説明

振動デバイス及び電子機器

【課題】振動特性の劣化を回避しつつ、振動片の固定強度を確保し、所期の耐衝撃性能を達成することができる振動デバイスの提供。
【解決手段】水晶振動片10の固定部14,15は、引き出し電極16,17を有する第1固定領域14a,15aと、平面視において、第1固定領域14a,15aを両側から挟む第2固定領域14b,15bとを含み、水晶振動片10の第1固定領域14a,15aとパッケージベース21の固定面24とが、平面視において、第1固定領域14a,15aと重なる範囲内で導電性接着剤40によって固着されると共に、第2固定領域14b,15bとパッケージベース21の固定面24とが、非導電性接着剤41によって固着され、パッケージベース21は、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部が、平面視において、第1固定領域14a,15aと重なる範囲を回避した位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイス及び振動デバイスを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パッケージ(以下、パッケージベースという)の一方の主面に凹部を持ち、凹部の対向する辺に沿って凹部内に段部が形成され、段部に圧電振動子(以下、振動片という)を載置し、振動片が固着材で固着される振動片の支持構造において、一方の段部には、凹部の内壁との間に切り欠き部が形成され、他方の段部には、一方の段部の切り欠き部から見てパッケージベースの対角線方向に別の切り欠き部が設けられている構造の振動デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−87924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の振動デバイスは、振動片が段部の電極パッド(以下、マウント電極という)に固着される際に、固着材としての導電性接着剤が、励振電極から引き出された引き出し電極の形成範囲を越えて、振動片の短辺方向の殆ど全域に広がっている。
これにより、振動デバイスは、振動片の固定強度が確保され、所期の耐衝撃性能が達成されている。
【0005】
ところで、振動デバイスは、パッケージベースの他方の主面側(凹部の裏面側、外部実装面側)の、平面視において、一方の引き出し電極、導電性接着剤と重なる範囲内に、他方の引き出し電極と固着されたマウント電極に接続された配線または端子が設けられていることがある。
この場合、振動デバイスは、一方の引き出し電極、導電性接着剤と、上記配線または端子とがパッケージベースを挟んで近接する。
これにより、振動デバイスは、一方の引き出し電極に供給される信号と、上記配線または端子に供給される信号(上記信号とは極性、電位などが異なる)とが互いに干渉し合い、異なる信号同士の結合などの不具合が発生し、振動特性が劣化する虞がある。
【0006】
また、上記振動デバイスは、例えば、振動片を発振させる発振回路を備えた発振器を構成することも可能である。
この場合、振動デバイスは、上記の配線または端子に加えて、発振回路と接続される配線または端子が、パッケージベースの他方の主面側の、平面視において、各引き出し電極、導電性接着剤と重なる範囲内に設けられることがある。
これにより、発振回路を備えた振動デバイスは、異なる信号同士の干渉が更に発生し易くなり、振動特性が劣化する虞がある。
【0007】
この問題の対策としては、例えば、導電性接着剤の塗布範囲を狭くすることが考えられる。しかしながら、この対策では、導電性接着剤の塗布範囲を狭くすることにより、振動片の固着範囲も縮小されてしまうことから、振動片の固定強度が低下し、所期の耐衝撃性能を達成できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]本適用例にかかる振動デバイスは、励振電極が設けられた振動部と該振動部の一端または両端から延在する固定部とを有する振動片と、前記振動片が搭載されるベース部と、を備え、前記振動片の前記固定部は、前記励振電極から引き出された引き出し電極を有する第1固定領域と、非導電性領域であって、平面視において、前記第1固定領域を両側から挟む第2固定領域と、を含み、前記振動片の前記第1固定領域と前記ベース部における前記振動片を固定する固定面とが、平面視において、前記第1固定領域と重なる範囲内で導電性接着剤によって固着されると共に、前記振動片の前記第2固定領域と前記ベース部の前記固定面とが、非導電性接着剤によって固着され、前記ベース部は、前記引き出し電極に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部が、平面視において、前記第1固定領域と重なる範囲を回避した位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
これによれば、振動デバイスは、平面視において、振動片の第1固定領域とベース部の固定面とが、第1固定領域と重なる範囲内で導電性接着剤によって固着され、第1固定領域を両側から挟む第2固定領域とベース部の固定面とが、非導電性接着剤によって固着されている。そして、振動デバイスのベース部には、引き出し電極に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部が、平面視において、第1固定領域と重なる範囲を回避した位置に設けられている。
したがって、振動デバイスは、ベース部における第1固定領域と重なる範囲内に、引き出し電極に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部がないことから、異なる信号同士の干渉が発生せず、信号同士の結合などの不具合が発生し難いことにより、振動特性の劣化を回避することができる。
加えて、振動デバイスは、振動片が第1固定領域だけではなく、第2固定領域でもベース部の固定面に固着されていることから、振動特性の劣化を回避しつつ、振動片の固定強度を確保し、所期の耐衝撃性能を達成することができる。
また、振動デバイスは、第2固定領域が、第1固定領域を両側から挟んでいることから、第2固定領域と重なる非導電性接着剤によって、第1固定領域と重なる導電性接着剤の周囲へのはみ出しを抑制することができる。
【0011】
[適用例2]上記適用例にかかる振動デバイスにおいて、前記ベース部は、前記引き出し電極に供給される信号と同じ信号が供給される導電部が、平面視において、前記第2固定領域と重なる範囲を回避した位置に設けられ、前記引き出し電極に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部の少なくとも一部が、平面視において、前記第2固定領域と重なる範囲内に設けられていることが好ましい。
【0012】
これによれば、振動デバイスは、ベース部の、引き出し電極に供給される信号と同じ信号が供給される導電部が、平面視において、第2固定領域と重なる範囲を回避した位置に設けられ、引き出し電極に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部の少なくとも一部が、第2固定領域と重なる範囲内に設けられている。
このことから、振動デバイスは、異なる信号同士の干渉などによる振動特性の劣化を回避しつつ、ベース部のスペースを効率的に使用することができる。
【0013】
[適用例3]上記適用例にかかる振動デバイスにおいて、前記導電性接着剤のベース樹脂の種類と前記非導電性接着剤のベース樹脂の種類とが、同一であることが好ましい。
【0014】
これによれば、振動デバイスは、導電性接着剤のベース樹脂の種類と非導電性接着剤のベース樹脂の種類とが同一であることから、例えば、両接着剤の熱膨張率が殆ど同じである。
したがって、振動デバイスは、両接着剤のベース樹脂の種類が異なる(熱膨張率が異なる)場合と比較して、固着部に発生する熱応力に起因する振動片の歪みを抑制することができる。この結果、振動デバイスは、振動特性の劣化を更に回避することができる。
【0015】
[適用例4]上記適用例にかかる振動デバイスにおいて、前記ベース部に前記振動片を発振させる発振回路を更に搭載し、発振器を構成したことが好ましい。
【0016】
これによれば、振動デバイスは、ベース部に振動片を発振させる発振回路を更に搭載し、発振器を構成したことから、振動特性の劣化を回避しつつ、振動片の固定強度を確保し、所期の耐衝撃性能を達成可能な発振器を提供することができる。
【0017】
[適用例5]本適用例にかかる電子機器は、上記適用例のいずれかに記載された振動デバイスを備えたことを特徴とする。
【0018】
これによれば、電子機器は、上記適用例のいずれかに記載された効果を奏する電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線での断面図、(c)は(a)のB−B線での断面図。
【図2】水晶発振器のパッケージベースの配線を説明する模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線での断面図、(c)は(a)のD−D線での断面図。
【図3】第2実施形態の水晶振動子の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線での断面図、(c)は(a)のF−F線での断面図。
【図4】第3実施形態の携帯電話を示す模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
(第1実施形態)
最初に、振動デバイスの一例として、水晶発振器について説明する。
図1は、第1実施形態の水晶発振器の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、リッド(蓋体)側から俯瞰した平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線での断面図、図1(c)は、図1(a)のB−B線での断面図である。なお、平面図では、便宜上リッド、内部配線を省略してある。また、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
【0022】
図1に示すように、水晶発振器1は、振動片としての水晶振動片10と、水晶振動片10が収容されるパッケージ20と、水晶振動片10を発振させる発振回路としてのICチップ30と、を備えている。
【0023】
水晶振動片10は、水晶の原石などから所定の角度で切り出された、略矩形平板状のATカット型水晶振動片である。
水晶振動片10は、両主面(水晶の原石などから所定の角度で切り出された面に沿った平面)18,19に略矩形状の励振電極11,12が設けられ、所定の周波数で厚みすべり振動をする振動部13と、振動部13の両端から延在する固定部14,15と、を一体で有している。
【0024】
固定部14,15は、励振電極11,12から互いに反対方向に引き出された引き出し電極16,17を有する第1固定領域14a,15aと、引き出し電極16,17のない非導電性領域(絶縁性領域)であって、平面視において、第1固定領域14a,15aを両側から挟む第2固定領域14b,15bと、を含んでいる。
なお、第2固定領域14b,15bは、固定部14と固定部15とを結ぶ方向(水晶振動片10の長辺方向)に対して直交する方向(水晶振動片10の短辺方向)に沿って、第1固定領域14a,15aを両側から挟む構成となっている。
詳述すると、固定部14の2つの第2固定領域14bは、第1固定領域14aを水晶振動片10の短辺方向に沿って両側から挟み、固定部15の2つの第2固定領域15bは、第1固定領域15aを水晶振動片10の短辺方向に沿って両側から挟んでいる。
【0025】
引き出し電極16は、励振電極11から固定部14の第1固定領域14aへ引き出され、水晶振動片10の一方の主面18側から、固定部14の側面(一方の主面18と他方の主面19とを繋ぐ面)を経由して他方の主面19側まで回り込むように形成されている。
一方、引き出し電極17は、励振電極12から固定部15の第1固定領域15aへ引き出され、水晶振動片10の他方の主面19側から、固定部15の側面を経由して一方の主面18側まで回り込むように形成されている。
励振電極11,12及び引き出し電極16,17は、Crを下地層とし、下地層にAuが積層された構成の金属被膜となっている。
【0026】
パッケージ20は、平面形状が略矩形で凹部を有した、ベース部としてのパッケージベース21と、パッケージベース21の凹部を覆う平面形状が略矩形で平板状のリッド22と、を備え、略直方体形状に形成されている。
パッケージベース21には、セラミックグリーンシートを成形して積層し焼成した酸化アルミニウム質焼結体、水晶、ガラス、シリコンなどが用いられる。なお、本実施形態では、4層のセラミックグリーンシートが積層された酸化アルミニウム質焼結体が用いられている。
リッド22には、パッケージベース21と同材料、または、コバール、42アロイ、ステンレス鋼などの金属が用いられている。
【0027】
パッケージベース21には、内底面(凹部の内側の底面)23にICチップ30が搭載され、図示しない接着剤などによって固定されている。
パッケージベース21の、水晶振動片10を搭載し固定する固定面24には、水晶振動片10の引き出し電極16,17と対向する位置に、マウント電極25,26が設けられている。なお、マウント電極25,26の外形サイズは、第1固定領域14a,15a内に収まる大きさが好ましい。
パッケージベース21の内底面23と固定面24との間に設けられた段部21aの上面には、複数(ここでは6個)の内部端子27が設けられている。
パッケージベース21の外底面(内底面23の反対側の面、外部実装面)28には、電子機器などの外部部材に実装される際に用いられる複数(ここでは4個)の外部端子29が設けられている。
【0028】
ここで、図2を併用して、パッケージベース21の配線について説明する。図2は、水晶発振器のパッケージベースの配線を説明する模式図である。図2(a)は、リッド側から俯瞰した平面図、図2(b)は、図2(a)のC−C線での断面図、図2(c)は、図2(a)のD−D線での断面図である。
なお、図2では、リッド、水晶振動片、パッケージベースのリッド側の1層目などを省略してある。また、平面図の○に×印は、スルーホール配線(ビアホール配線でも適用可能)を示す。なお、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
【0029】
図2に示すように、パッケージベース21の四隅の側にある4個の外部端子29は、内部配線27aによって対応する4個の内部端子27と接続されている。また、内部端子27の残り2個は、内部配線27aによってそれぞれ対応するマウント電極25,26と接続されている。なお、パッケージベース21の各層間の導通は、各層に形成されたスルーホール配線27bによって行われる。
【0030】
ここで、内部端子27、外部端子29及び内部配線27a(スルーホール配線27bを含む、以下同様)のうち、引き出し電極16に供給される信号とは異なる信号(例えば、極性が異なる信号、周波数が異なる信号、電位が異なる信号、位相が異なる信号など)が供給される導電部に相当するものは、平面視において、水晶振動片10の第1固定領域14a(マウント電極25)と重なる範囲を回避した位置に設けられている。
また、内部端子27、外部端子29及び内部配線27aのうち、引き出し電極17に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部に相当するものは、平面視において、水晶振動片10の第1固定領域15a(マウント電極26)と重なる範囲を回避した位置に設けられている。
これにより、図1に示すように、例えば、4個の外部端子29は、上記範囲を回避してパッケージベース21の4隅の、一部が水晶振動片10の第2固定領域14b,15bと重なる範囲内に設けられている。
【0031】
内部端子27、外部端子29及び内部配線27aは、Wなどのメタライズ層にNi、Auなどの各被膜をメッキなどの方法により積層した金属被膜からなる。なお、スルーホール配線27b内には、Wなどのメタライズ成分が充填される。
【0032】
水晶振動片10を発振させる発振回路を内蔵したICチップ30は、上述したようにパッケージベース21の内底面23に、接着剤などによって固定されている。
ICチップ30は、複数(ここでは6個)の接続パッド31が、Au、Alなどの金属ワイヤー32により、それぞれ対応する各内部端子27と接続されている。
これにより、内部端子27と接続されている外部端子29のそれぞれは、例えば、電源、出力(所定の周波数出力)、GND、入力(出力ON/OFFの制御入力)の信号端子となる。
【0033】
水晶発振器1は、水晶振動片10の固定部14の第1固定領域14aとパッケージベース21の固定面24のマウント電極25とが、平面視において、第1固定領域14aと重なる範囲内で導電性接着剤40によって固着されると共に、固定部14の第2固定領域14bとパッケージベース21の固定面24とが、非導電性接着剤41によって固着されている。
また、水晶発振器1は、水晶振動片10の固定部15の第1固定領域15aとパッケージベース21の固定面24のマウント電極26とが、平面視において、第1固定領域15aと重なる範囲内で導電性接着剤40によって固着されると共に、固定部15の第2固定領域15bとパッケージベース21の固定面24とが、非導電性接着剤41によって固着されている。
【0034】
導電性接着剤40には、金属フィラー(例えば、Agフィラー)などの導電性物質が混合された、ベース樹脂がエポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系、ビスマレイミド系などのものが用いられる。
非導電性接着剤(絶縁性接着剤)41には、導電性物質が混合されていない、ベース樹脂がエポキシ系、シリコーン系、ポリイミド系、ビスマレイミド系などのものが用いられる。
なお、導電性接着剤40及び非導電性接着剤41のベース樹脂には、固着部に発生する熱応力の観点から同じ種類のものを用いるのが好ましい。
【0035】
導電性接着剤40及び非導電性接着剤41は、ディスペンサーなどの塗布装置で、パッケージベース21の固定面24、マウント電極25,26の所定の位置に所定の量塗布され、水晶振動片10が所定の位置に載置された後、加熱炉、恒温槽、乾燥機などの加熱装置で所定温度(例えば、ベース樹脂がエポキシ系の場合、150℃程度)において所定時間(例えば、ベース樹脂がエポキシ系の場合、30分程度)加熱されることにより硬化する。
【0036】
なお、導電性接着剤40及び非導電性接着剤41は、パッケージベース21の固定面24、マウント電極25,26ではなく、水晶振動片10の固定部14,15に塗布してもよい。
また、導電性接着剤40及び非導電性接着剤41の塗布量は、接着強度、各領域からのはみ出しの程度などを考慮して、適宜設定される。
なお、非導電性接着剤41の第1固定領域14a,15a内へのはみ出しは、引き出し電極16,17とマウント電極25,26との導通に支障がない範囲で許容される。また、導電性接着剤40の第1固定領域14a,15a外へのはみ出しは、原則としてあってはならないが、内部端子27、外部端子29及び内部配線27aのうち、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部に相当するものと、平面視において、重ならない範囲内で許容されてもよい。
なお、上記はみ出しによる導電性接着剤40と非導電性接着剤41との部分的な重なりは、許容される。
【0037】
水晶発振器1は、水晶振動片10がパッケージベース21に固着された状態で、パッケージベース21の凹部がリッド22により覆われ、パッケージベース21とリッド22とがシームリング、低融点ガラス、接着剤などの接合部材20aで接合されることにより、パッケージ20の内部が気密に封止される。
なお、パッケージ20の内部は、減圧状態(真空度の高い状態)または窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが充填された状態となっている。
なお、パッケージは、パッケージベース及びリッドの両方に凹部を有していてもよい。
【0038】
水晶発振器1は、ICチップ30から内部端子27、マウント電極25,26、引き出し電極16,17などを経由して励振電極11,12に印加される駆動信号によって、水晶振動片10の振動部13が所定の周波数(例えば、数MHz〜数十MHz)で発振(共振)する。
そして、水晶発振器1は、この発振に伴って生じる発振信号をICチップ30、内部端子27、出力信号端子に相当する外部端子29などを経由して外部に出力する。
【0039】
上述したように、水晶発振器1は、水晶振動片10の第1固定領域14a,15aとパッケージベース21の固定面24のマウント電極25,26とが、平面視において、第1固定領域14a,15aと重なる範囲内で導電性接着剤40によって固着されると共に、第1固定領域14a,15aを両側から挟む第2固定領域14b,15bとパッケージベース21の固定面24とが、非導電性接着剤41によって固着されている。
そして、水晶発振器1のパッケージベース21には、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部(具体的には、内部端子27、外部端子29及び内部配線27aのうち、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給されるもの)が、平面視において、第1固定領域14a,15aと重なる範囲を回避した位置に設けられている。
【0040】
したがって、水晶発振器1は、パッケージベース21における第1固定領域14a,15aと重なる範囲内に、引き出し電極16,17に供給される信号(駆動信号など)とは異なる信号(電源信号、出力信号、入力信号など)が供給される内部端子27、外部端子29及び内部配線27aがない。
この結果、水晶発振器1は、異なる信号同士の干渉が発生せず、信号同士の結合などの不具合が発生し難いことにより、振動特性の劣化を回避することができる。
加えて、水晶発振器1は、水晶振動片10が第1固定領域14a,15aだけではなく、第2固定領域14b,15bでもパッケージベース21の固定面24に固着されていることから、振動特性の劣化を回避しつつ、水晶振動片10の固定強度を確保し、所期の耐衝撃性能を達成することができる。
特に、接着剤の材料が同じであっても、非導電性接着剤は導電性接着剤よりも接着性の無い金属フィラーが存在しないので高い接着強度が得られ易く、このことが導電性接着剤のみで固着するよりも所期の耐衝撃性能の達成に貢献する。
また、水晶発振器1は、第2固定領域14b,15bが、第1固定領域14a,15aを両側から挟んでいることから、第2固定領域14b,15bと重なる非導電性接着剤41によって、第1固定領域14a,15aと重なる導電性接着剤40の周囲へのはみ出しを抑制することができる。
【0041】
また、水晶発振器1は、パッケージベース21の引き出し電極16,17に供給される信号と同じ信号が供給される導電部としてのマウント電極25,26が、平面視において、第2固定領域14b,15bと重なる範囲を回避した位置に設けられ、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部としての外部端子29の一部が、第2固定領域14b,15bと重なる範囲内に設けられている。
このことから、水晶発振器1は、異なる信号同士の干渉などによる振動特性の劣化を回避しつつ、パッケージベース21のスペースを効率的に使用することができる。
【0042】
また、水晶発振器1は、導電性接着剤40のベース樹脂の種類と非導電性接着剤41のベース樹脂の種類とが同一である場合、例えば、両接着剤の熱膨張率が殆ど同じとなる。
これにより、水晶発振器1は、両接着剤のベース樹脂の種類が異なる(熱膨張率が異なる)場合と比較して、固着部に発生する熱応力に起因する水晶振動片10の歪みを抑制することができる。
この結果、水晶発振器1は、振動特性の劣化を更に回避することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、水晶振動片10の固定部について、振動部13の両端から延在させて一端側に固定部14、一端の反対側の他端側に固定部15を設けたが、振動部13の一端から延在させた固定部14のみ、または他端から延在させた固定部15のみとしてもよい。
この場合、引き出し電極16,17は、励振電極11,12から同じ方向に並ぶように引き出されることになる。この際、引き出し電極16,17は、導電性接着剤40を介して互いに短絡することがないように、十分な間隔を設ける必要がある。なお、この構成は、以下の実施形態にも適用可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、ICチップ30と内部端子27とを金属ワイヤー32を介して接続したが、これに限定するものではなく、例えば、内部端子27を内底面23に設け、ICチップ30を反転させて、接続パッド31と内部端子27とを対向させ、金属バンプ、異方性導電膜などの接合部材を介して両者を接続する構成としてもよい。
【0045】
(第2実施形態)
次に、振動デバイスの他の例として、上記第1実施形態から発振回路(ICチップ)関係要素を省いた水晶振動子について説明する。
【0046】
図3は、第2実施形態の水晶振動子の概略構成を示す模式図である。図3(a)は、リッド側から俯瞰した平面図、図3(b)は、図3(a)のE−E線での断面図、図3(c)は、図3(a)のF−F線での断面図である。なお、平面図では、便宜上リッド、内部配線を省略してある。また、各構成要素の寸法比率は実際と異なる。
なお、上記第1実施形態との共通部分には、同一符号を付して詳細な説明を省略し、上記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0047】
図3に示すように、水晶振動子2は、水晶振動片10と、水晶振動片10が収容されるパッケージ120と、を備えている。
パッケージ120は、平面形状が略矩形で凹部を有した、ベース部としてのパッケージベース121と、パッケージベース121の凹部を覆うリッド22と、を備え、略直方体形状に形成されている。
パッケージベース121には、セラミックグリーンシートを成形して積層し焼成した酸化アルミニウム質焼結体、水晶、ガラス、シリコンなどが用いられる。なお、本実施形態では、3層のセラミックグリーンシートが積層された酸化アルミニウム質焼結体が用いられている。
【0048】
パッケージベース121には、内底面123からリッド22側へ突出する段部121aが設けられている。
パッケージベース121の段部121aの、水晶振動片10を搭載し固定する固定面124には、引き出し電極16,17と対向する位置に、マウント電極125,126が設けられている。なお、マウント電極125,126の外形サイズは、第1固定領域14a,15a内に収まる大きさが好ましい。
パッケージベース121の外底面128には、電子機器などの外部部材に実装される際に用いられる複数(ここでは4個)の外部端子129a〜129dが設けられている。
例えば、外部端子129aは、内部配線127aによってマウント電極125と接続され、外部端子129cは、内部配線127aによってマウント電極126と接続されている。また、外部端子129b,129dは、内部配線127aによってリッド22と接続されているのが外乱対策の観点から好ましい。
なお、パッケージベース121の各層間の導通は、各層に形成されたスルーホール配線127bによって行われる。
【0049】
ここで、外部端子129a〜129d及び内部配線127a(スルーホール配線127bを含む、以下同様)のうち、引き出し電極16に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部に相当するものは、平面視において、水晶振動片10の第1固定領域14a(マウント電極125)と重なる範囲を回避した位置に設けられている。
また、外部端子129a〜129d及び内部配線127aのうち、引き出し電極17に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部に相当するものは、平面視において、水晶振動片10の第1固定領域15a(マウント電極126)と重なる範囲を回避した位置に設けられている。
例えば、外部端子129b,129dは、上記範囲を回避してパッケージベース121の隅の、一部が水晶振動片10の第2固定領域14b,15bと重なる範囲内に設けられている。
なお、外部端子129及び内部配線127aは、Wなどのメタライズ層にNi、Auなどの各被膜をメッキなどの方法により積層した金属被膜からなる。なお、スルーホール配線127b内には、Wなどのメタライズ成分が充填される。
【0050】
水晶振動子2は、水晶振動片10の固定部14の第1固定領域14aとパッケージベース121の固定面124のマウント電極125とが、平面視において、第1固定領域14aと重なる範囲内で導電性接着剤40によって固着されると共に、固定部14の第2固定領域14bとパッケージベース121の固定面124とが、非導電性接着剤41によって固着されている。
また、水晶振動子2は、水晶振動片10の固定部15の第1固定領域15aとパッケージベース121の固定面124のマウント電極126とが、平面視において、第1固定領域15aと重なる範囲内で導電性接着剤40によって固着されると共に、固定部15の第2固定領域15bとパッケージベース121の固定面124とが、非導電性接着剤41によって固着されている。
【0051】
導電性接着剤40及び非導電性接着剤41は、ディスペンサーなどの塗布装置で、パッケージベース121の固定面124、マウント電極125,126の所定の位置に所定の量塗布され、水晶振動片10が所定の位置に載置された後、加熱炉、恒温槽、乾燥機などの加熱装置で所定温度において所定時間加熱されることにより硬化する。
なお、非導電性接着剤41の第1固定領域14a,15a内へのはみ出しは、引き出し電極16,17とマウント電極125,126との導通に支障がない範囲で許容される。また、導電性接着剤40の第1固定領域14a,15a外へのはみ出しは、原則としてあってはならないが、外部端子129a〜129d及び内部配線127aのうち、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部に相当するものと、平面視において、重ならない範囲内で許容されてもよい。
なお、上記はみ出しによる導電性接着剤40と非導電性接着剤41との部分的な重なりは、許容される。
【0052】
水晶振動子2は、水晶振動片10がパッケージベース121に固着された状態で、パッケージベース121の凹部がリッド22により覆われ、パッケージベース121とリッド22とがシームリング、低融点ガラス、接着剤などの接合部材20aで接合されることにより、パッケージ120の内部が気密に封止される。
なお、外部端子129b,129dがリッド22と接続(導通)される場合、リッド22及び接合部材20aには、導電性を有する材料が用いられる。
なお、パッケージは、平板状のパッケージベースと凹部を有するリッドなどから構成されていてもよい。また、パッケージは、パッケージベース及びリッドの両方に凹部を有していてもよい。
【0053】
水晶振動子2は、外部端子129a,129c、マウント電極125,126、引き出し電極16,17などを経由して励振電極11,12に印加される駆動信号によって、水晶振動片10の振動部13が所定の周波数で発振する。
【0054】
上述したように、水晶振動子2は、水晶振動片10の第1固定領域14a,15aとパッケージベース121の固定面124のマウント電極125,126とが、平面視において、第1固定領域14a,15aと重なる範囲内で導電性接着剤40によって固着されると共に、第2固定領域14b,15bとパッケージベース121の固定面124とが、非導電性接着剤41によって固着されている。
そして、水晶振動子2のパッケージベース121には、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部(具体的には、外部端子129a〜129d及び内部配線127aのうち、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給されるもの)が、平面視において、第1固定領域14a,15aと重なる範囲を回避した位置に設けられている。
【0055】
したがって、水晶振動子2は、パッケージベース121における第1固定領域14a,15aと重なる範囲内に、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給される外部端子129b,129d及び外部端子129b,129dと接続される内部配線127aがない。
この結果、水晶振動子2は、異なる信号同士の干渉が発生せず、信号同士の結合などの不具合が発生し難いことにより、振動特性の劣化を回避することができる。
加えて、水晶振動子2は、水晶振動片10が第1固定領域14a,15aだけではなく、第2固定領域14b,15bでもパッケージベース121の固定面124に固着されていることから、振動特性の劣化を回避しつつ、水晶振動片10の固定強度を確保し、所期の耐衝撃性能を達成することができる。
また、水晶振動子2は、第2固定領域14b,15bが、第1固定領域14a,15aを両側から挟んでいることから、第2固定領域14b,15bと重なる非導電性接着剤41によって、第1固定領域14a,15aと重なる導電性接着剤40の周囲へのはみ出しを抑制することができる。
【0056】
また、水晶振動子2は、パッケージベース121の、引き出し電極16,17に供給される信号と同じ信号が供給される導電部としてのマウント電極125,126が、平面視において、第2固定領域14b,15bと重なる範囲を回避した位置に設けられ、引き出し電極16,17に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部としての外部端子129b,129dの一部が、第2固定領域14b,15bと重なる範囲内に設けられている。
このことから、水晶振動子2は、異なる信号同士の干渉などによる振動特性の劣化を回避しつつ、パッケージベース121のスペースを効率的に使用することができる。
【0057】
また、水晶振動子2は、導電性接着剤40のベース樹脂の種類と非導電性接着剤41のベース樹脂の種類とが同一である場合、例えば、両接着剤の熱膨張率が殆ど同じとなる。
これにより、水晶振動子2は、両接着剤のベース樹脂の種類が異なる(熱膨張率が異なる)場合と比較して、固着部に発生する熱応力に起因する水晶振動片10の歪みを抑制することができる。
この結果、水晶振動子2は、振動特性の劣化を更に回避することができる。
【0058】
なお、水晶振動子2は、外部端子129b,129dを省くことも可能である。この場合、水晶振動子2は、外部端子129a,129cを水晶振動片10の短辺方向に沿って外部端子129b,129dが設けられていた領域まで延在させることができる。
これにより、水晶振動子2は、外部端子129a,129cが第1固定領域14a,15aと重なることになるが、外部端子129a,129cには、引き出し電極16,17に供給される信号と同じ信号が供給されるので、信号同士の結合などの不具合は発生しない。
【0059】
(第3実施形態)
次に、上記第1実施形態及び第2実施形態で述べた振動デバイス(水晶発振器、水晶振動子)を備えた電子機器としての携帯電話について説明する。
図4は、第3実施形態の携帯電話を示す模式斜視図である。
図4に示す携帯電話700は、上記第1実施形態で述べた水晶発振器1または第2実施形態で述べた水晶振動子2を、基準クロック発振源などとして備え、更に液晶表示装置701、複数の操作ボタン702、受話口703、及び送話口704を備えて構成されている。
【0060】
上述した水晶発振器1、水晶振動子2に代表される振動デバイスは、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、ナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などの基準クロック発振源などとして好適に用いることができ、いずれの場合にも上記各実施形態で説明した効果を奏する電子機器を提供することができる。
【0061】
なお、水晶振動片は、ATカット型に限定するものではなく、音叉型でもよい。また、振動片の材料としては、水晶に限定するものではなく、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li247)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体、または酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体を被膜として備えたシリコンなどの半導体であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…振動デバイスとしての水晶発振器、2…振動デバイスとしての水晶振動子、10…振動片としての水晶振動片、11,12…励振電極、13…振動部、14,15…固定部、14a,15a…第1固定領域、14b,15b…第2固定領域、16,17…引き出し電極、18…一方の主面、19…他方の主面、20…パッケージ、20a…接合部材、21…ベース部としてのパッケージベース、21a…段部、22…リッド、23…内底面、24…固定面、25,26…マウント電極、27…内部端子、27a…内部配線、27b…スルーホール配線、28…外底面、29…外部端子、30…発振回路としてのICチップ、31…接続パッド、32…金属ワイヤー、40…導電性接着剤、41…非導電性接着剤、120…パッケージ、121…ベース部としてのパッケージベース、121a…段部、123…内底面、124…固定面、125,126…マウント電極、127a…内部配線、127b…スルーホール配線、128…外底面、129a,129b,129c,129d…外部端子、700…電子機器としての携帯電話、701…液晶表示装置、702…操作ボタン、703…受話口、704…送話口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振電極が設けられた振動部と該振動部の一端または両端から延在する固定部とを有する振動片と、
前記振動片が搭載されるベース部と、を備え、
前記振動片の前記固定部は、前記励振電極から引き出された引き出し電極を有する第1固定領域と、非導電性領域であって、平面視において、前記第1固定領域を両側から挟む第2固定領域と、を含み、
前記振動片の前記第1固定領域と前記ベース部における前記振動片を固定する固定面とが、平面視において、前記第1固定領域と重なる範囲内で導電性接着剤によって固着されると共に、前記振動片の前記第2固定領域と前記ベース部の前記固定面とが、非導電性接着剤によって固着され、
前記ベース部は、前記引き出し電極に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部が、平面視において、前記第1固定領域と重なる範囲を回避した位置に設けられていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の振動デバイスにおいて、前記ベース部は、前記引き出し電極に供給される信号と同じ信号が供給される導電部が、平面視において、前記第2固定領域と重なる範囲を回避した位置に設けられ、
前記引き出し電極に供給される信号とは異なる信号が供給される導電部の少なくとも一部が、平面視において、前記第2固定領域と重なる範囲内に設けられていることを特徴とする振動デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の振動デバイスにおいて、前記導電性接着剤のベース樹脂の種類と前記非導電性接着剤のベース樹脂の種類とが、同一であることを特徴とする振動デバイス。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の振動デバイスにおいて、前記ベース部に前記振動片を発振させる発振回路を更に搭載し、発振器を構成したことを特徴とする振動デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の振動デバイスを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−175498(P2012−175498A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36797(P2011−36797)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】