説明

板ガラスの搬送装置とそれを備えた面取り装置

【課題】 板ガラスのパターン面を疵付けることなく安定して送ることができる板ガラスの搬送装置を提供すること。
【解決手段】 板ガラス1の反パターン面を支持して板ガラス1を搬送方向に送るベルト部11と、このベルト部11と対向する位置で前記板ガラス1のパターン面2に向けて所定圧の水圧を作用させパターン面支持水ガイド30とを有する送り機構40を備え、該送り機構40は、前記パターン面支持水ガイド30の水圧で前記板ガラス1を前記ベルト部11に押圧して、この板ガラス1のパターン面2に非接触の状態で、この板ガラス1を前記ベルト部11との間で挾持するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ用ガラス基板やプラズマディスプレイパネル等に用いられる板ガラスを水平状態で搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ等に使用される板ガラス(この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「板ガラス」は、液晶パネル、プラズマパネル、有機ELパネルなどのフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display;FPD)に用いられる板ガラス等をいう)は、複数枚の所定サイズ板ガラスが取れる大きさの板ガラス(マザーガラス)から製作されている。
【0003】
このような板ガラスは、加工工程中で発生するカレットや加工の結果発生するパーティクル等から表面を保護するために、ガラス表面に保護シートを貼り付ける方法が一般的に採用されている。このような板ガラスの厚みとしては、例えば、約0.7mm程度の薄さのものが製造されている。
【0004】
そして、このような板ガラスを横向きの水平状態で搬送し、複数の加工工程において所定サイズに切断後、その切断端縁の研削・研磨等の面取り加工を施すことによって所定の強度を保った製品板ガラスが製作されている。
【0005】
この種の板ガラスを搬送する先行技術として、端面加工機における板材を、下部無端ベルトと上部無端ベルトとによって挾持し、下部無端ベルトの上側移行部上面に上部無端ベルトの下側移行部下面を圧接して上部無端ベルトと下部無端ベルトを同速度で移行させるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、他の先行技術として、無端のコンベヤーベルトで板ガラスを挾持して送るようにしたものや(例えば、特許文献2参照)、上下2対の無端回動チェーンの上下対向面に板ガラス挾持部材を設け、これらの板ガラス挾持部材によって板ガラスを挟持して送るようにしたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−126583号公報
【特許文献2】特開昭53−71396号公報
【特許文献3】特開昭55−129753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したようなフラットパネルディスプレイ等に用いられる板ガラスは、表面の疵や汚れについて高い品質が求められる。また、板ガラスの反り、うねり等の表面精度についても、高い品質が求められる。
【0009】
特に、この種の板ガラスのパターン面(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、半導体等の各種薄膜層を形成する面をいう)は、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)を使用する液晶ディスプレイの場合、薄板の無アルカリガラス基板上にアモルファスシリコン、絶縁体、半導体等の各種の薄膜層を形成してパターン加工を施し、TFTや液晶駆動用の表示電極、配線を形成するため、他方のバック面(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、反パターン面をいう)に比べて非常に高い清浄度等が要求される。
【0010】
しかしながら、上記した特許文献1〜3では、板ガラスの下面と上面をベルトで挟んで送るため、板ガラスのパターン面とベルトとの間に粉塵等を挟むと、上記したようにガラス表面に保護シートを貼り付けていたとしても、その挟んだ粉塵でパターン面に疵を付けてしまう。
【0011】
特に、板ガラスを送りながら端縁を研削する工程においては、その研削粉などを挟み込むおそれが高く、それによってパターン面に疵を付けてしまうおそれが高い。このパターン面に疵を付けてしまうと、その板ガラスは廃棄処分しなければならず、歩留まりの悪化を招き生産性が低下する。
【0012】
また、板ガラスの端縁を面取りする面取り装置は実用化されているが、面取り作業の高速化、品質安定化の要請もある。また、コストダウンの要求もある。
【0013】
さらに、上記面取り装置で板ガラスの四隅部を角面取り(コーナカット)する場合、通常、この角面取り部分は他の四辺の端縁(エッジ)研削における仕上げ精度のような精度が求められていないので、端縁研削のように研磨仕上げをしていない。そのため、角面取り部分は、面粗さが粗い状態で残っている。しかし、この角面取り部分に汚れが滞留し易いので、更なる品質向上のために、角面取り部分における仕上げ精度の向上も求められている。
【0014】
そこで、本発明は、板ガラスのパターン面を疵付けることなく安定して送ることができる板ガラスの搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る板ガラスの搬送装置は、板ガラスを水平状態で送る搬送装置であって、前記板ガラスの反パターン面を支持して該板ガラスを搬送方向に送るベルト部と、該ベルト部と対向する位置で前記板ガラスのパターン面に向けて所定の液体圧を作用させる液体ガイドと、を有する送り機構を備え、該送り機構は、前記液体ガイドの液体圧で前記板ガラスを前記ベルト部に押圧して、該板ガラスのパターン面に非接触の状態で該板ガラスを前記ベルト部との間で挾持するように構成されている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「挾持」は、液体ガイドを板ガラスのパターン面と物理的に固体接触させることなく非接触で支持することをいう。また、「液体」は、「純水」等の板ガラス表面の高い清浄度を保てる液体を含む液体をいう。これにより、板ガラスのパターン面に構造物を固体接触させることなく、この板ガラスをベルト部と液体ガイドとによって挟持した状態で搬送することができるので、板ガラスのパターン面に疵を付けることなく表面の高品質を保って安定した搬送ができる。
【0016】
また、前記板ガラスの幅方向中央部に前記送り機構を配置し、前記板ガラスの両端部に、該板ガラス表面との間に液体層を形成して非接触で支持する液体ガイドを配設してもよい。このようにすれば、送り機構を板ガラスの幅方向中央部のみとして搬送装置のコスト低減を図りつつ、板ガラスをベルト部と液体ガイドとによって挟持した状態で搬送することで、板ガラスのパターン面に疵を付けることなく表面の高品質を保って安定して搬送することができる。
【0017】
また、前記板ガラスのパターン面を上方に向けて搬送するように構成してもよい。このようにすれば、液体ガイドからの液体圧による押圧力に加えて板ガラスの自重でベルト部と板ガラスとの接触状態を保ち、板ガラスのパターン面に非接触の状態でベルト部で板ガラスを安定して搬送することができる。
【0018】
一方、本発明に係る板ガラスの面取り装置は、前記いずれかの搬送装置を備え、該搬送装置で搬送する前記板ガラスの端縁を研削及び研磨する面取り機を有するとともに、前記ベルト部を搬送方向にガイドするガイド部を有している。これにより、板ガラスを、パターン面に非接触の状態で送りながら端縁(エッジ部)の研削及び研磨を正確に行うことができ、パターン面に疵が付いて歩留まりが悪化するのを抑止することができる。
【0019】
また、前記面取り機は、前記板ガラスの送り方向両側部に対向して配置された砥石部を有していてもよい。このようにすれば、搬送装置で搬送する板ガラスの両端縁を、この両端縁に対向して配置した砥石部で二辺を同時に研削及び研磨することができる。
【0020】
また、前記面取り機は、前記板ガラスの隅部を研削及び研磨する角面取り機を有していてもよい。このようにすれば、板ガラスの隅部の角面取り(コーナ面取り)を、四辺の端縁面取りの作業に組込んで連続的に行うことができる。角面取り機としては、直線または曲線状に面取りを行うようにしてもよい。
【0021】
また、前記角面取り機は、研削砥石と研磨砥石とを有する砥石部を備え、該砥石部は、前記研削砥石又は研磨砥石を前記板ガラスの端縁に位置させる配置替え機構を具備していてもよい。このようにすれば、搬送装置で搬送する板ガラスの角部を、角面取り機で研削及び研磨することができ、板ガラスの角部(コーナ部)における仕上げを高精度で行うことができる。
【0022】
また、前記板ガラスの搬送方向に前記面取り装置を2台配置し、該2台の面取り装置の間に前記板ガラスを90度回転させる反転機を備えさせてもよい。このようにすれば、上流側の面取り装置で板ガラスの二辺端縁を面取り加工した後、反転機で板ガラスを90度回転させ、その後、後流側の面取り装置で板ガラスの他の二辺端縁を面取り加工することで、板ガラスの四辺を連続的に面取り加工することができ、面取り作業のサイクルタイムを縮めることが可能となる。
【0023】
また、前記面取り装置は、長辺面取り装置と短辺面取り装置とで構成され、前記長辺面取り装置は、R面取り砥石、研磨砥石を有する砥石部を備え、前記短辺面取り装置は、R面取り砥石、研磨砥石、角面取り砥石とを有する砥石部を備えていてもよい。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「R面取り」は、板厚断面の中央部が突出するような半円状に面取りすることをいう。このようにすれば、板ガラスの送り時間が短い短辺面取り装置において、板ガラスの短辺二辺の端縁面取りと角面取りとを行うことで、長辺面取り装置と短辺面取り装置とで板ガラスの送り速度変化を抑えて連続的な面取り作業を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、板ガラスを、パターン面に非接触の状態で液体圧によって支持して搬送することができるので、板ガラスの表面の高品質を保って歩留まり良く搬送することができ、生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の搬送装置を備えた第1実施形態に係る面取り装置の搬送方向と直交する断面図である。
【図2】図1に示すベルト部の搬送方向における拡大側面図である。
【図3】図1に示すパターン面支持水ガイド部分の拡大図である。
【図4】本発明の搬送装置を備えた第2実施形態に係る面取り装置の搬送方向と直交する断面図である。
【図5】図4に示すベルト部の搬送方向における中央部断面図である。
【図6】図5に示すVI−VI断面図である。
【図7】(a) は、本発明に係る面取り装置の第1配置例を模式的に示す平面図であり、(b) は、その面取り装置における角面取り機の別な例を示す平面図である。
【図8】本発明に係る面取り装置の第2配置例を模式的に示す平面図である。
【図9】図7,8に示す面取り機の他の例による研削時の正面図である。
【図10】図9に示す面取り機による研磨時の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、板ガラス1を送りながら端縁5の面取りを行う面取り装置を例に説明する。以下の実施形態では、板ガラス1の送り方向中央部に送り機構40を備え、板ガラス1のパターン面2を上方に向けて搬送する例を説明する。また、液体として水を例に説明する。なお、板ガラス1の厚み等は誇張して示す。
【0027】
図1に示すように、搬送装置10としては、幅方向中央部に板ガラス1の下面を支持するベルト部11が設けられている。このベルト部11は、矩形状のフレーム12の上部に設けられたベルト受け13上を金属製ベルト14(例えば、ステンレス製ベルト)が移動するようになっている。この金属製ベルト14には、外周面にゴム板15が貼り付けられている。金属製ベルト14の外周にゴム板15を一体的に設けることにより、金属製ベルト14によって板ガラス1の正確な搬送方向位置制御ができるようにし、ゴム板15によって板ガラス1と柔接触するようにしている。
【0028】
このベルト部11による板ガラス1の搬送方向と直交する方向の正確な搬送は、上記金属製ベルト14の搬送方向真直度を保つことで行っている。この金属製ベルト14の搬送方向真直度は、フレーム12に設けられたサイドローラ16,17(ガイド部)で金属製ベルト14の幅方向移動を規制するようにガイドすることで保たれている。これらのサイドローラ16,17は、フレーム12に設けられた支持ブラケット18の上部に回転可能に支持されている。サイドローラ16は、正確な位置に設けられている。
【0029】
そして、図示する例では、右側のサイドローラ16が基準側ガイド部となる基準側サイドローラ16となっており、反対側のサイドローラ17は、フレーム12に設けられたバネ19で支持ブラケット18をフレーム12方向に引張ることで所定の押圧力で金属製ベルト14に押付けられている。これにより、金属製ベルト14が基準側サイドローラ16に案内されて正確な位置で移動するようにして、ベルト部11の幅方向移動を規制している。
【0030】
また、金属製ベルト14は、端部に設けられた駆動プーリ(図示略)によって駆動されている。駆動プーリは、サーボモータで駆動されており、速度及び位置が制御されている。これにより、複数の板ガラス1を同時に送る場合でも、全ての板ガラス1の送りを全く同じ動きにすることができる。
【0031】
図2に示すように、上記ベルト部11のゴム板15の表面は凹凸状に形成されている。この実施形態のゴム板15の表面は、搬送方向と交差する方向の溝20を搬送方向に等間隔で設けることによって凹凸状に形成されている。この溝20により、ゴム板15と板ガラス1との間の水を排出し、凸部によって板ガラス1との摩擦抵抗を保つようにしている。溝20の大きさ、形状、配設ピッチ等は一例であり、他の大きさ、形状、配設ピッチであってもよい。また、この溝20に代えて、板ガラス1との間の水で摩擦抵抗が低下するのを防止できる凹状部などを採用してもよい。
【0032】
一方、図1に示すように、上記板ガラス1は、幅方向中央部における上記ベルト部11による支持に加え、幅方向両端部水ガイド25と幅方向中間部水ガイド26とによって反パターン面(下面)3の中央部以外が支持されている。中間部水ガイド26は、板ガラス1の非接触支持と、撓みによる変形を防止している。この中間部水ガイド26は、板ガラス1のサイズに応じて適宜配置される。
【0033】
これらの反パターン面水ガイド25,26は、水Wを供給することにより、水ガイド上面と板ガラス下面との間に水を流出させ、この水で水ガイド25,26の上面と板ガラス1の下面との間に水膜を形成し、この水膜を介して板ガラス1を下方から支持するように構成されている。
【0034】
また、板ガラス1を挟んで上記幅方向両端部水ガイド25と対向するように、板ガラス1の上方にも幅方向両端部水ガイド27が設けられている。この幅方向両端部水ガイド27は、板ガラス1の上面と僅かな隙間を設けて配置されており、この水ガイド27から板ガラス1との隙間に水が流出させられ、この水によって水ガイド27と板ガラス1との間に水膜を形成し、この水膜を介して板ガラス1を上記幅方向両端部水ガイド25とによって非接触で支持している。
【0035】
一方、上記ベルト部11と対向するように、板ガラス1の幅方向中央部の上方にはパターン面支持水ガイド30が設けられている。このパターン面支持水ガイド30は、板ガラス1の上面と僅かな隙間を有するように配置されており、板ガラス1とは非接触の状態で配置されている。
【0036】
図3にも示すように、パターン面支持水ガイド30には、上部に所定圧の水Wを供給する水供給口31が設けられている。この水供給口31の下方には、所定体積の貯水部32が設けられている。また、この貯水部32の下方には、2段で拡径する供給穴33から水を供給する貯圧部34が設けられている。この貯圧部34は、パターン面支持水ガイド30と板ガラス1の上面との間の僅かな隙間から水が漏れ出るような状態で、この貯圧部34に溜められた水によって板ガラス1の上面に所定の水圧(流体圧)が作用する体積に形成されている。
【0037】
このパターン面支持水ガイド30は、平面視が矩形状の小区画に形成されており、板ガラス1の搬送方向に所定間隔で複数個が設けられている(例えば、図2に二点鎖線で示すような間隔)。このパターン面支持水ガイド30を所定間隔で設けることにより、搬送方向の長さが限られている板ガラス1を複数個のパターン面支持水ガイド30でベルト部11に向けて押圧した状態を保てるようにしている。
【0038】
そして、このパターン面支持水ガイド30に供給された水による上記貯圧部34の面積に応じた力により、板ガラス1が上記ベルト部11のゴム板15に押圧されている。ゴム板15が受ける押圧力の反力は、ベルト受け13によって受けられている。板ガラス1への押圧力は、水圧を調節することによる推力で調節される。このようにして水圧で板ガラス1をベルト部11に押圧することにより、板ガラス1は水圧に比例したゴム板15との間の摩擦力でベルト部11と一緒に移動するようにしている。
【0039】
従って、板ガラス1は、パターン面2には非接触の状態で、パターン面支持水ガイド30とベルト部11とによって上下方向から挟んで支持されて、ベルト部11と一体的に移動させられる。
【0040】
上記ベルト部11とパターン面支持水ガイド30とによって板ガラス1を上下方向から挾持して搬送する構成が、板ガラス1の送り機構40であり、この送り機構40によって板ガラス1を搬送する装置が搬送装置10である。
【0041】
また、図示する例は、上記搬送装置10に面取り機能を備えさせることで面取り装置45としている。この面取り装置45は、上記したようにパターン面2に非接触の状態で送られる板ガラス1の幅方向端縁5を研削及び研磨するように面取り機50を備えている。この実施形態では、板ガラス1の対向する二辺を同時に研削及び研磨するように面取り機50が対向配置されている。
【0042】
この面取り機50は、駆動機(モータ)51の下方に円筒形の研削砥石52(砥石部)が設けられている。研削砥石52は、縦方向に複数段のR面取り砥石53が並設されたものであり、この実施形態では5段の砥石53が設けられている。この砥石53としては、板ガラス1の面取りに適した所定粒度の砥粒が用いられる。また、この砥石53は、板ガラス1の端縁を板厚中央部が突出する半円状にR面取りするために、板ガラス1の面取り形状と合う凹状部を有する断面の砥石となっている。砥石53は、形状が限定されるものではない。
【0043】
上記砥石53は、並設した各凹状部が独立した砥石となっており、駆動機51によって砥石全体を回転させながら板ガラス1の端縁に接触させることで、各凹状部によって板ガラス1の端縁がR状に研削されるようになっている。この研削砥石52によれば、一部のR面取り砥石53が磨耗しても他のR面取り砥石53によって研削作業を行うことができる。
【0044】
以上のような第1実施形態の面取り装置45によれば、搬送装置10としては、ベルト部11のゴム板15上に板ガラス1の幅方向中央部をパターン面支持水ガイド30からの水圧で非接触支持するとともに、この板ガラス1の幅方向両端部も水ガイド25,26,27によって非接触で支持しているので、板ガラス1のパターン面2の高品質を保った状態でベルト部11によって正確に搬送することができる。
【0045】
また、上記搬送装置10に面取り機能を備えさせた面取り装置45とした場合、板ガラス1の幅方向両端部の上下面を水ガイド25,27で支持しているため、両側方の研削砥石52の切削粉が遠心力で板ガラス1の表面に飛散したとしても水で流され、付着することを防止することができる。
【0046】
従って、板ガラス1の表面の高品質を保った状態で搬送し、その端縁を面取り仕上げすることができるので、歩留まりの向上と生産性の向上を図ることが可能となる。
【0047】
図4は、上記第1実施形態とベルト部11が異なる第2実施形態の面取り装置60である。上記第1実施形態の搬送装置10では、ベルト部11に金属製ベルト14を用いた例を示したが、この第2実施形態の搬送装置55では、板ガラス1の下面と接するベルト部61に特殊なタイミングベルト62を採用している。なお、上記第1実施形態と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0048】
図5に示すように、このタイミングベルト62は、外面及び内面の両面に歯部が設けられたタイミングベルトとなっている。外面歯部63は、板ガラス1と接した状態で、タイミングベルト62と板ガラス1との間の水を歯部63の間から排出して摩擦抵抗を保つためのものである。内面歯部64は、タイミングベルト62の端部において駆動用プーリ(図示略)と噛合して、タイミングベルト62を正確に送るためのものである。
【0049】
また、図6に示すように、このタイミングベルト62の内面歯部64には、幅方向中央部の長手方向に、ガイド部65となる切込み溝が設けられている。このガイド部65は、フレーム12に設けられた支持材67によって回転可能に支持されたガイドプーリ66が沿うようになっている。このガイドプーリ66は、フレーム12に回転可能に支持されている。このガイドプーリ66にタイミングベルト62のガイド部65を沿わせて搬送方向に送ることで、タイミングベルト62の搬送方向真直度を確保している。このタイミングベルト62の搬送方向真直度を保つことにより、タイミングベルト62と一体的に送られる板ガラス1の搬送方向真直度を保つようにしている。
【0050】
なお、この実施形態では、外面及び内面の両面に歯部63,64が設けられた特殊タイミングベルト62を例にしているが、同様の構成であれば他のベルトであってもよい。
【0051】
以上のような第2実施形態の面取り装置60によっても、搬送装置55としては、ベルト部61のタイミングベルト62上に板ガラス1の幅方向中央部を上述したパターン面支持水ガイド30からの水圧で非接触支持するとともに、この板ガラス1の幅方向両端部も水ガイド25,26,27によって非接触で支持しているので、板ガラス1のパターン面2の高品質を保った状態でベルト部61によって正確に搬送することができる。
【0052】
また、この実施形態でも、搬送装置55に面取り機能を備えさせた面取り装置60とした場合、板ガラス1の幅方向両端部の上下面を水ガイド25,27で支持しているため、搬送装置55を備えた面取り装置60によれば、両側方の研削砥石52の切削粉が遠心力で板ガラス1の表面に飛散したとしても水で流され、付着することを防止することができる。
【0053】
従って、この実施形態でも、板ガラス1の表面の高品質を保った状態で搬送し、その端縁を面取り仕上げすることができるので、歩留まりの向上と生産性の向上を図ることが可能となる。
【0054】
図7,8は、上記面取り装置45,60の配置例を示す図面である。図7は、長方形状の板ガラス1の長辺を面取りする長辺面取り装置70を上流側に配置し、その後流側に、板ガラス1を90度反転させる反転機71と、板ガラス1の短辺を面取りする短辺面取り装置72とを順に配置した例である。図の左方向が搬入側で右方向が搬出側であり、左方向から右方向に板ガラス1が搬送される。これらの面取り装置70,72は、上述した面取り装置45又は60と同様の構成であるが、以下の説明では主要な構成に別符号を付して説明する。
【0055】
図7に示す構成の場合、長辺面取り装置70に搬入された板ガラス1が、まずアライメント装置73の基準ローラ74によって送り方向一辺を基準にして位置調節される。このアライメント調節された板ガラス1は、搬送方向に送られながら、長辺の二辺が研削砥石75(R面取り砥石)によってR面取りされた後、研磨砥石76によって研磨される。
【0056】
この長辺面取り装置70で長辺が面取りされた板ガラス1は、反転機71へと送られ、この反転機71で90度反転させられる。反転機71で90度反転させられた板ガラス1は、短辺面取り装置72へと搬送される。
【0057】
短辺面取り装置72に搬入された板ガラス1は、図7(a) に示す構成では、まずアライメント装置73の基準ローラ74によって送り方向一辺を基準にして位置調節されるとともに、角面取り機80による板ガラス1の四隅部6の角面取りが行われる。アライメント調節と角面取り機80による四隅部6の角面取りが行われた板ガラス1は、短辺面取り装置72で搬送されながら、短辺の二辺が研削砥石75によってR面取りされた後、研磨砥石76によって研磨される。図7(a) に示す構成では、角面取り機80を4台設けた例を示しているが、図7(b) に示す短辺面取り装置72のように、角面取り機80を2台設けて、搬送方向の前端2箇所の隅部6を角面取りした後、板ガラス1を送って後端2箇所の隅部6を角面取りするようにしてもよい。
【0058】
そして、このようにして周縁が研削及び研磨された板ガラス1は、後工程へと搬出される。この構成によれば、搬送距離の短い短辺面取り装置72において四隅部6の角面取りを行っているため、この角面取り作業と短辺二辺の面取り作業に要する時間と、長辺二辺の面取り作業に要する時間とを同様にすることができる。従って、長辺面取り装置70と短辺面取り装置72とで板ガラス1を搬送しながら全周を面取りする作業を連続的に行って、板ガラス1の面取り作業を効率的に行うことが可能となる。
【0059】
図8は、上記図7における長辺面取り装置70と短辺面取り装置72との配置が前後逆になったものである。構成としては同一であるため、同一の構成には同一符号を付して説明する。
【0060】
図示するように、この構成の場合、短辺面取り装置72に搬入された板ガラス1は、まずアライメント装置73の基準ローラ74によって送り方向一辺を基準にして位置調節されるとともに、角面取り機80による四隅部6の角面取りが行われる。アライメント調節と角面取り機80による四隅部6の角面取りが行われた板ガラス1は、短辺面取り装置72で搬送されながら、短辺の二辺が研削砥石75によってR面取りされた後、研磨砥石76によって研磨される。
【0061】
この短辺面取り装置72で短辺が面取りされた板ガラス1は、反転機71へと送られ、この反転機71で90度反転させられる。反転機71で90度反転させられた板ガラス1は、長辺面取り装置70へと搬送される。
【0062】
長辺面取り装置70に搬入された板ガラス1は、まずアライメント装置73の基準ローラ74によって送り方向一辺を基準にして位置調節される。このアライメント調節された板ガラス1は、搬送方向に送られながら、長辺の二辺が研削砥石75によってR面取りされた後、研磨砥石76によって研磨される。
【0063】
そして、このようにして周縁が研削及び研磨された板ガラス1は、後工程へと搬出される。この構成によっても、上記したように、角面取り作業と短辺二辺の面取り作業に要する時間と、長辺二辺の面取り作業に要する時間とを同様にすることができ、板ガラス1を搬送しながら全周を面取りする作業を連続的に行って、板ガラス1の面取り作業を効率的に行うことが可能となる。
【0064】
上記図7又は図8における面取り装置70,72の構成は、上流の工程から搬入される板ガラス1の向きによって決定される。そして、上記面取り装置70,72から搬出される板ガラス1は、四辺の端縁5と四隅部6の全周が研削及び研磨されているため、仕上げ精度の高い板ガラス1として後流の工程へ搬出される。
【0065】
図9,10は、上記図7,8に示す角面取り機80の構成例である。角面取り機80としては、隅部6を直線または曲線状に研削する角面取り用研削砥石81と、その研削面を磨く研磨砥石82とを同軸上に具備させ、同一の駆動機83(モータ等)で駆動するように構成されている。図示する例では、研削砥石81の下方に研磨砥石82を装着している。この構成の場合、研削砥石81と研磨砥石82とを軸方向に位置変更する配置替え機構を具備させる。この配置替え機構としては、角面取り機80の全体を軸方向に移動させる機構などが採用される。
【0066】
このようにすれば、図9に示すように、研削砥石81で研削後、図10に示すように、角面取り機80を軸方向に移動(上昇)させて研磨砥石82を板ガラス1の位置に配置替えした後、同じ軌跡で研磨することができる。これにより、研削作業と研磨作業とを連続して迅速に行うことができる。しかも、角部の研磨作業を行うことで、板ガラス1の角面取り部分も高精度で研磨して仕上げることができ、製品の品質向上を図ることができる。
【0067】
以上のように、上記面取り装置45,60によれば、板ガラス1のパターン面2に構造物を接触させることなく搬送装置10,55で板ガラス1を搬送できるため、板ガラス1のパターン面2に疵が付くのを確実に防止することができる。
【0068】
また、板ガラス1の四辺の端縁5及び四隅部6を迅速に研削及び研磨して面取りすることができるので、周縁全体の面取り仕上げが高い板ガラス1を製造することができる。しかも、周縁の面取り仕上げを高品質とすることで、後工程における板ガラス1の割れ等を防ぐことができるので、歩留まりを向上させて生産性の向上を図ることが可能となる。
【0069】
さらに、上記したような面取り装置45,60によれば、板ガラス1を連続送りすることができ、板ガラス1の面取り作業に要するサイクルタイムを縮めることが可能となる。
【0070】
なお、上記実施形態では、搬送装置10,55を面取り装置45,60に適用した例を説明したが、板ガラス1を水平状態で搬送する構成であれば他の装置にも適用することができ、面取り装置45,60に限定されるものではない。
【0071】
また、上記実施形態では、板ガラス1の幅方向中央部のみに送り機構40を設けた例を説明したが、送り機構40を幅方向に複数列設けるような構成であってもよく、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0072】
さらに、上記実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る板ガラスの搬送装置は、板ガラスを送りながら面取りする面取り装置や、板ガラスの反転装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 板ガラス
2 パターン面
3 反パターン面
5 端縁
6 隅部
10 搬送装置
11 ベルト部
13 ベルト受け
14 金属製ベルト
15 ゴム板
16 サイドローラ(基準側ガイド部)
17 サイドローラ(ガイド部)
19 バネ
20 溝
25 幅方向両端部水ガイド(液体ガイド)
26 幅方向中間部水ガイド
27 幅方向両端部水ガイド(液体ガイド)
30 パターン面支持水ガイド(流体ガイド)
32 貯水部
33 供給穴
34 貯圧部
40 送り機構
45 面取り装置
50 面取り機
51 駆動機
52 研削砥石
53 R面取り砥石
55 搬送装置
60 面取り装置
61 ベルト部
62 タイミングベルト
63 外面歯部
64 内面歯部
65 ガイド部
66 ガイドプーリ
70 長辺面取り装置
71 反転機
72 短辺面取り装置
73 アライメント装置
74 基準ローラ
75 研削砥石(R面取り砥石)
76 研磨砥石
80 角面取り機
81 研削砥石(角面取り砥石)
82 研磨砥石(角面取り砥石)
W 水(液体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ガラスを水平状態で送る搬送装置であって、
前記板ガラスの反パターン面を支持して該板ガラスを搬送方向に送るベルト部と、
該ベルト部と対向する位置で前記板ガラスのパターン面に向けて所定の液体圧を作用させる液体ガイドと、を有する送り機構を備え、
該送り機構は、前記液体ガイドの液体圧で前記板ガラスを前記ベルト部に押圧して、該板ガラスのパターン面に非接触の状態で該板ガラスを前記ベルト部との間で挾持するように構成されていることを特徴とする板ガラスの搬送装置。
【請求項2】
前記板ガラスの幅方向中央部に前記送り機構を配置し、
前記板ガラスの両端部に、該板ガラス表面との間に液体層を形成して非接触で支持する液体ガイドを配設した請求項1に記載の板ガラスの搬送装置。
【請求項3】
前記板ガラスのパターン面を上方に向けて搬送するように構成した請求項1又は2に記載の板ガラスの搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の搬送装置を備え、
該搬送装置で搬送する前記板ガラスの端縁を研削及び研磨する面取り機を有するとともに、
前記ベルト部を搬送方向にガイドするガイド部を有していることを特徴とする板ガラスの面取り装置。
【請求項5】
前記面取り機は、前記板ガラスの送り方向両側部に対向して配置された砥石部を有している請求項4に記載の板ガラスの面取り装置。
【請求項6】
前記面取り機は、前記板ガラスの隅部を研削及び研磨する角面取り機を有している請求項4又は5に記載の板ガラスの面取り装置。
【請求項7】
前記角面取り機は、研削砥石と研磨砥石とを有する砥石部を備え、
該砥石部は、前記研削砥石又は研磨砥石を前記板ガラスの端縁に位置させる配置替え機構を具備している請求項6に記載の板ガラスの面取り装置。
【請求項8】
前記板ガラスの搬送方向に前記面取り装置を2台配置し、該2台の面取り装置の間に前記板ガラスを90度回転させる反転機を備えさせた請求項4〜7のいずれか1項に記載の板ガラスの面取り装置。
【請求項9】
前記面取り装置は、長辺面取り装置と短辺面取り装置とで構成され、
前記長辺面取り装置は、R面取り砥石、研磨砥石を有する砥石部を備え、
前記短辺面取り装置は、R面取り砥石、研磨砥石、角面取り砥石とを有する砥石部を備えている請求項8に記載の板ガラスの面取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−80044(P2012−80044A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226689(P2010−226689)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】