成膜装置
【課題】 エアロゾルデポジション法を用いて成膜を行う過程において、精密に膜厚を測定すると共に、膜質の良否を確認することができる成膜装置を提供する。
【解決手段】 この成膜装置は、原料の粉体を配置するエアロゾル生成部3と、該エアロゾル生成部において、該原料の粉体をガスによって噴き上げることにより、エアロゾルを生成するガスボンベ1及び圧力調整部1aと、構造物が形成される基板を保持する基板ホルダ6と、エアロゾル生成部において生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズル5と、基板上の成膜面における電位を測定する測定部8とを含む。
【解決手段】 この成膜装置は、原料の粉体を配置するエアロゾル生成部3と、該エアロゾル生成部において、該原料の粉体をガスによって噴き上げることにより、エアロゾルを生成するガスボンベ1及び圧力調整部1aと、構造物が形成される基板を保持する基板ホルダ6と、エアロゾル生成部において生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズル5と、基板上の成膜面における電位を測定する測定部8とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料の粉体を高速で基板に吹き付けて堆積させることにより、基板上に構造物を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小電気機械システム(MEMS:micro electrical mechanical system)の分野においては、圧電セラミックスを利用したセンサやアクチュエータ等をさらに集積化し、実用に供するために、成膜によってそれらの素子を作製することが検討されている。その1つとして、セラミックスや金属等の成膜技術として知られるエアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法が注目されている。AD法とは、原料の粉体(原料粉)を含むエアロゾルを生成し、それをノズルから基板に向けて噴射することにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。ここで、エアロゾルとは、気体中に浮遊している固体や液体の微粒子のことをいう。
【0003】
AD法においては、ある条件の下で高速に加速された原料粉が、基板や先に形成された堆積物等の下層に衝突して食い込むと共に、その衝突の際に、粉体が数十nm程度の粒子に破砕することにより新たな活性面が現れ、その活性面同士が強固に結合するメカノケミカル反応によって成膜が為される。このようなAD法によれば、不純物を含まない、緻密で強固な厚膜を形成することができる。そのため、例えば、圧電アクチュエータ、圧電ポンプ、インクジェットプリンタヘッド、超音波トランスデューサ等に使用されるセラミックの圧電膜をAD法によって形成することにより、それらの機器の性能を向上させることが期待されている。なお、AD法は、噴射堆積法又はガスデポジション法とも呼ばれている。
【0004】
このAD法においては、一定の膜厚及び膜質を有するセラミック構造物を作製することが容易ではなく、膜厚及び膜質のコントロールが課題となっている。AD法における成膜速度は、エアロゾル濃度、エアロゾルの噴射速度、ノズルの走査速度、成膜温度等の様々な条件によって微妙に変化するので、単に成膜時間を調節するだけでは、膜厚を精密に制御することはできず、また、それらの条件に応じて、膜質が容易に変化してしまう。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、セラミック微粒子を含むエアロゾルを高速で基板に吹き付けてセラミック構造物を形成させるガスデポジション法において、セラミックの一次粒子を多く含む、経時的に安定した量のエアロゾルを発生させ、セラミック構造物の高さを調節するために、エアロゾル中のセラミック微粒子の量をセンサにより感知し、センサから出力される信号をセラミック構造物作製装置へフィードバックすることによって経時的に安定した量のエアロゾルを発生させ、セラミック構造物の堆積高さを調節するセラミック構造物作製装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、センサを用いることによりエアロゾル中のセラミック微粒子の量、即ち、エアロゾル濃度しか検出しておらず、エアロゾルに含まれる粒径が異なる微粒子や、成膜に寄与し難い凝集粒子を区別していない。一般に、凝集粒子を多く含むエアロゾルを用いて通常と同じ条件の下で成膜を行うと、気孔を多く含む圧粉体状態の構造物が形成されてしまうので、緻密度に代表される膜質が悪化してしまう。即ち、特許文献1に開示されている方法によれば、構造物の膜厚(構造物高さ)を制御することはできても、膜質を制御することまではできない。
【0007】
また、特許文献2には、蒸発源およびこの上方に搬送管の開口部を設けた超微粒子生成室と、該搬送管の他の開口部に結合されたノズルおよびこれに対向して配設される基板を固定するステージを設けた膜形成室とから成り、該蒸発源より蒸発する超微粒子を該超微粒子生成室内に導入されるガスと共に該搬送管中を搬送し、該ノズルから噴射する該超微粒子を該基板上に堆積させることにより、膜形成するガスデポジション装置において、該超微粒子膜を任意の膜厚に形成するために、基板上に超微粒子膜を形成すると同時に、形成された超微粒子膜の膜厚を非接触の膜厚測定器であるレーザ膜厚測定器により測定し、膜厚測定結果をもとにステージとノズルの相対速度および蒸発源温度等を制御する超微粒子膜の生成方法等が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されている方法によれば、ノズルから噴射されたものの成膜に関与しなかった微粒子が、チャンバの内部に設けられたレーザ膜厚測定器に付着することは避けられないので、長時間の成膜には不向きであり、生産性が低い。また、特許文献1におけるのと同様に、膜厚を制御することはできても、その場で膜質を確認することまではできない。
【特許文献1】特開2001−348659号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2002−30421号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、特許文献1及び2においては、構造物の膜質を確認したり、それを制御することはできない。また、それらの方法を用いても、膜厚をミクロンオーダーで精密に制御することは、やはり困難である。しかしながら、例えば、AD法によって圧電アクチュエータを作製する場合には、膜厚が不均一であると、印加される電界が複数の素子の間で異なり、特性のバラツキが生じるので、最終製品における歩留まりが低下してしまう。また、それに伴い、製造コストが上昇する。或いは、構造物が多くの気孔を含んでいると、耐圧の低下や、弾性率及びビッカース硬度によって数値的に表される緻密度の低下を招くので、最終製品において、動作中に絶縁破壊が発生してしまうおそれがある。
【0010】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、AD法を用いて成膜を行う過程において、精密に膜厚を測定すると共に、膜質の良否を確認することができる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る成膜装置は、原料の粉体を配置する容器と、該容器において、該原料の粉体をガスによって噴き上げることにより、エアロゾルを生成するガス導入手段と、構造物が形成される基板を保持する保持手段と、容器において生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルと、基板上の成膜面における電位を測定する測定手段とを具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成膜レート及び緻密度と相関している基板上の成膜面における電位を測定することにより、成膜中の構造物の成膜レートや緻密度をその場で確認することができる。そのため、そのような電位差に基づいて種々の成膜条件を調節することにより、構造物の堆積高さ(膜厚)をミクロンオーダーで精密に制御したり、構造物の緻密度を維持することが可能となる。従って、膜厚が均一で緻密度の高い、高品位な構造物を作製することができるようになり、そのような構造物を使用した機器の信頼性を高めると共に、製造コストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。この成膜装置は、ガスボンベ1と、搬送管2a及び2bと、エアロゾル生成部3と、成膜が行われる成膜室4と、該成膜室4に配置されたノズル5及び基板ホルダ6と、排気ポンプ7と、測定部8と、演算部9と、表示部10とを含んでいる。
【0014】
ガスボンベ1には、キャリアガスとして使用される酸素(O2)が充填されている。また、ガスボンベ1には、キャリアガスの供給量を調節する圧力調整部1aが設けられている。なお、キャリアガスとしては、この他に、窒素(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、乾燥空気等を用いても良い。
【0015】
エアロゾル生成部3は、成膜材料である原料の微小な粉体を配置する容器である。このエアロゾル生成部3に、搬送管2aを介してキャリアガスを導入することにより、原料の粉体が噴き上げられてエアロゾルが生成される。
【0016】
エアロゾル生成部3には、エアロゾル生成部3に微小な振動や、比較的ゆっくりとした運動を与える容器駆動部3aが設けられている。ここで、エアロゾル生成部3に配置された原料の粉体(1次粒子)は、時間の経過と共に、静電気力やファンデルワールス力等によって結合して凝集粒子を形成してしまう。その中でも、数μm〜数mmの巨大な凝集粒子は質量も大きいため容器の底部に溜まるが、それらがキャリアガスの出口付近(搬送管2aの出口付近)に留まると、キャリアガスによって1次粒子を噴き上げることができなくなる。そのため、凝集粒子が1箇所に留まらないように、容器駆動部3aは、エアロゾル生成部3に振動等を与えることにより、その内部に配置された粉体を攪拌している。
【0017】
ノズル5は、エアロゾル生成部3から搬送管2bを介して供給されたエアロゾルを基板20に向けて高速で噴射する。ノズル5は、所定の形状及び大きさ(例えば、長さ5mm、幅0.5mm程度)を有する開口を有している。
基板ホルダ6には、構造物が形成される基板20を保持するために用いられる治具11、治具マスク13、及び、ボルト14が設けられている。また、基板ホルダ6には基板ホルダ駆動部6aが設けられており、これにより、ノズル5と基板20との相対位置及び相対速度が3次元的に制御される。
排気ポンプ7は、成膜室4の内部を排気することによって所定の真空度に保っている。
【0018】
測定部8は、基板20上に形成されている下部電極22面の電位と接地電位との間の電位差を測定する。即ち、接地電位を基準として、下部電極22面の電位を測定する。本実施形態においては、測定部8として、アジレントテクノロジー社製のオシロスコープを使用している。
また、演算部9は、測定部8によって測定された下部電極22面の電位に基づいて、基板20上に作製中の構造物の成膜レート及びビッカース硬度を求めると共に、構造物の堆積高さ(膜厚)等を算出する。これらの算出原理については、後で説明する。
さらに、表示部10は、CRTやLCD等の表示装置を含んでおり、測定部8によって測定された下部電極22面の電位や、演算部9によって算出された膜厚等を表示装置に表示する。
【0019】
図2の(a)は、図1に示す基板20及び基板ホルダ6の周辺を拡大して示す断面図であり、図2の(b)は、同平面図である。
図2の(a)に示すように、基板20は、例えば、シリコン(Si)によって形成されている。また、基板20上には、酸化シリコン(SiO2)膜(絶縁膜)21と、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO2)、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrO2)、酸化タンタル(TaO3)、白金(Pt)等の金属膜を含む下部電極22が予め形成されている。
【0020】
また、基板ホルダ6は、接地電位に接続されている。治具11の上には基板20が戴置されており、その上に、治具マスク13が配置されている。治具11及び治具マスク13は、例えば、ジルコニア、アルミナ、ガラス等の絶縁物によって形成されている。また、治具マスク13には、下部電極22に接触して成膜面の電位を測定するために用いられる導線12が配置されている。この治具マスク13を支持するボルト14を締めることにより、基板20の位置が固定される。それにより、基板20が接地電位から電気的に浮いた状態で保持されると共に、下部電極22と導線12が電気的に接続される。なお、基板ホルダ6内に、基板20を所定の温度に保つためのヒーターを設けても良い。
図2の(b)に示すように、治具マスク13には開口が形成されている。この開口によって露出した基板20上の領域が成膜領域23となる。
【0021】
再び、図1を参照すると、このような成膜装置において、下部電極22等が形成された基板20を基板ホルダ6に配置すると共に、排気ポンプ7を用いて成膜室4の内部を所定の真空度まで排気する。また、エアロゾル生成部3に、所定の粒子径を有する原料の粉体を配置する。そして、搬送管2aを介してガスボンベから窒素等のキャリアガスを供給することにより、エアロゾル生成部3において原料の粉体が噴き上げられてエアロゾルが生成される。このエアロゾルは、搬送管2bを介してノズル5に供給され、ノズル5から基板20に向けて噴射される。それにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体が下部電極22に衝突して、下部電極22の上に付着して膜が形成される。その間に、測定部8は、下部電極22の電位、即ち、成膜面の電位を測定しており、演算部9は、測定部8による測定値に基づいて、成膜レート及びビッカース硬度を求めると共に、形成された構造物の膜厚を見積る。
【0022】
次に、図1に示す演算部9における膜厚等の算出原理について、図3〜図10を参照しながら説明する。図3〜図8は、図1に示す下部電極22の電位(即ち、成膜面の電位)の変化を示している。
以下においては、構造物としてPZT膜を形成する場合について説明する。原料の粉体としては、平均粒子径0.3μmのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)を用いている。また、以下において、成膜レートとは、ノズルに対して基板を0.5mm/sで移動させることによって形成された膜の厚さを、ノズルの往復回数で除することによって求められた値のことである。さらに、形成された膜の膜質は、ビッカース硬度によって評価されている。即ち、ビッカース硬度が高いほど、緻密で強固な膜であることを示しており、ビッカース硬度が低いほど、多くの気孔を含む軟らかい膜であることを示している。
【0023】
図3は、基板20上にPZT膜を形成していない状態における成膜面の電位の変化を示している。即ち、図1に示す成膜装置を駆動しているものの、ノズル5を図2の(b)に示す成膜領域23からずらすことにより、エアロゾルを治具マスク13部分のみに吹き付けている。図3に示すように、この場合には、電位の変化はほとんど見られない。
【0024】
図4は、基板20上にPZT膜を形成している状態における成膜面の電位の変化を示している。図4に示すように、成膜中(約1000msec〜約2800msec、約3200msec〜約5200msec、約6500msec〜約8200msec、及び、約9000msec〜)においては、約0.5Vの電位が発生していた。なお、図4の約1000msec、約3000msec、約5800msec、及び、8500msec付近において電位が0V付近まで低下するのは、ノズル5に対して基板20の進行方向を反転する際にノズル5が成膜領域23から外れるため、PZT膜が形成されていないからである。
【0025】
この場合に、形成されたPZT膜の成膜レートは、約1μm/往復であった。また、形成されたPZT膜のビッカース硬度を測定したところ、約620であった。このような高いビッカース硬度が得られたことから、図4に示す場合には、原料の粉体が数十nm程度に破砕し、破砕面が下層に付着するメカノケミカル反応が成膜中に生じており、原料の粉体が互いに強固に結合しながら堆積したといえる。
図3と図4とを比較して明らかなように、基板20上に成膜を行うことにより、成膜面に所定の電位が発生する。
【0026】
図5は、図3に示す場合よりもエアロゾル濃度を低くすることにより、成膜レートを低下させた場合における成膜面の電位の変化を示している。図5に示すように、成膜中に発生した電位は、約0.25Vであった。また、形成されたPZT膜の成膜レートは、約0.5μm/往復であり、ビッカース硬度は、約600であった。
【0027】
図6は、図3に示す場合よりもエアロゾル濃度を高くすることにより、成膜レートを高くした場合における成膜面の電位の変化を示している。図6に示すように、成膜中に発生した電位は、約1Vであった。また、形成されたPZT膜の成膜レートは、約2μm/往復であり、ビッカース硬度は、約600であった。なお、図6において、約1000msec及び約8500msec付近に見られる電位の落ち込みはノイズである。
【0028】
図7は、図6に示す場合よりもエアロゾル濃度をさらに高くした場合における成膜面の電位の変化を示している。図7に示すように、成膜中には約0.5Vの電位が発生していたが、多くのノイズも発生していた。また、形成されたPZT膜の成膜レートは、約3μm/往復であり、ビッカース硬度は、約400であった。図4〜図6に示す場合と比較してビッカース硬度が低下していることから、この場合には、メカノケミカル反応は生じているものの、その発生割合は図4〜図6に示す場合よりも低下しており、部分的に原料の粉体の結合が弱くなっているものと考えられる。
【0029】
図8は、図7に示す場合よりもエアロゾル濃度をさらに高くした場合における成膜面の電位の変化を示している。図8に示すように、この場合には、成膜中であるにもかかわらず、電位の発生はほとんど確認することができなかった。また、形成されたPZT膜の成膜レートは、約10μm/往復であり、ビッカース硬度は、約200であった。ビッカース硬度が大幅に低下したことから、この場合に形成されたPZT膜は、一般には粉体を押し固めることによって形成され、多くの気孔を含む圧粉体の状態であったと考えられる。このようなPZT膜が形成されたのは、エアロゾル濃度を高くしたことにより、搬送されるエアロゾル中において原料の粉体が凝集してしまったため、成膜面においてメカノケミカル反応が促進されなかったためと考えられる。
【0030】
図9は、図3〜図8に示す場合における成膜レートと成膜面の電位との関係を、成膜面の電位が1.2V以下の範囲で示している。
図9に示すように、成膜中にメカノケミカル反応が生じている場合(成膜レート=0.25μm/往復、0.5μm/往復、1μm/往復)には、成膜レートと成膜面の電位との間に相関が見られ、成膜レートに比例して成膜面の電位が変化する。しかしながら、図6に示すように、成膜レートが高くなるのに伴って、ノイズ成分が発生し易くなる。また、図7に示すように、成膜レートをさらに高くすると、メカノケミカル反応が生じ難くなり、成膜面の電位は低下して、成膜レートと成膜面の電位との相関が見られなくなる。さらに、図8に示すように、成膜レートを極端に高くすると(成膜レート=10μm/往復)、成膜面において電位が発生しなくなり、その結果形成されたPZT膜は圧粉体の状態となってしまう。
【0031】
図10は、形成されたPZT膜のビッカース硬度と、圧電歪定数d31との関係を示している。図4〜図6に示す場合におけるように、600程度のビッカース硬度を有するPZT膜は、圧電歪定数d31が120程度となった。即ち、良好な圧電特性を有しているといえる。しかしながら、図7に示す場合におけるように、ビッカース硬度が400付近まで低下すると、それに伴って、圧電歪定数d31は100以下まで低下した。さらに、図8に示す場合におけるように、ビッカース硬度が200程度の場合には、リークが発生してしまったため圧電歪定数d31を測定することができなかった。このように、ビッカース硬度が低い状態においては、圧電特性の劣化を確認することができた。
【0032】
以上説明したように、成膜レートをエアロゾル濃度によって制御する場合には、良質な膜を形成できる適切な成膜レートの範囲(即ち、エアロゾル濃度の範囲)が存在する。また、そのような範囲内(例えば、成膜面の電位が1V以下)においては、成膜レートと成膜面の電位とが比例関係を示す。そこで、成膜面の電位を成膜中に測定し、その測定値が所定の範囲に保たれるように、成膜装置の各部を調節することにより、緻密で強固、且つ、膜厚が精密に制御された良質な膜を形成することが可能となる。また、成膜レートに基づいて膜厚を見積ることにより、所望の厚さを有する構造物を形成することが可能となる。
【0033】
再び、図1を参照すると、演算部9は、成膜面の電位と成膜レートとの関係、及び、成膜面の電位とビッカース硬度との関係を表すテーブル又は関係式や、成膜面の電位の時間積分値と成膜レートとに基づいて膜厚を算出するための関係式等を有している。これらのテーブル等は、原料の粉体の種類や粒子径、基板材料、基板の移動速度、成膜温度等の条件に応じて作成されている。演算部9は、測定部8によって測定された成膜面の電位と、上記のテーブル等とに基づいて、作製中の構造物の成膜レート、ビッカース硬度、及び、膜厚等を求める。演算部9によって求められた値は、表示部10において表示される。
【0034】
オペレータは、表示部10に表示された成膜面の電位、成膜レート、ビッカース硬度、膜厚等に基づいて、所望の膜厚及び膜質が得られるように、成膜装置の各部を手動で調節する。調節される対象となるのは、例えば、以下の部分である。即ち、圧力調整部1aを制御して、エアロゾル生成部3に供給されるキャリアガスの流量を調節したり、容器駆動部3aを制御してエアロゾル生成部3に適切な振動を与えることにより、エアロゾル濃度を調節することができる。また、オペレータは、基板ホルダ駆動部6aを制御して基板ホルダ6の移動速度を調節しても良い。さらに、成膜面の電位にノイズ成分が多く含まれる場合には、エアロゾル濃度が高いことを表しているので、そのような場合に、オペレータは、圧力調整部1a又は容器駆動部3aを調節することにより、エアロゾル濃度を低くする。
【0035】
このように、本実施形態によれば、従来、セラミック構造物の膜厚を時間や目視等により経験的又は感覚的に調整していたのに対して、成膜面の電位に基づいて成膜の進行状態を数値化して示すことにより、膜厚をミクロンオーダーで精密且つ客観的に制御したり、膜質を一定以上のレベルに保つことが可能となる。
【0036】
本実施形態においては、PZT膜を形成する場合について説明したが、本発明は、PZT等の酸化物の他にも、脆性材料一般や、鉛系圧電材料や、KNbO3等の非鉛系圧電材料や、BaTiO3等の誘電体材料や、Al2O3、AlN、ZrO2等の絶縁材料や、PLZT等の光学材料等、AD法によって形成可能な材料であれば、様々なセラミック構造物を作製する場合にも適用することもできる。その場合には、セラミック構造物の種類や、使用する原料の粉体の粒子径等に応じて、図3〜図10に示すようなデータを予め取得しておくことにより、演算部8にテーブルを用意しておけば良い。
【0037】
なお、図8に示す場合のように、ビッカース硬度が低く(例えば、500以下)、且つ、形成された膜が白く乱反射している場合には、膜は、粉を押し固めた圧粉体の状態となっている。このような場合には、成膜レートが極端に上昇すると共に、成膜面の電位が観察されなくなる。そのため、圧粉体の状態と通常のメカノケミカル反応による成膜の状態とは、成膜中に判別することができる。また、テーブル等を作成する際には、エアロゾル濃度を検出することにより、圧粉体が形成されている状態におけるデータを除外することが望ましい。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態に係る成膜装置について説明する。図11は、本実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。
図11に示す成膜装置は、図1に示す表示部10の替わりに、制御部15を有している。その他の構成については、図1に示す成膜装置と同様である。
【0039】
制御部15は、測定部8によって測定された成膜面の電位を用いて演算部9により求められた成膜レート、ビッカース硬度、及び、膜厚等に基づいて、予め設定された膜厚及び膜質を有する構造物が得られるように、成膜装置各部の動作を制御する。即ち、制御部15は、圧力調整部1aを制御することによりキャリアガスの流量を変化させたり、容器駆動部3aを制御することによりエアロゾル濃度を調節したり、基板ホルダ駆動部6aを制御することによりノズル5に対する基板20の速度を調節する。また、制御部15は、形成された膜の厚さが、予め設定された値に至ると、成膜を終了するように、成膜装置の各部を制御する。さらに、成膜面の電位にノイズ成分が多く含まれている場合には、制御部15は、エアロゾル濃度を適切な範囲まで低くするように、圧力調整部1a又は容器駆動部3aを調節する。
このように、成膜面の電位に基づいて得られた成膜レート等の値を成膜装置の各部にフィードバックすることにより、形成される構造物の膜質を維持しつつ、その厚さを精密に自動制御することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る成膜装置の変形例として、図11に示す成膜装置に対して、図1に示す表示部10を設けても良い。その場合には、制御部15による自動制御と、表示部10の画面を参照することによるユーザ制御との両方を行うことが可能になる。
【0041】
以上説明したように、本発明の第1及び第2の実施形態によれば、エアロゾル濃度に応じて変化する成膜レートを、長時間に渡って均一に保つことが可能になる。それにより、構造物の大面積化や、構造物の厚膜化や、膜厚ムラの解消を促進することができ、それに伴い、構造体の設計自由度を増すことが可能となる。例えば、膜厚が均一になるように精密に制御された圧電体を用いることにより、複数の圧電素子の印加電圧を均一にすることができるので、品質の安定した圧電アクチュエータを、高い歩留まりで製造することができる。或いは、膜厚が精密に制御された圧電体を超音波トランスデューサに適用することにより、効率良く超音波を送信すると共に、高い感度で超音波信号を検出できる超音波用探触子を製造できる。この場合には、超音波画像の画質を向上させることが可能になる。さらに、そのような圧電体をインクジェットヘッドに適用する場合には、より高画質な画像を表現できるようになるのに加えて、印刷可能な画像サイズを大型化することも可能になる。
【0042】
以上説明した本発明の第1及び第2の実施形態においては、緻密で強固な膜を形成するために、成膜装置の各部を制御しているが、制御方法を変化させることにより、所望の特性を有する膜を形成することも可能である。例えば、軟らかい構造物を作製したい場合には、成膜面の電位に応じて各部を制御してエアロゾル濃度を高くすることにより、メカノケミカル反応を抑制すれば、多くの気孔を含む膜を形成することができる。或いは、エアロゾル濃度を段階的又は連続的に変化させるように、成膜面の電位に応じて各部を制御することにより、形成された膜のビッカース硬度を、段階的又は連続的に変化させることができる。そのような傾斜的に変化する特性を有する構造物は、応力緩和層やバッファー層として利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、セラミックス等の構造物を形成する際に用いられる成膜装置において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す基板ホルダの周辺を拡大して示す図である。
【図3】未成膜状態における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図4】成膜レートが1μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図5】成膜レートが0.5μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図6】成膜レートが2μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図7】成膜レートが3μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図8】成膜レートが10μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図9】成膜レートと成膜面の電位との関係を示す図である。
【図10】PZT膜のビッカース硬度と圧電歪定数d31との関係を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ガスボンベ
1a 圧力調整部
2a、2b 搬送管
3 エアロゾル生成部
3a 容器駆動部
4 成膜室
5 ノズル
6 基板ホルダ
6a 基板ホルダ駆動部
7 排気ポンプ
8 測定部
9 演算部
10 表示部
11 治具
12 導線
13 治具マスク
14 ボルト
15 制御部
20 基板
21 酸化シリコン膜(絶縁膜)
22 下部電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料の粉体を高速で基板に吹き付けて堆積させることにより、基板上に構造物を形成する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微小電気機械システム(MEMS:micro electrical mechanical system)の分野においては、圧電セラミックスを利用したセンサやアクチュエータ等をさらに集積化し、実用に供するために、成膜によってそれらの素子を作製することが検討されている。その1つとして、セラミックスや金属等の成膜技術として知られるエアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法が注目されている。AD法とは、原料の粉体(原料粉)を含むエアロゾルを生成し、それをノズルから基板に向けて噴射することにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。ここで、エアロゾルとは、気体中に浮遊している固体や液体の微粒子のことをいう。
【0003】
AD法においては、ある条件の下で高速に加速された原料粉が、基板や先に形成された堆積物等の下層に衝突して食い込むと共に、その衝突の際に、粉体が数十nm程度の粒子に破砕することにより新たな活性面が現れ、その活性面同士が強固に結合するメカノケミカル反応によって成膜が為される。このようなAD法によれば、不純物を含まない、緻密で強固な厚膜を形成することができる。そのため、例えば、圧電アクチュエータ、圧電ポンプ、インクジェットプリンタヘッド、超音波トランスデューサ等に使用されるセラミックの圧電膜をAD法によって形成することにより、それらの機器の性能を向上させることが期待されている。なお、AD法は、噴射堆積法又はガスデポジション法とも呼ばれている。
【0004】
このAD法においては、一定の膜厚及び膜質を有するセラミック構造物を作製することが容易ではなく、膜厚及び膜質のコントロールが課題となっている。AD法における成膜速度は、エアロゾル濃度、エアロゾルの噴射速度、ノズルの走査速度、成膜温度等の様々な条件によって微妙に変化するので、単に成膜時間を調節するだけでは、膜厚を精密に制御することはできず、また、それらの条件に応じて、膜質が容易に変化してしまう。
【0005】
関連する技術として、特許文献1には、セラミック微粒子を含むエアロゾルを高速で基板に吹き付けてセラミック構造物を形成させるガスデポジション法において、セラミックの一次粒子を多く含む、経時的に安定した量のエアロゾルを発生させ、セラミック構造物の高さを調節するために、エアロゾル中のセラミック微粒子の量をセンサにより感知し、センサから出力される信号をセラミック構造物作製装置へフィードバックすることによって経時的に安定した量のエアロゾルを発生させ、セラミック構造物の堆積高さを調節するセラミック構造物作製装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、センサを用いることによりエアロゾル中のセラミック微粒子の量、即ち、エアロゾル濃度しか検出しておらず、エアロゾルに含まれる粒径が異なる微粒子や、成膜に寄与し難い凝集粒子を区別していない。一般に、凝集粒子を多く含むエアロゾルを用いて通常と同じ条件の下で成膜を行うと、気孔を多く含む圧粉体状態の構造物が形成されてしまうので、緻密度に代表される膜質が悪化してしまう。即ち、特許文献1に開示されている方法によれば、構造物の膜厚(構造物高さ)を制御することはできても、膜質を制御することまではできない。
【0007】
また、特許文献2には、蒸発源およびこの上方に搬送管の開口部を設けた超微粒子生成室と、該搬送管の他の開口部に結合されたノズルおよびこれに対向して配設される基板を固定するステージを設けた膜形成室とから成り、該蒸発源より蒸発する超微粒子を該超微粒子生成室内に導入されるガスと共に該搬送管中を搬送し、該ノズルから噴射する該超微粒子を該基板上に堆積させることにより、膜形成するガスデポジション装置において、該超微粒子膜を任意の膜厚に形成するために、基板上に超微粒子膜を形成すると同時に、形成された超微粒子膜の膜厚を非接触の膜厚測定器であるレーザ膜厚測定器により測定し、膜厚測定結果をもとにステージとノズルの相対速度および蒸発源温度等を制御する超微粒子膜の生成方法等が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されている方法によれば、ノズルから噴射されたものの成膜に関与しなかった微粒子が、チャンバの内部に設けられたレーザ膜厚測定器に付着することは避けられないので、長時間の成膜には不向きであり、生産性が低い。また、特許文献1におけるのと同様に、膜厚を制御することはできても、その場で膜質を確認することまではできない。
【特許文献1】特開2001−348659号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2002−30421号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、特許文献1及び2においては、構造物の膜質を確認したり、それを制御することはできない。また、それらの方法を用いても、膜厚をミクロンオーダーで精密に制御することは、やはり困難である。しかしながら、例えば、AD法によって圧電アクチュエータを作製する場合には、膜厚が不均一であると、印加される電界が複数の素子の間で異なり、特性のバラツキが生じるので、最終製品における歩留まりが低下してしまう。また、それに伴い、製造コストが上昇する。或いは、構造物が多くの気孔を含んでいると、耐圧の低下や、弾性率及びビッカース硬度によって数値的に表される緻密度の低下を招くので、最終製品において、動作中に絶縁破壊が発生してしまうおそれがある。
【0010】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、AD法を用いて成膜を行う過程において、精密に膜厚を測定すると共に、膜質の良否を確認することができる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る成膜装置は、原料の粉体を配置する容器と、該容器において、該原料の粉体をガスによって噴き上げることにより、エアロゾルを生成するガス導入手段と、構造物が形成される基板を保持する保持手段と、容器において生成されたエアロゾルを基板に向けて噴射するノズルと、基板上の成膜面における電位を測定する測定手段とを具備する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成膜レート及び緻密度と相関している基板上の成膜面における電位を測定することにより、成膜中の構造物の成膜レートや緻密度をその場で確認することができる。そのため、そのような電位差に基づいて種々の成膜条件を調節することにより、構造物の堆積高さ(膜厚)をミクロンオーダーで精密に制御したり、構造物の緻密度を維持することが可能となる。従って、膜厚が均一で緻密度の高い、高品位な構造物を作製することができるようになり、そのような構造物を使用した機器の信頼性を高めると共に、製造コストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。この成膜装置は、ガスボンベ1と、搬送管2a及び2bと、エアロゾル生成部3と、成膜が行われる成膜室4と、該成膜室4に配置されたノズル5及び基板ホルダ6と、排気ポンプ7と、測定部8と、演算部9と、表示部10とを含んでいる。
【0014】
ガスボンベ1には、キャリアガスとして使用される酸素(O2)が充填されている。また、ガスボンベ1には、キャリアガスの供給量を調節する圧力調整部1aが設けられている。なお、キャリアガスとしては、この他に、窒素(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、乾燥空気等を用いても良い。
【0015】
エアロゾル生成部3は、成膜材料である原料の微小な粉体を配置する容器である。このエアロゾル生成部3に、搬送管2aを介してキャリアガスを導入することにより、原料の粉体が噴き上げられてエアロゾルが生成される。
【0016】
エアロゾル生成部3には、エアロゾル生成部3に微小な振動や、比較的ゆっくりとした運動を与える容器駆動部3aが設けられている。ここで、エアロゾル生成部3に配置された原料の粉体(1次粒子)は、時間の経過と共に、静電気力やファンデルワールス力等によって結合して凝集粒子を形成してしまう。その中でも、数μm〜数mmの巨大な凝集粒子は質量も大きいため容器の底部に溜まるが、それらがキャリアガスの出口付近(搬送管2aの出口付近)に留まると、キャリアガスによって1次粒子を噴き上げることができなくなる。そのため、凝集粒子が1箇所に留まらないように、容器駆動部3aは、エアロゾル生成部3に振動等を与えることにより、その内部に配置された粉体を攪拌している。
【0017】
ノズル5は、エアロゾル生成部3から搬送管2bを介して供給されたエアロゾルを基板20に向けて高速で噴射する。ノズル5は、所定の形状及び大きさ(例えば、長さ5mm、幅0.5mm程度)を有する開口を有している。
基板ホルダ6には、構造物が形成される基板20を保持するために用いられる治具11、治具マスク13、及び、ボルト14が設けられている。また、基板ホルダ6には基板ホルダ駆動部6aが設けられており、これにより、ノズル5と基板20との相対位置及び相対速度が3次元的に制御される。
排気ポンプ7は、成膜室4の内部を排気することによって所定の真空度に保っている。
【0018】
測定部8は、基板20上に形成されている下部電極22面の電位と接地電位との間の電位差を測定する。即ち、接地電位を基準として、下部電極22面の電位を測定する。本実施形態においては、測定部8として、アジレントテクノロジー社製のオシロスコープを使用している。
また、演算部9は、測定部8によって測定された下部電極22面の電位に基づいて、基板20上に作製中の構造物の成膜レート及びビッカース硬度を求めると共に、構造物の堆積高さ(膜厚)等を算出する。これらの算出原理については、後で説明する。
さらに、表示部10は、CRTやLCD等の表示装置を含んでおり、測定部8によって測定された下部電極22面の電位や、演算部9によって算出された膜厚等を表示装置に表示する。
【0019】
図2の(a)は、図1に示す基板20及び基板ホルダ6の周辺を拡大して示す断面図であり、図2の(b)は、同平面図である。
図2の(a)に示すように、基板20は、例えば、シリコン(Si)によって形成されている。また、基板20上には、酸化シリコン(SiO2)膜(絶縁膜)21と、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO2)、イリジウム(Ir)、酸化イリジウム(IrO2)、酸化タンタル(TaO3)、白金(Pt)等の金属膜を含む下部電極22が予め形成されている。
【0020】
また、基板ホルダ6は、接地電位に接続されている。治具11の上には基板20が戴置されており、その上に、治具マスク13が配置されている。治具11及び治具マスク13は、例えば、ジルコニア、アルミナ、ガラス等の絶縁物によって形成されている。また、治具マスク13には、下部電極22に接触して成膜面の電位を測定するために用いられる導線12が配置されている。この治具マスク13を支持するボルト14を締めることにより、基板20の位置が固定される。それにより、基板20が接地電位から電気的に浮いた状態で保持されると共に、下部電極22と導線12が電気的に接続される。なお、基板ホルダ6内に、基板20を所定の温度に保つためのヒーターを設けても良い。
図2の(b)に示すように、治具マスク13には開口が形成されている。この開口によって露出した基板20上の領域が成膜領域23となる。
【0021】
再び、図1を参照すると、このような成膜装置において、下部電極22等が形成された基板20を基板ホルダ6に配置すると共に、排気ポンプ7を用いて成膜室4の内部を所定の真空度まで排気する。また、エアロゾル生成部3に、所定の粒子径を有する原料の粉体を配置する。そして、搬送管2aを介してガスボンベから窒素等のキャリアガスを供給することにより、エアロゾル生成部3において原料の粉体が噴き上げられてエアロゾルが生成される。このエアロゾルは、搬送管2bを介してノズル5に供給され、ノズル5から基板20に向けて噴射される。それにより、エアロゾルに含まれる原料の粉体が下部電極22に衝突して、下部電極22の上に付着して膜が形成される。その間に、測定部8は、下部電極22の電位、即ち、成膜面の電位を測定しており、演算部9は、測定部8による測定値に基づいて、成膜レート及びビッカース硬度を求めると共に、形成された構造物の膜厚を見積る。
【0022】
次に、図1に示す演算部9における膜厚等の算出原理について、図3〜図10を参照しながら説明する。図3〜図8は、図1に示す下部電極22の電位(即ち、成膜面の電位)の変化を示している。
以下においては、構造物としてPZT膜を形成する場合について説明する。原料の粉体としては、平均粒子径0.3μmのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)を用いている。また、以下において、成膜レートとは、ノズルに対して基板を0.5mm/sで移動させることによって形成された膜の厚さを、ノズルの往復回数で除することによって求められた値のことである。さらに、形成された膜の膜質は、ビッカース硬度によって評価されている。即ち、ビッカース硬度が高いほど、緻密で強固な膜であることを示しており、ビッカース硬度が低いほど、多くの気孔を含む軟らかい膜であることを示している。
【0023】
図3は、基板20上にPZT膜を形成していない状態における成膜面の電位の変化を示している。即ち、図1に示す成膜装置を駆動しているものの、ノズル5を図2の(b)に示す成膜領域23からずらすことにより、エアロゾルを治具マスク13部分のみに吹き付けている。図3に示すように、この場合には、電位の変化はほとんど見られない。
【0024】
図4は、基板20上にPZT膜を形成している状態における成膜面の電位の変化を示している。図4に示すように、成膜中(約1000msec〜約2800msec、約3200msec〜約5200msec、約6500msec〜約8200msec、及び、約9000msec〜)においては、約0.5Vの電位が発生していた。なお、図4の約1000msec、約3000msec、約5800msec、及び、8500msec付近において電位が0V付近まで低下するのは、ノズル5に対して基板20の進行方向を反転する際にノズル5が成膜領域23から外れるため、PZT膜が形成されていないからである。
【0025】
この場合に、形成されたPZT膜の成膜レートは、約1μm/往復であった。また、形成されたPZT膜のビッカース硬度を測定したところ、約620であった。このような高いビッカース硬度が得られたことから、図4に示す場合には、原料の粉体が数十nm程度に破砕し、破砕面が下層に付着するメカノケミカル反応が成膜中に生じており、原料の粉体が互いに強固に結合しながら堆積したといえる。
図3と図4とを比較して明らかなように、基板20上に成膜を行うことにより、成膜面に所定の電位が発生する。
【0026】
図5は、図3に示す場合よりもエアロゾル濃度を低くすることにより、成膜レートを低下させた場合における成膜面の電位の変化を示している。図5に示すように、成膜中に発生した電位は、約0.25Vであった。また、形成されたPZT膜の成膜レートは、約0.5μm/往復であり、ビッカース硬度は、約600であった。
【0027】
図6は、図3に示す場合よりもエアロゾル濃度を高くすることにより、成膜レートを高くした場合における成膜面の電位の変化を示している。図6に示すように、成膜中に発生した電位は、約1Vであった。また、形成されたPZT膜の成膜レートは、約2μm/往復であり、ビッカース硬度は、約600であった。なお、図6において、約1000msec及び約8500msec付近に見られる電位の落ち込みはノイズである。
【0028】
図7は、図6に示す場合よりもエアロゾル濃度をさらに高くした場合における成膜面の電位の変化を示している。図7に示すように、成膜中には約0.5Vの電位が発生していたが、多くのノイズも発生していた。また、形成されたPZT膜の成膜レートは、約3μm/往復であり、ビッカース硬度は、約400であった。図4〜図6に示す場合と比較してビッカース硬度が低下していることから、この場合には、メカノケミカル反応は生じているものの、その発生割合は図4〜図6に示す場合よりも低下しており、部分的に原料の粉体の結合が弱くなっているものと考えられる。
【0029】
図8は、図7に示す場合よりもエアロゾル濃度をさらに高くした場合における成膜面の電位の変化を示している。図8に示すように、この場合には、成膜中であるにもかかわらず、電位の発生はほとんど確認することができなかった。また、形成されたPZT膜の成膜レートは、約10μm/往復であり、ビッカース硬度は、約200であった。ビッカース硬度が大幅に低下したことから、この場合に形成されたPZT膜は、一般には粉体を押し固めることによって形成され、多くの気孔を含む圧粉体の状態であったと考えられる。このようなPZT膜が形成されたのは、エアロゾル濃度を高くしたことにより、搬送されるエアロゾル中において原料の粉体が凝集してしまったため、成膜面においてメカノケミカル反応が促進されなかったためと考えられる。
【0030】
図9は、図3〜図8に示す場合における成膜レートと成膜面の電位との関係を、成膜面の電位が1.2V以下の範囲で示している。
図9に示すように、成膜中にメカノケミカル反応が生じている場合(成膜レート=0.25μm/往復、0.5μm/往復、1μm/往復)には、成膜レートと成膜面の電位との間に相関が見られ、成膜レートに比例して成膜面の電位が変化する。しかしながら、図6に示すように、成膜レートが高くなるのに伴って、ノイズ成分が発生し易くなる。また、図7に示すように、成膜レートをさらに高くすると、メカノケミカル反応が生じ難くなり、成膜面の電位は低下して、成膜レートと成膜面の電位との相関が見られなくなる。さらに、図8に示すように、成膜レートを極端に高くすると(成膜レート=10μm/往復)、成膜面において電位が発生しなくなり、その結果形成されたPZT膜は圧粉体の状態となってしまう。
【0031】
図10は、形成されたPZT膜のビッカース硬度と、圧電歪定数d31との関係を示している。図4〜図6に示す場合におけるように、600程度のビッカース硬度を有するPZT膜は、圧電歪定数d31が120程度となった。即ち、良好な圧電特性を有しているといえる。しかしながら、図7に示す場合におけるように、ビッカース硬度が400付近まで低下すると、それに伴って、圧電歪定数d31は100以下まで低下した。さらに、図8に示す場合におけるように、ビッカース硬度が200程度の場合には、リークが発生してしまったため圧電歪定数d31を測定することができなかった。このように、ビッカース硬度が低い状態においては、圧電特性の劣化を確認することができた。
【0032】
以上説明したように、成膜レートをエアロゾル濃度によって制御する場合には、良質な膜を形成できる適切な成膜レートの範囲(即ち、エアロゾル濃度の範囲)が存在する。また、そのような範囲内(例えば、成膜面の電位が1V以下)においては、成膜レートと成膜面の電位とが比例関係を示す。そこで、成膜面の電位を成膜中に測定し、その測定値が所定の範囲に保たれるように、成膜装置の各部を調節することにより、緻密で強固、且つ、膜厚が精密に制御された良質な膜を形成することが可能となる。また、成膜レートに基づいて膜厚を見積ることにより、所望の厚さを有する構造物を形成することが可能となる。
【0033】
再び、図1を参照すると、演算部9は、成膜面の電位と成膜レートとの関係、及び、成膜面の電位とビッカース硬度との関係を表すテーブル又は関係式や、成膜面の電位の時間積分値と成膜レートとに基づいて膜厚を算出するための関係式等を有している。これらのテーブル等は、原料の粉体の種類や粒子径、基板材料、基板の移動速度、成膜温度等の条件に応じて作成されている。演算部9は、測定部8によって測定された成膜面の電位と、上記のテーブル等とに基づいて、作製中の構造物の成膜レート、ビッカース硬度、及び、膜厚等を求める。演算部9によって求められた値は、表示部10において表示される。
【0034】
オペレータは、表示部10に表示された成膜面の電位、成膜レート、ビッカース硬度、膜厚等に基づいて、所望の膜厚及び膜質が得られるように、成膜装置の各部を手動で調節する。調節される対象となるのは、例えば、以下の部分である。即ち、圧力調整部1aを制御して、エアロゾル生成部3に供給されるキャリアガスの流量を調節したり、容器駆動部3aを制御してエアロゾル生成部3に適切な振動を与えることにより、エアロゾル濃度を調節することができる。また、オペレータは、基板ホルダ駆動部6aを制御して基板ホルダ6の移動速度を調節しても良い。さらに、成膜面の電位にノイズ成分が多く含まれる場合には、エアロゾル濃度が高いことを表しているので、そのような場合に、オペレータは、圧力調整部1a又は容器駆動部3aを調節することにより、エアロゾル濃度を低くする。
【0035】
このように、本実施形態によれば、従来、セラミック構造物の膜厚を時間や目視等により経験的又は感覚的に調整していたのに対して、成膜面の電位に基づいて成膜の進行状態を数値化して示すことにより、膜厚をミクロンオーダーで精密且つ客観的に制御したり、膜質を一定以上のレベルに保つことが可能となる。
【0036】
本実施形態においては、PZT膜を形成する場合について説明したが、本発明は、PZT等の酸化物の他にも、脆性材料一般や、鉛系圧電材料や、KNbO3等の非鉛系圧電材料や、BaTiO3等の誘電体材料や、Al2O3、AlN、ZrO2等の絶縁材料や、PLZT等の光学材料等、AD法によって形成可能な材料であれば、様々なセラミック構造物を作製する場合にも適用することもできる。その場合には、セラミック構造物の種類や、使用する原料の粉体の粒子径等に応じて、図3〜図10に示すようなデータを予め取得しておくことにより、演算部8にテーブルを用意しておけば良い。
【0037】
なお、図8に示す場合のように、ビッカース硬度が低く(例えば、500以下)、且つ、形成された膜が白く乱反射している場合には、膜は、粉を押し固めた圧粉体の状態となっている。このような場合には、成膜レートが極端に上昇すると共に、成膜面の電位が観察されなくなる。そのため、圧粉体の状態と通常のメカノケミカル反応による成膜の状態とは、成膜中に判別することができる。また、テーブル等を作成する際には、エアロゾル濃度を検出することにより、圧粉体が形成されている状態におけるデータを除外することが望ましい。
【0038】
次に、本発明の第2の実施形態に係る成膜装置について説明する。図11は、本実施形態に係る成膜装置を示す模式図である。
図11に示す成膜装置は、図1に示す表示部10の替わりに、制御部15を有している。その他の構成については、図1に示す成膜装置と同様である。
【0039】
制御部15は、測定部8によって測定された成膜面の電位を用いて演算部9により求められた成膜レート、ビッカース硬度、及び、膜厚等に基づいて、予め設定された膜厚及び膜質を有する構造物が得られるように、成膜装置各部の動作を制御する。即ち、制御部15は、圧力調整部1aを制御することによりキャリアガスの流量を変化させたり、容器駆動部3aを制御することによりエアロゾル濃度を調節したり、基板ホルダ駆動部6aを制御することによりノズル5に対する基板20の速度を調節する。また、制御部15は、形成された膜の厚さが、予め設定された値に至ると、成膜を終了するように、成膜装置の各部を制御する。さらに、成膜面の電位にノイズ成分が多く含まれている場合には、制御部15は、エアロゾル濃度を適切な範囲まで低くするように、圧力調整部1a又は容器駆動部3aを調節する。
このように、成膜面の電位に基づいて得られた成膜レート等の値を成膜装置の各部にフィードバックすることにより、形成される構造物の膜質を維持しつつ、その厚さを精密に自動制御することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る成膜装置の変形例として、図11に示す成膜装置に対して、図1に示す表示部10を設けても良い。その場合には、制御部15による自動制御と、表示部10の画面を参照することによるユーザ制御との両方を行うことが可能になる。
【0041】
以上説明したように、本発明の第1及び第2の実施形態によれば、エアロゾル濃度に応じて変化する成膜レートを、長時間に渡って均一に保つことが可能になる。それにより、構造物の大面積化や、構造物の厚膜化や、膜厚ムラの解消を促進することができ、それに伴い、構造体の設計自由度を増すことが可能となる。例えば、膜厚が均一になるように精密に制御された圧電体を用いることにより、複数の圧電素子の印加電圧を均一にすることができるので、品質の安定した圧電アクチュエータを、高い歩留まりで製造することができる。或いは、膜厚が精密に制御された圧電体を超音波トランスデューサに適用することにより、効率良く超音波を送信すると共に、高い感度で超音波信号を検出できる超音波用探触子を製造できる。この場合には、超音波画像の画質を向上させることが可能になる。さらに、そのような圧電体をインクジェットヘッドに適用する場合には、より高画質な画像を表現できるようになるのに加えて、印刷可能な画像サイズを大型化することも可能になる。
【0042】
以上説明した本発明の第1及び第2の実施形態においては、緻密で強固な膜を形成するために、成膜装置の各部を制御しているが、制御方法を変化させることにより、所望の特性を有する膜を形成することも可能である。例えば、軟らかい構造物を作製したい場合には、成膜面の電位に応じて各部を制御してエアロゾル濃度を高くすることにより、メカノケミカル反応を抑制すれば、多くの気孔を含む膜を形成することができる。或いは、エアロゾル濃度を段階的又は連続的に変化させるように、成膜面の電位に応じて各部を制御することにより、形成された膜のビッカース硬度を、段階的又は連続的に変化させることができる。そのような傾斜的に変化する特性を有する構造物は、応力緩和層やバッファー層として利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、セラミックス等の構造物を形成する際に用いられる成膜装置において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す基板ホルダの周辺を拡大して示す図である。
【図3】未成膜状態における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図4】成膜レートが1μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図5】成膜レートが0.5μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図6】成膜レートが2μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図7】成膜レートが3μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図8】成膜レートが10μm/往復の場合における成膜面の電位の変化を示す図である。
【図9】成膜レートと成膜面の電位との関係を示す図である。
【図10】PZT膜のビッカース硬度と圧電歪定数d31との関係を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ガスボンベ
1a 圧力調整部
2a、2b 搬送管
3 エアロゾル生成部
3a 容器駆動部
4 成膜室
5 ノズル
6 基板ホルダ
6a 基板ホルダ駆動部
7 排気ポンプ
8 測定部
9 演算部
10 表示部
11 治具
12 導線
13 治具マスク
14 ボルト
15 制御部
20 基板
21 酸化シリコン膜(絶縁膜)
22 下部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の粉体を配置する容器と、
前記容器において、該原料の粉体をガスによって噴き上げることにより、エアロゾルを生成するガス導入手段と、
構造物が形成される基板を保持する保持手段と、
前記容器において生成されたエアロゾルを前記基板に向けて噴射するノズルと、
前記基板上の成膜面における電位を測定する測定手段と、
を具備する成膜装置。
【請求項2】
前記測定手段が、接地電位を基準として前記基板上の成膜面における電位を測定する、請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記測定手段によって測定された前記成膜面における電位に基づいて、前記ノズルから噴射されたエアロゾルを前記基板上に堆積させることによって形成された構造物の堆積高さ、及び/又は、前記構造物の緻密度を算出する演算手段と、
前記演算手段によって算出された前記構造物の堆積高さ、及び/又は、前記構造物の緻密度を表示する表示手段と、
をさらに具備する請求項1又は2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記測定手段の測定結果に基づいて、前記構造物の堆積高さ、及び/又は、前記構造物の緻密度を制御する制御手段をさらに具備する請求項1〜3のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記測定手段の測定結果に基づいて前記ガス導入手段を制御することにより、前記容器に導入されるガスの流量を調節して前記ノズルから噴射されるエアロゾル流量を変更させる、請求項4記載の成膜装置。
【請求項6】
前記容器に、振動と所定の運動との内の少なくとも一方を与える駆動手段をさらに具備し、
前記制御手段が、前記測定手段の測定結果に基づいて前記駆動手段を制御することにより、前記容器に配置されている原料の粉体を攪拌させて前記ノズルに供給されるエアロゾルに含まれる原料の粉体の量を変更させる、請求項4又は5記載の成膜装置。
【請求項7】
前記制御手段が、前記測定手段の測定結果に基づいて前記保持手段を制御することにより、前記ノズルと前記基板との相対速度を変更させる、請求項4〜6のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項1】
原料の粉体を配置する容器と、
前記容器において、該原料の粉体をガスによって噴き上げることにより、エアロゾルを生成するガス導入手段と、
構造物が形成される基板を保持する保持手段と、
前記容器において生成されたエアロゾルを前記基板に向けて噴射するノズルと、
前記基板上の成膜面における電位を測定する測定手段と、
を具備する成膜装置。
【請求項2】
前記測定手段が、接地電位を基準として前記基板上の成膜面における電位を測定する、請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記測定手段によって測定された前記成膜面における電位に基づいて、前記ノズルから噴射されたエアロゾルを前記基板上に堆積させることによって形成された構造物の堆積高さ、及び/又は、前記構造物の緻密度を算出する演算手段と、
前記演算手段によって算出された前記構造物の堆積高さ、及び/又は、前記構造物の緻密度を表示する表示手段と、
をさらに具備する請求項1又は2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記測定手段の測定結果に基づいて、前記構造物の堆積高さ、及び/又は、前記構造物の緻密度を制御する制御手段をさらに具備する請求項1〜3のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記測定手段の測定結果に基づいて前記ガス導入手段を制御することにより、前記容器に導入されるガスの流量を調節して前記ノズルから噴射されるエアロゾル流量を変更させる、請求項4記載の成膜装置。
【請求項6】
前記容器に、振動と所定の運動との内の少なくとも一方を与える駆動手段をさらに具備し、
前記制御手段が、前記測定手段の測定結果に基づいて前記駆動手段を制御することにより、前記容器に配置されている原料の粉体を攪拌させて前記ノズルに供給されるエアロゾルに含まれる原料の粉体の量を変更させる、請求項4又は5記載の成膜装置。
【請求項7】
前記制御手段が、前記測定手段の測定結果に基づいて前記保持手段を制御することにより、前記ノズルと前記基板との相対速度を変更させる、請求項4〜6のいずれか1項記載の成膜装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−159137(P2006−159137A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357042(P2004−357042)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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