説明

感光性組成物、コーティング剤、及び塗膜、並びに感光性組成物の製造方法

【課題】光硬化性と接着性に優れる感光性組成物、それを含むコーティング剤、その塗膜を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、下記一般式(1)の化合物とを共加水分解縮合させた樹脂組成物であって、


(式(1)中、n=0〜3であり、Rは水素原子又は有機基を示す。また、複数のRは異なってもよい水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)前記化合物は(B)n=1〜2であり、Rとして、環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、(C)n=1〜2であり、Rとして、アリール基を有する、アルコキシシラン化合物とを含み、かつ(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である組成物と、光酸発生剤とを含有する感光性組成物;混合指標α=(αc)/(αb)(2)(式(2)中、αb:前記(B)成分の含有量(mol%)、αc:前記(C)成分の含有量(mol%))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、そのコーティング剤、及び塗膜、並びに感光性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等の問題から、世界的に、環境配慮型の商品や、その製造方法が遡及されている。一般的に、揮発性有機化合物(以下、VOCという。)の排出が少なく、硬化に必要なエネルギー量が少ないという点で、光硬化性樹脂が注目されている。
【0003】
光硬化性樹脂の用途は、車、電車、建造物等の塗料やコーティング、DVDやブルーレイディスク等の光ディスクのコーティングや接着、インクジェットプリンターやグラビア印刷、フレキソ印刷用のインク、液晶やPDPディスプレイ用のカラーフィルター形成材料、液晶や有機EL用のシール材等多岐に渡る。
【0004】
光硬化の反応様式としては、カチオン重合反応と、ラジカル重合反応がよく知られている。
ラジカル重合反応としては、アクリレートやメタアクリレート系原料を硬化させるのが、一般的である。しかしながら、ラジカル重合系は酸素による重合阻害を受けやすく、空気中で反応を行うと、所望の性能を発揮しない場合が多いため、実用性に劣るという問題を有している。
【0005】
そこで、上記問題を解決するために、酸素による重合阻害の起きにくい、カチオン重合系の材料が望まれている。
カチオン重合系の材料としては、例えば下記のものが挙げられる。
特許文献1には、エポキシ樹脂、カチオン性重合開始剤、及びシランカップリング剤を含有する紫外線硬化型のエポキシ樹脂組成物の記載がある。
特許文献2には、エポキシ樹脂、カチオン性光重合開始剤、シランカップリング剤、及びシリカ粉末を含有する、光硬化性樹脂組成物の記載がある。
特許文献3には、エポキシ樹脂、光カチオン重合開始剤、シランカップリング剤、及び光増感剤を含有する、光硬化型エポキシ樹脂組成物の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−113022号公報
【特許文献2】特開平6−57103号公報
【特許文献3】特開2002−105177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特に感光性組成物として、より一層、高い性能を発揮し得る組成物の開発が要求されており、上記従来において開示されている樹脂組成物などは、未だ性能面において改良すべき点が多くある。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、光硬化性と接着性に優れる感光性組成物、及びそれを含むコーティング剤、並びにそれを使用した塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、エポキシ樹脂と、特定のアルコキシシラン化合物とを、共加水分解縮合することによって得られる樹脂組成物と、光酸発生剤とを含有させることによって、光硬化性と接着性に優れる感光性組成物、及び、それを含むコーティング剤、並びにそれを使用した塗膜を提供できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
(A)エポキシ樹脂と、
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、
を共加水分解縮合させて得られる樹脂組成物であって、
【化1】


(式(1)中、n=0〜3であり、Rは水素原子又は有機基を示す。また、複数のRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
を含み、かつ、下記式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である樹脂組成物と、光酸発生剤と、を含有する感光性組成物;
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式(2)中、αb:前記(B)成分の含有量(mol%)、αc:前記(C)成分の含有量(mol%))。
[2]
前記アルコキシシラン化合物として、
(D)前記一般式(1)において、n=0である、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を、さらに含む[1]に記載の感光性組成物。
[3]
下記式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標βが、0.01〜1.4である、[1]又は[2]に記載の感光性組成物;
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
(式(3)中、
βn2:前記一般式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn0:前記一般式(1)において、n=0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn1:前記一般式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
ここで、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である)。
[4]
下記式(4)で表される、前記(A)エポキシ樹脂と前記アルコキシシラン化合物との混合指標γが、0.02〜15である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性組成物;
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
(式(4)中、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:一般式(1)において、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g))
[5]
オキセタン化合物をさらに含有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の感光性組成物。
[6]
[1]〜[5]のいずれか一項に記載の感光性組成物を含むコーティング剤。
[7]
[1]〜[5]のいずれか一項に記載の感光性組成物、又は[6]に記載のコーティング剤を、光により硬化させて得られる塗膜。
[8]
(A)エポキシ樹脂と、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、を共加水分解縮合させて得られうる樹脂組成物に、光酸発生剤を添加することを少なくとも行う、樹脂組成物の製造方法;
【化2】


(式(1)中、n=0〜3であり、Rは、水素原子又は有機基を示す。また、複数のRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
を含み、かつ、下記式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19であり、
混合指標α=(αc)/(αb)(2)
(式(2)中、αb:前記(B)成分の含有量(mol%)、αc:前記(C)成分の含有量(mol%))。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、光硬化性と接着性に優れる感光性組成物、及びそれを含むコーティング剤、並びにそれを使用した塗膜が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
(樹脂組成物)
本実施形態の感光性組成物は、
(A)エポキシ樹脂と、
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、
を共加水分解縮合させて得られる樹脂組成物であり、
【0014】
【化3】

【0015】
(式(1)中、n=0〜3であり、Rは水素原子又は有機基を示す。また、複数のRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
を含み、かつ、下記式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である樹脂組成物と、光酸発生剤を混合することで得られる。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式(2)中、αb:前記(B)成分の含有量(mol%)、αc:前記(C)成分の含有量(mol%))。
【0016】
本発明者は、エポキシ樹脂と、特定のアルコキシシラン化合物とを、共加水分解縮合することによって得られる樹脂組成物と、光酸発生剤を含有する、光硬化性と接着性に優れる感光性組成物、及び、それを含むコーティング剤、並びにそれを使用した塗膜が得られることを見出した。
【0017】
((A)エポキシ樹脂)
本実施形態の(A)エポキシ樹脂とは、後述のアルコキシシラン化合物とその縮合物を除く、分子内にオキシラン環、通常は2個以上のオキシラン環を有する化合物を指し、上述の要件を満たすものであれば、特に限定されるものではない。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(WPE)は、好ましくは100〜600g/eqであり、より好ましくは100〜500g/eq、更に好ましくは100〜300g/eqである。
【0019】
前記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物との組成バランスによっては、エポキシ当量(WPE)が100g/eq未満であると、感光性組成物の保存安定性が低下する場合があり、600g/eqを超えると、塗膜の接着性が悪化するおそれがある。本実施形態の感光性組成物の用途は特に限定されるものではないが、コーティング剤として用いる場合には、エポキシ樹脂のエポキシ当量は100〜300g/eqであることが好ましい。
【0020】
また、エポキシ樹脂は、25℃における粘度が1000Pa・s以下の液体であることが好ましく、より好ましくは500Pa・s以下、更に好ましくは100Pa・s以下の液体である。25℃における粘度が1000Pa・sを超えると、液体としての流動性を失い、後述するアルコキシシラン化合物との相溶性が悪化する傾向にある。また、25℃における粘度が500Pa・sを超え、1000Pa・s以下である場合(500Pa・s<粘度≦1000Pa・s)には、製造時の温度調整や溶媒選択等により使用可能であるが、製造条件がやや限定される傾向があるため、500Pa・s以下であることが好ましい。
【0021】
粘度が1000Pa・sを超えるエポキシ樹脂を原料として得られる樹脂組成物は、高粘度化する可能性が高く、結果として、それを含有する感光性組成物の粘度も高くなり、コーティング性が悪化する場合がある。
本実施形態の感光性組成物は、後述の希釈剤等を配合し、低粘度化することも可能であるが、近年では低VOCの感光性組成物やコーティング剤が遡及されており、希釈剤等を配合しなくても、所定の粘度以下となることが求められるという点で、エポキシ樹脂の粘度は重要である。
本実施形態では、エポキシ樹脂として、固形エポキシ樹脂を選択することも可能であるが、後述の共加水分解縮合を行う上で、反応温度条件が制限されたり、得られた感光性組成物の流動性を損なう場合がある。
【0022】
エポキシ樹脂の種類は、特に限定されるものではなく、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂の核水素化物、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0023】
それらの中でも、容易に入手可能であり、目的とする本実施形態の感光性組成物の硬化物として良好な物性を付与できるという観点から、脂環式エポキシ樹脂、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂が好ましく、脂環式エポキシ樹脂とポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂がより好ましい。またこれらのエポキシ樹脂は、単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
(脂環式エポキシ樹脂)
脂環式エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではなく、例えば、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基等を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0025】
脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、単官能脂環式エポキシ化合物として、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシルが挙げられる。2官能脂環式エポキシ化合物としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオクチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、1,2,8,9−ジエポキシリモネンが挙げられる。多官能脂環式エポキシ化合物としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキセン付加物等が挙げられる。多官能脂環式エポキシ化合物としては、エポリードGT401、EHPE3150(ダイセル化学工業株式会社)等が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂の代表的な例を下記に示す。
【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
(脂肪族系エポキシ樹脂)
脂肪族系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、具体的には、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、キシリレングリコール誘導体等の多価アルコールのグリシジルエーテル類が挙げられる。脂肪族系エポキシ樹脂の代表的な例を下記に示す。
【0029】
【化6】

【0030】
(多官能エポキシ樹脂)
ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、2,6−ジ(t−ブチル)ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエンのポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。上記の中でも、透明性と流動性に優れるタイプのものが多く市販され、安価に入手可能であることや、硬化物とした時に耐クラック性に優れる傾向にあるため、ビスフェノールA骨格を有するフェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂が好ましい。
【0031】
ビスフェノール骨格を有するフェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の代表的な例を下記に示す。
【0032】
【化7】

【0033】
エポキシ樹脂として、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂を使用する場合、これらの繰り返し単位(上記の代表的な例を示す化学式中のn)は、特に限定されるものではないが、好ましくは20未満、より好ましくは0.001〜5、更に好ましくは0.01〜2である。
繰り返し単位が0.001未満であると、アルコキシシラン化合物との反応性が悪化する場合があり、20を超えると流動性が低下して、実用上問題となる場合がある。上述の反応性と流動性のバランスの観点から、繰り返し単位は0.01〜2であることが特に好ましい。
【0034】
(ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂)
ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等が挙げられる。ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂の代表的な例を下記に示す。
【0035】
【化8】

【0036】
(芳香族エポキシ樹脂の核水素化物)
芳香族エポキシ樹脂の核水素化物としては、特に限定されるものではなく、例えば、フェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノール等)のグリシジルエーテル化物又は各種フェノール(フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等)の芳香環を核水素化したものや、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物の核水素化物等が挙げられる。
【0037】
(複素環式エポキシ樹脂)
複素環式エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0038】
(グリシジルエステル系エポキシ樹脂)
グリシジルエステル系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸類からなるエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0039】
(グリシジルアミン系エポキシ樹脂)
グリシジルアミン系エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、アニリン、トルイジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン誘導体、ジアミノメチルベンゼン誘導体等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
(ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂)
ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0041】
上述したエポキシ樹脂は、ポリオールを併用することができる。
ポリオールとしては、分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物であれば、特に制限されず、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0042】
(アルコキシシラン化合物)
本実施形態におけるアルコキシシラン化合物とは、1〜4個のアルコキシル基を有するケイ素化合物のことを示し、下記一般式(1)で表される。
【0043】
【化9】

【0044】
(式(1)中、n=0〜3であり、Rは水素原子又は有機基を示す。また、複数のRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
【0045】
一般式(1)におけるRは水素原子又は有機基を示し、特に限定されるものではないが、後述する環状エーテル基を有する有機基、アリール基を有する有機基の他に、例えば、アルキル基、ビニル基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基を有する有機基等が挙げられ、それらの中でも、アルキル基が好ましい。
【0046】
ここで、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基(n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル)、ペンチル基(n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル等)、ヘキシル基(n−ヘキシル、i−ヘキシル等)、ヘプチル(n−ヘプチル、i−ヘプチル等)、オクチル基(n−オクチル、i−オクチル、t−オクチル等)、ノニル(n−ノニル、i−ノニル等)、デシル基(n−デシル、i−デシル等)、ドデシル基(n−ドデシル、i−ドデシル等)が挙げられ、これらは直鎖状あるいは分岐鎖状のアルキル基のいずれでもよい。
【0047】
それらの中でも、炭素数10以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基がより好ましい。また、これらアルキル基の、水素原子又は主鎖骨格の一部又は全部が、エーテル基、エステル基、カルボニル基、シロキサン基、フッ素等のハロゲン原子、メタクリル基、アクリル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロキシル基からなる群から選択された少なくとも1種の基で置換されていてもよい。
【0048】
また、上述の一般式(1)における複数のRは、それぞれ同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Rとしては、上述の要件を満たすものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0049】
上述の一般式(1)の(OR)は、水酸基又は炭素数1〜8のアルコキシル基の代わりに、他の加水分解性基(クロル基、アセトキシ基、イソプロペノキシ基、アミノ基等)で置き換えたものを、(OR)として使用してもよい。そのようなシラン化合物の例としては、メチルトリクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0050】
((B)成分)
前記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物の(B)成分は、一般式(1)において、n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物である。
【0051】
【化10】

【0052】
環状エーテル基とは、環状の炭化水素の炭素を酸素で置換したエーテルを有する有機基を指し、通常は3〜6員環の構造を持つ環状エーテル基を意味する。中でも、環歪みエネルギーが大きく、反応性の高い3員環又は4員環の環状エーテル基が好ましく、特に好ましいのは3員環のエーテル基である。
【0053】
環状エーテル基の具体例としては、例えば、β−グリシドキシエチル、γ−グリシドキシプロピル、γ−グリシドキシブチル等の炭素数4以下のオキシグリシジル基が結合したグリシドキアルキル基、グリシジル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘプチル)エチル基、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ペンチル基等のオキシラン基を持った炭素数5〜8のシクロアルキル基で置換されたアルキル基等が挙げられる。
【0054】
上記の中でも、β−グリシドキシエチル基、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等のC1〜C3のアルキル基にオキシグリシジル基が結合したグリシドキシアルキル基、オキシラン基を持ったC5〜C8のシクロアルキル基で置換された炭素数3以下のアルキル基が好ましい。
【0055】
(B)成分の具体例としては、例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(フェニル)ジエトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(フェニル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリメトキシシラン、2,3−エポキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
((C)成分)
前記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物の(C)成分は、(C)成分は、一般式(1)において、n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物である。
【0057】
【化11】

【0058】
アリール基とは、芳香族炭化水素(単純芳香環又は多環芳香族炭化水素)から誘導された官能基又は置換基を指す。アリール基としては、これに合致するものであれば、特に限定するものではないが、高次構造における立体障害を考慮すると、フェニル基やベンジル基等が好ましい。
【0059】
(C)成分の具体例としては、例えば、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
上述した「(B)一般式(1)において、n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物」と、「(C)一般式(1)において、n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物」の混合比率は、以下の式(2)で算出される混合指標αで表される。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式(2)中、αb:(B)成分の含有量(mol%)、αc:(C)成分の含有量(mol%))。
【0061】
本実施形態においては、混合指標αを0.001〜19の範囲とすることが重要である。混合指標αが0.001未満であると、樹脂組成物の流動性や保存安定性が低下し、19を超えると、樹脂組成物の流動性や、硬化物の耐クラック性が悪化する。特に、封止材用途での使用を考慮した場合には、高い耐クラック性が要求されるため、混合指標αは、好ましくは0.2〜5、より好ましくは0.3〜2である。
【0062】
((D)成分)
また、本実施形態における樹脂組成物は、上述した(A)〜(C)成分に加え、(D)成分として、上記一般式(1)におけるRの個数を示すn=0、つまり(OR)を4個有するアルコキシシラン化合物を更に共加水分解縮合させてもよい。
【0063】
(D)成分としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
(その他のアルコキシシラン化合物)
また、本実施形態における樹脂組成物は、上述した(B)〜(D)成分以外の一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物を更に共加水分解縮合させてもよい。そのような化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ビス(2−クロロエトキシ)メチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、クロロメチルジエトキシメチルシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメトキシイソプロポキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、3−[ジメトキシ(メチル)シリル]プロパン−1−チオール、トリメトキシ(プロピル)シラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ブトキシトリメチルシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メトキシルトリエトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、ジエトキシジエチルシラン、ジメトキシルジプロポキシシラン、エチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシロキシトリメチルシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メトキシトリプロピルシラン、ジブトキシジメチルシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、オクチルオキシトリメチルシラン、ペンチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルオキシトリメチルシラン、ジエトキシドデシルメチルシラン等が挙げられる。
【0065】
本実施形態におけるアルコキシシラン化合物の「n=2であるアルコキシシラン化合物」、「n=1であるアルコキシシラン化合物」及び「n=0であるアルコキシシラン化合物」の混合比率は、以下の式(3)で算出される混合指標βで表される。
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
なお、上記式(3)中、
βn2:一般式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn0:一般式(1)において、n=0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn1:一般式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
をそれぞれ表し、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である。
【0066】
本実施形態の樹脂組成物において、混合指標βは、好ましくは0.01〜1.4、より好ましくは0.03〜1.2、更に好ましくは0.05〜1.0である。組成によっては、混合指標βが0.01未満であると、樹脂組成物の流動性が悪化する場合があり、1.4を超えると、耐クラック性が悪化する場合がある。
【0067】
本実施形態における(A)エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物の「n=0〜2であるアルコキシシラン化合物」の混合比率は、以下の式(4)で算出される混合指標γで表される。
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
なお、上記式(4)中、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:一般式(1)において、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)
【0068】
混合指標γは、好ましくは0.02〜15であり、より好ましくは0.04〜7、更に好ましくは0.08〜5である。組成によっては、混合指標γが0.02未満であると、樹脂組成物を硬化物としたとき、この硬化物としての耐クラック性に問題を生じる場合があり、15を超えると、硬化物としての耐光性が悪化するおそれがある。
【0069】
(共加水分解縮合工程)
本実施形態において、まず、上述した(A)エポキシ樹脂と、上述した式(1)で表されるアルコキシシラン化合物とを共加水分解縮合させて樹脂組成物を得ることができる。
本実施形態における「共加水分解縮合」とは、エポキシ樹脂存在下で行う加水分解縮合反応を意味し、エポキシ樹脂非共存下における反応とは明確に区別される。
【0070】
本実施形態における「共加水分解縮合」とは、脱水を伴わない還流工程と、それに続く脱水縮合工程との、少なくとも2つの工程により構成されている。
上述の「脱水を伴わない還流工程」とは、共加水分解のために配合した水や溶媒、及び、反応中に生じる、アルコキシシラン化合物由来の水や溶媒を、反応溶液に戻しながら反応を行う工程である。その方法は特に限定されないが、通常は、反応容器上部に冷却管を取り付け、生じた水や溶媒をリフラックスさせながら、反応を行う。
また上述の「脱水縮合工程」とは、配合した水や溶媒、及び、上記「脱水を伴わない還流工程」で生じた水や溶媒を、除去しながら縮合反応を行う工程である。その方法は特に限定されないが、通常は、ロータリーエバポレータ等を用いて減圧蒸留することで、反応を行う。
【0071】
共加水分解縮合反応時の加熱温度は、好ましくは130℃以下、より好ましくは0〜120℃、更に好ましくは0〜100℃である。
130℃を超えると、組成によっては樹脂組成物が変質する可能性がある。また、共加水分解縮合の反応時間は、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜12時間である。0.5時間未満であると、組成によっては、未反応物質の残存量が多くなる場合がある。
【0072】
本実施形態の樹脂組成物は、上述した(A)エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物との共加水分解縮合の際、加水分解縮合触媒を加えて行ってもよい。
加水分解縮合触媒とは、従来公知の加水分解縮合反応を促進させるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等)、有機金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、ヒ素、セリウム、ホウ素、カドミウム、マンガン、ビスマス等の有機酸化物、有機酸塩、有機ハロゲン化物、アルコキシド等)、無機塩基(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)、有機塩基(アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等)等が挙げられる。
【0073】
上述した有機金属の中でも、有機錫が好ましい。
有機錫とは、錫原子に少なくとも一つの有機基が結合しているものを指し、構造としては、モノ有機錫、ジ有機錫、トリ有機錫、テトラ有機錫等が挙げられ、それらの中でも、ジ有機錫が好ましい。
【0074】
有機錫としては、例えば、四塩化錫、モノブチル錫トリクロライド、モノブチル錫オキサイド、モノオクチル錫トリクロライド、テトラn−オクチルチン、テトラn−ブチルチン、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキシラウレート、ジブチル錫ステアレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫・ケイ素エチル反応物、ジブチル錫塩とシリケートの化合物、ジオクチル錫塩とシリケートの化合物、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレート)、ジブチル錫ビス(ステアリルマレート)、ジブチル錫ビス(オレイルマレート)、ジブチル錫マレート、ジブチル錫ビス(O−フェニルフェノキサイド)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソノニル3−メルカプトプロピオネート)、ジブチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチル錫ビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジドデシルメルカプト、ジオクチル錫バーサテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ビス(エチルマレート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレート)、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルメルカプトアセテート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジエトキサイド、ジブチル錫ジブトキサイド、ジオクチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジエトキサイド、ジオクチル錫ジブトキサイド、オクチル酸錫、ステアリン酸錫等が挙げられる。上記の中でも、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテートが好ましい。
【0075】
これらの加水分解縮合触媒は単独で用いても、複数を組み合わせて使用してもよい。例えば、有機酸錫とアルカリ系有機錫を組み合わせて使用したり、錫等の有機酸塩で反応させた後に、無機塩基で処理することも可能である。この場合の無機塩基としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等の多価カチオンの水酸化物が好ましい。
【0076】
本実施形態における感光性組成物の硬化は、光酸発生剤を使用したカチオン重合反応を主体としたものであるため、アルカリ性物質の共存は好ましくない場合がある。加水分解縮合触媒としてアルカリ性物質を用いる場合は、添加量の抑制や、イオン交換樹脂による処理等の対策を講じることが好ましい。
【0077】
加水分解縮合触媒の添加量は特に限定されるものではないが、好ましい添加量は、上述の一般式(1)における(OR)に対する比率である混合指標δから求めることができる。ここで、混合指標δは、以下の式(5)で表される。
混合指標δ=(δe)/(δs) (5)
式(5)中、
δe:加水分解縮合触媒の添加量(mol数)、
δs:一般式(1)における(OR)の量(mol数)を、それぞれ示す。
【0078】
混合指標δは、好ましくは0.0005〜5、より好ましくは0.001〜1、更に好ましくは0.005〜0.5である。感光性組成物の組成によっては、混合指標δが0.0005未満であると、加水分解縮合の促進効果が得られ難くなる場合があり、5を超えると、環状エーテル基の開環が促進されたり、保存安定性の悪化につながる場合があるため、好ましくない。
【0079】
本実施形態の樹脂組成物を共加水分解縮合により得る工程において、水の添加量は特に限定されるものではないが、好ましい添加量は、上述の一般式(1)における(OR)に対する比率である混合指標εから求めることができる。ここで、混合指標εは、以下の(6)で表される。
混合指標ε=(εw)/(εs) (6)
式(6)中、
εw:水の添加量(mol数)、
εs:一般式(1)における(OR)の量(mol数)を、それぞれ示す。
【0080】
混合指標εは、好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.2〜3、更に好ましくは0.3〜1.5である。樹脂組成物の組成によっては、混合指標εが0.1未満であると、加水分解反応が進行しない場合があり、5を超えると、組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0081】
上述した共加水分解縮合における水の添加は、アルコキシシラン化合物の加水分解が主たる目的であるので、「脱水を伴わない還流工程」で行う必要がある。その添加のタイミングは、特に限定されず、最初に添加してもよいし、フィードポンプ等を用いて、反応中に徐々に添加してもよい。
【0082】
本実施形態の共加水分解縮合反応は、無溶剤でも、溶剤中でも行うことができる。溶剤としては、エポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物を溶解可能であり、これらに対して非活性である有機溶剤であれば、特に制限されず、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒を好適に用いることができる。また入手が容易であることから、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤の使用も可能であるが、これらはエポキシ基の開環を促進するため、配合や製造条件によっては使用に適さない場合もある。
【0083】
溶剤の添加量は、共加水分解縮合反応に供されるエポキシ樹脂とアルコキシシラン化合物の合計質量に対して、好ましくは0.01〜20倍量、より好ましくは0.02〜15倍量、更に好ましくは0.03〜10倍量である。溶剤の添加量により樹脂組成物の分子量を制御することが可能であるため、上述の添加量の範囲とすることで、適正な分子量、ひいては適性粘度の樹脂組成物を得ることができる。
【0084】
(光酸発生剤)
本実施形態の光酸発生剤とは、光を照射すると酸を放出し、重合を開始させる化合物であれば、特に限定されるものではないが、それらの中でもオニウム塩が好ましい。具体例としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられ、これらはカチオン部分がそれぞれ芳香族ジアゾニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族スルホニウムであり、アニオン部分がBF、PF、SbF、[BX(ただし、Xは少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)等により構成されたオニウム塩である。光酸発生剤の代表的な例を以下に示す。
【0085】
【化12】

【0086】
より具体的な例としては、四フッ化ホウ素のアリールジアゾニウム塩、六フッ化リンのトリアリールスルホニウム塩、六フッ化リンのジアリールヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのトリアリールホスホニウム塩、六フッ化アンチモンのジアリールヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリアリールスルホニウム塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジアリールヨードニウム塩、アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体、フェニルチオピリジウム塩、六フッ化リンアレン−鉄錯体等を挙げることができる。市販の商品としては、CD−1012(SARTOMER社製)、PCI−019、PCI−021(日本化薬株式会社社製)、オプトマーSP−150、オプトマーSP−170(株式会社ADEKA製)、UVI−6990、UVI−6974(ダウケミカル社製)、CPI−100P、CPI−100A、CPI−100L(サンアプロ株式会社製)、TEPBI−S(株式会社日本触媒製)、Rhodorsil2074(ローディア社製)等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用することもできる。この中で、硬化物の着色が少ないという点では、スルホニウム塩とヨードニウム塩が好ましく、更に硬化性も考慮すると、スルホニウム塩が特に好ましい。
【0087】
更に、前記感光性組成物には、硬化に悪影響を及ぼさない程度に、カチオン重合性を示す他の添加を添加することができる。これらの化合物としては、例えば、水酸基を含有しない多官能ビニルエーテルが挙げられる。具体的には、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。
【0088】
本実施形態における感光性組成物の硬化は、光酸発生剤を使用したカチオン重合反応を主体としたものであるため、アルカリ性物質の共存は好ましくない場合がある。かかる観点から、本実施形態の感光性組成物は、アルカリ性物質を含有しないことが好ましい。
【0089】
本実施形態の感光性組成物とは、上記の樹脂組成物と上記の光酸発生剤と、を含有するものであり、光照射により重合反応が起こり、高分子量化して硬化することができる組成物を指す。
【0090】
(オキセタン化合物)
本実施形態の感光性組成物には、オキセタン化合物、又は、ビニルエーテル化合物を配合してもよい。それらのなかでもオキセタン化合物を配合することが好ましい。
オキセタン化合物は、オキセタン環を含む化合物であれば、特に限定されず、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2,3−エポキシプロポキシメチル)オキセタン等が挙げられる。オキセタン化合物の代表的な例を以下に示す。上述のオキセタン化合物を配合することにより、重合速度を大きくしたり、組成物の粘度を低下させることも可能である。
【0091】
【化13】

【0092】
上記オキセタン化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、樹脂組成物:オキセタン化合物=20:80〜95:5(合計で、100)の質量比で配合される。より好ましくは40:60〜80:20である。樹脂組成物の配合比率が5未満であると、硬化反応が正常に進まない場合があり、95を超えると、硬化物の接着性が劣る場合がある。
【0093】
また、樹脂組成物とオキセタン化合物との相溶性を向上させるためには、例えば、ビスフェノール骨格を持つエポキシ樹脂を原料とする樹脂組成物に対しては、芳香環を持つオキセタン化合物を組み合わせる等、適切な組み合わせを選択することも必要である。
【0094】
更に、上記に加え、ビニルエーテル化合物を配合することも可能である。ビニルエーテル化合物としては、水酸基を持つものであれば、特に限定されないが、具体例としては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0095】
一般的に、エポキシ化合物は重合開始が速いものの、その後の重合反応は早くないといわれているが、本発明者は、意外にも、エポキシ基を持つ前記樹脂組成物に、オキセタン化合物を配合することで、重合速度を加速でき、光硬化性と接着性に優れた感光組成物が得られることを見出した。更に、本実施形態において、オキセタン化合物の選択によっては、樹脂組成物の粘度を低下させることも可能である。
【0096】
本実施形態の感光性組成物の粘度は、その流動性において、1000Pa・s以下である必要がある。上記範囲内であれば、その粘度は特に限定されるものではないが、好ましくは0.05〜50Pa・s、特に好ましくは0.2〜30Pa・sである。1000Pa・sを超えると、流動性が損なわれ、実用に適さない。
【0097】
(コーティング剤)
本実施形態のコーティング剤とは、前記感光性組成物を含むものである。本実施形態のコーティング剤は、物質の表面に塗膜を形成し、被覆するための材料であれば、特に限定されるものではなく、その主たる使用目的は、以下の通りである。
(1)塗装や基材の保護、耐久性付与、美観の維持(紫外線、赤外線、酸化、腐食、キズ、ホコリ、汚れ、温度、湿度等からの保護)
(2)塗装や基材への光沢性付与
(3)塗装や基材への撥水加工
(4)床材等の滑り止め加工
(5)電子部品類の封止、絶縁
また上記コーティング剤に、顔料や色素等を配合し、塗料やインクとして使用することも可能である。
【0098】
(塗膜)
本実施形態の塗膜とは、上記の感光性組成物又はコーティング剤を、光により硬化させて得られるものである。
本実施形態の塗膜の作製方法としては、上記の感光性組成物又はコーティング剤に、少なくとも所定の光(紫外線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線等)を照射することで硬化させる方法(光硬化)であればよく、特に限定するものではない。
【0099】
光としては、紫外線又は可視光が好ましく、紫外線がより好ましい。
光の発生源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、UVランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、各種半導体レーザ、YAGレーザ、エキシマーレーザー、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源等の各種光源等が挙げられる。
【0100】
また、ハケ塗り、ローラー塗り、吹付塗装、バーコーター、ロールコーター、焼付塗装、浸漬塗り、電着塗装、静電塗装、粉体塗装、蒸着、めっき等の塗装技術、インクジェット、レーザープリント、輪転機印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等の印刷技術、熱エネルギーによる熱硬化技術と組み合わせてもよい。
【0101】
(感光性組成物、コーティング剤及び塗膜)
本実施形態の感光性組成物、コーティング剤及びその塗膜には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、目的に応じて、各種有機樹脂、無機充填剤、着色剤、レベリング剤、滑剤、界面活性剤、シリコーン系化合物、希釈剤(反応性希釈剤、非反応性希釈剤等)、酸化防止剤、光安定剤等を適宜添加することができる。また、その他、一般に樹脂用の添加剤(可塑剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、耐衝撃強化剤、発泡剤、抗菌・防カビ剤、導電性フィラー、防曇剤、架橋剤等)として供される物質を、配合してもよい。
【0102】
ここで、有機樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂等の反応性の高い有機基を有するものが好ましい。
【0103】
無機充填材としては、例えば、シリカ類(溶融破砕シリカ、結晶破砕シリカ、球状シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、沈降性シリカ等)シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン等が挙げられ、好ましくはシリカ類、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム等が挙げられ、更に硬化物の物性を考慮すると、シリカ類がより好ましい。これらの無機充填材は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0104】
着色剤としては、着色を目的に使用される物質であれば特に限定されず、例えば、フタロシアニン、アゾ、ジスアゾ、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリノン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ、アゾメチン系の各種有機系色素、酸化チタン、硫酸鉛、クロムエロー、ジンクエロー、クロムバーミリオン、弁殻、コバルト紫、紺青、群青、カーボンブラック、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトグリーン等の無機顔料等が挙げられる。これらの着色剤は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0105】
レベリング剤としては、特に限定されず、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類からなる分子量4000〜12000のオリゴマー類、エポキシ化大豆脂肪酸、エポキシ化アビエチルアルコール、水添ひまし油、チタン系カップリング剤等が挙げられる。これらのレベリング剤は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0106】
滑剤としては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸系滑剤、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤、硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のマグネシウム、カルシウム、カドミウム、バリウム、亜鉛、鉛等の金属塩である金属石鹸類、カルナウバロウ、カンデリラロウ、ミツロウ、モンタンロウ等の天然ワックス類等が挙げられる。これらの滑剤は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0107】
界面活性剤とは、その分子中に溶媒に対して親和性を持たない疎水基と、溶媒に対して親和性を持つ親媒基(通常は親水基)を持つ、両親媒性物質を指す。また、その種類は特に限定されるものではなく、例えば、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は単独でも、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0108】
シリコーン系化合物としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン縮合物、シリコーン部分縮合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、シリコーンオイル、ポリシロキサン等が挙げられ、その両末端、片末端、あるいは側鎖に有機基を導入して変性したものも含まれる。その変性の方法も特に限定されず、例えば、アミノ変性、エポキシ変性、脂環式エポキシ変性、カルビノール変性、メタクリル変性、ポリエーテル変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、フェノール変性、シラノール変性、ポリエーテル変性、ポリエーテル・メトキシ変性、ジオール変性等が挙げられる。
【0109】
反応性希釈剤としては、特に限定されず、例えば、アルキルグリシジルエーテル(アルキルモノグリシジルエーテル、アルキルコグリシジルエーテル等)、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールのモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリジジルエーテル、オルソクレジルグリシジルエーテル、メタパラクレジルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、アルカン酸グリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリジジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、1,2:8,9ジエポキシリモネン等が挙げられる。
【0110】
非反応性希釈剤としては、特に限定されず、例えば、ベンジルアルコール、ブチルジグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の高沸点溶剤等が挙げられる。
【0111】
その他希釈剤としては、特に限定されず、例えば、任意の有機溶媒、グリセリン、ポリオール、水、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0112】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、トリフェニルホスフェート、フェニルイソデシルホスファイトなどの有機リン系酸化防止剤、ジステアリル−3,3’−チオジプロピネートなどの有機イオウ系酸化防止剤、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0113】
光安定剤としては、特に限定されず、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリルレート系、ニッケル系、トリアジン系等の紫外線吸収剤や、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0114】
本実施形態の感光性組成物、コーティング剤及びその塗膜には、さらに下記の物質を添加してもよい。
例えば、溶剤、油脂、油脂加工品、天然樹脂、合成樹脂、顔料、染料、色素、剥離剤、防腐剤、接着剤、脱臭剤、凝集剤、洗浄剤、脱臭剤、pH調整剤、感光材料、インク、電極、めっき液、触媒、樹脂改質剤、可塑剤、柔軟剤、農薬、殺虫剤、殺菌剤、医薬品原料、乳化剤・界面活性剤、防錆剤、金属化合物、フィラー、化粧品・医薬品原料、脱水剤、乾燥剤、不凍液、吸着剤、着色剤、ゴム、発泡剤、着色剤、研磨剤、離型剤、凝集剤、消泡剤、硬化剤、還元剤、フラックス剤、皮膜処理剤、鋳物原料、鉱物、酸・アルカリ、ショット剤、酸化防止剤、表面被覆剤、添加剤、酸化剤、火薬類、燃料、漂白剤、発光素子、香料、コンクリート、繊維(カーボンファイバー、アラミド繊維、ガラス繊維等)、ガラス、金属、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、懸濁化剤、粘稠剤等が挙げられる。
【0115】
(本実施形態の感光性組成物、コーティング剤、及び塗膜の用途)
本実施形態の感光性組成物、コーティング剤、及び塗膜の用途は、特に限定されるものではなく、例えば、コーティング剤(塗装、樹脂、プラスチック、金属、鋼管、自動車、建築物、光ファイバー用途等)、光ディスク(DVD、CD、ブルーレイディスク等)のコーティングや接着、インク(インクジェットプリンター、グラビア印刷、フレキソ印刷、プリント配線板用レジスト、UV印刷用途等)印刷製版材料(PS平板、感光性樹脂凸版、スクリーン版用感光材等)、フォトレジスト(半導体用レジスト、プリント配線板用レジスト、フォトファブリケーション用レジスト等)、プリント配線板、IC、LSIをはじめとする各種電子部品のパターン形成、液晶やPDPディスプレイ用のカラーフィルター形成材料、液晶や有機EL用のシール材、半導体・LED周辺材料(封止材、レンズ材、基板材、ダイボンド材、チップコート材、積層板、光ファイバー、光導波路、光フィルター、電子部品用の接着剤、コート材、シール材、絶縁材、フォトレジスト、エンキャップ材、ポッティング材、光ディスクの光透過層や層間絶縁層、プリント配線板、積層板、導光板、反射防止膜等)等、塗料(防蝕塗料、メンテナンス、船舶塗装、耐蝕ライニング、自動車・家電製品用プライマー、飲料・ビール缶、外面ラッカー、押出チューブ塗装、一般防蝕塗装、メンテナンス途装、木工製品用ラッカー、自動車用電着プライマー、その他工業用電着塗装、飲料・ビール缶内面ラッカー、コイルコーティング、ドラム・缶内面塗装、木工用塗料、耐酸ライニング、ワイヤーエナメル、絶縁塗料、自動車用プライマー、各種金属製品の美装兼防蝕塗装、パイプ内外面塗装、電気部品絶縁塗装等)、複合材料(化学プラント用パイプ・タンク類、航空機材、自動車部材、各種スポーツ用品、炭素繊維複合材料、アラミド繊維複合材料等)、土木建築材料(床材、舗装材、メンブレン、滑り止め兼薄層舗装、コンクリート打ち継ぎ・かさ上げ、アンカー埋め込み接着、プレキャストコンクリート接合、タイル接着、コンクリート構造物の亀裂補修、台座のグラウト・レベリング、上下水道施設の防蝕・防水塗装、タンク類の耐蝕積層ライニング、鉄構造物の防蝕塗装、建築物外壁のマスチック塗装等)、接着剤(金属・ガラス・陶磁器・セメントコンクリート・木材・プラスチック等の同種又は異種材質の接着剤、自動車・鉄道車両・航空機等の組み立て用接着剤、プレハブ用複合パネル製造用接着剤等:一液型、二液型、シートタイプを含む。)、航空機・自動車・プラスチック成形の治工具(プレス型、ストレッチドダイ、マッチドダイ等樹脂型、真空成形・ブロー成型用モールド、マスターモデル、鋳物用パターン、積層治工具、各種検査用治工具等)、改質剤・安定剤(繊維の樹脂加工、ポリ塩化ビニル用安定剤、合成ゴムへの添加剤等)等として用いることができる。中でも、コーティング剤、塗料、接着剤、光造形樹脂用途に好適である。
【実施例】
【0116】
以下に本実施形態を具体的に説明した実施例を例示するが、本実施形態はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0117】
実施例及び比較例における物性の評価は以下の通りに行った。
【0118】
<エポキシ当量(WPE)>
「JIS K 7236:2001(エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方)」に従って測定した。
<粘度>
以下の条件で、測定を行った。
回転式E形粘度計:東機産業株式会社製、「TV−22形」
ローター:3°×R14(必要に応じ、他のローターを選択してもよい。)
測定温度:25℃
サンプル量:0.4mL
【0119】
<混合指標αの算出>
混合指標αは、以下の式(2)から算出した。
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
ここで、
αb:(B)一般式(1)において、n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つの環状エーテル基を有するアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
αc:(C)一般式(1)において、n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つのアリール基を有するアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)。
【0120】
<混合指標βの算出>
混合指標βは、以下の式(3)から算出した。
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
ここで、
βn2:一般式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn0:一般式(1)において、n=0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn1:一般式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
なお、この時、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である。
【0121】
<混合指標γの算出>
混合指標γは、以下の式(4)から算出した。
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
ここで、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:一般式(1)において、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g)。
【0122】
<混合指標δの算出>
混合指標δは、以下の式(5)から算出した。
混合指標δ=(δe)/(δs) (5)
ここで、
δe:加水分解縮合触媒の添加量(mol数)、
δs:一般式(1)における(OR)の量(mol数)。
【0123】
<混合指標εの算出>
混合指標εは、以下の式(6)から算出した。
混合指標ε=(εw)/(εs) (6)
ここで、
εw:水の添加量(mol数)、
εs:一般式(1)における(OR)の量(mol数)。
【0124】
<混合指標ζの算出>
混合指標ζは、以下の式(7)から算出した。
混合指標ζ=(ζf)/(ζk) (7)
ここで、
ζf:硬化剤の添加量(mol数)、
ζk:エポキシ樹脂及びアルコキシシラン化合物に含まれる、環状エーテル基の量(mol数)。
【0125】
<混合指標ηの算出>
混合指標ηは、以下の式(8)から算出した。
混合指標η=(ηg)/(ηk) (8)
ここで、
ηg:硬化促進剤の質量(g)、
ηk:エポキシ樹脂及びアルコキシシラン化合物の質量(g)。
【0126】
<感光性組成物の粘度測定>
製造直後の組成物を入れた容器を密封し、25℃で1時間、温度調整した後、25℃における粘度を測定した。
粘度が1000Pa・s以下である場合に、流動性があると判断した。
【0127】
<塗膜の作製方法a>
下記手順に従って、空気中で、気温23℃、湿度55%RHの条件下で塗膜を作製した。
(1)以下の基板を準備し、各々、エタノール(和光純薬工業株式会社製、99.5%)で表面を拭き取って乾燥させた。
基板:ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETという。)
ポリカーボネート樹脂(以下、PCという。)
ポリメタクリル酸メチル樹脂(以下、PMMAという。)
(2)実施例の感光性組成物、又は、比較例の組成物を、バーコーター(#3)を使用して、上記基板上に塗布した。
(3)上記基板を、UV硬化装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)にセットし、以下の条件を3回繰り返し、硬化させた。
光源及び光量:高圧水銀灯(120W/cm
ベルトコンベアー速度:10m/分
(4)更に、上記基板を、100℃で1時間加熱処理し、後硬化させた。
【0128】
<塗膜の作製方法b>
下記手順に従って、空気中で、気温23℃、湿度55%RHの条件下で塗膜を作製した。
(1)以下の基板を準備し、各々、エタノール(和光純薬工業株式会社製、99.5%)で表面を拭き取って乾燥させた。
基板:PET
(2)実施例の感光性組成物、又は、比較例の組成物を、バーコーター(#3)を使用して、上記基板上に塗布した。
(3)上記基板を、UV硬化装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)にセットし、以下の条件を5回繰り返し、硬化させた。
光源及び光量:高圧水銀灯(120W/cm
ベルトコンベアー速度:5m/分
【0129】
<塗膜の光硬化性>
上述の塗膜を、「JIS K5600−5−4:1999 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき強度(鉛筆法)」に従って測定を行い、3B〜6Hであった場合に、光硬化性が良好であると判断した。
【0130】
<塗膜の接着性>
上述の塗膜を、「JIS K5600−5−6:1999 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に従って測定を行った。
結果は、○:殆ど剥離が見られない、△:部分的に剥離する、×:殆ど剥離する、の3段階評価とし、基準よりも良好な結果を示した場合に、接着性が良好であると判断した。
【0131】
<総合判定>
上記、感光性組成物に流動性があり、且つ、塗膜の光硬化性と接着性が良好であった場合に、総合判定として合格と判断した。
【0132】
実施例及び比較例で使用した原材料について、以下の(1)〜(9)に示す。
(1)エポキシ樹脂
(1−1)エポキシ樹脂A:ポリ(ビスフェノールA−2−ヒドロキシプロピルエーテル)(以下、Bis−Aエポキシ樹脂という。)
・商品名:旭化成エポキシ株式会社製、「AER」
また、上述の方法で測定した、エポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):187g/eq
・粘度(25℃):14.3Pa・s
(1−2)エポキシ樹脂B:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(以下、脂環式エポキシ樹脂という。)
・商品名:ダイセル化学工業株式会社製、「セロキサイド2021P」
また、上述の方法で測定した、エポキシ当量(WPE)及び粘度は、以下の通りであった。
・エポキシ当量(WPE):131g/eq
・粘度(25℃):227mPa・s
(2)アルコキシシラン化合物H:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、GPTMSという。)
・商品名:信越化学工業株式会社製、「KBM−403」
(3)アルコキシシラン化合物I:フェニルトリメトキシシラン(以下、PTMSという。)
・商品名:信越化学工業株式会社製、「KBM−103」
(4)アルコキシシラン化合物J:ジメチルジメトキシシラン(以下、DMDMSという。)
・商品名:信越化学工業株式会社製、「KBM−22」
(5)アルコキシシラン化合物K:テトラエトキシシラン(以下、TEOSという。)
・商品名:信越化学工業株式会社製、「KBE−04」
(6)溶剤
(6−1)テトラヒドロフラン:和光純薬工業株式会社製、安定剤不含タイプ(以下、THFという。)
(7)加水分解縮合触媒:ジブチル錫ジラウレート(和光純薬工業株式会社製、以下、DBTDLという。)
(8)光酸発生剤
(8−1)トリアリルスルホニウムのヘキサフルオロリン酸塩混合物
・商品名:ユニオンカーバイド社製、「UVI−6990」(以下、UVI−6900という。)
(8−2)芳香族スルホニウムのヘキサフルオロアンチモン酸塩
・商品名:三新化学工業株式会社製、「サンエイドSI−80L」(以下、SI−80Lという。)
(9)オキセタン化合物
(9−1)3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン
・商品名:東亞合成株式会社製、「OXT−211」(以下、POXという。)
【0133】
(合成例1)
樹脂組成物A:樹脂組成物Aを以下の手順で製造し、評価した。
(1)準備:循環恒温水槽を5℃にセットし、冷却管に還流させた。更に、マグネチックスターラーの上に、80℃のオイルバスを載せた。
(2)表1の組成比率に従って、25℃の雰囲気下で、脂環式エポキシ樹脂と、アルコキシシラン化合物及びTHFを、攪拌子を投入したフラスコに入れて混合攪拌後、更に、水と加水分解縮合触媒を添加して、混合攪拌した。
(3)続いて、フラスコに冷却管をセットし、速やかに、80℃のオイルバスに浸して攪拌を開始し、リフラックスさせながら8時間反応させた。
(4)反応終了後、25℃まで冷却後、フラスコから冷却管を外し、溶液を採取した。
(5)上記溶液を、エバポレーターを使用して、400Pa、50℃で1時間留去した後、更に、80℃で5時間留去しながら、脱水縮合反応を行った。
(6)反応終了後、25℃まで冷却し、樹脂組成物Aを得た。
(7)この樹脂組成物における、混合指標α1〜ε1を、表3に示した。
(8)更に、上述の方法に従って、上記(6)で得た樹脂組成物Aの、エポキシ当量(WPE)を測定した。
上記樹脂組成物は、エポキシ当量(WPE)=193g/eqであり、適正な値を示した。また粘度は、12.7Pa・s<1000Pa・sと、良好な流動性を示した。
【0134】
(合成例2)
樹脂組成物B:表1の組成比率に従って、合成例1と同様の方法で、樹脂組成物Bを合成し、評価した。混合指標α2〜ε2を、表3に示す。
上記樹脂組成物Bの、エポキシ当量(WPE)=152g/eqであり、適正な値を示した。また、粘度は、0.93Pa・s<1000Pa・sと、良好な流動性を示した。
【0135】
(実施例1)
感光性組成物1及びその塗膜を、以下の手順で製造し、評価した。
(1)上記合成例1の樹脂組成物Aを使用し、表2の配合に従って混合攪拌し、更に、真空下で脱気したものを、感光性組成物1とした。感光性組成物1の粘度は、12.6Pa・s<1000Pa・sであり、流動性に優れる液体であった。
(2)上記「塗膜の作製方法a」に従って、上記基板3種類(PET、PC、PMMA)に、上記感光性組成物1を塗布し、UV硬化装置を使用して、塗膜を作製した。
(3)上述の塗膜を、「JIS K5600−5−4:1999 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき強度(鉛筆法)」に従って測定を行った結果を、表3に示す。
(4)上述の塗膜を、「JIS K5600−5−6:1999 塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に従って測定を行った結果を、表3に示す。
上記に示す通り、感光性組成物1は流動性に優れ、塗膜の光硬化性が良好であり、基準である比較例1よりも接着性が良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0136】
(実施例2)
感光性組成物2を、表2の配合に従って、実施例1と同様の方法で製造した。但し、UV硬化装置のベルトコンベアー速度を、10m/分に設定した。評価結果を、表3に示す。
感光性組成物2の粘度は、3.2Pa・s<1000Pa・sであり、流動性に優れる液体であった。
上記に示す通り、感光性組成物2は流動性に優れ、塗膜の光硬化性が良好であり、基準である比較例1よりも接着性が良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0137】
(実施例3)
感光性組成物3を、表2の配合に従って製造し、実施例1と同様の方法で評価した。
感光性組成物3の粘度は、1.0Pa・s<1000Pa・sであり、流動性に優れる液体であった。
次に、上記感光性組成物3を使用し、PETを基板として、上記「塗膜の作製方法b」に従って、塗膜を製造した。結果を表3に示す。
上記に示す通り、感光性組成物3は流動性に優れ、塗膜の光硬化性が良好であり、基準である比較例3よりも接着性が良好であることから、総合判定として合格であると判断した。
【0138】
(比較例1)
感光性組成物4を、表2の配合に従って、実施例1と同様の方法で製造した。評価結果を、表3に示す。
感光性組成物4の粘度は、13.8Pa・s<1000Pa・sであり、流動性に優れる液体であった。
しかしながら、表3に示す通り、感光性組成物4は流動性に優れるものの、塗膜の接着性が不良であることから、総合判定として不合格であると判断した。
【0139】
(比較例2)
感光性組成物5を、表2の配合に従って、実施例1と同様の方法で製造した。シランカップリング剤としては、GPTMSを用いた。評価結果を、表3に示す。
感光性組成物5の粘度は、12.1Pa・s<1000Pa・sであり、流動性に優れる液体であった。
しかしながら、表3に示す通り、感光性組成物5は流動性に優れるものの、塗膜の接着性改善効果は見られず、総合判定として不合格であると判断した。
【0140】
(比較例3)
感光性組成物6を、表2の配合に従って、実施例3と同様の方法で製造した。評価結果を、表3に示す。
感光性組成物6の粘度は、0.3Pa・s<1000Pa・sであり、流動性に優れる液体であった。
しかしながら、表3に示す通り、感光性組成物6は流動性に優れるものの、塗膜の接着性が不良であることから、総合判定として不合格であると判断した。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

【0144】
上記の結果から明らかなように、エポキシ樹脂と、特定のアルコキシシラン化合物とを、共加水分解縮合することによって得られる樹脂組成物と、光酸発生剤を含有する、感光性組成物は流動性に優れ、それを使用したコーティング剤及び塗膜は、光硬化性と接着性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本実施形態の感光性組成物、コーティング剤、及び塗膜は、例えば、塗料、接着剤、電子材料等としての産業上利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、
下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、
を共加水分解縮合させて得られる樹脂組成物であって、
【化1】


(式(1)中、n=0〜3であり、Rは水素原子又は有機基を示す。また、複数のRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
を含み、かつ、下記式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19である樹脂組成物と、光酸発生剤と、を含有する感光性組成物;
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式(2)中、αb:前記(B)成分の含有量(mol%)、αc:前記(C)成分の含有量(mol%))。
【請求項2】
前記アルコキシシラン化合物として、
(D)前記一般式(1)において、n=0である、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物を、さらに含む請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
下記式(3)で表される前記アルコキシシラン化合物の混合指標βが、0.01〜1.4である、請求項1又は2に記載の感光性組成物;
混合指標β={(βn2)/(βn0+βn1)} (3)
(式(3)中、
βn2:前記一般式(1)において、n=2であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn0:前記一般式(1)において、n=0であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
βn1:前記一般式(1)において、n=1であるアルコキシシラン化合物の含有量(mol%)、
ここで、0≦{(βn0)/(βn0+βn1+βn2)}≦0.1である)。
【請求項4】
下記式(4)で表される、前記(A)エポキシ樹脂と前記アルコキシシラン化合物との混合指標γが、0.02〜15である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性組成物;
混合指標γ=(γa)/(γs) (4)
(式(4)中、
γa:エポキシ樹脂の質量(g)、
γs:一般式(1)において、n=0〜2であるアルコキシシラン化合物の質量(g))
【請求項5】
オキセタン化合物をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性組成物を含むコーティング剤。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性組成物、又は請求項6に記載のコーティング剤を、光により硬化させて得られる塗膜。
【請求項8】
(A)エポキシ樹脂と、下記一般式(1)で表されるアルコキシシラン化合物と、を共加水分解縮合させて得られうる樹脂組成物に、光酸発生剤を添加することを少なくとも行う、感光性組成物の製造方法;
【化2】


(式(1)中、n=0〜3であり、Rは、水素原子又は有機基を示す。また、複数のRは、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
前記アルコキシシラン化合物は、
(B)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つの環状エーテル基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
(C)n=1〜2であり、Rとして、少なくとも1つのアリール基を有する、少なくとも1種のアルコキシシラン化合物と、
を含み、かつ、下記式(2)で表される(B)及び(C)の混合指標αが、0.001〜19であり、
混合指標α=(αc)/(αb) (2)
(式(2)中、αb:前記(B)成分の含有量(mol%)、αc:前記(C)成分の含有量(mol%))。

【公開番号】特開2010−184961(P2010−184961A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28272(P2009−28272)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】