有機分子メモリ
【課題】電荷保持特性に優れた有機分子メモリを提供する。
【解決手段】実施の形態の有機分子メモリは第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられ、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖を含み、電荷蓄積型分子鎖または前記抵抗変化型分子鎖が縮合多環系の基を備える有機分子層と、を備えている。
【解決手段】実施の形態の有機分子メモリは第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられ、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖を含み、電荷蓄積型分子鎖または前記抵抗変化型分子鎖が縮合多環系の基を備える有機分子層と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、有機分子メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
有機分子をメモリセルに用いると、有機分子自体のサイズが小さいためメモリセルのサイズが小さくなる。したがって、記憶密度の向上が可能となる。このため、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子を上下の電極で挟み、上下電極間に印加する電圧により抵抗を変化させ、流れる電流の差を検出することによりメモリセルを構成する試みが行われている。また、注入された電荷を保持する機能を有する分子を電極上に形成し、電極から注入される電荷を保持させ、この状態を読み出すことにより、メモリセルを構成する試みが行われている。
【0003】
もっとも、メモリセルのサイズが小さいということは、分子中の電荷と周囲の電極との間の距離が短いということになる。このため、分子と電極間の電荷の移動による分子中の電荷の消去が生じやすく、有機分子メモリの電荷保持時間(寿命またはデータ保持時間)が短くなるという問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M.A.Reed et. al,“Molecular random access memory cell”, Appl.Phys.Lett.,Vol.78,No.23,pp3735−3737(2001)
【0005】
【非特許文献2】Q.Li et. al,“Capacitance and conductance characterization of ferrocene−containg self−assembled monolayers on silicon surfaces for memory applications”, Appl.Phys.Lett.,Vol.81,No.8,pp1494−1496(2002)
【0006】
【非特許文献3】C.Li et. al,“Fabrication approach for molecular memory arrays”, Appl.Phys.Lett.,Vol.82,No.4,pp645−647(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、電荷保持特性に優れた有機分子メモリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態の有機分子メモリは第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられ、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖を含み、電荷蓄積型分子鎖または前記抵抗変化型分子鎖が縮合多環系の基を備える有機分子層と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図2】第1の実施の形態の有機分子メモリの模式断面図である。
【図3】従来技術の電荷蓄積型分子鎖の分子構造を示す図である。
【図4】有機分子層の比誘電率と寿命との関係を示す図である。
【図5】図4の有機分子層の分子構造を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の作用を説明する図である。
【図7】第1の実施の形態の作用を説明する図である。
【図8】第1の実施の形態の作用を説明する図である。
【図9】第1の実施の形態の電荷蓄積型分子鎖の分子構造を例示する図である。
【図10】第1の実施の形態の電荷蓄積型分子鎖に結合される縮合多環系の基を例示する図である。
【図11】第2の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図12】第3の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図13】第4の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図14】第5の実施の形態のメモリセル部の有機分子の分子構造を示す図である。
【図15】第5の実施の形態の有機分子メモリの模式斜視図である。
【図16】第5の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図17】第5の実施の形態の1次元方向にπ共役系が伸びた分子を構成し得る分子ユニットの例示である。
【図18】第6の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図19】第7の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
【0011】
また、本明細書中「電荷蓄積型分子鎖」とは、分子鎖内に電荷を蓄積する機能を備え、外部からの電圧の印加除去によりこの電荷を蓄積した状態と蓄積しない状態を変化させうる分子鎖を意味するものとする。
【0012】
なお、本明細書中「抵抗変化型分子鎖」とは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖を意味するものとする。
【0013】
また、本明細書中「化学結合」とは、共有結合、イオン結合、金属結合のいずれかを指す概念とし、水素結合やファンデルワールス力による結合を除外する概念とする。
【0014】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられる有機分子層を備えている。この有機分子層は電荷蓄積型分子鎖を含む。そして、この電荷蓄積型分子鎖が縮合多環系の基を備える。
【0015】
本実施の形態によれば、有機分子層内に縮合多環系の基を導入することにより、有機分子層の比誘電率が大きくなる。したがって、有機分子層中に蓄積される電荷が抜けにくくなり、有機分子メモリ(以下、単に分子メモリとも称する)の電荷保持特性が向上する。
【0016】
図1は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。図2は、本実施の形態の有機分子メモリの模式断面図である。本実施の形態の有機分子メモリは、積層ゲート型の不揮発性有機分子メモリである。
【0017】
本実施の形態の有機分子メモリは、例えば、シリコン基板(第1の導電層)10上に、有機分子層16、ブロック絶縁膜18、ゲート電極(第2の導電層)20が形成されている。そして、これらの積層構造の両側のシリコン基板10中に、例えば、不純物を拡散することで形成されるソース・ドレイン領域22を備えている。
【0018】
有機分子層16は、複数の電荷蓄積型分子鎖16aで構成される。電荷蓄積型分子鎖16aは、分子鎖内に電荷を蓄積する機能を備え、外部からの電圧の印加除去によりこの電荷を蓄積した状態と蓄積しない状態を変化させ得る分子鎖である。有機分子層16が電荷蓄積電極として機能する。有機分子層の厚さは、例えば、2〜20nm程度である。
【0019】
ブロック絶縁膜18は、例えば、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜、または高誘電率膜等で構成される。ブロック絶縁膜18は、有機分子層16とゲート電極20間の電荷の移動をブロックする機能を備える。
【0020】
本実施の形態の有機分子メモリでは、ゲート電極20と、シリコン基板10との間に電圧を印加することで、有機分子層16中に電荷を蓄積したり、この電荷を引き抜いたりする。有機分子層16中の電荷の有無によるトランジスタの閾値変化を用いてメモリセルが機能する。
【0021】
図3は、従来技術の電荷蓄積型分子鎖の分子構造を示す図である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層16中に縮合多環系の基が結合した有機分子を含んでいる。
【0022】
本実施の形態の有機分子層16を構成する電荷蓄積型分子鎖16aは、例えば、図1に示すような、分子構造を備えている。図1の電荷蓄積型分子鎖は、図3に示すような従来技術の電荷蓄積型分子鎖である亜鉛ポルフィリンの誘導体である。
【0023】
図1、図3の電荷蓄積型分子鎖は、一端の、酸素原子(0)と、シリコン基板10のシリコン原子(Si)とが化学結合している。このように、シリコン基板10表面のシリコン原子と、酸素原子(0)が結合されて、いわゆる、自己組織化単分子膜(Self−assembled monolayer:SAM)である有機分子層16が形成されている。一方、電荷蓄積型分子鎖16aの他端は、ブロック絶縁膜18と化学結合していない。
【0024】
さらに、図1の電荷蓄積型分子鎖では、亜鉛ポルフィリンに、縮合多環系の基であるアントラセンが結合している。
【0025】
縮合多環系の基は、基本的に二次元方向に広がった自由な電子であるπ電子を備えている。そして、図1に示すように、リンカーによって電極に対し1点で支持される有機分子16aは、このリンカーを回転軸として回転することが可能である。したがって、二次元方向に広がったπ電子が、回転することで、有機分子16aはみかけ上三次元的な電子分極を起こすことが可能になる。そして、有機分子16aに非局在化する電荷によって形成される電場を、隣接する有機分子16aの電子分極が打ち消すことにより、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。なお、図1に示すように、縮合多環系の基が分子鎖の長さ方向と幅方向と双方に配位していると、三次元的な電子分極がより強くなり、好ましい。
【0026】
このように、本実施の形態においては、図1に示す様に、電荷蓄積型分子鎖に縮合多環系の基を備える有機分子が含まれることで、有機分子内に電場を打ち消すような電子分極が誘起される。いいかえれば、有機分子層16の比誘電率が大きくなる。このため、例えば、図3の電荷蓄積型分子鎖を用いた場合に比べ、有機分子層16の比誘電率が大きくなる。この結果、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。なお、図3の電荷蓄積型分子鎖を用いた場合の有機分子層の比誘電率は3.0程度である。
【0027】
ここで、有機分子層16の比誘電率は、有機分子層16中の電荷蓄積型分子鎖16aの分子構造、配置密度等を調整することで適宜設定することが可能である。
【0028】
図4は、有機分子層の比誘電率と寿命(電荷保持時間)との関係を示す図である。図5は、図4の測定に用いた有機分子層の分子構造を示す図である。図4は、後述の測定結果(下記(測定1)と(測定2))から得られた結果をもとに、下記(式2)を用いて計算した。ただし、(式2)の定数項P0は理論上限である光学フォノンの振動数1015(s−1)を用いた。したがって保持時間の下限を示している。
【0029】
図4は、有機分子層の比誘電率を変化させた際の有機分子メモリの電荷保持時間を、図5に示す2つの有機分子層、すなわち、図5(a)の抵抗変化型分子鎖であるp−terphenylthiolと電子吸引基を有するフルオロアルキルチオールとで構成される有機分子層(図4中の有機分子層A)、図5(b)の電子吸引基を有する抵抗変化型分子鎖である4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolと電子吸引基を有するフルオロアルキルチオールとで構成される有機分子層(図4中の有機分子層B)を、下部電極である金と上部電極であるタングステンで挟み込んだ試料について示している。抵抗変化型分子鎖と電子吸引基を有するフルオロアルキルチオールの量比を変化させることで有機分子層の比誘電率を変化させている。
【0030】
図4に示すように、有機分子層の比誘電率が5.5以上となることで、電荷保持時間が約1秒となり、メモリとして好ましい特性を備える。さらに、比誘電率が6.0以上となることで、電荷保持時間が1時間を超え、メモリとして用いる上で、さらに好ましい電荷保持時間が実現される。ここでいう、電荷保持時間とは初期特性の37%が変化する時間であり測定温度は室温(300K)である。
【0031】
なお、有機分子メモリを構成する有機分子層の比誘電率は、基板とゲート電極間にACバイアスを印加してキャパシタンスを測定することで評価することが可能である。この際、比誘電率算出に必要な有機分子層の厚さやブロック絶縁膜の厚さは、TEM(Transmission Electoron Microscope)による観察で求めることが可能である。
【0032】
以下、本実施の形態の作用について説明する。電極(導電層)に挟まれるメモリセルの有機分子中からの電荷の消去は、
(1) 電極からの逆符号電荷のトンネリング注入、
(2) 分子内の電荷が電極にホッピング、
の2つのメカニズムによると考えられる。
【0033】
本実施の形態においては、有機分子層を構成する電荷蓄積型分子鎖が縮合多環系の基を備えることにより、有機分子層の比誘電率が上昇し、上記(1)(2)のメカニズムによる電荷の消去を抑制する。
【0034】
まず、メカニズム(1)について考察する。電極からの逆符号電荷のトンネリング注入による電荷の消去が起こりやすくなる要因として、有機分子中の電荷による電場が強いことがある。強い電場によって、分子―電極間のエネルギー障壁が低減し、トンネリング確率が増大し、有機分子層中からの電荷の消去が起きやすくなる。
【0035】
図6は、本実施の形態の作用を説明する図である。図6に示すように、有機分子層中に電荷(図6では正孔)が存在すると、電極中の反対符号の電荷をもつキャリア(図では電子が)が有機分子層中の電荷と引き合う。このため、有機分子層―電極間のポテンシャル障壁が低くなる。
【0036】
ポテンシャル障壁の形をU(x)とすると、エネルギーEを持った電極中の電荷が有機分子層中にトンネリングする確率は、以下の(式1)で示される。
【数1】
ここで、πは円周率、hはプランク定数、mは電荷の有効質量であり、A・Bは図に示した、ポテンシャルU(X)がエネルギーEの値を持つ2つの点であり、トンネリングの開始点(A)と終点(B)となる。
【0037】
(式1)から分かるように、トンネリング確率は、AB間の距離(ポテンシャルの幅)が小さく、ポテンシャルとエネルギーの差(U(X)−E)が小さいほど大きくなる。AB間の距離はU(X)の変化が大きいほど小さくなる。U(X)の変化は電場に相当するので、電場が弱いほどAB間の距離が大きくなり、トンネリング確率は小さくなる。
【0038】
したがって、トンネリングによる電荷の消去を抑制し、電荷を保持しやすくするためには、電場を弱くすることが重要である。Maxwellの方程式(電束密度保存側)からもわかるように、有機分子層中の電荷と電極との間の比誘電率を大きくすることで、電場を弱くすることが可能である。有機分子層中の電荷と電極との間とは、すなわち、有機分子層であるため、有機分子層の比誘電率を大きくすれば、トンネリングによる電荷の消去を抑制できる。
【0039】
本実施の形態においては、電荷蓄積型分子鎖に縮合多環系の基を備える有機分子を含ませることで、有機分子層の比誘電率が大きくしている。
【0040】
図7は、本実施の形態の作用を説明する図である。図7は、有機分子層が、図6よりも高い比誘電率を備えるとした場合のポテンシャル障壁の変化を示す図である。
【0041】
図6と同じエネルギーEを持った電極の電荷が有機分子層にトンネリングする場合には、トンネリングの開始点Cと終点Dを通る必要がある。CD間の距離は、図6のAB間の距離よりも大きくなり、かつ、ポテンシャルとエネルギーの差(U(X)−E)も図6の場合よりも大きいことから、トンネリング確率が図6の場合よりも小さくなる。したがって、電荷保持時間が増大する。
【0042】
次に、メカ二ズム(2)について考察する。電子分極があると、上述のように、ポテンシャル障壁が低減されトンネリングが抑制されるだけでなく、分極エネルギーが大きくなることで、分子内の電荷が電極にホッピングにより逃げることによる消去を抑制する作用も生ずる。
【0043】
図8、本実施の形態の作用を説明する図である。
【0044】
電気双極子により電場が小さくなるということは、電場のエネルギーを誘電体の分極エネルギーWの形で蓄えることである。分極エネルギーWは電荷を取り除いた場合に、周囲に散逸しなければならないエネルギーであり、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位と、1個の電子が抜けたSOMO(Singly Occupied Molecular Orbital)準位との差に相当する。
【0045】
このため、有機分子層中の電荷が、ホッピングするために必要な活性化エネルギーΔは、この分極エネルギーWの半分に等しい。したがって、この分極エネルギーWを大きくすることにより、分子からのホッピングによる電荷の流出確率を小さくすることが可能である。流出確率Pは、下記(式2)で与えられる。
【数2】
で与えられる。ここでP0は定数、Δは電荷を取り除くための活性化エネルギーである
【0046】
この分極エネルギーWを求めるためには、マクロな電場ではなく、分子レベルの分極の揺らぎを考慮した局所電場を用いなければならない。局所場Eは、分極が無いときの電場をE0として、下記(式3)で与えられる。
【数3】
【0047】
したがって、分極エネルギーWは、下記(式4)で与えられる。
【数4】
【0048】
(式4)から、比誘電率が大きいほど、分極エネルギーWが大きくなることがわかる。(式2)より、分極エネルギーWが大きいほど、流出確率Pが小さくなることがわかる。したがって、比誘電率を大きくすることにより、ホッピングが抑制される。よって、電荷保存時間が長くなる。
【0049】
以下、分極エネルギーと比誘電率の測定結果を占めす。
【0050】
(測定1)
金基板上にターフェニルチオールの自己組織化膜を形成した試料を、走査型トンネル顕微鏡を用いて観察する。分子の先端が確認できるので、分子の先端に走査型トンネル顕微鏡のプローブ針を接近させ、基盤とプローブ針間にバイアスを印加することにより、単一分子の電気特性の測定ができる。電流の測定結果から分極エネルギー(活性化エネルギー)W1を算出すると、0.36eVとなった。ターフェニルチオール分子集団の比誘電率ε1は3.1(文献値)である。
【0051】
(測定2)
金基板上にヘキサンチオール95%に対してターフェニルチオール5%となる重量混合比の自己組織化膜を形成した試料を、走査型トンネル顕微鏡を用いて観察する。ヘキサンチオールに比較しターフェニルチオールの方が分子鎖が長いため、試料上にターフェニルチオール分子の先端が飛び出た構造が観測される。この分子の先端に走査型トンネル顕微鏡のプローブ針を接近させ、基板とプローブ針間にバイアスを印加することにより、単一分子の電気特性の測定ができる。電流の測定結果から分極エネルギー(活性化エネルギー)W2を算出すると、0.22eVとなった。ヘキサンチオールの比誘電率ε2は2.3である。
【0052】
測定1と測定2から、分極エネルギーの効果を確認することができる。上の測定結果から、
【数5】
【0053】
一方、(式4)から、
【数6】
である。
【0054】
(式5)と(式6)は、測定誤差内で一致している。このように、分極エネルギー(活性化エネルギー)は比誘電率を大きくすると大きくなることが実験的にも確認される。
【0055】
以上のように、本実施の形態によれば、トンネリングおよびホッピングによる電荷の移動による電荷の消去が抑制される。よって、電荷保持特性に優れた有機分子メモリの実現が可能である。
【0056】
本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖は、電荷蓄積型分子鎖に縮合多環系の基が結合されるものであれば、上記図1(a)に示す分子構造に限られるものではない。
【0057】
図9は、本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖の分子構造を例示する図である。図9(a)は、金属ポルフィリンとその誘導体である。図中Mは金属原子または金属化合物であり、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)である。また、図中X、Yは、それぞれ独立に水素原子、アントラセン等の縮合多環系の基、または、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基等の電子吸引基である。ただし、少なくとも一部が縮合多環系の基である。
【0058】
図9(b)は金属フタロシアニンとその誘導体である。図中Mは金属原子または金属化合物であり、例えば、銅(Cu)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、酸化チタン(TiO)、塩化アルミニウム(AlCl)である。また、図中X、Yは、それぞれ独立に水素原子、アントラセン等の縮合多環系の基、または、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基等の電子吸引基である。ただし、少なくとも一部が縮合多環系の基である。
【0059】
なお、図9の電荷蓄積型分子鎖の一部に、結合対象となる導電層の材料に応じて適切なリンカーが結合される。
【0060】
図10は、本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖に結合される縮合多環系の基を例示する図である。図中、X、Y、Z、U、V、Wは、それぞれ独立に水素原子、またはハロゲン原子、シアノ基、カルボニキル基、カルボキシル基等の電子吸引基である。また、Mは電荷蓄積型分子鎖との結合部位である。
【0061】
なお、電荷蓄積型分子鎖に結合される縮合多環系の基としては、図10(b)に示されるアントラセンまたはその誘導体が対称な分子となりやすく、有機分子メモリの機能の安定性が向上するため好ましい。
【0062】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、電荷蓄積型分子鎖に結合する縮合多環系の基に、さらに電子吸引基が結合すること以外は第1の実施の形態と同様である。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、縮合多環系の基等で第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0063】
図11は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層16中の縮合多環系の基が結合した電荷蓄積型分子鎖に、さらに電子吸引基が結合される。
【0064】
図11に示すように、例えば、亜鉛ポルフィリンに、縮合多環系の基であるアントラセンが結合し、そのアントラセンに電子吸引基であるシアノ基が結合している。
【0065】
本実施の形態においては、電子吸引基を備えることにより、電荷蓄積型分子鎖中に電気双極子が形成される。この電気双極子が、電荷蓄積型分子鎖16a中の電荷による電場を緩和する。したがって、第1の実施の形態で詳述した縮合多環系の基による電子分極の作用と同様の作用により、さらに有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0066】
いいかえれば、分子中に電子吸引基を備えることで、本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖は可動で大きな電気双極子能率を備えることになる。このため、例えば、図1の電荷蓄積型分子鎖を用いた場合に比べ、有機分子層16の比誘電率をさらに大きくすることができる。この結果、第1の実施の形態で述べたと同様の作用により、有機分子メモリの電荷保持特性がさらに向上する。
【0067】
なお、電子吸引基については、上記シアノ基に限られるものではない。電子吸引基は、例えば、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等である。その陰イオン性が高いものほど大きな電気双極子を形成することが可能なため、比誘電率が大きくなるという観点から、フッ素原子、塩素原子、シアノ基が望ましい。
【0068】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられる有機分子層を備える。そして、有機分子層は、電荷蓄積型分子鎖を備える第1の有機分子と、縮合多環系の基を備える第2の有機分子とを含む。
【0069】
第1の実施の形態の有機分子メモリが、メモリ素子となる電荷蓄積型分子鎖自体が縮合多環系の基を備えていたのに対し、本実施の形態の有機分子メモリは、メモリ素子となる電荷蓄積型分子鎖とは別に、縮合多環系の基を備える有機分子を有機分子層中に含む。この点で、第1の実施の形態と異なっている。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、電子吸引基等で第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0070】
図12は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル(分子セル)部の模式断面図である。
【0071】
複数の電荷蓄積型分子鎖(第1の有機分子)16aと、縮合多環系の基を備える複数の有機分子16b(第2の有機分子)とから有機分子層16が構成される。
【0072】
図12に示すように、電荷蓄積型分子鎖16aは、例えば、亜鉛ポルフィリンである。また、縮合多環系の基を備える有機分子16bは、例えば、アントラセンが結合した亜鉛ポルフィリン誘導体である。
【0073】
本実施の形態においては、電荷蓄積型分子鎖16aの電荷蓄積状態の変化を利用することでメモリセルが実現される。そして、縮合多環系の基を備える有機分子16b中の電子分極が、電荷蓄積型分子鎖16a中の電荷による電場を緩和する。いいかえれば、例えば、電荷蓄積型分子鎖16aだけで有機分子層を構成する場合に比べ、有機分子層の比誘電率が大きくなる。この結果、第1の実施の形態で述べたと同様の作用により、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0074】
有機分子メモリの電荷保持特性を向上させる観点から、比誘電率は5.5以上が望ましく、6.0以上であることがより望ましい点についても第1の実施の形態と同様である。
【0075】
なお、有機分子層16の比誘電率は、有機分子層16中の電荷蓄積型分子鎖16aを有機分子16bの分子構造、配置密度等を調整することで適宜設定することが可能である。
【0076】
本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖16aおよび有機分子16bは、上記の構造に限られるものではない。電荷蓄積型分子鎖16aは、分子鎖内に電荷を蓄積する機能を備え、外部からの電圧の印加除去によりこの電荷を蓄積した状態と蓄積しない状態を変化させ得る分子鎖であれば足りる。
【0077】
例えば、図9に例示した分子構造を備える有機分子を適用することができる。また、縮合多環系の基としては、図10に例示した分子構造を適用することが可能である。
【0078】
なお、本実施の形態の場合、メモリ素子として機能する電荷蓄積型分子鎖16aは縮合多環系の基が結合されていても、結合されていなくてもかまわない。また、縮合多環系の基を備える有機分子16bは、電荷蓄積型分子鎖16aとともにメモリ機能を発現させる分子として利用してもしなくてもかまわない。
【0079】
なお、ここでは、縮合多環系の基が結合される第2の有機分子として、第1の有機分子である電荷蓄積型分子鎖16aの誘導体を用いる場合を例に説明した。このように、縮合多環系の基を備える有機分子16bとして、電荷蓄積型分子鎖16aの誘導体を用いることにより、2種の有機分子が混合した有機分子層16を自己組織化膜の形成が容易にできるという利点がある。もっとも、第2の有機分子は、第1の有機分子の誘導体でなくともよい。また、電荷蓄積型分子鎖以外の、縮合多環系の基が結合される有機分子であってもかまわない。
【0080】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、電荷蓄積型分子鎖に結合する縮合多環系の基に、さらに電子吸引基が結合すること以外は第3の実施の形態と同様である。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、縮合多環系の基等で第3の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0081】
図13は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層16中の縮合多環系の基を備える有機分子(第2の有機分子)16bにさらに電子吸引基が結合される。
【0082】
図13に示すように、例えば、亜鉛ポルフィリンに、縮合多環系の基であるアントラセンが結合し、そのアントラセンに電子吸引基であるシアノ基が結合している。
【0083】
本実施の形態においては、電子吸引基を備えることにより、縮合多環系の基を備える有機分子16b中に電気双極子が形成される。この電気双極子が、メモリ素子として機能する電荷蓄積型分子鎖(第1の有機分子)16a中の電荷による電場を緩和する。したがって、第1の実施の形態で詳述した縮合多環系の基による電子分極の作用と同様の作用により、さらに有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0084】
また、第2の有機分子に、電子吸引基を備えることにより、メモリ機能を担う第1の有機分子に対してエネルギー準位を変化させ、第1の有機分子から第2の有機分子への電荷の移動を抑制することも可能となる。したがって、この観点からも有機分子メモリの電荷保持特性が向上することになる。
【0085】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の実施の形態の有機分子メモリが、電荷蓄積型分子鎖を用いた積層ゲート型の有機分子メモリであるのに対し、抵抗変化型分子鎖を用いたクロスポイント型の有機分子メモリである点で異なっている。以下、電子分極による作用や効果、比誘電率を増加させることによる作用や効果等、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0086】
図15は、本実施の形態の有機分子メモリの模式斜視図である。図16は、有機分子メモリのメモリセル(分子セル)部の模式断面図である。
【0087】
本実施の形態の分子メモリは、クロスポイント型の分子メモリである。図15、図16に示すように、たとえば基板(図示せず)の上部に設けられる下部電極配線(第1の導電層)22が設けられている。そして、下部電極配線22に交差するように上部電極配線(第2の導電層)24が設けられている。電極配線のデザインルールは例えば、5〜20nm程度である。
【0088】
図15、図16に示すように、下部電極配線22と上部電極配線24との交差部の、下部電極配線22と上部電極配線24との間には、有機分子層26が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖26aが、有機分子層26を構成する。有機分子層の厚さは、例えば、1〜20nm程度である。
【0089】
そして、例えば、複数本の下部電極配線22と複数本の上部電極配線24が交差する点のそれぞれに、図15のように有機分子層26を設けてメモリセルを形成する。このようにして、複数のメモリセルで構成されるメモリセルアレイが実現される。
【0090】
本実施の形態においては、有機分子層26中に縮合多環系の基を有する有機分子が含まれることで、有機分子層26の比誘電率が大きくなる。この有機分子層26の比誘電率は有機分子メモリの電荷保持特性を向上させる観点から、比誘電率は5.5以上が望ましく、6.0以上であることがより望ましい。
【0091】
図16に示すように、本実施の形態の有機分子層26は抵抗変化型分子鎖26aで構成されている。抵抗変化型分子鎖26aの一端が下部電極配線22と化学結合している。
【0092】
下部電極配線22は、例えば、(110)面を表面とするシリコン(Si)の基板(図示せず)上に形成される。下部電極配線22は、例えば、金属材料である金(Au)である。下部電極配線22の有機分子層26に接する面は、例えば(111)面である。また、上部電極配線24は、例えば、金属材料であるモリブデン(Mo)である。
【0093】
図14は、メモリセル部の有機分子の分子構造を示す図である。図14(a)が本実施の形態の有機分子、図14(b)は従来技術の有機分子である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層26中に、縮合多環系の基が結合した有機分子を含んでいる。
【0094】
本実施の形態の有機分子層26を構成する抵抗変化型分子鎖26aは、例えば、図14(a)に示すような、分子構造を備えている。図14(a)の抵抗変化型分子鎖は、図14(b)に示すような従来技術の抵抗変化型分子鎖、4−[2−nitro−5−amino−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolの誘導体である。図14(b)に示す分子構造の抵抗変化型分子鎖は、ツアーワイア(Tour wire)とも称される。
【0095】
図14(a)、図14(b)の抵抗変化型分子鎖は、一端にリンカーとしてチオール基が存在し、硫黄原子(S)と、下部電極配線22表面の金原子(Au)とが化学結合している。ここで、リンカーとは化学結合により電極(導電層)に対して分子を固定する部位を意味する。
【0096】
このように、下部電極22表面の金原子とチオール基が結合されて、いわゆる、自己組織化単分子膜(Self−assembled monolayer:SAM)である有機分子層26が形成されている。一方、抵抗変化型分子鎖26aの他端は、上部電極24表面のモリブデン(Mo)原子と化学結合していない。
【0097】
さらに、図14(a)の抵抗変化型分子鎖26aでは、縮合多環系の基であるアントラセンが結合している。
【0098】
ここで、抵抗変化型分子鎖26aは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖である。例えば、図14(a)、図14(b)に示す分子構造を備える抵抗変化型分子鎖は、両端部の間に電圧を印加することで低抵抗状態と高抵抗状態とを切り替えることが可能である。この抵抗状態の変化を利用することでメモリセルが実現される。
【0099】
本実施の形態においては、図14(a)に示す様に、抵抗変化型分子鎖中に縮合多環系の基を備えている。このように縮合多環系の基を備えることで、本実施の形態の抵抗変化型分子鎖は電子分極を備えることになる。このため、例えば、図14(b)の抵抗変化型分子鎖を用いた場合に比べ、有機分子層26の比誘電率が大きくなる。この結果、上述のように、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。なお、図14(b)の抵抗変化型分子鎖を用いた場合の有機分子層比誘電率は3.0程度である。
【0100】
なお、有機分子層26の比誘電率は、有機分子層26中の抵抗変化型分子鎖26aの分子構造、配置密度等を調整することで適宜設定することが可能である。
【0101】
本実施の形態の抵抗変化型分子鎖は、抵抗変化型分子鎖に縮合多環系の基が結合されるものであれば、上記図14(a)に示す分子構造に限られるものではない。まず、縮合多環系の基が結合され得る抵抗変化型分子鎖としては、1次元方向にπ共役系が伸びた分子、例えば、図14(b)に示す4−[2−nitro−5−amino−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolおよびその誘導体、パラフェニレン誘導体やオリゴチオフェン誘導体・オリゴピロール誘導体・オリゴフラン誘導体・パラフェニレンビニレン誘導体等を用いることも可能である。
【0102】
図17は、1次元方向にπ共役系が伸びた分子を構成し得る分子ユニットの例示である。図17(a)はパラフェニレン、図17(b)はチオフェン、図17(c)はピロール、図17(d)はフラン、図17(e)はビニレン、図17(f)はアルキンである。
【0103】
もっとも、π共役系の長さが短い場合には、電極から注入された電子が分子上に留まることなく抜けてゆくため、電荷を蓄積させるために有る程度の長さの分子が好ましく、一次元方向の−CH=CH−のユニットで計算して、5つ以上で有ることが望ましい。これはベンゼン環(パラフェニレン)の場合、3個以上に相当する。
【0104】
また、π共役系の長さが長い場合には分子内での電荷の伝導による電圧降下などが問題になる。このため、一元方向の−CH=CH−のユニットで計算して20(ベンゼン環10個=π共役系のキャリアであるポーラロンの拡がり幅の倍)以下であることが望ましい。
【0105】
有機分子メモリを構成する電極(導電層)の材料は、上記、金とモリブデンに特に限定されるものではない。もっとも、抵抗変化型分子鎖26aの一端のリンカーが化学結合する側の電極(本実施の形態では下部電極配線22)は、自己組織化膜を形成するために、少なくとも抵抗変化型分子鎖26aが化学結合する領域については、抵抗変化型分子鎖26aの一端が化学結合を形成しやすい材料であることが望ましい。また、抵抗変化型分子鎖26aの他端側の電極(本実施の形態では上部電極配線24)は、少なくとも抵抗変化型分子鎖16aと対向する領域については、抵抗変化型分子鎖26aの一端と化学結合を形成しにくい材料であることが、電極形成後に自己組織化プロセスを用いて有機分子層を形成する観点からは望ましい。
【0106】
抵抗変化型分子鎖26aの一端のリンカーの構造によって望ましい電極材料が異なる。例えば、一端が図14のようにチオール基である場合は、化学結合する側の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすい金(Au)、銀(Ag)、またはタングステン(W)であることが特に望ましい。一方、他端の電極はタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、またはシリコン(Si)であることが望ましい。
【0107】
また、例えば、一端がアルコール基、またはカルボキシル基である場合は、化学結合する側の電極はタングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすいタンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが特に望ましい。一方、他端の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、またはシリコン(Si)であることが望ましい。
【0108】
また、例えば、一端がシラノール基である場合は、化学結合する側の電極はシリコン(Si)または金属酸化物であることが望ましい。一方、他端の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましい。
【0109】
また、電極材料として例えば、グラフェンやカーボンナノチューブを適用することも可能である。
【0110】
(第6の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられる有機分子層を備える。そして、有機分子層は、抵抗変化型分子鎖を備える第1の有機分子と、縮合多環系の基を備える第2の有機分子とを含む。
【0111】
本実施の形態の有機分子メモリは、第5の実施の形態の有機分子メモリが、メモリ素子となる抵抗変化型分子鎖自体が縮合多環系の基を備えていたのに対し、メモリ素子となる抵抗変化型分子鎖とは別に、縮合多環系の基を備える有機分子を有機分子層中に含む。この点で、第5の実施の形態と異なっている。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、電子吸引基等で第5の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0112】
図18は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル(分子セル)部の模式断面図である。
【0113】
複数の抵抗変化型分子鎖(第1の有機分子)26aと、縮合多環系の基を備える複数の有機分子(第2の有機分子)26bとから有機分子層26が構成される。
【0114】
抵抗変化型分子鎖26aは、例えば、図14(b)に示す4−[2−nitro−5−amino−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolである。また、縮合多環系の基を備える有機分子26bは、例えば、図14(a)に示すアントラセンが結合された4−[2−nitro−5−amino−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolの誘導体である。
【0115】
本実施の形態においては、抵抗変化型分子鎖26aの抵抗変化を利用することでメモリセルが実現される。そして、縮合多環系の基を備える有機分子26b中の電子分極が、抵抗変化型分子鎖26a中の電荷による電場を緩和する。したがって、第1の実施の形態で詳述した作用と同様の作用により有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0116】
また、本実施の形態においては、有機分子26b中に縮合多環系の基を備えている。このため、例えば、抵抗変化型分子鎖26aだけで有機分子層を構成する場合に比べ、有機分子層の比誘電率が大きくなる。この結果、第1の実施の形態で述べたと同様の作用により、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0117】
有機分子メモリの電荷保持特性を向上させる観点から、比誘電率は5.5以上が望ましく、6.0以上であることがより望ましい点についても第1の実施の形態と同様である。
【0118】
なお、有機分子層26の比誘電率は、有機分子層26中の抵抗変化型分子鎖26aを有機分子26bの分子構造、配置密度等を調整することで適宜設定することが可能である。
【0119】
本実施の形態の抵抗変化型分子鎖26aおよび有機分子26bは、上記の構造に限られるものではない。抵抗変化型分子鎖26aは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖であれば足りる。
【0120】
なお、本実施の形態の場合、抵抗変化型分子鎖26aは縮合多環系の基が結合されていても、結合されていなくてもかまわない。また、縮合多環系の基が結合される有機分子26bは、抵抗変化型分子鎖26aとともにメモリ機能を発現させる分子として利用してもしなくてもかまわない。
【0121】
なお、ここでは、縮合多環系の基が結合される第2の有機分子として、第1の有機分子である抵抗変化型分子鎖26aの誘導体を用いる場合を例に説明した。このように、縮合多環系の基を備える有機分子26bとして、抵抗変化型分子鎖26aの誘導体構造を用いることが、2種の有機分子が混合した有機分子層26を自己組織化膜として形成するのが容易になるという利点がある。もっとも、第2の有機分子は、第1の有機分子の誘導体でなくともよい。また、抵抗変化型分子鎖以外の縮合多環系の基が結合される有機分子であってもかまわない。
【0122】
(第7の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、縮合多環系の基を備える第2の有機分子の縮合多環系の基に、さらに電子吸引基が結合すること以外は第6の実施の形態と同様である。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、縮合多環系の基等で第6の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0123】
図19は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層26中の縮合多環系の基を備える有機分子(第2の有機分子)26bにさらに電子吸引基が結合される。
【0124】
図19に示すように、例えば、有機分子26bには縮合多環系の基であるアントラセンが結合し、そのアントラセンに電子吸引基であるシアノ基が結合している。
【0125】
本実施の形態においては、電子吸引基を備えることにより、縮合多環系の基を備える有機分子26b中に電気双極子が形成される。この電気双極子が、メモリ素子として機能する電荷蓄積型分子鎖(第1の有機分子)26a中の電荷による電場を緩和する。したがって、さらに有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0126】
また、第2の有機分子に、電子吸引基を備えることにより、メモリ機能を担う第1の有機分子に対してエネルギー準位を変化させ、第1の有機分子から第2の有機分子への電荷の移動を抑制することも可能となる。したがって、この観点からも有機分子メモリの電荷保持特性が向上することになる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例について説明する。
【0128】
(実施例)
シリコン基板上に、図13に示すように、電荷蓄積を担うポルフィリン誘導体と、ポルフィリンに電子分極(分子分極)を寄与させるための縮合多環系の基であるアントラセン誘導体が結合した分子の自己組織化膜を形成する。アントラセンには、エネルギー準位を調整し電荷蓄積を担うポルフィリン誘導体との間の電荷輸送を阻止するためにシアノ基が結合されている。
【0129】
その上に5nmの厚さのシリコン酸化膜を形成する。さらに、その上に金電極を蒸着してメモリ素子を作製する。
【0130】
シリコン基板と金電極間の容量のバイアス電圧依存性を測定する。シリコン基板を基準として金電極に−15Vの電圧を印加する前後での0から−5V領域の、容量−バイアス電圧依存性を測定する。分子に電荷が蓄えられるため、容量−バイアス電圧依存性が電荷による電位分である0.9Vシフトする。
【0131】
このシフト分の、書き込み後の経過時間による依存性を測定することにより、分子の電荷保持時間を推定することができる。この場合は、1時間程度で電荷が半減する。
【0132】
(比較例)
シリコン基板上に、図3に示すポルフィリン誘導体の自己組織化膜を形成し、その上に5nmの厚さのシリコン酸化膜を形成する。さらに、その上に金電極を蒸着して記録素子を作製する。
【0133】
その後、シリコン基板と金電極間の容量のバイアス電圧依存性を測定する。シリコン基板を基準として金電極に−15Vの電圧を印加する前後での0から−5V領域の、容量−バイアス電圧依存性を評価する。分子に電荷が蓄えられるため、容量−バイアス電圧依存性が電荷による電位分である1.1Vシフトする。
【0134】
このシフト分の、書き込み後の経過時間による依存性を測定することにより、分子の電荷保持時間を推定することができる。この場合は、時間が短いため必ずしも精度は高くないが、10秒程度で電荷が半減する。
【0135】
実施例と比較例との比較により、縮合多環系の基を有機分子層中の有機分子に導入することにより、電荷保持時間が向上することがわかる。
【0136】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態および実施例について説明した。上記、実施の形態および実施例はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、有機分子メモリ等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる有機分子メモリ等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0137】
例えば、実施の形態および実施例においては、有機分子層を構成する有機分子として、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖、縮合多環系の基を備える有機分子についてのみ言及しているが、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖、縮合多環系の基を備える有機分子に加えて、その他の有機分子が有機分子層中に含まれることを排除するものではない。
【0138】
また、有機分子メモリとして、積層ゲート型、クロスポイント型に限らず、3次元構造型等のその他の構造の有機分子メモリを採用することも可能である。
【0139】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての有機分子メモリが、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0140】
10 基板(第1の導電層)
16 有機分子層
16a 電荷蓄積型分子鎖(第1の有機分子)
16b 縮合多環系の基を備える有機分子(第2の有機分子)
20 ゲート電極(第2の導電層)
22 下部電極配線(第1の導電層)
24 上部電極配線(第2の導電層)
26 有機分子層
26a 抵抗変化型分子鎖(第1の有機分子)
26b 縮合多環系の基を備える有機分子(第2の有機分子)
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、有機分子メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
有機分子をメモリセルに用いると、有機分子自体のサイズが小さいためメモリセルのサイズが小さくなる。したがって、記憶密度の向上が可能となる。このため、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子を上下の電極で挟み、上下電極間に印加する電圧により抵抗を変化させ、流れる電流の差を検出することによりメモリセルを構成する試みが行われている。また、注入された電荷を保持する機能を有する分子を電極上に形成し、電極から注入される電荷を保持させ、この状態を読み出すことにより、メモリセルを構成する試みが行われている。
【0003】
もっとも、メモリセルのサイズが小さいということは、分子中の電荷と周囲の電極との間の距離が短いということになる。このため、分子と電極間の電荷の移動による分子中の電荷の消去が生じやすく、有機分子メモリの電荷保持時間(寿命またはデータ保持時間)が短くなるという問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M.A.Reed et. al,“Molecular random access memory cell”, Appl.Phys.Lett.,Vol.78,No.23,pp3735−3737(2001)
【0005】
【非特許文献2】Q.Li et. al,“Capacitance and conductance characterization of ferrocene−containg self−assembled monolayers on silicon surfaces for memory applications”, Appl.Phys.Lett.,Vol.81,No.8,pp1494−1496(2002)
【0006】
【非特許文献3】C.Li et. al,“Fabrication approach for molecular memory arrays”, Appl.Phys.Lett.,Vol.82,No.4,pp645−647(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、電荷保持特性に優れた有機分子メモリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態の有機分子メモリは第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられ、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖を含み、電荷蓄積型分子鎖または前記抵抗変化型分子鎖が縮合多環系の基を備える有機分子層と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図2】第1の実施の形態の有機分子メモリの模式断面図である。
【図3】従来技術の電荷蓄積型分子鎖の分子構造を示す図である。
【図4】有機分子層の比誘電率と寿命との関係を示す図である。
【図5】図4の有機分子層の分子構造を示す図である。
【図6】第1の実施の形態の作用を説明する図である。
【図7】第1の実施の形態の作用を説明する図である。
【図8】第1の実施の形態の作用を説明する図である。
【図9】第1の実施の形態の電荷蓄積型分子鎖の分子構造を例示する図である。
【図10】第1の実施の形態の電荷蓄積型分子鎖に結合される縮合多環系の基を例示する図である。
【図11】第2の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図12】第3の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図13】第4の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図14】第5の実施の形態のメモリセル部の有機分子の分子構造を示す図である。
【図15】第5の実施の形態の有機分子メモリの模式斜視図である。
【図16】第5の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図17】第5の実施の形態の1次元方向にπ共役系が伸びた分子を構成し得る分子ユニットの例示である。
【図18】第6の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【図19】第7の実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
【0011】
また、本明細書中「電荷蓄積型分子鎖」とは、分子鎖内に電荷を蓄積する機能を備え、外部からの電圧の印加除去によりこの電荷を蓄積した状態と蓄積しない状態を変化させうる分子鎖を意味するものとする。
【0012】
なお、本明細書中「抵抗変化型分子鎖」とは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖を意味するものとする。
【0013】
また、本明細書中「化学結合」とは、共有結合、イオン結合、金属結合のいずれかを指す概念とし、水素結合やファンデルワールス力による結合を除外する概念とする。
【0014】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられる有機分子層を備えている。この有機分子層は電荷蓄積型分子鎖を含む。そして、この電荷蓄積型分子鎖が縮合多環系の基を備える。
【0015】
本実施の形態によれば、有機分子層内に縮合多環系の基を導入することにより、有機分子層の比誘電率が大きくなる。したがって、有機分子層中に蓄積される電荷が抜けにくくなり、有機分子メモリ(以下、単に分子メモリとも称する)の電荷保持特性が向上する。
【0016】
図1は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。図2は、本実施の形態の有機分子メモリの模式断面図である。本実施の形態の有機分子メモリは、積層ゲート型の不揮発性有機分子メモリである。
【0017】
本実施の形態の有機分子メモリは、例えば、シリコン基板(第1の導電層)10上に、有機分子層16、ブロック絶縁膜18、ゲート電極(第2の導電層)20が形成されている。そして、これらの積層構造の両側のシリコン基板10中に、例えば、不純物を拡散することで形成されるソース・ドレイン領域22を備えている。
【0018】
有機分子層16は、複数の電荷蓄積型分子鎖16aで構成される。電荷蓄積型分子鎖16aは、分子鎖内に電荷を蓄積する機能を備え、外部からの電圧の印加除去によりこの電荷を蓄積した状態と蓄積しない状態を変化させ得る分子鎖である。有機分子層16が電荷蓄積電極として機能する。有機分子層の厚さは、例えば、2〜20nm程度である。
【0019】
ブロック絶縁膜18は、例えば、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との積層膜、または高誘電率膜等で構成される。ブロック絶縁膜18は、有機分子層16とゲート電極20間の電荷の移動をブロックする機能を備える。
【0020】
本実施の形態の有機分子メモリでは、ゲート電極20と、シリコン基板10との間に電圧を印加することで、有機分子層16中に電荷を蓄積したり、この電荷を引き抜いたりする。有機分子層16中の電荷の有無によるトランジスタの閾値変化を用いてメモリセルが機能する。
【0021】
図3は、従来技術の電荷蓄積型分子鎖の分子構造を示す図である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層16中に縮合多環系の基が結合した有機分子を含んでいる。
【0022】
本実施の形態の有機分子層16を構成する電荷蓄積型分子鎖16aは、例えば、図1に示すような、分子構造を備えている。図1の電荷蓄積型分子鎖は、図3に示すような従来技術の電荷蓄積型分子鎖である亜鉛ポルフィリンの誘導体である。
【0023】
図1、図3の電荷蓄積型分子鎖は、一端の、酸素原子(0)と、シリコン基板10のシリコン原子(Si)とが化学結合している。このように、シリコン基板10表面のシリコン原子と、酸素原子(0)が結合されて、いわゆる、自己組織化単分子膜(Self−assembled monolayer:SAM)である有機分子層16が形成されている。一方、電荷蓄積型分子鎖16aの他端は、ブロック絶縁膜18と化学結合していない。
【0024】
さらに、図1の電荷蓄積型分子鎖では、亜鉛ポルフィリンに、縮合多環系の基であるアントラセンが結合している。
【0025】
縮合多環系の基は、基本的に二次元方向に広がった自由な電子であるπ電子を備えている。そして、図1に示すように、リンカーによって電極に対し1点で支持される有機分子16aは、このリンカーを回転軸として回転することが可能である。したがって、二次元方向に広がったπ電子が、回転することで、有機分子16aはみかけ上三次元的な電子分極を起こすことが可能になる。そして、有機分子16aに非局在化する電荷によって形成される電場を、隣接する有機分子16aの電子分極が打ち消すことにより、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。なお、図1に示すように、縮合多環系の基が分子鎖の長さ方向と幅方向と双方に配位していると、三次元的な電子分極がより強くなり、好ましい。
【0026】
このように、本実施の形態においては、図1に示す様に、電荷蓄積型分子鎖に縮合多環系の基を備える有機分子が含まれることで、有機分子内に電場を打ち消すような電子分極が誘起される。いいかえれば、有機分子層16の比誘電率が大きくなる。このため、例えば、図3の電荷蓄積型分子鎖を用いた場合に比べ、有機分子層16の比誘電率が大きくなる。この結果、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。なお、図3の電荷蓄積型分子鎖を用いた場合の有機分子層の比誘電率は3.0程度である。
【0027】
ここで、有機分子層16の比誘電率は、有機分子層16中の電荷蓄積型分子鎖16aの分子構造、配置密度等を調整することで適宜設定することが可能である。
【0028】
図4は、有機分子層の比誘電率と寿命(電荷保持時間)との関係を示す図である。図5は、図4の測定に用いた有機分子層の分子構造を示す図である。図4は、後述の測定結果(下記(測定1)と(測定2))から得られた結果をもとに、下記(式2)を用いて計算した。ただし、(式2)の定数項P0は理論上限である光学フォノンの振動数1015(s−1)を用いた。したがって保持時間の下限を示している。
【0029】
図4は、有機分子層の比誘電率を変化させた際の有機分子メモリの電荷保持時間を、図5に示す2つの有機分子層、すなわち、図5(a)の抵抗変化型分子鎖であるp−terphenylthiolと電子吸引基を有するフルオロアルキルチオールとで構成される有機分子層(図4中の有機分子層A)、図5(b)の電子吸引基を有する抵抗変化型分子鎖である4−[2−amino−5−nitro−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolと電子吸引基を有するフルオロアルキルチオールとで構成される有機分子層(図4中の有機分子層B)を、下部電極である金と上部電極であるタングステンで挟み込んだ試料について示している。抵抗変化型分子鎖と電子吸引基を有するフルオロアルキルチオールの量比を変化させることで有機分子層の比誘電率を変化させている。
【0030】
図4に示すように、有機分子層の比誘電率が5.5以上となることで、電荷保持時間が約1秒となり、メモリとして好ましい特性を備える。さらに、比誘電率が6.0以上となることで、電荷保持時間が1時間を超え、メモリとして用いる上で、さらに好ましい電荷保持時間が実現される。ここでいう、電荷保持時間とは初期特性の37%が変化する時間であり測定温度は室温(300K)である。
【0031】
なお、有機分子メモリを構成する有機分子層の比誘電率は、基板とゲート電極間にACバイアスを印加してキャパシタンスを測定することで評価することが可能である。この際、比誘電率算出に必要な有機分子層の厚さやブロック絶縁膜の厚さは、TEM(Transmission Electoron Microscope)による観察で求めることが可能である。
【0032】
以下、本実施の形態の作用について説明する。電極(導電層)に挟まれるメモリセルの有機分子中からの電荷の消去は、
(1) 電極からの逆符号電荷のトンネリング注入、
(2) 分子内の電荷が電極にホッピング、
の2つのメカニズムによると考えられる。
【0033】
本実施の形態においては、有機分子層を構成する電荷蓄積型分子鎖が縮合多環系の基を備えることにより、有機分子層の比誘電率が上昇し、上記(1)(2)のメカニズムによる電荷の消去を抑制する。
【0034】
まず、メカニズム(1)について考察する。電極からの逆符号電荷のトンネリング注入による電荷の消去が起こりやすくなる要因として、有機分子中の電荷による電場が強いことがある。強い電場によって、分子―電極間のエネルギー障壁が低減し、トンネリング確率が増大し、有機分子層中からの電荷の消去が起きやすくなる。
【0035】
図6は、本実施の形態の作用を説明する図である。図6に示すように、有機分子層中に電荷(図6では正孔)が存在すると、電極中の反対符号の電荷をもつキャリア(図では電子が)が有機分子層中の電荷と引き合う。このため、有機分子層―電極間のポテンシャル障壁が低くなる。
【0036】
ポテンシャル障壁の形をU(x)とすると、エネルギーEを持った電極中の電荷が有機分子層中にトンネリングする確率は、以下の(式1)で示される。
【数1】
ここで、πは円周率、hはプランク定数、mは電荷の有効質量であり、A・Bは図に示した、ポテンシャルU(X)がエネルギーEの値を持つ2つの点であり、トンネリングの開始点(A)と終点(B)となる。
【0037】
(式1)から分かるように、トンネリング確率は、AB間の距離(ポテンシャルの幅)が小さく、ポテンシャルとエネルギーの差(U(X)−E)が小さいほど大きくなる。AB間の距離はU(X)の変化が大きいほど小さくなる。U(X)の変化は電場に相当するので、電場が弱いほどAB間の距離が大きくなり、トンネリング確率は小さくなる。
【0038】
したがって、トンネリングによる電荷の消去を抑制し、電荷を保持しやすくするためには、電場を弱くすることが重要である。Maxwellの方程式(電束密度保存側)からもわかるように、有機分子層中の電荷と電極との間の比誘電率を大きくすることで、電場を弱くすることが可能である。有機分子層中の電荷と電極との間とは、すなわち、有機分子層であるため、有機分子層の比誘電率を大きくすれば、トンネリングによる電荷の消去を抑制できる。
【0039】
本実施の形態においては、電荷蓄積型分子鎖に縮合多環系の基を備える有機分子を含ませることで、有機分子層の比誘電率が大きくしている。
【0040】
図7は、本実施の形態の作用を説明する図である。図7は、有機分子層が、図6よりも高い比誘電率を備えるとした場合のポテンシャル障壁の変化を示す図である。
【0041】
図6と同じエネルギーEを持った電極の電荷が有機分子層にトンネリングする場合には、トンネリングの開始点Cと終点Dを通る必要がある。CD間の距離は、図6のAB間の距離よりも大きくなり、かつ、ポテンシャルとエネルギーの差(U(X)−E)も図6の場合よりも大きいことから、トンネリング確率が図6の場合よりも小さくなる。したがって、電荷保持時間が増大する。
【0042】
次に、メカ二ズム(2)について考察する。電子分極があると、上述のように、ポテンシャル障壁が低減されトンネリングが抑制されるだけでなく、分極エネルギーが大きくなることで、分子内の電荷が電極にホッピングにより逃げることによる消去を抑制する作用も生ずる。
【0043】
図8、本実施の形態の作用を説明する図である。
【0044】
電気双極子により電場が小さくなるということは、電場のエネルギーを誘電体の分極エネルギーWの形で蓄えることである。分極エネルギーWは電荷を取り除いた場合に、周囲に散逸しなければならないエネルギーであり、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位と、1個の電子が抜けたSOMO(Singly Occupied Molecular Orbital)準位との差に相当する。
【0045】
このため、有機分子層中の電荷が、ホッピングするために必要な活性化エネルギーΔは、この分極エネルギーWの半分に等しい。したがって、この分極エネルギーWを大きくすることにより、分子からのホッピングによる電荷の流出確率を小さくすることが可能である。流出確率Pは、下記(式2)で与えられる。
【数2】
で与えられる。ここでP0は定数、Δは電荷を取り除くための活性化エネルギーである
【0046】
この分極エネルギーWを求めるためには、マクロな電場ではなく、分子レベルの分極の揺らぎを考慮した局所電場を用いなければならない。局所場Eは、分極が無いときの電場をE0として、下記(式3)で与えられる。
【数3】
【0047】
したがって、分極エネルギーWは、下記(式4)で与えられる。
【数4】
【0048】
(式4)から、比誘電率が大きいほど、分極エネルギーWが大きくなることがわかる。(式2)より、分極エネルギーWが大きいほど、流出確率Pが小さくなることがわかる。したがって、比誘電率を大きくすることにより、ホッピングが抑制される。よって、電荷保存時間が長くなる。
【0049】
以下、分極エネルギーと比誘電率の測定結果を占めす。
【0050】
(測定1)
金基板上にターフェニルチオールの自己組織化膜を形成した試料を、走査型トンネル顕微鏡を用いて観察する。分子の先端が確認できるので、分子の先端に走査型トンネル顕微鏡のプローブ針を接近させ、基盤とプローブ針間にバイアスを印加することにより、単一分子の電気特性の測定ができる。電流の測定結果から分極エネルギー(活性化エネルギー)W1を算出すると、0.36eVとなった。ターフェニルチオール分子集団の比誘電率ε1は3.1(文献値)である。
【0051】
(測定2)
金基板上にヘキサンチオール95%に対してターフェニルチオール5%となる重量混合比の自己組織化膜を形成した試料を、走査型トンネル顕微鏡を用いて観察する。ヘキサンチオールに比較しターフェニルチオールの方が分子鎖が長いため、試料上にターフェニルチオール分子の先端が飛び出た構造が観測される。この分子の先端に走査型トンネル顕微鏡のプローブ針を接近させ、基板とプローブ針間にバイアスを印加することにより、単一分子の電気特性の測定ができる。電流の測定結果から分極エネルギー(活性化エネルギー)W2を算出すると、0.22eVとなった。ヘキサンチオールの比誘電率ε2は2.3である。
【0052】
測定1と測定2から、分極エネルギーの効果を確認することができる。上の測定結果から、
【数5】
【0053】
一方、(式4)から、
【数6】
である。
【0054】
(式5)と(式6)は、測定誤差内で一致している。このように、分極エネルギー(活性化エネルギー)は比誘電率を大きくすると大きくなることが実験的にも確認される。
【0055】
以上のように、本実施の形態によれば、トンネリングおよびホッピングによる電荷の移動による電荷の消去が抑制される。よって、電荷保持特性に優れた有機分子メモリの実現が可能である。
【0056】
本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖は、電荷蓄積型分子鎖に縮合多環系の基が結合されるものであれば、上記図1(a)に示す分子構造に限られるものではない。
【0057】
図9は、本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖の分子構造を例示する図である。図9(a)は、金属ポルフィリンとその誘導体である。図中Mは金属原子または金属化合物であり、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)である。また、図中X、Yは、それぞれ独立に水素原子、アントラセン等の縮合多環系の基、または、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基等の電子吸引基である。ただし、少なくとも一部が縮合多環系の基である。
【0058】
図9(b)は金属フタロシアニンとその誘導体である。図中Mは金属原子または金属化合物であり、例えば、銅(Cu)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、酸化チタン(TiO)、塩化アルミニウム(AlCl)である。また、図中X、Yは、それぞれ独立に水素原子、アントラセン等の縮合多環系の基、または、ハロゲン原子、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基等の電子吸引基である。ただし、少なくとも一部が縮合多環系の基である。
【0059】
なお、図9の電荷蓄積型分子鎖の一部に、結合対象となる導電層の材料に応じて適切なリンカーが結合される。
【0060】
図10は、本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖に結合される縮合多環系の基を例示する図である。図中、X、Y、Z、U、V、Wは、それぞれ独立に水素原子、またはハロゲン原子、シアノ基、カルボニキル基、カルボキシル基等の電子吸引基である。また、Mは電荷蓄積型分子鎖との結合部位である。
【0061】
なお、電荷蓄積型分子鎖に結合される縮合多環系の基としては、図10(b)に示されるアントラセンまたはその誘導体が対称な分子となりやすく、有機分子メモリの機能の安定性が向上するため好ましい。
【0062】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、電荷蓄積型分子鎖に結合する縮合多環系の基に、さらに電子吸引基が結合すること以外は第1の実施の形態と同様である。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、縮合多環系の基等で第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0063】
図11は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層16中の縮合多環系の基が結合した電荷蓄積型分子鎖に、さらに電子吸引基が結合される。
【0064】
図11に示すように、例えば、亜鉛ポルフィリンに、縮合多環系の基であるアントラセンが結合し、そのアントラセンに電子吸引基であるシアノ基が結合している。
【0065】
本実施の形態においては、電子吸引基を備えることにより、電荷蓄積型分子鎖中に電気双極子が形成される。この電気双極子が、電荷蓄積型分子鎖16a中の電荷による電場を緩和する。したがって、第1の実施の形態で詳述した縮合多環系の基による電子分極の作用と同様の作用により、さらに有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0066】
いいかえれば、分子中に電子吸引基を備えることで、本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖は可動で大きな電気双極子能率を備えることになる。このため、例えば、図1の電荷蓄積型分子鎖を用いた場合に比べ、有機分子層16の比誘電率をさらに大きくすることができる。この結果、第1の実施の形態で述べたと同様の作用により、有機分子メモリの電荷保持特性がさらに向上する。
【0067】
なお、電子吸引基については、上記シアノ基に限られるものではない。電子吸引基は、例えば、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基等である。その陰イオン性が高いものほど大きな電気双極子を形成することが可能なため、比誘電率が大きくなるという観点から、フッ素原子、塩素原子、シアノ基が望ましい。
【0068】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられる有機分子層を備える。そして、有機分子層は、電荷蓄積型分子鎖を備える第1の有機分子と、縮合多環系の基を備える第2の有機分子とを含む。
【0069】
第1の実施の形態の有機分子メモリが、メモリ素子となる電荷蓄積型分子鎖自体が縮合多環系の基を備えていたのに対し、本実施の形態の有機分子メモリは、メモリ素子となる電荷蓄積型分子鎖とは別に、縮合多環系の基を備える有機分子を有機分子層中に含む。この点で、第1の実施の形態と異なっている。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、電子吸引基等で第1の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0070】
図12は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル(分子セル)部の模式断面図である。
【0071】
複数の電荷蓄積型分子鎖(第1の有機分子)16aと、縮合多環系の基を備える複数の有機分子16b(第2の有機分子)とから有機分子層16が構成される。
【0072】
図12に示すように、電荷蓄積型分子鎖16aは、例えば、亜鉛ポルフィリンである。また、縮合多環系の基を備える有機分子16bは、例えば、アントラセンが結合した亜鉛ポルフィリン誘導体である。
【0073】
本実施の形態においては、電荷蓄積型分子鎖16aの電荷蓄積状態の変化を利用することでメモリセルが実現される。そして、縮合多環系の基を備える有機分子16b中の電子分極が、電荷蓄積型分子鎖16a中の電荷による電場を緩和する。いいかえれば、例えば、電荷蓄積型分子鎖16aだけで有機分子層を構成する場合に比べ、有機分子層の比誘電率が大きくなる。この結果、第1の実施の形態で述べたと同様の作用により、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0074】
有機分子メモリの電荷保持特性を向上させる観点から、比誘電率は5.5以上が望ましく、6.0以上であることがより望ましい点についても第1の実施の形態と同様である。
【0075】
なお、有機分子層16の比誘電率は、有機分子層16中の電荷蓄積型分子鎖16aを有機分子16bの分子構造、配置密度等を調整することで適宜設定することが可能である。
【0076】
本実施の形態の電荷蓄積型分子鎖16aおよび有機分子16bは、上記の構造に限られるものではない。電荷蓄積型分子鎖16aは、分子鎖内に電荷を蓄積する機能を備え、外部からの電圧の印加除去によりこの電荷を蓄積した状態と蓄積しない状態を変化させ得る分子鎖であれば足りる。
【0077】
例えば、図9に例示した分子構造を備える有機分子を適用することができる。また、縮合多環系の基としては、図10に例示した分子構造を適用することが可能である。
【0078】
なお、本実施の形態の場合、メモリ素子として機能する電荷蓄積型分子鎖16aは縮合多環系の基が結合されていても、結合されていなくてもかまわない。また、縮合多環系の基を備える有機分子16bは、電荷蓄積型分子鎖16aとともにメモリ機能を発現させる分子として利用してもしなくてもかまわない。
【0079】
なお、ここでは、縮合多環系の基が結合される第2の有機分子として、第1の有機分子である電荷蓄積型分子鎖16aの誘導体を用いる場合を例に説明した。このように、縮合多環系の基を備える有機分子16bとして、電荷蓄積型分子鎖16aの誘導体を用いることにより、2種の有機分子が混合した有機分子層16を自己組織化膜の形成が容易にできるという利点がある。もっとも、第2の有機分子は、第1の有機分子の誘導体でなくともよい。また、電荷蓄積型分子鎖以外の、縮合多環系の基が結合される有機分子であってもかまわない。
【0080】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、電荷蓄積型分子鎖に結合する縮合多環系の基に、さらに電子吸引基が結合すること以外は第3の実施の形態と同様である。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、縮合多環系の基等で第3の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0081】
図13は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層16中の縮合多環系の基を備える有機分子(第2の有機分子)16bにさらに電子吸引基が結合される。
【0082】
図13に示すように、例えば、亜鉛ポルフィリンに、縮合多環系の基であるアントラセンが結合し、そのアントラセンに電子吸引基であるシアノ基が結合している。
【0083】
本実施の形態においては、電子吸引基を備えることにより、縮合多環系の基を備える有機分子16b中に電気双極子が形成される。この電気双極子が、メモリ素子として機能する電荷蓄積型分子鎖(第1の有機分子)16a中の電荷による電場を緩和する。したがって、第1の実施の形態で詳述した縮合多環系の基による電子分極の作用と同様の作用により、さらに有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0084】
また、第2の有機分子に、電子吸引基を備えることにより、メモリ機能を担う第1の有機分子に対してエネルギー準位を変化させ、第1の有機分子から第2の有機分子への電荷の移動を抑制することも可能となる。したがって、この観点からも有機分子メモリの電荷保持特性が向上することになる。
【0085】
(第5の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の実施の形態の有機分子メモリが、電荷蓄積型分子鎖を用いた積層ゲート型の有機分子メモリであるのに対し、抵抗変化型分子鎖を用いたクロスポイント型の有機分子メモリである点で異なっている。以下、電子分極による作用や効果、比誘電率を増加させることによる作用や効果等、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0086】
図15は、本実施の形態の有機分子メモリの模式斜視図である。図16は、有機分子メモリのメモリセル(分子セル)部の模式断面図である。
【0087】
本実施の形態の分子メモリは、クロスポイント型の分子メモリである。図15、図16に示すように、たとえば基板(図示せず)の上部に設けられる下部電極配線(第1の導電層)22が設けられている。そして、下部電極配線22に交差するように上部電極配線(第2の導電層)24が設けられている。電極配線のデザインルールは例えば、5〜20nm程度である。
【0088】
図15、図16に示すように、下部電極配線22と上部電極配線24との交差部の、下部電極配線22と上部電極配線24との間には、有機分子層26が設けられている。複数の抵抗変化型分子鎖26aが、有機分子層26を構成する。有機分子層の厚さは、例えば、1〜20nm程度である。
【0089】
そして、例えば、複数本の下部電極配線22と複数本の上部電極配線24が交差する点のそれぞれに、図15のように有機分子層26を設けてメモリセルを形成する。このようにして、複数のメモリセルで構成されるメモリセルアレイが実現される。
【0090】
本実施の形態においては、有機分子層26中に縮合多環系の基を有する有機分子が含まれることで、有機分子層26の比誘電率が大きくなる。この有機分子層26の比誘電率は有機分子メモリの電荷保持特性を向上させる観点から、比誘電率は5.5以上が望ましく、6.0以上であることがより望ましい。
【0091】
図16に示すように、本実施の形態の有機分子層26は抵抗変化型分子鎖26aで構成されている。抵抗変化型分子鎖26aの一端が下部電極配線22と化学結合している。
【0092】
下部電極配線22は、例えば、(110)面を表面とするシリコン(Si)の基板(図示せず)上に形成される。下部電極配線22は、例えば、金属材料である金(Au)である。下部電極配線22の有機分子層26に接する面は、例えば(111)面である。また、上部電極配線24は、例えば、金属材料であるモリブデン(Mo)である。
【0093】
図14は、メモリセル部の有機分子の分子構造を示す図である。図14(a)が本実施の形態の有機分子、図14(b)は従来技術の有機分子である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層26中に、縮合多環系の基が結合した有機分子を含んでいる。
【0094】
本実施の形態の有機分子層26を構成する抵抗変化型分子鎖26aは、例えば、図14(a)に示すような、分子構造を備えている。図14(a)の抵抗変化型分子鎖は、図14(b)に示すような従来技術の抵抗変化型分子鎖、4−[2−nitro−5−amino−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolの誘導体である。図14(b)に示す分子構造の抵抗変化型分子鎖は、ツアーワイア(Tour wire)とも称される。
【0095】
図14(a)、図14(b)の抵抗変化型分子鎖は、一端にリンカーとしてチオール基が存在し、硫黄原子(S)と、下部電極配線22表面の金原子(Au)とが化学結合している。ここで、リンカーとは化学結合により電極(導電層)に対して分子を固定する部位を意味する。
【0096】
このように、下部電極22表面の金原子とチオール基が結合されて、いわゆる、自己組織化単分子膜(Self−assembled monolayer:SAM)である有機分子層26が形成されている。一方、抵抗変化型分子鎖26aの他端は、上部電極24表面のモリブデン(Mo)原子と化学結合していない。
【0097】
さらに、図14(a)の抵抗変化型分子鎖26aでは、縮合多環系の基であるアントラセンが結合している。
【0098】
ここで、抵抗変化型分子鎖26aは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖である。例えば、図14(a)、図14(b)に示す分子構造を備える抵抗変化型分子鎖は、両端部の間に電圧を印加することで低抵抗状態と高抵抗状態とを切り替えることが可能である。この抵抗状態の変化を利用することでメモリセルが実現される。
【0099】
本実施の形態においては、図14(a)に示す様に、抵抗変化型分子鎖中に縮合多環系の基を備えている。このように縮合多環系の基を備えることで、本実施の形態の抵抗変化型分子鎖は電子分極を備えることになる。このため、例えば、図14(b)の抵抗変化型分子鎖を用いた場合に比べ、有機分子層26の比誘電率が大きくなる。この結果、上述のように、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。なお、図14(b)の抵抗変化型分子鎖を用いた場合の有機分子層比誘電率は3.0程度である。
【0100】
なお、有機分子層26の比誘電率は、有機分子層26中の抵抗変化型分子鎖26aの分子構造、配置密度等を調整することで適宜設定することが可能である。
【0101】
本実施の形態の抵抗変化型分子鎖は、抵抗変化型分子鎖に縮合多環系の基が結合されるものであれば、上記図14(a)に示す分子構造に限られるものではない。まず、縮合多環系の基が結合され得る抵抗変化型分子鎖としては、1次元方向にπ共役系が伸びた分子、例えば、図14(b)に示す4−[2−nitro−5−amino−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolおよびその誘導体、パラフェニレン誘導体やオリゴチオフェン誘導体・オリゴピロール誘導体・オリゴフラン誘導体・パラフェニレンビニレン誘導体等を用いることも可能である。
【0102】
図17は、1次元方向にπ共役系が伸びた分子を構成し得る分子ユニットの例示である。図17(a)はパラフェニレン、図17(b)はチオフェン、図17(c)はピロール、図17(d)はフラン、図17(e)はビニレン、図17(f)はアルキンである。
【0103】
もっとも、π共役系の長さが短い場合には、電極から注入された電子が分子上に留まることなく抜けてゆくため、電荷を蓄積させるために有る程度の長さの分子が好ましく、一次元方向の−CH=CH−のユニットで計算して、5つ以上で有ることが望ましい。これはベンゼン環(パラフェニレン)の場合、3個以上に相当する。
【0104】
また、π共役系の長さが長い場合には分子内での電荷の伝導による電圧降下などが問題になる。このため、一元方向の−CH=CH−のユニットで計算して20(ベンゼン環10個=π共役系のキャリアであるポーラロンの拡がり幅の倍)以下であることが望ましい。
【0105】
有機分子メモリを構成する電極(導電層)の材料は、上記、金とモリブデンに特に限定されるものではない。もっとも、抵抗変化型分子鎖26aの一端のリンカーが化学結合する側の電極(本実施の形態では下部電極配線22)は、自己組織化膜を形成するために、少なくとも抵抗変化型分子鎖26aが化学結合する領域については、抵抗変化型分子鎖26aの一端が化学結合を形成しやすい材料であることが望ましい。また、抵抗変化型分子鎖26aの他端側の電極(本実施の形態では上部電極配線24)は、少なくとも抵抗変化型分子鎖16aと対向する領域については、抵抗変化型分子鎖26aの一端と化学結合を形成しにくい材料であることが、電極形成後に自己組織化プロセスを用いて有機分子層を形成する観点からは望ましい。
【0106】
抵抗変化型分子鎖26aの一端のリンカーの構造によって望ましい電極材料が異なる。例えば、一端が図14のようにチオール基である場合は、化学結合する側の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、窒化タンタル(TaN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすい金(Au)、銀(Ag)、またはタングステン(W)であることが特に望ましい。一方、他端の電極はタンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、またはシリコン(Si)であることが望ましい。
【0107】
また、例えば、一端がアルコール基、またはカルボキシル基である場合は、化学結合する側の電極はタングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましく、この中でも特に化学結合を形成しやすいタンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが特に望ましい。一方、他端の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、またはシリコン(Si)であることが望ましい。
【0108】
また、例えば、一端がシラノール基である場合は、化学結合する側の電極はシリコン(Si)または金属酸化物であることが望ましい。一方、他端の電極は金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、タングステン(W)、窒化タングステン(WN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、モリブデン(Mo)、窒化モリブデン(MoN)、または窒化チタン(TiN)であることが望ましい。
【0109】
また、電極材料として例えば、グラフェンやカーボンナノチューブを適用することも可能である。
【0110】
(第6の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、第1の導電層と、第2の導電層と、第1の導電層と第2の導電層との間に設けられる有機分子層を備える。そして、有機分子層は、抵抗変化型分子鎖を備える第1の有機分子と、縮合多環系の基を備える第2の有機分子とを含む。
【0111】
本実施の形態の有機分子メモリは、第5の実施の形態の有機分子メモリが、メモリ素子となる抵抗変化型分子鎖自体が縮合多環系の基を備えていたのに対し、メモリ素子となる抵抗変化型分子鎖とは別に、縮合多環系の基を備える有機分子を有機分子層中に含む。この点で、第5の実施の形態と異なっている。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、電子吸引基等で第5の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0112】
図18は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル(分子セル)部の模式断面図である。
【0113】
複数の抵抗変化型分子鎖(第1の有機分子)26aと、縮合多環系の基を備える複数の有機分子(第2の有機分子)26bとから有機分子層26が構成される。
【0114】
抵抗変化型分子鎖26aは、例えば、図14(b)に示す4−[2−nitro−5−amino−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolである。また、縮合多環系の基を備える有機分子26bは、例えば、図14(a)に示すアントラセンが結合された4−[2−nitro−5−amino−4−(phenylethynyl)phenylethynyl]benzenethiolの誘導体である。
【0115】
本実施の形態においては、抵抗変化型分子鎖26aの抵抗変化を利用することでメモリセルが実現される。そして、縮合多環系の基を備える有機分子26b中の電子分極が、抵抗変化型分子鎖26a中の電荷による電場を緩和する。したがって、第1の実施の形態で詳述した作用と同様の作用により有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0116】
また、本実施の形態においては、有機分子26b中に縮合多環系の基を備えている。このため、例えば、抵抗変化型分子鎖26aだけで有機分子層を構成する場合に比べ、有機分子層の比誘電率が大きくなる。この結果、第1の実施の形態で述べたと同様の作用により、有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0117】
有機分子メモリの電荷保持特性を向上させる観点から、比誘電率は5.5以上が望ましく、6.0以上であることがより望ましい点についても第1の実施の形態と同様である。
【0118】
なお、有機分子層26の比誘電率は、有機分子層26中の抵抗変化型分子鎖26aを有機分子26bの分子構造、配置密度等を調整することで適宜設定することが可能である。
【0119】
本実施の形態の抵抗変化型分子鎖26aおよび有機分子26bは、上記の構造に限られるものではない。抵抗変化型分子鎖26aは、電場の有無や電荷の注入により抵抗が変化する機能を備える分子鎖であれば足りる。
【0120】
なお、本実施の形態の場合、抵抗変化型分子鎖26aは縮合多環系の基が結合されていても、結合されていなくてもかまわない。また、縮合多環系の基が結合される有機分子26bは、抵抗変化型分子鎖26aとともにメモリ機能を発現させる分子として利用してもしなくてもかまわない。
【0121】
なお、ここでは、縮合多環系の基が結合される第2の有機分子として、第1の有機分子である抵抗変化型分子鎖26aの誘導体を用いる場合を例に説明した。このように、縮合多環系の基を備える有機分子26bとして、抵抗変化型分子鎖26aの誘導体構造を用いることが、2種の有機分子が混合した有機分子層26を自己組織化膜として形成するのが容易になるという利点がある。もっとも、第2の有機分子は、第1の有機分子の誘導体でなくともよい。また、抵抗変化型分子鎖以外の縮合多環系の基が結合される有機分子であってもかまわない。
【0122】
(第7の実施の形態)
本実施の形態の有機分子メモリは、縮合多環系の基を備える第2の有機分子の縮合多環系の基に、さらに電子吸引基が結合すること以外は第6の実施の形態と同様である。以下、基板、電極、電価蓄積型分子鎖、縮合多環系の基等で第6の実施の形態と重複する内容については記載を省略する。
【0123】
図19は、本実施の形態の有機分子メモリのメモリセル部の模式断面図である。本実施の形態においては、メモリセル部の有機分子層26中の縮合多環系の基を備える有機分子(第2の有機分子)26bにさらに電子吸引基が結合される。
【0124】
図19に示すように、例えば、有機分子26bには縮合多環系の基であるアントラセンが結合し、そのアントラセンに電子吸引基であるシアノ基が結合している。
【0125】
本実施の形態においては、電子吸引基を備えることにより、縮合多環系の基を備える有機分子26b中に電気双極子が形成される。この電気双極子が、メモリ素子として機能する電荷蓄積型分子鎖(第1の有機分子)26a中の電荷による電場を緩和する。したがって、さらに有機分子メモリの電荷保持特性が向上する。
【0126】
また、第2の有機分子に、電子吸引基を備えることにより、メモリ機能を担う第1の有機分子に対してエネルギー準位を変化させ、第1の有機分子から第2の有機分子への電荷の移動を抑制することも可能となる。したがって、この観点からも有機分子メモリの電荷保持特性が向上することになる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例について説明する。
【0128】
(実施例)
シリコン基板上に、図13に示すように、電荷蓄積を担うポルフィリン誘導体と、ポルフィリンに電子分極(分子分極)を寄与させるための縮合多環系の基であるアントラセン誘導体が結合した分子の自己組織化膜を形成する。アントラセンには、エネルギー準位を調整し電荷蓄積を担うポルフィリン誘導体との間の電荷輸送を阻止するためにシアノ基が結合されている。
【0129】
その上に5nmの厚さのシリコン酸化膜を形成する。さらに、その上に金電極を蒸着してメモリ素子を作製する。
【0130】
シリコン基板と金電極間の容量のバイアス電圧依存性を測定する。シリコン基板を基準として金電極に−15Vの電圧を印加する前後での0から−5V領域の、容量−バイアス電圧依存性を測定する。分子に電荷が蓄えられるため、容量−バイアス電圧依存性が電荷による電位分である0.9Vシフトする。
【0131】
このシフト分の、書き込み後の経過時間による依存性を測定することにより、分子の電荷保持時間を推定することができる。この場合は、1時間程度で電荷が半減する。
【0132】
(比較例)
シリコン基板上に、図3に示すポルフィリン誘導体の自己組織化膜を形成し、その上に5nmの厚さのシリコン酸化膜を形成する。さらに、その上に金電極を蒸着して記録素子を作製する。
【0133】
その後、シリコン基板と金電極間の容量のバイアス電圧依存性を測定する。シリコン基板を基準として金電極に−15Vの電圧を印加する前後での0から−5V領域の、容量−バイアス電圧依存性を評価する。分子に電荷が蓄えられるため、容量−バイアス電圧依存性が電荷による電位分である1.1Vシフトする。
【0134】
このシフト分の、書き込み後の経過時間による依存性を測定することにより、分子の電荷保持時間を推定することができる。この場合は、時間が短いため必ずしも精度は高くないが、10秒程度で電荷が半減する。
【0135】
実施例と比較例との比較により、縮合多環系の基を有機分子層中の有機分子に導入することにより、電荷保持時間が向上することがわかる。
【0136】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態および実施例について説明した。上記、実施の形態および実施例はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、有機分子メモリ等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる有機分子メモリ等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0137】
例えば、実施の形態および実施例においては、有機分子層を構成する有機分子として、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖、縮合多環系の基を備える有機分子についてのみ言及しているが、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖、縮合多環系の基を備える有機分子に加えて、その他の有機分子が有機分子層中に含まれることを排除するものではない。
【0138】
また、有機分子メモリとして、積層ゲート型、クロスポイント型に限らず、3次元構造型等のその他の構造の有機分子メモリを採用することも可能である。
【0139】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての有機分子メモリが、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0140】
10 基板(第1の導電層)
16 有機分子層
16a 電荷蓄積型分子鎖(第1の有機分子)
16b 縮合多環系の基を備える有機分子(第2の有機分子)
20 ゲート電極(第2の導電層)
22 下部電極配線(第1の導電層)
24 上部電極配線(第2の導電層)
26 有機分子層
26a 抵抗変化型分子鎖(第1の有機分子)
26b 縮合多環系の基を備える有機分子(第2の有機分子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電層と、
第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられ、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖を含み、前記電荷蓄積型分子鎖または前記抵抗変化型分子鎖が縮合多環系の基を備える有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項2】
第1の導電層と、
第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられ、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖を含む第1の有機分子と、縮合多環系の基を備える第2の有機分子とを含む有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項3】
前記有機分子層の比誘電率が5.5以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の有機分子メモリ。
【請求項4】
前記縮合多環系の基に電子吸引基が結合していることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の有機分子メモリ。
【請求項5】
前記縮合多環系の基がアントラセンであることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の有機分子メモリ。
【請求項6】
前記電子吸引基がフッ素原子、塩素原子、または、シアノ基であることを特徴とする請求項4記載の有機分子メモリ。
【請求項1】
第1の導電層と、
第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられ、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖を含み、前記電荷蓄積型分子鎖または前記抵抗変化型分子鎖が縮合多環系の基を備える有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項2】
第1の導電層と、
第2の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の導電層との間に設けられ、電荷蓄積型分子鎖または抵抗変化型分子鎖を含む第1の有機分子と、縮合多環系の基を備える第2の有機分子とを含む有機分子層と、
を有することを特徴とする有機分子メモリ。
【請求項3】
前記有機分子層の比誘電率が5.5以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の有機分子メモリ。
【請求項4】
前記縮合多環系の基に電子吸引基が結合していることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の有機分子メモリ。
【請求項5】
前記縮合多環系の基がアントラセンであることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の有機分子メモリ。
【請求項6】
前記電子吸引基がフッ素原子、塩素原子、または、シアノ基であることを特徴とする請求項4記載の有機分子メモリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図10】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図19】
【図10】
【図17】
【公開番号】特開2012−204434(P2012−204434A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65295(P2011−65295)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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