーレジスト及び層間絶縁膜を形成できる感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、ソルダーレジスト、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供すること。
【解決手段】 (A)カルボキシル基を有するポリマと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)エポキシ樹脂内包マイクロカプセルと、を含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性フィルム、レジストパターンの形成方法、ソルダーレジスト、層間絶縁膜、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電気および電子部品の小型化、軽量化、多機能化に伴い、それを構成する半導体素子、半導体パッケージ、プリント配線板、フレキシブル配線板等は高密度化・高精細化しており、微細な開口パターンを形成できる感光性のソルダーレジストや層間絶縁膜が要求されている。
【0003】
プリント配線板の回路を保護する感光性のソルダーレジストや層間絶縁膜には、一般的に、現像性、高解像性、絶縁性、耐熱性、めっき耐性等の特性が求められる。また、特に半導体パッケージ基板用のソルダーレジストに対しては、上記の特性に加え、例えば、−65〜150℃の温度サイクル試験(TCT)に対する耐クラック性や、微細配線間での、超加速高温高湿寿命試験(HAST)に対するHAST耐性が要求されている。
【0004】
一方、フォトビアにより多層配線を形成する場合、めっき銅との密着を向上させるため、表面粗化を行う。従って、上述した特性の他、層間絶縁膜に対しては表面粗化(デスミア)処理を行う際のデスミア耐性等も要求される。
【0005】
感光性のソルダーレジストや層間絶縁膜は、原料となる感光性樹脂組成物を基板上に塗布するか、又は予め成形された感光性樹脂組成物層を基板上に積層し、露光後、現像し画像形成することによって作製される。
【0006】
これらの感光性樹脂組成物を高解像度化するためには、未露光部の現像液への溶解性を高めること、即ち、コントラストを向上させることが必要である。未露光部の溶解性を高めるためには、感光性樹脂組成物中のポリマに親水性基を導入する方法がある。このような親水性基としてカルボキシル基を適用した場合、親水性の高さは酸価によって表され、高酸価の樹脂であるほど現像液への溶解性が高くなる。
【0007】
近年、環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプが主流となってきている。このアルカリ現像を行うためには、有機溶剤添加系の現像液を用いる場合よりもさらにポリマの酸価を高める必要がある。
【0008】
しかしながら、ソルダーレジストや層間絶縁膜のような感光性絶縁材料の場合、高酸価のポリマであるほど吸水率が高くなるため、高温高湿条件下での絶縁抵抗(HAST耐性)の低下や耐熱性(はんだ耐熱性、あるいは耐クラック性)の低下が起こりやすくなる。
【0009】
そこで、高温高湿耐性を確保するため、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和カルボン酸との反応物を用いた液状レジストインキ組成物が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
ところで、ソルダーレジストや層間絶縁膜に用いられる感光性樹脂組成物は通常液状のものが用いられている。カルボキシル基はエポキシ基と室温で反応しやすいため、液状の感光性樹脂組成物としては、硬化性のエポキシ樹脂と、アルカリ現像性を付与するためのカルボン酸基を含有する感光性プレポリマとを別々に分けた2液型からなるものが一般的である。
【0011】
しかしながら、2液型の感光性樹脂組成物は、2液を混合した後の保存安定性(ポットライフ)が数時間から一日と短いため、使用直前に混合しなければならない等、使用条件に制限が生じる。
【0012】
一方、近年では、膜厚の均一性、表面平滑性、薄膜形成性、取り扱い性を良好にする観点から、ドライフィルムタイプのソルダーレジストや層間絶縁膜が注目されているが、上記2液型の感光性樹脂組成物を予め混合してドライフィルム化した場合、フィルムの保存安定性が悪く、フィルム状態での保管が困難であった。
【0013】
このような問題が生じ難い1液型の感光性樹脂組成物としては、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応物に脂環族二塩基酸無水物とを反応して得られる光硬化樹脂、光重合開始剤、希釈剤及びビニルトリアジン系化合物等の熱硬化促進剤からなる1液型液状フォトソルダーレジストインキ組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、エポキシ樹脂の代わりの熱硬化剤としてブロックイソシアネート化合物と、カルボキシル基含有プレポリマ、光重合開始剤、希釈剤及び密着性付与剤からなる感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0014】
また、ドライフィルムタイプのソルダーレジストとして、従来の2液型の感光性樹脂組成物では達成困難であった保存安定性に優れ、アルカリ現像可能で耐薬品性、耐熱性等に優れた感光性樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献4参照)。
【0015】
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平4−281454号公報
【特許文献3】特開2001−305726号公報
【特許文献4】特開2005−316431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献2及び3に記載された従来の感光性樹脂組成物では、硬化膜の耐熱性、耐クラック性、HAST耐性等の絶縁信頼性が不十分であった。
【0017】
また、従来のフィルムタイプの感光性樹脂組成物から得られるソルダーレジストは、温度サイクル試験等の耐熱性を要求される物性が不十分であり、液状タイプのソルダーレジストと比べて耐クラック性に劣るという問題があった。
【0018】
さらに、上記従来のアルカリ現像型感光性樹脂組成物を用いて多層配線を形成する場合、表面粗化(デスミア)処理を行う際に濃アルカリ溶液で膨潤させる膨潤工程で、アルカリ可溶性ポリマに残存しているカルボン酸が反応して硬化膜が侵されるため、続いて行う過マンガン酸塩溶液に浸漬する浸漬工程において硬化膜の分解、剥離が生じ、良好な層間絶縁膜が得られないという問題があった。
【0019】
そこで、本発明は、フィルム又は一液型樹脂組成物にした時の保存安定性が良好で、現像性、解像性、絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性、HAST耐性に優れたソルダーレジスト又は層間絶縁膜を形成できる感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、ソルダーレジスト、層間絶縁膜、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明は、(A)カルボキシル基を有するポリマと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)エポキシ樹脂内包マイクロカプセルと、を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記構成を有することにより、フィルム又は一液型樹脂組成物にした時の保存安定性に優れる。さらに、解像性、絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性、HAST耐性、デスミア耐性等の諸特性に優れ、良好なソルダーレジスト又は層間絶縁膜を形成できる。
【0022】
かかる効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、熱架橋成分としてエポキシ樹脂内包マイクロカプセルを用いることにより、室温ではエポキシ基がカルボキシル基と反応せず安定となり、加熱により効率的にカルボン酸と反応し、最終的にカルボン酸含有量の少ない架橋構造を形成できるためであると考えられる。
【0023】
上記(D)エポキシ樹脂内包マイクロカプセルの平均粒子径は、10nm〜10μmであることが好ましい。上記構成を有する感光性樹脂組成物によれば、解像性をさらに向上することができ、微細な開口パターンを有するソルダーレジスト又は層間絶縁膜が形成可能となる。
【0024】
上記(D)エポキシ樹脂内包マイクロカプセルは、エポキシ樹脂からなる芯材と、該芯材を内包する中空球状の壁材とを有し、120〜180℃の加熱により上記壁材が破壊されるものであることが好ましい。また、上記壁材は、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスチレン及び尿素樹脂から選択される、1種又は2種以上の樹脂からなる壁材であることが好ましい。上記構成を有する感光性樹脂組成物は、フィルム又は一液型樹脂組成物にした時の保存安定性に一層優れるのみならず、解像性、絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性、HAST耐性、デスミア耐性等の諸特性に一層優れるソルダーレジスト又は層間絶縁膜を形成できる。
【0025】
上記(A)カルボキシル基を有するポリマの酸価は、30〜110mgKOH/gであることが好ましい。上記構成を有する感光性樹脂組成物は、現像性及び解像性に一層優れる。また、このような感光性樹脂組成物によれば、微細な開口パターンを有するソルダーレジスト又は層間絶縁膜を効率よく形成することが可能となる。
【0026】
上記(A)カルボキシル基を有するポリマは、(a1)カルボキシル基及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含むことが好ましい。
【0027】
また、本発明は、支持体と、該支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える、感光性フィルムを提供する。
【0028】
また、本発明は、基板上に上記感光性樹脂組成物からなる感光層を積層する積層工程と、上記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、上記感光層の露光部以外の部分を除去する現像工程と、を有する、レジストパターンの形成方法を提供する。
【0029】
また、本発明は、基板上に上記感光性樹脂組成物からなる感光層を積層する積層工程と、上記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、上記感光層の露光部以外の部分を除去する現像工程と、上記感光層の露光部をさらに熱硬化する後加熱工程と、を有する、レジストパターンの形成方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、基板上に形成された上記感光性樹脂組成物の硬化物からなる、ソルダーレジストを提供する。
【0031】
また、本発明は、基板上に形成された上記感光性樹脂組成物の硬化物からなる、層間絶縁膜を提供する。
【0032】
また、本発明は、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をめっきする、プリント配線板の製造方法を提供する。
【0033】
また、本発明は、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板を表面粗化し、粗化された基板及び/又はレジストパターンをめっきする、プリント配線板の製造方法を提供する。
【0034】
また、本発明は、基板と、該基板上に形成された上記感光性樹脂組成物の硬化物と、を備えるプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、フィルム又は一液型樹脂組成物にした時の保存安定性が良好で、現像性、解像性、絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性、HAST耐性に優れたソルダーレジストを形成できる感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、ソルダーレジスト、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供することができる。
【0036】
また、本発明によれば、フィルム又は一液型樹脂組成物にした時の保存安定性が良好で、現像性、解像性、絶縁性、耐熱性、めっき耐性、デスミア耐性に優れた層間絶縁膜を形成できる感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、層間絶縁膜、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供することができる。
【0037】
さらに、本発明によれば、感光性樹脂組成物のフィルム化により工程の短縮化及び絶縁層の両面形成が可能なことから、プリント配線板の生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、場合により図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面において同一要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。また、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0039】
本実施形態にかかる感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基を有するポリマと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)エポキシ樹脂内包マイクロカプセルと、を含有する。
【0040】
上記(A)カルボキシル基を有するポリマ(以下、「(A)成分」と表す場合がある。)としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ビニル基含有エポキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリカーボネート、メラミン樹脂、ポリフェニレンスルフィド及びポリオキシベンゾイル等の公知の樹脂やその酸変性樹脂であって、分子内にカルボキシル基を有するものが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
(A)成分は、硬化膜の絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性等の諸特性をより向上させる観点から、(a1)カルボキシル基及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(以下、場合により「(a1)成分」ともいう。)を含むことが好ましい。
【0042】
また、(A)成分は、現像性をより向上させる観点から、(a2)(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合成分として含むビニル系共重合化合物(以下、場合により「(a2)成分」ともいう。)を含むことも好ましい。
【0043】
(a1)成分及び(a2)成分は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。以下、(a1)成分及び(a2)成分について説明する。
【0044】
(a1)成分としては、カルボキシル基及びエチレン性不飽和結合を分子内に有する重合性化合物であれば特に制限はないが、例えば、エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸のエステル化物に、多塩基酸無水物を付加した付加反応物(すなわち、エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸との反応物である水酸基含有化合物が多塩基酸無水物と反応してなる付加反応物)が挙げられる。
【0045】
ここで、上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるビスフェノール型エポキシ化合物が挙げられる。上記ビスフェノール型エポキシ化合物としては、例えば、チバ・ガイギ社製GY−260、GY−255、XB−2615等のビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、アミノ基含有、脂環式あるいはポリブタジエン変性等のエポキシ化合物が好適に用いられる。
【0046】
また、上記エポキシ化合物としては、フェノール、クレゾール、ハロゲン化フェノール及びアルキルフェノール類からなる群より選択される少なくとも一種と、ホルムアルデヒドとを、酸性触媒存在下で反応して得られるノボラック類を、エピクロルヒドリンと反応させて得られるノボラック型エポキシ化合物が挙げられる。上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、東都化成社製YDCN−701、YDCN−704、YDPN−638及びYDPN−602、ダウ・ケミカル社製DEN−431及びDEN−439、チバ・ガイギ社製EPN−1299、大日本インキ化学工業社製N−730、N−770、N−865、N−665、N−673、VH−4150及びVH−4240、日本化薬社製EOCN−120及びBREN、等が挙げられる。
【0047】
また、上記エポキシ化合物としては、例えば、サリチルアルデヒド−フェノール型あるいはクレゾール型エポキシ化合物(日本化薬社製EPPN502H、FAE2500等)も好適に用いることができる。
【0048】
また、上記エポキシ化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製エピコート828、エピコート1007及びエピコート807、大日本インキ化学工業社製エピクロン840、エピクロン860及びエピクロン3050、ダウ・ケミカル社製DER−330、DER−337及びDER−361、ダイセル化学工業社製セロキサイド2021、三菱ガス化学社製TETRAD−X及びTETRAD−C、日本曹達社製EPB−13及びEPB−27等が使用できる。さらに、上述したエポキシ化合物の混合物あるいはブロック共重合物も使用できる。
【0049】
上記不飽和モノカルボン酸としては、分子内にカルボキシル基を1個有し、エチレン性不飽和結合を1個又は複数有する化合物であれば特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、及びこれらの誘導体等が挙げられる。また、例えば、(i)1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類と多塩基酸無水物との反応物、(ii)二塩基酸と不飽和モノグリシジル化合物との反応により得られる部分エステル化合物類と、多塩基酸無水物との反応物、(iii)1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート類と二塩基酸との反応物、等も好適に使用することができる。
【0050】
上記不飽和モノカルボン酸としては、具体的には、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、へキサヒドロフタル酸、マレイン酸及びコハク酸等の飽和又は不飽和二塩基酸と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノグリシジル化合物とを、常法により等モル比で反応させて得られる反応物が挙げられる。これらの不飽和モノカルボン酸は単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。上記不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸が好ましい。
【0051】
上記多塩基酸無水物としては、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を用いることができ、例えば、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、コハク酸、トリメリット酸等の無水物が挙げられる。
【0052】
また、(a1)成分としては、例えば、日本化薬社製ZAR−1035、AFR−1158、CCR−1171H、PCR−1050(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0053】
また、(a1)成分としては、例えば、2つ以上の水酸基及びエチレン性不飽和結合を有するエポキシアクリレート化合物と、ジイソシアネート化合物と、カルボキシル基を有するジオール化合物と、を反応させることにより得られるポリウレタン化合物も好適に使用することができる。(a1)成分がこのようなポリウレタン化合物であると、感光性樹脂組成物の高感度化の観点から好ましい。
【0054】
上記ポリウレタン化合物としては、例えば、UXE−3011、UXE−3012、UXE−3024(以上、日本化薬(株)製、商品名)が挙げられる。また、上記ポリウレタン化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有するポリウレタン化合物が挙げられる。
【0055】
【化1】

【0056】
上記一般式(1)中、R11はエポキシアクリレートの残基、R12はジイソシアネートの残基、R13は炭素数1〜5のアルキル基、R14は水素原子又はメチル基を示す。なお、残基とは、原料成分から結合に供された官能基を除いた部分の構造をいう。また、式中に複数ある基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0057】
上記ポリウレタン化合物としては、2つ以上の水酸基及びエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物から形成されるハードセグメント部として、ビスフェノールA型構造を有するものが好ましい。
【0058】
ポリウレタン化合物は、上記のように、2つ以上の水酸基及びエチレン性不飽和基を有するエポキシアクリレート化合物(以下、「原料エポキシアクリレート」という)、ジイソシアネート化合物(以下、「原料ジイソシアネート」という)、及び、カルボキシル基を有するジオール化合物(以下、「原料ジオール」という)を原料成分として得られる化合物である。まず、これらの原料成分について説明する。
【0059】
原料エポキシアクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物等に(メタ)アクリル酸を反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0060】
原料ジイソシアネートとしては、イソシアナト基を2つ有する化合物であれば特に制限なく適用できる。例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリレンスルホンエーテルジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、N−アシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルナン−ジイソシアネートメチル等が挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、一種を単独で、又は2種以上を組み合わせて適用できる。
【0061】
原料ジオールは、分子内に、アルコール性水酸基やフェノール性水酸基等の水酸基を2つ有するとともに、カルボキシル基も有している化合物である。水酸基としては、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液による現像性を良好にする観点から、アルコール性水酸基を有していることが好ましい。このようなジオール化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が例示できる。
【0062】
(a1)成分は、絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性等の諸特性をより向上させる観点から、重量平均分子量が2000〜50000であることが好ましく、3000〜30000であることがより好ましく、3000〜20000であることがさらに好ましい。
【0063】
(a2)成分としては、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合成分として含むビニル系共重合化合物であれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を共重合成分としてラジカル重合させることにより得られるビニル系共重合化合物が挙げられる。
【0064】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
【0065】
(a2)成分としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸とともに、これらと共重合し得るビニルモノマを共重合させて得られる化合物を使用してもよい。このようなビニルモノマとしては、例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル及びビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、及びβ−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及びマレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸系単量体、フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエン等のスチレン誘導体などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
また、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合し得るビニルモノマ共重合体の側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和結合を導入した共重合体も好適に使用できる。かかるエチレン性不飽和結合は、エステル結合、ウレタン結合等を介して側鎖及び/又は末端に導入できる。このような方法としては、例えば、上記(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合し得るビニルモノマ共重合体のカルボキシル基に、グリシジル基含有エチレン性ビニルモノマを反応させ、エステル結合を形成する方法が挙げられる。
【0067】
(a2)成分は、現像性を向上させる観点から、重量平均分子量が、5000〜150000であることが好ましく、20000〜100000であることがより好ましく、30000〜80000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が5000未満では耐現像液性が低下する傾向があり、150000を超えると現像時間が長くなる傾向がある。
【0068】
(A)成分の酸価は、アルカリ現像性及び解像性と、硬化膜の高温高湿耐性等の諸特性とをバランスよく向上させる観点から、30〜110mgKOH/gであることが好ましく、35〜100mgKOH/gであることがより好ましく、40〜90mgKOH/gであることがさらに好ましい。
【0069】
ここで、酸価は、次のようにして測定することができる。すなわち、まず、酸価を測定する成分を1g精秤した後、アセトンを30g添加し、均一に溶解して測定溶液とする。次いで、指示薬であるフェノールフタレインをその溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定を行う。そして、次式により酸価を算出する。
A=10×Vf×56.1/(Wp×I)
【0070】
式中、Aは酸価(mgKOH/g)を示し、VfはKOH水溶液の滴定量(mL)を示し、Wpは測定した測定溶液の重量(g)を示し、Iは測定溶液中の不揮発分の割合(質量%)を示す。
【0071】
(A)成分の含有量は、感度及び塗膜形成性、硬化膜の耐熱性等の諸特性をバランスよく向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の合計量(固形分)100質量部に対して、20〜90質量部とすることが好ましく、30〜80質量部とすることがより好ましく、40〜70質量部とすることがさらに好ましい。
【0072】
上記(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物(以下、「(B)成分」と表す場合がある。)としては、分子内に1つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー又はウレタンオリゴマー等が挙げられる。また、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びEO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0073】
(B)成分は、アルカリ現像性を良好にする観点から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。
【0074】
(B)成分は、感度及び解像性を向上させる観点から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンを含むことがより好ましい。
【0075】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカエトキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカエトキシ)フェニル)等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
上記化合物のうち、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、FA−321M(日立化成工業(株)製、商品名)又はBPE−500(新中村化学工業(株)製、商品名)として商業的に入手可能であり、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)は、BPE−1300(新中村化学工業株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0077】
また、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘプタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシノナプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシウンデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシドデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシトリデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラデカプロポキシ)フェニル)、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシペンタデカプロポキシ)フェニル)、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサデカプロポキシ)フェニル)等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0078】
2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシテトラエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシヘキサエトキシヘキサプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0080】
なお、「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH−CH−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH−CH−CH−O−、−CH(CH)CH−O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0081】
グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)フェニル等が挙げられる。なお、上述したような化合物を得るためのα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0082】
また、分子内にウレタン結合を有するウレタンモノマーとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート等のウレタン結合及びイソシアヌレート骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びEO又はPO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0083】
(B)成分は、感光性樹脂組成物の硬化後の耐熱性及び高温高湿耐性等の諸特性を向上させる観点から、分子内にウレタン結合及びイソシアヌレート骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0084】
さらに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。これらの(B)成分は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
(B)成分の含有量は、感度及び塗膜形成性、硬化膜の耐熱性等の諸特性をバランスよく向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の合計量(固形分)100質量部に対して、10〜80質量部とすることが好ましく、20〜70質量部とすることがより好ましく、30〜60質量部とすることがさらに好ましい。
【0086】
なお、本発明の感光性樹脂組成物において、(A)成分及び(B)成分中のエチレン性不飽和結合の総モル数は、(A)成分及び(B)成分の合計量100gに対して、0.05〜0.3モルであることが好ましく、0.07〜0.23モルであることがより好ましく、0.16〜0.23であることがさらに好ましい。エチレン性不飽和結合の総モル数が0.05モル未満では、感光性樹脂組成物の感度が低くなり、硬化後の架橋密度が低くなるため、高温高湿下において塗膜表面が白化し、さらにレジストが膨潤して、膨れが発生しやすくなる。他方、0.3モルを超えると、光硬化時に配線板上の銅とレジストとの界面で発生する応力が大きくなり、高温高湿下で応力が解放された時に、銅とレジストとの界面において膨れが発生しやすくなる。
【0087】
エチレン性不飽和結合の総モル数は、(A)成分の単位質量あたりのエチレン性不飽和結合のモル数(mol/g)と含有量(g)の積と、(B)成分の単位質量あたりのエチレン性不飽和結合のモル数(mol/g)と含有量(g)の積との、合計量により求ることができる。
【0088】
上記(C)光重合開始剤(以下、「(C)成分」と表す場合がある。)としては、露光する際の光源の波長にあわせたものを用いればよく、公知のものを使用することができる。このような光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等のキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
(C)成分の含合量は、光感度の観点から、感光性樹脂組成物中の全固形分総量100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.5〜8質量部とすることがより好ましく、1〜5質量部とすることがさらに好ましい。
【0090】
上記(D)エポキシ樹脂内包マイクロカプセル(以下、「(D)成分」と表す場合がある。)としては、芯材(コア)であるエポキシ樹脂と、それを閉じ込めるように取り囲む壁材(シェル)から構成されるマイクロカプセルが挙げられる。
【0091】
(D)成分としては、例えば、液状又は固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を、公知のカプセル化法により、カプセル化したものを用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0092】
カプセル化法としては、例えば、界面重合法、in−situ重合法等の化学的方法、コアセルベーション法、液中乾燥法等の物理化学的方法、メカノフュージョン、メカノケミカル等の機械的方法、その他、スプレードライ法、高速気流中衝撃法等が挙げられる。
【0093】
(D)成分の壁材は、室温で安定であり、且つ、120〜180℃の加熱により破壊され内包するエポキシ樹脂を解放し得るものが好ましく、上記温度の加熱により溶融又は分解される樹脂等からなる壁材が好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスチレン、尿素樹脂等が挙げられる。
【0094】
(D)成分の平均粒子径は、感光性樹脂組成物の用途や塗膜の膜厚に応じて適したものを選ぶことができるが、解像性をより向上させる観点から、10nm〜10μmであることが好ましく、20nm〜5μmであることがより好ましく、40nm〜3μmであることがさらに好ましく、50nm〜1μmであることが特に好ましい。粒子径が10nm未満ではマイクロカプセルの製造が困難となり、10μmを超えると感光性樹脂組成物の解像性が低下する傾向がある。
【0095】
ここで、平均粒子径は、マイクロカプセル分散液を脱イオン水で希釈し、粒度分布測定装置(Malvern Instruments Ltd.社製、ゼータサイザー3000HSa)を用いて測定したメジアン径(D50)の値を示す。
【0096】
また、(D)成分のエポキシ樹脂内包率((D)成分全体の質量に対するエポキシ樹脂の含有量)は、反応性と熱安定性の観点から、30〜99質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましく、50〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0097】
ここで、エポキシ樹脂内包率とは、エポキシ樹脂内包マイクロカプセルをすり潰し、これを秤量し、MEK等からなるエポキシ樹脂の良溶媒で洗浄後、乾燥して残存した壁材の質量を測定して、下記式より得られる値を示す。
{1−(壁材の質量)/(エポキシ樹脂内包マイクロカプセルの質量)}×100(質量%)
【0098】
また、(D)成分の壁材の厚み(T)は、マイクロカプセルの保存安定性及び熱硬化反応の進行性(壁材の破壊のし易さ)の観点から、下記式で表される範囲であることが好ましい。なお、下記式中、φは(D)成分の粒子径を示す。
0.001×φ≦T≦0.3×φ
【0099】
(D)成分は、種々の使用形態で用いることができ、例えば、固体状で用いてもよく、種々の溶媒に分散させて液状又はエマルジョン状の形態で用いてもよい。エマルジョン等の分散体として用いる場合には、マイクロカプセルの凝集を防ぐ目的で、感光性樹脂組成物に分散剤が添加されていてもよい。
【0100】
(D)成分の含有量は、硬化膜の絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性等の諸特性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物中の全固形分総量に対して、0.5〜50質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0101】
本実施形態にかかる感光性樹脂組成物は、上記構成により奏される効果を阻害しない範囲で(E)熱硬化剤(以下、「(E)成分」と表す場合がある。)を添加してもよい。
【0102】
(E)成分としては、例えば、加熱によりそれ自体が架橋する熱硬化剤、すなわち、熱を加えることにより高分子網目構造を形成する硬化剤や、加熱により(A)成分のカルボキシル基と反応し3次元構造を形成する硬化剤等が挙げられる。
【0103】
加熱によりそれ自体が架橋する熱硬化剤としては、例えば、ビスマレイミド化合物が挙げられる。
【0104】
上記ビスマレイミド化合物としては、例えば、1,6−ビス(N−マレイミジル)−2,2,4−トリメチルヘキサン、m−ジ−N−マレイミジルベンゼン、ビス(4−N−マレイミジルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−N−マレイミジルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−N−マレイミジル2,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス〔(4−N−マレイミジルフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔(4−N−マレイミジル−2−メチル−5−エチルフェニル)プロパン等の各種ビスマレイミド化合物が挙げられる。これらビスマレイミド化合物は単体としても、各種樹脂との変性物としても用いてもよい。これらのうち、硬化膜の耐熱性の観点から、芳香族環を有するビスマレイミド化合物が好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
また、加熱により(A)成分のカルボキシル基と反応し、3次元構造を形成する硬化剤としては、例えば、ブロックイソシアネート化合物が挙げられる。
【0106】
ブロックイソシアネート化合物としては、アルコール化合物、フェノール化合物、ε−カプロラクタム、オキシム化合物、活性メチレン化合物等のブロック剤によりブロック化されたポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ブロック化されるポリイソシアネート化合物としては、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートが挙げられ、耐熱性の観点からは芳香族ポリイソシアネートが、着色防止の観点からは脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
感光性樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、硬化膜の絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性等の諸特性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、3〜40質量部であることがより好ましく、5〜30質量部であることがさらに好ましい。
【0108】
感光性樹脂組成物は、上記構成により奏される効果を阻害しない範囲で、必要に応じて熱重合開始剤を含有してもよい。
【0109】
上記熱重合開始剤としては公知のものを利用することができ、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ターシャリーブチルパーオキサイド等のアルキルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、パーオキシエステル類、アルキルパーエステル類等を用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
感光性樹脂組成物が熱重合開始剤を含有する場合、その含有量は、硬化膜の絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性等の諸特性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.3〜8質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることがさらに好ましい。
【0111】
また、感光性樹脂組成物は、硬化膜の絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性等の諸特性を向上させる目的でフィラーを添加してもよい。
【0112】
フィラーとしては、例えば、シリカ、溶融シリカ、タルク、アルミナ、水和アルミナ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、エーロジル、炭酸カルシウム等の無機微粒子、粉末状エポキシ樹脂、粉末状ポリイミド粒子等の有機微粒子、粉末状テフロン(登録商標)粒子等が挙げられる。これらのフィラーには予めカップリング処理を施してあってもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
感光性樹脂組成物中に上記フィラーの分散させる方法としては、例えば、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール等公知の混練方法が挙げられる。
【0114】
感光性樹脂組成物がフィラーを含有する場合、その含有量は、硬化膜の絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性等の諸特性を向上させる観点から、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、2〜20質量部であることが好ましく、3〜18質量部であることがより好ましく、5〜15質量部であることがさらに好ましい。
【0115】
また、感光性樹脂組成物は、必要に応じて、マラカイトグリーン等の染料、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤若しくはp−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料若しくは二酸化チタン等の無機顔料、分散剤、消泡剤、安定剤、密着性付与剤、難燃剤、レベリング剤、酸化防止剤、香料又はイメージング剤などを含有してもよい。これらの成分は、感光性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、各々0.01〜20質量部程度含有させることが好ましい。また上記の成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
また、感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、キシレン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチルエトキシプロピオネート等の溶剤又はこれらの混合溶剤に固形分を溶解して、液状組成物としてもよい。ここで液状組成物は、不揮発分が30〜70質量%の溶液であることが好ましい。
【0117】
また、感光性樹脂組成物は、硬化膜の耐熱性及び高温高湿耐性等の諸特性を向上させる観点から、後述する露光工程及び/又は後加熱工程による硬化後のガラス転移温度が、90℃以上であることが好ましく、100〜180℃であることがより好ましく、100〜150℃であることが更に好ましい。
【0118】
また、感光性樹脂組成物は、銅、銅系合金、鉄、鉄系合金等の金属面上に、液状レジストとして塗布してから乾燥後、必要に応じて保護フィルムを被覆して用いてもよく、後述する感光性フィルムの形態で用いてもよい。
【0119】
次に、本実施形態にかかる感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルムについて説明する。
【0120】
図1は、上記感光性フィルムの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示した感光性フィルム1は、支持体10と、支持体10上に設けられた感光性樹脂組成物層20と、感光性樹脂組成物層20上の支持体10とは反対側の面を被覆する保護フィルム30と、で構成される。感光性樹脂組成物層20は、上記感光性樹脂組成物からなる層である。
【0121】
感光性樹脂組成物層20は、上記感光性樹脂組成物を上記溶剤又は混合溶剤に溶解して固形分30〜70質量%の溶液とした後に、当該溶液を支持体10上に塗布して形成することが好ましい。
【0122】
感光性樹脂組成物層20の厚みは、用途により異なるが、製造の容易性と、感度及び解像性とをバランスよく向上させる観点から、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した後の厚みが、1〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。
【0123】
支持体10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルム等が挙げられる。
【0124】
支持体10の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm以上とすることで現像前に支持体を剥離する際に支持体が破れにくくなる傾向があり、また、100μm以下とすることで解像度及び可撓性がより良好となる傾向がある。
【0125】
上述したような支持体10と感光性樹脂組成物層20との2層からなる感光性フィルム1又は支持体10と感光性樹脂組成物層20と保護フィルム30との3層からなる感光性フィルム2は、例えば、そのまま貯蔵してもよく、保護フィルム30を介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
【0126】
本実施形態にかかる感光性樹脂組成物を用いたレジストパターンの形成方法は、基板上に感光性樹脂組成物の溶液を直接塗布するか、又は、上述した感光性フィルムから必要に応じて保護フィルムを除去し、該感光性フィルムを感光層、支持体の順に基板上に積層する積層工程と、必要に応じて支持体を通して、上記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、基板から上記感光層の露光部以外の部分を除去する現像工程と、を含むものである。また、必要に応じて上記感光層の露光部をさらに熱硬化する後加熱工程と、を含むことが好ましい。なお、ここで基板としては、絶縁層と、絶縁層上に形成された導電体層(銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金からなる)とを備えた基板を好適に使用できる。
【0127】
上記積層工程における積層方法としては、感光性樹脂組成物の溶液を公知の方法により塗布する方法、感光性フィルムの感光性樹脂組成物層を加熱しながら基板に圧着することにより積層する方法等が挙げられる。積層される表面は、通常、基板の導電体層の面であるが、当該導電体層以外の面であってもよい。
【0128】
密着性及び追従性等の見地から、感光性フィルムを積層する際の感光層の加熱温度は50〜130℃とすることが好ましく、圧着圧力は0.1〜1.0MPa程度とすることが好ましく、周囲の気圧は4000Pa以下とすることがより好ましいが、これらの条件には特に制限はない。また、感光層を上記のように50〜130℃に加熱すれば、予め基板を予熱処理することは必要ではないが、積層性をさらに向上させるために、基板の予熱処理を行うこともできる。
【0129】
このようにして積層が完了した後、露光工程において感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる。光硬化部の形成方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを通して活性光線を画像状に照射する方法が挙げられる。また、LDI方式、DLP(Digital Light Processing)露光法等のマスクパターンを有さない直接描画法による露光も可能である。この際、感光性樹脂組成物層上に存在する支持体が透明の場合には、そのまま活性光線を照射することができるが、不透明の場合には、支持体を除去した後に感光性樹脂組成物層に活性光線を照射する。
【0130】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、YAGレーザー、半導体レーザー等の紫外線を有効に放射するものを用いることができる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いることもできる。
【0131】
次いで、露光後、感光性樹脂組成物層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去した後、現像工程において、ウエット現像、ドライ現像等で光硬化部以外の感光性樹脂組成物層を除去して現像し、レジストパターンを形成させる。
【0132】
ウエット現像の場合は、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。現像液としては、安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられ、例えば、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5質量%水溶液)等が用いられる。
【0133】
上述の形成方法により得られたレジストパターンは、例えば、プリント配線板のソルダーレジストや層間絶縁膜として用いる場合は、上記現像工程終了後、耐熱性、耐薬品性、高温高湿耐性等の諸特性を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射やオーブンによる加熱を行うことが好ましい。
【0134】
紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.2〜10J/cm程度の照射量で照射を行うこともできる。また加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程行われることが好ましい。さらに紫外線照射と加熱とを両方実施してもよく、いずれか一方を実施した後、他方を実施することもできる。
【0135】
また、上述の形成方法により得られたレジストパターンを層間絶縁膜として用いる場合には、後述するめっき処理においてめっき銅の密着を向上させる目的で、表面粗化(デスミア)処理を行うことが好ましい。
【0136】
表面粗化は機械的又は化学的に行われ、表面に微細な凹凸形状を形成する。この微細な凹凸形状の形成により、層間絶縁膜の上に形成されるめっき銅の密着性を向上することができる。表面粗化は、バフ研磨、ベルトサンダー研磨、サンドブラスト、液体ホーニング等の機械的な研磨、クロム酸や過マンガン酸等による化学粗化及びこれらを併用して行うことができる。
【0137】
粗化を行った後は無電解めっきを行う際の析出核となるめっき触媒を表面に担持させる。めっき触媒としては、例えばパラジウム等の金属コロイドを各種分散媒体に分散させた各種の公知の処理液を用いることができ、清浄化のための前処理を行った基材をこの処理液に浸漬させることでめっき触媒の担持が達成される。めっき触媒を担持させた後、無電解めっきを行うが通常の無電解めっき処理条件がそのまま適用される。
【0138】
無電解めっき後の基板は必要に応じて熱処理(ベーキング)を行う。ベーキングを行うことで無電解めっきと層間絶縁膜の密着性が高まり、めっきのピール強度を高めることができる。
【0139】
回路を形成する方法としては、パネルめっき法、セミアディティブ法など通常の回路形成プロセスがそのまま適用される。
【0140】
電気めっきでパターンを形成する場合、必要に応じて熱処理(アフターキュア)を行う。これにより電気めっきと層間絶縁膜の密着性が高まり、めっきのピール強度を高めることができる。
【0141】
また、上述の形成方法により得られたレジストパターンはプリント配線板上に形成されるソルダ−レジスト又は多層配線板の層間絶縁膜として使用されると好ましい。本発明の感光性樹脂組成物から形成される硬化膜は、優れた絶縁性、耐熱性、めっき耐性、耐クラック性、HAST耐性及びデスミア耐性を有するため、プリント配線板のソルダーレジスト又は層間絶縁膜として有効である。
【実施例】
【0142】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0143】
(実施例1〜4及び比較例1〜2)
【0144】
(エポキシ樹脂内包マイクロカプセル(D3)の合成)
まず、ホルマリン溶液(37wt%)100重量部とトリエタノールアミン0.5重量部、尿素65重量部を70℃の温度で約2時間攪拌して反応させ、冷水800重量部で希釈し、尿素‐ホルムアルデヒドポリマーの溶液を調製した。この溶液のpHを約7に、温度を25℃にそれぞれ調整し、エポキシ当量184〜194の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名エピコート828)を添加して約1200rpmで攪拌し、溶液を均一にし、3N塩酸で溶液をpH2.2に調整し、温度約40℃で12時間反応させた。反応終了後、pHを中性に戻し、得られたマイクロカプセル(D3)を水洗い・濾過してエポキシ樹脂内包マイクロカプセルを得た。このマイクロカプセル(D3)は、平均粒径が50μm、内包率が約70質量%、平均壁厚が1.1μm、平均破壊強度が11.6MPaであった。
【0145】
エポキシ樹脂内包マイクロカプセル(D1)としては、N−580(水分散液、不揮発分40質量%、平均粒径0.45μm、内包率約70質量%、中京油脂(株)製)を使用し、エポキシ樹脂内包マイクロカプセル(D2)としては、N−605(水分散液、不揮発分40質量%、平均粒径0.35μm、内包率約70質量%、中京油脂(株)製)を使用した。
【0146】
(感光性樹脂組成物の調製)
表1に示すように原料を配合し、実施例1〜4及び比較例1〜2の感光性樹脂組成物の溶液を作製した。
【0147】
なお、実施例1〜4及び比較例1〜2においては、(A)成分として、テトラヒドロキシ無水フタル酸変性ビスフェノールF型エポキシアクリレート(日本化薬(株)製、商品名ZFR−1158)(以下、「(a1)」と表す。)、並びに、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸エチルの共重合体(12/58/30(重量比)、重量平均分子量70000、酸価78mgKOH/g)(以下、「(a2)」と表す。)を使用した。
【0148】
また、(B)成分として、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成工業(株)製、製品名「FA−321M」)(以下、「(B1)」と表す。)、並びに、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、製品名「DPHA」)(以下、「(B2)」と表す。)を使用した。
【0149】
また、(C)成分として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名「IRGACURE369」)を使用した。
【0150】
また、(E)成分として、ブロックイソシアネート BL−3175(住化バイエルウレタン(株)製)(以下、「(E1)」と表す。)を使用した。
【0151】
また、比較例2においては、(D)成分の代替成分として、液状エポキシオリゴマ(エピコート828、ジャパンエポキシレジン(株)製)を使用した。
【0152】
【表1】

【0153】
次に、これらの感光性樹脂組成物の溶液を16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人社製、商品名「HTF01」)上に均一に塗布し、95℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥することにより、支持体上に感光層を形成した。感光層の乾燥後の膜厚は、30μmであった。
【0154】
続いて、感光性樹脂組成物層の支持層と接している側と反対側の表面上に、25μm厚のポリエチレンフィルム(タマポリ(株)製、商品名「T−5N」)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性フィルムを得た。
【0155】
(評価基板の作製方法及び評価方法)
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、両面に銅箔層を有する、日立化成工業株式会社製、商品名「MCL−E−679FG」)の銅表面を、#600相当のブラシを持つ研磨機(三啓(株)製)を用いて研磨し、水洗後、空気流で乾燥し、得られた銅張り積層板の銅表面上に、ポリエチレンフィルムを剥がした上記感光性フィルムを、プレス式真空ラミネータ(名機製作所製、商品名MVLP−500)を用いて、上板温度50℃、下板温度50℃、真空度5hPa以下、プレス時間30秒で熱圧着した。これにより、基板上に感光層、支持体がこの順に積層された評価基板を作製した。
【0156】
ラミネート後の評価基板を常温(25℃)で1時間静置した後、高圧水銀灯ランプを有する露光機(オーク(株)製)EXM―1201を用いて所定の露光量で、支持体を介して露光した。
【0157】
露光した評価基板を室温で10分間放置した後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを除去し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間スプレー現像して未露光部の感光層を除去した。
【0158】
スプレー現像後、(株)オーク製作所製紫外線照射装置を使用して1J/cmの紫外線照射を行い、さらに160℃で60分間加熱処理を行い、レジストパターンを形成した配線基板を得た。
【0159】
[感度]
感度は、イーストマンコダック(株)製、21段ステップタブレットにて8/21段を得るために必要な露光エネルギー量(mJ/cm)として評価した。
【0160】
[解像性]
また、ステップタブレットの8/21段の露光エネルギー量で得られたレジストパターンを光学顕微鏡により観察し、未露光部が完全に除去できた開口パターンのビア径(直径)(μm)から解像性(μm)を評価した。
【0161】
[弾性率・伸び・破断強度]
上記感光層の硬化物を、長さ70mm、幅10mmに切り出し、島津製作所(株)製オートグラフ AGS−100NHを用いて、チャック間距離50mm、引張り速度20mm/分、室温(25℃)の条件で、初期弾性率、伸び及び破断強度を測定した(n=5)。
【0162】
[1質量%重量減少温度]
感光性フィルムの感光層を上記解像性の評価と同様の条件で露光し、得られた硬化膜をアルミニウム製のサンプルパンにおよそ2.5mgとり、TG−DTA 6300(セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて測定温度50〜350℃、昇温速度10℃/min、空気雰囲気下で、硬化膜の重量が1質量%減少した時の温度を測定した。1質量%重量減少温度は低いほど良好である。
【0163】
[吸水率]
JIS K7209 「プラスチックの吸水率及び沸騰水吸水率試験方法」に準拠し、硬化膜の吸水率を測定した。具体的には、シリコンウエハ上に上記感光性樹脂組成物の溶液を塗布、乾燥し、乾燥後の膜厚が25±10μmになるように感光層を形成した。得られた感光層を平行光線露光機(EXM−1201(オーク製作所製))を用いて1Jのエネルギー量で露光し、さらに160℃で60分加熱し硬化膜を得た。硬化膜を形成したシリコンウエハの重量を測定し、室温(25℃)で純水に24時間浸漬した後、重量を測定し、硬化膜の吸水率を測定した。測定は三回行い、三回の平均を吸水率とした。吸水率の値は小さいほど良好である。
【0164】
[フィルムの保管安定性]
また、感光性フィルムを50℃、暗所に保管し、経時で現像時間を調べた。現像時間がフィルム作製直後の現像時間と比較して30%未満であったものを使用可、30%以上長くなったものを使用不可とし、フィルムが使用不可となった最短の経時時間(h)によりフィルムの保管安定性を評価した。保管安定性は、経時時間(h)が長いほど良好である。
【0165】
上述した方法により得られたレジストパターンを形成した配線基板を、表2の条件で表面粗化(デスミア)、無電解銅めっき、電解銅めっきし、多層配線板を得た。
【0166】
【表2】

【0167】
[デスミア耐性]
表2の粗化条件で基板を粗化した後に硬化膜の浮き膨れ、剥れを目視により観察し、デスミア耐性を評価した。
○:浮き、膨れ及び剥れが発生しないもの
×:浮き、膨れ及び剥れが発生したもの
【0168】
[めっき耐性]
表2のめっき条件でレジストパターン上に無電解銅めっきを施した後に硬化膜の浮き膨れ、剥れを目視により観察し、めっき耐性を評価した。
○:浮き、膨れ及び剥れが発生しないもの
×:浮き、膨れ及び剥れが発生したもの
【0169】
【表3】

【0170】
表3から明らかなように、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む実施例1〜4は、良好な感度及び解像性を示し、フィルム状態での保管安定性に優れ、且つデスミア耐性、めっき耐性といった諸特性にも優れる。また、(D)成分の平均粒子径が10nm〜10μmの範囲である実施例1〜3は、解像性が一層優れる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】好適な実施形態の感光性フィルムの断面構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0172】
1…感光性フィルム、10…支持体、20…感光性樹脂組成物層、30…保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基を有するポリマと、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)エポキシ樹脂内包マイクロカプセルと、を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)エポキシ樹脂内包マイクロカプセルの平均粒子径が、10nm〜10μmである、請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)エポキシ樹脂内包マイクロカプセルが、エポキシ樹脂からなる芯材と、該芯材を内包する中空球状の壁材とを有し、120〜180℃の加熱により前記壁材が破壊されるものである、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記壁材が、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスチレン及び尿素樹脂から選択される、1種又は2種以上の樹脂からなる、請求項3記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)カルボキシル基を有するポリマの酸価が、30〜110mgKOH/gである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)カルボキシル基を有するポリマが、(a1)カルボキシル基及びエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
支持体と、該支持体上に形成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層と、を備える、感光性フィルム。
【請求項8】
基板上に請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層を積層する積層工程と、
前記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、
前記感光層の露光部以外の部分を除去する現像工程と、
を有する、レジストパターンの形成方法。
【請求項9】
基板上に請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光層を積層する積層工程と、
前記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、
前記感光層の露光部以外の部分を除去する現像工程と、
前記感光層の露光部をさらに熱硬化する後加熱工程と、
を有する、レジストパターンの形成方法。
【請求項10】
基板上に形成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる、ソルダーレジスト。
【請求項11】
基板上に形成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物からなる、層間絶縁膜。
【請求項12】
請求項8又は9に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をめっきする、プリント配線板の製造方法。
【請求項13】
請求項8又は9に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板を表面粗化し、粗化された基板及び/又はレジストパターンをめっきする、プリント配線板の製造方法。
【請求項14】
基板と、該基板上に形成された請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物と、を備えるプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2010−128317(P2010−128317A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304627(P2008−304627)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】