説明

改善された断熱性能を備えた発泡性ビニル芳香族ポリマー組成物、その調製方法及びその組成物から得られる発泡物品

50〜100質量%の1種以上のビニル芳香族モノマー及び0〜50質量%の少なくとも1種の共重合性モノマーを重合することによって得られるマトリックスと、このポリマーマトリックス中に包み入れられる、ポリマー(a)に対して1〜10質量%の発泡剤と、ASTM D−3037/89(BET)に準拠して測定した表面積5〜50m/gを有するコークスを含む、ポリマー(a)に対して0.05〜25質量%の充填材とを含む発泡性ビニル芳香族ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された断熱性能を備えた発泡性ビニル芳香族ポリマーの組成物、その調製方法及びその組成物から得られる発泡物品に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は発泡性ビニル芳香族ポリマー、例えば、発泡後の熱伝導性が低く低密度(例えば、20g/l未満)である発泡性スチレンポリマーを基本とした顆粒及びこの顆粒から得られる製品、すなわち上記のビニル芳香族組成物を原料とした発泡押出成形シートに関する。
【背景技術】
【0003】
発泡性ビニル芳香族ポリマー、その中でも特に発泡性ポリスチレン(EPS)は、様々な応用分野で採用可能な発泡物品の製造に長年にわたって使用されている既知の生成物であり、応用分野の中でも最も重要なものの1つが、断熱分野である。
【0004】
これらの発泡製品は、まず閉鎖環境において、発泡性流体、例えば脂肪族炭化水素(ペンタン、ヘキサン等)を含浸させたポリマー顆粒を膨張させ、次に金型内に入れた膨張した粒子を圧力及び温度の同時作用により成型することで得られる。粒子の膨張は一般に、このポリマーのガラス転移温度(Tg)より若干高い温度に維持した蒸気又は別の気体によりもたらされる。
【0005】
発泡ポリスチレンを応用可能な特定の分野に建築産業における断熱があり、一般に、平坦なシートの形態で使用される。この平坦な発泡ポリスチレンシートは通常、密度約30g/lで使用されるが、これはポリマーの熱伝導性がこの値で最少となるからである。技術的に可能であったとしてもこの密度より低くすることは有利ではない。これは低密度であることがシートの熱伝導性に大きな上昇をもたらし、その上昇を厚みを増大させることで相殺しなくてはならないからである。この欠点を克服するために、ポリマーを不透熱性材料、例えばグラファイト、カーボンブラック、アルミニウムで充填することが提案されてきた。不透熱性材料は実際、放射熱の流れと相互作用することができ、それによって熱伝達が低下し、充填された発泡材料の断熱性が上昇する。
【0006】
例えば欧州特許第620246号明細書には、不透熱性材料を表面に分散させた又は代案として粒子それ自体の内側に取り込ませた発泡性ポリスチレンビーズの調製方法が記載されている。
【0007】
国際特許出願第1997/45477号(WO1997/45477)パンフレットには、スチレンポリマー、0.05〜25%のランプブラックタイプのカーボンブラック及び製品を耐火性にするための0.6〜5%の臭素化添加剤を含む発泡性ポリスチレンを基本とした組成物が記載されている。
【0008】
日本国特許出願第63183941号(JP63183941)明細書には、ポリスチレン発泡体の断熱性能を改善するためのグラファイトの使用が記載されている。
【0009】
日本国特許出願第60031536号(JP60031536)明細書には、発泡性ポリスチレン樹脂の調製におけるカーボンブラックの使用が記載されている。
【0010】
国際特許出願第2006/61571号(WO2006/61571)パンフレットには、重量平均分子量(Mw)150000〜450000を有するスチレンポリマー、2〜20質量%の発泡剤及び0.05〜1%未満の、表面積が550〜1600m2/gのカーボンブラックを含む発泡性ポリスチレンを基本とした組成物が記載されている
【0011】
ここで出願人は、強化された断熱特性を備えた発泡性ビニル芳香族ポリマーを基本とした組成物を、いまだかつて文献で触れられたことのない不透熱性添加剤を使用して調製することが可能であることを発見した。
【発明の概要】
【0012】
従って、本発明の目的は、例えば顆粒又はビーズ状の、発泡性ビニル芳香族ポリマーの組成物に関し、この組成物は、
(a)50〜100質量%の1種以上のビニル芳香族モノマー及び0〜50質量%の少なくとも1種の共重合性モノマーを含むベースを重合することによって得られるポリマーマトリックスと、
(b)ポリマーマトリックス内に包み入れられる(englobed)、ポリマー(a)に対して1〜10質量%の発泡剤と、
(c)平均粒径0.5〜100μm、好ましくは2〜20μm及びASTM D−3037/89(BET)に準拠して測定した表面積5〜50m2/g、好ましくは5〜20m2/gを有する粒子の形態のコークスを含む、ポリマー(a)に対して0.05〜25質量%の不透熱性充填材(filler)とを含む。
【0013】
本発明の目的であるポリマー組成物は、以下でより詳細に説明するように、
モノマーベース中に不透熱性充填材を溶解/分散させ、続いて水性懸濁液中で重合し、発泡剤を添加することを含む懸濁法、又は
直接押出成形法、すなわちビニル芳香族ポリマーの顆粒及び不透熱性充填材の混合物を(そのまま又はマスターバッチの形態で)直接、押出成形機に送る方法によって得ることができる。
【0014】
或いは、ポリマーは重合プラントからの既に溶融状態にあるポリマーであってもよく、続いて不透熱性充填材を添加する。次に発泡剤を加え、相関的な生成物を続いて冷却し、ダイを通してプレート、チューブ、発泡シートを直接製造する。ここでもまた、代案として、このようにして得られたポリマー組成物を圧力下の抜型に送ることができる(例えば、米国特許第7320585号明細書に記載の手順に従う)。
【0015】
コークスは、0.5〜100μm、好ましくは2〜20μmの粉末粒径(MT50)を有する細かく分割された粉末として入手可能である。粒径(MT50)はレーザー式粒度計で測定され、小さい直径を有する50質量%の粒子及び大きい直径を有する50質量%の粒子に対応する直径である。
【0016】
コークスは有機材料の熱分解によって生成され、炭化過程で少なくとも部分的に液体又は液晶状態を経る。開始有機材料は、好ましくは石油、石炭又は亜炭である。
【0017】
本発明の目的である顆粒状のポリマー組成物の調製に使用するコークスは、より好ましくは石油の分留から得られる高沸点炭化水素の留分(慣用的に残留重質留分として知られる)の炭化生成物である。特に、コークスは残留重質留分のコーキングから始めて得られ、この作業は高温で行われ、ここでもまた若干の軽質留分と固体(石油コークス)が生成される。このようにして得られた石油コークスを1000〜1600℃でか焼する(calcine)(か焼コークス)。
【0018】
芳香族成分が豊富な残留重質留分を使用する場合、コークスは、1800〜2200℃でのか焼後に得られ、針状結晶構造を有する(ニードルコークス)。
【0019】
コークスについての更なる情報、製造方法及び様々なグレードの市販のコークス(生コークス、石炭由来のピッチコークス、ディレードコークス、フルードコークス、ニードルコークス、プレミアムコークス、か焼コークス、ショットコークス、スポンジコークス等)の特性についての説明は、インターネット、goldbook.inpuac.orgのウェブサイト又はPure Appl.Chem.,1995,vol.67,Nr.3の473〜506頁の「Recommended terminology for the description of carbon as a solid(IUPAC Recommendations 1995)」から入手可能である。
【0020】
本発明において、ビニル芳香族ポリマーに添加される不透熱性コークス充填材は、ポリマー(a)に対して最高で5質量%まで、例えば0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜4.5質量%のグラファイト及び/又はカーボンブラックをそれぞれ含むことができる。グラファイト(天然又は合成)は、平均サイズ(MT50)0.5〜50μm及び表面積5〜50m2/gを有することができる。カーボンブラックは、平均寸法10〜1000nm及び表面積5〜40m2/gを有することができる。
【0021】
本文及び請求項で使用の用語「ビニル芳香族モノマー」は本質的に、以下の一般式:
【化1】

(式中、Rは水素又はメチル基であり、nはゼロ又は1〜5の整数であり、Yは塩素若しくは臭素等のハロゲン又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル若しくはアルコキシルラジカルである)を有する生成物について言及している。
【0022】
上記の一般式を有するビニル芳香族モノマーの例はスチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ジメチルスチレン、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−及びペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン等である。好ましいビニル芳香族モノマーはスチレン及びα−メチルスチレンである。
【0023】
一般式(I)を有するビニル芳香族モノマーは単独又はその他の共重合性モノマーとの最高で50質量%までの混合物として使用することができる。共重合性モノマーの例は、(メタ)クリル酸、(メタ)クリル酸のC1〜C4アルキルエステル(例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート)、(メタ)クリル酸のアミド及びニトリル(例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル)、ブタジエン、エチレン、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸等である。好ましい共重合性モノマーはアクリロニトリル及びメチルメタクリレートである。
【0024】
ビニル芳香族ポリマーマトリックス中に包み入れられることが可能ないずれの発泡剤も、本発明の目的である膨張可能な(expansible)発泡性ポリマーと組み合わせて使用することができる。典型的な例は脂肪族炭化水素、フレオン(Freon)、二酸化炭素、アルコール(エチルアルコール等)、水等である。
【0025】
コークスを含む不透熱性充填材は、懸濁又は再懸濁での重合を経たビニル芳香族ポリマーに、連続塊状技法又は直接押出成形により、ポリマー中のその最終濃度が0.05〜25質量%、好ましくは0.1〜8質量%になるような量で添加することができる。
【0026】
一般に従来の材料と共に使用される慣用の添加剤、例えば、顔料、安定剤、成核剤、難燃系、静電気防止剤、分離剤(detaching agent)等を、本発明の目的である発泡性ポリマーの組成物に添加することができる。特に、本発明の組成物に、以下で説明するように、ポリマー(a)に対して0.1〜8%の、少なくとも30質量%の臭素を含有する自消性の(self−extinguishing)臭素化添加剤と、ここでもまたポリマー(a)に対して0.05〜2質量%の、少なくとも1つの不安定なC−C又はO−O結合を有する相乗剤(synergic product)とを含む難燃系(flame−retardant system)を添加することができる。
【0027】
不透熱性充填材、発泡剤及び見込まれる(possible)添加剤を添加すると、発泡性ポリマーが顆粒状で得られ、この顆粒状の発泡性ポリマーを変形させて、5〜50g/l、好ましくは10〜25g/lの密度を有する発泡物品を製造することができる。一方、直接押出成形の場合は、20〜40g/lの密度が採用される。
【0028】
これらの発泡物品は、25〜50mW/mK、好ましくは30〜45mW/mKの熱伝導性によって表される優れた断熱性能を有し、この数値は概して、現在流通している充填材非含有の同等の発泡材、例えば、Polimeri Europa SpA社のEXTIR A−5000の数値より更に10%以上低い。
【0029】
本発明の目的である発泡性ポリマーのこれらの特徴により、材料を大幅に節約した断熱物品を作製すること又は、例えば、充填材非含有の従来のポリマーを使用して作製したシートより薄いシートを作製することが可能であり、結果的に空間及び生成物の節約となる。
【0030】
発泡物品の定義には、密度10〜200g/l、平均気泡寸法(cell dimension)0.05〜1.00mmを有し且つポリマーに対して0.05〜25質量%、好ましくは0.1〜8質量%の不透熱性充填材を含有するビニル芳香族ポリマー(例えば、ポリスチレン)の気泡マトリックスを含む、ビニル芳香族ポリマーの発泡押出成形シートも含まれる。この不透熱性充填材は、平均粒径(寸法)0.5〜100μm及びASTM D−3037−89(BET)に準拠して測定した表面積5〜50m2/g、好ましくは5〜20m2/gを有する粒子の形態のコークスを含む。発泡押出成形シートのビニル芳香族ポリマーに添加される不透熱性コークス充填材は、ポリマーに対して最高で5質量%まで、例えば0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜4.5質量%のグラファイト及び/又はカーボンブラックをそれぞれ含むことができる。
【0031】
従来の材料と共に通常使用される慣用の添加剤、例えば、顔料、安定剤、成核剤、難燃剤、静電気防止剤、分離剤等も、この発泡押出成形シートに添加することができる。
【0032】
本発明の更なる目的は、発泡性ビニル芳香族ポリマーを基本とした、例えばビーズ又は顆粒状の、改善された断熱性及び密度50g/l未満(発泡後)を有する組成物を調製する方法に関する。
【0033】
特に、本発明の更なる目的は、上述のビーズ又は顆粒状の発泡性ビニル芳香族ポリマーを調製する方法に関し、本方法は、水性懸濁液中で、1種以上のビニル芳香族モノマーを、場合によっては最高で50質量%までの少なくとも1種の重合性コモノマーと共に、平均粒径(寸法)0.5〜100μm及び表面積5〜50m2/g、好ましくは5〜20m2/gを有する粒子の形態の前記コークスを含む上記の特性を有する不透熱性充填材の存在下で、また少なくとも、ペルオキシドラジカル開始剤及び重合前、重合中又は重合の終わりに添加される発泡剤の存在下で重合することを含む。
【0034】
不透熱性充填材は、ポリマーに対して最高で5質量%まで、例えば0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜4.5質量%のグラファイト及び/又はカーボンブラックをそれぞれ含むこともできる。合成又は天然のグラファイトは、粒径0.5〜50μm及び表面積5〜50m2/gを有することができる。カーボンブラックは、平均粒径10〜1000nm及び表面積5〜40m2/gを有することができる。
【0035】
重合は、水性懸濁液中でリン酸の無機塩、例えばリン酸三カルシウム又はリン酸マグネシウムを伴って行われる。これらの塩は重合混合物に、細かく分割して又は例えばピロリン酸ナトリウムと硫酸マグネシウムとの反応によるその場で(in situ)の合成の両方によって添加することができる。
【0036】
この無機塩の懸濁を、米国特許第3631014号明細書に記載されているように、アニオン界面活性剤、例えばスルホン酸ドデシルベンゼンナトリウム又はその前駆体、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムによって支援する。
【0037】
重合は、有機系懸濁化剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の存在下で行うこともできる。
【0038】
開始系(initiating system)は通常、2種類のペルオキシドを含み、1つ目は85〜95℃で1時間の半減期を有し、もう一方は110〜120℃で1時間の半減期を有する。これらの開始剤の例はtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート及びtert−ブチルペルベンゾエートである。
【0039】
得られるビニル芳香族ポリマー又はコポリマーは、平均分子量(Mw)50000〜250000、好ましくは70000〜200000を有する。概して、水性懸濁液における発泡性ビニル芳香族ポリマーの調製又はより広い意味での懸濁液における重合の手順についての更なる詳細は、Journal of Macromolecular Science,Review in Macromolecular Chemistry and Physics C31(263),215−299(1991)に見ることができる。
【0040】
懸濁液の安定性を改善するために、水中に懸濁させるビニル芳香族モノマーの試薬溶液の粘度を、ビニル芳香族ポリマーをこの溶液に、モノマーに対して最高で1〜30質量%まで、好ましくは5〜20質量%の濃度にまで溶解させることによって上昇させることが可能である。溶液は、上記の濃度が得られるまで、予備生成されたポリマーを試薬混合物(例えば、新鮮なポリマー又は先行の重合及び/若しくは膨張からの廃棄物)に溶解させるか、又はモノマー若しくはモノマーのブレンドを塊状予備重合(mass pre−polymerization)し、引き続いて水性懸濁液中での重合を残りの添加剤の存在下で継続することにより得ることができる。
【0041】
懸濁液中での重合中、当業者に周知の方法に従って、発泡性ビニル芳香族ポリマーの製造に典型的な重合添加剤、例えば懸濁液の安定剤、連鎖移動剤、発泡補助剤、成核剤、可塑剤等を使用する。特に、重合中、得られるポリマーの質量に対して0.1〜8%の難燃剤及び0.05〜2%の相乗剤を含む耐炎系を添加することが望ましい。本発明の目的である発泡性ビニル芳香族ポリマーに特に適した難燃剤は、脂肪族化合物、脂環式化合物、臭素化芳香族化合物(ヘキサブロモシクロドデカン、ペンタブロモモノクロロシクロヘキサン、ペンタブロモフェニルアリルエーテル等)である。使用可能な相乗剤はジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニル−ヘキサン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルブタン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリペルオキシノナンである。
【0042】
発泡剤は、好ましくは、重合段階中又はその後に再懸濁技法により添加される。特に、後者は以下の段階:
水性懸濁液中で1種以上のビニル芳香族モノマーを、少なくとも、コークスを含む不透熱性充填材の存在下で重合し、
このようにして得られたビーズ又は顆粒を分離し、
ビーズ又は顆粒を水に再懸濁させ、球状形態が得られるまで加熱し、
発泡剤を懸濁液に添加し、含浸するまでビーズを発泡剤と接触させ続け、
ビーズを再分離すること
を含む。
【0043】
発泡剤は、3〜6個の炭素原子を含む脂肪族又は脂環式炭化水素(n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、これらのブレンド等)、1〜3個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素のハロゲン化誘導体(例えば、ジクロロジフルオロメタン、1,2,2−トリフルオロエタン、1,1,2−トリフルオロエタン)、二酸化炭素、水及びエチルアルコールから選択される。
【0044】
重合の終わりに、発泡性ポリマーの実質的に球状のビーズ/顆粒が平均直径0.2〜2mm、好ましくは1〜1.5mmで得られ、コークスを含む不透熱性充填材及びその他の見込まれる添加剤はビーズ/顆粒中に均質に分散される。
【0045】
次に、米国特許第5041465号明細書に記載されているように、顆粒を重合反応器から取り出し、非イオン界面活性剤又は代替物としての酸により連続的に又はバッチ式で洗浄する。ポリマー顆粒は、30〜60℃の熱風で熱処理することができる。
【0046】
本発明の更なる目的は、発泡性ビニル芳香族ポリマーをベースとしたビーズ又は顆粒状の組成物を連続塊状で(in continuous mass)調製する方法に関し、本方法は以下の一連の工程を含む。
(i)顆粒状の形態の又は既に溶融状態にある、平均分子量(Mw)50000〜250000、好ましくは70000〜200000を有するビニル芳香族ポリマーを、平均粒径0.5〜100μm及び表面積5〜50m2/g、好ましくは5〜20m2/gを有する粒子の形態の前記コークスを含む、上述の特性を有する不透熱性充填材と混合する。この不透熱性充填材は、ポリマーに対して、最高で5質量%まで、例えば0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜4.5質量%のグラファイト及び/又はカーボンブラックもそれぞれ含むことができる。天然又は合成のグラファイトは、粒径0.5〜50μm、好ましくは1〜15μm及び表面積5〜50m2/gを有することができる。カーボンブラックは、平均粒径10〜1000nm及び表面積5〜40m2/gを有することができる。既に記載したその他の見込まれる添加剤、中でも顔料、安定剤、成核剤、難燃系、静電気防止剤、分離剤等もこの工程において全て又は部分的に添加することができる。
(ii)任意に、まだ溶融状態にないならば、混合物(i)のビニル芳香族ポリマーをビニル芳香族ポリマーの融点より高い温度に加熱する。
(iii)発泡剤及び場合によっては前記その他の添加剤の一部又は全てを、溶融したポリマー中に組み入れる。
(iv)このようにして得られたポリマー組成物を、静的又は動的混合要素により混合する。
(v)このようにして得られた組成物を、ダイ、切断チャンバー及び切断システムを備えた装置で顆粒化する。
【0047】
顆粒化の終わりに、発泡性ポリマーのビーズ/顆粒を、平均直径0.2〜2mm、好ましくは1〜1.5mmを有する実質的な球状形態で得ることができ、ビーズ/顆粒において、コークスを含む不透熱性充填剤及びその他の考え得る添加剤は、均質に分散することが肉眼で観察された。
【0048】
本発明において、工程(i)は、既に生成された、恐らくは処理廃棄物が混ざったポリマー顆粒を押出成形機に送ることにより行うことができる。ここで個々の成分が混合され、続いてポリマー分が溶融し、発泡剤及びその他の考え得る添加剤が添加される。
【0049】
或いは、当業者には「連続塊状法(continuous mass process)」として知られる方法に従って、重合プラント(溶液中)、特には相対脱蔵ユニット(relative devolatilization unit)から直接送られてくる既に溶融状態にあるポリマーを使用することができる。溶融ポリマーを適切な装置、例えば動的又は静的ミキサに供給し、そこで添加剤、例えば不透熱性充填材及び発泡剤と混合し、引き続き押出成形することにより、本発明の目的である発泡性ビーズ/顆粒が得られる。
【0050】
ポリマー組成物の顆粒(又はビーズ)を、ガラス転移温度(Tg)以下又はそれより若干高くさえある温度、例えばTgより最高で8℃まで高い温度にて、場合によっては加圧下でアニールすることができる。連続塊状でビニル芳香族ポリマーを調製するための詳細な方法は、国際特許出願第03/53651号(WO03/53651)パンフレットに記載されている。
【0051】
一般に、少なくとも不透熱性添加剤を、平均分子量(Mw)50000〜250000、好ましくは70000〜200000を有するビニル芳香族ポリマーを基本とするマスターバッチ中に組み入れる(incorporate)ことによって、ポリマー流(polymeric stream)との混合を促進し、またプラント管理を簡略化することが可能である。このマスターバッチにおいて、コークス及び場合によってはカーボンブラック及び/又はグラファイトを含む不透熱性充填材の含有量は、15〜60質量%である。
【0052】
特に、水性懸濁液中での重合の場合、ペレット状のマスターバッチを、ビニル芳香族モノマーに溶解させることができる。他方で、塊状重合の場合は、ペレットの形態のマスターバッチを顆粒又は溶液状での重合から得られる溶融状態のポリマーと混合することができる。
【0053】
より一層具体的に述べると、連続塊状重合の場合、ペレット状のマスターバッチを、ビニル芳香族モノマー/溶媒混合物中に溶解させてから重合反応器に溶液状で送ることができる。
【0054】
重合の終わりにおいて、重合が懸濁式又は連続塊状で行われるかを問わず、得られた発泡性ビーズ又は顆粒を、慣用の発泡性組成物に通常適用される予備処理に供するが、この予備処理は本質的に、
(1)ビーズ又は顆粒を静電気防止液剤(例えば、アミン、エトキシ化第三級アルキルアミン、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー等)で被覆する。この薬剤によりコーティングの接着が可能になり、また懸濁液中で調製されたビーズのスクリーニングが促進される;
(2)このビーズ又は顆粒に、場合によってはカーボンブラックとも混合された、本質的に、脂肪酸とのグリセリン(又はその他のアルコール)のモノ−、ジ−及びトリエステル並びにステアリン酸金属塩(ステアリン酸亜鉛及び/又はステアリン酸マグネシウム等)の混合物から成るコーティングを適用することから成る。
【0055】
本発明の更なる目的は、ビニル芳香族ポリマーの発泡押出成形シートを製造する方法に関し、本方法は、
(a1)ペレット、顆粒又はビーズの形態のビニル芳香族ポリマーと、ポリマーに対して0.05〜25質量%の、平均粒径(寸法)0.5〜100μm及びASTM D−3037−89(BET)に準拠して測定した表面積5〜50m2/g、好ましくは5〜20m2/gを有する粒子の形態の前記コークスを含む、少なくとも1種の不透熱性充填材とを混合し、
(b1)混合物(a1)を180〜250℃の温度に加熱して、均質化に供されるポリマー溶融物を得て、
(c1)ポリマー溶融物に少なくとも1種の発泡剤、及び場合によっては前記添加剤、例えば前記難燃系を添加し、
(d1)発泡剤を包入する(englobe)ポリマー溶融物を均質化し、
(e1)ポリマー溶融物(d1)を、200℃以下かつ得られるポリマー組成物のTg以上の温度に均質に冷却し、
(f1)ポリマー溶融物をダイに通して押出成形して、発泡ポリマーシートを得ることを含む。
【0056】
本発明の更なる目的である発泡押出成形シートを製造する方法の実施形態において、ビニル芳香族ポリマーに添加されるコークスの不透熱性充填剤は、ポリマーに対して最高で5質量%まで、例えば0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜4.5質量%のグラファイト及び/又はカーボンブラックをそれぞれ含むことができる。この天然又は合成のグラファイトは、粒径(MT50)0.5〜50μm及び表面積5〜50m2/gを有することができる。カーボンブラックは、平均粒径10〜1000nm及び表面積5〜40m2/gを有することができる。
【0057】
本発明の目的である発泡押出成形シートを製造する方法の代替の実施形態においては、ペレットの形態のビニル芳香族ポリマーを、全て又は部分的に、上述の方法の1つにおいて説明した又はそれに従って調製されたビーズ/顆粒状のビニル芳香族ポリマーの組成物に置き換える。
【0058】
また、ビニル芳香族ポリマーを基本とした発泡押出成形シートを製造する方法において、不透熱性充填剤は、マスターバッチで使用することができる。
【0059】
ビニル芳香族ポリマーの発泡押出成形シートを調製する方法についての更なる詳細は、国際特許出願第06/128656号(WO06/128656)のパンフレットに見つけることができる。
【0060】
本発明をより深く理解し、また具体化するために、以下に幾つかの例示的且つ非限定的な実施例を挙げる。
【実施例】
【0061】
実施例1
混合物を、閉鎖され且つ攪拌された容器内に投入する。この混合物は150質量部の水、0.2部のピロリン酸ナトリウム、100部のスチレン、0.25部のtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、0.25部のtert−ブチルペルベンゾエート及び1部のか焼コークス4023(Asbury Graphite Mills社(米国)が販売。粒径(MT50%)約5μm、BET約20m2/gを有する)から成る。この混合物を攪拌しながら90℃にまで加熱する。
【0062】
90℃での約2時間にわたる加熱後、4部のポリビニルピロリドン溶液(10%)を添加する。この混合物を依然として撹拌しながら100℃にまで更に2時間にわたって加熱し、n−ペンタンとi−ペンタンとの70/30の混合物を7部添加し、混合物全体を更に4時間にわたって125℃にまで加熱する。次に、混合物を冷却し、バッチを取り出す。
【0063】
続いてこのようにして生成された発泡性ポリマーの顆粒を回収し、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドと縮合させた脂肪アルコールから成る0.05%の非イオン界面活性剤(Huntsman社が商標名Empilan2638として販売)を含有する脱塩水で洗浄する。次に顆粒を温風流で乾燥させ、グリセリンをベースとしたエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの縮合物から成る0.02%の非イオン界面活性剤(Dow社が販売するVoranol CP4755)を添加し、続いて篩にかけることによって直径1〜1.5mmの顆粒を分離する。
【0064】
この直径1〜1.5mmの顆粒は全体の40%を占め、30%は直径0.5〜1mmの顆粒、15%は直径0.2〜0.5mmの顆粒、15%は直径1.5〜3mmの粗い顆粒であると判明した。
【0065】
次に0.2%のモノステアリン酸グリセリン及び0.1%のステアリン酸亜鉛を直径1〜1.5mmの顆粒に添加する。
【0066】
生成物を100℃の蒸気を用いて予備発泡させ、1日かけてエイジングに供し、ブロック(寸法1040x1040x550mmを有する)の成型に使用する。
【0067】
次にブロックを切断して平坦なシートを準備し、これについて熱伝導性を測定した。70℃の炉内での滞留5日後に測定された熱伝導性は35.0mW/mKであったのに対し、対照としての従来品(EXTIR A−5000)で作製した同じ密度(17g/l)を有するシートの熱伝導性は40mW/mKであった。
【0068】
比較例1
実施例1と同じ手順を採用する。ただし、コークスをConcarb社(米国)製のカーボンブラックN990で置き換える。このカーボンの1次粒子の直径は約230nmであり、表面積(BET)は約12m2/gである。
【0069】
得られたシートは、36.5mW/mKの熱伝導性を有する。
【0070】
実施例2
混合物を、閉鎖され且つ攪拌された容器内に投入する。この混合物は150質量部の水、0.2部のリン酸三カルシウムナトリウム、100部のスチレン、0.25部のtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、0.25部のtert−ブチルペルベンゾエート、0.01部のメタ重亜硫酸ナトリウム及び実施例1で使用したコークス2部から成る。この混合物を攪拌しながら90℃にまで加熱する。
【0071】
90℃での約2時間にわたる加熱後、混合物を更に2時間にわたって100℃にまで加熱し、n−ペンタンとi−ペンタンとの70/30の混合物を7部添加し、混合物を更に4時間にわたって125℃にまで加熱する。次に、混合物を冷却し、取り出す。
【0072】
このようにして生成された発泡性ポリマーの顆粒を実施例1と同様に処理し、直径1〜1.5mmの顆粒を分離する。
【0073】
直径1〜1.5mmの顆粒は全体の60%を占め、25%は直径0.5〜1mmの顆粒、5%は直径0.2〜0.5mmの顆粒、10%は直径1.5〜3mmの粗い顆粒であると判明した。
【0074】
0.2%のモノステアリン酸グリセリン及び0.1%のステアリン酸亜鉛を直径1〜1.5mmの顆粒に添加する。
【0075】
発泡及び成型を実施例1と同様に行った。熱伝導性は34.5mW/mKと判明した。
【0076】
実施例3
混合物を、閉鎖され且つ攪拌された容器内に投入する。この混合物は150質量部の水、0.2部のリン酸三カルシウムナトリウム、100部のスチレン、0.30部のtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、0.25部のtert−ブチルペルベンゾエート、0.01部のメタ重亜硫酸ナトリウム及び実施例1で使用したコークス4部から成る。この混合物を攪拌しながら90℃にまで加熱する。
【0077】
90℃での約2時間にわたる加熱後、混合物を更に2時間にわたって100℃にまで加熱し、n−ペンタンとi−ペンタンとの70/30の混合物を7部添加し、混合物を更に4時間にわたって125℃にまで加熱する。次に、混合物を冷却し、取り出す。
【0078】
このようにして生成された発泡性ポリマーの顆粒を実施例1と同様に処理し、直径1〜1.5mmの顆粒を分離する。
【0079】
直径1〜1.5mmの顆粒は全体の60%を占め、25%は直径0.5〜1mmの顆粒、5%は直径0.2〜0.5mmの顆粒、10%は直径1.5〜3mmの粗い顆粒であると判明した。
【0080】
0.2%のモノステアリン酸グリセリン及び0.1%のステアリン酸亜鉛を直径1〜1.5mmの顆粒に添加する。
【0081】
発泡及び成型を実施例1と同様に行った。熱伝導性は33mW/mKと判明した。
【0082】
実施例4
か焼コークス4023を、粒径(MT50%)約6ミクロン及びBET約11m2/gを有するニードルコークス4727タイプ(Asbury Graphite Mills社(米国)が販売)と置き換えて実施例2を繰り返した。熱伝導性は17g/lで34mW/mKと判明した。
【0083】
実施例5
2%のコークス4727に加えて2%のカーボンブラックN990(Concarb社(米国)が製造)を添加して実施例4を繰り返した。熱伝導性は、17g/lで32.5mW/mKと判明した。
【0084】
実施例6
1.5%のヘキサブロモシクロドデカンであるSaytex HP900(Albmarle社が販売)及び0.3%のジクミルペルオキシドを添加して実施例3を繰り返すことによって生成物を耐火性にした。次に、1〜1.5mmの顆粒を実施例1と同様に処理する。シートを70℃の炉内に2日間にわたって置くことによって残留ペンタンを除去する。次に、規格DIN4102に準拠した耐火挙動試験用の試料(9cmx19cmx2cm)を回収する。試料は試験を通過する。熱伝導性は変化しないままである。
【0085】
実施例7
78部のポリスチレンN1782(Polimeri Europa社が製造)、2部のエチレン−ビス−ステレアミド(stereamide)、20部の実施例1で使用したか焼コークス4023を2軸押出機内で混合する。押出成形された生成物をマスターバッチとして、以下で説明する本発明の発泡性組成物の製造において使用する。
【0086】
89.8部のエチルベンゼン、730.0部のスチレン、56.2部のα−メチルスチレン及び0.2部のジビニルベンゼンを撹拌反応器に送る。
【0087】
上述のように調製されたマスターバッチ123.8部を反応器に送り、溶解させる(全体:1000部)。反応を125℃、2時間の平均滞留時間で行う。次に、流出口の流体組成物を第2反応器に送り、反応を135℃、平均滞留時間2時間で完了させる。
【0088】
転化率72%を有する得られる組成物(以下、「組成物A」と称する)を240℃にまで加熱し、続いて脱蔵装置に送ることによって溶媒及び残留モノマーを除去する。この組成物はガラス転移温度104℃、メルトフローインデックス(MFI:200℃、5kg)8g/10分、分子量(Mw)200000g/モル及びMw/Mn比2.8を特徴とし、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である。
【0089】
組成物Aを脱蔵装置から熱交換器に送り、その温度を170℃にまで低下させる。
【0090】
120.7部のポリスチレンN2982(Polimeri Europa社が製造)、24.2部のBR−E5300(安定化ヘキサブロモシクロドデカン。Chemtura社が販売)及び5.1部のPerkadox30(登録商標)(2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン。Akzo Nobel社が販売)の全部で150部を第2の2軸押出機に送る。ギアポンプによってこの溶融した添加剤の送り圧力を260bargにまで上昇させる。次に、n−ペンタン(75%)とイソペンタン(25%)との混合物47部に加圧し、添加剤の供給部に注入する。混合を静的ミキサを使用して約190℃で完了させる。このようにして得られた組成物を以下、「組成物B」と記載する。
【0091】
組成物Bを、熱交換器から来る850部の組成物Aに添加する。次にこれらの原料を静的混合要素により、計算された7分間の平均滞留時間にわたって混合する。次に、組成物をダイに分配し、直径0.5mmを有する多数の穴を通して押出成形し、水流で迅速に冷却し、一連の回転ナイフで切断する(米国特許第7320585号明細書に記載の方法に従う)。
【0092】
顆粒化チャンバー内の圧力は5bargであり、せん断速度は、平均直径1.2mmを有する顆粒が得られるように選択される。水は冷却噴霧液として使用され、窒素はキャリアガスとして使用される。
【0093】
得られた顆粒を遠心乾燥機で乾燥させ、次にコーティングで被覆する。このコーティングは、顆粒に、乾燥顆粒1000部あたり3部のモノステアリン酸グリセリン、1部のステアリン酸亜鉛及び0.2部のグリセリンを添加することによって調製される。コーティングの添加剤は、連続スクリューミキサにより顆粒と混合される。
【0094】
顆粒の発泡及び成型は、実施例1と同様に行われた。熱伝導性は32.0mW/mKと判明した。
【0095】
実施例1と同様にして得られたシートの一部を70℃の炉内に2日間にわたって置く。次に、規格DIN4102に準拠した耐火挙動試験用の試料(9cmx19cmx2cm)を回収する。試料は試験を通過する。
【0096】
実施例8
68部のポリスチレンN1782、2部のエチレン−ビス−ステレアミド、30部のニードルコークス4727を2軸押出機内で混合する。押出成形された生成物(以下、「組成物C」と称する)をマスターバッチとして本発明の発泡性組成物の製造において使用する。
【0097】
89.8部のエチルベンゼン、853.8部のスチレン、56.4部のα−メチルスチレン(全体:1000部)を撹拌反応器に送る。
【0098】
反応を125℃、平均滞留時間2時間で行う。次に、流出する流体組成物を第2反応器に送り、反応を135℃、平均滞留時間2時間で完了させる。
【0099】
転化率72%を有する得られる組成物(以下、「組成物D」と称する)を240℃にまで加熱し、続いて脱蔵装置に送ることによって溶媒及び残留モノマーを除去する。この組成物を脱蔵装置から熱交換器に送り、その温度を170℃にまで低下させる。
【0100】
120.7部のポリスチレンN2982、24.2部のBR−E5300(安定化ヘキサブロモシクロドデカン。Chemtura社が販売)、5.1部のPerkadox30(登録商標)(2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン。Akzo Nobel社が販売)及び133.3部の上記の組成物Cの全部で283.3部を第2の2軸押出機に供給する。ギアポンプによってこの溶融した添加剤の送り圧力を260bargにまで上昇させる。次に、n−ペンタン(75%)とイソペンタン(25%)との混合物47部に加圧し、添加剤の供給部に注入する。混合を静的ミキサを使用して約190℃で完了させる。
【0101】
このようにして混合された組成物を、熱交換器から来る716.7部の組成物Dに添加する。次にこれらの原料を静的混合要素により、計算された7分間の平均滞留時間にわたって混合する。次に、実施例7と同様に、組成物をダイに分配し、直径0.7mmを有する多数の穴を通して押出成形し、水流で迅速に冷却し、一連の回転ナイフで切断することによって、この例においては平均直径1.4mmを有する顆粒を得る。
【0102】
得られる顆粒を遠心乾燥機で乾燥させ、次に先行の実施例7と同様にコーティングで被覆する。
【0103】
中空部fは7.7%であると判明した。光学顕微鏡で観察したこの空洞部の平均直径は15〜60μmである。
【0104】
顆粒の発泡及び成型は、実施例1と同様に行われた。熱伝導性は31mW/mKと判明した。
【0105】
実施例1と同様にして得られたシートの一部を70℃の炉内に2日間にわたって置く。次に、規格DIN4102に準拠した耐火挙動試験用の試料(9cmx19cmx2cm)を回収する。試料は試験を通過する。
【0106】
実施例9
926.5部のポリスチレンN1782、40部のニードルコークス4727、10部のHTP2タルク(Imi Fabi社が製造)、4部のPerkadox30及び19.5部のBR−E5300(全体:1000部)を2軸押出機で混合する。
【0107】
このようにして得られた混合物の圧力を、ギアポンプで250barにする。
【0108】
このようにして得られた溶融組成物95部を、n−ペンタン(75%)とイソペンタン(25%)との混合物5部と混合する。
【0109】
得られた生成物の温度を160℃にする。次に、実施例8に記載の条件下でこの生成物を顆粒化し、乾燥させ、顆粒をコーティングで被覆する。
【0110】
中空部は6.5%と判明した。
【0111】
顆粒の発泡及び成型は、実施例1と同様に行われた。熱伝導性は30.8mW/mKと判明した。
【0112】
実施例1と同様にして得られたシートの一部を70℃の炉内に2日間にわたって置く。次に、規格DIN4102に準拠した耐火挙動試験用の試料(9cmx19cmx2cm)を回収する。試料は試験を通過する。
【0113】
実施例10
コークス4023の濃度を123.8部から247.6部に上げて実施例7を繰り返した。実施例7と同様に、247.6部の濃縮物を反応器に送り、溶解させる(全体:1000部)。熱伝導性は30.5mW/mKと判明した。
【0114】
実施例11
98部のポリスチレンN1782及び2部の実施例1のか焼コークス4023から成る混合物Aを、直列に並ぶ2基の押出機から成る系に連続的に送る。
【0115】
第1押出機内の温度は220℃であり、ポリスチレンを溶融させ、添加剤と混合させることができる。
【0116】
このようにして得られた混合物に、100部の混合物Aに対して、発泡剤として2部のエチルアルコール及び4部の二酸化炭素を添加する。
【0117】
発泡系を含むこのポリマー溶融物を均質化し、120℃にまで冷却し、矩形の断面及び寸法300mmx1.5mmを有するダイを通して押出成形する。
【0118】
厚さ120mmを有する連続シートが得られる。このシートの密度は35g/lであり、シート内部の気泡(実質的に球状)の平均サイズは約500μmである。熱伝導性は34mW/mKと判明した。
【0119】
比較例11
実施例11と同じ手順を繰り返す。ただし不透熱性剤を混合しない。
【0120】
得られたシートは密度35g/lを有し、内部の気泡の平均サイズはここでもまた約500μmである。熱伝導性は38mW/mKと判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性ビニル芳香族ポリマーの組成物であって、
(a)50〜100質量%の1種以上のビニル芳香族モノマー及び0〜50質量%の少なくとも1種の共重合性モノマーを含むベースを重合することによって得られるポリマーマトリックスと、
(b)前記ポリマーマトリックス中に包み入れられる、前記ポリマー(a)に対して1〜10質量%の発泡剤と、
(c)平均粒径0.5〜100μm及びASTM D−3037/89(BET)に準拠して測定した表面積5〜50m2/gを有する粒子の形態のコークスを含む、前記ポリマー(a)に対して0.05〜25質量%の不透熱性充填材とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記不透熱性コークス充填材が、前記ポリマー(a)に対して最高で5質量%までのグラファイト及び/又はカーボンブラックを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
天然又は合成の前記グラファイトが、平均粒径0.5〜50μm及び表面積5〜50m2/gを有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックが、平均粒径10〜1000nm及び表面積5〜40m2/gを有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマー(a)に対して0.1〜8質量%の、少なくとも30質量%の臭素を含有する自消性の臭素化添加剤及び、前記ポリマー(a)に対して0.05〜2質量%の、少なくとも1つの不安定なC−C又はO−O結合を有する相乗剤を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡性ビニル芳香族ポリマーを用いて得られる発泡物品であって、密度5〜50g/l及び熱伝導性25〜50mW/mKを有することを特徴とする発泡物品。
【請求項7】
ビニル芳香族ポリマーの発泡押出成形シートであって、平均粒径0.5〜100μm及びASTM D−3037/89(BET)に準拠して測定した表面積5〜50m2/gを有する粒子の形態の前記コークスを含む0.05〜25質量%の不透熱性充填材を含有する、密度10〜200g/l、平均気泡寸法0.05〜1.00mmのビニル芳香族ポリマーの気泡マトリックスを含むことを特徴とするシート。
【請求項8】
不透熱性コークス充填材が、前記ポリマーに対して、それぞれ最高で5質量%までのグラファイト及び/又はカーボンブラックを含む、請求項7に記載の発泡押出成形シート。
【請求項9】
請求項1〜5に記載のビーズ又は顆粒状の発泡性ビニル芳香族ポリマーの組成物を調製する方法であって、水性懸濁液中で、1種以上のビニル芳香族モノマーを、場合によっては最高で50質量%までの量で少なくとも1種の重合性コモノマーと共に、平均粒径(寸法)0.5〜100μm及び表面積5〜50m2/gを有する粒子の形態の前記コークスを含む不透熱性充填材の存在下で、並びに少なくとも、ペルオキシドラジカル開始剤及び重合前、重合中又は重合の終わりに添加される発泡剤の存在下で重合することを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記不透熱性充填材がまた、前記ポリマーに対して、最高で5質量%までのグラファイト及び/又はカーボンブラックをも含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水中に懸濁させる前記ビニル芳香族モノマーの試薬溶液の粘度を、該溶液中にビニル芳香族ポリマーを前記ビニル芳香族モノマーの質量に対して最高で1〜30質量%の濃度にまで溶解させることによって増大させる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
水中に懸濁させる前記ビニル芳香族モノマーの試薬溶液の粘度を、1〜30質量%のポリマーの濃度が得られるまで、前記モノマー又は混合物又は複数のモノマーを塊状予備重合することによって増大させる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
重合の終わりに、発泡性ポリマーの実質的に球状のビーズ/顆粒が平均直径0.2〜2mmで得られ、該ビーズ/顆粒の内部に、前記コークス及び前記見込まれる他の添加剤を含む前記不透熱性充填材が分散される、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜5に記載のビーズ又は顆粒状の発泡性ビニル芳香族ポリマーの組成物を連続塊状で調製する方法であって、以下の一連の工程:
(i)顆粒状の又は既に溶融状態にある、平均分子量(Mw)50000〜250000、好ましくは70000〜200000を有するビニル芳香族ポリマーを、平均粒径0.5〜100μm及び表面積5〜50m2/g、好ましくは5〜20m2/gを有する粒子の形態の前記コークスを含む不透熱性充填剤、並びに見込まれる他の添加剤と混合する工程、
(ii)任意に、まだ溶融状態にないならば、混合物(i)の前記ビニル芳香族ポリマーを前記ビニル芳香族ポリマーの融点より高い温度に加熱する工程、
(iii)前記発泡剤及び前記難燃系等の見込まれる他の添加剤を、溶融した前記ポリマー中に組み入れる工程、
(iv)このようにして得られたポリマー組成物を、静的又は動的混合要素により混合する工程、
(v)このようにして得られた組成物を、ダイ、切断チャンバー及び切断システムを備えた装置で顆粒化する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記不透熱性充填剤がまた、最終ポリマーに対して、最高で5質量%までのグラファイト及び/又はカーボンブラックをも含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
顆粒化の終わりに、発泡性ポリマーの実質的に球状のビーズ/顆粒が平均直径0.2〜2mmで得られる、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも前記不透熱性添加剤を、平均分子量(Mw)50000〜250000を有するビニル芳香族ポリマーをベースとするマスターバッチ中に組み入れることが可能である、請求項9〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記コークス及び任意に前記カーボンブラック及び/又はグラファイトを含む、前記マスターバッチ中の不透熱性充填剤の含有量が、15〜60質量%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ペレットの形態の前記マスターバッチが、ビニル芳香族モノマー中に溶解される、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ペレットの形態の前記マスターバッチが、前記顆粒又は溶液中での重合から得られる溶融状態の前記ポリマーと混合される、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
ペレットの形態の前記マスターバッチを、前記ビニル芳香族モノマー/溶媒混合物中に溶解した後、溶液中での重合のために反応器に送る、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項7又は8に記載のビニル芳香族ポリマーの発泡押出成形シートを製造する方法であって、
(a1)ペレットの形態のビニル芳香族ポリマーと、前記ポリマーに対して0.05〜25質量%の、平均粒径(寸法)0.5〜100μm及びASTM D−3037−89(BET)に準拠して測定した表面積5〜50m2/gを有する粒子の形態の前記コークスを含む、少なくとも1種の不透熱性充填材とを混合する工程、
(b1)前記混合物(a1)を180〜250℃の温度に加熱して、均質化に供されるポリマー溶融物を得る工程、
(c1)前記ポリマー溶融物に少なくとも1種の発泡剤、及び場合によっては添加剤、例えば難燃系を添加する工程、
(d1)前記発泡剤を包入する前記ポリマー溶融物を均質化する工程、
(e1)前記ポリマー溶融物(d1)を、200℃以下かつ得られるポリマー組成物のTg以上の温度に均質に冷却する工程、
(f1)前記ポリマー溶融物をダイに通して押出成形して、発泡ポリマーシートを得る工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記ビニル芳香族ポリマーに添加されるコークスの不透熱性充填剤が、前記ポリマーに対して、最高で5質量%までのグラファイト及び/又はカーボンブラックを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ペレットの形態の前記ビニル芳香族ポリマーが、全て又は部分的に、請求項9〜21のいずれかにおいて記載された又は調製されたビーズ/顆粒状のビニル芳香族ポリマーの組成物により置き換えられる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
ペレットの形態の前記ビニル芳香族ポリマーが、全て又は部分的に、前記不透熱性充填剤が分散されている、マスターバッチ又は消費後の最終製品に由来する派生物としてのビニル芳香族ポリマーにより置き換えられる、請求項22又は23に記載の方法。

【公表番号】特表2011−519997(P2011−519997A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507844(P2011−507844)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003448
【国際公開番号】WO2009/135695
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(508128303)ポリメーリ エウローパ ソシエタ ペル アチオニ (24)
【Fターム(参考)】