説明

支持装置および支持方法ならびに搬送装置および搬送方法

【課題】支持姿勢や搬送動作にかかわらず板状部材の撓みを抑制できる支持装置および支持方法ならびに搬送装置および搬送方法を提供すること。
【解決手段】接着シートMSが貼付された板状部材Wの搬送装置1は、接着シートMSを介して板状部材Wを保持する保持手段2と、保持手段2で保持された板状部材Wを付勢して板状部材Wの面位置を所定位置に維持する面位置維持手段6と、保持手段2を移動させる移動手段3とを備え、面位置維持手段6は、板状部材Wを一方側に付勢するかまたは他方側に付勢することで、板状部材Wの支持姿勢や搬送動作にかかわらず板状部材Wの面位置を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートが貼付された板状部材の支持装置および支持方法ならびに搬送装置および搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造工程において、半導体ウェハ(以下、単にウェハという場合がある)を支持する支持装置や、ウェハを支持しつつ搬送する搬送装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の搬送装置は、マウントシートによりリングフレームと一体化されたウェハを搬送する。この搬送装置は、リングフレームを支持してウェハを覆うカップと、このカップで覆われた空間内を減圧する減圧手段とを備え、減圧手段の減圧により搬送中のウェハの撓みを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−349454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、表側の回路面に保護シートが貼付されたウェハの場合、裏面にマウント用シートを貼付してリングフレームと一体化させた後に保護シートを剥離するときには、表裏を反転しなくてはならない。また、回路面に保護シートが貼付されていないウェハの場合でも、裏面にマウント用シートを貼付した後に回路面側からダイシングを行うときには、表裏を反転しなくてはならない。つまり、半導体装置の製造工程において、ウェハの表裏反転は、必要不可欠である。
しかしながら、特許文献1に記載の搬送装置では、ウェハにおける一方向への撓みを抑制するにあたって、減圧手段による減圧しか行うことができないため、減圧手段によって一方向への撓みを抑制した状態のまま、ウェハの表裏を反転させると、ウェハにおける他方向への撓みを助長してしまうため、ウェハを破損させてしまう。ここで、ウェハの表裏を反転させたときに減圧手段の減圧を停止させたとしても、カップ内が負圧になっているため、ウェハにおける他方向への撓みの助長を回避することはできない。また、搬送中の加減速によりウェハに慣性力が働き、カップ側に撓むような場合も、同様の理由により、ウェハの撓みを抑制できず、ウェハを破損させてしまう。
また、特許文献1に記載の搬送装置の一部、すなわちカップ以下をアームから取り外し、例えばテーブル等の固定台に取り付けてウェハを固定的に支持する支持装置として使用した場合、当該支持装置はウェハをカップの下側で水平に支持するものとしてしか使用できず、汎用性がないものとなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、支持姿勢や搬送動作にかかわらず板状部材の撓みを抑制できる支持装置および支持方法ならびに搬送装置および搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の支持装置は、接着シートが貼付された板状部材の支持装置であって、前記接着シートを介して前記板状部材を保持する保持手段と、前記保持手段で保持された前記板状部材を付勢して前記板状部材の面位置を所定位置に維持する面位置維持手段とを備え、前記面位置維持手段は、前記板状部材を一方側に付勢する第1付勢手段と、前記板状部材を前記一方側から他方側に付勢する第2付勢手段とを備える、という構成を採用している。
【0007】
また、本発明の支持方法は、接着シートが貼付された板状部材の支持方法であって、前記接着シートを介して前記板状部材を保持し、前記保持された前記板状部材を一方側に付勢するかまたは前記一方側から他方側に付勢して前記板状部材の面位置を所定位置に維持することを特徴とする。
【0008】
一方、本発明の搬送装置は、接着シートが貼付された板状部材の搬送装置であって、前記接着シートを介して前記板状部材を保持する保持手段と、前記保持手段で保持された前記板状部材を付勢して前記板状部材の面位置を所定位置に維持する面位置維持手段と、前記保持手段を移動させる移動手段とを備え、前記面位置維持手段は、前記板状部材を一方側に付勢する第1付勢手段と、前記板状部材を前記一方側から他方側に付勢する第2付勢手段とを備える、という構成を採用している。
【0009】
本発明の搬送装置では、前記第1付勢手段は、前記保持手段および前記板状部材間の流体を前記一方側に吸引し、前記第2付勢手段は、前記板状部材に前記一方側から前記他方側に前記流体を吹き付けることが好ましい。
また、本発明の搬送装置では、前記保持手段は、少なくとも前記接着シートと共に密閉空間を形成し、前記第1付勢手段は、前記密閉空間内を減圧し、前記第2付勢手段は、前記密閉空間内を加圧することが好ましい。
【0010】
本発明の搬送装置では、前記接着シートは、前記板状部材の外縁からはみ出る大きさとされ、かつ前記接着シートの前記板状部材からはみ出た側がフレームに貼付されて前記板状部材と前記フレームとが一体化され、前記保持手段は、前記フレーム部分で前記板状部材を支持可能に設けられていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の搬送装置では、前記板状部材の面位置を検出する面位置検出手段を備え、前記面位置維持手段は、前記面位置検出手段の検出結果に応じて前記板状部材への付勢力を変化させることが好ましい。
そして、本発明の搬送装置では、前記板状部材を反転させる反転手段と、前記板状部材の反転角度を検出する反転角度検出手段とを備え、前記面位置維持手段は、前記反転角度検出手段の検出結果に応じて前記板状部材への付勢力を変化させることが好ましい。
【0012】
本発明の搬送方法は、接着シートが貼付された板状部材の搬送方法であって、前記接着シートを介して前記板状部材を移動可能に保持し、前記保持された前記板状部材を一方側に付勢するかまたは前記一方側から他方側に付勢して前記板状部材の面位置を所定位置に維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明によれば、板状部材の支持姿勢や搬送動作に応じて、板状部材を一方側に付勢したり、一方側から他方側に付勢したりして板状部材の面位置を所定位置に維持することができるため、板状部材の支持姿勢や搬送動作にかかわらず、板状部材の撓みを抑制できる。例えば、面位置維持手段は、保持手段および板状部材間の流体を一方側に吸引したり、板状部材に一方側から他方側に流体を吹き付けたりする。また、面位置維持手段は、保持手段および接着シートで形成された密閉空間内を減圧したり加圧したりする。このようにして、板状部材の撓み方向とは反対の方向に付勢力を作用させることで、支持姿勢や搬送動作にかかわらず板状部材の撓みを抑制することができる。
この際、接着シートの板状部材からはみ出た側をフレームに貼付して板状部材とフレームとを一体化し、フレーム部分で板状部材を支持することにより、板状部材に対して非接触な状態で付勢することができる。従って、板状部材を付勢する際に、板状部材の特定の部分に応力が集中することがなく、板状部材の撓みを効果的に抑制できる。
【0014】
また、板状部材の面位置を検出する面位置検出手段を設ければ、検出された面位置により板状部材の撓みを直接的に検出できる。従って、板状部材に対する付勢力を板状部材の面位置に応じて変化させることで、支持姿勢や搬送動作によらず、板状部材の撓みを抑制できる。
【0015】
また、板状部材を反転させる反転手段を設ければ、板状部材の支持面とは反対側の面に関する作業を行い易くなり、合わせて板状部材の反転角度を検出する反転角度検出手段を設ければ、検出された反転角度により板状部材の撓みを間接的に検出できる。従って、板状部材の撓みを直接的に検出できないような場合でも、板状部材に対する付勢力を板状部材の反転角度に応じて変化させることで、板状部材の撓みを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る搬送装置の側面図。
【図2】図1の搬送装置の別の側面図。
【図3】図1中矢印X方向から見た搬送装置の動作模式図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る搬送装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
また、各実施形態では、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」といった方位を示す用語は、図1を基準として用いる。
【0018】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本実施形態の搬送装置1は、テーブルT上に載置された板状部材としてのウェハWを搬送するものである。ここで、ウェハWは、下側に位置する表面WAに回路が形成されるとともに、この回路を保護する保護シートSが貼付されている。また、ウェハWの上側に位置する裏面WBには、接着シートとしてのマウント用シートMSが貼付されている。マウント用シートMSは、ウェハWの外縁からはみ出る大きさとされ、マウント用シートMSのウェハWからはみ出た部分がフレームとしてのリングフレームRFに貼付されることで、ウェハWとリングフレームRFとが一体化されている。
【0019】
搬送装置1は、ウェハWを支持する支持装置1Aと、支持装置1Aを移動させる全体の図示を略する移動手段3とを備えている。また、支持装置1Aは、マウント用シートMSを介してウェハWを保持する保持手段2と、保持手段2を反転させる反転手段としての駆動機器である回動モータ4と、保持手段2の反転角度を検出する反転角度検出手段5と、ウェハWの面位置を維持する面位置維持手段としてのファン6(第1付勢手段および第2付勢手段をも兼ねる)と、ウェハWの面位置を検出する面位置検出手段としての位置センサ7とを備えて構成されている。なお、ファン6は、単数でも複数でもよい。
【0020】
保持手段2は、表裏を貫通する図示しない通気孔を有する円盤状の本体部21と、この本体部21から立設され、同一円周上に90度間隔で4箇所に設けられたアーム22(一部図示省略)と、それぞれのアーム22の下方に設けられた吸着パッド23とを備えて構成される。この保持手段2は、マウント用シートMSのウェハWからはみ出た部分に吸着パッド23を当接させ、吸着パッド23でマウント用シートMSを吸着保持してウェハWを支持する。本実施形態の場合、吸着パッド23でリングフレームRFを吸着保持してもよいし、マウント用シートMSとリングフレームRFとの両方を吸着保持してもよい。
【0021】
移動手段3は、保持手段2を直接的または間接的に支持する支持アーム31を含む複数のアームと、これらアーム同士を接続する複数の図示しない関節とを備えた駆動機器としての所謂多関節ロボットを含み、保持手段2を直交三軸方向で形成される空間内に移動可能に構成されている。
【0022】
回動モータ4は、支持アーム31の自由端(左端)に設けられ、その出力軸41が保持手段2を同一平面内で回転可能な駆動機器としての回動モータ32に連結されている。
【0023】
反転角度検出手段5は、回動モータ4に設けられて、回動モータ4の出力軸41の回転角度を検出する。このような反転角度検出手段5としては、ロータリーエンコーダやレゾルバ等の回転角度センサが例示される。本実施形態の場合、回動モータ4の回転によってウェハWの支持姿勢が変化する。
【0024】
ファン6は、回動モータ32の出力軸32Aに連結されている。ファン6は、保持手段2の本体部21に形成された図示しない通気孔を介して、保持手段2およびウェハW間の流体としての空気を吸引したり、ウェハWに空気を吹き付けたりすることで、ウェハWの撓み方向とは反対の方向にウェハWを付勢して、ウェハWの面位置を所定位置に維持する。このため、ファン6は、正逆両方向に回転自在に構成され、図1の矢印Aに示すように、ウェハWが保持手段2の下側に支持されている場合はウェハWを吸引により付勢し、図2の矢印Bに示すように、回動モータ4により保持手段2が反転された場合はウェハWに空気を吹き付けて付勢する。また、ファン6は、回転速度制御可能に構成され、その回転方向および回転速度を変更することにより、ウェハWに対する付勢力を変化させる。
【0025】
位置センサ7は、保持手段2に設けられた反射型のセンサであり、検出対象面からの反射を利用して面位置を検出する。このような位置センサ7としては、発光素子および受光素子を有する光センサや、送波器および受波器を有する超音波センサ等の位置センサが例示される。
【0026】
以上の搬送装置1において、ファン6の回転方向および回転速度は、反転角度検出手段5の検出結果に応じて変化され、ウェハW、マウント用シートMS、および保護シートSに作用する重力と、ファン6の回転によるウェハWの付勢力とが釣り合うように設定されている。すなわち、図3中ポジションP1で示すように、ウェハWが保持手段2の下側で水平に支持されたときの反転角度を0°とした場合、この反転角度が0°のときにファン6の吸引による付勢力は最も大きく、反転角度の増加に伴ってファン6の回転速度を徐々に低下させて付勢力を小さくしていく。そして、ファン6の吸引による付勢力は、ポジションP2で示した反転角度が90°のときにゼロとなる。
【0027】
保持手段2の反転角度が90°よりも大きくなると、ファン6は、回転方向を逆転させてウェハWに空気を吹き付け始め、空気でウェハWを押して付勢する。ファン6の空気の吹き付けによる付勢力は、反転角度が90°のときがゼロで、反転角度の増加に伴ってファン6の回転速度を徐々に上昇させて付勢力を大きくしていく。そして、ファン6の空気の吹き付けによる付勢力は、ポジションP3で示した反転角度が180°のとき、つまりウェハWが保持手段2の上側で水平に支持されている場合が最大となる。
【0028】
同様に、反転角度が180°からポジションP4で示した270°までの間は、反転角度の増加に伴ってファン6の回転速度を徐々に低下させて、ウェハWへの空気の吹き付けによる付勢力を最大値からゼロまで徐々に小さくしていく。そして、ファン6は、反転角度が270°よりも大きくなると、回転方向を正転方向に切り換えてウェハWを吸引し始め、反転角度が270°から360°(ポジションP1で示した反転角度が0°)までの間は、反転角度の増加に伴ってファン6の回転速度を徐々に上昇させることで、吸引による付勢力をゼロから最大値まで徐々に大きくしていく。このようなファン6による付勢力の最大値は、ウェハW、マウント用シートMS、および保護シートSの重さ、曲げ剛性などの条件によって適宜に設定される。なお、ウェハWが保持手段2の上側で水平に支持されたとき(図3中ポジションP3で示す状態のとき)の反転角度を0°とした場合、上記の反転角度に対する付勢力の制御は、吸引と押圧とが正反対となる。
【0029】
また、ファン6の回転方向および回転速度を位置センサ7の検出結果に応じて変化させることもできる。すなわち、テーブルT上で吸着パッド23がマウント用シートMSを吸着保持したときの位置センサ7からマウント用シートMSの上面までの距離、又は、ウェハWの上面までの距離を検出して記憶する。そして、ウェハWを反転させたり、加減速によりウェハに慣性力が働いたりして当該ウェハWが撓むと、位置センサ7の検出結果が変化するため、位置センサ7の検出距離が先ほど記憶した距離と同じになるようにファン6の回転方向および回転速度を制御する。
【0030】
以上のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
すなわち、保持手段2の反転角度やウェハWの面位置に応じて、保持手段2およびウェハW間の空気を吸引したり、ウェハWに空気を吹き付けたりすることで、ウェハWに作用する重力や慣性力と釣り合う付勢力を、ウェハWに作用させることができる。従って、支持姿勢や搬送動作にかかわらず、ウェハWの撓みを抑制できる。
【0031】
また、保持手段2が、リングフレームRF部分を支持することにより、保持手段2と非接触の状態でウェハWを付勢できるため、ウェハWの特定部分への応力集中による撓みを回避できる。
【0032】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図4に基づいて説明する。
本実施形態の搬送装置1は、保持手段2がマウント用シートMSと共に密閉空間Vを形成し、ファン6のかわりに設けられた面位置維持手段としての加減圧ポンプ8(第1付勢手段および第2付勢手段をも兼ねる)が、この密閉空間Vを加圧および減圧する点で前記第1実施形態と相違する。また、搬送装置1は、位置センサ7のかわりに面位置検出手段としての圧力センサ9を備える点でも、前記第1実施形態と相違する。
【0033】
本実施形態の保持手段2は、本体部21と、本体部21から立設して筒状に連続する側壁部24とを備えて構成される。側壁部24には、端面25側に開口する吸引孔26が設けられ、保持手段2は、この吸引孔26内の空気を図示しない吸引手段で吸引してマウント用シートMSを吸引することにより、ウェハWを保持する。側壁部24の端面25には、図示しないパッキンやシリコンゴム等の弾性部材が設けられており、保持手段2は、マウント用シートMSを保持することで、マウント用シートMSとの間に密閉空間Vを形成する。
【0034】
加減圧ポンプ8は、保持手段2の本体部21に形成された図示しない通気孔を介して、密閉空間V内の加圧および減圧を行うことでウェハWを付勢して、ウェハWの面位置を所定位置に維持する。このため、加減圧ポンプ8は、加圧側と減圧側とのそれぞれ独立した系統を備えて加圧及び減圧が実施可能に構成され、図4の矢印Cに示すように、ウェハWが保持手段2の下側に支持されている場合は密閉空間V内を雰囲気圧から減圧してウェハWを付勢し、回動モータ4により保持手段2が反転された場合は密閉空間V内を雰囲気圧から加圧してウェハWを付勢する。
【0035】
圧力センサ9は、保持手段2に設けられて密閉空間V内の圧力を検出する。このような圧力センサ9としては、ダイヤフラム型、静電容量型、圧電型、または振動型の圧力センサが例示される。
【0036】
以上の搬送装置1において、加減圧ポンプ8は、密閉空間V内の圧力を反転角度検出手段5の検出結果に応じて変化させることで、ウェハWへの付勢力を変化させる。この際の加減圧量は、前述した第1実施形態と同様に、ウェハW、マウント用シートMS、および保護シートSに作用する重力と、密閉空間V内の圧力に応じたウェハWへの付勢力とが釣り合うように設定されている。すなわち、図3に示すように、保持手段2の反転角度が0°の場合、加減圧ポンプ8は、雰囲気圧からの減圧量が最大値となるように密閉空間V内を減圧して、ウェハWを付勢する。加減圧ポンプ8は、反転角度が0°から90°までの間は、反転角度の増加に伴って減圧量を徐々に小さくしてウェハWへの付勢力を弱め、反転角度が90°の場合に密閉空間V内を雰囲気圧として付勢力をゼロとする。
【0037】
さらに、加減圧ポンプ8は、反転角度が90°から180°までの間は、反転角度の増加に伴って、雰囲気圧からの加圧量がゼロから最大値まで徐々に大きくなるように密閉空間V内を加圧して、ウェハWへの付勢力を徐々に大きくする。同様に、反転角度が180°から270°までの間は、密閉空間V内の加圧量を最大値からゼロまで徐々に小さくなるように変化させてウェハWへの付勢力を弱めていき、反転角度が270°から360°までは、密閉空間V内の減圧量がゼロから最大値まで徐々に大きくなるように減圧して、ウェハWへの付勢力を大きくしていく。なお、ウェハWが保持手段2の上側で水平に支持されたときの反転角度を0°とした場合、上記の反転角度に対する付勢力の制御は、加圧と減圧とが正反対となる。
【0038】
また、加減圧ポンプ8は、圧力センサ9の検出結果に応じて密閉空間V内の圧力を変化させることで、ウェハWへの付勢力を変化させる。すなわち、ウェハWの面位置を維持するための密閉空間V内の圧力は、静的状態においては、保持手段2の反転角度により一義的に定まるため、密閉空間V内の圧力を監視すれば、密閉空間V内の圧力変動からウェハWの加減速による慣性力の発生を検知できる。このため、加減速により慣性力がウェハWに作用する場合であっても、密閉空間V内の圧力の変動量に応じてウェハWに対する付勢力を変化させることで、加減速によりウェハWに慣性力が作用した場合でも、ウェハWの撓みを抑制できる。
【0039】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0040】
例えば、前記実施形態では、板状部材がウェハWである場合を示したが、板状部材はウェハWに限定されるものではなく、リングフレームRFはなくてもよいし、ウェハW以外にガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の板状部材などや、板状部材以外のものも対象とすることができる。そして、ウェハWは、シリコン半導体ウェハや化合物半導体ウェハ等が例示できる。そして、このような板状部材に貼付する接着シートは、マウント用シートMSに限らず、その他の任意のシート、フィルム、テープ等、板状部材に貼付する任意の用途、形状の接着シートが適用できる。また、前記実施形態では、回路面に保護シートSが貼付されたウェハWを採用したが、保護シートSが貼付されていないウェハWを採用してもよい。
【0041】
前記実施形態では、保持手段2を反転させる反転手段として回動モータ4を用いていたが、これに限られない。要するに、保持手段2を反転させることができればよく、例えば、移動手段3の複数の関節の動きにより保持手段2を反転させることで、移動手段3全体を反転手段として機能させてもよい。また、回動モータ4は、保持手段2を反転角度360°反転可能であったが、反転手段において360°まで反転可能とすることは必須ではない。
【0042】
前記実施形態では、ファン6および加減圧ポンプ8を用いたウェハWの付勢力を変化させるにあたり、反転角度検出手段5、位置センサ7、および圧力センサ9の検出結果を用いていたがこれに限られない。要するに、ウェハWの撓みによる面位置の変化を直接的または間接的に検出できればよく、例えば、撮像手段によるウェハWの映像からウェハWの平面状態を検出してもよい。また、必ずしも複数の検出手段を設ける必要はなく、少なくとも位置センサ7や圧力センサ9等の面位置検出手段を設ければ、前述した本発明の効果を得ることができる。
【0043】
前記実施形態では、位置センサ7に反射型のものを用いたがこれに限られず、ウェハWの面位置を検出できるものであれば、他のセンサを用いてもよい。
前記実施形態では、ファン6および加減圧ポンプ8は、空気を介してウェハWを付勢していたがこれに限られず、ウェハWを付勢するための流体としては、窒素ガスやネオンガス等の他の気体や液体であってもよい。
また、ファン6の代わりに圧縮エアの噴き付けと減圧エアによる吸引としてもよい。
更に、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
また、前記第2実施形態では、保持手段2がマウント用シートMSと共に密閉空間Vを形成したが、保持手段2がリングフレームRFとマウント用シートMSと共に密閉空間Vを形成する構成としてもよい。
【0044】
前記実施形態では、搬送装置1は反転手段として回動モータ4を備えていたが、搬送装置1が反転手段を有さない場合でも、前述した本発明の効果を得ることができる。すなわち、搬送装置1では、反転手段の有無にかかわらず、搬送中の加減速によりウェハWに慣性力が働き、ウェハWが撓むことがあるが、搬送装置1がファン6やポンプ8を備えていれば、ファン6またはポンプ8の付勢力によりウェハの撓みを抑制できる。
また、前記実施形態の搬送装置1の一部、すなわちファン6またはポンプ8以下を回動モータ32の出力軸32Aから取り外し、例えばテーブル等の固定台に取り付けてウェハWを固定的に支持する支持装置として使用することができる。この場合、当該支持装置は、面位置維持手段を有しているので、従来例のように、ウェハWを保持手段2の下側で水平に支持するだけでなく、ウェハWを保持手段2の上側で水平に支持したり、ウェハWを保持手段2の右側または左側で垂直に支持したり、ウェハWを保持手段2の右上側、右下側、左上側または左下側で斜めに支持したりするものとして使用することができ、従来例と比較して汎用性が向上する。なお、このような支持装置を回動モータ4に接続し、上記実施形態で図3を用いて説明したように、ウェハWを反転させることのできる支持装置とすることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 搬送装置
2 保持手段
3 移動手段
4 回動モータ(反転手段)
5 反転角度検出手段
6 ファン(面位置維持手段、第1付勢手段、第2付勢手段)
7 位置センサ(面位置検出手段)
8 ポンプ(面位置維持手段、第1付勢手段、第2付勢手段)
9 圧力センサ(面位置検出手段)
W ウェハ(板状部材)
MS マウント用シート(接着シート)
RF リングフレーム(フレーム)
V 密閉空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着シートが貼付された板状部材の支持装置であって、
前記接着シートを介して前記板状部材を保持する保持手段と、
前記保持手段で保持された前記板状部材を付勢して前記板状部材の面位置を所定位置に維持する面位置維持手段とを備え、
前記面位置維持手段は、
前記板状部材を一方側に付勢する第1付勢手段と、
前記板状部材を前記一方側から他方側に付勢する第2付勢手段とを備えていることを特徴とする支持装置。
【請求項2】
接着シートが貼付された板状部材の支持方法であって、
前記接着シートを介して前記板状部材を保持し、
前記保持された前記板状部材を一方側に付勢するかまたは前記一方側から他方側に付勢して前記板状部材の面位置を所定位置に維持することを特徴とする支持方法。
【請求項3】
接着シートが貼付された板状部材の搬送装置であって、
前記接着シートを介して前記板状部材を保持する保持手段と、
前記保持手段で保持された前記板状部材を付勢して前記板状部材の面位置を所定位置に維持する面位置維持手段と、
前記保持手段を移動させる移動手段とを備え、
前記面位置維持手段は、
前記板状部材を一方側に付勢する第1付勢手段と、
前記板状部材を前記一方側から他方側に付勢する第2付勢手段とを備えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
前記第1付勢手段は、前記保持手段および前記板状部材間の流体を前記一方側に吸引し、
前記第2付勢手段は、前記板状部材に前記一方側から前記他方側に前記流体を吹き付けることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記保持手段は、少なくとも前記接着シートと共に密閉空間を形成し、
前記第1付勢手段は、前記密閉空間内を減圧し、
前記第2付勢手段は、前記密閉空間内を加圧することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記接着シートは、前記板状部材の外縁からはみ出る大きさとされ、かつ前記接着シートの前記板状部材からはみ出た側がフレームに貼付されて前記板状部材と前記フレームとが一体化され、
前記保持手段は、前記フレーム部分で前記板状部材を支持可能に設けられていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
前記板状部材の面位置を検出する面位置検出手段を備え、
前記面位置維持手段は、前記面位置検出手段の検出結果に応じて前記板状部材への付勢力を変化させることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項8】
前記板状部材を反転させる反転手段と、
前記板状部材の反転角度を検出する反転角度検出手段とを備え、
前記面位置維持手段は、前記反転角度検出手段の検出結果に応じて前記板状部材への付勢力を変化させることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項9】
接着シートが貼付された板状部材の搬送方法であって、
前記接着シートを介して前記板状部材を移動可能に保持し、
前記保持された前記板状部材を一方側に付勢するかまたは前記一方側から他方側に付勢して前記板状部材の面位置を所定位置に維持することを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−238870(P2011−238870A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110915(P2010−110915)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】