説明

有機発光素子及びその製造方法

【課題】有機発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】OLEDを駆動する駆動トランジスタと、駆動トランジスタの動作を制御するスイッチングトランジスタとを備え、駆動トランジスタの活性層は、電流チャネルに平行な縦方向に成長した結晶構造を有し、スイッチングトランジスタの活性層は、電流チャネルに垂直な横方向に成長した結晶構造を有する有機発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子及びその製造方法に係り、さらに詳細には、互いに異なる移動度及び低いオフ電流漏れを有する複数のトランジスタを有する有機発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AM(Active−Matrix)有機発光素子は、基本的にスイッチングトランジスタと駆動トランジスタとを備える。周知のように、スイッチングトランジスタは、低いオフ電流漏れ(off−current leakage)特性が要求され、駆動トランジスタは、高い移動度特性が要求される。
【0003】
一般的に、スイッチングトランジスタおよび駆動トランジスタは、同一条件で製造された一つのシリコンフィルムから得られるため、前述のように相反する特性を有し難い。このような要求によって、高い移動度のシリコンを利用してスイッチングトランジスタと駆動トランジスタとを製造する過程において、スイッチングトランジスタの活性層にLDD(Low Doped Drain)またはオフセット構造を形成することによって、スイッチングトランジスタの移動度を落としつつ、オフ電流漏れを減少させる努力が行われてきた。
【0004】
しかし、LDDまたはオフセット構造は、結果的に有機発光素子の製造過程中に別途の工程として行われる。したがって、このようなLDDまたはオフセット構造なしに漏れ電流の抑制が可能であれば、経済的であり、このための新たな設計の研究が必要である。
【非特許文献1】IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS,VOL,9,NO.1,1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低い漏れ電流のスイッチングトランジスタと高い移動度の駆動トランジスタとを有する良質の有機発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、OLEDと、前記OLEDを駆動する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタの動作を制御するスイッチングトランジスタと、を備え、前記駆動トランジスタの活性層は、電流チャネルに平行な縦方向に成長した結晶構造を有し、前記スイッチングトランジスタの活性層は、電流チャネルに垂直な横方向に成長した結晶構造を有することを特徴とする有機発光素子が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、OLEDを駆動する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタを駆動するスイッチングトランジスタと、を備える有機発光素子の製造方法であって、基板に電気絶縁性の熱伝導層を形成する段階と、前記熱伝導層上に、前記スイッチングトランジスタの活性層を製造するためのものであって、電流チャネルに平行な縦方向に延長される第1シリコン島を形成する段階と、前記駆動トランジスタの活性層を製造するためのものであって、電流チャネルに垂直な横方向に延長される第2シリコン島を形成する段階と、前記第1シリコン島を結晶化して、前記電流チャネルに垂直な横方向に結晶が成長した前記スイッチングトランジスタの活性層を得る段階と、前記第2シリコン島を結晶化して、前記電流チャネルに平行な縦方向に結晶が成長した前記駆動トランジスタの活性層を得る段階と、前記スイッチングトランジスタおよび前記駆動トランジスタの活性層を利用して、前記スイッチングトランジスタおよび前記駆動トランジスタを製造する段階と、を含むことを特徴とする有機発光素子の製造方法が提供される。
【0008】
前記本発明の実施形態によれば、前記熱伝導層は、前記駆動トランジスタおよび前記スイッチングトランジスタの活性層の下部に、アルミニウムセラミック、コバルトセラミック、およびFeセラミックのうちいずれか一つの物質から形成される。具体的な実施形態によれば、前記熱伝導層の前記アルミニウムセラミックは、AlおよびAlNのうちいずれか一つであり、前記コバルトセラミックは、CoOおよびCoのうちいずれか一つであり、前記Feセラミックは、FeO、Fe、Fe、およびFeNのうちいずれか一つである。
【0009】
上記のような本発明の活性層を形成するためのシリコンの結晶化は、エキシマレーザーアニーリング(Excimer Laser Annealing:ELA)により行い、前記シリコンの結晶化時の前記エキシマレーザーのエネルギー密度は、400mJ/cm以上であり、前記スイッチングトランジスタの活性層の横幅および前記駆動トランジスタの活性層の縦長さが4μm以上であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有機発光素子を設計するに当たって、スイッチングトランジスタと駆動トランジスタとの要求条件を満たすことができる。すなわち、本発明によって、結晶成長方向をコントロールし、これを薄膜トランジスタの活性層に要求される方向に配置設計することによって、低移動度活性層とこれによる低漏れ電流特性を有するスイッチングトランジスタ、及び高移動度活性層とこれによる非常に速い応答性を有する駆動トランジスタを製造することができる。
【0011】
このような本発明の製造方法は、有機発光素子として多結晶シリコン薄膜トランジスタの有機発光素子及びその製造方法に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付された図面を参照して、本発明による有機発光素子及びその製造方法について説明する。
【0013】
図1は、本発明による有機発光素子及びその製造方法において利用するシリコン島の結晶化時の熱分布及びこれによる結晶化過程を説明する図面であり、図2は、シリコン島からの熱伝導経路と、これによる結晶核の生成及び成長とを説明する図面である。
【0014】
図1及び図2に示されるとおり、シリコン島(Si island、島状シリコン層)が高熱伝導性を有する物質、例えば、AlN熱伝導層上に形成されている。熱伝導層は、石英、ガラス、またはプラスチックなどの基板上に形成される。
【0015】
308nmの波長を有するXeClエキシマレーザーがシリコン島に照射されて、シリコン島が十分に加熱され、望ましくは、完全に溶融される。高温状態のシリコン島からの熱伝導は、直ちに生じ、このときに、その下部の熱伝導層による3次元的な熱伝導(熱流れ)が発生する。熱伝導層における熱伝達方向は、その下部の基板側よりも熱伝導層の横方向により速くかつ大きく起こる。図1において矢印は、これを説明する熱伝導経路を示す。図面において、暗いほど高い温度、明るいほど低い温度を示す。シリコン島の中心部は、他の部分に比べて温度が高く、その両側に向かうほど温度が低くなる。したがって、このような横方向熱的勾配(lateral thermal gradient)によって、図2に示すような熱伝導経路が生成され、これによる結晶の成長が行われる。すなわち、熱伝導層による速い熱伝達によれば、シリコン島の両端部Aから熱が速く消える。したがって、シリコン島の両端部Aにまず結晶核が生成され、次第にシリコン島の中央部に向かって成長し、最終的にシリコン島の中央部に結晶境界Bが生じる。本発明によれば、シリコン島が事前にパターニング(プレパターニング)された状態であるので、アニーリング過程においてその両端部Aから冷却が早く始まり、したがって、両端部Aで結晶核が生成される。すなわち、本発明によれば、結晶核の生成位置が決定されるので、完全溶融条件でシリコン島を熱処理することが可能になる。このような完全溶融の可能性は、非常に広いプロセスウィンドウ、すなわち非常に広い温度範囲での熱処理を許容する。一方、プレパターニングされたシリコン島は、設計に基づいてその位置及びサイズを制御することができるので、基板の所望の位置に良質の多結晶シリコンを形成することができる。
【0016】
このような本発明によれば、図3に示すような多結晶シリコンを得ることができる。図3は、本発明によって得られた多結晶シリコンのSEMイメージである。図3において、結晶幅は、2.5μmであり、多結晶シリコンの中間部に結晶境界が生じている。ここで、結晶の成長方向は、多結晶シリコンの狭い幅方向(図面で左右方向)に配向されており、したがって、幅方向に高い移動度を有し、幅方向に垂直な縦方向(図面で上下方向)の移動度は、幅方向に比べて低く現れる。本発明では、シリコン島を形成するに当たって、一方向に長く延びた矩形状(長方形)にシリコン島を形成して、長手方向に対して幅方向に結晶を成長させ、このような結晶成長方向の選択が可能な方法を有機発光素子のトランジスタの製造に利用する。
【0017】
図4は、従来の一般的なELAによって得られた多結晶シリコンのSEMイメージである。図4に示す従来方法によって得られた多結晶シリコンの粒径は、0.3μmであって、図3に示す本発明によって得られた多結晶シリコンに比べて粒径が相対的に微小である。
【0018】
前述した熱伝導層は、下部の基板及びシリコンよりも高い熱伝導性を有し、その材料としては、AlN(窒化アルミニウム)が選択されうる。AlNは、260W/mK以上の高い熱伝導度を有しつつも6.3eV程度のバンドギャップを有することによって、優れた電気的絶縁性を有する。また、物理的強度面でも高い硬度を有するだけでなく、光学的には高い透明性と共に化学的に良い安定性を有する。したがって、AlNは、本発明の多結晶シリコンフィルムの製造に望ましい物質として使われる。その他、前記熱伝導層を形成する高熱伝導性の物質としては、Al、AlNなどのアルミニウムセラミック、CoO、Coなどのコバルトセラミック、FeO、Fe、Fe、FeNなどのFeセラミック(鉄セラミック)が使われうる。
【0019】
上記のように、結晶構造の方向性を有するシリコン島は、結晶方向に平行に高い移動度を有し、結晶方向に垂直な方向に相対的に低い移動度を有する。相対的に低い移動度を有する活性層によるトランジスタは、結果的に低い漏れ電流の特性を有する。
【0020】
以下、上記のように選択的な結晶方向を有するスイッチングトランジスタ及び駆動トランジスタの活性層の製造方法を説明する。なお、説明の都合上、一層の活性層の製造方法について説明する。
【0021】
まず、図5Aに示すように、石英、ガラス、またはプラスチックからなる基板11を準備する。
【0022】
次に、図5Bに示すように、基板11上に高熱伝導性物質によって熱伝導層12を約2000Å程度の厚さに形成する。このとき、物質の蒸着には反応性スパッタが利用され、ターゲット物質は、Al、反応ガスは、10sccmの窒素が利用され、反応室の内部圧力は、10mTorr程度であり、プラズマパワーは、約300Wである。
【0023】
次に、図5Cに示すように、熱伝導層12上に非晶質シリコン(a−Si)層13を約500Åの厚さに形成する。このとき、蒸着には、CVD(Chemical Vapor Deposition)またはPVD(Physical Vapor Deposition)が利用され、望ましくは、PVDを利用する。PVDは、スパッタリングターゲットとしてSiを利用する。このとき、ガスは、50sccmのAr、気圧は、5mTorr程度に設定される。
【0024】
次に、図5Dに示すように、a−Si層13を乾式エッチング法などによってパターニングしてシリコン島13’を得る。このとき、シリコン島13’の幅は、4μmとし、長さは、4μm以上に決定し、このような非晶質シリコン島は、半導体素子、例えば、TFTの活性層として利用される。
【0025】
次に、図5Eに示すように、エキシマレーザーによりシリコン島13’をアニーリングする。このとき、レーザーは、例えば、308nmのXeClエキシマレーザーが利用され、エネルギーは、400mJ/cm以上に設定する。このような熱処理により、図5Fに示すように、基板11上の所望の位置に大きい粒径の結晶を有する薄膜トランジスタ用の活性層13”が形成され、この活性層13”は、幅方向への結晶成長方向を有して、図3に示すような結晶成長方向を有する。
【0026】
上記のような過程を通じて得られた活性層を利用して薄膜トランジスタを製造する。このとき、スイッチングトランジスタおよび駆動トランジスタを有する有機発光素子を製造するためには、各単位画素に二つのシリコン島が形成されなければならない。
【0027】
図6Aは、2T−1C構造を有する本発明による有機発光素子の等価回路図であって、一つのサブピクセルまたは単位画素を示す。図6Aを参照すれば、駆動トランジスタT1のソースに駆動電圧(VDD)が印加され、ドレインには、有機発光ダイオード(以下、OLEDと称する)のアノードが連結される。そして、駆動トランジスタT1のソースとゲートとにストレージキャパシタCが並列接続され、OLEDのカソードは、接地される。一方、駆動トランジスタT1のゲートにスイッチングトランジスタT2のドレインが接続され、ソースは、データラインに接続される。そして、スイッチングトランジスタT2のゲートは、走査ラインに接続される。図6Bは、シリコン結晶方向に対する駆動トランジスタT1及びスイッチングトランジスタT2の電流チャネル(矢印)の関係を示す図面である。図6Bに示すように、本発明による有機発光素子において、駆動トランジスタT1の電流チャネルが、活性層の結晶成長方向に平行に配置され、スイッチングトランジスタT2の電流チャネルに直交する方向に活性層の結晶方向が配置される。
【0028】
以下、本発明の具体的な実施形態による有機発光素子及びその製造方法を説明する。
【0029】
図7Aは、本発明による有機発光素子の概略的なレイアウトであって、単位画素(またはサブピクセル)の構造を示す。
【0030】
図7Aを参照すれば、データラインYsとパワーラインZdとが平行に配置され、これに直交する方向に走査ラインXsが配置される。走査ラインXsとデータラインYsとの交差部分にスイッチングトランジスタT2が位置し、走査ラインXsとパワーラインZdとの交差部の近くには、駆動トランジスタT1が配置される。スイッチングトランジスタT2と駆動トランジスタT1との間には、ストレージキャパシタCが配置される。ストレージキャパシタCの一側の電極Cs−bは、パワーラインZdから延びる部分であり、もう一つの電極Cs−aは、スイッチングトランジスタT2のドレインT2dと駆動トランジスタT1のゲートT1gとに配線層S1によって連結される。スイッチングトランジスタT2のゲートT2gは、走査ラインXsから延びる部分である。ここで、本発明の特徴によって、駆動トランジスタT1の活性層T1cは、電流チャネルに垂直な横方向に長く延び、シリコン結晶は、活性層T1cの電流チャネル(電流流動方向)に平行な縦方向に成長されている。さらに、スイッチングトランジスタT2の活性層T2cは、電流チャネルに平行な縦方向に長く延び、シリコン結晶は、電流チャネルに垂直な横方向に成長されている。なお、製造上の見地から、駆動トランジスタT1の活性層T1cの縦方向の長さ(縦長さ、図面で左右方向)及びスイッチングトランジスタT2の活性層T2cの横幅(図面で上下方向)は、4μm以上であることが好ましい。
【0031】
図7Bは、図7AのVII−VII’線に沿った断面、すなわち、ストレージキャパシタCおよび駆動トランジスタT1の断面を示す。図7Bを参照すれば、基板11にSiO及びSiONなどの絶縁物質からなるバッファ層として、シリコン島の熱処理時にシリコンの結晶化を促進する絶縁性の高い熱伝導層12が形成され、この上にストレージキャパシタCと駆動トランジスタT1とが形成される。駆動トランジスタT1は、熱伝導層12上に形成されるソースT1s及びドレインT1dを有する多結晶シリコン層p−Siと、その上のSiOなどによるゲート絶縁層18及びゲートT1gを備える。駆動トランジスタT1上には、SiO、SiNなどによるILD層(Interlayer Dielectric Layer)14が形成されている。ILD層14には、多結晶シリコン層p−Siのソース及びドレインに通じているビアホール14s,14dが形成されており、この上に金属性ソース電極T1se及びドレイン電極T1deが形成されている。
【0032】
一方、ストレージキャパシタCは、ゲートT1gと同一物質から同時に形成される下部電極Cs−aと、上部電極Cs−bと、それらの間のILD層14とを備える。ストレージキャパシタC及び駆動トランジスタT1の上には、絶縁層16が形成され、絶縁層16に駆動トランジスタT1のドレイン電極T1deなどの電気的要素に対応するビアホール16’が形成されている。ビアホール16’の上側には、ITOなどの透明性導電物質からなるアノードが形成されており、その一側には、絶縁物質からなるバンクが形成されている。前記アノード及びバンクの上には、公知の正孔輸送層、発光層、電子輸送層などを含むOLEDが形成され、その上に金属性カソードが形成されており、カソード上には、カソードを保護するパッシベーション層17が形成されている。前述の説明では、スイッチングトランジスタについては説明されていないが、スイッチングトランジスタは、駆動トランジスタと同時に製作され、スイッチングトランジスタのシリコン、ゲート絶縁層、ゲート、ILD層、ソース電極、及びドレイン電極のそれぞれが駆動トランジスタの対応する要素と同一物質によって同時に形成される。
【0033】
上述した構造の電界発光ディスプレイのレイアウトは、実現可能な本発明の具体的な一例であって、このようなレイアウト及びその修正は、本発明の技術的範囲を制限しない。
【0034】
図8Aないし図8Kは、本発明による有機発光素子の製造方法を示す工程図であって、各図面の上側は、単位画素全体のレイアウトを示し、下側の図面は、ストレージキャパシタと駆動トランジスタとが形成される部分の断面図であり、図8Cの下側の断面図は、上側の図面のB−B線に沿った断面図である。
【0035】
まず、図8Aに示すように、ガラスまたはプラスチック基板11に、バッファ層として電気的絶縁性を有すると共に高熱伝導性を有する熱伝導層12を蒸着する。高熱伝導性物質は、基板及びシリコンに比べて高い熱伝導度を有する物質として、Al、AlNなどのアルミニウムセラミック、CoN、CaOなどのコバルトセラミック、及びFeO、Fe、Fe、FeNなどのFeセラミックなどからなる群から選択されたいずれか一つの物質、望ましくは、AlNから形成する。高熱伝導性物質層の厚さは、約2000Å程度であり、蒸着には、反応性スパッタが利用される。ターゲット物質として、Al、反応ガスは、10sccmの窒素が利用され、反応室の内部圧力は、10mTorr程度であり、プラズマパワーは、約300Wである。
【0036】
次に、図8Bに示すように、熱伝導層12上に非晶質シリコン(a−Si)層13を形成する。a−Si層13の蒸着は、CVDまたはスパッタリング法などにより行われる。このとき、非晶質シリコン層の厚さは、500Å程度であり、望ましくは、PVDにより形成される。PVDは、スパッタリングターゲットとしてSiを利用する。この時のガスは、50sccmのAr、気圧は、5mTorr程度に設定される。
【0037】
次に、図8Cに示すように、湿式または乾式エッチング法により非晶質シリコン層13をパターニングして、スイッチングトランジスタT2及び駆動トランジスタT1の活性層を製造するための第1シリコン島及び第2シリコン島を形成する。このとき、本発明に特徴によって、スイッチングトランジスタT2の活性層T2cを製造するための第1シリコン島は、電流のチャネルに平行な縦方向に長く形成され、一方、駆動トランジスタT1の活性層T1cを製造するための第2シリコン島は、電流チャネルに垂直な横方向に長く形成される。
【0038】
次に、図8Dに示すように、前記第1及び第2シリコン島をELA(エキシマレーザーアニーリング)によってアニーリングして非晶質シリコンを多結晶シリコンに変換する。このとき、レーザーは、例えば、308nmのXeClエキシマレーザーが利用され、エネルギーは400mJ/cm以上に設定する。このような熱処理によれば、図1及び図2を参照して説明した過程を通じて前記第1及び第2シリコン島が結晶化される。このような結晶化を通じて、スイッチングトランジスタT2の活性層T2cは、電流チャネルの幅方向(横方向)に結晶化され、したがって、多結晶シリコンの結晶成長方向に現れる移動度に比べて低い移動度を有する。そして、駆動トランジスタT1は、多結晶シリコンの結晶成長方向に沿って電流チャネルが配置されるので、高い移動度を有する。
【0039】
次に、図8Eに示すように、基板11上の積層構造物上にゲート絶縁層(SiO)及びゲート物質としてのAlNd合金を順次に蒸着した後、マスクPRを利用してパターニングする。この過程で、スイッチングトランジスタ及び駆動トランジスタのゲートT2g,T1g及びストレージキャパシタの下部電極Cs−aが得られる。ここで、スイッチングトランジスタT2のゲートT2gは、スキャンラインXsと共に形成され、スキャンラインXsの一部をなしている。このように、ゲートT1g,T2gがパターニングされた後、ゲートT1g,T2gに覆われていないシリコン島の露出部分に対して不純物を注入し、熱処理によってドーピング領域を活性化する。
【0040】
次に、図8Fに示すように、基板11の積層構造物上の全面にSiO、SiNなどを蒸着して、ILD層14を得る。ILD層14は、二層以上の絶縁層を含みうる。
【0041】
次に、図8Gに示すように、ILD層14で前記第1及び第2シリコン島のソース、ドレイン、及び位置の異なるトランジスタとキャパシタとの電気的連結のためのコンタクホール14’を形成する。このとき、乾式エッチング法を利用するが望ましい。
【0042】
次に、図8Hに示すように、ストレージキャパシタCの上部電極Cs−b、トランジスタのソース電極T2se,T1se、及びドレイン電極T2de,T1deを形成する。この工程は、周知のAlNdなどの金属層の形成及び金属層のパターニングによって行われる。
【0043】
次に、図8Iに示すように、基板11の積層構造物上に絶縁層16を形成した後、駆動トランジスタT1のドレイン電極T1deに通じているビアホール16’を形成する。
【0044】
次に、図8Jに示すように、絶縁層16のビアホール16’上にITOなどの透明導電性物質からアノードを形成する。ここでも、アノード物質の蒸着及びそのパターニング過程が実施される。
【0045】
次に、図8Kに示すように、前記アノードが形成されていない絶縁層16の一側に絶縁物質、例えば、プロトアクチニウム(Pa)でバンクを形成した後、一般的な工程を通じて図7A及び図7Bに示された形態の本発明の実施形態による有機発光ディスプレイを完成する。
【0046】
前述した本発明の有機発光素子は、トップゲート薄膜トランジスタを適用するが、本発明の他の実施形態によれば、活性層の下部にゲートが位置するボトムゲート薄膜トランジスタを適用し、その構造及び製造方法は、容易に具現され、本発明の技術的範囲が制限されるものではない。
【0047】
このような本願発明の理解を助けるために、いくつかのの模範的な実施形態が説明され、添付された図面に示されたが、このような実施形態は、単に広い発明を例示し、これを制限しないという点が理解されなければならない。そして、本発明は、図示されて説明された構造と配列とに限定されないという点が理解されなければならない。これは、多様な他の修正が当業者に可能であるためである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、有機発光素子関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による有機発光素子の製造方法において、シリコン島の結晶化時の熱分布及びこれによる結晶化過程を説明する図面である。
【図2】本発明によって形成された島からの熱伝導経路とこれによる結晶核の生成及び成長とを説明する図面である。
【図3】本発明によって得られた多結晶シリコンのSEMイメージである。
【図4】従来方法によって得られた多結晶シリコンのSEMイメージである。
【図5A】本発明の一実施形態によって、トランジスタの活性層として使われる多結晶シリコンフィルムを製造する過程を示す工程図である。
【図5B】図5Aに後続する図である。
【図5C】図5Bに後続する図である。
【図5D】図5Cに後続する図である。
【図5E】図5Dに後続する図である。
【図5F】図5Eに後続する図である。
【図6A】本発明による有機発光素子の概略的な等価回路図である。
【図6B】図6Aに示す有機発光素子の駆動トランジスタおよびスイッチングトランジスタの活性層の結晶成長方向を説明する図面である。
【図7A】本発明の具体的な実施形態による有機発光素子の単位画素の概略的レイアウトを示す図である。
【図7B】図7AのVII−VII’線に沿った断面図である。
【図8A】本発明の実施形態による有機発光素子の製造方法の工程図である。
【図8B】図8Aに後続する図である。
【図8C】図8Bに後続する図である。
【図8D】図8Cに後続する図である。
【図8E】図8Dに後続する図である。
【図8F】図8Eに後続する図である。
【図8G】図8Fに後続する図である。
【図8H】図8Gに後続する図である。
【図8I】図8Hに後続する図である。
【図8J】図8Iに後続する図である。
【図8K】図8Jに後続する図である。
【符号の説明】
【0050】
11 基板、
12 熱伝導層、
13 非晶質シリコン層、
13’ シリコン島、
13” 薄膜トランジスタ用の活性層、
14 ILD層、
14s,14d ビアホール、
14’ コンタクホール、
16’ ビアホール、
16 絶縁層、
17 パッシベーション層、
Cs ストレージキャパシタ、
p−Si 多結晶シリコン層、
S1 配線層、
T1 駆動トランジスタ、
T1c,T2c 活性層、
T1d,T2d ドレイン、
T1g,T2g ゲート、
T1s ソース、
T1de,T2de ドレイン電極、
T1se,T2se ソース電極、
T2 スイッチングトランジスタ、
Xs 走査ライン、
Ys データライン、
Zd パワーライン、
s−a 下部電極、
s−b 上部電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードを駆動する駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタの動作を制御するスイッチングトランジスタと、を備え、
前記駆動トランジスタの活性層は、電流チャネルに平行な縦方向に成長した結晶構造を有し、
前記スイッチングトランジスタの活性層は、電流チャネルに垂直な横方向に成長した結晶構造を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
前記駆動トランジスタおよび前記スイッチングトランジスタの活性層の下部に、アルミニウムセラミック、コバルトセラミック、および鉄セラミックのうちいずれか一つの物質から電気絶縁性の熱伝導層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
前記アルミニウムセラミックは、AlおよびAlNのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記コバルトセラミックは、CoOおよびCoのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記鉄セラミックは、FeO、Fe、Fe、およびFeNのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記スイッチングトランジスタの活性層の横幅および前記駆動トランジスタの活性層の縦長さが4μm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか一項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
有機発光ダイオードを駆動する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタを駆動するスイッチングトランジスタと、を備える有機発光素子の製造方法であって、
基板に電気絶縁性の熱伝導層を形成する段階と、
前記熱伝導層上に、前記スイッチングトランジスタの活性層を製造するためのものであって、電流チャネルに平行な縦方向に延長される第1シリコン島を形成する段階と、
前記駆動トランジスタの活性層を製造するためのものであって、電流チャネルに垂直な横方向に延長される第2シリコン島を形成する段階と、
前記第1シリコン島を結晶化して、前記電流チャネルに垂直な横方向に結晶が成長した前記スイッチングトランジスタの活性層を得る段階と、
前記第2シリコン島を結晶化して、前記電流チャネルに平行な縦方向に結晶が成長した前記駆動トランジスタの活性層を得る段階と、
前記スイッチングトランジスタおよび前記駆動トランジスタの活性層を利用して、前記スイッチングトランジスタおよび前記駆動トランジスタを製造する段階と、を含むことを特徴とする有機発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記熱伝導層は、アルミニウムセラミック、コバルトセラミック、および鉄セラミックのうちいずれか一つの物質から形成することを特徴とする請求項7に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記アルミニウムセラミックは、AlおよびAlNのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記コバルトセラミックは、CoOおよびCoのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記鉄セラミックは、FeO、Fe、Fe、およびFeNのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記第1および第2シリコン島の結晶化は、エキシマレーザーアニーリングにより行うことを特徴とする請求項7ないし請求項11のうちいずれか一項に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1および第2シリコン島の結晶化時の前記エキシマレーザーのエネルギー密度は、400mJ/cm以上であることを特徴とする請求項12に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記スイッチングトランジスタの活性層の横幅および前記駆動トランジスタの活性層の縦長さが4μm以上であることを特徴とする請求項12に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記スイッチングトランジスタの活性層の横幅および前記駆動トランジスタの活性層の縦長さが4μm以上であることを特徴とする請求項7ないし請求項11のうちいずれか一項に記載の有機発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6A】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図8J】
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【図8K】
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【図3】
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【図4】
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【図6B】
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【公開番号】特開2007−221120(P2007−221120A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23321(P2007−23321)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】