説明

成膜方法および成膜装置

【課題】350℃以下の低温成膜において、従来よりも耐ウエットエッチング性が高い酸化シリコン膜を成膜することができる成膜方法および成膜装置を提供すること。
【解決手段】処理容器内に被処理体(半導体ウエハ)を搬入し、被処理体の温度を350℃以下として、Siソースガスとしてのアミノシランガスと酸化ガスとを前記処理容器内に供給し、被処理体の表面に酸化シリコン膜を形成するにあたり、酸化ガスとして、OガスおよびOガスの少なくとも一方からなる第1酸化ガスと、HOガスおよびHガスの少なくとも一方からなる第2酸化ガスとで構成されるものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体に酸化シリコン膜(SiO膜)を成膜する成膜方法および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスにおいては、例えば、ゲート電極側壁部のサイドウォールスペーサーや、LDDイオン注入のオフセットスペーサー等に酸化シリコン膜(SiO膜)が多用されている。SiO膜を成膜する際には、縦型のバッチ式熱処理装置にて複数の半導体ウエハに対して一括して化学蒸着法(CVD)により成膜する技術が用いられている。
【0003】
近年、半導体デバイスの微細化・集積化の進展にともない、ゲート長の短縮も求められており、不純物拡散をより厳格に防ぐ必要性等から、低温での成膜が指向されている。
【0004】
低温でSiO膜を成膜する技術として、SiソースとしてBTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)を用い、酸化剤としてO、O、酸素ラジカル等を用いてCVD成膜を行うものが知られている(例えば特許文献1、2、3、4)。これらの技術では、従来650〜700℃であった成膜温度を600℃以下にすることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−156063号公報
【特許文献2】特開2004−153066号公報
【特許文献3】特開2000−77403号公報
【特許文献4】特開2008−109903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では一層のゲート長短縮の要請から、さらなる低温成膜が要求されており、350℃以下という極めて低い温度での成膜が検討されているが、上述したようなBTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)とO等とを用いてこのような低温でCVD成膜して得られたSiO膜は、ウエットエッチングレートが極めて大きなものとなってしまう。
【0007】
本発明は、350℃以下の低温成膜において、従来よりも耐ウエットエッチング性が高い酸化シリコン膜を成膜することができる成膜方法および成膜装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来の手法で形成した酸化シリコン膜が350℃以下の低温成膜において耐ウエットエッチング性が低下するのは、膜中にアミノ基が取り込まれるためであり、酸化ガスとして従来用いているOガスの他にHOガスを用いることにより、膜中に取り込まれるアミノ基を減少させて耐ウエットエッチング性を向上させ得ることを見出した。
【0009】
本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、処理容器内に被処理体を搬入し、被処理体の温度を350℃以下として、Siソースガスとしてのアミノシランガスと酸化ガスとを前記処理容器内に供給し、被処理体の表面に酸化シリコン膜を形成する成膜方法であって、前記酸化ガスは、OガスおよびOガスの少なくとも一方からなる第1酸化ガスと、HOガスおよびHガスの少なくとも一方からなる第2酸化ガスとで構成されることを特徴とする成膜方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、真空保持可能な縦型で筒体状をなす処理容器と、前記被処理体を複数段に保持した状態で前記処理容器内に収容される保持部材と、前記処理容器に対して前記保持部材を搬入出する搬入出機構と、Siソースガスとしてアミノシランガスを前記処理容器内に供給するSiソース供給機構と、OガスおよびOガスの少なくとも一方からなる第1酸化ガスと、HOガスおよびHガスの少なくとも一方からなる第2酸化ガスとで構成される酸化ガスを前記処理容器内へ供給する酸化ガス供給機構と、被処理体の温度を350℃以下に制御する温度制御機構とを具備し、前記処理容器内に、前記Siソース供給機構から前記アミノシランガスが供給され、前記酸化ガス供給機構からOガスおよびOガスの少なくとも一方からなる第1酸化ガスと、HOガスおよびHガスの少なくとも一方からなる第2酸化ガスとが供給されて被処理体の表面にCVDにより酸化シリコン膜が形成されることを特徴とする成膜装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Siソースガスとしてアミノシランガスを用い、酸化ガスとして、OガスおよびOガスの少なくとも一方からなる第1酸化ガスと、HOガスおよびHガスの少なくとも一方からなる第2酸化ガスとで構成されるものを用いるので、第2酸化ガスによりアミノ基を酸化させてアミノ基の膜中への取り込み量を減少させることができ、酸化ガスとして第1酸化ガスのみを用いる場合よりも耐ウエットエッチング性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す縦断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す横断面図。
【図3】酸化ガスとして、Oガスのみを用いた場合と、OガスとHOガスを用いた場合とについて、温度を変えて成膜したSiO膜の耐ウエットエッチング性を確認した結果を示す図である。
【図4】酸化ガスとして、Oガスのみを用いた場合と、OガスとHOガスを用いた場合とについて、温度を変えて成膜したSiO膜の密度を示す図である。
【図5】酸化ガスとして、Oガスのみを用いた場合と、OガスとHOガスを用いた場合とについて、温度を変えて成膜したSiO膜のH、N、Cの濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る成膜方法を実施するための成膜装置の一例を示す縦断面図、図2は図1の成膜装置を示す横断面図である。なお、図2においては、加熱装置を省略している。
【0014】
成膜装置100は、下端が開口され、上部が閉塞された円筒体状の処理容器1を有している。この処理容器1の全体は、例えば石英により形成されており、この処理容器1内の上端部には、石英製の天井板2が設けられて封止されている。また、この処理容器1の下端開口部には、例えばステンレススチールにより円筒体状に成形されたマニホールド3がOリング等のシール部材4を介して連結されている。
【0015】
上記マニホールド3は処理容器1の下端を支持しており、このマニホールド3の下方から被処理体として多数枚、例えば50〜100枚の半導体ウエハWを多段に載置可能な石英製のウエハボート5が処理容器1内に挿入可能となっている。このウエハボート5は3本の支柱6を有し(図2参照)、支柱6に形成された溝により多数枚のウエハWが支持されるようになっている。
【0016】
このウエハボート5は、石英製の保温筒7を介してテーブル8上に載置されており、このテーブル8は、マニホールド3の下端開口部を開閉する例えばステンレススチール製の蓋部9を貫通する回転軸10上に支持される。
【0017】
そして、この回転軸10の貫通部には、例えば磁性流体シール11が設けられており、回転軸10を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部9の周辺部とマニホールド3の下端部との間には、例えばOリングよりなるシール部材12が介設されており、これにより処理容器1内のシール性を保持している。
【0018】
上記の回転軸10は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム13の先端に取り付けられており、ウエハボート5および蓋部9等を一体的に昇降して処理容器1内に対して挿脱されるようになっている。なお、上記テーブル8を上記蓋部9側へ固定して設け、ウエハボート5を回転させることなくウエハWの処理を行うようにしてもよい。
【0019】
また、成膜装置100は、処理容器1内へ酸化ガスを供給する酸化ガス供給機構14と、処理容器1内へSiソースガスとしてアミノシランガス、例えばBTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン)を供給するSiソースガス供給機構15と、処理容器1内へパージガスとして不活性ガス、例えばNガスを供給するパージガス供給機構16とを有している。
【0020】
酸化ガス供給機構14は、第1酸化ガス(例えばOガス)を供給する第1酸化ガス供給源17と、第2酸化ガス(例えばHOガス)を供給する第2酸化ガス供給源18とを有している。第1酸化ガス供給源17には第1酸化ガスを導く第1酸化ガス配管19が接続され、この第1酸化ガス配管19にはマニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなる第1酸素ガス分散ノズル20が接続されている。また、第2酸化ガス供給源18には第2酸化ガスを導く第2酸化ガス配管21が接続され、この第2酸化ガス配管21にはマニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなる第2酸化ガス分散ノズル22が接続されている。第1酸化ガス分散ノズル20の垂直部分および第2酸化ガス分散ノズル22の垂直部分は、処理容器1の内部に垂直に設けられた凹部31内に収容されている。そして、これら第1酸化ガス分散ノズル20および第2酸化ガス分散ノズル22の垂直部分には、それぞれ複数のガス吐出孔20a、22aが所定の間隔をおいて形成されており、各ガス吐出孔20aから水平方向にウエハWに向けて略均一に第1酸化ガス、例えばOガスが吐出され、各ガス吐出孔22aから水平方向にウエハWに向けて略均一に第2酸化ガス、例えばHOガスが吐出されるようになっている。なお、第1酸化ガスと第2酸化ガスは、処理容器1内で1本の分散インジェクター内に合流させてもよい。
【0021】
また、Siソースガス供給機構15は、Siソースガス供給源23と、このSiソースガス供給源23からSiソースガスを導くSiソースガス配管24と、このSiソースガス配管24に接続され、マニホールド3の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて垂直に延びる石英管よりなるSiソースガス分散ノズル25とを有している。ここではSiソースガス分散ノズル25は上記凹部31を挟むように2本設けられており(図2参照)、各Siソースガス分散ノズル25には、その長さ方向に沿って複数のガス吐出孔25aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス吐出孔25aから水平方向にウエハWに向けて略均一にSiソースガスとしてのアミノシランガス、例えばBTBASガスを吐出することができるようになっている。なお、このSiソースガス分散ノズル25は1本のみであってもよい。
【0022】
さらに、パージガス供給機構16は、パージガス供給源26と、パージガス供給源26からパージガスを導くパージガス配管27と、このパージガス配管27に接続され、マニホールド3の側壁を貫通して設けられたパージガスノズル28とを有している。パージガスとしては不活性ガス例えばNガスを好適に用いることができる。
【0023】
第1酸化ガス配管19、第2酸化ガス配管21、Siソースガス配管24、パージガス配管27には、それぞれ開閉弁19a、21a、24a、27aおよびマスフローコントローラのような流量制御器19b、21b、24b、27bが設けられており、第1酸化ガス、第2酸化ガス、Siソースガスおよびパージガスをそれぞれ流量制御しつつ供給することができるようになっている。
【0024】
一方、処理容器1の凹部31の反対側の部分には、処理容器1内を真空排気するための排気口37が設けられている。この排気口37は処理容器1の側壁を上下方向へ削りとることによって細長く形成されている。処理容器1のこの排気口37に対応する部分には、排気口37を覆うように断面コ字状に成形された排気口カバー部材38が接合により取り付けられている。この排気口カバー部材38は、処理容器1の側壁に沿って上方に延びており、処理容器1の上方にガス出口39を規定している。そして、このガス出口39から図示しない真空ポンプ等を含む真空排気機構により真空引きされる。そして、この処理容器1の外周を囲むようにしてこの処理容器1およびその内部のウエハWを加熱する筒体状の加熱装置40が設けられている。また、ウエハボート5近傍の所定位置には熱電対等の温度センサー(図示せず)が設けられており、半導体ウエハWの温度が制御されるようになっている。
【0025】
成膜装置100の各構成部の制御、例えばバルブ19a、21a、24a、27aの開閉による各ガスの供給・停止、マスフローコントローラ19b、21b、24b、27bによるガス流量の制御、真空排気機構による排気制御、および加熱装置40の制御によるウエハWの温度制御等は例えばマイクロプロセッサ(コンピュータ)からなるコントローラ50により行われる。すなわち、コントローラ50は、ガス供給制御機構、温度制御機構等として機能する。コントローラ50には、オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース51が接続されている。
【0026】
また、コントローラ50には、成膜装置100で実行される各種処理をコントローラ50の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部52が接続されている。レシピは記憶部52の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0027】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース51からの指示等にて任意のレシピを記憶部52から呼び出してコントローラ50に実行させることで、コントローラ50の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
【0028】
次に、以上のように構成された成膜装置を用いて行なわれる本実施形態に係るSiO膜の成膜方法について説明する。
【0029】
まず、常温において、例えば50〜100枚の被処理体である半導体ウエハWが搭載された状態のウエハボート5を予め所定の温度に制御された処理容器1内にその下方から上昇させることによりロードし、蓋部9でマニホールド3の下端開口部を閉じることにより処理容器1内を密閉空間とする。半導体ウエハWとしては、直径300mmのものが例示されるが、これに限るものではない。
【0030】
そして処理容器1内を真空引きして所定の減圧雰囲気に維持するととともに、加熱装置40への供給電力を制御して、ウエハ温度を上昇させてプロセス温度に維持し、ウエハボート5を回転させた状態で成膜処理を開始する。
【0031】
成膜処理に際しては、処理容器1内に、Siソースガス供給機構15のSiソースガス供給源23からSiソースガス配管24およびSiソースガス分散ノズル25を介してSiソースガスであるアミノシランガス、例えばBTBASを供給するとともに、酸化ガス供給機構14の第1酸化ガス供給源17から第1酸化ガス配管19および第1酸化ガス分散ノズル20を介して第1酸化ガス、例えばOガスを供給し、第2酸化ガス供給源18から第2酸化ガス配管21および第1酸化ガス分散ノズル22を介して第2酸化ガス、例えばHOガスを供給し、CVDにより酸化シリコン膜(SiO膜)を成膜する。成膜温度としては350℃以下の低温を用いる。
【0032】
従来は、SiソースガスとしてアミノシランガスであるBTBASを用い、酸化ガスとしてOガスのみを用いたCVDにより酸化シリコン膜(SiO膜)の成膜が行われていたが、これらを用いて350℃以下の低温で成膜を行うと、耐ウエットエッチング性が低下することが判明した。これは、アミノシランガスを用いて成膜することにより、アミノ基が膜中に取り込まれるためであると考えられる。
【0033】
酸化ガスとしては酸化力が大きいことが求められ、そのような酸化力の大きいガスとして従来Oガスが用いられていたが、Oガスはアミノシランガス中のSiを酸化する能力は高いものの、アミノ基を酸化して分解させる能力が低いことが判明した。そのため、酸化ガスとしてOガスのみを用いた場合には、アミノ基が膜中に取り込まれるのである。
【0034】
アミノ基を酸化させて分解させるためには、HOのようなHを含む酸化ガスを用いることが有効である。しかし、HOのみではSiを酸化させる機能が小さい。
【0035】
そこで、本実施形態では、酸化ガスとして、典型的には、第1酸化ガスであるOガスと、第2酸化ガスであるHOガスとを用いる。第1酸化ガスとしてはOガスを用いることもできる。また、第2酸化ガスとしては、他のHを含む酸化ガスであるHガスを用いることもできる。したがって、第1酸化ガスとしてはOガスおよびOガスのうち少なくとも一方からなるものを挙げることができ、第2酸化ガスとしてはHOガスおよびHガスのうち少なくとも一方からなるものを挙げることができる。
【0036】
Siソースガスとしてのアミノシランガスとしては、BTBASに限らず、他のアミノシランガス、例えばトリ−ジメチルアミノシラン(3DMAS)、テトラ−ジメチルアミノシラン(4DMAS)、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)、ビスジエチルアミノシラン(BDEAS)、ビスジメチルアミノシラン(BDMAS)等を用いることができる。
【0037】
成膜の際の流量は、Siソースガスの流量:0.05〜1l/min(slm)、第1酸化ガスの流量:0.05〜10l/min(slm)、第2酸化ガスの流量:0.05〜10l/min(slm)が例示される。また、処理容器内の圧力は27〜1333Pa(0.2〜10Torr)が好ましい。Siソースガスと酸化ガス(第1酸化ガス+第2酸化ガス)の流量比は0.01〜10であることが好ましい。また、第1酸化ガスと第2酸化ガスの流量比(第1酸化ガス/第2酸化ガス)は
0.01〜10であることが好ましい。
【0038】
成膜温度は、上述のように350℃以下であり、室温でも成膜が可能である。より好ましい成膜温度は、250〜350℃である。
【0039】
成膜が終了した後、処理容器1内を真空引きし、パージガス供給源26からパージガス配管27およびパージガスノズル28を介してパージガス、例えばNガスを処理容器1内に供給し、処理容器1内をパージし、その後、処理容器1内を常圧に戻してウエハボート5の入れ替えを行う。
【0040】
このようにして成膜された酸化シリコン膜(SiO膜)は、従来のアミノシランガスとOガスを用いた成膜に比べ、膜中へのアミノ基の取り込み量が減少し、膜の密度が上昇するため、耐ウエットエッチング性を上昇させることができる。
【0041】
このことを確認した実験結果について図3〜5を参照して説明する。
まず、SiソースをBTBASに固定し、酸化ガスとして、Oガスのみを用いた場合Aと、OガスとHOガスを用いた場合Bとについて、温度を変えて成膜を行い、成膜されたSiO膜の耐ウエットエッチング性を確認した。
【0042】
その結果を図3に示す。図3は、横軸に成膜温度をとり、縦軸にウエットエッチングに用いる薬液である希フッ酸(100:1DHF)による規格化したエッチングレートをとって、上記Aの場合とBの場合とについて温度に対する耐ウエットエッチング性の変化を示す図である。なお、規格化したエッチングレートは、熱酸化膜のフッ酸(100:1DHF)によるエッチングレートを1として示した値である。また、Bの場合のOガスとHOガスの流量比は0.6とした。
【0043】
図3に示すように、Aの酸化ガスとしてOガスのみを用いた場合には、成膜温度が350℃以下になるとエッチングレートが急激に上昇するが、Bの酸化ガスとしてOガスとHOガスを用いた場合には、成膜温度が低下してもエッチングレートがあまり低下せず、希フッ酸によるエッチングレートは、成膜温度300℃では、酸化ガスとしてOガスのみを用いた場合が熱酸化膜の38.6倍であったものが26.2倍まで改善され、成膜温度250℃では、酸化ガスとしてOガスのみを用いた場合が熱酸化膜の107.8倍であったものが28.1倍と大きく改善された。このことから、酸化ガスとしてOガスとHOガスの両方を用いた場合の耐ウエットエッチング性向上効果が確認された。
【0044】
次に、上述したAおよびBの酸化ガスを用いて温度を変えて成膜したSiO膜について、膜の密度を把握した。その結果を図4に示す。図4は、横軸に成膜温度をとり、縦軸に膜の密度をとって、上記Aの場合とBの場合とについて温度に対する密度の変化を示す図である。
【0045】
図4に示すように、Aの酸化ガスとしてOガスのみを用いた場合には、成膜温度が低下するに従って膜の密度が低下しているが、Bの酸化ガスとしてOガスとHOガスを用いた場合には、成膜温度が低下しても膜の密度は低下せず、むしろ上昇しており、400℃ではAの場合、Bの場合とも同じ膜密度であったものが、350℃以下において、膜の密度はAのOガスのみの場合よりもBのOガスとHOガスを用いた場合のほうが高くなり、その差は成膜温度が低下するに従って大きくなることが確認された。このことから、酸化ガスとしてOガスとHOガスを用いることにより、350℃以下において耐ウエットエッチング性が向上するのは、膜の密度が上昇することによるものであることが理解される。
【0046】
次に、上記AおよびBの酸化ガスを用いて温度を変えて成膜したSiO膜について、膜中のアミノ基の取り込み量を把握するため、二次イオン質量分析計(SIMS)により、アミノ基を構成するH、N、Cの膜中濃度を分析した。その結果を図5に示す。図5の(a)は成膜温度に対する膜中のH濃度の変化を示し、(b)は成膜温度に対する膜中のN濃度の変化を示し、(c)は成膜温度に対する膜中のC濃度の変化を示す。
【0047】
図5に示すように、Aの酸化ガスとしてOガスのみを用いた場合、Bの酸化ガスとしてOガスとHOガスを用いた場合ともに、成膜温度が低下するに従って、アミノ基を構成するH、N、Cの量が増加しているが、成膜温度が低下するに従って、Aの酸化ガスとしてOガスのみを用いた場合よりも、Bの酸化ガスとしてOガスとHOガスを用いた場合のほうがアミノ基を構成するH、N、Cの増加割合が低くなっていることが確認された。このことより、酸化ガスとしてOガスとHOガスを用いることにより、350℃以下の低温成膜において、膜中に取り込まれるアミノ基の量が低下することが確認された。
【0048】
以上の実験結果から、酸化ガスとしてOガスとHOガスを用いることにより、低温成膜において膜中へのアミノ基の取り込み量が減少する結果、膜密度の低下が抑制され、耐ウエットエッチング性が向上することが強く支持される。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では本発明を複数の半導体ウエハを搭載して一括して成膜を行うバッチ式の成膜装置に適用した例を示したが、これに限らず、一枚のウエハ毎に成膜を行う枚葉式の成膜装置に適用することもできる。
【0050】
また、上記実施形態においては、熱CVDによりSiO膜を成膜した場合について示したが、成膜の際に適宜の方法でプラズマを生成するプラズマCVDであってもよい。
【0051】
さらに、上記実施形態においては、Siソースガスと酸化ガスとを同時に供給する通常のCVDの例を示したが、Siソースと酸化ガスとを間欠的に供給しながら原子層レベルまたは分子層レベルで交互に繰り返し成膜するALD(Atomic Layer Deposition)を用いてSiO膜を成膜してもよい。この場合に、第1酸化ガスと第2酸化ガスとは同時に供給しても、別個に供給してもよい。また、酸化ガスを供給する際にプラズマ化してもよい。
【0052】
さらにまた、上記実施形態では、被処理体として半導体ウエハを用いた場合について説明したが、半導体ウエハに限定されず、LCDガラス基板等の他の基板を用いることができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1;処理容器
5;ウエハボート
14;酸化ガス供給機構
15;Siソースガス供給機構
16;パージガス供給機構
17;第1酸化ガス供給源
18;第2酸化ガス供給源
23;Siソースガス供給源
40;加熱機構
100;成膜装置
W;半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に被処理体を搬入し、被処理体の温度を350℃以下として、Siソースガスとしてのアミノシランガスと酸化ガスとを前記処理容器内に供給し、被処理体の表面に酸化シリコン膜を形成する成膜方法であって、
前記酸化ガスは、OガスおよびOガスの少なくとも一方からなる第1酸化ガスと、HOガスおよびHガスの少なくとも一方からなる第2酸化ガスとで構成されることを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記第1酸化ガスと第2酸化ガスの流量比は0.01〜10であることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記被処理体の温度は室温以上350℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記被処理体の温度は250〜350℃であることを特徴とする請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
複数の被処理体を一括して前記処理容器内に挿入し、これら複数の被処理体に対して一括して酸化シリコン膜を形成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
真空保持可能な縦型で筒体状をなす処理容器と、
前記被処理体を複数段に保持した状態で前記処理容器内に収容される保持部材と、
前記処理容器に対して前記保持部材を搬入出する搬入出機構と、
Siソースガスとしてアミノシランガスを前記処理容器内に供給するSiソース供給機構と、
ガスおよびOガスの少なくとも一方からなる第1酸化ガスと、HOガスおよびHガスの少なくとも一方からなる第2酸化ガスとで構成される酸化ガスを前記処理容器内へ供給する酸化ガス供給機構と、
被処理体の温度を350℃以下に制御する温度制御機構と
を具備し、
前記処理容器内に、前記Siソース供給機構から前記アミノシランガスが供給され、前記酸化ガス供給機構からOガスおよびOガスの少なくとも一方からなる第1酸化ガスと、HOガスおよびHガスの少なくとも一方からなる第2酸化ガスとが供給されて被処理体の表面にCVDにより酸化シリコン膜が形成されることを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
前記酸化ガス供給機構は、前記第1酸化ガスと第2酸化ガスの流量比が0.01〜10となるようにこれらを供給することを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記温度制御機構は、被処理体の温度が室温以上350℃以下となるように制御することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記温度制御機構は、前記被処理体の温度が250〜350℃となるように制御する特徴とする請求項8に記載の成膜装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−243620(P2011−243620A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111986(P2010−111986)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】