説明

成膜装置及び成膜方法

【課題】処理空間内の圧力を高めることができる成膜装置を提供すること。
【解決手段】処理容器2内に、基板であるウエハWの載置領域を備えた載置台3と、この載置台3と対向する天板部材4とを設け、載置台3を昇降機構5により天板部材4側へ上昇させて、載置台3と天板部材4との間で処理空間Sを形成する。載置台3における載置領域の外側領域と天板部材4との少なくとも一方には突起部43が設けられ、前記処理空間Sの形成時にその先端が他方に接触することにより、前記外側領域と天板部材4との間の離間距離が規制され、前記載置領域を囲むように排気用の1mm未満の隙間40が形成される。隙間40が狭小であることから、処理空間S内に反応ガスを封じ込めることができ、処理空間内の圧力が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の反応ガスと第2の反応ガスとを交互に供給し排気するサイクルを複数回実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおける成膜手法として、基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)等の表面に真空雰囲気下で第1の反応ガスを吸着させた後、供給するガスを第2の反応ガスに切り替えて、両ガスの反応により1層あるいは複数層の原子層や分子層を形成し、このサイクルを多数回行うことにより、これらの層を積層して、ウエハへの成膜を行うプロセスが知られている。このプロセスは、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などとよばれており、サイクル数に応じて膜厚を高精度にコントロールすることができると共に、膜質の面内均一性も良好であり、半導体デバイスの薄膜化に対応できる有効な手法である。
【0003】
この成膜方法を実施する装置として、例えば特許文献1及び特許文献2には、真空容器内に昇降自在に構成されたウエハの載置台と、この載置台と対向する天板部材を設ける構成が記載されている。この構成では、載置台を上昇させて天板部材との間に処理空間を形成し、基板の中央部上方側から反応ガスを供給する一方、載置台の周方向に沿って載置台と天板部材との間に形成された隙間から、未反応の反応ガスが排気される。また特許文献1の成膜装置は、前記載置台と天板部材との間に形成された隙間を1mm〜6mmの範囲で変化させることにより、処理空間内の圧力及び反応ガスの滞留時間を調整するように構成されている。
【0004】
前記成膜方法が好的である例としては、例えば窒化チタン(TiN)膜の成膜が挙げられ、この成膜処理では、第1の反応ガス(原料ガス)として例えばテトラクロロチタンガス(TiClガス)、第2の反応ガスとしてアンモニアガス(NHガス)が用いられる。このTiN膜は、配線や電極、バリア膜等として使用され、特性として比抵抗の低いことが要請されており、本発明者らは、さらなる膜特性の向上を図るために、処理空間内の圧力を高めることができる成膜装置について検討している。
【0005】
また特許文献3には、スパッタ装置において、処理空間を形成するシールドとペデスタルとの間の隙間を調整することにより、処理空間とその外側空間との間の流通路のコンダクタンスを調整し、処理空間内の圧力を制御する技術が記載されているが、隙間の幅は8mm〜33mmであり、この構成を適用しても本発明の課題を解決することはできない。さらに特許文献4には、反応エリアと搬送エリアとを分離することにより、残留ガスのパージ時間を短縮することができる技術が記載されているが、この構成を適用しても本発明の課題を解決することはできない。
【0006】
【特許文献1】特開2010−84192号公報(図4、段落0004)
【特許文献2】特開2009−88473号公報(図1)
【特許文献3】特開平9−111447号公報(図1、図2、段落0040)
【特許文献4】特開2004−335892号公報(図1、段落0036)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的は、載置部と天板部材との間に形成される処理空間に反応ガスを封じ込め、処理空間内の圧力を高めることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明の成膜装置は、処理容器内にて基板に対して、第1の反応ガスと、この第1の反応ガスと反応して反応生成物を形成する第2の反応ガスとを供給して成膜処理を行う成膜装置において、
前記処理容器内に設けられ、基板の載置領域を備えた載置部と、
前記載置部に対向するように設けられ、載置部との間で基板の処理空間を形成する天板部材と、
前記載置部に基板を受け渡す位置と、前記載置部が天板部材に当接する位置との間で、前記載置部を前記天板部材に対して相対的に昇降できるように構成され、成膜処理時に前記載置部を天板部材に相対的に接近させて、基板の周縁部または基板の外側領域にて基板の周方向に排気用の隙間を形成するための昇降機構と、
前記載置部とこの載置部を支持する支持部位との間、及び天板部材とこの天板部材を支持する支持部位との間の少なくとも一方に設けられ、前記昇降機構の昇降動作により載置部及び天板部材の一方側が他方側に偏って接触したときに天板部材に対する載置部の相対的姿勢を矯正すると共に接触圧を緩和するための緩衝機構と、
前記載置部と天板部材とが互いに離れたときに、天板部材に対する載置部の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用を抑えるための規制機構と、
前記処理空間に前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスを供給するためのガス供給部と、
前記処理空間を前記隙間及び処理容器内の雰囲気を介して排気するための排気手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の成膜方法は、処理容器内にて基板に対して、第1の反応ガスと、この第1の反応ガスと反応して反応生成物を形成する第2の反応ガスとを供給して成膜処理を行う成膜方法において、
前記処理容器内に設けられ、基板の載置領域を備えた載置部を、この載置部に対向するように設けられた天板部材に対して、前記載置部を天板部材に当接させるために相対的に上昇させる工程と、
前記載置部とこの載置部を支持する支持部位との間、及び天板部材とこの天板部材を支持する支持部位との間の少なくとも一方に設けられた緩衝機構により、載置部及び天板部材の一方側が他方側に偏って接触したときに、接触圧を緩和しながら天板部材に対する載置部の相対的姿勢を矯正する工程と、
前記載置部と天板部材とが互いに離れたときに、天板部材に対する載置部の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、矯正された前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用を規制機構により抑える工程と、
この規制機構により前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用を抑えた状態で、載置部を天板部材に対して相対的に接近させて、基板の周縁部または基板の外側領域にて基板の周方向に排気用の隙間を形成する工程と、
前記処理空間に前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスを供給する工程と、
前記処理空間を前記隙間及び処理容器内の雰囲気を介して排気する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【0010】
さらに、本発明の他の発明は、真空容器内にて基板に対して、第1の反応ガスと、この第1の反応ガスと反応して反応生成物を形成する第2の反応ガスとを供給して成膜処理を行う成膜装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板の載置領域を備えた載置部と、
この載置部に対向するように設けられ、載置部との間で基板の処理空間を形成する天板部材と、
前記載置部に基板を受け渡す位置と、前記載置部を前記天板部材に接近させて前記処理空間を形成する位置との間で、前記載置部を前記天板部材に対して相対的に昇降させる昇降機構と、
前記載置部における載置領域の外側領域と天板部材との少なくとも一方に設けられ、前記処理空間の形成時にその先端が他方に接触することにより、前記外側領域と天板部材との間の離間距離を規制して載置領域を囲むように排気用の1mm未満の隙間を形成するための突起部と、
前記処理空間に前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスを供給するためのガス供給部と、
前記処理空間を前記隙間及び真空容器内の雰囲気を介して真空排気するための真空排気手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、規制機構により、前記載置部と天板部材とが互いに離れたときに、天板部材に対する載置部の相対的姿勢が矯正された状態を維持しながら、成膜処理時には載置部を天板部材に相対的に接近させて、基板の周縁部または基板の外側領域にて基板の周方向に排気用の隙間を形成している。これにより、前記周方向に沿って均一な幅の狭小な隙間を所定の大きさで形成できるので、真空容器内において、成膜処理時には処理空間内に反応ガスを封じ込めることができ、処理空間内の圧力が高められる。また、本発明の他の発明によれば、載置部における基板の載置領域の外側領域と天板部材との少なくとも一方に、処理空間の形成時にその先端が他方に接触することにより、前記外側領域と天板部材との間の離間距離を規制する突起部を設けているので、処理空間の形成時には前記載置領域を囲むように排気用の1mm未満の隙間が形成される。このため、真空容器内において、成膜処理時には前記処理空間を排気空間と分離することができるため、処理空間内に反応ガスを封じ込めることができ、処理空間内の圧力が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかる成膜装置の第1の実施の形態を示す縦断側面図である。
【図2】前記成膜装置に設けられた緩衝機構を示す拡大縦断側面図である。
【図3】前記成膜装置に設けられた緩衝機構を示す拡大縦断側面図である。
【図4】前記成膜装置の載置台と天板部材とを示す拡大縦断側面図である。
【図5】前記天板部材を載置台から見た底面図である。
【図6】前記成膜装置にて行われる成膜方法の一例を示す工程図である。
【図7】前記成膜装置の作用を説明するための縦断側面図である。
【図8】前記成膜装置の作用を説明するための縦断側面図である。
【図9】前記成膜装置の作用を説明するための特性図である。
【図10】前記成膜装置に供給される原料ガス、還元ガス、パージガスの供給タイミングと処理空間内の圧力とを示す特性図である。
【図11】前記載置台と天板部材とにより構成される処理空間内でのガス流れの様子を示す拡大縦断側面図である。
【図12】前記成膜装置の作用を説明するための縦断側面図である。
【図13】前記成膜装置の作用を説明するための縦断側面図である。
【図14】前記成膜装置の作用を説明するための縦断側面図である。
【図15】前記成膜装置の他の例を示す縦断側面図である。
【図16】図15に示す成膜装置の作用を説明するための縦断側面図である。
【図17】図15に示す成膜装置の作用を説明するための縦断側面図である。
【図18】前記成膜装置のさらに他の例を示す縦断側面図である。
【図19】前記成膜装置のさらに他の例を示す縦断側面図である。
【図20】前記成膜装置のさらに他の例を示す縦断側面図である。
【図21】前記成膜装置のさらに他の例を示す縦断側面図である。
【図22】前記成膜装置のさらに他の例を示す縦断側面図である。
【図23】前記成膜装置のさらに他の例を示す縦断側面図である。
【図24】前記成膜装置のさらに他の例を示す縦断側面図である。
【図25】本発明にかかる成膜装置の第2の実施の形態を示す縦断側面図である。
【図26】押しネジとナットを示す縦断側面図である。
【図27】駆動部材と昇降機構を示す平面図である。
【図28】本発明の成膜方法の一例を示す工程図である。
【図29】成膜装置の作用を示す縦断側面図である。
【図30】成膜装置の作用を示す縦断側面図である。
【図31】成膜装置の作用を示す縦断側面図である。
【図32】成膜装置の作用を示す縦断側面図である。
【図33】成膜装置の作用を示す縦断側面図である。
【図34】成膜装置の作用を示す縦断側面図である。
【図35】成膜装置の第2の実施の形態の他の例を示す縦断側面図である。
【図36】成膜装置の第2の実施の形態のさらに他の例を示す縦断側面図である。
【図37】成膜装置の第2の実施の形態のさらに他の例を示す縦断側面図である、
【図38】本発明にかかる成膜装置の第3の実施の形態を示す縦断側面図である。
【図39】第3の実施の形態の成膜装置の作用を示すフローチャートである。
【図40】成膜装置の作用を示す縦断側面図である。
【図41】実施例1の結果を示す特性図である。
【図42】実施例2の結果を示す特性図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第1の実施の形態)
先ず、本発明の第1の実施の形態に係る成膜装置1について説明する。この第1の実施の形態は、特許請求の範囲の第2の独立項(請求項6)に相当するものである。この例の成膜装置1は、図1に示すように、例えば平面形状が概ね円形である真空容器をなす処理容器2と、この処理容器2内に設けられた載置部をなす載置台3と、この載置台3に対向する位置に設けられ、当該載置台3との間に処理空間を形成するための天板部材4と、を備えている。
【0014】
前記載置台3は、例えば窒化アルミニウム(AlN)、石英ガラス(SiO)等のセラミックスやアルミニウム(Al)、ハステロイ等の金属により構成され、例えば扁平な円板状に形成されている。この載置台3の表面は基板であるウエハWの載置面として構成され、当該載置面は例えば直径300mmのウエハWよりもひとまわり大きく形成されていて、ウエハWが載置される領域が載置領域に相当する。また載置台3には、ウエハWを成膜温度まで昇温させるために、加熱手段をなすヒータ31が埋設されている。このヒータ31は例えばシート状の抵抗発熱体により構成され、不図示の電源部より供給される電力によって、載置台3上のウエハWを例えば350℃〜500℃程度に加熱することができるようになっている。さらに、必要に応じて載置台3内に図示しない静電チャックを設け、載置台3上のウエハWを静電吸着により吸着保持することもできる。
【0015】
前記載置台3は、柱状の支持部材32によって例えば下面側中央部を支持されており、この支持部材32は、処理容器2の底壁21に設けられた貫通孔22を介して処理容器2の下方に伸び、その下端にはフランジ部33が接続されている。前記底壁21とフランジ部33との間には、処理容器2内の気密性を維持しながら、前記支持部材32を昇降機構5により昇降させるためのベローズ体34が設けられている。
【0016】
前記昇降機構5は、載置台3をウエハWの受け渡し位置と、この受け渡し位置の上方側の処理位置との間で昇降させるものである。この処理位置とは、後述するように載置台3と天板部材4との間に処理空間を形成する位置である。この例では、昇降機構5は、フランジ部33の左右方向(図1中X方向)の一端側に接続された第1の昇降機構5Aと、フランジ部33の左右方向の他端側に接続された第2の昇降機構5Bとにより構成されている。これら第1及び第2の昇降機構5A,5Bは同様に構成されており、夫々上下方向(図1中Z方向)に伸びるボールネジ51と、当該ボールネジ51に沿って上下方向に移動する駆動体52とを備えている。
【0017】
この駆動体52には板状の駆動部材53が設けられており、この駆動部材53が緩衝機構6を介して前記フランジ部33に接続されている。図中54は、ボールネジ51を回転させるモータであり、モータ54によってボールネジ51を回転させることにより、駆動体52及び駆動部材53が上下方向に移動するように構成されている。そして、処理容器2内を真空雰囲気に設定した場合には、後述するように、前記駆動部材53の移動に伴って、緩衝機構6、フランジ部33及び支持部材32を介して載置台3が昇降自在に構成される。
【0018】
前記緩衝機構6は、図2及び図3に示すように、弾性部材をなす複数個の皿バネ61を上下方向に積層することにより構成されている。この皿バネ61は、中央部が膨らむと共に開口するリング状に構成され、夫々の膨らみ部分が互いに対向するように組み合わせて積層される。この例では、4個の皿バネ61は例えばフランジ部33の上面と平面形状がリング状の駆動部材53の下面との間に、周方向の複数箇所例えば3箇所〜6箇所の位置に設けられ、載置台3がその支持部位である駆動部材53に対して揺動できるように設けられている。即ち、載置台3は、皿バネ61の緩衝作用により、いずれの方向にも傾くことができ、このため載置台3が後述の突起部43を介して天板部材4に偏って接触したときにも載置台3の姿勢が矯正されて、各突起部43に均一な荷重が加わる状態が得られる。図2中63は、その下端側がフランジ部33の上面に固定された棒状のガイド部材である。そしてこのガイド部材63を複数個の皿バネ61の夫々の開口部62に通すことにより、左右方向への位置ずれを抑えた状態で、皿バネ61がフランジ部33上に互いに積層して設けられるようになっている。
【0019】
前記ガイド部材63の上端側は、駆動部材53に形成された孔部53a内を昇降できるように構成されている。また図1〜図3中55は、フランジ部33の下方側に設けられた、フランジ部33の位置決め機構である。図1〜図3に示すように、この位置決め機構55の上面には突部55aが形成されている一方、フランジ部33の下面には、当該突部55aに対応する凹部33bが形成されている。さらにフランジ部33の上面には、突部33aが形成されている一方、駆動部材53の下面には、当該突部33aに対応する凹部53bが形成されている。
【0020】
ここで、載置台3の高さ位置について説明すると、図1及び図2に示す高さ位置は、処理容器2内を大気雰囲気に設定した場合に、載置台3に対してウエハWの受け渡しを行う受け渡し位置である。この際、大気雰囲気とは、後の成膜プロセスにて説明するように、処理容器2内を真空排気する前の圧力状態をいう。この状態では、フランジ部33には載置台3の重量がかかっており、フランジ部33はその凹部33bが前記位置決め機構55の突部55aに嵌合されて、高さ位置が決定されるようになっている。この際、緩衝機構6には負荷がかかっていない状態であって、図2に示すように、ガイド部材63の上端が、駆動部材53の孔部53a内に位置するように構成されている。
【0021】
また、図1に点線にて示す高さ位置は、載置台3が前記受け渡し位置にあるときに、処理容器2内を真空雰囲気に設定した場合の載置台3の高さ位置である。処理容器2内が真空雰囲気になると、フランジ部33が大気圧を受けて処理容器2側に引き寄せられ、載置台3が大気雰囲気の位置よりも僅かに上昇する。
【0022】
そして、このフランジ部33の上昇に伴い、図3に示すように、フランジ部33上面の突部33aが駆動部材53下面の凹部53bに嵌合する。この際緩衝機構6は負荷がかかり、上下方向に収縮した状態であって、図3に示すように、ガイド部材63の上端は駆動部材53の孔部53a内の上方側に移動する。ここで例えば処理容器2内が大気雰囲気のときの前記載置台3の受け渡し位置は、処理容器2内が真空雰囲気のときよりも例えば2mm下降した位置に設定され、図2及び図3の高さ関係が維持できるように、駆動部材53、ガイド部材63及び位置決め機構55の形状が夫々設定されている。
【0023】
こうして、緩衝機構6は、前記載置台3とこの載置台3を支持する支持部位との間に、載置台3が支持部位に対して揺動できるように設けられることになる。ここで、皿バネ61は例えばステンレス鋼、バネ鋼等の金属により構成され、その大きさの一例を上げると、外径L1は18mm、内径L2は9.2mm、無負荷の状態の高さL3が1.20mm(JIS B2706 L18)である。
【0024】
さらに、載置台3は、当該載置台3と外部の搬送機構(図示せず)との間でウエハWの受け渡しを行うための、複数本の昇降ピン35を備えている。この昇降ピン35は、例えば処理容器2の外部に設けられた昇降部36により、その上端が載置台3表面から突出する位置と、当該表面よりも下方側にある位置との間で昇降自在に構成されている。図中37は、処理容器2内の気密性を維持しながら昇降ピン35を昇降させるためのベローズ体である。
【0025】
続いて、処理容器2の天井部23について説明する。この例の天井部23は、例えばアルミニウムやアルミナ等により形成されると共に、載置台3の載置面に対向する部位が下方側に向けて突出する凸部として構成され、この凸部が本発明の天板部材4に相当する。この天板部材4の下面は周縁から中央部に向けて次第に深く窪むように構成され、こうして、天板部材4の下面には、凹部41が形成されることになる。この凹部41は、例えば載置台3上に載置されたウエハWの全体を覆うように、当該ウエハWよりも一回り大きな径を有する円形状に開口しており、この凹部41の外側領域は、さらに載置台3側へ突出した平面部42として構成されている。この凹部41の形状や大きさは、載置台3が前記処理位置に位置するときに、載置台3上のウエハWのまわりに処理空間を形成するように夫々設定されている。
【0026】
また、図4に示すように、天板部材4の平面部42の下面には、複数個例えば3個〜6個の突起部43が載置領域30の周方向に沿って、互いに離隔して設けられている。この突起部43は、処理空間の形成時に、その先端が載置台3の外側領域に接触することにより、当該外側領域と天板部材4との間の離間距離を規制して載置領域30を囲むように排気用の1mm未満の狭小な隙間40を形成するために設けられている。この突起部43は、処理空間内の雰囲気を載置台3の周方向に亘って均一に排気する隙間を形成する構成であれば、その形状や個数、配置間隔については限定されない。なお図5は天板部材4を載置台3側から見たときの概略底面図であり、図4には突起部43が設けられた平面部42と設けられていない平面部42とを夫々示している。
【0027】
ここで、前記隙間40は、後述の実施例から明らかなように、載置台3と天板部材4との間の離間距離hが小さくなる程、処理空間内に反応ガスを封じ込める作用が大きくなって、処理空間内の圧力を高めることができる。一方、前記距離hを小さくし過ぎると排気力が低下することから、距離hは0.1mm以上1mm未満であることが好ましい。
【0028】
前記天板部材4の中央部には、前記処理空間に反応ガスを供給するためのガス供給部7が設けられており、当該ガス供給部7内に形成されたガス供給路70は天板部材4の中央部に形成されたガス供給口44と連通するように構成されている。このガス供給部7には、第1の反応ガス用の第1のガス供給路71と、第2の反応ガス用の第2のガス供給路72と、パージガス用の第3のガス供給路73とが夫々接続されている。以降窒化チタン膜(TiN膜)の成膜を行う場合を例にして説明すると、前記第1〜第3のガス供給路71〜73は、夫々流量調整バルブや開閉バルブ等を備えた流量調整部71a,72a,73aを介して第1の反応ガスである原料ガス例えばTiClガスの供給源71b、第2の反応ガスである還元ガス例えばNHガスの供給源72b、パージガスであるNガスの供給源73bに夫々接続されている。前記流量調整部71a,72a,73aは後述する制御部100からの指令に基づいて、各種ガスの供給や停止のタイミングを制御するように構成されている。
【0029】
また、処理容器2には、天板部材4の側方に排気部24が形成されている。この例では、前記排気部24は処理容器2の下部容器25と天井部23との間に形成されると共に、バルブVを備えた排気路26を介して真空排気手段をなす真空ポンプ27に接続されている。こうして、真空ポンプ27により、載置台3と天板部材4とにより形成された処理空間の内部雰囲気は、隙間40及び処理容器2内の雰囲気を介して真空排気されることになる。
【0030】
さらに、上述の成膜装置1は、下部容器25の側壁に、図示しない外部の搬送機構によりウエハWを処理容器2に対して搬入出するための搬送口28が形成されており、当該搬送口28は、ゲートバルブ29により開閉自在に構成されている。
【0031】
以上に説明した構成を備える成膜装置1は、既述のガス供給部7からのガス供給動作、昇降機構5(5A,5B)による載置台3の昇降動作、真空ポンプ27による処理容器2の排気動作、ヒータ31による加熱動作等を制御する制御部100を備えている。この制御部100は、例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、この記憶部には、当該成膜装置1によってウエハWへの成膜を行うために必要な制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記憶されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0032】
続いて、本実施の形態に係る成膜装置1の動作について、図6を参照して説明する。先ず、大気雰囲気(処理容器2内を真空排気する前の雰囲気)の処理容器2内にて、載置台3を受け渡し位置に位置させて、真空ポンプ27により真空排気する(ステップS1)。これにより、載置台3は、大気圧によって処理容器2側への上向きの荷重がかかるため、処理容器2側へ引き寄せられ、大気雰囲気下での載置台3の高さ位置より例えば2mm上昇する。そして、搬送口28を開き、外部の搬送機構により処理容器2内にウエハWを搬入して、昇降ピン35との協働作業により載置台3の載置領域30上にウエハWを受け渡す(ステップS2)。
次いで、搬送口28を閉じた後、第1及び第2の昇降機構5A,5Bにより、図7に示すように、載置台3を前記処理位置まで上昇させ、載置台3と天板部材4との間に処理空間Sを形成する(ステップS3)。この処理位置とは、載置台3の外側領域が突起部43に当接する位置である。この際、載置台3は、既述のように処理容器2内を真空雰囲気とすることにより、フランジ部33が処理容器2側に引き寄せられているため、第1及び第2の昇降機構5A,5Bにより、駆動部材53、緩衝機構6、フランジ部33、支持部材32を介して上昇する。このため、第1及び第2の昇降機構5A,5Bのモータ54を互いに同期させて、上昇量を揃えた状態で上昇させる。
【0033】
こうして、載置台3を突起部43に当接させた後、図8に示すように、駆動部材53を僅かに例えば1mm上昇させる(ステップS4)。これにより、処理空間を形成する位置にある載置台3に対して天板部材4に接近する方向に力が作用することになる。
【0034】
ここで、昇降機構5A,5Bの駆動部材53の上昇量と荷重との関係について図9を用いて説明する。図9中横軸は、真空雰囲気下における駆動部材53の上昇量であり、0mmが真空雰囲気下において載置台3が前記受け渡し位置にあるときの駆動部材53の高さ位置、42mmが載置台3が前記処理位置(突起部43に当接した位置)にあるときの駆動部材53の高さ位置に夫々相当する。また、図9中縦軸は荷重であり、◆はベローズ体34の反力による荷重、■は緩衝機構6の反力による荷重、▲は合成荷重を夫々示している。
【0035】
ベローズ体34は真空雰囲気下での前記受け渡し位置では伸びきった状態であって反力による荷重は0Nであるが、駆動部材53が上昇するにつれて収縮量が大きくなっていくため、次第に反力による荷重が大きくなっていく。また、緩衝機構6の反力は、(皿バネ61の1個あたりの反力)×(皿バネ61の個数)で求められる。皿バネ61については、真空雰囲気下では図3に示すように収縮した状態であり、載置台3が処理位置に上昇するまで、緩衝機構6の反力による荷重は約475Nのまま変化しない。合成荷重は、大気圧による上向きの荷重と、ベローズ体34による下向きの反力による荷重と、緩衝機構6による下向きの反力による荷重と、載置台3の重量による下向きの荷重によって、次式により求められる。
【0036】
合成荷重=大気圧による荷重−[(載置台3の重量)+(ベローズ体34の反力)+(緩衝機構6の反力)]
こうして求められる合成荷重は、真空雰囲気下における前記受け渡し位置では、ベローズ体34による反力が0Nであることから最も大きく、230N程度の合成荷重が駆動部材53にかかる。このため第1及び第2の昇降機構5A,5Bにブレーキをかけることにより、載置台3の高さ位置が固定されている。このブレーキとは、例えばボールネジの移動を停止するモータ54の電磁ブレーキ等の機構である。そして、前記受け渡し位置から前記処理位置近傍まで前記載置台3を上昇させるに連れて、ベローズ体34による反力の増加に伴い、合成荷重は次第に小さくなっていく。こうして、載置台3が突起部43に当接する手前において、合成荷重が0Nとなる荷重均衡状態となる。この後、さらに駆動部材53を上昇させると、載置台3は突起部43により、その高さ位置が規制されているので、緩衝機構6の皿バネ61が伸長し、緩衝機構6による下向きの反力が次第に小さくなっていき、図9に示すように、合成荷重は次第に上昇する。
【0037】
この合成荷重は、載置台3と突起部43との間にかかるものである。例えば載置台3が窒化アルミニウム等のセラミックスにより構成される場合には、その耐荷重は700N以下であるので、載置台3を突起部43に当接させてから駆動部材53を上昇させる距離は、合成荷重が耐荷重よりも小さくなるように例えば2〜3mm程度に設定される。
【0038】
このように載置台3を突起部43に当接させた後、駆動部材53を所定量上昇させることにより、緩衝機構6により載置台3が突起部43に接触したときの接触圧を緩和しながら、載置台3を全ての突起部43に確実に押し当てることができる。これにより、処理位置にある載置台3と天板部材4との間に、載置台3の周方向において均等な幅(載置台3と天板部材4との距離)の狭小な隙間40を、載置台3の周方向に沿って形成することができる。
【0039】
こうして、処理容器2内を例えば13.3Pa(0.1Torr)まで真空排気すると共に、ヒータ31によりウエハWの成膜温度である350℃〜650℃まで昇温させたら、成膜プロセスを開始する。本実施の形態に係る成膜装置1を用いたいわゆるALDプロセスにおいては、成膜は例えば図10に示すガス供給シーケンスに基づいて実行される。これらの図の横軸は時間を示し、縦軸はガスの供給量と処理空間S内の圧力を模式的に示している。
【0040】
先ず、第1のガス供給路71を介して原料ガス(TiClガス)を処理空間S内に供給し、載置台3上のウエハWに吸着させる工程(吸着工程)を実行する(ステップS5)。この原料ガスの供給により、処理空間S内の圧力が例えば6665Pa(50Torr)まで上昇する。従って、処理空間Sと排気部24との間の圧力差が大きくなり、処理空間S内に供給された原料ガスは、載置台3と天板部材4との間の隙間40を介して、処理空間Sよりも圧力の低い排気部24に向けて流出しようとする。
【0041】
この結果、処理空間S内では、図11に示すように、ウエハW中央部の上方側に設けられたガス供給口44から供給された原料ガスが、処理空間S内を外方へ向けて広がりながら、ウエハWの表面を前記隙間40へ向けて径方向に流れ、この間当該ウエハWの表面に吸着してTiの分子層を形成する。
【0042】
こうして、所定時間原料ガスを供給して当該原料ガスの供給を停止する。これにより、処理空間S内の原料ガスが排気されるため、図10に示すように、処理空間内の圧力は急激に低くなる。こうして、処理空間S内の圧力が原料ガス導入前とほぼ同じ圧力となるタイミング、例えば原料ガスの供給停止から、所定時間例えば0.03秒経過したタイミングにて、第3のガス供給路73からパージガス(Nガス)の供給を開始してパージ工程を実施する(ステップS6)。これにより、パージガスは処理空間S内を中央部から周縁領域に向って、ウエハWの表面を流れて行き、処理空間S内に滞留している原料ガスと共に、前記隙間40を介して排気部24ヘ向けて排気される。このパージガスの供給により、処理空間S内の圧力は、パージガスの供給流量に応じて例えば6665Pa(50Torr)まで上昇する。
【0043】
そして、処理空間S内に滞留している原料ガスがパージガスと共に排気されたタイミングにて当該パージガスの供給を停止する。これにより処理空間S内の圧力は図10に示すように、急激に低くなるため、処理空間S内の圧力が原料ガス導入前とほぼ同じ圧力となるタイミング、例えばパージガスの供給停止から、所定時間例えば0.03秒経過したタイミングにて、第2のガス供給路72から還元ガス(NHガス)供給を開始して還元工程を実施する(ステップS7)。これにより、還元ガスは処理空間S内を中央部から周縁領域に向ってウエハWの表面を流れて行き、ウエハW表面に吸着している原料ガスを還元することにより、TiNの分子層が形成される。処理空間S内の還元ガスは、処理空間Sから前記隙間40を介して排気部24ヘ向けて排気されるが、還元ガスの供給により、処理空間S内の圧力は、還元ガスの供給流量に応じて例えば6665P(50Torr)まで上昇する。
【0044】
こうして、処理空間S内に所定時間還元ガスを供給した後、当該還元ガスの供給を停止する。これにより図10に示すように、処理空間S内の圧力は急激に低くなり、処理空間S内の圧力が原料ガス導入前とほぼ同じ圧力となるタイミング、例えば還元ガスの供給停止から、所定時間例えば0.03秒経過したタイミングにて、再びパージガスであるNガスの供給を開始して、処理空間S内に滞留している還元ガスをパージするパージ工程を実施する(ステップS8)。これにより、処理空間S内に滞留している還元ガスはパージガスと共に、前記隙間40を介して排気部24ヘ向けて排気される。
【0045】
そして、以上に説明したステップS5〜ステップS8までの4つの工程を1サイクルとする、当該サイクルを予め決められた回数、例えば50〜1000回繰り返して、TiNの分子層を多層化し、例えば3〜20nmの膜厚を有する膜の成膜を完了する(ステップS9)。なお、図10は、説明の便宜上、各工程における処理空間S内の圧力パターンを模式的に表わしたものであり、当該処理空間S内の厳密な圧力を示しているものではない。
【0046】
成膜処理を終えたら、ガスの供給を停止し、処理容器2内を真空雰囲気に維持したまま、ウエハWが載置された載置台3を受け渡し位置まで下降させる(ステップS10)。そして、搬入時とは逆の経路で外部の搬送機構によりウエハWを搬出し、一連の成膜動作を終える(ステップS11)。次に処理するウエハWが存在しないときは、処理容器2内を大気雰囲気(真空排気前の状態)に戻し、載置台3を大気雰囲気の受け渡し位置に位置させる。この際、処理容器2内を大気雰囲気に戻すと、真空雰囲気による天板部材4側への載置台3の引き寄せが解除されるので、真空雰囲気による受け渡し位置よりも例えば2mm程度載置台3が下降する。
【0047】
ここで、処理空間S内へのガスの供給を停止して、当該ガスを全て排気した状態では、処理空間S内の圧力と排気部24内の圧力とが同じ状態になるが、各ガス供給工程同士の間のガス供給を停止している時間は、0.03秒程度と短く、直ぐに次のガスが導入されるため、排気部24から処理空間S内にガスが侵入するおそれはほとんどない。
【0048】
上述の実施の形態によれば、載置台3と天板部材4とにより処理空間Sを形成する際、これら同士の間に、1mm未満の狭小な隙間40が載置台3の周方向に沿って形成される。このため後述の実施例により明らかなように、処理空間Sの内部にガスを封じ込めができるため、処理空間Sと排気部24との間の差圧を大きくして、処理空間S内の圧力を高くすることができる。またこのようにガスの封じ込めができるため、ガス使用量の削減を図ることができる。
【0049】
この際、天板部材4の下面に突起部43を設け、載置台3を当該突起部43に当接させて当て止めすることにより、載置台3と天板部材4との離間距離を規制している。このため、幅(載置台3と天板部材4との距離)が1mm未満という狭小な隙間40を載置台3の周方向に均一に形成することができる。これによって、処理空間S内では、排気量が載置台3の周方向に揃えられるので、ウエハWに対するガスの供給状態がウエハWの面内に亘って揃えられる。これにより面内均一性の良好な処理を行うことができて、膜厚や膜質、比抵抗等の膜特性がウエハW面内に亘って均一な薄膜を得ることができる。
【0050】
また、処理空間S内の圧力を高くことができることから、例えばTiN膜のように、配線や電極、バリア膜等に用いられる金属膜を形成する場合には、後述の実施例により明らかなように、比抵抗が低い金属膜を形成することができる。この理由については、処理空間S内の圧力を高くすることにより、一定時間あたりのウエハWに対するガスの供給総量を多くすることができるため、例えば還元ガス導入の際には、吸着された原料ガスの還元に寄与するガスが多くなって、膜質の向上を図ることができるためと推察される。さらに、このように一定時間あたりのガス供給総量が多いことから、ガスの供給時間が短くて済み、レシピの短時間化を図ることができる。
【0051】
さらにまた、処理空間Sと排気部24との差圧を大きくすることができるため、処理空間Sから排気部24に向うガス流れの流速が大きくなり、排気部24から処理空間Sへのガスの拡散を抑えることができる。
【0052】
また、上述の実施の形態では、緩衝機構6を設けているので、1mm未満という狭小な隙間40を、載置台3の周方向に沿って高精度に形成することができる。つまり載置台3を処理位置(突起部43に当接する位置)まで上昇させてから、さらに駆動部材53を僅かに上昇させることによって、全ての突起部43に対して確実に載置台3を突起部43に押し付けることができるからである。この際、駆動部材53を上昇させたときに、図8に示すように緩衝機構6が伸長するため、その分、載置台3が突起部43に接触したときの接触圧が緩和される。仮に緩衝機構6を設けない構成では、載置台3を処理位置まで上昇させた後、さらに駆動部材53を上昇させると、載置台3自体が上昇しようとするため、突起部43に大きな荷重がかかり、載置台3が変形したり破損してしまうおそれがある。
【0053】
さらに、この緩衝機構6は例えば皿バネ61により構成され、載置台3が支持部位である駆動部材53に対して揺動できるように構成されているので、載置台3が傾いた状態で上昇した場合であっても、全ての突起部43に対して確実に載置台3を押し付けることができる。
【0054】
例えば図12に示すように、載置台3が傾いた状態で上昇すると、載置台3が前記処理位置に移動したときには、図13に示すように、載置台3はある突起部43には接触しているが、他の突起部43には接触しない状態になる。この状態で駆動部材53を上昇させると、緩衝機構6を設けることにより載置台3は駆動部材53に対して揺動できるので、突起部43と接触していない領域については、載置台3が揺動して傾きが調整されながら、駆動部材53の上昇に伴い上昇する。このため、接触していない突起部43と載置台3との距離h1が駆動部材53の移動距離h2以下の大きさであれば、駆動部材53をh2上昇させることにより、図14に示すように、載置台3を全ての突起部43に確実に押し付けることができる。このように、緩衝機構6を設けることにより、載置台3が傾いた状態で上昇した場合であっても、載置台3と突起部43との間に過大な力が加わらないようにしながら、傾きを調整して載置台3を全ての突起部43に確実に押し当てることができ、載置台3と天板部材4との間に狭小な幅の隙間40を高精度に形成することができる。この際、弾性部材として、複数の皿バネ61を組み合わせて用いることにより、コンパクトな構成で大荷重を支えることができるので、省スペース化を図ることができる。
【0055】
なお、既述のように、載置台3を処理位置まで上昇させてから、さらに駆動部材53を上昇させるときの上昇量は、上昇量が大きくなると合成荷重(載置台3と突起部43との間にかかる荷重)が増加していくため、予想される載置台3の傾きの程度と、載置台3の耐荷重を考慮して決定される。
【0056】
続いて、本発明の成膜装置1の他の例について図15〜図17を用いて説明する。この実施の形態が上述の実施の形態と異なる点は、フランジ部33の下面と駆動部材53の上面との間に、コイルバネ64を用いた緩衝機構6Aを設けた点である。この構成では、載置台3の支持部位が駆動部材53となり、前記コイルバネ64は、載置台3が駆動部材53に対して揺動できるように設けられている。その他の構成は上述の構成と同じであり、説明は省略する。
【0057】
図15は、処理容器2内が大気雰囲気であるときに、載置台3がウエハWの受け渡し位置にある状態を示している。この状態では、コイルバネ64は収縮した状態であり、位置決め機構65によりフランジ部33の高さ位置が設定されている。そして処理容器2内を真空排気すると、載置台3は大気圧を受けて処理容器2側へ引き寄せられ、図15中点線で示す位置まで上昇する。これによりフランジ部33も上昇するので、コイルバネ64はフランジ部33に引っ張られて伸長し、この状態で、図16に示すように、載置台3を前記処理位置、つまり載置台3の表面が突起部43に当接する位置まで移動させる。
【0058】
このように載置台3を前記処理位置に移動させた後、図17に示すように、駆動部材53を僅かに例えば1mm上昇させる。このとき、載置台3の高さ位置は突起部43により規制されているためコイルバネ64が収縮し、コイルバネ64が設けられていない場合に比べて、載置台3が突起部43に接触したときの接触圧が緩和される。さらに駆動部材53を上昇させると、コイルバネ64の収縮量が増加するため、突起部43に載置台3を押し付ける力が大きくなってしまう。このため、駆動部材53の上昇量は、予想される載置台3の傾き量や耐荷重を考慮して決定される。
【0059】
以上において、本発明の突起部は、載置台の外側領域と天板部材の少なくとも一方に設けられればよく、例えば図18に示すように、載置台3表面の外側領域に、載置台3の周方向に沿って互いに離隔するように突起部43Aを設けてもよいし、載置台と天板部材の両方に設けるようにしてもよい。また突起部は、天板部材又は載置台の一部を突出させることにより形成するようにしてもよい。
【0060】
さらに、本発明の成膜装置における処理容器や天板部材の形状は上述の構成には限られない。例えば図19に示す構成では、天板部材4Aの凹部41Aは直線的な傾斜面を備えるように構成され、処理容器81の底部に排気路82が接続されている。このような成膜装置1Aでは、処理容器81を真空ポンプ83により真空排気すると、載置台3Aと天板部材4Aとにより構成された処理空間S内の雰囲気は、載置台3の周方向に形成された隙間40Aを介して処理空間Sから処理容器81へ排気され、さらには処理容器81外部へ排気される。図19中431は突起部である。
【0061】
また、本発明では、天板部材と載置台とにより処理空間Sが構成されればよく、例えば図20に示すように、天板部材4Bの下面(載置台との対向面)は平面として構成し、載置台3Bの表面に処理空間Sを形成するための凹部38を設けるようにしてもよい。載置台3Bの段部38aは外側領域に相当し、この表面と天板部材4Bの下面との間に隙間40Bが形成される。43Bは載置台3Bの段部38a表面又は天板部材4Bの下面に設けられた突起部である。
【0062】
以上において、載置台と天板部材との間に形成される隙間は、載置部の載置領域の外側領域と、この外側領域と対向する天板部材との間に形成されればよく、例えば図21に示すように、載置台3Cの外側領域に一段低くなった段部84を形成し、この段部84と上下方向に対向する天板部材4Cとの間に1mm未満の隙間40Cを形成する場合も本発明の範囲に含まれる。また図22に示すように、載置台3Dの側面と、これと対向する天板部材4Dとの間に、1mm未満の隙間40Dを形成する場合も本発明の範囲に含まれる。図22の構成では、載置台3Dの段部84と、当該段部84と対向する天板部材4Dとの間に前記隙間40Dを形成するための突起部43Dが設けられている。
【0063】
また、本発明では、図22のように、載置台の外側領域と当該外側領域と対向する天板部材との間に、これらの距離が1mm未満の排気用の隙間を形成する領域を設けることより、処理空間S内にガスを封じ込めることができる。このため、当該隙間の形成領域の外側において隙間を1mm以上に大きくする場合も、本発明の範囲に含むものとする。なお図19〜図22においては、処理容器81の外部については図示を省略している。
【0064】
さらに本発明の緩衝機構は、載置台とこの載置台を支持する支持部位との間、及び天板部材とこの天板部材を支持する支持部位との間の少なくとも一方に、載置台あるいは天板部材が支持部位に対して揺動できるように設けられ、載置台及び天板部材の一方側の突起部が他方側に接触したときに接触圧を緩和するための構成であればよい。また緩衝機構に組み込まれる弾性部材としては、皿バネ以外にも、コイルバネや、板バネ等を用いることができる。
【0065】
例えば図23及び図24に示すように、載置台を昇降させる場合において、緩衝機構を天板部材とこの天板部材を支持する支持部位との間に設けるようにしてもよい。この例では、天板部材91の上面と処理容器9の天井部90との間に緩衝機構92例えば皿バネが設けられており、これにより天板部材91が支持部位である天井部90に揺動できるように設けられる。図23は、処理容器9内が真空ポンプ93により真空排気されていて、載置台94が天板部材91の下面に設けられた突起部95に当接し、載置台94と天板部材91との間に処理空間Sを形成した状態(載置台94が処理位置にある状態)を示している。図中96はフランジ部、96aはベローズ体、97は昇降機構、97aは昇降機構により昇降自在に構成されると共に、ベローズ体96aに接続された駆動部材、98はガス供給部である。
【0066】
そしてこの状態から駆動部材97aを所定距離上昇させると、図24に示すように、載置台94が突起部95及び天板部材91を介して緩衝機構92を下方側から押圧し、緩衝機構92が収縮する。これにより、載置台94が突起部95に接触したときの接触圧が緩和される。
【0067】
(第2の実施の形態)
続いて本発明の第2の実施の形態の成膜装置について、図25〜図27を参照しながら説明する。当該第2の実施の形態は、特許請求の範囲の第1の独立項(請求項1)に相当し、この例の成膜装置は、載置台3と天板部材4との間の排気用の隙間の大きさを調整可能に構成したものである。なお、第1の実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0068】
以下、第1の実施の形態の成膜装置と異なる点を中心に説明を進めると、この例の支持部材32の下端側は、中間フランジ部301を介してフランジ部33に接続されている。前記中間フランジ部301の下面は、上下方向に伸びる複数のロッド部材302によりフランジ部33の上面と互いに固定されており、中間フランジ部301と処理容器2との間にはベローズ体34が設けられている。
【0069】
上述の第1の実施の形態と同様に、フランジ部33の上面には、ロッド部材302よりも外方の左右方向(図25中X方向)の一端側に、緩衝機構6を介して第1の昇降機構5Aの駆動部材53が接続されると共に、ロッド部材302よりも外方の前記左右方向の他端側に、緩衝機構6を介して第2の昇降機構5Bの駆動部材53が接続されている。緩衝機構6及び昇降機構5(第1及び第2の昇降機構5A,5B)の構成は、第1の実施の形態と同様であり、駆動部材53が支持部位に相当する。
【0070】
ここで、図25に示す載置台3の高さ位置は、処理容器2内が大気雰囲気であるときの、ウエハWの受け渡し位置である。この状態では、既述のように、フランジ部33には載置台3の重量がかかっており、フランジ部33はその凹部33bが位置決め機構55の突部55aに嵌合されて、高さ位置が決定されている。
【0071】
また、図中110は規制機構である。この規制機構110は、載置台3と天板部材4とが互いに離れたときに、天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、矯正された前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用を抑えるものである。この規制機構110は、例えばフランジ部33を下方側から貫通して駆動部材53に向って上昇するように設けられた昇降軸をなす押しネジ111と、この押しネジ111の先端が駆動部材53の下面に当接したときに、その高さ位置を固定する固定部材をなすナット112を備えている。前記押しネジ111の下端側は例えばモータよりなる回転機構113に接続されている。
【0072】
図26に示すように、押しネジ111の外面はネジ切りされており、フランジ部33には押しネジ111に対応するネジ孔330が形成され、このネジ孔330の内面には前記押しネジ111のネジ切りに螺合するネジ部331が形成されている。また、ナット112は、例えばフランジ部33の下方側に設けられ、その内面には、前記押しネジ111のネジ切りに螺合するネジ部114が形成され、ナット112を締めることにより、押しネジ111の高さ位置が固定されるようになっている。
【0073】
前記フランジ部33は平面形状が円形に構成されると共に、駆動部材53は、図27に示すように平面形状が例えばリング状に構成されている。前記押しネジ111は複数個例えば4個設けられており、昇降機構5A,5Bのボールネジ51に対して奥行方向(図27中Y方向)の奥側と手前側に夫々1個ずつ設けられている。また、この実施の形態では、天板部材4と載置部3との間には突起部が形成されておらず、天板部材4の周縁領域である平面部42と、載置台3の載置領域30の外側領域とは、互いに当接し、これらの間に処理空間を形成するように構成されている。
【0074】
続いて、第2の実施の形態に係る成膜装置1の動作について、図28〜図32を参照して説明する。先ず、ウエハWを搬入する前の調整時の動作について説明する。この調整は、例えば載置台3が天板部材4に対して相対的に水平になるように調整するときや、載置台3と天板部材4との間に形成される排気用の隙間40の大きさを変更するとき等に実施される。
【0075】
先ず、大気雰囲気(処理容器2内を真空排気する前の雰囲気)の処理容器2内にて、載置台3を前記受け渡し位置に位置させて、真空ポンプ27により真空排気する(ステップS11)。処理容器2内を真空雰囲気に設定することにより、フランジ部33が大気圧を受けて処理容器2側に引き寄せられ、載置台3が大気雰囲気の位置よりも僅かに上昇する。そして、このフランジ部33の上昇に伴い、フランジ部33上面の突部33aが駆動部材53下面の凹部53bに嵌合する。この際、緩衝機構6は負荷がかかり、収縮した状態にある。
【0076】
次いで、第1及び第2の昇降機構5A,5Bにより、図29に示すように、載置台3の周縁領域が天板部材4の平面部42に当接する位置まで載置台3を上昇させる(ステップS12)。この際、処理容器2内を真空雰囲気にすることにより、フランジ部33が大気圧を受けて処理容器2側に引き寄せられているため、駆動部材53を第1及び第2の昇降機構5A,5Bにより上昇させることによって、載置台3がフランジ部33、ロッド部材302、中間フランジ部301、支持部材32を介して上昇する。このため、第1及び第2の昇降機構5A,5Bのモータ54を互いに同期させて、上昇量を揃えた状態で上昇させる。
【0077】
こうして、載置台3を天板部材4に当接させた後、図30に示すように、駆動部材53を僅かに例えば1mm上昇させる(ステップS13)。これにより、載置台3に対して天板部材4に接近する方向に力が作用することになるが、載置台3は天板部材4により高さ位置が規制されているので、図30に示すように、緩衝機構6の皿バネ61が伸長する。こうして、緩衝機構6により載置台3が天板部材4に接触したときの接触圧を緩和しながら、載置台3の周縁領域全体が天板部材4に密着するように確実に押し当てられ、載置台3が天板部材4に対して相対的に平行になるように載置台3の姿勢が矯正される。この際、例えば載置台3が窒化アルミニウム等のセラミックスにより構成される場合には、その耐荷重は600N〜800N以下であるので、載置台3を天板部材4に当接させてから駆動部材53を上昇させる距離は、合成荷重が耐荷重よりも小さくなるように例えば2〜3mm程度に設定される。
【0078】
この状態で、図31に示すように、押しネジ111を回転機構113により上昇させることにより、一定のトルクで締め付け、当該押しネジ111の先端を駆動部材53に当接させる。次いで、ナット112を締め付けて、押しネジ111の高さ位置を固定すると共に、このときの昇降機構5A,5Bのモータ54のエンコーダのパルス値を基準位置として制御部100にて記憶しておく(ステップS14)。こうして押しネジ111によって、天板部材4の周縁領域の下面に対して載置台3の外側領域の上面が相対的に平行になる状態で、駆動部材53とフランジ部33との相対的姿勢が規制される。このため、載置台3と天板部材4とが互いに離れたときにも、駆動部材53とフランジ部33との相対的姿勢は変化せず、天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢が矯正された状態が維持される。つまり、載置台3と天板部材4とが互いに離れたときにも、押しネジ111によって駆動部材53とフランジ部33との相対的姿勢が規制されているため、伸長していた皿ネジ61が真空雰囲気の処理容器2の内部と外部(大気圧雰囲気)との圧力差により収縮することが抑えられ、こうして矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用が抑えられる。
【0079】
仮に、規制機構110が設けられていない場合には、昇降機構5A,5Bにより駆動部材53を下降させて載置台3と天板部材4とが互いに離れた状態にすると、載置台3を天板部材4に押し付ける作用が解除されたときに、既述のように真空雰囲気の処理容器2の内部と外部(大気圧雰囲気)との圧力差により、矯正後の相対的姿勢が元に戻ろうとする作用が発生し、複数の皿ネジ61が一様に収縮してしまう。このため、天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢が矯正された状態が維持できなくなってしまう。
【0080】
従って、駆動部材53、緩衝機構6の皿ネジ61及び規制機構110の押しネジ111は、載置台3及び天板部材4の一方側が他方側に偏って接触したときに皿ネジ61により天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢を矯正でき、前記載置台3と天板部材4とが互いに離れたときに、押しネジ111が駆動部材53の下面に当接して天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、その設置箇所、形状及び大きさが夫々設定される。
【0081】
次いで、規制機構110により天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢の矯正を維持した状態で、昇降機構5A,5Bにより載置台3を下降させる。こうして、図32に示すように、載置台3と天板部材4との間に所定の大きさの排気用の隙間40を形成し、このときのモータ54のエンコーダのパルス値を処理位置として制御部100にて記憶する(ステップS15)。これにより、載置台3の周方向において均等な幅(載置台3と天板部材4との距離)の狭小な隙間40を、ウエハWの周縁部又はウエハWの外側領域にてウエハWの周方向に形成することができる。この狭小な隙間40は、載置台3と天板部材4との距離が例えば0.1mm以上1.5mm以下に設定される。こうして、調整作業を終了する。
【0082】
ここで、載置台3が偏いた状態で上昇する場合について、図33を用いて説明する。載置台3が傾いた状態で上昇すると、載置台3が天板部材4に当接する位置に移動したときには、図33(a)に示すように、載置台3はある部位では天板部材4に接触しているが、他の部位では接触しない状態になる。この状態で、駆動部材53を僅かに上昇させると、一部の緩衝機構6が伸長し、これによって載置台3は駆動部材53に対して揺動できるため、天板部材4と接触していない領域については、載置台3が揺動して傾きが調整されながら、駆動部材53の上昇に伴い上昇する。このため、図33(b)に示すように、載置台3と平面部42との間に過大な力が加わらないようにしながら、載置台3の外側領域を周方向に亘って天板部材4に確実に押し付けることができる。従って、この状態で規制機構110の押しネジ111により駆動部材53の高さ位置を固定すれば、載置台3と天板部材4とが互いに離れたときにも、天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢が矯正された状態が維持される。
【0083】
これにより、図33(c)に示すように、規制機構110により天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢が矯正された状態を維持しながら、駆動部材53を下降させれば、載置台3と天板部材4との間に周方向に均一な幅の排気用の隙間40を高精度に形成することができる。
【0084】
一方、規制機構110を設けない場合について図34を用いて説明する。載置台3が傾いた状態で上昇し、載置台3のある部位を天板部材4に当接させてから(図34(a))、駆動部材53を僅かに上昇させることにより、載置台3を天板部材4に確実に押し付ける工程(図34(b))までは、図33にて説明したとおりである。しかしながら、この後、隙間40を形成するために駆動機構53を下降させると、駆動機構53とフランジ部33との相対的姿勢が規制されていないため、複数の緩衝機構6の皿ネジ61が一様に収縮してしまい、天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢が矯正された状態を維持できずに、結果として載置台3が偏いた状態に戻ってしまう。このため、載置台3と天板部材4との間に周方向に均一な幅の隙間40を形成することはできない。
【0085】
次いで、ウエハWの成膜処理時の動作について説明する。先ず、処理容器2内を真空雰囲気に維持した状態で、載置台3を受け渡し位置に位置させて、搬送口28を開き、処理容器2内にウエハWを搬入して、載置台3上に受け渡す(ステップS21)。次いで、搬送口28を閉じた後、第1及び第2の昇降機構5A,5Bにより、載置台3を前記処理位置まで上昇させ、載置台3と天板部材4との間に排気用の隙間40を形成しながら、処理空間Sを形成する(ステップS22)。
【0086】
こうして、処理容器2内を例えば13.3Pa(0.1Torr)まで真空排気すると共に、ヒータ31によりウエハWの成膜温度である350℃〜650℃まで昇温させたら成膜プロセスを開始し、第1の実施の形態と同様にプロセスを実行する(ステップS23)。成膜処理を終えたら、ガスの供給を停止し、処理容器2内を真空雰囲気に維持したまま、ウエハWが載置された載置台3を受け渡し位置まで下降させる(ステップS24)。そして、搬入時とは逆の経路で外部の搬送機構によりウエハWを搬出し、一連の成膜動作を終える(ステップS25)。次に処理するウエハWがあるときには、ステップS21〜ステップS25の動作を繰り返し、行なう。
【0087】
この際、処理容器2内を大気雰囲気に戻した後、次のロットのウエハWに対して真空処理を行う際には、形成する隙間40の大きさが同じである場合には、前記調整時の動作を行わずにウエハWの成膜処理を行ってもよいし、再度前記調整時の動作を行うようにしてもよい。また、処理容器2内を大気雰囲気に戻した後、次のロットのウエハWに対して真空処理を行うときであって、隙間40の大きさを変更する場合には、前記調整時の動作を行ってもよいし、前記調整時の動作を行わずに、取得してある既述のモータ54の基準位置に基づいて、載置台3を所定の高さに設定するようにしてもよい。
【0088】
上述の実施の形態によれば、規制機構110により、天板部材4に対する載置台3との相対的姿勢の矯正を維持した状態で、載置台3を天板部材4に対して相対的に昇降させて、ウエハWの周方向に排気用の隙間40を形成している。このため、ウエハWの周方向において均一な幅の狭小な隙間40を高精度に形成することができる。従って、隙間40を載置台3の周方向に均一に形成することができるため、処理空間S内では、排気量が載置台3の周方向に揃えられる。これにより面内均一性の良好な処理を行うことができて、膜厚や膜質、比抵抗等の膜特性がウエハW面内に亘って均一な薄膜を得ることができる。
【0089】
さらに、前記排気用の隙間40をウエハWの周方向において均一にしながら、前記隙間40を所定の大きさに自在に設定できる。従って、装置構成を変更せずに、隙間40の大きさを自在に設定でき、成膜プロセスのパラメータとして隙間40の大きさを制御することができるので、成膜プロセスに応じて排気用の隙間40の大きさの最適化を図ることができる。この際、規制機構110として、押しネジ111とナット112との組み合わせを用いる場合には簡易な構成であり、前記天板部材4と載置台3との相対的姿勢の固定作業を容易に行うことができる上、従前の成膜装置に容易に組み込むことができる。また、成膜プロセス中に載置台3と天板部材4とが接触しないため、パーティクルの発生の懸念を払拭できる。
【0090】
さらにまた、緩衝機構6が設けられているので、載置台3が偏って天板部材4に接触したときにも、天板部材4に対する載置部3の相対的姿勢が矯正されると共に、載置台3が天板部材4に接触したときの接触圧を緩和しながら、載置台3の周縁領域全体を天板部材4に確実に押し当てることができる。
【0091】
以上において、本実施の形態は、図35〜図37に示す成膜装置にも適用できる。図35に示す成膜装置は、図15に示す成膜装置において突起部43を設けない構成であって、載置台3の外側領域を天板部材4の平面部42に当接させてから、駆動部材53を所定量例えば1mm上昇させて、コイルバネ64を用いた緩衝機構6Aにより、載置台3を天板部材4に確実に押し当てた状態を示している。この際、コイルバネ64は収縮した状態にある。そして、隙間40の調整作業を行う場合には、押しネジ111を上昇させて、当該押しネジ111の先端を駆動部材53に当接させた後、ナット112を締めて、押しネジ111の高さ位置を固定する。これにより、載置台3と天板部材4とが互いに離れたときに、天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用が抑えられる。ここで、矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用は、コイルバネ64が伸長しようとする復元作用により発生するものである。次いで、昇降機構5A,5Bにより載置台3を下降させて、載置台3と天板部材4との間に所定の大きさの排気用の隙間40を形成し、このときの昇降機構5A,5Bのモータ54のエンコーダのパルス値を処理位置として制御部100にて記憶する。
【0092】
また、図36に示す成膜装置は、図23に示す成膜装置において突起部95を設けない構成であって、載置台3の外側領域を天板部材91の平面部に当接させてから、フランジ部96を所定量例えば1mm上昇させた状態を示し、緩衝機構92により、載置台94を天板部材91に確実に押し当てた状態を示している。この際、緩衝機構92の皿バネは収縮した状態にある。この例の天板部材91は、外側壁に水平なフランジ部91aを備えており、このフランジ部91aの下方側には、モータ121により昇降自在に構成された昇降軸122を備えた規制機構120が設けられている。図中121aはベローズであり、モータ121は処理容器9の外側に配置されている。そして、隙間の調整作業を行う場合には、既述のようにフランジ部96を例えば1mm上昇させて、載置台94を天板部材91に確実に押し当てた状態で、昇降軸122を上昇させて、当該昇降軸122の先端をフランジ部91aの下面に当接させ、その位置で昇降軸122の高さ位置を固定する。この例では、モータ121が昇降軸122の高さ位置を固定する固定部材に相当する。これにより、載置台94と天板部材91とが互いに離れたときに、天板部材91に対する載置台94の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用が抑えられる。ここで、矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用とは、皿バネが伸長しようとする復元作用により発生するものである。
【0093】
こうして、規制機構120により、天板部材91に対する載置台94の相対的姿勢の矯正状態を維持しながら、載置台94を昇降機構97により下降させることにより、載置台94と天板部材91との間に、ウエハW囲むように、均一な幅の排気用の隙間を形成し、このとき、昇降機構97はモータからなり、このモータのエンコーダのパルス値を処理位置として制御部100にて記憶する。
【0094】
さらに、図37に示す成膜装置では、皿バネ61を用いた緩衝機構6は中間フランジ部301の下面と駆動部材53の上面との間に設けられており、規制機構110は、押しネジ111がフランジ部33を下方側から貫通するように設けられている。また、例えば真空ポンプ27の代わりに、処理容器2内を排気する排気手段130が設けられており、その他は、上述の図25に示す成膜装置と同様に構成されている。
【0095】
この成膜装置の作用について、処理容器2内を大気雰囲気に設定して成膜処理を行う場合を例にして説明する。このような成膜処理の一例としては、大気雰囲気下にて、第1の反応ガス例えばHfClと、この第1の反応ガスと反応して反応生成物を形成する第2の反応ガス例えばHOとを供給してALDによりHfO膜を形成する処理が挙げられる。
【0096】
そして、隙間40の調整作業を行う場合には、先ず、駆動部材53を昇降機構5A,5Bにより上昇させることにより、緩衝機構6、中間フランジ部301を介して載置台3を上昇させ、当該載置台3を天板部材4に当接させる。この際、駆動部材53を上昇させると、当該駆動部材53が中間フランジ部301に接近するため、皿バネ61は収縮した状態になるが、このときに完全に収縮しないように皿バネ61を形成しておく。次いで、昇降機構5A,5Bを僅かに上昇させることにより、緩衝機構6の作用によって載置台3が傾いた状態で上昇する場合あっても、載置台3を天板部材4に確実に押し当てる。この際、緩衝機構6の皿バネ61はさらに収縮した状態にある。
【0097】
次いで、押しネジ111を所定のトルクとなるまで上昇させて、当該押しネジ111の先端を駆動部材53の下面に当接させた後、ナット112を締めて、押しネジ111の高さ位置を固定する。これにより、載置台3と天板部材4とが互いに離れたときに、天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用が抑えられる。ここで、前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用とは、皿バネ61が伸長しようとする復元作用により発生するものである。次いで、昇降機構5A,5Bにより載置台3を下降させて、載置台3と天板部材4との間に所定の大きさの排気用の隙間40を形成し、このときの昇降機構5A,5Bのモータ54のエンコーダのパルス値を処理位置として制御部100にて記憶する。この際、図37に示す成膜装置では、処理容器2を真空ポンプ27により真空排気し、真空雰囲気にて成膜処理を行うようにしてもよいし、低圧雰囲気にて成膜処理を行うようにしてもよい。例えば真空雰囲気にて成膜処理を行う場合には、処理容器2内を真空排気することにより、処理容器2の内部と外部との圧力差により、中間フランジ部301が処理容器2側へ引き寄せられるので、その分を考慮して緩衝機構6を形成しておく。また、載置台3を重くしたり、ベローズ体34の反発力を強めたりして、処理容器2内が真空状態でも中間フランジ部301が処理容器2の反対側に移動するようにしてもよい。
【0098】
以上において、第2の実施の形態では、突起部を設けない場合を例にして説明したが、突起部を設けた構成についても本実施の形態は適用できる。この場合には、突起部にて規制される隙間が最小値となり、この値よりも大きい隙間を自在に設定できる。また、上述の図19〜図22に示す成膜装置にも第2の実施の形態の規制機構を設けて、排気用の隙間の大きさを調整自在に構成してもよい。また、上述の例では、押しネジ111を回転機構113により上昇させたが、作業者がトルクレンチ等を用いて、押しネジ111を上昇させてナット112により固定するようにしてもよい。さらに、ナット112の締結をナットの回転機構を用いて自動的に行うようにしてもよい。
【0099】
さらにまた、第2の実施の形態では、天板部材を昇降機構により昇降させる構成において、載置台とこの載置部を支持する支持部位との間、及び天板部材とこの天板部材を支持する支持部位との間の少なくとも一方に緩衝機構を設けると共に、載置台と天板部材とが互いに離れたときに、天板部材に対する載置台の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用を規制するための規制機構を設けるようにしてもよい。この際、矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用とは、緩衝機構の復元作用により発生する作用であってもよいし、処理容器の内部と外部との圧力差によって発生する作用であってもよい。また、緩衝機構の復元作用と、処理容器の内部と外部との圧力差によって発生する作用との両者により発生する作用であってもよい。さらに、図25や図33に示す成膜装置に、昇降軸とモータよりなる固定部材を用いた規制機構を組み合わせるようにしてもよい。さらにまた、昇降軸例えば押しネジの先端がフランジ部または駆動部材に当接したときに、その高さ位置を固定部材により規制する構成であれば、上述の構成には限らない。
【0100】
以上においては、天板部材4に対する載置台3の相対的姿勢を矯正する例として、天板部材4と載置台3との両者が平行となるようにして隙間が周方向にわたって均一な高さにする構成について記載したが、押しネジ111の締め付ける量を変更することで、前記隙間を周方向に不均一にして、特定の方向の排気能力を高めるように構成してもよい。
【0101】
(第3の実施の形態)
続いて本発明の第3の実施の形態の成膜装置について、図38〜図40を参照しながら説明する。この実施の形態の成膜装置は、処理容器2内の圧力を検出して、載置台3と天板部材4との間の隙間の異常を検知するものである。以下、第2の実施の形態の成膜装置に当該実施の形態を適用した場合を例にして説明を進めるが、第2の実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0102】
図38中200は、検出部をなす圧力センサであり、この圧力センサ200は、処理容器2内の圧力を検出するために、処理容器2内におけるウエハWの成膜に悪影響を与えない領域例えば天板部材4の載置台3に対向する面に設けられている。また、ガス供給部7には、第1の反応ガス用の第1のガス供給路71と、第2の反応ガス用の第2のガス供給路72と、パージガス用の第3のガス供給路73に加えて、クリーニングガス用の第4の供給路74が夫々接続されている。この第4の供給路74は、流量調整バルブや開閉バルブ等を備えた流量調整部74aを介してクリーニングガスの供給源74bに接続されている。窒化チタン膜(TiN膜)の成膜を行う場合には、クリーニングガスとしては例えばClFガス等が用いられる。この例では、ガス供給部7、第4の供給路74、流量調整部74a、供給原74bが、処理空間内に付着した膜を除去するためのクリーニングガスを供給するクリーニングガス供給部に相当する。
【0103】
また、圧力センサ200は例えば検出値が表示部をなすモニタ201に所定間隔例えば0.1秒間隔で出力されるように構成されると共に、制御部100に出力されるように構成されている。そして、制御部100は、上述の成膜プロセスを実行するプログラムの他に、隙間の評価プロセスを実行するプログラムを備えている。この評価プロセスのプログラムは、例えば所定のタイミングで検出値が予め設定された圧力の設定範囲にあるか否かを判断する機能と、所定のタイミングでパージガスを導入するように制御信号を出力する機能と、検出値が設定範囲内であると判断したときには成膜プロセスを実行するように制御信号を出力する機能と、設定範囲から外れると判断したときには、クリーニングガスを導入するようにクリーニングガス供給部の流量調整部74aに制御信号を出力する機能と、アラーム信号を出力する機能と、を実行するように構成されている。
【0104】
続いて、前記隙間の異常の評価プロセスを含む本実施の形態の作用について、図39のフローチャートを参照して説明する。先ず、処理容器2内にウエハWを搬入して、載置台3を処理位置に上昇させ、既述の成膜プロセスを実行する(ステップS31)。前記処理位置とは、所定の大きさの排気用隙間40を載置台3と天板部材4との間に形成する位置であり、この隙間40の調整や成膜プロセスは、上述の第1の実施の形態及び第2の実施の形態に示すとおりである。こうして、複数枚例えば100枚のウエハWに対して成膜プログラムを実施し、最終のウエハWを搬出した後、評価プロセスを実行する。この評価プロセスでは、先ず第1のパージガス導入工程を実施する(ステップS32)。この工程では、ウエハWを載置しない状態で、載置台3を処理位置に上昇させて処理空間Sを形成し、当該処理空間S内に所定流量例えば3600sccmのパージガスを例えば 15秒導入する。このパージガスの導入を終了した後、所定のタイミングで、圧力センサ200の検出値が設定範囲内であるか否かを判断する(ステップS33
【0105】
成膜プロセスを継続していくと、図40(a)に示すように、排気用の隙間40にも膜203が付着するおそれがある。このように隙間40に膜が形成されると、当該隙間40は例えば1mm以下と狭小であるので、処理空間Sからガスが排気されにくくなり、処理空間S内の圧力が上昇する。従って、前記圧力センサ200の検出値が設定範囲内である場合には、隙間40に膜203が形成されていない状態、つまり前記隙間40が正常な状態であると判断する。この場合には、成膜プロセスを続行する旨の制御信号を出力し(ステップS37)、これに基づいて、ウエハWに対して成膜プロセスが実施される。
【0106】
一方、圧力センサ200の検出値が設定範囲から外れる場合には、前記隙間40に何らかの異常が発生した状態であると判断する。このため、前記隙間40に付着した膜を除去するクリーニング工程を実施するように制御信号を出力する(ステップS34)。この工程では、処理空間S内に所定流量例えば120sccmのクリーニングガスを例えば3600秒導入して、前記隙間40に付着した膜203を除去することが行われる。
【0107】
次いで、クリーニングガスの導入を停止した後、第2のパージガス導入工程を実施する(ステップS35)。この工程では、処理空間S内に所定流量例えば3600sccmのパージガスを例えば15秒導入する。このパージガスの導入を終了した後、所定のタイミングで、制御部100では、圧力センサ200の検出値が設定範囲内であるか否かを判断する(ステップS36)。
【0108】
そして、圧力センサ200の検出値が設定範囲内であるときには、隙間40から膜203が除去されて正常な状態に戻ったと判断して、成膜プロセスを続行する旨の制御信号を出力し(ステップS37)、これに基づいて、ウエハWに対して成膜プロセスが実施される。一方、検出値が設定範囲から外れるときには、未だ隙間40が異常な状態であると判断して、アラーム信号を出力する(ステップS38)。この場合の隙間40の異常には、例えば図40(b)に示すように、載置台3が天板部材4に傾いた状態で接触している等のメカ的に隙間40の大きさが変化するという場合も含まれる。そして、このアラーム出力工程では、警告音の発生やアラームランプの点灯、モニタ201画面へのアラーム表示等のアラームを出力する。そして、このアラームが出力されると、作業者が隙間の異常の原因を調査し、当該原因の解消作業を行う。
【0109】
上述の実施の形態によれば、載置台3と天板部材4との間に形成される排気用の隙間40が狭小であるため、当該隙間40に膜が付着したり、メカ的に隙間40の大きさが変化したりといった異常があるときには、処理空間S内の圧力が変化する。このため、処理空間S内の圧力を検出し、その検出値をモニタ201に所定間隔で表示して、処理空間S内2の圧力を監視することにより、隙間40に異常が有るか否かを評価することができる。この際、圧力変化を監視することにより、異常があるときには直ちに対応できるので、不具合が生じた状態で成膜プロセスを継続して実施することが抑えられる。これにより、狭小な隙間40がウエハWの周方向に均一な幅で形成された状態が確保されるため、安定した状態で成膜プロセスを実施することができ、歩留まりの低下が抑えられ、スループットの低下を抑えることができる。
【0110】
そして、隙間40の異常が膜の付着に起因するものであった場合には、クリーニングを行うことによって、当該異常の原因を速やかに解消できる。この場合も、圧力変化を監視することにより、異常があるときには直ちに対応できるので、膜の堆積が抑えられ、クリーニングにより隙間40の膜が除去しやすい。さらに、クリーニング後に再度、処理空間S内の圧力が設定範囲にあるか否かを判断することにより、隙間40の異常がメカ的な原因に起因するものである場合にも、速やかに対応することができる。
【0111】
以上において、第3の実施の形態は、上述の第1の実施の形態の装置に適用してもよいし、一枚のウエハWを処理する度に、圧力の検出値が設定範囲内にあるか否かを判断するようにしてもよい。また、圧力の検出値が設定範囲から外れるときには、クリーニング工程を実施せずに、直ちにアラーム信号を出力するようにしてもよい。さらに、作業者がモニタ201により、圧力値を監視し、圧力値が設定範囲から外れるときに異常があると判断し、クリーニングの実行や、メカ的な検査の実行等、所定の対応を行うようにしてもよい。
【0112】
以上において、圧力センサ200は、ガス供給路70の内部に設けるようにしてもよい。また、例えば排気部24の周辺等の処理空間Sの外部に設け、処理空間Sから漏れてくるガスによる処理容器2内の圧力上昇を検出することによって、天板部材4と載置台3との間の隙間が正常な状態にあるか否かを判断するようにしてもよい。
【0113】
また、本発明では、吸着工程、パージ工程、還元工程の各工程において、載置部と天板部材との間の幅を一定としているが、本実施の形態にかかる成膜装置の運用は当該例に限定されるものではない。例えば吸着工程と還元工程において当該隙間の幅を変化させ、処理空間内の圧力を各工程にて供給される反応ガスの種類に応じて変化させるようにして、良質な膜を成膜するようにしてもよい。
【0114】
上述の構成では、昇降機構として2つのボールネジ機構を用いた場合を説明したが、昇降機構は1つまたは3つ以上であってもよい。さらに、本発明は載置台を昇降させる手法に限定されるものではなく、天板部材を昇降可能に構成し、この天板部材を昇降させ、天板部材と支持部位との間に緩衝機構を設けるようにしてもよい。また載置台と天板部材の双方を昇降させてもよく、この場合、載置台及び天板部材と夫々の支持部位との間に夫々緩衝機構を設けるようにしてもよいし、載置台と天板部材のいずれか一方とその支持部位との間に緩衝機構を設けるようにしてもよい。さらに、載置部や天板部材を昇降させる昇降機構と、この昇降機構を支持する支持部位との間に緩衝機構を設ける構成も本発明の範囲に含まれる。
【0115】
また、本発明では、載置台が処理位置に位置するときに処理容器内が真空雰囲気に設定されればよく、大気雰囲気にて載置台を天板部材の下方側の所定位置まで上昇させてから処理容器内を真空雰囲気に設定してもよい。この際、真空雰囲気では載置台が引き寄せられて上昇することを踏まえて、大気雰囲気にて載置台を処理位置の下方側近傍まで上昇させておき、処理容器内を真空雰囲気に設定して真空によって載置台を引き寄せることにより、載置台を処理位置に移動させるようにしてもよい。
【0116】
さらに、本発明の成膜装置では、既述のTiN膜の成膜の他に、金属元素、例えば周期表の第3周期の元素であるAl、Si等、周期表の第4周期の元素であるTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge等、周期表の第5周期の元素であるZr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag等、周期表の第6周期の元素であるBa、Hf、Ta、W、Re、lr、Pt等の元素を含む薄膜を成膜することが可能であり、ウエハW表面に吸着させる金属原料としては、これらの金属元素の有機金属化合物や無機金属化合物などを反応ガス(原料ガス)として用いる場合が挙げられる。金属原料の具体例としては、上述のTiClの他に、BTBAS((ビスターシャルブチルアミノ)シラン)、DCS(ジクロロシラン)、HCD(ヘキサジクロロシラン)、TMA(トリメチルアルミニウム)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン)などを挙げることができる。
【0117】
また、ウエハW表面に吸着した原料ガスを反応させて、所望の膜を得る反応には、例えばO、O、HO等を利用した酸化反応、H、HCOOH、CHCOOH等の有機酸、CHOH、COH等のアルコール類等を利用した還元反応、CH、C、C、C等を利用した炭化反応、NH、NHNH、N等を利用した窒化反応等の各種反応を利用することができる。
【0118】
この際、反応ガスは2種類である場合に限定されず、3種類の反応ガスや4種類の反応ガスを用いて、ALDにより成膜を行うプロセスにも本成膜装置は適用することができる。例えば3種類の反応ガスを用いる場合の例としては、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)を成膜する場合があり、この際例えばSr原料であるSr(THD)(ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト)と、Ti原料であるTi(OiPr)(THD)(チタニウムビスイソプロポキサイドビステトラメチルヘプタンジオナト)と、これらの酸化ガスであるオゾンガスが用いられる。
【実施例】
【0119】
(実施例1)
図1に示す成膜装置を用い、載置台3と天板部材4との間に処理空間Sを形成し、当該処理空間SにNガスを供給して、処理空間S内の圧力を測定した。この際、載置台3と天板部材4同士の間の隙間40の大きさを変えると共に、Nガスの流量を変えて、夫々の場合の処理空間S内の圧力を測定した。この結果を図41に示す。図中横軸は処理空間S内に供給したNガスの流量、図中縦軸は処理空間S内の圧力を夫々示している。また図41には、隙間が0.3mmの場合を◇、隙間が1.0mmの場合を○、隙間が10mmの場合を□、排気部24内の圧力を●で夫々プロットしてある。
【0120】
これにより、隙間が10mmの場合には、処理空間S内の圧力と排気部24の圧力とはほぼ同じであるのに対し、隙間が1.0mm、0.3mmのときには、N2ガスの供給量が多くなるに連れて処理空間Sの圧力が高くなることが認められた。これにより、隙間が1.0mm未満である場合には、ガスを処理空間S内に封じ込めることができることが理解され、隙間が小さい程、ガスの封じ込め効果が大きく、処理空間S内を高圧化でき、処理空間Sと排気部24との差圧を大きくできることが理解される。
【0121】
(実施例2)
図1に示す成膜装置を用い、第1の反応ガス(原料ガス)としてTiClガス、第2の反応ガス(還元ガス)としてNHガス、パージガスとしてNガスを用いてTiN膜の成膜処理を行った。この際、載置台3と天板部材4同士の間の隙間40の大きさを変えることにより、NHガス導入による還元工程時の圧力を変えてTiN膜を成膜し、夫々のTiN膜の比抵抗を測定した。この結果を図42に示す。図中横軸は、還元工程時の処理空間S内の圧力、縦軸はTiN膜の比抵抗を夫々示している。
【0122】
これにより、還元工程時の処理空間S内の圧力が高い程、TiN膜の比抵抗が小さくなることが認められた。このように処理空間S内に還元ガスを封じ込めて、処理空間S内の圧力を高くすることにより、ウエハW表面への還元ガスの供給量が多くなり、その結果、TiN膜の比抵抗が低下するという膜特性の向上を図ることができることが理解される。
【符号の説明】
【0123】
W 半導体ウエハ
1 成膜装置
2 処理容器
27 真空ポンプ
3 載置台
4 天板部材
43 突起部
5(5A,5B) 昇降機構
53 駆動部材
6 緩衝機構
61 皿バネ
7 ガス供給部
110 規制機構
111 押しネジ
112 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内にて基板に対して、第1の反応ガスと、この第1の反応ガスと反応して反応生成物を形成する第2の反応ガスとを供給して成膜処理を行う成膜装置において、
前記処理容器内に設けられ、基板の載置領域を備えた載置部と、
前記載置部に対向するように設けられ、載置部との間で基板の処理空間を形成する天板部材と、
前記載置部に基板を受け渡す位置と、前記載置部が天板部材に当接する位置との間で、前記載置部を前記天板部材に対して相対的に昇降できるように構成され、成膜処理時に前記載置部を天板部材に相対的に接近させて、基板の周縁部または基板の外側領域にて基板の周方向に排気用の隙間を形成するための昇降機構と、
前記載置部とこの載置部を支持する支持部位との間、及び天板部材とこの天板部材を支持する支持部位との間の少なくとも一方に設けられ、前記昇降機構の昇降動作により載置部及び天板部材の一方側が他方側に偏って接触したときに天板部材に対する載置部の相対的姿勢を矯正すると共に接触圧を緩和するための緩衝機構と、
前記載置部と天板部材とが互いに離れたときに、天板部材に対する載置部の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、矯正後の前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用を抑えるための規制機構と、
前記処理空間に前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスを供給するためのガス供給部と、
前記処理空間を前記隙間及び処理容器内の雰囲気を介して排気するための排気手段と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記処理容器は真空容器であり、
前記排気手段は、前記処理空間を前記隙間及び前記真空容器内の雰囲気を介して真空排気するための真空排気手段であることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用は、前記処理容器の内部と外部との圧力差により生じることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記載置部を支持する支持部位は、載置部を支持して昇降機構により昇降自在に構成されると共に、前記載置部の下端側に設けられたフランジ部に対して上方側又は下方側に設けられ、
前記規制機構は、前記フランジ部と支持部位との一方側を貫通して他方側に向って昇降するように設けられた昇降軸と、この昇降軸の先端が前記他方側の一面に当接したときに、その高さ位置を固定する固定部材と、を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
前記昇降軸は押しネジであり、前記固定部材はナットであることを特徴とする請求項4記載の成膜装置。
【請求項6】
真空容器内にて基板に対して、第1の反応ガスと、この第1の反応ガスと反応して反応生成物を形成する第2の反応ガスとを供給して成膜処理を行う成膜装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板の載置領域を備えた載置部と、
この載置部に対向するように設けられ、載置部との間で基板の処理空間を形成する天板部材と、
前記載置部に基板を受け渡す位置と、前記載置部を前記天板部材に接近させて前記処理空間を形成する位置との間で、前記載置部を前記天板部材に対して相対的に昇降させる昇降機構と、
前記載置部における載置領域の外側領域と天板部材との少なくとも一方に設けられ、前記処理空間の形成時にその先端が他方に接触することにより、前記外側領域と天板部材との間の離間距離を規制して載置領域を囲むように排気用の1mm未満の隙間を形成するための突起部と、
前記処理空間に前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスを供給するためのガス供給部と、
前記処理空間を前記隙間及び真空容器内の雰囲気を介して真空排気するための真空排気手段と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
前記載置部とこの載置部を支持する支持部位との間、及び天板部材とこの天板部材を支持する支持部位との間の少なくとも一方に設けられ、載置部及び天板部材の一方側が突起部を介して他方側に偏って接触したときに天板部材に対する載置部の相対的姿勢を矯正すると共に接触圧を緩和するための緩衝機構を備えたことを特徴とする請求項6記載の成膜装置。
【請求項8】
前記緩衝機構は、載置部と昇降機構との間に設けられた弾性部材を備え、この弾性部材は、前記昇降機構が、前記処理空間を形成する位置にある載置部に対して天板部材に接近する方向に力を作用させたときに、載置部が天板部材から離れる方向に元に戻ろうとする力が作用するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5又は7のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項9】
前記処理空間内の圧力を検出する検出部と、
前記検出部からの検出値を出力する表示部と、を備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項10】
前記検出部からの検出値と圧力の設定範囲とを比較し、前記検出値が前記設定範囲から外れているときには、アラーム信号を出力する制御部を備えることを特徴とする請求項9記載の成膜装置。
【請求項11】
前記処理空間に、当該処理空間内に付着した膜を除去するためのクリーニングガスを供給するためのクリーニングガス供給部と、
前記検出部からの検出値と圧力の設定範囲とを比較し、前記検出値が前記設定範囲から外れているときには、前記クリーニングガス供給部からクリーニングガスを処理空間に導入するように制御信号を出力する制御部と、を備えることを特徴とする請求項9又は10記載の成膜装置。
【請求項12】
処理容器内にて基板に対して、第1の反応ガスと、この第1の反応ガスと反応して反応生成物を形成する第2の反応ガスとを供給して成膜処理を行う成膜方法において、
前記処理容器内に設けられ、基板の載置領域を備えた載置部を、この載置部に対向するように設けられた天板部材に対して、前記載置部を天板部材に当接させるために相対的に上昇させる工程と、
前記載置部とこの載置部を支持する支持部位との間、及び天板部材とこの天板部材を支持する支持部位との間の少なくとも一方に設けられた緩衝機構により、載置部及び天板部材の一方側が他方側に偏って接触したときに、接触圧を緩和しながら天板部材に対する載置部の相対的姿勢を矯正する工程と、
前記載置部と天板部材とが互いに離れたときに、天板部材に対する載置部の相対的姿勢が矯正された状態を維持するように、矯正された前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用を規制機構により抑える工程と、
この規制機構により前記相対的姿勢が元に戻ろうとする作用を抑えた状態で、載置部を天板部材に対して相対的に接近させて、基板の周縁部または基板の外側領域にて基板の周方向に排気用の隙間を形成する工程と、
前記処理空間に前記第1の反応ガス及び前記第2の反応ガスを供給する工程と、
前記処理空間を前記隙間及び処理容器内の雰囲気を介して排気する工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2013−40398(P2013−40398A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7479(P2012−7479)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】